JP3058200B2 - インクジェット記録装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明はノズルより微少なイ
ンク滴を噴射するインクジェット記録ヘッドのノズル面
をクリーニングする擦り部材を具備したクリーナーを有
するインクジェット記録装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】インクジェット記録ヘッドのノズルから
記録媒体に対し微小なインク滴を噴射し所望の文字・図
形等の画像を記録するインクジェット記録装置は、記録
動作時に、インクジェット記録ヘッドが記録媒体と近接
するために、インク滴が記録媒体と衝突した際発生する
インクの飛沫がインクジェット記録ヘッドのノズル面に
跳ね返り、ノズル面を汚染する。特にノズル近傍のイン
クに微弱な圧力変化を加えることによってインク滴を噴
射せしめるオンデマンド型のインクジェット記録ヘッド
にあっては、前述の如くインク滴の噴射が微弱な加圧力
によるために、記録媒体と数ミリ程度の間隙のみしか形
成されておらず、インク飛沫の跳ね返りが多いにも拘ら
ず、一旦目詰まりが発生するとこの目詰まりを容易に自
己復帰することはできない。

【０００３】またインクジェット記録ヘッドのノズルの
目詰まりを予防あるいは回復するために非印字動作中に
ノズルより排出されたインクがノズル面に残留すること
によってもノズル面を汚染する。

【０００４】このようなインクジェット記録ヘッドに於
けるノズル面の汚染は記録媒体の繊維質や塵埃の付着を
招き、インクジェット記録装置の長期間の使用において
ノズルの目詰まりの原因となったり、インクジェット記
録ヘッドにインクの噴射不能や噴射曲がり等の悪影響を
及ぼすことがあった。

【０００５】従来、インクジェット記録ヘッドとクリー
ニングを行うへら状ワイパを有するインクジェット記録
装置およびそのクリーニング手段の構成は、例えば、図
５に示す実開昭５８−１２８０３４号公報に記載され
た、へら状ワイパ３ｂから成るクリーナーを有するもの
が知られていた。

【０００６】即ち、クリーナーはゴム或いは発泡プラス
チック等のへら状ワイパ３ｂから成り、その自由端３ｄ
がインクジェット記録ヘッド２の印字領域と待機位置を
結ぶ移動経路に突出し、該自由端３ｄに移動中のインク
ジェット記録ヘッド２のノズル面２ａが図５（ｂ）のよ
うに摺接することによって付着インクを剥ぎ取り若しく
は拭い取りクリーニングするものである。

【０００７】一方、インクジェット記録ヘッド２のノズ
ル面２ａに付着するのは液状のインクだけとは限らず、
インク溶剤の蒸発によるインク染料や繊維質の乾燥被着
等があり、このようなノズル面２ａの汚染についても対
処しなければならない。従って、クリーナーとしては実
開昭５８−１２８０３４号公報に開示された如く湿潤状
態に設定された多孔質弾性体によって構成された擦り手
段３ｂが好適である。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、擦り部
材を湿潤状態に設定するための特別な機構や構造が必要
である。また擦り部材を常に湿潤状態に設定するため擦
り部材が飽和状態になってしまう。この状態で擦り部材
がインクジェット記録ヘッドのノズル面に当接するとノ
ズル面にインクや清浄液の薄い層を形成してしまう場合
があり、ノズル面のインクを充分に除去することができ
ない。

【０００９】そこで本発明はこのような問題点を解決す
るもので、その目的とするところはインクの乾燥に伴い
ノズル面に強固に被着した固化物を除去するために、擦
り部材を、単純な構造で容易に湿潤状態に設定すること
ができるクリーニング手段を有するインクジェット記録
装置を提供することにある。

【００１０】

【課題を解決するための手段】このような課題を解消す
るために本発明においては、インク滴をノズルより噴射
するインクジェット記録ヘッドと、該インクジェット記
録ヘッドの移動経路に突出しインクジェット記録ヘッド
のノズル面をクリーニングする擦り部材を有するクリー
ナーと、該クリーナーを前記インクジェット記録ヘッド
のノズル面に当接可能な位置と当接しない位置とに移動
させる駆動手段とを有するインクジェット記録装置にお
いて、前記擦り部材がインク吸収性を備えた材料により
構成され、前記インクジェット記録ヘッドから噴射され
たインクを吸収して湿潤状態に設定するようにした。

