JP2971928B2 - 潤滑性を有する硬質非晶質炭素―水素―珪素薄膜、表面に該薄膜を有する鉄系金属材料、およびその製造方法 - Google Patents

潤滑性を有する硬質非晶質炭素―水素―珪素薄膜、表面に該薄膜を有する鉄系金属材料、およびその製造方法

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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、潤滑性を有する硬質の非晶質薄膜、表面に
硬質低摩擦層を有する鉄系金属材料、およびその製造方
法に関し、さらに詳しくは、高硬度でかつ極めて低い摩
擦係数を有する非晶質炭素−水素−珪素薄膜、鉄系金属
材料の表面に潤滑性に優れた硬質非晶質炭素−水素−珪
素薄膜層を有する鉄系金属材料、およびその製造方法に
関するものである。
〔従来の技術およびその問題点〕
従来より、硬質薄膜の形成方法や鉄系金属材料の表面
処理方法として、溶融塩浸漬法、化学蒸着法(CVD)、
物理蒸着法(PVD)などにより、炭化バナジウム(V
C)、炭化チタン(TiC)、および窒化チタン(TiN)等
の金属炭化物、金属窒化物等の硬質層を工具、金型等の
鉄系金属材料に被覆し、該材料表面層の耐摩耗性、耐焼
付性等を向上させる方法が実用化されている。しかしな
がら、これらの被覆層は、Hv2000〜3000程度と硬質であ
るものの、被覆層自体には潤滑性はなく摩擦係数がそれ
ほど低くない(鋼を相手材として無潤滑で0.2〜0.8程
度)ため、相手材との摩擦において摺動抵抗が増加し、
被覆層が摩耗し、また相手材を損傷させる等の問題点を
有していた。
また、潤滑性を有する薄膜として、炭化水素系のガス
のプラズマ分解等の方法により作製された非晶質状の炭
素膜が知られており、条件によっては0.01という非常に
低い摩擦係数を示すことから、摺動部材への適用が検討
されはじめている。しかしながら、これらの非晶質炭素
膜は構造的に不安定であり、摺動雰囲気により容易に摩
擦摩耗特性が変化し、大気中では0.2程度まで摩擦係数
が上昇してしまい、また膜の硬度もHv1000〜2000程度と
それほど高くはない(Thin Solid Films,Vol.143,(198
6),P.31)ため、耐摩耗特性が必要とされる用途の硬質
層としては適用できないという問題があった。
さらに、最近、ダイヤモンドライク炭素あるいはほぼ
ダイヤモンドということができる硬質炭素の被覆例が報
告されている。これらの炭素膜は、炭素原子の結合の程
度により硬度が変化することが知られており、最高では
ほぼHv10000の値も報告され、硬質層としては極めて優
れた材料である。しかし、該材料は超硬質であるため、
摺動部材に用いた場合、該材料表面が平滑でなければ相
手材を損傷させてしまうという欠点を有していた。しか
しながら、現状の該材料の作製方法では、未だ平滑かつ
均一な薄膜を得ることが困難であり、しかも薄膜形成後
の研磨による平滑化も困難であるので、該材料を摺動部
材として適用することが困難であるという問題があっ
た。
一方、非晶質状の炭化珪素膜の作製についても報告さ
れており、硬質(Hv2000程度)かつ低摩擦係数(0.1程
度)であることが報告されているが、炭化珪素の化学量
論組成からはずれた膜では、一般に硬度、摩擦係数等の
性質が低下してしまうことが報告されている(Thin Sol
id Films,Vol.139,(1986),P.275、特開昭60−184681
号)。
また、モリブデン硫化物(MoS2)やグラファイトとい
った固体潤滑剤を塗布し、摺動特性を向上させる方法も
用いられており、条件によっては0.05以下の低い摩擦係
数が得られる場合があるものの、塗布層の脱落および軟
質であるための損耗等により、長時間の摺動に耐えるこ
とができないという問題があった。
さらに、前記炭素系膜および炭化珪素膜は、何れも鉄
系金属材料との密着性が悪いという問題を有していた。
そこで、本発明者等は、上述の如き従来技術の問題点
を解決すべく鋭意研究し、各種の系統的実験を重ねた結
果、本発明を成すに至ったものである。
〔第1発明の説明〕 発明の目的 本発明の目的は、高硬度でかつ極めて低い摩擦係数を
有する硬質非晶質炭素−水素−珪素薄膜を提供するにあ
る。
本発明者らは、上述の従来技術の問題に関し、以下の
ことに着眼した。
すなわち、先ず、硬質でかつ低摩擦の被膜を作製する
に際し、炭素系物質の被膜に着目した。これは、炭素系
物質の被膜がダイヤモンドであれば硬質であり、一方、
グラファイトであれは潤滑性を有し、また最近では非晶
質であっても潤滑性を示すことが報告されていることに
よる。しかしながら、この炭素系物質の被膜を形成する
場合、炭素化合物ガスの低温プラズマ分解という簡単な
方法においては、炭素系物質のみでは被膜化が十分では
なく、また得られる炭素物質の硬度もHv1000程度と低
い。そこで、この方法において、炭素のみでは被膜化し
にくい条件のもとでも被膜化を促進し、かつ炭素の硬質
化を促進させるため、被膜中に珪素物質を含有するよう
な系とすることに着眼した。また、被膜の摩擦係数の値
は、被膜中の炭素量およびその存在状態、ならびに含有
水素に影響されると考えられるため、炭素、水素と珪素
との組成制御および被膜中の炭素の存在状態に着目し
た。そして、非晶質炭素(ここでは擬似ダイヤモンド炭
素)の低摩擦性および擬似ダイヤモンド炭素と炭化珪素
の硬質性の両方の性質を兼ね備えた物質として、擬似ダ
イヤモンドを含む炭素を主成分とする非晶質炭素−水素
−珪素薄膜からなる硬質低摩擦表面層の構成に到達する
に至った。
第1発明の構成 本発明の潤滑性を有する硬質非晶質炭素−水素−珪素
薄膜は、炭素と水素を主成分とする非晶質薄膜であっ
て、該非晶質薄膜中の水素含有量が30〜50at%であり、
残りの組成が原子比で70%〜90%の炭素と、残部の主成
分が珪素質物質とからなり、かつ前記非晶質薄膜が擬似
ダイヤモンドを含んでなり、高硬度でかつ0.05以下の非
常に低い摩擦係数を有してなることを特徴とする。
第1発明の作用および効果 本第1発明の硬質非晶質炭素−水素−珪素薄膜は、高
硬度でかつ極めて低い摩擦係数を有する薄膜である。
本第1発明の硬質非晶質炭素−水素−珪素薄膜が上述
の如き効果を発揮するメカニズムについては、未だ必ず
しも明らかではないが、次のように考えられる。
すなわち、本第1発明において、炭素−水素−珪素薄
膜表面層中の非晶質炭素が硬質な擬似ダイヤモンドを主
成分とし、また該非晶質薄膜中の珪素と炭素とが硬質な
炭化珪素を形成しているため、高硬度の層となっている
と思われる。また、該擬似ダイヤモンドは0.1〜0.2程度
の低い摩擦係数を示すことが知られている。さらに、摩
擦摩耗試験後に相手材の鋼の摺動部を分析したところ、
珪素の酸化物(SiO2)が形成されていることを確認し
た。SiO2の薄膜が気体の吸着等による所謂コンタミネー
ション潤滑を示して比較的低い摩擦係数(0.2程度)を
示すことが知られていることを考え併せると、互いに摩
擦係数が低い擬似ダイヤモンドとSiO2との摺動となるた
めに0.05以下の非常に低い摩擦係数が達成されるものと
考えられる。また、含有水素は、前記SiO2の形成や気体
の吸着に関与し、低摩擦化に関与しているものと考えら
れる。従って、本発明の炭素−水素−珪素薄膜は、高硬
度でありかつ摩擦係数が非常に低い薄膜を実現できたも
のと思われる。
〔第2発明の説明〕 以下に、前記第1発明を具体的にした第2発明を説明
する。
本第2発明の硬質非晶質炭素−水素−珪素薄膜は、炭
素と水素を主成分とする非晶質薄膜からなり、該非晶質
薄膜中の水素含有量が30〜50at%であり、残りの組成が
原子比で70%以上の炭素と残部の主成分が珪素質物質と
からなり、かつ前記非晶質薄膜が擬似ダイヤモンドを含
んでなり、高硬度でありかつ0.05以下の非常に低い摩擦
係数を有するという特徴を有する。
ここで、該非晶質薄膜中の水素を除いた組成の炭素含
有量を70at%以上としたのは、炭素含有量をこのように
することにより膜中に十分な量の擬似ダイヤモンドを含
有させ摩擦係数が0.05以下の低摩擦層とすることができ
るからである。なお、該層は、非晶質薄膜中の水素を除
いた組成の炭素含有量が50at%以上である場合、硬度が
