JP2024076401A - インクジェット記録方法、インクジェット記録装置、並びに、水性インク及び水性反応液のセット - Google Patents

インクジェット記録方法、インクジェット記録装置、並びに、水性インク及び水性反応液のセット Download PDF

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Abstract

【課題】 反応液を用いて非吸収性の記録媒体に記録した場合でも、写像性に優れ、画像ムラが抑制された画像を記録できるインクジェット記録方法などの提供。【解決手段】 水性インク、及び、前記水性インクと反応する反応剤を含有する水性反応液を用いて記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法である。前記水性インクが、アニオン性基の作用によって分散される色材、及び樹脂粒子を含有する。前記水性反応液が、多価カルボン酸、pKaが7.5以上である塩基性化合物、及び特定の水溶性有機溶剤を含有する。前記水性反応液中の、前記塩基性化合物の塩基性基の量(モル)が、前記多価カルボン酸のカルボン酸基の量(モル)に対するモル比率で、0.25倍以上0.75倍以下である。前記記録媒体のブリストー法において接触開始から30msec1/2までの水の吸収量が、10mL/m2以下である。【選択図】 なし

Description

本発明は、インクジェット記録方法、インクジェット記録装置、並びに、水性インク及び水性反応液のセットに関する。
近年、インクジェット記録方法は、ポスターや大判の広告の印刷など、サインアンドディスプレイと呼ばれる分野で使用されることが増えている。この分野では、家庭用のインクジェット記録装置と比べ、記録面積が広いことを特徴として挙げることができる。また、画像が目を引く必要があるため、高い発色性を示す画像を記録することができるインクとすることが求められる。
サインアンドディスプレイ分野では、その表面がインクの吸収性をほぼ持たない、塩化ビニル(塩ビ)やポリエチレンテレフタラート(PET)などで形成された、非吸収性の記録媒体を用いることが多い。このため、非吸収性の記録媒体における画像の滲みを抑制することが求められる。以下、その表面がインクの吸収性をほぼ持たない記録媒体を、「非吸収性の記録媒体」とも記載する。非吸収性の記録媒体に記録するインクジェット記録方法では、記録媒体においてインクドットが弾かれないようにすることによって、滲みを抑制することが重要である。そのためには、インクが記録媒体に付与された後に、インクを急速に増粘させて固定化する必要がある。
非吸収性の記録媒体に記録する方法としては、有機溶剤を主成分とした溶剤系インクや、重合性モノマーを含有する硬化型インクを使用した記録方法が知られている。しかし、近年では、環境負荷や安全性の観点から、水性インクを用いて非吸収性の記録媒体に記録できる記録方法へのニーズが高まっている。
水性インクを用いて、非吸収性の記録媒体に記録する方法としては、非吸収性の記録媒体の表面でインクの水分を蒸発させる方法や、インクの成分を凝集させる反応液を用いる方法を挙げることができる。前者は、新たに反応液のための構成を用意する必要がないため、ランニングコストの観点で有利である一方で、乾燥までの時間を十分に確保しないと、記録媒体の表面で色材が移動してしまい、画像ムラが生じてしまう。(この現象を「ビーディング」と呼ぶ。)画像ムラを抑制するに、印刷速度を落とす必要があり、生産性が劣る。そのため、反応液を用いる方法が検討されている。
また、記録媒体の中には、表面光沢を有するものもあり、このような記録媒体においても高画質な画像を記録する観点から、高い写像性が求められる。「写像性」とは、画像の表面に像を映したときの像の鮮鋭度を示すものであり、写像性が低い場合は像がぼやけて見え、写像性が高い場合は像がくっきり見える。
これまでにも、反応液を用いて、写像性に優れる画像を記録するために、反応液の成分を変更することや、各種記録方法を工夫することが検討されている(特許文献1、及び2参照)。
特開2019-162841号公報 特開2019-018424号公報
しかしながら、本発明者らが、特許文献1に記載のインク、及び反応液を用いて画像を記録したところ、写像性はある程度得られたが、臭気や吐出安定性の課題を抱えていることが判明した。また、特許文献2に記載のインク、及び反応液を用いて画像を記録したところ、画像ムラはある程度抑えられていたが、写像性に改善の余地があった。
したがって、本発明の目的は、反応液を用いて非吸収性の記録媒体に記録した場合でも、写像性に優れ、画像ムラが抑制された画像を記録できるインクジェット記録方法を提供することにある。また、本発明の別の目的は、このインクジェット記録方法に用いるインクジェット記録装置、並びに、水性インク及び水性反応液のセットを提供することにある。
すなわち、本発明によれば、水性インク、及び、前記水性インクと反応する反応剤を含有する水性反応液を用いて記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、前記水性反応液を前記記録媒体に付与する反応液付与工程と、前記記録媒体の前記水性反応液が付与される領域の少なくとも一部に重なるように、前記水性インクを付与するインク付与工程と、を有し、前記水性インクが、アニオン性基の作用によって分散される色材、及び樹脂粒子を含有し、前記水性反応液が、多価カルボン酸、pKaが7.5以上である塩基性化合物、及び水溶性有機溶剤を含有し、前記水性反応液中の、前記塩基性化合物の塩基性基の量(モル)が、前記多価カルボン酸のカルボン酸基の量(モル)に対するモル比率で、0.25倍以上0.75倍以下であり、前記水溶性有機溶剤が、その比誘電率が34.0以下である第1水溶性有機溶剤を含み、前記記録媒体のブリストー法において接触開始から30msec1/2までの水の吸収量が、10mL/m以下であることを特徴とするインクジェット記録方法が提供される。
本発明によれば、反応液を用いて非吸収性の記録媒体に記録した場合でも、写像性に優れ、画像ムラが抑制された画像を記録できるインクジェット記録方法を提供することができる。また、本発明によれば、このインクジェット記録方法に用いるインクジェット記録装置、並びに、水性インク及び水性反応液のセットを提供することができる。
本発明のインクジェット記録装置の一実施形態を模式的に示す斜視図である。 本発明のインクジェット記録装置の一実施形態を模式的に示す側面図である。
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、さらに本発明を詳細に説明する。本発明においては、化合物が塩である場合は、インク中では塩はイオンに解離して存在しているが、便宜上、「塩を含有する」と表現する。また、インクジェット用の水性のインク及び反応液のことを、単に「インク」及び「反応液」と記載することがある。物性値は、特に断りのない限り、常温(25℃)における値である。「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」と記載した場合は、それぞれ「アクリル酸、メタクリル酸」、「アクリレート、メタクリレート」を意味する。
本発明者らは、特許文献1、及び2に記載の反応液、及びインクを用いても、写像性に優れ、画像ムラが抑制された画像が記録できなかった理由について検討した。反応液は、インクの成分(顔料、樹脂など)と反応し、上記の成分を凝集させる反応剤を含有する。そのため、反応液とインクが非吸収性の記録媒体において接触すると、上述の通りインクの成分が急速に凝集し、画像が記録される。この際に、反応剤によって急速に成分が凝集するため、非吸収性の記録媒体において凹凸が生じやすい。そのため、画像の平滑性が下がる。その結果、光の散乱が生じやすくなり、画像の写像性が低下する。
画像の平滑性を向上して、画像の写像性を高めるためには、例えば、インクに対する反応液の付与量を減らすことや、インクの成分の反応剤との反応性を低下させることを挙げることができる。しかし、これらの手法を取ると、インクの成分の凝集、固定化する作用が弱まるため、記録媒体の表面での色材の移動が抑制できず、ビーディングが発生してしまう。つまり、画像ムラが抑制できない。そのため、写像性と画像ムラの抑制はトレードオフの関係にあることがわかった。
