JP2022087950A - ニッケル粒子の表面処理方法およびニッケル粉末の製造方法 - Google Patents

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吉章 松村
Yoshiaki Matsumura
恭子 宮内
Kyoko Miyauchi
文彦 松村
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Abstract

【課題】保管中の酸化による粗大粒子の発生が抑制されるニッケル粒子の表面処理方法およびニッケル粉末の製造方法を提供する。【解決手段】水溶性ニッケル塩を還元させて晶析したニッケル粒子を含む還元反応溶液と、窒素を含有するルイス塩基とを混合する混合工程を含む、ニッケル粒子の表面処理方法。【選択図】図2

Description

本発明は、ニッケル粒子の表面処理方法およびニッケル粉末の製造方法に関する。
ニッケル粒子は、厚膜導電体を作製するための導電ペーストの材料として使用され、電気回路の形成や、積層セラミックコンデンサ(multilayer ceramic capacitors;MLCC)および多層セラミック基板等の積層セラミック部品の電極等に用いられている。
この電極が使用される積層セラミックコンデンサは、例えば、金属粉末にニッケル粒子を用いた場合は、次のような方法で製造される。
まず、ニッケル粒子と、エチルセルロース等の樹脂と、ターピネオール等の有機溶剤等とを混練して得られた導電ペーストを、厚さ10μm以下の誘電体グリーンシート(セラミックグリーンシート)上にスクリーン印刷し、その後乾燥して内部電極用のニッケル塗膜を作製する。
次に、印刷された内部電極用のニッケル塗膜と誘電体グリーンシートが交互に重なるように積層し、圧着して積層体を作製する。
作製した積層体を所定の大きさにカットし、有機バインダとして使用したエチルセルロース等の樹脂の燃焼除去を行うための脱バインダ処理を行った後、1300℃程度の高温焼成による誘電体、および内部電極(ニッケル膜)の焼結を進め、誘電体層と内部電極層が互いに積層したセラミック体を得る。そして、このセラミック体に外部電極を取り付け、積層セラミックコンデンサとする。
なお、上記積層体の脱バインダ処理は、ニッケル粒子が酸化しないように、極めて微量の酸素を含んだ雰囲気下にて行われる。
一般に、MLCCの内部電極に使用されるニッケルペーストは、ビヒクル中にニッケル粉末を混練して製造され、多くのニッケル粉末の凝集体を含んでいる。ニッケル粉末の製造プロセスでは、その最終段階に、ニッケル粉末の製造方法(気相法、液相法)を問わずに乾燥工程を有するのが通常である。この乾燥工程における乾燥処理がニッケル粒子の凝集を促すことから、得られるニッケル粉末には乾燥時に生じた凝集体が粗大粒子となって含まれていることが一般的である。
近年のMLCCは、小型で大容量化を達成させるために、内部電極層を伴ったセラミックグリーンシートの積層数を、数百層から1000層程度にまで増加させることが要求されている。このため、内部電極層の厚みを従来の数ミクロンレベルからサブミクロンレベルに薄層化する検討がなされており、それに伴い、内部電極用の電極材料のニッケル粉末の小粒径化が進められている。
しかしながら、小粒径になるほどニッケル粉末の表面積は大きくなり、それに伴い表面エネルギーが大きくなって、凝集体を形成し易くなる。また、ニッケル粉末等の金属粉末は、分散性が悪く、凝集体が存在するようになると、MLCC製造時における焼成工程でニッケル粉末が焼結する際にセラミックシート層を突き抜けてしまい、電極が短絡した不良品が発生するおそれがある。また、たとえセラミックシート層を突き抜けない場合であっても、MLCCにおける電極間距離が短くなることで部分的な電流集中が発生する場合があり、この電流集中が積層セラミックコンデンサの寿命劣化の原因となっていた。このように、MLCCにおいては、凝集体を含めた粗大粒子が少ないニッケルペーストを製造し、表面に凹凸がなく平滑な内部電極を得ることが重要となっている。また、ニッケル粒子の凝集体の存在により、製品不良を引き起こす可能性が懸念されていることから、凝集体が発生しないようニッケル粒子の表面状態の改善が望まれている。
