JP2536323B2 - エスカレ―タ等の欄干 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、エスカレータあるいは
電動道路等（以下、エスカレータ等と称す）に係り、特
にハンドレールが反転する円弧状部分の欄干構造に関す
るものである。

【０００２】

【従来の技術】一般に、エスカレータ等は図２乃至図５
に示すような構成になっている。即ち、図中１は乗客を
運ぶために無端状に配列されたステップ、２は同じく無
端状に配列されたハンドレール、３は欄干パネル、

【０００３】４はデッキ、５はハンドレールフレーム
で、欄干パネル３とデッキ４とハンドレールフレーム５
とで欄干６が構成されている。７は欄干６の強度保持を
する本体枠、Ｆは建屋床、８はハンドレール２を上下か
ら挾圧して駆動する挾圧ローラ、９は挾圧ローラをチェ
ン１０を介して駆動する駆動手段である。

【０００４】そして、ハンドレール２の反転領域では図
４及び図５に示すようにハンドレールフレーム５のＵ字
状溝に回動自在に設けられた案内ローラ５ａが円弧状部
全周に亘って配設されていたり、図６及び図７に示すよ
うに、案内ローラ５ａの代わりにところどころに樹脂ガ
イド５ｂを配設したり、又円弧状部全周に亘って樹脂ガ
イドを配設したりするものがあった。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】特に、例えば実公昭６
３−２６３８６号公報のような最近流行のスリムタイプ
のエスカレータ等の場合、図８及び図９に示すように、
スペースの関係上ハンドレール２を案内するローラを取
付けることが困難なため、円弧状部全周にも樹脂ガイド
１１をフランジ付フレーム１２のフランジに挿入してハ
ンドレール２を案内する構造にしており次のような問題
が顕著になっている。

【０００６】ハンドレールによる面圧が大きいことか
ら、経年変化しやすく、時間の経過とともにハンドレー
ルの走行抵抗が増大し、ハンドレールのスリップや、ハ
ンドレール駆動装置又はハンドレール自体の寿命を短か
くする。

【０００７】エスカレータの揚程が長くなると、当然
ハンドレールの走行抵抗が増加することになるが、ハン
ドレールの走行抵抗が大きくなるにつれて、円弧状部に
加わる力が大きくなって欄干強度が足りなくなったり、
面圧の増加によって樹脂ガイドの摩耗量が増えることに
なり、エスカレータの揚程が大きく制限される。

【０００８】本発明は上記の点に鑑みなされたもので、
特にスリムタイプのエスカレータ等における円弧状部の
ハンドレールの案内に最適な欄干を提供することを目的
とする。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明は、欄干パネルの
上縁に、薄板からなるフランジ付フレームを覆いかぶせ
て一体に構成し、該フランジ付フレームのフランジには
樹脂ガイドを挿入してハンドレールを案内するエスカレ
ータ等において、ハンドレール反転円弧部内の鉛直線か
ら略１５°〜６５°の範囲では樹脂ガイドの一部を取り
除き、該取り除いた部分にフランジ付フレームに沿って
ローラベースを配置し、欄干パネルの幅方向ローラベー
ス両側面にはローラを回動自在に備え、該ローラにより
ハンドレールを案内するローラ案内装置を設けるもので
ある。

【００１０】

【作用】以上の如く構成すれば、ハンドレールは極めて
円滑に案内される。

【００１１】

【実施例】以下、本発明の一実施例について図面を用い
て説明する。図１は本発明の一実施例にかかる案内ロー
ラ２４の配設状態及び取付状態を示す配置図で、ハンド
レール２を案内する案内ローラ２４（２４ａ，２４ｂか
らなる）は鉛直線から略１５°〜６５°の角度の間にお
よそ４個配設され、それ以外の円弧状部には樹脂ガイド
１１ａ及び１１ｂが配設されている。

【００１２】図１０は図１におけるＡ−Ａ線矢視図、図
１１は図１におけるＢ−Ｂ線矢視図、図１２は複数の案
内ローラ２４が取付けられたローラ案内装置２０の拡大
図であり、図中図８及び図９と同一符号のものは同一の
ものを示すが、１１ａ，１１ｂは図９に示すフランジ付
フレーム１２（ただし円弧状に曲げ加工されている）に
挿入されている樹脂ガイド１１と同一のもの、２１は図
８に示すフランジ付フレーム１２の切り欠き１２ａに嵌
合されたストッパーで、樹脂ガイド１１ａ，１１ｂのＸ
方向への移動を拘束する。２２はフランジ付フレーム１
２の凸部１２ｂと樹脂ガイド１１ａ，１１ｂとの間に円
弧状のフランジ付フレーム１２に沿うように（樹脂ガイ
ド１１ａと１１ｂとの合間をうめる如くに）配置された
ローラベースで、両端がそれぞれ樹脂ガイド１１ａ，１
１ｂにサラビス２３により取付けられている。

