JP2023043553A - pH測定装置及びこれを用いたニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法 - Google Patents

pH測定装置及びこれを用いたニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 正確且つ安定的にpH測定を行うことが可能なpH測定装置を提供する。【解決手段】 第1中和処理槽21(1)の上方に設けられた円筒形状の容器部51と、容器部51の内側に測定部位が位置するように設けられたpH計52とを有するpH測定装置50(1)であって、容器部51には、第1中和処理槽21(1)から抜き出された処理液を昇圧する循環ポンプ26(1)の吐出側配管から分岐し且つ開閉弁53aを具備する処理液導入管53と、開閉弁55aを具備する洗浄液供給管55と、容器部51からオーバーフローにより排出される処理液又は洗浄排液を第1中和処理槽21(1)に回収する第1排出管54と、容器部51の底部から排出される処理液又は洗浄排液を第1中和処理槽21(1)に回収する、開閉弁56aを具備する第2排出管56とが接続されている。【選択図】 図3

Description

本発明は、pH測定装置及びこれを用いたニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法に関する。
近年、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬法として、硫酸を添加して高温高圧下で酸浸出処理を施すHPAL法(High Pressure Acid Leaching)とも称する高圧酸浸出法が注目されている。HPAL法は、従来の一般的なニッケル酸化鉱石の製錬方法である乾式製錬法と異なり、還元工程や乾燥工程等の乾式工程を経ることなく一貫して湿式工程で処理を行うので、エネルギー的及びコスト的に有利である。また、HPAL法は、低ニッケル品位の酸化鉱石原料からニッケル品位が50質量%程度まで高められたニッケルとコバルトを含む硫化物(以下、「ニッケルコバルト混合硫化物」又は「NiCo混合硫化物」とも称する)を効率よく生成できるという利点も有している。
上記のHPAL法を用いたニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法は、例えば特許文献1や特許文献2に開示されているように、原料のニッケル酸化鉱石に対して粉砕や分級により粒径を揃えると共に水を加えることで鉱石スラリーの調製を行う鉱石前処理工程と、得られた鉱石スラリーに硫酸を添加して高温高圧下で浸出処理を施すことでニッケル及びコバルトを浸出させる浸出工程と、該浸出処理で生成した浸出スラリーに中和剤を添加して予備中和処理を施す予備中和工程と、該予備中和処理された浸出スラリーを連続するシックナー群に導入して多段洗浄しながら浸出残渣を分離除去することで、ニッケル及びコバルトと共に不純物元素を含む浸出液を得る固液分離工程(CCD工程)と、得られた浸出液にpH調整剤を添加して該不純物元素を中和澱物として分離除去することで、ニッケル及びコバルトと共に亜鉛を含む中和終液を得る中和工程と、該中和終液に硫化剤を添加して亜鉛を硫化物として分離除去することでニッケル回収用母液を得る脱亜鉛工程と、該ニッケル回収用母液に硫化剤を添加することでニッケル及びコバルトからNiCO混合硫化物を生成して回収するニッケル回収工程と、該NiCO混合硫化物の回収時に排出される貧液や上記CCD工程で排出される浸出残渣に中和剤を添加して中和処理を施す最終中和工程とから一時的に構成される。
特開平6-116660号公報 特開2005-350766号公報
上記の予備中和工程では、前工程の浸出工程で生成した浸出スラリーに対して、次工程のCCD工程における多段洗浄の効率を高めるため、所定のpH値に調整する。具体的には、中和処理槽に装入した浸出スラリーに対して、炭酸カルシウム等の中和剤を添加することで該浸出スラリーのpHが所定のpH値となるように調整する。この場合、中和剤の添加量の調整は、浸出スラリーに浸漬したpH計から出力されるpHの測定値に基づいて行なわれる。
しかしながら、中和処理槽内の浸出スラリーにpH計を常時浸漬したままにすると、時間の経過に伴ってpH計の測定部位の周囲に固形物が析出し、その結果、正確なpH測定ができなくなることがあった。この場合は、pH計を中和処理槽から取り外して洗浄するか、或いは新しいpH計と交換する作業が必要になり、その間はpH測定ができないので予備中和処理が不安定になるおそれがあり、作業時間が長びけば後工程に大きな悪影響を及ぼすことが懸念される。
このような背景から、浸出スラリーのpHの測定は、中和処理槽内の浸出スラリーにpH計を常時浸漬する代わりに、一定の時間が経過するたびに作業員が中和処理槽内の浸出スラリーを現場でサンプリングして、その都度pH測定する方法が提案されている。しかしながら、中和処理槽内の浸出スラリーは高温で且つ酸性であるため、サンプリング作業を行う際は耐酸防護服を着用する必要があり、手間と時間を要していた。また、特に夏場のサンプリング作業では熱中症にかからないように様々な対策を施す必要があり、簡易にサンプリングすることができなかった。
本発明はかかる実状に鑑みてなされたものであり、中和処理槽内の浸出スラリーのように、pH計の測定部位の周囲に固形物が析出しやすい条件下で使用する場合であっても、正確且つ安定的にpH測定を行うことが可能なpH測定装置を提供することを目的としている。
上記目的を達成するため、本発明に係るpH測定装置は、処理槽の上方に設けられた円筒形状の容器部と、前記容器部の内側に測定部位が位置するように設けられたpH計とを有するpH測定装置であって、前記容器部には、前記処理槽から抜き出された処理液を昇圧するポンプの吐出側配管から分岐し且つ開閉弁を具備する処理液導入管と、洗浄液供給源に一端部が接続しており且つ開閉弁を具備する洗浄液供給管と、前記容器部からオーバーフローにより排出される処理液又は洗浄排液を前記処理槽に回収する第1排出管と、前記容器部の底部から排出される処理液又は洗浄排液を前記処理槽に回収する、開閉弁を具備する第2排出管とが接続されていることを特徴としている。
