JP3060022B2 - 耐摩耗性アルミニウム系焼結合金およびその製造方法 - Google Patents

耐摩耗性アルミニウム系焼結合金およびその製造方法

Info

Publication number
JP3060022B2
JP3060022B2 JP6335712A JP33571294A JP3060022B2 JP 3060022 B2 JP3060022 B2 JP 3060022B2 JP 6335712 A JP6335712 A JP 6335712A JP 33571294 A JP33571294 A JP 33571294A JP 3060022 B2 JP3060022 B2 JP 3060022B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
alloy
powder
phase
primary crystal
wear
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Lifetime
Application number
JP6335712A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH08176716A (ja
Inventor
善三 石島
淳一 市川
秀二 佐々木
英雄 四方
秀夫 浦田
祥司 川瀬
順一 上田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Honda Motor Co Ltd
Hitachi Powdered Metals Co Ltd
Original Assignee
Honda Motor Co Ltd
Hitachi Powdered Metals Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Honda Motor Co Ltd, Hitachi Powdered Metals Co Ltd filed Critical Honda Motor Co Ltd
Priority to JP6335712A priority Critical patent/JP3060022B2/ja
Priority to US08/385,988 priority patent/US5545487A/en
Priority to EP95101854A priority patent/EP0669404B1/en
Priority to DE69503077T priority patent/DE69503077T2/de
Publication of JPH08176716A publication Critical patent/JPH08176716A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3060022B2 publication Critical patent/JP3060022B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Powder Metallurgy (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、軽量で強度が高く、か
つ耐摩耗性であることを要求される各種の歯車、プーリ
ー、コンプレッサー用ベーン、コンロッド、ピストンな
どを製造するために好適なアルミニウム系焼結合金およ
びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、機械要素は、機械効率の向上や省
エネルギーの要求により、軽量化材料への置換が進んで
いる。中でもアルミニウム系焼結合金は、軽量であるこ
とおよび鋳造合金に比べて、初晶Siを微細化でき、S
i含有量を多くできることなどの理由から、比強度と耐
摩耗性に優れたアルミニウム系合金として期待が高まっ
ている。
【0003】従来のアルミニウム系焼結合金としては、
例えば、特開昭53−128512号公報に開示され
た、組成が重量比でCu:0.2〜4%、Mg:0.2〜
2%、Si:10〜35%、残部がAlとなるように、
Al−10〜35%Si粉、銅粉、Mg粉、Al−Cu
粉、Cu−Mg粉、Al−Cu−Mg粉、Cu−Mg−
