JP2700022B2 - ポリエステルマルチフィラメント糸条 - Google Patents

ポリエステルマルチフィラメント糸条

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JP2700022B2
JP2700022B2 JP6192544A JP19254494A JP2700022B2 JP 2700022 B2 JP2700022 B2 JP 2700022B2 JP 6192544 A JP6192544 A JP 6192544A JP 19254494 A JP19254494 A JP 19254494A JP 2700022 B2 JP2700022 B2 JP 2700022B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、編織物用ポリエステル
マルチフィラメント糸条及び混繊糸に関し、特にソフト
な触感とドライな触感を共に満足し尚且つ適度な嵩高性
とはり腰を兼備し、またアルカリ加水分解作用により繊
維表面に微細溝を多数存在させることにより光の乱反射
の効果による濃色感の向上を狙える他、微妙なタッチを
布帛構造物に与えることが出来る、ブラウスやスーツ地
など婦人衣料用途に好適な表面微細溝を有する自己伸長
性ポリエステルマルチフィラメント糸条に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より布帛構造物にドライ感とソフト
感を共に満足させる為の試みとして、主にポリエステル
マルチフィラメント糸を用いてなるものに部分融着型仮
撚加工糸やシックアンドシン糸等からのアプローチが多
数提案されてきている。しかしながら、部分融着型仮撚
加工糸は製造コスト的にはかなり改善されてはきている
ものの、繊維の融着の効果によってシャリ味を付与して
いるためにアルカリ減量処理時に融着部が選択的にアル
カリ加水分解作用を強く受け、融着部が脆化、切断毛羽
の発生等を引き起こしてしまう他、部分融着型仮撚加工
糸を使用した織編物はドレープ性に乏しくなる等々の問
題があった。
【0003】また繊維軸方向に断面積分布を有するシッ
クアンドシン糸は繊維軸方向に配向度分布を有しており
未延伸残存部の効果と考えられている適度なドライ感と
高収縮率の効果による適度なふくらみを持つことが特徴
である。しかしながらアルカリ減量処理によって太部、
即ち複屈折率の低い部分が選択的にアルカリ加水分解作
用を強く受けてしまい、単糸切断、毛羽発生等により織
編物の外観品位を著しく損ねる原因となるばかりか、織
編物の着用時の摩擦等により比較的強度に乏しい該太部
が摩擦によって単糸切断し、毛羽発生やピリング等の原
因となり、織編物の品質保証面に関しても問題が残って
いた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記のような
従来の欠点を解消し、得られる糸条の物性が良好で、且
つ安定した生産が可能となり、アルカリ減量処理によっ
て繊維軸に対し直角方向に多数の表面微細溝を有するこ
とを特徴とする自己伸長性ポリエステルマルチフィラメ
ント糸に関する。更に詳しくには布帛構造物に加工した
際、ソフトな触感とドライな触感を共に満足し、尚且つ
適度な嵩高性とはり腰を兼備し、またアルカリ加水分解
作用により繊維表面に微細溝を多数存在させることによ
り入射光の乱反射の効果による更なる濃色感の向上、微
妙なタッチを布帛構造物に与えることが出来、ブラウス
やスーツ地など婦人衣料用途に好適な表面微細溝を有す
る自己伸長性ポリエステルマルチフィラメント糸を提供
することを課題とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明のポリエステルマ
