JP2683986B2 - 内燃機関の燃料噴射量制御装置 - Google Patents

内燃機関の燃料噴射量制御装置

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JP2683986B2
JP2683986B2 JP4215665A JP21566592A JP2683986B2 JP 2683986 B2 JP2683986 B2 JP 2683986B2 JP 4215665 A JP4215665 A JP 4215665A JP 21566592 A JP21566592 A JP 21566592A JP 2683986 B2 JP2683986 B2 JP 2683986B2
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  • Electrical Control Of Air Or Fuel Supplied To Internal-Combustion Engine (AREA)
  • Combined Controls Of Internal Combustion Engines (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は内燃機関の燃料噴射量
制御装置に関し、より具体的には噴射した燃料が吸気管
などに付着することで生ずる燃料の輸送遅れを適応的に
補正して筒内実吸入燃料量を目標値に常に一致させる様
にした内燃機関の燃料噴射量制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】機関の過渡運転時には実際の筒内実吸入
燃料量が目標値に一致せず、リーンスパイクやリッチス
パイクが生じることがある。その原因の一つに、燃料が
吸気管の壁面などに付着することによって起こる燃料の
輸送遅れを挙げることができる。この燃料の輸送遅れ
は、機関の運転状態や、初期バラツキや、更には吸気管
へのデポジット付着などによる経時変化によってその挙
動が変化する。そこで、特開平2−173334号ない
しは特開平3−26839号公報記載の技術の様に、付
着プラントとパラメータ調整機構とを設け、過渡運転時
においてもプラントの出力(実吸入燃料量)が目標燃料
吸入量に一致する様に適応的に制御することが提案され
ている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、燃料噴射量
制御においては常に時間遅れの問題が内在する。即ち、
噴射した燃料の空燃比は、燃焼が終了して排気ガスが空
燃比センサに到達して検出値変化として取り出されるま
で把握することができない。その検出遅れに加えて、燃
料噴射量の演算に時間が必要であることや、センシング
および出力のタイミングに起因する遅れも存在する。こ
れらは、燃料噴射量を適応的に制御しようとするときも
同様である。従って、適応制御器の入力と出力の時間的
な対応関係を正確に認識して両者の整合をとらない限
り、燃料の挙動に対する補正を正確に行うことができ
ず、特に過渡的な運転状態では制御値を適正に決定する
ことができない。しかしながら、上記した従来技術にお
いては空燃比センサに検出されるまでの無駄時間が認識
されているに止まり、適応制御器の入出力間の時間的な
整合については特に意識されていなかった。
【0004】従って、この発明の目的は上記した欠点を
解消し、目標燃料吸入量と燃料付着プラントの出力(実
吸入燃料量)の間に時間差を生じさせることがなく、よ
って過渡運転時にも目標空燃比に精度良く収束できる様
にした内燃機関の燃料噴射量制御装置を提供することを
目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記の目的を解決するた
めにこの発明は例えば請求項1項において、内燃機関の
吸気管に噴射した燃料の輸送遅れに基づいて燃料輸送遅
れ補正を行う燃料輸送遅れ補正手段を備え、筒内実吸入
燃料量が目標筒内吸入燃料量に一致するよう適応的に
パラメータを同定し、そのパラメータに応じて制御器の
パラメータを調整する適応制御器を備えてなる内燃機関
の燃料噴射量制御装置であって、プラントに与える制御
入力とパラメータ同定・調整機構との間、あるいはプ
ラント出力若しくはその推定値とパラメータ同定・調
整機構との間、あるいはプラント出力若しくはその推
定値と前記適応制御器との間、の少なくともいずれか
に、制御入力の発生時点とプラント出力若しくはそ
の推定値の発生時点との時間遅れに対応した時間遅れ要
素を挿入するように構成すると共に、前記時間遅れ要素
の次数を、前記内燃機関の運転状態若しくは前記燃料噴
射量制御装置の状態によって変化させる如く構成した。
【0006】
【作用】プラントに与える制御入力uとパラメータ同定
・調整機構との間、あるいはプラント出力y若しくはそ
の推定値とパラメータ同定・調整機構との間、あるいは
プラント出力y若しくはその推定値と前記適応制御器と
の間、の少なくともいずれかに、時間遅れ要素(無駄時
を挿入するようにしたので、過渡運転時にも目標燃
料吸入量とプラント出力(実吸入燃料量)との間に時間
差が生じることがなく、よって目標空燃比に精度良く収
束させることができる。また、前記時間遅れ要素の次数
を、前記内燃機関の運転状態若しくは前記燃料噴射量制
御装置の状態によって変化させる如く構成したので、過
渡運転時にも目標燃料吸入量とプラント出力(実吸入燃
料量)との間に時間差が生じることがなく、更には運転
状態や燃料噴射量制御装置の状態の変化に左右されない
ので、目標空燃比に一層精度良く収束させることができ