そこで、本発明者らは、インクの成分の凝集、固定化に必要な最低限の反応剤は確保しながら、反応性を下げることが必要と考え、そのような特性を持つ反応剤についてさらに検討を行い、反応剤として有機酸に注目した。有機酸の酸としての強さ、つまり、インクの成分との反応性は、第1酸解離定数(pKa)によって決まる。そのため、pKaの高い酸、つまり、弱酸を用いることで、写像性に優れ、画像ムラが抑制された画像を記録できることを見出した。一方で、pKaの値が高く、水溶性の有機酸は、プロピオン酸や特許文献1に記載の酢酸といった1価の有機酸が多く、前述の通り、臭気や揮発性があるため、吐出安定性や安全性の観点から使用が困難である。
そこで、本発明者らは、2価以上の有機酸を用いてpKaの値が高い1価の有機酸と同等の効果を得ることについて再度検討を行った。その結果、特定の多価カルボン酸を中和して用いることで、pKaの値が高い1価の有機酸と同様に写像性に優れ、画像ムラが抑制された画像を記録できることを見出した。
すなわち、本発明のインクジェット記録方法は以下の特徴を有する。まず、水性インクは、アニオン性基の作用によって分散される色材、及び樹脂粒子を含有する。水性反応液は、多価カルボン酸、pKaが7.5以上である塩基性化合物、及び水溶性有機溶剤を含有する。水性反応液中の、上記の塩基性化合物の塩基性基の量(モル)は、多価カルボン酸のカルボン酸基の量(モル)に対するモル比率で、0.25倍以上0.75倍以下である。水溶性有機溶剤は、その比誘電率が34.0以下である第1水溶性有機溶剤を含む。記録媒体のブリストー法において接触開始から30msec1/2までの水の吸収量は、10mL/m以下である。そして、上記の水性反応液と、上記の水性インクと、を記録媒体に少なくとも一部が重なるように付与する。上記の構成とすることで、反応液を用いて非吸収性の記録媒体に記録した場合でも、写像性に優れ、画像ムラが抑制された画像を記録できるメカニズムを、本発明らは以下のように推測している。
水性インクは、アニオン性基の作用によって分散される色材、及び樹脂粒子を含有する。そのため、反応液と接触することで、その分散状態が不安定化され、凝集する。樹脂粒子をインクに添加することで、インクの成分の大きな凝集物の形成を抑制する役割や、凝集によって形成した凝集物の隙間を埋める役割を果たし、画像の平滑性を向上させる。その結果、画像の写像性を向上することができる。水性インクが樹脂粒子を含有しないと、画像ムラを抑制できる範囲内での反応剤の反応性の制御だけでは、画像の写像性を得ることができない。樹脂が樹脂粒子の形態ではない、つまり、水溶性樹脂であると、画像の写像性は得られない。これは、水溶性樹脂だと、反応剤と反応して、凝集した際、その体積が大きく減少する。そのため、インクの成分の大きな凝集物の形成を抑制する役割を果たせず、画像の写像性が得られない。
水性反応液は、多価カルボン酸に加えて、pKaが7.5以上である塩基性化合物を含有する。そして、水性反応液中の、上記の塩基性化合物の塩基性基の量(モル)を、多価カルボン酸のカルボン酸基の量(モル)に対するモル比率で、0.25倍以上0.75倍以下とする。つまり、多価カルボン酸は、上記の塩基性化合物によって一部のカルボン酸基が中和された状態とすることで、pKaの値が高い1価の有機酸を反応剤として用いた場合と同じように、ある程度インクの成分との反応性を抑えた状態とすることができる。塩基性化合物として、pKaが7.5未満の化合物を添加しても、多価カルボン酸の中和が十分に進行しないため、多価カルボン酸は、インクの成分との反応性が高い状態であると考えられる。その結果、記録媒体の表面に大きな凝集物が形成され、画像の平滑性が得られない。その結果、画像の写像性が得られない。また、前記モル比率が0.25倍未満であると、多価カルボン酸の中和が十分に進行せず、多価カルボン酸のインクの成分との反応性が高すぎるため、記録媒体の表面に大きな凝集物が形成され、画像の平滑性が得られない。その結果、画像の写像性が得られない。一方で、前記モル比率が0.75倍超であると、多価カルボン酸の中和が進行しすぎた結果、多価カルボン酸のインクの成分との反応性が下がりすぎてしまう。その結果、インクの成分の凝集、固定化する作用が弱まり、記録媒体の表面での色材の移動が抑制できず、ビーディングが発生してしまう。つまり、画像ムラを抑制できない。反応剤として、多価カルボン酸の代わりに、カチオン性樹脂を用いると、記録媒体の表面に大きな凝集塊を形成してしまい、画像の平滑性が得られないと考えられる。その結果、画像の写像性が得られない。
また、水性反応液は、その比誘電率が34.0以下である第1水溶性有機溶剤を含む。そのため、反応液全体の誘電率をある程度低くすることができ、上記のような塩基性化合物を添加しても、多価カルボン酸の酸解離が必要以上に促進されず、インクの成分との反応性を適度に制御することができる。水性反応液が、第1水溶性有機溶剤を含まないと、反応液全体の誘電率が高まり、上記の塩基性化合物の添加によって、多価カルボン酸のインク成分との反応性が得られなくなる。その結果、画像の写像性が得られない。
<インクジェット記録方法、インクジェット記録装置、並びに、水性インク及び水性反応液のセット>
本発明のインクジェット記録方法は、インクジェット方式の記録ヘッドから熱エネルギーの作用により水性インク及び水性反応液を吐出し、記録媒体に付与して画像を記録する方法である。本発明のインクジェット記録方法は、水性反応液を記録媒体に付与する反応液付与工程、及び記録媒体の水性反応液が付与される領域の少なくとも一部に重なるように、水性インクを付与するインク付与工程を有する。水性インクは、アニオン性基の作用によって分散される色材、及び樹脂粒子を含有する。水性反応液は、多価カルボン酸、pKaが7.5以上である塩基性化合物、及び水溶性有機溶剤を含有する。水性反応液中の、上記の塩基性化合物の塩基性基の量(モル)は、多価カルボン酸のカルボン酸基の量(モル)に対するモル比率で、0.25倍以上0.75倍以下である。水溶性有機溶剤は、その比誘電率が34.0以下である第1水溶性有機溶剤を含む。記録媒体は、ブリストー法において接触開始から30msec1/2までの水の吸収量が、10mL/m以下である記録媒体である。
また、本発明のインクジェット記録装置は、インクジェット方式の記録ヘッドから熱エネルギーの作用により水性インク及び水性反応液を吐出し、記録媒体に付与して画像を記録するインクジェット記録方法に用いる装置であり、上記の記録方法に好適に用いられる装置である。本発明では、活性エネルギー線などの照射により画像を硬化する工程を設ける必要はない。
本発明の水性インク及び水性反応液のセットは、水性インク、及び、前記水性インクと反応する反応剤を含有する水性反応液を、記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法に用いられるセットである。そして、上記の記録方法に好適に用いられるセットである。セットの形態には、複数のインク(反応液)をそれぞれ独立に収容してなる複数のインクカートリッジのセットや、複数のインク(反応液)をそれぞれ収容してなる複数のインク収容部を組み合わせて一体的に構成されたインクカートリッジの状態、が含まれる。本発明のセットは、インク、及び反応液を組み合わせて用いることができるように構成されていれば、上記の形態に限られるものではなく、どのような形態であってもよい。
以下、本発明のインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置(以下、単に「記録方法及び記録装置」とも記す)について詳細に説明する。
図1は、本発明のインクジェット記録装置の一実施形態を模式的に示す斜視図である。また、図2は、本発明のインクジェット記録装置の一実施形態を模式的に示す側面図である。図1及び2に示すように、本実施形態の記録装置は、インクを吐出するインクジェット方式の記録ヘッド22を備える。記録ヘッド22は、熱エネルギーの作用によりインクを吐出する記録ヘッドである。熱エネルギーの作用によりインクを吐出する記録ヘッドは、電気熱変換素子に電気パルスを加えることでインクに熱エネルギーを付与し、吐出口からインクを吐出させる。ここでは熱エネルギーの作用によりインクを吐出する記録ヘッドを例に挙げたが、力学的エネルギーの作用によりインクを吐出する記録ヘッドを採用してもよい。記録ヘッドは、記録ヘッドから吐出する水性インクを加熱する機構(温調機構)を備えていてもよい。温調機構を備える場合、記録ヘッドから吐出するインクの加熱温度は、35℃以上70℃以下とすることが好ましい。
