JP2654862B2 - 鉄心加工性および耐粉塵化性が優れた方向性電磁鋼板の絶縁皮膜形成方法 - Google Patents

鉄心加工性および耐粉塵化性が優れた方向性電磁鋼板の絶縁皮膜形成方法

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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は鉄心加工性および耐粉塵性が優れた方向性電
磁鋼板の絶縁皮膜形成方法に関する。
(従来の技術) 方向性電磁鋼板は、Siを例えば2〜4%含有する珪素
鋼スラブを熱間圧延し、焼鈍した後、1回或いは中間焼
鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して最終板厚として、
次いで脱炭焼鈍し、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗
布し、仕上焼鈍を施してゴス方位をもつ2次再結晶粒を
発達させ、さらにS,N等の不純物を除去するとともにグ
ラス皮膜を形成し、次いで絶縁皮膜用コーティング液を
塗布し、焼付処理して絶縁皮膜を形成し製品とされる。
また、鉄損をより低くさせることを目的として、仕上
焼鈍後、或いは前に方向性電磁鋼板の表面に微細な線状
歪を間隔をおいて付与し磁区を細分化することがなされ
ている(例えば特開昭53−137016号公報、特開昭56−51
522号公報)。
前記線状歪が絶縁皮膜形成後になされた場合は、皮膜
が損傷されることがあるので、防錆の目的で再度絶縁皮
膜処理がなされる。
ところで、方向性電磁鋼板は主としてトランス、電気
機器の鉄心材料として用いられるが、鉄心製造の際に
は、所定幅のスリットされた方向性電磁鋼板のフープを
連続的に巻き解きながら剪断機で所定長さおよび形状に
切断した後、鉄心加工機で順次巻き重ね、または積層し
て、巻鉄心や積鉄心とされる。巻鉄心の場合には圧縮成
型、歪取焼鈍を経てレーシングと呼ばれる巻線作業を行
ってトランスとされる。
積鉄心の場合は、手作業により鉄心を組み立て、巻線
作業を行ってトランスとされるが、通常は歪取焼鈍は行
わない。
鉄心の製造においては、例えば巻鉄心の場合、皮膜の
潤滑性がよくて巻加工、成型作業が円滑に行え、かつ成
型後の鋼板端面やラップ部に凹凸を生ぜず、形状が優れ
ていること、また積鉄心の場合、鋼板表面に形成された
絶縁皮膜が搬送ロール等との負荷荷重下での接触や剪断
時等に粉塵化しないことおよび皮膜のすべり性が適当に
あり、鉄心組立作業が円滑に行われることが要求され
る。
さらに、巻鉄心の場合は歪取焼鈍時に鋼板の表面皮膜
相互間で焼付がなく、レーシング作業がスムーズに行え
ることが、鉄心加工能率の向上或いは焼付による歪の誘
起や皮膜性能の劣化防値の観点から重要である。これら
の問題に対しては、方向性電磁鋼板の絶縁皮膜の性状が
大きく影響するから、これらの特性の優れた絶縁皮膜を
開発することが強く望まれている。
トランスの鉄心加工性を向上させるための手段とし
て、絶縁皮膜形成用のコーティング剤の改良が検討され
ている。例えば特開昭61−4773号公報には、コーティン
グ剤として第1燐酸塩に粒子径8μm以下の超微粒子コ
ロイド状シリカ,クロム酸,クロム酸塩の1種または2
種以上からなる混合液を、仕上焼鈍後の鋼板に塗布し焼
付処理することにより、絶縁皮膜のすべり性を改善する
技術が開示されている。
これらの絶縁皮膜の改善によって、方向性電磁鋼板の
鉄損,磁気歪,絶縁特性とともに皮膜潤滑性が改善され
てきており、それなりの効果が得られている。
しかし、線状歪を付与し低鉄損化され、絶縁皮膜を再
度形成された方向性電磁鋼板では、線状歪の確保のた
め、絶縁皮膜の焼付温度を充分に高めることができず低
温で焼付することが必要である。そのため皮膜強度不足
となり、絶縁皮膜に疵が付きやすく、皮膜の粉塵化が散
見されることがある。また該方向性電磁鋼板は磁気特性
が高度化されているが、その特性を製作トランスにおい
て十分に発揮されるための要件の一つとして該鋼板絶縁