ルチフィラメント糸条は溶融紡糸されたポリエステル系
マルチフィラメント未延伸糸を弛緩熱処理し、結晶化度
(Χρ)が20%以下、残留伸度140%以上、沸水収
縮率(SHW)が3%以下、乾熱160℃に於ける乾熱
収縮率(SHD)が0%未満で実質的に自己伸長性を示
し、構造一体性パラメータ(ε0.2 )が45〜70%で
あるポリエステル系マルチフィラメントであり織編物に
した後、減量率10%以上のアルカリ減量処理によって
繊維軸に対し直角方向にのびる溝を多数形成するもので
ある。
【0006】本発明のポリエステルマルチフィラメント
糸条に使用するポリエステル系マルチフィラメント未延
伸糸は芳香族ジカルボン酸を主たる酸成分とし、脂肪族
グリコールを主たるグリコール成分とするポリエステル
マルチフィラメント、特にポリエチレンテレフタレー
ト、ポリブチレンテレフタレート等をその主たる対象と
するものであるが、テレフタル酸の一部を例えばイソフ
タル酸、5−ナトリウムスルフォイソフタル酸、ナフタ
レンジカルボン酸の如きジカルボン酸やヘキサヒドロテ
レフタル酸の如き脂環族ジカルボン酸、又はアジピン
酸、セバシン酸の如き脂肪族ジカルボン酸で、更にエチ
レングリコールの一部をトリメチレングリコールやテト
ラメチレングリコールの如き他のグリコール成分で置換
したポリエステルであってもよく、特に限定を加えるも
のではない。また、上記ポリエステルに二酸化チタン、
硫酸バリウム、カオリナイト等の微粉末不活性無機物を
含有させると、アルカリ減量加工によって繊維表面に微
細凹凸を生成させることが出来、表面微細溝との相乗効
果によって、濃色効果及び微妙なドライタッチ(さらさ
ら感)を織編物に付与することが可能になり使用するに
適している。
【0007】更に本発明のポリエステルマルチフィラメ
ント糸条を得るにあたり使用するポリエステル系マルチ
フィラメント未延伸糸は通常の溶融紡糸によって製造す
ることが出来るが、紡糸引取速度として2000〜40
00m/min.の範囲、より好ましくは3000〜3800
m/min.の範囲である必要がある。2000m/min.未満の
範囲の該マルチフィラメント未延伸糸を弛緩熱処理して
も充分に自己伸長性を付与することが出来ず、結果とし
て該弛緩熱処理糸条は収縮してしまい、本発明の意図す
る自己伸長からくるソフトなタッチを織編物に付与する
ことが出来ない。また、紡糸引取速度が4000m/min.
を超過すると糸条の結晶配向度が大きくなり過ぎ、分子
が繊維軸方向に結晶成長することによる自己伸長の度合
が小さく、充分なソフト感を織編物に付与することがで
きなくなる。
【0008】本発明のポリエステルマルチフィラメント
糸条の単糸繊度は特に限定を加えるものではないが0.
5〜10デニールの範囲で適宜採用すればよい。また、
本発明のポリエステルマルチフィラメント糸条は表面微
細溝を多数有するために織編物として単独で使用すると
該微細溝部分にて応力集中が生じその結果、該織編物の
引裂強力が乏しくなってしまい実用に耐えられない。こ
のために実際の織編物に加工する際には他のポリエステ
ル系マルチフィラメント延伸糸との引揃え或いは混繊糸
とし、強度及び伸度を補ってやる必要がある。該延伸糸
と本発明糸との複合割合は特に限定を加えるものではな
いが40:60〜70:30が適当な範囲である。また
引揃え或いは混繊し、複合糸とした後の総繊度の範囲と
してはドレス、ジャケット、スカート等の婦人用衣料用
途を考えると大略30〜300デニールの範囲でその目
的、用途に応じ適宜選択すればよく、これも何ら限定を
加えるものではない。更に組み合わせる該マルチフィラ
メント延伸糸は通常延伸糸のみならず繊維軸方向にラン