〔加熱工程〕
本発明の記録方法は、インクが付与された記録媒体を加熱(加熱処理)する工程を有してもよい。インクが付与された記録媒体を加熱することで、乾燥を促進したり、画像の強度を高めたりすることができる。
記録媒体を加熱する手段としては、例えば、ヒータなどの公知の加温手段、ドライヤなどの送風を利用した送風手段、及びこれらを組み合わせた手段などの加熱手段を挙げることができる。加熱手段としては、上記の加温手段、送風手段、及びこれらを組み合わせた手段などを挙げることができる。加熱処理の方法としては、例えば、記録媒体の記録面(インクの付与面)とは反対側(裏面)からヒータなどで熱を与える方法、記録媒体の記録面に温風又は熱風を当てる方法、記録面又は裏面から赤外線ヒータを用いて加熱する方法などを挙げることができる。また、これらの複数を組み合わせてもよい。
画像の耐擦過性を高めることができるため、インクが付与された記録媒体の加熱温度は、50℃以上90℃以下とすることが好ましい。インクが付与された記録媒体の加熱温度は、記録装置の加熱手段に対応する位置に組み込んだセンサにより読み取ってもよいし、インクと記録媒体の種類に応じて定めておいた熱量と記録媒体の温度との関係から判断してもよい。
図1及び2に示す記録装置では、記録ヘッド22が主走査方向Bに往復走査する位置よりも、副走査方向Aの下流側の位置に、フレーム(図示せず)に支持されたヒータ25が配置されている。インクが付与された記録媒体1をヒータ25によって加熱することができる。ヒータ25の具体例としては、シーズヒータやハロゲンヒータなどを挙げることができる。ヒータ25はヒータカバー26に覆われている。ヒータカバー26は、ヒータ25から生じた熱を記録媒体1に効率よく照射するための部材である。さらに、ヒータカバー26は、ヒータ25を保護する部材でもある。記録ヘッド22から吐出されたインクが付与された記録媒体1は、巻き取りスプール27により巻き取られ、ロール状の巻き取り媒体24を形成する。
(記録媒体)
本発明の記録方法及び記録装置では、非吸収性の記録媒体(低~非吸収性の記録媒体)を用いる。低~非吸収性の記録媒体は、JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.51の「紙及び板紙の液体吸収性試験方法」に記載のブリストー(Bristow)法において、接触開始から30msec1/2までの水吸収量が0mL/m以上10mL/m以下の記録媒体である。本発明においては、上記水吸収量の条件を満たす記録媒体を「低~非吸収性の記録媒体」と定義する。無機粒子で形成されたコート層(インク受容層)を有するインクジェット記録用の記録媒体(光沢紙、マット紙など)や、コート層を有しない普通紙は、上記水吸収量が10mL/mを超える「吸収性記録媒体」である。
低~非吸収性の記録媒体としては、プラスチックフィルム;基材の記録面にプラスチックフィルムが接着された記録媒体;セルロースパルプを含有する基材の記録面に樹脂コート層が設けられた記録媒体;などを用いることができる。これらのなかでも、プラスチックフィルムが好ましく、また、セルロースパルプを含有する基材の記録面に樹脂コート層が設けられた記録媒体も好ましい。
本発明の記録方法及び記録装置で用いる後述のインクは、非吸収性の記録媒体に付与されると、水や水溶性有機溶剤などの成分が揮発して樹脂粒子が濃縮される。これにより、濃縮された樹脂粒子同士の融着が促進され、記録される画像の強度が向上する。これに対して、液体成分の吸収性が高い記録媒体に後述のインクが付与されると、樹脂粒子同士の融着が促進されにくくなるので、画像の強度が向上しない。なお、本明細書における記録媒体とは、転写体ではなく、記録物としての画像が記録される対象の記録媒体を意味する。
(反応液)
本発明の記録方法は、水性インクと反応する反応剤を含有する水性反応液を記録媒体に付与する反応液付与工程を有する。なかでも、インク付与工程の前に、反応液付与工程を有する、又は、インク付与工程と反応液付与工程とを並行して行うことが好ましい。以下、反応液に用いる各成分などについて詳細に説明する。
[反応剤]
反応液は、インクと接触することでインクと反応し、インク中の成分(樹脂、自己分散顔料などのアニオン性基の作用によって分散される成分)を凝集させるものであり、反応剤として、有機酸である多価カルボン酸を含有する。
有機酸を含有する反応液は、インク中に存在する成分のアニオン性基を効率よく酸型にして凝集させるものである。後述するインク中の色材は、それぞれアニオン性基の作用によって分散されており、有機酸と接触すると分散能を失って、凝集が進行する。多価カルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、セバシン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸などのジカルボン酸;クエン酸、トリメリット酸などのトリカルボン酸;ピロメリット酸などのテトラカルボン酸などを挙げることができる。反応液中の有機酸(多価カルボン酸)の含有量(質量%)は、反応液全質量を基準として、1.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。
多価カルボン酸は、後述するように塩基性化合物によってある程度中和された状態で反応液中に存在する。つまり、インクの成分との反応性に寄与する酸解離定数は、第1酸解離定数(pKa)ではなく、第2酸解離定数(pKa)以降が主体となる。なかでも、多価カルボン酸の第2酸解離定数以降のpKaの少なくとも1つが、4.7以上5.9以下であることが好ましい。第2酸解離定数以降のpKaの少なくとも1つを上記の範囲内とすることで、インクの成分との反応性を適度な範囲とすることができる。第2酸解離定数以降のpKaが全て4.7未満であると、インクの成分との反応性が高くなりすぎてしまい、画像の写像性が十分に得られない場合がある。第2酸解離定数以降のpKaが全て5.9超であると、インクの成分との反応性が十分に得られず、ビーディングが発生してしまう場合がある。その結果、画像ムラが十分に抑制できない場合がある。なかでも、第2酸解離定数(pKa)が上記の範囲内であることがさらに好ましい。
また、画像の写像性及び画像ムラの抑制が損なわれなければ、上記の反応剤以外の、その他の反応剤を反応液に添加してもよい。その他の反応剤としては、例えば、多価金属イオン、カチオン性樹脂などのカチオン性成分など挙げることができる。
多価金属イオンとしては、例えば、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Sr2+、Ba2+、及びZn2+などの2価の金属イオンや、Fe3+、Cr3+、Y3+、及びAl3+などの3価の金属イオンを挙げることができる。反応液に多価金属イオンを含有させるためには、多価金属イオンとアニオンとが結合して構成される多価金属塩(水和物であってもよい)を用いることができる。アニオンとしては、例えば、Cl、Br、I、ClO、ClO 、ClO 、ClO 、NO 、NO 、SO 2-、CO 2-、HCO 、PO 3-、HPO 2-、及びHPO などの無機アニオン;HCOO、(COO、COOH(COO)、CHCOO、CHCH(OH)COO、C(COO、CCOO、C(COO、及びCHSO などの有機アニオンを挙げることができる。反応液中の多価金属塩換算の含有量(質量%)は、反応液全質量を基準として、1.0質量%以上20.0質量%以下であることが好ましい。
