JP2022083786A - ポリイミド前駆体、ポリイミド、ポリイミドフィルム及びそれを用いた表示装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】透明性、耐熱性と厚み方向の低Rth特性と機械的特性を兼ね備え、高温加熱しても変色は少なく安定な、フレキシブルディスプレイに適用可能なポリイミドの提供。【解決手段】テトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位A及びジアミンに由来する構造単位Bを有するポリイミド前駆体であって、単位Aの20~99mol%が式A1であり、1~80mol%が結合解離エネルギーが80kcal/mol以上の単位A2であり、単位Bの20~80mol%が式B1であるポリイミド前駆体である。TIFF2022083786000025.tif30161TIFF2022083786000026.tif30161【選択図】なし
Description
本発明は、高透明性、高耐熱性、低リタデーション、リフトオフ特性を併せ持ち、かつ、フィルムまたは表示装置の製造において、高温の工程でも変色やフィルムの膨れが少ない、フィルム材料または表示装置用基板材料として有用なポリイミド前駆体、ポリイミド、ポリイミドフィルムおよびそれを用いた表示装置に関する。
液晶表示装置、有機EL装置等、タッチパネル等の表示装置は、テレビのような大型ディスプレイや、携帯電話、パソコン、スマートフォンなどの小型ディスプレイをはじめ、各種のディスプレイの構成部材として使用される。
例えば、有機EL装置は、一般に支持基材であるガラス基板上に薄膜トランジスタ(TFT)を形成し、更にその上に電極、発光層及び電極を順次形成し、これらをガラス基板や多層薄膜等で気密封止して作られる。また、タッチパネルは、第1の電極が形成された第1のガラス基板と、第2の電極が形成された第2のガラス基板とを絶縁層(誘電層)を介して接合した構成となっている。
例えば、有機EL装置は、一般に支持基材であるガラス基板上に薄膜トランジスタ(TFT)を形成し、更にその上に電極、発光層及び電極を順次形成し、これらをガラス基板や多層薄膜等で気密封止して作られる。また、タッチパネルは、第1の電極が形成された第1のガラス基板と、第2の電極が形成された第2のガラス基板とを絶縁層(誘電層)を介して接合した構成となっている。
つまり、これらの構成部材は、ガラス基板上にTFT、電極、発光層等、各種の機能層を形成した積層体である。このガラス基板を樹脂基板へと置き換えることにより、従来のガラス基板を用いた構成部材を、薄型化・軽量化・フレキシブル化することができる。これを利用して、フレキシブルディスプレイ等のフレキシブルデバイスを得ることが期待される。一方、樹脂はガラスと比較して寸法安定性、透明性、耐熱性、耐湿性、フィルムの強さ等が劣るため、種々の検討がなされている。
こうした樹脂基板材料として、ポリイミドは、耐熱性や寸法安定性に優れることから有望な材料の一つである。特に、ポリイミド構造中にフッ素原子を有するポリイミド(含フッ素ポリイミド)や脂環構造を有するポリイミド(脂環ポリイミド)は、透明性に優れており、有機EL装置用基板、タッチパネル基板、カラーフィルター基板等の、透明性を必要とするフレキシブルデバイスへの適用が期待されている。
フレキシブルデバイス向け透明ポリイミド基板は、ガラス基板を支持基材とし、この支持基材上に透明ポリイミドフィルムを形成し、次いで透明ポリイミドフィルム上に電子部品を実装後、支持基材を剥離することで得られる。含フッ素ポリイミドは、ガラス基板との剥離性に優れるため、透明ポリイミド基板への適用が特に期待される。
例えば特許文献1では、含フッ素モノマーを用いて低熱膨張かつ透明性の高いポリイミドが提案されている。しかし、ポリイミドフィルムの厚み方向のリタデーション(Rth)について開示がない。例えば、ボトムエミッション方式の有機EL表示装置用基板においては、外光反射抑制、フレキシブル液晶の表示装置用基板においては、屈曲時のコントラスト制御という理由から、Rthの制御は重要である。そのため、Rthを制御されていないポリイミドフィルムを上記基板に適用する際に、上記のような光学特性に不具合が発生することが懸念される。
特許文献2ではモノマーとして、特定の脂環構造を有するテトラカルボン酸二無水物又は含フッ素テトラカルボン酸二無水物とフルオレン誘導体構造を有するジアミンを用いたポリイミドが提案されているが、これらの脂環構造を有するテトラカルボン酸二無水物や含フッ素テトラカルボン酸二無水物は耐熱性に懸念がある構造のため、高温にさらされる表示装置の製造工程において、光学特性が悪化する懸念がある。
特許文献3ではジアミンと酸無水物の両方にカルド構造と呼称されるフルオレン誘導体構造を含んだジアミンモノマーを適用することで耐熱性と低Rthを両立したポリイミドが提案されている。しかし、提案された構造は機械的な強度を損なうため、フレキシブルディスプレイ等に適用した際にポリイミド層のクラック等の不良が発生する懸念がある。