また、本発明に係るニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法は、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法であって、ニッケル酸化鉱石に水を加えて調製した鉱石スラリーに硫酸を添加して高温高圧下で浸出処理を施す浸出工程と、該浸出処理により得た浸出スラリーに中和剤を添加することでpH調整を行う予備中和工程と、該pH調整された浸出スラリーを多段洗浄しながら残渣を分離することで、ニッケル及びコバルトを含む浸出液を得る固液分離工程とを含んでおり、前記予備中和工程において、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のpH測定装置で測定したpH値に基づいてpH調整を行うことを特徴としている。
本発明によれば、中和処理槽内の浸出スラリーのように、pH計の測定部位の周囲に固形物が析出しやすい条件下で使用する場合であっても、正確且つ安定的にpH測定を行うことができる。
本発明の実施形態のpH測定装置が好適に適用されるニッケル酸化鉱石の湿式製錬プラントを構成する設備の一具体例を示すブロックフロー図である。 図1の浸出設備が2系列の場合の湿式製錬プラントを構成する設備の一具体例のプロセスフロー図である。 本発明の実施形態のpH測定装置を示す正面図である。 図3のpH測定装置に含まれる容器部の縦断面図である。 本発明の他の実施形態のpH測定装置を示す正面図である。 本発明のpH測定装置が好適に用いられるニッケル酸化鉱石の高圧酸浸出法による湿式製錬方法のブロックフロー図である。
以下、本発明に係るpH測定装置の実施形態について説明する。この本発明の実施形態のpH測定装置は、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プラントに好適に用いることができる。そこで、先ずニッケル酸化鉱石の湿式製錬プラントについて説明した後、本発明の実施形態のpH測定装置及びその使用方法について説明する。なお、本発明のpH測定装置が用いられるプラントは下記の湿式製錬プラントに限定されるものではなく、pH計の測定部位の周囲に析出する固形物により安定的な測定が困難になり得る条件下で液体やスラリーを処理するプラントであれば同様に適用することができる。
1. ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プラントの概要
ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プラント(以下、単に「湿式製錬プラント」とも称する)は、原料のニッケル酸化鉱石に対して硫酸を添加して高温高圧下で酸浸出処理を行う浸出工程と、該酸浸出処理により生成された浸出スラリーに中和剤を添加することでpH調整を行なう予備中和工程と、該pH調整された浸出スラリーを連続するシックナー群に導入して多段洗浄を行ないながら残差を分離除去する固液分離工程(CCD工程)と、該残渣の分離除去により得た浸出液に中和剤を添加して主として鉄からなる不純物を除去する中和工程と、該不純物の除去により得た中和終液に硫化剤を添加して亜鉛を硫化物として除去する脱亜鉛工程と、該亜鉛の除去により得たニッケル回収用母液に硫化剤を添加してニッケル及びコバルトからNiCO混合硫化物を生成して回収するニッケル回収工程と、上記NiCO混合硫化物の回収時に排出される貧液や固液分離工程で排出される残渣に中和剤を添加して無害化処理する最終中和工程(無害化工程)とから一般的に構成される。これら一連の工程のうち、上流側の浸出工程から固液分離工程までの工程について、図1を参照しながらより詳細に説明する。
上記の浸出工程から固液分離工程までの処理は、例えば図1に示す機器群で構成されるプラントで好適に実施することができる。すなわち、この図1に示すプラントは、図示しない前処理工程の機器で調製された鉱石スラリーに対して浸出処理を施す浸出設備10と、浸出設備10で生成された浸出スラリーを受け入れて2段階でpH調整を行う予備中和設備20と、予備中和設備20でpH調整された浸出スラリーを受け入れて多段洗浄しながら固液分離する固液分離設備30とを有している。
この図1に示すプラントの浸出設備10においては、複数基の並列する浸出処理槽11(1~n)によって鉱石スラリーを複数(n)系列に分けて処理するようになっており、また、この浸出設備10の後段の予備中和設備20の第1段目のpH調整を行う機器も、浸出処理槽11(1~n)に対応させて複数基の並列する第1中和処理槽21(1~n)によって複数(n)系列で処理を行うようになっている。これら複数基の第1中和処理槽21(1~n)によってpH調整された浸出スラリーは、それぞれ槽底部から抜き出されて第1スラリーポンプ22(1~n)で昇圧された後、合流してから単一系列からなる第2段目のpH調整を行う第2中和処理槽23に装入される。この第2中和処理槽23でpH調整された浸出スラリーは第2スラリーポンプ24で昇圧された後、固液分離設備30に移送される。
上記のように、プラントを構成する機器の系列を、予備中和工程の第1段目のpH調整以前の工程(「上工程」とも称する)では2系列以上にすることで、既に十分な操業実績のあるサイズの機器を用いて、プラントを構成することができるので、スケールアップに伴って生じうる不均一反応等の不安定要因をなくすことができる。また、ニッケル酸化鉱石の処理量の増減に応じて複数の系列のうち稼働させる系列を増減することができるので、例えばマーケットの需要等に応じてニッケルコバルト混合硫化物の生産量が変更された場合に柔軟に対応することが可能になる。