る。
【0007】
【発明の構成】図1はこの発明に係る制御装置を全体的
に示すブロック図であり、同図を参照して説明すると、
この制御装置は、機関回転数Ne、吸気圧力Pbなどか
ら予め設定され、マップ化された特性を検索して目標筒
内吸入燃料量(Ti)を決定するMAPブロック、スロ
ットル開度θTH、吸気圧力Pb 、大気圧Pa などから実
吸入空気量(Gair)の動的な挙動を推定するGai
rモデルブロック、排気系集合部の空燃比より各気筒の
空燃比を推定するA/Fオブザーバブロック、及び燃料
噴射量(Tout)を決定する燃料噴射制御ブロックか
ら構成される。この構成において、推定された筒内実吸
入空気量Gairと各気筒の空燃比A/Fとから、各時
刻(燃焼サイクル)における気筒吸入燃料量Gfuel
が推定され、それが目標燃料量Tiに一致する様に、前
記燃料噴射ブロックのパラメータが調整され、噴射燃料
量Toutが決定される。
【0008】以下、それぞれについて詳細に説明する。
【0009】先ず燃料噴射制御について説明する
【0010】燃料噴射制御について図1を書き直すと図
2の様になる。ここで入力パラメータは、次の通りとす
る。 (1)目標筒内吸入燃料量Ti.....各種センサか
らの入力を用いて算出または推定した筒内実吸入空気量
を目標空燃比で割った値。尚、筒内実吸入空気量の算出
については後で詳述する。 (2)筒内実吸入燃料量Gfuel...同様に上記の
筒内実吸入空気量を広域空燃比センサ測定値から求めた
気筒ごとの実空燃比で割った値。気筒ごとの実空燃比の
算出についても後述する。
【0011】即ち、上に述べた如く、ある時刻(k−
n)の燃焼サイクルの筒内実吸入空気量Gair(k−
n)を求めて目標空燃比A/F(k−n)で除算して目
標筒内吸入燃料量Ti(k−n)が決定される。また同
時刻の燃焼サイクルの筒内実吸入空気量Gair(k−
n)を当該気筒の測定空燃比A/F(k−n)で除算
し、筒内実吸入燃料量Gfuel(k−n)が決定され
る。そして適応制御器において、目標筒内吸入燃料量T
i(k−n)に筒内実吸入燃料量Gfuel(k−n)
が常に一致する様に補償器の調整がなされ、制御値(噴
射燃料量)Toutが決定される。ここで、前記した付
着パラメータの変化に即応するために、壁面付着プラン
トの前に、それと逆の伝達関数を持つ壁面付着補正補償
器を直列に挿入する。もし壁面付着補正補償器の持つ付
着パラメータと実機の持つ真の付着パラメータとが等し
ければ、両者は外から見ると伝達関数が1となり、即ち
プラントと補償器の伝達関数の積が1となり、目標筒内
吸入燃料量=筒内実吸入燃料量となるので、完全な補正
が行われるはずである。ところが、付着パラメータは一
般に機関運転状態によって複雑に変化するため、完全に
一致させることは難しい。また実機には初期バラツキが
あり、更にはデポジットの付着などによって経時変化も
生じる。それらの理由から、両者の付着パラメータが異
なった場合、伝達関数は1(またはその付近)以外の値
となり、時間応答を生じるので、目標筒内吸入燃料量と
筒内実吸入燃料量とは等しくならない。
【0012】そこで、この付着補正補償器を含んで1つ
の仮想プラントとみなし、その仮想プラントの伝達特性
が1(またはその付近の値)以外になったとき、仮想プ
ラント及び適応制御器の伝達特性が全体として1(また
はその付近の値)になる様に、より具体的には、仮想プ
ラントの逆伝達特性を持つ様に適応制御器を動作させる
様にした。適応制御器には、目標値として目標筒内吸入
燃料量が入力され、仮想プラントの出力である筒内実吸
入燃料量が目標値と一致する様に変化する適応パラメー
タが用いられる。適応制御器のパラメータは、適応パラ
メータ調整(同定)器によって計算される。適応パラメ
ータ調整(同定)器には、仮想プラントへの過去の値を
含む入出力値が用いられる。尚、上記において適応制御
器は、筒内吸入空気量の持つ誤差を吸収する働きも行
う。即ち、筒内吸入空気量の推定に誤差があっても、結
果的に筒内吸入空気量を測定空燃比と目標空燃比でそれ
ぞれ除算して得られる筒内実吸入燃料量と目標筒内吸入
燃料量とが常に一致する様に適応パラメータが調整され
るので、空気量推定誤差は吸収されることになる。
【0013】以下、詳述する。
【0014】壁面付着プラントとしては数1に示す様な
1次系のモデルを用いる。ここではパラメータは2個と
する。
【0015】
【数1】
【0016】それを離散形の伝達関数で示すと、数2の
様になる。またブロック線図で示すと、図3の様にな
る。
【0017】
【数2】
【0018】また数3に壁面付着補正補償器の伝達関数
を示す。前記の如く、壁面付着プラントのそれの逆伝達
関数をとる。尚、この明細書で「ハット」は、推定値を
意味する。
【0019】
【数3】
【0020】次いで、適応制御器について説明する。壁
面付着補正に求められる条件としては、常に輸送遅れを
小さくする方向で働くこと、A,B項の変化に追従でき
ること、が挙げられるが、その様に時変(時間的に変
化)であるプラントに追従して適応制御する手法として
は、MRACS(モデル規範形適応制御)が良く知られ
ている。そこで壁面付着補正にMRACSを適用する
と、図4に示す様になる。このとき規範モデルは時変プ
ラントの中央値付近に取っても良いし、壁面付着補正補
償器が制御し易い様に取っても良い。尚、MRACSは
無駄時間を持つプラントにのみ有効なため、付着プラン
トへの入力をdサイクル遅らせることによって見掛け上
無駄時間を挿入し、仮想プラントとしている(挿入ブロ
ックに「仮想」なる語を付す)。
【0021】ここで気付くことは、仮想付着補正補償器
