JP2024012228A - 透明導電性フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】デバイス製造過程での加熱による透明導電層の抵抗値上昇を抑制するのに適した透明導電性フィルムを提供する。【解決手段】本発明の透明導電性フィルムXは、透明樹脂基材10と、結晶質の透明導電層20とを、厚さ方向Dにこの順で備える。透明導電層20は、酸化スズ割合10質量%未満のインジウムスズ複合酸化物層を含む。透明導電層20は、第1抵抗値R1(Ω/□)を有し、160℃および30分間の加熱条件での加熱処理後に第2抵抗値R2(Ω/□)を有する。第1抵抗値R1と第2抵抗値R2との差R1-R2は、1.5Ω/□以上である。【選択図】図1

Description

本発明は、透明導電性フィルムに関する。
従来、樹脂製の透明な基材フィルムと透明な導電層(透明導電層)とを厚さ方向に順に備える透明導電性フィルムが知られている。透明導電層は、例えば、液晶ディスプレイ、タッチパネル、および太陽電池などの各種デバイスにおける透明電極を形成するための導体膜として用いられる。透明導電層は、例えば、スパッタリング法で基材フィルム上に導電性酸化物を成膜することによって、形成される。このような透明導電性フィルムに関する技術については、例えば下記の特許文献1に記載されている。
特開2017-71850号公報
従来の透明導電性フィルムは、例えば、次のように製造される。まず、スパッタ成膜装置の成膜室内で、基材フィルム上に非晶質の透明導電層が形成される。次に、熱風式の加熱オーブン内で、基材フィルム上の透明導電層が加熱される。この加熱により、透明導電層が非晶質から結晶質に転化される(結晶化工程)。当該加熱の温度が高いほど、形成される結晶質透明導電層の結晶性は高く、同層の抵抗値は小さい。
結晶化工程での加熱温度が高すぎる場合、樹脂製の基材フィルムに寸法変化および変形などの不具合が生じる。そのため、結晶化工程では、そのような不具合が生じない温度(高すぎない温度)で、透明導電層を加熱する必要がある。
しかし、上述の結晶化工程で結晶化された透明導電層を有する従来の透明導電性フィルムは、同フィルムを備えるデバイスの製造過程において比較的高温の加熱プロセスを経る場合、透明導電層の抵抗値が上昇することがある。製造後の透明導電性フィルムにおける透明導電層の抵抗値上昇は、デバイスの性能に影響を与えるので好ましくない。
本発明は、デバイス製造過程での加熱による透明導電層の抵抗値上昇を抑制するのに適した透明導電性フィルムを提供する。
本発明[1]は、透明樹脂基材と、結晶質の透明導電層とを、厚さ方向にこの順で備える透明導電性フィルムであって、前記透明導電層が、酸化スズ割合10質量%未満のインジウムスズ複合酸化物層を含み、前記透明導電層が、第1抵抗値R1(Ω/□)を有し、160℃および30分間の加熱条件での加熱処理後に第2抵抗値R2(Ω/□)を有し、前記第1抵抗値R1と前記第2抵抗値R2との差R1-R2が1.5Ω/□以上である、透明導電性フィルムを含む。
本発明[2]は、前記第1抵抗値R1と前記第2抵抗値R2との差R1-R2が10Ω/□以下である、上記[1]に記載の透明導電性フィルムを含む。
本発明[3]は、前記透明導電層が前記インジウムスズ複合酸化物層からなる、上記[1]または[2]に記載の透明導電性フィルムを含む。
本発明[4]は、前記透明導電層が150nm以下の厚さを有する、上記[1]から[3]のいずれか一つに記載の透明導電性フィルムを含む。
本発明[5]は、第1抵抗値R1が220Ω/□以下である、上記[1]から[4]のいずれか一つに記載の透明導電性フィルムを含む。
本発明の透明導電性フィルムは、上記のように、結晶質の透明導電層が、酸化スズ割合10質量%未満のインジウムスズ複合酸化物(ITO)層を含み、当該透明導電層における、160℃および30分間の加熱条件での加熱処理後の第2抵抗値R2と、第1抵抗値R1(加熱処理前)との差R1-R2が、1.5Ω/□以上である。透明導電層が結晶質膜であることは、透明導電層において事後的な加熱によって抵抗値が大きく変動するのを抑制するのに適する。透明導電層が酸化スズ割合10質量%未満のITO層を含むことは、透明導電性フィルム製造過程において、加熱結晶化後の加熱による抵抗値上昇が抑制される非晶質の透明導電層を形成するのに適する。そして、本透明導電性フィルムは、加熱処理(160℃,30分間)後の第2抵抗値R2が、加熱処理前の第1抵抗値R1より、1.5Ω/□以上、下がる。このような透明導電性フィルムは、デバイス製造過程での加熱による透明導電層の抵抗値上昇を抑制するのに適する。
本発明の透明導電性フィルムの一実施形態の断面模式図である。 透明導電層が複数の層を含む場合を示す。 図1に示す透明導電性フィルムの製造方法を表す。図3Aは、樹脂フィルムを用意する工程を表し、図3Bは、樹脂フィルム上に機能層を形成する工程を表し、図3Cは、機能層上に透明導電層を形成する工程を表し、図3Dは、透明導電層を結晶化させる工程を表す。 図1に示す透明導電性フィルムにおいて、透明導電層がパターニングされた場合を表す。
本発明の透明導電性フィルムの一実施形態としての透明導電性フィルムXは、透明樹脂基材10と、透明導電層20とを、厚さ方向Dにこの順で備える。透明導電性フィルムXは、厚さ方向Dと直交する方向(面方向)に広がるシート形状を有する。透過性導電フィルムXは、タッチセンサ装置、調光素子、光電変換素子、熱線制御部材、アンテナ部材、電磁波シールド部材、ヒーター部材、照明装置、および画像表示装置などに備えられる一要素である。
透明樹脂基材10は、本実施形態では、樹脂フィルム11と機能層12とを厚さ方向Dにこの順で備える。
