JP2022133154A - 脂質膜構造体を含む組成物及びその製造方法 - Google Patents

脂質膜構造体を含む組成物及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】微細な脂質膜構造体を簡便に調製することができる脂質膜構造体を含む組成物及びその製造方法を提供する。【解決手段】(a)PC含量55質量%以上のリン脂質(b)(アスコルビル/トコフェリル)リン酸及びその塩と、アニオン性界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上(c)炭素数5~6のアルカンジオールを含有し、成分(a)及び成分(b)の質量比が80:20~99:1であり、成分(a)が水素添加リン脂質であり、成分(b)が、(アスコルビル/トコフェリル)リン酸塩、N-アシルアミノ酸塩、脂肪酸塩、N-アシルタウリン塩、及びアルキル硫酸塩から選ばれる1種又は2種以上である。【選択図】図1

Description

本発明は化粧料や皮膚外用剤などに利用される、脂質膜構造体を含む組成物及びその製造方法に関する。
化粧料などの分野において、脂質膜構造体が広く利用されている。例えば、脂質膜構造体としてバイセルやリポソームが知られている。バイセルは、最小の脂質二分子膜モデルとされており、円盤状(ディスク状)の単層ラメラ構造を有している。一方、リポソームは、脂質二重膜で構成された球状の閉鎖小胞体である。これら脂質膜構造体は、保湿などのスキンケア効果を有し、また有効成分を内包することができる。
従来、例えば皮膚用化粧料に配合される組成物として、特許文献1のリポソーム含有組成物が知られている。該組成物は、リン脂質、セラミド類、及び分岐型アルコールを含んでおり、リポソーム膜の柔軟性が高められている。柔軟性が向上することでリポソームの形態が崩壊することなく維持されることから、保存安定性に優れる。
特開2011-032230号公報
ところで、脂質膜構造体の調製において微細な脂質膜構造体を形成させるためには、一般に高圧ホモジナイザーなどを用いた乳化が必要になる。しかし、作業性やコストが増大する傾向がある。一方、脂質膜構造体であるバイセルの調製方法としてバンガム法が知られている。しかし、この方法はクロロホルムなどの有機溶媒を用いるため、製造プロセスで有機溶媒の除去が必要になり、量産性には適しているとはいえない。
本発明は、微細な脂質膜構造体を簡便に得ることができる脂質膜構造体を含む組成物及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明の脂質膜構造体を含む組成物(以下、単に組成物という)は、
(a)PC含量55質量%以上のリン脂質
(b)(アスコルビル/トコフェリル)リン酸及びその塩と、アニオン性界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上
(c)炭素数5~6のアルカンジオール
を含有し、
上記成分(a)及び上記成分(b)の質量比が80:20~99:1であることを特徴とする。
上記成分(a)が水素添加リン脂質であることを特徴とする。さらに、上記成分(a)が酸価5mgKOH/g未満であることを特徴とする。
上記成分(b)が、(アスコルビル/トコフェリル)リン酸塩、N-アシルアミノ酸塩、脂肪酸塩、N-アシルタウリン塩、及びアルキル硫酸塩から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする。
また、上記成分(b)が、N-アシルアミノ酸塩、及びN-アシルタウリン塩から選ばれる1種又は2種以上であり、炭素数14~18の脂肪酸由来のアシル基を有することを特徴とする。
さらに、成分(d)として、グリセリンを含有することを特徴とする。
さらに、成分(e)として、フィトステロール、コレステロール、フィトステリルエステル、及びコレステリルエステルから選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とする。
上記成分(a)に対する上記成分(e)の質量比((e)/(a))が1/100~1/50であることを特徴とする。
上記脂質膜構造体を含む組成物は化粧料又は皮膚外用剤である。
本発明の製造方法は、本発明の脂質膜構造体を製造する方法であって、上記成分(a)、上記成分(b)、及び上記成分(c)を加温溶解した後、水と混合撹拌して得ることを特徴とする。