特許文献1には、ニッケル粒子の表面の酸化処理についての技術が開示されており、液相法で作製したニッケル粉末を純水に添加してスラリー化してから、過酸化水素で酸化することの技術事項が開示されている。しかし、過酸化水素による表面酸化処理では、酸化処理を均一に制御することが難しい場合がある。
特開平11-343501号公報
ニッケル粉末は、保管しておくと経時にて空気中の酸素により酸化されて表面に水酸化ニッケルを形成する場合がある。ニッケル粒子の粗大粒子は、表面の水酸化ニッケルによって隣接するニッケル粒子同士が強固に固められることによって発生する場合がある。そのため、特にMLCCに用いるニッケル粉末は、保管中の酸化による粗大粒子の発生によって不具合が生じないよう、ニッケル粉末の保管中の酸化を抑制することが重要となる。
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、保管中の酸化による粗大粒子の発生が抑制されるニッケル粒子の表面処理方法およびニッケル粉末の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上述した課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、水溶性ニッケル塩を還元させて晶析したニッケル粒子を、その表面が空気中の酸素と反応して表面が酸化しないように、一度も乾燥させずにルイス塩基化合物によりその表面を被覆することで、乾燥後の粉体状態におけるニッケル粒子の凝集を抑制でき、その結果として粗大粒子の発生を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
上記課題を解決するために、本発明のニッケル粒子の表面処理方法は、水溶性ニッケル塩を還元させて晶析したニッケル粒子を含む還元反応溶液と、窒素を含有するルイス塩基とを混合する混合工程を含む。
前記混合工程により、前記ルイス塩基が前記ニッケル粒子の表面に配位結合してもよい。
前記ルイス塩基が、下記式(1)で表される化合物を含んでもよい。
Figure 2022087950000002
式(1)中、Rは炭素数が1~18のアルキル基または炭素数が1~18のアルケニル基を示し、Rは炭素数が1~6のアルキレン基を示し、RおよびR4はHもしくはCHを示す。
前記ルイス塩基が、N-オレオイルサルコシン、N-ラウロイルサルコシン、およびミリストイルメチル-β-アラニンから選択された1種類以上を含んでもよい。
また、上記課題を解決するために、本発明のニッケル粉末の製造方法は、還元反応溶液中で水溶性ニッケル塩を還元させてニッケル粒子を晶析させる晶析工程と、前記晶析工程後のニッケル粒子を含む還元反応溶液と、窒素を含有するルイス塩基とを混合する混合工程と、を含む。
前記混合工程後、表面処理されたニッケル粒子を乾燥させる乾燥工程を含んでもよい。
本発明によれば、保管中の酸化による粗大粒子の発生が抑制されるニッケル粒子の表面処理方法およびニッケル粉末の製造方法を提供することができる。
本発明のニッケル粒子の表面処理方法とニッケル粉末の製造方法とを一連の工程として示したフロー図である。 実施例1および比較例1のニッケル粒子のSEM写真である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、本発明のニッケル粒子の表面処理方法とニッケル粉末の製造方法とを一連の工程として示したフロー図である。ただし、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