【００１１】

【作用】本発明の上記の構成によれば、インクの乾燥に
伴いノズル面に強固に被着した固着物を除去するための
擦り部材を、単純な構造で容易に湿潤状態に設定するこ
とができる。

【００１２】

【実施例】以下に本発明の実施例を図面にもとづいて説
明する。

【００１３】図１は本発明のインクジェット記録装置１
の実施例を示す。図においてインクジェット記録ヘッド
２は印字中は印字領域６にあり、印字が一定時間以上行
われない場合にはインク吸引手段５のある待機位置７に
移動する。擦り部材３ａは印字領域６と待機位置７の間
に配置されている。インクジェット記録ヘッド２はキャ
リッジモータ８によって矢印Ａの方向に移動することが
できる。また印字紙などの印字媒体１１はプラテン１０
に巻き付けられ、紙送りモータ９によって矢印Ｂの方向
に移動することができる。

【００１４】図２は、本発明の擦り部材３ａがインクジ
ェット記録ヘッド２のノズル面２ａに当接する過程を示
した平面図である。

【００１５】図２（ａ）は、インクジェット記録ヘッド
２が印字領域６内で印字を行っている場合を示す。ある
一定時間以上印字が行われない場合には、インクジェッ
ト記録ヘッド２は待機位置７に戻る。

【００１６】図２（ｂ）は、インクジェット記録ヘッド
２が、印字領域６と待機位置７の間に配置された擦り部
材３ａの前を通過しているところを示す。通常擦り部材
３ａは、バネ１２によって後方に引かれているため、イ
ンクジェット記録ヘッド２には接触しない。

【００１７】図２（ｃ）は、擦り部材３ａによってクリ
ーニングを行なう場合を示している。クリーニングが行
なわれる場合、インクジェット記録ヘッド２は、まず待
機位置７において吸引手段５によってインクを吸引され
る。次にインクジェット記録ヘッド２は、電磁式プラン
ジャー１３によって前方に押し出された擦り部材３ａの
前を通過する。この時インクジェット記録ヘッド２は擦
り部材３ａによってノズル面２ａがクリーニングされ
る。

【００１８】図３は、上記のクリーニング動作の流れを
表す流れ図であり、インク吸引後に擦り部材３ａによっ
てノズル面２ａをクリーニングする場合を示す。また図
３（ａ）は擦り部材３ａにインクジェット記録ヘッド２
からインクを噴射させることによって擦り部材３ａを湿
潤状態に設定する場合を示し、図３（ｂ）はインクジェ
ット記録ヘッド２のノズル面２ａに停留させたインクを
擦り部材３ａで吸収させることによって擦り部材３ａを
湿潤状態に設定する場合を示す。

【００１９】図３（ａ）について説明する。クリーニン
グ動作が開始される（ステップ２０）と、まずインクジ
ェット記録ヘッド２は待機位置７に移動する（ステップ
２１）。クリーニング動作が開始されたときに、インク
ジェット記録ヘッド２が待機位置７に移動済みである場
合には、この動作は行なわれない。次に吸引動作を行な
い（ステップ２２）、吸引動作が終了すると、インクジ
ェット記録ヘッド２は擦り部材３ａに向かってインクを
噴射しながら印字領域６へ移動する（ステップ２３）。
したがってこのときインクジェット記録ヘッド２は、擦
り部材３ａの端面に縦線を印字するようにインクジェッ
ト記録ヘッド２が駆動される。次に擦り部材３ａが前方
に押し出され（ステップ２４）、続いてインクジェット
記録ヘッド２が、待機位置７へ移動する（ステップ２
５）ことによってクリーニングが行なわれ、擦り部材３
ａが後方に引かれて（ステップ２６）、図３（ａ）に示
したクリーニング動作は終了する（ステップ２７）。
尚、クリーニング動作が吸引動作の前であっても、吸引
動作とは無関係であっても良いことはいうまでもない。