と仮想規範モデルが直列に並んでいることである。これ
らは互いに逆伝達関数の関係にあるので、キャンセルす
ることができる。その結果、仮想規範モデルの直後のz
d のブロックと、D(z-1)が残るが、zd は未来値を
出力する伝達関数であり、そのままでは存在できない。
よってD(z-1)をD(z-1)=z-dとおくことによ
り、この両者もキャンセルする。通常、D(z-1)は、
D(z-1)=1+d1 -1+・・・+dn -n、の様に
おかれるが、D(z-1)=z-dとおいても安定性には問
題がない。よって、図4を整理すると、図5の様になる
(これによって適応制御器はレギュレータ問題を扱うこ
ととなってSTR(セルフチューニングレギュレータ)
に変形する)。ここで適応制御器はパラメータ同定機構
によって同定された係数ベクトルを受け取ってフィード
バック補償器を形成する。但し、この動作自体は公知な
ものであって、例えば「コンピュートロール」No.2
7、『ディジタル適応制御』、28頁から41頁に詳述
されているので、説明は省略する。
【0022】図示した構成についてのシミュレーション
による応答結果を図6に示す。この図より、MRACS
のパラメータ同定機構は、前述の構成において正常に動
作していることが分かる。しかし空燃比の挙動には暴れ
が残ってしまっている。これを微視的にみるために、図
7の(a)の様な目標吸入燃料量を入力してみると、プ
ラント出力と空燃比は同図(b)(c)の様になる。こ
れから、プラント出力が1サイクル遅れているのが分か
る。仮想プラントとしてプラントに無駄時間が挿入され
ているため、この遅れが原因で、過渡運転時に目標燃料
量とプラントの時間差が1サイクル分生じるため、空燃
比にスパイクが生じることが分かる。そこで、プラント
およびパラメータ同定機構ならびに制御器との間の時間
的な整合をとる必要がある。
【0023】ここでは、仮想プラントを外から見た場
合、無駄時間z-dをプラントの前に挿入しても後に挿入
しても等価なので、先ずこれをプラントの後に付けるこ
とにする。そして、プラントの出力y′(k)はプラン
トの直後から取り出し、その後に挿入した無駄時間z-d
の後からパラメータ同定機構が必要とする仮想プラント
出力y(k)を取り出すことにする。こうすれば入力r
(k)からプラント出力y′(k)の経路に無駄時間が
存在せず、かつパラメータ同定機構は無駄時間の入った
仮想プラント出力y(k)を用いることができる。その
構成を図8に示す。また図9に図8の構成のシミュレー
ション結果を示す。収束後は図9(c)の様に、実吸入
燃料量はほぼ目標燃料量となり、そのときの空燃比も1
4.7付近でフラットに推移している。また先と同じく
同定終了後の微視的応答を同じスケールでみると、図1
0の様になる(破線は比較のための無駄時間対策前の応
答)。これをみても、無駄時間対策後の応答は、同定が
終了すれば非常にフラットな空燃比になっている。よっ
て、適応制御の導入にあたっては、無駄時間を含む時間
的整合をとることが非常に重要であることが分かる。
【0024】ところで、先に述べた様に燃料噴射量制御
においては、空燃比センサの検出遅れ、センサ出力のA
/D変換タイミングによる遅れ、燃料噴射量の演算によ
る遅れ、演算値を出力するタイミングによる遅れなど種
々の遅れが存在し、しかも、それらは内燃機関の運転状
態によって若しくは燃料噴射量制御装置の状態によって
変化する可能性があるが、この発明の特徴の一つは、無
駄時間を利用することで、その変化に対応しつつ前記し
たプラントとパラメータ同定機構ならびに制御器間の時
間的な整合をとる様にしたことにある。
【0025】具体的には図8に示した構成を図11の様
に変形し、プラントとパラメータ同定機構ないしは適応
制御器の間に無駄時間要素を必要に応じて挿入すると共
に、その構成を用いて変化に対応する様にした。以下説
明する。
【0026】図11の構成において、パラメータ同定則
について述べると、適応パラメータθハット(k)は、
ランダウなどの手法を用いて、数4の様に表すことがで
きる。数4中の同定誤差信号eスター(k)およびゲイ
ン行列Γ(k)は、各々数5および数6で表すことがで
きる。
【0027】
【数4】
【0028】
【数5】
【0029】
【数6】
【0030】ここで、θハット(k)のベクトルの次数
およびΓ(k)の行列の次数は、仮想プラントの次数お
よび仮想プラントの無駄時間(時間遅れ要素)の次数で
一意に決定される。よって、内燃機関の運転状態により
無駄時間が変化した場合には、パラメータ同定機構で用
いるベクトルおよび行列の次数を変更しなければならな
い。即ち、アルゴリズム自体を変更しなければならな
い。これは、この装置を実現するに当たり、現実的では
ない。
【0031】そこで、その問題を解決する1つの手法と
して、パラメータ同定機構において演算に用いるベクト
ルおよび行列の次数を無駄時間が最長の場合に合わせて
おき、実際の無駄時間がそれより短くなった場合には、
図11に想像線で示す如く、プラントの入出力間に存在
する種々の時間遅れに対応できる様に、無駄時間を挿入
する様にした。例えば、高回転域においては、種々の遅
れが燃料噴射制御装置の演算周期に比べて大きくなり、
無駄時間の次数が最大でd=4に達する場合があるとす
る。そのとき、パラメータ同定機構および適応制御器の
構成をd=4に合わせておく。そして、低回転域では演
算周期が長くなるため、相対的に無駄時間が短くなり、
d=2になるとすると、その場合には図11における
h,i,jをh=2,i=0,j=2とすることによ
り、プラント出力の無駄時間をパラメータ同定機構およ
び適応制御器からみて、見掛け上、d=4にすることが
