JP2592319Y2 - アイドルギヤ装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この考案はアイドルギヤ装置に係
り、特にアイドルギヤとこのアイドルギヤを軸支するア
イドルギヤシャフトの両端の夫々第１保持部材及び第２
保持部材との間に介装される第１ワッシャ及び第２ワッ
シャの廻り止めを、別部品や別加工を要することなく果
たし得るアイドルギヤ装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】駆動力を伝達する手段には、ギヤ式のも
のやベルト式のものがある。例えば、自動車等の車両に
おいては、内燃機関の発生する駆動力を変速機を介して
駆動車輪に伝達している。この変速機は、ギヤあるいは
ベルトにより回転数や回転力、回転方向等を変換して取
出している。

【０００３】このような変速機にあって、ギヤ式の変速
機には、回転方向等を変換するために、アイドルギヤ装
置を設けたものがある。アイドルギヤ装置は、原動ギヤ
と従動ギヤとの間に介装されて空転し、回転方向等を変
換する。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】ところで、アイドルギ
ヤ装置には、アイドルギヤを回転可能に軸支するアイド
ルギヤシャフトの両端を夫々第１保持部材及び第２保持
部材により保持して設け、前記アイドルギヤと第１保持
部材及び第２保持部材との間に第１ワッシャ及び第２ワ
ッシャを介装して設けたものがある。この第１ワッシャ
及び第２ワッシャは、アイドルギヤのスラスト方向の移
動を規制して第１保持部材及び第２保持部材との間で所
定の空間を確保し、アイドルギヤの第１保持部材及び第
２保持部材に対する滑らかな回転を担保するものであ
る。

【０００５】ところが、第１ワッシャ及び第２ワッシャ
は、アイドルギヤシャフトに嵌装されているため、アイ
ドルギヤの回転により回転される問題がある。

【０００６】そこで、従来は、例えば廻り止め部材を設
け、この廻り止め部材をアイドルギヤシャフトと第１ワ
ッシャ及び第２ワッシャとに係合させて、廻り止めを果
していた。

【０００７】しかしながら、廻り止め部材を別部品とし
て必要とするとともに廻り止め部材係合用窪所の別加工
をも必要とすることにより、コスト上昇を招来する不都
合があった。

【０００８】

【課題を解決するための手段】このような不都合を除去
すべく、この考案は、アイドルギヤを軸支するアイドル
ギヤシャフトの両端を夫々第１保持部材及び第２保持部
材により保持して設けるとともに前記アイドルギヤと第
１保持部材及び第２保持部材との間に夫々第１ワッシャ
及び第２ワッシャを介装して設けたアイドルギヤ装置に
おいて、前記第１保持部材及び第２保持部材の内側に夫
々一組の第１保持部材側係合体及び一組の第２保持部材
側係合体を前記第１ワッシャ及び第２ワッシャの外周に
向かって突出させて設けるとともにこれら一組の第１保
持部材側係合体の間及び一組の第２保持部材側係合体の
間に夫々係合して廻り止めを果たすべく前記第１ワッシ
ャ及び第２ワッシャの外周に夫々第１ワッシャ側係合体
及び第２ワッシャ側係合体を径外方向に向かって突出さ
せて設けたことを特徴とする。

【０００９】

【作用】この考案の構成によれば、一組の第１保持部材
側係合体の間及び一組の第２保持部材側係合体の間に第
１ワッシャ側係合体及び第２ワッシャ側係合体を夫々係
合させることにより、アイドルギヤがどちらに回転して
も第１ワッシャ及び第２ワッシャが回転されることがな
い。また、第１ワッシャ及び第２ワッシャの外周に夫々
第１ワッシャ側係合体及び第２ワッシャ側係合体を径外
方向に向かって突出させて設けていることにより、アイ
ドルギヤに対する第１ワッシャ及び第２ワッシャの摺動
面の平滑性を損なうことがなく、従来の廻り止め部材や
廻り止め部材係合用窪所の加工を不要とすることができ
る。

【００１０】

【実施例】次にこの考案の実施例を図に基づいて詳細に
説明する。

【００１１】図１〜図６は、この考案の実施例を示すも
のである。図６において、２は原動機たる内燃機関、４
は、この内燃機関２の発生する駆動力の回転数や回転
力、回転方向等を変換して取出す変速機である。