皮膜の鉄心加工性を一層向上させることが重要である。
(発明が解決しようとする課題) 本発明は線状歪を付与して鉄損を低下させた方向性電
磁鋼板において、前記線状歪の付与前または後、或いは
前後両方で方向性電磁鋼板に絶縁皮膜を形成するにあた
り、すべり性がよく鉄心加工性にすぐれ、かつ粉塵化な
いし絶縁皮膜を形成せしめる方法を提供することを目的
とする。
(課題を解決するための手段) 本発明の要旨とするところは、珪素鋼スラブを熱間圧
延し必要に応じて焼鈍し、1回或いは中間焼鈍を挟み2
回以上の冷間圧延を行って最終板厚とし、脱炭焼鈍し、
焼鈍分離剤を塗布した後仕上焼鈍し、該仕上焼鈍後の鋼
板に絶縁皮膜コーティング剤を塗布し焼付処理を行い、
鋼板表面に微細な線状歪を間隔をおいて付与し、その
後、再度絶縁皮膜コーティング剤を塗布し焼付け絶縁皮
膜を形成する方法において、 粒径50nm以下のコロイド状シリカ100重量部(SiO2
して)に対し、Al,Mg,Ca,Znの燐酸塩の1種または2種
以上を130〜300重量部と、無水クロム酸,クロム酸塩,
重クロム酸塩の1種または2種以上を10〜100重量部
と、Fe,Ca,Ba,Zn,Al,Ni,Sn,Cu,Cr,Cd,Nd,Mn,Mo,Si,Ti,
W,Bi,Sr,Vの酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、硼化
物、水酸化物、珪酸塩、炭酸塩、硼酸塩、硝酸塩または
塩化物であって、その粒子径が100〜2000nmの非コロイ
ド状の固形物の1種または2種以上を0.5〜25重量部と
を添加してなる絶縁皮膜コーティング剤を、前記線状歪
の付与前または後、或いは前後両方に鋼板に塗布し焼付
け絶縁皮膜を形成することを特徴とする鉄心加工性およ
び耐粉塵化性が優れた方向性電磁鋼板の絶縁皮膜形成方
法にある。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明者らは、鋼板表面に線状歪を間隔を置いて付与
し、また線状歪付与前後に絶縁皮膜コーティング剤を塗
布し焼付け絶縁皮膜を形成する際、前記コーティング剤
中に粒子径が100〜2000nmの非コロイド状の固形物を添
加すると、それが均一に分散して、これらが形成絶縁皮
膜に丸みを呈する小さな凸をつくり、二重皮膜形成と相
まってすべり性が格段に優れた絶縁皮膜となり、また疵
がつき難く粉塵が生じない皮膜が得られる。
本発明を実験データに基づき詳細に説明する。
公知の方法で仕上焼鈍まで施した方向性電磁鋼板のス
トリップコイルからサンプルを切り出し、歪取焼鈍を83
0℃×5時間で行いコイルセットを除去した後、2%H2S
O4で80℃×8秒の軽酸洗を施したものをサンプルとし
た。このサンプルに第1表に示すように、粒径10nmのコ
ロイド状シリカ100重量部に対し、Alの燐酸塩を234重量
部を配合した絶縁皮膜コーティング剤に、粒子径が250n
m、1200nmの非コロイド状のSiO2の粉末を2重量部添加
配合し、これを水と混ぜ撹拌し、コーティング液として
鋼板に塗布、焼付後に4.0g/m2となるように塗布し、N2
雰囲気下で860℃×30秒間の焼付処理を行った。その
後、鋼板表面へ圧延直交方向に10mm間隔をおいてレーザ
ー照射により微細な線状歪を付与した。その後、再度絶
縁皮膜コーティング液を塗布し400℃で焼付けた。
得られた製品板から試料を切り出し、第1図に示す方
法(A法)で絶縁皮膜のすべり摩擦係数(FF値)を測定
した。その測定方法は挟み板1−1,1−2間に試料2を
置き、重鍾3にて荷重Nを加え、試料2を引き出す力A
をバネ計り4で測定し、すべり摩擦係数μを、μ(FF)
=A/Nより求めた。
また、絶縁皮膜上を一定加重を加えた鋼球を繰り返し
すべらせ、その際に鋼球が絶縁皮膜から受ける抵抗値を
連続的に測定し、あわせて絶縁皮膜の疵発生有無を調査
した(潤滑性,B法)。
さらに、別に切り出した3cm×4cmの試料を積層し、こ
れを90kg/cm2の締め付け圧力で結束してN2雰囲気で860
℃×3時間の歪取焼鈍を施し、第2図(b)に示す方法
