JP2970294B2 - ブラウン管とその製法 - Google Patents

ブラウン管とその製法

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  • Surface Treatment Of Glass (AREA)
  • Formation Of Various Coating Films On Cathode Ray Tubes And Lamps (AREA)
  • Vessels, Lead-In Wires, Accessory Apparatuses For Cathode-Ray Tubes (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、反射防止膜を備えた高
精細ブラウン管及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】最近、ブラウン管の高性能化の観点か
ら、ブラウン管の表面には様々な表面処理膜が作製され
るようになってきている。反射防止膜や帯電防止膜は、
その代表的なものである。中でも、反射防止膜は外光の
反射を抑え、ブラウン管上への映り込みを防止し、視認
性の向上を図るものであり、ブラウン管の機能面で重要
なものとなっている。反射防止膜の中でも、表面に微細
な凹凸を形成し、外来光を物理的に乱反射させるノング
レア膜は、代表的なものである。反射防止膜や帯電防止
膜の形成方法としては、CVD法やスパッタ法などがあ
るが、大がかりな真空装置が必要な上、大型パネル化の
方向に進行しているブラウン管の大面積フェース面への
成膜方法としては適しておらず、生産性などの面でも問
題が多い。このため、現在、ゾルゲル法などで作製した
塗布溶液を用い、これをスプレー又は、スピン塗布し
て、これらの膜を形成する方法が主流となっている(特
開昭61−118946号,同62−143348号)。反射防止膜の材
料としては、最表面にSiO2 薄膜を形成したものが多
い。これらの膜はSi(OR)4 などの金属アルコキシド
を原料に溶液中に無機ポリマー前駆体を生成し、この溶
液をブラウン管フェース面上にスプレー塗布した後、つ
いで150〜180℃程度の熱処理により、膜中の有機
物の加熱分解及び加熱硬化して、表面凹凸を有するSi
2 膜を形成するものである。形成した膜の表面に凹凸
が形成されているものは、ノングレア膜と呼ばれ、該ノ
ングレア膜の表面の凹凸は、外来光を拡散反射させるこ
とにより、ブラウン管フェース面への外光の映り込みを
防止し、表示画像を見やすくするものである。また、こ
れらの膜は、単層膜以外に2層以上に積層した膜を使用
することができる。また、前記ノングレア膜の下層に導
電性膜を形成し、ブラウン管表面の帯電を防止してブラ
ウン管の高性能化を図ったものもある。他にカラーブラ
ウン管において、その色彩をより明瞭にするために、ノ
ングレア膜に有機材料を含有させたり、ノングレア膜の
下層に有機染料を含有した膜を形成したものもある。一
般に、ゾルゲル法による薄膜作製方法は、膜硬化のため
に高温加熱の必要があるが、低温成膜技術の一つとし
て、特開平3−18893号に記載の方法がある。この方法
は、有機金属化合物と水とを含む溶液に、特定波長の電
磁波を照射して前記金属酸化物のプレポリマーの溶液を
塗布して薄膜を形成するか、又は、反応溶液を塗布後、
特定波長の光エネルギーを照射して、プレポリマーを形
成させ、オゾン雰囲気下で酸化して膜を形成するもので
ある。これにはブラウン管の反射防止膜については記載
されていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記した通常の方法で
のディスプレイ用コーティング膜の作製方法では、原料
に有機物を含むため、それら不純物の除去、及び薄膜の
緻密化のためには高温での熱処理が必要である。このた
め、熱処理プロセスの際、生成したSiO2 膜中に構造