[ニッケル粉末の製造方法]
本発明のニッケル粉末の製造方法によって、ニッケル塩溶液に対してヒドラジン等の還元剤を用いた湿式還元法等のいわゆる湿式法により、ニッケル粉末を得ることができる。本発明のニッケル粉末の製造方法は、その一例として以下に説明する晶析工程と、混合工程とを含む。また、ニッケル塩水溶液調整工程、洗浄・ろ過工程および乾燥工程を含んでもよい。
<1:ニッケル塩水溶液調整工程>
ニッケル塩水溶液は、塩化ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル等のニッケル塩化合物を溶解させた水溶液から適宜選んで用いることができる。少なからず合成されたニッケル粉末には、選ばれたニッケル塩の陰イオンに起因する元素が残留する場合があるため、残留しても性能に影響しない元素を考慮してニッケル塩を選べばよい。例えば、塩化ニッケルの塩素イオンは、ニッケル粉末の内部に取り込まれにくく、洗浄によって除去しやすいので、ニッケル塩としては塩化ニッケルが好ましい。また、湿式還元後の廃液の処理の容易性の観点からも、塩化ニッケルが好ましい。
塩化ニッケルを選択した場合、その塩化ニッケル水溶液の濃度は、含まれるニッケルの濃度が50~200g/リットルの範囲に調整されるような濃度が望ましい。このニッケルの濃度が低すぎると、相対的に大型の設備が必要となることや廃液量が増えるので効率的ではない。一方で、濃度が高すぎると、還元反応の制御が難しくなり、所望の粒子径のニッケル粒子を得ることが困難となるおそれがある。また、他のニッケル塩を用いる場合も、同理由によりニッケルの濃度が50~200g/リットルの範囲となるように調整することが好ましい。
ニッケル塩水溶液の調整は、例えば純水等に所定量のニッケル塩を溶解させることで可能である。また、ニッケル塩水溶液の調整は自ら実施してもよく、調整されたニッケル塩水溶液を購入等により入手してもよい。
<2:晶析工程>
晶析工程では、還元反応溶液中で水溶性ニッケル塩を還元させてニッケル粒子を晶析させる。例えば、ニッケル塩水溶液に粒径制御剤を添加した後、還元剤を添加した還元反応溶液中で、水溶性ニッケル塩を還元させる還元処理が行われる。
ニッケル粉末の粒径制御剤となる金属は、ニッケルよりもイオン化傾向が小さい銅、パラジウム、プラチナ、ロジウム等から選べばよく、ニッケルと固溶するパラジウムや銅が望ましい。粒径制御剤となる金属は、ニッケル塩からニッケル粉末が合成される際の核として作用し、核数を制御することでニッケル粉末の粒径を制御することができる。ニッケルと固溶しない元素であっても、核として作用する金属と固溶できるのであれば、核を微細化し、一つのニッケル粒子に含まれるニッケル以外の金属含有量を減らすことができ、ニッケル粉末の高純度化が可能となるため、添加することが望ましい。
ニッケルと固溶する元素の添加量は、全ニッケル量に対して500質量ppmよりも多く添加してもニッケル粉末は微細化できないので、500質量ppm以下であれば良い。銅やパラジウムといった核となる元素と固溶する元素は、全ニッケル量に対して50質量ppm以下であれば良い。それ以上添加しても核を微細化して、ニッケル粉末を微細化する効果は得られない。
核となる金属の微粒子は、凝集していると実質的に核として作用する核数が少なくなり、一つのニッケル粉末の粒子に含まれる量が多くなることによってニッケル粉末の純度が下がり、更にはニッケル粉末の平均粒径が大きくなってしまうため、単分散であることが望ましい。
核となる金属の微粒子の凝集を抑制し単分散を保持するためには、保護コロイド作用を有する分子が還元反応溶液中に添加されていることが望ましい。保護コロイド作用を有する材料としては、ゼラチンやポリビニルピロリドンといった高分子材料や界面活性剤が適している。この材料を添加する量は、ニッケルに対して0.0025~0.5質量%以下であることが望ましい。添加量が多すぎるとニッケルイオンの還元を阻害してしまうことがあり、添加量が少なすぎると所望の保護コロイド効果が得られない場合があるためである。