によって鋼板の剥離荷重を測定しスティッキング性を調
査した。結果を第1表に示す。
第1表に示すように、粒子径が250nm、1200nmの非コ
ロイド状のSiO2を2重量部添加配合した絶縁皮膜コーテ
ィング剤を塗布し焼付けたものは、FF値が低くて潤滑性
が優れ、疵発生が皆無で耐粉塵化性が高く、歪取焼鈍時
の耐スティッキング性も良好である。
次に、本発明の絶縁皮膜の形成方法について述べる。
絶縁皮膜形成用コーティング剤の組成は、50nm以下の
コロイド状シリカ100重量部(SiO2として)に対し、Al,
Mg,Ca,Znの燐酸塩の1種または2種以上を130〜300重量
部と、無水クロム酸,クロム酸塩,重クロム酸塩の1種
または2種以上を10〜100重量部配合している。前記コ
ロイド状シリカは鉄損および磁歪を低下させ、また皮膜
のすべり性をよくするためには50nm以下の微細粒とする
必要がある。
Al,Mg,Ca,Znの燐酸塩は皮膜のベタツキを防ぎ、また
すべり性を良好とする作用があり、さらに本発明が対象
とするような絶縁皮膜を再度形成させる場合には皮膜粉
塵化を防ぐ作用があり、この効果を奏するためにはコロ
イド状シリカ100重量部に対して、130重量部以上必要で
ある。一方、その量が多くなると皮膜が軟質化し、皮膜
に疵が生じやすくなるので300重量部以下とする。ま
た、Al,Mg,Ca,Znの燐酸塩は選択的に配合されるもので
あり、このなかの1種または2種以上が配合される。
無水クロム酸,クロム酸塩,重クロム酸塩の1種また
は2種以上を皮膜形成を安定化のために配合するが、こ
の量が10重量部未満では皮膜にベタツキを生じるので、
10重量部以上とする必要がある。一方、この量が多くな
るとフリーのクロム酸が過剰となり、再コーティングし
低温で皮膜形成する際にもベタツクので100重量部以下
とする。
Fe,Ca,Ba,Zn,Al,Ni,Sn,Cu,Cr,Cd,Nd,Mn,Mo,Si,Ti,W,B
i,Sr,Vの酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、硼化物、水
酸化物、珪酸塩、炭酸塩、硼酸塩、硝酸塩または塩化物
の非コロイド状の固形物が配合添加される。該固形物は
皮膜表面が微細な凸球状を分散して形成しすべり性を高
め、また皮膜粉塵化を防止させるために100nm以上の粒
子径とする。一方、この粒子径が大きくなると皮膜の占
積率が低下するので2000nm以下の粒子とする。粒子径が
5〜100nm程度では固形物同士が凝集し皮膜表面に前記
凸球状を形成する。また、該非コロイド状の固形物の配
合はその量が少ないとすべり性の向上効果が得られず、
このようなことがないようにしてすべり性を高めるには
コロイド状シリカ100重量部に対して、0.5重量部以上配
合添加する必要がある。一方、その量が多くなると皮膜
の占積率が低下するので上限は25重量部とする。
以上の組成からなる絶縁皮膜コーティング剤は水溶液
状とされ、鋼板に塗布、焼付け処理されて絶縁皮膜を形
成するが、鋼板に磁区を細分化し鉄損を低下させる線状
歪を形成する前または後のいずれか一方の絶縁皮膜生成
に用いられる。また線状歪付与の前後ともに本発明に従
った絶縁皮膜コーティング剤を適用しても同様な効果が
得られる。
次に、実施例について述べる。
(実施例1) 重量%でC:0.083%,Si:3.23%,Mn:0.068%,S:0.024
%,sol.Al:0.029%、残部が鉄および不可避的不純物か
らなる珪素鋼スラブを公知の方法で熱延し、焼鈍後冷延
し、最終板厚0.220mmとした。次いで、脱炭焼鈍し、焼
鈍分離剤塗布の後、1200℃×20時間の仕上焼鈍を行い、
グラス皮膜を形成した。次いで余剰の焼鈍分離剤を水洗
により除去し、軽酸洗の後、第2表に示すようにコロイ
ド状シリカの粒子径と燐酸塩を調整した絶縁皮膜剤を焼
付後の重量で4.5g/m2になるように塗布し、850℃×30秒
間N2雰囲気中で焼付処理を行った。但し、20%コロイド
状シリカの比重を1.12g/cc、燐酸塩(50%)の比重を1.
