JP2830034B2 - 耐海水用クラッド鋼板の製造方法 - Google Patents
耐海水用クラッド鋼板の製造方法Info
- Publication number
- JP2830034B2 JP2830034B2 JP1104526A JP10452689A JP2830034B2 JP 2830034 B2 JP2830034 B2 JP 2830034B2 JP 1104526 A JP1104526 A JP 1104526A JP 10452689 A JP10452689 A JP 10452689A JP 2830034 B2 JP2830034 B2 JP 2830034B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- rolling
- less
- seawater
- steel
- cpt
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Landscapes
- Metal Rolling (AREA)
- Pressure Welding/Diffusion-Bonding (AREA)
- Heat Treatment Of Steel (AREA)
Description
【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、耐海水用クラツド鋼板の製造方法に関する
もので、合せ材の成分系と圧延方法の最適化により、高
耐食性を有するクラツド鋼板を製造することを目的とす
る。
もので、合せ材の成分系と圧延方法の最適化により、高
耐食性を有するクラツド鋼板を製造することを目的とす
る。
耐海水用ステンレス鋼としては、特開昭52−95524号
に代表されるように製法として熱間加工性及び高温域
(1100℃以上)からの急冷を前提とした場合における耐
食性の観点からCr、Mo、N量を高めたオーステナイト系
ステンレス鋼が開発されている。しかし、高価なCr、Mo
を多量に添加しているため厚板の製造を考えた場合、経
済性の観点より炭素鋼又は低合金鋼とのクラツド化が望
ましい。そこで耐海水用クラツド鋼板の製造を考えた場
合、従来のソリツド材のように高温域からの急冷は母材
の靭性を大巾に損うためにこの種のクラツド鋼板の製造
には適用できない。一方、オーステナイト系ステンレス
クラツド鋼の製造については、特開昭63−248583号に示
されているように圧延冷却中におけるσ相の析出抑制の
観点からの検討が行われている。しかし、N含有量を0.
10%以上に高めた耐海水用クラツド鋼板の製造において
は、σ相よりもCr窒化物の析出のほうが早く耐食性を大
きく左右することになる。このような耐海水用クラツド
鋼板の製造は合せ材の成分系及び圧延、冷却条件の最適
化により可能と考えられるが、この方面での系統的な研
究は行われていないのが現状である。
に代表されるように製法として熱間加工性及び高温域
(1100℃以上)からの急冷を前提とした場合における耐
食性の観点からCr、Mo、N量を高めたオーステナイト系
ステンレス鋼が開発されている。しかし、高価なCr、Mo
を多量に添加しているため厚板の製造を考えた場合、経
済性の観点より炭素鋼又は低合金鋼とのクラツド化が望
ましい。そこで耐海水用クラツド鋼板の製造を考えた場
合、従来のソリツド材のように高温域からの急冷は母材
の靭性を大巾に損うためにこの種のクラツド鋼板の製造
には適用できない。一方、オーステナイト系ステンレス
クラツド鋼の製造については、特開昭63−248583号に示
されているように圧延冷却中におけるσ相の析出抑制の
観点からの検討が行われている。しかし、N含有量を0.
10%以上に高めた耐海水用クラツド鋼板の製造において
は、σ相よりもCr窒化物の析出のほうが早く耐食性を大
きく左右することになる。このような耐海水用クラツド
鋼板の製造は合せ材の成分系及び圧延、冷却条件の最適
化により可能と考えられるが、この方面での系統的な研
究は行われていないのが現状である。
一般にクラツド圧延では1100℃以上に加熱後熱間圧延
を行い、800〜1000℃の温度域で圧延を終了し、放冷又
は加速冷却が行われる。しかし母材の制約等により10℃
/s以上の冷却速度の確保は難しい。第6図には特開昭52
−95524号に対応する代表的耐海水用オーステナイトス
テンレス鋼である20Cr−18Ni−6.2Mo−0.7Cu−0.20N鋼
を1200℃に加熱後圧延仕上温度を800℃から1000℃まで
変化させ各種の冷却速度で冷却した場合の耐食性を、塩
化第二鉄溶液を用いた孔食試験(ASTM G48,JISG0578)
で評価した結果を示す。孔食が発生する臨界孔食温度