本発明の組成物は、上記成分(a)~(c)を含有するので、高圧ホモジナイザーなどの微細化手段を用いた乳化が必要にならず、また有機溶媒の除去も必要にならない。そのため、微細な脂質膜構造体を含む組成物を簡便に得ることができる。また、本発明の組成物は、化粧料や皮膚外用剤として有用である。
実施例1-1の組成物を透過型電子顕微鏡で観察した写真である。 実施例2-4の組成物を透過型電子顕微鏡で観察した写真である。 実施例11の組成物を透過型電子顕微鏡で観察した写真である。
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において、「~」はその前後の数値を含む範囲を意味するものとする。
<成分(a)>
本発明における成分(a)は、PC(ホスファチジルコリン)含量55質量%以上のリン脂質である。脂質膜構造体の形成の観点から、PC含量はより高いものが好ましく、具体的にはPC含量65質量%以上が好ましく、PC含量75質量%以上がより好ましい。また、PC含量は、例えば99.5質量%以下である。
リン脂質としては、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、卵黄レシチン、大豆レシチンなどの天然リン脂質や、ジラウロイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリンなどの合成リン脂質、水素添加大豆レシチン、水素添加卵黄レシチン、水素添加ホスファチジルコリン、水素添加ホスファチジルセリンなどの水素添加リン脂質などが挙げられる。これらを1種又は2種以上用いることができる。なお、2種以上を用いる場合、組み合わせて用いたリン脂質の全体のPC含量が55質量%以上であればよく、成分(a)を構成する一部のリン脂質に55質量%未満のリン脂質を用いてもよい。
成分(a)は、保存安定性などの観点から、水素添加リン脂質を含有することが好ましく、水素添加大豆リン脂質を含有することがより好ましい。
また、成分(a)の酸価(リン脂質を2種以上用いる場合はリン脂質全体の値)は、特に限定されず、例えば15mgKOH/g未満、5mgKOH/g未満とすることができる。酸価とは、試料1gを中和するのに要する水酸化カリウム(KOH)のmg数である。酸価は、日本薬局方(第17改正)の一般試験法、油脂試験法、酸価に従って測定できる。
成分(a)の含有量は、特に限定されないが、保存安定性及び分散性の観点から、組成物全量に対して0.05~3質量%が好ましく、0.05~2質量%がより好ましく、0.1~1.5質量%がさらに好ましい。
<成分(b)>
本発明における成分(b)は、(アスコルビル/トコフェリル)リン酸及びその塩と、アニオン性界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上である。
(アスコルビル/トコフェリル)リン酸及びその塩は、抗酸化作用、活性酸素消去作用、保湿作用、角質層の生成周期の正常化など多様な機能性を有する。例えば(アスコルビル/トコフェリル)リン酸塩の市販品として、千寿製薬製のEPC(SENJU)を用いることができる。EPC(SENJU)は、dl-α-トコフェロール 2-L-アスコルビン酸リン酸ジエステルの1モルに対してカリウムを1~2モル含有するアルカリ金属塩である。
アニオン性界面活性剤は、陰イオン性の親水基を有する界面活性剤の総称であり、例えば、カルボン酸型の界面活性剤、リン酸エステル型の界面活性剤、硫酸塩型の界面活性剤、スルホン酸型の界面活性剤などを用いることができる。
カルボン酸型の界面活性剤は、分子内にカルボキシ基を一つ以上有する界面活性剤である。カルボン酸型の界面活性剤として、例えば、N-アシルアミノ酸、アルキルエーテルカルボン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸、N-アシルメチルアラニン、ジアシルアミノ酸及びそれらの塩や、脂肪酸塩などが挙げられる。塩の対イオンとしては、アルカリ金属(ナトリウム、カリウムなど)、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウムなど)、アンモニウムなどが挙げられる。なお、塩の対イオンは、後述する他の界面活性剤についても同様である。
リン酸エステル型の界面活性剤は、分子内にリン酸エステル結合を1つ以上有する界面活性剤である。例えば、アルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル及びそれらの塩などが挙げられる。
硫酸塩型の界面活性剤として、アルキル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル、アルキルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸及びそれらの塩などが挙げられる。
