JP2883018B2 - 射出成形機の逆流防止機構 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本願発明は、射出成形機の射出時
に射出シリンダ内を摺動する射出手段の先端部付近に配
置され、射出及び保圧時における溶融樹脂の逆流を阻止
するための逆流防止機構に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、かかる逆流防止を目的とするもの
として、図５、６に示す機構のものがあった。

【０００３】この機構は、インラインスクリュ方式を採
る射出成形機のスクリュヘッド先端部に配置されたもの
である。これは、円筒形の内空を有し、先端部にノズル
３０が形成されたバレル３１内に、外周にスクリュ溝３
２が刻設され可塑化及び射出を兼ねたスクリュ３３を、
軸回転自在にかつ摺動自在に内蔵した構成が採られてい
る。スクリュ３３の先端部３３ｔ（スクリュヘッド）に
は、前方及び後方にそれぞれスクリュ部テーパー３４
ｆ、３４ｂを介して縮径された首部３５が形成されてい
る。

【０００４】そして、該首部３５には、リング状の逆流
防止リング（以下「従来リング」と略称。）３６が、内
側周壁と一定の間隙３７を持って環装されている。この
従来リング３６は、バレル１の内空壁に摺動可能に適合
する外側周壁をなし、かつその内側周壁には前述の前後
スクリュ部テーパー３４ｆ、３４ｂにそれぞれ略適合す
る前方及び後方のリング部テーパー３８ｆ、３８ｂが形
成されている。さらに、前方のリング部テーパー３８ｆ
には、溶融材（主に溶融樹脂材）が流れる複数条の溝３
９、３９、・・が放射状に形成されている。

【０００５】以上の構成により、スクリュ３３の回転に
より可塑化された溶融材は、スクリュ溝３２の回転によ
り順次前方（図面上、左側）に圧送されて、従来リング
３６が前方へ移動してできる間隙４０と、前記の間隙３
７と、及び溝３９とを通ってバレル３１の先端内空３１
ｓへ送られる（図５の状態）。

【０００６】そして、先端部内空３１ｓへ貯溜される溶
融材の増加による膨張圧がスクリュヘッド３３ｔの前面
に作用し、スクリュ３３を後方（図面上、右側）へ移動
させる。

【０００７】次に、スクリュ３３が所定の後退距離に達
したところで、スクリュ３３の回転を停止させ、今度は
連結されたスライド駆動機構（図示省略）によってスク
リュ３３を前方に摺動移動させる。これにより、先端内
空３１ｓに貯溜された溶融材料は、ノズル３０から成形
金型内（図示省略）に所定の射出圧で射出される。そし
て射出終了後は、スクリュ３３を先端内空３１ｓに停止
させて、射出材料が硬化する一定の時間一定圧力を維持
させる（「保圧」という。）ものである。

【０００８】この移動時の圧力によって、従来リング３
６は、首部３５の軸に沿って後方へ移動し、後方のスク
リュ部テーパー３４ｂに当接させられる（図６の状
態）。これにより、間隙４０が閉塞され、首部３５から
後方への溶融材料の移動が阻止されることになる。

【０００９】

【発明が解決しようとする課題】しかし、かかる構成の
逆流防止機構では、従来リング３６は本来回転自在な状
態で環装されるはずであるが、実際には機密性を高める
ためバレル３１の内壁にある程度密着した状態にする必
要があるため（図５の状態）、全く回転自在であるとは
言い難かった。そのため、接触しているスクリュ部テー
パー３４ｆとリング部テーパー３８ｆとの間に摩擦熱が
発生していた。この摩擦は金属どうしの接触であるため
かなりの高温となり、この熱が溶融樹脂を過熱させ、成
形後の焼けやフラッシュなどの不良品の原因となってい
た。また、その摩擦による摩耗粉（金属粉）が溶融材に
混入し、これもまた不良品を招いていた。

