JP2023057244A - ラジアルタイヤ - Google Patents
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Abstract
【課題】レゾルシンおよびホルマリンを含まず、環境負荷低減に有利な新規の接着処理剤からなるポリエステル繊維タイヤコードをカーカスプライに用いたラジアルタイヤであって、繊維とゴムの接着性が優れ、従来RFLによるタイヤコード同等以上の高速耐久性能を有するラジアルタイヤを提供する。【解決手段】タイヤのトレッド内側に、ポリエステル繊維タイヤコードからなるカーカスプライを配置したラジアルタイヤであって、該ポリエステル繊維タイヤコードが、少なくともリグニン(A)とブロックドイソシアネート化合物(B)とゴムラテックス(C)が含まれてなる接着処理剤によってポリエステル繊維が処理されたものであることを特徴とするラジアルタイヤ。【選択図】なし
Description
本発明は、カーカスプライコードにより補強されたラジアルタイヤに関するものである。
ラジアルタイヤにおいて、カーカスプライは補強繊維とゴムから成り、補強繊維としては一般的に、レーヨン繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、芳香族ポリアミド繊維等の合成繊維が広く使用されている。中でも、強度、弾性率、価格の面からポリエステル繊維が広く一般に使用されている。ポリエステル繊維と、ゴム組成物とを接着させる手段として、レゾルシン、ホルマリンおよびゴムラテックスを含むRFL(レゾルシン・ホルマリン・ラテックス)接着剤が従来から広く使用されている。しかし、レゾルシンとホルマリンはいずれも劇物であり、環境負荷が高く、健康への有害性から、近年、使用時の大気中への放出の抑制や、使用量の削減が求められている。これに対しレゾルシンおよびホルマリンを含まず、接着性および環境、特に作業環境の良好な合成繊維コード用接着剤組成物、それを用いたゴム補強材が、例えば以下の特許文献1~4のように提案されている。
特許文献1には、熱解離性ブロックドイソシアネート基を有するウレタン樹脂、エポキシ化合物、オキサゾリン基を有する高分子、数平均分子量1000~75000の塩基性触媒及びゴムラテックスを含む有機繊維コード用接着剤組成物について開示されている。
特許文献2には、ポリカルボン酸、塩基、エポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物、VPラテックスを含む浴に織物強化部材を浸漬する加工方法について開示されている。
特許文献3には、特定の官能基を有する熱硬化性樹脂と不飽和エラストマーラテックスを含む水性接着剤組成物について開示されている。
特許文献4には、ポリフェノール類、クロルフェノール樹脂及びリグニン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の成分、及び前記成分以外の水溶性ポリマー又は前記成分以外の水分散性ポリマーから選択される少なくとも1種の成分を含む有機繊維用接着剤について開示されている。
しかしながら、特許文献1によると初期接着力と耐熱接着力は従来RFL並みに発現するが、ゴム中での耐疲労性が充分でないものであった。特許文献2、3および4によると初期接着力は従来RFL並みに発現するが、耐熱接着力およびゴム中での耐疲労性が充分でないものであった。また、特許文献1~4とも、ポリエステル繊維タイヤコードとして充分な強度や耐久性を発現するものではなかった。
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果なされたものである。
本発明の目的は、レゾルシンおよびホルマリンを含まず、環境負荷低減に有利な新規の接着処理剤からなるポリエステル繊維タイヤコードをカーカスプライに用いたラジアルタイヤであって、繊維とゴムの接着性が優れ、従来RFLによるタイヤコード同等以上の高速耐久性能を有するラジアルタイヤを提供することにある。
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。
すなわち、(1)タイヤのトレッド内側に、ポリエステル繊維タイヤコードからなるカーカスプライを配置したラジアルタイヤであって、該ポリエステル繊維タイヤコードが、少なくともリグニン(A)とブロックドイソシアネート化合物(B)とゴムラテックス(C)が含まれてなる接着処理剤によってポリエステル繊維が処理されたものであることを特徴とするラジアルタイヤ。
(2)前記接着処理剤の乾燥皮膜の最大点強度が0.2MPa~1.6MPaであり、かつ最大点伸度が2%~120%であることを特徴とする上記(1)に記載のラジアルタイヤ。
(3)前記接着処理剤の、リグニン(A)とブロックドイソシアネート化合物(B)の固形分重量比が、(Aの固形分):(Bの固形分)=10:1~10:30であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載のラジアルタイヤ。
(4)前記接着処理剤の、リグニン(A)とブロックドイソシアネート化合物(B)とゴムラテックス(C)の固形分重量比が、((Aの固形分)+(Bの固形分)):(Cの固形分)=10:90~60:40であることを特徴とする上記(1)~(3)のいずれかに記載のラジアルタイヤ。
(5)前記ポリエステル繊維タイヤコードが、前記接着処理剤で処理される前に、プレコート剤で処理されたものであり、プレコート剤が、エポキシ化合物とブロックドイソシアネート化合物(固形分重量比10:0~10:30)を少なくとも含むものであることを特徴とする上記(1)~(4)のいずれかに記載のラジアルタイヤ。
(6)前記ポリエステル繊維タイヤコードの、コードに付着した樹脂単位当たりのガーレーコード硬さが30~80mN/%以下、加熱後のガーレーコード硬さ変化率が90%~130%であることを特徴とする上記(1)~(5)のいずれかに記載のラジアルタイヤ。