欠陥であるSi欠陥が発生しやすい。このSi欠陥は、
可視光波長によって発光するため、特にカラーブラウン
管におけるR,G,B光による発光が生じ、これが原因
となり、画面の不鮮明さが生じ、問題となっている。ま
たブラウン管作製プロセス上からも、高い熱処理を与え
るため、製品内部に熱歪が生じることや、電子銃のエミ
ッション特性の劣化などの問題が生じている。またノン
グレア膜とブラウン管パネルとの熱膨張率の差により、
形成した膜に亀裂が生じたり、膜が剥離するなどの問題
があった。またそのために、ブラウン管作製プロセスに
おける焼成温度の昇降温度には、5℃/分程度で行う必
要があり、温度調整の手間と焼成に時間がかかった。ま
た、熱処理するために大型炉が必要なため、該膜作製設
備が大がかりとなり、製造コストの点からも問題となっ
ていた。本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決
するためになされたもので、低温で作製した緻密な反射
防止膜を備えた高精細ブラウン管及びその製造方法、及
び装置を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明では、基体表面の少なくとも一部に酸化ケイ
素を主成分とし、可視光領域の波長の光照射によっても
実質的に発光しない反射防止膜を備えた高精細ブラウン
管を作製したものである。またこの酸化ケイ素を主成分
とする反射防止膜中における、ケイ素の構造欠陥を10
10−1014個/cm3 である膜を形成して、高精細ブラウ
ン管としたものである。また本発明における反射防止膜
は、酸化ケイ素を主成分とし、膜中に含まれる全Si−
O−Si単位のうち、屈曲したSi−O−Si単位の割
合が30%以下であり、残りが直線的なSi−O−Si
単位である反射防止膜を作製したことを特徴とする。ま
た本発明の反射防止膜は、酸化ケイ素を主成分とし、紫
外光の250nmより190nmの吸収が小さいことを特
徴とし、またSi−O−Si対称伸縮振動に対応するピ
ークが812cm-1より高波長側に現われることを特徴と
する。上記した反射防止膜を備えた高精細ブラウン管に
おいて、酸化ケイ素以外の金属酸化物を含有し、酸化イ
ンジウム,酸化亜鉛、及び酸化アンチモンの少なくとも
一種を含むことにより導電性コーティング膜を備えた高
精細ブラウン管とすることができる。また上記の反射防
止膜は、ブラウン管フェース面上にゾルゲル法によるシ
リコンアルコキシドを含む溶液をスプレーコートし、低
温加熱すると共に紫外光照射して、作製した表面に凹凸
を形成することにより製造することができる。上記薄膜
を作製するために、本発明では、ブラウン管のパネル表
面にゾルゲル法によりM(OR)nで表示される金属アル
コキシド溶液の塗膜を形成し、該塗膜を紫外光照射によ
り硬化して、微細な凹凸膜を形成することを特徴とする
ノングレア膜を有する高精細ブラウン管の製法としたも
のである。また本発明では、ブラウン管の少なくともパ
ネル表面に帯電防止膜を作製し、帯電防止膜を形成した
ブラウン管のパネル表面にゾルゲル法により、M(OR)
nで示される金属アルコキシドを原料とする溶液の塗膜
を形成し、該塗膜を紫外光照射により硬化して微細な凹
凸膜を形成することを特徴とするノングレア膜を有する
ブラウン管の製法としたものである。前記ノングレア膜
を有するブラウン管の製法において、ノングレア膜が有
機染料を含んでいてもよいし、またブラウン管パネル面
に、下地膜として有機染料を含む被膜が形成されていて
もよい。また紫外光照射は、100℃以下の雰囲気中で
行うのがよい。更に、本発明では、前記ノングレア膜を
有するブラウン管の製造装置として、ブラウン管パネル
面にノングレア膜形成用溶液を塗布する塗布手段を備
え、前記溶液塗布後のブラウン管を移送する手段を備
え、前記塗膜を光照射する紫外光照射手段を備えている
こととしたものである。そして、上記製造装置におい