一方、予備中和工程の第2段目のpH調整以後の工程(「下工程」とも称する)では単一系列(1系列)にすることで、上工程の複数系列の第1中和処理槽21(1~n)から排出される浸出スラリーごとにpH等の性状にバラつきが生じても、合流により平均化されるので特に問題にはならない。本発明の実施形態のpH測定装置は、上記の予備中和設備20において、第1段目のpH調整を行う第1中和処理槽21(1~n)内の浸出スラリーを底部から抜き出して頂部に戻す外部循環系に設けられている。
すなわち、図2のプロセスフローチャートに示すように、例えば浸出処理槽11(1~n)及び第1中和処理槽21(1~n)を2系列(n=2)で構成する場合は、第1中和処理槽21(1)、21(2)がそれぞれ具備する循環配管系25(1)、25(2)及び循環ポンプ26(1)、26(2)で構成される外部循環系にpH測定装置50(1)、50(2)がそれぞれ設けられている。
このように、本発明の実施形態のpH測定装置は、外部循環系を介して循環する第1中和処理槽内の浸出スラリーのpHを常時測定できるので、即応性のあるpH調整が可能になる。また、後述するように、本発明の実施形態のpH測定装置は適宜内部を洗浄することができるので、pH計の測定部位の周囲に固形物が析出しても洗浄により該固形物を除去できるので、正確なpH測定が該固形物で妨げられ問題が生じにくくなる。
以下、かかる本発明の実施形態のpH測定装置についてより具体的に説明する。なお、本発明の実施形態のpH測定装置は、上記した複数系列の第1中和処理槽21(1~n)の全てに対して同様に設けられているため、以下の説明では、特にことわらない限り、代表として第1系列の第1中和処理槽21(1)に設けられているpH測定装置50(1)を採り挙げて説明する。
2.pH測定装置
本発明の実施形態のpH測定装置50(1)は、図3に示すように、pH測定対象の浸出スラリーを循環ポンプ26(1)の吐出側から連続的に受け入れる容量100~1000リットル程度の略円筒形の容器部51と、容器部51内に受け入れた浸出スラリーのpHを測定するpH計52と、容器部51に接続する配管群とから構成される。
より具体的に説明すると、容器部51は底部に逆円錐形状のコーン部を備えた円筒形状を有しており、全体的に第1中和処理槽21(1)よりも上方に配置されている。容器部51は上端部がフランジ構造になっており、このフランジにブラインドフランジからなる蓋がボルト・ナットで接続されている。この蓋には、その厚み方向に貫通する貫通孔が穿孔されており、この貫通孔にpH計52の棒状の電極部が差し込まれている。かかる構成により、後述するようにpH計52の電極部の先端に位置するpHの測定部位を容器部51内に導入された浸出スラリーに常時浸漬させることが可能になる。
上記の容器部51のコーン部に、第1中和処理槽21(1)の外部循環系を構成する循環配管系25(1)のうち、循環ポンプ26(1)の吐出側から分岐した処理液導入管53が接続しており、また、容器部51の円筒部の上側側面(すなわち処理液導入管53の接続部よりも高い位置)に第1中和処理槽21(1)の頂部に一端部が接続する第1排出管54の他端部が接続している。これにより第1中和処理槽21(1)の底部から抜き出された後に循環ポンプ26(1)で昇圧された浸出スラリーは、循環配管系25(1)及び処理液導入管53を経て容器部51内に導入された後、容器部51内を鉛直方向上向きに流動し、第1排出管54との接続口から排出されて第1中和処理槽21(1)に戻る。
上記のように、容器部51内に導入される浸出スラリーは、図4に示すように処理液導入管53との接続口51aと、第1排出管54の接続口51bとの間を必ず通過するので、pH計51の棒状の電極の先端に位置する測定部位を図4の2本の一点鎖線の間の領域内に配置するのが好ましい。これにより、pH計51の測定部位を循環する浸出スラリーに常に接触させることができるので、第1中和処理槽21(1)内の浸出スラリーのpHが変化しても正確に測定することが可能になる。
更に、容器部51の円筒部には、第1排出管54の接続口51bよりも高い位置に、容器部51内に図示しない洗浄液供給源から洗浄液を供給するための洗浄液供給管55が接続されており、また、容器部51のコーン部の最下端となる底部には、一端部が第1中和処理槽21(1)の頂部に接続している第2排出管56の他端部が接続している。これにより、pH計52の測定部位の周囲に固形物が析出した場合や、析出していることが懸念される場合に、容器部51内に洗浄液を供給して該測定部位を洗浄することができる。
上記の処理液導入管53、洗浄液供給管55、及び第2排出管56には、それぞれ配管途中に開閉弁53a、55a、及び56aが設けられており、これら開閉弁53a、55a、56aの開閉を後述するように操作することによって、第1中和処理槽21(1)及び外部循環系を循環する浸出スラリーのpH測定を行ったり、pH計52の測定部位を容器部51に取り付けた状態のまま洗浄したりすることが可能になる。
3. pH測定装置の使用方法
3.1 pH測定方法
本発明の実施形態のpH測定装置50(1)を用いて第1中和処理槽21(1)及びその外部循環系を循環している浸出スラリーのpHを測定する場合は、処理液導入管53の開閉弁53aのみを開状態にし、それ以外の洗浄液供給管55の開閉弁55a及び第2排出管56の開閉弁56aを閉状態にする。これにより、循環配管系25(1)を介して第1中和処理槽21(1)に戻る外部循環系に加えて、循環配管系25(1)から分岐する処理液導入管53、容器部51、及び第1排出管54を経て第1中和処理槽21(1)に戻る経路が連通するので、該外部循環系を循環する浸出スラリーを一部バイパスさせて容器部51に導入するpH測定モードにすることができる。