カチオン性樹脂としては、例えば、1~3級アミンの構造を有する樹脂、4級アンモニウム塩の構造を有する樹脂などを挙げることができる。具体的には、ビニルアミン、アリルアミン、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、ジメチルアミノエチルメタクリレート、エチレンイミン、グアニジン、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、アルキルアミン・エピクロロヒドリン縮合体などの構造を有する樹脂を挙げることができる。反応液中での溶解性を高めるために、カチオン性樹脂と酸性化合物とを併用したり、カチオン性樹脂の4級化処理を施したりすることもできる。反応液中のカチオン性樹脂の含有量(質量%)は、反応液全質量を基準として、0.1質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。
[塩基性化合物]
反応液は、上記の反応剤に加えて、pKaが7.5以上である塩基性化合物を含有する。そして、反応液中の、上記の塩基性化合物の塩基性基の量(モル)は、多価カルボン酸のカルボン酸基の量(モル)に対するモル比率で、0.25倍以上0.75倍以下であることを要する。上記の構成とすることで、上述の通り、反応剤の反応性を適切な範囲に調整し、写像性に優れ、画像ムラが抑制された画像を記録できる。反応液中の、上記の塩基性化合物の塩基性基の量(モル)は、多価カルボン酸のカルボン酸基の量(モル)に対するモル比率で、0.50倍以上0.75倍以下であることが好ましい。前記モル比率を上記の範囲にすることで、画像の写像性をさらに向上することができる。
pKaが7.5以上である塩基性化合物としては、例えば、水酸化カリウム(pKa:14.0)、トリエタノールアミン(pKa:7.8)、2-アミノ-1,3-プロパンジオール(pKa:12.2)、2-アミノ-2-メチル-1.3-プロパンジオール(pKa:8.8)、2-アミノ-2-エチル-1.3-プロパンジオール(pKa:8.9)、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン(pKa:8.2)、ジエタノールアミン(pKa:8.9)、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン(ビシン)(pKa:8.4)などを挙げることができる。本明細書において、pKaは、25℃における値である。なかでも、反応液中の、塩基性化合物は、モノアミン化合物であることが好ましい。特に、反応液中の、モノアミン化合物は、酸基を有しない化合物であることが好ましい。本明細書において、モノアミン化合物は、分子内に窒素原子を1つ含有する有機化合物の総称である。塩基性化合物として、水酸化カリウムなどの無機化合物を用いると、有機酸である多価カルボン酸と結晶性の高い塩を形成するため、記録媒体の表面で反応剤が析出し、画像の平滑性が十分に得られない場合がある。その結果、画像の写像性が十分に得られない場合がある。そして、モノアミン化合物であっても酸基を有する化合物であると、多価カルボン酸との中和を抑制してしまい、結果として、インクの成分との反応性を十分に下げることができない場合がある。その結果、画像の写像性が十分に得られない場合がある。
[水性媒体]
反応液は、水性媒体として少なくとも水、及び水溶性有機溶剤を含有する水性反応液である。そして、水溶性有機溶剤は、その比誘電率が34.0以下である第1水溶性有機溶剤を含むことを要する。水としては、脱イオン水やイオン交換水を用いることが好ましい。反応液中の水の含有量(質量%)は、反応液全質量を基準として、50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。また、反応液中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、反応液全質量を基準として、5.0質量%以上40.0質量%以下であることが好ましく、15.0質量%以上30.0質量%以下であることがさらに好ましい。
第1水溶性有機溶剤としては、トリエチレングリコール(22.7)、2-メチル-1,3-プロパンジオール(28.3)、トリメチロールプロパン(33.7)、1,2-ブタンジオール(22.2)、1,3-ブタンジオール(30.0)、プロピレングリコール(28.8)、2-ピロリドン(28.0)、1,2-ヘキサンジオール(14.8)などを挙げることができる。第1水溶性有機溶剤の比誘電率は、3.0以上であることが好ましい。また、水溶性有機溶剤は、第1水溶性有機溶剤以外の水溶性有機溶剤(その他の水溶性有機溶剤)を含んでよい。その他の水溶性有機溶剤としては、後述のインクに含有させることが可能な水溶性有機溶剤と同様のものを挙げることができる。
水溶性有機溶剤の比誘電率は、誘電率計(例えば、商品名「BI-870」、BROOKHAVEN INSTRUMENTS CORPORATION製など)を使用し、周波数10kHzの条件で測定することができる。反応液が複数の水溶性有機溶剤を含有する場合、比誘電率は平均比誘電率として算出できる。ここで、平均比誘電率とは、各有機溶剤の比誘電率に、反応液中の有機溶剤の合計量に占める各有機溶剤の割合(質量%)を乗じた値を算出し、積算した値である。
25℃で固体の水溶性有機溶剤の比誘電率は、50質量%水溶液の比誘電率を測定し、下記式(1)から算出した値とする。通常「水溶性有機溶剤」とは液体を指すものであるが、本発明においては、25℃で固体であるものも水溶性有機溶剤に含めることとする。
εsol=2ε50%-εwater ・・・(1)
εsol:25℃で固体の水溶性有機溶剤の比誘電率
ε50%:25℃で固体の水溶性有機溶剤の50質量%水溶液の比誘電率
εwater:水の比誘電率
水性インクや反応液に汎用であり、25℃で固体である水溶性有機溶剤としては、例えば、1,6-ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、エチレン尿素、尿素、数平均分子量1,000のポリエチレングリコールなどを挙げることができる。ここで、25℃で固体の水溶性有機溶剤の比誘電率を、50質量%水溶液の比誘電率から求める理由は次の通りである。25℃で固体の水溶性有機溶剤のうち、水性インクの構成成分となり得るもののなかには、50質量%を超えるような高濃度の水溶液を調製することが困難なものがある。一方、10質量%以下であるような低濃度の水溶液では、水の比誘電率が支配的となり、当該水溶性有機溶剤の確からしい(実効的な)比誘電率の値を得ることができない。そこで、本発明者らが検討を行った結果、25℃で固体の水溶性有機溶剤のうち、インクや反応液に用いることが可能なほとんどのもので測定対象の水溶液を調製することができ、かつ、求められる比誘電率も本発明の効果と整合することが判明した。このような理由から、50質量%水溶液を利用することとした。25℃で固体の水溶性有機溶剤であって、水への溶解度が低いために50質量%水溶液を調製できないものについては、飽和濃度の水溶液を利用し、上記εsolを求める場合に準じて算出した比誘電率の値を便宜的に用いることとする。
[その他の成分]
反応液は、必要に応じて、各種その他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、後述のインクに含有させることが可能なその他の成分と同様のものを挙げることができる。
[反応液の物性]
本発明の記録方法で好適に用いることができる反応液は、インクジェット方式に適用する水性反応液である。したがって、信頼性の観点から、その物性値を適切に制御することが好ましい。具体的には、25℃における反応液の表面張力は、20mN/m以上60mN/m以下であることが好ましい。また、25℃における反応液の粘度は、1.0mPa・s以上10.0mPa・s以下であることが好ましい。25℃における反応液のpHは、3.0以上であることが好ましい。pHが3.0未満であると、反応液全体の酸性が強い状態、つまり、プロトンの量が多いため、インクの成分の凝集を必要以上に促進してしまう場合がある。その結果、画像の写像性が十分に得られない場合がある。また、反応液のpHは、6.0以下であることが好ましい。反応液のpHは、ガラス電極などを搭載した一般的なpHメータで測定することができる。
<インク>
本発明のインクは、アニオン性基の作用によって分散される色材、及び樹脂粒子を含有するインクジェット用の水性インクである。以下、インクを構成する各成分などについて詳細に説明する。
[色材]