できる。
【0032】また、別の解決手法として、パラメータ同
定機構および適応制御器の構成を、無駄時間が最長の場
合よりも短く設定し、図11に想像線で示す如く、プラ
ントの入出力間に存在する種々の時間遅れに対応できる
様に無駄時間を挿入しても良い。例えば、無駄時間の次
数がd=4のとき、パラメータ同定機構を、プラントの
無駄時間の次数が2である場合に対応した構成にした場
合を考えると、h=0、i=2、j=0とすると、u
(k−2)に対してy(k)は無駄時間の次数d=4を
含むので、両者の無駄時間の差は2となり、無駄時間の
次数を2次に合わせて構成したパラメータ同定機構は、
安定に動作することができる。
【0033】尚、上記以外の場合において、プラントの
入出力間に存在する種々の時間遅れ、またはその変化に
対応させるために、プラント入力および出力に無駄時間
を適宜挿入することは有効であり、この出願における制
御においては、前述した様にそれを一つの特徴とする。
【0034】ところで、数4から数6にパラメータ同定
則を示したが、数6中のλ1(k), λ2(k)の選び方によ
り、具体的なパラメータ同定則が決定する。MRACS
の代表的な同定則は、固定ゲイン法、漸減ゲイン法(最
小二乗法を含む)、可変ゲイン法(重みつき最小二乗法
を含む)、固定トレース法の4種に大別される。それら
について図4に示した構成に基づき以下の条件でシミュ
レーションを行った。ここで、実機への適用においては
時変プラントが対象となる可能性が高いため、時変プラ
ントを使用した。図12〜図15にそのシミュレーショ
ン結果を示す。シミュレーション結果から分かる様に、
固定ゲイン法(図12)ではプラント出力値が目標値を
中心に激しくハンチングを起こしている。これは、目標
値が変化しているとき(過渡運転時)に特に顕著であ
る。過渡運転時には規範モデル出力と、その目標値であ
るプラント出力値との差が大きくなるので、MRACS
のパラメータ同定機構は一度に大幅にパラメータを変え
ようとする。このため、プラントの変化が速すぎるとき
などの場合にはオーバシュートを起こし、ハンチングし
てしまう。それに対し、漸減ゲイン法(図13)と可変
ゲイン法(図14)と固定トレース法(図15)とで
は、目標値である規範モデルに対してプラント出力はき
ちんと追従している。部分的に振動が見られるが、目標
値に収束していることが分かる。この程度の振動は、収
束のためのパラメータを調整すれば、例えばゲイン行列
の数値やD(z-1)を変えることにより、収束スピード
を犠牲にすることなく、抑え込むことが可能である。よ
って、この3つの同定則は収束スピードが固定ゲイン法
に比べて速く、プラントが時変であっても追従可能であ
ることを示している。
【0035】続いて、筒内実吸入空気量Gairの推定
について説明する。
【0036】先に述べた様に、筒内実吸入燃料量Gfu
elを正確に求めるためには、吸入空気量を精度良く求
める必要がある。従来より、吸入空気量を直接的に計測
するマスフロー方式、吸気チャンバ内圧力によって間接
的に推定するスピードデンシティ方式などが提案されて
いるが、これらの従来手法は基本的には気筒吸入空気量
と相関の高いパラメータを用いてマッピング(マップ
化)しておき、それを検索して求めるものであるため、
マッピング時に考慮されていなかったパラメータの変化
に対しては全く無力であり、劣化、バラツキ、経年変化
などに対してタフネスがなかった。またマッピングは基
本的には定常状態でしか行うことができず、過渡運転状
態を表現していないため、過渡時の気筒吸入空気量はセ
ッティングに頼る他はなかった。従って、この発明にお
いては、吸気系に各種条件下において吸入空気量の変化
を反映することができる流体力学モデルを適用し、計測
自体は従来通り間接的であるにしても、マッピング、セ
ッティングを廃して精度良く求める様にした。即ち、ス
ロットルをオリフィスとみなし、スロットルまわりの流
体力学モデルを構築してスロットル通過空気量を推定
し、チャンバ充填遅れを考慮して動的に実吸入空気量を
推定する様にした。以下、説明する。
【0037】先ず、図16の吸気系モデルに示す様に、
スロットルをオリフィスとみなすと、数7に示すベルヌ
ーイの式、数8に示す連続の式、数9に示す断熱変化の
関係式より、数10に示す絞り式流量計などで使用され
る圧縮性流体についての流量の計算式を導出でき、単位
時間当たりのスロットル通過空気量Gthを求めること
ができる。
【0038】
【数7】
【0039】
【数8】
【0040】
【数9】
【0041】
【数10】
【0042】次いで、気体の状態式に基づく数11に示
す式からチャンバ内空気量Gbを求める。尚、ここで
「チャンバ」はいわゆるサージタンク相当部位のみなら
ず、スロットル弁下流から吸気ポートに至る間の全ての
部位を意味する。
【0043】
【数11】
【0044】従って、今回充填された空気量の変化分Δ
Gbは、圧力変化分より数12の式から求めることがで
きる。
【0045】
【数12】
【0046】即ち、定常運転状態であればGth=Ga
irとなる。他方、過渡状態で例えばスロットル弁が急
に開かれたとき吸入圧力が高くなるのは、空気がチャン
バを充填しているからである。逆に言えば、チャンバ内
を充填した空気量とスロットル弁を通過した空気量とが
分かれば気筒内に流入した空気量も分かることになる。
即ち、チャンバに充填された空気量分は当然ながら気筒
へ吸入されないものとすれば、単位時間ΔT当たりの筒
内実吸入空気量Gairは数13で表すことができ、こ
れによって実吸入空気量の動的な挙動が推定可能とな