【００１０】そのため、図示は省略するが、これを改善
するものとして、リングがスクリュ３３と係合して共に
回転する爪付きのリングも存在していた。しかし、かか
るリングにおいても、スクリュ３３とリングとの摩擦は
回避することができるが、今度はリングをスクリュ３３
によって強制的に回転させるため、短期間（１週間から
１月ぐらい）の使用でも、逆流防止リングの外側周壁と
バレル３１の内壁との間で大きな間隙が発生してしまっ
ていた。すなわち、摩擦と腐食とによって段々と間隙が
発生し、終いにはかなり大きくなってシール性を損ない
（シール破壊）、ここから溶融材が逆流してしまうと言
う問題があった。

【００１１】かかる逆流の発生（樹脂もれ）は、射出圧
及び保圧にバラツキを生じさせ、不良品の発生を招いて
いた。さらに、上記の爪付きリングは構造が複雑である
ため、高価である共に、故障し易く信頼性に欠ける欠点
もあった。

【００１２】そこで、本願発明は上記課題を解決を目的
とするもので、逆流防止リングの形状を新規なものとす
ることより、溶融材料の過熱を回避して製品不良率の逓
減を図ると共に、逆流（樹脂もれ）を確実に阻止して逆
流防止リングの作動時のシール性を高めることができる
射出成形機の逆流防止機構を提供するものである。

【００１３】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本願発明にかかる射出成形機の逆流防止機構は、以
下のように構成されている。

【００１４】すなわち、射出成形機の射出時に射出シリ
ンダ内を摺動する射出手段の先端部付近に配置される逆
流防止機構において、射出手段（１３）の先端部（１３
ｔ）に、テーパー（１４）をもって縮径された首部（１
５）を形成し、かつ該首部（１５）の前方には、後述の
逆流防止リング（１）の所定以上の移動を阻止するスト
ッパ部（１６）を形成すると共に、リング状の逆流防止
リング（１）を、その外側周壁（２）が射出シリンダ内
壁（１１ｓ）に略適合するように、かつ内側周壁（３）
が前記首部（１５）と一定の間隙をもつようにして、首
部（１５）に環装し、さらにこの逆流防止リング（１）
の形態は、前方側を半径方向の断面形において凸湾曲状
に形成すると共に、後方側の外周側を射出シリンダ内壁
（１１ｓ）に適合し得る円柱側面状に、かつ後方側の内
周側を前記テーパー（１４）に適合し得る後方拡径の円
錐面状に形成した。

【００１５】また、断面形における前方側の凸湾曲線状
を半円状としたことを特徴とする。

【００１６】

【実施例】次に、上記構成にかかる射出成形機の逆流防
止機構の具体的実施例を、図面に基づき以下にその詳細
を説明する。

【００１７】図１は本実施例の全体を示す縦断面図であ
り、図２は要部を拡大して示す一部切欠き斜視図であ
り、図３、図４はその作動状態を示す一部切欠き縦断面
図である。なお、本明細書の説明においては、射出方向
（図面上、左側）を前方、その反対側を後方として用い
ている。

【００１８】本実施例の逆流防止機構が取り付けられた
射出成形機の射出機構は、内空形１０ｓが円錐状を成す
バレル１０の先端部１０ｔに、先端にノズル１１ｎを備
えた射出シリンダ１１が同軸上に連結されおり、バレル
１０の内空形１０ｓに適合する円錐状のスクリュ１２が
同軸回転自在にして保持され、かつこのスクリュ１２の
同軸上には射出プランジャ１３が摺動自在に組み込まれ
て構成されて成るものである。

【００１９】該射出プランジャ１３は射出手段として機
能するものであり、その先端部１３ｔはスクリュ１２の
先端部１２ｔから露出した状態で配置され、後端に連結
されたスライド駆動機構（図示省略）によって、射出シ
リンダ１１内に進入し又は退出する進退運動をするよう
に構成されている。

【００２０】射出プランジャ１３の先端部１３ｔには、
テーパ（「プランジャ部テーパー」）１４を介して縮径
された首部１５が形成されている。この首部１５は適宜
の長さに設定され、その前方側には、ストッパー部１６
が形成されている。