【００１３】２４ａ，２４ｂはローラベース２２の側面
（欄干パネル３の幅方向）に設けられたネジ穴２２ａ，
２２ｂにピン２５ａ，２５ｂにより回動自在に取付けら
れた案内ローラで、ピン２５ａ，２５ｂの頭部はフラン
ジ付フレーム１２の立ち上がり側面に接触して案内ロー
ラ２４ａ，２４ｂのＹ，Ｚ方向の移動を拘束する。２６
は案内ローラ２４ａ，２４ｂとローラベース２２の間に
設けられたスペーサで、ローラベース２２と複数の案内
ローラ２４ａ，２４ｂとピン２５ａ，２５ｂとスペーサ
２６とにより図１２に示すローラ案内装置２０を構成す
る。

【００１４】図１３はローラ案内装置２０をハンドレー
ル反転部分の上方と下方の両方に設けたその他の実施例
を示す図であり、ローラ案内装置２０の取付構造は前述
の場合と全く同様である。

【００１５】次に、ローラ案内装置２０を円弧状部のど
の範囲に取付ければ一番効率的かつ経済的かを検討す
る。図１４に示す上部反転部において、円弧状部を介し
てハンドレールを引張る場合、ハンドレールの張力Ｔは

【００１６】Ｔ＝ｅ^x ・Ｔ_O ・・・・・ となる。ただし、ｘ＝μθ，μは摩擦係数，Ｔ_O は反転
部に入る前の張力，θは巻付き角（ｒａｄ）を示す。

【００１７】たとえば、樹脂ガイドとして超高分子量ポ
リエチレンを使用した場合の動摩擦係数μは荷重及び移
動速度に対して図１５及び図１６のように変動するた
め、エスカレータのハンドレールの移動速度３０ｍ／ｍ
ｉｎでは、およそμ＝0.3 になると推定され、式にμ
＝0.3 及び各巻付き角θ≒0.26 (15°），1.13（65
°），２（ 115°），2.88（ 165°），3.14（ 180°）
を代入した各位置でのハンドレールの張力Ｔはそれぞれ
1.08Ｔ_O ，1.41Ｔ_O ，1.83Ｔ_O ，2.37Ｔ_O ，2.57Ｔ_O と
なる。

【００１８】ここで、ハンドレールの張力Ｔが大きい
程、向心力は大きくなるので、当然摩擦力は大きくな
る。又、樹脂ガイドの摩擦係数は面圧（向心力）が大き
くなる程大きくなるので、前述との相乗効果により向心
力の大きい部分は抵抗が非常に大きくなるため、張力Ｔ
の大きい部分に案内ローラ２４を配設するのが最も効果
的であることがわかる。

【００１９】一方、樹脂ガイドは経年変化すると摩擦係
数が極端に上がる性質があり、面圧が高い部分程経年変
化しやすいことを考え合わせると、張力Ｔの大きい部分
には案内ローラ２４を配設した方が良いと言える。

【００２０】次に、図１７は上部反転部の図１４におけ
るＰ，Ｑ，Ｒ及びＳの範囲に案内ローラ２４，それ以外
の範囲には樹脂ガイドを配設した場合と、全周樹脂ガイ
ドとした場合と、全周案内ローラ２４を配設した場合の
それぞれの摺動抵抗の測定をした実験データを示し、こ
こで、摺動抵抗とは図１８に示す挾圧ローラ８を開放し
た状態で、ハンドレール２に対し矢印方向に力を加え、
ハンドレール２が動き始める力Ｔ（Kg）と定義してい
る。

【００２１】この実験データからわかるとおり、全周
樹脂ガイドと比べて全周案内ローラの方が摺動抵抗は約
半分ですんでいる。全周案内ローラと比べて、Ｒ範囲
あるいはＳ範囲だけ案内ローラを配置する場合でも摺動
抵抗はそれ程増加しない。Ｒ範囲だけでなくＳ範囲に
ローラを配置する方が理論上摺動抵抗が低下するはずで
あるが、実際には差がほとんど表れない。ことがわかっ
た。

【００２２】特に、前述の、については、ハンドレー
ル２の自重が向心力を弱める方向に動いていることと、
ハンドレール２の剛性のために、反転部両端でハンドレ
ール２が外側にふくれ上がり、案内部材との間に隙間が
生じるためと考えられる。実際に現場に据付けられたエ
スカレータの反転部（全周樹脂ガイド）の樹脂ガイドを
調査しても、反転部両端においてハンドレール２が強く
当たった形跡はほとんど認められなかった。