特許文献4では酸無水物側にフッ素を含む構造とジアミン側にフッ素にて置換されたフルオレン誘導構造を含んだジアミンものモノマーを適用することで、黄色度と複屈折を下げる提案がされている。しかし、特許文献4に記載されたポリイミドフィルムは、耐熱性の低い含フッ素テトラカルボン酸二無水物を主成分としており、は耐熱性に懸念がある構造のため、高温にさらされる表示装置の製造工程において、光学特性が悪化する懸念がある。また、ガラス転移温度や熱分解温度に関する記載に乏しく、耐熱性に懸念がある。
したがって、本発明の目的は、従来の技術では困難であった、透明性に優れ、高い耐熱性を有し、厚み方向の低リタデーション特性を有し、フレキシブルディスプレイにも適用可能な機械的強度を担保したポリイミド、ポリイミドフィルムおよびそれを用いた表示装置を提供することを目的とする。
そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、エーテル基(結合)を有する特定の酸無水物構造とカルド構造と呼称されるフルオレン誘導体構造を含んだジアミンモノマーを所定の割合で組み合わせることで、上記課題を解決するポリイミドおよびポリイミド前駆体が得られることを見出して、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
〔1〕テトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位A及びジアミンに由来する構造単位Bを有するポリイミド前駆体であって、
構造単位Aの20~99mol%が、下記式A1で表される構造に由来する構造単位A1であり、
[式(A1)において、R1は独立にフッ素原子またはフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~3のアルキル基もしくはアルコキシ基を示し、pおよびqは独立して0~4の整数を示す。]
構造単位Aの1~80mol%が、結合解離エネルギーが80kcal/mol以上で構成された構造単位A2であり、
構造単位Bの20~80mol%が下記式B1で表される構造に由来する構造単位B1であることを特徴する、ポリイミド前駆体。
〔2〕構造単位Aの20~80mol%が上記構造単位A1であり、
構造単位Aの20~80mol%が上記構造単位A2である、請求項1に記載のポリイミド前駆体。
〔3〕前記構造単位A2が以下の構造単位A3~A5のいずれか一種類以上を含む、〔1〕又は〔2〕に記載のポリイミド前駆体。
[式(A5)において、Xは単結合、カルボニル基を示す。]
〔4〕前記構造単位Bの20~80mol%が、下記式B2で表される構造単位B2である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のポリイミド前駆体。
[式(B2)において、R2は独立にフッ素原子またはフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~3のアルキル基もしくはアルコキシ基を示し、tおよびuは独立して0~4の整数を示す。また、構造単位Bは、構造中にフッ素原子を有する。]
〔5〕構造単位Bの30~70mol%が構造単位B1である、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のポリイミド前駆体。
〔6〕 〔1〕~〔5〕のいずれかに記載のポリイミド前駆体を熱処理してなることを特徴とする、ポリイミド。
〔7〕 〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載のポリイミド前駆体を支持体上に塗布して乾燥し、熱処理してなることを特徴とする、ポリイミドフィルム。
〔8〕 〔7〕に記載のポリイミドフィルム上に機能層が積層されてなることを特徴とする、表示装置。
〔9〕テトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位A及びジアミンに由来する構造単位Bを有し、熱機械分析(TMA)法により算出されるガラス転移温度(Tg)が350℃以上であるポリイミドフィルムであって、
構造単位Aの20mol%以上が、下記式A1で表される構造に由来する構造単位A1であり、
[式(A1)において、R1は独立にフッ素原子またはフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~3のアルキル基もしくはアルコキシ基を示し、pおよびqは独立して0~4の整数を示す。]
構造単位Bの20~80mol%が、下記式B1で表される構造に由来する構造単位B1であることを特徴する、ポリイミドフィルム。
〔10〕構造単位Bの20~80mol%が、下記式B2で表される構造単位B2である、〔9〕に記載のポリイミドフィルム。
[式(B2)において、R2は独立にフッ素原子またはフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~3のアルキル基もしくはアルコキシ基を示し、tおよびuは独立して0~4の整数を示す。また、構造単位Bは、構造中にフッ素原子を有する。]
