JP2646512B2 - 小型モータの樹脂注入軸受 - Google Patents

小型モータの樹脂注入軸受

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Description

【発明の詳細な説明】
【０００１】
【産業上の利用分野】本発明は、パワーウインドモー
タ、ワイパーモータ等の小型モータの樹脂注入軸受に関
するものである。
【０００２】
【従来の技術】パワーウインドモータに用いるウォーム
減速機付き小型モータは、モータ本体とウォーム減速機
のハウジングを組み付け、ウォーム先端部と回転子コア
の両端部の３ケ所をラジアル軸受で支承している。モー
タ本体とウォーム減速機のハウジングの組み付け誤差を
吸収するため、ウォーム先端部のラジアル軸受と軸承部
とのクリアランスを０．１ｍｍ程度設けている。また、
特公昭６１−５６７０１号公報に開示されるように、軸
受部に注入した合成樹脂を直接ウォーム軸先端に当接さ
せ、回転子のスラスト方向の位置決めを行うようにした
ものがある。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
ようにウォーム先端部のラジアル軸受と軸承部とのクリ
アランスが大きいと、ウォーム軸が軸受に接触する場合
と接触しない場合とでは、回転音の音質が変化し耳障り
となる。また、パワーウインドモータは、ウインドガラ
スの上昇端と下降端でロックするが、クリアランスが大
きいとロック時にウォームが逃げ、ウォームホイールと
の係合が不良となり中間軸受に大きな荷重が作用して再
起動が円滑に行えないという問題点がある。さらに、モ
ータ本体とウォーム減速機のハウジングの芯出しが適当
でないと、回転子軸がこじれモータ本来のパワーを発揮
できないという問題点があり、部品の寸法精度を高めて
クリアランスを小さくし、前記問題点に対処しようとす
ればコスト高となる。また、回転子のスラスト方向の位
置決めを直接ウォーム軸先端に当接させて行うと、経年
により樹脂が摩耗して位置決め精度が確保できない。さ
らに、上記した樹脂注入軸受では、熱収縮による隙間が
生じてシール性が確保できないという問題点がある。本
発明は上記問題点を解決するためになされたもので、組
み付け後に軸受の芯出しを行うとともに、回転子軸のス
ラスト方向の位置決め精度を長期間確保でき、しかも軸
受部のシール性を確保できる小型モータの樹脂注入軸受
を提供することを目的とするものである。
【０００４】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
の具体的手段として、回転子軸の両端に軸承部を有し、
少なくとも一端側の軸承部とケーシングとの間の空隙部
に合成樹脂を注入してなる小型モータの樹脂注入軸受に
おいて、前記ケーシングの軸受部と共に前記空隙部を形
成し、前記一端側の軸承部が挿嵌する調整軸受と、前記
ケーシングに形成され、前記空隙部と連通する樹脂注入
口とを有し、前記調整軸受は、前記回転子軸の径方向の
み移動可能に前記ケーシングに遊嵌されており、前記樹
脂注入口から前記空隙部に合成樹脂が注入されているこ
とを特徴とする小型モータの樹脂注入軸受が提供され
る。また、回転子軸の両端に軸承部を有し、少なくとも
一端側の軸承部とケーシングとの間の空隙部に合成樹脂
を注入してなる小型モータの樹脂注入軸受において、前
記ケーシングの軸受部と共に前記空隙部を形成し、前記
一端側の軸承部が当接する調整軸受と、前記ケーシング
に形成され、前記ケーシングから突出した突部と、前記
突部の先端にて開口し、前記空隙部と連通する樹脂注入
口とを有し、前記調整軸受は、前記回転子軸の軸方向の
み移動可能に前記ケーシングに遊嵌されており、前記樹
脂注入口から前記空隙部に合成樹脂が注入されていると
ともに、前記突部の側面および前記樹脂注入口を覆う蓋
体が、前記空隙部に注入された合成樹脂と一体に成形さ
れていることを特徴とする小型モータの樹脂注入軸受が
提供される。
【０００５】
【作用】上記小型モータの樹脂注入軸受の作用は以下の
通りである。ケーシングに嵌着した軸受により回転子軸
の一方の軸承部を支承し、他方の軸承部はケーシングの
軸受部に径方向のみ移動可能に挿着した調整軸受に挿嵌
する。そして、ケーシングの軸受部と調整軸受との間の