さらに、晶析工程でのニッケル塩水溶液には、ニッケルイオンと錯形成する錯化剤を添加することは有益である。錯化剤は、ニッケル錯体が形成できればよく、アミノ基、カルボキシル基、スルホ基、ヒドロキシル基、アルキル基等を有した化合物が適している。錯化剤の添加でニッケルが錯イオンを形成すると、晶析工程を経て得られるニッケル粉末の形状が球状となりやすくなる。
<3:混合工程>
混合工程では、晶析工程後のニッケル粒子を含む還元反応溶液と、窒素を含有するルイス塩基とを混合する。混合工程においてニッケル粒子の表面処理に使用する化合物として、窒素を含有するルイス塩基を使用することで、窒素を含有するルイス塩基の孤立電子対がニッケル粒子の表面に電子を与え配位結合した構造をとることが考えられる。窒素を含有するルイス塩基化合物は、ニッケル粒子の表面に効率的に吸着し、配位結合することが可能であり、ニッケル粒子の凝集による粗大粒子の発生を抑制することができる。
ルイス塩基でニッケル粉末を表面処理する方法としては、例えば析出したニッケル粒子を含む還元反応溶液と、窒素を含有するルイス塩基化合物を含む水又はアルコールを媒体としたルイス塩基溶液とを湿式混合させる方法が挙げられる。即ち、晶析工程によって得られたニッケル粒子を含む還元反応溶液と、窒素を含有するルイス塩基化合物の水もしくはアルコール溶液を混合してスラリー化することにより、ニッケル粉末の粒子表面にルイス塩基を均一に吸着させる。
具体的には、ニッケル粒子を含む還元反応溶液を撹拌し、その中へ水溶性有機溶媒に溶解させた窒素を含有するルイス塩基化合物を添加し、撹拌を行う。この時、有機溶媒はアルコール等の有機溶媒を用いれば良く、攪拌中の表面処理温度は20~50℃で行うことが好ましい。処理温度が20℃よりも低いとニッケル粒子への窒素を含有するルイス塩基化合物の付着速度が低下し、撹拌時間が長くかかるおそれがある。また、処理温度が50℃より高いと水溶性有機溶媒の揮発が促進され、表面処理が困難となることがある。
さらに、撹拌時間は0.5~24時間にすることが好ましい。撹拌時間が0.5時間未満であると、ニッケル粒子へ窒素を含有するルイス塩基化合物の付着量が少なくなるおそれがある。また、撹拌時間を24時間より長くしても、窒素を含有するルイス塩基化合物の付着量はほとんど増加せず、また、処理時間が長くなれば、その分ニッケル粉末の製造時間も長くなって、製造コストが高くなる可能性がある。
〈窒素を含有するルイス塩基〉
表面処理に使用する化合物としては、窒素を含有するルイス塩基化合物を使用する。本発明によるニッケル粉末の製造方法によって、窒素を含有するルイス塩基の孤立電子対がニッケル粒子の表面に電子を与え配位結合した構造をとることが考えられる。窒素を含有するルイス塩基化合物は、ニッケル粒子の表面に効率的に吸着し、配位結合することが可能であり、ニッケル粒子の凝集による粗大粒子の発生を抑制することができる。
この窒素を含有するルイス塩基化合物の添加量としては、表面処理前のニッケル粒子100質量%に対して0.16質量%以上3.0質量%以下の範囲であることが好ましい。窒素を含有するルイス塩基化合物の含有量がニッケル粒子100質量%に対して0.16質量%以上であることにより、ニッケル粒子に対する吸着量を高めることができ、結果としてニッケル微粒子の分散性をより高めることができる。一方で、窒素を含有するルイス塩基化合物の含有量が3.0質量%以下であることにより、窒素を含有するルイス塩基化合物の量の増加に伴うニッケルペーストの粘度の変化を防止することができる。
窒素を含有するルイス塩基としては、例えば下記式(1)で表される化合物を含むものが挙げられる。
Figure 2022087950000003