〔11〕下記(a)~(c)の全てを満たす、〔9〕又は〔10〕に記載のポリイミドフィルム。
(a)厚み10μmに換算した厚み方向のリタデーション(Rth10)が200nm未満。
(b)1%熱重量減少温度(TD1)が450℃以上。
(c)厚み10μmに換算した黄色度(YI)が10以下。
〔12〕420℃で30分の加熱によるYIの変化量(ΔYI420)が5以下である、〔9〕~〔11〕のいずれか一項に記載のポリイミドフィルム。
〔13〕 〔9〕~〔12〕のいずれかに記載のポリイミドフィルムに機能層が積層されてなることを特徴とする、表示装置。
〔1〕テトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位A及びジアミンに由来する構造単位Bを有するポリイミド前駆体であって、
構造単位Aの20~99mol%が、下記式A1で表される構造に由来する構造単位A1であり、
構造単位Aの1~80mol%が、結合解離エネルギーが80kcal/mol以上で構成された構造単位A2であり、
構造単位Bの20~80mol%が下記式B1で表される構造に由来する構造単位B1であることを特徴する、ポリイミド前駆体。
構造単位Aの20~80mol%が上記構造単位A2である、請求項1に記載のポリイミド前駆体。
〔3〕前記構造単位A2が以下の構造単位A3~A5のいずれか一種類以上を含む、〔1〕又は〔2〕に記載のポリイミド前駆体。
〔4〕前記構造単位Bの20~80mol%が、下記式B2で表される構造単位B2である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のポリイミド前駆体。
〔5〕構造単位Bの30~70mol%が構造単位B1である、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のポリイミド前駆体。
〔6〕 〔1〕~〔5〕のいずれかに記載のポリイミド前駆体を熱処理してなることを特徴とする、ポリイミド。
〔7〕 〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載のポリイミド前駆体を支持体上に塗布して乾燥し、熱処理してなることを特徴とする、ポリイミドフィルム。
〔8〕 〔7〕に記載のポリイミドフィルム上に機能層が積層されてなることを特徴とする、表示装置。
〔9〕テトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位A及びジアミンに由来する構造単位Bを有し、熱機械分析(TMA)法により算出されるガラス転移温度(Tg)が350℃以上であるポリイミドフィルムであって、
構造単位Aの20mol%以上が、下記式A1で表される構造に由来する構造単位A1であり、
構造単位Bの20~80mol%が、下記式B1で表される構造に由来する構造単位B1であることを特徴する、ポリイミドフィルム。
〔11〕下記(a)~(c)の全てを満たす、〔9〕又は〔10〕に記載のポリイミドフィルム。
(a)厚み10μmに換算した厚み方向のリタデーション(Rth10)が200nm未満。
(b)1%熱重量減少温度(TD1)が450℃以上。
(c)厚み10μmに換算した黄色度(YI)が10以下。
〔12〕420℃で30分の加熱によるYIの変化量(ΔYI420)が5以下である、〔9〕~〔11〕のいずれか一項に記載のポリイミドフィルム。
〔13〕 〔9〕~〔12〕のいずれかに記載のポリイミドフィルムに機能層が積層されてなることを特徴とする、表示装置。
本発明のポリイミド及びポリイミドフィルムは、透明性に優れ、高い耐熱性と厚み方向の低リタデーション特性とを兼ね備える。また、フレキシブルディスプレイに適用可能な機械的特性も兼ね備える。さらに、高温加熱しても、フィルムの変色は少なく、工程中複数層の形成に安定な光学特性を示している。そのため、有機EL装置用基板、タッチパネル基板、カラーフィルター基板等の透明性を必要とするフレキシブルデバイスに好適に使用することができる。例えば、フレキシブルな液晶ディスプレイ(LCD)用途のTFT基板及びカラーフィルター(CF)基板形成工程に好適に使用することができる。さらには、フレキシブルな有機発光ダイオード(OLED)用途のTFT基板形成工程等、極めて高い耐熱性を要求するフレキシブルデバイスに好適に使用することができる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
<ポリイミドフィルム>
本発明のポリイミド及びポリイミドフィルムは、一例として、以下のように製造できる。先ず、テトラカルボン酸二無水物(以下、単に「酸二無水物」ともいう。)とジアミンとを、溶媒の存在下で重合し、ポリイミド前駆体(「ポリアミック酸」ともいう。)のワニスを得る。次いで、このワニスをガラス等の支持基材に塗布し、熱処理を行うことでイミド化してポリイミドを得る。そして、これを基材から剥離することでポリイミドフィルムとして得られる。