約Hv2000以上の硬質層となるが、同炭素含有量60at%程
度までは0.4〜0.5程度の焼結体SiCと同程度の高い摩擦
係数を示す。そして、同炭素含有量が60at%を超え該膜
中の擬似ダイヤモンドの含有量が増加すると急激に摩擦
係数が減少する。
また、該非晶質薄膜は、該膜中の炭素含有量が水素を
除いた組成の75at%〜90at%であることが好ましい。こ
れは、該炭素含有量が75at%以上である場合は、摩擦係
数が0.03程度の低摩擦層が得られるとともに、該膜が摺
動初期から極めて小さい摩擦係数を示すからである。ま
た、該炭素含有量が90at%を越える場合、すなわち珪素
含有量が10at%未満の場合は、炭素の硬質化、低摩擦化
すなわちダイヤモンド化を促進する効果が弱くなり摩擦
係数が高くなる傾向を示すとともに、前述したSiO2の形
成量が減少し潤滑効果が得られにくくなるからである。
なお、水素含有量に関しては、燃焼法等により分析し
た結果、30〜50at%の含有を確認した。0.05程度の低い
摩擦係数を示す本発明に係る硬質非晶質炭素−水素−珪
素薄膜を、600℃、1時間の真空加熱により水素を放出
させた後に摩擦係数を調べたところ、0.1程度まで上昇
し、水素の含有も低摩擦化に寄与していることを確認し
た。
また、前記非晶質薄膜は擬似ダイヤモンドを含んでな
る。すなわちこの擬似ダイヤモンドは、レーザーラマン
分光分析により、1550cm-1付近を中心とした幅広のラマ
ンバンドを示し、また1400cm-1付近を中心としたサブバ
ンドを示す構造的特徴を有する。
なお、該炭素−水素−珪素薄膜層の厚さは、0.5μm
〜10μm程度であることが望ましい。これは、該層厚さ
が0.5μm未満の場合は、該表面層の性質が十分に発揮
されず、また10μmを越えると剥離等の不具合が生じる
からである。また、該層には、塩素(Cl)などの元素
が、本発明の効果を損なわない程度に混入していてもよ
い。また、該非晶質薄膜の表面は非常に平滑であり、基
材上に形成させる場合には、基材の表面粗さをほとんど
忠実に再現した表面を有する薄膜が得られる。
本発明の硬質非晶質炭素−水素−珪素薄膜は、0.05以
下の非常に低い摩擦係数を示すことから、潤滑の不可能
な摺動部材の摺動部への適用に最適であり、また、高硬
度でもあることから従来の硬質被覆材が用いられている
工具、金型等の上記性質の付与という用途にも適してい
る。さらに、耐蝕性にも優れ反応性や濡れ性も低いの
で、該性質を必要とする用途に適用することもできる。
次に、本発明の潤滑性を有する硬質非晶質炭素−水素
−珪素薄膜の製造方法について、その具体的な一例を簡
単に説明すると以上のようである。
先ず、プラズマCVD法で用いる真空容器に被処理材を
配設し、プラズマCVD法により、珪素化合物ガスと炭素
化合物ガスを主体とした特殊薄膜形成ガス雰囲気中で放
電させることにより、被処理材表面に潤滑性を有する硬
質非晶質炭素−水素−珪素薄膜表面層を形成する。
この硬質低摩擦層形成工程では、先ず、真空容器内の
テーブル上に被処理材を配設し、該真空容器内に残存す
る気体を除去する。ここでは、例えば、1×10-4Torr以
下まで排気する。
次に、連続排気しながら水素(H2)ガスなどの昇温用
ガスを導入し、直流放電または高周波放電等により放電
を開始し、プラズマエネルギーにより被処理材を所定の
温度に加熱する。なお、この時の加熱温度は、膜質の良
好な表面層を得るためには、500℃程度まで昇温すると
よい。これにより、表面層中の塩素(Cl)等の膜質低減
物質の混入量を低下することができる。
次に、真空容器内に珪素化合物ガスと炭素化合物ガス
を主体とした特殊薄膜形成ガス雰囲気中で放電させ、被
処理材表面に被膜を成長させる。ここで用いる特殊薄膜
形成ガスは、雰囲気ガスと膜化原料ガスとしての反応ガ
スとからなる。雰囲気ガスは、水素(H2)、アルゴン
(Ar)等の一般的に用いるガスを用いることができる。
反応ガスは、珪素化合物ガスと炭素化合物ガス、さらに
水素ガスとからなる。珪素化合物ガスとしては、四塩化
珪素(SiCl4)、四フッ化珪素(SiF4)、トリクロルシ
リコン(SiHCl3)、テトラメチルシリコン(TMS、Si(C
H3)などを用いる。また、炭素化合物ガスとして
は、メタン(CH4)、その他の炭化水素ガス(CmHn)な
どを用いる。なお、この特殊薄膜形成ガスの組成は、原
料ガス、処理温度等により、適宜決定され、また、全体
の流量は真空容器の容積と排気量とのバランスで決定さ
れる。このうち、珪素化合物ガスとしてSiCl4、炭素化
合物ガスとしてCH4を用いた場合の代表的なガス組成と
しては、流量比で、SiCl4が1に対し、CH4が5〜50、H2
が50〜500およびArが30〜300からなるものが挙げられ
る。尚、炭素化合物ガスとしてアセチレン(C2H2)等の
反応性の高い炭素化合物ガスを用いる場合、および処理
温度やプラズマエネルギーが高く炭素化合物ガスの分解
が促進される場合には、珪素化合物ガスに対する炭素化
合物ガスの比率を小さくすることができる。また、水素
ガスの流量を変化させることにより、含有水素量を変化
させることができる。
また、本工程における真空容器の圧力は、10-2〜10ト
ールであることが好ましい。特に、放電が直流放電によ
る場合には、10-1〜10トールが、高周波放電による場合
には、10-2〜10トールがそれぞれ好ましい。これは、こ
の圧力範囲外では放電が不安定となるからである。
このようにして、高硬度でかつ極めて低い摩擦係数を
有する本発明の硬質非晶質炭素−水素−珪素薄膜を、容
易に形成することができる。
本発明の硬質非晶質炭素−水素−珪素薄膜が、このよ
うな方法により上述の如き効果を発揮するメカニズムに
ついては、未だ必ずしも明らかではないが、次のように
考えられる。すなわち、被処理材を、プラズマCVD法に
より、珪素化合物ガスと炭素化合物ガスを主体とした特
殊薄膜形成ガス雰囲気中で放電して被処理材表面に潤滑
性を有する硬質非晶質炭素−水素−珪素薄膜表面層を形
成する。この工程では、熱的非平衡状態での薄膜形成方
法であるプラズマCVD法を利用したので、低摩擦層とし
ての非晶質状態の炭素−水素−珪素系薄膜表面層を低温
で容易に得ることができる。
また、この工程では、炭素と珪素を同時に析出させる
ことにより、炭素原子の結合状態を安定なグラファイト
状態でなく擬似ダイヤモンドにすることができる。これ
は、珪素原子が4配位の結合状態のみ採るので、炭素原
子の結合状態も4配位(ダイヤモンド結合)になること
が促進されるためと考えられる。これより、被処理材表
面に、硬質かつ極めて低い摩擦係数を示す被覆層を容易
に被覆することができるものと思われる。
次に、本発明の潤滑性を有する硬質非晶質炭素−水素
−珪素薄膜を製造するのに適した方法について、以下に
説明する。
すなわち、潤滑性を有する硬質非晶質炭素−水素−珪
素薄膜の好適な製造方法は、プラズマ反応室内に被処理
材を配設する工程と、該反応室内に残存する気体を排気
する工程と、前記反応室内に昇温用ガスを導入するとと
もに被処理材の表面を所定の蒸着温度に加熱する工程
と、前記反応室内を特殊薄膜形成ガス雰囲気とするとと
もに、ガス噴射室から珪素化合物ガスと炭素化合物ガス
とからなる膜化原料ガスを珪素化合物ガスと炭素化合物
ガスの流量比を1:5〜50とし、放電を行うことにより被
処理材の表面に硬質非晶質炭素−水素−珪素薄膜被膜を
均一に成長させる蒸着工程と、からなることを特徴とす
る。
〔第3発明の説明〕 本発明は、前記第1発明と主要部を一にする発明であ
り、表面に硬質低摩擦層を有する鉄系金属材料に関する
発明である。
発明の目的 本発明の目的は、高硬度でかつ極めて低い摩擦係数を
有し、しかも基材との密着性に優れた硬質低摩擦層を表
面する有する鉄系金属材料を提供するにある。
本発明者らは、上述の従来技術の問題に関し、以下の
ことに着眼した。
すなわち、先ず、硬質でかつ低摩擦の被膜を作製する
に際し、炭素系物質の被膜に着目した。これは、炭素系
物質の被膜がダイヤモンドであれば硬質であり、一方、
グラファイトであれば潤滑性を有し、また最近では非晶
質であっても潤滑性を示すことが報告されていることに
よる。しかしながら、この炭素系物質の被膜を形成する
場合、炭素化合物ガスの低温プラズマ分解という簡単な