式(1)中、Rは炭素数が1~18のアルキル基または炭素数が1~18のアルケニル基を示し、Rは炭素数が1~6のアルキレン基を示し、RおよびRはHもしくはCHを示す。
特に、ニッケル粒子をスラリー化できる溶媒に溶解可能なルイス塩基として、N-オレオイルサルコシン、N-ラウロイルサルコシン、およびミリストイルメチル-β-アラニンから選択された1種類以上をルイス塩基として用いることができる。下記一般式(2)~(4)に、N-オレオイルサルコシン、N-ラウロイルサルコシン、およびミリストイルメチル-β-アラニンの構造を示す。
Figure 2022087950000004
Figure 2022087950000005
Figure 2022087950000006
(溶剤)
表面処理対象となるニッケル粒子を分散してスラリー化させるための溶剤、および窒素を含有するルイス塩基を溶解させる溶剤としては、ニッケル粒子を分散させることができ、前記ルイス塩基が溶解可能なものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、ジヒドロターピネオールアセテート、イソボルニルプロピオナート、イソボルニルイソブチレート、ミネラルスピリット、0号ソルベント、ブチルカルビトール、酢酸イソブチル、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、ヘキサン、エタノール、ノナン、ノナノール、デカノール等が挙げられる。さらには、C2n+2、C2n、C2n-2で示される脂肪族炭化水素、C2n-6で示される芳香族炭化水素等を用いることもでき、具体的には、ジメチルオクタン、エチルメチルシクロヘキサン、メチルプロピルシクロヘプタン、トリメチルヘキサン、ブチルシクロヘキサン、トリデカン、テトラデカン、メチルノナン、エチルメチルヘプタン、トリメチルデカン、ペンチルシクロヘキサン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トルエン等が挙げられる。これらの有機溶剤は、1種単独で、あるいは2種以上を併せて用いることができる。
<4:洗浄・ろ過工程>
本発明のニッケル粉末の製造方法では、乾燥工程の前に、洗浄・ろ過工程を行ってもよい。具体的には、上記したニッケル粒子の表面処理方法を実施した後は、ルイス塩基により表面処理されたニッケル粒子が分散したスラリーが得られるため、まず、このスラリーを、吸引ろ過器を用いて減圧ろ過する。そして、ろ過によってろ紙に残ったニッケル粒子を上記の溶剤と混合し、周速2~5m/秒の条件で0.5~3時間撹拌して洗浄する。この洗浄作業とろ過作業を繰り返して、未反応のルイス塩基や不純物をニッケル粒子から除去することができる。さらに、得られたろ液の赤外分光分析を行い、未反応のルイス塩基が検出されないことを確認し、洗浄作業を終了することが出来る。
なお、ニッケル粒子のろ過には、汎用の固液分離装置を用いることができ、具体的には、デンバーろ過器、フィルタープレス、遠心分離機、デカンター等が挙げられるがこれらに限定されない。また、洗浄作業後に、更にスプレードライヤー等を用いて、ニッケル粒子から溶剤を飛ばして除去してもよい。
<5:乾燥工程>
本発明のニッケル粉末の製造方法では、混合工程後、表面処理されたニッケル粒子を乾燥させる乾燥工程を含んでもよい。例えば、洗浄・ろ過工程の次に乾燥工程を行うことができる。
例えば、ニッケルが酸化ないよう、不活性ガス雰囲気乾燥機および真空乾燥機等の汎用の乾燥装置を用いて50~300℃、好ましくは、80~150℃で乾燥し、ニッケル粉末を得ることができる。また、必要に応じてニッケル粉末をメッシュパスさせてもよい。
なお、必要に応じて、洗浄・ろ過工程を行ってニッケル粉末含水ケーキとし、さらにこのケーキ中の付着水をエタノール等の低温揮発性の有機溶剤に置換した後、上記不活性ガス雰囲気乾燥機や真空乾燥機で乾燥して、水の大きな表面張力に起因して乾燥中に生じるニッケル粒子間の乾燥凝集を弱めることも可能である。