(CPT)は圧延仕上温度にほとんど依存せず、圧延後の
冷却速度の増加に伴い上昇し10℃/sではCRT=55℃とな
つている。なお比較例としてソリツド材の製造を前提に
1200℃に加熱後急冷した場合のCPTも示したが75℃であ
り、クラツド圧延をシユミレートした場合は耐食性が大
きく低下している。
を行い、800〜1000℃の温度域で圧延を終了し、放冷又
は加速冷却が行われる。しかし母材の制約等により10℃
/s以上の冷却速度の確保は難しい。第6図には特開昭52
−95524号に対応する代表的耐海水用オーステナイトス
テンレス鋼である20Cr−18Ni−6.2Mo−0.7Cu−0.20N鋼
を1200℃に加熱後圧延仕上温度を800℃から1000℃まで
変化させ各種の冷却速度で冷却した場合の耐食性を、塩
化第二鉄溶液を用いた孔食試験(ASTM G48,JISG0578)
で評価した結果を示す。孔食が発生する臨界孔食温度
(CPT)は圧延仕上温度にほとんど依存せず、圧延後の
冷却速度の増加に伴い上昇し10℃/sではCRT=55℃とな
つている。なお比較例としてソリツド材の製造を前提に
1200℃に加熱後急冷した場合のCPTも示したが75℃であ
り、クラツド圧延をシユミレートした場合は耐食性が大
きく低下している。
一方、テフロンにより人工的にすきまをつけた試験片
を天然海水中に1年間浸漬した場合の腐食深さと塩化第
二鉄試験におけるCPTの関係を第7図に示す。同図から
天然海水中ですきま腐食を抑制するには60℃以上のCPT
が必要である。
を天然海水中に1年間浸漬した場合の腐食深さと塩化第
二鉄試験におけるCPTの関係を第7図に示す。同図から
天然海水中ですきま腐食を抑制するには60℃以上のCPT
が必要である。
これらの結果をもとに判断すると従来の代表的耐海水
ステンレス鋼である20Cr−18Ni−6.2Mo−7.0Cu−0.20N
鋼はクラツド用の合せ材成分としては不十分であり、ク
ラツド製造の熱加工履歴を前提にした場合においてもCP
T≧60℃となる成分の開発が望まれている。
ステンレス鋼である20Cr−18Ni−6.2Mo−7.0Cu−0.20N
鋼はクラツド用の合せ材成分としては不十分であり、ク
ラツド製造の熱加工履歴を前提にした場合においてもCP
T≧60℃となる成分の開発が望まれている。
本発明は上記のような問題点を解決するためになされ
たもので、クラツド鋼の合せ材成分の最適化とクラツド
圧延条件の規定を行うことにより、CPT≧60℃となる耐
海水用クラツド鋼板を得ることを目的とする。
たもので、クラツド鋼の合せ材成分の最適化とクラツド
圧延条件の規定を行うことにより、CPT≧60℃となる耐
海水用クラツド鋼板を得ることを目的とする。
上記課題を解決するため本発明者等はクラツド圧延の
熱加工履歴を前提にした場合の成分系の開発とこれらの
成分系をもとに最適圧延条件の検討を行つた。以下に詳
細を述べる。
熱加工履歴を前提にした場合の成分系の開発とこれらの
成分系をもとに最適圧延条件の検討を行つた。以下に詳
細を述べる。
第1図には下記表1に示す鋼1から8を1200℃に加熱
し、900℃で圧延を終了後1℃/sで冷却した場合のCPTが
示されている。
し、900℃で圧延を終了後1℃/sで冷却した場合のCPTが
示されている。
同図に示されるように、20Cr−6Mo系及び25Cr−4.5Mo
系は、いずれの場合もNi量の増加に伴つてCPTが上昇し
ており、天然海水中ですきま腐食を生じないための条件
であるCPT≧60℃(10%塩化第二鉄溶液中)を満足する
には、20Cr−6Mo系では20%以上、25Cr−4.5Mo系では24
%以上のNi添加が必要である。一般にオーステナイトス
テンレス鋼の耐孔食、耐すきま腐食性はCr,Mo,N量で整
理ができるとされており、例えばPitting IndexとしてC
r+3Mo+17Nが提唱されている。しかしクラツド圧延を
前提にした場合はNi量が重要な役割をはたしていること
が本実験により明らかとなつた。
系は、いずれの場合もNi量の増加に伴つてCPTが上昇し
ており、天然海水中ですきま腐食を生じないための条件
であるCPT≧60℃(10%塩化第二鉄溶液中)を満足する
には、20Cr−6Mo系では20%以上、25Cr−4.5Mo系では24
%以上のNi添加が必要である。一般にオーステナイトス
テンレス鋼の耐孔食、耐すきま腐食性はCr,Mo,N量で整
理ができるとされており、例えばPitting IndexとしてC
r+3Mo+17Nが提唱されている。しかしクラツド圧延を
前提にした場合はNi量が重要な役割をはたしていること
が本実験により明らかとなつた。
次にCPT≧60℃を得るための最低Ni量がCr量によりど