インクは、アニオン性基の作用によって分散される色材を含有する。色材としては、顔料や染料を用いることができる。インク中の色材の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上15.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上10.0質量%以下であることがさらに好ましい。
顔料の具体例としては、カーボンブラック、酸化チタンなどの無機顔料;アゾ、フタロシアニン、キナクリドン、イソインドリノン、イミダゾロン、ジケトピロロピロール、ジオキサジンなどの有機顔料を挙げることができる。
顔料の分散方式としては、分散剤として樹脂を用いた樹脂分散顔料や、顔料の粒子表面に親水性基が結合している自己分散顔料などを用いることができる。また、顔料の粒子表面に樹脂を含む有機基を化学的に結合させた樹脂結合型顔料や、顔料の粒子の表面を樹脂などで被覆したマイクロカプセル顔料などを用いることができる。なかでも、樹脂結合型顔料やマイクロカプセル顔料ではなく、分散剤としての樹脂を顔料の粒子表面に物理吸着させた樹脂分散顔料を用いることが好ましい。つまり、顔料は、アニオン性基を有する樹脂(樹脂分散剤)によって分散されていることが好ましい。
顔料を水性媒体中に分散させるための樹脂分散剤としては、アニオン性基の作用によって顔料を水性媒体中に分散させうるものを用いる。樹脂分散剤としては、後述するような樹脂、なかでも水溶性樹脂を用いることができる。インク中の顔料の含有量(質量%)は、樹脂分散剤の含有量に対する質量比率で、0.3倍以上10.0倍以下であることが好ましい。
自己分散顔料としては、反応剤として多価カルボン酸を用いるため、カルボン酸基が、顔料の粒子表面に直接又は他の原子団(-R-)を介して結合しているものを用いることができる。アニオン性基は、酸型及び塩型のいずれであってもよく、塩型である場合は、その一部が解離した状態及び全てが解離した状態のいずれであってもよい。アニオン性基が塩型である場合において、カウンターイオンとなるカチオンとしては、アルカリ金属カチオン、アンモニウム、有機アンモニウムなどを挙げることができる。他の原子団(-R-)の具体例としては、炭素原子数1乃至12の直鎖又は分岐のアルキレン基;フェニレン基やナフチレン基などのアリーレン基;カルボニル基;イミノ基;アミド基;スルホニル基;エステル基;エーテル基などを挙げることができる。また、これらの基を組み合わせた基であってもよい。
染料としては、アニオン性基の作用によって分散されるものを用いることが好ましい。染料の具体例としては、アゾ、トリフェニルメタン、(アザ)フタロシアニン、キサンテン、アントラピリドンなどの染料を挙げることができる。色材は、顔料であることが好ましく、樹脂分散顔料であることがさらに好ましい。
[樹脂]
インクには、樹脂を含有させることができる。インク中の樹脂の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上20.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上15.0質量%以下であることがさらに好ましい。
樹脂は、(i)顔料の分散状態を安定化させるため、すなわち、樹脂分散剤やその補助としてインクに添加することができる。また、(ii)記録される画像の各種特性を向上させるためにインクに添加することができる。樹脂の形態としては、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、及びこれらの組み合わせなどを挙げることができる。また、樹脂は、水性媒体に溶解しうる水溶性樹脂であってもよく、水性媒体中に分散する樹脂粒子であってもよい。
〔樹脂の組成〕
樹脂としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂などを挙げることができる。なかでも、アクリル系樹脂やウレタン樹脂が好ましく、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリレートに由来するユニットで構成されるアクリル系樹脂がさらに好ましい。
アクリル系樹脂としては、親水性ユニット及び疎水性ユニットを構成ユニットとして有するものが好ましい。なかでも、(メタ)アクリル酸に由来する親水性ユニットと、芳香環を有するモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーからなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する疎水性ユニットと、を有する樹脂が好ましい。特に、(メタ)アクリル酸に由来する親水性ユニットと、スチレン及びα-メチルスチレンからなる群より選ばれる少なくとも1種のモノマーに由来する疎水性ユニットとを有する樹脂が好ましい。これらの樹脂は、顔料との相互作用が生じやすいため、顔料を分散させるための樹脂分散剤として好適に利用することができる。
親水性ユニットは、アニオン性基などの親水性基を有するユニットである。親水性ユニットは、例えば、親水性基を有する親水性モノマーを重合することで形成することができる。親水性基を有する親水性モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などのカルボン酸基を有する酸性モノマー、これらの酸性モノマーの無水物や塩などのアニオン性モノマーなどを挙げることができる。酸性モノマーの塩を構成するカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、有機アンモニウムなどのイオンを挙げることができる。疎水性ユニットは、アニオン性基などの親水性基を有しないユニットである。疎水性ユニットは、例えば、アニオン性基などの親水性基を有しない、疎水性モノマーを重合することで形成することができる。疎水性モノマーの具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、(メタ)アクリル酸ベンジルなどの芳香環を有するモノマー;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸エステル系モノマーなどを挙げることができる。
ウレタン系樹脂は、例えば、ポリイソシアネートとポリオールとを反応させて得ることができる。また、鎖延長剤をさらに反応させたものであってもよい。オレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどを挙げることができる。
〔樹脂の性状〕
本明細書において「樹脂が水溶性である」とは、その樹脂を酸価と当量のアルカリで中和した場合に、動的光散乱法により粒子径を測定しうる粒子を形成しない状態で水性媒体中に存在することを意味する。樹脂が水溶性であるか否かについては、以下に示す方法にしたがって判断することができる。まず、酸価相当のアルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)により中和された樹脂を含む液体(樹脂固形分:10質量%)を用意する。次いで、用意した液体を純水で10倍(体積基準)に希釈して試料溶液を調製する。そして、試料溶液中の樹脂の粒子径を動的光散乱法により測定した場合に、粒子径を有する粒子が測定されない場合に、その樹脂は水溶性であると判断することができる。この際の測定条件は、例えば、SetZero:30秒、測定回数:3回、測定時間:180秒、とすることができる。また、粒度分布測定装置としては、動的光散乱法による粒度分析計(例えば、商品名「UPA-EX150」、日機装製)などを使用することができる。勿論、使用する粒度分布測定装置や測定条件などは上記に限られるものではない。
水溶性樹脂の酸価は、100mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であることが好ましい。水溶性樹脂の重量平均分子量は、3,000以上15,000以下であることが好ましい。
