JP2019157236A - 固液分離処理方法、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法 - Google Patents

固液分離処理方法、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法 Download PDF

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Abstract

【課題】固形分を含むスラリーから固形分を分離した溶液を得る固液分離処理において、前後の工程での負荷変動に依らずに、凝集剤の使用量を低減させながら目的とする濁度の溶液を得る方法を提供する。【解決手段】本発明は、周縁部に上澄み液を排出するオーバーフロー部14と、中心部に垂直に配設されたフィードウェル13とを有する沈降分離槽12と、撹拌槽11と、を備えたシックナー10を多段に設け、スラリーを洗浄液により多段洗浄しながらスラリー中の固形分を分離し、固形分が除去された溶液を得る固液分離処理方法であって、少なくとも第1段目のシックナーにおいて、スラリーの受け入れ量を監視し、その受け入れ量に応じて決定される量の凝集剤を、第1段目のシックナーのフィードウェル13に添加する。スラリーとして、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスにおいて硫酸により浸出処理を施して得られる浸出スラリーを対象とすることができる。【選択図】図3

Description

本発明は、例えばニッケル酸化鉱石を硫酸浸出して得られる浸出スラリー等の固形分を含むスラリーに対する固液分離処理方法、及びその固液分離処理方法を用いたニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法に関する。
近年、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬法として、硫酸を用いた高圧酸浸出法(High Pressure Acid Leach)が注目されている。この方法は、乾燥及び焙焼工程等の乾式処理工程を含まず、一貫した湿式工程からなるので、エネルギー的及びコスト的に有利であるとともに、ニッケル品位を50重量%程度まで向上させたニッケルコバルト混合硫化物を得ることができるという利点を有している。
具体的に、ニッケルコバルト混合硫化物を得るための高圧酸浸出法によるニッケルの湿式製錬法としては、例えば以下の工程を含む。
[1]ニッケル酸化鉱石を高温加圧酸浸出して浸出スラリーを得る浸出工程
[2]浸出スラリーを固液分離してニッケル及びコバルトのほかに不純物元素を含む粗硫酸ニッケル水溶液である浸出液を得る固液分離工程
[3]浸出液に中和剤を添加して中和処理を施し、不純物元素を除去する中和工程
[4]中和後液を硫化反応槽内に導入し、硫化水素ガス等の硫化剤を添加して、浸出液中に含まれる亜鉛を硫化物として除去する脱亜鉛工程
[5]脱亜鉛後液を硫化反応槽内に導入し、硫化水素ガス等の硫化剤を添加して、脱亜鉛後液中に含まれるニッケル及びコバルトを硫化し、ニッケルコバルト混合硫化物と製錬廃液(貧液)を得るニッケル回収工程
このニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法において、工程[2]における固液分離工程では、通常、工程[1]から得られた浸出スラリーをシックナーによって浸出液と浸出残渣とに分離すると同時に、その浸出スラリーを多段洗浄する処理が行われる。
具体的に、多段洗浄方法としては、シックナーを多段に連結させ、浸出スラリーを有価金属を含まない洗浄液に向流で接触させて残渣の付着液を洗い流す連続向流洗浄法(CCD法:Counter Current Decantation)が用いられ、これによって有価金属の回収率を向上させている。残渣を洗浄する方法としては、様々な方法が知られているが、このCCD法を用いることによって、系内に新たに導入する洗浄液を削減できるとともに、ニッケル及びコバルトを例えば90%以上の高い回収率で回収することが可能となる(例えば、特許文献1〜2を参照)。
ところで、粗硫酸ニッケル水溶液である浸出液に基づいて回収されるニッケル及びコバルの回収率は、その粗硫酸ニッケル水溶液の濁度と相関関係があることが知られている。このことから、実操業におけるニッケル及びコバルトの回収率は、得られる粗硫酸ニッケル水溶液の濁度で管理されている。具体的に、濁度の値としては、濁度計(例えば、HACH社製の2100P型散乱光式濁度計)による測定数値で200NTU以下である。
このことは、粗硫酸ニッケル水溶液の透明度が高いほど(すなわち濁度が低いほど)、固形分の凝集が進行し、また付着水の洗浄が十分に行われていることを意味する。このような粗硫酸ニッケル水溶液からなる浸出液では、不純物が除去されて、その浸出液から高い回収率でニッケル及びコバルトを回収できることとなり、良好な相関関係が成立する。
CCD法によって多段洗浄する際には、その段数(シックナーの連結段数)が多ければ多いほど、固形分の凝集と付着液の洗浄が進むため、粗硫酸ニッケル水溶液の透明度が高くなり、有価金属の回収率は向上することになる。しかしながら、設置スペースの制限や初期投資の制限があるため、無制限に段数を増加させることはできない。逆に言えば、より少ない段数であっても従来と同様の回収率を実現することが望まれている。
従来、例えば特許文献1〜2に記載の技術による操業では、ニッケル及びコバルトの回収率を95%以上(粗硫酸ニッケル水溶液の濁度200NTU以下)とするためには、少なくとも5段による多段洗浄が必要となり、6段〜7段の多段洗浄を行うことが一般的であった。
凝集剤の添加量を増大させることで、得られる粗硫酸ニッケル水溶液の濁度を低く保つことができる。ところが、ランニングコストの増大や、得られる粗硫酸ニッケル水溶液の粘性の上昇を招き、下工程での濾過機における濾布の目詰まり等の不具合の発生につながり操業の維持が困難となる。このことから、より少ない凝集剤添加量で、得られる粗硫酸ニッケル水溶液の濁度を低く保つことが望ましく、好ましくは200NTU〜1000NTUで管理することが望まれる。