【００２１】該ストッパー部１６は、放射状に拡がる複
数本の凸状部１７、１７、・・によって構成され、各凸
状部１７の間には、谷状の流路１８、１８、・・・がそ
れぞれ形成されている。また、全凸状部１７による突出
径（各凸状部１７の頭部を結ぶ包絡線の直径）は、後述
の逆流防止リング１の内側周径より大きくなるように設
定されている。

【００２２】また、首部１５とストッパー部１６とは一
体に形成されており、プランジャ部テーパ１４の先端
に、ネジ手段１９によって着脱可能に螺合一体化されて
いる。なお、本実施例では、ストッパー部１６の凸状部
１７を６本に設定しているが、これに限定するものでな
いことはもちろんである。

【００２３】次に、首部１５には、リング状の逆流防止
リング（以下「本願リング」と略称。）１が、遊びをも
って環装されている。すなわち、そのリング外側周壁２
は射出シリンダ１１のシリンダ内壁１１ｓに摺動可能に
適合し、リング内側周壁３は首部１５の外周との間に一
定の間隙４をもって、環装されている。

【００２４】そして、この本願リング１の形態は、半径
方向の断面形（リングを中心軸線から半径方向に延びる
面で切断したときの断面形）において、前方側を半円形
状に形成されると共に、後方側の外周側を射出シリンダ
内壁（１１ｓ）に適合し得る円柱側面状に、かつ後方側
の内周側を前記テーパー（１４）に適合し得る後方拡径
の円錐面状に形成されている。かかる後方側の形状を別
言すると、リング外側周壁２の後方側は、シリンダ内周
壁１１ｓに適合する円柱側面１ａに形成され、リング内
側周壁３の後方側は、プランジャ部テーパー１４に適合
する円錐形状のテーパー（「リング部テーパー」）１ｂ
に形成されている。

【００２５】ここで、該本願リング１は、耐熱性及び靭
性を備えた材質、例えばバネ鋼などで形成され、かつ内
部空洞でない中実状に形成することが好ましい。なお、
本実施例では、前記断面形の前方側を半円形に形成して
いるが、これに限定するものではなく、半楕円などの凸
湾曲線状としても良い。

【００２６】また、本願実施例は射出プランジャに取り
付けた場合について説明しているが、本願の逆流防止機
構は、前記従来例のインラインスクリュ方式のスクリュ
ヘッドにも応用することが可能である。

【００２７】

【実施例の作用】以上のように実施例を構成することよ
り、本願リング１は、上述従来例の場合と同様に、射出
プランジャ１３（従来例はスクリュ３３）の移動によっ
て、首部１５に環装しながら、プランジャ部テーパー１
４とストパッー部１６との間を適宜移動するものであ
る。

【００２８】そして、本願リング１が後方へ移動した場
合（リング作動時）、その後方側はそれぞれシリンダ内
壁１１ｓ及びプランジャ部テーパー１４に強固に密着さ
れることになる（図３の状態）。これを詳しく述べる
と、射出時、又は保圧時に高まった溶融材の圧力は、本
願リング１の前方側の曲面に作用し、この力（矢印ａ）
は断面形においてほぼ中心部Ｃ付近に向かって作用す
る。そして、本願リング１はプランジャ部テーパー１４
によってこれ以上の移動が阻止されているため、この作
用力（矢印ａ）は本願リング１の外側径を拡大させる方
向の力（矢印ｂ）へ、内側径を縮小させる方向の力（矢
印ｃ）へと分力作用することになる。この各作用力（矢
印ａ、ｂ）は、円柱側面１ａからシリンダ内壁１１ｓ
へ、リング部テーパー１ｂからプランジャ部テーパー１
４へ、それぞれ略直角な押圧力して作用するため、それ
ぞれの面（１ａ、１ｂ）を強固に密着させる力となる。

