JPH07278714A - アルミニウム粉末合金およびその製造方法 - Google Patents

アルミニウム粉末合金およびその製造方法

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JPH07278714A
JPH07278714A JP6069644A JP6964494A JPH07278714A JP H07278714 A JPH07278714 A JP H07278714A JP 6069644 A JP6069644 A JP 6069644A JP 6964494 A JP6964494 A JP 6964494A JP H07278714 A JPH07278714 A JP H07278714A
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less
alloy
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aluminum
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Katsuyoshi Kondo
勝義 近藤
由重 ▲高▼ノ
Yoshie Kouno
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Sumitomo Electric Industries Ltd
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Sumitomo Electric Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 可能な限り小さい熱履歴の付与により、急冷
凝固Al合金粉末同士が強固に結合し、かつ優れた急冷
凝固特性が維持され得るAl粉末合金およびその製造方
法を提供する。 【構成】 Al粉末合金では、Mgが0.3重量%以上
1.5重量%以下、Snが0.3重量%以上1.5重量
%以下で含有されており、かつSnの重量%に対するM
gの重量%の含有比率(Mg/Sn)が0.8以上1.
25以下であり、その残部が実質的にAlおよび不可避
な不純物からなっている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、アルミニウム粉末合金
およびその製造方法に関し、より特定的には、熱間鍛造
性に優れた耐熱性および耐摩耗性のアルミニウム粉末合
金およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】粉末
冶金法においては、急冷凝固法を用いることで、Si
(シリコン)、Fe(鉄)、Ni(ニッケル)などの遷
移系金属合金元素を多量に添加しても、微細かつ均一な
組織を有する分散強化型アルミニウム合金粉末を得るこ
とが可能である。特にこの場合、急冷凝固速度を大きく
することによって、粉末の組織がより微細になり、優れ
た特性が得られることが知られている。
【0003】急冷凝固Al(アルミニウム)粉末合金
は、この急冷凝固などにより得られた粉末を固化するこ
とにより作製される。ところが、この粉末表面には硬質
な酸化アルミニウム被膜が覆っており、粉末同士の結合
を阻害する。このため、粉末同士を強固に結合させるた
めには、この粉末表面の酸化アルミニウム被膜を破壊・
除去する必要がある。その方法としては、酸化被膜を
機械的に破壊して除去する方法、化学的に分断して除
去する方法が考えられる。
【0004】まずの機械的な破壊方法として、粉末を
加熱することで粉末が塑性変形できる程度にまで軟化さ
せた後、この粉末に塑性加工を与えて表面酸化被膜を破
壊し、粉末同士を結合させて固化する方法がある。この
固化方法には、熱間押出法と熱間鍛造法がある。
【0005】熱間押出法においては、十分な塑性変形を
与えて酸化被膜を分断・破壊して強固な粉末同士の結合
を得るため、粉末成形体を十分に大きな押出比で押出加
工する必要がある。ここにいう押出比とは、押出材の断
面積に対する粉末成形体の断面積の比のことである。こ
のため、押出材の寸法を変えることなく押出比を大きく
しようとすると、粉末成形体の寸法が大きくならざるを
得ない。粉末成形体が大きくなると、その内部まで均一
に昇温することが困難となり、押出加工前の予備加熱時
間が長くならざるを得ない。ところが、このように高温
で長時間加熱すると急冷凝固法によって得られた微細な
組織が合金元素の拡散によって分解し、次第に粗大化し
てしまう。このため、急冷凝固による特性が劣下すると
いった問題があり、この熱間押出法によっては、必ずし
も優れた性能を有するAl粉末合金が実現されていなか
った。
【0006】一方、熱間鍛造法においては大きな塑性流
動を与えることなく、加熱・圧縮により粉末粒子を塑性
変形させて粉末同士を結合させる必要がある。このため
には、粉末粒子を十分に高い温度にまで加熱することが
必要であり、さもなければ粉末粒子が十分に結合しない
ため、粉末粒界で割れが生じ、十分に強固な固化ができ
ない。
【0007】このように熱間鍛造法による場合も、高温
で加熱する必要がある。よって、上述と同様、急冷凝固
によって得られた微細組織が合金元素の拡散によって分
解し、次第に粗大化して急冷凝固による特性が劣化する
といった問題が生じる。
【0008】また、Al粉末合金部材の製造方法として
は、たとえば特開昭63−60265号公報で提案され
る技術もある。この技術では、粉末粒子表面に吸着して
いる水分の除去を目的として大気雰囲気中で粉末成形体
に熱処理が施される。ところが、この技術では、一旦除
去された水分が再度アルミニウムと反応して粉末表面に
強固な酸化アルミニウム被膜を生成して粉末同士の結合
を阻止することになる。また粉末表面に存在する酸化被
膜を十分に破壊して粉末同士を結合させるために粉末成
形体を加熱処理した後、予備的な熱間密閉型鍛造を経
て、合計2回の熱間鍛造が実施される。ゆえに、この技
術においては、製造工程において経済的な問題点もあ
る。
【0009】一方、の化学的な分断方法に関しては、
この方法と類似的な考えに基づく発明として、たとえば
特開昭59−64158号公報の『AlまたはAl合金
焼結部材の接合方法』や特開昭59−110482号公
報および特開昭59−110483号公報の『Al系焼
結部材の接合法』が提案されている。
【0010】これらの公報に提案される技術は、Al合
金もしくはAl系焼結体を接合する際、接合部のAl合
金中にCu(銅)、Sn(錫)、Zn(亜鉛)、Mg
(マグネシウム)およびSiなどの元素を1〜50重量
%添加する技術である。つまり、この技術は、Cuなど
の添加物を接合部に介在させる、もしくは接合部にそれ
らの元素を粉末または圧粉体の状態で挿入させた後、加
熱(焼結)することで接合部に共晶あるいは一部液相を
発生させ、これに基づく相互拡散現象の進行によりAl
合金もしくはAl系焼結体を強固に接合する方法であ
る。
【0011】しかしながら、この方法においては加熱
(焼結)温度が約520〜630℃と比較的高温で、し
かも約30〜60分の長時間加熱が必要である。このた
め、急冷凝固組織を有するAl合金粉末を用いた場合、
微細な急冷凝固組織が粗大化してしまい、本来の優れた
急冷凝固組織の性能が低減もしくは消滅してしまう。ま
た、高温で長時間加熱および加圧が必要であることや、
含有する合金組成によっては接合部に接合層を介在させ
る必要があることなどから経済性においても問題があ
る。
【0012】それゆえ、本発明の目的は、急冷Al合金
粉末同士が強固に結合し、かつ優れた急冷凝固特性が維
持され得るAl粉末合金およびその製造方法を提供する
ことである。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、種々の実
験および検討を行なった結果、Mgが0.3重量%以上
1.5重量%以下、Snが0.3重量%以上1.5重量
%以下で含有されており、かつSnの重量%に対するM
gの重量%の含有比率が0.8以上1.25以下である
Al粉末合金が、優れた強度および伸びを有することを
見い出した。
【0014】それゆえ、本発明のAl粉末合金では、M
gが0.3重量%以上1.5重量%以下、Snが0.3
重量%以上1.5重量%以下で含有され、かつSnの重
量%に対するMgの重量%の含有比率が0.8以上1.