方法において、炭素系物質のみでは被膜化が十分ではな
く、また得られる炭素物質の硬度もHv1000程度と低い。
そこで、この方法において、炭素のみでは被膜化しにく
い条件のもとでも被膜化を促進し、かつ炭素の硬質化を
促進させるため、被膜中に珪素物質を含有するような系
とすることに着眼した。また、被膜の摩擦係数の値は、
被膜中の炭素量およびその存在状態、ならびに含有水素
に影響されると考えられるため、炭素、水素と珪素との
組成制御および被膜中の炭素の存在状態に着目した。そ
して、非晶質炭素(ここでは擬似ダイヤモンド炭素)の
低摩擦性および擬似ダイヤモンド炭素と炭化珪素の硬質
性の両方の性質を兼ね備えた物質として、擬似ダイヤモ
ンドを含む炭素を主成分とする非晶質炭素−水素−珪素
薄膜からなる硬質低摩擦表面層の構成に到達するに至っ
た。
さらに、鉄系金属材料と被膜との密着性に関して、熱
系金属材料および被膜の両者に含まれる炭素に着目し、
上記構成の被膜の作製前に予め鉄あるいは他の金属の炭
素化合物を被覆し、被膜の密着性を向上させることを実
現するに至った。これは、炭素系物質および炭化珪素系
物質の被膜は、鉄系金属材料との反応性が高く、熱平衡
状態では接触して存在することがエネルギー的に不安定
なために、鉄系金属材料と上記被膜が直接接触し密着性
が低下することを防ぐためである。
第3発明の構成 本発明の表面に硬質低摩擦層を有する鉄系金属材料
は、鉄または鉄合金材料からなる基材部と、該基材部の
表面に形成した金属炭素化合物層と、該金属炭素化合物
層の表面に形成された炭素を主成分とする非晶質薄膜で
あって,該非晶質薄膜中の水素含有量が30〜50at%であ
り,残りの組成が原子比で70%〜90%の炭素と,残部の
主成分が珪素質物質とからなり,かつ前記非晶質薄膜が
擬似ダイヤモンドを含んでなり、高硬度でかつ0.05以下
の非常に低い摩擦係数を有してなる炭素−水素−珪素薄
膜表面層と、からなることを特徴とする。
第3発明の作用および効果 本第3発明の鉄系金属材料は、高硬度でかつ極めて低
い摩擦係数を有し、しかも基材との密着性に優れた硬質
低摩擦層を表面に有している。
本第3発明の鉄系金属材料が上述の如き効果を発揮す
るメカニズムについては、未だ必ずしも明らかではない
が、次のように考えられる。
すなわち、本第3発明において、炭素−水素−珪素薄
膜表面層中の非晶質炭素が硬質な擬似ダイヤモンドを主
成分とし、また該非晶質薄膜中の珪素と炭素とが硬質な
炭化珪素を形成しているため、高硬度の層となっている
と思われる。また、擬似ダイヤモンドは0.1〜0.2程度の
低い摩擦係数を示すことが知られている。さらに、摩擦
摩耗試験後に相手材の鋼の摺動部を分析したところ、珪
素の酸化物(SiO2)が形成されていることを確認した。
SiO2の薄膜が気体の吸着等による所謂コンタミネーショ
ン潤滑を示して比較的低い摩擦係数(0.2程度)を示す
ことが知られていることを考え併せると、互いに摩擦係
数が低い擬似ダイヤモンドとSiO2との摺動となるために
0.05以下の非常に低い摩擦係数が達成されるものと考え
られる。従って、本発明の炭素−水素−珪素薄膜表面層
は、高硬度でありかつ摩擦係数が非常に低い薄膜を実現
できたものと思われる。
また、反応性が高く熱平衡状態ではエネルギー的に共
存することが困難な基材部と炭素−水素−珪素薄膜表面
層を、その両者の構成元素である炭素を媒介とし、鉄あ
るいは他の金属の炭素化合物を中間層として設け、直接
接触することを防いだ構造とし、しかも該中間層は基材
部および表面層の両者に対して密着性が良好なため、結
果的に基材部と表面層との密着性を向上させているもの
と思われる。
〔第4発明の説明〕 以下に、前記第3発明を具体的にした第4発明を説明
する。
本第4発明の表面に硬質低摩擦層を有する鉄系金属材
料において、基材部は、鉄または鉄合金材料からなる鉄
系金属材料であれば特に限定されるものではなく、炭素
を含むもの、例えば炭素鋼、合金鋼、鋳鉄、焼結合金等
でもよく、また純鉄のような炭素を極くわずかしか含ま
ないものでもよい。
次に、金属炭素化合物層は、前記基材部としての鉄系
金属材料の表面に形成した鉄または他の金属の炭素化合
物からなる中間層である。該金属炭素化合物層は、基材
部と炭素−水素−珪素薄膜表面層を直接接触しない構造
とするとともに、その両者の構成元素である炭素を媒介
として、基材部および表面層の両者に対して密着性を良
好にする金属炭素化合物からなる層である。従って、こ
の目的を実現する金属炭素化合物であれば、材料や、構
造、組成などを特に限定するものではない。なお、該金
属炭素化合物としては、例えば鉄のほかに、バナジウム
(V)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ニオブ(Nb)、
タングステン(W)、モリブデン(Mo)、タンタル(T
a)などの化合物が挙げられる。また、該金属炭素化合
物層の厚さは、基材部と炭素−水素−珪素薄膜表面層が
接触しなければよく、0.1〜10μmの範囲であればよ
い。ただし、鉄炭素化合物等それほど硬度の高くない金
属炭素化合物層の場合には、その中でも、0.1〜1μm
の範囲である場合はより望ましい。なお、該金属炭素化
合物は、該中間層の効果を損なわない範囲で窒素元素を
含んでいてもよい。
次に、炭素−水素−珪素薄膜表面層は、前記金属炭素
化合物層の表面に形成された表面層であり、炭素と水素
を主成分とする非晶質薄膜からなり、該非晶質薄膜中の
水素含有量が30〜50at%であり、残りの組成が原子比で
70%〜90%の炭素と残部の主成分が珪素質物質とからな
り、かつ前記非晶質薄膜が擬似ダイヤモンドを含んでな
り、高硬度でありかつ0.05以下の非常に低い摩擦係数を
有するという特徴を有する。ここで、該非晶質薄膜中の
水素を除いた組成の炭素含有量を70at%以上としたの
は、炭素含有量をこのようにすることにより膜中に十分
な量の擬似ダイヤモンドを含有させ摩擦係数が0.05以下
の低摩擦層とすることができるからである。なお、該層
は、非晶質薄膜中の水素を除いた組成の炭素含有量が50
at%以上である場合、硬度が約Hv2000以上の硬質層とな
るが、同炭素含有量60at%程度までは0.4〜0.5程度の焼
結体SiCと同程度の高い摩擦係数を示す。そして、同炭
素含有量が60at%を超え該膜中の擬似ダイヤモンドの含
有量が増加すると急激に摩擦係数が減少する。
また、該非晶質薄膜は、該膜中の炭素含有量が75at%
〜90at%であることが好ましい。これは、該炭素含有量
が75at%以上である場合は、摩擦係数が0.03程度の低摩
擦層が得られるとともに、該膜が摺動初期から極めて小
さい摩擦係数を示すからである。また、該炭素含有量が
90at%を越える場合、すなわち珪素含有量が10at%未満
の場合は、炭素の硬質化、低摩擦化すなわちダイヤモン
ド化を促進する効果が弱くなり摩擦係数が高くなる傾向
を示すとともにとともに、前述したSiO2の形成量が減少
し潤滑効果が得られにくくなるからである。
なお、水素含有量に関しては、燃焼法等により分析し
た結果、30〜50at%の含有を確認した。0.05程度の低い
摩擦係数を示す本発明に係る硬質非晶質炭素−水素−珪
素薄膜を、600℃、1時間の真空加熱により水素を放出
させた後に摩擦係数を調べたところ、0.1程度まで上昇
し、水素の含有も低摩擦化に寄与していることを確認し
た。
また、前記非晶質薄膜は擬似ダイヤモンドを含んでな
る。すなわちこの擬似ダイヤモンドは、レーザーラマン
分光分析により、1550cm-1付近を中心とした幅広のラマ
ンバンドを示し、また1400cm-1付近を中心としたサブバ
ンドを示す構造的特徴を有する。
なお、該炭素−水素−珪素薄膜表面層の厚さは、0.5
μm〜10μm程度であることが望ましい。これは、該表
面層厚が0.5μm未満の場合は、該表面層の性質が十分
に発揮されず、また10μmを越えると剥離等の不具合が
生じるからである。また、該表面層には、塩素(Cl)な
どの元素が、本発明の効果を損なわない程度に混入して
いてもよい。
また、該非晶質薄膜の表面は非常に平滑であり、基材
上に形成させる場合には、基材の表面粗さをほとんど忠
実に再現した表面層を有する薄膜が得られる。
上記表面に硬質低摩擦層を有する鉄系金属材料は、0.