ダムな収縮率分布を有するシックアンドシン糸であって
もよい。
【0009】また、本発明のポリエステルマルチフィラ
メント糸条の単糸断面形状に関しても特に限定を加える
ものではなく、丸断面糸や三角断面糸の他、偏平断面
糸、多角断面糸等の構成であってもよい。また中実断
面、中空断面の何れであってもよいが、多数の微細溝を
形成することにより、該ポリエステル系マルチフィラメ
ント未延伸糸の弛緩熱処理糸が少なからず強度的に脆化
するために単糸切れ、毛羽立ちを引き起こしてしまう恐
れもある。それ故に中空断面糸よりも中実断面糸とした
方がより好ましいと考える。
【0010】本発明のポリエステルマルチフィラメント
糸条は結晶化度(Χρ)が20%以下、残留伸度140
%以上、沸水収縮率(SHW)が3%以下、乾熱160
℃に於ける乾熱収縮率(SHD)が0%未満であり実質
的に自己伸長性を有し、構造一体性パラメータ(ε0.2
)が45〜70%であり、織編後の減量率10%以上
のアルカリ減量処理によって繊維軸に対し直角方向にの
びる溝を形成するものである。
【0011】ここで上記の物性値は以下の測定方法によ
るものである。 (a) 結晶化度(Χρ) 密度勾配管法により20±0.5℃の恒温槽内で試料の
密度を測定し、下記式により結晶化度(Χρ)を算出し
た。尚、密度勾配管法による密度測定には軽比重液とし
て公知のn−ペンタン(比重0.683)と、重比重液
として四塩化炭素(比重1.599)とを調製、混合
し、該混合液に密度勾配をもたせた。尚、試験回数5回
の平均値を測定値とした。 Χρ=〔dk(d−da)〕/〔d(dk−da)〕×100(%) Χρ=結晶化度(%) dk=1.47g/cm3 (PET完全結晶の密度) da=1.331g/cm3 (PET完全非晶の密度) d=試料の密度(g/cm3
【0012】(b) 沸水収縮率(SHW) 試料を枠周1.125mの検尺機を用い、0.1g/d
の初荷重を掛け、120回/分の速度で巻き返し、巻き
回数が20回の小綛を作り、初荷重の40倍の重りを掛
けて、綛長L1 (mm)を測定する。続いて重りを外し、収
縮が妨げられないような方法で沸騰水(100℃)中に
30分間浸漬した後、取り出して吸取紙又は綿布で水を
拭き取り、水平状態にて風乾する。風乾後、再度重りを
掛けて綛長L2 (mm)を測定する。上記L1 、L2 を下記
式に代入し、沸水収縮率(SHW)を測定する。尚、試
験回数5回の平均値を測定値とする。 SHW=(L1 −L2 )/L1 ×100(%)
【0013】(c) 乾熱収縮率(SHD) 試料に1/30g/dの荷重を掛け、その長さL3 (mm)
を測定する。次いでその荷重を取り除き、試料を乾燥機
に入れ乾熱160℃で30分間乾燥する。乾燥後冷却
し、再度1/30g/dの荷重を掛けてその長さL4 (m
m)を測定する。上記L3 、L4 を下記式に代入し、乾熱
収縮率(SHD)を算出する。尚、試験回数5回の平均
値を測定値とする。 SHW=(L3−L4)/L3 ×100(%)
【0014】(d) 構造一体性パラメータ(ε0.2 ) ボン電気社製εメーターを使用し、0.2g/dの荷重
を掛けつつ試料長で200mmの糸条を測り取り、その荷
重を掛けたまま、測定温度95℃の沸騰水中で30秒間
処理を行い、その長さL6 (mm)を測定する。構造パラメ
ータ(ε0.2 )は下記式で示され、測定回数5回の平均
値を以てその測定値とした。 ε0.2 =(L6 −L5 )/L5 ×100(%) 但し、L5 は処理前の試料長さ(200mm)である。
【0015】(e) 残留伸度(DE) オリエンテック社製テンシロンUTM−3−100型を
使用し、試料長200mm、引張速度200mm/分で引張
試験を実施、試料切断に至る迄の伸度を求め、試験回数