樹脂フィルム11は、透明導電性フィルムXの強度を確保する基材である。また、樹脂フィルム11は、可撓性を有する透明な樹脂フィルムである。樹脂フィルム11の材料としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、セルロース樹脂、およびポリスチレン樹脂が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、およびポリエチレンナフタレートが挙げられる。ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびシクロオレフィンポリマーが挙げられる。アクリル樹脂としては、例えばポリメタクリレートが挙げられる。樹脂フィルム11の材料としては、例えば透明性および強度の観点から、好ましくはポリエステル樹脂が用いられ、より好ましくはPETが用いられる。
樹脂フィルム11における機能層12側表面は、表面改質処理されていてもよい。表面改質処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、プライマー処理、グロー処理、およびカップリング剤処理が挙げられる。
樹脂フィルム11の厚さは、透明導電性フィルムXの強度を確保する観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは10μm以上、更に好ましくは30μm以上である。樹脂フィルム11の厚さは、ロールトゥロール方式における樹脂フィルム11の取り扱い性を確保する観点から、好ましくは500μm以下、より好ましくは300μm以下、更に好ましくは200μm以下、一層好ましくは100μm以下、特に好ましくは75μm以下である。
樹脂フィルム11の全光線透過率(JIS K 7375-2008)は、好ましくは60%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは85%以上である。このような構成は、タッチセンサ装置、調光素子、光電変換素子、熱線制御部材、アンテナ部材、電磁波シールド部材、ヒーター部材、照明装置、および画像表示装置などに透明導電性フィルムXが備えられる場合に当該透明導電性フィルムXに求められる透明性を確保するのに適する。樹脂フィルム11の全光線透過率は、例えば100%以下である。
機能層12は、樹脂フィルム11における厚さ方向Dの一方面側に配置されている。本実施形態では、機能層12は樹脂フィルム11に接する。また、本実施形態では、機能層12は、透明導電層20の露出表面(図1では上面)に擦り傷が形成されにくくするためのハードコート層である。
ハードコート層は、硬化性樹脂組成物の硬化物である。硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂を含有する。硬化性樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリル樹脂(アクリルウレタン樹脂を除く)、ウレタン樹脂(アクリルウレタン樹脂を除く)、アミド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、およびメラミン樹脂が挙げられる。これら硬化性樹脂は、単独で用いられてもよいし、二種類以上が併用されてもよい。ハードコート層の高硬度の確保の観点からは、硬化性樹脂としては、好ましくは、アクリルウレタン樹脂およびアクリル樹脂からなる群より選択される少なくとも一つが用いられる。
また、硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型樹脂および熱硬化型樹脂が挙げられる。高温加熱せずに硬化可能であるために透明導電性フィルムXの製造効率向上に役立つ観点から、硬化性樹脂としては、紫外線硬化型樹脂が好ましい。
硬化性樹脂組成物は、粒子を含有してもよい。粒子としては、例えば、無機酸化物粒子および有機粒子が挙げられる。無機酸化物粒子の材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化カルシウム、酸化スズ、酸化インジウム、酸化カドミウム、および酸化アンチモンが挙げられる。有機粒子の材料としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリウレタン、アクリル・スチレン共重合体、ベンゾグアナミン、メラミン、およびポリカーボネートが挙げられる。
機能層12における透明導電層20側表面は、表面改質処理されていてもよい。表面改質処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、プライマー処理、グロー処理、およびカップリング剤処理が挙げられる。
ハードコート層としての機能層12の厚さは、透明導電層20において充分な耐擦過性を発現させる観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、更に好ましくは1μm以上である。ハードコート層としての機能層12の厚さは、機能層12の透明性を確保する観点から、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下、更に好ましくは5μm以下、特に好ましくは3μm以下である。
透明樹脂基材10の厚さは、好ましくは1μm以上、より好ましくは10μm以上、更に好ましくは15μm以上、特に好ましくは30μm以上である。透明樹脂基材10の厚さは、好ましくは520μm以下、より好ましくは320μm以下、更に好ましくは220μm以下、一層好ましくは120μm以下、特に好ましくは80μm以下である。透明樹脂基材10の厚さに関するこれら構成は、透明導電性フィルムXの取り扱い性を確保するのに適する。