本発明によれば、レゾルシンおよびホルマリンを含まず、環境負荷低減に有利な新規の接着処理剤によって処理されたポリエステル繊維タイヤコードをカーカスプライに用いたラジアルタイヤが得られ、繊維とゴムの接着性が優れ、従来RFLによるタイヤコード同等以上の高速耐久性能を有するラジアルタイヤが得られる。
以下に、本発明について詳述する。
本発明のラジアルタイヤは、ポリエステル繊維が少なくともリグニン(A)とブロックドイソシアネート化合物(B)とゴムラテックス(C)が含まれてなる接着処理剤によって処理されたポリエステル繊維タイヤコードからなるカーカスプライが、トレッド内側に配置されたものである。
本発明で用いるポリエステル繊維は、テレフタル酸を主たる二官能カルボン酸とし、エチレングリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルを溶融紡糸延伸してなる繊維であることが望ましいが、テレフタル酸を一部あるいは全部2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4-ジカルボキシフェノキシエタン、イソシアネート基などに置き換えたもの、またエチレングリコールを一部あるいは全部ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールなどに置き換えたポリエステルからなる繊維であっても使用することができる。
また、上記ポリエステルは、少量であれば、トリメシン酸、トリメリット酸、ほう酸、りん酸、グリセリン、およびトリメチロールプロパンなどの三官能化合物を共重合したものであってもよい。
本発明で用いるポリエステル繊維は、タイヤコードとして求められる高強度、高タフネス、高弾性率、低収縮、高耐疲労性等の優れた機械的特性を有し、かつゴム中で高温に長時間曝されても接着劣化や強度劣化を抑制するため、以下の特性を有することが好ましい。
(1)固有粘度(IV)=0.7~1.2、より好ましくは0.8~1.1
(2)カルボキシル末端基(COOH)=10~30eq/t、より好ましくは12~25eq/t
(3)ジエチレングリコール(DEG)の含有量=0.5~1.5重量%、好ましくは0.5~1.2重量%
(4)強度(T)=6.0~10.0cN/dtex、より好ましくは7.0~9.0cN/dtex
(5)伸度(E)=8~20%、より好ましくは10~16%
(6)中間伸度(ME)=4.0~6.5%、より好ましくは4.5~6.0%
(7)乾熱収縮率(ΔS150℃)=2.0~12.0%、より好ましくは3.0~10.0%。
(1)固有粘度(IV)=0.7~1.2、より好ましくは0.8~1.1
(2)カルボキシル末端基(COOH)=10~30eq/t、より好ましくは12~25eq/t
(3)ジエチレングリコール(DEG)の含有量=0.5~1.5重量%、好ましくは0.5~1.2重量%
(4)強度(T)=6.0~10.0cN/dtex、より好ましくは7.0~9.0cN/dtex
(5)伸度(E)=8~20%、より好ましくは10~16%
(6)中間伸度(ME)=4.0~6.5%、より好ましくは4.5~6.0%
(7)乾熱収縮率(ΔS150℃)=2.0~12.0%、より好ましくは3.0~10.0%。
ポリエステル繊維がタイヤ中での化学的耐久性を有するためには、粘度が高く、カルボキシル末端基が少なく、ジエチレングリコールが少ないことが有利である。本発明で用いるポリエステル繊維は、カルボキシ末端基を少なくするため、例えばカルボジイミド化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物およびオキサゾリン化合物などの末端カルボキシル基封鎖剤を用いて改質されていてもよい。
また、あらかじめ製糸工程においてポリエポキシド化合物が付与されたポリエステル繊維であってもよい。本発明で使用することのできるポリエポキシド化合物は、一分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を、該化合物100gあたり0.1g当量以上含有する化合物を挙げることができる。具体的には、ペンタエリスリトール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、ソルビトールなどの多価アルコール類とエピクロルヒドリンの如きハロゲン含有エポキシド類との反応生成物、過酸化または過酸化水素などで不飽和化合物を酸化して得られるポリエポキシド化合物、すなわち、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキセンカルボキリレート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチル-シクロヘキシルメチル)アジペート、フェノールノボラック型、ハイドロキノン型、ビフェニル型、ビスフェノールS型、臭素化ノボラック型、キシレン変性ノボラック型、フェノールグリオキザール型、トリスオキシフェニルメタン型、トリスフェノールPA型、ビスフェノール型のポリエポキシド等の芳香族ポリエポキシド等が挙げられる。特に好ましいのは、ソルビトールグリシジルエーテル型やクレゾールノボラック型のポリエポキシドである。
これらの化合物は、通常は乳化液として使用されるが、乳化液、又は溶液にするには、該化合物をそのままか、もしくは必要に応じて少量の溶媒に溶解したものを公知の乳化剤、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ、ジオクチルスルホサクシネートナトリウム塩、ノニルフェノールエチレンオキサイド付加物等を用いて乳化、又は溶解して用いる。
該ポリエポキシド化合物は、ポリエステル繊維の製糸工程において紡糸油剤と共に付与される。この際の該ポリエポキシド化合物の付着量は、0.1~5重量%の範囲である。該ポリエポキシド化合物の付着量が0.1重量%未満では、ポリエポキシド化合物の効果が十分に発揮されず、ポリエステル繊維とゴムとの間で満足できる接着性が得られないおそれがある。一方、該ポリエポキシド化合物の付着量が5重量%を超えると繊維が非常に硬くなり、製糸工程において付与することが困難であるだけでなく、次工程以降で処理する処理剤の浸透性が低下する結果、接着性能が低下するので好ましくない。