【００１２】変速機４は、例えば油圧により変速比を連
続的に変化させて内燃機関２の駆動力を所望に変換して
取出すものであり、内燃機関２側のサイドケース６と、
内燃機関２から離間する側のメインケース８と、このメ
インケース８に取付けられるサイドカバー１０と、を有
している。

【００１３】前記サイドケース６及びメインケース８に
は、入力側シャフト１２を軸支して設けるとともに、出
力側シャフト１４を軸支して設けている。

【００１４】前記入力側シャフト１２には、駆動側固定
プーリ部片１６と駆動側可動プーリ部片１８とからなる
駆動側プーリ２０を備えている。また、出力側シャフト
１４には、被駆動側固定プーリ部片２２と被駆動側可動
プーリ部片２４とからなる被駆動側プーリ２６を備えて
いる。これら駆動側プーリ２０と被駆動側プーリ２６と
の間には、ベルト２８を捲掛けている。

【００１５】この変速機４は、前記入力側シャフト１２
ら設けたオイルポンプ３０の吐出する油圧を駆動側プー
リ２０の駆動側油圧室３２及び被駆動側プーリ２６の被
駆動側油圧室３４に給排してベルト２８の回転半径を増
減させることにより、変速比を連続的に変化させて内燃
機関２の駆動力を所望に変換して取出すものである。な
お、符合３６は、被駆動側油圧室３４を拡張する方向に
被駆動側可動プーリ部片２４を付勢するばねである。

【００１６】また、この変速機４は、出力側シャフト１
４の出力端側の外周に最終出力シャフト３８を回転可能
に外嵌して設けている。出力側シャフト１４と最終出力
シャフト３８とは、油圧クラッチ４０により連絡されて
いる。この油圧クラッチ４０は、前記オイルポンプ３０
の供給する油圧をクラッチ油圧室４２に給排されること
により、変速機４の出力する駆動力を断続するものであ
る。

【００１７】さらに、この変速機４は、前記最終出力シ
ャフト３８をサイドケース６及びメインケース８に軸支
された中間シャフト４４に、フォワード用ギヤトレイン
４６及びリバース用ギヤトレイン４８により連絡してい
る。前記フォワード用ギヤトレイン４６は、最終出力シ
ャフト３８に固設された最終出力フォワード用ギヤ５０
と、このギヤ５０に噛合する中間シャフト４４に軸支さ
れた中間フォワード用ギヤ５２とから構成される。リバ
ース用ギヤトレイン４８は、最終出力シャフト３８に固
設された最終出力リバース用ギヤ５４と、このギヤ５４
に噛合するリバース用アイドルギヤ５６と、このギヤ５
６に噛合する中間シャフト４４に軸支された中間リバー
ス用ギヤ５８とから構成される。前記中間フォワード用
ギヤ５２と中間リバース用ギヤ５８との間の中間シャフ
ト４４には、切換機構６０が設けられている。この切換
機構６０によって、中間フォワード用ギヤ５２と中間リ
バース用ギヤ５８とを選択的に中間シャフト４４に結合
させることにより、駆動力の回転方向をフォワード用と
リバース用とに切換える。

【００１８】前記中間シャフト４４は、ファイナルリダ
クションギヤトレイン６２によりディファレンシャル装
置６４に連絡されている。ディファレンシャル装置６４
は、右左のドライブシャフト６６・６６により車輪（図
示せず）に連絡されている。

【００１９】これにより、変速機４は、駆動側プーリ２
０と被駆動側プーリ２６とベルト２８とにより内燃機関
２の駆動力を所望に変換して最終出力シャフト３８に取
出し、フォワード用ギヤトレイン５０とリバース用ギヤ
トレイン５２と切換機構６０とにより駆動力の回転方向
を切換えて中間シャフト４４に伝達し、ファイナルリダ
クションギヤトレイン６２からディファレンシャル装置
６４を介してドライブシャフト６６・６６に駆動力を伝
達し、車輪を駆動する。

【００２０】この変速機４に設けられた駆動力の回転方
向等を変換するアイドルギヤ装置を構成するアイドルギ
ヤたるリバース用アイドルギヤ５６は、図１に示す如
く、アイドルギヤシャフトたるリバース用アイドルギヤ
シャフト６８にリバース用アイドルギヤベアリング７０
により回転可能に軸支されている。このリバース用アイ
ドルギヤシャフト６８は、第１保持部材たるメインケー
ス８のメインケース壁部７２及び第２保持部材たるリバ
ース用アイドルギヤカバー７４により保持されている。