また、固液分離工程の下工程に位置される中和工程では、得られた粗硫酸ニッケル水溶液(浸出液)に中和剤を添加して中和反応を生じさせることで、酸化鉄を主とする残渣(中和澱物)が発生するため、シックナー等を用いて中和後スラリーを固液分離することが必要になる。この点においても、固液分離工程での固液分離処理により得られる粗硫酸ニッケル水溶液の濁度を200NTU〜1000NTUの範囲で管理することで、中和工程での固液分離処理を経て得られる粗硫酸ニッケル水溶液の濁度も有効に低下させることが可能となる。
ところで、ニッケル酸化鉱石からニッケルを回収する高温加圧酸浸出に基づく湿式製錬方法における固液分離工程では、その前後の工程での負荷変動に応じて、都度、固液分離処理の負荷を変動させる必要がある。
しかしながら、目的とする濁度の粗硫酸ニッケル水溶液を得て、かつ、シックナーの沈降分離槽の下部から抜き出されて直後のシックナーの撹拌槽に装入されるスラリーにおいて高い固形分濃度のスラリーを得るには、その負荷に応じて、過去の操業データ及び作業者の経験則に基づいて、凝集剤添加量を変更することが必要となる。また加えて、ベッドレベル(完全沈降したスラリー層の厚み)の測定治具を用いて、作業者による凝集状態の確認と、最適なベッドレベルの維持、シックナーの撹拌機に掛かるトルク負荷に応じたシックナーからのスラリー抜き出し量の調整が必要となる。
そのため、固液分離工程の前後の工程の負荷が変動したときには、各シックナーの安定的な管理が困難となり、しばしば凝集剤不足による凝集性の悪化やベッドレベルの変動を引き起こしていた。特に、凝集性の悪化により、シックナー下部にスラリー浮遊状態の層が形成された際には、作業者による感度測定ではその凝集状態の判断が困難であり、また、測定頻度が少ないと沈降状態が改善しているのか悪化しているのか時系列情報が得られないことから、対応が遅れ、結果としてスラリーが十分沈降せずにオーバーフローするというトラブルが発生していた。
また、シックナーの撹拌機に掛かるトルク負荷を遠隔にて連続監視していても、各シックナーからの抜き出し量が適正量から外れていれば、トルク負荷の増減を招くため、凝集剤添加量の過不足に起因するものなのか凝集性の悪化によるものなのかの判断が困難であった。このため、特に、固液分離工程の前後の工程の負荷が低下した際には、凝集剤を過剰に添加する管理に頼らざるを得ず、結果として凝集剤使用量の増大を招き、最悪の場合には、第1段目のシックナーから得られる粗硫酸ニッケル水溶液の粘性を上昇させ、下工程でのトラブルを招く事態も発生していた。
特開2015−061951号公報 特開2014−138918号公報
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、固形分を含むスラリーからその固形分を分離した溶液を得る固液分離処理において、その前後の工程での負荷変動に依らずに、凝集剤の使用量を低減させながら、目的とする濁度の溶液を得る方法を提供することを目的とする。
(1)本発明の第1の発明は、周縁部に上澄み液を排出するオーバーフロー部と、中心部に垂直に配設された筒状のフィードウェルとを有する沈降分離槽と、撹拌槽と、を備えたシックナーを多段に設けて、スラリーを洗浄液により多段洗浄しながら該スラリー中の固形分を分離し、該固形分が除去された溶液を得る固液分離処理方法であって、第1段目のシックナーにおいて、前記スラリーの受け入れ量を監視して、該受け入れ量に応じて決定される量の凝集剤を、該第1段目のシックナーのフィードウェルに添加する、固液分離処理方法である。
(2)本発明の第2の発明は、第1の発明において、前記スラリーは、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスにおいて該ニッケル酸化鉱石に対して硫酸により浸出処理を施して得られる浸出スラリーである、固液分離処理方法である。
(3)本発明の第3の発明は、第1又は第2の発明において、第2段目以降のシックナーにおいては、直前のシックナーからの固形分を含むスラリーの受け入れ量を監視して、該受け入れ量に応じて決定される量の凝集剤を、そのシックナーにおけるフィードウェルに添加する、固液分離処理方法である。
(4)本発明の第4の発明は、第1乃至第3のいずれかの発明において、前記第1段目のシックナーにおけるスラリー流量に対する凝集剤の添加流量は、20g/m〜35g/mであり、第2段目以降のシックナーにおけるスラリー流量に対する凝集剤の添加流量は、10g/m〜20g/mである、固液分離処理方法である。
(5)本発明の第5の発明は、第1乃至第4のいずれかの発明において、前記第1段目のシックナーのオーバーフロー部から排出される上澄み液の濁度は、200NTU〜1000NTUである、固液分離処理方法である。
(6)本発明の第6の発明は、第1乃至第5のいずれかの発明において、前記洗浄液は、pHが1〜3の水溶液である、固液分離処理方法である。
(7)本発明の第7の発明は、第2の発明において、前記洗浄液は、前記ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスにおいて、当該固液分離処理方法によって前記浸出スラリーから固形分を除去して得られる浸出液に対して硫化処理を施して得られる硫化後液である、固液分離処理方法である。
(8)本発明の第8の発明は、第1乃至第7のいずれかの発明において、前記シックナーの段数は、4段〜6段である、固液分離処理方法である。
(9)本発明の第9の発明は、ニッケル酸化鉱石に硫酸を添加して高温加圧下で浸出して得られた浸出液からニッケル及びコバルトを回収するニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法であって、周縁部に上澄み液を排出するオーバーフロー部と、中心部に垂直に配設された筒状のフィードウェルとを有する沈降分離槽と、撹拌槽と、を備えたシックナーを多段に設けて、前記ニッケル酸化鉱石を浸出して得られた浸出スラリーを多段洗浄しながら該浸出スラリー中の浸出残渣を分離して浸出液を得る固液分離処理に際し、第1段目のシックナーにおいて、前工程からの前記スラリーの受け入れ量を監視して、該受け入れ量に応じて決定される量の凝集剤を、該第1段目のシックナーにおけるフィードウェルに添加する、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法である。