スルホン酸型の界面活性剤は、スルホン酸基を有する界面活性剤である。スルホン酸型の界面活性剤として、例えば、アルカンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、α-オレフィンスルホン酸、α-スルホ脂肪酸メチルエステル、N-アシルタウリン及びそれらの塩などが挙げられる。
特に、成分(b)は、(アスコルビル/トコフェリル)リン酸塩、N-アシルアミノ酸塩、脂肪酸塩、N-アシルタウリン塩、及びアルキル硫酸塩から選ばれる1種又は2種以上を含むことが好ましい。さらに、N-アシルアミノ酸塩、及びN-アシルタウリン塩の場合は、分子構造中に炭素数14~18の脂肪酸由来のアシル基を有することが好ましい。
N-アシルアミノ酸塩としては、N-ラウロイル-L-グルタミン酸塩、N-ミリストイル-L-グルタミン酸塩、N-ステアロイル-L-グルタミン酸塩、N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸塩、N-アシル-L-グルタミン酸塩などのN-アシルグルタミン酸塩や、N-ヤシ油脂肪酸アシルグリシン塩などのN-アシルグリシン塩、ラウロイルサルコシン塩、ミリストイルメチルアミノ酢酸塩、パルミトイルサルコシン塩などのN-アシルサルコシン塩などが挙げられる。脂肪酸塩としては、ミリスチン酸塩、ラウリン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、オレイン酸塩などが挙げられる。
N-アシルタウリン塩としては、ラウロイルメチルタウリン塩、ミリストイルメチルタウリン塩、N-ステアロイル-N-メチルタウリン塩などが挙げられる。また、アルキル硫酸塩としては、ラウリル硫酸塩、ミリスチル硫酸塩、セチル硫酸塩、硬化ヤシ油脂肪酸グリセリル硫酸塩などが挙げられる。
成分(b)の含有量は、特に限定されないが、組成物全量に対して0.005~0.5質量%が好ましく、0.01~0.3質量%がより好ましく、0.01~0.05質量%がさらに好ましい。
本発明において、成分(a)及び成分(b)の質量比は80:20~99:1である。成分(a)の含有量に対して成分(b)の含有量が所定以上になると、脂質膜構造体の形成が困難になる傾向がある。上記質量比は90:10~99:1が好ましく、90:10~95:5がより好ましい。
<成分(c)>
本発明における成分(c)は 炭素数5~6のアルカンジオールである。このアルカンジオールは、炭素数5~6の直鎖又は分岐アルカンに2個の水酸基が付加された構造を有する。後述の実施例で示すように、炭素数4以下及び炭素数7以上の場合は、微細な脂質膜構造体の形成が困難である。
炭素数5~6のアルカンジオールとして、例えば、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、イソペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオールなどが挙げられる。これらの中でも、1,2-ペンタンジオール及び1,2-ヘキサンジオールから選ばれる1種又は2種を用いることが好ましい。
成分(c)の含有量は、特に限定されないが、組成物全量に対して1~5質量%が好ましく、2~5質量%がより好ましい。
<成分(d)>
本発明の組成物は、更に成分(d)としてグリセリンを含有してもよい。グリセリンの含有量は、組成物全量に対して1~5質量%が好ましく、2~5質量%がより好ましい。また、成分(d)は、成分(c)と同程度含まれることが好ましい。具体的には、成分(d)及び成分(c)の質量比が40:60~60:40であることが好ましく、45:55~55:45であることがより好ましい。
<成分(e)>
本発明の組成物は、更に成分(e)として脂溶性化合物を含有してもよい。脂溶性化合物としては、フィトステロール、コレステロールなどのステロール類;フィトステリルエステル、コレステリルエステルなどのステロールエステル類;オレイン酸、ベヘン酸などの高級脂肪酸;セラミドEOS、セラミドNG(セラミド2)、セラミドNP(セラミド3)などのセラミド類;レチノール、トコフェロールなどの脂溶性ビタミン類;リモネン、ワセリン、スクワランなどの炭化水素類などが挙げられる。なお、ステロール類やセラミド類は、皮膚のバリア機能向上などのための有効成分としても知られている。