て、塗膜の紫外光照射時に該塗膜面を加熱できる加熱手
段を備えているものがよい。
【0005】
【作用】本発明のポイントは、金属アルコキシドゾルの
塗膜を形成し、これを熱エネルギーにより無機膜に変換
するゾルゲル法において、熱エネルギーの代わりに光エ
ネルギーを使用することにある。すなわち光照射により
硬化して形成したノングレア膜をブラウン管パネル面に
設ける点にある。通常、ゾルゲル法は、金属アルコキシ
ドを原料に溶液中における加水分解反応と縮合反応を基
本とし、溶液中に無機ポリマー前駆体を生成し、つい
で、この溶液を成膜し、熱処理して酸化物薄膜を得るも
のである。本発明では、このゾルゲル反応において、金
属−アルコキシ基結合の切断に必要なエネルギーを紫外
光照射により付与し、ゾルゲル反応を完遂させることが
できる。また、この溶液を成膜後、オゾンを発生させる
より短波長の光を照射し、低温で化学量論比の揃った酸
化物薄膜を得ることができる。本手法を用いれば、従来
よりも低温で緻密な薄膜を得ることができるため、ブラ
ウン管表面処理膜の作製手法としては最適である。ま
た、本発明は、紫外光照射に加熱を併用しても良い。こ
の場合の加熱温度は、これまでよりも低温度、例えば1
00℃以下で十分であり、また、短時間(10〜15分
程度)の加熱でよいので、ブラウン管内部に及ぼす熱の
影響はほとんど無い。このため、ブラウン管の電子銃の
エミッション特性への悪影響も無く、また、ブラウン管
全体の熱歪みも避けることができる。また、熱処理に伴
う膜剥れなどの発生も除去することができる。また、低
温で処理時間を短縮できるため、製造コスト,設備コス
トの大幅な低下が見込める。特に、加熱をする場合、本
手法によれば、低温でよいため加熱上昇温度を従来より
も早くすることができる。たとえば、従来の手法では1
60℃で熱処理するため、加熱上昇温度は5℃/min と
非常にゆっくりとしたものであった。本手法によれば加
熱の温度は、100℃以下でよいため加熱上昇温度は2
倍以上に早めることができる。
【0006】本発明のさらに良い点は、低温で化学量論
比の揃ったノングレア膜を作製することができるため、
膜中におけるSiO2 の構造欠陥を従来のものと比較し
て、大幅に減少することができることである。通常の手
法による高い温度での熱処理(150〜180℃以上)
では、膜中にSiO2 構造欠陥(E′センタ等)が生じ
るため、可視光領域の光があたるとこの領域全体に蛍光
を発する様になる。この蛍光は、カラーブラウン管の場
合、赤,青,緑のカラー3原色の鮮明さを阻害するた
め、高精細ブラウン管を開発する場合、大きな問題とな
るものである。本発明によれば、構造欠陥の極めて少な
い膜が得られるため、カラーブラウン管等のR,G,B
発光では、実質的に蛍光を生じない膜が得られる。この
ため、本発明による発光しない膜では、CRT内部から
出るR,G,Bの色を鮮明に画面上から視認者へと伝達
することができる。一方、従来の方法で作製した膜は、
可視光領域の光の照射によって数時間にわたって蛍光を
発しつづける。このため、ブラウン管面に不鮮明さを生
じる。ブラウン管の螢光体の発する発光スペクトルを測
定すると、従来の膜を形成したものでは、B,Gのスペ
クトルは余分な蛍光が重なっているため、かなり幅広な
ものとなる。しかし、本発明の膜を形成したものでは、
余分な蛍光が無いためスペクトルの半値幅は80nm以
下と、より狭いものとなり、これが色純度の向上につな
がる。
【0007】また、この構造欠陥は、SiO2 ネットワ
ーク構造における欠陥であるため、膜の機械的強度及び
耐水性に大きな影響を及ぼす。膜の強度及び耐水性は、
反射防止膜であるノングレア膜がブラウン管パネルの最
表面に形成されるため、特に重要な要素である。本発明
によるSiO2 膜は、構造欠陥が少ないため、膜の強度
及び耐水性とも向上している。膜の構造欠陥及びその定
量は、電子スピン共鳴スペクトル(ESR)により測定