5回の平均値を以てその測定値とした。
【0016】(f) 繊維表面微細溝観察 日立製作所製S−501型走査電子顕微鏡を用い倍率8
00倍に拡大し、アルカリ減量加工後の織編物の表面を
観察し、該溝の稜面のなす角度、繊維表面から最深部迄
の最大深さ、繊維表面に於ける溝の幅及び糸条単位長さ
当たりの溝形成数を求めた。20ケ所の測定平均値を以
てその測定値とした。
【0017】本発明のポリエステルマルチフィラメント
糸条は結晶化度(Χρ)が20%以下、より好ましくは
15%以下であることが必要である。該糸条は紡糸引取
速度が2000〜4000m/min.で溶融紡糸したポリエ
ステルマルチフィラメント未延伸糸を弛緩熱処理するこ
とによって得られるが該マルチフィラメント未延伸糸は
いわゆる高配向状態をもった未延伸糸であり、結晶化の
程度が比較的低いことがその特徴であるが、該未延伸糸
を弛緩熱処理し結晶化度を極力増加させることなく、収
縮成分を取り除くことによって織編物に加工した後の染
色加工に於ける湿熱処理による結晶c軸方向、即ち繊維
軸方向への結晶成長の割合が糸条の熱収縮率の割合に対
して大きくなり、実質的に繊維は自己伸長を示すものと
推定される。
【0018】また本発明のポリエステルマルチフィラメ
ント糸条は残留伸度として140%以上であることが必
要である。残留伸度が140%未満では溶融紡糸によっ
て得られたポリエステルマルチフィラメント未延伸糸の
残留伸度とさほどかわらず、結果として糸条に自己伸長
性を与えるに充分な弛緩率で熱処理されておらず、織編
物にソフトな触感を充分に付与することが出来ない。該
未延伸糸の弛緩熱処理に於ける弛緩率に関しては、該未
延伸糸の紡糸引取速度にも因るが概略10〜50%の範
囲で織編物の風合いや弛緩熱処理時の操業性等に応じ適
宜採用する必要がある。更に弛緩熱処理に使用する加熱
体、処理速度に関しても特に限定を加えるものではない
が、加熱体としてはスリットヒーターやチューブヒータ
ー等の非接触式加熱体を使用し、処理速度は加熱体内滞
留時間として0.05〜0.2秒間とすることが好適で
ある。
【0019】本発明のポリエステルマルチフィラメント
糸条は沸水収縮率(SHW)が3%以下、より好ましく
は2%以下である。この沸水収縮率(SHW)が3%を
超過すると、撚糸に続く湿熱撚固定やサイジング工程等
で糸条が過度に収縮してしまい、織編物に加工した後の
精練やリラックス等の湿熱工程にて発現する自己伸長が
事実上相殺され、織編物に充分なソフト感を与えること
が出来ない。該弛緩熱処理糸の沸水収縮率の下限値は特
に限定を加えるものではないが、工程安定性や織編物の
風合い等を考慮すると−2%以上、好ましくは−1%以
上に留めておくことが望ましい。該沸水収縮率が−2%
未満となれば、事実上100℃の沸騰水中にても自己伸
長性が発現することを意味し、バキュームヒートセッタ
ーを使用した湿熱撚固定やサイジング工程にても自己伸
長による糸長差を発現する恐れがあり、ループや弛みの
多い糸条となってしまい製織編工程など次工程以降の工
程通過性に支障を来すことが予想される他、織編物に加
工した後の自己伸長性発現の効果によるソフト感、ふく
らみ感が共に満足なものとはならず、好ましくないので
ある。
【0020】更に該マルチフィラメント糸条は構造一体
性パラメータ(ε0.2)が45〜70%であることが要
求される。この構造一体性パラメータは繊維の結晶化度
と配向度を総合的に決定するものである。通常の溶融紡
糸にて2000〜4000m/min.の紡糸引取速度で得ら
れたポリエステルマルチフィラメント未延伸糸は構造一
体性パラメータ(ε0.2 )の値として大略20〜40%
の範囲に存在するが、該未延伸糸を上述のような弛緩熱
処理を施し45〜70%の範囲とすることにより該弛緩