【００２３】したがって、コスト面，性能機能面を総合
的に判断するとＲ範囲にのみ，即ち図１に示すように、
ローラ案内装置２０を配設するのが最も効率的でかつ経
済的であると言える。

【００２４】

【発明の効果】以上述べたように本発明によれば、最近
流行のスリムタイプのエスカレータ等であっても、簡単
にローラ案内装置を設けてハンドレールの走行抵抗を抑
えることができるだけでなく、全周樹脂ガイドで案内さ
れている既設のエスカレータに対して、ローラ案内装置
への切換えが極めて容易に行える。又、ハンドレール走
行抵抗が大きくなる円弧状部でも、特にハンドレールの
面圧が大きい部分のみローラ案内装置を配設し、比較的
面圧の小さな部分には廉価な樹脂ガイドを配置してハン
ドレールがフレームから外れることを防止して、適切な
コストで効果的にハンドレールの走行抵抗を低下させる
ことができる。

【００２５】したがって、本発明は、次のような特有の
効果を発揮する。 （イ）ハンドレール走行抵抗が経年変化しにくくなるた
め、据付当初にハンドレール駆動力を調整すれば、長期
間調整し直す必要がなくなる。 （ロ）ハンドレール走行抵抗が小さくなるため、ハンド
レールの駆動力を小さくでき、ハンドレール自体やハン
ドレール駆動装置に与える影響を少なくできる。これに
より、寿命の伸長が図れる。

【００２６】（ハ）スリムタイプのエスカレータ等に適
用できる揚程範囲を拡大させることができる。

【００２７】尚、以上の説明では、ローラ案内装置をハ
ンドレール反転円弧部に設けた例を述べたが、たとえば
非常に高揚程のエスカレータの場合には、反転円弧部に
限らず凸曲線部や凹曲線部あるいは直接部にも配置し
て、ハンドレールの走行抵抗を軽減させるようにしても
よい。

【００２８】

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例にかかる案内ローラ２０の配
設及び取付状態を示す配置図である。

【図２】エスカレータの上部付近の側面図である。

【図３】図２におけるＣ−Ｃ線矢視図である。

【図４】図２の部分内部構造図である。

【図５】図２におけるＤ−Ｄ線矢視図である。

【図６】図４に相当するその他の例を示す内部構造図で
ある。

【図７】図５に相当するその他の例を示す矢視図であ
る。

【図８】スリムタイプのエスカレータ等のハンドレール
支持案内装置の分解斜視図である。

【図９】スリムタイプのエスカレータ等のハンドレール
案内装置の断面図である。

【００２９】

【図１０】図１におけるＡ−Ａ線矢視図である。

【図１１】図１におけるＢ−Ｂ線矢視図である。

【図１２】本発明にかかるローラ案内装置の拡大図であ
る。

【図１３】本発明のその他の実施例にかかる案内ローラ
２０の配設及び取付状態を示す配置図である。

【００３０】

【図１４】本発明の一効果を説明する説明図である。

【図１５】超高分子量ポリエチレンの動摩擦係数の特性
を示す特性図である。

【図１６】超高分子量ポリエチレンの動摩擦係数の特性
を示す特性図である。

【図１７】本発明の実験データを示す図である。

【図１８】摺動抵抗の定義を示す図である。

【００３１】

【符号の説明】

１ ステップ ２ ハンドレール ３ 欄干パネル １１，１１ａ，１１ｂ 樹脂ガイド １２ フランジ付フレーム ２２ ローラベース ２４，２４ａ，２４ｂ 案内ローラ ２０ ローラ案内装置

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 欄干パネルの上縁に、薄板からなるフラ
   ンジ付フレームを覆いかぶせて一体に構成し、該フラン
   ジ付フレームのフランジには樹脂ガイドを挿入してハン
   ドレールを案内するエスカレータ等において、 ハンドレール反転円弧部内の鉛直線から略１５°〜６５
   °の範囲では、前記樹脂ガイドの一部を取り除き、該取
   り除いた部分に前記フランジ付フレームに沿ってローラ
   ベースを配置し、前記欄干パネルの幅方向前記ローラベ
   ース両側面にはローラを回動自在に備え、該ローラによ
   り前記ハンドレールを案内するローラ案内装置を設けた
   ことを特徴とするエスカレータ等の欄干。
2. 【請求項２】 前記ローラベースは前記フランジ付フレ
   ームの凸部に沿うように配置し、両端が前記樹脂ガイド
   に取付けられることを特徴とする請求項１記載のエスカ
   レータ等の欄干。