Si粉、Al−Cu−Mg−Si粉のうちより選ばれた
粉末、および必要に応じてAl粉を混合し、圧粉成形し
た後焼結して所望の製品を製造する方法がある。この方
法は各種の粉末を混ぜ合わせるいわゆる混合法である。
このような混合法によれば、軟質金属粉末を混合するこ
とができるので、粉末成形性がよいという特徴があり、
通常の圧粉成形−焼結の工程のみでも、液相焼結によれ
ばある程度の強度のものが得られるので、強度があまり
要求されない部材には適用することができる。
【0004】また、特開昭62−10237号公報に記
載されているように、組成が重量比で、Si:10〜3
0%、Ni、Fe、Mnの1種または2種以上を合計で
1〜15%、必要に応じてCu:0.5〜5およびM
g:0.2〜3%、および残部のAlおよび不可避の不
純物からなる急冷凝固アルミニウム合金粉の圧粉体を熱
間鍛造して製造され、Al−Si系合金素地中に初晶S
iが均一に分散した組織の合金がある。合金法によれ
ば、混合法に比べて高い強度が達成される。しかし、急
冷凝固粉末は硬く、金型成形によるニアネットシェープ
化が困難であること、粉末に強固な酸化皮膜があるこ
と、および焼結時に液相を発生しないことなどのため
に、焼結のみでは粉末相互の十分な結合を達成すること
ができず、ビレット形状からの押出しや鍛造など、数回
の圧縮工程を必要とする。
【0005】さらに、混合法と合金法の組合せとして、
特開平5−156399号公報に記載されているよう
に、急冷凝固Al−Si系合金粉に所定量の純Al粉を
混合した粉を熱間鍛造して製造され、その組成が重量比
で、Si:12〜30%、FeおよびNiのうち1種ま
たは2種の成分1〜10%、必要に応じCu:1〜5
%、Mg:0.3〜2%のうち1種または2種の成分お
よび残部がAlおよび不可避の不純物からなる組成で、
微細な初晶Siが分散した共晶Al−Si素地中に、熱
間鍛造により変形したAl固溶体粒が5〜20容量%分
散した組織の合金がある。この合金はAl固溶体が接着
剤として作用し、硬質な粒界の相互の密着性を向上さ
せ、耐摩耗性と強度を向上させたものである。
【0006】ところで、本出願人は特願平6−3760
6号において、組成が重量%でAl−13〜30%Si
合金粉とAl粉を2:8〜8:2の比率で配合した粉末
に、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zrお
よびNbより選ばれる1種もしくは2種以上の遷移金属
を0.2〜30%含有するCu−遷移金属合金粉、35
%以上のMgを含有するAl−Mg合金粉またはMg粉
を添加して混合し、圧粉成形した後焼結して、全体組成
が重量比で、Si:2.4〜23.5%、Cu:2〜5
%、Mg:0.2〜1.5%、前記遷移金属0.01〜1
%、および残部のAlおよび不可避不純物からなり、5
〜60μmの初晶Siが分散するAl−Si系合金相と
Al固溶体相との斑状組織を呈し、斑状組織面に占める
Al固溶体相の面積が20〜80%である合金を提案し
た。この合金の製造方法においては、成形性に優れ、合
金は粒界への金属間化合物の析出が防止され、斑状組織
であると共にAl−Si合金相中の初晶Siの最大粒径
を限定したことにより、引張り強さが380MPa程度
で伸びが大きく、また摩擦摺動中に脱落した初晶Si粒
子をAl固溶体相が埋め込む効果を有していることから
特に耐摩耗性に優れた合金を得ることができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】このように、上記の焼
結合金は耐摩耗性に優れ機械強度も高いものであるが、
更に機械強度の高い合金であれば、その用途を拡大し、
また合金の信頼性を向上させることができる。本発明の
目的は、機械的強度がより高く、耐摩耗性に優れたアル
ミニウム系焼結合金を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記のよ
うな課題を解決するために、鋭意検討を行なった結果本
発明に到達したものである。すなわち、本発明の焼結合
金は、全体組成が重量比でSi:2.4〜23.5%、C
u:2〜5%、Mg:0.2〜1.5%、Ti、V、C
r、Mn、Fe、Co、Ni、ZrおよびNbから選ば
れる1種もしくは2種以上の遷移金属:0.01〜1