熱処理糸に自己伸長性を付与し得るのである。このこと
に関しては明確には説明し得ないが、推論するに弛緩熱
処理後の構造一体性パラメータが70%を超過すると、
該弛緩熱処理糸がいわゆる低配向度の糸条となるが、そ
の領域まで配向度を低下させることは即ち、過度に弛緩
率を上昇させることであり、弛緩熱処理の際の糸条バタ
ツキや糸条弛みにより糸条が切断してしまうことがあり
好ましくないのである。また該構造一体性パラメータが
45%未満となれば、高結晶化度の糸条となり、弛緩熱
処理で糸条の構造を変化させ難く、熱による自己伸長の
程度を大きくすることが出来ないのである。
【0021】本発明のポリエステルマルチフィラメント
糸条の弛緩熱処理糸は減量率10%以上のアルカリ減量
加工することによって繊維表面に、繊維軸方向に対し直
角方向に伸びる溝を形成するが、該減量率については混
繊糸等として組み合わせる他のポリエステルマルチフィ
ラメント延伸糸の特性にもよるが、該延伸糸としてポリ
エチレンテレフタレート通常延伸糸を想定した場合、一
般的にポリエステル系マルチフィラメント未延伸糸の弛
緩熱処理糸の方が選択的にアルカリ加水分解作用を強く
受けるために極端に脆化させ過ぎないようにコントロー
ルすることが必要である。一般衣料用途では混繊糸とし
ての減量率が大略10〜30%の範囲で風合いや織編物
の物性等を考慮し適宜選定すればよい。
【0022】ポリエステルマルチフィラメント未延伸糸
を弛緩熱処理する際、上述したように非接触式加熱方式
を採用し、加熱体滞留時間が0.05〜0.2秒間、よ
り好ましくは0.09〜230℃の範囲、より好ましく
は180〜220℃の範囲の任意の設定温度条件にて弛
緩熱処理を施すことが該ポリエステルマルチフィラメン
ト未延伸糸の弛緩熱処理糸に自己伸長性を付与する上で
望ましい。
【0023】本発明のポリエステルマルチフィラメント
糸条はアルカリ減量処理によって繊維表面に多数の微細
溝を発現させるため、一般のポリエステルマルチフィラ
メント通常延伸糸を用いて製織編した布帛と比べ引裂強
力が乏しく、単独で織編物を構成しても実用に耐え得な
い。それ故、その他のポリエステルマルチフィラメント
糸、一般的にはポリエステルマルチフィラメント延伸糸
との複合、いわゆる引揃え又は混繊糸とし、強度及び伸
度を補ってやる必要がある。混繊糸とする場合には公知
のインターレースノズル等、或いは撹乱空気流によって
ループや弛みを形成させるタスランノズル等を使用出来
る。タスランノズル等を使用する際には、ループ、弛み
によってパッケージの解舒不良を引き起こす恐れがあり
合繊加工糸用コーニングオイルを適当量付与し、パッケ
ージに巻き取るとよい。又、インターレースノズルを使
用し混繊する際は混繊糸1m当たりの交絡個数を20〜
100ケ/m程度存在させると、後工程に於ける糸割れ
等の問題を軽減出来、好ましい。
【0024】このようにして得られた引き揃え糸或は混
繊糸を撚糸し、次いで低温撚止セット、或いは低温サイ
ジングを施した後、製織編し、布帛構造物とするが、通
常の染色加工等の熱処理(110℃〜200℃)によっ
て、ポリエステルマルチフィラメント未延伸糸の弛緩熱
処理糸が自己伸長を示し、交絡混繊糸のループ部を形成
し更に減量率10%以上のアルカリ減量加工によって該
弛緩熱処理糸の表面に微細溝を形成し、風合い良好なふ
くらみ感、ソフト感、微妙なドライタッチを有する織編
物を得ることが出来るのである。
【0025】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
る。勿論、本発明は以下の実施例に限定されるものでな
い。なお、実施例中のL*は以下の測定方法によるもの
である。 (1) L*(白色度) JIS Z−8722(物体色の測定方法)の4分光測
