JP2668200B2 - 新規ファイトカサンelおよび稲病害防除剤 - Google Patents

新規ファイトカサンelおよび稲病害防除剤

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、稲体中から抽出された
ファイトアレキシン誘導活性を有する新規ジテルペン化
合物のファイトカサンELに関するものであり、更に詳
しくは、本発明は、稲にファイトアレキシンの生成を誘
導する活性を有し、またそれ自体稲いもち病菌、稲紋枯
れ病菌に抗菌活性を示すファイトカサンELとその製造
方法およびいわゆる残留毒性の心配のない低毒性、無公
害の稲病害防除剤に関するものである。ファイトアレキ
シンはこれらの病害菌に対する強い抗菌活性を有するた
め、本発明のファイトカサンELを稲に施用することに
より稲いもち病、稲紋枯れ病の感染を防御することがで
きる。
【0002】
【従来の技術】一般に、植物は病原菌と接触すると抵抗
性反応(過敏感反応)を示し、反応部位の周囲の組織に
病原菌に対し抗菌性を示すファイトアレキシンを産生す
ることが知られている。稲のファイトアレキシンとして
は、モミラクトンA、B、オリザレキシンA、B、C、
D、E、F、S、サクラネチン、オリザリックアシド
A、B、オリザライドA、Bが知られており、その他
に、本発明者等が見いだしたファイトカサンA、B、
C、D(特願平7−43520号)がある。
【0003】ファイトアレキシンを植物体中に産生誘導
する物質はエリシターと称され(Keen, N.T.; Science
187:74-75 (1975)) 、これまでに多くの物質が植物病原
菌から分離されている。代表的なエリシターとしては、
多糖物質としてPhytophthoramegasperma f. sp. glycin
ea から分離されたhepta-β-D- グルコピラノシド(Shar
p, J. K., B. Valentand, P. Albershim; J. Biol. Che
m. 259:11321-11336(1984)) 、蛋白物質としてMonilini
a fructicolaから分離されたモニコリンA (Cruickshan
k, I. A. M. and D. R. Perrin; Life Sci. 7:449-458
(1968))、脂質としてPhytophthora infestansから分離
されたエイコサペンタエン酸(Bostock,R. M., J. Kuc a
nd R. A. Laine; Science 212:67-69 (1981))等があ
る。
【0004】病原菌由来のエリシターの他に、ある種の
農薬、抗生物質、重金属等がエリシター活性を有するも
のとして知られているが、ファイトカサンELのような
稲体中の成分にエリシター活性があることはこれまで知
られていなかった。エリシターは、前記のように、植物
体中に病害菌に抗菌性を示すファイトアレキシンの産生
を誘導することから、従来の合成農薬とは異なる作用に
よる安全性の高い植物病害防除剤となり得ることが期待
されているが、いまだ実用化の例は少ないというのが実
情であり、従って、当業界においては、このようなファ
イトアレキシンの産生誘導物質を利用した安全性の高い
植物病害防除剤を開発することが強く求められている状
況にあった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】このような状況の中
で、本発明者等は、前記従来技術に鑑みて、稲体中にフ
ァイトアレキシンを産生、誘導させる物質を種々検索し
た結果、稲成分のひとつがこのような活性を持つことを
新たに見いだした。また、この物質は、病原菌に対して
抗菌性を持つこと、稲のカルス培養によって効率よく産
生されることを見いだした。更に、この物質を溶媒抽
出、カラムクロマトグラフィー等の手段により単離して
その構造解析を行った結果、この物質は、下記の構造を
有する新規物質ファイトカサンELであることを明らか
にし、また、本物質が稲いもち病、稲紋枯れ病防除剤と
して有効であることを明らかにして本発明を完成させ
た。
【0006】
【化2】
【0007】本発明は、稲にファイトアレキシンの産生
を誘導するエリシターであり、また稲いもち病菌、稲紋