のように変化するかを明らかにするため、0.20Nにおい
てCr+3Moを一定にしてCr,Moバランスを変えた鋼を1200
℃に加熱後1000℃で圧延を終了し1℃/sで冷却した。そ
の結果を第2図に示す。CPT≧60℃を満すために必要な
最低Ni量はCr量とともに増加しており、Cr量の関数とし
て下式で示されることになる。
のように変化するかを明らかにするため、0.20Nにおい
てCr+3Moを一定にしてCr,Moバランスを変えた鋼を1200
℃に加熱後1000℃で圧延を終了し1℃/sで冷却した。そ
の結果を第2図に示す。CPT≧60℃を満すために必要な
最低Ni量はCr量とともに増加しており、Cr量の関数とし
て下式で示されることになる。
Ni(%)=0.8Cr(%)+4 このように本発明は合せ材の成分及び後述する圧延条
件を最適化することにより耐海水用クラツド鋼板の製造
を可能にしたものである。これに対し、従来の耐海水用
ステンレス鋼(ソリツド)は1100℃以上の高温域から急
冷することにより、Cr炭窒化物、シグマ相等の金属間化
合物の析出を抑制していた。この場合の耐食性は主にC
r,Mo,N量に支配されていた。しかしクラツド圧延のよう
に母材の特性より急冷することが難しい場合は、上記の
成分の他にNiが大きな役割を果たす。第2図に示した様
にCr量に依存して変化するNi量を規定することにより耐
孔食性が向上するのは、Niにより圧延後の冷却過程にお
けるCr窒化物の析出が抑制されることによる。特に本発
明鋼のようにNを高めた成分ではCr窒化物の析出抑制が
重要である。
件を最適化することにより耐海水用クラツド鋼板の製造
を可能にしたものである。これに対し、従来の耐海水用
ステンレス鋼(ソリツド)は1100℃以上の高温域から急
冷することにより、Cr炭窒化物、シグマ相等の金属間化
合物の析出を抑制していた。この場合の耐食性は主にC
r,Mo,N量に支配されていた。しかしクラツド圧延のよう
に母材の特性より急冷することが難しい場合は、上記の
成分の他にNiが大きな役割を果たす。第2図に示した様
にCr量に依存して変化するNi量を規定することにより耐
孔食性が向上するのは、Niにより圧延後の冷却過程にお
けるCr窒化物の析出が抑制されることによる。特に本発
明鋼のようにNを高めた成分ではCr窒化物の析出抑制が
重要である。
更に、第3図には上記式を満すNi量を含有しCr,Mo,N
量を変化させた鋼を1200℃に加熱し、900℃で圧延を終
了後1℃/sで冷却した場合のCPTをCr(%)+3Mo(%)
+17N(%)で整理した結果が示されている。なお各鋼
の成分は次の表2に示す通りである。
量を変化させた鋼を1200℃に加熱し、900℃で圧延を終
了後1℃/sで冷却した場合のCPTをCr(%)+3Mo(%)
+17N(%)で整理した結果が示されている。なお各鋼
の成分は次の表2に示す通りである。
同図からNi量を上記の式の下限にした場合、CPT≧60
℃とするために必要なPitting Index即ちCr(%)+2Mo
(%)+17N(%)は41であることがわかる。またPitti
ng Index≧41.0を満足していても27%を超えてCrを添加
しMoを低減した鋼12は同一のPiffing Index鋼に比べCPT
が大巾に劣る。このように27%を超えてCrを添加する
と、σ相の形成が著しく促進されるからである。なおCr
は耐孔食、耐すきま腐食性向上の観点から18%以上必要
であり、このことも考慮すると耐海水用クラツド鋼板の
合せ材成分としては、18%≦Cr≦27%でかつCr(%)+
3Mo(%)+17N(%)≧41.0を満しNi=0.8Cr+4で規
定される以上のNi量を含有することが必要である。但
し、Ni量を規定する上記式とCr量の下限値を考慮する
と、Niの下限値は18.4%であり、且つ同元素は高価であ
るため、上限値は30%とすることにした。又Moは耐孔
食、耐すきま腐食性向上のために有効な元素であるた
め、4.0%以上必要であるが、7.0%を超えるとσ相の形
成が著しく促進されるので、上限を7.0%とした。更に
Nは耐食性を高める作用があり、0.10%以上必要である
が、0.25%を超える添加は本発明成分範囲では困難であ
る。
℃とするために必要なPitting Index即ちCr(%)+2Mo
(%)+17N(%)は41であることがわかる。またPitti
ng Index≧41.0を満足していても27%を超えてCrを添加
しMoを低減した鋼12は同一のPiffing Index鋼に比べCPT
が大巾に劣る。このように27%を超えてCrを添加する
と、σ相の形成が著しく促進されるからである。なおCr
は耐孔食、耐すきま腐食性向上の観点から18%以上必要