することができる。ESRにより推定されたSi欠陥の
量は、1010−1014個/cm3 である。図4に示すよう
に、本発明によるSiO2 膜は、160nmまで透明な
ものを作製することができるが、従来の熱処理のみの膜
では、紫外領域に吸収を持ち、200nmより短波長側
では強い吸収が生じる。これは、SiO2 膜の構造欠陥
に基づく吸収であると言われており、吸収スペクトルか
らも、膜の構造欠陥の存在を知ることができる。本発明
の手法により、熱処理時に光照射することにより、紫外
領域200nm以下の吸収と、可視光照射した際発生す
る蛍光が消滅する。これは、光照射することにより、膜
の構造欠陥が無くなったことを意味する。また、膜の分
子構造も、光照射した膜と熱処理のみの膜とでは異なる
ことが明らかとなった。膜の分子構造に関する情報は、
29Si固体NMR、またはラマン分光スペクトルの測定
により得られる。例えば、ラマン分光では、SiO2
中におけるSi−O−Si結合の屈曲性及び結合力の強
さの情報を得ることができる。ラマンスペクトルにおけ
る、Si−O−Si対称伸縮振動及び逆対称伸縮振動の
両者のピークが観察されれば、膜中のSi−O−Si結
合は屈曲した結合を多く含む。また、対称伸縮振動のみ
が観察され、逆対称伸縮振動のピークが観察されなけれ
ば、膜中のSi−O−Si結合は直線的な結合だけから
なる。屈曲したSi−O−Si結合は歪が大きいため、
これを多く含む膜の強度は弱いものとなる。また、耐水
性においても、この歪の大きなSi−O−Si結合を水
分子が攻撃しやすくなるために、耐水性は悪化する。一
方、これらラマンシフトのピーク位置が、高波数側であ
るほど強い結合が形成されている。以上のように、ラマ
ン分光においてピーク強度及び振動の種類及びラマンシ
フトの位置より、膜の分子構造の変化を半定量的に知る
ことができる。ゾルゲル法で常温で作製した膜では、弱
い対称伸縮振動と強い逆対称伸縮振動が観察され、膜中
に不安定な歪が大きな屈曲したSi−O−Si結合が多
量に含まれることが観察される。この膜を熱処理して、
次第に処理温度を上昇させていくと、両者のピーク強度
比は逆転し、数百℃で熱処理した膜では、強い対称伸縮
振動は観察されるが、逆対称伸縮振動は観察されなくな
る。すなわち、熱処理により、不安定な屈曲したSi−
O−Si結合から安定な直線状Si−O−Si結合へと
分子構造の変化が生じたことがわかる。一方、光照射し
た場合、熱処理した場合と同様なスペクトルの変化が観
察されるが、変化の生じる温度が半分以下であることが
判明した。すなわち、光照射することにより、従来より
も低温で、安定な膜を得ることができる。光照射して作
製した膜のうち、反射防止膜として、充分な強度を持つ
膜では全Si−O−Si単位のうち、屈曲したSi−O
−Si単位の割合が30%以下であり、残りが直線的な
Si−O−Si単位であることが判明した。すなわち、
この比率以上の膜で充分な強度の膜が得られることにな
る。以上のように、本発明によれば、SiO2 膜中にお
けるSi欠陥のない(少ない)また、膜中における歪の
ない直線的なSiO2 ネットワーク構造を持つノングレ
ア膜を作製することができる。これにより、高精細ブラ
ウン管を提供することができる。また、本手法は、ノン
グレア膜だけではなく、光の干渉効果を利用した積層膜
の反射防止膜にも適用できることは言うまでもない。ま
た、光照射用光源として、レーザ光を用いても良い。
【0008】
【実施例】
(実施例1)テトラエトキシシラン,水,エタノール,
硝酸をモル比で、1:12:45:0.25 の割合で混
合して原料溶液とした。この溶液を作製して、すぐに、
ブラウン管フェース面にスプレーコーティングした。こ
の薄膜上に、90℃で加熱しながら254nm(10m
W/cm2)、ついで184nm(1mW/cm2)の光を1
0分間照射した。このブラウン管の表示画面は、蛍光体