25以下であり、その残部が実質的にAlおよび不可避
な不純物である。
【0015】本発明の好ましい1の局面に従うAl粉末
合金では、Feが2.0重量%以上7.5重量%以下、
Niが2.0重量%以上7.5重量%以下で含有され、
かつNiの重量%に対するFeの重量%の含有比率が
0.8以上1.25以下である。
【0016】本発明の好ましい他の局面に従うAl粉末
合金では、Alの一部は、Al9 FeNiからなる金属
間化合物としてAl粉末合金に含有されている。また、
Al 9 FeNiからなる金属間化合物は0.2μm以上
3.0μm以下の粒径を有し、かつAlマトリックス中
に均一に分散されている。
【0017】本発明の好ましいさらに他の局面に従うA
l粉末合金は、150℃以上200℃以下の温度におい
て40kgf/mm2 以上の引張強度を有する。
【0018】本発明の好ましいさらに他の局面に従うA
l粉末合金では、Siが5重量%以上40重量%以下で
含有されている。
【0019】本発明の好ましいさらに他の局面に従うA
l粉末合金では、Siの結晶粒は10μm以下の粒径を
有している。
【0020】本発明の好ましいさらに他の局面に従うA
l粉末合金では、Cuが1.0重量%以上4.0重量%
以下、Mnが0.2重量%以上1.0重量%以下で含有
されている。
【0021】本発明者らは、種々の実験および検討を行
なった結果、急冷凝固Al合金粉末およびその粉末成形
体を400℃以上520℃以下の温度で10秒以上保持
して粉末表面の酸化被膜を化学的に分断するとともに機
械的に破断することで、Al合金粉末同士が強固に結合
し、かつ優れた急冷凝固特性が維持され得るAl粉末合
金が得られることを見い出した。
【0022】それゆえ、本発明の1の局面に従うAl粉
末合金の製造方法は、以下の工程を備えている。
【0023】まず、Mgが0.3重量%以上1.5重量
%以下、Snが0.3重量%以上1.5重量%以下で含
有され、かつSnの重量%に対するMgの重量%の含有
比率が0.8以上1.25以下であり、その残部が実質
的にAlおよび不可避な不純物よりなるAl合金粉末お
よびその粉末成形体の少なくともいずれかが準備され
る。そしてAl合金粉末およびその粉末成形体の少なく
ともいずれかが400℃以上520℃以下の温度で10
秒以上保持される。そしてAl合金粉末およびその粉末
成形体の少なくともいずれかが熱間成形固化される。
【0024】また本発明の他の局面に従うAl粉末合金
の製造方法は、以下の工程を備えている。
【0025】まず、Mgが0.3重量%以上1.5重量
%以下、Snが0.3重量%以上1.5重量%以下で含
有され、かつSnの重量%に対するMgの重量%の含有
比率が0.8以上1.25以下であり、その残部が実質
的にAlおよび不可避な不純物よりなるAl合金粉末お
よびその粉末成形体の少なくともいずれかが準備され
る。そしてAl合金粉末およびその粉末成形体の少なく
ともいずれかが400℃以上520℃以下の温度に加熱
された金型内で熱間成形固化される。
【0026】本発明の好ましい1の局面に従うAl粉末
合金の製造方法では、Al合金粉末は、Al合金溶湯を
急冷凝固噴霧法により102 ℃/秒以上104 ℃/秒以
下の冷却速度で冷却することにより準備される。
【0027】本発明の好ましい他の局面に従うAl粉末
合金の製造方法では、粉末成形体は、Al合金粉末を常
温以上300℃以下の温度で成形することにより準備さ
れる。
【0028】本発明の好ましいさらに他の局面に従うA
l粉末合金の製造方法では、Al合金粉末およびその粉
末成形体の少なくともいずれかを400℃以上520℃
以下の温度に昇温する速度は30℃/分以上である。
【0029】本発明の好ましいさらに他の局面に従うA
l粉末合金の製造方法では、固化体は、真密度比97%
以上となるように熱間成形固化される。
【0030】本発明の好ましいさらに他の局面に従うA
l粉末合金の製造方法では、Al合金粉末は、Feを
2.0重量%以上7.5重量%以下、Niを2.0重量
%以上7.5重量%以下で含有し、かつNiの重量%に
対するFeの重量%の含有比率が0.8以上1.25以
下となるように準備される。
【0031】本発明の好ましいさらに他の局面に従うA
l粉末合金の製造方法ではAl合金粉末は、Siを5重
量%以上40重量%以下でさらに含有するように準備さ
れる。
【0032】本発明の好ましいさらに他の局面に従うA
l粉末合金の製造方法では、Al合金粉末は、Cuを
1.0重量%以上4.0重量%以下、Mnを0.2重量
%以上1.0重量%以下でさらに含有するように準備さ
れる。
【0033】
【作用】本発明のAl粉末合金では、合金の各成分およ
びその含有量について限定されている。以下、この合金
の各成分の作用とその含有量について説明する。
【0034】[SnおよびMgの含有量]Sn:Alと
共晶反応を有しないために急冷凝固法により形成された
粉末内で、SnはAlマトリックス中にAlと合金化せ
ずに単独で均一に分散する。この粉末を加熱することで
Snは液相を発生して粉末内部から粉末表面へ流出す
る。その結果、粉末表面の酸化被膜が内部から分断・破