インクは、上述の通り、樹脂粒子を含有する。なかでも、反応剤との反応性の観点から、アニオン性基の作用によって分散される樹脂粒子であることが好ましく、カルボン酸基の作用によって分散される樹脂粒子であることがさらに好ましい。樹脂粒子を構成する樹脂の酸価は、5mgKOH/g以上100mgKOH/g以下であることが好ましい。樹脂粒子を構成する樹脂の重量平均分子量は、1,000以上2,000,000以下であることが好ましい。動的光散乱法により測定される樹脂粒子の体積基準の累積50%粒子径(D50)は、50nm以上500nm以下であることが好ましく、100nm以上300nm以下であることがさらに好ましい。樹脂粒子の体積基準の累積50%粒子径は、粒子径積算曲線において、測定された粒子の総体積を基準として、小粒子径側から積算して50%となる粒子の直径である。樹脂粒子の体積基準の累積50%粒子径は、上記の動的光散乱法による粒度分析計、及び測定条件で測定することができる。また、ある樹脂が樹脂粒子であるか否かは、上記の方法で体積基準の累積50%粒子径が測定されるか否かによって判断できる。樹脂粒子のガラス転移温度は、40℃以上120℃以下であることが好ましく、50℃以上100℃以下であることがさらに好ましい。樹脂粒子のガラス転移温度(℃)は、示差走査熱量計(DSC)を使用して測定することができる。樹脂粒子は色材を内包するものである必要はない。
[ワックス粒子]
インクには、ワックスで形成される粒子(ワックス粒子)を含有させることができる。ワックス粒子を含有するインクを用いることで、耐擦過性がさらに向上した画像を記録することができる。ワックスは、ワックス以外の成分が配合された組成物であっても、ワックスそのものであってもよい。ワックス粒子は、界面活性剤や樹脂などの分散剤によって分散されるものであってもよい。
ワックス(蝋)は、狭義には、水に不溶な高級1価又は2価アルコールと、脂肪酸とのエステルであり、動物系ワックス及び植物系ワックスは含まれるが、油脂及び脂肪は含まない。広義には、高融点の脂肪、鉱物系ワックス、石油系ワックス、及び各種ワックスの配合物や変性物が含まれる。本発明の記録方法では、広義のワックスであれば特に制限なく用いることができる。広義のワックスは、天然ワックス、合成ワックス、これらの配合物(配合ワックス)、及びこれらの変性物(変性ワックス)に分類することができる。
天然ワックスとしては、蜜蝋、鯨蝋、羊毛蝋(ラノリン)などの動物系ワックス;木蝋、カルナバワックス、サトウキビワックス、パームワックス、キャンデリラワックス、ライスワックスなどの植物系ワックス;モンタンワックスなどの鉱物系ワックス;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトローラタムなどの石油系ワックス;を挙げることができる。合成ワックスとしては、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリオレフィンワックス(例:ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス)などの炭化水素系ワックスを挙げることができる。配合ワックスは、上記の各種ワックスの混合物である。変性ワックスは、上記の各種ワックスを、酸化、水素添加、アルコール変性、アクリル変性、ウレタン変性などの変性処理をしたものである。ワックスは、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリオレフィンワックス、パラフィンワックス、及びこれらの変性物や配合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。なかでも、複数種のワックスの配合物であることがさらに好ましく、石油系ワックス及び合成ワックスの配合物であることが特に好ましい。
ワックスは、常温(25℃)で固体であることが好ましい。ワックスの融点(℃)は、40℃以上120℃以下であることが好ましく、50℃以上100℃以下であることがさらに好ましい。ワックスの融点は、JIS K2235:1991(石油ワックス)の5.3.1(融点試験方法)に記載の試験法に準拠して測定することができる。マイクロクリスタリンワックス、ペトローラタム、及び複数種のワックスの混合物の場合は、5.3.2に記載の試験法を利用すると、より精度よく測定することができる。ワックスの融点は、分子量(大きいほど高融点)、分子構造(直鎖だと高融点、分岐があると下がる)、結晶性(高いほど高融点)、密度(高いほど高融点)など特性の影響を受けやすい。このため、これらの特性を制御することで、所望の融点を有するワックスとすることができる。
[水性媒体]
本発明の記録方法で用いるインクは、水性媒体として少なくとも水を含有する水性のインクである。インクには、水、又は水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を含有させることができる。水としては、脱イオン水やイオン交換水を用いることが好ましい。水性インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。また、水性インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。水溶性有機溶剤としては、アルコール類、(ポリ)アルキレングリコール類、グリコールエーテル類、含窒素化合物類、含硫黄化合物類などのインクジェット用のインクに使用可能なものをいずれも用いることができる。
[その他の成分]
インクには、必要に応じて、各種その他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、消泡剤、界面活性剤、pH調整剤、粘度調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤など種々の添加剤を挙げることができる。但し、インクには、反応液に含有させる反応剤を含有しないことが好ましい。
[インクの物性]
インクは、インクジェット方式に適用する水性インクである。したがって、信頼性の観点から、その物性値を適切に制御することが好ましい。具体的には、25℃におけるインクの表面張力は、20mN/m以上60mN/m以下であることが好ましい。また、25℃におけるインクの粘度は、1.0mPa・s以上10.0mPa・s以下であることが好ましい。25℃におけるインクのpHは、7.0以上9.5以下であることが好ましく、8.0以上9.5以下であることがさらに好ましい。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。成分量に関して「部」及び「%」と記載しているものは特に断らない限り質量基準である。
<有機酸の準備>
表1に、反応液の調製に用いた有機酸の特性を示した。第1酸解離定数を「第1pKa」、第2酸解離定数を「第2pKa」として表1に示した。
<反応液の調製>
表2、及び表3に示す各成分(単位:%)を混合し、十分撹拌した後、ポアサイズ3.0μmのセルロースアセテートフィルター(アドバンテック製)にて加圧ろ過を行い、各反応液を調製した。塩基性化合物に付した括弧内の数値は、それぞれ、酸解離定数(pKa)、及び分子量(Mw)である。「カチオマスターPDT-2」は、四日市合成製のアミン・エピクロロヒドリン縮合型ポリマー水溶液(樹脂の含有量:60.0%、カチオン性樹脂の水溶液)の商品名である。「Capstone FS3100」は、LEHVOSS Group製のフッ素系のノニオン性界面活性剤の商品名である。「プロキセルGXL(S)」は、アーチケミカルズ製の防腐剤の商品名である。「水酸化カリウムの水溶液」としては、水酸化カリウムの含有量が10.0%の水溶液を用いた。硫酸マグネシウムを添加する際には、硫酸マグネシウム7水和物を用いて、表2、及び表3に記載の硫酸マグネシウムの量となるように添加した。
Figure 2024076401000002
Figure 2024076401000003
<顔料分散液の調製>
(樹脂分散剤の準備)
[樹脂分散剤1]
樹脂分散剤1としては、スチレン/アクリル酸共重合体(水溶性樹脂、組成(モル)比=84.6/15.4、酸価120mgKOH/g)である樹脂1を用いた。樹脂1の酸価と等モルの水酸化ナトリウムを添加して、樹脂1をイオン交換水に溶解させ、樹脂の含有量が20.0%である樹脂分散剤1の水溶液を調製した。
[樹脂分散剤2]
樹脂1を、ブチルアクリレート/ベンジルメタクリレート/メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート共重合体(樹脂2、水溶性樹脂、組成(モル)比=30.0/60.0/10.0、酸価0mgKOH/g)に変更したこと以外は、前述の樹脂分散剤1と同様にして、樹脂の含有量が20.0%である樹脂分散剤2の水溶液を調製した。
