JP2022526334A - 新たなタウ種を標的化することによるタウオパチー障害の処置の方法 - Google Patents

新たなタウ種を標的化することによるタウオパチー障害の処置の方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、新たなタウ種、特に11位のメチオニン残基から開始するタウ種に特異的に結合する抗体を使用したタウオパチー障害の処置の方法に関し、前記メチオニンはN-アルファアセチル化されている(AcMet11-Tau)。本発明はまた、この新たなタウ種に特異的に結合する抗体に関する。本発明者らは、AcMet11-Tauがタウ病理発生に関与する病理学的タウ種であることを発見した。本発明者らは、AcMet11-Tau種の脳発現によって、Thy-Tauトランスジェニックマウスにおけるタウ病理発生が増強され、少なくともタウ病理を加速することにより病理学的過程に関与することを示すことにより、AcMet11-Tau種とタウ病理の間での因果関係を実証した。本発明者らはまた、タウ病理のThy-Tau22トランスジェニックモデルにおけるこのタウ種の減少/中和によって、タウ病理及び関連する記憶障害に対する保護効果に導かれることを実証するために、特定のモノクローナル抗体(2H2D11)に基づく受動免疫アプローチを使用した。さらに、本発明者らは、2C12ハイブリドーマをサブクローン化し、N-アルファ-アセチル-Met11-Tau(AcMett11-Tau)に対するさらなる抗体である2C1C8を選択した。本発明者らは、2C1C8抗体がまた、タウタンパク質のN-アルファ末端アセチル化メチオニン11に対して特異性を呈したこと、及びThy-Tau22トランスジェニックマウスの海馬において神経原線維変性を呈するニューロンを標識することを実証した。

Description

発明の分野:
本発明は、新たなタウ種、特に11位のメチオニン残基から開始するタウ種(前記メチオニンはN-アルファアセチル化されている(AcMet11-Tau))に特異的に結合する抗体を使用した、タウオパチー障害の処置の方法に関する。本発明はさらに、特定のモノクローナル抗体2H2D11及び誘導体に関する。これらの特異的抗体は、タウオパチー障害、例えばアルツハイマー病などの治療のために使用することができる。
発明の背景:
タウタンパク質は微小管関連タンパク質ファミリーに属し、本質的にニューロンにおいて見出され、そこでは、それらは主に微小管の安定性及び動態、ならびに軸索輸送の調節に関与する。ヒト成人の脳において、異なるN末端を伴い、及びそれらのC末端部分において4つの微小管結合ドメイン(4Rアイソフォーム)又は3つの微小管結合ドメイン(3Rアイソフォーム)のいずれかを含む6つのタウアイソフォームがある。タウタンパク質は、エクソン2、3、及び10の選択的スプライシングにより、単一の遺伝子から由来する(Caillet-Boudin et al., 2015)。タウタンパク質は、タウオパチーとして言及される神経変性障害の大きなグループにおいてフィラメント中に凝集する。アルツハイマー病(AD)は、最も一般的なタウオパチーであり、認知症の形態である。その神経病理学的特徴の1つは、異常な翻訳後修飾を持つ凝集したタウタンパク質で作られた神経原線維変性(NFD)である。皮質脳領域におけるNFDの進行は、ADにおける認知障害と密接に相関しており(Braak and Braak, 1995;Duyckaerts et al, 1998;Delacourte et al., 1999)、それ故に、タウがAD病理学の中心的なプレーヤーであり、価値ある治療標的であることを示している(Novak et al., 2018)。免疫療法は現在、ADに遭遇することを考慮するための革新的で有望な治療アプローチである(Wisniewski et al., 2014)。タウオパチーの齧歯類モデルにおける受動免疫療法は、全身経路を介して注射されたモノクローナル抗体が血液脳関門を通過し、タウ標的タンパク質に結合することができることを示している(Pedersen et al., 2015;Ittner et al., 2015)。マウスモデルにおけるタウベースの免疫療法の有益な効果の基礎をなすメカニズムは依然として決定されていない。治療用抗体は、タウ播種を遮断し、それ故に、病的オリゴマー及び凝集タウ種の形成を回避する、又は細胞間タウの拡散を遮断する、又はエンドソーム/リソソーム経路を介してタウ分解を促進することができうる(Sigurdsson et al., 2016)。しかし、タウ免疫療法についての課題は、正常なタウタンパク質に影響することを伴わずに標的化されるタウ種の特定に依存し、したがって、有害な副作用を回避する。
最後に、タウ障害についての新規免疫療法を開発する継続的な必要性がある。
AD脳において見出されるタウ種の間で、切断形態は有毒なものである可能性が高いが、しかし、病理学的過程におけるそれらの役割は研究中である(Zilka et al., 2012)。本発明者らは最近、ヒトの脳から新たなN末端切断タウ種を特定している(Derisbourg et al., 2015)。これらの新たな種の間で、残基Met11(Met11-Tau)で開始するタウタンパク質が特に興味深く、なぜなら、Met11が、全てのタウタンパク質アイソフォームにより共有されるエクソン1によりコードされる領域中に位置付けられるためである。エクソン1機能についてはほとんど公知ではないが、その修飾はタウ機能に影響を及ぼし、タウの病理をもたらしうる(Hayashi et al., 2002;Poorkaj et al., 2002;Magnani et al., 2007;Derisbourg et al., 2015))。タウのN末端の役割は、少なくとも特定のタウ構造の形成への関与に関連しうる。実際に、自然に折り畳まれていないタンパク質であるタウは、N末端ドメイン及びC末端ドメインの間の分子内相互作用の結果として「ペーパークリップ」立体構造を採用する可能性が高い(Carmel et al., 1996;Jeganathan et al., 2006;Jeganathan et al., 2008)。従って、タウの最外側のN末端の喪失は、Met11-Tauタンパク質において遭遇されるように、重大な機能的及び病理学的な結果となりうる。より興味深いことに、プロテオミクスデータの本発明者らのさらなる分析によって、Met11-Tauがまた、N-アルファ末端アセチル化形態(AcMet11-Tau)において検出されることが示されている。重要なことに、これらのタウ種は以前には記載されていない。本発明者らは最初、AcMet11-Tau種の特異的な検出を可能にするモノクローナル抗体を開発した。次に、抗体を使用し、神経原線維変性(NFD)及び記憶欠損を進行的に発生するThy-Tau22トランスジェニックマウスモデルを使用することで、AcMet11-Tau種とタウ病理の間の関連性を確立した(Schindowski et al., 2006;Van der Jeugd at al., 2013)。AcMet11-Tau種は、Thy-Tau22マウスの海馬脳切片でNFDを呈するニューロンにおいて明確に検出された。興味深いことに、AcMet11-Tauエピトープは、記憶欠損に先行する病理学的過程の初期段階で検出された。さらに、ヒト脳海馬切片の免疫組織化学分析によって、抗体がAD脳における神経原線維タングルを標識するが、それは高齢者コントロールからの海馬においては反応性でないことが示された(WO2018/178078)。全体的には、本発明者らのデータは、AcMet11-Tauエピトープが、NFDを呈するニューロンにおいて明確に検出され、生理学的及び治療的価値のある新たな初期の病理学的タウ種を表すことを示す。
発明の概要:
本発明は、治療における使用のための抗タウ抗体であって、前記抗体は、以下のアミノ酸配列(N-α-アセチル)MEDHAGTYGLG(配列番号8)を含むエピトープに結合する、抗タウ抗体を提供する。
特定の実施形態では、本発明の抗タウ抗体をタウオパチーの処置において使用する。
本発明はさらに、特定の抗AcMet11-Tau抗体及び誘導体に関する。
発明の詳細な説明:
本発明者らの以前のデータは、AcMet11-TauがAD関連タウ病理のバイオマーカーの痕跡となる特色であることを示した(WO2018/178078を参照のこと)。
本発明者らは現在、さらなる分析を実施しており、データは、AcMet11-Tauがタウの病理発生に関与する病理学的タウ種であることを示す。
第一に、本発明者らは、AD脳タンパク質の生化学的分画を行った。ELISA分析によって、病理学的な高リン酸化タウタンパク質のように、AcMet11-Tau種が不溶性画分(タウタンパク質凝集体を含む)中に存在することが示された(図1)。
第二に、海馬タウの病理を3から10ヶ月までに、及び記憶欠損を6ヶ月から徐々に発生するTHY-Tau22マウス(Schindowski et al., 2006;Van der Jeugd at al., 2013)において、AcMet11-Tau種が、記憶欠損に先行する病理学的過程の早い段階で検出される(図2)。
第三に、本発明者らは、AcMet11-Tau種の脳発現がThy-Tauトランスジェニックマウスにおけるタウ病理の発生を増強し(図3及び4)、少なくともタウの病理を加速することにより、病理学的過程に関与することを示すことにより、AcMet11-Tau種及びタウ病理の間での因果関係を実証した。
第四に、本発明者らは、タウ病理のThy-Tau22トランスジェニックモデルにおけるこれらのタウ種の減少/中和が、タウ病理(図7及び8)及び関連する記憶欠損(図10)に対する保護効果を導くことを実証するために、以前に開発された特定のモノクローナル抗体(2H2D11 IgG2aアイソタイプ)に基づく受動免疫アプローチを使用した。
全体的に、これらのデータは、AcMet11-Tauが生理病理学的な価値のある初期の病理学的種であり、それ故に、価値ある治療標的となりうることを示す。
治療における使用のための新たなタウ種に特異的に結合する抗体
本発明は、治療における使用のための抗タウ抗体に関し、それにおいて前記抗体は、以下のアミノ酸配列(N-α-アセチル)MEDHAGTYGLG(配列番号8)を含むエピトープに結合する。
特定の実施形態では、本発明に従った使用のための抗タウ抗体は、11位のメチオニン残基から開始するタウポリペプチドに特異的に結合するが、それにおいて11位の前記メチオニンはN-アルファアセチル化されている(AcMet11-Tau)。
特定の実施形態では、本発明に従った使用のための抗タウ抗体は、以下を含む、又は以下からなる群より選択されるポリペプチドに特異的に結合する:
(i)タウN-アルファアセチル-Met11-352(配列番号:1)からなるアミノ酸配列;
(ii)タウN-アルファアセチル-Met11-381(配列番号:2)からなるアミノ酸配列;
(iii)タウN-アルファアセチル-Met11-383(配列番号:3)からなるアミノ酸配列
(iv)タウN-アルファアセチル-Met11-410(配列番号:4)からなるアミノ酸配列
(v)タウN-アルファアセチル-Met11-412(配列番号:5)からなるアミノ酸配列;
(vi)タウN-アルファアセチル-Met11-441(配列番号:6)からなるアミノ酸配列;
(vii)タウN-アルファアセチル-Met11-776(配列番号:7)からなるアミノ酸配列;
(viii)(i)から(vii)の配列の11位のN-アルファアセチルメチオニン残基から開始する少なくとも9連続アミノ酸のフラグメント。
特定の実施形態では、本発明に従った使用のための抗タウ抗体は、以下を含む、又は以下からなる群より選択されるポリペプチドに特異的に結合する:
(i)タウN-アルファアセチル-Met11-352(配列番号:1)からなるアミノ酸配列;
(ii)タウN-アルファアセチル-Met11-381(配列番号:2)からなるアミノ酸配列;
(iii)タウN-アルファアセチル-Met11-383(配列番号:3)からなるアミノ酸配列
(iv)タウN-アルファアセチル-Met11-410(配列番号:4)からなるアミノ酸配列
(v)タウN-アルファアセチル-Met11-412(配列番号:5)からなるアミノ酸配列;
(vi)タウN-アルファアセチル-Met11-441(配列番号:6)からなるアミノ酸配列;
(vii)タウN-アルファアセチル-Met11-776(配列番号:7)からなるアミノ酸配列;
(viii)(i)から(vii)の配列の11位のN-アルファアセチルメチオニン残基から開始する少なくとも11連続アミノ酸のフラグメント。
本明細書中で使用する用語「タウ」は、哺乳動物、及び特に霊長目(及びツパイ科)からのタウタンパク質を意味する。ヒトタウは、主に軸索において見出されるニューロンの微小管関連タンパク質であり、チューブリンの重合を促し、微小管を安定化させるために機能する。6つのアイソフォーム(アイソフォームA、B、C、D、E、F、G、胎児タウ)がヒト脳において見出され、最も長いアイソフォームは441アミノ酸(アイソフォームF、Uniprot P10636-8)を含む。タウ及びその特性はまた、Reynolds, C. H. et al., J. Neurochem. 69 (1997) 191-198により記載されている。タウは、その高リン酸化形態において、アルツハイマー病(AD)脳における神経原線維病変の構成要素であるペアードヘリカルフィラメント(PHF)の主要な成分である。タウは、いくつかの異なるキナーゼ(GSK3beta、cdk5、MARK、及びMAPキナーゼファミリーのメンバーを含む)により、そのセリン残基又はスレオニン残基でリン酸化されうる。
ヒトタウタンパク質のタンパク質配列、及びそのアイソフォームは、Uniprotデータベースにおいて、以下のアクセス番号で見出されうる:
タウアイソフォーム胎児(352アミノ酸)Uniprot P10636-2
タウアイソフォームB(381AA)Uniprot P10636-4
タウアイソフォームD(383AA)Uniprot P10636-6
タウアイソフォームC(410AA)Uniprot P10636-5
タウアイソフォームE(412AA)Uniprot P10636-7
タウアイソフォームF(441AA)Uniprot P10636-8
タウアイソフォームG(776AA)Uniprot P10636-9
切断は、タウの病理において病原学的な役割を有しうる追加の翻訳後修飾である。タウタンパク質の生化学的及び機能的特性に影響し、毒性機能の獲得を誘発しうるタウタンパク質の多数のカルボキシ切断形態も記載されている(Garcia-Sierra et al., 2001;Rissman et al., 2004;Zilka et al., 2006;Basurto-Islas et al., 2008;McMillan et al., 2011)。
一部の実施形態では、本発明の抗体により特異的に検出されるタウポリペプチドは、最大で766(及び少なくとも9)のアミノ酸を含む。一部の実施形態では、本発明のポリペプチドは、
Figure 2022526334000001

Figure 2022526334000002

のアミノ酸を含む。一部の実施形態では、本発明のポリペプチドは50未満のアミノ酸を含む。一部の実施形態では、本発明のポリペプチドは30未満のアミノ酸を含む。一部の実施形態では、本発明のポリペプチドは25未満のアミノ酸を含む。一部の実施形態では、本発明のポリペプチドは20未満のアミノ酸を含む。一部の実施形態では、本発明のポリペプチドは15未満のアミノ酸を含む。
本発明者らは、タウポリペプチドAcMet11-Tauに対して向けられた特異的抗体を生成した。
モノクローナル抗体を、合成ペプチド(N-α-アセチル)MEDHAGTYGLG(配列番号8)でマウスを免疫化することにより産生した。より正確には、本発明者らは、抗体が、AcMet11-Tauポリペプチド(11位のメチオニン残基から開始し、11位の前記メチオニンがN-アルファアセチル化されているタウポリペプチド)に特異的に結合し、細胞株サンプルならびにAD患者からの及びタウオパシーのTHY-Tau22マウスモデルからの脳サンプルを染色するそれらの能力についてスクリーニングされることを見出した(図1及び2)。本発明の抗体のスクリーニング工程は、これらの抗体が、N-アルファアセチル化形態のメチオニン11タウ種に特異的であることを示した。なぜなら、それらは、非アセチル化形態のメチオニン11タウ種にも非切断タウ種にも、N-アルファ-アセチル-Met1-Tauポリペプチド(非アミノ切断タウ種)のいずれにも結合しなかったためである。
本発明は、タウポリペプチドAcMet11-Tau、特にペプチド(N-α-アセチル)MEDHAGTYGLG(配列番号8)内に位置付けられるエピトープに特異的に結合する抗体を提供する。そのような抗体は、それらがN-アルファ-アセチル-Met11-Tau種に特異的に結合することで特徴付けられる。
特定の実施形態では、本発明の抗体は、非N-アルファ-アセチル化形態のメチオニン11タウポリペプチド(即ち、配列番号9)及び/又はN-アルファ-アセチル-Met1-Tauポリペプチド(即ち、配列番号10)に結合しない。
本発明によれば、「抗体」又は「免疫グロブリン」は同じ意味を有し、本発明において等しく使用される。本明細書中で使用する用語「抗体」は、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、即ち、免疫特異的に抗原に結合する抗原結合部位を含む分子を指す。そのようなものとして、用語「抗体」は、完全な抗体分子だけでなく、しかし、また、抗体フラグメントならびに抗体及び抗体フラグメントの変異体(誘導体を含む)を包含する。天然抗体において、2つの重鎖がジスルフィド結合により互いに連結され、各々の重鎖はジスルフィド結合により軽鎖に連結されている。軽鎖の2つの型、ラムダ(l)及びカッパ(k)がある。抗体分子の機能的活性を決定する5つの主な重鎖クラス(又はアイソタイプ)がある:IgM、IgD、IgG、IgA、及びIgE。各々の鎖は異なる配列ドメインを含む。軽鎖は、2つのドメイン、可変ドメイン(VL)及び定常ドメイン(CL)を含む。重鎖は、4つのドメイン、可変ドメイン(VH)及び3つの定常ドメイン(CH1、CH2、及びCH3、集合的にCHとして言及する)を含む。軽鎖の可変領域(VL)及び重鎖の可変領域(VH)の両方が、抗原への結合認識及び特異性を決定する。軽鎖の定常領域ドメイン(CL)及び重鎖の定常領域ドメイン(CH)は、重要な生物学的特性、例えば抗体鎖会合、分泌、経胎盤移動、補体結合、及びFc受容体(FcR)への結合などを付与する。Fvフラグメントは、免疫グロブリンのFabフラグメントのN末端部分であり、1つの軽鎖及び1つの重鎖の可変部分からなる。抗体の特異性は、抗体結合部位及び抗原決定基の間での構造的相補性に存在する。抗体結合部位は、主に超可変領域又は相補性決定領域(CDR)からの残基で作られる。時折、非超可変領域又はフレームワーク領域(FR)からの残基は、全ドメイン構造及び、それ故に、結合部位に影響を与える。相補性決定領域又はCDRは、天然免疫グロブリン結合部位の天然Fv領域の結合親和性及び特異性を一緒に定めるアミノ酸配列を指す。免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖は、各々が、3つのCDRを有する(それぞれVL-CDR1、VL-CDR2、VL-CDR3及びVH-CDR1、VH-CDR2、VH-CDR3と命名される)。抗原結合部位は、従って、重鎖及び軽鎖V領域の各々からのCDRセットを含む6つのCDRを含む。フレームワーク領域(FR)は、CDRの間に挿入されたアミノ酸配列を指す。
AcMet11-Tauポリペプチドに結合する抗体は、当技術分野において公知の従来の方法によりアッセイすることができる。本発明のポリペプチドの成熟形態は、好ましくは、本発明のポリペプチドのエピトープへの(特にAc-Met11エピトープ:(N-α-アセチル)MEDHAGTYGLG(配列番号8)への)抗体結合をアッセイするために使用する。あるいは、mAb 2H2D11の結合を保持する本発明のポリペプチドの任意の変異形態を使用することができる。多くの異なる競合結合アッセイフォーマットを、エピトープ結合を決定するために使用することができる。使用することができるイムノアッセイは、例えばラジオイムノアッセイ、ELISA、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、蛍光イムノアッセイ、プロテインAイムノアッセイ、及び補体固定アッセイなどの技術を使用した競合アッセイシステムを含むが、それらに限定されない。そのようなアッセイはルーチンであり、当技術分野において周知である(例、Ausubel et al., eds, 1994 Current Protocols in Molecular Biology, Vol. 1, John Wiley & sons, Inc., New Yorkを参照のこと)。例えば、BIACORE(登録商標)(GE Healthcare、ニュージャージー州ピスカタウェイ)は、モノクローナル抗体のパネルをエピトープビニングするためにルーチン的に使用される多様な表面プラズモン共鳴アッセイ形式の1つである。加えて、ルーチンの交差遮断アッセイ、例えばAntibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Ed Harlow and David Lane, 1988において記載されているようなものなどを実施することができる。適切なELISAアッセイの例を、また、以下の実施例において記載する。