壊され得る。
【0035】Mg:加熱により、MgはAlマトリック
ス中を容易に拡散する。このため、上述のようにSnの
液相流出により酸化被膜が破壊されると隣接する粉末間
(粉末粒界)でMgが相互拡散する。これにより、強固
な粉末同士の結合力を得ることが可能となる。
【0036】したがって、SnとMgとの両者が適正量
でAl粉末中に共存することで、初めてSnによる酸化
被膜分断・破壊効果とMgによる相互拡散効果とが得ら
れ、急冷凝固Al合金粉末同士の強固な結合を実現させ
ることができる。
【0037】Mg、Snのどちらか一方または両方の添
加量が0.3重量%未満である場合、もしくはそれらの
含有比率(Mg/Sn)が0.8未満または1.25を
越える場合には、上述したような酸化被膜の分断・破壊
効果と相互拡散による粉末間の接合力を向上させるとい
う効果とを得ることができない。Snの添加量が1.5
重量%を越える場合、粉末表面に流出したSnの液相が
常温にて凝固すると、粗大な介在物として存在するため
にかえって粉末間の結合性が損なわれてしまう。そのた
め、十分な強度を有するAl粉末合金が得られない。ま
た、Mgに関しては、1.5重量%を越えて添加して
も、上述の効果は向上しない。
【0038】それゆえ、Mgは0.3重量%以上1.5
重量%以下、Snは0.3重量%以上1.5重量%以下
で含有され、かつSnの重量%に対するMgの重量%の
含有比率(Mg/Sn)が0.8以上1.25以下でな
ければならない。
【0039】[FeおよびNiの含有量]FeとNiと
を適正量添加したAl合金粉末を急冷凝固噴霧法により
作製した場合、粒径0.2μm以上3.0μm以下の微
細なAl9 FeNiからなる球状の金属間化合物がAl
マトリックス中に均一に分散する。その結果、熱間鍛造
により固化されたAl粉末合金は150℃以上200℃
以下の温度範囲において40kgf/mm2 以上の引張
強度を有する。
【0040】Fe、Niのどちらか一方または両方の添
加量が2.0重量%未満である場合、もしくはそれらの
含有比率(Fe/Ni)が0.8未満または1.25を
越える場合には、上記のような微細なAl9 FeNiの
金属間化合物が生成されない。このために、上述したよ
うな優れた耐熱強度を得ることが困難となる。また、F
e、Niのどちらか一方または両方が7.5重量%を越
えて添加されても、耐熱性に関する効果は向上せず、か
えってAlマトリックス中に分散する金属間化合物が粗
大化もしくは針状化する。このために、固化したAl粉
末合金の靱性・延性が低下するといった問題が生じてし
まう。
【0041】したがって、Feは2.0重量%以上7.
5重量%以下、Niは2.0重量%以上7.5重量%以
下で含有され、かつNiの重量%に対するFeの重量%
の含有比率(Fe/Ni)が0.8以上1.25以下で
あることが望ましい。
【0042】[Siの含有量]Siを適正量添加したA
l合金粉末においてはそのAlマトリックス中にSiの
結晶粒が均一に分散する。このSiの結晶粒は硬質であ
るため、Al粉末合金の優れた耐摩耗性および耐焼付性
を確保する。しかもこのSiの結晶粒の粒径が10μm
以下と微細な場合には、このSiの結晶粒を含むAl粉
末合金の強度・靱性は劣化しない。
【0043】Siの結晶粒の粒径が10μmよりも大き
いと、このSiの結晶粒を含むAl粉末合金に大きな負
荷が作用した場合、このSiの結晶粒が破壊の起点とな
り、Al粉末合金の強度や靱性の低下を招く。Siの含
有量が5重量%未満である場合には、上述したような優
れた耐摩耗性・耐焼付性を確保することが困難である。
またSiを40重量%を越えて添加させても、耐摩耗性
のさらなる向上効果は認められず、かえってAl粉末合
金の強度・靱性が低下してしまう。
【0044】したがって、Siは5重量%以上40重量
%以下で含有され、またそのSiの結晶粒が10μm以
下の粒径を有していることが望ましい。
【0045】Al粉末合金の耐摩耗性を向上させる観点
からは、上記のSiの他にAl2 3 、SiC、AlN
などのセラミックスを急冷凝固法によりAlマトリック
ス中に均一に分散させた粉末を使用する方法も有効であ
る。その際の添加量としては、Siと同様の理由により
5重量%以上40重量%以下が適正である。
【0046】[CuおよびMnの含有量]CuおよびM
nは固溶強化によりAl粉末合金の強度・硬度などの機
械的特性を向上させるとともに、Al粉末合金のAlマ
トリックス中に析出して上述のAl9 FeNiの金属間
化合物の粗大化を抑制する作用を有している。
【0047】Cuの添加量が1重量%未満の場合、機械
的特性の向上および金属間化合物の粗大化を抑制すると
いう上述の効果が不十分となる。またCuを5重量%を
越えて添加しても、その効果は向上しない上、耐食性が
低下してしまう。Mnの添加量が0.2重量%未満の場
合、その効果は不十分である。またMnを1.0重量%
を越えて添加しても、その効果は向上しない上、粗大な
晶出物が生じるため、逆にAl粉末合金の強度・靱性が
低下してしまう。
【0048】したがって、Cuは1.0重量%以上4.