透明樹脂基材10の全光線透過率(JIS K 7375-2008)は、好ましくは60%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは85%以上である。このような構成は、タッチセンサ装置、調光素子、光電変換素子、熱線制御部材、アンテナ部材、電磁波シールド部材、ヒーター部材、照明装置、および画像表示装置などに透明導電性フィルムXが備えられる場合に当該透明導電性フィルムXに求められる透明性を確保するのに適する。透明樹脂基材10の全光線透過率は、例えば100%以下である。
透明導電層20は、透明樹脂基材10における厚さ方向Dの一方面側に配置されている。本実施形態では、透明導電層20は透明樹脂基材10に接する。透明導電層20は、光透過性と導電性とを兼ね備える結晶質膜である。このような透明導電層20は、例えば、導電性酸化物から形成されている。透明導電層20が結晶質膜であることは、透明導電層20において、事後的な加熱によって抵抗値が大きく変動するのを抑制するのに適する。
透明導電層(透明導電性フィルムXでは、透明樹脂基材10上の透明導電層20)が結晶質膜であることは、透過型電子顕微鏡(TEM)による透明導電層の平面視観察によって判断できる。TEMによる透明導電層の平面視観察において、非晶領域が確認されずに結晶粒が確認された場合に、当該透明導電層が結晶質膜であると判断できる。透明導電性フィルムにおける透明導電層の平面視観察用の試料の作製においては、透明導電性フィルムをウルトラミクロトームの試料ホルダに固定した後、透明導電層に対して極鋭角にミクロトームナイフを設置し、当該ナイフにより、透明導電層の露出表面と略平行となるように透明導電層を切削する。これにより、平面視観察用試料としての透明導電層試料を得ることができる。
透明導電層が結晶質膜であることは、電界放射型透過電子顕微鏡(FE-TEM)による透明導電層の断面観察によっても判断できる。FE―TEMによる透明導電層の断面観察において、非晶領域が確認されずに結晶粒が確認された場合に、当該透明導電層が結晶質膜であると判断できる。透明導電層が結晶質膜であることの、FE-TEMによる確認方法については、具体的には、実施例に関して後述するとおりである。
透明導電層が結晶質膜であることは、例えば、次の方法によっても判断できる。まず、透明導電層を、濃度5質量%の塩酸に、20℃で15分間、浸漬する。次に、透明導電層を、水洗した後、乾燥する。次に、透明導電層の露出平面(透明導電性フィルムXでは、透明導電層20における透明樹脂基材10とは反対側の表面)において、離隔距離15mmの一対の端子の間の抵抗(端子間抵抗)を測定する。この測定において、端子間抵抗が10kΩ以下である場合に、当該透明導電層が結晶質膜であると判断できる。
透明導電層20(結晶質)は、酸化スズ割合10質量%未満のインジウムスズ複合酸化物層(第1のITO層)を含む。インジウムスズ複合酸化物(ITO)は、導電性酸化物の一つである。ITO層における酸化スズ割合とは、具体的には、同層を形成するITOにおける酸化インジウム(In)および酸化スズ(SnO)の合計含有量に対する酸化スズの含有量の割合である。第1のITO層を含む透明導電層20は、後述するように、第1のITO層を含む非晶質の透明導電層20’が形成された後、当該透明導電層20’の加熱による結晶化によって形成される。透明導電層20が第1のITO層を含むことは、加熱結晶化後の加熱による抵抗値上昇が抑制される非晶質透明導電層(後記の透明導電層20’)を形成するのに適する。
第1のITO層の酸化スズ割合は、透明導電層20の耐久性を確保する観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上、一層好ましくは1.5質量%以上、特に好ましくは2質量%以上である。第1のITO層の酸化スズ割合は、後述のスパッタ成膜での非晶質透明導電層の形成のしやすさの観点、および、加熱結晶化後の加熱による透明導電層20の抵抗値上昇を抑制する観点から、好ましくは9.9質量%以下、より好ましくは9質量%以下、更に好ましくは8質量%以下、一層好ましくは6質量%以下、より一層好ましくは5質量%以下、特に好ましくは4質量%以下である。
ITOにおける酸化スズ割合は、例えば次のようにして同定できる。まず、X線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy)により、測定対象物としてのITOにおけるインジウム原子(In)とスズ原子(Sn)の存在比率を求める。ITO中のInおよびSnの各存在比率から、ITO中のInの原子数に対するSnの原子数の比率を求める。これにより、ITOにおける酸化スズ割合が得られる。また、ITOにおける酸化スズ割合は、スパッタ成膜時に用いるITOターゲットの酸化スズ(SnO)含有割合からも特定できる。
透明導電層20は、第1のITO層(酸化スズ割合10質量%未満)以外の他の層を含んでもよい。他の層は、例えば、酸化スズ割合10質量%以上のITO層(第2のITO層)、および、ITO以外の他の導電性酸化物から形成された層が、挙げられる。透明導電層20の高い透明性と良好な電気伝導性とを両立する観点から、他の層は、第2のITO層が好ましい。
第2のITO層(酸化スズ割合10質量%以上)の酸化スズ割合は、加熱結晶化後の透明導電層20の抵抗値を低減する観点から、好ましくは11質量%以上、より好ましくは12質量%以上、更に好ましくは13質量%以上である。第2のITO層の酸化スズ割合は、加熱後の透明導電層20の結晶性を確保する観点から、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。