る。図17にこの算出手法によるシミュレーション結果
を示す。
【0047】
【数13】
【0048】上記について実験結果を示す。図18にテ
スト装置の概略を示す。
【0049】実験においては、スロットル開度一定と
し、空気量を変化させ、そのときのスロットル上、下流
の圧力を測定し、また同時に空気流量も測定した。テス
トはスロットル上流側に関して10種のスロットル開度
について行った。そのうちスロットル開度31.6度に
ついての結果を図19に示す。図示したものも含めた実
験結果から以下が判明した。 (1)スロットル下流の圧力は、スロットルから1D〜
2D(D:スロットル弁の径)で一度落ち込み、3D〜
4Dで回復し、再び下流へ向かうほど緩やかに圧力が下
がっていく(下流の落ち込みは、スロットル弁により流
れの縮流、渦流、剥離が発生するため)。 (2)落ち込んだ圧力を測定すると、スロットルの前後
差圧が実際よりも大きくなってしまうので、回復した圧
力値を用いてスロットル通過空気量を算出する必要があ
る。
【0050】またスロットル上流については、スロット
ル手前で圧力が低下することが判明した。
【0051】以上から、スロットル下流の圧力Pthdown
(数7等の式においてP2 )は圧力の回復した位置、即
ち、スロットル弁から約3D(理想的には3D〜4D)
離れた位置で、スロットル上流の圧力Pthup(数7等の
式においてP1 )はスロットル弁の影響が及ばない位置
で、かつスロットル弁にできるだけ近い位置、即ち、ス
ロットル弁から約1D(ないしはそれ以上)離れた位置
で測定するのが望ましいことが分かった。尚、スロット
ル下流の圧力はその意味でチャンバ(サージタンク)内
の圧力と等価とみなすことができる。よって、後で述べ
る様にサージタンク内に圧力センサを設け、その検出値
であるサージタンク内の圧力をスロットル下流圧Pthdo
wnとしても良い。
【0052】数10に示した式において、流量係数αの
みを未知数とし、前記したテストによって流量係数を同
定した。尚、ここで同定は、測定したスロットル前後の
圧力を用い、数10の式からスロットル通過空気量Gt
hを算出し(初期値は適宜設定)、続いて算出値と実測
値とを比較し、両者が一致する様に流量係数の値を変化
させ、以上を繰り返して行って誤差が最小になる値を流
量係数とする、手法を採った。図20にその手法によっ
て同定したスロットル開度に対する流量係数の値を示
す。また図21に同定した流量係数を用いて推定した値
と実測値とを比較して示す(スロットル開度31.6度
についてのみ示す)。
【0053】図22に、以上の手法で求めた流量係数を
使用し、またスロットル弁から下流に4D、上流に1D
離れた位置で測定した値を用いてシミュレーションで算
出した値と、実際に測定した値とを対比して示す。尚、
同図に示すのは、スロットル開度を7〜20度に変化さ
せたときのデータである。またPb は吸気圧センサ実測
値を、Gthはエアフロメータによる実測値を示す。同
図から、この算出手法が実効的であることが見てとれよ
う。
【0054】尚、数10において測定値はPthup
(P1 ), Pthdown(P2 ), θTHであるので、それら
をマップ化(マッピング)しておいて特に平方根の演算
時間を短縮することとする。それを数14に示す。尚、
同式でMはマップデータを示す。
【0055】
【数14】
【0056】次いで、センサの分解能との関係を述べ
る。図23は縦軸に一定の計測誤差に対する制御誤差
を、横軸にスロットル開度をとった測定データである。
同図から、一定の計測誤差に対しては、低開度となるほ
ど、制御誤差が大きくなることが分かる。従って、セン
サは低開度側ほど計測誤差を少なくするもの、別言すれ
ば低開度側ほど高分解能を有するものであることが望ま
しい。また図24は縦軸に同様に制御誤差をとると共
に、横軸にスロットル弁前後の圧力比をとった測定デー
タである。これから同様に、吸気圧力センサについても
高負荷側(大気圧側、図に1で示す)に高分解能を備え
るものを使用することが望ましいことが分かる。従っ
て、実機での応用に際してはスロットル開度センサと吸
気圧力センサとは共に、あるいは少なくとも一方は、こ
の様な分解能を備えたものを用いることが望ましい。
【0057】尚、前記した空気量の測定について幾つか
付言すると、スロットル前後の圧力比が所定値以下の場
合には、流速が音速となっていることから、所定値(例
えば0.528)に固定する。また、吸気温センサは算
出精度を向上させる意味で、スロットル弁の上流の近傍
に設ける様にする。また湿度センサを備えて数10の式
の空気の比重量を補正するのが望ましい。
【0058】次いで、気筒別の空燃比の検出について説
明する。多気筒内燃機関においてはコストまたは耐久性
上の問題から、一般的には排気系の集合部に1個の空燃
比センサのみを配置している。従って、集合部の空燃比
から各気筒の空燃比を特定する必要がある。そこで、集
合部の空燃比の挙動をモデル化することにより、逆に集
合部の空燃比から数値演算によって各気筒の空燃比を推
定する様にした。
【0059】先ず、広域空燃比センサの応答遅れを1次
遅れと擬似的にモデル化し、その状態方程式を求め、周
期ΔTで離散化すると、数15の様になる。ここで、L
AF:広域空燃比センサ出力、A/F:入力空燃比であ
る。
【0060】
【数15】
【0061】数15をZ変換を用いて伝達関数で示せば
数16の様になる。即ち、図25に示す如く、数16の
逆伝達関数を今回(時刻k)のセンサ出力LAFに乗じ
ることによって前回(時刻k−1)の空燃比を求めるこ
とができる。
【0062】
【数16】
【0063】次いで、上記の如く遅れ補正して求めた空