本明細書中で使用するように、用語「親和性」は、単一の抗原部位での抗体と抗原(特にAc-Met11抗原:(N-α-アセチル)MEDHAGTYGLG(配列番号8))の間での相互作用の強さを指す。各々の抗原部位内で、抗体「アーム」の可変領域が、弱い非共有結合力を通じて、多数の部位で抗原と相互作用する;相互作用が多いほど、親和性が強くなる。親和性は、Kを測定することにより決定することができる。用語「K」は、本明細書中で使用するように、解離定数を指すことを意図し、それは、KとKの比率(即ち、K/K)から得られ、モル濃度(M)として表される。抗体についてのK値は、当技術分野において十分に確立された方法を使用して決定することができる。抗体のKを決定するための方法は、表面プラズモン共鳴を使用することによる、又はバイオセンサーシステム、例えばBiacore(登録商標)システムなどを使用することによる。
これらの抗体はポリクローナル又はモノクローナルでありうる。抗体がモノクローナルである場合、それらは、例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体、又は完全ヒト抗体、抗体フラグメント、及び単一ドメイン抗体に対応しうる。
用語「キメラ抗体」は、抗体のVHドメイン及びVLドメイン、ならびにヒト抗体のCHドメイン及びCLドメインを含む抗体を指す。
本発明によれば、用語「ヒト化抗体」は、ヒト抗体からの可変領域フレームワーク及び定常領域を有する抗体を指すが、しかし、以前の非ヒト抗体のCDRを保持する。
用語「抗体フラグメント」は、抗体のCDRを含む可変ドメインを含む抗体のフラグメントを指す。基本的な抗体フラグメントは、Fab、Fab’、F(ab’)2 Fv、scFv、dsFvを含む。抗体フラグメントの例については、総説、Holliger et al Nature Biotechnology 23, issue 9 1126 - 1136 (2005)も参照のこと。これは参照により本明細書中に含まれる。
用語「Fab」は、約50,000の分子量及び抗原結合活性を有する抗体フラグメントを意味し、それにおいては、プロテアーゼであるパパインを用いてIgGを処理することにより得られるフラグメントの内、H鎖のN末端側の約半分及びL鎖全体が、ジスルフィド結合を通じて一緒に結合されている。
用語「F(ab’)2」は、約100,000の分子量及び抗原結合活性を有する抗体フラグメントを示し、それは、プロテアーゼであるペプシンを用いてIgGを処理することにより得られるフラグメントの内、ヒンジ領域のジスルフィド結合を介して結合されるFabよりもわずかに大きい。
用語「Fab’」は、約50,000の分子量及び抗原結合活性を有する抗体フラグメントを指し、それは、F(ab’)2のヒンジ領域のジスルフィド結合を切断することにより得られる。
単鎖Fv(「scFv」)ポリペプチドは、共有結合的に連結されたVH::VLヘテロダイマーであり、それは、通常は、ペプチドをコードするリンカーにより連結されたVH及びVLをコードする遺伝子を含む遺伝子融合体から発現される。「dsFv」は、ジスルフィド結合によって安定化された、VH::VLヘテロダイマーである。二価及び多価抗体フラグメントは、一価scFvの会合により自然に形成することができる、又は、ペプチドリンカーにより一価scFvを結合させることにより生成することができ、例えば二価sc(Fv)2などである。
用語「ダイアボディ」、「トリボディ」、又は「テトラボディ」は、多価抗原結合部位(2、3、又は4)を伴う小さな抗体フラグメントを指し、そのフラグメントは、同じポリペプチド鎖において軽鎖可変ドメイン(VL)に接続された重鎖可変ドメイン(VH)を含む(VH-VL)。同じ鎖上で2つのドメイン間での対合を可能にするには短過ぎるリンカーを使用することにより、ドメインは、別の鎖の相補ドメインと対合し、2つの抗原結合部位を作るように強いられる。
本明細書中で使用するように、用語「単一ドメイン抗体」は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、軽鎖を自然に欠いているラクダ哺乳動物において見出されうる型の抗体の単一重鎖可変ドメインを指す。そのような単一ドメイン抗体はまた、VHH又は「ナノボディ(登録商標)」と呼ぶ。(単一)ドメイン抗体の一般的な記載については、上で引用した先行技術、ならびにEP 0 368 684、Ward et al.(Nature 1989 Oct 12; 341 (6242): 544-6)、Holt et al., Trends Biotechnol., 2003, 21(11):484-490;及びWO 06/030220、WO 06/003388も参照のこと。VHHはヒトIgG分子のものの約10分の1の分子量を有し、わずか数ナノメートルの物理的な直径を有する。小さなサイズの1つの結果は、より大きな抗体タンパク質に機能的に不可視である抗原部位に結合する単一ドメイン抗体(又はVHH)の能力であり、即ち、単一ドメイン抗体(又はVHH)は、古典的な免疫学的技術を使用して、本来なら潜在性である抗原を検出するための試薬として、及び可能な治療用薬剤として有用である。このように、小さなサイズのさらに別の結果は、単一ドメイン抗体(又はVHH)が、標的タンパク質の溝又は狭い裂け目中の特定部位への結合の結果として活性/相互作用を阻害することができ、及び、それ故に、古典的な抗体の機能よりも、古典的な低分子量薬物の機能により密接に似た能力において役割を果たしうる。折り畳みの低分子量及びコンパクトさによって、VHHは極度に熱安定性であり、極度のpHに対して及びタンパク質分解消化に対して安定であり、ならびにFcフラグメントの非存在によって低い抗原特性が提供される。別の結果は、VHHが循環器系から組織中に容易に移動し、血液脳関門を通過するより高い可能性を有し、神経組織に影響する障害を処置することができることである。単一ドメイン抗体(又はVHH)は、血液脳関門を通過する薬物輸送をさらに促進することができる。2004年8月19日に公開された米国特許出願20040161738を参照のこと。ヒトへの低い抗原性と組み合わされたこれらの特色は、大きな治療的な潜在力を示す。単一ドメイン抗体のアミノ酸配列及び構造は、当技術分野において及び本明細書中で「フレームワーク領域1」又は「FR1」として;「フレームワーク領域2」又は「FR2」として;「フレームワーク領域3」又は「FR3」として;及び「フレームワーク領域4」又は「FR4」としてそれぞれ言及される4つのフレームワーク領域又は「FR」から構成されると考えることができ、それらのフレームワーク領域は、3つの相補性決定領域又は「CDR」により中断され、それらは、当技術分野において「CDR1」について「相補性決定領域」として;「相補性決定領域2」又は「CDR2」として、及び「相補性決定領域3」又は「CDR3」としてそれぞれ言及される。したがって、単一ドメイン抗体は、一般的な構造を伴うアミノ酸配列として定義することができる:FRl-CDRl-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4、それにおいてFR1からFR4はそれぞれフレームワーク領域1から4を指し、及びそれにおいてCDR1からCDR3は相補性決定領域1から3を指す。本発明の文脈において、単一ドメイン抗体のアミノ酸残基は、International ImMunoGeneTics情報システムのアミノ酸ナンバリング(http://imgt.org/)により与えられる、VH(可変重鎖)ドメインについての一般的なナンバリングに従ってナンバリングされる。
そのような抗体を得るための方法は当技術分野において周知である。例えば、本発明に従ったモノクローナル抗体は、(i)から(viii)のいずれか1つを含む、又はからなる前記フラグメントを用いた非ヒト哺乳動物の免疫化を通じて得ることができる。ポリクローナル抗体から開始し、次に、標準的な方法を使用してモノクローナル抗体を得ることができる。
本発明のさらなる目的は、タウオパチーの処置における使用のための本発明の抗体に関する。
用語「タウオパチー」は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、タウ凝集により特徴付けられる疾患を指す(Iqbal, K. et al. Biochimica et Biophysica Acta (BBA) 1739 (2005) 198-210)。タウオパチーには、とりわけ、アルツハイマー病、ダウン症候群;Guamパーキンソニズム認知症複合体;拳闘家認知症及び他の慢性外傷性脳症;筋緊張性ジストロフィー;ニーマンピック病C型;ピック病;嗜銀性顆粒病;前頭側頭型認知症;大脳皮質基底核変性症;淡蒼球橋黒質変性症;進行性核上性麻痺;及びプリオン障害、例えばタングルを伴うゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病などを含む。
特定の実施形態では、タウオパチー障害はアルツハイマー病である。
本発明の特異的抗体
本発明者らは、モノクローナル抗体2H2D11の軽鎖の可変ドメイン(VL)、及び重鎖の可変ドメイン(VH)をクローン化し、配列決定した。前記抗体の相補性決定領域(CDR)をコードする配列の位置は、IMGTナンバリングシステムに従って決定されている。IMGT固有ナンバリングは、抗原受容体、鎖の型、又は種を問わず、可変ドメインを比較するために定義されている(Lefranc M.-P., Immunology Today, 18, 509 (1997);Lefranc M.-P., The Immunologist, 7, 132-136 (1999);Lefranc, Dev. Comp. Immunol., 27, 55-77 (2003).)。
一実施形態では、本発明は、以下を含む抗タウ抗体に関する:
(a)可変ドメインが以下を含む重鎖:
- 配列番号11として示される配列と90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するH-CDR1、及び
- 配列番号12として示される配列と90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するH-CDR2、及び
- 配列番号13として示される配列と90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するH-CDR3;
(b)可変ドメインが以下を含む軽鎖:
- 配列番号14として示される配列と90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するL-CDR1、及び
- 配列番号15として示される配列と90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するL-CDR2、及び
- 配列番号16として示される配列と90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するL-CDR3。
(c)抗体2H2D11の可変軽鎖ドメイン(VL)及び/又は可変重鎖ドメイン(VH)を有する抗体と実質的に同じ親和性を伴ってAcMet11-Tauポリペプチドに結合する。
一実施形態では、本発明の抗体は以下を含む:
(a)可変ドメインが以下を含む重鎖:
- 配列番号11として示される配列を有するH-CDR1、及び
- 配列番号12として示される配列を有するH-CDR2、及び
- 配列番号13として示される配列を有するH-CDR3;
(b)可変ドメインが以下を含む軽鎖:
- 配列番号14として示される配列を有するL-CDR1、及び
- 配列番号15として示される配列を有するL-CDR2、及び
- 配列番号16として示される配列を有するL-CDR3。
一実施形態では、本発明の抗体は以下を含み:
- 可変ドメインが配列番号17として示される配列と少なくとも70%の同一性を有する重鎖
- 可変ドメインが配列番号18として示される配列と少なくとも70%の同一性を有する軽鎖
及び、抗体2H2D11の可変軽鎖ドメイン(VL)及び/又は可変重鎖ドメイン(VH)を有する抗体と実質的に同じ親和性を伴ってAcMet11-Tauポリペプチドに結合する。
一実施形態では、本発明の抗体は以下を含み:
- 可変ドメインが配列番号17として示される配列と少なくとも80%の同一性を有する重鎖
- 可変ドメインが配列番号18として示される配列と少なくとも80%の同一性を有する軽鎖
及び、抗体2H2D11の可変軽鎖ドメイン(VL)及び/又は可変重鎖ドメイン(VH)を有する抗体と実質的に同じ親和性を伴ってAcMet11-Tauに結合する。
一実施形態では、本発明の抗体は以下を含み:
- 可変ドメインが配列番号17として示される配列と90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有する重鎖
- 可変ドメインが配列番号18として示される配列と90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有する軽鎖
及び、抗体2H2D11の可変軽鎖ドメイン(VL)及び/又は可変重鎖ドメイン(VH)を有する抗体と実質的に同じ親和性を伴ってAcMet11-Tauポリペプチドに結合する。
一実施形態では、本発明の抗体は以下を含む:
- 可変ドメインが配列番号17として示される配列を有する重鎖、及び
- 可変ドメインが配列番号18として示される配列を有する軽鎖。
一部の実施形態では、本発明に従った抗体(2H2D11誘導体)は、配列番号11として示される配列を有するH-CDR1、配列番号12として示される配列を有するH-CDR2、及び配列番号13として示される配列を有するH-CDR3、配列番号14として示される配列を有するL-CDR1、配列番号15として示される配列を有するL-CDR2、及び配列番号16として示される配列を有するL-CDR3を含む。
特定の実施形態では、上に記載する抗体は同じ抗原に結合し、本発明の抗体、即ち、配列番号11から16のCDRを伴う抗体と同じ、又は改善された特性(「2H2D11類似体」の定義を参照のこと)を有する。
特定の実施形態では、本発明の抗体(例えば2H2D11又は類似体もしくは誘導体、及びAc-Met11エピトープ:(N-α-アセチル)MEDHAGTYGLG(配列番号8)に結合する、治療における使用のための抗体など)は、実験を通してタウタンパク質の病理学的播種及び/又は凝集を阻害することができる。
本明細書中で使用するように、「2H2D11類似体」又は「2H2D11誘導体」は、タウタンパク質(特にAc-Met11エピトープ:(N-α-アセチル)MEDHAGTYGLG(配列番号:8))への同じ、又はより良好な結合、ならびに配列番号17のVH及び配列番号18のVLを伴う抗体2H2D11の生物学的活性の少なくとも1つを示す抗体を指す。
本発明の抗体は、例えば、実験を通してタウタンパク質の病理学的播種及び/又は凝集を阻害することが可能であることで特徴付けられうる(HEK293レポーター細胞株における凝集播種アッセイを参照のこと)。簡単には、そのようなアッセイは、MTBD-P301S凝集の誘導時に一緒にFRET(蛍光共鳴エネルギー移動)シグナルを生成するCFP(シアン蛍光タンパク質)又はYFP(黄色蛍光タンパク質)のいずれかに融合された、P301S変異を伴うタウRD(MTBD)を構成的に発現するセンサー細胞株に基づく。MTBD-P301Sタンパク質の細胞内凝集は、タウシードの存在において誘導され、FRETシグナルを導く(Holmes et al. 2014)。
本発明の抗体の生物学的活性は、例えば、上に記載するように、タウタンパク質の病理学的播種及び/又は凝集のレベルを低下させることである。タウの病理学的播種及び/又は凝集レベルの評価によって、抗体の治療的特性、例えばタウオパチーにおいて観察される認知障害の矯正などを決定することが可能になる。
抗体2H2D11の可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VH)ならびにドメイン(CDR)についての配列を以下の表1中に示す:
Figure 2022526334000003

2H2D11及び変異体のCDR配列を太字で示す。
本明細書中で使用するように、用語「抗体」又は「免疫グロブリン」は同じ意味を有し、本発明において等しく使用する。本明細書中で使用する用語「抗体」は、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、即ち、抗原に免疫特異的に結合する抗原結合部位を含む分子(Ac-Met11 Tau種)を指す。そのようなものとして、用語「抗体」は、完全な抗体分子だけでなく、しかし、また、抗体フラグメントならびに抗体及び抗体フラグメントの変異体(誘導体を含む)を包含する。天然抗体において、2つの重鎖がジスルフィド結合により互いに連結され、各々の重鎖はジスルフィド結合により軽鎖に連結されている。軽鎖の2つの型、ラムダ(l)及びカッパ(k)がある。抗体分子の機能的活性を決定する5つの主な重鎖クラス(又はアイソタイプ)がある:IgM、IgD、IgG、IgA、及びIgE。各々の鎖は異なる配列ドメインを含む。軽鎖は2つのドメイン、可変ドメイン(VL)及び定常ドメイン(CL)を含む。重鎖は4つのドメイン、可変ドメイン(VH)及び3つの定常ドメイン(CH1、CH2、及びCH3、集合的にCHとして言及する)を含む。軽(VL)鎖及び重(VH)鎖の両方の可変領域が、抗原への結合認識及び特異性を決定する。軽(CL)鎖及び重(CH)鎖の定常領域ドメインは、重要な生物学的特性、例えば抗体鎖会合、分泌、経胎盤移動、補体結合、及びFc受容体(FcR)への結合などを付与する。Fvフラグメントは、免疫グロブリンのFabフラグメントのN末端部分であり、1つの軽鎖及び1つの重鎖の可変部分からなる。抗体の特異性は、抗体結合部位と抗原決定基の間での構造的相補性に存在する。抗体結合部位は、主に超可変領域又は相補性決定領域(CDR)からの残基で作られる。時折、非超可変領域又はフレームワーク領域(FR)からの残基は、抗体結合部位に関与し、全ドメイン構造及び、それ故に、結合部位に影響しうる。相補性決定領域又はCDRは、天然免疫グロブリン結合部位の天然Fv領域の結合親和性及び特異性を一緒に定めるアミノ酸配列を指す。免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖は、各々が、3つのCDRを有する(それぞれL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3及びH-CDR1、H-CDR2、H-CDR3と命名される)。抗原結合部位は、従って、6つのCDR(重鎖及び軽鎖V領域の各々からのCDRセットを含む)を含む。フレームワーク領域(FR)は、CDRの間に挿入されたアミノ酸配列を指す。本発明の文脈において、本発明の抗体のアミノ酸残基は、IMGTナンバリングシステムに従ってナンバリングされる。IMGT固有ナンバリングは、抗原受容体、鎖の型、又は種を問わず、可変ドメインを比較するために定義されている(Lefranc M.-P., “Unique database numbering system for immunogenetic analysis” Immunology Today, 18, 509 (1997);Lefranc M.-P., “The IMGT unique numbering for Immunoglobulins, T cell receptors and Ig-like domains” The Immunologist, 7, 132-136 (1999);Lefranc, M.-P., Pommie, C., Ruiz, M., Giudicelli, V., Foulquier, E., Truong, L., Thouvenin-Contet, V. and Lefranc, G., “IMGT unique numbering for immunoglobulin and T cell receptor variable domains and Ig superfamily V-like domains” Dev. Comp. Immunol., 27, 55-77 (2003))。IMGT固有ナンバリングでは、保存されたアミノ酸は常に同じ位置を有する(例えば、システイン23、トリプトファン41、疎水性アミノ酸89、システイン104、フェニルアラニン又はトリプトファン118)。IMGT固有ナンバリングによって、フレームワーク領域(FR1-IMGT:1~26位、FR2-IMGT:39~55、FR3-IMGT:66~104、及びFR4-IMGT:118~128)及び相補性決定領域:CDR1-IMGT:27~38、CDR2-IMGT:56~65、及びCDR3-IMGT:105~117の標準化された分界が提供される。CDR3-IMGTの長さが13アミノ酸未満である場合、ギャップがループの上部から以下の順序111、112、110、113、109、114などで作られる。CDR3-IMGTの長さが13アミノ酸を上回る場合、追加の位置が、CDR3-IMGTループの上部の位置111と112の間に、以下の順序112.1、111.1、112.2、111.2、112.3、111.3などで作られる(http://www.imgt.org/IMGTScientificChart/Nomenclature/IMGT-FRCDRdefinition.html)。
本明細書中で使用するように、用語「特異性」は、抗原、例えばAcMet11-Tauなどの上に提示されるエピトープに検出可能に結合する抗体の能力を指し、非アセチル化形態のMet11-Tauタンパク質又は構造(例えばTAM上で又は他の細胞型上で発現される他のタンパク質など)との比較的小さな検出可能な反応性を有する。特異性は、本明細書中の他で記載するように、例えば、Biacore機器を使用した結合アッセイ又は競合結合アッセイにより相対的に決定することができる。特異性は、例えば、他の無関係な分子への非特異的結合における親和性/結合力に対する特定の抗原への結合における親和性/結合力の約10:1、約20:1、約50:1、約100:1、10.000:1又はそれ以上の比率により示されうる(この場合では、特定の抗原はAcMet11-Tauである)。