本発明のポリイミド及びポリイミドフィルムは、一例として、以下のように製造できる。先ず、テトラカルボン酸二無水物(以下、単に「酸二無水物」ともいう。)とジアミンとを、溶媒の存在下で重合し、ポリイミド前駆体(「ポリアミック酸」ともいう。)のワニスを得る。次いで、このワニスをガラス等の支持基材に塗布し、熱処理を行うことでイミド化してポリイミドを得る。そして、これを基材から剥離することでポリイミドフィルムとして得られる。
支持基材の種類は、イミド化の際の熱処理条件に耐えうる耐熱性を有していれば限定しない。例えば、ガラス、金属箔(銅箔、ステンレス箔等)、ポリイミドフィルム等を用いることができる。
以下に、ポリイミド及びポリイミドフィルムの製造方法の例について、製造工程ごとに詳細に述べる。
以下に、ポリイミド及びポリイミドフィルムの製造方法の例について、製造工程ごとに詳細に述べる。
<ポリイミド前駆体の合成>
先ず、ジアミンを有機溶媒に溶解させた後、その溶液に酸二無水物を加えて、室温で3~96時間程度反応させ、これらのモノマーを重合させて、ポリイミド前駆体のワニス(「ポリアミック酸溶液」ともいう。)を得る。ジアミンまたは酸無水物の添加の際に、これらのモノマーをより早く溶解させるために、30~50℃で2~10時間加熱してもよい。また、反応前または反応中に芳香族モノアミンまたは芳香族ジカルボン酸無水物を添加することで、ポリイミド前駆体の分子末端を、芳香族モノアミン又は芳香族モノカルボン酸無水物で封止してもよい。
先ず、ジアミンを有機溶媒に溶解させた後、その溶液に酸二無水物を加えて、室温で3~96時間程度反応させ、これらのモノマーを重合させて、ポリイミド前駆体のワニス(「ポリアミック酸溶液」ともいう。)を得る。ジアミンまたは酸無水物の添加の際に、これらのモノマーをより早く溶解させるために、30~50℃で2~10時間加熱してもよい。また、反応前または反応中に芳香族モノアミンまたは芳香族ジカルボン酸無水物を添加することで、ポリイミド前駆体の分子末端を、芳香族モノアミン又は芳香族モノカルボン酸無水物で封止してもよい。
有機溶媒としては、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド、n-メチルピロリジノン、2-ブタノン、ジグライム、キシレン、ブチロラクトン、トリエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられ、これらを1種又は2種以上併用して使用することもできる。
ポリイミド前駆体の分子量は、重量平均分子量(Mw)の範囲としては、塗工性と機械的性を両立させる観点から、80,000~800,000の範囲に調整することが好ましい。この範囲を下回ると機械的特性の悪化が懸念され、範囲を超えるとゲル化によって塗工時の異物発生等が懸念される。
反応に使用するジアミンと酸二無水物のモル比は、(ジアミン/酸二無水物)=0.980~1.025の範囲で調整することができる。この範囲であれば、上記Mwの制御がしやすい。また、塗工性、機械的特性に優れる。また、以上の操作を窒素気流下で行ってもよい。
<ポリイミド前駆体ワニスの塗布・熱処理>
得られたポリイミド前駆体のワニスを支持基材に塗布する際、ポリイミド前駆体の濃度やMwの調整により、当該ワニスの粘度は1,000~50,000cps(=cP)の範囲とすることが、塗工性の観点から好ましい。粘度が高い場合は、溶剤を加えて希釈してもよい。
ポリイミド前駆体ワニスの塗工時の厚みムラを抑制する観点から固形分濃度は5~30%が好ましく、7%~20%がより好ましく、さらに好ましくは10~15%である。
得られたポリイミド前駆体のワニスを支持基材に塗布する際、ポリイミド前駆体の濃度やMwの調整により、当該ワニスの粘度は1,000~50,000cps(=cP)の範囲とすることが、塗工性の観点から好ましい。粘度が高い場合は、溶剤を加えて希釈してもよい。
ポリイミド前駆体ワニスの塗工時の厚みムラを抑制する観点から固形分濃度は5~30%が好ましく、7%~20%がより好ましく、さらに好ましくは10~15%である。
また、基材との密着性を高めるために、ポリイミド前駆体ワニスの塗布面となる支持基材の表面に対して適宜表面処理を施した後に、塗布を行ってもよい。
ポリアミック酸溶液の塗布を行った後、支持基材ごと熱処理を行い、ポリアミック酸をイミド化し、支持基材上にポリイミドフィルムが積層されてなるポリイミド-支持基材積層体を形成する。ここで、支持基材がガラスである場合、ポリイミド-ガラス積層体という。
このイミド化の工程における熱処理の条件は、熱処理の最高温度(以下、「イミド化最高温度」という)が300~450℃である。イミド化最高温度の下限は、より好ましくは350℃である。イミド化最高温度の上限は、より好ましくは435℃である。この範囲のイミド化最高温度であれば、優れた透明性を維持したまま、優れた耐熱性・厚み方向の低Rth特性を併せ持ち、TFT基板製造工程等の熱処理においても低YIを維持しつつ、さらに、フレキシブルディスプレイに適用可能な機械的特性を有するポリイミドフィルムを得ることができる。イミド化最高温度が300℃未満の場合、ポリイミドフィルム中に残溶剤が多くのこり、表示装置形成時に残溶剤が放出されることで剥離等の不具合の発生が懸念される。一方、最高温度が450℃を超えると、ポリイミドフィルムの可視光領域の透過率が低下し、黄色度(YI)が上昇する傾向にある。さらに、機械的強度について悪化する傾向にある。