このようにして処理液導入管53の接続口51aから容器部51内に導入された浸出スラリーは、容器部51の内部を上昇した後、第1排出管54の接続口51bから排出される。その際、pH計52の測定部位は、上述したように処理液導入管53の接続口51aよりも上方であって、且つ第1排出管54の接続口51bよりも下方の領域に配置されているので、循環している浸出スラリーに常に接触させることができるうえ、該測定部位の下端面に対して浸出スラリーが対向するように流れるので、第1中和処理槽21(1)内の浸出スラリーのpHが変動しても即座に正しく測定することが可能になる。
なお、上記の本発明の実施形態のpH測定装置は、外部循環系専用の循環ポンプ26(1)の吐出側の循環配管系25(1)から処理液導入管53を分岐させた配管構成になっているが、これに限定されるものではなく、例えば図5に示すように、循環配管系25(1)や循環ポンプ26(1)を設ける代わりに、第1中和処理槽21(1)から抜き出した浸出スラリーを後段の第2中和処理23に移送する配管に設けた第1スラリーポンプ22(1~n)の吐出側から処理液導入管53を分岐してもよい。この場合は、浸出スラリーが所望の循環流量で容器部52内を流れるように、53aに流量調整弁の役割をも担わせてもよいが、開閉弁53aに加えて別途流量調整弁53bを設けるのが好ましい。
3.2 pH計の測定部位の洗浄方法
本発明の実施形態のpH測定装置50(1)は、時間の経過に伴ってpH計52の測定部位の周囲に固形物が析出した場合や、析出している可能性がある場合は、下記に示すように開閉弁を操作することでpH計52を取り外すことなく測定部位の洗浄を行うことができる。すなわち、先ず容器部51内への浸出スラリーの導入を止めるため、処理液導入管53の開閉弁53aを閉じ、次に第2排出管56の開閉弁56aを開いて容器部51内に残留している浸出スラリーを抜き出して第2排出管56を介して第1中和処理槽21(1)に戻す。容器部51は前述したように第1中和処理槽21(1)の上方に配置されているので、ポケットや水平に延在する部分のない第2排出管56でこれら第1中和処理槽21(1)と容器部51とを接続することができ、よって容器部51内のほぼ全ての浸出スラリーを残留させることなく重力で第1中和処理槽21(1)内に戻すことができる。
容器部51内に残留していた浸出スラリーをほぼ全て排出した後に開閉弁56aを閉じ、洗浄液供給管55の開閉弁55aを開いて容器部51内に洗浄液を導入する。これにより、pH計52の測定部位を洗浄する洗浄モードに切り替えることができる。洗浄後の洗浄排液は接続口51bから排出され、第1排出管54を介して第1中和処理槽21(1)に排出される。前述したように、洗浄液供給管55の接続口51cは、第1排出管54の接続口51bよりも高い位置に設けられているため、上記の洗浄によりpH計52の測定部位だけでなく、容器部51の内壁のほぼ全面を洗浄することができる。なお、上記のように洗浄排液は第1中和処理槽21(1)内に回収されるため、洗浄液には予備中和工程に悪影響を及ぼす不純物を含まないものを用いるのが好ましく、例えば工業用水を用いることができる。
上記の洗浄液の導入による洗浄を約10~30分間程度行った後、洗浄液供給管55の開閉弁55aを閉じると共に第2排出管56の開閉弁56aを開く。これにより、容器部51内への洗浄液の導入を停止すると共に、容器部51内に残留している洗浄排液を第2排出管56の接続口51dから排出することができる。第2排出管56の接続口51dは容器部51の底部に設けられているので、容器部51内に残留する洗浄排液をほぼ全量排出して容器部51内を空にすることができる。以上でpH計52の測定部位の洗浄が完了する。その後、浸出スラリーのpH測定を再開する場合は、処理液導入管53の開閉弁53aを開くと共に第2排出管56の開閉弁56aを閉じることで、前述した3.1「pH測定方法」に記載している浸出スラリーを容器部51に導入するpH測定モードに切り替えることができる。
上記したように、本発明の実施形態のpH測定装置は、上記のpH測定モードと洗浄モードとを適宜切り替えることによって、第1中和処理槽21(1)から作業員が直接浸出スラリーを抜き出すことでサンプル採取する必要がなくなり、安全にpH測定を行うことができる。また、pH計52の測定部位の周囲に固形物が析出した時は、pH計52を取り外すことなく簡易に洗浄できるうえ、この洗浄時を除いて常に浸出スラリーのpH測定を行うことができるので、プラントの生産性にほとんど悪影響を及ぼすことなく安定的に予備中和処理を行うことができる。なお、上記の開閉弁53a、55a及び56aを自動弁にすると共に、シーケンサー等の制御手段によってこれら開閉弁を自動的に開閉してもよい。
4. ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法
次に、上記の本発明の実施形態のpH測定装置を用いて高圧酸浸出法(HPAL法)によりニッケル酸化鉱石を湿式製錬する方法について、図6に示すブロックフロー図を参照しながら説明する。すなわち、この図6に示すニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法は、原料のニッケル酸化鉱石のスラリーに硫酸を添加して高温高圧下で浸出処理を施す浸出工程S1と、該浸出処理により得た浸出スラリーのpHが所定の範囲内となるように予備中和する予備中和工程S2と、該予備中和された浸出スラリーを多段洗浄しながら浸出残渣を分離して、ニッケル及びコバルトと共に不純物元素を含む浸出液を得る固液分離工程S3と、該浸出液のpHを調整することで析出させた不純物元素を含む中和澱物を分離してニッケル及びコバルトと共に亜鉛を含む中和終液を得る中和工程S4と、該中和終液に硫化剤を添加することで亜鉛硫化物を生成させ、この亜鉛硫化物を分離除去してニッケル及びコバルトを含むニッケル回収用母液を得る脱亜鉛工程S5と、該ニッケル回収用母液に硫化剤を添加することでニッケル及びコバルトを含む混合硫化物を生成させてこれを回収するニッケル回収工程S6と、固液分離工程S3にて分離される浸出残渣やニッケル回収工程S6にて混合硫化物の回収時に排出される貧液を無害化する最終中和工程S7とを有する。以下、これらの工程の各々について具体的に説明する。