用語「親和性」は、本明細書中で使用するように、エピトープへの抗体の結合の強さを意味する。抗体の親和性は、[Ab]×[Ag]/[Ab-Ag]として定義される解離定数Kdにより与えられ、式中、[Ab-Ag]は抗体-抗原複合体のモル濃度であり、[Ab]は非結合抗体のモル濃度であり、及び[Ag]は非結合抗原のモル濃度である。親和定数Kaは1/Kdにより定義される。mAbの親和性を決定するための好ましい方法を、Harlow, et al., Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1988)、Coligan et al., eds., Current Protocols in Immunology, Greene Publishing Assoc. and Wiley Interscience, N.Y., (1992, 1993)、及びMuller, Meth. Enzymol. 92:589-601 (1983)において見出すことができ、それらの参考文献は、参照により本明細書中に完全に組み入れられる。mAbの親和性を決定するための当技術分野において周知の1つの好ましい標準的な方法は、Biacore機器の使用である。
本発明の抗体は、当技術分野において公知の任意の方法により特異的結合についてアッセイされうる。多くの異なる競合結合アッセイフォーマットをエピトープ結合のために使用することができる。使用することができるイムノアッセイは、例えばウエスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、ELISA、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、沈降アッセイ、ゲル拡散沈降アッセイ、免疫ラジオメトリーアッセイ、蛍光イムノアッセイ、プロテインAイムノアッセイ、及び補体固定アッセイなどの技術を使用した競合アッセイシステムを含むが、これらに限定されない。そのようなアッセイはルーチン的であり、当技術分野において周知である(例えば、Ausubel et al., eds, 1994 Current Protocols in Molecular Biology, Vol. 1, John Wiley & sons, Inc., New Yorkを参照のこと)。例えば、BIACORE(登録商標)(GE Healthcare、ニュージャージー州ピスカタウェイ)は、モノクローナル抗体のパネルをエピトープビニングするためにルーチン的に使用される多様な表面プラズモン共鳴アッセイ形式の1つである。加えて、ルーチン的な交差遮断アッセイ、例えばAntibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Ed Harlow and David Lane, 1988において記載されているようなものを実施することができる。
本明細書中で使用する用語「モノクローナル抗体」、「モノクローナルAb」、「モノクローナル抗体組成物」、「mAb」などは、単一分子組成物の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープについて単一の結合特異性及び親和性を呈する。
本明細書中で使用するように、2つの配列間のパーセント同一性は、2つの配列の最適なアラインメントのために導入する必要があるギャップの数及び各々のギャップの長さを考慮に入れた、配列により共有される同一位置の数(即ち、%同一性=同一位置の数/位置の総数×100)の関数である。配列の比較及び2つの配列間のパーセント同一性の決定は、以下に記載するように、数学的アルゴリズムを使用して達成することができる。
2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、ALIGNプログラム中に組み入れられているE. Myers and W. Miller(Comput. Appl. Biosci. 4: 1 1-17, 1988)のアルゴリズムを使用して決定することができる。また、2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、GCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラム中に組み入れられているNeedleman and Wunsch(J. Mol. Biol. 48:443- 453, 1970)のアルゴリズムを使用して決定することができる。パーセント同一性を決定するためのさらに別のプログラムは、CLUSTAL(M. Larkin et al., Bioinformatics 23:2947-2948, 2007;D. Higgins and P. Sharp, Gene 73:237-244, 1988により最初に記載されている)であり、それは、スタンドアロンプログラムとして、又はWebサーバー(http://www.clustal.org/を参照のこと)を介して入手可能である。
2つのヌクレオチドアミノ酸配列間のパーセント同一性はまた、例えば、アルゴリズム、例えば核酸配列のためのBLASTNプログラムなどを使用し、デフォルトとしてワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=4、及び両鎖の比較を使用して決定してもよい。
一部の実施形態では、本発明の抗体は、以下を含む:
(a)可変ドメインが以下を含む重鎖:
- 抗体2H2D11のH-CDR1(配列番号11)内に少なくとも5、4、3、2、1の保存的置換を有するH-CDR1;
- 抗体2H2D11のH-CDR2(配列番号12)内に少なくとも10、9、8、7、6、5、4、3、2、1の保存的置換を有するH-CDR2;
- 抗体2H2D11のH-CDR3(配列番号13)内に少なくとも9、8、7、6、5、4、3、2、1の保存的置換を有するH-CDR3;
(b)可変ドメインが以下を含む軽鎖:
- 抗体2H2D11のL-CDR1(配列番号14)内に少なくとも10、9、8、7、6、5、4、3、2、1の保存的置換を有するL-CDR1;
- 抗体2H2D11のL-CDR2(配列番号15)内に少なくとも10、9、8、7、6、5、4、3、2、1の保存的置換を有するL-CDR2;
- 抗体2H2D11のL-CDR3(配列番号16)内に少なくとも10、9、8、7、6、5、4、3、2、1の保存的置換を有するL-CDR3。
(c)抗体2H2D11の可変軽鎖ドメイン(VL)及び/又は可変重鎖ドメイン(VH)を有する抗体と実質的に同じ親和性を伴いAcMet11-Tauに結合する。
本発明の抗体は、当技術分野において公知の任意の技術(例えば、限定しないが、任意の化学的、生物学的、遺伝的、又は酵素的技術などを、単独又は組み合わせのいずれかで)により産生される。典型的には、所望の配列のアミノ酸配列が公知であれば、当業者は、ポリペプチドの産生のための標準的技術により、前記抗体を容易に産生することができる。例えば、それらは、周知の固相方法を使用し、好ましくは、商業的に入手可能なペプチド合成装置(例えば、Applied Biosystems(カリフォルニア州フォスターシティ)により作られたものなど)を使用し、製造業者の指示に従って合成することができる。あるいは、本発明の抗体は、当技術分野において周知の組換えDNA技術により合成することができる。例えば、抗体は、発現ベクター中への抗体をコードするDNA配列の組み入れ及び所望の抗体を発現する適切な真核生物又は原核生物宿主中へのそのようなベクターの導入後にDNA発現産物として得ることができ、そこからそれらを、周知の技術を使用して後に単離することができる。
一実施形態では、本発明のモノクローナル抗体は、キメラ抗体、特にキメラマウス/ヒト抗体である。
本発明によれば、用語「キメラ抗体」は、非ヒト抗体のVHドメイン及びVLドメイン、ならびにヒト抗体のCHドメイン及びCLドメインを含む抗体を指す。
一部の実施形態では、本発明のヒトキメラ抗体は、以前に記載されたようにVLドメイン及びVHドメインをコードする核酸配列を得ること、それらを、ヒト抗体CH及びヒト抗体CLをコードする遺伝子を有する動物細胞用の発現ベクター中に挿入することによりヒトキメラ抗体発現ベクターを構築すること、ならびに発現ベクターを動物細胞中に導入することによりコード配列を発現させることにより産生することができる。ヒトキメラ抗体のCHドメインとして、それは、ヒト免疫グロブリンに属する任意の領域でありうるが、しかし、IgGクラスのものが適切であり、IgGクラスに属するサブクラス、例えばIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4などの任意の1つも使用することができる。また、ヒトキメラ抗体のCLとして、それは、Igに属する任意の領域でありうるが、カッパクラス又はラムダクラスのものを使用することができる。従来の組換えDNA技術及び遺伝子トランスフェクション技術を含む、キメラ抗体を産生するための方法は、当技術分野において周知である(Morrison SL. et al. (1984)ならびに特許文献US5,202,238;及びUS5,204,244を参照のこと)。
別の実施形態では、本発明のモノクローナル抗体は、ヒト化抗体である。特に、前記ヒト化抗体において、可変ドメインは、ヒトアクセプターフレームワーク領域、及び、場合により、存在する場合にはヒト定常ドメイン、及び非ヒトドナーCDR、例えばマウスCDRなどを含む。
別の実施形態では、本発明のモノクローナル抗体を、ヒト化と同じ方法に基づいて、イヌ化又は霊長類化する。
本発明によれば、用語「ヒト化抗体」は、ヒト抗体からの可変領域フレームワーク及び定常領域を有する抗体を指すが、しかし、以前の非ヒト抗体のCDRを保持する。
本発明のヒト化抗体を、以前に記載されたように、CDRドメインをコードする核酸配列を得ること、それらを、(i)ヒト抗体のものと同一の重鎖定常領域及び(ii)ヒト抗体のものと同一の軽鎖定常領域をコードする遺伝子を有する動物細胞用の発現ベクター中に挿入することによりヒト化抗体発現ベクターを構築すること、ならびに発現ベクターを動物細胞中に導入することにより遺伝子を発現させることにより産生してもよい。ヒト化抗体発現ベクターは、抗体重鎖をコードする遺伝子及び抗体軽鎖をコードする遺伝子が、別々のベクター上に存在する型又は両方の遺伝子が同じベクター上に存在する型(タンデム型)のいずれかでありうる。ヒト化抗体発現ベクターの構築の簡単さ、動物細胞中への導入の簡単さ、ならびに動物細胞における抗体H及びL鎖の発現レベル間のバランスに関して、タンデム型のヒト化抗体発現ベクターが好ましい。タンデム型のヒト化抗体発現ベクターの例は、pKANTEX93(WO 97/10354)、pEE18などを含む。従来の組換えDNA技術及び遺伝子トランスフェクション技術に基づく、ヒト化抗体を産生するための方法は、当技術分野において周知である(例えば、Riechmann L. et al. 1988;Neuberger MS. et al. 1985を参照のこと)。抗体は、当技術分野において公知の種々の技術、例えば、CDR移植(EP 239,400;PCT公開WO91/09967;米国特許第5,225,539号;第5,530,101号;及び第5,585,089号)、ベニアリング又はリサーフェイシング(EP 592,106;EP 519,596;Padlan EA (1991);Studnicka GM et al. (1994);Roguska MA. et al. (1994))、及び鎖シャッフリング(米国特許第5,565,332号)を使用してヒト化することができる。そのような抗体の調製のための一般的な組換えDNA技術も公知である(欧州特許出願EP125023及び国際特許出願WO 96/02576を参照のこと)。
本発明の抗体のフラグメント
一実施形態では、本発明の抗体は、Fab、F(ab)’2、単一ドメイン抗体、ScFv、Sc(Fv)2、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ユニボディ、ミニボディ、マキシボディ、小さなモジュラー免疫医薬品(SMIP)、単離された相補性決定領域(CDR)として抗体の超可変領域を模倣するアミノ酸残基からなる最小認識単位、及びVL鎖又はVH鎖、ならびに配列番号17又は配列番号18と少なくとも70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列からなる群より選択される抗原結合フラグメントである。
抗体の用語「抗原結合フラグメント」は、本明細書中で使用するように、所与の抗原(例、AcMet11-Tau)に特異的に結合する能力を保持するインタクトな抗体の1つ以上のフラグメントを指す。抗体の抗原結合機能は、インタクトな抗体のフラグメントにより実施することができる。抗体の用語「抗原結合フラグメント」内に包含される結合フラグメントの例は、Fabフラグメント、VL、VH、CL、及びCH1ドメインからなる一価フラグメント;Fab’フラグメント、VL、VH、CL、CH1ドメイン及びヒンジ領域からなる一価フラグメント;F(ab’)2フラグメント、ヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結された2つのFab’フラグメントを含む二価フラグメント;抗体の単一アームのVHドメインからなるFdフラグメント;VHドメイン又はVLドメインからなる単一ドメイン抗体(sdAb)フラグメント(Ward et al., 1989 Nature 341:544-546);及び単離された相補性決定領域(CDR)を含む。さらに、Fvフラグメントの2つのドメインであるVL及びVHは、別々の遺伝子によりコードされているが、それらは、組換え方法を使用し、VL及びVH領域が対になり一価分子を形成する単一タンパク質鎖として作製されることを可能にする人工ペプチドリンカーにより連結することができる(単鎖Fv(ScFv)として公知である;例えば、Bird et al., 1989 Science 242:423-426;及びHuston et al., 1988 proc. Natl. Acad. Sci. 85:5879-5883を参照のこと)。「dsFv」は、ジスルフィド結合により安定化されたVH::VLヘテロダイマーである。二価及び多価抗体フラグメントは、一価scFvの会合により自然に形成することができる、又はペプチドリンカーにより一価scFvを結合させることにより生成することができる(例えば二価sc(Fv)2など)。そのような単鎖抗体は、抗体の1つ以上の抗原結合部分あるいはフラグメントを含む。これらの抗体フラグメントは、当業者に公知の従来の技術を使用して得られ、そのフラグメントは、有用性について、インタクトな抗体と同じ様式でスクリーニングされる。ユニボディは、IgG4抗体のヒンジ領域を欠く別の型の抗体フラグメントである。ヒンジ領域の欠失は、従来のIgG4抗体の本質的に半分のサイズであり、IgG4抗体の二価結合領域よりむしろ一価結合領域を有する分子をもたらす。抗原結合フラグメントは、単一ドメイン抗体、SMIP、マキシボディ、ミニボディ、イントラボディ、ダイアボディ、トリアボディ(triabodies)、及びテトラボディ中に組み入れることができる(例、Hollinger and Hudson, 2005, Nature Biotechnology, 23, 9, 1126-1136を参照のこと)。用語「ダイアボディ」「トリボディ」、又は「テトラボディ」は、多価抗原結合部位(2、3、又は4)を伴う小さな抗体フラグメントを指し、そのフラグメントは同じポリペプチド鎖において軽鎖可変ドメイン(VL)に接続された重鎖可変ドメイン(VH)を含む(VH-VL)。同じ鎖上で2つのドメイン間での対合を可能にするには短すぎるリンカーを使用することにより、ドメインは、別の鎖の相補ドメインと対合し、2つの抗原結合部位を作るように強制される。抗原結合フラグメントは、相補的な軽鎖ポリペプチドと一緒に、一対の抗原結合領域を形成する、一対のタンデムFvセグメント(VH-CH1-VH-CH1)を含む単鎖分子に組み入れることができる(Zapata et al., 1995 Protein Eng. 8(10); 1057-1062及び米国特許第5,641,870号)。
本発明のFabは、AcMet11-Tauと特異的に反応する抗体を、プロテアーゼであるパパインを用いて処理することにより得ることができる。また、Fabは、抗体のFabをコードするDNAを、原核生物発現系用の又は真核生物発現系用のベクター中に挿入すること、及び、そのベクターを、(適切に)原核生物又は真核生物中に導入し、Fabを発現させることにより産生することができる。
本発明のF(ab’)2は、AcMet11-Tauと特異的に反応する抗体を、プロテアーゼであるペプシンを用いて処理することにより得ることができる。また、F(ab’)2は、チオエーテル結合又はジスルフィド結合を介して、以下に記載するFab’を結合することにより産生することができる。
本発明のFab’は、AcMet11-Tauと特異的に反応するF(ab’)2を、還元剤であるジチオスレイトールを用いて処理することにより得ることができる。また、Fab’は、抗体のFab’フラグメントをコードするDNAを、原核生物用の発現ベクター、又は真核生物用の発現ベクター中に挿入すること、及び、そのベクターを、(適切に)原核生物又は真核生物中に導入し、その発現を実施することにより産生することができる。
本発明のscFvは、以前に記載されたように、VH及びVLドメインをコードするcDNAを得ること、scFvをコードするDNAを構築すること、このDNAを原核生物用の発現ベクター、又は真核生物用の発現ベクター中に挿入すること、次にこの発現ベクターを(適切に)原核生物又は真核生物中に導入し、scFvを発現させることにより産生することができる。ヒト化scFvフラグメントを生成するために、CDR移植と呼ばれる周知の技術を使用してもよく、それは、相補性決定領域(CDR)をドナーscFvフラグメントより選択すること、及び、それらを、公知の三次元構造のヒトscFvフラグメントフレームワーク上に移植することを含む(例、W098/45322;WO 87/02671;US5,859,205;US5,585,089;US4,816,567;EP0173494を参照のこと)。
ドメイン抗体(dAb)は、抗体の最も小さな機能的結合単位(分子量約13kDa)であり、抗体の重鎖(VH)又は軽鎖(VL)のいずれかの可変領域に対応する。ドメイン抗体及びそれらの産生の方法に関するさらなる詳細は、US 6,291,158;6,582,915;6,593,081;6,172,197;及び6,696,245;US 2004/0110941;EP 1433846、0368684、及び0616640;WO 2005/035572、2004/101790、2004/081026、2004/058821、2004/003019、及び2003/002609において見出され、それらの各々が、参照によりその全体において本明細書中に組み入れられる。
核酸分子、ベクター、宿主細胞
本発明のさらなる目的は、本発明に従った抗体をコードする核酸分子に関する。特に、核酸分子は、本発明の抗体の重鎖又は軽鎖をコードする。
特定の実施形態では、核酸分子は、配列番号19又は配列番号20と少なくとも70%の同一性を有する核酸配列を含む。
特に、核酸分子は、配列番号19又は配列番号20と少なくとも80%の同一性を有する核酸配列を含む。
特に、核酸分子は、配列番号19又は配列番号20と少なくとも90%の同一性を有する核酸配列を含む。
特に、核酸分子は、配列番号19又は配列番号20と少なくとも91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有する核酸配列を含む。
可変ドメイン重鎖:核酸配列FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4:配列番号19
Figure 2022526334000004
可変ドメイン軽鎖:核酸配列FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4:配列番号20
Figure 2022526334000005
典型的には、前記核酸はDNA又はRNA分子であり、それは、任意の適切なベクター、例えばプラスミド、コスミド、エピソーム、人工染色体、ファージ又はウイルスベクターなどにおいて含まれうる。本明細書中で使用するように、用語「ベクター」、「クローニングベクター」、及び「発現ベクター」は、DNA又はRNA配列(例、外来遺伝子)を宿主細胞中に導入することができ、宿主を形質転換し、導入配列の発現(例、転写及び翻訳)を促進する媒体を意味する。そのため、本発明のさらなる態様は、本発明の核酸を含むベクターに関する。そのようなベクターは、調節エレメント、例えばプロモーター、エンハンサー、ターミネーターなどを含み、被験者への投与時に前記抗体の発現を引き起こしうる、又はそれに向けうる。動物細胞用の発現ベクターにおいて使用されるプロモーター及びエンハンサーの例は、SV40の初期プロモーター及びエンハンサー(Mizukami T. et al. 1987)、モロニーマウス白血病ウイルスのLTRプロモーター及びエンハンサー(Kuwana Y et al. 1987)、免疫グロブリンH鎖のプロモーター(Mason JO et al. 1985)及びエンハンサー(Gillies SD et al. 1983)などを含む。適切なベクターの例は、pAGE107(Miyaji H et al. 1990)、pAGE103(Mizukami T et al. 1987)、pHSG274(Brady G et al. 1984)、pKCR(O’Hare K et al. 1981)、pSG1ベータd2-4-(Miyaji H et al. 1990)などを含む。プラスミドの他の例は、複製起点を含む複製プラスミド、又は統合プラスミド、例えばpUC、pcDNA、pBRなどを含む。ウイルスベクターの他の例は、アデノウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、及びAAVベクターを含む。そのような組換えウイルスは、当技術分野において公知の技術により、例えばパッケージング細胞をトランスフェクトすることにより、又はヘルパープラスミドもしくはウイルスを用いた一過性トランスフェクションにより産生してもよい。ウイルスパッケージング細胞の典型的な例は、PA317細胞、PsiCRIP細胞、GPenv+細胞、293細胞などを含む。そのような複製欠損組換えウイルスを産生するための詳細なプロトコルが、例えば、WO 95/14785、WO 96/22378、US 5,882,877、US 6,013,516、US 4,861,719、US 5,278,056、及びWO 94/19478において見出されうる。