【００２１】即ち、前記メインケース８のメインケース
壁部７２には、図４に示す如く、第１保持部材側保持孔
たるメインケース壁部側保持孔７６が設けられるととも
にねじ孔７８が設けられている。また、前記リバース用
アイドルギヤカバー７４には、図５に示す如く、第２保
持部材側保持孔たるリバースアイドルギヤカバー側保持
孔８０が設けられるとともに挿通孔８２が設けられてい
る。リバースアイドルギヤシャフト６８は、図１に示す
如く、リバース用アイドルギヤカバー７４の挿通孔８２
を挿通した固定ボルト８４をメインケース壁部７２のね
じ孔７８に螺合して締付け、メインケース壁部７２にリ
バース用アイドルギヤカバー７４を取付けることによ
り、メインケース壁部７２のメインケース壁部側保持孔
７６及びリバース用アイドルギヤカバー７４のリバース
用アイドルギヤカバー側第２保持孔８０により保持され
る。なお、符合８６は、リバース用アイドルギヤベアリ
ング７０に潤滑油を供給する潤滑用油路である。

【００２２】前記リバース用アイドルギヤ５６とメイン
ケース壁部７２及びリバース用アイドルギヤカバー７４
との間には、リバース用アイドルギヤ５６の回転を担保
する第１ワッシャ８８及び第２ワッシャ９０を介装して
設けている。この第１ワッシャ８８及び第２ワッシャ９
０は、第１ワッシャ本体９２及び第２ワッシャ本体９４
に夫々設けた第１嵌装孔９６及び第２嵌装孔９８により
リバース用アイドラギヤシャフト６８に嵌装されてい
る。

【００２３】このようなアイドルギヤ装置において、図
４に示す如く、メインケース壁部７２の内側には、第１
保持部材側係合体たる一組のメインケース壁部側係合体
１００を第１ワッシャ８８の外周に向かって突出させて
設けている。また、図５に示す如く、リバース用アイド
ルギヤカバー７４の内側には、第２保持部材側係合体た
る一組のリバース用アイドルギヤカバー側係合体１０２
を第２ワッシャ９０の外周に向かって突出させて設けて
いる。これら一組のメインケース壁部側係合体１００の
間及び一組のリバース用アイドルギヤカバー側係合体１
０２の間に夫々係合して廻り止めを果たすように、図１
〜図３に示す如く、第１ワッシャ８８及び第２ワッシャ
９０の外周には、夫々第１ワッシャ側係合体１０４及び
第２ワッシャ側係合体１０６を径外方向に向かって突出
させて設けている。

【００２４】なお、図４において、符号１０８は入力側
シャフト保持孔、符号１１０は出力側シャフト・最終出
力シャフト保持孔、符号１１２はドライブシャフト保持
孔である。

【００２５】次に作用を説明する。

【００２６】図１〜図３に示す如く、このアイドルギヤ
装置は、メインケース壁部７２に設けた一組のメインケ
ース壁部側係合体１００の間に第１ワッシャ８８に設け
た第１ワッシャ側係合体１０４を係合させるとともに、
リバース用アイドルギヤカバー７４に設けた一組のリバ
ース用アイドルギヤカバー側係合体１０２の間に第２ワ
ッシャ９０に設けた第２ワッシャ側係合体１０６を係合
させている。

【００２７】これにより、第１ワッシャ８８及び第２ワ
ッシャ９０は、一組のメインケース壁部側係合体１００
と第１ワッシャ側係合体１０４との係合、及び一組のリ
バース用アイドルギヤカバー側係合体１０２と第２ワッ
シャ側係合体１０６との係合によって、リバース用アイ
ドルギヤ５６の回転により回転されることがなく、リバ
ース用アイドルギヤ５６がどちらに回転しても回転され
ることがない。また、メインケース壁部７２及びリバー
スアイドルギヤカバー７４の内側には夫々一組のメイン
ケース壁部側係合体１００及び一組のリバース用アイド
ルギヤカバー側係合体１０２を第１ワッシャ８８及び第
２ワッシャ９０の外周に向かって突出させて設けるとと
もに、第１ワッシャ８８及び第２ワッシャ９０の外周に
は夫々第１ワッシャ側係合体１０４及び第２ワッシャ側
係合体１０６を径外方向に向かって突出させて設けてい
ることにより、リバース用アイドルギヤ５６の摺接され
る第１ワッシャ８８及び第２ワッシャ９０の摺動面に凹
凸を形成することなく平滑に維持することができ、従来
の廻り止め部材や廻り止め部材係合用窪所の加工を不要
とすることができる。