(1)浸出工程
浸出工程S1では、原料のニッケル酸化鉱石に対して粉砕、分級等の前処理を行うと共に適量の水を添加することで調製した鉱石スラリーに硫酸を添加し、攪拌しながら220~280℃程度、圧力3~4.5MPaG程度の高温加圧下で酸浸出処理を施すことによって該ニッケル酸化鉱石に含まれるニッケルやコバルト等の有価金属を浸出させる。
この浸出工程S1で原料鉱石に用いるニッケル酸化鉱としては、主としてリモナイト鉱及びサプロライト鉱等のいわゆるラテライト鉱である。ラテライト鉱は一般的にニッケルの含有量が0.8~2.5質量%であり、ニッケルは水酸化物又はケイ苦土(ケイ酸マグネシウム)鉱物の形態で含まれている。また、ラテライト鉱は鉄の含有量が10~50質量%であり、鉄は主として3価の水酸化物(ゲーサイト)の形態で含まれているが、一部2価の鉄がケイ苦土鉱物に含まれている。なお、浸出工程S1で用いる原料鉱石は、上記のラテライト鉱の他、ニッケル、コバルト、マンガン、銅等の有価金属を含有する酸化鉱石が用いられることがあり、例えば深海底に賦存するマンガン瘤等を挙げることができる。
この浸出工程S1における浸出処理では、下記式[1]~[3]で表される浸出反応と、下記式[4]及び[5]で表される高温熱加水分解反応とが生じ、ニッケル、コバルト等の硫酸塩としての浸出と、浸出された硫酸鉄のヘマタイトとしての固定化が行なわれる。ただし、鉄イオンの固定化は完全には進行しないため、通常、得られる浸出スラリーの液部分には、ニッケル、コバルト等の他に2価と3価の鉄イオンが含まれる。
「浸出反応」
[式1]
MO+HSO→MSO+H
(式中Mは、Ni、Co、Fe、Zn、Cu、Mg、Cr、Mn等を表す。)
[式2]
2Fe(OH)+3HSO→Fe(SO+6H
[式3]
FeO+HSO→FeSO+H
「高温熱加水分解反応」
[式4]
2FeSO+HSO+1/2O→Fe(SO+H
[式5]
Fe(SO+3HO→Fe+3HSO
浸出工程S1における硫酸の添加量としては、特に限定されるものではないが、原料鉱石中の鉄が浸出されるように過剰量が添加されることが多い。例えば、原料鉱石1トン当り300~400kgの硫酸が一般的に添加される。この原料鉱石1トン当りの硫酸添加量が300kg未満では酸浸出処理が不十分になるおそれがあり、逆に400kgを超えてもあまり効果が変わらない場合が多い。なお、浸出工程S1では、後工程の固液分離工程S3で生成されるヘマタイトを含む浸出残渣の濾過性の観点から、浸出液のpHが0.1~1.0となるようにpH調整することが好ましい。
この浸出工程S1の酸浸出処理は、図1に示すプラントでは浸出設備(高圧酸浸出設備)10にて実施することができる。浸出設備10は、ニッケル酸化鉱石に対する浸出処理を施す複数(n)系列(図2ではnが2系列の場合が例示されている)の浸出処理槽11(1~n)で構成されており、つまり、原料鉱石を複数の浸出処理槽11(1~n)で並行して処理できるようになっている。なお、以下の説明では、系列数を特定しない場合は「浸出処理槽11(x)」と表記する。また、後述する第1中和処理槽21(1~n)やpH測定装置50(1~n)についても、同様に「第1中和処理槽21(x)」や「pH測定装置50(x)」と表記する。
浸出設備10を構成する各系列の浸出処理槽11(x)には、オートクレーブと称する円筒形状の容器を横向きにしてその内部をオーバーフロー可能な隔壁で撹拌機付きの複数の貯留部に区分した加圧容器が好適に用いられる。かかる構造の浸出処理槽11(x)の複数の貯留部のうちの最も上流側に、前段の例えば前処理工程において粉砕、分級等により粒度を揃えると共に水を添加することで調製した鉱石スラリーが装入される。装入された鉱石スラリーは、上記隔壁の上端部をオーバーフローしながら隣接する貯留部に順次移送され、その間に酸浸出処理が施された後、最も下流側の貯留部から抜き出される。
上記のオートクレーブに代表される浸出処理槽11(x)の大きさには特に限定はないが、操業実績のあるものと同程度の大きさのものを用いることが好ましい。例えば、浸出スラリーの生産量がニッケル量換算で1.0~2.0万トン/年のものを用いることが好ましい。このように、従来用いられてきた浸出処理槽を複数基並列に配置して鉱石スラリーを分配して酸浸出処理することで、機器のスケールアップに伴うリスクを回避できるうえ、ニッケルコバルト混合硫化物の生産計画に合わせてニッケル酸化鉱石の処理量を増減させる場合が生じたときに柔軟に対応することができる。
(2)予備中和工程
予備中和工程S2では、前工程の浸出工程S1にて生成した浸出スラリーのpHを所定範囲内に調整する。高圧酸浸出法による浸出処理を行う浸出工程S1では、前述したように浸出率を向上させる観点から過剰量の硫酸が添加されるため、浸出処理槽11(x)から抜き出される浸出スラリーにはフリー硫酸(浸出反応に関与しなかった余剰の硫酸)が含まれており、そのpHは非常に低い。そこで、予備中和工程S2では、次工程の固液分離工程S3における多段洗浄時の洗浄効率を高めるため、浸出スラリーのpHを好ましくは2~6程度に調整する。
この多段洗浄処理に供する浸出スラリーのpHが2より低いと、該多段洗浄の設備を耐酸性にする必要が生じるため設備コストが高くなる。逆に浸出スラリーのpHが6より高いと、浸出スラリー中の浸出液に含まれる浸出したニッケルが、洗浄の過程で析出して浸出残渣として排出されるのでニッケル回収率が低下するおそれがある。なお、実操業においては、上述したpH範囲のうち、浸出工程S1における浸出処理の操業状況や、固液分離工程S3において用いる洗浄水のpH(酸性雨の場合はpH5程度)等の条件により適切な設定値を選択すればよい。浸出スラリーのpHの調整方法には特に限定はないが、例えば炭酸カルシウムスラリー等の中和剤を添加することによって所定の範囲内に良好に調整することができる。