本発明のさらなる態様は、本発明に従った核酸及び/又はベクターによりトランスフェクト、感染、又は形質転換された宿主細胞に関する。
用語「形質転換」は、宿主細胞への「外来」(即ち、外因性又は細胞外)遺伝子、DNA又はRNA配列の導入を意味し、宿主細胞が、導入された遺伝子又は配列を発現し、所望の物質、典型的には、導入された遺伝子又は配列によりコードされるタンパク質又は酵素を産生するようにする。導入されたDNA又はRNAを受け取り、発現する宿主細胞は「形質転換」されている。
本発明の核酸を使用し、適切な発現系において本発明の抗体を産生してもよい。用語「発現系」は、適切な条件下での、例えば、ベクターにより運ばれ、宿主細胞中に導入された外来DNAによりコードされるタンパク質の発現のための宿主細胞及び適合するベクターを意味する。一般的な発現系は、大腸菌宿主細胞及びプラスミドベクター、昆虫宿主細胞及びバキュロウイルスベクター、ならびに哺乳動物宿主細胞及びベクターを含む。宿主細胞の他の例は、限定しないが、原核細胞(例えば細菌など)及び真核細胞(例えば酵母細胞、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞など)を含む。特定の例は、大腸菌、クルイベロマイセス又はサッカロマイセス酵母、哺乳動物細胞株(例、Vero細胞、CHO細胞、3T3細胞、COS細胞など)ならびに初代又は確立された哺乳動物細胞培養(例、リンパ芽球、線維芽細胞、胚細胞、上皮細胞、神経細胞、脂肪細胞などから産生される)を含む。例はまた、マウスSP2/0-Agl4細胞(ATCC CRL1581)、マウスP3X63-Ag8.653細胞(ATCC CRL1580)、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子(以下、「DHFR遺伝子」として言及する)を欠損しているCHO細胞(Urlaub G et al; 1980)、ラットYB2/3HL.P2.G11.16Ag.20細胞(ATCC CRL1662、以下、「YB2/0細胞」として言及する)などを含む。
一部の実施形態では、本発明のための有用なベクターは、ウイルスベクターである。本発明の実践において有用な遺伝子送達ウイルスベクター(本発明の抗体の直接的なインビボ送達用)は、分子生物学の技術分野において周知の方法論を利用して構築することができる。典型的には、導入遺伝子を運ぶウイルスベクターは、導入遺伝子をコードするポリヌクレオチド、適切な調節エレメント、及び細胞形質導入を媒介するウイルスタンパク質の産生のために必要なエレメントから組み立てられる。ウイルスベクターの例は、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、及びアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを含むが、それらに限定されない。一部の実施形態では、本発明のベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。「AAVベクター」により、限定しないが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AA5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAVrh10、又はヒト、サル、もしくは他の種に感染することができる任意の他のAAVの血清型を含む、アデノ随伴ウイルス血清型から由来するベクターを意味する。一部の実施形態では、本発明のAAVベクターは、哺乳動物の中枢神経系及び末梢神経系の細胞、特にニューロン、ニューロン前駆細胞、星状細胞、希突起膠細胞、及びグリア細胞において向性及び高い形質導入効率を有するAAV血清型から由来するベクターより選択される。一部の実施形態では、AAVベクターは、脳細胞、特にニューロンを十分に形質導入することが記載されているAAV4、AAV9、又はAAVrh10である。
本発明はまた、本発明に従った抗体を発現する組換え宿主細胞を産生する方法に関し、前記方法は以下の工程を含む:(i)インビトロ又はエクスビボで、上に記載するような組換え核酸又はベクターを、コンピテント宿主細胞中に導入すること、(ii)インビトロ又はエクスビボで、得られた組換え宿主細胞を培養すること、及び(iii)場合により、前記抗体を発現及び/又は分泌する細胞を選択すること。そのような組換え宿主細胞を、本発明の抗体の産生のために使用することができる。本発明の抗体は、従来の免疫グロブリン精製手段、例えば、プロテインAセファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、又は親和性クロマトグラフィーなどにより培養培地から適切に分離される。
機能的変異体及び競合抗体
本発明は、2H2D11抗体のVL領域、VH領域、あるいは1つ以上のCDRの機能的変異体を含む抗体を提供する。本発明のモノクローナル抗体の文脈において使用されるVL、VH、又はCDRの機能的変異体は、抗体が、親抗体(即ち、6-25抗体)の親和性/結合力及び/又は特異性/選択性の少なくとも実質的な割合(少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%又はそれ以上)を保持することを依然として可能にし、ならびに、一部の場合では、本発明のそのようなモノクローナル抗体は、親Abよりも高い親和性、選択性及び/又は特異性と関連付けられうる。そのような変異体は、CDRを変異させること(Yang et al., J. Mol. Biol., 254, 392-403, 1995)、鎖シャッフリング(Marks et al., Bio/Technology, 10, 779-783, 1992)、大腸菌のミューテーター株の使用(Low et al., J. Mol. Biol., 250, 359-368, 1996)、DNAシャッフリング(Patten et al., Curr. Opin. Biotechnol., 8, 724-733, 1997)、ファージディスプレイ(Thompson et al., J. Mol. Biol., 256, 77-88, 1996)、及びsexualPCR(Crameri et al., Nature, 391, 288-291, 1998)を含む、多数の親和性成熟プロトコールにより得ることができる。Vaughanら(上記)は、親和性成熟のこれらの方法について考察している。そのような機能的変異体は、典型的には、親Abに対して有意な配列同一性を保持する。CDR変異体の配列は、大半の保存的置換を通じて、親抗体配列のCDRの配列とは異なりうる;例えば、変異体における置換の少なくとも約35%、約50%又はそれ以上、約60%又はそれ以上、約70%又はそれ以上、約75%又はそれ以上、約80%又はそれ以上、約85%又はそれ以上、約90%又はそれ以上、(例、約65~95%、例えば約92%、93%、又は94%など)は、保存的アミノ酸残基置換である。CDR変異体の配列は、大半の保存的置換を通じて、親抗体配列のCDRの配列とは異なりうる;例えば、変異体における置換の少なくとも10、例えば少なくとも9、8、7、6、5、4、3、2、又は1などは、保存的アミノ酸残基置換である。本発明の文脈において、保存的置換は、以下のように反映されるアミノ酸のクラス内の置換によって定義されうる:
脂肪族残基I、L、V、及びM
シクロアルケニル関連残基F、H、W、及びY
疎水性残基A、C、F、G、H、I、L、M、R、T、V、W、及びY
負荷電残基D及びE
極性残基C、D、E、H、K、N、Q、R、S、及びT
正荷電残基H、K、及びR
小さな残基A、C、D、G、N、P、S、T、及びV
非常に小さな残基A、G、及びS
ターン中に含まれる残基A、C、D、E、G、H、K、N、Q、R、S、P、及びフォーメーションT
柔軟な残基Q、T、K、S、G、P、D、E、及びR
より保存的な置換グルーピングは、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、及びアスパラギン-グルタミンを含む。疎水性/親水性特性及び残基の重量/サイズに関する保存も、6-25抗体のCDRと比較し、変異体CDRにおいて実質的に保持される。タンパク質上に相互作用的な生物学的機能を付与する際の疎水性アミノ酸指標の重要性は、当技術分野において一般的に理解されている。アミノ酸の相対的な疎水性特徴が、結果としてのタンパク質の二次構造に寄与し、それは次に、タンパク質と他の分子、例えば、酵素、基質、受容体、DNA、抗体、抗原などとの相互作用を定義することが受け入れられている。各々のアミノ酸は、それらの疎水性及び荷電特徴に基づいて疎水性指標が割り当てられており、これらは以下である:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(-0.4);スレオニン(-0.7);セリン(-0.8);トリプトファン(-0.9);チロシン(-1.3);プロリン(-1.6);ヒスチジン(-3.2);グルタミン酸(-3.5);グルタミン(-3.5);アスパラギン酸(-3.5);アスパラギン(-3.5);リジン(-3.9);及びアルギニン(-4.5)。類似残基の保持はまた、あるいは代替的にBLASTプログラム(例、標準設定BLOSUM62、オープンギャップ=11及び拡張ギャップ=1を使用するNCBIを通じて利用可能なBLAST 2.2.8)の使用により決定されるような類似性スコアにより測定されうる。適切な変異体は、典型的には、親ペプチドに対して少なくとも約70%の同一性を示す。本発明によれば、第2のアミノ酸配列と少なくとも70%の同一性を有する第1のアミノ酸配列は、第1の配列が、第2のアミノ酸配列と70;71;72;73;74;75;76;77;78;79;80;81;82;83;84;85;86;87;88;89;90;91;92;93;94;95;96;97;98;99;又は100%の同一性を有することを意味する。本発明によれば、第2のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する第1のアミノ酸配列は、第1の配列が、第2のアミノ酸配列と90;91;92;93;94;95;96;97;98;99;又は100%の同一性を有することを意味する。
一部の実施形態では、本発明の抗体は、i)本発明の抗体のH-CDR1と少なくとも90;91;92;93;94;95;96;97;98;又は99%の同一性を有するH-CDR1、ii)本発明の抗体のH-CDR2と少なくとも90;91;92;93;94;95;96;97;98;又は99%の同一性を有するH-CDR2、及びiii)本発明の抗体のH-CDR3と少なくとも90;91;92;93;94;95;96;97;98;又は99%の同一性を有するH-CDR3を含む重鎖を有する抗体である。
一部の実施形態では、本発明の抗体は、i)本発明の抗体のL-CDR1と少なくとも90;91;92;93;94;95;96;97;98;又は99%の同一性を有するL-CDR1、ii)本発明の抗体のL-CDR2と少なくとも90;91;92;93;94;95;96;97;98;又は99%の同一性を有するL-CDR2、及びiii)本発明の抗体のL-CDR3と少なくとも90;91;92;93;94;95;96;97;98;又は99%の同一性を有するL-CDR3を含む軽鎖を有する抗体である。
一部の実施形態では、本発明の抗体は、i)本発明の抗体のH-CDR1と少なくとも90;91;92;93;94;95;96;97;98;又は99%の同一性を有するH-CDR1、ii)本発明の抗体のH-CDR2と少なくとも90;91;92;93;94;95;96;97;98;又は99%の同一性を有するH-CDR2、及びiii)本発明の抗体のH-CDR3と少なくとも90;91;92;93;94;95;96;97;98;又は99%の同一性を有するH-CDR3を含む重鎖ならびにi)本発明の抗体のL-CDR1と少なくとも90;91;92;93;94;95;96;97;98;又は99%の同一性を有するL-CDR1、ii)本発明の抗体のL-CDR2と少なくとも90;91;92;93;94;95;96;97;98;又は99%の同一性を有するL-CDR2、及びiii)本発明の抗体のL-CDR3と少なくとも90;91;92;93;94;95;96;97;98;又は99%の同一性を有するL-CDR3を含む軽鎖を有する抗体である。
一部の実施形態では、本発明の抗体は、i)本発明の抗体のH-CDR1、ii)本発明の抗体のH-CDR2、及びiii)本発明の抗体のH-CDR3を含む重鎖を有する抗体である。
一部の実施形態では、本発明の抗体は、i)本発明の抗体のL-CDR1、ii)本発明の抗体のL-CDR2、及びiii)本発明の抗体のL-CDR3を含む軽鎖を有する抗体である。
一部の実施形態では、本発明の抗体は、i)本発明の抗体のH-CDR1、ii)本発明の抗体のH-CDR2、及びiii)本発明の抗体のH-CDR3を含む重鎖ならびにi)本発明の抗体のL-CDR1、ii)本発明の抗体のL-CDR2、及びiii)本発明の抗体のL-CDR3を含む軽鎖を有する抗体である。
一部の実施形態では、本発明の抗体は、配列番号17と少なくとも70;71;72;73;74;75;76;77;78;79;80;81;82;83;84;85;86;87;88;89;90;91;92;93;94;95;96;97;98;又は99%の同一性を有する重鎖を有する抗体である。
一部の実施形態では、本発明の抗体は、配列番号18と少なくとも70;71;72;73;74;75;76;77;78;79;80;81;82;83;84;85;86;87;88;89;90;91;92;93;94;95;96;97;98;又は99%の同一性を有する軽鎖を有する抗体である。
一部の実施形態では、本発明の抗体は、配列番号17と少なくとも70;71;72;73;74;75;76;77;78;79;80;81;82;83;84;85;86;87;88;89;90;91;92;93;94;95;96;97;98;又は99%の同一性を有する重鎖ならびに配列番号18と少なくとも70;71;72;73;74;75;76;77;78;79;80;81;82;83;84;85;86;87;88;89;90;91;92;93;94;95;96;97;98;又は99%の同一性を有する軽鎖を有する抗体である。
一部の実施形態では、本発明の抗体は、配列番号17と同一である重鎖を有する抗体である。
一部の実施形態では、本発明の抗体は、配列番号18と同一である軽鎖を有する抗体である。
一部の実施形態では、本発明の抗体は、配列番号17と同一である重鎖及び配列番号18と同一である軽鎖を有する抗体である。
別の態様では、本発明は、AcMet11-Tauへの結合について、本発明の抗体と競合する抗体を提供する。
本明細書中で使用するように、所定の抗原又はエピトープへの抗体の結合の文脈における用語「結合」は、典型的には、例えば、リガンドとして可溶形態の抗原を使用し、分析物として抗体を使用して、BIAcore 3000機器における表面プラズモン共鳴(SPR)技術により決定された場合、約10-7M又はそれ以下、例えば約10-8M又はそれ以下など、例えば約10-9M又はそれ以下、約10-10M又はそれ以下、あるいは約10-11M又はそれ以下のKDに対応する親和性を伴う結合である。BIACORE(登録商標)(GE Healthcare、ニュージャージー州、ピスカタウェイ)は、モノクローナル抗体のパネルをエピトープビニングするためにルーチン的に使用される多様な表面プラズモン共鳴アッセイ形式の1つである。典型的には、抗体は、所定の抗原と同一ではない、又は密接に関連していない非特異的抗原(例、BSA、カゼイン)に結合するためのそのKDよりも少なくとも10倍低い、例えば少なくとも100倍低い、例えば、少なくとも1,000倍低い、例えば少なくとも10,000倍低い、例えば、少なくとも100,000倍低いKDに対応する親和性を伴って所定の抗原に結合する。したがって、抗体のKDが非常に低い(すなわち、抗体が高い親和性を有する)場合、それが抗原に結合するKDは、典型的には、非特異的抗原についてのそのKDよりも少なくとも10,000倍低い。抗体は、そのような結合が検出不可能である(例えば、リガンドとして可溶形態の抗原を、及び分析物として抗体を使用した、BIAcore 3000機器における表面プラズモン共鳴(SPR)技術を使用)、あるいは、その抗体及び異なる化学構造又はアミノ酸配列を有する抗原又はエピトープにより検出される結合よりも、100倍、500倍、1000倍、又は1000倍もしくはそれ以上少ない場合、抗原又はエピトープに本質的に結合しないと言われる。
抗体操作
本発明の操作抗体は、修飾が、例えば、抗体の特性を改善するために、VH及び/又はVL内のフレームワーク残基に行われたものが含まれる。典型的には、そのようなフレームワークの修飾は、抗体の免疫原性を減少させるために行われる。例えば、1つのアプローチは、1つ以上のフレームワーク残基を対応する生殖系列配列に「逆変異」させることである。より具体的には、体細胞変異を受けた抗体は、抗体が由来する生殖系列配列とは異なるフレームワーク残基を含みうる。そのような残基は、抗体フレームワーク配列を、抗体が由来する生殖系列配列と比較することにより同定することができる。フレームワーク領域配列をそれらの生殖系列配置に戻すために、体細胞変異を、例えば、部位特異的変異誘発又はPCR媒介性変異誘発により生殖系列配列に「逆変異」させることができる。そのような「逆変異」抗体もまた、本発明により包含されることが意図される。別の型のフレームワーク修飾は、フレームワーク領域内、あるいはさらに1つ以上のCDR領域内で1つ以上の残基を変異させてT細胞エピトープを除去し、それにより抗体の潜在的な免疫原性を低下させることを含む。このアプローチはまた、「脱免疫化」として言及され、Carrらによる米国特許公開第20030153043号にさらに詳細に記載されている。
一部の実施形態では、抗体のグリコシル化が修飾される。グリコシル化は、例えば、抗原についての抗体の親和性を増加させるように変えることができる。そのような糖修飾は、例えば、抗体配列内のグリコシル化の1つ以上の部位を変えることにより達成することができる。例えば、それによって1つ以上の可変領域フレームワークのグリコシル化部位の除去をもたらす、1つ以上のアミノ酸置換を行うことができ、それによりその部位でのグリコシル化を除去する。そのような非グリコシル化によって、抗原についての抗体の親和性が増加されうる。そのようなアプローチは、Coらによる米国特許第5,714,350号及び第6,350,861号においてさらに詳細に記載されている。
一部の実施形態では、一部の変異を、第1のCDR(CDR1)内及びその近くの凝集「ホットスポット」中に局在化されるアミノ酸に行い、凝集に対する抗体の感受性を減少させる(Joseph M. Perchiacca et al., Proteins 2011; 79:2637-2647を参照のこと)。
本発明の抗体は、任意のアイソタイプでありうる。アイソタイプの選択は、典型的には、所望のエフェクター機能により導かれうる。IgG1及びIgG3は、IgG2及びIgG4がそうしない、又はより低い様式である場合、ADCC又はCDCとしてのそのようなエフェクター機能を媒介するアイソタイプである。軽鎖定常領域であるカッパ又はラムダのいずれかを使用してもよい。望ましい場合、本発明のモノクローナル抗体のクラスは、公知の方法によりスイッチさせてもよい。典型的なクラススイッチ技術を使用し、1つのIgGサブクラスを別のサブクラスに、例えば、IgG1からIgG2に変換させてもよい。このように、本発明のモノクローナル抗体のエフェクター機能は、種々の治療的使用のために、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgE、又はIgM抗体へのアイソタイプスイッチングにより変化されうる。
一部の実施形態では、本発明の抗体は全長抗体である。一部の実施形態では、全長抗体はIgG2抗体である。一部の実施形態では、全長抗体はIgG4抗体である。
一部の実施形態では、CH1のヒンジ領域は、ヒンジ領域中のシステイン残基の数が変えられる、例えば、増加又は減少されるように修飾される。このアプローチは、Bodmerらによる米国特許第5,677,425号においてさらに記載されている。CH1のヒンジ領域中のシステイン残基の数は、例えば、軽鎖及び重鎖の組み立てを促進にするために、あるいは抗体の安定性を増加又は減少させるために変えられる。
一部の実施形態では、Fc領域は、抗体のエフェクター機能を変えるために、少なくとも1つのアミノ酸残基を異なるアミノ酸残基で置換することにより変えられる。例えば、1つ以上のアミノ酸は、抗体が、エフェクターリガンドについて変えられた親和性を有するが、しかし、親抗体の抗原結合能力を保持するように、異なるアミノ酸残基で置換することができる。親和性が変えられたエフェクターリガンドは、例えば、Fc受容体又は補体でありうる。このアプローチは、Winterらによる米国特許第5,624,821号及び第5,648,260号においてさらに詳細に記載されている。