(顔料分散液1)
顔料(C.I.ピグメントブルー15:3)10.0部、樹脂分散剤1の水溶液15.0部、及び純水75.0部を混合して混合物を得た。得られた混合物及び0.3mm径のジルコニアビーズ200部をバッチ式の縦型サンドミル(アイメックス製)に入れ、水冷しながら5時間分散させた。遠心分離して粗大粒子を除去した後、ポアサイズ3.0μmのセルロースアセテートフィルター(アドバンテック製)にて加圧ろ過して、顔料の含有量が10.0%、樹脂分散剤(樹脂1)の含有量が3.0%の顔料分散液1を調製した。
(顔料分散液2)
顔料をC.I.ピグメントレッド122に変更したこと以外は、前述の顔料分散液1と同様の手順で、顔料の含有量が10.0%、樹脂分散剤(樹脂1)の含有量が3.0%の顔料分散液2を調製した。
(顔料分散液3)
顔料をC.I.ピグメントイエロー74に変更したこと以外は、前述の顔料分散液1と同様の手順で、顔料の含有量が10.0%、樹脂分散剤(樹脂1)の含有量が3.0%の顔料分散液3を調製した。
(顔料分散液4)
顔料をカーボンブラックに変更したこと以外は、前述の顔料分散液1と同様の手順で、顔料の含有量が10.0%、樹脂分散剤(樹脂1)の含有量が3.0%の顔料分散液4を調製した。
(顔料分散液5)
樹脂分散剤1の水溶液を樹脂分散剤2の水溶液に変更したこと以外は、前述の顔料分散液1と同様の手順で、顔料の含有量が10.0%、樹脂分散剤(樹脂2)の含有量が3.0%の顔料分散液5を調製した。
<樹脂粒子の製造>
(樹脂粒子1)
撹拌機、還流冷却装置、及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、イオン交換水74.0部、及び過硫酸カリウム0.2部を入れて混合した。また、エチルメタクリレート24.0部、メタクリル酸1.5部、及び反応性界面活性剤0.3部を混合して乳化物を調製した。反応性界面活性剤としては、商品名「アデカリアソープER20」(ADEKA製、ノニオン性界面活性剤、エチレンオキサイド基の付加モル数:20)を用いた。窒素雰囲気下、調製した乳化物を上記の四つ口フラスコ内に1時間かけて滴下し、80℃で撹拌しながら2時間重合反応を行った。25℃まで冷却した後、イオン交換水、及び樹脂粒子の酸価と等モルの水酸化カリウムを含む水溶液を添加して、樹脂粒子(固形分)の含有量が25.0%である樹脂粒子1の水分散液を調製した。
(樹脂粒子2)
撹拌機、還流冷却装置、及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、イオン交換水81.8部、及び過硫酸カリウム0.2部を入れて混合した。また、エチルメタクリレート16.1部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート1.6部、及び上記の反応性界面活性剤0.3部を混合して乳化物を調製した。メトキシポリエチレングリコールメタクリレートとしては、商品名「ブレンマーPME1000」(日油製、エチレンオキサイド基の付加モル数:約23)を使用した。窒素雰囲気下、調製した乳化物を上記の四つ口フラスコ内に1時間かけて滴下し、80℃で撹拌しながら2時間重合反応を行った。25℃まで冷却した後、イオン交換水を添加して、樹脂粒子(固形分)の含有量が25.0%である樹脂粒子2の水分散液を調製した。
<インクの調製>
表4に示す各成分(単位:%)を混合し、十分撹拌した後、ポアサイズ3.0μmのセルロースアセテートフィルター(アドバンテック製)にて加圧ろ過を行い、各インクを調製した。「ジョンクリル690」は、BASF製の水溶性のアクリル樹脂の商品名であり、インクの調製の際には、適量のイオン交換水を添加して、樹脂の含有量が25.0%の水溶液となるように調製して用いた。「アセチレノールE60」は、川研ファインケミカル製の炭化水素系のノニオン性界面活性剤の商品名である。
Figure 2024076401000004
<記録媒体の準備>
以下の記録媒体1及び2を準備した。
・記録媒体1:商品名「スコッチカル グラフィックフィルム IJ1220-10」(3M製、材質:ポリ塩化ビニル、ブリストー法において接触開始から30msec1/2までの水の吸収量は0mL/m以上10mL/m以下の範囲内である)
・記録媒体2:商品名「キヤノン写真用紙・光沢 プロ [プラチナグレード]PT-201」(キヤノン製、ブリストー法において接触開始から30msec1/2までの水の吸収量は10mL/m超である)。
<評価>
調製した各反応液及び各インクを、それぞれカートリッジに充填し、熱エネルギーによりインクを吐出する記録ヘッドを搭載したインクジェット記録装置(商品名「imagePROGRAF PRO-2000」、キヤノン製)にセットした。この記録装置には、反応液及びインクを付与した記録媒体を乾燥させるための加熱装置を、記録媒体の搬送方向において、記録ヘッドの下流側の位置に組み込んだ。そして、加熱装置の加熱によって、記録媒体の表面温度を80℃とした。記録環境は、温度25℃、相対湿度50%とした。本実施例では、1/1200インチ×1/1200インチの単位領域に4.0ngのインクを1滴付与する条件で記録した画像を、記録デューティが100%であると定義する。表5に示す記録媒体に、表5に示す反応液及びインクを、反応液の記録デューティを40%で、インクの記録デューティを140%として重ねて付与してベタ画像を記録した。この際、反応液付与工程と、インク付与工程と、を並行して行い、ベタ画像を記録した。本発明においては、下記の各項目の評価基準で、「AA」、「A」及び「B」を許容できるレベル、「C」を許容できないレベルとした。評価結果を表5の右側に示す。
(写像性)
得られたベタ画像について、観察光源として10cm間隔で並列配置した2本の蛍光灯を用い、2m離れた距離から45度の角度で画像に対して蛍光灯の光を照射した(照明角度45度)。画像に蛍光灯の形状を投影し、画像に投影された蛍光灯の形状を45度の角度から目視で確認し(観察角度45度)、以下に示す評価基準にしたがって画像の写像性を評価した。
AA:投影された2本の蛍光灯の境目がわかり、そのエッジにはぼやけが認められなかった
A:投影された2本の蛍光灯の境目はわかったが、そのエッジにはぼやけが認められたが、エッジは判別できた
B:投影された2本の蛍光灯の境目はわかったが、そのエッジが判別できないほどぼやけていた
C:投影された2本の蛍光灯の境目がわからなかった
(画像ムラ抑制)
得られたベタ画像について、ベタ画像からの距離を30cm、40cm、及び50cmとして、目視で画像ムラの観察を行い、以下に示す評価基準にしたがって画像ムラ抑制を評価した。
AA:30cmの位置から観察しても、画像ムラが確認できなかった
A:30cmの位置から観察すると画像ムラが確認されたが、40cmの位置から観察すると画像ムラが確認されなかった
B:30cm、及び40cmの位置から観察すると画像ムラが確認されたが、50cmの位置から観察すると画像ムラが確認されなかった
C:50cmの位置から観察しても画像ムラが確認された
Figure 2024076401000005
実施例19の写像性の評価は、実施例18と同じ「B」であったが、実施例19の方が優れていた。また、参考例3として、グルタル酸の代わりに、酢酸を用いる以外は、前述の反応液17と同様の手順で調製した反応液、インク1、及び記録媒体1を用いて、上記の評価を行った。その結果、写像性及び画像ムラ抑制の評価結果は、それぞれ、「AA」及び「A」であった。しかし、前述の通り、酢酸は、臭気や揮発性があるため、吐出安定性や安全性の観点から反応剤としての使用が困難であった。
なお、本実施形態の開示は、以下の方法及び構成を含む。
(方法1)水性インク、及び、前記水性インクと反応する反応剤を含有する水性反応液を用いて記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、
前記水性反応液を前記記録媒体に付与する反応液付与工程と、
前記記録媒体の前記水性反応液が付与される領域の少なくとも一部に重なるように、前記水性インクを付与するインク付与工程と、を有し、