であり、このことも考慮すると耐海水用クラツド鋼板の
合せ材成分としては、18%≦Cr≦27%でかつCr(%)+
3Mo(%)+17N(%)≧41.0を満しNi=0.8Cr+4で規
定される以上のNi量を含有することが必要である。但
し、Ni量を規定する上記式とCr量の下限値を考慮する
と、Niの下限値は18.4%であり、且つ同元素は高価であ
るため、上限値は30%とすることにした。又Moは耐孔
食、耐すきま腐食性向上のために有効な元素であるた
め、4.0%以上必要であるが、7.0%を超えるとσ相の形
成が著しく促進されるので、上限を7.0%とした。更に
Nは耐食性を高める作用があり、0.10%以上必要である
が、0.25%を超える添加は本発明成分範囲では困難であ
る。
以下本発明で規定される他の成分の限定理由について
述べる。
述べる。
Cは耐食性の観点から低いほど望ましく、0.030%を
超えて含有すると耐食性を損なうので、0.030%以下と
した。尚、製鋼上の制約から現状では0.0005%が最下限
値となると考えられる。
超えて含有すると耐食性を損なうので、0.030%以下と
した。尚、製鋼上の制約から現状では0.0005%が最下限
値となると考えられる。
Siは脱酸のため0.02%以上必要であるが、1.0%を超
えると熱間加工性を著しく阻害する。そのため0.02%〜
1.0%の範囲とした。
えると熱間加工性を著しく阻害する。そのため0.02%〜
1.0%の範囲とした。
Mnは脱酸のため0.05%以上必要であるが、2.0%を超
えると耐食性を劣化させる。そのため0.05%〜2.0%の
範囲とした。
えると耐食性を劣化させる。そのため0.05%〜2.0%の
範囲とした。
Alは脱酸のため0.001%以上必要であるが0.30%を超
えると耐食性が損なわれる。そのため0.001%〜0.30%
の範囲とした。
えると耐食性が損なわれる。そのため0.001%〜0.30%
の範囲とした。
P,Sは低いほど望ましく、Pについては0.050%を、S
については0.010%を夫々超えて含むと熱間加工性が損
なわれる。そのためP≦0.050%、S≦0.010%の範囲内
に抑えた。尚、製鋼上の制約から現状では夫々0.0005%
が最下限値となると考えられる。
については0.010%を夫々超えて含むと熱間加工性が損
なわれる。そのためP≦0.050%、S≦0.010%の範囲内
に抑えた。尚、製鋼上の制約から現状では夫々0.0005%
が最下限値となると考えられる。
更に第2発明では、熱間加工性又は耐食性の一層の改
善を図るために、以上の成分の他に、Cu≦2.0%、W≦
0.5%、Ti≦1.0%、Nb≦1.0%、V≦1.0%、Zr≦1.0
%、La≦0.02%、Ce≦0.02%、Ca≦0.02%の一種又は二
種以上を含むこととしている。
善を図るために、以上の成分の他に、Cu≦2.0%、W≦
0.5%、Ti≦1.0%、Nb≦1.0%、V≦1.0%、Zr≦1.0
%、La≦0.02%、Ce≦0.02%、Ca≦0.02%の一種又は二
種以上を含むこととしている。
次に上記の成分を有する鋼7を用いてクラツドの最適
圧延条件を検討した。第4図には加熱温度、圧延仕上温
度を変化させ1℃/sで冷却した場合のCPTの変化を示
す。900℃仕上を行なうことを前提として比較した場
合、1150℃以上で加熱した場合はCPT≧60℃の良好な値
が得られているのに対し、1100℃加熱材ではCPT=50℃
と低下している。
圧延条件を検討した。第4図には加熱温度、圧延仕上温
度を変化させ1℃/sで冷却した場合のCPTの変化を示
す。900℃仕上を行なうことを前提として比較した場
合、1150℃以上で加熱した場合はCPT≧60℃の良好な値
が得られているのに対し、1100℃加熱材ではCPT=50℃
と低下している。
このように加熱温度が115℃より低い場合は、本発明
鋼のような高Cr,高Mo,高N鋼においてはCr炭窒化物又は
σ相が完全に固溶せず、耐孔食性が損われるためである
と考えられる。又は、1200℃加熱においても750℃仕上
材ではCPTが50℃まで低下している。これは、圧延仕上
温度が800℃未満の場合Ni量を高めても圧延中にCr窒化
物が析出するため、耐孔食性が失なわれるからである。
鋼のような高Cr,高Mo,高N鋼においてはCr炭窒化物又は
σ相が完全に固溶せず、耐孔食性が損われるためである
と考えられる。又は、1200℃加熱においても750℃仕上
材ではCPTが50℃まで低下している。これは、圧延仕上
温度が800℃未満の場合Ni量を高めても圧延中にCr窒化
物が析出するため、耐孔食性が失なわれるからである。
一方第5図には同じく前記鋼3を1200℃に加熱後900