本発明で用いるポリエステル繊維は、繊度、フィラメント数、断面形状等の制約を受けないが、通常、総繊度200~5000dtex、30~1000フィラメント、円断面糸が用いられ、総繊度250~3000dtex、50~500フィラメント、円断面糸が好ましい。総繊度200dtex未満であるとコードの強度が不足する恐れがあり、5000dtexを超えるとコードが太くなり、取り扱い性が低下することがある。また、30フィラメント未満であるとコードが硬くなり、取り扱い性が悪化することがあり、500フィラメントを超えると毛羽が多くなり品質が低下することがある。
本発明に用いるポリエステル繊維タイヤコードは、上記ポリエステル繊維を撚糸して撚糸コードとし、撚糸コードそのまま、または生簾反に製織した後に接着剤処理して得られる。通常のカーカス用タイヤコードに用いる生コードは、SまたはZ方向に下撚りした後、2本または3本の下撚りコードを合わせて下撚りと反対方向に通常同数の上撚りをかけ諸撚りコードとしたものである。この撚りコードを接着剤処理してディップコードが得られる。他方、撚糸コードを経糸とし、緯糸に綿糸、または合成繊維に綿糸をカバリングして緯糸とし、生簾反に製織した後、該生簾反を接着剤処理してディップ反が得られる。
本発明の接着処理剤が付着、熱処理されたポリエステル繊維タイヤコードとは、上記ディップコードおよびディップ反の両者を指す。
本発明に用いるポリエステル繊維タイヤコードとは、ポリエステル繊維が、少なくともリグニン(A)とブロックドイソシアネート化合物(B)とゴムラテックス(C)が含まれてなる接着処理剤によって処理されてなるものである。なお、「処理された」とは、接着処理剤をポリエステル繊維に付与後、乾燥処理や加熱処理を行った後の接着処理剤の状態を意味する。乾燥処理や加熱処理では、例えば、接着処理剤に含まれる揮発分、例えば水などの溶媒が留去され、またブロックドイソシアネートのブロック剤が外れてイソシアネート基による反応が生じる。すなわち、接着処理剤で処理されたポリエステル繊維は、接着処理剤中の固形分が化学的に変性または変性されないでポリエステル繊維に付着または接合した状態となっている。なお、本発明に用いる接着処理剤は、少なくともリグニン(A)とブロックドイソシアネート化合物(B)とゴムラテックス(C)が含まれてなる接着処理剤を同浴中(1浴)に含んでなるものである。
本発明で使用するリグニン(A)とは、樹木中に存在する芳香族ポリマーで、フェニルプロパン骨格を基本構造として有する天然高分子化合物として知られている。リグニン(A)は天然で産生される状態のほか、リグニンが化学的に処理された状態のものを含む。そのようなものには、例えば、木材を原料とする製紙産業工程において、例えばクラフトパルプ廃液から得られるクラフトリグニン、亜硫酸パルプ廃液から得られるリグニンスルホン酸などが挙げられる。リグニンスルホン酸は、リグニンのフェニルプロパン構造の側鎖にスルホン基が導入されたもので、リグニンスルホン酸塩として、例えばリグニンスルホン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸マグネシウム、リグニンスルホン酸カルシウムなどが挙げられる。本発明では、これらを単独、又は併用して使用することが出来るが、中でも接着力の観点からリグニンスルホン酸ナトリウムが最も好ましく使用できる。
本発明で使用するブロックドイソシアネート化合物(B)とは、加熱によりブロック剤が遊離して活性なイソシアネート化合物を生成できる化合物であり、具体的にはトリレンジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチリンジイソシアネート、トリフェニールメタントリイソシアネートなどのポリイソシアネート化合物とフェノール、クレゾール、レゾルシンなどのフェノール類、ε-カプロラクタム、バレロラクタムなどのラクタム類、アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサンオキシムなどのオキシム類などのブロック化剤との反応生成物が挙げられる。
これらのブロックドポリイソシアネート化合物の中では、特に、ジフェニルメタンジイソシアネートが、ε-カプロラクタムまたはメチルエチルケトオキシムでブロックされてなる芳香族ポリイソシアネート化合物が良好な結果を与える。
ブロックドイソシアネート化合物(B)は、ブロック剤の解離温度が100~160℃であることが、接着力向上の観点から好ましい。
本発明に使用できるゴムラテックス(C)は、例えば、天然ゴムラテックス、ブタジエンゴムラテックス、スチレン・ブタジエン・ゴムラテックス、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンゴムラテックス、ニトリルゴムラテックス、水素化ニトリルゴムラテックス、クロロプレンゴムラテックス、クロロスルホン化ゴムラテックス、エチレン・プロピレン・ジエンゴムラテックス等が挙げられ、これらを単独、又は併用して使用することが出来る。
また、本発明に使用できる接着処理剤には、上記(A)、(B)および(C)以外に、本発明の目的、効果を妨げない範囲内において、必要に応じて界面活性剤、消泡剤、加硫調整剤、酸化防止剤、pH調整剤を添加しても良い。
本発明に使用する接着処理剤は、少なくともリグニン(A)とブロックドイソシアネート化合物(B)とゴムラテックス(C)が含まれ、同浴中で付与(塗膜)するものであり、該接着処理剤の乾燥皮膜の最大点強度が0.2MPa~1.6MPaであり、かつ最大点伸度が2%~120%であることが好ましい。乾燥皮膜の最大点強度はより好ましくは0.3MPa~1.4MPa、乾燥皮膜の最大点伸度は、より好ましくは4%~100%である。最大点強度が0.2MPa未満であると、接着力が不足することがあり、1.6MPaを超えると、耐疲労性が悪化することがある。最大点伸度が2%未満であると、耐疲労性が悪化することがあり、120%を超えると、接着性が不足することがある。なお、乾燥皮膜の調整方法及び最大点強度、最大点伸度の測定方法は実施例の項で説明した方法による。