定方法により、東京電色社製色差計(MODEL TC
−1500 MC−88)にて染色布(織物)のL*を
測定した。なお測定回数5回の平均値を以て測定値とし
た。 (実施例1) 紡糸引取速度3200m/min.にて紡糸された沸水
収縮率65%のポリエステルセミダル丸断面マルチフィ
ラメント高配向未延伸糸40デニール24フィラメント
を雰囲気温度が200℃の非接触式スリットヒーターで
弛緩率45%、加工速度200m/min.、ヒーター
滞留時間0.18秒の条件で弛緩処理した。弛緩熱処理
した後の高配向未延伸糸は結晶化度(Xρ)14.76
%、残留伸度213%、構造一体性パラメータ(ε0.2
)が61.1%、沸水収縮率(SHW)が−0.9
%、乾熱160℃に於ける乾熱収縮率(SHD)が−
6.3%で実質的に自己伸長を示すことが確認された。
【0026】該弛緩熱処理後のポリエステルマルチフィ
ラメント未延伸糸と沸水収縮率(SHW)が16%、乾
熱160℃に於ける乾熱収縮率(SHD)が18.5%
のポリエステルセミダル丸断面マルチフィラメント通常
延伸糸50デニール10フィラメントを公知のインター
レースノズルを用いて、常温の高圧空気流によって空気
交絡処理し、ポリエステルマルチフィラメント複合糸条
を得た。該複合糸条の糸条1m当たりの交絡個数は72
ケ/mであり糸割れのない、取扱性に優れた糸条となっ
た。
【0027】該ポリエステルマルチフィラメント複合糸
条を村田機械製ダブルツイスター(No. 310−C)を
使用し、S撚方向に300T/m施撚した撚糸条を経糸
として、緯糸としてポリエステルマルチフィラメントセ
ミダル丸断面通常延伸糸150デニール96フィラメン
トをS撚及びZ撚方向に1800T/m施撚し、バキュ
ームヒートセッターを使用し雰囲気温度85℃で40分
間の撚止セットを施した撚糸条を用い、緯糸がS撚糸と
Z撚糸の2本交互の構成になるように、生産密度が経1
62本/吋、緯70本/吋の平織に製織した。精練、リ
ラックスを実施した後、液流染色機を用い29%の減量
率に仕上げた。引き続き液流染色機を使用して濃黒色
(フォーマルブラック)に染色し、通常のファイナルセ
ットを施し、仕上密度が経186本/吋、緯83本/吋
の染色加工布を得た。
【0028】走査型電子顕微鏡を用い、倍率800倍に
て該染色加工布の表面観察を実施したところ、ポリエス
テルマルチフィラメント未延伸糸の弛緩熱処理糸は繊維
軸に対し直角方向に伸びる横溝を多数形成していること
が確認された。該横溝の最大深さは目視で平均約5μ
m、繊維表面に於ける横溝の幅が目視で平均約4μm、
該横溝形成数が糸長50μm当たり平均25ケ、該横溝
のV字がなす角度が、目視で平均約30°であった。該
染色加工布のL*は13.6であり婦人向けブラックフ
ォーマル衣料に充分使用し得る深味のある色調であっ
た。また風合いについてはふかつきのないやさしい感
じ、適度なふくらみ、微妙なドライタッチ、ソフトな手
触り、更には適度なはり、腰を有する、婦人用ドレス、
ブラウス、ジャケット、スカート用途に好適な、全く新
規な風合いの織物に仕上がった。
【0029】(比較例1) 紡糸引取速度が3200m/min.にて紡糸された沸
水収縮率65%のポリエステルセミダル丸断面マルチフ
ィラメント高配向未延伸糸40デニール24フィラメン
トを表面温度が170℃の接触式ヒーターを使用し、弛
緩率0%、加工速度200m/min.、ヒーター滞留
時間0.09秒の条件で定長熱処理した。定長熱処理し
た後の高配向未延伸糸は結晶化度(Xρ)42.25
%、残留伸度113%、構造一体性パラメータ(ε0.2
)が−0.44%、沸水収縮率(SHW)は1.7
%、乾熱160℃に於ける乾熱収縮率(SHD)は2.