%、残部のAlおよび不可避不純物からなり、初晶Si
が分散しているAl−Si系合金相とAl固溶体相とが
斑状組織を呈し、斑状組織の断面に占めるAl固溶体相
の面積が20〜80%であるアルミニウム系焼結合金で
あって、合金表面部または少なくとも摺動予定面部のA
l−Si系合金相中の初晶Siの最大粒径が5〜60μ
mであり、その他の部分の初晶Siの粒径が5μm以下
であることを特徴とするものである。なお、焼結合金部
材の摺動する部位または部材全体の表面に分散する前記
5〜60μmの初晶Siの層は表面から深さ0.05〜
1mmの範囲にあることが好ましい。
【0009】また、本発明におけるアルミニウム系焼結
合金部材の製造方法としては、Si含有量が13〜30
重量%のAl−Si合金粉とAl粉を2:8〜8:2に
配合した粉末に、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、
Ni、ZrおよびNbから選ばれる1種もしくは2種以
上の遷移金属の含有量が0.2〜30重量%のCu−遷
移金属合金粉、Mg含有量が35重量%以上のAl−M
g合金粉またはMg粉を添加して、全体組成が重量比
で、Si:2.4〜23.5%、Cu:2〜5%、Mg:
0.2〜1.5%、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、
Ni、ZrおよびNbから選ばれる1種もしくは2種以
上の遷移金属:0.01〜1%、残部のAlおよび不可
避不純物からなる混合粉とし、この混合粉末を圧粉成形
した後焼結して、最大粒径が5μm以下の初晶Siが分
散しているAl−Si系合金相とAl固溶体相との斑状
組織を呈する焼結合金とし、この焼結合金の表面を加熱
して、合金内部に存在するAl−Si系合金相中の初晶
Siの粒径は5μm以下にとどめた状態で、合金表面部
に存在するAl−Si系合金相中の初晶Siの最大粒径
を5〜60μmに成長させ、冷却することを特徴とす
る。
【0010】上記の製造方法において、表面全体または
合金部材が用いられる際に摺動する部位の加熱は、高周
波加熱、プラズマ加熱、レーザー加熱などにより達成す
ることができる。
【0011】
【作用】以下に本発明の各構成要件についてさらに説明
する。 (1)斑状組織 斑状組織は、初晶Siが分散したAl−Si系合金相と
Al固溶体相とで構成される。初晶Siが分散したAl
−Si系合金相は、Al−Si合金中にMg、Cuおよ
び遷移金属元素が拡散した固溶体であって、この素地中
に初晶Siが分散している比較的硬質な相であり、主に
材料強度および耐摩耗性に寄与する。
【0012】Al固溶体相は、純アルミニウム粉の形で
添加されたAl中に、Si、Mg、Cuおよび遷移金属
が拡散した固溶体であって、比較的軟質であり、合金の
靭性に寄与するとともに、初期摩耗を受けてAl−Si
系合金相間に油だまりを形成して潤滑性および摩擦中の
相手材とのなじみ性に寄与する。また、塑性変形し易い
ので、摺動面近傍の硬質な初晶Si粒子が摩耗粉として
脱落しそうになったり、脱落した場合に、それらを埋没
させ、Si粒子が研磨粒子として作用することを防ぐ効
果がある。
【0013】前述の初晶Si粒子が分散したAl−Si
系合金相と軟質なAl固溶体相の二つの相は、Al−S
i系合金相が合金断面の面積比で20%未満のときは、
初晶Siの量が少ないため、また、80%を越える場合
についても、摩擦摺動により脱落したSi粒子を埋没さ
せるAl固溶体相の量が少ないために、耐摩耗性が著し
く低くなる。したがって、2つの相が、合金断面の面積
比で20〜80:80〜20の割合で斑状に混在した複
合組織であるときに、相互の作用によって強度および耐
摩耗性が良好になる。
【0014】(2)Si アルミニウム合金のSiは、熱膨張係数の低下および耐
摩耗性の向上に寄与する。全体組成からみたSiの量
は、前述の初晶Siが分散したAl−Si系合金相とA
l固溶体相とが斑状組織を呈するような範囲を選択する
必要があり、2.4〜23.5重量%の範囲が適当であ
る。全体組成中のSi量が少な過ぎると、初晶Siが分
散したAl−Si系合金相中のSi量が少ないか、ある
いはAl−Si系合金相の量が少なくなることになり、
耐摩耗性に寄与する初晶Siの量が少ないために耐摩耗