本発明に使用する接着処理剤は、リグニン(A)とブロックドイソシアネート化合物(B)とゴムラテックス(C)が同一の処理剤の中に含まれることが必要で、概接着処理剤の乾燥皮膜の最大点強度と最大点伸度が上記規定の範囲内であることが好ましい。このようにすることでゴムと繊維間の優れた接着性、および高温雰囲気下でのゴム中での繊維の優れた耐疲労性を発現する接着処理剤となる。
接着処理剤の乾燥皮膜の最大点強度および最大点伸度は、接着処理剤に含まれる薬剤種および混合比によって調整することができる。例えば、接着処理剤のブロックドイソシアネート化合物(B)の混合量を多くすることで最大点強度を高く調整することができる。また、例えば接着処理剤にゴムラテックスを混合し、その混合量を多くすることで最大点伸度を高く調整することができる。
本発明に使用する接着処理剤は、全固形分100重量%中のリグニン(A)の固形分の含有量は、5~50重量%であることが好ましく、より好ましくは、10~40重量%である。5重量%未満もしくは50重量%を超えると、接着力が不足することがある。
また、リグニン(A)とブロックドイソシアネート化合物(B)は、(Aの固形分):(Bの固形分)の重量比が10:1~10:30であることが好ましく、より好ましくは10:5~10:20である。この重量比を超える範囲でブロックドイソシアネート化合物の量が少ないと、接着力が不足することがあり、この重量比を超える範囲でブロックドイソシアネート化合物の量が多いと、コードが硬くなり、耐疲労性が悪化することがある。
また、リグニン(A)、ブロックドイソシアネート化合物(B)、ゴムラテックス(C)は、((Aの固形分)+(Bの固形分)):(Cの固形分)の重量比が10:90~60:40で混合されることが好ましい。さらに好ましくは、((Aの固形分)+(Bの固形分)):(Cの固形分)の重量比が20:80~50:50である。この範囲を外れると接着力が不足したり、耐疲労性が悪化することがある。
本発明に使用する接着処理剤は、固形分が水に溶解または分散されたものであって、総固形分濃度が、好ましくは12~20重量%、より好ましくは13~19重量%とするのが良い。この範囲を外れると、接着力の低下を招くことがある。この範囲を外れると、十分な量の固形分を繊維に付与できないことがありえ、または、接着剤固形分での凝集破壊が発生することがありえ、その場合、接着力の低下を招くことがある。
ポリエステル繊維への接着処理剤の付着量は、ポリエステル繊維100重量部に対する接着処理剤の固形分重量が1重量部~15重量部であることが好ましく、より好ましくは1.5重量部~10重量部であるのが良い。この範囲を外れると、接着力の低下を招くことがある。
本発明に用いるポリエステル繊維タイヤコードは、ポリエステル繊維が前記接着処理剤(少なくともリグニンとブロックドイソシアネート化合物とゴムラテックスを含む接着処理剤)で処理される前に、プレコート剤で処理されていても良い。
プレコート剤は、エポキシ化合物とブロックドイソシアネート化合物(固形分重量比10:0~10:30)を少なくとも含むものであることが好ましい。この範囲を外れると、接着力が低下することがある。また、プレコート剤のポリエステル繊維への付着量は、ポリエステル繊維100重量部に対するプレコート剤の固形分重量が0.1重量部~3重量部であることが好ましい。この範囲を外れると、接着力の低下を招くことがある。
本発明に用いるポリエステル繊維タイヤコードの強度は、5.0~7.0cN/dtexであることが好ましく、より好ましくは5.3~6.7cN/dtexである。5.0cN/dtex未満であると、タイヤコード用途としてタイヤ周方向の実用的な応力を担うことができないことがある。7.0cN/dtexを超えるコードは原糸の生産安定性、コスト面から実用的なタイヤコードが得られ難い。ここで、コード強度とは、コード強力をコード構成上の基準繊度(例えば1100dtexの原糸を2本撚りあわせたものなら2200dtex)で割り返した値である。
本発明に用いるポリエステル繊維タイヤコードは、コードに付着した樹脂単位当たりのガーレーコード硬さが30~80mN/%以下であり、かつ加熱後のガーレーコード硬さ変化率が90~130%であることが好ましい。より好ましくは、ガーレーコード硬さが35~75mN/%であり、かつ加熱後のガーレーコード硬さ変化率が95%~120%であるのが良い。この範囲とすることで、ゴムとコードの複合体においてコードのゴムへの追従性が向上し、良好な接着力を得ることができる。ガーレーコード硬さの調整方法は特に限定されるものではないが、例えば樹脂付着量を低下させることで、ガーレーコード硬さを減少、樹脂付着量を増加させることで、ガーレーコード硬さを向上させることができる。さらには、後述するディッピング工程における熱処理時に、熱処理温度および/または熱処理時間を減少させることで、ガーレーコード硬さを減少させることができ、また、熱処理温度および/または熱処理時間を増加させることで、ガーレーコード硬さを向上させることができる。また、後述するディップ工程のノルマライジングゾーンを通った後の機械的ソフニング処理工程時の張力を0.5cN~5.0cN/dtexとすることで達成できる。
上記によって特徴づけられる本発明のラジアルタイヤは、レゾルシンおよびホルマリンを含まず、環境負荷低減に有利な新規の接着処理剤からなるポリエステル繊維タイヤコードをカーカスプライに用いたラジアルタイヤとなり、繊維とゴムの接着性が優れ、従来RFLによるタイヤコード同等以上の高速耐久性能を有するラジアルタイヤが得られる。
次に、ラジアルタイヤの製造方法について述べる。
本発明のラジアルタイヤに用いるポリエステル繊維タイヤコードの製造方法は、少なくともリグニン(A)とブロックドイソシアネート化合物(B)とゴムラテックス(C)が含まる接着処理剤を同浴中でポリエステル繊維に付着させ、熱処理を施す方法である。
ここで、接着処理剤は以下の特徴を有することが好ましい。
(a)接着処理剤の乾燥皮膜の最大点強度が0.2MPa~1.6MPa
(b)接着処理剤の乾燥皮膜の最大点伸度が2%~120%。
(a)接着処理剤の乾燥皮膜の最大点強度が0.2MPa~1.6MPa
