JP2561144Y2 - 動力伝達機構のシール構造 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、動力伝達機構のシール
構造に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来、例えば、エンジンの動力によって
駆動するフォークリフトに設けられた動力伝達装置は、
エンジン動力の接断続を行うクラッチ、駆動輪の駆動ト
ルク及び回転数を変化させる変速機、エンジンの動力を
前記クラッチ及び変速機を介して駆動輪へ伝達するプロ
ペラシャフト、ディファレンシャルギヤ及びドライビン
グアクスル等より構成されている。

【０００３】図４に示すように、前記変速機からの動力
は、変速機側ヨークジョイント５３とユニバーサルジョ
イント５０により連結されたディファレンシャル側ヨー
クジョイント５２に伝達されるようになっている。前記
ディファレンシャル側ヨークジョイント５２は、ディフ
ァレンシャル５１のハウジング５４内に配設されたギア
５５とスプライン結合されている。前記ハウジング５４
内には潤滑油が充填され、ハウジング５４とディファレ
ンシャル側ヨークジョイント５２のシャフト部５６との
間には、前記潤滑油の漏れを防止するオイルシール５７
が取着されている。

【０００４】前記オイルシール５７には、ダストリップ
５８ａ，５８ｂが形成されている。このダストリップ５
８ａがディファレンシャル側ヨークジョイント５２のシ
ャフト部５６に圧入された金属製のディフレクタ５９と
接触するとともに、ダストリップ５８ｂがシャフト部５
６と接触することで、外部からハウジング５４内に塵埃
が侵入するのを防止している。

【０００５】

【考案が解決しようとする課題】上記のシール構造にお
いては、フォークリフトの走行中にディファレンシャル
側ヨークジョイント５２が前後方向（同図において左右
方向）に摺動（約±３ｍｍ）するため、ディファレンシ
ャル側ヨークジョイント５２のシャフト部５６と接触す
るディフレクタ５９の圧入面６０の長さが規制されてい
た。

【０００６】すなわち、ディファレンシャル側ヨークジ
ョイント５２が同図において右方に移動した際に、ディ
フレクタ５９の圧入面６０とオイルシール５７のダスト
リップ５８ｂとの接触を防止するために、圧入面６０と
ダストリップ５８ｂとの間の距離を、少なくとも前記変
速機側のヨーク５２の摺動距離（３ｍｍ以上）とする必
要があった。

【０００７】前記ディフレクタ５９の圧入面６０とダス
トリップ５８ｂとの間の距離を保持する方法としては、
ダストリップ５８ｂを短く形成して、その間の距離を保
持する場合と、ディフレクタ５９の圧入面６０を短く形
成して、その間の距離を保持する場合とがある。

【０００８】しかし、前者のダストリップ５８ｂを短く
形成する場合においては、ハウジング５４とシャフト部
５６との間の密着性が低下し、塵埃が侵入するおそれが
あるため、ダストリップ５８ｂを短く形成することはで
きない。従って、ディフレクタ５９の圧入面６０の長さ
を短く形成して、圧入面６０とダストリップ５８ｂとの
間の距離を保持することになる。

【０００９】しかしながら、圧入面６０の長さが短い場
合には、ディフレクタ５９が変形しやすくなるという問
題がある。すなわち、フォークリフトの走行中に撥ね上
げた小石や泥水等がディフレクタ５９の外周面６２に衝
突した際、その衝撃でディフレクタ５９が変形すること
があった。

【００１０】その結果、ディファレンシャル側ヨークジ
ョイント５２のフランジ部６４とディフレクタ５９の規
制面６３との間から水が侵入し、ディファレンシャル側
ヨークジョイント５２のシャフト部５６外周に錆が発生
してオイルシール５７のシール性が低下するという問題
があった。

【００１１】本考案は上記問題点を解消するためになさ
れたものであって、その目的は外部からの衝撃によるデ
ィフレクタの変形を減少することができるとともに、デ
ィフレクタとオイルシールとの間への水の侵入を防止す
ることができる動力伝達機構のシール構造を提供するこ
とにある。