性が不十分となる。一方、Si量が多過ぎると、Al−
Si系合金相中のSi量が多いか、あるいはAl−Si
系合金相の量が多くなるために、靭性が低下し、かつ摺
動時に脱落した初晶Si粒子を埋め込むAl固溶体相の
量が少なく、斑状組織の効果がなくなるため却って摩耗
が進行する。
【0015】SiはAl−Si合金粉の形で添加される
が、初晶Siが析出するためには、合金粉末中のSi含
有量は13重量%以上必要であり、また、Si含有量が
30重量%を越えると粉末製造時の溶湯温度が高くなる
ため、Al−Si合金粉中のSi含有量は13〜30重
量%が適当である。
【0016】(3)Mg Mgは焼結中に液相を生じて素地中に固溶し、焼結の促
進、および時効析出するMg2Siによる素地の強化お
よび耐摩耗性の向上の効果を示す。Mgの量は、全体組
成で0.2重量%未満では上記の効果が不十分であり、
一方1.5%より多く添加してもそれ以上の添加効果を
呈するわけではないので0.2〜1.5重量%の範囲が望
ましい。
【0017】また、添加手段としては、Mg含有量が3
5重量%以上のAl−Mg合金粉またはMg粉の形態で
行う。これは、Al−Mg二元系合金の融点が、Mg含
有量33〜70重量%の間において460℃程度の低い
値を示すためである。すなわち純粋なMg粉の場合に
は、焼結過程でAl素地と固相拡散してMg濃度が低下
することにより液相が発生する。一方Al−Mg合金粉
を用いる場合には、Mg含有量を33重量%とすると、
前記と同様にAl素地との拡散でMg濃度が低下するこ
とにより融点が上昇して有効に液相を利用することがで
きないので、Mg含有量は35重量%以上とすることが
望ましい。
【0018】(4)Cuおよび遷移金属 CuはAl合金素地を強化する元素であり、時効処理に
より一層大きな効果を示すが、2重量%未満では所望の
強度向上が認められず、また5重量%を越えると粉末粒
界近傍においてCuを主成分とする金属間化合物が多量
に析出して靭性が低下するので好ましくない。CuをC
u粉の形態で添加した場合に、Cuを素地に固溶させる
ために必要な加熱を行うと、溶製材料のように初晶Si
が粗大化し、反対に加熱の温度を下げ時間を短縮する
と、素地の粒界にCuの金属間化合物が残存して強度の
低下を招く。そこで、適量の遷移金属(Ti、V、C
r、Mn、Fe、Co、Ni、Zr、Nb)を共存させ
ると、溶体化および時効処理により、素地中に過飽和に
固溶したCuが時効析出する際に、遷移金属とCuおよ
びSiが結合し、素地中のCuおよびSiの量を減少さ
せ、その分だけ粉末粒界に析出した金属間化合物のCu
が素地中に拡散するため、粒界に析出する金属間化合物
を消失させることが可能となる。
【0019】全体組成中の遷移金属の量は、前記のCu
含有量の範囲において0.01重量%未満ではその効果
が認められず、一方、1重量%を越えると遷移金属を主
成分とする金属間化合物が析出して靭性が低下するため
0.01から1重量%が好適である。遷移金属は単体で
添加すると拡散し難いため、Cu−遷移金属合金粉の形
態で添加することが好ましいが、合金粉中の遷移金属量
は全体組成として必要なCu量および遷移金属量を考慮
して、0.2重量%以上が必要であるが、30重量%を
越えると合金粉末の融点が高くなり、固相拡散によって
融点が低下しても液相を発生しなくなるため0.2〜1
0重量%の範囲が好適である。
【0020】(5)Al−Si系合金相中の初晶Siの
粒径 初晶Si粒子の断面形状は、粒径が小さいものは縦横の
寸法がほぼ同じで円形に近いが、大きい粒子は小さい粒
子が集合して凝集したり、粒成長したものと考えられ、
不規則な形状を示す。最大粒径とは、このような不規則
な形状をした粒子の両端距離の最長寸法を表したもので
ある。
【0021】初晶Siの粒径が大きくなると、硬質の初
晶Si粒子が突起物の状態で相手材を引っかき、相手材
を摩耗させる。一方、初晶Siの量が少ないか、または
初晶Siの粒径が小さいと、摩擦摺動時に素地より脱落
し、脱落した初晶Si粒子が研磨粒子として作用するた
め摩耗が進行する。したがって、耐摩耗性の観点から初
晶Si粒径は適度の値であることが必要であり、最大粒
径は5〜60μmの範囲が好ましい。
【0022】一方、強度の点から考えると、初晶Siが
大きいほど強度や延性が低くなり、初晶Siの粒径が小