他の導電性酸化物としては、例えば、ITO以外のインジウム含有導電性酸化物およびアンチモン含有導電性酸化物が挙げられる。当該インジウム含有導電性酸化物としては、例えば、インジウム亜鉛複合酸化物(IZO)、インジウムガリウム複合酸化物(IGO)、およびインジウムガリウム亜鉛複合酸化物(IGZO)が挙げられる。アンチモン含有導電性酸化物としては、例えば、アンチモンスズ複合酸化物(ATO)が挙げられる。
図2は、透明導電層20が、第1のITO層を含む複数の層から形成されている場合の一例として、第1層21と第2層22との2層からなる場合を例示的に示す。図2では、第1層21または第2層22が第1のITO層である。加熱結晶化後の透明導電層20の加熱による抵抗値上昇を抑制するの観点から、第2層22が第1のITO層であるのが好ましい。図2では、第1層21と第2層22との境界が仮想線によって描出されている。第1層21の組成と第2層22の組成とが有意には異ならない場合には、第1層21と第2層22との境界は、明確には判別できない。
透明導電層20の厚さは、透明導電層20の低抵抗化の観点から、好ましくは10nm以上、より好ましくは20nm以上、更に好ましくは30nm以上である。また、透明導電層20の厚さは、透明導電層20において加熱による割れを抑制する観点から、好ましくは300nm以下、より好ましくは150nm以下、更に好ましくは120nm以下、一層好ましくは100nm以下、特に好ましくは80nm以下である。
透明導電層20が第1層21および第2層22を含む場合、第1層21と第2層22との合計厚さに対する第2層22の厚さの割合は、透明導電層20の低抵抗化の観点から、好ましくは1%以上、より好ましくは5%以上、更に好ましくは7%以上である。また、第1層21と第2層22との合計厚さに対する第2層22の厚さの割合は、加熱後の透明導電層20において高い結晶性を確保する観点から、好ましくは99%以下、より好ましくは95%以下、更に好ましくは90%以下、一層好ましくは60%以下、特に好ましくは50%以下である。
透明導電層20は、第1抵抗値R1(Ω/□)を有し、160℃および30分間の加熱条件での加熱処理後に第2抵抗値R2(Ω/□)を有する。抵抗値R1,R2は、それぞれ、表面抵抗率で表される。表面抵抗率は、JIS K7194(1994年)に準拠した4端子法によって測定できる。抵抗値R1,R2の測定方法は、具体的には、実施例に関して後述するとおりである。
第1抵抗値R1と第2抵抗値R2との差R1-R2は、1.5Ω/□以上である。このような構成は、透明導電層20において、事後的な加熱によって抵抗値が上昇するのを抑制するのに適する。透明導電層20の事後的加熱による抵抗値上昇の抑制の観点から、差R1-R2は、好ましくは3Ω/□以上、より好ましくは4Ω/□以上、更に好ましくは5Ω/□以上、特に好ましくは6Ω/□以上である。また、透明導電層20の事後的加熱による抵抗値変動量の抑制の観点から、差R1-R2は、好ましくは10Ω/□以下、より好ましくは9.5Ω/□以下、更に好ましくは9Ω/□以下、特に好ましくは8Ω/□以下である。
第1抵抗値R1に対する第2抵抗値R2の比率R2/R1は、透明導電層20の事後的加熱による抵抗値上昇の抑制の観点から、好ましくは0.990以下、より好ましくは0.950以下、更に好ましくは0.900以下、特に好ましくは0.880以下である。また、透明導電層20の事後的加熱による抵抗値変動量の抑制の観点から、比率R2/R1は、好ましくは0.650以上、より好ましくは0.700以上、更に好ましくは0.800以上、一層好ましくは0.850以上、特に好ましくは0.900以上である。
第1抵抗値R1は、透明導電層20の低抵抗化の観点から、好ましくは240Ω/□以下、より好ましくは220Ω/□以下、更に好ましくは200Ω/□以下、一層好ましくは180Ω/□以下、より一層好ましくは160Ω/□以下、特に好ましくは150Ω/□以下である。第1抵抗値R1は、例えば1Ω/□以上である。第1抵抗値R1は、例えば、透明導電層20をスパッタ成膜する時の各種条件の調整によって制御できる(第2抵抗値R2についても同様である)。その条件としては、例えば、透明導電層20が成膜される下地(本実施形態では透明樹脂基材10)の温度、成膜室内への酸素導入量、成膜室内の気圧、および、ターゲット上の水平磁場強度が挙げられる。
第2抵抗値R2は、透明導電層20の低抵抗化の観点から、好ましくは240Ω/□以下、より好ましくは220Ω/□以下、更に好ましくは200Ω/□以下、一層好ましくは180Ω/□以下、より一層好ましくは160Ω/□以下、特に好ましくは150Ω/□以下である。第2抵抗値R2は、例えば1Ω/□以上である。
透明導電性フィルムXの全光線透過率(JIS K 7375-2008)は、好ましくは60%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは85%以上である。このような構成は、タッチセンサ装置、調光素子、光電変換素子、熱線制御部材、アンテナ部材、電磁波シールド部材、ヒーター部材、照明装置、および画像表示装置などに透明導電性フィルムXが備えられる場合に当該透明導電性フィルムXに求められる透明性を確保するのに適する。樹脂フィルム11の全光線透過率は、例えば100%以下である。
透明導電性フィルムXは、例えば以下のように製造される。
まず、図3Aに示すように、樹脂フィルム11を用意する。
次に、図3Bに示すように、樹脂フィルム11の厚さ方向Dの一方面上に機能層12を形成する。樹脂フィルム11上への機能層12の形成により、透明樹脂基材10が作製される。
ハードコート層としての上述の機能層12は、樹脂フィルム11上に、硬化性樹脂組成物を塗布して塗膜を形成した後、この塗膜を硬化させることによって形成できる。硬化性樹脂組成物が紫外線化型樹脂を含有する場合には、紫外線照射によって前記塗膜を硬化させる。硬化性樹脂組成物が熱硬化型樹脂を含有する場合には、加熱によって前記塗膜を硬化させる。