なお、上記最高温度における保持時間は、加熱方式、支持基材の熱容量、ポリイミドフィルムの厚み等によって異なるが、5分~3時間であることが好ましい。5分未満であると、当該温度における熱処理の効果が小さく、3時間を超えると、特にイミド化最高温度が400℃以上とした場合に、過剰な熱がかかり、可視光領域の透過率が低下し、YIが上昇する傾向にある。
なお、上記最高温度における保持時間は、加熱方式、支持基材の熱容量、ポリイミドフィルムの厚み等によって異なるが、5分~3時間であることが好ましい。5分未満であると、当該温度における熱処理の効果が小さく、3時間を超えると、特にイミド化最高温度が400℃以上とした場合に、過剰な熱がかかり、可視光領域の透過率が低下し、YIが上昇する傾向にある。
また、イミド化の際には、空気中、低酸素濃度下、不活性ガス化、減圧下、真空下等、いずれの条件も適用できるが、特にYIを低くするという観点から、酸素濃度が10%以下でイミド化を行うことが好ましい。より好ましくは5%以下であり、さらに好ましくは3%以下である。
なお、イミド化の工程における最高温度以外の条件、例えば昇温速度については、ポリアミド酸溶液に含まれる有機溶媒の性質や量、ポリアミド酸の構造によって適宜調整できる。
なお、イミド化の工程における最高温度以外の条件、例えば昇温速度については、ポリアミド酸溶液に含まれる有機溶媒の性質や量、ポリアミド酸の構造によって適宜調整できる。
また、イミド化に先立ち、ポリアミック酸溶液に含まれる有機溶媒を揮発させるために、例えば、200℃以下で2~60分程度の乾燥を行ってもよい。例えば、支持基材上に、ポリアミック酸溶液を、アプリケーターを用いて塗布し、150℃以下の温度で3~60分予備乾燥した後、溶剤除去、イミド化のために前記の熱処理を行う。
なお、最高温度で再配列された分子構造を安定化させるために、最高温度から室温に降温するときには、徐々に時間をかけて降温させても良い。
なお、最高温度で再配列された分子構造を安定化させるために、最高温度から室温に降温するときには、徐々に時間をかけて降温させても良い。
塗布の方法は、公知の方法を用いることができるが、好ましくはスピンコート法、スリットコータ法である。
また、イミド化の工程における熱処理において、ポリアミド酸溶液に脱水剤及び触媒を加えて反応させることによる、いわゆる「化学イミド化」を行うこともできる。その場合、イミド化最高温度は、脱水剤及び触媒を使用しない熱処理、いわゆる「熱イミド化」と比較して、イミド化最高温度を低くすることができる。すなわち、イミド化最高温度の下限を180℃とすることができる。ここで、脱水剤及び触媒は公知のものを適用できる。脱水剤の例としては、無水酢酸、ピリジン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。また、触媒の例としては、イミダゾール、2-メチルイミダゾール等が挙げられる。ただし、ポリイミドを可溶化させるために、化学構造に制限が発生したり、屈曲構造などTgを低下させる成分添加が必要となる観点から、「熱イミド化」が好ましい。
また、イミド化の工程における熱処理において、ポリイミド前駆体のワニスを支持基材に塗布し、支持基材ごと200℃以下で2~60分程度の乾燥を行ったのち、得られたポリイミド前駆体の乾燥フィルムを支持基材から剥離して、当該ポリイミド前駆体の乾燥フィルムをSUS枠等に固定して、前記イミド化の工程における熱処理を行ってもよい。ただし、基材に固定して行う場合は体積収縮による疑似延伸効果によって面内等方性を発現しつつ、低CTE化させることができる観点から、ポリアミック酸溶液の塗布を行った後、支持基材ごと熱処理を行い、ポリアミック酸をイミド化することが好ましい。
また、イミド化の工程における熱処理において、ポリイミド前駆体のワニスを支持基材に塗布し、支持基材ごと200℃以下で2~60分程度の乾燥を行ったのち、得られたポリイミド前駆体の乾燥フィルムを支持基材から剥離して、当該ポリイミド前駆体の乾燥フィルムをSUS枠等に固定して、前記イミド化の工程における熱処理を行ってもよい。ただし、基材に固定して行う場合は体積収縮による疑似延伸効果によって面内等方性を発現しつつ、低CTE化させることができる観点から、ポリアミック酸溶液の塗布を行った後、支持基材ごと熱処理を行い、ポリアミック酸をイミド化することが好ましい。
<ポリイミドおよびポリイミド前駆体の化学構造>
本発明のポリイミド、ポリイミドフィルムおよびポリイミド前駆体は、特定のテトラカルボン酸無水物に由来する構造単位A及び特定のジアミンに由来する構造単位Bを有する。なお、構造単位Aは、テトラカルボン酸二無水物から誘導された4価の基のことを表し、酸二無水物残基ともいう。また、構造単位Bは、ジアミンから誘導された2価の基のことを表し、ジアミン残基ともいう。