さいほど強度や延性が高くなるので好ましく、5μm以
下が好適である。そこで、摩擦部材の表面もしくは少な
くとも摺動する部位の初晶Siは、耐摩耗性を考慮して
最大粒径を5〜60μmにすると共に、内部の初晶Si
は、強度や延性を考慮して粒径を5μm以下に構成する
ことによって、耐摩耗性と強度、延性を共に向上させる
ことが可能となる。
【0023】また、最大粒径が5〜60μmの初晶Si
が分散しているAl−Si系合金相の表層の厚さは、部
材が使用される摩擦環境により異なるが、0.05mm
以下では初期摩耗時に耐摩耗性に寄与する5〜60μm
の初晶Si粒子が脱落して耐摩耗性向上の効果がなくな
るおそれがあり、一方、表層厚さが1mmを越えても、
それに応じて耐摩耗性がさらに向上するわけではなく、
内部の強度および靭性に寄与する部分が減少するので、
5〜60μmの初晶Siが分散している層の厚さは0.
05〜1mmの範囲であることが好ましい。
【0024】図1は本発明の焼結合金組織の断面の顕微
鏡視野を模式的に表したものである。白い領域はAl固
溶体相2であり、黒点を有する領域はAl−Si合金相
2であり、黒点は初晶Siである。合金表面4付近の初
晶Si3aの平均粒径は大きく、一方、内部の初晶Si
3bの平均粒径は比較的微細である。このような初晶S
i3a、3bの構成は、あらかじめ合金全体を初晶Si
の粒径が5μm以下になるように焼結した焼結合金の表
面を、高周波加熱、プラズマ加熱あるいはレーザー加熱
などの加熱手段により、0.05〜1mmの深さにわた
って初晶Siが成長して最大粒径が5〜60μmになる
まで加熱することによって得ることができる。また、必
要な部分だけを加熱して特定の表面部位のみを改質する
ことも可能である。
【0025】
【実施例】以下に実施例により本発明をさらに説明す
る。なお、成分量は特に付言しない限り重量基準であ
る。 [実施例1]原料粉として、Si含有量が15%、17
%、20%、25%および30%の5種類のAl−Si
合金粉、純Al粉、Cu−4%Ni合金粉およびAl−
50%Mg合金粉を、表1から表3に示す割合で混合
し、所定の形状に成形を行ない、400℃で脱ろうし、
540℃で10分間の焼結を行った。その後、熱間鍛造
によって密度比を100%とし、490℃で溶体化処理
および240℃で時効処理行った。各試料の組織は、A
l−Si系合金相とAl固溶体相の断面面積比について
はAl−Si合金粉と純Al粉の配合割合と同様になっ
ており、Al−Si系合金相中の初晶Siの最大粒径は
3〜4μmであった。
【0026】次に、これらの試料を高周波誘導炉によっ
て加熱し、試料1〜19を得た。得られた各試料につい
て、成分組成、斑状組織の断面に占めるAl−Si系合
金相とAl固溶体相の面積比、高周波加熱によって成長
させた試料表面部の初晶Siの最大粒径、成長させた初
晶Siが分散する部分の表面からの層の厚さおよび試料
内部の初晶Siの最大粒径を表1から表3に示す。ま
た、各試料についてピンオンディスク摩擦摩耗試験によ
る試料の摩耗量を測定した。その結果を表1から表3に
併せて示す。ピンオンディスク摩擦摩耗試験は、試料を
ピンとし、相手のディスクとしてS48C材(機械構造
用炭素鋼)の熱処理品を用い、鉱油潤滑下に、面圧49
MPa、摩擦速度5m/秒の条件で行った。
【0027】表1から表3に示す結果によれば、表面部
の初晶Siの最大粒径は24〜25μmである。Al−
Si系合金相とAl固溶体相の面積比が8:2から2:
8の範囲を満たしていない試料1、3、10、13、1
5、18および19は、焼付きを生じるか摩耗量が多く
なっている。その他の試料は、全体組成中のSi量が所
定の範囲内であり、斑状組織に占めるAl−Si系合金
相とAl固溶体相の断面面積比が所定の範囲内であり、
その場合は摩耗量が少ない。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
【表3】
【0031】[実施例2]Al−20Si合金粉、純A
l粉、Cu−4%Ni合金粉、Al−50%Mg合金粉
を表4および表5に示す割合で混合し、前記実施例と同
様の条件で、成形、焼結、熱間鍛造、溶体化処理および
時効処理行い、さらに高周波加熱を行って試料20〜2
8を得た。また、同様の条件で製作し、高周波加熱を行
わない時効処理試料29〜32を得た。