本発明によれば、固形分を含むスラリーからその固形分を分離した溶液を得る固液分離工程において、その前後の工程での負荷変動に依らずに、凝集剤の使用量を低減させながら、目的とする濁度の溶液を得ることができる。例えば、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスにおける固液分離工程においては、浸出工程等の前後の工程での負荷変動に依らずに、凝集剤の使用量を低減させながら、目的とする濁度の粗硫酸ニッケル水溶液を得ることができる。
ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスの流れの一例を示す工程図である。 シックナーを多段に連結させてCCD法を実行する固液分離装置の構成の一例を示す構成図である。 シックナー(1段のみ)の構成図である。
以下、本発明の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。
≪1.固液分離処理方法の概要≫
本実施の形態に係る固液分離処理方法は、スラリー中に含まれる沈殿物等の固形分を分離して上澄みを構成する溶液を得る方法である。そのスラリーとしては、例えば、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスにおいてそのニッケル酸化鉱石に対して硫酸により浸出処理を施して得られる浸出スラリーを対象とすることができる。
具体的に、この固液分離処理方法では、固液分離装置として、その周縁部に上澄み液を排出するオーバーフロー部と、その中心部に垂直に配設された筒状のフィードウェルとを有する沈降分離槽と、撹拌槽と、を備えたシックナーを用い、このシックナーを多段に設けて、処理対象となるスラリーを多段洗浄しながら固形分を分離除去する。なお、多段に設けたシックナーを、前工程からのスラリーが供給されるシックナーを「第1段目のシックナー」として、以降、第2段目のシックナー、第3段目のシックナー、とのように順に称する。
そして、本実施の形態に係る固液分離処理方法においては、少なくとも、第1段目のシックナーにおいて、固液分離処理の対象のスラリーの受け入れ量を監視して、その受け入れ量に応じて決定される量の凝集剤を、第1段目のシックナーにおけるフィードウェルに添加することを特徴としている。
また、好ましくは、第2段目以降のシックナーにおいても、直前のシックナーからの固形分を含むスラリーの受け入れ量を監視して、その受け入れ量に応じて決定される量の凝集剤を、そのシックナーにおけるフィードウェルに添加する。
この固液分離処理方法では、各シックナーに供給される(受け入れられる)スラリーの流量に応じた適正な凝集剤の添加流量を予め算定し、そのスラリー流量に対する凝集剤の添加流量比率として決定しておく。そして、固液分離装置において、決定した凝集剤の添加流量比率を、予めDCS(分散制御システム)へ入力しておき、例えば流量計によって検出したスラリー流量に対し、凝集剤の添加流量を自動的に制御するようにする。
このような固液分離処理方法によれば、当該固液分離処理を行う固液分離工程の前後の工程で負荷変動が生じた場合であっても、スラリーの受け入れ量に応じて決定される量で凝集剤の添加するようにしていることから、その負荷変動による影響を低減させることができ、安定的に処理を行うことができる。また、前後の工程にて負荷変動が生じた場合でも、そのスラリーの受け入れ量に応じて決定される一定量の凝集剤を添加するために、凝集剤の過剰添加等を抑制することができ、結果として凝集剤の使用量を有効に減少させることができる。
また、この固液分離処理方法によれば、固液分離装置の設置スペースを縮小させることができ、また初期の設備投資を大幅に削減することができる。また、上述のように、凝集剤の使用量の削減が図れるため、効率的な固液分離処理を行うことが可能になる。
ここで、本実施の形態に係る固液分離処理方法を適用することができるスラリーとしては、例えば、上述のようにニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスにおける、ニッケル酸化鉱石に対して硫酸により浸出処理を施して得られた浸出スラリーを用いることができる。そして、その浸出スラリーに対して固液分離処理方法を適用することで、従来の処理よりも少ない凝集剤使用量で、浸出スラリー中の浸出残渣を効果的に分離することができ、濁度を有効に低減させた粗硫酸ニッケル水溶液(浸出液)を得ることができる。
以下では、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスにおける固液分離工程での処理として当該固液分離処理方法を適用した例を具体例として示して、より具体的に説明する。
≪2.ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスについて≫
先ず、本実施の形態に係る固液分離処理方法を適用した固液分離工程を含むニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスについて説明する。このニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスは、例えば高温加圧酸浸出法(HPAL法)を用いて、ニッケル酸化鉱石からニッケル及びコバルトを浸出させて回収する湿式製錬方法である。
図1は、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスの流れの一例を示す工程図である。この湿式製錬プロセスは、ニッケル酸化鉱石に硫酸を添加して高温加圧下で浸出処理を施す浸出工程S1と、得られた浸出スラリーを多段洗浄しながら浸出残渣を分離し、ニッケル及びコバルトと共に不純物元素を含む浸出液を得る固液分離工程S2と、浸出液のpHを調整し、不純物元素を含む中和澱物を分離してニッケル及びコバルトと共に亜鉛を含む中和終液を得る中和工程S3と、中和終液に硫化剤を添加することで亜鉛を硫化物として分離し、ニッケル及びコバルトを含むニッケル回収用母液を得る脱亜鉛工程S4と、ニッケル回収用母液に硫化剤を添加することでニッケル及びコバルトの混合硫化物を生成させて回収するニッケル回収工程S5と、を有する。