0重量%以下、Mnは0.2重量%以上1.0重量%以
下で含有されることが望ましい。
【0049】次に、本発明のAl粉末合金の製造方法で
は、製造条件が限定されている。以下、これらの製造条
件の限定の意味について説明する。
【0050】[原料粉末]本発明のAl粉末合金の製造
方法では、所定の成分組成を有するAl合金粉末のみを
成形・固化することによりAl粉末合金が得られる。こ
のため、原料となるAl合金粉末とAl粉末合金とは同
一の成分組成を有する。
【0051】所定の成分からなるAl粉末合金(P/M
(Powder Metal)合金)と同一の組成を有するI/M
(Ingot Metal :溶製材)合金においては急冷凝固の効
果がない。またこのI/M合金では、SnやMgをAl
マトリックス中へ均一に分散させることや、金属間化合
物(Al9 FeNi)もしくはSiをAlマトリックス
中に微細かつ均一に析出させることができない。このた
め、I/M合金では、上記の特性を確保することが困難
である。したがって、本発明のAl粉末合金の製造方法
においては、急冷凝固されたAl合金粉末が原料とされ
る。
【0052】なお、急冷凝固させる手法としてたとえば
急冷凝固噴霧法がある。この急冷凝固噴霧法における粉
末の冷却速度(急冷度)が、102 ℃/秒よりも小さい
場合には、Alマトリックス中に分散する金属間化合物
(Al9 FeNi)およびSiの結晶粒が粗大化する。
このため、これにより得られるAl粉末合金の強度・靱
性などが低下してしまう。また粉末の冷却速度を104
℃/秒よりも大きくしても、これにより得られるAl粉
末合金の強度・靱性などのさらなる顕著な向上は認めら
れず、その上粉末のコストが高くなるために経済性にお
いて問題が生じる。
【0053】したがって、急冷凝固噴霧法における粉末
の冷却速度は、102 ℃/秒以上104 ℃/秒以下であ
ることが望ましい。
【0054】上記の成分組成を有する急冷凝固Al合金
粉末を用いて熱間鍛造法や熱間コイニング法により粉末
固化体を製造する場合、FeやNiなどの遷移元素のA
lマトリックスに対する拡散係数が小さいこと、大気中
で加熱すると粉末表面に酸化被膜が再生成すること、さ
らに長時間加熱保持により金属間化合物が粗大化して靱
性が低下することなどから、以下に示す製造条件が適正
である。
【0055】[酸化被膜の破壊]本発明のAl粉末合金
の製造方法は、Al合金粉末表面の酸化被膜を機械的か
つ化学的に破壊することにより、急冷凝固の特性を維持
し、かつ粉末同士が強固に接合されたAl粉末合金を得
る方法である。この製造方法には、2つの態様がある。
【0056】製法I:酸化被膜の機械的破壊と化学的破
壊とを別工程で行なう。 製法II:酸化被膜の機械的破壊と化学的破壊とを同工
程で行なう。
【0057】製法Iについて 上記の成分組成を有するAl合金粉末およびその粉末成
形体の少なくともいずれかが400℃以上520℃以下
の温度範囲にまで急速に昇温され、その温度にて10秒
以上保持される。この後、そのAl合金粉末およびその
粉末成形体の少なくともいずれかを熱間成形固化して固
化体が得られる。
【0058】まず、所定温度範囲への昇温と加熱保持と
によって、急冷凝固時における微細なSiの結晶粒や金
属間化合物などの粗大化が抑制され、かつ粉末中に分散
するSnの液相生成およびMgの相互拡散の効果が発現
する。よって、急冷凝固の特性が維持されたまま、粉末
表面の酸化被膜が化学的に分断・破壊され、しかも粉末
が塑性変形しやすい状態になる。それゆえ、熱間成形固
化時にAl合金粉末などをそれほど高い温度に加熱しな
くとも、熱間成形固化により容易に機械的に表面酸化被
膜が破壊されて十分強固な粉末結合を得ることができ
る。したがって、急冷凝固により得られた微細組織を損
なうことのないような熱履歴(加熱温度・時間)の下で
粉末同士を強固に結合することができる。
【0059】また塑性変形しやすい状態になるため、こ
の熱間成形固化をたとえば閉塞金型を用いて熱間鍛造法
により行なった場合には、これにより得られる固化体は
相対密度97%以上に緻密化される。その結果、十分な
強度・靱性を有する良好なAl粉末合金を製造すること
が可能となる。
【0060】加熱温度範囲に関して、加熱温度が520
℃を越えると、Al合金粉末およびその粉末成形体内の
微細なSiの結晶粒や金属間化合物が粗大化してしま
う。また加熱温度が400℃未満の場合には、Al合金
粉末のAlマトリックス中に分散しているSnの液相生
成およびMgの拡散現象が抑制される。このため、Al
合金粉末表面の酸化被膜が十分に分断・破壊されず、粉
末同士の強固な結合が得られないため、Al粉末合金の
強度が低下する。
【0061】加熱保持時間に関して、400℃以上52
0℃以下の温度範囲にて10秒未満の加熱保持では、A
l合金粉末のAlマトリックス中に分散しているSnの
液相生成およびMgの拡散現象が抑制される。このた
め、Al合金粉末表面の酸化被膜が十分に分断・破壊さ
れず、粉末同士の強固な結合が得られないため、Al粉
末合金の強度が低下する。
【0062】ただし、上記温度範囲では長時間加熱を施
しても、Siの結晶粒や金属間化合物の顕著な粗大化は
生じない。しかし、経済性の問題があることから、加熱
保持時間は、1hr.以下程度であることが好ましい。
【0063】加熱時に上記の温度範囲に昇温する速度
は、30℃/分以上であることが望ましい。このような
昇温条件では、粉末同士の結合を阻害するような顕著な
粉末表面の酸化被膜の再生成は生じない。
【0064】また、30℃/分未満の昇温速度で加熱す
る場合には、Al合金粉末の酸化抑制の観点から、その
加熱雰囲気は窒素(N)もしくはアルゴン(Ar)など