以下、詳細に説明する。
本発明のポリイミド、ポリイミドフィルムおよびポリイミド前駆体は、特定のテトラカルボン酸無水物に由来する構造単位A及び特定のジアミンに由来する構造単位Bを有する。なお、構造単位Aは、テトラカルボン酸二無水物から誘導された4価の基のことを表し、酸二無水物残基ともいう。また、構造単位Bは、ジアミンから誘導された2価の基のことを表し、ジアミン残基ともいう。
以下、詳細に説明する。
<酸無水物残基>
本発明のポリイミド、ポリイミドフィルムおよびポリイミド前駆体においては、構造単位Aが、下記式A1で表される構造に由来する構造単位(以下、「A1残基」ともいう。)を含む。
上記式(A1)において、R1は独立にフッ素原子またはフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~3のアルキル基もしくはアルコキシ基を示し、pおよびqは独立して0~4の整数を示す。なお、一分子中の複数のR1が同じであっても別々であってもよい。A1は、エーテル結合によって2つのフェニル基が結合された構造をとることから、ジアミンとイミド構造を形成した際に、酸無水物残基の電子受容性が抑制されることより、電荷移動相互作用が抑制され透明性が期待できる。さらに、弱い結合部位を含まないことから加熱時に結合の分解が抑制され、加熱処理された場合においてもYIの増加が抑制される等、耐熱性も期待できる。R1については、前記耐熱性の観点から、無置換(水素原子)またはメチル基が好ましい。より好ましくは水素原子である。
本発明のポリイミド、ポリイミドフィルムおよびポリイミド前駆体においては、構造単位Aが、下記式A1で表される構造に由来する構造単位(以下、「A1残基」ともいう。)を含む。
具体的には、4,4’-オキシジフタル酸無水物 (ODPA)、3,4’-オキシジフタル酸無水物が、より好ましい酸二無水物として挙げられる。
上記A1の効果を有効に発現させるために、構造単位Aの20mol%以上、好ましくは、高いガラス転移温度(Tg)の観点から、構造単位Aの20mol%以上99mol%以下、より好ましくは20mol%以上80mol%以下、さらにより好ましくは30mol%以上70mol%以下、特に好ましくは40mol%以上60mol%以下が、A1残基となるように設計する。A1残基が20mol%未満では、光学特性や耐熱性が悪化するおそれがある。
ここで本発明においては、構造単位Aのうち、結合解離エネルギーがいずれも80kal/mol以上で構成された構造単位A1残基以外の構造単位A2を含むことが好ましい。詳細な説明は後述するが、結合解離エネルギーが80kal/mol未満の構造単位がポリイミド中に含まれる場合、ディスプレイ加工時などの加熱によって分解がはじまり、黄色度が悪化する。A2は構造単位全てが高い結合解離エネルギーをもつため、ポリイミドに該当構造を導入することで、ポリイミドの耐熱性向上が期待できる。なおA2を構成する結合解離エネルギーは高いほど好ましく、後述するジアミン由来構造単位B2との組み合わせが前提となるために、黄色度よりも耐熱性が高くなる観点から構造を選択することが望ましい。
構造単位A2としては、例えば以下の酸二無水物に由来する構造単位を挙げることができる。すなわち、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3’、4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTCDA)、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二酸無水物、2,3’,3,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3'-、2,3,3',4'-又は3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3'',4,4''-、2,3,3'',4''-又は2,2'',3,3''-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8-、1,2,6,7-又は1,2,9,10-フェナンスレン-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,8,9-、3,4,9,10-、4,5,10,11-又は5,6,11,12-ペリレン-テトラカルボン酸二無水物、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、チオフェン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位が挙げられる。
この中でも耐熱性の観点から、構造単位A2としては以下のA3~A5の構造から選ばれる構造を少なくとも1つ以上含むことが好ましい
[式(A5)において、Xは単結合、カルボニル基を示す。]
そして、より好ましくはA3で表されるピロメリット酸無水物(PMDA)である。
そして、より好ましくはA3で表されるピロメリット酸無水物(PMDA)である。