枯れ病菌に抗菌性を示す新規物質ファイトカサンELを
提供することを目的とするものである。
【0008】本発明は、また、稲のカルス培養液からフ
ァイトカサンELを採取することによりファイトカサン
ELを製造する方法を提供することを目的とするもので
ある。
【0009】本発明は、また、ファイトカサンELを稲
に施用することによって稲いもち病害、稲紋枯れ病害を
防除することが可能な稲いもち病害、稲紋枯れ病害防除
剤を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決する本発
明は、稲にファイトアレキシンの生成を誘導する活性を
有し、また、いもち病菌、紋枯れ病菌に対する抗菌活性
を有する下記の構造式で表されるファイトカサンEL、
に関するものである。
【0011】
【化3】
【0012】また、前記課題を解決する本発明は、稲カ
ルスの液体培養液に稲いもち病菌あるいはじゃがいも疫
病菌等の植物病原菌の菌体抽出物を添加してファイトカ
サンELを産生させた後、これを分離することを特徴と
する上記ファイトカサンELの製造方法、に関するもの
である。
【0013】更に、前記課題を解決する本発明は、上記
のファイトカサンELを有効成分とする稲いもち病害、
稲紋枯れ病害防除剤、に関するものである。
【0014】本発明者等は、ファイトアレキシンを産
生、誘導させる物質を探索することを目標として、稲の
葉面に試料を塗布して適時栽培後、稲体中に産生される
ファイトアレキシンの量を測定する試験を種々実施する
過程において、稲いもち病菌あるいはじゃがいも疫病菌
等の植物病原菌の菌体抽出物を添加した稲カルスの液体
培養液からの溶媒抽出物がファイトアレキシンを誘導す
る高い活性を示すことを認めた。従って、その有効成分
(ファイトカサンEL)は、例えば、稲カルスの液体培
養液に稲いもち病菌あるいはじゃがいも疫病菌等の植物
病原菌の菌体抽出物を添加して適時培養することによっ
て産生させることができ、その後、ファイトカサンEL
が産生されたことを確かめた上、培養液を、例えば、酢
酸エチル、クロロホルム、エチルエーテル、等の水不溶
性の有機溶媒で抽出処理し、高速液体クロマトグラフィ
ー、薄層クロマトグラフィー等の手段により精製処理す
ることによって単一成分のものとして単離することがで
きる。
【0015】本発明で使用される稲カルスの液体培地と
しては、炭素源、窒素源、無機塩類、ビタミン、植物ホ
ルモン等からなる従来から稲の組織培養に用いられてい
る培地ならいずれも使用できるが、好ましくは、例え
ば、DK培地等が例示される。これらの培地には、炭素
源として蔗糖等の炭水化物が用いられ、無機塩類として
硝酸カリ、硫酸アンモニウム、塩化カルシウム等が用い
られ、窒素源としてアスパラギン酸、グルタミン等が使
用される。また、ビタミン類としてはニコチン酸、塩酸
チアミン、塩酸ピリドキシン等が用いられる。植物ホル
モンとしては、2,4−D、カイネチン、アブシジン
酸、インドール酢酸等が適宜用いられる。
【0016】使用する稲の品種、組織部位は特に限定さ
れないが、好ましくは、例えば、こしひかりの種子より
調製したカルスが好適なものとして使用される。稲カル
スを形成させるには、常法に準じて稲の組織培養を行え
ばよく、特に限定されるものではないが、好適には、例
えば、稲の種子のもみがらを除いた胚乳と胚の部位を使
用し、これを、上記液体培地に2,4−Dを倍量加え、
アスパラギン酸、グルタミンを除いた培地により無菌的
に培養すればよく、例えば、それを、pH5.8、25
℃の条件にて30日間暗所静置培養することにより、稲
カルスが形成される。
【0017】本発明においては、稲カルスの液体培養液
に稲いもち病菌、あるいはじゃがいも疫病菌の菌体抽出
物を添加してファイトカサンELを誘導させる。ファイ
トカサンELの誘導物質であるいもち病菌、じゃがいも
疫病菌の菌体抽出成分の調製方法は、好適なものを例示
すると、例えば、次の通りである。すなわち、ライ麦液
体培地(1L中ライ麦種子60gの水抽出物とサッカロ
ース20g、イーストエキス2gを含む)にそれぞれの
菌株を接種し、それを、稲いもち病菌の場合は28℃で
5〜7日振盪培養し、また、じゃがいも疫病菌の場合は