[浸出工程]
浸出工程S1では、オートクレーブ等の高温加圧反応槽を用い、ニッケル酸化鉱石のスラリー(鉱石スラリー)に硫酸を添加して、例えば、温度230℃〜270℃程度、圧力3MPa〜5MPa程度の条件下で撹拌することによって、浸出液と浸出残渣とからなる浸出スラリーを生成する。
原料のニッケル酸化鉱石としては、主としてリモナイト鉱及びサプロライト鉱等のいわゆるラテライト鉱が挙げられる。ラテライト鉱のニッケル含有量は、通常、0.8重量%〜2.5重量%であり、水酸化物又はケイ酸マグネシウム鉱物として含有される。また、鉄の含有量は10重量%〜50重量%であり、主として3価の水酸化物の形態であるが、一部2価の鉄がケイ苦土鉱物に含有される。また、浸出工程S1では、このようなラテライト鉱のほかに、ニッケル、コバルト、マンガン、銅等の有価金属を含有する酸化鉱石、例えば深海底に賦存するマンガン瘤等を用いることができる。
浸出工程S1における浸出処理では、例えば下記式(1)〜(5)で表される浸出反応と高温加水分解反応が生じ、ニッケル、コバルト等の硫酸塩としての浸出と、浸出された硫酸鉄のヘマタイトとしての固定化が行われる。ただし、鉄イオンの固定化は完全には進行しないため、通常、得られる浸出スラリーの液部分には、ニッケル、コバルト等のほかに2価と3価の鉄イオンが含まれる。なお、浸出工程S1では、次工程の固液分離工程S2で分離されるヘマタイトを含む浸出残渣の濾過性の観点から、得られる浸出液のpHが0.1〜1.0となるように調整することが好ましい。
・浸出反応
MO+HSO⇒MSO+HO ・・(1)
(なお、式中Mは、Ni、Co、Fe、Zn、Cu、Mg、Cr、Mn等を表す)
2Fe(OH)+3HSO⇒Fe(SO+6HO ・・(2)
FeO+HSO⇒FeSO+HO ・・(3)
・高温加水分解反応
2FeSO+HSO+1/2O⇒Fe(SO+HO ・・(4)
Fe(SO+3HO⇒Fe+3HSO ・・(5)
鉱石スラリーを装入したオートクレーブへの硫酸の添加量としては、一般的には過剰量が添加され、例えば、鉱石1トン当り300kg〜400kgの割合とする。
なお、浸出工程S1における浸出処理により得られた浸出スラリーに対して、次工程の固液分離工程S2での処理に先立ち、中和処理を施すようにすることができる(予備中和工程)。浸出工程S1では、浸出率を向上させる観点から過剰の硫酸を加えるようにしている。そのため、得られた浸出スラリーには遊離の硫酸、すなわち浸出工程S1での浸出反応に関与しなかった余剰の硫酸が含まれており、そのpHは非常に低い。このことから、予備中和工程として、次工程以降での処理が効率よく行われるように、浸出スラリーのpHを所定の範囲に調整する。
[固液分離工程]
固液分離工程S2では、浸出工程S1を経て得られた浸出スラリーを多段洗浄し、また所定量の凝集剤を添加しながら、ニッケルやコバルト等の有価金属を含む浸出液(粗硫酸ニッケル水溶液)と浸出残渣とに分離する。
固液分離工程S2では、浸出スラリーを洗浄液と混合した後、シックナー等の固液分離装置を用いて固液分離処理を施す。具体的には、先ず、浸出スラリーが洗浄液により希釈され、次に、浸出スラリー中の浸出残渣がシックナーの沈降物として濃縮される。これにより、浸出残渣に付着するニッケル分をその希釈度合に応じて減少させることができる。また、シックナーを多段に連結して用いて多段洗浄しながら固液分離することにより、浸出液へのニッケル及びコバルトの回収率の向上を図ることができる。
固液分離工程S2では、次工程の中和工程S3における処理で得られる中和澱物のスラリーが移送され、浸出スラリーと共に固液分離される。また、この中和澱物スラリーは、ニッケルのロス低減の観点から、多段洗浄のうちの前段側に移送されることが好ましい。
固液分離処理における多段洗浄方法として、ニッケルを含まない洗浄液で向流に接触させる連続向流洗浄法(CCD法)を用いる。これにより、系内に新たに導入する洗浄液を削減できるとともに、ニッケル及びコバルトの回収率を高めることができる。
洗浄液としては、特に限定されず、ニッケルを含まず、工程に影響を及ぼさないものを用いることができる。その中でも、pHが1〜3の水溶液を用いることが好ましい。洗浄液のpHが高いと、浸出液中にアルミニウムが含まれる場合には嵩の高いアルミニウム水酸化物が生成され、シックナー内での浸出残渣の沈降不良の原因となる。洗浄液としては、好ましくは、後工程であるニッケル回収工程S5にて得られる低pH(pHが1〜3程度)の貧液を繰り返して利用することができる。
固液分離処理においては、固液分離装置として、周縁部に上澄み液を排出するオーバーフロー部と、中心部に垂直に配設された筒状のフィードウェルとを有する沈降分離槽と、撹拌槽と、を備えたシックナーを用いる。このようなシックナーを多段に設けて、処理対象となる浸出スラリーを多段洗浄しながら固形分である浸出残渣を分離除去する。
固液分離処理により分離された浸出液は、次工程の中和工程S3における中和処理に供される。一方で、分離された浸出残渣のスラリーは、その一部が後工程の中和工程S3で中和処理に供される浸出液に添加され、残部は、適宜排水処理が施される。
なお、固液分離工程S2における固液分離処理方法の具体的な制御、特に凝集剤の添加制御については、後で詳述する。
[中和工程]
中和工程S3では、浸出液の酸化を抑制しながら、得られた浸出液に中和剤を添加してpHを所定の範囲に調整し、不純物元素を含む中和澱物と中和終液とを生成させる。このような中和処理を施すことで、得られる中和終液中の不純物含有量を低減させて、その中和終液に対して硫化処理(ニッケル回収工程S5)を施して得られるニッケル及びコバルトを含む硫化物(製品)の品質を高めることができる。