【００２８】このため、リバース用アイドルギヤ５６と
メインケース壁部７２及びリバース用アイドルギヤカバ
ー７４との間に介装される第１ワッシャ８８及び第２ワ
ッシャ９０の廻り止めをリバース用アイドルギヤ５６の
回転方向にかかわらず果たし得て、また、リバース用ア
イドルギヤ５６の滑らかな回転を担保し得て、コストの
上昇を招くこともない。

【００２９】

【考案の効果】このように、この考案によれば、一組の
第１保持部材側係合体の間及び一組の第２保持部材側係
合体の間に夫々第１ワッシャ側係合体及び第２ワッシャ
側係合体を係合させることより、アイドルギヤの回転に
より回転されることがなく、アイドルギヤがどちらに回
転しても回転されることがない。また、第１ワッシャ及
び第２ワッシャの外周に夫々第１ワッシャ側係合体及び
第２ワッシャ側係合体を径外方向に向かって突出させて
設けていることにより、アイドルギヤの摺接される第１
ワッシャ及び第２ワッシャの摺動面に凹凸を形成するこ
となく平滑に維持することができ、従来の廻り止め部材
や廻り止め部材係合用窪所の加工を不要とすることがで
きる。このため、アイドルギヤと第１保持部材及び第２
保持部材との間に介装される第１ワッシャ及び第２ワッ
シャの廻り止めをアイドルギヤの回転方向にかかわらず
果たし得て、また、アイドルギヤの滑らかな回転を担保
し得て、別部品や別加工を要することなく果たし得て、
コストの上昇を招くこともない。

【図面の簡単な説明】

【図１】この考案の実施例を示す図４におけるＩ−Ｉ線
拡大断面図である。

【図２】第１ワッシャの正面図である。

【図３】第１ワッシャの側面図である。

【図４】メインケース壁部を内側から見た正面図であ
る。

【図５】リバース用アイドルギヤカバーを内側から見た
正面図である。

【図６】変速機の断面図である。

【符号の説明】

２ 内燃機関 ４ 変速機 ８ メインケース １２ 入力側シャフト １４ 出力側シャフト ２０ 駆動側プーリ ２６ 被駆動側プーリ ２８ ベルト ３８ 最終出力シャフト ４６ フォワード用ギヤトレイン ４８ リバース用ギヤトレイン ５６ リバース用アイドルギヤ ６８ リバース用アイドルギヤシャフト ７２ メインケース壁部 ７４ リバース用アイドルギヤカバー ８８ 第１ワッシャ ９０ 第２ワッシャ １００ メインケース壁部側係合体 １０２ リバース用アイドラギヤカバー側係合体 １０４ 第１ワッシャ側係合体 １０６ 第２ワッシャ側係合体

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 アイドルギヤを軸支するアイドルギヤシ
   ャフトの両端を夫々第１保持部材及び第２保持部材によ
   り保持して設けるとともに前記アイドルギヤと第１保持
   部材及び第２保持部材との間に夫々第１ワッシャ及び第
   ２ワッシャを介装して設けたアイドルギヤ装置におい
   て、前記第１保持部材及び第２保持部材の内側に夫々一
   組の第１保持部材側係合体及び一組の第２保持部材側係
   合体を前記第１ワッシャ及び第２ワッシャの外周に向か
   って突出させて設けるとともにこれら一組の第１保持部
   材側係合体の間及び一組の第２保持部材側係合体の間に
   夫々係合して廻り止めを果たすべく前記第１ワッシャ及
   び第２ワッシャの外周に夫々第１ワッシャ側係合体及び
   第２ワッシャ側係合体を径外方向に向かって突出させて
   設けたことを特徴とするアイドルギヤ装置。