フィトステロールはステロールの一種であり、植物ステロールとも称される。フィトステロールとしては、例えば、β-シトステロール、カンペステロール、スティグマステロール、ブラシカステロールなどが挙げられる。また、コレステロールはステロールの一種である。
フィトステリルエステルは、例えば脂肪酸とフィトステロールとのエステル化により得られる。脂肪酸の例としては、炭素数4~32の脂肪酸が挙げられる。具体的には、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、ノナン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などが挙げられる。
また、脂肪酸としてラノリン酸やマカデミアナッツ脂肪酸など、天然物から抽出した混合物を用いてもよい。また、ヒドロキシステアリン酸などのヒドロキシル脂肪酸や、N-ラウロイルグルタミン酸などのアミノ酸誘導体を用いてもよい。
コレステリルエステルは、例えば脂肪酸とコレステロールとのエステル化により得られる。脂肪酸の例としては、上述したような炭素数4~32の脂肪酸が挙げられる。また、脂肪酸としてラノリン酸やマカデミアナッツ脂肪酸など、天然物から抽出した混合物を用いてもよい。また、ヒドロキシステアリン酸などのヒドロキシル脂肪酸や、N-ラウロイルグルタミン酸などのアミノ酸誘導体を用いてもよい。
フィトステロール、コレステロール、フィトステリルエステル、及びコレステリルエステルは1種又は2種以上を用いてもよい。例えば、市販のステロールエステル混合物を用いることができる。
成分(e)の含有量は、組成物全量に対して、好ましくは0.001~3質量%であり、より好ましくは0.005~1質量%であり、さらに好ましくは0.005~0.5質量%である。また、成分(a)に対する成分(e)の質量比((e)/(a))は1/100~1/10が好ましく、1/100~1/50がより好ましい。
<成分(f)>
本発明の組成物は、更に成分(f)として水を含有してもよい。この場合、成分(f)は、脂質膜構造体の分散媒体として用いられる。成分(f)は、一般に化粧品、医薬品などの分野において使用されるものであれば、特に制限なく使用できる。成分(f)として、例えば、精製水、水道水、温泉水、深層水などを使用でき、これらの中から1種又は2種以上を適宜用いることができる。成分(f)の含有量は、特に限定されないが、70~95質量%が好ましく、80~95質量%がより好ましい。
<成分(g)>
本発明の組成物は、更に成分(g)として、成分(c)及び成分(d)以外の多価アルコールを含有してもよい。成分(g)は、組成物の製造時において油性成分の溶媒として機能する。成分(g)として、例えば、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコールから選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。
成分(g)の含有量は特に限定されないが、組成物全量に対して、3~20質量%であることが好ましく、3~10質量%であることがより好ましい。
また、本発明の組成物は、上記成分(a)~(g)以外に、他の成分として、通常の化粧料や皮膚外用剤に配合される任意成分を含有してもよい。例えば、油剤、水溶性高分子、アミノ酸、有機酸、無機塩類、キレート剤、防腐剤、pH調整剤、色素、水溶性薬剤などが必要に応じて適宜配合される。
本発明の組成物は、脂質膜構造体を含む。脂質膜構造体とは、脂質二重膜(ラメラ)構造を有する粒子を指し、脂質分子同士が外側に親水基を向けて、疎水基を内側に向き合わせて配列されている。脂質膜構造体の具体的な形態としては、リポソーム、バイセルなどが挙げられる。本発明の組成物において、リポソームやバイセルが混在していてもよく、またラメラ構造は単層でも複数の層から構成されていてもよい。
本発明において、脂質膜構造体の形成は、最終的には透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて確認することができる。ただし、後述の実施例では、スクリーニング性の観点から、動的光散乱測定装置を用いて測定される平均粒子径によって、脂質膜構造体の形成を一次的に判断している。具体的には、平均粒子径が200nm以下の場合に脂質膜構造体が形成されていると判断している。平均粒子径は、分散性、皮膚への浸透性の観点などから、150nm以下が好ましく、100nm以下がより好ましく、80nm以下がさらに好ましい。また、平均粒子径は、例えば15nm以上である。本発明において、脂質膜構造体の平均粒子径は、JIS Z8826:2005の粒子径解析-光子相関法に準拠するものである。