(b)接着処理剤の乾燥皮膜の最大点伸度が2%~120%。
ここで、ポリエステル繊維は、撚糸コードあるいは生簾反の形態のいずれでもよく、ディップバス浴内の接着処理剤に撚糸コードあるいは生簾反をディップして、引き続いて好ましくは100~150℃の温度で水分を乾燥し、続いて200~255℃の熱処理を施す方法が好ましい。リグニン(A)、ブロックドイソシアネート化合物(B)、ゴムラテックス(C)の好ましい様態は上述記載のものを使用することができる。
ここでディップとは、内部にローラーが設置されかつ接着処理剤が満たされたディップ槽内に撚糸コードまたは生簾反を走行させることで、撚糸コードまたは生簾反に接着処理剤を付与することを指す。熱処理とは、ローラーが設置されかつ所定の温度に設定できるオーブン内に撚糸コードまたは生簾反を走行させて撚糸コードまたは生簾反を加熱することを指す。このようなディップおよび熱処理を施すディップ処理機としては、例えばリッツラー社から市販されている。なお、接着処理剤をポリエステル繊維に付着させる他の方法としては、ディップ処理の他、例えばノズルからの接着処理剤噴霧による塗布など、任意の方法を採用することができる。
また、ポリエステル繊維に対する接着処理剤の固形分付着量を制御するために、圧接ローラーによる絞り、スクレーパーによるかき落とし、空気吹きつけによる吹き飛ばしおよび吸引などの手段を用いてもよい。
さらには、上記の乾燥、熱処理後の、機械的ソフニング処理工程時に、ポリエステル繊維コードをエッジに摺接させることにより任意のコード剛さを得るための柔軟化処理を施すこともできる。
前記接着処理剤は、リグニン(A)とブロックドイソシアネート化合物(B)は、(Aの固形分):(Bの固形分)の重量比が10:1~10:30であることが好ましく、より好ましくは10:5~10:20である。この重量比を超える範囲でブロックドイソシアネート化合物の量が少ないと、接着力が不足することがあり、この重量比を超える範囲でブロックドイソシアネート化合物の量が多いと、コードが硬くなり、耐疲労性が悪化することがある。
また、リグニン(A)、ブロックドイソシアネート化合物(B)、ゴムラテックス(C)は、((Aの固形分)+(Bの固形分)):(Cの固形分)の重量比が10:90~60:40で混合されることが好ましい。さらに好ましくは、((Aの固形分)+(Bの固形分)):(Cの固形分)の重量比が20:80~50:50である。この範囲を外れると接着力が不足したり、耐疲労性が悪化することがある。
本発明に用いるポリエステル繊維タイヤコードは、ポリエステル繊維に前記接着処理剤(少なくともリグニンとブロックドイソシアネート化合物とゴムラテックスを含む接着処理剤)が付着、熱処理される前に、プレコート剤が付着、熱処理されていても良い。
プレコート剤は、エポキシ化合物とブロックドイソシアネート化合物(固形分重量比10:0~10:30)を少なくとも含むことが好ましい。この範囲を外れると、接着力が低下することがある。また、プレコート剤のポリエステル繊維への付着量は、ポリエステル繊維100重量部に対するプレコート剤の固形分重量が0.1重量部~3重量部であることが好ましい。この範囲を外れると、接着力の低下を招くことがある。
プレコート剤を付着させる場合、上記方法と同様のディップ方法を採用することができる。すなわち、ポリエステル繊維の撚糸コードあるいは生簾反を、ディップバス浴内のプレコート剤にディップして、引き続いて好ましくは100~150℃の温度で水分を乾燥し、続いて200~255℃の熱処理を施す方法が好ましい。固形分付着量の制御や、柔軟化処理については前述と同様の方法を採用することができる。
次に、上記のようにして製造したポリエステル繊維タイヤコードを用いてカーカスプライ、さらにはラジアルタイヤを製造する。
本発明のラジアルタイヤに使用できるゴムは、従来公知のものが使用でき、例えば、天然ゴム(NR)、及び/又は合成ポリイソプレン(IR)、及び/又はブレジエンゴム(BR)、及び/又はスチレン-ブタジエンゴム(SBR)からなる群から選択される少なくとも1種のゴムが使用できる。また、カーボンブラック、シリカ、硫黄、亜鉛華、可塑剤等の公知の添加剤を添加することも好ましい。
カーカスプライの製造方法は、当業者公知の方法で達成され、例えば上記ゴムをシート状にゴム引きされ、前記ポリエステル繊維タイヤコードのディップ反と一緒にカレンダー加工され、適切なサイズにカットされてカーカスプライが得られる。その後も通常公知の方法にて生タイヤに成形加工され、プレス加硫することでラジアルタイヤが得られる。
このようにして得られる本発明のラジアルタイヤは、レゾルシンおよびホルマリンを含まず、環境負荷低減に有利な新規の接着処理剤からなるポリエステル繊維タイヤコードをカーカスプライに用いたラジアルタイヤとなり、繊維とゴムの接着性が優れ、従来RFLによるタイヤコード同等以上の高速耐久性能を有する空ラジアルタイヤとなる。
以下、実施例により本発明についてさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下に具体的に記載する実施例等において、各測定値は次の方法により求めたものである。
(1)接着剤処理剤の付着量
JIS L1017(2002)のディップピックアップの質量法に準じ、接着剤の付着料を求めた。
JIS L1017(2002)のディップピックアップの質量法に準じ、接着剤の付着料を求めた。
(2)初期接着力および耐熱接着力
ポリエステル繊維タイヤコードとゴムとの接着力を示すものである。初期接着力の測定は、JIS L1017(2002)附属書1の3.1Tテスト(A法)に準拠して、ポリエステル繊維タイヤコードを未加硫ゴムに埋め込み、150℃、30分間、50kg/cm2プレス加硫を行ってのちに放冷し、ポリエステル繊維タイヤコードをゴムブロックから300mm/minの速度で引き抜き、その引き抜きに要した加重を各試料について求め、試料数10個の算術平均値をもって初期接着力とした。また、耐熱接着力の測定は、JIS L1017(2002)附属書1の3.1Tテスト(A法)に準拠して、ポリエステル繊維タイヤコードを未加硫ゴムに埋め込み、170℃、70分間、50kg/cm2プレス加硫を行ってのちに放冷し、ポリエステル繊維コードをゴムブロックから300mm/minの速度で引き抜き、その引き抜きに要した加重を各試料について求め、試料数10個の算術平均値をもって耐熱接着力とした。