05以下の非常に低い摩擦係数を示すことから、潤滑の不
可能な摺動部材への適用に最適であり、また、高硬度で
もあることから従来の硬質被覆材が用いられている工
具、金型等の用途にも適している。さらに、本発明にか
かる鉄系金属材料は耐蝕性にも優れ反応性や濡れ性も低
いので、該性質を必要とする用途にも好適である。
〔第5発明の説明〕 本第5発明は、前記第3発明または第4発明の表面に
硬質低摩擦層を有する鉄系金属材料を製造するに好適な
方法である。
第5発明の目的 本発明の目的は、高硬度でかつ極めて低い摩擦係数を
有し、しかも基材との密着性に優れた硬質低摩擦層を表
面に有する鉄系金属材料の製造方法を提供するにある。
また、本発明の目的は、高硬度でかつ極めて低い摩擦
係数を有し、しかも基材との密着性に優れた硬質低摩擦
層を容易に形成することができる方法を提供するにあ
る。
第5発明の構成 本発明の表面に硬質低摩擦層を有する鉄系金属材料の
製造方法は、鉄または鉄合金材料からなる被処理材の表
面に金属炭素化合物層を形成する工程と、該金属炭素化
合物層を形成した被処理材を,プラズマCVD法により,
珪素化合物ガスと炭素化合物ガスを主体とした特殊薄膜
形成ガス雰囲気中で、珪素化合物ガスと炭素化合物ガス
の流量比を1:5〜50の範囲内として、放電させることに
より被処理材表面に潤滑性を有する硬質非晶質炭素−水
素−珪素薄膜表面層を形成する硬質低摩擦層形成工程
と、からなることを特徴とする。
第5発明の作用および効果 本第5発明の表面に硬質低摩擦層を有する鉄系金属材
料の製造方法により、高硬度でかつ極めて低い摩擦係数
を有し、しかも基材との密着性に優れた硬質低摩擦層を
容易に形成することができる。
本第5発明の鉄系金属材料の製造方法が上述の如き効
果を発揮するメカニズムについては、未だ必ずしも明ら
かではないが、次のように考えられる。
本発明の表面硬質低摩擦層を有する鉄系金属材料の製
造方法は、先ず、鉄または鉄合金材料からなる被処理材
の表面に金属炭素化合物層を形成する。これにより、熱
平衡状態ではエネルギー的に共存することが困難な被処
理材と炭素−水素−珪素薄膜表面層の中間部に、その両
者の構成元素である炭素を媒介として被処理材および表
面層の両者に対して密着性の良好な中間層を形成するこ
とができる。
次いで、該金属炭素化合物層を形成した被処理材を、
プラズマCVD法により、珪素化合物ガスと炭素化合物ガ
スを主体とした特殊薄膜形成ガス雰囲気中で、珪素化合
物ガスと炭素化合物ガスの流量比を1:5〜50の範囲内と
して、放電させることにより被処理材表面に潤滑性を有
する硬質非晶質炭素−水素−珪素薄膜表面層を形成す
る。この工程では、熱的比平衡状態での薄膜形成方法で
あるプラズマCVD法を利用したので、低摩擦層としての
非晶質状態の炭素−水素−珪素系薄膜表面層を低温で容
易に得ることができる。また、この工程では、炭素と珪
素を同時に析出させることにより、炭素原子の結合状態
を安定なグラファイト状態ではなく擬似ダイヤモンドに
することができる。これは、珪素原子が4配位の結合状
態のみ採るので、炭素原子の結合状態も4配位(ダイヤ
モンド結合)になることが促進されるためと考えられ
る。これより、被処理材の鉄炭素化合物層形成面に、硬
質かつ極めて低い摩擦係数を示す被覆層を、鉄系金属材
料に密着性よく、しかも容易に被覆することができるも
のと思われる。
〔第6発明の説明〕 以下に、前記第5発明を具体的にした第6発明を説明
する。
本第6発明の表面に硬質低摩擦層を有する鉄系金属材
料の製造方法において、先ず、鉄または鉄合金材料から
なる被処理材の表面に金属炭素化合物層を形成する(金
属炭素化合物層形成工程)。
この金属炭素化合物層形成工程は、被処理材と炭素−
水素−珪素薄膜表面層の中間層として、該両層と密着性
に優れた金属炭素化合物層を形成する工程である。この
密着性を向上させる金属炭素化合物層の形成方法として
は、特に限定するものではないが、低温プラズマ浸炭法
や、金属炭素化合物被覆法などが挙げられる。
このうち、低温プラズマ浸炭法は、次工程である硬質
低摩擦層形成工程に先立ち同一のプラズマ反応室内で処
理できるのが特徴である。また、900℃程度で主に炭素
の拡散層を形成することを目的として行われる通常のプ
ラズマ浸炭法に比べ、低温(約550℃程度)で処理する
ので、炭素は拡散しにくく薄い鉄炭素化合物層が形成さ
れるのが特徴である。なお、このような低温プラズマ浸
炭法により形成される薄い鉄炭素化合物は、それ自体で
は特に実用性がないため通常は用いられない。この具体
的方法としては、炭素化合物ガスを含む雰囲気中で直流
または高周波プラズマを発生させることにより、被処理
材料表面上に薄い鉄炭素化合物層を形成させる。なお、
低温プラズマ浸炭法を用いれば、被処理材の鉄と炭素が
結合し鉄炭素化合物層を形成するため、化合物形成用の
金属を他に供給する必要がなく、炭素の供給だけで密着
性を向上させる中間層を形成することができる。
また、金属炭素化合物被覆法は、溶融塩浸漬法や化学
蒸着法(CVD)、物理蒸着法(PVD)、およびプラズマCV
D法などにより、鉄系金属材料の表面に鉄またはその他
の金属の炭素化合物層を被覆する。なお、プラズマCVD
法の場合は、次工程である硬質低摩擦層形成工程に先立
ち同一のプラズマ反応室内で処理できる。なお、PVD法
およびプラズマCVD法による場合は低温で処理が可能で
ある。従って、この場合は次工程である硬質低摩擦層形
成工程(炭素−水素−珪素薄膜被覆工程)が低温である
ため、その前処理としての本工程も低温で実施できるの
で有利である。
次に、前記金属炭素化合物層を形成した被処理材を、
プラズマCVD法により、珪素化合物ガスと炭素化合物ガ
スを主体とした特殊薄膜形成ガス雰囲気中で、珪素化合
物ガスと炭素化合物ガスの流量比を1:5〜50の範囲内と
して、放電させることにより被処理材表面に潤滑性を有
する硬質非晶質炭素−水素−珪素薄膜表面層を形成する
(硬質低摩擦層形成工程)。
この硬質低摩擦層形成工程では、先ず、真空容器内の
テーブル上に被処理材を配設し、該真空容器内に残存す
る気体を除去する。ここでは、例えば、1×10-4Torr以
下まで排気する。
次に、連続排気しながら水素(H2)ガスなどの昇温用
ガスを導入し、直流放電または高周波放電等により放電
を開始し、プラズマエネルギーにより被処理材を所定の
温度に加熱する。なお、この時の加熱温度は、膜質の良
好な表面層を得るためには、鋼の高温焼戻により軟化が
始まる限界の温度まで昇温するとよい。これにより、表
面層中の塩素(Cl)等の膜質低減物質の混入量を低減す
ることができる。
次に、真空容器内に珪素化合物ガスと炭素化合物ガス
を主体とした特殊薄膜形成ガス雰囲気中で放電させ、被
処理材表面に被膜を成長させる。ここで用いる特殊薄膜
形成ガスは、雰囲気ガスと膜化原料ガスとしての反応ガ
スとからなる。雰囲気ガスは、水素(H2)、アルゴン
(Ar)等の一般的に用いるガスを用いることができる。
反応ガスは、珪素化合物ガスと炭素化合物ガスと水素ガ
スからなる。珪素化合物ガスとしては、四塩化珪素(Si
Cl4)、四フッ化珪素(SiF4)、トリクロルシリコン(S
iHCl3)、テトラメチルシリコン(TMS、Si(CH3
などを用いる。また、炭素化合物ガスとしては、メタン
(CH4)、その他の炭化水素ガス(CmHn)などを用い