【００１２】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本考案では、変速機の出力用歯車にスプライン結合
されたヨークジョイントと、ディファレンシャルの減速
歯車にスプライン結合されたヨークジョイントとをユニ
バーサルジョイントによって連結するとともに、前記変
速機またはディファレンシャルのケースと、前記ヨーク
ジョイントとの間にオイルシールを介装し、前記ヨーク
ジョイントのフランジ部には凸部を形成するとともに、
前記ヨークジョイントのシャフト部基端にＯリングを装
着し、前記フランジ部に形成した凸部と前記シャフト部
との間に断面略Ｕ字状の環状のディフレクタを圧入して
前記Ｏリングを押圧し、前記オイルシールに形成された
ダストリップを前記ディフレクタと接触させたことをそ
の要旨とする。

【００１３】

【作用】本考案によれば、車両走行時に撥ね上げられた
小石や泥水がヨークジョイントのフランジ部付近に衝突
しても、フランジ部には凸部が形成されているので、そ
の撥ね上げられた小石や泥水がディフレクタに衝突する
割合が減少する。

【００１４】また、ヨークジョイントのフランジ部に凸
部を形成したことにより、ディフレクタの外周面も圧入
面となるため、全体の圧入面積が増加される。その結
果、ディフレクタが変形しにくくなる。さらに、ヨーク
ジョイントのシャフト部基端にＯリングを配設したこと
により、ディフレクタが変形した場合でも、オイルシー
ルとディフレクタとの間に水が侵入しない。

【００１５】

【実施例】以下、本考案を具体化した一実施例を図１〜
図３に基づいて説明する。図１に示すように、ディファ
レンシャル１はハウジング２、同ハウジング２内に回動
可能に収容された減速ギア３及び同減速ギア３と噛合す
る出力ギア４等から構成されている。

【００１６】前記減速ギア３には、ディファレンシャル
側ヨークジョイント５のシャフト部６がスプライン結合
されている。また、ディファレンシャル側ヨークジョイ
ント５のフランジ部７には、ユニバーサルジョイント８
を介して変速機側ヨークジョイント９が連結されてい
る。すなわち、ディファレンシャル１の減速ギア３の回
転に伴ってディファレンシャル側ヨークジョイント５が
回転し、ユニバーサルジョイント８で連結された変速機
側ヨークジョイント９もそれに伴って回転する。また、
前記ディファレンシャル１のハウジング２内には、減速
ギア３、出力ギア４等の潤滑を行う潤滑油が充填されて
いる。なお、本実施例においても前記従来と同様に、デ
ィファレンシャル側ヨークジョイント５が前後に３ｍｍ
程度摺動するようになっている。

【００１７】図１〜図３に示すように、前記ディファレ
ンシャル側ヨークジョイント５のフランジ部７には、凸
部１０が前記ハウジング２側に突出するように一体形成
されている。また、前記シャフト部６のフランジ部７側
の基端には、Ｏリング１１が装着されている。前記凸部
１０とシャフト部６との間には、断面略Ｕ字形で環状に
形成されたディフレクタ１２が圧入されている。従っ
て、前記Ｏリング１１はシャフト部６とディフレクタ１
２とによって押圧された状態で保持されている。

【００１８】ディフレクタ１２のシャフト部６と当接す
る面と、凸部１０と当接する面との２面が圧入面１３，
１４となり、規制面１２ａがフランジ部７に当接するこ
とでディフレクタ１２のユニバーサルジョイント側への
移動が規制されている。