【００２０】図３（ｂ）について説明する。インクジェ
ット記録ヘッド２のノズル面２ａに停留させたインクを
擦り部材３ａに吸収させることによって湿潤状態に設定
する場合には、クリーニング動作が開始される（ステッ
プ２８）と、インクジェット記録ヘッド２が待機位置７
に移動（ステップ２９）した後、吸引動作（ステップ３
０）を行う。吸引動作の後、擦り部材３ａが前方に押し
出され（ステップ３１）、次にインクジェット記録ヘッ
ド２が印字領域６へ移動する（ステップ３２）ことによ
って擦り部材３ａはノズル面２ａに停留したインクを吸
収して湿潤状態に設定される。したがってこのステップ
によって、擦り部材３ａの湿潤状態への設定と、擦り動
作の両方を同時に行うことができる。次に擦り部材３ａ
が後方に引かれて（ステップ３３）、図３（ｂ）に示し
たクリーニング動作は終了する（ステップ３４）。

【００２１】インクジェット記録ヘッド２のノズル面２
ａを密閉するキャップを用いて吸引動作を行う場合、一
般的にはインクを吸引した後、負圧解除手段等によって
キャップ内の負圧を解除する動作と、キャップ内に充満
したインクを吸引するために空吸引動作が行われる。

【００２２】負圧解除動作は、キャップを開放した場合
にキャップ内に残留した負圧の急激な変化によって、ノ
ズルのメニスカスを壊しインクの噴射不良が発生するこ
とを防ぐために行われる。一般的な負圧解除の方法は、
一端がキャップ内に連通し、他端が電磁バルブなどの開
閉手段によって開閉可能に構成された管路を設けて、開
閉手段を断続的に動作させてキャップ内の負圧を効率的
に減少させる。

【００２３】また空吸引動作は、インク吸引動作後にノ
ズル面２ａに残留するインクを除去するために行われ、
負圧解除を行う開閉手段を開放状態に設定したまま、イ
ンク吸引動作を行う方法が一般的である。したがってイ
ンクジェット記録ヘッド２のノズル面２ａにインクを停
留させる場合には、空吸引動作を行わないか、動作時間
を短縮させることによって実現することができる。また
動作時間を調整することによって、ノズル面２ａに停留
するインクの量を変化させることができるため、必要以
上にノズル面２ａにインクを停留させることによってイ
ンクが擦り部材３ａの周囲に飛び散り、インクジェット
記録装置１を汚染することを避けることができる。

【００２４】図３に示した流れは擦り動作を１回だけ行
う流れを示したものであるが、１回のクリーニング中に
擦り動作を複数回行うこともできる。図３（ｂ）の場合
にはインクジェット記録ヘッド２の擦り位置によって、
擦り部材３ａの湿潤状態に違いがあるため、擦り始めの
部分においては充分なクリーニングができないことがあ
る。このような場合には擦り動作を連続して行うことに
よって充分なクリーニングを行うことができる。例えば
１回のクリーニング動作中に２回の擦り動作を行う場合
には、図３（ｂ）において、ステップ３２の後ステップ
２９、ステップ３３、ステップ３４という順に行うこと
により達成される。

【００２５】図４は本発明の擦り部材３ａの実施例を示
す平面図である。図４（ａ）は擦り部材３ａがノズル面
２ａに当接していない状態、図４（ｂ）は擦り部材３ａ
がノズル面２ａに当接して擦り動作を行っている場合を
示す。

【００２６】図４（ａ）において、擦り部材３ａはイン
クによって劣化、変質などが発生しない材質を用いなけ
ればならない。また、耐インク性の他に耐摩耗性や高い
吸水性も必要であり、微細繊維を用いた不織布等が好適
である。

【００２７】また図４（ｂ）のように擦り動作を行う場
合、擦り部材３ａの端面のエッジ部Ｃ１をノズル面２ａ
に当接してクリーニングすると効率的である。すなわ
ち、擦り動作を行う場合には、擦り部材３ａの端面のエ
ッジ部Ｃ１がノズル面２ａに当接することによって強い
当接力を得ることができ、全当接部において確実な接触
とすることができる。それにより微細穴であるノズル穴
２ｂの直近のインクを確実に吸収することができる。

【００２８】以上の構成のクリーニング手段は、インク
ジェット記録装置１の使用中においてインクジェット記
録ヘッド２のノズル面２ａに付着したほこりやゴミ、イ
ンクおよびこれらの乾燥固化物を除去するのみではな
く、他の用途にも用いることができる。すなわち、イン
クジェット記録装置１の使用開始時におけるインクジェ
ット記録ヘッド２のノズル面２ａの清浄化である。