半減期
一実施形態では、抗体は、その生物学的半減期を増加させるために修飾される。種々のアプローチが可能である。例えば、以下の変異の1つ以上を、Wardによる米国特許第6,277,375号において記載されているように導入することができる:T252L、T254S、T256F。あるいは、生物学的半減期を増加させるために、抗体をCH1又はCL領域内で変えて、Prestaらによる米国特許第5,869,046号及び第6,121,022号において記載されるように、IgGのFc領域のCH2ドメインの2つのループから取得されたサルベージ受容体結合エピトープを含めることができる。増加した半減期及び新生児Fc受容体(FcRn)への改善された結合を伴う抗体は、胎児への母体のIgGの移行に関与し(Guyer et al., J. Immunol. 117:587 (1976)及びKim et al., J. immunol. 24:249 (1994))、US2005/0014934A1(Hinton et al.)において記載されている。それらの抗体は、FcRnへのFc領域の結合を改善する1つ以上の置換を伴うFc領域を含む。そのようなFc変異体は、Fc領域残基:238、256、265、272、286、303、305、307、311,312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424、又は434の1つ以上での置換、例えば、Fc領域残基434の置換(米国特許第7,371,826号)を伴うものを含む。
本発明により熟慮される本明細書中の抗体の別の修飾は、ペグ化である。抗体は、例えば、抗体の生物学的(例、血清中)半減期を増加させるためにペグ化することができる。抗体をペグ化するために、抗体、又はそのフラグメントは、典型的には、1つ以上のポリエチレングリコール(PEG)基が抗体又は抗体フラグメントに付加される条件下で、PEG、例えばPEGの反応性エステル又はアルデヒド誘導体などと反応する。ペグ化は、反応性PEG分子(又は類似の反応性水溶性ポリマー)を用いたアシル化反応又はアルキル化反応により行うことができる。本明細書中で使用するように、用語「ポリエチレングリコール」は、他のタンパク質を誘導体化するために使用されてきたPEGの形態のいずれか、例えばモノ(C1-C10)アルコキシ-又はアリールオキシ-ポリエチレングリコール又はポリエチレングリコール-マレイミドなどを包含することを意図する。特定の実施形態では、ペグ化される抗体は、非グリコシル化抗体である。タンパク質をペグ化するための方法は当技術分野において公知であり、本発明の抗体に適用することができる。例えば、NishimuraらによるEP0154316及びIshikawaらによるEP0401384を参照のこと。
本発明により熟慮される抗体の別の修飾は、結果として得られる分子の半減期を増加させるための、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン又はそのフラグメントなどへの、本発明の抗体の少なくとも抗原結合領域のコンジュゲート又はタンパク質融合体である。そのようなアプローチは、例えば、Ballanceら、EP0322094において記載されている。別の可能性は、結果として得られる分子の半減期を増加させるための、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミンなどへの結合が可能なタンパク質への、本発明の抗体の少なくとも抗原結合領域の融合体である。そのようなアプローチは、例えば、Nygrenら、EP0486525において記載されている。
ポリシアル化は別の技術であり、それによって天然ポリマーポリシアル酸(PSA)が使用され、活性寿命が延ばされ、治療用ペプチド及びタンパク質の安定性が改善される。PSAはシアル酸(糖)のポリマーである。タンパク質及び治療用ペプチド薬物送達のために使用される場合、ポリシアル酸は結合時に保護微小環境を提供する。これによって循環中の治療用タンパク質の活性寿命が延びて、免疫系によりそれが認識されるのを防止する。PSAポリマーはヒトの身体において自然に見出される。それは、その壁を覆うために何百万年にわたり進化した特定の細菌により採用された。これらの自然にポリシアル化された細菌は、次に、分子模倣のおかげで、身体の防御システムを妨害することができた。PSAは、自然の究極のステルス技術であり、そのような細菌から簡単に大量に、所定の物理的特徴を伴って産生することができる。細菌のPSAは、タンパク質と結合した場合でさえ、完全に非免疫原性である。なぜなら、それは、ヒトの身体におけるPSAと化学的に同一であるためである。
別の技術は、抗体に連結されたヒドロキシエチルスターチ(「HES」)誘導体の使用を含む。HESは、ワキシーメイズスターチから由来する修飾天然ポリマーであり、身体の酵素により代謝されることができる。HES溶液は通常、欠乏している血液量に代わり、血液のレオロジー特性を改善するために投与される。抗体のヘシル化(hesylation)は、分子の安定性を増加させることにより、ならびに腎クリアランスを低下させることにより循環半減期の延長を可能にし、増加した生物学的活性をもたらす。異なるパラメーター、例えばHESの分子量などを変動させることにより、広い範囲のHES抗体コンジュゲートをカスタマイズすることができる。
別の実施形態では、抗体のFcヒンジ領域を変異させて、抗体の生物学的半減期を減少させる。より具体的には、1つ以上のアミノ酸変異をFcヒンジフラグメントのCH2-CH3ドメイン界面領域に導入し、抗体が、天然のFcヒンジドメインブドウ球菌(Staphylococcyl)プロテインA(SpA)結合と比べて、損なわれたSpA結合を有するようにする。このアプローチは、Wardらによる米国特許第6,165,745号においてさらに詳細に記載されている。
他の修飾
本発明の特定の実施形態では、抗体は、pI(等電点)を増加させ、それらの薬物様特性を改善するように操作されている。タンパク質のpIは、分子の全体的な生物物理学的特性の重要な決定要因である。低いpIを有する抗体は、溶解性が低く、安定性が低く、凝集傾向があることが公知である。さらに、低いpIを伴う抗体の精製は困難であり、特に臨床使用のためのスケールアップの間に問題となりうる。本発明の抗体又はそのフラグメントのpIを増加させることによって、それらの溶解性が改善され、抗体がより高い濃度(>100mg/ml)で製剤化されることが可能になった。高い濃度(例、>100mg/ml)での抗体の製剤化によって、硝子体内注射を介して患者の眼中により高い用量の抗体を投与することができるという利点が提供され、それは次に、タウオパシーのような神経変性疾患を含む慢性疾患の処置についての重要な利点である、減少した投薬頻度を可能にする。より高いpIはまた、抗体のIgGバージョンのFcRn媒介性リサイクリングを増加させうるが、このように、薬物がより長い期間にわたり身体中で存続することを可能にし、より少ない注射を要求する。最後に、抗体の全体的な安定性は、より高いpIに起因して有意に改善され、より長い保存可能期間及びインビボでの生物活性がもたらされる。好ましくは、pIは8.2を上回る、又はそれと等しい。
ワクチン組成物
本発明者らがタウの病理発生に関与する新たなタウ種AcMet11-Tauを発見したため、このように、革新的なワクチン接種アプローチへの道が開かれた。
したがって、本発明の別の対象は、以下のアミノ酸配列(N-α-アセチル)MEDHAGTYGLG(配列番号8)のポリペプチド及び免疫アジュバント化合物を含むワクチン組成物である。
「ワクチン組成物」により、それは本明細書中では、個体において免疫応答を誘導することができ、例えば、AcMet11-Tau種に対して向けられた抗体の産生を誘導することができる物質を意図する。
ワクチンは、本明細書中では、ワクチンが送達された動物において防御応答を提供することが可能であり、重度疾患を起こすことが不可能である生物学的薬剤として定義される。ワクチンは、疾患を起こす病原体に対して抗体産生又は細胞性免疫を刺激する;ワクチンの投与は、このように、疾患からの免疫をもたらす。
好ましくは、前記免疫アジュバント化合物は、フロイント完全アジュバント、フロイント不完全アジュバント、水酸化アルミニウム、及びリン酸カルシウムからなる群において選択される。
特に、前記抗原性ポリペプチドは、以下の式(I)を有することができる:
NH2-PepNt-[(I)n-PepXn]n-PepCt-COOH (I)、
式中:
‐「PepNt」は、0から100アミノ酸残基まで変動するアミノ酸長を有し、式(I)のポリペプチドのN末端に位置付けられるポリペプチドからなり;
‐「[(I)n-PepXn]」はポリペプチド単位からなり、それにおいて:
‐「(I)1」から-「(I)n」は各々が、互いに非依存的に、以下のアミノ酸配列(N-α-アセチル)MEDHAGTYGLG(配列番号8)のポリペプチドからなり、nは1から12までの整数であり;及び
‐「PepX1」から「PepXn」は各々が、互いに非依存的に、0から30アミノ酸残基まで変動するアミノ酸長を有するスペーサーポリペプチドからなり、nは1から12までの整数であり;及び
‐nは、前記ポリペプチド中の[(I)n-PepXn]ポリペプチド単位の数であり、nは1から12までの整数であり;及び
‐「PepCt」は、0から100アミノ酸残基まで変動するアミノ酸長を有し、式(I)のポリペプチドのC末端に位置付けられるポリペプチドからなる。
特に、前記抗原性ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列(N-α-アセチル)MEDHAGTYGLG(配列番号8)又は上で定義したような以下の式(I)を有することができる。
特に、以下を含む又は以下からなる、前記抗原性ポリペプチド:
(i)タウN-アルファアセチル-Met11-352(配列番号:1)からなるアミノ酸配列;
(ii)タウN-アルファアセチル-Met11-381(配列番号:2)からなるアミノ酸配列;
(iii)タウN-アルファアセチル-Met11-383(配列番号:3)からなるアミノ酸配列
(iv)タウN-アルファアセチル-Met11-410(配列番号:4)からなるアミノ酸配列
(v)タウN-アルファアセチル-Met11-412(配列番号:5)からなるアミノ酸配列;
(vi)タウN-アルファアセチル-Met11-441(配列番号:6)からなるアミノ酸配列;);
(vii)タウN-アルファアセチル-Met11-776(配列番号:7からなるアミノ酸配列
(viii)(i)から(vii)の配列の11位のN-アルファアセチルメチオニン残基から開始する、少なくとも9連続アミノ酸のフラグメント
(ix)(i)から(viii)の配列と実質的に相同なアミノ酸配列、好ましくは(i)から(viii)の配列と少なくとも80%同一のアミノ酸配列。
参照ペプチドと「実質的に相同」なペプチドは、1つ以上の保存的置換により参照配列から由来しうる。2つのアミノ酸配列は、1つ以上のアミノ酸残基が、生物学的に類似の残基により置換される場合、あるいはアミノ酸の80%超が同一である、又は約90%超、好ましくは約95%超類似している(機能的に同一である)場合、「実質的に相同」である又は「実質的に類似」している。好ましくは、類似の、同一の、又は相同な配列を、例えば、GCG(Genetics Computer Group, Program Manual for the GCG Package, Version 7、ウィスコンシン州マジソン)パイルアッププログラム、又は当技術分野において公知のプログラム(例えばBLAST、FASTAなど)のいずれかを使用して、アラインメントにより同定する。同一性のパーセンテージは、Needleman-Wunschアラインメントアルゴリズムに基づいてペアワイズグローバルアラインメントを実施し、その全長に沿った2つの配列の最適なアラインメント(ギャップを含む)を見出すことにより算出され得、例えば、Needleを使用し、及びBLOSUM62マトリックスをギャップオープニングペナルティ10及びギャップエクステンションペナルティ0.5で使用することができる。
本明細書中で使用する用語「保存的置換」は、ペプチドの全体的な立体構造及び機能を変えることなく、アミノ酸残基を別のアミノ酸残基で置換することを意味し、例えば、類似の特性(例えば、極性、水素結合ポテンシャル、酸性、塩基性、形状、疎水性、芳香族など)を有するアミノ酸でのアミノ酸の置換を含むが、それに限定されない。類似の特性を伴うアミノ酸は当技術分野において周知である。例えば、アルギニン、ヒスチジン、及びリジンは親水性塩基性アミノ酸であり、互換的でありうる。同様に、イソロイシンは疎水性アミノ酸であり、ロイシン、メチオニン、又はバリンで置換されうる。中性の親水性アミノ酸は、互いに置換することができ、アスパラギン、グルタミン、セリン、及びスレオニンを含む。
「置換された」又は「修飾された」により、本発明は、天然アミノ酸から変えられた又は修飾されたアミノ酸を含む。
そのようなものとして、本発明の文脈において、保存的置換は、類似の特性を有する別のアミノ酸についての1つのアミノ酸の置換として当技術分野において認識されることを理解すべきである。
本発明によれば、第2のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有する第1のアミノ酸配列は、第1の配列が、第2のアミノ酸配列と80;81;82;83;84;85;86;87;88;89;90;91;92;93;94;95;96;97;98;又は99%の同一性を有することを意味する。アミノ酸配列同一性は、好ましくは、適切な配列アラインメントアルゴリズム及びデフォルトパラメーター、例えばBLAST P(Karlin and Altschul, 1990)などを使用して決定される。
前記抗原性ペプチドは、アミノ酸残基を通じて、担体タンパク質又は合成ポリマーに共有結合的に連結することができる。
ペプチドの免疫原性を増強するために、式(I)のペプチドは、担体としての役割を果たすより大きな分子に共有結合的に連結(「結合」)することができる。
担体へのペプチドの付加は、いくつかの方法の1つによりうるが、グルタルアルデヒド(Reichlin, Methods Enzymol. 70: 159-165, 1980)又はDCC手順(例えば、Atassi et al., Biochem. Biophys. Acta 670: 300-302, 1981)を使用したペプチドLysを通じた、DCCを使用したペプチドAsp又はGluを通じた(Bauminger et al., Methods Enzymol 70: 151-159, 1980)、ビスジアゾ化ベンジジンを使用したペプチドTyrを通じた(Walter et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA 77: 5197-5200, 1980)、光化学的付加部位を通じた(Parker et al., Cold Spring Harbor Symposium - Modern Aoproaches to Vaccines, Ed. Chanock & Lerner, Cold Spring Harbor Press, New York, 1984)、又はペプチドCysを通じた(Liu et al., Biochem. 18: 690-697, 1979)連結を含む。
ペプチド担体コンジュゲートは、透析又はゲル濾過により過剰の遊離ペプチドから分離することができる。担体上でのペプチドの負荷レベルは、放射性トレーサーを使用し、特定の手順において負荷レベルを確立して、又はコンジュゲートの定量的アミノ酸分析により、無負荷の担体との比較において決定することができる。後者の技術を使用する場合、N末端又はC末端側でペプチド中に固有の非天然アミノ酸、例えばNleなどを組み入れることが便利であり、それはペプチド組み入れについての定量的マーカーとしての役割を果たし、コンジュゲートのアミノ酸分析により測定される。このNleはまた、上に記載するように、抗原部位と、付加を促進にするために組み入れられた任意のアミノ酸、例えばCys、Lys、又はTyrなどの間でのスペーサーとして機能することができる。
好ましくは、前記担体タンパク質は、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、ウシ血清アルブミン、又はジフテリアトキソイドからなる群より選択される。
本発明に従ったワクチン組成物において、前記合成ポリマーは、リジン残基で構成されるコアマトリックスを含む多分岐ペプチド構築物でありうる。
ポリマー中でリジン骨格を使用する放射状分岐システムが、J. P. Tam [Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 85, 5409-5413 (1988)]により、担体の使用を伴わない抗原を開発するために使用されてきた。これらの抗原は、多様な疾患に対するワクチンを生成するように設計された。具体的には、マラリア疾患に対するワクチンを生成するための抗原は、PCT特許出願シリアル番号WO93/10152、WO2006/029887、WO2007/003384、WO2009/021931及びWO2009/080715、WO2015038708において記載されている。
コアマトリックスは、好ましくは、自然において分岐している樹枝状ポリマーであり、好ましくは、その分岐の各々が同一である。コアマトリックスは、末端官能基を有する分子分岐が共有結合的に結合されている少なくとも2つの官能基を有するコア分子に基づいている。コアマトリックスを形成するための使用について例示的であるのは、リジンである。中央のリジン残基は2つのリジン残基に結合しており、各々がそのカルボキシル基を通じて、中央のリジン残基のアミノ基の1つに結合している。これによって、4つのアミノ基を伴う分子が提供され、それは、式(I)の4つのペプチドを含む構造についてのコアマトリックスでありうる。上記の構造の製造は、当技術分野において公知である。例えば、Tam et al., J. Immun. 148, 914-920 (1992)及びWang et al., Science, 254, 285-288 (1991)を参照のこと。
加えて、前記ペプチドと前記担体タンパク質又は合成ポリマーの間にスペーサーを加えることができる。ペプチドリンカー配列を用いて、各々のポリペプチドがその二次及び三次構造に折り畳まれるのを確実にするのに十分な距離だけ、第1及び第2のポリペプチド成分を分離することができる。そのようなペプチドリンカー配列を、当技術分野において周知の標準的な技術を使用して融合タンパク質中に組み入れる。適切なペプチドリンカー配列は、以下の要因に基づいて選んでもよい:(1)柔軟な伸長された立体構造を採用するそれらの能力;(2)第1及び第2のポリペプチド上の機能的エピトープと相互作用しうる二次構造を採用するそれらの不能;及び(3)ポリペプチドの機能的エピトープと反応しうる疎水性又は荷電残基の欠如。好ましいペプチドリンカー配列は、Gly残基、Asn残基、及びSer残基を含む。他の中性に近いアミノ酸、例えばThr及びAlaなどもリンカー配列中で使用してもよい。リンカーとして有用に用いられうるアミノ酸配列は、Maratea et al., Gene 40:39-46, 1985;Murphy et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:8258-8262, 1986;米国特許第4,935,233号及び米国特許第4,751,180号において開示されているものを含む。リンカー配列は一般的に、1から約50アミノ酸の長さでありうる。リンカー配列は、第1及び第2のポリペプチドが、機能的ドメインを分離し、立体障害を防止するために使用することができる非必須のN末端アミノ酸領域を有する場合には要求されない。
本発明はまた、アミノ酸配列(N-α-アセチル)MEDHAGTYGLG(配列番号8)を含むペプチドを含むワクチン組成物に関する。
前記ペプチドは、アミノ酸残基を通じて担体タンパク質に又は合成ポリマーに共有結合的に連結されている。
好ましくは、前記担体タンパク質は、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、ウシ血清アルブミン、又はジフテリアトキソイドからなる群より選択される。
合成ポリマーは、リジン残基で構成されるコアマトリックスを含む多分岐ペプチド構造でありうる。前記ポリペプチドと前記担体タンパク質又は合成ポリマーの間にスペーサーを導入することができる。
好ましくは、直前に引用したワクチン組成物において、前記ポリペプチドと前記担体タンパク質又は合成ポリマーの間にスペーサーがある。
治療的使用
実験のセクションにおいて記載されているように、本発明の抗体は、AcMet11-Tauポリペプチドを標的化し、それはタウ病理発生において関連する。本発明者らは、AcMet11-Tau種が、Thy-Tauトランスジェニックマウスにおけるタウ病理発生を増強し(図3及び4)、少なくともタウ病理を加速することにより、病理学的過程において関連することを示した。
本発明の抗体、フラグメント、又は免疫複合体は、タウオパチーを処置するために有用でありうる。本発明の抗体は、単独で、又は任意の適切な薬剤との組み合わせにおいて使用してもよい。
本明細書中に記載する処置方法の実施形態の各々において、本発明の抗体又は本発明の抗体-薬物複合体は、処置が求められる疾患又は障害の管理に関連付けられる従来の方法論と一致する様式において送達される。本明細書中の開示によれば、有効量の抗体又は抗体-薬物複合体が、疾患又は障害を防止又は処置するのに十分な時間にわたり及び条件下で、そのような処置を必要とする患者に投与される。