上記A2の効果を有効に発現させるために、構造単位Aの1mol%以上、好ましくは構造単位Aの20mol%以上80mol%以下、より好ましくは30mol%以上70mol%以下、さらにより好ましくは40mol%以上70mol%以下、特に好ましくは40mol%以上60mol%以下が、A2残基となるように設計する。A2残基は、高いTgを付与するのに効果がある。A2残基が80mol%を上回ると黄色度などの光学特性悪化が懸念される。前記A1とA2の構造割合を制御することで、光学特性と耐熱性のバランスを制御することができる。
なお、構造単位Aにおいて、本発明のポリイミドフィルムの耐熱性、420℃加熱時のYI変化(ΔYI420)を損なわない程度に、構造単位A1及びA2以外の結合解離エネルギーが80kal/mol未満の結合部を含む公知の構造単位を、好ましくは構造単位Aの10mol%以下、より好ましくは5mol%以下、さらに好ましくは3mol%以下含んでいてもよい。もっとも好ましくは、そのような公知の構造単位を含有しないことがよい。
<ジアミン残基>
また、本発明のポリイミドフィルムおよびポリイミド前駆体においては、構造単位Bが、下記式B1で表される構造に由来する構造単位(以下「B1残基」ともいう。)を含む。
より好ましくは、B1残基が以下の式B1-1で表される構造に由来する構造単位を含むことが好ましい。
また、本発明のポリイミドフィルムおよびポリイミド前駆体においては、構造単位Bが、下記式B1で表される構造に由来する構造単位(以下「B1残基」ともいう。)を含む。
B1は、分子内にカルド構造をとることから、カルド構造含有ジアミンと記すことがある。芳香族骨格を中心に構成させていることから耐熱性に優れ、なおかつフルオレン骨格部位とジアミンが置換されたベンゼンとが直行するような立体配座をとるために、厚さ方向の位相差であるRthを小さくする効果が期待できる。すなわち耐熱性と厚み方向の低Rth化とを両立する効果を期待できる。さらにアミノ基が置換されているベンゼン環にフッ素が置換されているために、酸無水物由来構造との電荷移動遷移を抑制できる。このため前記A2のように高耐熱化が期待できるが、黄色度(YI)の悪化が懸念される構造を導入してもYIの増加を抑えることができる。すなわちフッ素を置換することで、酸無水物側に高耐熱構造の導入が可能となり、ポリイミドとしての耐熱性を向上させることができる。
上記B1の効果を有効に発現させるために、構造単位Bの20~80mol%、好ましくは30~70mol%、より好ましくは40~60mol%が、B1残基となるように設計する。B1残基が20mol%未満では、Rthが高くなる。また、80mol%を超えると、カルド構造の占める割合が高くなることでポリイミドフィルムが脆くなり機械的特性が悪化する。
なお、ポリイミドフィルムの機械的特性などの観点から、構造単位A及び構造単位Bの合計を100モル%とした際に、当該B1残基は、50モル%未満であることが好ましく、より好ましくは、40モル%未満、さらに好ましくは、30モル%未満である。
なお、ポリイミドフィルムの機械的特性などの観点から、構造単位A及び構造単位Bの合計を100モル%とした際に、当該B1残基は、50モル%未満であることが好ましく、より好ましくは、40モル%未満、さらに好ましくは、30モル%未満である。
また、構造単位Bは、B1残基に加え、下記式B2で表される構造に由来する構造単位を含むことが好ましい。
式(B2)において、R2は独立にフッ素原子またはフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~3のアルキル基もしくはアルコキシ基を示し、tおよびuは独立して0~4の整数を示す。また、構造単位Bは、構造中にフッ素原子を有する。なお、一分子中の複数のR2が同じであっても別々であってもよい。
化学式(B2)で表される含フッ素ビフェニル構造をもつジアミン(以下、「ジアミン(2)」と記すことがある)は、芳香族骨格を中心に構成させていることから耐熱性に優れ、含フッ素構造により透明性にも優れている。さらに、適度に分子を配向させる働きからフィルムの機械的強度を促進させる効果も期待できる。R2は、前記耐熱性の観点から、フッ素原子またはフッ素原子置換メチル基が好ましい。
上記式(B2-1)~(B2-4)のうち、より好ましくは、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル(TFMB)由来の構造単位である式(B2-1)である。
上記B2の効果を有効に発現させるために、構造単位Bの20~80mol%、好ましくは30~70mol%、より好ましくは40~60mol%が、B2残基となるように設計する。B2残基が20mol%未満では、カルド構造の占める割合が高くなることで機械的特性が悪化する。また、80mol%を超えると、カルド構造の割合が小さくなることでRthが高くなる。
