JP2817655B2 - 木造建築物の固定金具 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、木造建築物の木製部材
の固定に用いる木造建築物の固定金具に係わり、特に土
台部材を横設した基礎に柱を立設する固定金具に関す
る。

【０００２】

【従来の技術】従来の木造建築物の軸組構造では、木製
部材相互の接合及び固定に種々の金具が用いられてい
る。そして一例として、土台部材を横設した基礎に柱を
固定状態で立設し、さらにこれを補強するために所謂ホ
ールダウン金具が用いられ、図６に示すように、基礎１
上に木製の土台部材２を横設し、この土台部材２に柱３
を立設すると共に、これら土台部材２と柱３とを図示し
ない固定金具等の固定手段により固定し、さらに前記土
台部材２には前記基礎１に固定したアンナーボルト４を
挿通し、略Ｌ型をなす金具５の一側片５Ａをボルト６に
より柱３に固定すると共に、他側片５Ｂを前記アンカー
ボルト４の上端に挿通してナット７にて固定するように
している。尚、この種の木造建築物では、前記土台部材
２に柱３を固定しただけでは、十分な設計強度が得られ
ないため、前記基礎１に直接固定したアンカーボルト４
に柱３を固定しなければならない。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】上記金具５を用いるも
のでは、柱３にボルト６を挿通する孔を加工し、金具５
をボルト６締めすると共に、アンカーボルト４にナット
７を螺合するというように現場施工が主となるため、施
工性に劣るという欠点があった。また、柱３の鉛直方向
の荷重、すなわち軸力が木製からなる土台部材２の上面
に直接加わるため、柱３の下端が土台部材２にめり込ん
でしまい、例えば３階建住宅等の大きな軸力が加わるも
のには使用することができなかった。

【０００４】そこで本発明は部材の固定に必要な加工を
工場で行うことができ、現場施工性の向上を図り、ま
た、柱の軸力を安定的に支持することができる木造建築
物の固定金具を提供することを目的とする。

【０００５】

【課題を解決するための手段】請求項１の発明は、基礎
上に土台部材を横設し、この土台部材の端面に沿って前
記基礎上に柱を立設し、この柱を前記土台部材に固定す
ると共に、該柱を前記土台部材及び基礎に縦設したアン
カーの上部に固定する固定金具であって、前記土台部材
の端面に縦設した嵌入溝に挿入する挿入部と、この挿入
部に形成された土台部材固定部と、前記柱の側面に固定
する柱固定部と、前記挿入部の上部に設けられ前記アン
カーに固定するアンカー固定部とを一体に形成してなる
ものである。

【０００６】請求項２の発明は、前記土台部材固定部
が、前記土台部材に挿通する接合ピンを挿入するピン孔
からなり、前記アンカー固定部には、前記アンカーの上
端のねじ部を挿通する孔を設けたものである。

【０００７】

【作用】請求項１の構成では、予め固定金具を柱に固定
し、固定金具の挿入部を土台部材の嵌入溝に挿入するよ
うに柱を上方から基礎上に立て、土台部材固定部を介し
て柱を土台部材に固定し、さらにアンカー固定部を介し
て柱をアンカーに固定する。

【０００８】請求項２の構成では、土台部材と固定金具
との固定は、土台部材と挿入部とに接合ピンを挿通して
行い、アンカーと固定金具との固定は、アンカー固定部
に設けた孔にアンカーの上端を挿通して行う。

【０００９】

【実施例】以下、本発明の実施例を添付図面を参照して
説明する。図１ないし図５は本発明の一実施例を示し、
同図において、11はコンクリートからなる基礎であり、
この基礎11の上面11Ａに、木製で断面角型の土台部材12
を横設し、この土台部材12の長さ方向の端面12Ａに沿っ
て木製で断面角型の柱13が前記基礎11の上面11Ａに立設
される。また、前記基礎11に下端を埋設固定したアンカ
ーボルト14を、前記土台部材12に穿設された縦孔15に挿
通し、該アンカーボルト14上部のねじ部14Ａを前記土台
部材12の上面12Ｂに突出させている。そして前記土台部
材12及び柱13には、構造用大断面集成材が用いられる。