樹脂フィルム11上に形成された機能層12の露出表面は、必要に応じて、表面改質処理される。表面改質処理としてプラズマ処理する場合、不活性ガスとして例えばアルゴンガスを用いる。また、プラズマ処理における放電電力は、例えば10W以上であり、また、例えば5000W以下である。
次に、図3Cに示すように、透明樹脂基材10上に、非晶質の透明導電層20’を形成する(透明導電層形成工程)。具体的には、スパッタリング法により、透明樹脂基材10における機能層12上に材料を成膜して非晶質の透明導電層20’を形成する。透明導電層20’は、光透過性と導電性とを兼ね備える非晶質膜である(透明導電層20’は、後述の結晶化工程において、加熱によって結晶質の透明導電層20に転化される)。
スパッタリング法では、ロールトゥロール方式で成膜プロセスを実施できるスパッタ成膜装置を使用するのが好ましい。透明導電性フィルムXの製造において、ロールトゥロール方式のスパッタ成膜装置を使用する場合、長尺状の透明樹脂基材10を、装置が備える繰出しロールから巻取りロールまで走行させつつ、当該透明樹脂基材10上に材料を成膜して透明導電層20’を形成する。また、当該スパッタリング法では、一つの成膜室を備えるスパッタ成膜装置を使用してもよいし、透明樹脂基材10の走行経路に沿って順に配置された複数の成膜室を備えるスパッタ成膜装置を使用してもよい(上述の第1層21および第2層22を含む透明導電層20’を形成する場合には、2以上の複数の成膜室を備えるスパッタ成膜装置を使用する)。
スパッタリング法では、具体的には、スパッタ成膜装置が備える成膜室内に真空条件下でスパッタリングガス(不活性ガス)を導入しつつ、成膜室内のカソード上に配置されたターゲットにマイナスの電圧を印加する。これにより、グロー放電を発生させてガス原子をイオン化し、当該ガスイオンを高速でターゲット表面に衝突させ、ターゲット表面からターゲット材料を弾き出し、弾き出たターゲット材料を透明樹脂基材10上に堆積させる。ターゲットの材料としては、例えば、透明導電層20に関して上述した導電性酸化物の焼結体が用いられる。スパッタリングガスとしては、例えば、希ガスが挙げられる。希ガスとしては、例えば、アルゴンおよびクリプトンが挙げられる。スパッタリングガスは、複数の希ガスの混合ガスでもよい。
スパッタリング法は、好ましくは、反応性スパッタリング法である。反応性スパッタリング法では、例えば、スパッタリングガスに加えて反応性ガスとしての酸素が、成膜室内に導入される。反応性スパッタリング法において成膜室に導入されるスパッタリングガスおよび酸素の合計導入量に対する、酸素の導入量の割合は、例えば0.01流量%以上であり、また、例えば15流量%以下である。
スパッタリング法による成膜(スパッタ成膜)中の成膜室内の気圧は、例えば0.02Pa以上であり、また、例えば1Pa以下である。
スパッタ成膜中の透明樹脂基材10の温度は、例えば180℃以下である。スパッタ成膜中の透明樹脂基材10の温度は、スパッタ成膜中に透明樹脂基材10からのアウトガスを抑制して非晶質の透明導電層20’を適切に形成する観点から、好ましくは20℃以下、より好ましくは10℃以下、更に好ましくは5℃以下、一層好ましくは0℃以下、特に好ましくは-5℃以下である。同温度は、例えば、-50℃以上、-20℃以上または-10℃以上である。
ターゲットに対する電圧印加のための電源としては、例えば、DC電源、AC電源、MF電源、およびRF電源が挙げられる。電源としては、DC電源とRF電源とを併用してもよい。スパッタ成膜中の放電電圧の絶対値は、例えば50V以上であり、また、例えば500V以下である。
本製造方法では、次に、図3Dに示すように、真空下での加熱により、非晶質の透明導電層20’を結晶質の透明導電層20へと転化させる(結晶化工程)。本工程では、接触加熱ユニットを備える真空加熱装置を使用する。接触加熱ユニットとしては、例えば、加熱ロールおよび加熱ブロックが挙げられる。ロールトゥロール方式で結晶化工程を実施するためには、加熱ロールを備えた真空加熱装置が好ましい。すなわち、本工程では、透明樹脂基材10上の透明導電層20’を、真空加熱装置内の加熱ロールに接触させて加熱するのが好ましい。加熱ロールによる接触加熱は、真空下において透明導電層20’を効率よく結晶化するのに適する。
本工程において、加熱温度は、高い結晶化速度を確保する観点からは、好ましくは120℃以上、より好ましくは140℃以上、更に好ましくは160℃以上である。加熱温度は、透明樹脂基材10への加熱の影響を抑制する観点から、好ましくは200℃未満、より好ましくは180℃以下、更に好ましくは170℃以下である。加熱時間は、透明導電層20の十分な結晶化の観点から、好ましくは10秒以上、好ましくは30秒以上、更に好ましくは45秒以上である。加熱時間は、本工程におけるタクト時間の短縮の観点から、好ましくは60分以下、より好ましくは30分以下、更に好ましくは10分以下、特に好ましくは5分以下である。
好ましくは、上述の透明導電層形成工程から結晶化工程までの一連のプロセスを、ロールトゥロール方式でワークフィルムを走行させながら一つの連続ラインで実施する。より好ましくは、一つの連続ラインでのプロセス中、ワークフィルムは一度も大気中に出されない。
以上のようにして、透明導電性フィルムXが製造される。
透明導電性フィルムXにおける透明導電層20は、図4に模式的に示すように、パターニングされてもよい。所定のエッチングマスクを介して透明導電層20をエッチング処理することにより、透明導電層20をパターニングできる。透明導電層20のパターニングは、上述の結晶化工程より前に実施されてもよいし、結晶化工程より後に実施されてもよい。パターニングされた透明導電層20は、例えば、配線パターンとして機能する。