の不活性ガス雰囲気であることが望ましい。
【0065】なお、粉末が硬質である場合には、型押し
・成形の際、粉末成形体に亀裂が発生、もしくは部分的
に粉末が欠落するなどの問題が生じる。このような場合
には、Al合金粉末を300℃以下の温度にて焼き鈍し
加熱し、軟化した後に型押し・成形することが好まし
い。この場合、300℃を越えて加熱すると、Al合金
粉末表面が著しく酸化し、酸化被膜が再生成してしま
う。このため、かえって粉末同士の結合性が低下し、十
分な強度を有するAl粉末合金を製造することができな
くなる。
【0066】製法IIについて 製法IIは製法Iよりもさらに経済性に優れていること
を特徴とする。つまり、所定の組成を有する急冷凝固A
l合金粉末およびその粉末成形体の少なくともいずれか
が400℃以上520℃以下の温度範囲に加熱された金
型内に直接充填された後、直ちに加圧圧縮により熱間成
形固化される。このAl合金粉末およびその粉末成形体
の少なくともいずれかの熱間成形固化時に表面酸化被膜
の機械的破壊および化学的破壊を進行させることによ
り、熱間成形固化前の昇温加熱・加熱保持工程を省略す
ることができる。
【0067】なお、加熱された金型に粉末などを充填
し、加圧圧縮するまでに金型からの熱伝導により粉末な
どは十分に所定の温度域にまで加熱される。このため、
上述したようなSnの液相生成およびMgの相互拡散の
効果が発現し、粉末表面の酸化被膜が化学的に分断・破
壊され、粉末が塑性変形しやすい状態になる。この状態
で、金型内で加圧圧縮により粉末に塑性変形が与えられ
るため、少ない熱量で粉末表面の酸化被膜は機械的にも
破壊されることになる。
【0068】その結果、閉塞金型内での加圧圧縮により
粉末固化体が真密度比97%以上に緻密化され、十分な
強度・靱性を有する良好なAl粉末合金を製造すること
が可能となる。
【0069】なお、粉末固化体は真密度比97%未満の
状態では固化体内に存在する空孔が破壊の起点となり合
金の強度低下を誘発する。したがって、固化体が真密度
比97%以上に緻密となるように熱間成形固化を行なう
ことが望ましい。
【0070】さらに、本合金系では溶体化時効硬化型マ
トリックスを用いることが可能である。このため150
℃以下の温度域でのAl粉末合金の強度・硬度を向上さ
せるために、必要に応じてT4熱処理もしくはT6熱処
理を実施することが有効である。
【0071】
【実施例】実施例1 図1は、本発明の実施例1におけるAl粉末合金の製造
方法を示すブロック図である。
【0072】図1を参照して、まず表1に示す合金組成
を有する急冷凝固Al合金粉末(平均粒径80μm)を
準備した(ステップ11)。この急冷凝固アルミニウム
合金粉末を常温にて45×10×10mmに型押し成形
(面圧:4t/cm2 )し、成形体とした(ステップ1
2)。この成形体を高周波加熱炉にて大気中で500℃
まで昇温加熱(昇温速度100℃/分)し、その温度
(500℃)にて30秒間保持した(ステップ13)。
その後、直ちに成形体を閉塞金型内(金型温度280
℃)に挿入し、加圧圧縮(面圧:7t/cm2 )により
46×11×6mmの形状(真密度比100%)に熱間
固化した(ステップ14)。
【0073】このようにして作製したAl粉末合金の常
温における引張強度(UTS)および破断伸びを測定し
た。その測定結果を同表1に示す。
【0074】
【表1】
【0075】本発明材No.1〜6は適正量のSnおよ
びMgを含有する急冷凝固Al合金粉末を適正な製造条
件の下で熱間粉末固化することにより得られたAl粉末
合金であり、各々優れた引張強度および伸びを示してい
る。
【0076】一方、比較材No.7〜10では、以下の
ように良好な引張強度・伸びが得られなかった。
【0077】No.7:Sn、Mg量が少ないために粉
末表面の酸化被膜の分断・破壊効果および相互拡散効果
が十分に発現しない結果、粉末同士の強固な結合が得ら
れずに良好な強度・伸びが得られなかった。
【0078】No.8:Sn量が多いために加熱により
合金の旧粉末粒界に流出したSn相が凝固し、粗大な介
在物を生じた結果、良好な強度・伸びが得られなかっ
た。
【0079】No.9:Sn/Mgの含有比率が適正で
ないために、粉末表面の酸化被膜の分断・破壊効果およ
び相互拡散効果が十分に発現しない結果、粉末同士の強
固な結合が得られずに良好な強度・伸びが得られなかっ
た。
【0080】No.10:Sn/Mgの含有比率が適正
でないために、粉末表面の酸化被膜の分断・破壊効果お
よび相互拡散効果が十分に発現しない結果、粉末同士の
強固な結合が得られずに良好な強度・伸びが得られなか
った。
【0081】実施例2 表2に示す合金組成を有する急冷凝固Al合金粉末(平
均粒径80μm)を常温にて45×10×10mmに型
押し成形(面圧:4t/cm2 )し、成形体を得た。こ
の成形体を高周波加熱炉を用いて大気中で500℃まで
昇温加熱(昇温速度100℃/分)し、その温度で30
秒間保持した。その後、直ちにこの成形体を閉塞金型内
(金型温度280℃)に挿入し、加圧圧縮(面圧:7t
/cm2)により46×11×6mm形状(真密度比1
00%)に熱間固化した。
【0082】このようにして作製したAl粉末合金の常
温および180℃における引張強度(UTS)を測定し
た。またAlマトリックス中に分散するAl9 FeNi
金属間化合物の平均粒径(D0)を調査した。その結果
を同表2に示す。なお、180℃での引張試験について
は、試料に180℃の温度で100時間の加熱処理を施
した後に実施した。
【0083】
【表2】
【0084】本発明材No.1〜5は適正量のSn、M
gおよびFe、Niを含有する急冷凝固Al合金粉末を