この予備中和工程S2の予備中和処理は、図1に示すプラントでは予備中和設備20にて実施することができる。予備中和設備20は、第1中和処理槽21(1~n)と第2中和処理槽23の2段階で中和処理できるようになっている。これらのうち、第1段目の第1中和処理槽21(1~n)は、上述した浸出設備10を構成する浸出処理槽11(1~n)にそれぞれ系列同士対応している。一方、第2段目の第2中和処理槽23は、単一の系列からなり、第1段目の第1中和処理槽21(1~n)で処理された浸出スラリーは、合流した後に第2段目の第2中和処理槽23に装入されるようになっている。
例えば、図2に示すように、浸出設備10が2系列で構成される場合は、第1系列の浸出処理槽11(1)及び第2系列の浸出処理槽11(2)に対応して、第1系列の第1中和処理槽21(1)及び第2系列の第1中和処理槽21(2)がそれぞれ設けられている。一方、第2中和処理槽23は単一系列であるため1基のみで構成されており、第1中和処理槽21(1)及び第1中和処理槽21(2)でそれぞれ処理された浸出スラリーは、合流した後に第2中和処理槽23に装入される。
ところで、通常の操業においては、複数系列の中和処理槽によって浸出スラリーを予備中和した場合は、これら複数系列の中和処理槽から排出される予備中和後のスラリーは、例えばpH等の点でバラついている場合が多く、よって性状が不均一である。このような各系列間で不均一な性状の浸出スラリーに対して、以降の工程も系列ごとに別々に処理を行った場合は、反応等にバラつき等が生じて、効率的な操業や品質管理ができなくなるおそれがある。
そこで、上述のように、予備中和設備20では第1中和処理槽21(1~n)及び第2中和処理槽23の2段階で中和処理槽を構成することで予備中和処理を上工程と下工程とに分けると共に、第1段目の第1中和処理槽21(1~n)までを複数(n)系列とし、第2段目の第2中和処理槽23以降を1系列に統合している。このように構成することにより、第2段目の第2中和処理槽23に装入される浸出スラリーは合流後であるため性状のバラつきが解消されており、よって第2段目の予備中和処理以降は均一な浸出スラリーとして処理することができる。なお、この第2段目の第2中和処理槽23は、滞留槽(バッファータンク)としての役割を担わせることもできるので、後工程の固液分離工程S3に供給する浸出スラリーの流量調整が可能になり、安定的に固液分離工程S3で処理することができる。
また、浸出工程S1の処理を行う浸出処理槽11(1~n)を複数系列とすることで、ニッケル酸化鉱石の処理量の増減に対応できるようにしつつ、その後工程の予備中和工程S2において複数系列で処理した浸出スラリーを合流させることによって、浸出処理後の早い段階で1系列で処理させることができ、よってプラントを構成する機器の数を削減することができる。これにより、設備コストをあまりかけることなく、ニッケル酸化鉱石の処理量の増減にフレキシブルに対応させることが可能になる。
この予備中和設備20における具体的な中和方法としては、対応する系列の浸出処理槽11(x)から排出されるpHの低い浸出スラリーを、第1中和処理槽21(x)に受け入れ、ここで例えば炭酸カルシウムスラリー等の中和剤を添加することによって浸出スラリーの予備中和処理が行われる。その際、第1中和処理槽21(x)には、上記した本発明の実施形態のpH測定装置50(x)が設けられているので、迅速かつ正確にpH測定を行うことができる。しかも、pH計52の測定部位の洗浄が行われているとき以外は常時pH測定が可能であるため、第1中和処理槽21(x)でpHが変動した場合であっても直ちにその変動したpHを測定することができる。これにより、最適な量の中和剤をタイムリーに第1中和処理槽21(x)に添加することが可能になる。
このようにして第1段目を構成する複数系列の第1中和処理槽21(1~n)にて中和された浸出スラリーは、これら複数系列の第1中和処理槽21(1~n)から抜き出されて合流した後、第2段目の第2中和処理槽23に装入される。ここで必要に応じて中和剤が添加された後、予備中和された浸出スラリーとして排出される。このように、第2段目の第2中和処理槽23においても、浸出スラリーのpHの微調整を行うために中和剤を添加してもよい。これにより、より安定的に、pH調整された浸出スラリーを後工程の固液分離処理に供することができる。なお、上記の説明では、pH測定装置50(x)が第1中和処理槽21(x)に設けられた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、第1中和処理槽21(x)に代えて、あるいは第1中和処理槽21(x)に加えて第2中和処理槽23にpH測定装置50(x)を設けてもよい。
(3)固液分離工程
固液分離工程S3では、前工程の予備中和工程S2にてpH調整された後の浸出スラリーをシックナー等の固液分離設備に導入して洗浄液で多段洗浄しながら浸出残渣を分離除去する連続向流洗浄法(CCD法:Counter Current Decantation)により、ニッケル及びコバルトのほか不純物元素として亜鉛を含む浸出液(粗硫酸ニッケル水溶液)を回収する。
具体的には、多段に連結した固液分離槽としての例えばシックナー群の最も上流側及び最も下流側に、浸出スラリー及び洗浄液をそれぞれ導入してこれらを互いに向流に流すことで、複数段のシックナーにおいて浸出残渣の沈降物としての濃縮と、浸出スラリーの洗浄とを繰り返すことができ、これにより浸出残渣に付着するニッケル分を洗浄液による希釈の度合いに応じて効率的に減少させることができるうえ、湿式製錬プラントの系外から導入する洗浄液を増やすことなくニッケル及びコバルトの回収率を95%以上確保することが可能になる。