【0032】得られた試料20〜32について、成分組
成、斑状組織の断面に占めるAl−Si系合金相とAl
固溶体相の面積比、高周波加熱により成長させた摺動部
位の初晶Siの最大粒径、成長させた初晶Siが分散す
る部分の表面からの層の厚さおよび試料内部の初晶Si
の最大粒径を表4および表5に示す。また、各試料の引
張り強さとピンオンディスク摩擦摩耗試験による試料の
摩耗量を測定した結果を同表に併せて示す。
【0033】これらの表に示す結果によれば、摩耗量は
摺動部位の初晶Siの最大粒径が5μm未満の試料29
および初晶Siの最大粒径が60μmを越える試料28
は摩耗量が著しく多いことが判る。また、表面の初晶S
iの最大粒径が5〜60μmの範囲内であっても、その
層の厚さが0.05mmより小さい試料21も著しく摩
耗している。一方、表面の初晶Siの最大粒径が大きく
なると引張り強さが低くなるが、内部の初晶Siの最大
粒径が小さい試料は、内部まで粒径が大きい試料30〜
32に比べて高い引張り強さを示し、表面に分散する成
長した初晶Siの層の厚さが小さいほど高い引張り強さ
を示すことが判る。以上より、初晶Siが分散している
Al−Si系合金相とAl固溶体相との斑状組織を示す
アルミニウム系焼結合金において、斑状組織の断面に占
めるAl固溶体相の面積が20〜80%であり、表面に
分散している初晶Siの最大粒径が5〜60μmで、そ
の他の部分に分散しているAl−Si系合金相中の初晶
Siの粒径が5μm以下であり、最大粒径が5〜60μ
mの初晶Siが分散した層の厚さが0.05〜1mmで
あるアルミニウム系焼結合金からなる部材は、耐摩耗性
に優れ、引張り強さが大きいことが判る。
【0034】
【表4】
【0035】
【表5】
【0036】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のアルミニ
ウム系焼結合金は、初晶Siが分散しているAl−Si
系合金相とAl固溶体相との斑状組織を呈し、斑状組織
の断面に占めるAl固溶体相の面積が20〜80%であ
り、表面から0.05〜1mmの深さのAl−Si系合
金相中の初晶Siの最大粒径が5〜60μmで、その他
の部分に分散している初晶Siの粒径が5μm以下に構
成したものであり、機械強度が高く、特に耐摩耗性に優
れたものである。したがって、軽量化が要求されている
各種軸受、歯車、プーリー、コンロッド、ピストンなど
の機械要素への適用が期待され、焼結部品の利用を拡大
することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の焼結合金の組織を説明する拡大模式図
である。
【符号の説明】
1 Al−Si系合金相 2 Al固溶体相 3a 初晶Si(最大粒径5〜60μm) 3b 初晶Si(粒径5μm以下) 4 焼結合金表面
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C22F 1/00 604 C22F 1/00 628 628 630A 630 630D 631A 631 631Z 651B 651 682 682 687 687 691B 691 691Z B22F 3/10 F (72)発明者 四方 英雄 千葉県松戸市大金平1−48−1 (72)発明者 浦田 秀夫 埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式 会社 本田技術研究所内 (72)発明者 川瀬 祥司 埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式 会社 本田技術研究所内 (72)発明者 上田 順一 埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式 会社 本田技術研究所内 (56)参考文献 特開 平7−197168(JP,A) 特開 昭53−128512(JP,A) 特開 平4−183839(JP,A) 特開 平7−224341(JP,A) 特開 昭59−170245(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 21/00 - 21/18 B22F 1/00 - 7/08 C22C 1/04 - 1/057