適正な製造条件の下で熱間粉末固化した合金であり、各
々常温および高温での優れた引張強度を有している。特
に、Alマトリックス中におけるAl9 FeNiの金属
間化合物が、各合金において3μm以下と微細な平均粒
径を有し、かつ均一に分散する結果、180℃での引張
強度が40kgf/mm2 を越えている。
【0085】一方、比較材No.6〜9については、以
下のように良好な引張強度が得られなかった。
【0086】No.6:Fe、Ni量が少ないために耐
熱性に乏しく、その結果180℃において良好な引張強
度が得られなかった。
【0087】No.7:Fe、Ni量が多いために金属
間化合物Al9 FeNiが粗大となり、180℃におい
て良好な引張強度が得られなかった。
【0088】No.8:Fe/Niの含有比率が適正で
ないために、金属間化合物Al9 FeNiが粗大化し、
その結果180℃において良好な引張強度が得られなか
った。
【0089】No.9:Fe/Niの比率が適正でない
ために金属間化合物Al9 FeNiが粗大化し、その結
果180℃における良好な引張強度が得られなかった。
【0090】実施例3 表3に示す合金組成を有する急冷凝固Al合金粉末(平
均粒径80μm)を常温にて45×10×10mmに型
押し成形(面圧:4t/cm2 )し、成形体を得た。こ
の成形体を高周波加熱炉を用いて大気中で500℃まで
昇温加熱(昇温速度100℃/分)し、その温度(50
0℃)で30秒間保持した。その後、直ちにこの成形体
を閉塞金型内(金型温度280℃)に挿入し、加圧圧縮
(面圧:7t/cm2 )により46×11×6mm形状
(真密度比100%)に熱間固化した。ただし、表3中
のNo.8および9の試料は、大気中にて550℃まで
加熱し、その温度にて30秒間保持した後に、上述した
条件下にて熱間固化することにより作製した。
【0091】また表3中のNo.5の試料では、Siの
代わりに平均粒径5μmのAl2 3 を20重量%含有
した粉末を使用した。
【0092】このようにして作製したAl粉末合金の常
温での引張強度(UTS)および破断伸び、さらに耐摩
耗特性を評価した。この耐摩耗特性の評価については、
図3に示すようなリングオンリング摩耗試験機を用い
た。
【0093】図3を参照して、上試料1と下試料3とを
準備し、上試料1を固定し、上試料1と下試料3との摺
動面に加圧力P(=60kgf/cm2 )を与えながら
下試料3を周速度v(=2.0m/sec.)で回転さ
せ、上試料1と下試料3とを1hr.摺動させた。な
お、この摺動はATFオイル中で行なった。
【0094】またAl素地(マトリックス)中に分散す
るSiの結晶粒の平均粒径(D1)を光学顕微鏡観察に
より調査した。その結果を同表3に示す。
【0095】
【表3】
【0096】本発明材No.1〜5は適正量のSn、M
gおよびSi(No.5はAl2 3 )を含有する急冷
凝固Al合金粉末を適正な製造条件の下で熱間粉末固化
した合金であり、各々常温での引張強度、伸びおよび耐
摩耗性に優れている。特に、Alマトリックス中のSi
の結晶粒が、各合金において10μm以下と微細な平均
粒径を有し、かつ均一に分散する結果、ATFオイル中
での共摺摺動(同一材料同士での摩擦摺動)が可能であ
る。
【0097】一方、比較材No.6〜11では、以下の
ように引張強度、伸びおよび耐摩耗性のいずれかにおい
て良好な特性を得ることができなかった。
【0098】No.6:Si量が0であるために相手剤
と焼付き(凝着)を生じ、その結果、摩耗損傷量が著し
く多かった。
【0099】No.7:Si量が少ないために相手剤と
焼付き(凝着)を生じ、その結果、摩耗損傷量が著しく
多かった。
【0100】No.8:成形体の加熱温度が550℃と
高いために、加熱中にSiの結晶粒が25μm程度に粗
大化し、その結果、Al粉末合金において良好な強度・
伸びが得られなかった。
【0101】No.9:成形体の加熱温度が550℃と
高いために、加熱中にSiの結晶粒が30μm程度に粗
大化し、その結果、Al粉末合金において良好な強度・
伸びが得られなかった。
【0102】No.10:Sn/Mgの含有比率が適正
でないために、粉末表面の酸化被膜の分断・破壊効果お
よび相互拡散効果が十分に発現しない結果、粉末同士の
強固な結合が得られずに、良好な強度・伸びが得られな
かった。
【0103】No.11:Sn/Mgの含有比率が適正
でないために、粉末表面の酸化被膜の分断・破壊効果お
よび相互拡散効果が十分に発現しない結果、粉末同士の
強固な結合が得られずに良好な強度・伸びが得られなか
った。
【0104】実施例4 表4に示す合金組成を有する急冷凝固Al合金粉末(平
均粒径80μm)を常温にて45×10×10mmに型
押し成形(面圧:4t/cm2 )し、成形体を得た。こ
の成形体を高周波加熱炉を用いて大気中で500℃まで
昇温加熱(昇温速度:100℃/分)し、その温度(5
00℃)で30秒間保持した。その後、ただちにこの成
形体を閉塞金型内(金型温度280℃)に挿入し、加圧
圧縮(面圧:7t/cm2 )により46×11×6mm
形状(真密度比100%)に熱間固化した。このように
作製したAl粉末合金の常温における引張強度(UT
S)および破断伸びを測定した。その結果を同表4に示
す。
【0105】
【表4】
【0106】本発明材No.1〜4は適正量のSn、M
gおよびFe、NiさらにSiを含有する急冷凝固Al
合金粉末を適正な製造条件の下で熱間粉末固化した合金
であり、各々常温での引張強度・伸びに優れている。
【0107】一方、比較材No.5〜7については、以
下のように良好な引張強度・伸びが得られなかった。
【0108】No.5:Sn量が少なく、またMg量が