ポリエステル繊維タイヤコードとゴムとの接着力を示すものである。初期接着力の測定は、JIS L1017(2002)附属書1の3.1Tテスト(A法)に準拠して、ポリエステル繊維タイヤコードを未加硫ゴムに埋め込み、150℃、30分間、50kg/cm2プレス加硫を行ってのちに放冷し、ポリエステル繊維タイヤコードをゴムブロックから300mm/minの速度で引き抜き、その引き抜きに要した加重を各試料について求め、試料数10個の算術平均値をもって初期接着力とした。また、耐熱接着力の測定は、JIS L1017(2002)附属書1の3.1Tテスト(A法)に準拠して、ポリエステル繊維タイヤコードを未加硫ゴムに埋め込み、170℃、70分間、50kg/cm2プレス加硫を行ってのちに放冷し、ポリエステル繊維コードをゴムブロックから300mm/minの速度で引き抜き、その引き抜きに要した加重を各試料について求め、試料数10個の算術平均値をもって耐熱接着力とした。
(3)ゴム中耐疲労性(保持率)
JIS L1017(2002)附属書1の2.2.2ディスク疲労強さ(グッドリッチ法)に準拠して評価した。ポリエステル繊維タイヤコード2本を未加硫ゴムに埋め込み、150℃、30分間、50kg/cm2の条件でプレス加硫して、ゴムコンポジットを作成する。この試験片を圧縮6.3%、伸張12.6%を1サイクルとする変形を2600サイクル/分で、100℃雰囲気下12時間与えた後、ゴムからポリエステル繊維タイヤコードを取り出して疲労後の破断強力を測定し、該疲労試験前後の破断強力の保持率を各試料について求め、試料8個の算術平均値をもってゴム中耐疲労性(保持率)とした。
JIS L1017(2002)附属書1の2.2.2ディスク疲労強さ(グッドリッチ法)に準拠して評価した。ポリエステル繊維タイヤコード2本を未加硫ゴムに埋め込み、150℃、30分間、50kg/cm2の条件でプレス加硫して、ゴムコンポジットを作成する。この試験片を圧縮6.3%、伸張12.6%を1サイクルとする変形を2600サイクル/分で、100℃雰囲気下12時間与えた後、ゴムからポリエステル繊維タイヤコードを取り出して疲労後の破断強力を測定し、該疲労試験前後の破断強力の保持率を各試料について求め、試料8個の算術平均値をもってゴム中耐疲労性(保持率)とした。
なお、初期接着力、耐熱接着力、ゴム中耐疲労性の測定に使用した未加硫ゴムコンパウンドの組成は下記のとおりである。
天然ゴム (RSS#1) :70(重量部)
SBR (#1502):30(重量部)
HAFカーボンブラック:40(重量部)
ステアリン酸:2(重量部)
硫黄:2(重量部)
亜鉛華:5(重量部)
2,2‘-ジチオベンゾチアゾール:3(重量部)
ナフテン酸プロセスオイル:3(重量部)。
天然ゴム (RSS#1) :70(重量部)
SBR (#1502):30(重量部)
HAFカーボンブラック:40(重量部)
ステアリン酸:2(重量部)
硫黄:2(重量部)
亜鉛華:5(重量部)
2,2‘-ジチオベンゾチアゾール:3(重量部)
ナフテン酸プロセスオイル:3(重量部)。
(4)接着処理剤の乾燥皮膜の最大点強度、最大点伸度
接着処理剤を、乾燥後の皮膜の厚みが0.5mmとなるようにガラス板に塗工し、室温で72時間乾燥した後、ガラス板から剥離し、120℃オーブンで15分間熱処理し、さらに240℃オーブンで2分間熱処理した。これを2号ダンベル型で打ち抜き、オリエンテック社製テンシロンRTM-100型試験機を用いて、25℃雰囲気下でクロスヘッドスピード50mm/分で引張試験を行い、強度および伸度を測定して、強度が最大値となる点の強度と伸度を各試料について求め、試料数6での強度の算術平均値をもって最大点強度とし、試料数6での伸度の算術平均値をもって最大点伸度とした。
接着処理剤を、乾燥後の皮膜の厚みが0.5mmとなるようにガラス板に塗工し、室温で72時間乾燥した後、ガラス板から剥離し、120℃オーブンで15分間熱処理し、さらに240℃オーブンで2分間熱処理した。これを2号ダンベル型で打ち抜き、オリエンテック社製テンシロンRTM-100型試験機を用いて、25℃雰囲気下でクロスヘッドスピード50mm/分で引張試験を行い、強度および伸度を測定して、強度が最大値となる点の強度と伸度を各試料について求め、試料数6での強度の算術平均値をもって最大点強度とし、試料数6での伸度の算術平均値をもって最大点伸度とした。
(5)コードに付着した樹脂単位当たりのガーレーコード硬さ
ポリエステル繊維タイヤコードを長さ1mに切り出して、その一端に金属製フックを結びつけ、他端に300gの重りを結びつけ、温度25℃、相対湿度40%に調節された環境下、空中に24時間吊してコードを鉛直に保持し、測定試料を得た。
ポリエステル繊維タイヤコードを長さ1mに切り出して、その一端に金属製フックを結びつけ、他端に300gの重りを結びつけ、温度25℃、相対湿度40%に調節された環境下、空中に24時間吊してコードを鉛直に保持し、測定試料を得た。
これを38.1mm(1.5インチ)に切断して試験片とし、安田精機株式会社製の「Gurley’s stiffness tester」でガーレーコード硬さを測定した。図1に「Gurley’s stiffness tester」の斜視図を示す。
試験片の取付けおよび測定法は、(ア)試料長さに合わせてチャック1を設定位置に固定させ、試験片2を取付ける。(イ)回転棒3の下部(軸受より下部)に荷重任意設定孔が軸より25.4mm(1インチ)(図1中のW1)、50.8mm(2インチ)(図1中のW2)、および101.6mm(4インチ)(図1中のW3)の位置にあるので試験片2の柔軟性に応じ荷重の重さおよび孔の位置を設定する。この場合、目盛板4に針5が2~4に指示するように、荷重および孔の位置を選ばなければならない。(ウ)試験片2に見合う設定ができたならば、駆動ボタンを押し、駆動軸を左右に動かし、針が指す目盛板4の数値を0.1単位まで読取る。(エ)1つの試験片2につき、左右1回、試験片10本、計20回の値を求め、1試料の平均値を求める。計算法は次のとおりである。各測定値の平均値を、次式で計算した。最後にガーレーコード硬さ(mg)を(mN)に換算し、さらに樹脂付着量(%)で除した値を、コードに付着した樹脂単位当たりのガーレーコード硬さ(mN/%)とした。