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 全体組成が重量比でSi:2.4〜23.
    5%、Cu:2〜5%、Mg:0.2〜1.5%、Ti、
    V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、ZrおよびNbか
    ら選ばれる1種もしくは2種以上の遷移金属:0.01
    〜1%、残部のAlおよび不可避不純物からなり、初晶
    Siが分散しているAl−Si系合金相とAl固溶体相
    とが斑状組織を呈し、斑状組織の断面に占めるAl固溶
    体相の面積が20〜80%であるアルミニウム系焼結合
    金であって、合金表面部または少なくとも摺動予定面部
    のAl−Si系合金相中の初晶Siの最大粒径が5〜6
    0μmであり、その他の部分の初晶Siの粒径が5μm
    以下であることを特徴とする耐摩耗性アルミニウム系焼
    結合金。
  2. 【請求項2】 Al−Si系合金相中の初晶Siの最大
    粒径が5〜60μmである部分の厚さが、合金表面より
    0.05〜1mmであることを特徴とする請求項1記載
    の耐摩耗性アルミニウム系焼結合金。
  3. 【請求項3】 Si含有量が13〜30重量%のAl−
    Si合金粉とAl粉を2:8〜8:2に配合した粉末
    に、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zrお
    よびNbから選ばれる1種もしくは2種以上の遷移金属
    の含有量が0.2〜30重量%のCu−遷移金属合金
    粉、Mg含有量が35重量%以上のAl−Mg合金粉ま
    たはMg粉を添加して、全体組成が重量比でSi:2.
    4〜23.5%、Cu:2〜5%、Mg:0.2〜1.5
    %、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zrお
    よびNbから選ばれる1種もしくは2種以上の遷移金
    属:0.01〜1%、残部のAlおよび不可避不純物か
    らなる混合粉末とし、この混合粉末を圧粉成形した後焼
    結して、最大粒径が5μm以下の初晶Siが分散してい
    るAl−Si系合金相とAl固溶体相との斑組織を呈す
    る焼結合金とし、この焼結合金の表面を加熱して、合金
    表面部に存在するAl−Si系合金相中の初晶Siの最
    大粒径を5〜60μmに成長させた後、冷却することを
    特徴とする耐摩耗性アルミニウム系焼結合金の製造方
    法。
  4. 【請求項4】 前記焼結合金の表面を加熱する方法が、
    高周波加熱、プラズマ加熱、レーザー加熱の何れかの方
    法であることを特徴とする請求項3記載の耐摩耗性アル
    ミニウム系焼結合金の製造方法。
JP6335712A 1994-02-12 1994-12-21 耐摩耗性アルミニウム系焼結合金およびその製造方法 Expired - Lifetime JP3060022B2 (ja)