本発明において、脂質膜構造体が単層ラメラ構造体を含むことが好ましく、特にバイセルを含むことがより好ましい。バイセルは、微細な円盤状の単層ラメラ構造体であり、化合物の内包効率や皮膚への浸透性に優れる。バイセルの形成は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いてディスク状の像を観察することで確認できる。組成物がバイセルを含む形態では、バイセルの割合(電子顕微鏡による観察視野中の(ディスク像数/全粒子像数)が例えば50%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。
本発明の組成物は、外観や保存安定性の観点から透明状態のものが好ましい。この透明性は、後述の実施例で示すように、紫外・可視分光光度計を用いて特定の波長で測定される透過率で評価することができる。本発明の組成物の透過率は、80%以上が好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。
本発明の組成物は、成分(a)、成分(b)、及び成分(c)(更に必要に応じて成分(d)及び/又は成分(e))を加温溶解し、得られた溶解物を、加温された水相に加えながら混合撹拌し、必要に応じて精製、冷却などを行うことで得ることができる。水相は、成分(f)(更に必要に応じて成分(g))を含む。上記加温の温度は、特に限定されないが、50~90℃が好ましく、70~90℃がより好ましい。混合時間は、例えば1分~30分程度である。
混合時の混合手段は特に制限されず、ホットスターラーなどのマグネチックスターラーや、パドルミキサー、プロペラミキサーなどの通常の混合手段を用いることができる。これらの混合手段を用いた撹拌混合は、非加圧条件下で行われ、また高度な機械的せん断力を必要としない。本発明では、上述したように、特定の成分を組み合わせることで、高圧ホモジナイザーなどの微細化手段を用いなくても、微細な脂質膜構造体を簡便に形成できる。
本発明の組成物は、化粧料や皮膚外用剤としてそのまま用いてもよく、また該組成物を調製した後、他の成分と組み合わせて化粧料や皮膚外用剤として用いてもよい。剤形は、特に限定されず、例えばゲル状、ペースト状、液状、クリーム状、固形状などの剤型にできる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
表1~表11に示す組成の組成物を調製した。具体的には、A相及びB相をそれぞれ計量し、80℃で加温溶解した後、B相をホットスターラーで加温しながらスターラーで撹拌して、そこへA相を徐々に加えた。A相を全量加えた後、1分程度撹拌した。その後、撹拌棒で撹拌しながら35℃まで水冷して、組成物を得た。
<平均粒子径>
得られた組成物中の粒子の平均粒子径を、動的光散乱測定装置(ゼータサイザーナノZS)を用いて測定した。平均粒子径には、キュムラント解析による粒子径の平均値(Z-Average)を採用した。実施例では、平均粒子径が200nm以下の場合に、脂質膜構造体が形成されたと判定した。更に一部の実施例ではTEMを用いて実際に脂質膜構造体の形成を確認した。結果を表1~表11に併記する。
<透過率>
得られた組成物の透明性を評価するため、紫外・可視分光光度計(UV-1600)を用いて波長700nmにおける透過率を測定した。結果を表1~表11に併記する。
まず、表1~表4では、成分(a)、成分(b)、成分(c)、の各成分について検討した。表1~表4において、検討項目成分以外の成分及びその配合量は共通している。
Figure 2022133154000002
表1では、成分(a)のリン脂質について検討した。表1に示すように、PC含量が55質量%以上の場合に脂質膜構造体が形成された。また、PC含量が大きくなると、平均粒子径が増大し、透過率が低下する傾向が見られた。実施例1-1~1-5の組成物の外観観察では、いずれもマイクロエマルション様を示した。なお、表1中のPC含量90%の水素添加大豆リン脂質の酸価は、5mgKOH/g未満であり、PC含量75~85%の水素添加大豆リン脂質の酸価は、10mgKOH/g以上15mgKOH/g未満である。
実施例1-1の組成物について、透過型電子顕微鏡(JEM-1400Plus)を用いて顕微鏡観察を行った。図1に観察した写真を示す。図1に示すように、棒状の像が多数見られ、バイセルの形成が確認された。
Figure 2022133154000003
Figure 2022133154000004