18℃で1ヶ月静置培養する。それぞれの培養液を濾過
して、菌体を分ける。約50gの菌体に180mlの水
を加えホモジナイザーで磨砕し、超音波で破砕後、オー
トクレーブ(121℃、60分)で熱分解する。分解物
を遠心分離して得られる上清液をファイトカサンEL誘
導物質試料として用いる。菌体抽出成分の調製方法は、
上記方法に限らず、それと同効のものであれば同様に使
用できるものであることはいうまでもない。
【0018】カルスの培養液に上記のファイトカサンE
L誘導物質試料を加え、これを数日間培養して、その上
清液を分離する。ファイトカサンELの精製の具体的プ
ロセスとしては、例えば、上清液を酢酸エチル等の溶媒
で抽出処理した後、抽出成分をTSKgel ODS1
20A(東ソー社製)、ODS120T(東ソー社製)
等による高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によ
る分画、濃縮乾固等の精製プロセスにより精製し、単離
する方法が好適なものとして例示されるが、該方法に限
らず、他の同様の精製手段を適宜組み合わせて実施する
ことも可能であり、その精製プロセスについては特に限
定されるものではない。
【0019】本発明のファイトカサンELは、新規物質
であり、次のような性質を有する。 1)ファイトカサンELは無色のガム状物質で、アセト
ン、クロロホルム、メタノール、エタノールに可溶であ
り、水に100ppm前後の濃度で溶解する。 2)ファイトカサンELの高分解能質量分析による精密
分子量は316.2062(C20283 としての計算
値316.2065)、を示した。 3)ファイトカサンELは図1に示される赤外部吸収ス
ペクトルを示す。 4)ファイトカサンELは図2に示される 1H−NMR
スペクトルを示す。 5)ファイトカサンELは図3に示される13C−NMR
スペクトルを示す。 6)ファイトカサンELは図4に示されるCDスペクト
ル(Circulardichroism、円偏光2色
性)を示す。 7)ファイトカサンELは、稲にファイトアレキシンの
産生を誘導する性質を示す。誘導されるファイトアレキ
シンとしてはファイトカサンA、B、C、D、モミラク
トンA、B等である。これらの物質は稲いもち病菌、稲
紋枯れ病菌に対する強い抗菌活性を有しているために、
これらの物質の誘導を受けた稲は、病害菌に対し抵抗性
を示すものと考えられる。 8)ファイトカサンELは、稲いもち病菌の胞子の発芽
および菌糸の伸長を阻害する作用を有する。胞子の発芽
を50%阻害するファイトカサンELの濃度は7ppm
であり、また、この濃度で菌糸の伸長はかなり阻害され
る。 9)ファイトカサンELは、10ppmの濃度で稲紋枯
れ病菌の菌糸の伸長を阻害する。
【0020】本発明のファイトカサンELは、後記する
実施例で示したように、稲に抗菌性物質のファイトアレ
キシンの産生を誘導する性質、稲いもち病菌の胞子の発
芽および菌糸の伸長を阻害する性質、また、稲紋枯れ病
菌の菌糸の発芽を阻害する性質を有することから、ファ
イトカサンELは、稲いもち病害防除剤、稲紋枯れ病害
防除剤の有効成分として有用である。ファイトカサンE
Lは、前記した各種の性質を有することから、該化合物
を適宜の形態の薬剤として稲に施用することにより、稲
いもち病の発生および稲紋枯れ病の発生を抑制すること
ができる。本発明の薬剤は、後記する実施例で示したよ
うに、その使用目的に応じて、上記有効量を含む形で適
宜の形態に製剤化すればよく、その形態、製剤手段等は
特に限定されるものではない。
【0021】該化合物を稲に施用する方法としては、後
記する実施例5で記述したように、例えば、該化合物を
0.1%のツイーン20を含むpH5.5の20mMリ
ン酸緩衝液に溶解して、その溶液を稲に噴霧散布する方
法等が好適なものとして例示されるが、これに限らず、
その他の方法であってもよく、該化合物を稲に施用する
ための薬剤の形態、その使用形態、施用方法等は特に限
定されるものではない。
【0022】本発明のファイトカサンELは、稲に由来
する天然物質であり、健全植物組織により容易に分解さ
れ、ほとんど残留しない性質を有していることから、残
留毒性の心配がなく、特に環境保全の視点からその開発
が期待されているいわゆる低毒性、無公害の植物病害防