・ガーレーコード硬さ(mg)=R×{(W1×1)+(W2×2)+(W3×4)}/5×(L-12.7)2/W×19.8
ただし、
R :測定値の平均値
W1:25.4mmの荷重位置(孔)に掛ける荷重(単位g)
W2:50.8mmの荷重位置(孔)に掛ける荷重(単位g)
W3:101.6mmの荷重位置(孔)に掛ける荷重(単位g)
L :試料長さ(mm)
W :試験片の幅(コードゲージ)(mm)。
・ガーレーコード硬さ(mg)=R×{(W1×1)+(W2×2)+(W3×4)}/5×(L-12.7)2/W×19.8
ただし、
R :測定値の平均値
W1:25.4mmの荷重位置(孔)に掛ける荷重(単位g)
W2:50.8mmの荷重位置(孔)に掛ける荷重(単位g)
W3:101.6mmの荷重位置(孔)に掛ける荷重(単位g)
L :試料長さ(mm)
W :試験片の幅(コードゲージ)(mm)。
(6)加熱後のガーレーコード硬さ変化率(加熱後変化率)
ポリエステル繊維タイヤコードを長さ1mに切り出して、その一端に金属製フックを結びつけ、他端に300gの重りを結びつけ、温度160℃に調節された環境下、空中に2時間吊してコードを鉛直に保持して、ポリエステル繊維タイヤコードを加熱した。その後、上記(5)と同様にしてガーレーコード硬さを求めた。(6)の値を(5)の値で除した値を加熱後のガーレーコード硬さ変化率(%)とした。
ポリエステル繊維タイヤコードを長さ1mに切り出して、その一端に金属製フックを結びつけ、他端に300gの重りを結びつけ、温度160℃に調節された環境下、空中に2時間吊してコードを鉛直に保持して、ポリエステル繊維タイヤコードを加熱した。その後、上記(5)と同様にしてガーレーコード硬さを求めた。(6)の値を(5)の値で除した値を加熱後のガーレーコード硬さ変化率(%)とした。
(7)タイヤ高速耐久性
上述したポリエステル繊維タイヤコードをカーカスプライとして用い、通常のタイヤの製造工程と同様にして、タイヤサイズ:165-SR13のラジアルタイヤを作成した。ドラム試験機により、JIS D4230に規定される高速耐久試験を終了した後、さらに30分毎に速度を10km/h単位で増加させてタイヤが破壊するまでの走行距離を測定した。評価は後述する(従来例)のRFLを使用したポリエステル繊維タイヤコードをカーカスプライに使用したタイヤの評価結果を100とする指標で示した。指標が大きいほど高速耐久性に優れていることを意味する。
上述したポリエステル繊維タイヤコードをカーカスプライとして用い、通常のタイヤの製造工程と同様にして、タイヤサイズ:165-SR13のラジアルタイヤを作成した。ドラム試験機により、JIS D4230に規定される高速耐久試験を終了した後、さらに30分毎に速度を10km/h単位で増加させてタイヤが破壊するまでの走行距離を測定した。評価は後述する(従来例)のRFLを使用したポリエステル繊維タイヤコードをカーカスプライに使用したタイヤの評価結果を100とする指標で示した。指標が大きいほど高速耐久性に優れていることを意味する。
(実施例1~4、比較例1~3)
グリセロールポリグリシジルエーテル(“デナコール”EX313(ナガセ化成社製))、ブロックドイソシアネート化合物(DM-6400(明成化学製))、ゴムラテックス(ピラテックス、日本エイアンドエル株式会社製)の固形分比が20:40:40の割合になるように混合し、水で希釈して総固形分量4.0重量%のプレコート剤(ア)を得た。
グリセロールポリグリシジルエーテル(“デナコール”EX313(ナガセ化成社製))、ブロックドイソシアネート化合物(DM-6400(明成化学製))、ゴムラテックス(ピラテックス、日本エイアンドエル株式会社製)の固形分比が20:40:40の割合になるように混合し、水で希釈して総固形分量4.0重量%のプレコート剤(ア)を得た。
また、水に、リグニン(A)、ブロックドイソシアネート化合物(B)、ゴムラテックス(C)のそれぞれの固形分が表1に示す比率となるように混合し、総固形分濃度15重量%となる接着処理剤を得た。得られた接着処理剤の乾燥皮膜の最大点強度、最大点伸度を測定した。
1670dtexのポリエステルマルチフィラメント糸(東レ株式会社製、“テトロン”1670T-360-705M)2本を、下撚り40回/10cm、上撚り40回/10cmの撚り数で撚糸し、撚糸コードを得た。
該撚糸コードをコンピュートリーター処理機(リッツラー株式会社製)を用いて、前記のプレコート剤に浸漬した後、120℃で2分間乾燥し、続いて245℃で1分間の熱処理を行った。続いて、前記の成分(A)、(B)、(C)を含む接着処理剤に浸漬した後、120℃で2分間乾燥し、引き続き240℃で0.5分間熱処理(ホット処理)を行い、さらに、240℃で0.5分間熱処理(ノルマライズ処理)を行った。
得られたポリエステル繊維タイヤコードの接着剤固形分付着量は、プレコート剤がポリエステル繊維100重量部に対して1.1重量部、(A)、(B)、(C)を含む接着処理剤が、ポリエステル繊維100重量部に対して4.0重量部であった。
表1中に示した、接着処理剤の各成分は以下の通りである。
(A)-1:リグニン(東京化成株式会社製、リグニンスルホン酸ナトリウム)
(B)-1:ブロックドイソシアネート(明成化学製、DM-6400、解離温度120~160℃)
(C)-1:ゴムラテックス(日本エイアンドエル株式会社製、ピラテックス)。
(A)-1:リグニン(東京化成株式会社製、リグニンスルホン酸ナトリウム)
(B)-1:ブロックドイソシアネート(明成化学製、DM-6400、解離温度120~160℃)
(C)-1:ゴムラテックス(日本エイアンドエル株式会社製、ピラテックス)。
(実施例5)