【００１９】前記ハウジング２とシャフト部６との間に
はオイルシール１５が配設されている。このオイルシー
ル１５は軟質ゴムからなるリップ１６と金属製の支持部
材１７とから形成され、これらは射出成形によって一体
形成されている。前記リップ１６はシール部１８とダス
トリップ１９，２０とで形成されている。前記シール部
１８はディファレンシャル側ヨークジョイント５のシャ
フト部６の外周に当接して、ハウジング２内に充填され
ているディファレンシャルオイルの漏れを防止してい
る。また、前記シール部１８の外周にはスプリングリン
グ２１が配設されている。このスプリングリング２１の
締付力によってシール部１８のシール性をより向上させ
ている。

【００２０】また、前記一方のダストリップ１９はディ
ファレンシャル側ヨークジョイント５のシャフト部６外
周と接触し、他方のダストリップ２０は前記ディフレク
タ１２の圧入面１３と対向する面と接触し、それぞれ外
部から塵埃がハウジング２に侵入するのを防止してい
る。

【００２１】上記のように、本実施例ではディファレン
シャル側ヨークジョイント５のフランジ部７に凸部１０
を形成し、その凸部１０とシャフト部６との間にディフ
レクタ１２を圧入するように構成したことにより、フォ
ークリフトが走行時に撥ね上げた小石や泥水がディファ
レンシャル側ヨークジョイント５のフランジ部７付近に
衝突しても、凸部１０がディフレクタ１２のカバーの作
用をするので、直接ディフレクタ１２に小石や泥水が衝
突する割合が減少される。また、従来とは異なり、ディ
フレクタ１２の圧入面はシャフト部６と接触する部分以
外に、凸部１０との接触部分も圧入面１４となるので、
全体の圧入面積が増加される。その結果、ディフレクタ
１２が変形しにくくなる。

【００２２】さらに、シャフト部６とディフレクタ１２
との間にＯリング１１を装着したことにより、ディフレ
クタ１２の規制面１２ａがフランジ部７から離間したと
しても、オイルシール１５とディフレクタ１２との間へ
の水の侵入が確実に防止される。

【００２３】その結果、オイルシール１５のダストリッ
プ１９及びシール部１８が接触するシャフト部６の外周
面、すなわちシール面の錆の発生を確実に防止すること
ができる。

【００２４】

【考案の効果】以上詳述したように、本考案によれば、
外部からの衝撃によるディフレクタの変形を減少するこ
とができるとともに、ディフレクタとオイルシールとの
間への水の侵入を防止して、ディファレンシャル側ヨー
クジョイントのシャフトに錆が発生するのを防止するこ
とができるという優れた効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案を具体化した一実施例のディファレンシ
ャルのシール構造を示す部分断面図である。

【図２】ディファレンシャル側ヨークジョイントの部分
断面図である。

【図３】ディファレンシャル側ヨークジョイント、ディ
フレクタ及びオイルシールの断面図である。

【図４】従来のディファレンシャルのシール構造を示す
部分断面図である。

【符号の説明】

１…ディファレンシャル、２…ハウジング、３…減速ギ
ア、５…ディファレンシャル側ヨークジョイント、６…
シャフト部、７…フランジ部、８…ユニバーサルジョイ
ント、９…変速機側ヨークジョイント、１０…凸部、１
１…Ｏリング、１３，１４…圧入面、１５…オイルシー
ル、１９，２０…ダストリップ

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 変速機の出力用歯車にスプライン結合さ
   れたヨークジョイントと、ディファレンシャルの減速歯
   車にスプライン結合されたヨークジョイントとをユニバ
   ーサルジョイントによって連結するとともに、前記変速
   機またはディファレンシャルのケースと、前記ヨークジ
   ョイントとの間にオイルシールを介装し、前記ヨークジ
   ョイントのフランジ部には凸部を形成するとともに、前
   記ヨークジョイントのシャフト部基端にＯリングを装着
   し、前記フランジ部に形成した凸部と前記シャフト部と
   の間に断面略Ｕ字状の環状のディフレクタを圧入して前
   記Ｏリングを押圧し、前記オイルシールに形成されたダ
   ストリップを前記ディフレクタと接触させてなる動力伝
   達機構。