る。
なお、この特殊薄膜形成ガスの組成は、原料ガス、処
理温度等により、適宜決定され、また、全体の流量は真
空容器の容積と排気量とのバランスで決定される。この
うち、珪素化合物ガスとしてSiCl4、炭素化合物ガスと
してCH4を用いた場合の代表的なガス組成としては、流
量比で、SiCl4が1に対し、CH4が5〜50、H2が50〜500
およびArが30〜300からなるものが挙げられる。なお、
炭素化合物ガスとしてアセチレン(C2H2)等の反応性の
高い炭素化合物ガスを用いる場合、および処理温度やプ
ラズマエネルギーが高く炭素化合物ガスの分解が促進さ
れる場合には、珪素化合物ガスに対する炭素化合物ガス
の比率を小さくすることができる。
また、本工程における真空容器の圧力は、10-2〜10ト
ールであることが好ましい。特に、放電が直流放電によ
る場合には、10-1〜10トールが、高周波放電による場合
には、10-2〜10トールがそれぞれ好ましい。これは、こ
の圧力範囲外では放電が不安定となるからである。
この硬質低摩擦層形成工程において、前記非晶質処理
材表面に潤滑性を有する硬質非晶質炭素−水素−珪素薄
膜表面層の好適な形成方法は、プラズマ反応室内に被処
理材を配設する工程と、該反応室内に残存する気体を排
気する工程と、前記反応室内に昇温用ガスを導入すると
ともに被処理材の表面に所定の蒸着温度に加熱する工程
と、前記反応室内を特殊薄膜形成ガス雰囲気とするとと
もに、ガス噴射室から珪素化合物ガスと炭素化合物ガス
とからなる膜化原料ガスを珪素化合物ガスと炭素化合物
ガスの流量比を1:5〜50とし、放電を行うことにより被
処理材の表面に硬質非晶質炭素−水素−珪素薄膜被膜を
均一に成長させる蒸着工程と、からなることを特徴とす
る。
〔実施例〕
以下、本発明の実施例を説明する。
実施例1 被処理材として高速度剛材を用い、プラズマ化学蒸着
処理として該被処理材表面に非晶質炭素−水素−珪素薄
膜を形成し、該層の性能評価試験を行った。なお、この
処理において用いたプラズマ化学蒸着処理装置を、第1
図に示す。
先ず、ステンレス製のプラズマ反応室11の中央に設け
た基台12の上に、被処理材13として外径20mm×厚さ10mm
の高速度鋼(JIS SKH 51:試料番号1)を、基台12の中
心から60mmの間隔を置いて5つ配置した。なお、基台12
の支持柱14の内部には冷却水を送る冷却水管(図示せ
ず)が取りつけられている。
次に、プラズマ反応室11を密閉したのち、ガス導出管
15に接続された真空ポンプのロータリーポンプ(図示せ
ず)および拡散ポンプ(図示せず)により残留ガスが1
×10-4トールになるまで減圧した。なお、ガス導入管16
は、コントロールバルブを介して各種ガスボンベ(共に
図示せず)に連結している。
次に、1×10-4トールまで減圧した炉内に昇温用ガス
として水素ガスを導入し、同時に真空引きしながら反応
室11の圧力を1トールの保つように調整した。そして、
反応室11の内側に設けたステンレス製陽極板17と陰極
(基台)12の間に数百ボルトの直流電圧を印加して放電
を開始し、被処理材表面が550℃になるまでイオン衝撃
による昇温を行った。ここで、直流電流回路は、陽極17
と陰極12により構成し、内部の被処理材の温度を測定す
る二色温度計(図示せず)からの入力により電源制御さ
れ、被処理材の温度を一定に保つ働きをする。
次に、反応室11内に、四塩化珪素(SiCl4)ガスと、
メタン(CH4)ガス、水素(H2)ガスおよびアルゴン(A
r)ガスを、それぞれ流量3、50、1000、および700cc/m
inで導入して全圧力4トールの特殊薄膜形成雰囲気と
し、被処理材の温度を550℃に保ちながら1時間の直流
放電を持続させることにより化学蒸着処理を行った。
化学蒸着処理の後、放電を止め、被処理材を減圧下
(〜10-3トール)で冷却し、被処理材を反応室11より取
り出したところ、該被処理材の表面には黒色の層が形成
されていた。
この被処理材表面の黒色層について、Χ線回折法によ
る物質同定試験を行った結果、被処理材からの回折線の
他に回折線が認められず、アモルファス状態であること
が分かった。また、EPMA分析により、水素を除く組成で
炭素含有量が77at%と測定され、残部が珪素を主成分と
しその他塩素等を微量含むことがわかった。また、同時
に化学蒸着処理を行った被覆材について燃焼法により水
素含有量を測定したところ、約30〜50at%の範囲内であ
ることが分かった。さらに、レーザーラマン分光分析を
行った。その結果を、第2図に示す。同図中、「1」が
本実施例の結果を示す。第2図に示すように、レーザー
ラマン分光により、1400cm-1付近を中心としたサブバン
ドを持つ1550cm-1付近を中心とした幅広のラマンバンド
を示す擬似ダイヤモンド(ダイヤモンドライクカーボ
ン)が得られており、被覆層中のCはダイヤモンドライ
ク成分が主体であることが分った。
また、被処理材の被覆層の層厚さ、表面硬度の測定試
験、および摩擦摩耗試験を行った。なお、層厚さの測定
は断面光学顕微鏡観察法で行い、表面硬度測定はマイク
ロビッカース硬度計を用い、層表面から荷重10gfで測定
した。摩擦摩耗試験はボールオンディスク試験法を用
い、φ6mmのJIS SUJ 2焼入焼戻材ボール(Hv約800)を
相手材とし、荷重640gf:摺動速度0.2m/sで50分間行っ
た。その結果を、第1表に示す。
比較例1 比較のために、SiCl4ガスの代わりにTiCl4ガスを用い
た以外は、前記実施例1と同様の条件および方法により
プラズマ化学蒸着処理を行った。その結果、被処理材の
表面には、鼠色の層が形成されていた。この鼠色の層に
ついて、Χ線回折法による物質同定試験、EPMA試験、Χ
線光電子分光、およびレーザーラマン分光を行った結
果、水素を除く組成で炭素含有量80at%で残部の主成分
がチタンからなる非晶質炭素と結晶質炭化チタンの混合
物であり、また該非晶質炭素はグラファイトライクCが
主成分であることが分かった。さらに、レーザーラマン
分光分析を行った。なお、レーザーラマン分光分析を行
った結果を、第2図に併せて示す。同図中、「C1」が試
料番号C1の結果を示す。第2図に示すように、レーザー
ラマン分光により、1360cm-1および1590cm-1付近に現れ
る幅広のバンドは、結晶性のくずれたグラファイト(す
なわちグラファイトライクC)によるものである。ま
た、この被覆層の層厚さ、表面硬度、および摩擦摩耗試
験を上記と同様に行った。その結果を、第1表に併せて
示す。
第1表より明らかのごとく、本実施例1の場合、Hv25
00という通常の炭化物、窒化物と同等の硬度を有しなが
ら、0.03という非常に低い摩擦係数を示していることが
分る。
これに対し、比較例1(試料番号C1)では、チタンを
含有させても炭化チタンを形成するのに必要な量を超え
る炭素が硬質化しないために層の硬度が低く、摩耗によ
り容易に層が消失し、摩擦係数が増加するとともに相手
材の凝着が発生した。
ここで、比較例1の層がHv500と軟質であるのは、第
2図に示したように、含有炭素がグラファイトライクで
あるからであり、また、初期の摩擦係数の値0.2も一般
に知られているグラファイトライクの摩擦係数の値に一
致するものである。すなわち、非晶質炭素を含む被覆層
では、該炭素の存在状態が層の硬度や摩擦特性を決定づ