具体的に、中和工程S3では、浸出液に中和剤を添加してpHを調整することで、中和終液と、不純物元素として例えば3価の鉄を含む中和澱物のスラリーとを生成する。中和工程S3では、このようにして浸出液に対する中和処理を施すことで、溶液中に残留する鉄イオンやアルミニウムイオン等の不純物元素を中和澱物として除去する。
[脱亜鉛工程]
脱亜鉛工程S4では、中和工程S3を経て得られた中和終液に硫化水素ガス等の硫化剤を添加して硫化処理を施すことにより、中和終液に含まれる亜鉛の硫化物を生成させ、その亜鉛硫化物を分離除去する。これにより、ニッケル及びコバルトを含むニッケル回収用母液(脱亜鉛終液)を得る。
具体的には、例えば、加圧された反応容器内にニッケル及びコバルトと共に亜鉛を含む中和終液を導入し、反応容器の気相中へ硫化水素ガスを吹き込むことによって、亜鉛をニッケル及びコバルトに対して選択的に硫化し、亜鉛硫化物とニッケル回収用母液とを生成させる。
[ニッケル回収工程]
ニッケル回収工程S5では、脱亜鉛工程S4にて不純物元素である亜鉛を硫化物として分離除去して得られたニッケル回収用母液に、硫化水素ガス等の硫化剤を吹き込んで硫化反応を生じさせ、ニッケル及びコバルトを含む硫化物(ニッケルコバルト混合硫化物)と貧液とを生成させる。
ニッケル回収用母液は、ニッケル酸化鉱石の浸出液から中和工程S3や脱亜鉛工程S4を経て不純物成分が低減された硫酸酸性溶液であり、例えばpHが2.7〜4.0で、ニッケル濃度が2g/L〜5g/L、コバルト濃度が0.1g/L〜1.0g/Lの溶液である。なお、このニッケル回収用母液には、不純物成分として鉄、マグネシウム、マンガン等が数g/L程度含まれる可能性があるが、これら不純物成分は、回収するニッケル及びコバルトに対して硫化物としての安定性が低く、生成する硫化物には含有されない。
ニッケル回収工程S5では、不純物成分の少ないニッケルコバルト混合硫化物とニッケル濃度を低い水準で安定させた貧液とを生成させ回収する。具体的には、硫化反応により得られたニッケルコバルト混合硫化物のスラリーをシックナー等の沈降分離装置を用いて沈降分離処理を施すことによって、沈殿物であるニッケルコバルト混合硫化物をシックナーの底部より分離回収する。一方で、水溶液成分はオーバーフローさせて貧液として回収する。
≪3.固液分離工程における固液分離処理について≫
次に、上述した湿式製錬プロセスにおける固液分離工程S2での処理(固液分離処理)について、より詳細に説明する。
固液分離工程S2では、シックナーを多段に連結させて構成した固液分離装置を用いて、浸出工程S1での浸出処理により得られた浸出スラリーに対して、ニッケルを含まない洗浄液を向流で接触させる連続向流洗浄法(CCD法)による多段洗浄を行いながら、その浸出スラリーに含まれる固形分(浸出残渣)を分離し、固形分が除去された粗硫酸ニッケル水溶液(浸出液)を得る。
<3−1.シックナーの構成と多段洗浄>
図2は、シックナーを多段に連結させてCCD法を行う固液分離装置の一例を示す構成図である。なお、図2に示す固液分離装置1では、シックナーを5段連結させた構成例を示しており、連結段数としてはこれに限定されないが、4段〜6段のシックナーを設けた固液分離装置であることが好ましい。
CCD法では、固液分離処理が行われる沈降分離槽と、撹拌槽と、の組合せからなるシックナーを1段として、このシックナーが複数段、例えば4段〜6段、直列に連結させた固液分離装置1を用いる。この固液分離装置1では、一端(図2中のA側)の第1段目のシックナーに浸出工程S1にて得られた浸出スラリーが装入され、他端(図2のB側)の最終段目(第5段目)のシックナーに、例えば工業用水等の洗浄水、もしくは製錬廃液(貧液)が装入される。
そして、この固液分離装置1では、装入された浸出スラリーと洗浄液とが装置内において向流で接触し、同時にA端から装入される浸出スラリーに対して凝集剤を添加することで、スラリー中の固形分を凝集させて固液分離を促進させる。
(各段のシックナー及び撹拌槽について)
ここで、図3に、図2に示した固液分離装置1の各段を構成するシックナー(1段のみ)の構成図を示す。上述したように固液分離装置1は、複数のシックナーが多段に連結されており、シックナー10は、撹拌槽11と、沈降分離槽12とから構成されている。
撹拌槽11は、その内部に撹拌軸や撹拌羽根等の撹拌部材を備えた槽である。この撹拌槽11では、浸出スラリーと、後段のシックナーから流送されたオーバーフロー液とが、それぞれ装入されて撹拌混合される。なお、最終段目(図2の例では第5段目)のシックナーの撹拌槽11には、オーバーフロー液ではなく、製錬廃液(貧液)もしくは新規の洗浄水が装入される。
このような撹拌槽11において、浸出スラリーとオーバーフロー液とが撹拌混合されることで、浸出スラリーが洗浄され、固形分に付着した付着液が洗い流される。
沈降分離槽12は、例えば円筒形状の処理槽であり、その内部に浸出スラリーが装入されて、浸出スラリー中の固形分を沈降分離させる。
沈降分離槽12には、その内部に、垂直に配設された筒状のフィードウェル13が備えられている。フィードウェル13は、例えば沈降分離槽12が円筒形状の場合には、その沈降分離槽12と略同心円状に設けられる。フィードウェル13は、撹拌槽11から供給された浸出スラリーを沈降分離槽12内に送り込む(フィードする)送路となっている。
また、沈降分離槽12には、その槽上部の周縁部に浸出スラリー中の固形分を沈降分離させて得られた上澄み液である浸出液をオーバーフロー(OF)させて排出するためのオーバーフロー部14が設けられている。オーバーフロー部14は、例えば樋のような形状となっており、後段のシックナーからのオーバーフロー液を撹拌槽11に流送させるための流路が接続されている。
なお、沈降分離槽12において、オーバーフローした溶液(以下、「オーバーフロー液」ともいう)は、上述のように前段の撹拌槽11に流送され、一方で、それ以外の固形分を含めたスラリーは、沈降分離槽12の下部から取り出されて、ポンプ15によって後段の撹拌槽11に送液される。
(多段洗浄の基本的な流れ)
次に、図3に示したような、撹拌槽11と沈降分離槽12とからなるシックナーを複数段連結させた固液分離装置1(図2)によって、浸出スラリーを多段洗浄する際の基本的な流れを説明する。なお、図2中の矢印は、浸出スラリーやオーバーフロー液の流れを示している。