[ニッケル粒子の表面処理方法]
次に、本発明のニッケル粒子の表面処理方法の一例について説明する。本方法は、水溶性ニッケル塩を還元させて晶析したニッケル粒子を含む還元反応溶液と、窒素を含有するルイス塩基とを混合する混合工程を含む。
例えば、先述のニッケル粉末の製造方法における晶析工程を実施して水溶性ニッケル塩を還元させて晶析したニッケル粒子を含む還元反応溶液を得てもよく、また、購入する等により当該還元反応溶液を得てもよい。
そして、混合工程は先述のニッケル粉末の製造方法における混合工程と同様の工程であり、この工程により、ルイス塩基がニッケル粒子の表面に配位結合すると考えられる。
また、ルイス塩基が、先述のニッケル粉末の製造方法と同様に、上記式(1)で表される化合物を含んでもよく、式(1)中、Rは炭素数が1~18のアルキル基または炭素数が1~18のアルケニル基を示し、Rは炭素数が1~6のアルキレン基を示し、RおよびR4はHもしくはCHを示す。
ルイス塩基が、先述のニッケル粉末の製造方法と同様に、N-オレオイルサルコシン、N-ラウロイルサルコシン、およびミリストイルメチル-β-アラニンから選択された1種類以上を含んでもよい。
[ルイス塩基含有ニッケル粉末]
上記した本発明のニッケル粉末の製造方法またはニッケル粒子の表面処理方法によって、ルイス塩基含有ニッケル粉末を得ることができる。
本発明のルイス塩基含有ニッケル粒子は、窒素を含有するルイス塩基がニッケル粒子の表面に存在しており、ルイス塩基とニッケル粒子との質量比が、0.16~3.0:100であることが好ましい。かかる質量比が0.16未満:100の場合、ニッケル粒子の表面に酸化し得る領域が残って経時にて水酸化ニッケルが生成し、粗大粒子が発生するおそれがある。また、かかる質量比が3.0:100を超えてルイス塩基を存在させることは難しく、3.0:100の質量比がルイス塩基の存在量の上限と考えられる。
窒素を含有するルイス塩基の孤立電子対がニッケル粒子の表面に電子を与え配位結合した構造をとることにより、ルイス塩基がニッケル粒子の表面に配位結合すると考えられる。窒素を含有するルイス塩基化合物は、ニッケル粒子の表面に効率的に吸着し、配位結合することが可能であり、ニッケル粒子の凝集による粗大粒子の発生を抑制することができる。
ルイス塩基含有ニッケル粒子は、近年の積層セラミックコンデンサの内部電極の薄層化に対応するという観点から、数平均粒径が0.03μm~0.4μmであることが好ましい。なお、数平均粒径は、ニッケル粒子の走査電子顕微鏡写真(SEM像)から求めた数平均の粒径である。
また、同様に薄層化に対応するという観点から、粒子形状が略球状であることが好ましく、略球状の形状には、真球のみならず、所定の断面(例えば粒子の中心を通る断面)において短径と長径との比(短径/長径)が0.8~1.0となる楕円形状となる楕円体等も含む。
また、本発明のルイス塩基含有ニッケル粒子は、粒径が0.8μmを超える粒子の含有量が200質量ppm以下であり、粒径が1.2μmを超える粒子の含有量が100質量ppm以下であることが好ましい。
ニッケル粒子の粗大粒子の影響は、ニッケル粒子が用いられる積層セラミックコンデンサの内部電極層の膜厚により左右されるが、近年の薄層化された内部電極層では、粒径が0.8μmを超える粗大粒子の含有量が400質量ppmを超えたり、粒径が1.2μmを超える粗大粒子の含有量が200質量ppmを超えると、電極間ショートの発生が顕著となることがある。ニッケル粒子において、粗大粒子の含有量が少ないほど良好であるのは言うまでもなく、粒径が0.8μmを超える粗大粒子の含有量を200質量ppm以下とし、粒径が1.2μmを超える粗大粒子の含有量が100質量ppm以下とすれば、電極間ショートの発生率を十分に低減することができる。なお、粗大粒子の粒径は、SEM像から求めた短軸径とすればよい。
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
[実施例1]
ニッケルを還元するためのアルカリ性コロイド溶液の作製は、具体的には、次のように行った。まず、純水6Lに0.12gのゼラチンを溶解させた後、ヒドラジンの濃度が0.02g/Lとなるようにヒドラジンを混合した。次に、パラジウム含有率100g/Lのテトラアンミンパラジウム(II)ジクロライド溶液10mgと、銀含有率50g/Lのジアンミン銀(I)クロライド溶液0.5mgとの混合溶液を作製した。そして、この混合溶液2mlをゼラチンとヒドラジンが含まれる前記溶液に滴下して、コロイド溶液を得た。
このコロイド溶液に、水酸化ナトリウムを添加し、pHを10以上とした後、さらに、ヒドラジンの濃度が26g/Lとなるまでヒドラジンを添加して、パラジウムと微量の銀からなる複合コロイド粒子が混合されたアルカリ性ヒドラジン溶液を作製し、ニッケルを還元するためのアルカリ性コロイド溶液とした。
そして、このアルカリ性コロイド溶液に、ニッケル塩水溶液としてニッケル濃度が100g/Lの塩化ニッケル水溶液を0.5L滴下して、ニッケルの還元を行い、ニッケル粉末を得た。
<ニッケル粒子の表面処理>
析出したニッケル粒子10gを含む還元反応溶液約100gに、ジヒドロターピネオール10gにN-オレオイルサルコシン0.05gを溶解させた溶液を加え、スリーワンモータにより300rpmで1時間撹拌し、室温25℃で3時間撹拌し、ニッケル粒子スラリーとした。このスラリーを濾過により固液分離し、窒素雰囲気下120℃で乾燥処理、目的とするニッケル粒子を得た。
[実施例2]
析出したニッケル粒子10gを含む還元反応溶液約100gに、ジヒドロターピネオール10gにラウロイルサルコシン0.05gを溶解させた溶液を加え、スリーワンモータにより300rpmで1時間撹拌し、室温25℃で3時間撹拌し、ニッケル粒子スラリーとした。このスラリーを濾過により固液分離し、窒素雰囲気下120℃で乾燥処理、目的とするニッケル粒子を得た。その他の条件や手順は、実施例1と同様とした。
[実施例3]
析出したニッケル粒子10gを含む還元反応溶液約100gに、ジヒドロターピネオール10gにミリストイルメチル-β-アラニン0.055gを溶解させた溶液を加え、スリーワンモータにより300rpmで1時間撹拌し、室温25℃で3時間撹拌し、ニッケル粒子スラリーとした。このスラリーを濾過により固液分離し、窒素雰囲気下120℃で乾燥処理、目的とするニッケル粒子を得た。その他の条件や手順は、実施例1と同様とした。
(比較例1)
N-オレオイルサルコシンのジヒドロターピネオール溶液を混合する工程を除き、実施例1と同様の条件とした。すなわち、ルイス塩基による表面処理を実施せずにニッケル粒子を製造した。
[ニッケル粒子の評価]
〈ニッケル粒子表面の炭素量の評価〉
炭素量は、炭素・硫黄分析装置(LECO社製CS844)により測定した。
<ニッケル粒子表面処理状態の解析>
吸引ろ過により固液分離後のジヒドロターピネオールおよび、ニッケル粒子を洗浄後のジヒドロターピネオールを回収し、これらを分析のための濃度調製のためにメタノールで希釈し、液体クロマトグラフィー質量分析装置(アジレント社製1290 infinity2-アジレント社製6530))により、表面処理に消費されなかったルイス塩基の含有量を定量化した。この値を用いて、以下に示す式(5)、(6)から表面処理後のニッケル粒子に含まれるルイス塩基含有量を算出した。
[数1]
表面処理後のNi粒子に含まれるルイス塩基量
=(使用したルイス塩基全量-表面処理に消費されなかったルイス塩基量) ・・・(5)
[数2]
表面処理後のNi粒子に含まれるルイス塩基含有量(質量%)
=(表面処理後のNi粒子に含まれるルイス塩基量/表面処理後のNi粒子量)×100 ・・・(6)
〈平均粒径の測定〉