(R,G,B)の発光による、ノングレア膜の無用な発
光が生じないため、色彩,色調度の極めて高いブラウン
管が製造できた。図1に蛍光体(R,G,B)の発光ス
ペクトルを示す。本発明のブラウン管のものは(点
線)、従来のもの(実線)に比べ、その半値幅が狭いた
め、色純度が向上した。また、表面は、高さが0.2−
0.3μm,幅が30μm程度の凹凸を持つ反射防止機
能の膜が作製されているため、反射率1%以下の反射の
少ない高精細ブラウン管を作製することができた。次に
本実施例で作製した反射防止膜及び従来の熱処理のみの
方法で作製した反射防止膜について、その性質を比較し
て示す。図2は、160℃で熱処理した膜に、490n
mの可視光を照射したときのノングレア膜の発光スペク
トルを示したものである。530nm付近にピークを持
ち、可視光領域全域にわたり、幅広な発光スペクトルを
示す。この発光は、可視光領域全般にわたっているた
め、画面は、緑白色発光が生じた状態となる。また、こ
の発光強度を時間に対してプロットしたものを図3に示
す。この発光は、かなり長時間にわたり続く。またこの
発光は、カラーブラウン管の蛍光体RGB発光のスペク
トルに重なりあうため、画像の不鮮明さを生じさせる。
一方、光照射して作製した膜では、このような発光は観
察されない。このため、高精細ブラウン管を作製するこ
とが可能となった。この発光は、膜の欠陥構造によるこ
とが知られており、ESRよりE′センタの存在が確認
された。また、その量は1017個/cm3 であった。一
方、光照射膜ではその存在は、確認されない。図4に膜
の吸収スペクトルを示す。熱処理膜は、紫外光領域に吸
収を持ち、200nm付近よりその吸収強度が立ち上が
る。この吸収は、SiO2の構造欠陥に基づく吸収と言われ
ており、吸収スペクトルからも、熱処理膜の構造欠陥が
推定される。一方、光処理膜では、このような吸収は観
察されない。図5には、膜の分子構造についての情報が
得られる光照射した膜のラマンスペクトルの変化を示
す。図中(a),(b),(c)はそれぞれSi−O−Si
対称伸縮振動,Si−OH,Si−O−Si逆対称伸縮
振動である。光照射すると(c)のピークが減じ、
(a)のピークが増加していることがわかる。(c)は
屈曲したSi−O−Siの結合に対応したピークであ
り、次第に屈曲した構造が直線性の構造に変化している
ものと推定される。同様な変化は、従来の方法では、高
い処理温度で生じる。このスペクトルより90℃光処理
膜において、屈曲性と直線性のSi−O−Si単位を見
積ったところ、屈曲したSi−O−Si単位が10%
で、残りは、直線性のSi−O−Si単位であることが
判明した。図6には、(a)のSi−O−Si対称伸縮
振動ピーク位置の変化を示す。処理温度の増加と共にこ
のピーク位置は高波数側へ移行し、結合が強まっている
ことが観察される。90℃光処理膜のピーク位置は81
2.5cm-1 であり、この位置は、160℃熱処理膜に匹
敵する。すなわち光処理することにより低温で、高い温
度で処理したものに匹敵する強いネットワーク構造のも
のが得られた。
【0009】(実施例2)テトラエトキシシラン,水,
エタノール,硝酸をモル比で、1:12:45:0.2
5の割合で混合し、直径0.1μm以下の酸化アンチモ
ンを含有した酸化スズ(Sb/Sn=5mol%)の微粒子
をテトラエトキシシランに対して等量加えて、それらを
均一に分散させて原料溶液とした。この溶液をブラウン
管表面にスプレーコートし、成膜した。この膜に90℃
で加熱しながら254nm(10mW/cm2)、ついで
184nm(1mW/cm2)の光を10分間照射した。
作製した膜は、SiO2 マトリックス中に導電性の酸化
アンチモンを含有した酸化スズの微粒子が均一に分散し
た状態となっている。この膜の抵抗は、表面抵抗で10
9Ω/□であった。本手法を用いて作製した帯電防止兼
反射防止膜は、従来問題となっていた高熱処理によるブ
ラウン管内部に与える悪影響もなく、良好な性能を示し