除剤として安全に使用し得るものとしてその有用性は極
めて顕著なものである。
【0023】
【実施例】以下実施例で本発明を具体的に説明するが、
本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものでは
ない。 実施例1 ファイトカサンELの製造 1)稲のカルスの増殖 稲(品種:こしひかり)のカルスをDK培地(1L中s
ucrose 30g、KNO3 0.809g、(N
4 )SO4 0.066g、NaH2 PO4・2H2
O 0.312g、CaCl2 ・2H2 O 0.148
g、MgSO4・7H2 O 0.246g、Fe−ED
TA 0.02g、ビタミン類 0.101g、グリシ
ン2mg、アスパラギン酸 0.7g、グルタミン
0.7g、2,4−D 1mg、およびその他の塩とし
て、MnSO4 ・4〜6H2 O、ZnSO4 ・7H
2 O、CuSO4 ・5H2 O、Na2 MoSO4 ・2H
2 O、H3 BO4 の必要量、を含む液体培地)で、pH
5.8、25℃の条件で旋回培養(90rpm、25
℃、3,000lux)して増殖させた。このカルスを
適量とり、スパーテルで細かく潰し、20メッシュの金
網を通過するカルスのみを篩別した。
【0024】2)ファイトカサンELの産生 篩別したカルスを500mlの三角フラスコに入れ、こ
れに90mlのDK培地を加え、2日間25℃で旋回培
養(90rpm、25℃、3,000lux)を行った
後、培養液に無菌濾過したじゃがいも疫病菌の菌体抽出
成分溶液1mlを加え、更に4日間旋回培養を続けた。
培養終了後、培養液を遠心器にかけて(11,500r
pm、2hr)上清液を分離した。
【0025】3)ファイトカサンELの抽出、精製 上清液に、炭酸ナトリウムを加えpH10.7に調整し
た後に、同量の酢酸エチルを加えてファイトカサンEL
を抽出し、抽出液を濃縮乾固した。残渣をエタノールに
溶解し、これを試料溶液として、2段階の高速液体クロ
マトグラフィー(HPLC)による分離、精製を行っ
た。すなわち、第1段階として、試料溶液をTSKge
l ODS−120Aのカラム(21.5mm×375
mm、東ソー社製)に注入し、55%アセトニトリルに
より溶出(10ml/min)した。保持時間41分前
後のファイトカサンEL画分を集め、これを濃縮乾固し
て、残渣をエタノールに溶解した。次に、第2段階とし
て、この試料溶液をTSKgel ODS−120Tの
カラム(21.5mm×375mm、東ソー社製)に注
入し、50%アセトニトリルにより溶出(10ml/m
in)した。保持時間46分前後のファイトカサンEL
画分を集め、これを濃縮乾固することにより単一のファ
イトカサンELが得られた。1Lの培養上清液から約3
mgのファイトカサンELが得られた。
【0026】実施例2 ファイトカサンELによるファイトアレキシンの誘導 1)ファイトアレキシンの産生 実施例1で得たファイトカサンELをツイーン20(和
光純薬社製)を0.1%含むリン酸緩衝液(20mM、
pH5.5)に溶かし、10、20ppmの試料溶液を
調製した。この各濃度の試料溶液および試料を含まない
溶媒液を、ポットで栽培した稲(品種:こしひかり)に
施用して、ファイトアレキシン産生の誘導活性を測定し
た。この場合、施用部位は完全展開した第6葉の先端部
分とし、その適宜間隔をおいた10ポイントにキャピラ
リーピペットで各試料溶液20μlを(1葉あたり)滴
下施用した。
【0027】2)ファイトアレキシンの抽出 試料溶液で処理した稲を人工気象室で7日間培養後、8
枚の葉をとり、細断して、これに酢酸エチル5mlと
0.1規定炭酸ナトリウム液5ml(pH10)を加
え、1晩振盪した。酢酸エチル層を分取してこれを濃縮
乾固し、残渣を0.4mlのエタノールを加えて溶解し
た。
【0028】3)HPLCによる分析 この溶液に0.02規定の塩酸を0.6ml加え、混合
して、遠心機にかけ、得られた上清液のうち100μl
を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による分析
に供した。HPLCの条件は下記の通りである。 カラム:TSK−gel ODS 120T(4.6m