【００１０】前記柱13の下部側面Ａ13に固定する固定金
具16は、金属板を平面コ字型に形成して平行な左右の挿
入部17，17と、後側の柱固定部18とを一体に有し、さら
に前記左右の挿入部17，17の上部には、金属板からなる
水平方向のアンカー固定部19が溶着等により一体に設け
られている。前記左右の挿入部17，17には、金属製の接
合ピン20を挿入する土台部材固定部たるピン孔21がそれ
ぞれ形成され、また、前柱固定部18には縦方向に並ぶ複
数の固定孔22を穿設し、さらに前記アンカー固定部19の
先端には座金板となる幅広部19Ａを形成し、この幅広部
19Ａに前記アンカーボルト14の上端を挿通するアンカー
挿通孔23を穿設し、さらに前記柱固定部18の上部を前記
挿入部17の上方に延設し、その上部に左右一対の釘穴24
を穿設している。また、25は前記アンカーボルトの上部
に螺着するナットであり、26は前記固定金具16の柱固定
部18を柱13に固定する止着部材26であって、両端にボル
ト，ナットからなり、また、27は前記釘穴24に挿通し、
固定金具16の回止め部材となる釘である。

【００１１】前記土台部材12の端面12Ａには、図３に示
すように、前記左右の挿入部17，17に対応して一対の嵌
入溝31，31を形成し、かつそれら嵌入溝31，31に挟まれ
た先端部分を切断して凹所32を形成し、また、前記土台
部材12には、前記固定金具16のピン孔21に対応して横方
向のピン打込孔33を穿設し、このピン打込孔33に前記接
合ピン20が挿入される。また、前記柱13の下部に横方向
の貫通孔35を穿設し、この貫通孔34に前記止着部材26の
ボルトが挿通される。

【００１２】次に前記構成につきその作用を説明する
と、まず土台部材12の端面12Ａには工場にて嵌入溝31，
31、凹所32及びピン打込孔33を形成しておく。また、柱
13には工場にて貫通孔34を穿設し、止着部材26のボルト
を固定金具16の固定孔22と柱13の貫通孔34に挿通し、そ
の先端に止着部材26のナットを螺合して柱13に固定金具
16を固定する。また、釘27を釘穴24から柱13に打ち付け
る。このように予め土台部材12の加工と柱13への固定金
具16の固定を行っておく。そして基礎11に突設したアン
カーボルト14に縦孔15を挿通し、基礎11の上面11Ａに土
台部材12を横設する。尚、この場合、土台部材12を基礎
11に適宜手段で固定しておいてもよい。次に図４に示す
ように、固定金具16の左右の挿入部17，17を土台部材12
の嵌入溝31，31に挿入するように柱13を上方から基礎11
上に立て、同時にアンカー挿通孔23にアンカーボルト14
の上端が挿通される。この状態でピン打込孔33とピン孔
21との位置合わせが行われ、これら孔33，21に接合ピン
20を打込んで挿入し、この接合ピン20は圧入状態で挿入
され、これにより固定金具16を介して柱13と土台部材12
とが固定される。次に前記アンカーボルト14のねじ部14
Ａにナット25を螺着して柱13とアンカーボルト14とを固
定する。

【００１３】このように本実施例では請求項１に対応し
て、基礎上11に土台部材12を横設し、この土台部材12の
端面12Ａに沿って基礎11上に柱13を立設し、この柱13を
土台部材12に固定すると共に、該柱13を土台部材12及び
基礎11に縦設したアンカーたるアンカーボルト14の上部
に固定する固定金具16であって、土台部材12の端面12Ａ
に縦設した嵌入溝31に挿入する挿入部17と、この挿入部
17に形成された土台部材固定部たるピン孔21と、柱13の
側面13Ａに固定する柱固定部18と、挿入部17の上部に設
けられアンカーボルト14に固定するアンカー固定部19と
を一体に形成してなるものであるから、土台部材固定部
を介して柱13を土台部材11に固定し、さらにアンカー固
定部19を介して柱13を基礎11に固定したアンカーボルト
14に固定することができ、予め工場等の作業環境に適し
た場所で、土台部材12の加工と柱13への固定金具16の固
定を行い、現場では土台部材固定部であるピン孔21とア
ンカー固定部19を用いて簡便に柱13の固定作業を行うこ
とができ、現場での組立作業の簡略化が図られ、かつ熟
練を要さずとも確実な固定作業を行うことができる。ま
た、柱13の下面を基礎11に立設するものであるから、柱
13の軸力をコンクリートなどからなる基礎11が支持する
ため、３階建住宅や集合住宅等の大きな軸力が加わる柱
として有利である。さらに固定金具16も比較的簡易な構
成のため、製造簡易でかつ作業性にも優れる。

【００１４】またこのように本実施例では請求項２に対
応して、土台部材固定部が、土台部材12に挿通する接合
ピン20を挿入するピン孔21からなり、アンカー固定部19
には、アンカーたるアンカーボルト14の上端のねじ部14
Ａを挿通する孔23を設けたものであるから、土台部材12
と固定金具16との固定は、土台部材12と挿入部17とに接
合ピン20を挿通することにより、簡便に行うことがで
き、アンカーボルト14と固定金具16との固定は、アンカ
ー固定部19に設けた孔たるアンカー挿通孔23にアンカー
ボルト14の上端を挿通して簡便に行うことができる。