℃で圧延を終了し、その後のう冷却速度を大巾に変化さ
せた場合のCPTの変化を示す。CPTは冷却速度の減少に伴
つて低下するが特に1℃/s未満では急激な低下が生じて
いる。これは冷却中にCr窒化物が析出し、耐孔食性が失
なわれたためである。
℃で圧延を終了し、その後のう冷却速度を大巾に変化さ
せた場合のCPTの変化を示す。CPTは冷却速度の減少に伴
つて低下するが特に1℃/s未満では急激な低下が生じて
いる。これは冷却中にCr窒化物が析出し、耐孔食性が失
なわれたためである。
以上示した加熱、圧延、冷却条件の検討はクラツド圧
延における合せ材が受ける熱加工履歴をシユミレートし
て行つたが、実際のクラツド圧延では母材の特性も考慮
する必要があり、1250℃を超えるような加熱は母材の靭
性から望ましくない。従つて耐海水用ステンレス鋼の圧
延、冷却条件としては1150℃以上1250℃以下に加熱し、
800℃以上で圧延を終了した後、1℃/s以上で冷却する
ことが必要である。
延における合せ材が受ける熱加工履歴をシユミレートし
て行つたが、実際のクラツド圧延では母材の特性も考慮
する必要があり、1250℃を超えるような加熱は母材の靭
性から望ましくない。従つて耐海水用ステンレス鋼の圧
延、冷却条件としては1150℃以上1250℃以下に加熱し、
800℃以上で圧延を終了した後、1℃/s以上で冷却する
ことが必要である。
(実施例1) 下記表3にはAからHに成分を示すステンレス鋼板を
0.20C−0.25Si−0.70Mnの組成を有する炭素鋼を重ね合
わせ、1200℃に加熱後圧延を850℃で終了した後、2℃/
sで冷却した場合の合せ材の耐孔食性を10%塩化第二鉄
溶液中で評価した結果を示す。この実験での仕上板厚は
合せ材2mm、母材13mmの合計15mmである。
0.20C−0.25Si−0.70Mnの組成を有する炭素鋼を重ね合
わせ、1200℃に加熱後圧延を850℃で終了した後、2℃/
sで冷却した場合の合せ材の耐孔食性を10%塩化第二鉄
溶液中で評価した結果を示す。この実験での仕上板厚は
合せ材2mm、母材13mmの合計15mmである。
鋼Aは本発明の特徴であるNi量の規定Ni(%)≧0.8
(%)+4を満足していないためCPTが45℃と低い。ま
た鋼C、DはNi量の条件は満足しているものの鋼CはCr
(%)+3Mo(%)+17N(%)≧41.0を、又鋼DはN量
の条件を満していないためいずれもCPTが55℃と低い。
これに対して鋼Bは本発明の成分に関する各規定条件を
満足しているためCPTが70℃と良好である。Crを25%以
上含有する鋼E〜Hにおいても、同様にNiの規定を満し
ていない鋼E、及びCrの条件を満足していない鋼Hは、
CPTがそれぞれ45℃,50℃と低い。これに対し本発明条件
を満している鋼F、GはCPTが60℃及び75℃であり、天
然海水中ですきま腐食を生じないための条件であるCPT
≧60を満している。
(%)+4を満足していないためCPTが45℃と低い。ま
た鋼C、DはNi量の条件は満足しているものの鋼CはCr
(%)+3Mo(%)+17N(%)≧41.0を、又鋼DはN量
の条件を満していないためいずれもCPTが55℃と低い。
これに対して鋼Bは本発明の成分に関する各規定条件を
満足しているためCPTが70℃と良好である。Crを25%以
上含有する鋼E〜Hにおいても、同様にNiの規定を満し
ていない鋼E、及びCrの条件を満足していない鋼Hは、
CPTがそれぞれ45℃,50℃と低い。これに対し本発明条件
を満している鋼F、GはCPTが60℃及び75℃であり、天
然海水中ですきま腐食を生じないための条件であるCPT
≧60を満している。
(実施例 2) 下記表4には、本発明の成分条件を満す前記実施例の
鋼B、Fを0.04C−0.03Si−1.40Mn−0.03Nb−0.07Vの組
成を有する低合金鋼に重ね合せ、種々の条件でそれぞれ
33mm(合せ材3mm、母材30mm)、10mm(合せ材2mm、母材
8mm)に圧延した場合の合せ材の耐孔食性を10%塩化第
二鉄溶液中で評価した結果を示す。
鋼B、Fを0.04C−0.03Si−1.40Mn−0.03Nb−0.07Vの組
成を有する低合金鋼に重ね合せ、種々の条件でそれぞれ
33mm(合せ材3mm、母材30mm)、10mm(合せ材2mm、母材
8mm)に圧延した場合の合せ材の耐孔食性を10%塩化第
二鉄溶液中で評価した結果を示す。
条件Jは圧延後の冷却速度が本発明の冷却速度である
1℃/s以上を満していないため、条件L及びOは加熱温
度が本発明の温度範囲である1150℃以上1250℃以下を満
足していないため、又条件K及びPは圧延仕上温度が本
発明の請求範囲である800℃以上を満していないため、