ニッケル粒子の平均粒径は、ニッケル粉末の走査電子顕微鏡(SEM、JSM-6360、日本電子製)を用いた観察像(SEM像)の画像解析の結果から求めた粒径を測定し、数平均の粒径として算出した。
〈粗大粒子の含有量の測定〉
表面処理操作後のニッケル粉末を、100mlハイベッセル容器(近畿容器株式会社製BHB-100)に入れ、常温で大気雰囲気下1日放置後の実施例1~3、比較例1のニッケル粒子について、走査型電子顕微鏡(SEM、JSM-6360、日本電子製)を用い、倍率5000倍のSEM像の写真を得た。そして、画像解析ソフトMac-View(株式会社マウンテック製)を用いて、得られたSEM像の写真内の粒子形状の全様が見える粒子の面積と個数を計測し、これらから各粒子の直径を求め、直径が0.8μm以上、および1.2μm以上のものを粗大粒子としてカウントした。そして、ニッケル粉末中に含まれる粗大粒子の含有量(粒径0.8μmを超える場合、および、粒径1.2μmを超える場合)を、初期値として求めた。
また、SEM像を撮影後、実施例1~2、比較例1のニッケル粒子を常温で大気雰囲気下において、180日間放置した後、同様に粗大粒子の含有量を測定した。180日放置後の粗大粒子の含有量の結果を、表1に示す。
ニッケル粒子表面の炭素量、平均粒径および粗大粒子の含有量についての結果を、表1に示す。また、図2に、実施例1、比較例1における初期および180日放置後のニッケル粒子のSEM写真を示す。
Figure 2022087950000007
実施例1~3、および比較例1の結果より、表面処理によってニッケル粒子の平均粒径は大幅に変化せず、粗大粒子の増加も認められなかった(表1、図2)。また、表面処理によって大気雰囲気下で180日後の粗大粒子の増加を抑制できた。
ただし、比較例1のニッケル粒子の結果より、ルイス塩基による表面処理をしなかった場合には、大気雰囲気下で180日後の粗大粒子の増加が認められた。
また、図2の比較例1の180日後のSEM画像では、中央部において複数の粒子が潰れて癒着したように見える色の濃い塊となった領域が認められた。この領域が酸化による粗大粒子1個とカウントすることができる。
[まとめ]
以上のとおり、本発明のニッケル粒子の表面処理方法およびニッケル粉末の製造方法であれば、窒素を含有するルイス塩基によってニッケル粒子を表面処理することにより、保管中の酸化による粗大粒子の発生を抑制できることは、明らかである。

Claims (6)

  1. 水溶性ニッケル塩を還元させて晶析したニッケル粒子を含む還元反応溶液と、窒素を含有するルイス塩基とを混合する混合工程を含む、ニッケル粒子の表面処理方法。
  2. 前記混合工程により、前記ルイス塩基が前記ニッケル粒子の表面に配位結合する、請求項1に記載のニッケル粒子の表面処理方法。
  3. 前記ルイス塩基が、下記式(1)で表される化合物を含む、請求項1または2に記載のニッケル粒子の表面処理方法。
    Figure 2022087950000008
    (式(1)中、Rは炭素数が1~18のアルキル基または炭素数が1~18のアルケニル基を示し、Rは炭素数が1~6のアルキレン基を示し、RおよびR4はHもしくはCHを示す)
  4. 前記ルイス塩基が、N-オレオイルサルコシン、N-ラウロイルサルコシン、およびミリストイルメチル-β-アラニンから選択された1種類以上を含む、請求項1~3のいずれかに記載のニッケル粒子の表面処理方法。
  5. 還元反応溶液中で水溶性ニッケル塩を還元させてニッケル粒子を晶析させる晶析工程と、
    前記晶析工程後のニッケル粒子を含む還元反応溶液と、窒素を含有するルイス塩基とを混合する混合工程と、
    を含む、ニッケル粉末の製造方法。
  6. 前記混合工程後、表面処理されたニッケル粒子を乾燥させる乾燥工程を含む、請求項5に記載のニッケル粉末の製造方法。
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