0であるために粉末表面の酸化被膜の分断・破壊効果お
よび相互拡散効果が発現しない結果、粉末同士の強固な
結合が得られずに良好な強度・伸びが得られなかった。
【0109】No.6:Sn/Mgの含有比率が適正で
ないために、粉末表面の酸化被膜の分断・破壊効果およ
び相互拡散効果が十分に発現しない結果、粉末同士の強
固な結合が得られずに良好な引張強度・伸びが得られな
かった。
【0110】No.7:Sn/Mgの含有比率が適正で
ないために、粉末表面の酸化被膜の分断・破壊効果およ
び相互拡散効果が十分に発現しない結果、粉末同士の強
固な結合が得られずに良好な引張強度・伸びが得られな
かった。
【0111】実施例5 表5に示す合金組成を有する急冷凝固Al合金粉末(平
均粒径80μm)を表6に記載する各製造条件に基づき
熱間固化した。これにより得られたAl粉末合金の真密
度比、常温における引張強度(UTS)および破断伸び
を測定した。その結果を同表6に示す。
【0112】ただし、合金No.3のみ熱間固化した試
料にT6熱処理(470℃×2hr.→水冷→175℃
×8hr.→空冷)を施した。
【0113】また表6中において温度の単位は℃であ
り、面圧の単位はt/cm2 であり、昇温速度の単位は
℃/分であり、保持時間の単位は秒である。
【0114】また、表6において合金No7、8および
15は、図2に示すように、準備された急冷凝固Al合
金粉末(ステップ21)を粉末成形した後、直接熱間固
化(ステップ22)したものである。
【0115】
【表5】
【0116】
【表6】
【0117】本発明材No.1〜8は本発明における適
正な製造条件により適正な合金組成を有する急冷凝固A
l合金粉末を熱間固化したものである。また本発明の製
造方法によると真密度比98%以上に粉末を固化するこ
とが可能となり、常温での引張強度・伸びの双方に優れ
たAl粉末合金を製造することが可能となる。さらに、
適正量のCu、Mnを添加した粉末を熱間固化した合金
にT6熱処理を施すことでさらなる強度向上が可能であ
る。
【0118】一方、所定の組成を有する急冷凝固Al合
金粉末を比較製法により熱間固化した比較材No.9〜
15については、以下のように優れた引張強度および伸
びを得ることができなかった。
【0119】No.9:粉末成形体の加熱温度が380
℃と低いために、Sn、Mgの添加効果が十分に発現し
ない結果、粉末同士の強固な結合が得られず、優れた引
張強度・伸びが得られなかった。
【0120】No.10:粉末成形体の加熱温度が56
0℃と高いために金属間化合物Al 9 FeNiおよびS
iの結晶粒が粗大化した結果、優れた引張強度・伸びが
得られなかった。
【0121】No.11:大気雰囲気中において昇温速
度が10℃/分と小さい条件下で加熱・保持したため、
粉末表面に酸化被膜が再生成し、その結果、優れた引張
強度・伸びが得られなかった。
【0122】No.12:粉末成形体の加熱保持時間が
2秒と短いために、Sn、Mgの添加効果が十分に発現
しない結果、粉末同士の強固な結合が得られず、優れた
引張強度・伸びが得られなかった。
【0123】No.13:粉末成形体の加熱保持時間が
5秒と短いために、Sn、Mgの添加効果が十分に発現
しない結果、粉末同士の強固な結合が得られず、優れた
引張強度・伸びが得られなかった。
【0124】No.14:熱間固化時の加圧力が2t/
cm2 と小さいために、粉末同士が十分強固に結合せ
ず、その結果、粉末固化体の真密度比が89%となり、
その内部に空孔が存在するため、優れた引張強度・伸び
が得られなかった。
【0125】No.15:加熱された金型内に粉末成形
体を直接挿入し、加圧圧縮する製法において金型温度が
360℃と低く、粉末成形体が十分に加熱されないため
にSnおよびMgの添加効果が十分に発現しない。その
結果、粉末同士が十分に結合せず、粉末固化体の真密度
比が95%となりその内部に空孔が存在するため、優れ
た引張強度・伸びが得られなかった。
【0126】
【発明の効果】本発明では、適正量のSnおよびMgを
含有するAl合金粉末を適正な条件に基づいて昇温加熱
することで、Snの液相流出による表面酸化被膜の分断
・破壊効果とMgの相互拡散効果とにより粉末同士が強
固に結合するとともに、粉末が塑性変形しやすくなる。
その結果、小さい熱履歴でAl合金粉末を成形固化する
ことが可能となり、急冷凝固法の特性を維持し、かつ粉
末同士が強固に結合したAl粉末合金を得ることができ
る。また、Fe、Niなどの遷移金属元素やSiやセラ
ミックスなどの硬質粒子を分散させることで優れた耐熱
性や耐摩耗性をも有するAl粉末合金を製造することも
可能である。
【0127】したがって、本発明の材料の用途として
は、コンプレッサ用摺動部品(ベーン・ロータ)、オイ
ルポンプ用部品やピストン・シリンダ・コンロッド等の
エンジン用部品など耐摩耗摺動性能や耐熱性が要求され
るような自動車部品・家電部品が考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のAl粉末合金の製造方法の1の態様を
示すブロック図である。
【図2】本発明のAl粉末合金の製造方法の他の態様を
示すブロック図である。
【図3】リングオンリング摩耗試験器による耐摩耗特性
の測定の様子を示す図である。

Claims (17)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Mgが0.3重量%以上1.5重量%以
    下、Snが0.3重量%以上1.5重量%以下で含有さ
    れており、かつSnの重量%に対するMgの重量%の含
    有比率(Mg/Sn)が0.8以上1.25以下であ