けていると言うことができる。
実施例2 特殊薄膜形成雰囲気中のSiCl4ガスおよびCH4ガスの流
量を、それぞれ5cc/min、80cc/minとした以外は、前記
実施例1と同様の方法で化学蒸着処理を行ったところ、
被処理材の表面に黒色の層が形成されていた(試料番号
2)。この被処理材表面の黒色層について、実施例1と
同様にΧ線回折法による物質同定試験を行った結果、被
処理材からの回折線の他に回折線が認められず、アモル
ファス状態であることが分かった。また、EPMA分析によ
り、水素を除く組成で炭素含有量が約80at%と測定さ
れ、残部が珪素を主成分としその他塩素等を微量含むこ
とが分かった。また、同時に化学蒸着処理を行った被覆
材について燃焼法により水素含有量を測定したところ、
約30〜50at%の範囲内であることが分かった。さらに、
レーザーラマン分光により、被覆層中の炭素はダイヤモ
ンドライクCが主成分であることが分った。その結果
を、第3図に示す。同図中、「2」が本実施例の結果を
示す。また、この被処理材の被覆層の層厚さ、および表
面硬度の測定試験、および摩擦摩耗試験を実施例1と同
様に行った。その結果を、第2表に示す。
実施例3 被処理材として冷間ダイス鋼材を用い、プラズマ化学
蒸着処理として該被処理材表面に非晶質炭素−珪素薄膜
を形成し、該層の性能評価試験を行った。
先ず、被処理材として冷間ダイス鋼(JIS SKD 11:試
料番号3)を用い、珪素化合物ガスとしてトリクロルシ
リコン(SiHCl3)、炭素化合物ガスとしてアセチレン
(C2H2)を用い、それぞれ流量を7cc/minおよび100cc/m
in、プラズマ化学蒸着処理の温度を500℃、プラズマ化
学蒸着処理時間を0.5時間とした以外は、前記実施例2
と同様の条件および方法により、プラズマ化学蒸着処理
を行った。その結果、被処理材の表面には黒色の層が形
成されていた。
この被処理材表面の黒色層について、Χ線回折法によ
る物質同定試験を行った結果、被処理材からの回折線の
他に回折線が認められず、アモルファス状態であること
が分かった。また、EPMA分析により、水素を除く組成で
炭素含有量が85at%であり、残部が珪素を主成分としそ
の他塩素等を微量含むことがわかった。また、同時に化
学蒸着処理を行った被覆材について燃焼法により水素含
有量を測定したところ、約30〜50at%の範囲内であるこ
とが分かった。さらに、レーザーラマン分光により、被
覆層中のCはダイヤモンドライク成分を含んでいること
が分った。その結果を、第3図に併せて示す。同図中、
「3」が本実施例の結果を示す。また、この被処理材の
被覆層の層厚さ、および表面硬度の測定試験、および摩
擦摩耗試験を実施例1と同様に行った。その結果を、第
2表に併せて示す。
比較例2〜7 比較のために、化学蒸着処理時のメタンガスの流量を
30cc/min、および40cc/minとした場合(比較例2および
3:試料番号C2およびC3)について、それ以外の条件は上
述の本実施例2と同様の条件および方法により、プラズ
マ化学蒸着処理を行った。その結果、被処理材の表面に
は茶色の層(試料番号C2)およびこげ茶色の層(試料番
号C3)が形成されていた。これらの層について、Χ線回
折法による物質同定試験、EPMA分析、赤外分光、および
レーザーラマン分光を行った結果、それぞれ水素を除く
組成で炭素含有量60at%および68at%の非晶質炭化珪素
を主成分とする層であることが確認された。しかし、試
料番号C3の層では、レーザーラマン分光により若干のダ
イヤモンドライクの炭素が形成されていることが確認さ
れた。レーザラマン分光の結果を、第3図に併せて示
す。なお、同図中、「C2」が試料番号C2の結果を、「C
3」が試料番号C3の結果を、それぞれ示す。また、これ
らの被覆層の層厚さ、表面硬度および摩擦摩耗試験を上
記と同様に行った。その結果を、第2表に併せて示す。
また、化学蒸着処理時のメタンガスの流量を増加さ
せ、150cc/minとした場合(試料番号C4)について、そ
れ以外の条件は上述の実施例2と同様の条件および方法
により、プラズマ化学蒸着処理を行った。その結果、被
処理材表面にはややくすんだ黒色の層が形成されてい
た。この黒色層について、上記と同様に性能評価試験を
各種分析により行った結果、水素を除く組成で炭素含有
量92at%であり、残部が珪素を主成分とし、その他塩素
等を微量含むことが分かった。しかし、レーザーラマン
分光の結果、被覆層中の炭素はグラファイトライク成分
を含んでいることが分かった。その結果を、第3図に併
せて示す。また、上記と同様に層厚さ、表面硬度および
摩擦摩耗試験結果を行った結果を、第2表に併せて示
す。
さらに、イオンプレーティング法によるダイヤモンド
ライク炭素被覆(比較例5:試料番号C5)、プラズマCVD
法による窒化チタン被覆(比較例6:試料番号C6)、およ
び未処理材(比較例7:試料番号C7)についても、比較試
験として上記と同様に被覆層の層厚さ、表面硬度および
摩擦摩耗試験を行った。その結果を、第2表に併せて示
す。
第2表より明らかのごとく、本実施例2および実施例
3の場合、Hv2000〜2300という通常の炭化物、窒化物と
同等程度の硬度を有しながら、0.03〜0.04という非常に
低い摩擦係数を示し、摩擦深さも浅いことが分る。
これに対し、比較例2(試料番号C2)では、硬度は実
施例2および実施例3と同等であるが、含有炭素量が低
くダイヤモンドライク成分をほとんど含まない非晶質炭
化珪素であるために摩擦係数が高く、それに伴い摩耗深
さも増加した。この0.43という摩擦係数は、焼結体のSi
Cセラミックスと同等の高い値である。また、比較例3
(試料番号C3)では、含有炭素量の増加により過剰炭素
がダイヤモンドライクの炭素として生成しはじめるため
摩擦係数が急激に減少する。しかし、その含有量がまだ
十分ではないため、0.09の摩擦係数を示し、層の摩耗深
さも0.4μmと実施例に比べ大きい値を示した。さら
に、比較例4(試料番号C4)では、水素を除く組成で92
at%の多量を炭素を含んでいるが、第3図に示したラマ
ン分光の結果から、炭素は主にグラファイトライクで存
在しているものと判断されている。しかし、レーザーラ
マン分光においては、グラファイトの感度(ラマン散乱
効率)がダイヤモンドに比べ60倍も高いことから、比較
例4の層においてもダイヤモンドライクの炭素がある程
度存在している可能性がある。これは、第2表からも明
らかのように、層の硬度が比較的高く、摩擦特性の前記
実施例よりは劣るものの比較的良好なのは、ダイヤモン
ドライクの炭素をある程度含んでいるためと考えられ
る。また、比較例5(試料番号C5)のダイヤモンドライ
ク炭素被覆では、Hv5000という高硬度を示すものの、摩
擦係数は0.15と高く、更に相手材の摩耗量が実施例2お
よび3に比べ一桁大きかった。また、比較例6(試料番
号C6)の窒化チタン被覆の場合は、比較例7(試料番号
C7)の未処理材に比較すれば摩擦係数は小さいが、本実
施例2および3に比較すれば摩擦係数で約15倍、摩耗深
さで約7倍と非常に大きな値であった。
このように、本実施例2および実施例3により得られ
た表面層は、現在用いられている被覆材に比べ、非常に
良好な耐摩耗性を示すことが分る。
なお、上記実施例1〜3を比較すると、摩擦係数が0.