燃比から各気筒の空燃比を分離抽出する手法について説
明すると、先ず図26に示す様に内燃機関の排気系をモ
デル化する(これを図1において「EXMN PLAN
T」と示した)。尚、このモデル(プラント)ではF
(燃料量)を制御量とするため、燃空比F/Aを用いて
いる。
【0064】ここで、集合部の空燃比は発明者達の知見
によれば各気筒の空燃比の時間的な寄与度を考慮した加
重平均として表すことができ、式で示すと、数17の様
になる。
【0065】
【数17】
【0066】また各気筒の空燃比を漸化式の形式で表す
と、数18の様になる。
【0067】
【数18】
【0068】入力U(k)は未知なので、4気筒として
4TDCごとに空燃比が再現するものとして漸化式を構
成すると、数19の様になり、よって数20の如き通常
の状態方程式の問題に帰着する。
【0069】
【数19】
【0070】
【数20】
【0071】従って、時間的な寄与度Cが分かれば、カ
ルマンフィルタを設計して図27に示す様なオブザーバ
を構成することにより、各時刻のX(k)をY(k)よ
り推定することが可能となる。即ち、上記の様な状態方
程式に対し、適当なゲイン行列をとって数21で示す様
な式のXハット(k)を考える。
【0072】
【数21】
【0073】ここで、(A−KC)が安定行列であれ
ば、Xハット(k)がX(k)となり、X(k)(各気
筒の空燃比)をY(k)(集合部の空燃比)から推定す
ることが可能となる。尚、その詳細は本出願人が先に提
案した技術(特願平3−359340号、平成3年12
月27日出願)に述べてあるので、これ以上の説明は省
略する。
【0074】以上について、実機に適用した場合につい
て実施例を説明する。
【0075】
【実施例】図28はそれを全体的に示す概略図である。
図において、符号10は4気筒の内燃機関を示してお
り、吸気路12の先端に配置されたエアクリーナ14か
ら導入された吸気は、スロットル弁16でその流量を調
節されつつサージタンク(チャンバ)18とインテーク
マニホルド20を経て第1〜第4気筒に流入される。各
気筒の吸気弁(図示せず)の付近にはインジェクタ22
が設けられて燃料を噴射する。噴射され吸気と一体とな
った混合気は各気筒内で図示しない点火プラグで点火さ
れて燃焼してピストン(図示せず)を駆動する。燃焼後
の排気ガスは排気弁(図示せず)を介してエキゾースト
マニホルド24に排出され、エキゾーストパイプ26を
経て三元触媒コンバータ28で浄化されて機関外に排出
される。
【0076】また内燃機関10のディストリビュータ
(図示せず)内にはピストン(図示せず)のクランク角
度位置を検出するクランク角センサ34が設けられると
共に、スロットル弁16の開度θTHを検出するスロット
ル開度センサ36、スロットル弁16下流の吸気圧力P
b を絶対圧力で検出する吸気圧センサ38も設けられ
る。またスロットル弁16の上流側には、大気圧Pa を
検出する大気圧センサ40、吸入空気の温度を検出する
吸気温センサ42、吸入空気の湿度を検出する湿度セン
サ44が設けられる。更に、排気系においてエキゾース
トマニホルド24の下流側で三元触媒コンバータ28の
上流側には酸素濃度検出素子からなる広域空燃比センサ
46が設けられ、排気ガスの空燃比を検出する。これら
センサ34などの出力は、制御ユニット50に送られ
る。尚、上記において、スロットル上流側の圧力を検出
する大気圧センサ40は、スロットル弁16の配置位置
から1D(D:吸気路12の径)以上離れた位置に配置
すると共に、スロットル下流側の圧力を検出する吸気圧
センサ38は、スロットル弁16の配置位置から3D以
上離れたサージタンク18内に配置する。また吸気温セ
ンサ42と湿度センサ44とはスロットル弁16に可能
な限り接近して配置する。尚、スロットル開度センサ3
6と吸気圧センサ38の分解能は、それぞれ0.01
度、0.1mmHg以上とする。
【0077】図29は制御ユニット50の詳細を示すブ
ロック図である。広域空燃比センサ46の出力は検出回
路52に入力され、そこで適宜な線型化処理が行われて
リーンからリッチにわたる広い範囲において排気ガス中
の酸素濃度に比例したリニアな特性からなる空燃比(A
/F)が検出される。尚、その詳細は先に本出願人が提
案した出願(特願平3−169456号、平成3年6月
14日出願)に述べてあるので、これ以上の説明は省略
する。検出回路52の出力はA/D変換回路54を介し
てCPU56,ROM58,RAM60からなるマイク
ロ・コンピュータ内に取り込まれ、RAM60に格納さ
れる。同様にスロットル開度センサ36などのアナログ
出力はレベル変換回路62、マルチプレクサ64及び第
2のA/D変換回路66を介して、またクランク角セン
サ34の出力は波形整形回路68で波形整形された後、
カウンタ70で出力値がカウントされ、カウント値はマ
イクロ・コンピュータ内に入力される。マイクロ・コン
ピュータにおいてCPU56はROM58に格納された
命令に従って前記の如く適応制御手法に基づいて制御値
を演算し、駆動回路72を介して各気筒のインジェクタ
22を駆動する。
【0078】続いて、図29の制御装置の動作を図30
フロー・チャートを参照して説明する。
【0079】先ずS10においてクランク角センサ34
が検出した機関回転数Neを読み込み、S12で大気圧
センサ40などが検出した大気圧Pa (前記したスロッ
トル上流圧Pthupに同じ)、吸気圧力Pb (前記したス
ロットル下流圧Pthdownに同じ)、スロットル開度θT
H、空燃比A/Fなどを読み込む。
【0080】次いでS14に進んでクランキングか否か