前記水性インクが、アニオン性基の作用によって分散される色材、及び樹脂粒子を含有し、
前記水性反応液が、多価カルボン酸、pKaが7.5以上である塩基性化合物、及び水溶性有機溶剤を含有し、
前記水性反応液中の、前記塩基性化合物の塩基性基の量(モル)が、前記多価カルボン酸のカルボン酸基の量(モル)に対するモル比率で、0.25倍以上0.75倍以下であり、
前記水溶性有機溶剤が、その比誘電率が34.0以下である第1水溶性有機溶剤を含み、
前記記録媒体のブリストー法において接触開始から30msec1/2までの水の吸収量が、10mL/m以下であることを特徴とするインクジェット記録方法。
(方法2)前記多価カルボン酸の第2酸解離定数以降のpKaの少なくとも1つが、4.7以上5.9以下である方法1に記載のインクジェット記録方法。
(方法3)前記水性反応液中の、前記塩基性化合物の塩基性基の量(モル)が、前記多価カルボン酸のカルボン酸基の量(モル)に対するモル比率で、0.50倍以上0.75倍以下である方法1又は2に記載のインクジェット記録方法。
(方法4)前記水性反応液のpHが、3.0以上である方法1乃至3のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
(方法5)前記水性反応液中の、前記塩基性化合物が、モノアミン化合物である方法1乃至4のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
(方法6)前記水性反応液中の、前記モノアミン化合物が、酸基を有しない化合物である方法5に記載のインクジェット記録方法。
(構成1)水性インク、及び、前記水性インクと反応する反応剤を含有する水性反応液を用いて記録媒体に画像を記録するために用いるインクジェット記録装置であって、
前記水性反応液を前記記録媒体に付与する反応液付与手段と、
前記記録媒体の前記水性反応液が付与される領域の少なくとも一部に重なるように、前記水性インクを付与するインク付与手段と、を備え、
前記水性インクが、アニオン性基の作用によって分散される色材、及び樹脂粒子を含有し、
前記水性反応液が、多価カルボン酸、pKaが7.5以上である塩基性化合物、及び水溶性有機溶剤を含有し、
前記水性反応液中の、前記塩基性化合物の塩基性基の量(モル)が、前記多価カルボン酸のカルボン酸基の量(モル)に対するモル比率で、0.25倍以上0.75倍以下であり、
前記水溶性有機溶剤が、その比誘電率が34.0以下である第1水溶性有機溶剤を含み、
前記記録媒体のブリストー法において接触開始から30msec1/2までの水の吸収量が、10mL/m以下であることを特徴とするインクジェット記録装置。
(構成2)水性インク、及び、前記水性インクと反応する反応剤を含有する水性反応液を用いて記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法に用いられる、水性インク及び水性反応液のセットであって、
前記インクジェット記録方法が、前記水性反応液を前記記録媒体に付与する反応液付与工程と、
前記記録媒体の前記水性反応液が付与される領域の少なくとも一部に重なるように、前記水性インクを付与するインク付与工程と、を有し、
前記水性インクが、アニオン性基の作用によって分散される色材、及び樹脂粒子を含有し、
前記水性反応液が、多価カルボン酸、pKaが7.5以上である塩基性化合物、及び水溶性有機溶剤を含有し、
前記水性反応液中の、前記塩基性化合物の塩基性基の量(モル)が、前記多価カルボン酸のカルボン酸基の量(モル)に対するモル比率で、0.25倍以上0.75倍以下であり、
前記水溶性有機溶剤が、その比誘電率が34.0以下である第1水溶性有機溶剤を含み、
前記記録媒体のブリストー法において接触開始から30msec1/2までの水の吸収量が、10mL/m以下であることを特徴とする水性インク及び水性反応液のセット。

Claims (8)

  1. 水性インク、及び、前記水性インクと反応する反応剤を含有する水性反応液を用いて記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、
    前記水性反応液を前記記録媒体に付与する反応液付与工程と、
    前記記録媒体の前記水性反応液が付与される領域の少なくとも一部に重なるように、前記水性インクを付与するインク付与工程と、を有し、
    前記水性インクが、アニオン性基の作用によって分散される色材、及び樹脂粒子を含有し、
    前記水性反応液が、多価カルボン酸、pKaが7.5以上である塩基性化合物、及び水溶性有機溶剤を含有し、
    前記水性反応液中の、前記塩基性化合物の塩基性基の量(モル)が、前記多価カルボン酸のカルボン酸基の量(モル)に対するモル比率で、0.25倍以上0.75倍以下であり、
    前記水溶性有機溶剤が、その比誘電率が34.0以下である第1水溶性有機溶剤を含み、
    前記記録媒体のブリストー法において接触開始から30msec1/2までの水の吸収量が、10mL/m以下であることを特徴とするインクジェット記録方法。
  2. 前記多価カルボン酸の第2酸解離定数以降のpKaの少なくとも1つが、4.7以上5.9以下である請求項1に記載のインクジェット記録方法。
  3. 前記水性反応液中の、前記塩基性化合物の塩基性基の量(モル)が、前記多価カルボン酸のカルボン酸基の量(モル)に対するモル比率で、0.50倍以上0.75倍以下である請求項1に記載のインクジェット記録方法。
  4. 前記水性反応液のpHが、3.0以上である請求項1に記載のインクジェット記録方法。
  5. 前記水性反応液中の、前記塩基性化合物が、モノアミン化合物である請求項1に記載のインクジェット記録方法。
  6. 前記水性反応液中の、前記モノアミン化合物が、酸基を有しない化合物である請求項5に記載のインクジェット記録方法。
  7. 水性インク、及び、前記水性インクと反応する反応剤を含有する水性反応液を用いて記録媒体に画像を記録するために用いるインクジェット記録装置であって、
    前記水性反応液を前記記録媒体に付与する反応液付与手段と、
    前記記録媒体の前記水性反応液が付与される領域の少なくとも一部に重なるように、前記水性インクを付与するインク付与手段と、を備え、
    前記水性インクが、アニオン性基の作用によって分散される色材、及び樹脂粒子を含有し、
    前記水性反応液が、多価カルボン酸、pKaが7.5以上である塩基性化合物、及び水溶性有機溶剤を含有し、
    前記水性反応液中の、前記塩基性化合物の塩基性基の量(モル)が、前記多価カルボン酸のカルボン酸基の量(モル)に対するモル比率で、0.25倍以上0.75倍以下であり、
    前記水溶性有機溶剤が、その比誘電率が34.0以下である第1水溶性有機溶剤を含み、
    前記記録媒体のブリストー法において接触開始から30msec1/2までの水の吸収量が、10mL/m以下であることを特徴とするインクジェット記録装置。
  8. 水性インク、及び、前記水性インクと反応する反応剤を含有する水性反応液を用いて記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法に用いられる、水性インク及び水性反応液のセットであって、
    前記インクジェット記録方法が、前記水性反応液を前記記録媒体に付与する反応液付与工程と、
    前記記録媒体の前記水性反応液が付与される領域の少なくとも一部に重なるように、前記水性インクを付与するインク付与工程と、を有し、
    前記水性インクが、アニオン性基の作用によって分散される色材、及び樹脂粒子を含有し、
    前記水性反応液が、多価カルボン酸、pKaが7.5以上である塩基性化合物、及び水溶性有機溶剤を含有し、
    前記水性反応液中の、前記塩基性化合物の塩基性基の量(モル)が、前記多価カルボン酸のカルボン酸基の量(モル)に対するモル比率で、0.25倍以上0.75倍以下であり、
    前記水溶性有機溶剤が、その比誘電率が34.0以下である第1水溶性有機溶剤を含み、
    前記記録媒体のブリストー法において接触開始から30msec1/2までの水の吸収量が、10mL/m以下であることを特徴とする水性インク及び水性反応液のセット。
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