先ず、第1段目のシックナーでは、その撹拌槽11内に、浸出工程S1での浸出処理により得られた浸出スラリーと、後段の第2段目のシックナーの沈降分離槽12からのオーバーフロー液とが装入されて、それらが撹拌混合される。第1段目のシックナーにおける撹拌槽11内では、浸出スラリー中の固形分に付着している付着液がオーバーフロー液によって洗浄され、その後、撹拌槽からフィードウェル13を介して、洗浄された浸出スラリーが沈降分離槽12内に装入される。
このとき、第1段目のシックナーにおいては、フィードウェル13を介して、浸出スラリーと共に、スラリー中の固形分を凝集させるための凝集剤が添加される。そして、装入された沈降分離槽12内で浸出スラリーと凝集剤とが混合され、スラリー中の固形分が凝集沈殿して分離される。
分離した固形分を含むスラリーは、沈降分離槽12の下部から抜き出されてポンプを介して後段の第2段目のシックナーの撹拌槽11に移送される。一方で、沈降分離槽12からオーバーフロー部14を経由してオーバーフローした上澄み液は、湿式製錬プロセスにおける次工程の中和工程S3に供給される。
次に、第2段目のシックナーでは、その撹拌槽11内に、前段の第1段目のシックナーの沈降分離槽12の下部から抜き出された固形分が装入されるとともに、後段の第3段目のシックナーの沈降分離槽12からのオーバーフロー液が装入されて、固形分に付着した水分がオーバーフロー液によって洗い流される。そして、撹拌槽11内で洗浄されて得られたスラリーは、フィードウェル13を介して沈降分離槽12内に装入され、スラリー中の固形分が凝集沈殿して分離される。
分離した固形分を含むスラリーは、沈降分離槽12の下部から抜き出されてポンプを介して後段の第3段目のシックナーの撹拌槽11に移送される。一方で、沈降分離槽12からオーバーフロー部14を経由してオーバーフローしたオーバーフロー液は、前段の第1段目のシックナーの撹拌槽11に接続された配管等を経由して、その撹拌槽11内に装入される。
以後、第3段目のシックナー、第4段目のシックナーにおいても、同様の手順によって固形分を含むスラリーがオーバーフロー液と向流で接触することで、多段洗浄される。
そして、最終段である第5段目のシックナーでは、その撹拌槽11内に、前段の第4段目のシックナーの沈降分離槽12の下部から抜き出された固形分が装入されるとともに、新規の洗浄水(例えば、湿式製錬プロセスにおける低ニッケル濃度のプロセス液)が装入されて、固形分に付着した水分が洗浄水によって洗い流される。そして、撹拌槽11内で洗浄されて得られたスラリーは、フィードウェル13を介して沈降分離槽12内に装入され、スラリー中の固形分が凝集沈殿して分離される。
分離した固形分を含むスラリーは、沈降分離槽12の下部からポンプで抜き取られ、浸出残渣(CCD残渣)として残渣処理される。一方で、沈降分離槽12からオーバーフロー部14を経由してオーバーフローしたオーバーフロー液は、前段の第4段目のシックナーの撹拌槽11に接続された配管等を経由して、その撹拌槽11内に装入される。
なお、このようにして、浸出スラリーに対して多段洗浄を行いながら固液分離処理を施すことによって、新規の洗浄水としては最終段のシックナーのみに装入すればよいため、その最終段以外の各段のシックナーには新規の洗浄水が不要となる。これにより、洗浄水を大幅に節約することが可能となる。
<3−2.固液分離処理の具体的な操作>
各段のシックナーからのオーバーフロー液について、ニッケルやコバルト等の有価金属の含有量としては、最終段(図2では第5段目)のシックナーからのオーバーフロー液が最も少ない。このことは、前々段(図2では第3段目)のシックナーの撹拌槽11において、既に有価金属が洗浄されている点が一つの理由として挙げられる。また、前段(図2では第4段目)のシックナーで固液分離されたスラリーと新規の洗浄水とがオーバーフローし、さらにその前段(図2では第4段目)の撹拌槽11に装入されて撹拌、洗浄されたスラリーが、最終段のシックナーに装入される点も理由として挙げられる。
一方で、最終段の前段(図2では第4段目)からのオーバーフロー液は、最終段に比べて固形分に付着している付着液中に有価金属分が多く、順次、最終段から離れるに従って有価金属分は多くなり、第1段目のシックナーからのオーバーフロー液で有価金属の含有量が最大となる。一般的には、ニッケル及びコバルトの回収率が90%以上となるようなオーバーフロー液である粗硫酸ニッケル水溶液を回収するように操業される。
また、第1段目のシックナーからのオーバーフロー液は、各段のシックナーにおいて固液分離作用を受けており、微粒子の沈降も進んでいる。そのため、第1段目のシックナーからのオーバーフロー液は、その濁度が最も低く(透明度が最も高く)なっている。具体的に、その濁度としては、200NTU〜1000NTUとなるように操業される。
ここで、本実施の形態に係る固液分離処理方法では、シックナーに対して凝集剤を添加するに際し、そのシックナーに供給される(受け入れられる)スラリーの量に応じて、適切な量の凝集剤を添加するようにしている。
より具体的には、この固液分離処理方法では、少なくとも、第1段目のシックナーにおいて、前工程(浸出工程S1等)からの浸出スラリーの受け入れ量を監視して、その受け入れ量に応じて決定される量の凝集剤を、第1段目のシックナーのフィードウェル13に添加することを特徴としている。
また、好ましくは、第2段目以降のシックナーにおいても、直前のシックナーからの固形分を含むスラリーの受け入れ量を監視して、その受け入れ量に応じて決定される量の凝集剤を、そのシックナーにおけるフィードウェル13に添加するようにする。
例えば、第1段目のシックナーにおいて、前工程からの浸出スラリーの供給量、換言すると、そのシックナーにおける浸出スラリーの受け入れ量については、撹拌槽11の所定の位置に流量計を設置し、流量計により浸出スラリー量を常時(連続的に)測定することで、前工程からの浸出スラリーの供給量、すなわち第1段目のシックナーの受け入れ量を監視することができる。