3%であった。この定長熱処理した後の高配向未延伸糸
を用いた他は実施例1同様の方法で染色加工布を得た。
該染色加工布のL*は17.5であり実施例1の染色加
工布と比べ色調の濃色感が劣っていた。また風合いにつ
いてもはり、腰は適度に有するもののふくらみ感やソフ
ト感は不足していた。また走査型電子顕微鏡を用い、実
施例1同様に表面観察を実施したが微細溝の形成はな
く、微妙なさらさら感を感じることができず、新規な風
合いには程遠い織物であった。
【0030】(比較例2) 紡糸引取速度が3000m/minにて紡糸された沸水
収縮率72%のポリエステルブライト三角断面マルチフ
ィラメント高配向未延伸糸35デニール18フィラメン
トを延伸機を使用し、延伸倍率1.671倍、延伸温度
80℃の条件で20デニール18フィラメントのポリエ
ステルマルチフィラメント延伸糸とした。該糸条を雰囲
気温度が200℃の非接触式スリットヒーターで弛緩率
45%、加工速度540m/min、ヒーター滞留時間
0.07秒の条件で弛緩熱処理した。弛緩熱処理後の糸
条は結晶化度19.34%、残留伸度80%、構造一体
性パラメータ(ε0.2 )が26.14%、沸水収縮率
(SHW)=−0.8%、乾熱160℃に於ける乾熱収
縮率(SHD)が−5.4%で実質的に自己伸長を示し
た。上記の糸条を用いた他は実施例1同様の方法で染色
加工布を得た。該染色加工布のL*は17.8であり実
施例1の染色加工布と比べ色調の濃色感が劣るものであ
った。風合いに関しては自己伸長の効果により、適度な
バルキー性、ソフト感を有するもののドライタッチは不
足していた。走査型電子顕微鏡を用い表面観察を行った
が、微細溝の形成はなく微妙なさらさら感は感じられな
かった。
【0031】
【発明の効果】本発明の表面微細溝を有する自己伸長性
ポリエステルマルチフィラメント糸を用い、織編物とす
ることによってソフトな感触とドライな感触、適度な嵩
高性とはり、腰を兼ね備え、尚且つ表面微細溝の効果に
よる微妙なさらさら感、更にはより深い色調を与えるこ
とが可能になる。この糸条を用いることにより全く新規
な風合いを有する婦人衣料素材を提供することが出来
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる表面微細溝を有する自己伸長性
ポリエステルマルチフィラメント糸のアルカリ減量処理
後の拡大斜視図である。
【符号の説明】
1:溝部、2:自己伸長性ポリエステルフィラメント
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 D06M 11/38 D06M 5/02 G

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 結晶化度(Χρ)が20%以下、残留伸
    度140%以上、乾熱160℃に於ける乾熱収縮率(S
    HD)が0%未満で且つ、構造一体性パラメータ(ε0.
    2 )が45〜70%であるポリエステル系マルチフィラ
    メントであり、減量率10%以上のアルカリ減量処理に
    よって繊維軸に対し直角方向にのびる多数の溝を形成す
    るフィラメント糸を少なくとも一部に含有することを特
    徴とするポリエステルマルチフィラメント糸条。
  2. 【請求項2】 フィラメント糸の沸水収縮率(SHW)
    が3%以下であることを特徴とする請求項1記載のポリ
    エステルマルチフィラメント糸条。
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