いずれもCPTが55℃以下と低い。これに対し本発明条件
を満足している条件I,M及びNはいずれもCPT≧60℃の良
好な耐食性を示している。
1℃/s以上を満していないため、条件L及びOは加熱温
度が本発明の温度範囲である1150℃以上1250℃以下を満
足していないため、又条件K及びPは圧延仕上温度が本
発明の請求範囲である800℃以上を満していないため、
いずれもCPTが55℃以下と低い。これに対し本発明条件
を満足している条件I,M及びNはいずれもCPT≧60℃の良
好な耐食性を示している。
(実施例 3) 下記表5には、夫々QからVに成分を示すステンレス
鋼板を0.08C−0.3Si−1.5Mn−0.01Nb−0.01Tiの組成を
有する低合金鋼に重ね合わせ、1230℃に加熱後、圧延を
950℃で終了した後1.5℃/sで冷却した場合の合せ材の耐
孔食性を10%塩化第二鉄溶液中で評価した結果を示す。
仕上板厚は合せ板3mm、母材20mmの合計23mmである。
鋼板を0.08C−0.3Si−1.5Mn−0.01Nb−0.01Tiの組成を
有する低合金鋼に重ね合わせ、1230℃に加熱後、圧延を
950℃で終了した後1.5℃/sで冷却した場合の合せ材の耐
孔食性を10%塩化第二鉄溶液中で評価した結果を示す。
仕上板厚は合せ板3mm、母材20mmの合計23mmである。
耐食性又は熱間加工性の一層の向上を図るためCuを添
加した鋼Q,W及びLaを添加した鋼R,Nb及びCaを添加した
鋼S、Zr及びCeを添加した鋼T、Ti及びVを添加した鋼
Uのいずれかにおいても本発明条件を満足しているた
め、CPT≧60℃の良好な耐食性を有している。これに対
し本発明におけるNi量の規定を満していない鋼VはCPT
が45℃と低い。
加した鋼Q,W及びLaを添加した鋼R,Nb及びCaを添加した
鋼S、Zr及びCeを添加した鋼T、Ti及びVを添加した鋼
Uのいずれかにおいても本発明条件を満足しているた
め、CPT≧60℃の良好な耐食性を有している。これに対
し本発明におけるNi量の規定を満していない鋼VはCPT
が45℃と低い。
以上詳述したように、一般的なクラツド圧延の熱加工
履歴を前提にして耐海水用クラツド鋼板を製造する場合
に、本発明のように合せ材の成分系及び圧延、冷却条件
を最適化せしめることで、10%塩化第二鉄試験における
臨界孔食温度が60℃以上を有し、海水中における耐食性
に優れた耐海水用クラツド鋼板の製造が可能となつた。
履歴を前提にして耐海水用クラツド鋼板を製造する場合
に、本発明のように合せ材の成分系及び圧延、冷却条件
を最適化せしめることで、10%塩化第二鉄試験における
臨界孔食温度が60℃以上を有し、海水中における耐食性
に優れた耐海水用クラツド鋼板の製造が可能となつた。
第1図はNi量に伴なう臨界孔食温度の変化を示すグラフ
図、第2図はCr及びNi量と臨界孔食温度の変化を示すグ
ラフ図、第3図はPitting Indexと臨界孔食温度の関係
を示すグラフ図、第4図は加熱温度及び圧延仕上温度に
伴なう臨界孔食温度の変化を示すグラフ図、第5図は圧
延後の冷却速度に伴なう臨界孔食温度の変化を示すグラ
フ図、第6図は圧延及び冷却条件による臨界孔食温度の
変化を示すグラフ図、第7図は10%塩化第二鉄試験にお
ける臨界孔食温度と海水浸漬による最大すきま腐食深さ
との関係を示すグラフ図である。
図、第2図はCr及びNi量と臨界孔食温度の変化を示すグ
ラフ図、第3図はPitting Indexと臨界孔食温度の関係
を示すグラフ図、第4図は加熱温度及び圧延仕上温度に
伴なう臨界孔食温度の変化を示すグラフ図、第5図は圧
延後の冷却速度に伴なう臨界孔食温度の変化を示すグラ
フ図、第6図は圧延及び冷却条件による臨界孔食温度の
変化を示すグラフ図、第7図は10%塩化第二鉄試験にお
ける臨界孔食温度と海水浸漬による最大すきま腐食深さ
との関係を示すグラフ図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C22C 38/58 C22C 38/58 (56)参考文献 特開 平2−254121(JP,A) 特開 平1−301842(JP,A) 特開 昭64−68450(JP,A) 特開 昭61−201759(JP,A) 特開 昭62−137108(JP,A) 特開 昭61−301842(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C21D 8/02 C22C 38/00 302 B32B 15/01 B23K 20/04 B21B 1/22,1/38
Claims (2)
- 【請求項1】C:0.030%以下、Si:0.02%以上1.0%以