    り、その残部が実質的にAlおよび不可避な不純物であ
    る、アルミニウム粉末合金。
  2. 【請求項2】 Feが2.0重量%以上7.5重量%以
    下、Niが2.0重量%以上7.5重量%以下で含有さ
    れており、かつNiの重量%に対するFeの重量%の含
    有比率(Fe/Ni)が0.8以上1.25以下であ
    る、請求項1に記載のアルミニウム粉末合金。
  3. 【請求項3】 前記Alの一部はAl9 FeNiからな
    る金属間化合物として当該アルミニウム粉末合金に含有
    されており、前記Al9 FeNiからなる金属間化合物
    は0.2μm以上3.0μm以下の粒径を有し、かつ均
    一に分散されている、請求項2に記載のアルミニウム粉
    末合金。
  4. 【請求項4】 150℃以上200℃以下の温度におい
    て40kgf/mm 2 以上の引張強度を有する、請求項
    3に記載のアルミニウム粉末合金。
  5. 【請求項5】 Siが5重量%以上40重量%以下で含
    有されており請求項1および2のいずれかに記載のアル
    ミニウム粉末合金。
  6. 【請求項6】 前記Siの結晶粒は10μm以下の粒径
    を有している、請求項5に記載のアルミニウム粉末合
    金。
  7. 【請求項7】 Cuが1.0重量%以上4.0重量%以
    下、Mnが0.2重量%以上1.0重量%以下で含有さ
    れている。請求項1、2および5のいずれかに記載のア
    ルミニウム粉末合金。
  8. 【請求項8】 Mgが0.3重量%以上1.5重量%以
    下、Snが0.3重量%以上1.5重量%以下で含有さ
    れており、かつSnの重量%に対するMgの重量%の含
    有比率(Mg/Sn)が0.8以上1.25以下であ
    り、その残部が実質的にAlおよび不可避な不純物であ
    るアルミニウム合金粉末およびその粉末成形体の少なく
    ともいずれかを準備する工程と、 前記アルミニウム合金粉末およびその粉末成形体の少な
    くともいずれかを400℃以上520℃以下の温度で1
    0秒以上保持する工程と、 前記アルミニウム合金粉末およびその粉末成形体の少な
    くともいずれかを熱間成形固化する工程とを備えた、ア
    ルミニウム粉末合金の製造方法。
  9. 【請求項9】 Mgが0.3重量%以上1.5重量%以
    下、Snが0.3重量%以上1.5重量%以下で含有さ
    れており、かつSnの重量%に対するMgの重量%の含
    有比率(Mg/Sl)が0.8以上1.25以下であ
    り、その残部が実質的にAlおよび不可避な不純物であ
    るアルミニウム合金粉末およびその粉末成形体の少なく
    ともいずれかを準備する工程と、 前記アルミニウム合金粉末およびその粉末成形体の少な
    くともいずれかを400℃以上520℃以下の温度に加
    熱された金型内で熱間成形固化する工程とを備えたアル
    ミニウム粉末合金の製造方法。
  10. 【請求項10】 前記アルミニウム合金粉末はアルミニ
    ウム合金溶湯を急冷凝固噴霧法により102 ℃/秒以上
    104 ℃/秒以下の冷却速度で冷却することにより準備
    される、請求項8および9のいずれかに記載のアルミニ
    ウム粉末合金の製造方法。
  11. 【請求項11】 前記粉末成形体は、前記アルミニウム
    合金粉末を常温以上300℃以下の温度で成形すること
    により準備される、請求項8および9のいずれかに記載
    のアルミニウム粉末合金の製造方法。
  12. 【請求項12】 前記アルミニウム合金粉末およびその
    粉末成形体の少なくともいずれかを400℃以上520
    ℃以下の温度に昇温する速度は30℃/分以上である、
    請求項8および9のいずれかに記載のアルミニウム粉末
    合金の製造方法。
  13. 【請求項13】 前記固化体は、真密度比が97%以上
    となるように熱間成形固化される、請求項8および9の
    いずれかに記載のアルミニウム粉末合金の製造方法。
  14. 【請求項14】 前記アルミニウム合金粉末は、Feが
    2.0重量%以上7.5重量%以下、Niが2.0重量
    %以上7.5重量%以下で含有されており、かつNiの
    重量%に対するFeの重量%の含有比率(Fe/Ni)
    が0.8以上1.25以下となるように準備される、請
    求項8および9のいずれかに記載のアルミニウム粉末合
    金の製造方法。
  15. 【請求項15】 前記アルミニウム合金粉末は、前記A
    lの一部がAl9 FeNiからなる金属間化合物で当該
    アルミニウム粉末合金に含有されており、前記Al9
    eNiからなる金属間化合物は0.2μm以上3.0μ
    m以下の粒径を有し、かつ均一に分散されているように
    準備される、請求項8、9および14のいずれかに記載
    のアルミニウム粉末合金の製造方法。
  16. 【請求項16】 前記アルミニウム合金粉末は、Siが
    5重量%以上40重量%以下で含有されるように準備さ
    れる、請求項8、9のいずれかに記載のアルミニウム粉
    末合金の製造方法。
  17. 【請求項17】 前記アルミニウム合金粉末は、Cuが
    1.0重量%以上4.0重量%以下、Mnが0.2重量
    %以上1.0重量%以下で含有されるように準備され
    る、請求項8、9、14および15のいずれかに記載の
    アルミニウム粉末合金の製造方法。
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