判断し、否定されるときはS16に進んでフュエルカッ
トか否か判断する。そこでも否定されたときはS18に
進み、機関回転数Neと吸気圧力Pb とからマップを検
索し(図1に示す)、目標筒内吸入燃料量Tiを算出
し、S20に進んで基本モードの式によって燃料噴射量
Toutを算出する。尚、ここで基本モードとは前記し
た適応制御によらない手法であって、従来の公知の手法
によるものを意味する。
【0081】次いでS22に進み、広域空燃比センサ4
6の活性化が完了したか否か判断し、肯定されるときは
S24に進んで先に述べた手法で気筒別空燃比を推定
し、S26に進んで実吸入空気量Gairを推定し、S
28に進んでそれから筒内実吸入燃料量Gfuelを推
定し、S30に進んで適応制御によって最終燃料噴射量
Toutを決定し、S32に進んで駆動回路72を介し
て当該気筒のインジェクタ22に出力する。尚、S14
でクランキングと判断されたときはS34,S36に進
んで始動モードの制御値を算出すると共に、S16でフ
ュエルカットと判断されたときはS38に進んでTou
tを零とする。またS22でセンサが活性化していない
と判断されるときは直ちにS32にジャンプして基本モ
ードによる制御値でインジェクタを駆動する。
【0082】上記した構成においては気筒別に空燃比を
推定して筒内実吸入燃料量を精度良く求め、筒内実吸入
燃料量が目標値に一致する様に制御器のパラメータを適
応的に制御したので、精度の良い適応制御を実現するこ
とができる。
【0083】また、付着プラントとパラメータ同定・調
整機構あるいは適応制御器との間に系の無駄時間(時間
遅れ要素)を介挿する様にしたので、過渡運転時にも目
標燃料吸入量と付着プラントの出力(実吸入燃料量)と
の間に時間差が生じることがなく、目標空燃比に精度良
く収束させることができる。更に、無駄時間の次数を内
燃機関の運転状態や燃料噴射量制御装置の状態に応じて
変化させる様にしたので、一層精度良く目標空燃比に収
束させることができる。
【0084】また、付着プラントの伝達関数の逆伝達関
数を持つ補償器を付着プラントに直列に接続し、その補
償器を含んで1つの仮想プラントとみなし、その仮想プ
ラントの伝達関数が1(またはその付近の値)以外にな
ったとき、その逆伝達関数を持つ如く適応制御器を動作
させる様にしたので、予め設定する特性が経年変化など
で実際の特性と異なることがあっても良くその変化に追
従して目標値となる様に適応的に制御することができ
る。
【0085】尚、上記した構成においてこの発明を図1
に関して説明したが、それに限られるものではなく、こ
の発明は図31に示す様に、実吸入空気量の動的な挙動
を推定するGairモデルブロックを設けず、マップ値
に”14.7”を乗じて実吸入空気量Gairを推定す
る様にした構成にも妥当し、適応制御を行うことによっ
て吸気系の挙動も吸収する、即ち、前記した如く、実吸
入空気量の推定に誤差があっても、それを吸収すること
ができる。更に、この発明は図32に示す様に、目標値
Tiをマップ化せず、Gairモデルブロックが推定し
た実吸入空気量Gairに”1/14.7”を乗じて目
標値Tiを決定する様にした構成にも妥当する。
【0086】更に、上記した構成において、1個の空燃
比センサを用いて各気筒の空燃比を推定し、目標値に制
御する例を示したが、それに限られるものではなく、気
筒ごとに空燃比センサを設けて各気筒の空燃比を直接検
出しても良い。
【0087】更には、上記した制御を行うために、吸気
系のモデルを立てて実吸入空気量を算出したが、この手
法は開示した制御に限られるものではなく、一般的な燃
料噴射量制御や点火時期制御などにも利用することがで
きる。
【0088】
【発明の効果】請求項1項は、内燃機関の吸気管に噴射
した燃料の輸送遅れに基づいて燃料輸送遅れ補正を行う
燃料輸送遅れ補正手段を備え、筒内実吸入燃料量が目標
筒内吸入燃料量に一致するよう適応的にパラメータを
同定し、そのパラメータに応じて制御器のパラメータを
調整する適応制御器を備えてなる内燃機関の燃料噴射量
制御装置であって、プラントに与える制御入力とパラ
メータ同定・調整機構との間、あるいはプラント出力
若しくはその推定値とパラメータ同定・調整機構との
間、あるいはプラント出力若しくはその推定値と前記
適応制御器との間、の少なくともいずれかに、制御入力
の発生時点とプラント出力若しくはその推定値の発
生時点との時間遅れに対応した時間遅れ要素を挿入する
ように構成すると共に、前記時間遅れ要素の次数を、前
記内燃機関の運転状態若しくは前記燃料噴射量制御装置
の状態によって変化させる如く構成したので、過渡運転
時にも目標燃料吸入量とプラント出力(実吸入燃料量)
との間に時間差が生じることがないことから、目標空燃
比に精度良く収束させることができる。
【0089】請求項項の装置は、前記時間遅れ要素
の次数を、前記内燃機関の運転状態若しくは前記燃料噴
射量制御装置の状態によって変化させるように構成した
ので、過渡運転時にも目標燃料吸入量とプラント出力
(実吸入燃料量)との間に時間差が生じることがなく、
更には運転状態や燃料噴射量制御装置の状態の変化に左
右されることがないことから、目標空燃比に一層精度良
く収束させることができる。
【0090】請求項項の装置は、前記パラメータ同定
・調整機構に、漸減ゲイン法、可変ゲイン法および固定
トレース法のうちのいずれかを用いるように構成したの
で、過渡運転時においても目標値にプラント出力を良く
追従させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る制御装置を全体的に示すブロッ
ク図である。