本明細書中で使用するように、用語「処置」又は「処置する」は、疾患に罹るリスクがある又は疾患に罹った疑いのある被験者ならびに病気である又は疾患もしくは医学的状態に苦しんでいるとして診断された被験者の処置を含む、予防的又は防止的処置ならびに治癒的又は疾患修飾処置の両方を指し、臨床的再発の抑制を含む。処置は、障害又は再発性障害の1つ以上の症状を防止する、治癒させる、その発症を遅延させる、その重症度を低下させる、又は寛解させるために、あるいは、そのような処置の非存在において予想される生存を超えて被験者の生存を延長させるために、医学的障害を有する、又は最終的に障害を獲得しうる被験者に投与してもよい。「治療レジメン」により、病気の処置のパターン、例えば、治療の間に使用される投薬のパターンを意味する。治療レジメンは、導入レジメン及び維持レジメンを含みうる。語句「導入レジメン」又は「導入期間」は、疾患の初期処置のために使用される治療レジメン(又は治療レジメンの部分)を指す。導入レジメンの一般的な目標は、処置レジメンの初期期間の間に被験者に高レベルの薬物を提供することである。導入レジメンは、(部分的又は全体的に)「負荷レジメン」を用いてもよく、それは、医師が維持レジメンの間に用いうるよりも大きな用量の薬物を投与すること、医師が維持レジメンの間に薬物を投与しうるよりも頻繁に薬物を投与すること、又はその両方を含みうる。語句「維持レジメン」又は「維持期間」は、病気の処置の間での被験者の維持のために、例えば、被験者を長期間(月又は年)にわたり寛解に保つために使用される治療レジメン(又は治療レジメンの部分)を指す。維持レジメンは、継続的治療(例、定期的な間隔で、例えば、毎週、毎月、毎年などに薬物を投与する)又は断続的治療(例、中断された処置、断続的な処置、再発時の処置、又は特定の所定の基準[例、疾患の顕在化など]の達成時の処置)を用いうる。
本明細書中で使用するように、用語「治療有効量」又は「有効量」は、所望の治療結果を達成するために必要な投与量及び期間にわたる有効な量を指す。本発明の抗体の治療的有効量は、要因、例えば個人の疾患状態、年齢、性別、及び体重、ならびに個人において所望の応答を誘発する本発明の抗体の能力などに従って変動しうる。治療的有効量はまた、抗体又は抗体部分の任意の毒性又は有害効果よりも治療的に有益な効果が勝るものである。本発明の抗体のための効率的な投与量及び投与レジメンは、処置される疾患又は状態に依存し、当業者により決定されうる。当業者である医師は、要求される医薬組成物の有効量を容易に決定及び処方することができうる。例えば、医師は、所望の治療効果を達成するために要求されるレベルよりも低いレベルで、医薬組成物中で用いられる本発明の抗体の用量を開始し、所望の効果が達成されるまで投与量を徐々に増加させることができうる。一般的に、本発明の組成物の適切な用量は、特定の投与レジメンに従って治療効果を生じさせるのに有効な最も低い用量である化合物の量である。そのような有効用量は、一般的に、上に記載する要因に依存する。例えば、治療的使用のための治療有効量は、疾患の進行を安定化させるその能力により測定されうる。典型的には、タウオパチーを阻害する化合物の能力は、例えば、ヒトタウオパチーにおける効力を予測する動物モデルシステムにおいて評価されうる。あるいは、組成物のこの特性は、神経保護を誘導する化合物の能力を、当業者に公知のインビトロアッセイにより検証することにより評価されうる。治療的化合物の治療有効量は、神経原線維変性を減少させうる、又は、他では、被験者における認知機能低下症状を寛解させうる。当業者は、被験者のサイズ、被験者の症状の重症度、及び選択された特定の組成物又は投与の経路などの要因に基づいてそのような量を決定することができるであろう。本発明の抗体の治療有効量についての例示的な、非限定的な範囲は、約0.1~100mg/kg、例えば約0.1~50mg/kgなど、例えば、約0.1~20mg/kg、例えば約0.1~10mg/kgなど、例えば、約0.5、例えば約0.3、約1、約3mg/kg、約5mg/kg、又は約8mg/kgなどである。本発明の抗体の治療有効量についての例示的な、非限定的な範囲は、0.02~100mg/kg、例えば約0.02~30mg/kgなど、例えば約0.05~10mg/kg又は0.1~3mg/kgなど、例えば、約0.5~2mg/kgである。投与は、例えば、静脈内、筋肉内、腹腔内、又は皮下でありうるが、例えば、標的の部位の近位に投与されうる。処置及び使用の上の方法における投与計画を調整し、最適な所望の応答(例、治療的応答)を提供する。例えば、単一ボーラスを投与してもよく、いくつかの分割用量を経時的に投与してもよく、あるいは用量を、治療的状況の緊急事態により示されるように、比例的に減少又は増加させてもよい。一部の実施形態では、処置の効力は、治療の間に、例えば、事前定義された時間点でモニターされる。一部の実施形態では、効力は、疾患領域の可視化により、又は本明細書中でさらに記載する他の診断方法により、例えば、本発明の標識抗体、本発明の抗体から由来するフラグメント又はミニ抗体を使用し、1つ以上のPET-CTスキャンを実施することによりモニターされうる。所望の場合、医薬組成物の効果的な1日用量は、1日を通して適した間隔で、場合により、単位剤形において別々に投与される2、3、4、5、6、又はそれ以上のサブ用量として投与されうる。一部の実施形態では、本発明のモノクローナル抗体は、任意の望ましくない副作用を最小限にするために、長期間、例えば24時間超にわたるゆっくりした連続注入により投与される。本発明の抗体の有効用量はまた、毎週、隔週、又は3週間の投薬期間を使用して投与されうる。投薬期間は、例えば、8週間、12週間、又は臨床的進行が確立されるまでに制限されうる。非限定的な例として、本発明に従った処置は、本発明の抗体の1日投与量として、約0.1~100mg/kg、例えば、0.2、0.5、0.9、1.0、1.1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、45、50、60、70、80、90、又は100mg/kg/日などの量において、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、もしくは40日の少なくとも1つで、又は、あるいは、処置の開始後1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20週の少なくとも1つで、又は、それらの任意の組み合わせで、単一又は分割用量を24、12、8、6、4、もしくは2時間毎に、又はそれらの任意の組み合わせで使用して提供されうる。
したがって、本発明の1つの目的は、治療有効量の本発明の抗体を被験者に投与することを含む、それを必要とする被験者においてタウオパチーを処置する方法に関する。
別の態様では、本発明は、医薬としての使用のための、本明細書中の任意の態様又は実施形態において定義される本発明の抗体に関する。
別の態様では、本発明は、タウオパチーの処置のための本発明の抗体の使用に関する。
用語「タウオパチー」は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、タウ凝集により特徴付けられる疾患を指す(Iqbal, K. et al. Biochimica et Biophysica Acta (BBA) 1739 (2005) 198-210)。タウオパチーは、とりわけ、アルツハイマー病、ダウン症候群;Guamパーキンソニズム認知症複合体;拳闘家認知症及び他の慢性外傷性脳症;筋緊張性ジストロフィー;ニーマンピック病C型;ピック病;嗜銀性顆粒病;前頭側頭型認知症;大脳皮質基底核変性症;淡蒼球橋黒質変性症;進行性核上性麻痺;及びプリオン障害、例えばタングルを伴うゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病を含む。
特定の実施形態では、タウオパチー障害はアルツハイマー病である。
医薬組成物
本発明の一態様は、本発明の抗体を含む医薬組成物に関する。
典型的には、本発明の抗体は、医薬的に許容可能な担体を含む医薬組成物の形態で被験者に投与される。これらの組成物中で使用されうる医薬的に許容可能な担体は、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミンなど、緩衝物質、例えばリン酸、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩又は電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコール及び羊毛脂肪を含むが、それらに限定されない。患者への投与における使用のために、組成物は、患者への投与用に製剤化される。本発明の組成物は、経口的に、非経口的に、吸入噴霧により、局所的に、直腸的に、経鼻的に、頬側に、経膣的に、又は埋め込みリザーバーを介して投与されうる。本明細書中で使用するのは、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液内、胸骨内、くも膜下腔内、肝内、病巣内及び頭蓋内注射又は注入技術を含む。本発明の組成物の無菌注射用形態は、水性又は油性懸濁剤でありうる。これらの懸濁剤は、適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を使用し、当技術分野において公知の技術に従って製剤化されうる。無菌注射用調整物はまた、例えば、1,3-ブタネジオール中の溶液として、非毒性、非経口の許容可能な希釈剤又は溶媒中の無菌注射用溶液又は懸濁剤でありうる。用いてもよい許容可能なビヒクル及び溶媒のなかには、水、リンガー溶液、及び等張性の塩化ナトリウム溶液がある。また、無菌の固定油は従来、溶媒又は懸濁媒質として用いられる。この目的のために、合成モノグリセリド又はジグリセリドを含む任意の無刺激の固定油を用いてもよい。脂肪酸、例えばオレイン酸及びそのグリセリド誘導体などは、注入剤の調製において有用であり、天然の医薬的に許容可能な油、例えばオリーブ油又はヒマシ油(特にそれらのポリオキシエチル化型)なども同様である。これらの油剤又は懸濁剤はまた、長鎖アルコール希釈剤又は分散剤、例えばカルボキシメチルセルロースなど、あるいは乳剤及び懸濁剤を含む医薬的に許容可能な剤形の製剤化において一般に使用される類似の分散剤を含みうる。他の一般に使用される界面活性剤、例えばTweens、Spans、及び他の乳化剤など、あるいは医薬的に許容可能な固体、液体、又は他の剤形の製造において一般に使用されるバイオアベイラビリティの賦活薬も、製剤化の目的のために使用してもよい。本発明の組成物は、限定はしないが、カプセル、錠剤、水性懸濁液、又は溶液を含む、任意の経口で許容可能な剤形において経口投与されうる。経口使用のための錠剤の場合では、一般に使用される担体は、ラクトース及びコーンスターチを含む。潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウムなども典型的に加えられる。カプセル形態での経口投与については、有用な希釈剤は、例えば、ラクトースを含む。水性懸濁剤が経口使用のために要求される場合、活性成分を乳化剤及び懸濁剤と組み合わせる。所望の場合、特定の甘味剤、香味剤、又は着色剤も加えてもよい。あるいは、本発明の組成物は、直腸投与用の坐剤の形態で投与されうる。これらは、薬剤を、室温では固体であるが、しかし、直腸温で液体であり、従って、直腸において溶けて薬物を放出する適切な非刺激性賦形剤と混合させることにより調製することができる。そのような材料は、カカオバター、蜜ろう、及びポリエチレングリコールを含む。本発明の組成物はまた、特に処置の標的に、眼、皮膚、又は下部腸管の疾患を含む、局所適用により容易に接近可能な部位又は器官が含まれる場合、局所投与されうる。適切な局所製剤は、これらの部位又は器官の各々について容易に調製される。局所適用のために、組成物を、1つ以上の担体中に懸濁又は溶解させた活性成分を含む適切な軟膏剤中に製剤化してもよい。本発明の化合物の局所投与用の担体は、鉱物油、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ろう、及び水を含むが、それらに限定されない。あるいは、組成物を、1つ以上の医薬的に許容可能な担体中に懸濁又は溶解させた活性成分を含む適切なローション又はクリーム中に製剤化することができる。適切な担体は、鉱物油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、及び水を含むが、それらに限定されない。下部腸管のための局所塗布は、直腸坐剤製剤(上記を参照のこと)中で、又は適切な浣腸製剤中でもたらすことができる。パッチも使用してもよい。本発明の組成物はまた、鼻エアロゾル又は吸入により投与してもよい。そのような組成物は、医薬製剤の技術分野において周知の技術に従って調製され、ベンジルアルコール又は他の適切な保存剤、バイオアベイラビリティを増強させるための吸収促進剤、フルオロカーボン、及び/又は他の従来の可溶化剤もしくは分散剤を用いて、生理食塩水中の溶液として調製されうる。例えば、本発明の医薬組成物中に存在する抗体は、10mg/mLの濃度において100mg(10mL)又は500mg(50mL)の使い捨てバイアルのいずれかで供給することができる。この産物は、9.0mg/mL塩化ナトリウム、7.35mg/mLクエン酸ナトリウム二水和物、0.7mg/mLポリソルベート80、及び注射用無菌水中でIV投与用に製剤化される。pHは6.5に調整される。本発明の医薬組成物中の抗体についての例示的な、適切な投与量範囲は、約1mg/m2から500mg/m2の間でありうる。しかし、これらのスケジュールは例示的であり、最適なスケジュール及びレジメンを、臨床治験において決定されなければならない医薬組成物中の特定の抗体の親和性及び忍容性を考慮して適合させることができることが理解されるであろう。注射用(例、筋肉内、静脈内)の本発明の医薬組成物は、無菌緩衝水(例、筋肉内については1ml)及び約1ngから約100mg、例えば、約50ngから約30mg、又はより好ましくは約5mgから約25mgの間の本発明の抗タウ抗体を含むように調製することができうる。
特定の実施形態では、リポソーム及び/又はナノ粒子の使用が、宿主細胞中への抗体の導入のために熟慮される。リポソーム及び/又はナノ粒子の形成及び使用は、当業者に公知である。
ナノカプセルは、一般的に、安定な再現性のある方法で、化合物を捕捉することができる。細胞内ポリマー過負荷に起因する副作用を回避するために、そのような超微粒子(およそ0.1μmのサイズ)は、一般的に、インビボで分解されることができるポリマーを使用して設計される。これらの要求を満たす生分解性ポリアルキル-シアノアクリレートナノ粒子が、本発明における使用のために熟慮され、そのような粒子は簡単に作られうる。
リポソームは、水性媒質中に分散されたリン脂質から形成され、自然に多層同心二重層小胞(また、多層小胞(MLV)と呼ばれる)を形成する。MLVは、一般的に、25nm~4μmの直径を有する。MLVの超音波処理は、200~500Åの範囲中の直径を伴い、コア中に水性溶液を含む、小さな単層小胞(SUV)の形成をもたらす。リポソームの物理的特徴は、pH、イオン強度、及び二価カチオンの存在に依存する。
図1.AcMet11-Tauは、AD脳の不溶性凝集タウ画分中に見いだされる病理学的タウ種である。A)AD脳のサルコシル不溶性画分(不溶性)中に存在する凝集タウタンパク質を標識するAT100抗体を使用した、ヒト頭頂葉皮質画分の代表的なウエスタンブロット分析。B)同様に過剰リン酸化されたタウ(pSer396)であるAcMet11-Tau種が、凝集タウタンパク質を含むAD脳の不溶性画分中で検出されることを示すサンドイッチELISA(Braak V-VIステージを伴うAD患者4名からの頭頂葉のプールからの画分を使用した分析)。 図1.AcMet11-Tauは、AD脳の不溶性凝集タウ画分中に見いだされる病理学的タウ種である。A)AD脳のサルコシル不溶性画分(不溶性)中に存在する凝集タウタンパク質を標識するAT100抗体を使用した、ヒト頭頂葉皮質画分の代表的なウエスタンブロット分析。B)同様に過剰リン酸化されたタウ(pSer396)であるAcMet11-Tau種が、凝集タウタンパク質を含むAD脳の不溶性画分中で検出されることを示すサンドイッチELISA(Braak V-VIステージを伴うAD患者4名からの頭頂葉のプールからの画分を使用した分析)。 図2.AcMet11-Tauは、タウ病理の早期イベントである(Thy-Tau22トランスジェニックマウスの海馬において2ヶ月という早期に検出)。Thy-Tau22の海馬ならびに2、3、及び6ヶ月齢のそれらの同腹仔WTマウスにおける2H2D11抗体ベースのELISA(***p<0.0001;一元配置分散分析、それに続くLSDフィッシャー検定)。 図3.インビボ試験前のニューロンの初代培養におけるレンチウイルスベクターバッチの検証。全長タウ(LV-Tau-FL)、及びMet11-Tau(LVMet11-Tau)をコードするレンチウイルスベクターからの同じレベルのTau発現を示すウエスタンブロット分析;Met11-Tauは、ニューロンの初代培養中でN-α-アセチル化形態として検出される(2H2D11抗体イムノブロッティング)。DIV:インビトロでの日数。 図4.AcMet11-Tau/Met11-Tau種は、NFTを持つニューロン:AT100陽性免疫染色の数における増加により示されるように、Thy-Tau30トランスジェニックマウスにおけるタウ病理の発生を増強する。A)Thy-Tau30トランスジェニックマウス(n=5/群)に、レンチウイルス(lentival)ベクター(LV)を用いて、海馬のCA1領域中に、示された座標でのブレグマに関して(AP:前側‐後側;ML:内側‐外側;DV:背腹側)注射した。これらの群は、ヒトタウ発現に関連する効果(LV FL-Tau対PBS)とMet11-Tau 種の適切な効果の間を、即ち、タウの最も外側のN末端欠失の結果及び/又はMet11N-α-アセチル化(LVMet11-Tau対LVFL-Tau)の結果を識別するために計画されている。マウスを1ヶ月齢に注射し、2ヶ月後に屠殺(scarified)した。B)海馬のCA1領域中で過剰リン酸化タウ種(矢印)を持つニューロンを標識するAT8抗体を使用した、注射後2ヶ月の脳冠状切片の免疫組織化学的分析。C)AT100抗体を用いて標識された神経原線維変性を持つニューロンの平均数の定量化。各々の動物について、海馬を含む4~6の冠状切片を分析した(n=5マウス/群)。*p<0.05一元配置分散分析、それに続く事後フィッシャー。 図4.AcMet11-Tau/Met11-Tau種は、NFTを持つニューロン:AT100陽性免疫染色の数における増加により示されるように、Thy-Tau30トランスジェニックマウスにおけるタウ病理の発生を増強する。A)Thy-Tau30トランスジェニックマウス(n=5/群)に、レンチウイルス(lentival)ベクター(LV)を用いて、海馬のCA1領域中に、示された座標でのブレグマに関して(AP:前側‐後側;ML:内側‐外側;DV:背腹側)注射した。これらの群は、ヒトタウ発現に関連する効果(LV FL-Tau対PBS)とMet11-Tau 種の適切な効果の間を、即ち、タウの最も外側のN末端欠失の結果及び/又はMet11N-α-アセチル化(LVMet11-Tau対LVFL-Tau)の結果を識別するために計画されている。マウスを1ヶ月齢に注射し、2ヶ月後に屠殺(scarified)した。B)海馬のCA1領域中で過剰リン酸化タウ種(矢印)を持つニューロンを標識するAT8抗体を使用した、注射後2ヶ月の脳冠状切片の免疫組織化学的分析。C)AT100抗体を用いて標識された神経原線維変性を持つニューロンの平均数の定量化。各々の動物について、海馬を含む4~6の冠状切片を分析した(n=5マウス/群)。*p<0.05一元配置分散分析、それに続く事後フィッシャー。 図4.AcMet11-Tau/Met11-Tau種は、NFTを持つニューロン:AT100陽性免疫染色の数における増加により示されるように、Thy-Tau30トランスジェニックマウスにおけるタウ病理の発生を増強する。A)Thy-Tau30トランスジェニックマウス(n=5/群)に、レンチウイルス(lentival)ベクター(LV)を用いて、海馬のCA1領域中に、示された座標でのブレグマに関して(AP:前側‐後側;ML:内側‐外側;DV:背腹側)注射した。これらの群は、ヒトタウ発現に関連する効果(LV FL-Tau対PBS)とMet11-Tau 種の適切な効果の間を、即ち、タウの最も外側のN末端欠失の結果及び/又はMet11N-α-アセチル化(LVMet11-Tau対LVFL-Tau)の結果を識別するために計画されている。マウスを1ヶ月齢に注射し、2ヶ月後に屠殺(scarified)した。B)海馬のCA1領域中で過剰リン酸化タウ種(矢印)を持つニューロンを標識するAT8抗体を使用した、注射後2ヶ月の脳冠状切片の免疫組織化学的分析。C)AT100抗体を用いて標識された神経原線維変性を持つニューロンの平均数の定量化。各々の動物について、海馬を含む4~6の冠状切片を分析した(n=5マウス/群)。*p<0.05一元配置分散分析、それに続く事後フィッシャー。 図5.Thy-Tau22マウスにおけるAcMet11-Tauに対する受動免疫療法の実験計画:試験1.AcMet11-Tauに対して向けられたモノクローナル抗体(2H2D11抗体;IgG2aアイソタイプ)、及び非特異的抗体(IgG2aアイソタイプコントロール(B69ハイブリドーマ(ATCC(登録商標)HB-9437(商標))から精製)の反復腹腔内注射(IP)が、ヘテロ接合性Thy-Tau22雄及びその同腹仔WTマウス(n=2-3マウス/群、10mg抗体/kg)において実施された。同じ実験手順において、2つのマウス群にPBSを注射した。マウスは3ヶ月齢で最初のIPを、次に7ヶ月齢まで10日毎に受けた。マウスは屠殺の1週間前(8ヶ月齢)に最後の注射を受けた。動物を頸椎脱臼により屠殺し、脳を除去した。右半球を4%パラホルムアルデヒド中で7日間にわたり後固定し、次に20%スクロース中で24時間にわたりインキュベートし、タウ病理の免疫組織化学的分析のための使用まで-80℃で凍結保存した。左半球を使用し、タウ病理の生化学的分析のために、4℃で冠状アクリルスライサー(Delta Microscopies)を使用して海馬を解剖し、-80℃で保存した。血液サンプル(尾静脈で採取)を、抗体安定性(力価)のELISA分析のために、各々のIP注射の前に回収した。 図6.AcMet11-TauペプチドベースのELISAは、2H2D11抗体が、反復IP注射にわたりマウスの血液中で安定であり、機能的であることを示す。免疫化プロトコル(図5)にわたる各々の注射の前に回収されたマウス血液サンプル(S0からS7)を、特定のAcMet11-ペプチド又はネガティブコントロールTau-ペプチドのいずれかでコーティングした後、間接的ELISA(1:600に希釈)により分析した。抗体力価が、標準として使用された精製2H2D11抗体により決定された。 図7A.2H2D11抗体ベースの免疫療法は、MC1免疫染色(タウオリゴマー)を低下させる。タウオリゴマー種を標識するMC1抗体を使用した海馬冠状切片の代表的な免疫組織化学的分析。ヒストグラムは、MC1染色の定量化をCA1面積の%として示した。各々の動物について、海馬を含む4~6の冠状切片を分析した(n=3マウス/群);**p=0,0033対応のないスチューデントのt検定。 図7B.2H2D11抗体ベースの免疫療法によって、AT100陽性ニューロン(神経原線維タングルを伴うニューロン)の数が減少する。タウ凝集種を標識するAT100抗体を使用した海馬冠状切片の代表的な免疫組織化学的分析。ヒストグラムは、海馬において神経原線維変性を持つニューロン(AT100陽性ニューロン)の平均数の定量化を示し、mm2当たりで平均化した。各々の動物について、海馬を含む4~6の冠状切片を分析した(n=3マウス/群);*p=0,014対応のないスチューデントのt検定。 図8.2H2D11抗体ベースの免疫療法は、不溶性のタウ凝集体を減少させる。マウス海馬からのサルコシル可溶性(S)及び不溶性(P)画分のウエスタンブロット分析:A)サルコシル不溶性画分(不溶性)中に存在する凝集タウタンパク質を標識するAT100抗体を使用;B)HT7抗体(汎タウ抗体)を使用;C)HT7についてのウエスタンブロットのデンシトメトリー定量化及び不溶性タウタンパク質の%の概略図。 図8.2H2D11抗体ベースの免疫療法は、不溶性のタウ凝集体を減少させる。マウス海馬からのサルコシル可溶性(S)及び不溶性(P)画分のウエスタンブロット分析:A)サルコシル不溶性画分(不溶性)中に存在する凝集タウタンパク質を標識するAT100抗体を使用;B)HT7抗体(汎タウ抗体)を使用;C)HT7についてのウエスタンブロットのデンシトメトリー定量化及び不溶性タウタンパク質の%の概略図。 図8.2H2D11抗体ベースの免疫療法は、不溶性のタウ凝集体を減少させる。マウス海馬からのサルコシル可溶性(S)及び不溶性(P)画分のウエスタンブロット分析:A)サルコシル不溶性画分(不溶性)中に存在する凝集タウタンパク質を標識するAT100抗体を使用;B)HT7抗体(汎タウ抗体)を使用;C)HT7についてのウエスタンブロットのデンシトメトリー定量化及び不溶性タウタンパク質の%の概略図。 図9.Thy-Tau22マウスにおけるAcMet11-Tauに対する受動免疫療法の実験計画:試験2.AcMet11-Tauに対して向けられたモノクローナル抗体(2H2D11抗体;IgG2aアイソタイプ)、及び非特異的抗体(IgG2aアイソタイプコントロール(B69ハイブリドーマ(ATCC(登録商標)HB-9437(商標))から精製)を用いた反復腹腔内注射(IP)を、ヘテロ接合性Thy-Tau22雄(n=15マウス/群;10mg抗体/kg)において実施した。同じ実験手順において、同腹子WTマウス群にPBS(n=9)又はIgG2aアイソタイプコントロール(n=6)のいずれかを用いて注射し、行動評価におけるベースラインを得た。雌で作られた実験群も含まれた。 マウスは、3ヶ月齢で最初のIPを、次に7ヶ月齢での行動評価まで2週間毎に受けた。マウスは屠殺の1週間前(8ヶ月齢)に最後の注射を受けた。動物は頸椎脱臼により屠殺され、脳が除去された。右半球を4%パラホルムアルデヒド中で7日間にわたり後固定し、次に20%スクロース中で24時間にわたりインキュベートし、使用まで-80℃で凍結保存した。左半球を使用し、生化学的分析のために、4℃で冠状アクリルスライサー(Delta Microscopies)を使用して海馬及び皮質を解剖し、-80℃で保存した。 血液サンプル(尾静脈で収集)を、ELISA分析のために、最初の注射の前、ならびに免疫化プロトコルの中間及び終了時に回収した。 図10.AcMet11-Tauに対する受動免疫療法によって、Thy-Tau22マウスの空間記憶(Y迷路)が改善される。WTコントロール動物は、他の既知アームよりも新規アームに対して選好性を示した(**p<0.01 N対O;一元配置分散分析、それに続くLSDフィッシャー検定)。予想通り、IgG2aアイソタイプコントロールを用いて処置されたTHY-Tau22は、新規アーム対他のアームについての選好性により特徴付けられる適切な空間記憶を呈することなく(p=0.21、N対O)、そして新規アームにおいて費やされた時間のパーセンテージは、WT動物と比較して有意に減少した(#p<0.05;一元配置分散分析、それに続くLSDフィッシャー検定)。逆に、2H2D11抗体を用いて処置されたTHY-Tau22は、他のアームよりも新規アームについて有意な選好性(**p<0.01 N対O;一元配置分散分析、それに続くLSDフィッシャー検定)を、IgG2aアイソタイプコントロール抗体を用いて処置されたTHY-Tau22動物と比較して有意に増強された新規アームにおいて費やされた時間のパーセンテージ(°p<0.05;一元配置分散分析、それに続くLSDフィッシャー検定)と一緒に示し、回復された空間記憶能力が裏付けられた。 図11:2C12C8ハイブリドーマ上清によって、間接的ELISAによるN-アルファ末端アセチル化Met11-Tauペプチドの特異的検出が可能になる。ヒストグラムは、2C12C8ハイブリドーマ培養物からの上清の段階希釈により得られた代表的なELISA OD値を示した。ポジティブコントロールとして、本発明者らは、本発明者らが間接的ELISAにおいて使用してきた3つのペプチドを同様に認識する精製hTauE1抗体(全タウ、12-21)、及びAcMet11-Tauペプチドに向かって特異性を示す精製2H2D11抗体を使用した。3つのペプチドは以前に記載されている(WO 2018/178078):AcMet11-Tauペプチド:N-アルファ-アセチル-Met11-Tauペプチド;Met11-Tauペプチド:非アルファアセチル化切断Met11 Tau;FL-Tauペプチド:メチオニン1から開始し、非ノンフリーMet11 Tauを含むタウペプチド。 図12:2つの異なる抗体:2C12C8及び2H2D11に基づくサンドイッチELISAによるN末端アセチル化Met11-Tauキャリブレータの検出。上部パネル。N-アルファ-アセチル-Met11-Tau種の検出のためのサンドイッチELISAアッセイの概略図;捕捉抗体は精製2C12C8又は2H2D11で作製された;検出抗体はTauE1抗体(全タウ、23-40)で作製された。下部パネル。各々の抗体(2C12C8及び2H2D11)について、標準曲線は、N-アルファ-アセチル化-Met11-Tauキャリブレーターペプチドの段階希釈を使用することにより作製された。 図13:2つの異なるモノクローナル抗体:2C12C8及び2H2D11を使用した、細胞溶解物中のN末端アセチル化Met11-Tauタンパク質のウエスタンブロット分析による特異的検出。48時間のテトラサイクリン処理後の、全長タウ(Tau-412)又はAcMet11-Tau(Met11-Tau)のいずれかを過剰発現するSH-SY5Y誘導性細胞株からの10μgのタンパク質抽出物の代表的なウエスタンブロット分析。分析は最初に、2H2D11抗体又は2C12C8抗体のいずれかを使用して実施した。膜を次に、両方の細胞株におけるタウタンパク質の発現を示すために、Tau C-ter抗体を用いてリプローブした。 図14:アルツハイマー病患者(A)及びThy-Tau22トランスジェニックマウス(B)からの脳サンプル(海馬)における2C12C8抗体によるN末端アセチル化Met11-Tauタンパク質の特異的検出。A.年齢を一致させたコントロール(n=6)及びAD症例(n=7、Braak IV-VIから)の海馬からのタンパク質抽出物を、2C12C8抗体ベースのサンドイッチELISAにおいて使用した。データは、2C12C8抗体がADサンプル中で特異的に反応することを示した(****p<0.0001;対応のないt検定で比較)。B.Thy-Tau22ならびに3及び7ヶ月齢のそれらの同腹仔WTマウスの海馬における2C12C8抗体ベースのサンドイッチELISA(****p=0.0016;対応のないt検定で比較)。 図14:アルツハイマー病患者(A)及びThy-Tau22トランスジェニックマウス(B)からの脳サンプル(海馬)における2C12C8抗体によるN末端アセチル化Met11-Tauタンパク質の特異的検出。A.年齢を一致させたコントロール(n=6)及びAD症例(n=7、Braak IV-VIから)の海馬からのタンパク質抽出物を、2C12C8抗体ベースのサンドイッチELISAにおいて使用した。データは、2C12C8抗体がADサンプル中で特異的に反応することを示した(****p<0.0001;対応のないt検定で比較)。B.Thy-Tau22ならびに3及び7ヶ月齢のそれらの同腹仔WTマウスの海馬における2C12C8抗体ベースのサンドイッチELISA(****p=0.0016;対応のないt検定で比較)。 図15:2C12C8抗体は、Thy-Tau22トランスジェニックマウスの海馬において神経原線維変性を呈するニューロンを標識する。2C12C8抗体を使用した、マウス脳矢状切片の代表的な免疫組織化学分析。パネルA:8ヶ月齢のWt同腹仔マウスからの切片;パネルB-C:それぞれ3、8、及び13ヶ月齢のThy-Tau22マウスからの切片。矢印は、2C12C8抗体により呈される、神経原線維変化の特色を伴う典型的なニューロンの一部を示した。
実施例1:
材料及び方法
2H2D11抗体の生成。2H2D11抗体は、11位のメチオニンから21位のグリシンまでのタウ配列に対応するN-アルファ末端アセチルタウペプチド(Ac-Met11-Tauペプチド:{Nα-アセチル}MEDHAGTYGLG:配列番号8)を用いた免疫化により生成した。この配列は、全てのタウアイソフォームにより共有されるエクソン1によりコード化されている。システイン残基が、KLHコンジュゲーションのためにAc-Met11-TauペプチドのC末端に加えられている。Balb/cマウスは、14、45、及び63日目に3回の追加免疫を用いて皮下免疫化させた。最も高い力価を呈するマウスの脾臓からのリンパ球を次に、(Pandey, 2010)において記載されている方法に従って、NS1骨髄腫細胞と融合させた。ハイブリドーマ上清を、以下の異なるペプチドに対する間接的ELISAにおいてスクリーニングした:
Ac-Met11-Tauペプチド:{Nα-アセチル}MEDHAGTYGLG;(配列番号8)抗原として使用されるタウフラグメントと同じ配列。
Met11-Tauペプチド:MEDHAGTYGLG;(配列番号9)
Ac-Met1-Tauペプチド:{Nα-アセチル}MAEPRQEFEVMEDHAGTYGLG(配列番号10);ペプチドは、N-アルファ末端アセチル化を保有するタウのメチオニン1で開始する。
ハイブリドーマ上清の間接的ELISAスクリーニングによって、フリーの非N-アルファ末端アセチル化メチオニン11との、又は非切断メチオニン11との、又はそれがメチオニン11と同じアミノ酸状況にない場合はN-アルファ-アセチル-メチオニンとのわずかな交差反応性を伴う、又は任意の交差反応性を伴わないAc-Met11-Tau種を特異的に検出する一組のクローンの選択が可能になった。アイソタイプ及び軽鎖の型を、選択したハイブリドーマについて決定している(表2、下)。
Figure 2022526334000006
ハイブリドーマ2H2をさらにサブクローン化し、本発明者らは、2H2D11抗体を産生するハイブリドーマクローンを選択した。タウタンパク質のN-アルファ末端アセチル化メチオニン11に向けられた2H2D11抗体の特異性を、間接的ELISA、ウエスタンブロッティング、及び免疫組織化学により再現性よく検証した。2H2D11のVH及びVL配列を提供する。
ヒト組織サンプル
ヒト脳の剖検サンプル(頭頂皮質)は、Lille NeuroBankコレクション(Centre de Ressources Biologiques du CHU de Lille)からであった。インフォームドコンセントを全ての被験者から得た。Lille NeuroBankは、2008年8月14日にLille University Hospital(CHU-Lille)により、参照DC-2000-642の下でFrench Research Ministryに宣言され、インフォームドコンセント、倫理審査委員会の承認、及びデータ保護を含む、生物学的資源に関するフランス法により定められた基準を満たしている。Lille NeuroBankの倫理審査委員会により試験は承認された。タウ病理の段階を、Braak et al., (2011)に従って神経病理学的特徴に基づいて分類した。
マウス
C57Bl6/JバックグラウンドのThy-Tauトランスジェニックマウス系統(Thy-Tau22及びThy-Tau30)は、加齢とともに神経原線維変性及び記憶障害を発生し、Thy1.2ニューロンプロモーターの制御下での、2つの凝集促進性変異(G272V&P301S)を持つヒトTauアイソフォーム(1N4R)の過剰発現により生成された(Schindowski et al. 2006)。追加の記載が、Thy-Tau22モデルについてVan der Jeugd et al. 2013及びLaurent et al. 2017;ならびにThy-Tau30モデルについてLeroy et al. 2007において提供されている。
トランスジェニックマウス及び同腹仔コントロール(WT)を、病原体のない施設において収容し、ケージ当たり5匹(Techniplastケージ1284L)で、食料及び水を自由摂取させ、12時間明/12時間暗サイクルで維持した。動物を、実験動物の飼育及び使用についての欧州基準に準拠して維持し、全ての実験プロトコルが倫理的承認を得ている:脊椎動物での実験についての合意(n°2015101320441671/2016-2020、CEEA75、フランス、リールから)。遺伝子改変生物操作についての合意(OGM 2015-2020、N°1285、le Haut Conseil des Biotechnologies)。
レンチウイルスベクター
全長タウ(Tau-412)及びMet11-Tau(4Rアイソフォームの状況における)についてのcDNAを運ぶニューロン指向性(Deglon et al., 2000)を伴うレンチウイルスベクター(LV)を生成及び産生し、それらの力価を、以前に記載されたように決定した(Caillierez et al., 2013)。
初代ニューロン培養
一次皮質ニューロンを15から17日齢のマウス胚から得て、以下のように調製した。簡単には、皮質を注意深く解剖し、研磨したパスツールピペットでの粉砕により培養培地中で機械的に解離させた。一度解離し、カウントしたら、細胞を6ウェルプレート中にプレーティングした(ウェル当たり800000個細胞)。解離、プレーティング、及び培養のために、2%B27、500μmグルタミン、及び1%抗生物質-抗真菌剤(Gibco、フランス)を添加したNeurobasal培地を使用した。細胞を37℃の5%CO2加湿インキュベーター中で維持した。
レンチウイルスベクターベースの感染をDIV11で実施した;400ngのLVをウェル当たりに加えた。3日後、細胞をリン酸緩衝生理食塩水で1回洗浄し、WB分析のために溶解緩衝液中に回収した。
定位注射
1ヶ月齢のヘテロ接合性Thy-Tau30トランスジェニックマウスを、ケタミン(100mg/kg)及びキシラジン(20mg/kg)の混合物の腹腔内注射で麻酔した。動物を定位固定装置(David Kopf Instrument)上に置き、両側注射を、ブレグマに関して以下の座標で、海馬のCA1領域中に実施した:前後-2,5mm、内側-外側-1mm(右側)及び+1(左側)及び背腹-1.8mm。等量のレンチウイルスベクター(445ngのp24)又はPBS(2.5μl)を、固定針を伴う10μlガラスシリンジ(Hamilton;Dutscher、フランス、ブリュマト)を使用し、0.25μl/分の速度で注射した。注射後2ヶ月に、マウスをペントバルビタールナトリウム(50mg/kg、腹腔内)を用いて深麻酔し、次に、最初に冷NaCl(0.9%)を用いて、及び次に0.1mol/Lリン酸緩衝生理食塩水(pH 7.4)中の4%パラホルムアルデヒド(0.1mol/L)を用いて20分間、経心的に灌流した。脳を4%パラホルムアルデヒド中で1日間後固定し、次に20%スクロース中で24時間にわたりインキュベートし、イソペンタン中で、-40℃で1分間凍結し、次に使用まで-80℃に保った。
受動免疫療法(図5及び図9)
AcMet11-Tauに対して向けられたモノクローナル抗体(2H2D11抗体;IgG2aアイソタイプ)の、ならびに非特異的抗体(IgG2aアイソタイプコントロール(B69ハイブリドーマ(ATCC(登録商標)HB-9437(商標))から精製))を用いた反復腹腔内注射(IP)をヘテロ接合性Thy-Tau22(10mg抗体/kg)において実施した。同じ実験手順において、同腹仔WTマウス群にPBS又はIgG2aアイソタイプコントロールのいずれかを注射した。マウスはそれらの最初のIPを、3ヶ月齢で、及び次に10日毎に(試験1について)、又は2週間毎に(試験2について);7ヶ月齢での行動評価(試験2)まで受けた。マウスは屠殺の1週間前(8ヶ月齢)に最後の注射を受けた。
血液サンプルを尾静脈で収集し、血漿を遠心分離により回収し、ELISAアッセイにおける使用まで-20℃に保った。
免疫組織化学(IHC)
連続浮遊脳冠状切片(40μm)を、4℃でPBS-アジド(0.2%)中に保たれたクリオスタット(Leica Microsystems GmbH、ドイツ)を使用して得た。目的の切片をPBS-Triton(0.2%)で洗浄し、0.3%H2O2で30分間にわたり処理し、非特異的結合をMOM(マウスIgGブロッキング試薬)又はヤギ血清(PBSで1/100;Vector Laboratories)で1時間にわたりブロッキングした。切片を次に、PBS-Triton0.2%中の一次抗体(以下の表1)と4℃で一晩インキュベートした。3回の洗浄(10分)後、標識を、ビオチン化抗マウスIgG又はウサギIgG(25 PBS-Triton 0.2%中の1/400;Vector Laboratories)を1時間にわたり使用し、続いてABCキット(PBS中の1/400;Vector Laboratories)を使用することで増幅し、標識を、0.075%H2O2を含む50mmol/l Tris-HCl、pH7.6中の0.5mg/ml DAB(Vector Laboratories)を使用して完了した。脳切片をSuperFrostスライド上に乗せて、段階的な一連のアルコール及びトルエンを通じて脱水し、次にZeiss 30 AXIOSCANZ1スライドスキャナー及びZenソフトウェアを使用した顕微鏡分析のために、Vectamount(Vector Laboratories)を用いてマウントした。定量化を、ImageJソフトウェアを使用して海馬における同じ目的領域中で実施した。
生化学的画分(可溶性/不溶性タウ)
サルコシル可溶性/不溶性タンパク質調製物について、マウス海馬を、10mM Tris-HCl pH7.4、0.32Mスクロース、800mM NaCl、1mM EGTA(Complete、Roche)を含み、プロテアーゼ阻害剤を伴う溶解緩衝液中での超音波処理によりホモジナイズし、12000gで10分間にわたり4℃で遠心分離した。上清を1%サルコシル(N-ラウロイルサルコシニネートナトリウム、Fluka)中で、室温で1時間の穏やかな撹拌下でインキュベートし;次に、100000gで1時間にわたり4℃で遠心分離した。サルコシル可溶性タウ種を含む上清を回収し、不溶性タウ種を含むペレットを、還元剤(Invitrogen)を添加したLDS2X中で直接的にホモジナイズした。
ウエスタンブロットについて、可溶性画分中のタンパク質量を、BCAアッセイ(Pierce)を使用して評価し、その後に、還元剤(Invitrogen)を添加したLDS2Xで1μg/μlに標準化した。サルコシル可溶性及びサルコシル不溶性のサンプルを、1:6の比率でNuPageNovexゲル上にロードした。
タンパク質抽出
細胞を、PBSを使用して洗浄し、氷冷RIPA緩衝液:150mM NaCl、1%NP40、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%SDS、50mM Tris-HCl、pH 8.0(プロテアーゼ阻害剤(Complete、Roche)で完成)中で回収した。4℃で1時間の超音波処理及びホモジナイズ後、上清を、12000gで10分間にわたる4℃での遠心分離により回収し、タンパク質濃度を、BCAアッセイキット(Pierce)を使用して決定した。
ウエスタンブロッティング