【００２９】次に、本願リング１が前方へ移動した場合
は、ストッパー１６での突出径が、リング内側周径より
大きいため、本願リング１の前方側が凸状部１７に係合
してこれ以上の移動が阻止される（図４の状態）。この
状態では、後方から圧送されてきた溶融材は、間隙４及
び流路１８を通って射出シリンダ１１の先方側へ送られ
ることになる（矢印ｄ）。この時、本願リング１は通常
の状態（拡径する以前の状態）に戻るため、円柱側面１
ａとシリンダ内壁１１ｓとの間隙１ｇが若干大きくな
る。そのため、本願リング１はより回転が自在な状態
（フリーな状態）に保持される。

【００３０】

【効果】本願発明は、以上のように本願リングの前方側
が凸曲面状に形成されているため、ここに作用する圧力
は内部の中心へ向かって作用し、これが分力してリング
外側径を拡径する方向とリング内側径を縮径する方向と
へ作用することになるため、強固な密着力（シール力）
を得ることができる。

【００３１】また、本願リングが拡径、又は縮径し易い
ため、リング内側周壁と首部との間隙を大きく設定する
ことができ、それだけ従来例より溶融材の流れをスムー
ズにするとができる。

【００３２】さらに、本願リング作動時（シール時）に
は、樹脂圧によってリング外径が拡径するものであるた
め、通常の状態（作動していない状態）では、リング外
径を従来のものより若干小径に成形しておくことができ
る。そのため、リング外側周壁（及び円柱側面）とバレ
ル内壁との間隙を、より大きく採ることができ、本願リ
ングの回転を、従来例と異なる全くフリーの状態（回転
自在）に保つことができる。このことは、上述した従来
例の問題点である、溶融材の過熱と摩耗によるシール破
壊を解消し、不良品の発生を飛躍的に減少させることが
できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本実施例の全体を示す縦断面図である。

【図２】本実施例の要部を拡大して示す一部切欠き斜視
図である。

【図３】本実施例の作動状態を示す一部切欠き縦断面図
であ。

【図４】本実施例の作動状態を示す一部切欠き縦断面図
であ。

【図５】従来例の作動状態を示す縦断面図であ。

【図６】従来例の作動状態を示す縦断面図であ。

【符号の説明】

１・・・逆流防止リング（本願リング） １ａ・・円
柱側面 １ｂ・・リング部テーパー ２・・・リ
ング外側周壁 ３・・・リング内側周壁 ４・・・間
隙 １０・・バレル １１・・射
出シリンダ １１ｎ・ノズル １１ｓ・シ
リンダ内壁 １２・・スクリュ １３・・射
出プランジャ １４・・プランジャ部テーパー １５・・首
部 １６・・ストッパー部 １７・・凸
状部 １８・・流路

フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.⁶，ＤＢ名) B29C 45/46 - 45/52 B29C 45/17 B29C 45/58 - 45/60

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 射出成形機の射出時に射出シリンダ内を
   摺動する射出手段の先端部付近に配置される逆流防止機
   構において、 射出手段（１３）の先端部（１３ｔ）に、テーパー（１
   ４）をもって縮径された首部（１５）を形成し、 かつ該首部（１５）の前方には、後述の逆流防止リング
   （１）の所定以上の移動を阻止するストッパ部（１６）
   を形成すると共に、 リング状の逆流防止リング（１）を、その外側周壁
   （２）が射出シリンダ内壁（１１ｓ）に略適合するよう
   に、かつ内側周壁（３）が前記首部（１５）と一定の間
   隙をもつようにして、首部（１５）に環装し、 さらにこの逆流防止リング（１）の形態は、前方側を半
   径方向の断面形において凸湾曲状に形成すると共に、後
   方側の外周側を射出シリンダ内壁（１１ｓ）に適合し得
   る円柱側面状に、かつ後方側の内周側を前記テーパー
   （１４）に適合し得る後方拡径の円錐面状に形成したこ
   とを特徴とする射出成形機の逆流防止機構。
2. 【請求項２】 断面形における前方側の凸湾曲線状を半
   円状としたことを特徴とする請求項１記載の射出成形機
   の逆流防止機構。