表2及び表3では、成分(b)のアニオン性界面活性剤などについて検討した。表2に示すように、組成物が成分(b)を含まない場合(比較例2-1)には、脂質膜構造体が形成されなかった。表2及び表3の結果より、(アスコルビル/トコフェリル)リン酸塩、又は、カルボン酸型、硫酸塩型、スルホン酸型のアニオン性界面活性剤を、成分(a)及び成分(c)と組み合わせて配合することで、脂質膜構造体が形成された。
また、実施例2-4の組成物について、透過型電子顕微鏡を用いて顕微鏡観察を行ったところ、バイセルの形成が確認された(図2参照)。同様に、実施例3-2の組成物も、顕微鏡観察によりバイセルの形成が確認された。
Figure 2022133154000005
表4では、成分(c)の多価アルコールについて検討した。表4に示すように、成分(c)として1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオールを用いた場合に脂質膜構造体が形成された(実施例4-1、4-2)。
一方、炭素数4以下の場合(比較例4-1、4-2)は平均粒子径が大きくなり、また透過率も大幅に低下した。炭素数7以上の場合(比較例4-5)は、沈殿物が生じ、組成物が分離する結果となった。また、炭素数が6の場合でも側鎖にエーテル結合を有する場合(比較例4-3、4-4)は、平均粒子径が大きくなった。
次に、表5及び表6では、成分(a)と成分(b)の質量比について検討した。成分(b)には(アスコルビル/トコフェリル)リン酸カリウムを用いた。なお、表5及び表6(後述の表7~表11も含む)では、B相として(f)精製水のみを用いた。
Figure 2022133154000006
表5に示すように、成分(a)と成分(b)の質量比が80:20~99:1の場合に微細な脂質膜構造体が形成された。さらに、質量比がその範囲内において成分(a)に対する成分(b)の含有比率が大きくなるほど、平均粒子径が小さくなる傾向が見られた。一方、成分(a)と成分(b)の質量比が70:30の場合(比較例5-1)は、平均粒子径が大きくなった。なお、成分(d)のグリセリンを添加した場合(実施例5-6~5-8)、平均粒子径及び透過率に与える影響はほとんど見られなかった。
また、実施例5-2~5-5の組成物については、顕微鏡観察によりバイセルの形成が確認された。
Figure 2022133154000007
表6では、(b)(アスコルビル/トコフェリル)リン酸カリウムの含有量を0.035質量%に固定して、(a)リン脂質の含有量を0.4~1質量%に変えて質量比を検討した。実施例6-1~6-7に示すように、質量比(a:b)が約97:3~92:8の範囲において成分(a)に対する成分(b)の含有比率が大きくなるほど、平均粒子径が小さくなる傾向が見られた。また、平均粒子径の減少に伴って、透過率は上昇した。
また、実施例6-8及び6-9の組成物については、顕微鏡観察によりバイセルの形成が確認された。
続いて、表7~表10では、成分(e)の脂溶性化合物について検討した。具体的には、(a)リン脂質の含有量を0.7質量%に固定して、成分(a)に対する成分(e)の質量比を1/700~1/5の範囲で検討した。
Figure 2022133154000008
表7では、成分(e)としてコレステリック液晶を用いた。なお、表7中のステロールエステル混合物は、オレイン酸ジヒドロコレステリル、ノナン酸コレステリル、酪酸ジヒドロコレステリル、酪酸コレステリル、オレイン酸フィトステリルの混合物である。つまり、表7に示す組成物は、成分(e)として、フィトステリルエステルとコレステリルエステルの混合物を用いている。
表7に示すように、質量比((e)/(a))が1/100~1/14の範囲において、平均粒子径及び透過率はいずれも良好であり、大きな差は見られなかった。一方、外観観察では、実施例7-6~7-8において油浮きが見られ、均一性の低下が確認された。
また、実施例7-5の組成物については、顕微鏡観察によりバイセルの形成が確認された。
Figure 2022133154000009
表8では、成分(e)としてフィトステロールを用いた。表8では、質量比((e)/(a))が1/70~1/5の範囲において、成分(a)に対する成分(e)の含有比率が大きくなるほど、平均粒子径が大きくなり、透過率が低下する傾向が見られた。
また、実施例8-3、8-5、8-6の組成物については、顕微鏡観察によりバイセルの形成が確認された。
Figure 2022133154000010
表9では、成分(e)としてコレステロールを用いた。表9においても、表8と同様の結果が得られた。
Figure 2022133154000011