【００１５】さらに実施例上の効果として、柱固定部18
には嵌入溝31に埋没状態で挿入される挿入部17の上方に
釘穴24を設けたため、土台部材12と柱13相互の固定後に
柱１３に釘２７に打ち付けることができ、この釘27と止
着部材26とにより、固定金具16の回り止めがなされ、安
定した固定構造が得られる。また、柱固定部18には上下
に複数の固定孔22が穿設されているため、柱13の端面12
Ａに直交する柱13端面に同時に同じ高さで固定金具16を
固定する場合、一方は上部の固定孔22、他方は下部の固
定孔22に止着部材26を挿通することにより、これら止着
部材26，26が柱13の断面において交叉することがない。
さらに固定金具16は左右の挿入部17，17と柱固定部18を
平面コ字状に形成するとともに、それら左右の挿入部1
7，17の上縁にアンカー固定部18をそれぞれ溶着等によ
り固定した構造であるため、固定金具16自体に高い強度
が得られる。さらにまた、土台部材12及び柱13に、構造
用大断面集成材を使用することにより、通常の材木を使
用するより高い強度が得られる。

【００１６】尚、本発明は上記実施例に限定されるもの
ではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実
施が可能であり、例えばボルトを接合ピンとして使用
し、孔33，21にそのボルトを挿通してナットで螺合する
ようにしてもよい。また、請求項１においては、アンカ
ー固定部19とアンカーボルト14とは現場にて溶着により
固定するようにしてもよい。

【００１７】

【発明の効果】請求項１の発明は、基礎上に土台部材を
横設し、この土台部材の端面に沿って前記基礎上に柱を
立設し、この柱を前記土台部材に固定すると共に、該柱
を前記土台部材及び基礎に縦設したアンカーの上部に固
定する固定金具であって、前記土台部材の端面に縦設し
た嵌入溝に挿入する挿入部と、この挿入部に形成された
土台部材固定部と、前記柱の側面に固定する柱固定部
と、前記挿入部の上部に設けられ前記アンカーに固定す
るアンカー固定部とを一体に形成してなるものであり、
部材の固定に必要な加工を工場で行うことができ、現場
施工性の向上を図り、また、柱の軸力を安定的に支持す
ることができる木造建築物の固定金具を提供することが
できる。

【００１８】請求項２の発明は、前記土台部材固定部
が、前記土台部材に挿通する接合ピンを挿入するピン孔
からなり、前記アンカー固定部には、前記アンカーの上
端のねじ部を挿通する孔を設けたものであり、部材の固
定に必要な加工を工場で行うことができ、接合ピン及び
アンカーのねじ部を用いて現場施工性の向上を図り、ま
た、柱の軸力を安定的に支持することができる木造建築
物の固定金具を提供することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例を示す固定金具の斜視図であ
る。である。

【図２】本発明の一実施例を示す固定金具の使用状態を
示す斜視図である。

【図３】本発明の一実施例を示す分解斜視図である。

【図４】本発明の一実施例を示す固定作業を説明する断
面図である。

【図５】本発明の一実施例を示す平断面図である。

【図６】従来例を示す断面図である。

【符号の説明】

11 基礎 12 土台部材 12 端面 13 柱 13Ａ 側面 14 アンカーボルト（アンカー） 14Ａ ねじ部 16 固定金具 17 挿入部 18 柱固定部 19 アンカー固定部 20 接合ピン 21 ピン孔（土台部材固定部） 22 固定孔 23 アンカー挿通孔（孔） 31 嵌入溝

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 基礎上に土台部材を横設し、この土台部
   材の端面に沿って前記基礎上に柱を立設し、この柱を前
   記土台部材に固定すると共に、該柱を前記土台部材及び
   基礎に縦設したアンカーの上部に固定する固定金具であ
   って、前記土台部材の端面に縦設した嵌入溝に挿入する
   挿入部と、この挿入部に形成された土台部材固定部と、
   前記柱の側面に固定する柱固定部と、前記挿入部の上部
   に設けられ前記アンカーに固定するアンカー固定部とを
   一体に形成してなることを特徴とする木造建築物の固定
   金具。
2. 【請求項２】 前記土台部材固定部が、前記土台部材に
   挿通する接合ピンを挿入するピン孔からなり、前記アン
   カー固定部には、前記アンカーの上端のねじ部を挿通す
   る孔を設けたことを特徴とする請求項１記載の木造建築
   物の固定金具。