透明導電性フィルムXは、上述のように、結晶質の透明導電層20が、酸化スズ割合10質量%未満のインジウムスズ複合酸化物層を含み、当該透明導電層20における、160℃および30分間の加熱条件での加熱処理後の第2抵抗値R2と、第1抵抗値R1(加熱処理前)との差R1-R2が、1.5Ω/□以上であり、好ましくは3Ω/□以上、より好ましくは4Ω/□以上、更に好ましくは5Ω/□以上、特に好ましくは6Ω/□以上である。透明導電層20が結晶質膜であることは、上述のように、透明導電層20において事後的な加熱によって抵抗値が大きく変動するのを抑制するのに適する。透明導電層20が第1のITO層(酸化スズ割合10質量%未満)を含むことは、上述のように、加熱結晶化後の加熱による抵抗値上昇が抑制される非晶質の透明導電層20’を形成するのに適する。そして、透明導電性フィルムXは、加熱処理(160℃,30分間)後の第2抵抗値R2が、加熱処理前の第1抵抗値R1より、1.5Ω/□以上、下がる。以上のような透明導電性フィルムXは、デバイス製造過程での加熱による透明導電層20の抵抗値上昇を抑制するのに適する。
透明導電性フィルムXにおいて、機能層12は、透明樹脂基材10に対する透明導電層20の高い密着性を実現するための密着性向上層であってもよい。機能層12が密着性向上層である構成は、透明樹脂基材10と透明導電層20との間の密着力を確保するのに適する。
機能層12は、透明樹脂基材10の表面(厚さ方向Dの一方面)の反射率を調整するための屈折率調整層(index-matching layer)であってもよい。機能層12が屈折率調整層である構成は、透明樹脂基材10上の透明導電層20がパターニングされている場合に、当該透明導電層20のパターン形状を視認されにくくするのに適する。
機能層12は、透明樹脂基材10から透明導電層20を実用的に剥離可能にするための剥離機能層であってもよい。機能層12が剥離機能層である構成は、透明樹脂基材10から透明導電層20を剥離して、当該透明導電層20を他の部材に転写するのに適する。
機能層12は、複数の層が厚さ方向Dに連なる複合層であってもよい。複合層は、好ましくは、ハードコート層、密着性向上層、屈折率調整層、および剥離機能層からなる群より選択される2以上の層を含む。このような構成は、選択される各層の上述の機能を、機能層12において複合的に発現するのに適する。好ましい一形態では、機能層12は、樹脂フィルム11上において、密着性向上層と、ハードコート層と、屈折率調整層とを、厚さ方向Dの一方側に向かってこの順で備える。好ましい他の形態では、機能層12は、樹脂フィルム11上において、剥離機能層と、ハードコート層と、屈折率調整層とを、厚さ方向Dの一方側に向かってこの順で備える。
透明導電性フィルムXは、物品に対して固定され、且つ必要に応じて透明導電層20がパターニングされた状態で、利用される。透明導電性フィルムXは、例えば、固着機能層を介して、物品に対して貼り合わされる。
物品としては、例えば、素子、部材、および装置が挙げられる。すなわち、透明導電性フィルム付き物品としては、例えば、透明導電性フィルム付き素子、透明導電性フィルム付き部材、および透明導電性フィルム付き装置が挙げられる。
素子としては、例えば、調光素子および光電変換素子が挙げられる。調光素子としては、例えば、電流駆動型調光素子および電界駆動型調光素子が挙げられる。電流駆動型調光素子としては、例えば、エレクトロクロミック(EC)調光素子が挙げられる。電界駆動型調光素子としては、例えば、PDLC(polymer dispersed liquid crystal)調光素子、PNLC(polymer network liquid crystal)調光素子、および、SPD(suspended particle device)調光素子が挙げられる。光電変換素子としては、例えば太陽電池などが挙げられる。太陽電池としては、例えば、有機薄膜太陽電池および色素増感太陽電池が挙げられる。部材としては、例えば、電磁波シールド部材、熱線制御部材、ヒーター部材、およびアンテナ部材が挙げられる。装置としては、例えば、タッチセンサ装置、照明装置、および画像表示装置が挙げられる。
上述の固着機能層としては、例えば、粘着層および接着層が挙げられる。固着機能層の材料としては、透明性を有し且つ固着機能を発揮する材料であれば、特に制限なく用いられる。固着機能層は、好ましくは、樹脂から形成されている。樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、天然ゴム、および合成ゴムが挙げられる。凝集性、接着性、適度な濡れ性などの粘着特性を示すこと、透明性に優れること、並びに、耐候性および耐熱性に優れることから、前記樹脂としては、アクリル樹脂が好ましい。
固着機能層(固着機能層を形成する樹脂)には、透明導電層20の腐食抑制のために、腐食防止剤を配合してもよい。固着機能層(固着機能層を形成する樹脂)には、透明導電層20のマイグレーション抑制のために、マイグレーション防止剤(例えば、特開2015-022397号に開示の材料)を配合してもよい。また、固着機能層(固着機能層を形成する樹脂)には、物品の屋外使用時の劣化を抑制するために、紫外線吸収剤を配合してもよい。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、サリチル酸化合物、シュウ酸アニリド化合物、シアノアクリレート化合物、および、トリアジン化合物が挙げられる。