03〜0.04と異なっているが、この30%の値の変化は、そ
のまま摩擦力の変化に対応するため、同一の摩擦摩耗形
態である限り摺動部材の摩擦や損傷に対して敏感に影響
を与える。すなわち、例えば第1表および第2表に示し
たように、被覆層の摩耗深さが変化しており、また相手
材の摩耗量も摩擦係数の少しの変化が敏感に対応するの
で、できる限り低い値の摩擦係数を示す非晶質薄膜であ
ることが好ましい。従って、前記実施例1〜3の摩擦係
数0.03〜0.04を有する非晶質薄膜は、比較例C5〜C7の0.
15〜0.92は言うに及ばず、比較例C3の0.09に比較しても
極めて低い摩擦係数を有するという顕著な効果を奏する
ものである。さらに、実施例1および2の摩擦係数0.03
を有する非晶質薄膜は、極めて優れた耐摩耗性を有する
ものである。
なお、第4図に、前記実施例1〜3および比較例2〜
5により得られた薄膜の摩擦係数と該薄膜層中の水素を
除く組成での炭素含有量との関係を示す。なお、同時
に、前記実施例1と同様にし、四塩化珪素(SiCl4)ガ
ス、メタン(CH4)ガス、水素(H2)ガスおよびアルゴ
ン(Ar)ガスの流量を変えて得た薄膜について、同様に
該薄膜の摩擦係数と該薄膜層中の水素を除く組成での炭
素含有量との関係を併せて示す。なお、この場合、炭素
含有量の値は、試料3点の平均とした。
実施例4 珪素化合物ガスとして、テトラメチルシリコン[Si
(CH3]を用いた以外は、前記実施例1と同様の方
法および条件により化学蒸着処理を行ったところ、被処
理材の表面に黒色の層が形成されていた(試料番号
4)。この黒色層について、実施例1と同様の性能評価
試験を行った結果、水素を除く組成で83at%の炭素を含
有する珪素を含むダイヤモンドライクCであり、塩素は
含有していないことが分かった。さらに、同時に化学蒸
着処理を行った被覆材について燃焼法により水素含有量
を測定したところ、約40at%であることが分かった。第
5図に、レーザーラマン分光の結果を、また第3表に前
記と同様の各種性能評価試験結果をそれぞれ示す。なお
第5図中、「4」が本実施例の結果を示す。
比較例8 前記実施例4と同様にして得た非晶質薄膜を、1×10
-6Torr程度の真空中で600℃、1時間の加熱を行い含有
水素を放出させて比較用薄膜を作製した(試料番号C
8)。この比較用試料について、実施例1と同様に性能
評価試験を行った。第5図に、レーザーラマン分光の結
果を、また第3表に前記と同様の各種性能評価試験結果
をそれぞれ示す。なお第5図中、「C8」が試料番号C8の
結果を示す。
第5図より明らかのごとく、炭素の状態は、水素の放
出によりやや変化しているが、ダイヤモンドライクCに
近い状態を保っている。しかし、第3表より明らかのよ
うに、摩擦係数の値は0.11まで上昇し、摩耗深さも増大
している。すなわち、珪素を含有するダイヤモンドライ
クCの構成のみでは0.05以下の低い摩擦係数を実現する
ことが困難であり、水素の含有によってはじめて0.05以
下の低い摩擦係数を達成することができると考えられ
る。
実施例5 被処理材として高速度剛材および冷間ダイス剛材を用
い、プラズマ浸炭処理およびプラズマ化学蒸着処理して
該被処理材表面に鉄炭素化合物層、および非晶質炭素−
水素−珪素薄膜を形成し、該層の性能評価試験を行っ
た。また、この処理において用いたプラズマ化学蒸着処
理装置を、第1図に示す。
先ず、ステンレス製のプラズマ反応室11の中央に設け
た基台12の上に、被処理材13として外径20mm×厚さ10mm
の高速度鋼(JIS SKH 51:試料番号5)を、基台12の中
心から60mmの間隔を置いて5つ配置した。なお、基台12
の支持柱14の内部には冷却水を送る冷却水管(図示せ
ず)が取りつけられている。
次に、プラズマ反応室11を密閉したのち、ガス導出管
15に接続された真空ポンプのロータリーポンプ(図示せ
ず)および拡散ポンプ(図示せず)により残留ガスが1
×10-4トールになるまで減圧した。なお、ガス導入管16
は、コントロールバルブを介して各種ガスボンベ(共に
図示せず)に連結している。
次に、1×10-4トールまで減圧した炉内に昇温用ガス
として水素ガスを導入し、同時に真空引きしながら反応
室11の圧力を1トールに保つように調整した。そして、
反応室11の内側に設けたステンレス製陽極板17と陰極
(基台)12の間に数百ボルトの直流電圧を印加して放電
を開始し、引処理材表面が550℃になるまでイオン衝撃
による昇温を行った。ここで、直流電流回路は、陽極17
と陰極12により構成し、内部の被処理材の温度を測定す
る二色温度計(図示せず)からの入力により電源制御さ
れ、被処理材の温度を一定に保つ働きをする。
次に、プラズマ浸炭用ガスとしてメタン(CH4)ガス
を水素(H2)ガスおよびアルゴン(Ar)ガスとともに、
流量をそれぞれ50、750、および500cc/min導入し、全圧
力を4トールとし、被処理材の温度を550℃に保ちなが
ら6時間直流放電を持続させることによりプラズマ浸炭
処理を行った。
次に、放電を持続させたままで、四塩化珪素(SiC
l4)ガスを3cc/min導入して全圧力を4トールの特殊薄
膜形成雰囲気とし、被処理材の温度を550℃に保ちなが
ら1時間の直流放電を持続させることにより化学蒸着処
理を行った。
化学蒸着処理の後、放電を止め、被処理材を減圧下
(〜10-3トール)で冷却し、被処理材を反応室11より取
り出したところ、該被処理材の表面には黒色の層が形成
されていた。
また、被処理材として冷間ダイス鋼(JIS SKD 11:試
料番号6)を用い、珪素化合物ガスとしてトリクロルシ
リコン(SiHCl3)、炭素化合物ガスとしてアセチレン
(C2H2)を用い、それぞれ流量を5cc/minおよび40cc/mi
n、プラズマ浸炭処理およびプラズマ化学蒸着処理の温
度を500℃、プラズマ化学蒸着処理時間を0.5時間とした
以外は、上述と同様の条件および方法により、プラズマ
浸炭処理およびプラズマ化学蒸着処理を行った。その結
果、被処理材の表面には黒色の層が形成されていた。
これら被処理材表面の黒色層について、Χ線回折法に
よる物質同定試験を行った結果、何れも被処理材からの
回折線の他に回折線が認められず、アモルファス状態で
あることが分かった。また、EPMA分析により、水素を除
く組成で試料番号5の炭素含有量が79at%、試料番号6
の炭素含有量が72at%であり、何れも残部が珪素を主成
分としその他塩素等を微量含むことがわかった。また、
同時に化学蒸着処理を行った被覆材について燃焼法によ
り水素含有量を測定したところ、何れも約30〜50at%の
範囲内であることが分かった。さらに、レーザーラマン
分光分析により、何れの試料においても1400cm-1付近を
中心としたサブバンドを持つ1550cm-1付近を中心とした
幅広のラマンバンドを示す擬似ダイヤモンド(ダイヤモ
ンドライクカーボン)が得られているおり、被覆層中の
Cはダイヤモンドライク成分が主体であることが分っ
た。なお、オージェ電子分光(AES)分析法による深さ
方向元素分析により、中間層として鉄炭素化合物層が0.