た。図7は、ブラウン管のスイッチオンついでオフ以
降、パネル最外表面で観測される誘導電圧が減衰する帯
電特性を示したものである。図中(a)は、反射防止膜
のみのもの、(b)は、本実施例のものである。酸化ス
ズを含まないものは、誘導電圧が0になるのに5分以上
を要するのに対して、本実施例の膜を付けたものでは、
数秒で誘導電圧が0になるのが確かめられた。本実施例
の膜は、また、反射防止機能も良好であった。
【0010】(実施例3)テトラエトキシシラン,水,
エタノール,硝酸をモル比で、1:12:45:0.2
5の割合で混合し、これに直径0.1μm以下の酸化ス
ズを含有した酸化インジウム(Sn/In=5mol%)の
微粒子をテトラエトキシシランに対して等量加えて、そ
れらを均一に分散させて原料溶液とした。この溶液をブ
ラウン管表面にスプレーコートし、成膜した。この膜に
90℃で加熱しながら254nm(10mW/cm2)、ついで
184nm(1mW/cm2)の光を10分間照射した。
作製した膜は、SiO2 マトリックス中に導電性の酸化
スズを含有した酸化インジウムの微粒子が均一に分散し
た状態となっている。この膜の抵抗は、表面抵抗で10
9Ω/□ であった。本手法を用いて作製した帯電防止兼
反射防止膜は、従来問題となっていた高熱処理によるブ
ラウン管内部に与える悪影響もなく、良好な性能を示し
た。この膜は、スイッチオン時にも発光がなく、また、
反射防止及び帯電防止の両機能を持っているため、高精
細なブラウン管が得られた。
【0011】(実施例4)テトラエトキシシラン,水,
エタノール、硝酸をモル比で、1:12:45:0.2
5の割合で混合し,直径0.1μm以下の酸化アンチモ
ンを含有した酸化スズ(Sb/Sn=5mol%)の微粒子
をテトラエトキシシランに対して等量加えて、それらを
均一に分散させて原料溶液とした。この溶液をブラウン
管表面にスプレーコートし、成膜した。ついで、テトラ
エトキシシラン,水,エタノール,硝酸をモル比で、
1:12:45:0.25の割合で混合した溶液をブラ
ウン管フェース面にスプレーコーティングした。この薄
膜上に、90℃で加熱しながら254nm(10mW/
cm2)、ついで184nm(1mW/cm2)の光を10分
間照射した。このブラウン管は、2層膜が形成されてお
り、下層は帯電防止膜、上層は反射防止機能を持つ膜で
ある。このブラウン管は、可視光領域に編な発光がない
ため、高精細であった。また、反射防止及び帯電防止の
両機能も良好であった。
【0012】(実施例5)テトラエトキシシラン,水,
エタノール,硝酸をモル比で、1:12:45:0.2
5 の割合で混合した溶液に、570nm付近に吸収波
長を持つキナクドリン系の耐光性有機染料のエタノール
溶液をテトラエトキシシランに対して約5mol%加え
た。この溶液をブラウン管上にスピンコート(150r
pm)して膜を形成した。ついで、この膜上にテトラエ
トキシシラン,水,エタノール,硝酸をモル比で、1:
12:45:0.25 の割合で混合した溶液を実施例1
で示したものと同様な方法で反射防止膜を形成した。こ
のようにして作製したブラウン管は、人間の視感感度が
最も高い550−570nmに吸収を持つ膜が形成され
ているため、外来光の550−570nm付近の光を吸
収し、反射防止機能を高める。このようにして高精細な
ブラウン管を作製した。
【0013】(実施例6)図8に高性能ブラウン管のノ
ングレア膜の製造装置の概略図を示す。塗膜を形成する
ブラウン管は、フード16内を移動するコンベア14上
の固定台15に取り付けられ、膜形成用溶液貯蔵タンク
18から導入される該溶液をスプレーガン13により、
ブラウン管11のパネル面に吹き付け塗布する。塗膜形
成後のブラウン管はコンベア14によって移送され、金
属アルコキシド溶液に対応した波長の光及びオゾンの発
生のための紫外線ランプ17が設けられたフード16内