また、透明導電性フィルムXの透明基材10を、物品に対して固着機能層を介して固定した場合、透明導電性フィルムXにおいて透明導電層20(パターニング後の透明導電層20を含む)は露出する。このような場合、透明導電層20の当該露出面にカバー層を配置してもよい。カバー層は、透明導電層20を被覆する層であり、透明導電層20の信頼性を向上させ、また、透明導電層20の受傷による機能劣化を抑制できる。そのようなカバー層は、好ましくは、誘電体材料から形成されており、より好ましくは、樹脂と無機材料との複合材料から形成されている。樹脂としては、例えば、固着機能層に関して上記した樹脂が挙げられる。無機材料としては、例えば、無機酸化物およびフッ化物が挙げられる。無機酸化物としては、例えば、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウム、および酸化カルシウムが挙げられる。フッ化物としては、例えばフッ化マグネシウムが挙げられる。また、カバー層(樹脂および無機材料の混合物)には、上記の腐食防止剤、マイグレーション防止剤、および紫外線吸収剤を配合してもよい。
本発明について、以下に実施例を示して具体的に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。また、以下に記載されている配合量(含有量)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上述の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合量(含有量)、物性値、パラメータなどの上限(「以下」または「未満」として定義されている数値)または下限(「以上」または「超える」として定義されている数値)に代替できる。
〔実施例1〕
透明な樹脂フィルムとしての長尺のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ50μm,東レ社製)の一方の面に、アクリル樹脂を含有する紫外線硬化性樹脂を塗布して塗膜を形成した。次に、紫外線照射によって当該塗膜を硬化させてハードコート層(厚さ2μm)を形成した。このようにして、樹脂フィルムと、機能層としてのハードコート(HC)層とを備える透明樹脂基材を作製した。
次に、反応性スパッタリング法により、透明樹脂基材におけるHC層上に、非晶質の透明導電層を形成した(透明導電層形成工程)。本工程では、ロールトゥロール方式のスパッタ成膜装置(DCマグネトロンスパッタ成膜装置)を使用した。同装置は、ロールトゥロール方式でワークフィルムを走行させつつ成膜プロセスを実施できる第1成膜室および第2成膜室を備える。本工程では、具体的には、第1成膜室での第1スパッタ成膜と、第2成膜室での第2スパッタ成膜とを、順次に実施した。第1スパッタ成膜では、透明樹脂基材上に第1層(厚さ11nm)を形成した。続く第2スパッタ成膜では、第1層上に第2層(厚さ11nm)を形成した。本実施例における各スパッタ成膜の条件は、次のとおりである。
第1スパッタ成膜においては、第1成膜室内の到達真空度が0.9×10-4Paに至るまでスパッタ成膜装置(第1成膜室,第2成膜室)内を真空排気した後、第1成膜室内に、スパッタリングガスとしてのアルゴンと、反応性ガスとしての酸素とを導入し、第1成膜室内の気圧を0.4Paとした。第1成膜室に導入されるアルゴンおよび酸素の合計導入量に対する酸素導入量の割合は約1.8流量%とした。また、ターゲットとしては、酸化インジウムと酸化スズとの第1焼結体(酸化スズ濃度が3質量%)を用いた。ターゲットに対する電圧印加のための電源としては、DC電源を用いた。ターゲット上の水平磁場強度は90mTとした。成膜温度(透明導電層が積層される透明樹脂基材の温度)は-5℃とした。
第2スパッタ成膜においては、スパッタ成膜装置の真空排気の後、第2成膜室内に、スパッタリングガスとしてのアルゴンと、反応性ガスとしての酸素とを導入し、第2成膜室内の気圧を0.4Paとした。第2成膜室に導入されるアルゴンおよび酸素の合計導入量に対する酸素導入量の割合は約1.9流量%とした。また、ターゲットとしては、酸化インジウムと酸化スズとの第1焼結体(酸化スズ濃度が3質量%)を用いた。ターゲットに対する電圧印加のための電源としては、DC電源を用いた。ターゲット上の水平磁場強度は90mTとした。成膜温度は-5℃とした。
次に、透明樹脂基材上の透明導電層を、真空加熱装置内で加熱ロールに接触させて加熱し、結晶化させた(結晶化工程)。本工程において、加熱温度は160℃とし、加熱時間は1分間とし、透明導電層は真空下で加熱結晶化された。
上述の透明導電層形成工程から結晶化工程までの一連のプロセスは、ロールトゥロール方式でワークフィルムを走行させながら一つの連続ラインで実施した。このプロセス中、ワークフィルムは一度も大気中に出されていない。
以上のようにして、実施例1の透明導電性フィルムを作製した。実施例1の透明導電性フィルムの透明導電層は、ITO膜(酸化スズ濃度3質量%)からなり、結晶質である。
〔実施例2〕
次のこと以外は、実施例1の透明導電性フィルムと同様にして、実施例2の透明導電性フィルムを作製した。透明導電層形成工程の第1スパッタ成膜において、酸化インジウムと酸化スズとの第2焼結体(酸化スズ濃度が10質量%)をターゲットとして用い、厚さ125nmの非晶質の第2層を形成した。
実施例2の透明導電性フィルムの透明導電層(厚さ136nm)は、ITOの第1層(酸化スズ割合10質量%,厚さ125nm)と、ITOの第2層(酸化スズ割合3質量%,厚さ11nm)とを、透明樹脂基材側から順に有し、結晶質である(透明導電層の厚さに対し、第1層の厚さの割合は92%であり、第2層の厚さの割合は8%である)。
〔比較例1〕
次のこと以外は、実施例1の透明導電性フィルムと同様にして、比較例1の透明導電性フィルムを作製した。結晶化工程において、熱風式の加熱オーブン内で、透明樹脂基材上の透明導電層を加熱した。加熱温度は160℃とし、加熱時間は1時間とした。本工程では、透明導電層は大気下で加熱結晶化された。