2μm形成されていることが分かった。
また、これら被処理材の被覆層の層厚さ、表面硬度、
および摩擦摩耗試験を行った。なお、層厚さの測定は断
面光学顕微鏡観察法で行い、表面硬度測定はマイクロビ
ッカース硬度計を用い、層表面から荷重10gfで測定し
た。摩擦摩耗試験はボールオンディスク試験法を用い、
φ6mmのJISSUJ2焼入焼戻材ボール(Hv約800)を相手材
とし、荷重640gf:摺動速度0.2m/sで50分間行った。その
結果を、第4表に示す。
比較のために、化学蒸着処理時のメタンガスの流量を
20cc/minとした場合(試料番号C9)について、それ以外
の条件は上述の本実施例と同様の条件および方法によ
り、プラズマ浸炭処理およびプラズマ化学蒸着処理を行
った。その結果、被処理材の表面には茶色の層が形成さ
れていた。この茶色層について、Χ線回折法による物質
同定試験、EPMA分析、赤外分析、およびレーザーラマン
分光を行った結果、水素を除く組成で炭素含有量55at%
の非晶質炭化珪素であることが確認された。また、この
被覆層の層厚さ、表面硬度および摩擦摩耗試験を上記と
同様に行った。その結果を、第4表に併せて示す。さら
に、イオンプレーティング法によるダイヤモンドライク
炭素被覆(試料番号C10)、プラズマCVD法による窒化チ
タン被覆(試料番号C11)、および未処理材(試料番号C
12)についても、比較試験として上記と同様に被覆層の
層厚さ、表面硬度および摩擦摩耗試験により行った。そ
の結果を、第4表に併せて示す。
第4表より明らかの如く、本実施例の場合、Hv2000〜
2500という通常の炭化物、窒化物と同等程度の硬度を有
するとともに0.04〜0.05という非常に低い摩擦係数を示
し、相手材の摩耗量も非常に少なかった。これに対し、
比較例C9では、炭素含有量が低いために硬度は実施例と
同等であるが摩擦係数が高く、それに伴い相手材の摩耗
量も増加した。また、比較例C10のダイヤモンドライク
炭素被覆では、Hv5000という高硬度を示すものの摩擦係
数は0.15であり、相手材の摩耗量も実施例に比べ一桁大
きかった。
また、比較例C11の窒化チタンの被覆の場合は、比較
例C12の未処理材に比較すれば摩擦係数、相手材の摩耗
量ともに小さいが、本実施例に比較すれば摩擦係数の値
で約15倍、相手材の摩耗量で約230倍と極めて大きな値
であった。このように、本実施例により得られた表面層
は、現在用いられている被覆材に比べ、非常に良好な耐
摩耗性を示すことが分る。
実施例6 第5表に示した条件以外は、前記実施例5の試料番号
5と同様の方法で化学蒸着処理を行ったところ、被処理
材の表面に黒色の層が形成されていた(試料番号7、
8)。これら被処理材表面の黒色層について、実施例5
と同様にΧ線回折法による物質同定試験を行った結果、
何れも被処理材からの回折線の他に回折線が認められ
ず、アモルファス状態であることが分かった。また、EP
MA分析により、水素を除く組成で試料番号7の炭素含有
量が78at%、試料番号8の炭素含有量が72at%と測定さ
れ、さらに、レーザーラマン分光により被覆層中にはダ
イヤモンドライクCが主成分であることが分った。ま
た、この被処理材の被覆層の層厚さ、表面硬度および摩
擦摩耗試料を実施例5と同様に行った。その結果を、第
6表に示す。
比較のために、中間層としての金属炭素化合物層を形
成させない他は、上記と同様の方法により化学蒸着比較
処理を行った。その結果、被処理材の表面には黒色の層
が形成されていた(試料番号C13)。この黒色層につい
て、Χ線回折法による物質同定試験、EPMA分析およびレ
ーザーラマン分光を行った結果、試料番号7および8と
同様の炭素含有量78at%の非晶質炭素−水素−珪素薄膜
であることが確認された。また、同時に化学蒸着処理を
行った被覆材について燃焼法により水素含有量を測定し
たところ、何れも約30〜50at%の範囲内であることが分
かった。また、この被覆層の層厚さ、表面硬度および摩
擦摩耗試験を摩擦摩耗試験の荷重を4600gfとした以外は
上記と同様に行った。その結果を、第6表に併せて示
す。
第6表より明らかのごとく、本実施例の場合、Hv2300
〜2500という通常の炭化物・窒化物と同等の硬度を有し
ながら、0.04〜0.05という非常に低い摩擦係数を示し、
相手材の摩耗量も非常に少なかった。これに対し、比較
例C13では、被覆層の密着性が悪いために高荷重での摩
耗試験中に被覆層の剥離が発生してしまい、剥離前には
実施例6の試料番号7と同様の低い摩擦係数を示してい
たが、剥離の発生とともに摩擦係数が急増し、それに伴
い相手材の摩耗量も増加してしまった。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の実施例1〜実施例6で用いられたプラ
ズマ化学蒸着処理装置の概略図、第2図は本発明の実施
例1および比較例1で得られた薄膜のレーザーラマン分
光結果を示す線図、第3図は本発明の実施例2、3およ
び比較例C2〜C5で得られた薄膜のレーザーラマン分光結
果を示す線図、第4図は本発明の実施例1〜3および比
較例C2〜C5で得られた薄膜の摩擦係数と該薄膜層中の水
素を除く組成での炭素含有量との関係を示す線図、第5
図は本発明の実施例4および比較例C8で得られた薄膜の
レーザーラマン分光結果を示す線図である。 1……試料番号1 2……試料番号2 3……試料番号3 4……試料番号4 11……プラズマ反応室 12……基台 13……被処理材 14……支持柱 15……ガス導出管 16……ガス導入管 C1……試料番号C1 C2……試料番号C2 C3……試料番号C3 C4……試料番号C4 C5……試料番号C5 C8……試料番号C8
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C23C 16/00 - 16/56 C30B 29/04 JOIS

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】炭素と水素を主成分とする非晶質薄膜であ
    って、該非晶質薄膜中の水素含有量が30〜50at%であ
    り、残りの組成が原子比で70%〜90%の炭素と、残部の
    主成分が珪素質物質とからなり、かつ前記非晶質薄膜が
    擬似ダイヤモンドを含んでなり、高硬度でかつ0.05以下
    の非常に低い摩擦係数を有してなることを特徴とする潤
    滑性を有する硬質非晶質炭素−水素−珪素薄膜。
  2. 【請求項2】鉄または鉄合金材料からなる基材部と、 該基材部の表面に形成した金属炭素化合物層と、 該金属炭素化合物層の表面に形成された炭素と水素を主
    成分とする非晶質薄膜であって、該非晶質薄膜中の水素
    含有量が30〜50at%であり、残りの組成が原子比で70%
    〜90%の炭素と、残部の主成分が珪素質物質とからな
    り、かつ前記非晶質薄膜が擬似ダイヤモンドを含んでな
    り、高硬度でかつ0.05以下の非常に低い摩擦係数を有し
    てなる炭素−水素−珪素薄膜表面層と、 からなることを特徴とする表面に硬質低摩擦層を有する
    鉄系金属材料。
  3. 【請求項3】鉄または鉄合金材料からなる被処理材の表
    面に金属炭素化合物層を形成する工程と、 該金属炭素化合物層を形成した被処理材を、プラズマCV
    D法により、珪素化合物ガスと炭素化合物ガスを主体と
    した特殊薄膜形成ガス雰囲気中で、珪素化合物ガスと炭
    素化合物ガスの流量比を1:5〜50の範囲内として、放電
    させることにより被処理材表面に潤滑性を有する硬質非
    晶質炭素−水素−珪素薄膜表面層を形成する硬質低摩擦
    層形成工程と、 からなることを特徴とする表面に硬質低摩擦層を有する
    鉄系金属材料の製造方法。
  4. 【請求項4】前記金属炭素化合物層が鉄炭素化合物層で
    あり、該鉄炭素化合物層の形成は、炭素化合物ガスを含
    む雰囲気中で低温プラズマ処理により行うことを特徴と
    する請求項(3)記載の表面に硬質低摩擦層を有する鉄
    系金属材料の製造方法。
JP23776790A 1989-12-28 1990-09-07 潤滑性を有する硬質非晶質炭素―水素―珪素薄膜、表面に該薄膜を有する鉄系金属材料、およびその製造方法 Expired - Lifetime JP2971928B2 (ja)

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