空隙部に合成樹脂を注入して、調整軸受を径方向に調整
移動させ該調整軸受の芯出しを行う。また、ケーシング
に嵌着した軸受により回転子軸の一方の軸承部を支承
し、他端の軸承部はケーシングの軸受部に軸方向のみ移
動可能に挿着した調整軸受に当接する。そして、ケーシ
ングの軸受部と調整軸受との間の空隙部に合成樹脂を注
入して、調整軸受を軸方向に調整移動させ該調整軸受の
位置決めを行う。そして、注入する合成樹脂により注入
口を覆う蓋体を一体成形し、合成樹脂の冷却時の熱収縮
により前記蓋体を注入口の口縁部に圧接してシール性を
確保する。
【０００６】
【実施例】本発明の実施例を図面を参照して説明する。
図１は本実施例にかかるパワーウインドモータ(以下単
にモータという)１の概略の断面図である。モータ１の
ケーシング２は、筒状のマグネット装着部３の一端部に
順次縮径段部４，５及び６を形成して軸受装着部７を設
けるとともに、他端部を開放し組み付け用フランジ８を
形成する。軸受装着部７には、調整軸受９を遊嵌し、そ
のフランジ１０を前記縮径段部６に当接して径方向への
調整移動可能とする。該調整軸受９と前記軸受装着部７
との間に、合成樹脂注入用の空隙部１１が形成される。
前記縮径段部５には、調整軸受９のフランジ１０を押え
るフランジ押え１１を嵌着する。また、前記マグネット
装着部３には界磁用マグネット１２を対設する。
【０００７】ウォーム減速機１３のハウジング１４に
は、２個のラジアル軸受１５，１６を嵌着し、奥端にス
ラスト方向の位置決め用の樹脂注入部１７を設け、板状
のスラスト軸受１８を軸方向のみ移動可能に遊嵌する。
回転子１９の回転子軸２０の延長部にはウォーム２１を
設け、その軸承部２２と回転子軸２０の軸承部２３と
を、前記ハウジング１４に嵌着したラジアル軸受１５，
１６により支承するとともに、ウォーム２１の球状先端
２１ａを前記スラスト軸受１８に当接する。回転子１９
はケーシング２の開放端から装入し、回転子コア２４を
前記界磁用マグネット１２間に位置させるとともに、一
端方の軸承部２５を前記調整軸受９に挿嵌する。そし
て、ケーシング２の組み付け用フランジ８とハウジング
１４のフランジ１４ａとをボルト２６により締着して組
み付ける。
【０００８】この時、組み付け誤差によりモータ１のケ
ーシング２とウォーム減速機１３のハウジング１４との
芯がずれていても、回転子軸１９の軸承部２４を挿嵌す
ると調整軸受９が径方向に前記縮径段部６上を移動して
自動的に芯ずれを吸収する。そして、前記ケーシング２
に設けた軸受装着部７の樹脂注入口７ａから空隙部１１
へ、ポリアセタール樹脂等の合成樹脂２７を加圧注入す
る。加圧注入された合成樹脂２７は冷却固化して、調整
軸受９を固定する。また、前記ハウジング１４の樹脂注
入部１７に前記と同様の合成樹脂２７を、ハウジング１
４の側部に設けた樹脂注入口１７ａから加圧注入し、ス
ラスト軸受１８を押圧して回転子軸２０のスラスト方向
の位置決めを行う。
【０００９】上記構成のモータ１は、モータ１のケーシ
ング２とウォーム減速機１３のハウジング１４とに組み
付け誤差が生じても、注入される合成樹脂により固定さ
れる調整軸受９により吸収できるから前記ハウジング１
４に嵌着した２個の軸受１５，１６と回転子軸２０の各
軸承部２２及び２３とのクリアランスを大きくする必要
がなく、５〜４０μ程度と小さくすることができる。従
って、回転子１９の回転が円滑かつ安定して、回転音が
小さくなる。また、パワーウインドのロック時にウォー
ム２１が逃げてウォームホイール(図示しない)との係合
が不良となり中間軸受に大きな荷重が作用して再起動が
円滑に行えないこともない。さらに、ケーシング２とハ
ウジング１４との組み付けのための加工精度を高める必
要がなく加工コストを低減できる。
【００１０】また、ハウジング１４の樹脂注入部１７に
合成樹脂を加圧注入して、板状のスラスト軸受１８を押
圧し、回転子軸２０のスラスト方向の位置決めを行うか
ら、合成樹脂が直接回転子軸２０に当接することがな
く、経年により樹脂が摩耗して位置決め精度が確保でき
なくなることがない。尚、図１はスラスト軸受１８の軸
方向の調整と、調整軸受９の径方向の芯ずれの調整とを
同時に行う態様を示すものであるが、それぞれ単独で用
いることもできる。
【００１１】図２及び図３は上記モータ１の樹脂注入軸