m×300mm、東ソー社製) 溶媒 :アセトニトリル(45):水(55)(容積
比) 流速 :1.2ml/min 温度 :50℃ 検出器:UV 280nm(ファイトカサン)、215
nm(モミラクトン)
【0029】次の表1に、誘導されたファイトアレキシ
ン量を示す。表1の結果から明らかなように、本発明の
ファイトカサンELは、稲にファイトアレキシン(ファ
イトカサンA、B、C、D、ファイトカサンEL、モミ
ラクトンA、B)を高いレベルの生成量で誘導する活性
を有することが判明した。
【0030】
【表1】
【0031】実施例3 いもち病菌の菌糸伸張阻害試験 1)方法 いもち病菌(Pyricularia oryzae レース007)の胞
子をツイーン20(和光純薬社製)を100ppm含む
水に懸濁して浮遊液を調製して、その25μlをホール
オブジェクトグラスプレートにのせた。このプレートを
28℃で、6時間培養して、胞子を発芽させた。別にフ
ァイトカサンELの試料をツイーン20を500ppm
含む水に所定濃度に溶かした。プレート上の発芽した胞
子浮遊液に、所定濃度のファイトカサンELの水溶液2
5μlを加えた試料区及びツイーン20を500ppm
含む水25μlを加えた対照区を調製し、各区を、それ
ぞれ、28℃で1晩培養後、各区における菌糸の伸張状
態を顕微鏡で観察した。
【0032】2)結果 その結果、ファイトカサンELを含む試料区では、いも
ち病菌の菌糸の伸張が阻害され、ファイトカサンELが
いもち病菌の菌糸の伸張を阻害する作用を有することが
分かった。また、菌糸長が対照区の約50%を示したフ
ァイトカサンELの濃度は7ppmであった。
【0033】実施例4 紋枯れ病菌の菌糸伸張阻害試験 1)方法 市販のポテトデキストロース寒天培地(栄研化学株式会
社製)3.9gを100mlの水に溶かし、この寒天培
地の溶液を2mlづつ試験管に分注して、121℃で、
15分間オートクレーブで殺菌後、60℃に冷却した。
別にファイトカサンELの試料をツイーン20を500
ppm含む水に所定濃度に溶かした後、無菌濾過した。
ファイトカサンELの溶液を寒天培地の溶液に加えて均
一に混合してシャーレに流し、ファイトカサンELを1
0ppm含む寒天プレートを調製した。また、対照とし
て、ファイトカサンELを含まない相当量の500pp
mのツイーン20水溶液を寒天培地に加えたブランクの
プレートを調製した。これらのシャーレのプレートの中
央に、紋枯れ病菌(Rhizoctonia solani)を培養した寒
天培地の小片を置き、28℃で培養して40時間後の菌
糸の伸張を観察した。菌糸は阻害がないと中央の接種源
を中心に伸張し円形の菌叢を形成する。
【0034】2)結果 その結果、ファイトカサンELを含む試料では、紋枯れ
病菌の菌糸の伸張が阻害され、ファイトカサンELが紋
枯れ病菌の菌糸の伸張を阻害する作用を有することが分
かった。また、対照プレートの菌叢の直径が18mmに
対し、ファイトカサンEL10ppm区では菌糸の伸張
は認められなかった。
【0035】実施例5 稲のいもち病菌感染防御試験 1)方法 稲(品種:こしひかり)種子を培土を詰めた鉢に1鉢あ
たり8粒播種し、6葉展開期まで育て、各18鉢を1区
とし、2区を試験に供した。ファイトカサンELをツイ
ーン20(和光純薬社製)を0.1%含むリン酸緩衝液
(20mM、pH5.5)に35ppmとなるよう溶か
し、試料溶液を調製した。ツイーン20を0.1%含む
リン酸緩衝液および試料溶液50mlづつ各区稲に噴霧
して、約23℃で24時間放置して葉面を乾燥させた。
この葉面に、いもち病菌Pyricularia oryzae レース0
07株(親和性株)の胞子懸濁液を50mlづつ各区に
噴霧後、加湿、暗黒下の条件に、24時間放置して接種
処理を行った。その後、人工気象室に移して栽培し、5
日後に各区稲葉上に観察される灰色病斑数を数え(18
ポット、144株での稲一株あたりの平均病斑数)、い
もち病の発病度を比較した。
【0036】2)結果 その結果、稲一株あたりの平均病斑数はツイーン20を
0.1%含むリン酸緩衝液の処理区では2.17個であ
るのに対し、ファイトカサンELの試料溶液処理区では
0.91個であり、ファイトカサンELのいもち病の発
病抑制効果が明らかに認められた。