【００２９】インクジェット記録装置１を製造した時点
から使用者が使用を開始するまでの送品期間において、
インクジェット記録ヘッド２の内部には、インク流路壁
面のインク親水性を維持するために送品液と呼ばれる液
体を充填する場合がある。この送品液は一般にインクと
は異なる成分からなり、インクよりも揮発しにくく粘度
も高いため、使用開始時には充分に除去されなければな
らない。また、ノズル面２ａにインクが付着して吐出イ
ンクが曲げられることを避けるためにノズル面２ａに撥
インク処理を施した場合には、長期間送品液がノズル面
２ａに付着していると、ノズル面２ａの撥インク性を低
下させることがあり、これを回復するためには、湿潤状
態に設定された擦り部材３ａによって擦り動作を行うこ
とが効果的である。

【００３０】従って送品期間においてインクジェット記
録ヘッド２内部に送品液が充填される場合には、インク
ジェット記録装置１の使用開始時に送品液を充分に除去
するために、吸引動作と擦り動作を含むシーケンスが実
行される。

【００３１】以上の構成は単なる一例に過ぎず、クリー
ナーとして擦り部材の他にへら状のワイパを設けて、液
状のインクやほこり、ゴミなどのクリーニングに対して
はこのへら状ワイパを用い、乾燥固化物の除去には擦り
部材を用いることによって、擦り部材の使用回数を低減
し、擦り部材の寿命を向上させることができる。また、
クリーナーの進退機構に、紙送りモータや吸引手段に用
いるモータの回転による摩擦クラッチ機構などを用いる
ことにより、専用の動力源を必要とせずにクリーナーの
進退を実現させることができる。

【００３２】

【発明の効果】本発明のインクジェット記録装置は以上
の説明から明かな如く、擦り部材がインク吸収性を備え
た材料により構成され、インクジェット記録ヘッドから
噴射されたインクを吸収して湿潤状態に設定されるの
で、擦り部材を使用する直前にインクを吸収させること
によって擦り部材を湿潤状態に設定するため、インクの
乾燥に伴いノズル面に強固に被着した固着物を、単純な
構造で容易に除去することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明のインクジェット記録装置の実施例を示
す斜視図。

【図２】本発明のインクジェット記録ヘッドとクリーナ
ーの関係を示す平面図。

【図３】本発明のインクジェット記録装置のクリーニン
グ動作を示す流れ図。

【図４】本発明のクリーナーの実施例を示す平面図。

【図５】従来のクリーナーの実施例を示す平面図。

【符号の説明】

１ インクジェット記録装置 ２ インクジェット記録ヘッド ２ａ ノズル面 ２ｂ ノズル穴 ３ クリーナー ３ａ 擦り部材 ３ｂ へら状ワイパ ５ インク吸引手段 ６ 印字領域 ７ 待機位置 ８ キャリッジモータ ９ 紙送りモータ １０ プラテン １１ 印字媒体 １２ バネ １３ 電磁式プランジャー

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭57−95471（ＪＰ，Ａ) 特開 平２−95862（ＪＰ，Ａ) 特開 平３−99857（ＪＰ，Ａ) 特開 平４−307256（ＪＰ，Ａ) 特開 平４−232754（ＪＰ，Ａ) 特開 平３−258553（ＪＰ，Ａ) 特開 平４−141437（ＪＰ，Ａ) 特開 平１−202453（ＪＰ，Ａ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) B41J 2/165 B41J 2/175

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 インク滴をノズルより噴射するインクジ
   ェット記録ヘッドと、 該インクジェット記録ヘッドの移動経路に突出しインク
   ジェット記録ヘッドのノズル面をクリーニングする擦り
   部材を有するクリーナーと、 該クリーナーを前記インクジェット記録ヘッドのノズル
   面に当接可能な位置と当接しない位置とに移動させる駆
   動手段とを有するインクジェット記録装置において、 前記擦り部材がインク吸収性を備えた材料により構成さ
   れ、前記インクジェット記録ヘッドから噴射されたイン
   クを吸収して湿潤状態に設定されることを特徴とするイ
   ンクジェット記録装置。