下、Mn:0.05%以上2.0%以下、Cr:18.0%以上27.0%以
下、Mo:4.0%以上7.0%以下、Ni:18.4%以上30.0%以
下、N:0.10%以上0.25%以下、Al:0.001%以上0.30%以
下を含有し、且つCr(%)+3Mo(%)+17N(%)≧4
1.0、Ni(%)≧0.8Cr(%)+4.0の条件を満たし、不
可避的不純物として、P:0.050%以下、S:0.010%以下及
び残部Feを含むステンレス鋼を鋼板の少なくとも片面に
重ね合わせたクラッド鋼板の圧延に際し、1150℃以上12
50℃以下に加熱後熱間圧延を行って800℃以上で圧延を
終了し、その後1℃/s以上で冷却することを特徴とする
耐海水用クラッド鋼板の製造方法。 - 【請求項2】C:0.030%以下、Si:0.02%以上1.0%以
下、Mn:0.05%以上2.0%以下、Cr:18.0%以上27.0%以
下、Mo:4.0%以上7.0%以下、Ni:18.4%以上30.0%以
下、N:0.10%以上0.25%以下、Al:0.001%以上0.30%以
下を含有し、且つCu:2.0%以下、W:0.5%以下、Ti:1.0
%以下、Nb:1.0%以下、V:1.0%以下、Zr:1.0%以下、L
a:0.02%以下、Ce:0.02%以下、Ca:0.02%以下の一種又
は二種以上を含むと共に、Cr(%)+3Mo(%)+17N
(%)≧41.0、Ni(%)≧0.8Cr(%)+4.0の条件を満
たし、不可避的不純物として、P:0.050%以下、S:0.010
%以下及び残部Feを含むステンレス鋼を鋼板の少なくと
も片面に重ね合わせたクラッド鋼板の圧延に際し、1150
℃以上1250℃以下に加熱後熱間圧延を行って800℃以上
で圧延を終了し、その後1℃/s以上で冷却することを特
徴とする耐海水用クラッド鋼板の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP1104526A JP2830034B2 (ja) | 1989-04-26 | 1989-04-26 | 耐海水用クラッド鋼板の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP1104526A JP2830034B2 (ja) | 1989-04-26 | 1989-04-26 | 耐海水用クラッド鋼板の製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH02285025A JPH02285025A (ja) | 1990-11-22 |
JP2830034B2 true JP2830034B2 (ja) | 1998-12-02 |
Family
ID=14382937
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP1104526A Expired - Fee Related JP2830034B2 (ja) | 1989-04-26 | 1989-04-26 | 耐海水用クラッド鋼板の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2830034B2 (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US20150292069A1 (en) * | 2012-12-05 | 2015-10-15 | Jfe Steel Corporation | Stainless steel-clad steel plate having exceptional corrosion resistance to seawater |
Families Citing this family (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010159438A (ja) * | 2009-01-06 | 2010-07-22 | Nippon Yakin Kogyo Co Ltd | 耐粒界腐食性に優れた高耐食合金 |
WO2013132863A1 (ja) * | 2012-03-08 | 2013-09-12 | Jfeスチール株式会社 | 耐海水ステンレスクラッド鋼 |
CN104160057B (zh) * | 2012-03-08 | 2016-08-24 | 杰富意钢铁株式会社 | 不锈钢复合钢 |
JP5883761B2 (ja) * | 2012-10-05 | 2016-03-15 | 株式会社神戸製鋼所 | 二相系ステンレス鋼材および二相系ステンレス鋼管 |