【0037】実施例6 稲いもち病害防除剤 ファイトカサンELおよび他の成分を以下の配合割合で
配合して常法により液剤を調製した。 ファイトカサンEL────────────────35μg/ml ツイーン20(和光純薬社製)───────────500ppm リン酸カリウム緩衝液(20mM、pH5.5)───100ml
【0038】実施例7 稲紋枯れ病害防除剤 ファイトカサンELおよび他の成分を以下の配合割合で
配合して常法により液剤を調製した。 ファイトカサンEL────────────────35μg/ml ツイーン20(和光純薬社製)───────────500ppm リン酸カリウム緩衝液(20mM、pH5.5)───100ml
【0039】
【発明の効果】本発明は、稲にファイトアレキシンを生
成を誘導するエリシター活性を有するものであり、かつ
稲いもち病菌、および稲紋枯れ病菌に対する抗菌活性を
持つファイトカサンELに係るものであり、本発明によ
れば、以下のような効果が得られる。 (1)稲にファイトアレキシンの産生を誘導し、かつ稲
いもち病菌、および稲紋枯れ病菌に抗菌性を持つ新規ジ
テルペン化合物が提供される。 (2)ファイトカサンELの効率的な製造方法が提供さ
れる。 (3)ファイトカサンELは、稲にファイトアレキシン
の産生を誘導し、かつ稲いもち病菌、および稲紋枯れ病
菌に抗菌性を持つことから、該化合物は稲いもち病害防
除剤、および稲紋枯れ病害防除剤の有効成分として有用
である。 (4)稲いもち病および稲紋枯れ病の発病の抑制に有効
であるばかりでなく、いわゆる残留毒性の問題のない低
毒性、無公害の稲病害防除剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のファイトカサンELの赤外部吸収スペ
クトルを示す。
【図2】本発明のファイトカサンELの 1H−NMRス
ペクトルを示す。
【図3】本発明のファイトカサンELの13C−NMRス
ペクトルを示す。
【図4】本発明のファイトカサンELのCDスペクトル
(Circular dichroism、円偏光2色性)を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12R 1:91) (72)発明者 小笠原 長宏 新潟県西蒲原郡西川町大字曽根1962番地 株式会社植物防御システム研究所内 (56)参考文献 TETRAHEDRON,VOL. 51,NO.29(1995),PP.7907− 7918

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 稲にファイトアレキシンの生成を誘導す
    る活性を有し、また、いもち病菌、紋枯れ病菌に対する
    抗菌活性を有する下記の構造式 【化1】 で表されるファイトカサンEL。
  2. 【請求項2】 稲カルスの液体培養液に稲いもち病菌あ
    るいはじゃがいも疫病菌等の植物病原菌の菌体抽出物を
    添加してファイトカサンELを産生させた後、これを分
    離することを特徴とする請求項1記載のファイトカサン
    ELの製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項1記載のファイトカサンELを有
    効成分とする稲いもち病害防除剤。
  4. 【請求項4】 請求項1記載のファイトカサンELを有
    効成分とする稲紋枯れ病害防除剤。
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DE69733479T2 (de) * 1997-04-21 2006-03-23 Meiji Seika Kaisha Ltd. Verfahren zum screenen auf elizitären, die die phytroalexinproduktion in reis induzieren und mittel zur bekämpfung von reiskrankheiten, die einen solchen elizitor als wirkstoff enthalten

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