このような監視により、例えば、第1段目のシックナーの受け入れ量が減少した場合には、前工程である浸出工程S1での処理負荷(処理する鉱石スラリー量等)が小さくなったと判断することができる。一方で、第1段目のシックナーの受け入れ量が増加した場合には、前工程である浸出工程S1での処理負荷が大きくなったと判断することができる。
また、第1段目のシックナーにおいて、フィードウェル13を介して添加される凝集剤の添加量については、そのフィードウェル13の所定の位置に流量計を設置し、流量計により凝集剤添加流量を常時測定することで、凝集剤の添加量を監視することができる。
また、この固液分離処理方法では、各シックナーに供給される(受け入れられる)スラリーの流量に応じた適正な凝集剤の添加流量を予め算定し、そのスラリー流量に対する凝集剤の添加流量比率として決定しておく。そして、固液分離装置において、決定した凝集剤の添加流量比率を、予めDCS(分散制御システム)へ入力しておき、撹拌槽11に設置した流量計によって検出したスラリー流量に対し、凝集剤の添加流量を自動的に制御するようにする。
具体的には、複数パターンのスラリー流量(流量範囲)に対して、各パターンのそれぞれに適した凝集剤の添加流量の算出し、対応関係を構築しておく。例えば、第1段目のシックナーにおいては、前工程から供給される浸出スラリーの流量計により測定値に基づいて、そのスラリー流量に対応関係がある凝集剤添加流量を求める。そして、求められた凝集剤添加流量を、自動的に、フィードウェルを介して添加する。
このような固液分離処理方法によれば、固液分離工程S2の前後の工程で負荷変動が生じた場合であっても、浸出スラリーの受け入れ量に応じて決定される量で凝集剤の添加するようにしていることから、その負荷変動による影響を低減させることができ、安定的に処理を行うことができる。また、前後の工程にて負荷変動が生じた場合でも、その浸出スラリーの受け入れ量に応じて決定される一定量の凝集剤を添加するために、凝集剤の過剰添加等を抑制でき、結果として凝集剤の使用量を有効に減少させることができる。
また、最適な量の凝集剤が添加されることから、浸出スラリー中の固形分の凝集がより効果的に進行し、最終的に凝集剤量を過剰に添加することなく、第1段目のシックナーから排出されるオーバーフロー液(上澄み液)の濁度を有効に低減させることができる。具体的には、効率的に、上澄み液の濁度を200NTU〜1000NTUの範囲とすることができる。これにより、この湿式製錬プロセスを経て回収されるニッケル及びコバルトの回収率が90%以上となる粗硫酸ニッケル水溶液(浸出液)を得ることができる。
また、この固液分離処理方法によれば、固液分離装置の設置スペースを縮小させることができ、また初期の設備投資を大幅に削減することができる。また、上述のように、凝集剤の使用量の削減が図れるため、効率的な固液分離処理を行うことが可能になる。
ここで、凝集剤の総添加量としては、特に限定されるものではなく、処理対象となる浸出スラリーに含まれる固形分量等に応じて、適宜設定することができる。
また、凝集剤の添加量の比率、すなわち、各シックナーへの凝集剤添加量と受け入れるスラリーの流量比率としては、特に限定されないが、第1段目のシックナーでは20g/m〜60g/mとすることが好ましく、20g/m〜35g/mとすることが特に好ましい。また、第2段目以降のシックナーでは、10g/m〜30g/mとすることが好ましく、10g/m〜20g/mとすることが特に好ましい。
凝集剤の添加量の比率が、上述した範囲よりも少ないと、オーバーフロー液(上澄み液)の濁度の低下作用が十分に発揮されず、最終的に得られる粗硫酸ニッケル水溶液(浸出液)からのニッケル及びコバルトの回収率が90%未満となってしまう可能性がある。一方で、上述した範囲よりも添加量の比率が多いと、得られる粗硫酸ニッケル水溶液の粘性が増大し、下工程での濾過機における濾布の目詰まり等の不具合を生じさせ、濾過速度の低下に伴って操業効率が低下する可能性がある。
以下、本発明の実施例を示してより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
[実施例1]
ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスにおける固液分離工程において、浸出工程での浸出処理にて得られた浸出スラリーに対し、図2に示すようにしてシックナーを多段に連結させた固液分離装置を用いて、多段洗浄(CCD法)を行いながら、浸出スラリー中の固液分(浸出残渣)を分離して、粗硫酸ニッケル水溶液(浸出液)を得る固液分離処理を行った。以下に、固液分離処理の条件を示す。
(処理条件)
浸出スラリーのpH :2.8
浸出スラリーの流量 :1080m/hr
洗浄液 :低ニッケル濃度の工程水
洗浄液の流量 :1106m/hr
シックナーの段数 :6段
シックナーの容積 :第1段目、第2段目のシックナー=6720m
第3段目〜第6段目のシックナー=5110m
実施例1における固液分離処理では、シックナーへの凝集剤の添加を以下のように制御した。すなわち、第1段目のシックナーでは、前工程(浸出工程)からの浸出スラリーの流量(受け入れ量)を連続的に監視し、そのスラリー流量に応じて決定される量の凝集剤を、シックナーのフィードウェルに添加した。スラリー流量に応じて決定される凝集剤の量については、スラリー流量に対して、そのスラリー中の固形分を凝集させるために必要な凝集剤添加量を予め算出し、受け入れるスラリー流量に対する凝集剤流量比率として設定しておき、凝集剤の添加流量の自動制御を行って添加した。
また、第2段目のシックナーでは、前段の第1段目のシックナーの沈降分離槽の下部から抜き出されたスラリーが、第2段目のシックナーの撹拌槽に装入される流量を連続的に監視し、そのスラリー流量に応じて決定される量の凝集剤を、シックナーのフィードウェルに添加した。このときも、スラリー流量に対して、そのスラリー中の固形分を凝集させるために必要な凝集剤添加量を予め算出し、受け入れるスラリー流量に対する凝集剤流量比率として設定しておき、凝集剤の添加流量の自動制御を行って添加した。
以降、第3段目以降のシックナーにおいても、同様にして処理した。