45g/ccとする。その後、レーザー照射により鋼板の圧延
軸直角方向に10mm間隔で線状歪を与えた。その後、公知
の方法による第2表のNo.7に示す組成の絶縁皮膜コーテ
ィング剤を焼付後の総重量で4.5g/m2になるように塗布
し、次いで400℃×30秒間N2雰囲気中で焼付処理を行っ
た。
得られた鋼板からサンプルを切出し、FF値、潤滑性、
疵発生有無、耐スティッキング性について調査した。結
果を第2表に示す。
(実施例2) 重量%でC:0.083%,Si:3.23%,Mn:0.068%,S:0.024
%,sol.Al:0.029%、残部が鉄および不可避的不純物か
らなる珪素鋼スラブを公知の方法で熱延し、焼鈍後冷延
し、最終板厚0.220mmとした。次いで、脱炭焼鈍し、焼
鈍分離剤塗布の後、1200℃×20時間の仕上焼鈍を行い、
グラス皮膜を形成した。次いで余剰の焼鈍分離剤を水洗
により除去し、軽酸洗の後、公知の方法による第3表の
No.5に示す組成の絶縁皮膜コーティング剤を焼付後の重
量で4.0g/m2になるように塗布し、850℃×30秒間N2雰囲
気中で焼付処理を行った。その後、レーザー照射により
鋼板の圧延軸直角方向に10mm間隔で線状歪を与え、さら
に第3表に示すようにコロイド状シリカの粒子径と燐酸
塩を調整した絶縁皮膜コーティング剤を焼付後の総重量
で4.5g/m2になるように塗布し、次いで400℃×30秒間N2
雰囲気中で焼付処理を行った。但し、20%コロイド状シ
カの比重を1.12g/cc、燐酸塩(50%)の比重を1.45g/cc
とする。
得られた鋼板からサンプルを切出し、FF値、潤滑性、
疵発生有無、耐スティッキング性について調査した。結
果を第3表に示す。
(発明の効果) 本発明によれば、鋼板のすべり性および耐熱性が良好
で、皮膜表面に疵が生じにくく耐粉塵化性に優れる、変
圧器製造における鉄心の加工性が優れる絶縁皮膜を有す
る方向性電磁鋼板が得られる。
【図面の簡単な説明】
第1図は絶縁皮膜のすべり摩擦係数を測定する手段(A
法)を示す図、第2図(a),(b)は電磁鋼板を鉄心
へ加工後、歪取焼鈍するときのスティッキング性を調査
する方法を示す図で、(a)は歪取焼鈍時におけるステ
ィッキング性調査に際し、歪取焼鈍でのサンプルの積層
状態を示す図、(b)は歪取焼鈍終了後の、層間の焼付
状態を測定するときの態様を示す図である。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭52−25296(JP,A) 特開 昭61−41778(JP,A) 特開 昭57−203720(JP,A) 特公 昭43−7849(JP,B1)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】珪素鋼スラブを熱間圧延し必要に応じて焼
    鈍し、1回或いは中間焼鈍を挟み2回以上の冷間圧延を
    行って最終板厚とし、脱炭焼鈍し、焼鈍分離剤を塗布し
    た後仕上焼鈍し、該仕上焼鈍後の鋼板に絶縁皮膜コーテ
    ィング剤を塗布し焼付処理を行い、鋼板表面に微細な線
    状歪を間隔をおいて付与し、その後、再度絶縁皮膜コー
    ティング剤を塗布し焼付け絶縁皮膜を形成する方法にお
    いて、 粒径50nm以下のコロイド状シリカ100重量部(SiO2とし
    て)に対し、Al,Mg,Ca,Znの燐酸塩の1種または2種以
    上を130〜300重量部と、無水クロム酸,クロム酸塩,重
    クロム酸塩の1種または2種以上を10〜100重量部と、F
    e,Ca,Ba,Zn,Al,Ni,Sn,Cu,Cr,Cd,Nd,Mn,Mo,Si,Ti,W,Bi,S
    r,Vの酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、硼化物、水酸
    化物、珪酸塩、炭酸塩、硼酸塩、硝酸塩または塩化物で
    あって、その粒子径が100〜2000nmの非コロイド状の固
    形物の1種または2種以上を0.5〜25重量部とを添加し
    てなる絶縁皮膜コーティング剤を、前記線状歪の付与前
    または後、或いは前後両方に鋼板に塗布し焼付け絶縁皮
    膜を形成することを特徴とする鉄心加工性および耐粉塵
    化性が優れた方向性電磁鋼板の絶縁皮膜形成方法。
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