JP2014040669A (ja) * | 2013-10-10 | 2014-03-06 | Nippon Yakin Kogyo Co Ltd | 耐粒界腐食性に優れた高耐食合金 |
JP6390567B2 (ja) * | 2015-09-24 | 2018-09-19 | Jfeスチール株式会社 | ステンレスクラッド鋼板の製造方法 |
-
1989
- 1989-04-26 JP JP1104526A patent/JP2830034B2/ja not_active Expired - Fee Related
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US20150292069A1 (en) * | 2012-12-05 | 2015-10-15 | Jfe Steel Corporation | Stainless steel-clad steel plate having exceptional corrosion resistance to seawater |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH02285025A (ja) | 1990-11-22 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
CN103741066B (zh) | 一种精密电子用无磁硬态奥氏体不锈钢及其制造方法 | |
US20040084116A1 (en) | Ferritic stainless steel sheet having good workability and manufacturing method thereof | |
JP5362582B2 (ja) | 耐食性及び張出成形性に優れたフェライト系ステンレス鋼及びその製造方法 | |
CN111902559B (zh) | 双相不锈钢包层钢板和其制造方法 | |
JP2001073066A (ja) | 高温強度と靱性に優れた低Crフェライト系耐熱鋼およびその製造方法 | |
CN109609729A (zh) | 一种屈服强度650MPa级不锈钢板及制造方法 | |
CN111918979B (zh) | 双相不锈钢包层钢板和其制造方法 | |
JP2830034B2 (ja) | 耐海水用クラッド鋼板の製造方法 | |
JPS61213349A (ja) | 合金工具鋼 | |
JP4173609B2 (ja) | 成形性および熱間加工性に優れたプレス成形用オーステナイト系ステンレス鋼および鋼板 | |
JPH11293405A (ja) | 高硬度高耐食ステンレス鋼 | |
JP2002194507A (ja) | 加工性に優れ面内異方性の小さいフェライト系ステンレス鋼及びその製造方法 | |
JPH0791584B2 (ja) | 耐海水用クラッド鋼板の製造方法 | |
JP3280692B2 (ja) | 深絞り用高強度冷延鋼板の製造方法 | |
JP3886864B2 (ja) | 二次加工性に優れるフェライト系ステンレス鋼冷延焼鈍材及びその製造方法 | |
JP2946992B2 (ja) | 強度、靭性および耐食性に優れた2相ステンレス鋼材の製造方法 | |
JPH07126812A (ja) | 耐2次加工脆性に優れるフェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法 | |
JP2828303B2 (ja) | 強靭な厚鋼板の製造方法 | |
JP3368413B2 (ja) | 高Crフェライト系耐熱鋼の製造方法 | |
JP4487257B2 (ja) | 変寸抑制特性に優れた冷間ダイス鋼 | |
JP3705391B2 (ja) | 熱延板の低温靱性に優れたNb含有フェライト系ステンレス鋼 | |
JP3026540B2 (ja) | ステンレス鋼板の製造方法 | |
JP4562281B2 (ja) | 加工性に優れたフェライト系ステンレス鋼板及びその製造方法 | |
JP2755014B2 (ja) | 耐2次加工脆性に優れた深絞り用高強度冷延鋼板の製造方法 | |
JP3443544B2 (ja) | 高強度析出硬化型マルテンサイト系ステンレス鋼 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20070925 Year of fee payment: 9 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080925 Year of fee payment: 10 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |