JP2022144036A - 運転支援装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】検出した死角領域の時間変化に応じて、死角領域に存在し得る物体との衝突のリスクを精度よく推定可能な運転支援装置を提供する。【解決手段】自車両の周囲に存在するリスクに基づいて自車両の運転を支援する運転支援装置は、所定時刻に死角領域を特定するとともに自車両の進行に伴う死角領域の時間変化を演算する死角領域算出部と、所定時刻に特定された死角領域に存在し得る物体を仮定し、所定時刻に特定された死角領域の時間変化と、仮定した物体の死角領域内での想定動作と、に基づいて、自車両と死角領域に存在し得る物体との衝突の潜在リスクを推定するリスク推定部とを備える。【選択図】図6
Description
本開示は、周囲の障害物との衝突を回避するように車両の運転を支援する運転支援装置に関する。
近年、主として交通事故の削減及び運転負荷の軽減を目的として、自動緊急ブレーキ(AEB:Autonomous Emergency Brake)や先行車追従走行(ACC:Adoptive Cruise Control)等の運転支援機能や自動運転機能が搭載された車両の実用化が進められている。例えば自車両に設けられた車外撮影カメラやLiDAR(Light Detection and Ranging)等の種々のセンサにより検出された情報に基づいて自車両の周囲に存在する障害物を検知し、自車両と障害物との衝突を回避するよう自車両の運転を支援する装置が知られている。しかしながら、交通事故のなかには、死角領域からの急な飛び出しなど、あらかじめ事故を想定して減速等の予備行動を取っていない場合には回避が困難な事象が存在する。
これに対して、例えば特許文献1には、死角領域からの急な飛び出し等、自車両では検出されない潜在リスクが自車両の走行予定経路上に発生することを考慮して、当該潜在リスクを予見的に回避する技術が開示されている。具体的に、特許文献1には、車両の進行方向における車両から見た死角領域を検出した後に運転者の制動操作又は操舵操作が検出されたとき、あるいは所定の時間が経過したときに自動的な減速制御を開始する運転支援装置が開示されている。また、特許文献1には、死角領域が検出されたときに死角領域からの歩行者又は自転車の飛び出しのリスクがあることを運転者に提示することも記載されている。
しかしながら、自車両から見た死角領域は自車両の進行とともに減少するため、死角領域の面積が所定以下になると潜在リスクが存在しないか、あるいは潜在リスクの内容が限定されると考えられる。例えば死角領域の減少に伴って、死角領域に存在し得る物体の種類がより小さいものに限定されたり、減少する死角領域内に存在し得る物体の移動速度に応じた自車両の軌道上への飛び出し速度が限定されたりすると考えられる。特許文献1では、このような死角領域の変化を考慮していないために、潜在リスクが存在しなくなった場合や潜在リスクの内容が限定され得る場合であっても、当初算出された潜在リスクに基づいて車両の制御が行われることとなる。したがって、死角領域に潜在リスクが存在しないことが明らかな状況においても、センサ等によって死角領域に物体が存在しないと判定されるまで、加速制御等の潜在リスクが存在しなくなった後の制御に移行できないおそれがある。
本開示は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本開示の目的とするところは、検出した死角領域の時間変化に応じて、死角領域に存在し得る物体との衝突のリスクを精度よく推定可能な運転支援装置を提供することにある。
上記課題を解決するために、本開示のある観点によれば、自車両の周囲に存在するリスクに基づいて自車両の運転を支援する運転支援装置であって、所定時刻に死角領域を特定するとともに自車両の進行に伴う死角領域の時間変化を演算する死角領域算出部と、所定時刻に特定された死角領域に存在し得る物体を仮定し、所定時刻に特定された死角領域の時間変化と、仮定した物体の死角領域内での想定動作と、に基づいて、自車両と死角領域に存在し得る物体との衝突の潜在リスクを推定するリスク推定部とを備える運転支援装置が提供される。
以上説明したように本開示によれば、検出した死角領域の時間変化に応じて、死角領域に存在し得る物体との衝突のリスクを精度よく推定することができる。
以下、添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
<1.車両の全体構成>
まず、本開示の一実施形態に係る運転支援装置を備えた車両の全体構成の一例を説明する。
まず、本開示の一実施形態に係る運転支援装置を備えた車両の全体構成の一例を説明する。
図1は、運転支援装置50を備えた車両1の構成例を示す模式図である。
図1に示した車両1は、車両の駆動トルクを生成する駆動力源9から出力される駆動トルクを左前輪3LF、右前輪3RF、左後輪3LR及び右後輪3RR(以下、特に区別を要しない場合には「車輪3」と総称する)に伝達する四輪駆動車として構成されている。駆動力源9は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関であってもよく、駆動用モータであってもよく、内燃機関及び駆動用モータをともに備えていてもよい。
図1に示した車両1は、車両の駆動トルクを生成する駆動力源9から出力される駆動トルクを左前輪3LF、右前輪3RF、左後輪3LR及び右後輪3RR(以下、特に区別を要しない場合には「車輪3」と総称する)に伝達する四輪駆動車として構成されている。駆動力源9は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関であってもよく、駆動用モータであってもよく、内燃機関及び駆動用モータをともに備えていてもよい。
なお、車両1は、例えば前輪駆動用モータ及び後輪駆動用モータの二つの駆動用モータを備えた電気自動車であってもよく、それぞれの車輪3に対応する駆動用モータを備えた電気自動車であってもよい。また、車両1が電気自動車やハイブリッド電気自動車の場合、車両1には、駆動用モータへ供給される電力を蓄積する二次電池や、バッテリに充電される電力を発電するモータや燃料電池等の発電機が搭載される。
車両1は、車両1の運転制御に用いられる機器として、駆動力源9、電動ステアリング装置15及びブレーキ装置17LF,17RF,17LR,17RR(以下、特に区別を要しない場合には「ブレーキ装置17」と総称する)を備えている。駆動力源9は、図示しない変速機や前輪差動機構7F及び後輪差動機構7Rを介して前輪駆動軸5F及び後輪駆動軸5Rに伝達される駆動トルクを出力する。駆動力源9や変速機の駆動は、一つ又は複数の電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)を含んで構成された車両制御部41により制御される。
前輪駆動軸5Fには電動ステアリング装置15が設けられている。電動ステアリング装置15は図示しない電動モータやギヤ機構を含み、車両制御部41により制御されることによって左前輪3LF及び右前輪3RFの操舵角を調節する。車両制御部41は、手動運転中には、ドライバによるステアリングホイール13の操舵角に基づいて電動ステアリング装置15を制御する。また、車両制御部41は、自動運転中には、設定される走行軌道に基づいて電動ステアリング装置15を制御する。
ブレーキ装置17LF,17RF,17LR,17RRは、それぞれ前後左右の駆動輪3LF,3RF,3LR,3RRに制動力を付与する。ブレーキ装置17は、例えば油圧式のブレーキ装置として構成され、それぞれのブレーキ装置17に供給する油圧が車両制御部41により制御されることで所定の制動力を発生させる。車両1が電気自動車あるいはハイブリッド電気自動車の場合、ブレーキ装置17は、駆動用モータによる回生ブレーキと併用される。
車両制御部41は、車両1の駆動トルクを出力する駆動力源9、ステアリングホイール又は操舵輪の操舵角を制御する電動ステアリング装置15、車両1の制動力を制御するブレーキ装置17の駆動を制御する一つ又は複数の電子制御装置を含む。車両制御部41は、駆動力源9から出力された出力を変速して車輪3へ伝達する変速機の駆動を制御する機能を備えていてもよい。車両制御部41は、運転支援装置50から送信される情報を取得可能に構成され、車両1の自動運転制御を実行可能に構成されている。
また、車両1は、前方撮影カメラ31LF,31RF、後方撮影カメラ31R、車両状態センサ35、GPS(Global Positioning System)センサ37及びHMI(Human Machine Interface)43を備えている。なお、本実施形態では後方撮影カメラ31Rは省略されていてもよい。
前方撮影カメラ31LF,31RF及び後方撮影カメラ31Rは、車両1の周囲環境の情報を取得するための周囲環境センサを構成する。前方撮影カメラ31LF,31RF及び後方撮影カメラ31Rは、車両1の前方あるいは後方を撮影し、画像データを生成する。前方撮影カメラ31LF,31RF及び後方撮影カメラ31Rは、CCD(Charged-Coupled Devices)又はCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)等の撮像素子を備え、生成した画像データを運転支援装置50へ送信する。図1に示した車両1では、前方撮影カメラ31LF,31RFは、左右一対のカメラを含むステレオカメラとして構成され、後方撮影カメラ31Rは、いわゆる単眼カメラとして構成されているが、それぞれステレオカメラあるいは単眼カメラのいずれであってもよい。
車両1は、前方撮影カメラ31LF,31RF及び後方撮影カメラ31R以外に、例えばサイドミラー11L,11Rに設けられて左後方又は右後方を撮影するカメラを備えていてもよい。この他、車両1は、周囲環境の情報を取得するための周囲環境センサとして、LiDAR(Light Detection And Ranging)、ミリ波レーダ等のレーダセンサ、超音波センサのうちのいずれか一つ又は複数のセンサを備えていてもよい。
車両状態センサ35は、車両1の操作状態及び挙動を検出する少なくとも一つのセンサからなる。車両状態センサ35は、例えば舵角センサ、アクセルポジションセンサ、ブレーキストロークセンサ、ブレーキ圧センサ又はエンジン回転数センサのうちの少なくとも一つを含み、ステアリングホイールあるいは操舵輪の操舵角、アクセル開度、ブレーキ操作量又はエンジン回転数等の車両1の操作状態を検出する。また、車両状態センサ35は、例えば車速センサ、加速度センサ、角速度センサのうちの少なくとも一つを含み、車速、前後加速度、横加速度、ヨーレート等の車両の挙動を検出する。車両状態センサ35は、検出した情報を含むセンサ信号を運転支援装置50へ送信する。
GPSセンサ37は、GPS衛星からの衛星信号を受信する。GPSセンサ37は、受信した衛星信号に含まれる車両1の地図データ上の位置情報を運転支援装置50へ送信する。なお、GPSセンサ37の代わりに、車両1の位置を特定する他の衛星システムからの衛星信号を受信するアンテナが備えられていてもよい。
HMI43は、運転支援装置50により駆動され、画像表示や音声出力等の手段により、ドライバに対して種々の情報を提示する。HMI43は、例えばインストルメントパネル内に設けられた表示装置及び車両に設けられたスピーカを含む。表示装置は、ナビゲーションシステムの表示装置であってもよい。また、HMI43は、自車両1の周囲の風景に重畳させてフロントウィンドウ上へ表示を行うHUD(ヘッドアップディスプレイ)を含んでもよい。
<2.運転支援装置>
続いて、本実施形態に係る運転支援装置50を具体的に説明する。
続いて、本実施形態に係る運転支援装置50を具体的に説明する。
(2-1.構成例)
図2は、本実施形態に係る運転支援装置50の構成例を示すブロック図である。
運転支援装置50には、直接的に又はCAN(Controller Area Network)やLIN(Local Inter Net)等の通信手段を介して、周囲環境センサ31、車両状態センサ35及びGPSセンサ37が接続されている。また、運転支援装置50には、車両制御部41及びHMI43が接続されている。なお、運転支援装置50は、車両1に搭載された電子制御装置に限られるものではなく、スマートホンやウェアラブル機器等の端末装置であってもよい。
図2は、本実施形態に係る運転支援装置50の構成例を示すブロック図である。
運転支援装置50には、直接的に又はCAN(Controller Area Network)やLIN(Local Inter Net)等の通信手段を介して、周囲環境センサ31、車両状態センサ35及びGPSセンサ37が接続されている。また、運転支援装置50には、車両制御部41及びHMI43が接続されている。なお、運転支援装置50は、車両1に搭載された電子制御装置に限られるものではなく、スマートホンやウェアラブル機器等の端末装置であってもよい。
運転支援装置50は、制御部51、記憶部53及び累積死角領域データベース55を備えている。制御部51は、CPU(Central Processing Unit)等の一つ又は複数のプロセッサや種々の周辺部品を備えて構成される。制御部51の一部又は全部は、ファームウェア等の更新可能なもので構成されてもよく、また、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。
記憶部53は、RAM又はROM等の記憶素子により構成される。ただし、記憶部53の種類や数は特に限定されない。記憶部53は、制御部51により実行されるコンピュータプログラムや、演算処理に用いられる種々のパラメータ、検出データ、演算結果等の情報を記憶する。累積死角領域データベース55は、RAM又はROM等の記憶素子、あるいは、HDDやCD、DVD、SSD、USBフラッシュ、ストレージ装置等の記憶媒体により構成され、制御部51により算出された累積死角領域の情報を記憶するデータベースである。
(2-2.機能構成)
続いて、運転支援装置50の制御部51の機能構成を説明する。制御部51は、周囲環境検出部61、死角領域算出部63、リスク推定部65、運転条件設定部67及び通知制御部69を備えている。これらの各部は、CPU等の一つ又は複数のプロセッサによるコンピュータプログラムの実行により実現される機能である。ただし、周囲環境検出部61、死角領域算出部63、リスク推定部65、運転条件設定部67及び通知制御部69の一部又は全部が、ハードウェアにより構成されていてもよい。
続いて、運転支援装置50の制御部51の機能構成を説明する。制御部51は、周囲環境検出部61、死角領域算出部63、リスク推定部65、運転条件設定部67及び通知制御部69を備えている。これらの各部は、CPU等の一つ又は複数のプロセッサによるコンピュータプログラムの実行により実現される機能である。ただし、周囲環境検出部61、死角領域算出部63、リスク推定部65、運転条件設定部67及び通知制御部69の一部又は全部が、ハードウェアにより構成されていてもよい。
(周囲環境検出部)
周囲環境検出部61は、周囲環境センサ31から送信される検出データに基づいて自車両1の周囲環境を検出する。具体的に、周囲環境検出部61は、前方撮影カメラ31LF,31RFから送信される画像データを画像処理することにより、物体検知の技術を用いて自車両1の周囲に存在する周囲車両や人物、自転車、その他の障害物等を検出する。また、周囲環境検出部61は、自車両1から見た周囲車両や人物等の位置、自車両1から周囲車両や人物等までの距離、及び自車両1に対する周囲車両や人物等の相対速度を算出する。
周囲環境検出部61は、周囲環境センサ31から送信される検出データに基づいて自車両1の周囲環境を検出する。具体的に、周囲環境検出部61は、前方撮影カメラ31LF,31RFから送信される画像データを画像処理することにより、物体検知の技術を用いて自車両1の周囲に存在する周囲車両や人物、自転車、その他の障害物等を検出する。また、周囲環境検出部61は、自車両1から見た周囲車両や人物等の位置、自車両1から周囲車両や人物等までの距離、及び自車両1に対する周囲車両や人物等の相対速度を算出する。
(死角領域算出部)
死角領域算出部63は、所定時刻に死角領域を特定するとともに自車両1の進行に伴う死角領域の時間変化を演算する。自車両1から見た死角領域は、自車両1の進行に伴って変化する。つまり、ある時刻において自車両1から見た死角領域が存在する場合、自車両1の進行に伴って死角領域の一部が徐々に視野に入ってくるため、当初特定された死角領域の面積は自車両1の進行に伴って徐々に減少する。死角領域算出部63は、自車両1の前方に遮蔽物が検知されたときに当該遮蔽物によって生じる死角領域を特定するとともに、以降の時間の経過に伴って視野に入ってくる領域(死角解消領域)を除き、継続して死角領域として維持される領域(累積死角領域)を算出する。
死角領域算出部63は、所定時刻に死角領域を特定するとともに自車両1の進行に伴う死角領域の時間変化を演算する。自車両1から見た死角領域は、自車両1の進行に伴って変化する。つまり、ある時刻において自車両1から見た死角領域が存在する場合、自車両1の進行に伴って死角領域の一部が徐々に視野に入ってくるため、当初特定された死角領域の面積は自車両1の進行に伴って徐々に減少する。死角領域算出部63は、自車両1の前方に遮蔽物が検知されたときに当該遮蔽物によって生じる死角領域を特定するとともに、以降の時間の経過に伴って視野に入ってくる領域(死角解消領域)を除き、継続して死角領域として維持される領域(累積死角領域)を算出する。
例えば死角領域算出部63は、周囲環境検出部61による検出結果に基づいて遮蔽物を検出する。遮蔽物は、代表的には駐停車中の車両、側壁や生垣等の建造物が例示されるが、これらの遮蔽物に限られない。また、死角領域算出部63は、GPSセンサ37を介して取得される自車両1の地図データ上の位置の情報及び進行方向前方の道路情報を用いて遮蔽物あるいは死角領域を検出してもよい。
死角領域算出部63は、自車両1あるいは遮蔽物の上方から見た俯瞰的2次元の死角領域の時間変化を演算してもよく、自車両1から見た2次元の死角領域の時間変化を演算してもよい。自車両1あるいは遮蔽物の上方から見た俯瞰的2次元の死角領域は、自車両1から見た横方向及び奥行き方向で定義され、自車両1から見た2次元の死角領域は、自車両1から見た横方向及び高さ方向で定義される。本実施形態では、死角領域算出部63は、自車両1から見た横方向及び奥行き方向で定義される累積死角領域、及び、自車両1から見た横方向及び高さ方向で定義される累積死角領域を演算する。
算出された累積死角領域は、自車両1が遮蔽物の脇を通過するまでの間、死角領域データベース55に逐次保存される。これにより、時間の経過に伴う累積死角領域の変化を追跡することができる。
(リスク推定部)
リスク推定部65は、所定時刻に特定された死角領域に存在し得る物体(以下、「潜在リスク対象物」ともいう)を仮定し、死角領域の時間変化と、仮定した潜在リスク対象物の死角領域内での想定動作とに基づいて、自車両1と死角領域に存在し得る潜在リスク対象物との衝突の潜在リスクを推定する。仮定される潜在リスク対象物は、自車両1の周囲環境センサ31によって検出されない物体であり、リスク推定部65は、一部が死角領域に存在するとしても他の部分が周囲環境センサ31の検出範囲に現れるような物体を仮定しなくてもよい。また、仮定される潜在リスク対象物は、死角領域から自車両1の進行方向へ侵入するおそれのある物体であり、静止している物体は仮定しなくてもよい。
リスク推定部65は、所定時刻に特定された死角領域に存在し得る物体(以下、「潜在リスク対象物」ともいう)を仮定し、死角領域の時間変化と、仮定した潜在リスク対象物の死角領域内での想定動作とに基づいて、自車両1と死角領域に存在し得る潜在リスク対象物との衝突の潜在リスクを推定する。仮定される潜在リスク対象物は、自車両1の周囲環境センサ31によって検出されない物体であり、リスク推定部65は、一部が死角領域に存在するとしても他の部分が周囲環境センサ31の検出範囲に現れるような物体を仮定しなくてもよい。また、仮定される潜在リスク対象物は、死角領域から自車両1の進行方向へ侵入するおそれのある物体であり、静止している物体は仮定しなくてもよい。
所定時刻に特定された死角領域あるいは累積死角領域に存在し得る潜在リスク対象物は、死角領域あるいは累積死角領域の大きさに応じて仮定することができる。例えば俯瞰的2次元の死角領域の大きさが大きい場合、当該死角領域には歩行者、自転車、自動車等の物体が存在する可能性がある。例えば死角領域あるいは累積死角領域が、自車両1から見て横方向に5m、奥行き方向に10mある場合、潜在リスク対象物の種類として、歩行者、自転車、自動二輪車、三輪車、自動車等が考えられる。一方、俯瞰的2次元の死角領域あるいは累積死角領域の大きさが小さい場合や幅が小さい場合、当該死角領域あるいは累積死角領域には歩行者が存在する可能性があるものの自転車や自動二輪車等が存在する可能性は低い。また、俯瞰的2次元の死角領域あるいは累積死角領域の大きさが小さい場合や幅が小さい場合、所定の向きに限って自転車や自動二輪車等が存在する可能性がある。
また、死角領域あるいは累積死角領域の高さが高い場合、当該死角領域あるいは累積死角領域には大人及び子供を含む歩行者、自転車、自動二輪車、三輪車等の物体が存在する可能性がある。一方、死角領域あるいは累積死角領域の高さが低い場合、当該死角領域あるいは累積死角領域には子供や三輪車が存在する可能性があるものの大人や自転車、自動二輪車等が存在する可能性は低い。したがって、リスク推定部65は、自車両1の前方に遮蔽物が検出されて死角領域が特定されたときに、自車両1から見た横方向及び奥行き方向で定義される死角領域の面積及び形状、及び、自車両1から見た横方向及び高さ方向で定義される死角領域の面積及び形状に基づいて、死角領域に存在し得る潜在リスク対象物の有無、位置及び向きを仮定する。
また、リスク推定部65は、自車両1の進行に伴う累積死角領域の面積の変化に基づいて、累積死角領域に存在し得る潜在リスク対象物と、自車両1の前方への潜在リスク対象物の侵入速度とを設定する。具体的に、累積死角領域の面積が小さくなるにつれて、死角領域に存在し得る潜在リスク対象物の種類はより限定される。また、自車両1の進行に伴って累積死角領域の面積が小さくなる中で依然として自車両の周囲環境センサ31によって検出されない潜在リスク対象物であることを前提にした場合、当該累積死角領域内での潜在リスク対象物の設定速度範囲及び潜在リスク対象物の設定軌道はより限定される。潜在リスク対象物の設定速度範囲は、自車両1の前方への潜在リスク対象物の侵入速度に置き換えることができ、潜在リスク対象物の設定軌道は、自車両1の前方への潜在リスク対象物の侵入位置の判定に用いられる。
リスク推定部65は、死角領域あるいは累積死角領域内に存在し得る潜在リスク対象物と、潜在リスク対象物の設定速度範囲と、潜在リスク対象物の設定軌道とに基づいて潜在リスクを推定する。死角領域から自車両1の前方に潜在リスク対象物が侵入してくる可能性が低いほど、推定される潜在リスクは低くなる。具体的に、自車両1の移動に伴って累積死角領域が減少するにつれて潜在リスクは相対的に低くなる。例えば累積死角領域が、自車両1から見て横方向に2m、奥行き方向に1mである場合、存在し得る潜在リスク対象物の種類は自転車や歩行者に限られる。また、累積死角領域に留まり続けていることから潜在リスク対象物はほぼ停止状態であり、想定される侵入速度は遅くなる。
したがって、仮定した潜在リスク対象物が自車両1の前方へ侵入してくるおそれのある領域、つまり飛び出し距離や侵入位置のバリエーションは少なく、仮に潜在リスク対象物が自車両1の前方に侵入したとしても自車両1と衝突し得る領域が少ないことから、潜在リスクは相対的に低く推定される。一方、仮定した潜在リスク対象物が自車両1の前方へ侵入してくるおそれのある領域が大きく、仮に潜在リスク対象物が自車両1の前方へ侵入したときに自車両1と衝突し得る領域が大きい場合、潜在リスクは相対的に高く推定される。例えばリスク推定部65は、潜在リスク対象物が自車両1の前方へ侵入したときに自車両1と衝突し得る領域の面積に応じて複数段階で潜在リスクを設定してもよい。
リスク推定部65は、所定時刻に遮蔽物が検知されて死角領域が検出された後、自車両1が遮蔽物の脇を通過するまでの間、死角領域に存在し得る潜在リスク対象物の仮定と、仮定した潜在リスク対象物が自車両1と衝突する潜在リスクの推定とを繰り返す。リスク推定部65は、仮定し得る複数の潜在リスク対象物について潜在リスクをそれぞれ推定する。
(運転条件設定部)
運転条件設定部67は、基本的に、自車両1の進行方向前方に存在する障害物との衝突を回避するように自車両1の運転条件を設定する。例えば運転条件設定部67は、自車両1の自動運転中において、自車両と障害物との衝突を回避可能な走行軌道を設定するとともに、当該走行軌道に沿って自車両1を走行させるための目標操舵角を設定する。例えば運転条件設定部67は、自車両1が歩行者や周囲車両、その他障害物に衝突する可能性を示す指標であるリスクポテンシャルを用いて自車両1の走行軌道を設定する。この場合、障害物との距離が近いほど衝突リスクが高くなるようにリスクポテンシャルが設定され、運転条件設定部67は、衝突リスクがより小さくなる軌道上を自車両1が走行するように走行軌道を設定する。また、車速が小さいほど衝突リスクが小さくなるようにリスクポテンシャルが設定されている場合、運転条件設定部67は、走行軌道及び車速を設定することにより、衝突リスクを低下させてもよい。
運転条件設定部67は、基本的に、自車両1の進行方向前方に存在する障害物との衝突を回避するように自車両1の運転条件を設定する。例えば運転条件設定部67は、自車両1の自動運転中において、自車両と障害物との衝突を回避可能な走行軌道を設定するとともに、当該走行軌道に沿って自車両1を走行させるための目標操舵角を設定する。例えば運転条件設定部67は、自車両1が歩行者や周囲車両、その他障害物に衝突する可能性を示す指標であるリスクポテンシャルを用いて自車両1の走行軌道を設定する。この場合、障害物との距離が近いほど衝突リスクが高くなるようにリスクポテンシャルが設定され、運転条件設定部67は、衝突リスクがより小さくなる軌道上を自車両1が走行するように走行軌道を設定する。また、車速が小さいほど衝突リスクが小さくなるようにリスクポテンシャルが設定されている場合、運転条件設定部67は、走行軌道及び車速を設定することにより、衝突リスクを低下させてもよい。
また、本実施形態において、運転条件設定部67は、死角領域を生じさせている遮蔽物の脇を通過するまでの間、上記の衝突リスクがより小さくなることと併せて潜在リスクがより小さくなる軌道上を自車両1が走行するように運転条件を設定する。具体的に、運転条件設定部67は、リスク推定部65により推定された潜在リスクに基づいて、潜在リスク対象物が自車両1と衝突する可能性があると判定される場合に、自車両1と遮蔽物との距離が拡大するように走行軌道を設定する。また、運転条件設定部67は、走行軌道の変更のみでは潜在リスクが十分に低下させることができない場合、走行軌道を変更するとともに、あるいは走行軌道を変更することに代えて、自車両1を減速させることで潜在リスクを小さくしてもよい。
運転条件設定部67は、設定した走行軌道及び車速に基づいて目標操舵角及び目標加減速度を設定し、当該目標操舵角及び目標加減速度の情報を車両制御部41へ送信する。車両制御部41は、取得した目標操舵角及び目標加減速度の情報に基づいて自車両1の走行を制御する。このとき、運転条件設定部67は、あらかじめ設定された操舵角速度の上限値又は加減速度の上限値を超えないように目標操舵角及び目標加減速度を設定してもよい。これにより、急操舵や急減速が発生しないように自車両1の走行が制御され、自車両1の乗員の違和感を低減することができる。
また、運転条件設定部67は、潜在リスクが小さくなるように運転条件を設定している間に潜在リスクが存在しなくなった場合には、自車両1が死角領域を生じさせていた遮蔽物の脇を通過する前であっても潜在リスクを小さくする運転条件の設定処理を終了する。これにより、自車両1の周囲環境センサ31によって死角領域に物体が存在しないことが検出される前に、自車両1の走行モードを遮蔽物の脇を通過した後のモードに移行させることができる。したがって、自車両1との衝突のおそれのある物体が死角領域に存在しないことが明らかであるにもかかわらず自車両1が加速しないなど、ユーザが煩わしさを感じるおそれを低減することができる。
(通知制御部)
通知制御部69は、HMI43の駆動を制御することにより自車両1の乗員に対して通知を行う。本実施形態では、通知制御部69は、自車両1が死角領域に存在し得る潜在リスク対象物と衝突する潜在リスクの存在を自車両1の乗員に通知する。通知制御部69は、警告音や音声を出力したり、画像表示やテキスト表示を行うことによって、潜在リスクの存在を通知する。通知の内容は特に限定されるものではなく、一定の警告音や音声を出力したり、画像表示やテキスト表示を行ったりしてもよく、あるいは、死角領域から自車両1の前方に潜在リスク対象物が侵入する位置又は侵入速度等を通知してもよい。
通知制御部69は、HMI43の駆動を制御することにより自車両1の乗員に対して通知を行う。本実施形態では、通知制御部69は、自車両1が死角領域に存在し得る潜在リスク対象物と衝突する潜在リスクの存在を自車両1の乗員に通知する。通知制御部69は、警告音や音声を出力したり、画像表示やテキスト表示を行うことによって、潜在リスクの存在を通知する。通知の内容は特に限定されるものではなく、一定の警告音や音声を出力したり、画像表示やテキスト表示を行ったりしてもよく、あるいは、死角領域から自車両1の前方に潜在リスク対象物が侵入する位置又は侵入速度等を通知してもよい。
また、通知制御部69は、潜在リスクの存在が検知されて通知処理を開始した後、潜在リスクが存在しなくなった場合には、自車両1が死角領域を生じさせていた遮蔽物の脇を通過する前であっても通知処理を停止する。これにより、自車両1との衝突のおそれのある物体が死角領域に存在しないことが明らかである場合の不要な通知が停止され、ユーザが煩わしさを感じるおそれを低減することができる。
<3.運転支援装置の動作>
続いて、本実施形態に係る運転支援装置の動作の一例をフローチャートに沿って説明する。
続いて、本実施形態に係る運転支援装置の動作の一例をフローチャートに沿って説明する。
図3~図5は、運転支援装置50の動作の一例を示すフローチャートである。
まず、運転支援装置50を含むシステムが起動されると(ステップS11)、制御部51の周囲環境検出部61は、周囲環境センサ31から送信される検出データを取得し、当該検出データに基づいて自車両1の周囲環境を検出する(ステップS13)。本実施形態において、周囲環境検出部61は、周囲環境センサ31から送信される検出データに基づいて、少なくとも自車両1の進行方向前方に存在する他車両や人物、建造物、交通標識、白線等を検出する。
まず、運転支援装置50を含むシステムが起動されると(ステップS11)、制御部51の周囲環境検出部61は、周囲環境センサ31から送信される検出データを取得し、当該検出データに基づいて自車両1の周囲環境を検出する(ステップS13)。本実施形態において、周囲環境検出部61は、周囲環境センサ31から送信される検出データに基づいて、少なくとも自車両1の進行方向前方に存在する他車両や人物、建造物、交通標識、白線等を検出する。
次いで、制御部51の死角領域算出部63は、自車両1の進行方向前方に、自車両1から見て死角を生じさせ得る遮蔽物が存在するか否かを判定する(ステップS15)。例えば死角領域算出部63は、周囲環境検出部61により検出されたそれぞれの物体のサイズや位置、自車両1に対するそれぞれの物体の相対速度を算出し、自車両1から見て死角領域を生じさせ得る物体の有無を判定する。例えば死角領域算出部63は、物体の横幅、高さ及び奥行きがそれぞれあらかじめ設定された寸法以上であり、当該物体が自車両1の走行予定の軌道からあらかじめ設定された距離以内に存在し、かつ、相対速度があらかじめ設定された速度閾値以下の場合に、当該物体が遮蔽物に該当するものと判定する。
死角を生じさせ得る遮蔽物が存在すると判定されなかった場合(S15/No)ステップS13に戻り、周囲環境の検出処理(ステップS13)及び遮蔽物の有無の判定処理(ステップS15)が繰り返される。一方、死角を生じさせ得る遮蔽物が存在すると判定された場合(S15/Yes)、死角領域算出部63は、累積死角領域Xを算出する処理を実行する(ステップS17)。
図4は、累積死角領域算出処理を示すフローチャートである。
まず、死角領域算出部63は、遮蔽物と判定された物体のサイズ、位置及び相対速度の情報を取得する(ステップS41)。次いで、死角領域算出部63は、遮蔽物のサイズ及び遮蔽物と自車両1との位置関係に基づいて、自車両1から見た遮蔽物による現在の死角領域x(t)を算出する(ステップS43)。例えば死角領域算出部63は、自車両1に設けられた前方撮影カメラ31FL,31RFの設置位置と、自車両1から見た遮蔽物の輪郭上の複数点とを通る複数の直線群により囲まれる領域のうち、自車両1から見て遮蔽物の奥側に位置する領域を特定する。特定される死角領域x(t)は、自車両1から見た横方向、高さ方向及び奥行き方向の領域として求められる。なお、死角領域算出部63は、遮蔽物が検出された後、自車両1が当該遮蔽物の脇を通過するまで、あるいは、潜在リスクが存在しないと判定されるまで、適宜の処理間隔で死角領域x(t)の算出を繰り返す。
まず、死角領域算出部63は、遮蔽物と判定された物体のサイズ、位置及び相対速度の情報を取得する(ステップS41)。次いで、死角領域算出部63は、遮蔽物のサイズ及び遮蔽物と自車両1との位置関係に基づいて、自車両1から見た遮蔽物による現在の死角領域x(t)を算出する(ステップS43)。例えば死角領域算出部63は、自車両1に設けられた前方撮影カメラ31FL,31RFの設置位置と、自車両1から見た遮蔽物の輪郭上の複数点とを通る複数の直線群により囲まれる領域のうち、自車両1から見て遮蔽物の奥側に位置する領域を特定する。特定される死角領域x(t)は、自車両1から見た横方向、高さ方向及び奥行き方向の領域として求められる。なお、死角領域算出部63は、遮蔽物が検出された後、自車両1が当該遮蔽物の脇を通過するまで、あるいは、潜在リスクが存在しないと判定されるまで、適宜の処理間隔で死角領域x(t)の算出を繰り返す。
次いで、死角領域算出部63は、算出した現在の死角領域x(t)を、累積死角領域データベース55に保存されている前回までの累積死角領域X(t-Δt)と比較する(ステップS45)。死角領域算出部63は、前回までの累積死角領域X(t-Δt)のうち、現在の死角領域(t)と重複しない死角解消領域yを特定する。
次いで、死角領域算出部63は、累積死角領域X(t)を更新して今回の累積死角領域X(t)を算出する(ステップS47)。これにより、自車両1によって遮蔽物が検出されたときに特定された死角領域x(t)のうち、自車両1の進行に伴って自車両1の視野に入った死角解消領域yが除かれて、継続して死角領域として維持される累積死角領域X(t)が算出される。
次いで、死角領域算出部63は、算出された累積死角領域X(t)を累積死角領域データベース55に保存する(ステップS49)。これにより、次回以降累積死角領域X(t)を算出する際に、それまでの累積死角領域X(t-Δt)を参照することができる。なお、死角領域xを生じさせる遮蔽物が存在すると判定された後の初回の死角領域算出処理時においては、算出された死角領域x(t)が累積死角領域X(t)として保存される。
死角領域算出部63は、自車両1が遮蔽物の脇を通過するか、又は、潜在リスクが存在しなくなるまでの間、所定の処理間隔で累積死角領域算出処理を繰り返し実行する。
図3に戻り、ステップS17において死角領域算出部63による累積死角領域X(t)の算出処理が実行された後、制御部51のリスク推定部65は、累積死角領域X(t)に存在し得る潜在リスク対象物と自車両1との衝突の潜在リスクを算出する処理を実行する(ステップS19)。
図5は、潜在リスク算出処理を示すフローチャートである。
まず、リスク推定部65は、ステップS17において算出された累積死角領域X(t)に存在し得る潜在リスク対象物を仮定する(ステップS51)。具体的に、リスク推定部65は、累積死角領域X(t)の大きさに応じて、存在し得る潜在リスク対象物を仮定する。上述したように、自車両1の前方に侵入するおそれのある物体が潜在リスク対象物として仮定される。例えばリスク推定部65は、俯瞰的2次元に見た累積死角領域X(t)の面積及び形状、並びに、自車両1から見た遮蔽物の高さ方向の要素を含む累積死角領域X(t)の面積及び形状に基づいて、累積死角領域X(t)に存在し得る潜在リスク対象物の種類、位置及び向きを仮定する。
まず、リスク推定部65は、ステップS17において算出された累積死角領域X(t)に存在し得る潜在リスク対象物を仮定する(ステップS51)。具体的に、リスク推定部65は、累積死角領域X(t)の大きさに応じて、存在し得る潜在リスク対象物を仮定する。上述したように、自車両1の前方に侵入するおそれのある物体が潜在リスク対象物として仮定される。例えばリスク推定部65は、俯瞰的2次元に見た累積死角領域X(t)の面積及び形状、並びに、自車両1から見た遮蔽物の高さ方向の要素を含む累積死角領域X(t)の面積及び形状に基づいて、累積死角領域X(t)に存在し得る潜在リスク対象物の種類、位置及び向きを仮定する。
リスク推定部65は、累積死角領域X(t)に存在し得る潜在リスク対象物を複数仮定する。この場合、同一の種類の物体を異なる位置に仮定してもよく、異なる種類の物体を同一又は異なる位置に仮定してもよい。また、自車両1に衝突するおそれのない物体を仮定することをなくすために、遮蔽物からの距離があらかじめ設定された範囲内の累積死角領域X(t)に潜在リスク対象物を仮定してもよい。この場合の遮蔽物からの距離は、自車両1の車速、あるいは、遮蔽物に対する自車両1の相対速度が速いほど長くされてもよい。
次いで、リスク推定部65は、自車両1の進行に伴う累積死角領域X(t)の面積及び形状の変化に基づいて、累積死角領域X(t)に存在し得る潜在リスク対象物の累積死角領域X(t)での軌道を設定する(ステップS53)。例えばリスク推定部65は、累積死角領域X(t)の面積及び形状が変化する中で、各時刻で算出される累積死角領域X(t)に存在し得る同種の潜在リスク対象物の位置を結ぶことによって、それぞれの潜在リスク対象物の軌道を設定することができる。設定する軌道は、潜在リスク対象物が自車両1の前方へ侵入可能な向きの軌道のみであってよい。演算処理の負荷の増大を防ぐために、設定する軌道は直線の軌道のみであってもよい。リスク推定部65は、仮定したすべての潜在リスク対象物についてそれぞれ一つ以上の軌道を設定する。累積死角領域X(t)の面積あるいは幅が小さくなるほど、設定可能な軌道の長さは短くなる。
次いで、リスク推定部65は、自車両1の進行に伴う累積死角領域X(t)の面積及び形状の変化に基づいて、累積死角領域X(t)に存在し得る潜在リスク対象物の速度を設定する(ステップS55)。例えばリスク推定部65は、ステップS53で設定した軌道の長さを、当該軌道上を潜在リスク対象物が移動する時間で割ることによって得られる速度を潜在リスク対象物の速度として設定する。軌道上を潜在リスク対象物が移動する時間は、軌道の始点の位置に潜在リスク対象物を仮定した時点から軌道の終点の位置に潜在リスク対象物を仮定した時点までの処理間隔の和として求めることができる。本実施形態では、遮蔽物が存在していると判定されて死角領域xが検出された後、自車両1が進行する途中で新たな潜在リスク対象物が仮定されることはなく、死角領域xが検出された当初から累積死角領域X(t)内に継続して存在し得る潜在リスク対象物が仮定される。このため、基本的には設定した軌道の長さが短いほど設定速度は遅くなる。
次いで、リスク推定部65は、累積死角領域X(t)に存在し得る潜在リスク対象物と、潜在リスク対象物の設定速度範囲と、潜在リスク対象物の設定軌道とに基づいて、潜在リスク対象物が自車両1に衝突する潜在リスクを推定する(ステップS57)。基本的に、自車両1の移動に伴って累積死角領域X(t)が減少するにつれて潜在リスクは相対的に低くなる。例えば累積死角領域X(t)が減少するにつれて、累積死角領域X(t)に存在し得る物体は相対的に小さい物体に限られる。また、面積が減少する累積死角領域X(t)に留まり続けていることから想定される潜在リスク対象物の速度はより低速になる。このため、仮に潜在リスク対象物が自車両1の前方へ侵入したとしても自車両1と衝突し得る領域は少ないことから、潜在リスクは相対的に低く推定される。一方、潜在リスク対象物が自車両1の前方へ侵入したときに自車両1と衝突し得る領域が大きい場合、潜在リスクは相対的に高く推定される。
本実施形態では、リスク推定部65は、潜在リスク対象物が自車両1の前方へ侵入したときに自車両1と衝突し得る領域の面積に応じて複数段階で潜在リスクを設定する。例えばリスク推定部65は、現在の自車両1の車速、加減速度及び操舵角に基づいて設定される自車両1の通過領域(通過範囲)のうちの潜在リスク対象物が侵入可能な領域の面積が大きいほど、潜在リスクを高く設定する。
図3に戻り、ステップS19において潜在リスクが算出された後、運転条件設定部67は、累積死角領域X(t)に存在し得る潜在リスク対象物が自車両1に衝突する可能性があるか否かを判定する(ステップS21)。例えば運転条件設定部67は、自車両1が現在の走行軌道に沿って走行する場合の時系列の通過点と、潜在リスク対象物が自車両1の走行軌道上へ侵入すると想定した場合の侵入位置及び時刻とに基づいて、潜在リスク対象物が自車両1に衝突する可能性があるか否かを判定する。具体的に、運転条件設定部67は、いずれかの時刻において、自車両1の通過点と潜在リスク対象物の侵入位置との距離があらかじめ設定された所定距離以内である場合、潜在リスク対象物が自車両1に衝突する可能性があると判定することができる。なお、潜在リスク対象物が自車両1に衝突する可能性があるか否かを判定することに代えて、ステップS19で推定された潜在リスクがあらかじめ設定されたリスク値未満になっているか否かを判定してもよい。
潜在リスク対象物が自車両1に衝突する可能性があると判定された場合(S21/Yes)、通知制御部69による、自車両1が死角領域に存在し得る潜在リスク対象物と衝突する潜在リスクの存在を自車両1の乗員に通知する処理(通知処理)、あるいは、運転条件設定部67による、潜在リスク対象物との衝突を回避する処理(回避処理)の少なくともいずれか一方を実行する(ステップS23)。
例えば通知制御部69は、警告音や音声を出力したり、画像表示やテキスト表示を行うことによって、潜在リスクの存在を通知する。通知の内容は特に限定されるものではなく、一定の警告音や音声を出力したり、画像表示やテキスト表示を行ったりしてもよく、あるいは、死角領域から自車両1の前方に潜在リスク対象物が侵入する位置又は侵入速度等を通知してもよい。
また、運転条件設定部67は、自車両1と遮蔽物との距離が拡大するように走行軌道を設定することにより、潜在リスク対象物との衝突を回避する。自車両1と遮蔽物との距離が拡大するほど、潜在リスク対象物が自車両1の前方へ侵入したときに自車両1と衝突し得る領域の面積が小さくなるため、潜在リスクは小さくなる。また、運転条件設定部67は、走行軌道の変更のみでは潜在リスク対象物との衝突を回避することができない場合、走行軌道を変更するとともに、あるいは走行軌道を変更することに代えて、自車両1を減速させることで潜在リスク対象物との衝突を回避してもよい。運転条件設定部67は、設定した走行軌道及び車速に基づいて目標操舵角及び目標加減速度を設定し、当該目標操舵角及び目標加減速度の情報を車両制御部41へ送信する。車両制御部41は、取得した目標操舵角及び目標加減速度の情報に基づいて、自車両1の走行を制御する。
ステップS23において通知処理又は回避処理が実行された後、死角領域算出部63は、自車両1が死角領域xを生じさせていた遮蔽物の脇を通過したか否かを判定する(ステップS25)。例えば死角領域算出部63は、周囲環境検出部61により検出された周囲環境の情報に基づいて、これまで自車両1の前方に検出されていた遮蔽物が検出されなくなった場合に、自車両1が遮蔽物の脇を通過したと判定する。死角領域算出部63は、検出された遮蔽物の地図データ上の位置を記憶させ、自車両1が当該位置を通過した場合に、自車両1が遮蔽物の脇を通過したと判定してもよい。
自車両1が遮蔽物の脇を通過したと判定されない場合(S25/No)、ステップS17に戻って、上述した各ステップの処理を繰り返す。一方、自車両1が遮蔽物の脇を通過したと判定された場合(S25/Yes)、運転条件設定部67は、遮蔽物の脇を通過後の処理へ移行する(ステップS27)。例えば運転条件設定部67は、自車両1と遮蔽物との距離を拡大させていた走行軌道を道路中心等の基準位置に戻したり、自車両1を加速させて基準車速へ戻したりする処理を開始する。
一方、上記のステップS21において、潜在リスク対象物が自車両1に衝突する可能性があると判定されなかった場合(S21/No)、運転条件設定部67は、自車両1が遮蔽物の脇を通過したか否かにかかわらず、遮蔽物の脇を通過後の処理へ移行する(ステップS27)。これにより、遮蔽物の脇を通過する前であっても死角領域xに物体が存在しないことが明らかな場合に、速やかに走行軌道あるいは車速を元に戻すことができ、自車両1の乗員が感じる煩わしさを低減することができる。
ステップS27において遮蔽物の脇を通過後の処理へ移行した後、運転支援装置50を含む自車両1のシステムが停止したか否かを判定する(ステップS29)。システムが停止していない場合(S29/No)、ステップS13に戻って、上述した各ステップの処理を繰り返す。一方、システムが停止した場合(S29/Yes)、運転支援装置50の動作を停止する。
このように、本実施形態に係る運転支援装置50は、自車両1の進行方向前方に死角領域を生じさせる遮蔽物を検知した所定の時刻に死角領域xを特定し、以降の自車両1の進行に伴う死角領域xの時間変化を示す累積死角領域Xを算出する。また、運転支援装置50は、累積死角領域Xの変化に基づいて、累積死角領域Xに存在し得る潜在リスク対象物の種類、位置、軌道及び速度を設定し、潜在リスク対象物が自車両1と衝突する潜在リスクを推定する。これにより、死角領域が検出された場合に一律な回避制御を実行するのではなく、潜在リスクに応じて走行軌道の変更あるいは減速動作を行うことができる。また、死角領域に物体が存在しないことが明らかな場合には、自車両1の周囲環境センサ31によって遮蔽物が検出されなくなる前であっても、遮蔽物の脇を通過後の処理に速やかに移行される。したがって、自車両1の乗員が感じる煩わしさを低減することができる。
<4.適用事例>
ここまで本実施形態に係る運転支援装置50について説明した。以下、本実施形態に係る運転支援装置50を適用した走行シーンの例の幾つかを説明する。
ここまで本実施形態に係る運転支援装置50について説明した。以下、本実施形態に係る運転支援装置50を適用した走行シーンの例の幾つかを説明する。
(4-1.第1の適用事例)
図6~図8は、第1の適用事例を説明するための図であり、自車両1が駐車車両2の脇を通過する走行シーンを示す説明図である。
図6~図8は、第1の適用事例を説明するための図であり、自車両1が駐車車両2の脇を通過する走行シーンを示す説明図である。
図6には、俯瞰的2次元の死角領域が示されている。
時刻tにおいて、死角領域算出部63は、自車両1の前方に、遮蔽物として駐車車両2を検知するとともに、駐車車両2によって生じる自車両1から見た死角領域x(t)を特定する。死角領域算出部63は、駐車車両2を検知したときに特定された死角領域x(t)を累積死角領域X(t)とする。
時刻tにおいて、死角領域算出部63は、自車両1の前方に、遮蔽物として駐車車両2を検知するとともに、駐車車両2によって生じる自車両1から見た死角領域x(t)を特定する。死角領域算出部63は、駐車車両2を検知したときに特定された死角領域x(t)を累積死角領域X(t)とする。
自車両1の進行に伴って、それぞれの時刻t+Δt,t+2Δtにおける死角領域x(t+Δt),x(t+2Δt)は変化する。このため、それぞれの時刻t+Δt,t+2Δtにおいては、時刻tに検知された死角領域x(t)のうちの一部の領域は徐々に自車両1から見た視野に入り、時間の経過に伴って死角解消領域yが次第に拡大する。死角領域算出部63は、それぞれの時刻t+Δt,t+2Δtにおいて、それ以前の時刻t,t+Δtまでに検知された死角領域x(t),x(t+Δt))と重複する死角領域を累積死角領域X(t+Δt),X(t+2Δt)とする。つまり、時刻t+Δtにおける累積死角領域X(t+Δt)は、時刻tにおける累積死角領域X(t)と時刻t+Δtにおける死角領域x(t+Δt)とが重なる領域であり、時刻t+2Δtにおける累積死角領域X(t+2Δt)は、時刻t+Δtにおける累積死角領域X(t+Δt)と時刻t+2Δtにおける死角領域x(t+2Δt)とが重なる領域である。時刻t+2Δtにおける累積死角領域X(t+2Δt)は、時刻tにおける死角領域x(t)と時刻t+Δtにおける死角領域x(t+Δt)と時刻t+2Δtにおける死角領域x(t+2Δt)とが重なる領域と言うこともできる。
リスク推定部65は、遮蔽物を検出した時刻tにおいて、累積死角領域X(t)に存在し得る潜在リスク対象物を仮定する。図6に示す例では、時刻tの累積死角領域X(t)の二箇所にそれぞれ歩行者3を仮定しているが、累積死角領域X(t)の面積によれば自転車や自動車等の他の潜在リスク対象物を仮定することができる。また、リスク推定部65は、それぞれの時刻t+Δt,t+2Δtにおいて、累積死角領域X(t+Δt),X(t+2Δt)に存在し得る潜在リスク対象物を仮定するが、それまでの時刻t,t+Δtにおいても自車両1により検出されていない歩行者3であると仮定すると、累積死角領域X(t+Δt),X(t+2Δt)で仮定し得る潜在リスク対象物は歩行者や自転車等に限定される。
また、リスク推定部65は、それぞれの時刻t,t+Δt,t+2Δtにおいて、累積死角領域X(t),X(t+Δt),X(t+2Δt)に仮定した潜在リスク対象物の速度及び軌跡を設定する。時刻tの累積死角領域X(t)は、始めて検出された死角領域X(t)であり、それ以前の潜在リスク対象物の運動の予測ができないことから、時刻tの累積死角領域X(t)での潜在リスク対象物の速度及び軌跡は様々なバリエーションの想定が可能である。一方、時刻t+Δt,t+2Δtにおける累積死角領域X(t+Δt),X(t+2Δt)では、それまでの時刻t,t+Δtにおいても自車両1により検出されていない潜在リスク対象物であると仮定すると、累積死角領域X(t+Δt),X(t+2Δt)の潜在リスク対象物の速度及び軌跡は限定される。
図7は、潜在リスク対象物として自転車4を仮定した例を示す。自転車4は、歩行者よりも相対的に速い速度を想定することができる。また、自転車4の長さは歩行者の幅よりも大きいため、自車両1の進行方向に向かって移動すると想定できる自転車4の位置や向きが歩行者よりも限定される。例えば図7の時刻t+2Δtの累積死角領域X(t+2Δt)の面積では自転車4を仮定することができるが、図6の時刻t+2Δtの累積死角領域X(t+2Δt)の面積は自転車4を仮定することができない。このため、自車両1の前方の通過領域のうち、自転車4が侵入可能な領域の面積は相対的に小さくなる。また、図7の時刻t+2Δtの累積死角領域X(t+2Δt)の面積では自転車4を仮定することができるものの、時刻t以降継続して累積死角領域X(t+2Δt)に留まり続けていることが明らかであるため、自転車4はほぼ停止状態であり、自車両1の前方に侵入するとしてもその侵入速度は遅いと推定される。したがって、時刻t+2Δtにおいて、自車両1が自転車4と衝突する潜在リスクは小さく推定される。
このように、本実施形態に係る運転支援装置50は、所定時刻に特定された死角領域x(t)の時間変化を示す累積死角領域X(t)の変化に基づいて、累積死角領域X(t)に存在し得る潜在リスク対象物の有無並びに自車両1の前方への侵入位置及び侵入速度を想定して、自車両1が潜在リスク対象物と衝突する潜在リスクを精度よく推定することができる。これにより、潜在リスクに応じて適切に走行軌道を変更したり、減速したりすることができる。また、自車両1が駐車車両2の脇を通過する前にリスク推定部65により潜在リスクがなくなったと判定され、自車両1を加速したり走行軌道を元に戻すタイミングを早めることができる。
さらに、図8は、遮蔽物(駐車車両2)の高さ方向を考慮した累積死角領域Xの変化を示す。駐車車両2の高さ方向の死角領域x(t),x(t+Δt),x(t+Δ2t)を時間ごとに比較した場合、図6及び図7に示す俯瞰的2次元の死角領域x(t),x(t+Δt),x(t+Δ2t)を時間ごとに比較した場合に比べて、累積死角領域X(t+Δt),X(t+2Δt)がより小さくなる。具体的に、駐車車両2の高さ方向を考慮した場合、自車両1の進行に伴って駐車車両2のボンネットの上方の空間も徐々に視野に入ってくる。この上方の空間が死角解消領域yとなったボンネットの部分は、高さ方向のサイズが小さいために潜在リスク対象物を仮定することができない。したがって、累積死角領域X(t+Δt),X(t+2Δt)のうち、潜在リスク対象物を仮定することができる領域は、図6及び図7に示す俯瞰的2次元のみで示される累積死角領域X(t+Δt),X(t+2Δt)よりも制限される。つまり、リスク推定部65により潜在リスクがなくなったと判定されるタイミングがより早められて、自車両1を加速したり走行軌道を元に戻すタイミングをさらに早めることができる。
(4-2.第2の適用事例)
図9は、第2の適用事例を説明するための図であり、三車線道路の左車線を自車両1が走行しているときに、中央車線を走行する先行車両5の速度が自車両1の速度よりも遅く、自車両1が先行車両5を追い越して先行車両5の前に出る走行シーンを示す説明図である。
図9は、第2の適用事例を説明するための図であり、三車線道路の左車線を自車両1が走行しているときに、中央車線を走行する先行車両5の速度が自車両1の速度よりも遅く、自車両1が先行車両5を追い越して先行車両5の前に出る走行シーンを示す説明図である。
図9には、俯瞰的2次元の死角領域が示されている。
時刻tにおいて、死角領域算出部63は、自車両1の前方の中央車線に、遮蔽物として先行車両5を検知するとともに、先行車両5によって生じる自車両1から見た死角領域x(t)を特定する。死角領域算出部63は、先行車両5を追越し対象の車両として認識したときに特定された死角領域x(t)を累積死角領域X(t)とする。また、自車両1の進行に伴って、それぞれの時刻t+Δt,t+2Δtにおける死角領域x(t+Δt),x(t+2Δt)は変化する。このため、それぞれの時刻t+Δt,t+2Δtにおいては、時刻tに検知された死角領域x(t)のうちの一部の領域は徐々に自車両1から見た視野に入り、時間の経過に伴って死角解消領域yが次第に拡大する。死角領域算出部63は、それぞれの時刻t+Δt,t+2Δtにおいて、累積死角領域X(t+Δt),X(t+2Δt)を算出する。
時刻tにおいて、死角領域算出部63は、自車両1の前方の中央車線に、遮蔽物として先行車両5を検知するとともに、先行車両5によって生じる自車両1から見た死角領域x(t)を特定する。死角領域算出部63は、先行車両5を追越し対象の車両として認識したときに特定された死角領域x(t)を累積死角領域X(t)とする。また、自車両1の進行に伴って、それぞれの時刻t+Δt,t+2Δtにおける死角領域x(t+Δt),x(t+2Δt)は変化する。このため、それぞれの時刻t+Δt,t+2Δtにおいては、時刻tに検知された死角領域x(t)のうちの一部の領域は徐々に自車両1から見た視野に入り、時間の経過に伴って死角解消領域yが次第に拡大する。死角領域算出部63は、それぞれの時刻t+Δt,t+2Δtにおいて、累積死角領域X(t+Δt),X(t+2Δt)を算出する。
リスク推定部65は、遮蔽物を検出した時刻tにおいて、累積死角領域X(t)に存在し得る潜在リスク対象物を仮定する。図9に示す例では、自車両1から見て中央車線よりも奥側の右側車線に存在する潜在リスク対象物を仮定するため、歩行者や自転車等の仮定は行わず、右側車線を走行する他車両6を仮定する。
また、リスク推定部65は、それぞれの時刻t,t+Δt,t+2Δtにおいて、累積死角領域X(t),X(t+Δt),X(t+2Δt)に仮定した潜在リスク対象物の速度及び軌跡を設定する。図9に示した例では、時刻t+Δt,t+2Δtにおいて、時刻tに特定された死角領域x(t)のうちの前方側で死角解消領域yが徐々に拡大するにもかかわらず、当該死角解消領域yに他車両6が顕在化していない。このため、自車両1及び先行車両5の車速に対して、仮定した他車両6の車速が相対的に遅いことが明らかであることから、他車両6が先行車両5の前方へ車線変更してくる可能性は低いと判断される。
図9に示す例において、単に死角領域の有無を考慮するだけでは、自車両1の周囲環境センサ31によって、死角領域を生じさせる遮蔽物が存在しないことが確認されるまで、つまり、先行車両5の追い越しが完了したことが確認されるまでは、車線変更が危険であることを示す通知が行われる。一方、本実施形態に係る運転支援装置50では、自車両1の進行に伴う死角領域x(t)の時間変化を示す累積死角領域X(t)の変化に基づいて、自車両1が、右側車線から中央車線の先行車両5の前方へ車線変更(侵入)してくる他車両6と衝突する潜在リスクを精度よく推定することができる。これにより、自車両1が先行車両5を追い越す前にリスク推定部65により潜在リスクがなくなったと判定され、自車両1による先行車両5の追い越しを完了させたり、車線変更が危険であることの通知を停止させるタイミングを早めることができる。
<5.まとめ>
以上説明したように、本実施形態に係る運転支援装置50は、所定時刻tに死角領域x(t)を特定するとともに、各時刻t,t+Δt,t+2Δtにおいて、自車両1の進行に伴う死角領域x(t)の時間変化を示す累積死角領域X(t),X(t+Δt),X(t+2Δt)を算出する。また、運転支援装置50は、算出した累積死角領域X(t),X(t+Δt),X(t+2Δt)に存在し得る潜在リスク対象物を仮定し、累積死角領域X(t),X(t+Δt),X(t+2Δt)と、仮定した潜在リスク対象物の累積死角領域X(t),X(t+Δt),X(t+2Δt)内での想定動作とに基づいて、自車両1と潜在リスク対象物との衝突の潜在リスクを推定する。これにより、単に自車両1から見て死角領域が存在するか否かを判定するのではなく、当該死角領域に存在し得る潜在リスク対象物との衝突の潜在リスクを精度よく推定することができる。
以上説明したように、本実施形態に係る運転支援装置50は、所定時刻tに死角領域x(t)を特定するとともに、各時刻t,t+Δt,t+2Δtにおいて、自車両1の進行に伴う死角領域x(t)の時間変化を示す累積死角領域X(t),X(t+Δt),X(t+2Δt)を算出する。また、運転支援装置50は、算出した累積死角領域X(t),X(t+Δt),X(t+2Δt)に存在し得る潜在リスク対象物を仮定し、累積死角領域X(t),X(t+Δt),X(t+2Δt)と、仮定した潜在リスク対象物の累積死角領域X(t),X(t+Δt),X(t+2Δt)内での想定動作とに基づいて、自車両1と潜在リスク対象物との衝突の潜在リスクを推定する。これにより、単に自車両1から見て死角領域が存在するか否かを判定するのではなく、当該死角領域に存在し得る潜在リスク対象物との衝突の潜在リスクを精度よく推定することができる。
したがって、運転支援装置50が、自車両1の乗員に対して潜在リスクの存在を通知する場合、自車両1が死角領域を生じさせていた遮蔽物(駐車車両2あるいは先行車両5)の脇を通過する前であっても、潜在リスクが存在しなくなったときに通知を停止することができる。これにより、自車両1との衝突のおそれのある物体が死角領域に存在しないことが明らかである場合の不要な通知が停止され、ユーザが煩わしさを感じるおそれを低減することができる。
また、運転支援装置50が、自車両1の自動運転を制御する場合、自車両1が死角領域を生じさせていた遮蔽物(駐車車両2あるいは先行車両5)の脇を通過する前であっても、潜在リスクが存在しなくなったときに潜在リスクを小さくする運転条件の設定を終了することができる。これにより、自車両1との衝突のおそれのある物体が死角領域に存在しないことが明らかであるにもかかわらず自車両1が加速しないなど、ユーザが煩わしさを感じるおそれを低減することができる。
また、本実施形態に係る運転支援装置50では、死角領域の面積の変化を示す累積死角領域の変化に基づいて、潜在リスク対象物の累積死角領域内での速度及び軌道、あるいは、自車両1の前方への潜在リスク対象物の侵入速度を設定し、潜在リスクを推定する。これにより、仮定された潜在リスク対象物が自車両1の通過領域に侵入し得る領域の面積に応じて、自車両1と潜在リスク対象物との衝突の潜在リスクを精度よく推定することができ、運転支援制御の精度を向上させることができる。
また、本実施形態に係る運転支援装置50では、自車両1から見た横方向及び奥行き方向で定義される俯瞰的2次元の死角領域だけでなく、遮蔽物の高さ方向の死角領域を考慮して、潜在リスクを推定する。従って、死角領域に存在し得る物体の仮定を精度よく行うことができ、自車両1と潜在リスク対象物との衝突の潜在リスクを精度よく推定することができ、運転支援制御の精度を向上させることができる。
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示はかかる例に限定されない。本開示の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、上記実施形態では、自車両1の通過領域(通過範囲)のうちの潜在リスク対象物が侵入可能な領域の面積が大きいほど、潜在リスクが高く設定されていたが、本開示はかかる例に限定されない。例えば潜在リスクは、累積死角領域に仮定し得る潜在リスク対象物の種類や数及び自車両1の前方への侵入速度の大きさに応じて設定されてもよい。
また、自車両の周囲に存在するリスクに基づいて前記自車両の運転を支援する運転支援装置に適用可能なコンピュータプログラムであって、プロセッサに、所定時刻に死角領域を特定するとともに自車両の進行に伴う死角領域の時間変化を演算することと、所定時刻に特定された死角領域に存在し得る物体を仮定し、所定時刻に特定された死角領域の時間変化と、仮定した物体の死角領域内での想定動作と、に基づいて、自車両と死角領域に存在し得る物体との衝突の潜在リスクを推定することと、を含む処理を実行させるコンピュータプログラム、及び当該コンピュータプログラムを記録した記録媒体も本開示の技術的範囲に属する。
1…車両(自車両)、2…駐車車両、3…歩行者、4…自転車、5…先行車両、6…他車両、31…周囲環境センサ、50…運転支援装置、51…制御部、55…累積死角領域データベース、61…周囲環境検出部、63…死角領域算出部、65…リスク推定部、67…運転条件設定部、69…通知部
Claims (5)
- 自車両の周囲に存在するリスクに基づいて前記自車両の運転を支援する運転支援装置において、
所定時刻に死角領域を特定するとともに自車両の進行に伴う前記死角領域の時間変化を演算する死角領域算出部と、
前記所定時刻に特定された前記死角領域に存在し得る物体を仮定し、前記所定時刻に特定された死角領域の時間変化と、前記仮定した物体の前記死角領域内での想定動作と、に基づいて、前記自車両と前記死角領域に存在し得る物体との衝突の潜在リスクを推定するリスク推定部と、
を備える、運転支援装置。 - 前記リスク推定部は、前記死角領域の面積の変化に基づいて、前記死角領域に存在し得る物体と、前記自車両の前方への前記物体の侵入速度と、を設定し、前記潜在リスクを推定する、請求項1に記載の運転支援装置。
- 前記リスク推定部は、前記死角領域の面積の変化に基づいて、前記死角領域に存在し得る物体と、前記物体の前記死角領域内での設定速度範囲と、前記物体の設定軌道と、を求め、前記潜在リスクを推定する、請求項1又は2に記載の運転支援装置。
- 前記自車両の乗員に通知を行う通知制御部を備え、
前記通知制御部は、前記潜在リスクが存在する場合に通知を開始するとともに、前記自車両が前記死角領域を生じさせていた遮蔽物の脇を通過する前であっても、前記潜在リスクが存在しなくなったときに通知を停止する、請求項1~3のいずれか1項に記載の運転支援装置。 - 前記自車両の運転条件を設定する運転条件設定部を備え、
前記運転条件設定部は、前記潜在リスクが存在する場合に前記潜在リスクが小さくなるように前記運転条件を設定するとともに、前記自車両が前記死角領域を生じさせていた遮蔽物の脇を通過する前であっても、前記潜在リスクが存在しなくなったときに前記潜在リスクを小さくする運転条件の設定を終了する、請求項1~4のいずれか1項に記載の運転支援装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2021044874A JP2022144036A (ja) | 2021-03-18 | 2021-03-18 | 運転支援装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2021044874A JP2022144036A (ja) | 2021-03-18 | 2021-03-18 | 運転支援装置 |
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JP2022144036A true JP2022144036A (ja) | 2022-10-03 |
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ID=83454494
Family Applications (1)
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JP2021044874A Pending JP2022144036A (ja) | 2021-03-18 | 2021-03-18 | 運転支援装置 |
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JP (1) | JP2022144036A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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DE102023121326A1 (de) | 2022-09-09 | 2024-03-14 | Shimano Inc. | Steuervorrichtung für ein muskelkraftbetriebenes fahrzeug |
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2021
- 2021-03-18 JP JP2021044874A patent/JP2022144036A/ja active Pending
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