プレコート剤を、グリセロールポリグリシジルエーテル(“デナコール”EX313(ナガセ化成社製))、ブロックドイソシアネート化合物(DM-6400(明成化学製))の固形分比が10:35の割合になるように混合し、水で希釈して得た総固形分量7.0重量%のプレコート剤(イ)に変更した以外は、実施例1と同じ手順にて処理、評価を行った。得られたポリエステル繊維タイヤコードの接着剤固形分付着量は、プレコート剤がポリエステル繊維100重量部に対して1.7重量部、(A)、(B)、(C)を含む接着処理剤が、ポリエステル繊維100重量部に対して3.5重量部であった。
プレコート剤を、グリセロールポリグリシジルエーテル(“デナコール”EX313(ナガセ化成社製))、ブロックドイソシアネート化合物(DM-6400(明成化学製))の固形分比が10:35の割合になるように混合し、水で希釈して得た総固形分量7.0重量%のプレコート剤(イ)に変更した以外は、実施例1と同じ手順にて処理、評価を行った。得られたポリエステル繊維タイヤコードの接着剤固形分付着量は、プレコート剤がポリエステル繊維100重量部に対して1.7重量部、(A)、(B)、(C)を含む接着処理剤が、ポリエステル繊維100重量部に対して3.5重量部であった。
(従来例)
実施例1で、(A)、(B)、(C)を含む接着処理剤を、以下の手順で得られるRFL接着剤に変更した以外は、実施例1と同じ手順にて処理、評価を行った。
レゾルシン/ホルマリンのモル比を1/1.5の割合で、苛性ソーダの存在下混合し、固形分濃度が10%となるように調整し、2時間熟成することで、レゾルシンとホルマリンの初期縮合物を得た。次にこの初期縮合物(RF)と、ゴムラテックス(ピラテックス、日本エイアンドエル株式会社製)を、RF/L=1/5(固形分重量比)の割合で混合し、24時間熟成した。この混合物を水で希釈し、固形分重量15%のRFL接着剤を得た。得られたポリエステル繊維タイヤコードの接着剤固形分付着量は、プレコート剤がポリエステル繊維100重量部に対して1.1重量部、RFL接着剤が、ポリエステル繊維100重量部に対して4.0重量部であった。
実施例1で、(A)、(B)、(C)を含む接着処理剤を、以下の手順で得られるRFL接着剤に変更した以外は、実施例1と同じ手順にて処理、評価を行った。
レゾルシン/ホルマリンのモル比を1/1.5の割合で、苛性ソーダの存在下混合し、固形分濃度が10%となるように調整し、2時間熟成することで、レゾルシンとホルマリンの初期縮合物を得た。次にこの初期縮合物(RF)と、ゴムラテックス(ピラテックス、日本エイアンドエル株式会社製)を、RF/L=1/5(固形分重量比)の割合で混合し、24時間熟成した。この混合物を水で希釈し、固形分重量15%のRFL接着剤を得た。得られたポリエステル繊維タイヤコードの接着剤固形分付着量は、プレコート剤がポリエステル繊維100重量部に対して1.1重量部、RFL接着剤が、ポリエステル繊維100重量部に対して4.0重量部であった。
以上ようにして得られたポリエステル繊維タイヤコードの、ガーレーコード硬さ、加熱後ガーレーコード硬さ変化率を測定した。また、未加硫ゴムに埋め込み加硫を行った後、初期接着力、耐熱接着力、ゴム中耐疲労性をそれぞれ測定した。さらにこのポリエステル繊維タイヤコードをカーカスプライとしてラジアルタイヤを作成し、高速耐久性試験を実施した。結果を表1に示す。
表1の結果のように、本発明による実施例1~5の場合、接着処理剤にレゾルシンとホルマリンを含まず、従来例RFL対比環境負荷低減に有利であり、かつ、ゴムとの接着性、耐熱接着性が良好であり、さらに高温雰囲気下での耐疲労性が良好であり、従来RFLによるタイヤコード同等以上の高速耐久性能を有するラジアルタイヤとなることがわかる。
1 チャック
2 試験片
3 回転棒
4 目盛板
5 針
W1 荷重設定孔(軸より25.4mm(1インチ))
W2 荷重設定孔(軸より50.8mm(2インチ))
W3 荷重設定孔(軸より101.6mm(4インチ))
2 試験片
3 回転棒
4 目盛板
5 針
W1 荷重設定孔(軸より25.4mm(1インチ))
W2 荷重設定孔(軸より50.8mm(2インチ))
W3 荷重設定孔(軸より101.6mm(4インチ))
Claims (6)
- タイヤのトレッド内側に、ポリエステル繊維タイヤコードからなるカーカスプライを配置したラジアルタイヤであって、該ポリエステル繊維タイヤコードが、少なくともリグニン(A)とブロックドイソシアネート化合物(B)とゴムラテックス(C)が含まれてなる接着処理剤によってポリエステル繊維が処理されたものであることを特徴とするラジアルタイヤ。
- 前記接着処理剤の乾燥皮膜の最大点強度が0.2MPa~1.6MPaであり、かつ最大点伸度が2%~120%であることを特徴とする請求項1に記載のラジアルタイヤ。
- 前記接着処理剤の、リグニン(A)とブロックドイソシアネート化合物(B)の固形分重量比が、(Aの固形分):(Bの固形分)=10:1~10:30であることを特徴とする請求項1または2に記載のラジアルタイヤ。
- 前記接着処理剤の、リグニン(A)とブロックドイソシアネート化合物(B)とゴムラテックス(C)の固形分重量比が、((Aの固形分)+(Bの固形分)):(Cの固形分)=10:90~60:40であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のラジアルタイヤ。
- 前記ポリエステル繊維タイヤコードが、前記接着処理剤で処理される前に、プレコート剤で処理されたものであり、プレコート剤が、エポキシ化合物とブロックドイソシアネート化合物(固形分重量比10:0~10:30)を少なくとも含むものであることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のラジアルタイヤ。
- 前記ポリエステル繊維タイヤコードの、コードに付着した樹脂単位当たりのガーレーコード硬さが30~80mN/%以下、加熱後のガーレーコード硬さ変化率が90%~130%であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のラジアルタイヤ。
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