〔比較例2〕
次のこと以外は、実施例2の透明導電性フィルムと同様にして、比較例2の透明導電性フィルムを作製した。結晶化工程において、熱風式の加熱オーブン内で、透明樹脂基材上の透明導電層を加熱した。加熱温度は160℃とし、加熱時間は1時間とした。本工程では、透明導電層は大気下で加熱結晶化された。
〔比較例3〕
次のこと以外は、実施例1の透明導電性フィルムと同様にして、比較例3の透明導電性フィルムを作製した。透明導電層形成工程において、第1および第2スパッタ成膜での各ターゲットとして第2焼結体(酸化スズ濃度が10質量%)を用いて、厚さ22nmの透明導電層を形成した。
〔比較例4〕
次のこと以外は、実施例2の透明導電性フィルムと同様にして、比較例4の透明導電性フィルムを作製した。透明導電層形成工程において、第1および第2スパッタ成膜での各ターゲットとして第2焼結体(酸化スズ濃度が10質量%)を用いて、厚さ136nmの透明導電層を形成した。
〈透明導電層の厚さ〉
実施例1,2および比較例1~4における各透明導電性フィルムの透明導電層の厚さを、電界放射型透過電子顕微鏡(FE-TEM)での観察により測定した。具体的には、まず、FIBマイクロサンプリング法により、実施例1,2および比較例1~4における各透明導電層の断面観察用サンプルを作製した。FIBマイクロサンプリング法では、FIB装置(品名「FB2200」,Hitachi製)を使用し、加速電圧を10kVとした。次に、断面観察用サンプルにおける透明導電層の断面をFE-TEMによって観察し、当該観察画像において透明導電層の厚さを測定した。同観察では、FE-TEM装置(品名「JEM-2800」,JEOL製)を使用し、加速電圧を200kVとした。
実施例2および比較例2における透明導電層の第1層の厚さは、当該第1層の上に第2層を形成する前の中間作製物から断面観察用サンプルを作製し、当該サンプルのFE-TEM観察により測定した。実施例2および比較例2における各透明導電層の第2層の厚さは、実施例2および比較例2における各透明導電層の総厚から第1層の厚さを差し引いて求めた。
〈結晶性〉
実施例1,2および比較例1~4における各透明導電層について、FE-TEMによる断面観察によって結晶性を調べた。具体的には、まず、FIBマイクロサンプリング法により、実施例1,2および比較例1~4における各透明導電層の断面観察用サンプルを作製した。FIBマイクロサンプリング法では、FIB装置(品名「FB2200」,Hitachi製)を使用し、加速電圧を10kVとした。次に、FE-TEM装置(品名「JEM-2800」,JEOL製)により、断面観察用サンプルにおける透明導電層の断面を、結晶粒が明瞭に確認できる倍率で撮影した(加速電圧は200kVとした)。実施例1,2および比較例1,2における各透明導電層では、同層の面方向および厚さ方向の全領域にわたって結晶粒が成長していることが、確認された(面方向・厚さ方向の全域で結晶質であることを確認した)。これに対し、比較例3,4における各透明導電層では、同層の面方向および厚さ方向において結晶粒が成長していない領域があることが、確認された(面方向・厚さ方向の全域で結晶質であることは、確認されなかった)。これらの結果から、実施例1,2および比較例1,2の各透明導電層の結晶性については“良”と評価し、比較例3,4の各透明導電層の結晶性については“不良”と評価した。評価結果を表1に示す。
〈加熱による抵抗変化〉
実施例1,2および比較例1~4の各透明導電性フィルムについて、事後的加熱による抵抗値の変化を調べた。具体的には、次のとおりである。
まず、JIS K 7194(1994年)に準拠した四端子法により、透明導電性フィルムの透明導電層の第1抵抗値R1(加熱処理前の表面抵抗率)を測定した。次に、熱風式の加熱オーブン内で、透明導電性フィルムを加熱処理した。加熱処理において、加熱温度は160℃とし、加熱時間は30分間とした。次に、JIS K 7194(1994年)に準拠した四端子法により、透明導電性フィルムの透明導電層の第2抵抗値R2(加熱処理後の表面抵抗率)を測定した。そして、第1抵抗値R1と第2抵抗値R2との差R1-R2を求めた。その値を表1に示す。また、第1抵抗値R1に対する第2抵抗値R2の比率(R2/R1)も表1に示す。
Figure 2024012228000002
X 透明導電性フィルム
D 厚さ方向
10 透明樹脂基材
11 樹脂フィルム
12 機能層
20 透明導電層
21 第1層
22 第2層

Claims (5)

  1. 透明樹脂基材と、結晶質の透明導電層とを、厚さ方向にこの順で備える透明導電性フィルムであって、
    前記透明導電層が、酸化スズ割合10質量%未満のインジウムスズ複合酸化物層を含み、
    前記透明導電層が、第1抵抗値R1(Ω/□)を有し、160℃および30分間の加熱条件での加熱処理後に第2抵抗値R2(Ω/□)を有し、
    前記第1抵抗値R1と前記第2抵抗値R2との差R1-R2が1.5Ω/□以上である、透明導電性フィルム。
  2. 前記第1抵抗値R1と前記第2抵抗値R2との差R1-R2が10Ω/□以下である、請求項1に記載の透明導電性フィルム。
  3. 前記透明導電層が前記インジウムスズ複合酸化物層からなる、請求項1に記載の透明導電性フィルム。
  4. 前記透明導電層が150nm以下の厚さを有する、請求項1から3のいずれか一つに記載の透明導電性フィルム。
  5. 第1抵抗値R1が220Ω/□以下である、請求項1から3のいずれか一つに記載の透明導電性フィルム。
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