上記シックナーに導入する洗浄液には特に限定はないが、ニッケルをほとんど含んでおらず且つ固液分離に悪影響を及ぼさないものを用いることが好ましく、pH1~3程度の水溶液を用いることがより好ましい。この洗浄液のpHが3よりも高いと、浸出液中にアルミニウムが含まれる場合には嵩の高いアルミニウム水酸化物が生成され、浸出残渣の沈降不良の原因となる。上記の条件を満たす洗浄液としては、例えば後工程のニッケル回収工程S6の固液分離時に排出される低pH(pH1~3程度)の貧液を挙げることができる。また、各シックナーには凝集剤供給設備等から供給される凝集剤を添加するのが好ましい。その際使用する凝集剤としては、特に限定するものではないが、例えばアニオン系の凝集剤を用いることができる。
この固液分離工程S3の固液分離処理は、図1に示すプラントでは固液分離設備30にて実施することができる。固液分離設備30は、例えば6段の重力沈降により固液分離を行うシックナー群(第1CCD~第6CCD)を直列に連結させて構成する。この固液分離設備30には、前工程の予備中和工程S2において予備中和された(すなわちpH調整された)浸出スラリーが第2スラリーポンプ24により移送されて第1段目のシックナー(第1CCD)に装入される。一方で、洗浄液(洗浄水)は、最終段の第6段目のシックナー(第6CCD)に装入される。
この固液分離設備30では、上記の第1CCDに装入された浸出スラリーは、この第1CCDから第2CCD、第3CCD、・・・、及び第6CCDへと順次移送され、その過程で第6CCDに装入された洗浄液との向流接触が行なわれると共に、浸出スラリー中の残渣の重力沈降分離が繰り返し行なわれることで、残渣に付着したニッケル等の有価金属を含む浸出液が洗い流されていく。これにより、上記の浸出液が殆ど付着していない残渣が最終段の第6CCDから排出される。具体的には、残渣に付着した水分中のニッケル濃度はほぼ0g/Lであり、最大でも0.5g/L程度まで洗浄された残渣が最終段の第6CCDから排出される。このようにして排出された残渣は、最終中和工程S7に移送されて無害化処理される。
一方で、最終段の第6CCDに装入された洗浄液は、この第6CCDから第5CCD、第4CCD、・・・、及び第1CCDへと上記とは逆方向に順次移送され、その過程で浸出スラリー中の残渣に付着した水分を取り込んでいく。これにより、洗浄液中のニッケル等の有価金属の濃度が上昇していき、最終的に第1CCDから浸出液として排出され、次工程の中和工程S4に移送される。具体的には、第6CCDに装入された洗浄液中の有価金属の濃度としては、例えばニッケル濃度では、装入時点でほぼ0g/Lであったものが、第6CCDから第5CCDへの移送過程で0.5g/L程度、第5CCDから第4CCDへの移送過程で1g/L程度と徐々に上昇していき、最終的に第1CCDから排出される浸出液のニッケル濃度は3g/L程度となる。
なお、上記の例では、シックナー等の固液分離槽を6段連結させて設けた例を示したが、連結段数としてはこれに限定されるものではなく、湿式製錬プラントにおける設置スペースや、製品規格、次工程以降の処理能力等を勘案して適宜設定することができる。また、回収する浸出液中の有価金属の目標とする濃度についても、同様にして適宜設定することが好ましい。また、固液分離設備30を構成する各シックナー(CCD)の液相におけるニッケル濃度も、上述した濃度に限定されるものではない。
(4)中和工程
中和工程S4では、前工程の固液分離工程S3にて分離された浸出液(粗硫酸ニッケル水溶液)のpHを調整することで不純物元素を含む中和澱物を生成し、これを分離してニッケル及びコバルトと共に亜鉛を含む中和終液を得る。具体的には、中和工程S4では、浸出液に対してその酸化を抑制しながら、得られる中和終液のpHが4以下、好ましくは3.0~3.5、より好ましくは3.1~3.2になるように炭酸カルシウム等の中和剤を添加し、溶液中に残留する3価の鉄イオンやアルミニウムイオン等の不純物から中和澱物を生成させる。この中和澱物をスラリーの形態で除去し、ニッケル回収用母液の元となる中和終液を回収する。
中和工程S4における中和処理は、例えば中和反応を行う中和反応槽と、中和反応により生成した中和澱物を重力沈降により分離除去して中和終液を得るシックナー等の分離処理槽とからなる単一系列の中和設備で実施することができる。この中和設備における中和反応槽に、上述した固液分離設備30における第1CCDから排出される浸出液(粗硫酸ニッケル水溶液)を装入するとともに、炭酸カルシウム等の中和剤を投入して中和反応を生じさせる。この中和反応により生成した3価の鉄からなる中和澱物を含むスラリーが上記分離処理槽に装入され、ここで該中和澱物が重力沈降により分離されて濃縮スラリーとして分離処理槽の底部から抜き出されると共に、ニッケル回収用の母液となる中和終液が分離処理槽の上端部をオーバーフローして貯留槽等に回収された後、次工程の脱亜鉛工程S5に移送される。
(5)脱亜鉛工程
脱亜鉛工程S5では、前工程の中和工程S4で回収したニッケル及びコバルトと共に亜鉛を含む中和終液に硫化水素ガス等の硫化剤を添加して硫化処理を施すことにより亜鉛硫化物を生成させ、この亜鉛硫化物を分離除去してニッケル及びコバルトを含むニッケル回収用母液(脱亜鉛終液)を得る。この硫化処理は、例えば微加圧された容器内に中和終液を導入し、更に気相中へ硫化水素ガス等を吹き込むことによって、ニッケル及びコバルトに対して亜鉛を選択的に硫化することが可能になる。
脱亜鉛工程S5における脱亜鉛処理は、脱亜鉛設備にて実施することができる。この脱亜鉛設備は単一系列からなり、例えば、中和終液に対し硫化水素ガス等を吹き込んで硫化反応を行う硫化反応槽と、硫化反応後液から亜鉛硫化物を分離除去するフィルター装置とで構成される。硫化反応槽では、上述した中和工程S4で回収された中和終液が装入されるとともに、硫化水素ガス等の硫化剤が吹き込まれて硫化処理が施される。一方、フィルター装置は、例えばろ布(フィルタークロス)からなり、ここに亜鉛硫化物を含んだ硫化反応後液を導入することで、亜鉛硫化物が分離され、ニッケル回収用母液を回収することができる。得られたニッケル回収用母液は、次のニッケル回収工程S6に移送される。