に移送され、前記と膜の硬化に必要な光の照射を受け
る。膜形成用溶液貯蔵タンク18にはノングレア膜,ノ
ングレア帯電防止膜,色付きノングレア膜等必要な膜形
成溶液を入れスプレーガン13に送液することができ
る。この製造装置では従来のように加熱する必要がない
ので経済的であり、加熱炉が不要なため装置も小型化で
きる。また、紫外光照射時に100℃以下の加熱を併用
すればより硬化を促進することができるが、この場合の
加熱はフード16内へ加熱空気を挿入することで、十分
目的を達成することができる。
【0014】
【発明の効果】本発明によれば、低温で緻密な反射防止
膜を作製することができる。この薄膜は、膜の欠陥が無
いため、螢光体の光が照射されても余分な発光を生じ無
い。このため、従来のものと比べ、色純度の向上した高
精細なブラウン管を作製することができる。また、極め
て低温かつ短時間で膜を形成できるため、コスト低減に
大きな効果を及ぼす。
【図面の簡単な説明】
【図1】カラーテレビ螢光体の発光スペクトルの比較
(点線−光処理膜,実線−熱処理膜)。
【図2】熱処理膜の発光スペクトル。
【図3】熱処理膜の発光スペクトルの時間変化。
【図4】光処理膜,熱処理膜の吸収スペクトル(a−熱
処理膜,b−光処理膜)。
【図5】光処理膜のラマンスペクトルの変化。
【図6】光処理膜におけるSi−O−Si対称伸縮振動
の処理温度依存性。
【図7】スイッチ印加時のブラウン管表面上に誘導され
る電圧。
【図8】ブラウン製造設備。
【符号の説明】
11…ブラウン管、12…形成膜、13…スプレーガ
ン、14…コンベア、15…固定台、16…フード、1
7…光照射用ランプ、18…膜形成用溶液貯蔵タンク。
フロントページの続き (72)発明者 高橋 研 茨城県日立市久慈町4026番地 株式会社 日立製作所 日立研究所内 (56)参考文献 特開 昭61−118932(JP,A) 特開 平3−197572(JP,A) 特開 昭64−41149(JP,A) 特開 平1−154445(JP,A) 特開 平5−107403(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) H01J 29/88 H01J 29/89 C03C 17/25

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ガラス基板と、 該ガラス基板上にゾルゲル法でシリコンアルコキシドを
    含む溶液をスプレーコートした後、熱処理しながら光照
    射して形成した反射防止膜とからなるブラウン管であっ
    て、該反射防止膜が50−50nmの光を吸収する
    有機染料を含むことを特徴とするブラウン管。
  2. 【請求項2】ガラス基板と、 該ガラス基板上にゾルゲル法でシリコンアルコキシドを
    含む溶液をスプレーコートした後、熱処理しながら光照
    射して形成した反射防止膜とからなるブラウン管であっ
    て、該ガラス基板と該反射防止膜との間に50−5
    0nmの光を吸収する有機染料を含む皮膜が形成されて
    いることを特徴とするブラウン管。
  3. 【請求項3】ゾルゲル法により、M(OR)n(M:金
    属,R:低級アルキル基,n:整数)で示される金属ア
    ルコキシド溶液の塗膜を形成する塗膜工程と、 該塗膜を熱処理しながら紫外光照射により硬化する硬化
    工程とからなることを特徴とする反射防止膜を有するブ
    ラウン管の製法。
  4. 【請求項4】ブラウン管のパネル面に反射防止膜形成用
    溶液を塗布する手段と、 前記溶液塗布後のブラウン管を移送する手段と、 前記塗膜を加熱できる手段と、 前記塗膜を熱処理しながら、前記塗膜を光硬化する光照
    射手段を備えていることを特徴とする反射防止膜を有す
    るブラウン管の製造装置。
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