全タンパク質について、抽出物を、還元剤(Invitrogen)を添加したLDS2Xで1μg/μlに標準化し、100℃で10分間にわたり変性させた。タンパク質を次に、プレキャスト4~12% Bis-Tris NuPage Novexゲル(Invitrogen)を使用してSDS-PAGEで分離した。タンパク質を0.45μmニトロセルロースメンブレン(AmershamTM Hybond ECL)に移し、一次抗体により、TNT緩衝液(140mM NaCl、0.5% Tween20、15mM Tris、pH 7.4)中の5%乾燥脱脂乳又はTNT緩衝液中の5%ウシ血清アルブミン(Sigma)で飽和させた。メンブレンを次に、一次抗体(表3、下)と4℃で一晩インキュベートし、TNT緩衝液で10分間にわたり3回洗浄し、二次抗体(Vector)とインキュベートし、再度洗浄した。免疫標識は、LAS-4000取得システム(Fujifilm)上で化学発光キット(ECLTM、Amersham Bioscience)を使用して可視化した。
間接的ELISA
Nunc 96ウェルマイクロタイタープレート(Maxisorp F8;Nunc, Inc.)を、50mM NaHCO3、pH9.6中の100ng/ウェルのAc-Met11-Tauペプチド({Nα-アセチル}MEDHAGTYGLG)又はTau 1-ペプチド(MAEPRQEFEVMEDHAGTYGLG)を用いて4℃で一晩コーティングした。0.05%Tweenを含むPBS(PBS-T)での3回の洗浄後、プレートを、0.1%カゼイン溶液(PBS)を用いて37℃で1時間ブロッキングし、マウス血漿(0.2%BSAを含むPBS中での1:600希釈)との室温で2時間にわたるインキュベーションが続いた。PBS-Tでの3回の洗浄後、免疫検出を、PBS-BSA 0.2%中での1:4000希釈のヤギ抗マウスIgG西洋ワサビペルオキシダーゼ結合抗体(A3673;Sigma)を使用して、37℃で1時間にわたり実施した。PBS-Tでの5回の洗浄後、検出を、テトラメチルベンジジン基質(T3405、Sigma)を使用して室温で30分間にわたり実施した;アッセイをH2SO4で停止させ、吸光度を、分光光度計(Multiskan Ascent、Thermo Labsystems)を用いて450nmで読み取った。
サンドイッチELISA
Nunc 96ウェルプレート(VWR)を、炭酸緩衝液(NaHCO3 0.1M、Na2CO3 0.1M、pH 9.6)中1μg/mlの濃度の2H2D11抗体(Ac-Met11-Tau種の検出用)100μlを用いて4℃で一晩コーティングした。プレートをその後、0.1%カゼインを含むWASH1X緩衝液(INNOTEST hTau Agキット、FUJIREBIO)を用いて37℃で1時間にわたりブロッキングし、WASH1X緩衝液を用いて3回洗浄した。タンパク質サンプルを1μg/μlで標準化し、SAMPL DIL緩衝液(INNOTEST hTau Agキット、FUJIREBIO)中に希釈した。タンパク質サンプル及びビオチン化抗体(HT7/BT2、INNOTEST hTau Agキット、FUJIREBIO)を加え、プレートを室温で一晩インキュベートした。ウェルを4回洗浄し、次にペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジンと室温で30分間にわたりインキュベートし、4回洗浄した。検出を、テトラメチルベンジジン基質を使用し、室温で30分間にわたり実施した;アッセイをH2SO4で停止させ、吸光度を、分光光度計(Multiskan Ascent、Thermo Labsystems)を用いて450nmで読み取った。全タウタンパク質又はSer396でリン酸化されたタウの検出のために、ELISA実験を、製造元の指示に従って、それぞれINNOTEST hTauキット(FUJIREBIO)及びHuman Tau[pS396]ELISAキット(Invitrogen)を使用することにより実施した。
Y迷路試験
短期空間記憶を、以前に記載されたように(Laurent et al., 2016)、自発的新規性ベース空間選好Y迷路テストにおいて評価した。Y迷路の各々のアームは、長さ22cm、幅6.4cmで、高さ15cmの不透明な壁を伴った。異なる迷路外の手がかりを周囲の壁に置いた。おがくずを実験の間に迷路に置き、各々の段階の間に混合した。アームの割り当ては、各々の群内で釣り合いが取れていた。曝露段階の間に、マウスを「開始」アームの端に置き、5分間にわたり(マウスが最初に開始アームを離れた時から開始)、「開始」アーム及び「他の」アームを探索することを可能にした。迷路の第3のアーム(「新規」アーム)へのアクセスは、不透明なドアによってブロックされた。マウスを次に、迷路から除き、2分間にわたりそのホームケージに戻した。テスト段階において、マウスを再び迷路の「開始」アームに置き、「新規」アームのドアを除き、マウスを、5分間にわたり(マウスが最初に開始アームを離れた時から開始)迷路を探索することを可能にした。迷路の各々のアームにおいてマウスが費やした時間の量を、EthovisionXT(Noldus Information Technology)を使用し、曝露段階及びテスト段階の両方の間に記録した。
統計
画像の取得及び定量化ならびに行動評価が、実験条件に対して盲検化された治験責任医師により実施された。結果を平均±s.e.mとして表現する。平均値の間の差を、スチューデントのt検定又は一元配置分散分析を使用して決定し、GraphpadPrismソフトウェアを使用した事後フィッシャーのLSD検定が続いた。P値<0.05を有意と考えた。
Figure 2022526334000007
結果
本発明者らの最も初期のデータは、AcMet11-TauがAD関連のタウ病理の痕跡となる特色であることを示している(WO2018/178078)。
本発明者らはさらなる分析を実施し、データは、AcMet11-Tauがタウの病理発生に関与する病理学的タウ種であることを示す。第1に、本発明者らは、AD脳タンパク質の生化学的分画を行っている。本発明者らのELISA分析は、病理学的に過剰リン酸化されたタウタンパク質と同様に、AcMet11-Tau種が不溶性画分中に存在することを示した(図1)。
第2に、海馬のタウ病理を3~10ヶ月から、及び記憶障害を6ヶ月から徐々に発生するTHY-Tau22マウス(Schindowski et al., 2006;Van der Jeugd at al., 2013)において、AcMet11-Tau種が、記憶障害に先行する病理学的過程の早期段階で検出される。実際に、海馬の脳切片の免疫組織化学的分析(示さず)及び海馬タンパク質抽出物を使用したサンドイッチELISA(図2)は、AcMet11-Tauが2ヶ月齢のThy-Tau22マウスにおいて検出されることを示すが、記憶障害は6ヶ月齢から検出される。
第3に、本発明者らは、AcMet11-Tau種の脳発現がThy-Tau30トランスジェニックマウスにおけるタウ病理発生を増強するか否かを分析することにより、AcMet11-Tau種とタウ病理との因果関係を評価した。本発明者らは、Met11-Tau又は全長タウタンパク質(FL-Tau)のいずれかのニューロン発現(Caillierez et al., 2013)を可能にするレンチウイルスベクター(LV)の定位海馬注射を実施した。注目すべきことに、本発明者らは、定位注射の前に、LVバッチが初代神経細胞において同じレベルのFL-Tau及びMet11-Tauの発現を可能にすること、及びMet11-TauがN-α-アセチル化形態として発現されることを確実にした(図3)。マウスの脳切片の本発明者らのIHC分析を、LVの定位注射の2ヶ月後に実施し、タウタンパク質が海馬内の神経細胞において安定的に発現されること、及びMet11-Tauが、特にシナプス可塑性及び記憶に関連する領域、即ち、CA1、CA3、歯状回(DG)、及び苔状線維においてN-α-アセチル化型として検出されることを示した(図示せず)。重要なことに、AT8及びAT100抗体を使用した免疫染色は、AcMet11-Tauを発現するマウスが、FL-Tauを発現するマウスと比較し、神経原線維タングルを持つニューロンの増加数を呈することを示したが(図4)、それ故に、AcMet11-Tau種が、少なくともタウ病理を加速することにより、病理学的過程に関与することを示唆する。
全体として、本発明者らのデータは、AcMet11-Tauが生理病理学的価値のある初期の病理学的種であり、それ故に貴重な治療標的でありうることを示す。次に、本発明者らは、タウ病理のThy-Tau22トランスジェニックモデルにおけるこのタウ種の減少/中和が、タウ病理及び関連付けられる記憶障害に対する保護効果に導くか否かを評価した。この目的を達成するために、本発明者らは、本発明者らがAcMet11-Tau種に対して開発した特定のモノクローナル抗体(2H2D11)に基づく受動免疫アプローチを使用した。
本発明者らは、最初に、限定数のマウス(n=3/群)を用いたパイロット試験を実施し、2H2D11ベースの免疫療法の実験設定を評価した。
このモデルにおいてタウ病理及び記憶障害が存在するが、しかし、最大ではない場合、Thy-Tau22及びそれらの同腹仔WTマウスは、3ヶ月齢(Thy-Tau22マウスにおける初期の病理学的段階)から7ヶ月齢まで、10日毎に注射された(腹腔内(IP)注射)。反復IP注射は、PBS又はAcMet11-Tauに対する10mg/kgのモノクローナル抗体(2H2D11抗体;IgG2aアイソタイプ)のいずれかを用いて、ならびに非特異的抗体(IgG2aアイソタイプコントロール抗体)を用いて実施した(図5)。本発明者らの分析によって、免疫療法に関連する明白な毒性は示されず、2H2D11抗体が少なくとも20日間にわたり血液中で安定かつ機能的であることが見出された(図6)。重要なことに、本発明者らは、タウの病理分析から面白いデータを得た。実際に、特定の立体構造的及び病理学的タウエピトープに対する抗体、それぞれMC1(図7A)及びAT100(図7B)を使用したIHC染色によって、2H2D11抗体が注射されたThy-Tau22マウスの海馬中でのタウ病理における有意な減少が明らかに示された。同様に、海馬タンパク質からの不溶性画分の分析によって、2H2D11ベースの免疫療法が病理学的タウ不溶性種における減少を誘導することが示された(図8)。
その後、本発明者らは、多数のマウスを用いた広範な受動免疫療法試験を実施してきた(図9)。4ヶ月間の処置後、免疫療法の影響を短期空間記憶で評価した。WTマウスと比較し、及びThy-Tau22系統について予想されるように(Laurent et al., 2016)、IgG2aコントロールを用いて注射されたThy-Tau22マウスが、新規アームについての選好の欠如により実証されるように、空間記憶の障害を示すことがデータによって示された(図10)。対照的に、2H2D11抗体を用いて処置されたThy-Tau22マウスは、WTマウスと同様に、他のアームよりも新規アームにおいて有意により多くの時間を費やし、空間記憶に対する抗AcMet11-Tau免疫療法の有益な効果が明らかになった。
結論
本発明者らは、AcMet11-Tau種が、AD及びタウオパチーに関連するタウ病理の分野において、特に免疫療法の標的として、良好な治療標的であるという概念実証を確立した。本発明者らの以前のデータによって、AcMet11-Tauが病理学的状況において排他的に検出されることが明確に示されている(WO 2018/178078)。本明細書では、本発明者らは、AcMet11-11がタウ病理発生において推進的な役割を有していることを示した。重要なことに、本発明者らがAcMet11-Tau種に対して開発した固有の抗体を使用した受動免疫療法は、タウ病理を減少させることにより、及びタウ病理のトランスジェニックモデルにおける記憶障害を改善することにより有益な影響を示した。
実施例2:
N-α-アセチル-Met11-Tau(AcMett11-Tau)に対するさらなる抗体を得るために、本発明者らは2C12ハイブリドーマ(実施例1の表2において記載)をサブクローン化し、そして本発明者らは2C12C8クローンを選択した。アイソタイプストリップは、2C12C8ハイブリドーマがカッパ鎖を伴うIgG1抗体を産生することを示したが、本発明者らは、2H2D11がIgG2a抗体であることを以前に立証している(実施例1の表2において参照)。図11において示すように、間接的ELISAを使用し、2C12C8ハイブリドーマからの培養上清の異なる希釈を分析した。データによって、2H2D11抗体(陽性コントロールとして使用)と同様に、2C12C8ハイブリドーマからの上清が、タウタンパク質のN-アルファ末端アセチル化メチオニン11に対して特異性を呈することが示された。実際に、2C12C8は、それがメチオニン11(FL-Tauペプチド)と同じアミノ酸の状況にない場合、フリーの非N-アルファ-末端アセチル化メチオニン11(Met11-Tauペプチド)と、又は非切断メチオニン11(Tau1ペプチド)と、又はN-アルファ-アセチル-メチオニンと反応性を呈さない。全タウタンパク質に対する7C12/E7抗体(hTauE1抗体)に関して、それは、3つの異なるペプチドに対して類似の免疫反応性を呈する。
2C12C8抗体の精製後(WO 2018/178078において記載されているプロトコルに従う)、このモノクローナル抗体を、AcMet11-Tauキャリブレータの段階希釈を使用したサンドイッチELISAによりさらに特徴付けた。本発明者らのデータ(図12)によって、2H2D11抗体と同様に、2C12C8抗体もサンドイッチELISAによりAcMet11-Tauを検出することができることが示された。
2C12C8抗体の特異性を、AcMet11-Tau(Met11-Tau)又は全長Tau(Tau-412)(WO 2018/178078において記載)のいずれかを過剰発現する細胞株からのタンパク質抽出物を使用したウエスタンブロッティング(図13)により検証した。全長タウ及び切断タウの発現は、それぞれTau-412及びMet11-Tau細胞においてタウのC末端部分に対する抗体により呈される。しかし、2H2D11抗体又は2C12C8抗体のいずれかを使用した分析にあっては、Met11-Tau細胞からの抽出物とだけに免疫標識が呈された。
2C12C8の特徴付け後、本発明者らは、2H2D11抗体(図2及びWO 2018/178078)と同様に、2C12C8抗体もAcMet11-Tau種とタウ病理の間の関連を示すことができるか否かを分析した。高齢者コントロール(n=6)及びAD患者(n=7;BraakIV-VIから;WO 2018/178078において記載)の海馬からのタンパク質抽出物を、2C12C8ベースのサンドイッチELISAにより分析した(図14A)。2H2D11抗体(WO 2018/178078)を使用することにより以前に記載されたように、2C12C8抗体はAD海馬サンプルと特異的に反応した(p<0.0001;対応のないt検定で比較)。同様に、2C12C8抗体によって、サンドイッチELISAによるThy-Tau22トランスジェニックマウスにおけるAcMet11-Tauの特異的検出が可能になった(図14B)。Thy-Tau22トランスジェニックマウスにおける免疫反応性は、加齢とともに有意な増加を呈した(7ヶ月対3ヶ月;p=0.0016;対応のないt検定で比較;n=4/群)。さらに、これらのマウスからの海馬切片の免疫組織化学分析によって、2H2D11抗体(WO 2018/178078)と同様に、2C12C8はWtマウスと免疫反応性を呈さなかったが(図15、パネルA)、Thy-Tau22マウスにおいて、2C12C8抗体は、ニューロンにおける典型的な病理学的封入体により呈されるように、タウ病理を標識する(図15、パネルBD)。2H2D11抗体(WO 2018/178078)を用いて以前に示されたように、2C12C8抗体の免疫標識が、病理学的過程の間の初期に検出される(図15、パネルB)。
最後に、AcMet11-Tau種に対して、2H2D11抗体として開発された特定のモノクローナル抗体(2C12C8)に基づく受動免疫アプローチも、タウ病理のトランスジェニックモデルにおいて研究中である。
Figure 2022526334000008

Figure 2022526334000009

Figure 2022526334000010
参考文献:
本願を通して、種々の参考文献が、本発明が関係する技術分野の状態を記載する。これらの参考文献の開示は、本開示への参照により、本明細書により組み入れられる。
Figure 2022526334000011

Figure 2022526334000012

Figure 2022526334000013

Figure 2022526334000014

Claims (15)

  1. アミノ酸配列(N-α-アセチル)MEDHAGTYGLG(配列番号8)を含むエピトープに結合する、治療における使用のための抗タウ抗体。
  2. 11位のメチオニン残基から開始するタウポリペプチドに特異的に結合する、ここで前記11位のメチオニンはN-アルファアセチル化されている(Ac11Met-Tau)、請求項1に記載の使用のための抗タウ抗体。
  3. タウポリペプチドに特異的に結合する、ここで前記ポリペプチドは以下からなる群より選択される、請求項2に記載の使用のための抗タウ抗体:
    (i)タウN-アルファアセチル-Met11-352(配列番号:1)からなるアミノ酸配列;
    (ii)タウN-アルファアセチル-Met11-381(配列番号:2)からなるアミノ酸配列;
    (iii)タウN-アルファアセチル-Met11-383(配列番号:3)からなるアミノ酸配列
    (iv)タウN-アルファアセチル-Met11-410(配列番号:4)からなるアミノ酸配列
    (v)タウN-アルファアセチル-Met11-412(配列番号:5)からなるアミノ酸配列;
    (vi)タウN-アルファアセチル-Met11-441(配列番号:6)からなるアミノ酸配列;
    (vii)タウN-アルファアセチル-Met11-776(配列番号:7)からなるアミノ酸配列;
    (viii)(i)から(vii)の配列の11位のN-アルファアセチルメチオニン残基から開始する、少なくとも9連続アミノ酸のフラグメント。
  4. 非N-アルファ-アセチル化形態のメチオニン11タウポリペプチド(配列番号9)及び/又はN-アルファ-アセチル-Met1-Tauポリペプチド(配列番号10)に結合しない、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用のための抗タウ抗体。
  5. タウオパチーの処置における使用のための、請求項1から4に記載の使用のための抗体。
  6. タウオパチーがアルツハイマー病である、請求項5に記載の使用のための抗体。
  7. (a)可変ドメインが以下を含む重鎖:
    - 配列番号11として示される配列と90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するH-CDR1、及び
    - 配列番号12として示される配列と90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するH-CDR2、及び
    - 配列番号13として示される配列と90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するH-CDR3;
    (b)可変ドメインが以下を含む軽鎖:
    - 配列番号14として示される配列と90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するL-CDR1、及び
    - 配列番号15として示される配列と90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するL-CDR2、及び
    - 配列番号16として示される配列と90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するL-CDR3
    を含み、
    (c)抗体2H2D11の可変軽鎖ドメイン(VL)及び/又は可変重鎖ドメイン(VH)を有する抗体と実質的に同じ親和性を伴ってAcMet11-Tauポリペプチドに結合する、抗タウ抗体。
  8. (a)可変ドメインが以下を含む重鎖:
    - 配列番号11として示される配列を有するH-CDR1、及び
    - 配列番号12として示される配列を有するH-CDR2、及び
    - 配列番号13として示される配列を有するH-CDR3;
    (b)可変ドメインが以下を含む軽鎖:
    - 配列番号14として示される配列を有するL-CDR1、及び
    - 配列番号15として示される配列を有するL-CDR2、及び
    - 配列番号16として示される配列を有するL-CDR3
    を含む、請求項7に記載の抗体。
  9. - 可変ドメインが配列番号17として示される配列と少なくとも70%又は80%又は90%の同一性を有する重鎖
    - 可変ドメインが配列番号18として示される配列と少なくとも70%又は80%又は90%の同一性を有する軽鎖
    を含み、
    抗体2H2D11の可変軽鎖ドメイン(VL)及び/又は可変重鎖ドメイン(VH)を有する抗体と実質的に同じ親和性を伴ってAcMet11-Tauポリペプチドに結合する、請求項8に記載の抗体。
  10. - 可変ドメインが配列番号17として示される配列を有する重鎖
    - 可変ドメインが配列番号18として示される配列を有する軽鎖
    を含む、請求項9に記載の抗体。
  11. タウタンパク質の病理学的播種及び/又は凝集を阻害することができる、請求項1から10のいずれか一項に記載の抗体。
  12. 医薬としての使用のための請求項7から11に記載の抗体。
  13. タウオパチーの処置における使用のための、請求項12に記載の使用のための抗体。
  14. タウオパチーがアルツハイマー病である、請求項13に記載の使用のための抗体。
  15. タウオパチー障害の処置の方法であって、前記方法は、それを必要とする被験者に、請求項1から11に記載の治療有効量の本発明の抗体を投与することを含む、方法。
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