Priority Applications (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP6335712A JP3060022B2 (ja) 1994-12-21 1994-12-21 耐摩耗性アルミニウム系焼結合金およびその製造方法
US08/385,988 US5545487A (en) 1994-02-12 1995-02-09 Wear-resistant sintered aluminum alloy and method for producing the same
EP95101854A EP0669404B1 (en) 1994-02-12 1995-02-10 Wear-resistant sintered aluminum alloy and method for producing the same
DE69503077T DE69503077T2 (de) 1994-02-12 1995-02-10 Verschleissfeste gesinterte Aluminiumlegierung und Verfahren zu ihrer Herstellung

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP6335712A JP3060022B2 (ja) 1994-12-21 1994-12-21 耐摩耗性アルミニウム系焼結合金およびその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH08176716A JPH08176716A (ja) 1996-07-09
JP3060022B2 true JP3060022B2 (ja) 2000-07-04

Family

ID=18291639

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP6335712A Expired - Lifetime JP3060022B2 (ja) 1994-02-12 1994-12-21 耐摩耗性アルミニウム系焼結合金およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3060022B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6312189B2 (ja) * 2012-03-30 2018-04-18 住友電工焼結合金株式会社 摺動部材、及び摺動部材の製造方法
JP6990527B2 (ja) * 2017-05-23 2022-02-03 昭和電工株式会社 アルミニウム合金材

Also Published As

Publication number Publication date
JPH08176716A (ja) 1996-07-09

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP0669404B1 (en) Wear-resistant sintered aluminum alloy and method for producing the same
CN101056998B (zh) 钛铝基合金
EP0508426B1 (en) Compressor equipped with a fixed scroll and a turning scroll, at least one thereof comprising a highly ductile sintered aluminum alloy, and method for production thereof
EP0821072B1 (en) Highly wear-resistant aluminium-based composite alloy and wear-resistant parts
EP0577062A1 (en) Oil pump made of aluminum alloys
CN110079711B (zh) 耐热高压铸造Al-Si-Ni-Cu铝合金及制备方法
JP2761085B2 (ja) Al−Si系合金粉末焼結部品用の原料粉末および焼結部品の製造方法
JP3784858B2 (ja) アルミニウム系耐摩耗性焼結合金の製造方法
JPS5846539B2 (ja) 軸受用アルミニウム合金およびその製造法
CN114231798A (zh) 一种耐高温耐磨铝合金材料及其制备方法与应用
JP3940022B2 (ja) 焼結アルミニウム合金の製造方法
US6706126B2 (en) Aluminum alloy for sliding bearing and its production method
JP3060022B2 (ja) 耐摩耗性アルミニウム系焼結合金およびその製造方法
JP3057468B2 (ja) 耐摩耗性アルミニウム系焼結合金およびその製造方法
US6899844B2 (en) Production method of aluminum alloy for sliding bearing
JP2006161103A (ja) アルミニウム合金部材およびその製造方法
JP3920656B2 (ja) ホウ素含有高剛性Al合金
JP4704720B2 (ja) 高温疲労特性に優れた耐熱性Al基合金
JP2542603B2 (ja) 耐摩耗性Al−Si−Mn系焼結合金
JP3248263B2 (ja) 極低温成形加工用Al−Mn系合金材
JPH08209274A (ja) 耐摩耗性アルミニウム系焼結合金
JPH07278714A (ja) アルミニウム粉末合金およびその製造方法
JPS6056220B2 (ja) アルミニウム軸受合金
JP4699787B2 (ja) 耐磨耗性と剛性とに優れた耐熱性Al基合金
JPH06228697A (ja) 高温特性のすぐれた急冷凝固Al合金

Legal Events

Date Code Title Description
R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080428

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090428

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090428

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100428

Year of fee payment: 10

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100428

Year of fee payment: 10

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110428

Year of fee payment: 11

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120428

Year of fee payment: 12

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120428

Year of fee payment: 12

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130428

Year of fee payment: 13

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140428

Year of fee payment: 14

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

EXPY Cancellation because of completion of term