【図2】図1中の燃料噴射制御を動作的に示すブロック
図である。
【図3】図2中の壁面付着プラントのブロック線図であ
る。
【図4】図2の壁面付着補正にMRACS(モデル規範
形適応制御)を適用した状態を示すブロック図である。
【図5】図4に示すブロック図を整理した後の状態を示
すブロック図である。
【図6】図5の構成のシミュレーション結果を示すデー
タ図である。
【図7】図6のデータを微視的に検証したシミュレーシ
ョン結果を示すデータ図である。
【図8】図5の構成に無駄時間対策を施した状態を示す
ブロック図である。
【図9】図8の構成のシミュレーション結果を示すデー
タ図である。
【図10】図9のデータを微視的に検証したシミュレー
ション結果を示すデータ図である。
【図11】図5の構成に別の無駄時間対策を施した状態
を示すブロック図である。
【図12】図4の構成において固定ゲイン法について行
ったシミュレーションを示すデータ図である。
【図13】図4の構成において漸減ゲイン法について行
ったシミュレーションを示すデータ図である。
【図14】図4の構成において可変ゲイン法について行
ったシミュレーションを示すデータ図である。
【図15】図4の構成において固定トレース法について
行ったシミュレーションを示すデータ図である。
【図16】図1に示したGairモデルブロックの筒内
実吸入空気量の算出に用いる吸気系のモデルを示す説明
図である。
【図17】図16のモデルの筒内実吸気空気量算出のシ
ミュレーション結果を示すデータ図である。
【図18】図16のモデルの筒内実吸気空気量算出手法
のテスト装置を示す説明図である。
【図19】図18のテスト装置のテスト結果を示すデー
タ図である。
【図20】図18テスト装置を用いて行ったスロットル
開度に対するスロットルの流量係数の同定結果を示すデ
ータ図である。
【図21】図20の同定結果を用いて求めた推定値と実
測値とを対比的に示すデータ図である。
【図22】図16に示したモデルに基づいてシミュレー
ションで求めた値と実測値とを対比的に示すデータ図で
ある。
【図23】制御誤差とスロットル開度の関係を示すデー
タ図である。
【図24】制御誤差とスロットル弁前後の圧力比の関係
を示すデータ図である。
【図25】空燃比センサの検出遅れをモデル化し、真の
空燃比を推定する推定器のブロック線図である。
【図26】図1のEXMN PLANTを示すブロック
線図である。
【図27】図26の構成にオブザーバを組み込んだ構成
を示すブロック図である。
【図28】図1の構成を実機に適用した状態を示す、内
燃機関の燃料噴射量制御装置を全体的に示す概略図であ
る。
【図29】図28の制御ユニットの構成を示すブロック
図である。
【図30】図29の制御ユニットの動作を示すフロー・
チャートである。
【図31】この発明の別の構成例を示す図1と同様のブ
ロック図である。
【図32】この発明の更に別の構成例を示す図1と同様
のブロック図である。
【符号の説明】
10 内燃機関 12 吸気路 16 スロットル弁 18 サージタンク 20 インテークマニホルド 22 インジェクタ 24 エキゾーストマニホルド 26 エキゾーストパイプ 36 スロットル開度センサ 38 吸気圧センサ 40 大気圧センサ 42 吸気温センサ 44 湿度センサ 46 広域空燃比センサ 50 制御ユニット
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小森谷 勲 埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式 会社本田技術研究所内 (72)発明者 廣田 俊明 埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式 会社本田技術研究所内 (56)参考文献 特開 平4−187844(JP,A) 特開 昭60−36748(JP,A) 特開 平3−42703(JP,A) 特開 平1−211648(JP,A) 特開 平4−187843(JP,A) 特開 平4−128523(JP,A)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 内燃機関の吸気管に噴射した燃料の輸送
    遅れに基づいて燃料輸送遅れ補正を行う燃料輸送遅れ補
    正手段を備え、筒内実吸入燃料量が目標筒内吸入燃料量
    に一致するよう適応的にパラメータを同定し、そのパ
    ラメータに応じて制御器のパラメータを調整する適応制
    御器を備えてなる内燃機関の燃料噴射量制御装置であっ
    て、プラントに与える制御入力とパラメータ同定・調
    整機構との間、あるいはプラント出力若しくはその推
    定値とパラメータ同定・調整機構との間、あるいはプラ
    ント出力若しくはその推定値と前記適応制御器との
    間、の少なくともいずれかに、制御入力の発生時点と
    プラント出力若しくはその推定値の発生時点との時間
    遅れに対応した時間遅れ要素を挿入するように構成する
    と共に、前記時間遅れ要素の次数を、前記内燃機関の運
    転状態若しくは前記燃料噴射量制御装置の状態によって
    変化させることを特徴とする内燃機関の燃料噴射量制御
    装置。
  2. 【請求項2】 前記パラメータ同定・調整機構に、漸減
    ゲイン法、可変ゲイン法および固定トレース法のうちの
    いずれかを用いることを特徴とする請求項1項記載の内
    燃機関の燃料噴射量制御装置。
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