表10では、成分(e)として高級脂肪酸、セラミド類、炭化水素類を用いた。表10においても、質量比 ((e)/(a))が大きくなるほど、平均粒子径が大きくなり、透過率が低下する傾向が見られた。
また、実施例10-9の組成物については、顕微鏡観察によりバイセルの形成が確認された。
次に、2種類の組成物について、ホットスターラーを用いた製法(A法)と、高圧ホモジナイザー(乳化分散装置)を用いた製法(B法)とを比較した。ホットスターラーを用いた製法は、上述のようにA相及びB相を通常撹拌する製法である。また、高圧ホモジナイザーを用いた製法は、A相(及びB相)をマイクロフルイダイザーで撹拌する製法である。結果を表11に示す。
Figure 2022133154000012
表11に示すように、実施例11では、ホットスターラーの場合でも、高圧ホモジナイザーの場合と遜色ない結果が得られた。特に、透過率については、ホットスターラーの方が優れる結果となった。また、実施例11のA法及びB法によりそれぞれ得られた組成物について、透過型電子顕微鏡を用いて顕微鏡観察を行ったところ、バイセルの形成が確認された。図3には、参考としてB法により得られた組成物の顕微鏡写真を示す。
一方、比較例11は、成分(c)を含んでおらず、通常撹拌では脂質膜構造体は形成されなかった。しかし、高圧ホモジナイザーを用いることで、脂質膜構造体が形成された。
上記の実施例の結果より、本発明によれば、少なくとも成分(a)~(c)を組み合わせて用いることで、高圧ホモジナイザーなどの微細化手段を用いなくても簡便に微細な脂質膜構造体を形成できる。

Claims (10)

  1. (a)PC含量55質量%以上のリン脂質
    (b)(アスコルビル/トコフェリル)リン酸及びその塩と、アニオン性界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上
    (c)炭素数5~6のアルカンジオール
    を含有し、
    前記成分(a)及び前記成分(b)の質量比が80:20~99:1であることを特徴とする脂質膜構造体を含む組成物。
  2. 前記成分(a)が水素添加リン脂質であることを特徴とする請求項1記載の脂質膜構造体を含む組成物。
  3. 前記成分(a)が酸価5mgKOH/g未満であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の脂質膜構造体を含む組成物。
  4. 前記成分(b)が、(アスコルビル/トコフェリル)リン酸塩、N-アシルアミノ酸塩、脂肪酸塩、N-アシルタウリン塩、及びアルキル硫酸塩から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項記載の脂質膜構造体を含む組成物。
  5. 前記成分(b)が、N-アシルアミノ酸塩、及びN-アシルタウリン塩から選ばれる1種又は2種以上であり、炭素数14~18の脂肪酸由来のアシル基を有することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項記載の脂質膜構造体を含む組成物。
  6. さらに、成分(d)として、グリセリンを含有することを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項記載の脂質膜構造体を含む組成物。
  7. さらに、成分(e)として、フィトステロール、コレステロール、フィトステリルエステル、及びコレステリルエステルから選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか1項記載の脂質膜構造体を含む組成物。
  8. 前記成分(a)に対する前記成分(e)の質量比((e)/(a))が1/100~1/50であることを特徴とする請求項7記載の脂質膜構造体を含む組成物。
  9. 化粧料又は皮膚外用剤である請求項1から請求項8までのいずれか1項記載の脂質膜構造体を含む組成物。
  10. 請求項1から請求項5までのいずれか1項記載の脂質膜構造体を含む組成物の製造方法であって、
    前記成分(a)、前記成分(b)、及び前記成分(c)を加温溶解した後、水と混合撹拌して得ることを特徴とする脂質膜構造体を含む組成物の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2024048047A1 (ja) * 2022-09-01 2024-03-07 長谷川香料株式会社 毛穴改善剤および皮膚改善剤

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