受の変形実施例を示した要部の拡大断面図である。図２
に示すように、前記軸受装着部７の樹脂注入口７ａの回
りに、ケーシング２から突部３０を形成し樹脂注入通路
３１を延長する。そして、注入嘴３３を前記突部３０の
端面３０ａ及び側面３０ｂを間隔を置いて覆う形状とし
たノズル３２により、空隙部１１へ合成樹脂を加圧注入
して前記樹脂注入口７ａを塞ぐキャップ３４を一体形成
する。また、図３に示すように前記樹脂注入部１７にお
いても同様に、樹脂注入口１７ａの回りに形成した突部
４０により樹脂注入通路４１を延長し、該突部４０の端
面４０ａ及び側面４０ｂを間隔を置いて覆う形状の注入
嘴４３により、樹脂注入部１７へ合成樹脂加圧注入し樹
脂注入口１７ａを覆うキャップ４４を一体形成する。
【００１２】上記構造の樹脂注入軸受において、注入さ
れた合成樹脂が冷却固化すると長手方向(回転子軸方向)
及び該長手方向に直交する方向に熱収縮する。キャップ
３４が突部３０の側面３０ｂを覆う部分の幅(ｘ)×２よ
りも、キャップ３４の天井部の幅ｙが大きく、また該天
井部の厚さｚより樹脂注入通路３１に沿う方向が長いの
で、キャップ３４の内面が前記突部３０の端面３０ａ及
び側面３０ｂに密着してシールする。キャップ４４の場
合も同様であり、キャップ４４の内面が突部４０の端面
４０ａ及び側面４０ｂに密着してシールする。このた
め、樹脂注入口７ａ、１７ａを塞ぐシール剤等を塗布し
てシール性を確保する必要がない。
【００１３】
【発明の効果】本発明の小型モータの樹脂注入軸受は上
記した構成及び作用を有し、組み付け後に合成樹脂を加
圧注入するだけで軸受の芯出しや、回転子軸のスラスト
方向の位置決め精度を長期間確保できるとともに、軸受
部のシール性を確保できるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明に係る一実施例のモータの断面図であ
る。
【図２】本発明に係るモータの一方の樹脂注入軸受の変
形実施例を示した要部の拡大断面図である。
【図３】本発明に係るモータの他方の樹脂注入軸受の変
形実施例を示した要部の拡大断面図である。
【符号の説明】
２...ケーシング、 ７...軸受装着部、 ７ａ,１７
ａ...樹脂注入口、 ９...調整軸受、 １１...空隙
部、 １４...ハウジング、 １５，１６...ラジアル軸
受、 １７...樹脂注入部、 １８...スラスト軸受(調
整軸受)， ２０...回転子軸、 ２２，２３，２５...
軸承部、 ２７...合成樹脂、 ３３，４４...キャップ
(蓋体)。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項１】 回転子軸の両端に軸承部を有し、少なく
    とも一端側の軸承部とケーシングとの間の空隙部に合成
    樹脂を注入してなる小型モータの樹脂注入軸受におい
    て、前記ケーシングの軸受部と共に前記空隙部を形成し、前
    記一端側の軸承部が挿嵌する調整軸受と、 前記ケーシングに形成され、前記空隙部と連通する樹脂
    注入口とを有し、 前記調整軸受は、前記回転子軸の径方向のみ移動可能に
    前記ケーシングに遊嵌されており、 前記樹脂注入口から前記空隙部に合成樹脂が注入されて
    いる ことを特徴とする小型モータの樹脂注入軸受。
  2. 【請求項２】 回転子軸の両端に軸承部を有し、少なく
    とも一端側の軸承部とケーシングとの間の空隙部に合成
    樹脂を注入してなる小型モータの樹脂注入軸受におい
    て、前記ケーシングの軸受部と共に前記空隙部を形成し、前
    記一端側の軸承部が当接する調整軸受と、 前記ケーシングに形成され、前記ケーシングから突出し
    た突部と、 前記突部の先端にて開口し、前記空隙部と連通する樹脂
    注入口とを有し、 前記調整軸受は、前記回転子軸の軸方向のみ移動可能に
    前記ケーシングに遊嵌されており、 前記樹脂注入口から前記空隙部に合成樹脂が注入されて
    いるとともに、前記突部の側面および前記樹脂注入口を
    覆う蓋体が、前記空隙部に注入された合成樹脂と一体に
    成形されている ことを特徴とする小型モータの樹脂注入
    軸受。
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