[比較例1]
比較例1では、第1段目のシックナー及び第2段目以降のシックナーにおいて、その負荷に応じた過去のデータ及び作業者の経験則に基づき、添加する凝集剤量を適宜変更して、固液分離処理を行った。実施例1における処理と異なる点として、比較例1では、浸出スラリーの平均流量負荷の割合が実施例1での処理に対して約57%と低く、流量負荷の変動については標準偏差として実施例1と同程度で固液分離処理を行った。
[比較例2]
比較例2では、第1段目のシックナー及び第2段目以降のシックナーにおいて、その負荷に応じた過去のデータ及び作業者の経験則に基づき、添加する凝集剤量を適宜変更して、固液分離処理を行った。比較例2では、浸出スラリーの平均流量負荷の割合が実施例1での処理に対して約96%とほぼ同程度であったものの、流量負荷の変動については標準偏差として実施例1よりも小さい状況にて固液分離処理を行った。
下記表1〜3に、各実施例、比較例における固液分離処理の処理結果をまとめて示す。表1において、「粗硫酸ニッケル水溶液の濁度」とは、第1段目のシックナーのオーバーフロー樋からオーバーフローした上澄み液である粗硫酸ニッケル水溶液の濁度測定値である。なお、この濁度は、HACH社製2100P型散乱光式濁度計を用いて測定した。
Figure 2019157236
Figure 2019157236
Figure 2019157236
表1に示されるように、実施例1では、第1段目のシックナーからの粗硫酸ニッケル水溶液の平均濁度及び最大濁度が1000NTUよりも遥かに低くなり、透明度の高い溶液が得られた。粗硫酸ニッケル水溶液(浸出液)に基づいて回収されるニッケル及びコバルトの回収率は、その浸出液の濁度と相関関係がある。実施例1での固液分離処理により得られた浸出液によれば、90%以上の高い回収率で有価金属であるニッケル及びコバルトを得ることができると推測される。
一方で、表2〜3に示されるように、比較例1及び比較例2では、第1段目のシックナーからの粗硫酸ニッケル水溶液の平均濁度はそれぞれ、708NTU、849NTUであったものの、最大濁度はそれぞれ、2625NTU、1568NTUと非常に高く、管理値を満足するものではなかった。このことは、固形分の凝集が十分に行われなかったためであると考えられる。
このような実施例1及び比較例1、2を比べると、実施例1における処理によれば、浸出スラリーの流量負荷変動(前工程である浸出工程での負荷変動)に依らず、使用する凝集剤量を有効に削減でき、得られる粗硫酸ニッケル水溶液の濁度を効果的に低減させることができる、安定的な固液分離処理方法であることが分かった。
1 固液分離装置
10 シックナー
11 撹拌槽
12 沈降分離槽
13 フィードウェル
14 オーバーフロー部
15 ポンプ

Claims (9)

  1. 周縁部に上澄み液を排出するオーバーフロー部と、中心部に垂直に配設された筒状のフィードウェルとを有する沈降分離槽と、撹拌槽と、を備えたシックナーを多段に設けて、スラリーを洗浄液により多段洗浄しながら該スラリー中の固形分を分離し、該固形分が除去された溶液を得る固液分離処理方法であって、
    第1段目のシックナーにおいて、前記スラリーの受け入れ量を監視して、該受け入れ量に応じて決定される量の凝集剤を、該第1段目のシックナーのフィードウェルに添加する
    固液分離処理方法。
  2. 前記スラリーは、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスにおいて該ニッケル酸化鉱石に対して硫酸により浸出処理を施して得られる浸出スラリーである
    請求項1に記載の固液分離処理方法。
  3. 第2段目以降のシックナーにおいては、直前のシックナーからの固形分を含むスラリーの受け入れ量を監視して、該受け入れ量に応じて決定される量の凝集剤を、そのシックナーにおけるフィードウェルに添加する
    請求項1又は2に記載の固液分離処理方法。
  4. 前記第1段目のシックナーにおけるスラリー流量に対する凝集剤の添加流量は、20g/m〜35g/mであり、第2段目以降のシックナーにおけるスラリー流量に対する凝集剤の添加流量は、10g/m〜20g/mである
    請求項1乃至3のいずれかに記載の固液分離処理方法。
  5. 前記第1段目のシックナーのオーバーフロー部から排出される上澄み液の濁度は、200NTU〜1000NTUである
    請求項1乃至4のいずれかに記載の固液分離処理方法。
  6. 前記洗浄液は、pHが1〜3の水溶液である
    請求項1乃至5のいずれかに記載の固液分離処理方法。
  7. 前記洗浄液は、前記ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスにおいて、当該固液分離処理方法によって前記浸出スラリーから固形分を除去して得られる浸出液に対して硫化処理を施して得られる硫化後液である
    請求項2に記載の固液分離処理方法。
  8. 前記シックナーの段数は、4段〜6段である
    請求項1乃至7のいずれかに記載の固液分離処理方法。
  9. ニッケル酸化鉱石に硫酸を添加して高温加圧下で浸出して得られた浸出液からニッケル及びコバルトを回収するニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法であって、
    周縁部に上澄み液を排出するオーバーフロー部と、中心部に垂直に配設された筒状のフィードウェルとを有する沈降分離槽と、撹拌槽と、を備えたシックナーを多段に設けて、前記ニッケル酸化鉱石を浸出して得られた浸出スラリーを多段洗浄しながら該浸出スラリー中の浸出残渣を分離して浸出液を得る固液分離処理に際し、
    第1段目のシックナーにおいて、前工程からの前記スラリーの受け入れ量を監視して、該受け入れ量に応じて決定される量の凝集剤を、該第1段目のシックナーにおけるフィードウェルに添加する
    ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法。
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