(6)ニッケル回収工程
ニッケル回収工程S6では、脱亜鉛工程S5にて不純物元素である亜鉛を亜鉛硫化物として分離除去することで得たニッケル回収用母液に硫化水素ガス等の硫化剤を吹き込んで硫化反応を生じさせ、ニッケル及びコバルトを含む混合硫化物(ニッケルコバルト混合硫化物)を生成させる。ニッケル回収用母液は、ニッケル酸化鉱石の浸出液に対して中和工程S4や脱亜鉛工程S5で不純物成分を除去することで得た硫酸溶液であるが、不純物成分として鉄、マグネシウム、マンガン等が数g/L程度含まれている場合がある。しかしながら、これら不純物成分は、ニッケル及びコバルトに比べて硫化物としての安定性が低く、よって上記混合硫化物にはほとんど含有されない。
ニッケル回収工程S6におけるニッケル回収処理は、ニッケル回収設備にて実施することができる。このニッケル回収設備は単一の系列からなり、例えばニッケル回収用母液に対し硫化水素ガス等を吹き込んで硫化反応を行う硫化反応槽と、硫化反応後液からニッケルコバルト混合硫化物を分離回収する固液分離槽とで構成される。ニッケル回収設備における硫化反応槽では、上述した脱亜鉛工程S5で回収したニッケル回収用母液が装入されると共に、硫化水素ガス等の硫化剤が吹き込まれて硫化処理が行なわれ、ニッケルコバルト混合硫化物が生成する。
一方、固液分離槽は、例えばシックナー等によって構成され、ここに導入されたニッケルコバルト混合硫化物を含む硫化反応後のスラリーは、重力沈降により沈殿物であるニッケルコバルト混合硫化物がシックナーの底部より回収される。一方で、混合硫化物が除去された液相側は、シックナー上端部をオーバーフローすることで貧液として回収される。なお、回収した貧液は、ニッケル等の有価金属濃度の極めて低い溶液であり、硫化されずに残留した鉄、マグネシウム、マンガン等の不純物元素を含む。この貧液は、最終中和工程S7に移送されて無害化処理される。
(7)最終中和工程
最終中和工程S7では、上述した固液分離工程S3における固液分離処理で多段に設けた固液分離槽の最終段(例えば第6CCD)から排出される浸出残渣や、ニッケル回収工程S6にて固液分離時に排出される、鉄、マグネシウム、マンガン等の不純物元素を含む貧液等に対して、排出基準を満たす所定のpH範囲内に収まるようにpH調整(無害化処理)が施される。このpH調整方法としては、限定するものではないが、例えば炭酸カルシウムスラリー等の中和剤を添加する方法を挙げることができる。
最終中和工程S7における中和処理は、最終中和設備にて実施することができる。最終中和設備は例えば単一系列の最終中和処理槽で構成され、ここに固液分離工程S3で分離除去される浸出残渣と、ニッケル回収工程S6で固液分離時に排出される貧液とが装入される。この最終中和処理槽内において、上記の浸出残渣と貧液とが混合されながら、中和剤によって所定のpH範囲に調整され、廃棄スラリー(テーリング)となる。このようにして最終中和処理槽にて生成されたテーリングは、テーリングダム(廃棄物貯留場)に移送される。
10 浸出設備
11(1~n) 浸出処理槽
20 予備中和設備
21(1~n) 第1中和処理槽
22(1~n) 第1スラリーポンプ
23 第2中和処理槽23
24 第2スラリーポンプ
25(1~n) 循環配管系
26(1~n) 循環ポンプ
30 固液分離設備
50(1~n) pH測定装置
51 容器部
51a~d 接続口
52 pH計
53 処理液導入管
53a 開閉弁
53b 流量調整弁
54 第1排出管
55 洗浄液供給管
55a 開閉弁
56 第2排出管
56a 開閉弁

Claims (6)

  1. 処理槽の上方に設けられた円筒形状の容器部と、前記容器部の内側に測定部位が位置するように設けられたpH計とを有するpH測定装置であって、前記容器部には、前記処理槽から抜き出された処理液を昇圧するポンプの吐出側配管から分岐し且つ開閉弁を具備する処理液導入管と、洗浄液供給源に一端部が接続しており且つ開閉弁を具備する洗浄液供給管と、前記容器部からオーバーフローにより排出される処理液又は洗浄排液を前記処理槽に回収する第1排出管と、前記容器部の底部から排出される処理液又は洗浄排液を前記処理槽に回収する、開閉弁を具備する第2排出管とが接続されているpH測定装置。
  2. 前記処理槽が、ニッケル酸化鉱石に浸出処理を施す浸出設備から排出される浸出スラリーに対して中和処理を施す中和処理槽である、請求項1に記載のpH測定装置。
  3. 前記処理液導入管が、前記第1排出管よりも低い位置に接続されている、請求項1又は2に記載のpH測定装置。
  4. 前記洗浄液供給管が、前記第1排出管よりも高い位置に接続されている、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のpH測定装置。
  5. 前記容器部において、前記処理液導入管の接続部よりも上方であって且つ前記第1排出管の接続部よりも下方に前記測定部位が位置している、請求項1及至4のいずれか1項に記載のpH測定装置。
  6. ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法であって、ニッケル酸化鉱石に水を加えて調製した鉱石スラリーに硫酸を添加して高温高圧下で浸出処理を施す浸出工程と、該浸出処理により得た浸出スラリーに中和剤を添加することでpH調整を行う予備中和工程と、該pH調整された浸出スラリーを多段洗浄しながら残渣を分離することで、ニッケル及びコバルトを含む浸出液を得る固液分離工程とを含んでおり、前記予備中和工程において、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のpH測定装置で測定したpH値に基づいてpH調整を行うニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法。
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