本発明の効果を阻害しない限り、他のジアミンを併用することも可能である。構造単位Bのうち、50mol%以下、好ましくは30mol%以下の範囲で、B1残基およびB2残基以外の構造単位(以下、「その他のジアミン残基」という。)を有していてもよい。ただし、その他のジアミン残基については、耐熱性の観点から結合解離エネルギーがいずれも80kal/mol以上で構成された化学構造とすることが好ましい。その他のジアミン残基としては、例えば、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(m-TB)、2,2’-ジビニル-4,4’-ジアミノビフェニル(VAB)、4,4’-ジアミノビフェニル、p‐フェニレンジアミン(p-PDA)、m‐フェニレンジアミン(m-PDA)、3,4’-ジアミノベンゾフェノン、(3,3’-ビスアミノ)ジフェニルアミン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-R)、3-[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]ベンゼンアミン、3-[3-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]ベンゼンアミン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ベンゾフェノン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル(BAPE)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン(BAPK)、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)]ビフェニル等に由来する構造単位が挙げられる。
本発明のポリイミド、ポリイミドフィルムおよびポリイミド前駆体において、上記酸二無水物及びジアミンの種類やモル比を設計することにより、YI、Rth等の光学特性、ガラス転移温度(Tg)等の耐熱性、機械的強度等を制御することができる。
<ポリイミドフィルムの厚み>
本発明のポリイミドフィルムにおいて、平均厚みは5μm以上50μm以下が好ましい。より好ましい下限値は7μmである。一方、より好ましい上限値は30μmであり、さらに好ましくは15μmである。平均厚みの測定は、例えば、後述の方法に従うことがよい。5μmを下回るとポリイミドフィルムの機械的強度が低下し、工程中での破れなどの不具合が懸念される。50μmを上回るとYIやRthなどの光学特性が悪化する。
本発明のポリイミドフィルムにおいて、平均厚みは5μm以上50μm以下が好ましい。より好ましい下限値は7μmである。一方、より好ましい上限値は30μmであり、さらに好ましくは15μmである。平均厚みの測定は、例えば、後述の方法に従うことがよい。5μmを下回るとポリイミドフィルムの機械的強度が低下し、工程中での破れなどの不具合が懸念される。50μmを上回るとYIやRthなどの光学特性が悪化する。
<1%熱重量減少温度TD1>
また、本発明のポリイミドフィルムは、モノマーの種類、モル比、Mw等を最適化することで、耐熱性に優れ、フレキシブルOLED用途のTFT基板、フレキシブルLCD用途のTFT基板及びCF基板の製造工程等において350℃以上の熱処理を行っても分解しにくいという長所がある。この分解のしにくさの指標として、1%熱重量減少温度(TD1)が挙げられる。TD1が高いほど、高温の熱処理でもフィルムの分解に起因する重量減少が起こりにくいと言える。逆に、TD1が低いほど、高温の熱処理によりフィルムの分解に起因する重量減少が起こりやすいと言える。フィルムの分解生成物の発生により、上記製造工程において基板の剥離などの不具合が懸念される。本発明のポリイミドフィルムはTD1が450℃以上である。好ましくは、TD1が500℃以上であり、より好ましくは515℃以上である。
また、本発明のポリイミドフィルムは、モノマーの種類、モル比、Mw等を最適化することで、耐熱性に優れ、フレキシブルOLED用途のTFT基板、フレキシブルLCD用途のTFT基板及びCF基板の製造工程等において350℃以上の熱処理を行っても分解しにくいという長所がある。この分解のしにくさの指標として、1%熱重量減少温度(TD1)が挙げられる。TD1が高いほど、高温の熱処理でもフィルムの分解に起因する重量減少が起こりにくいと言える。逆に、TD1が低いほど、高温の熱処理によりフィルムの分解に起因する重量減少が起こりやすいと言える。フィルムの分解生成物の発生により、上記製造工程において基板の剥離などの不具合が懸念される。本発明のポリイミドフィルムはTD1が450℃以上である。好ましくは、TD1が500℃以上であり、より好ましくは515℃以上である。
また、上記熱処理により、フィルムの分解の他に、残存溶剤を始めとする揮発成分がフィルムから放出される。上記TD1の値における1%熱重量減少分には、この揮発成分の放出による重量減少分も含まれる。当然ながら、揮発成分の放出が多ければ、上記製造工程において基板の剥離などの不具合が懸念される。従って、TD1を450℃以上とするには、フィルム自体の耐熱性に加え、フィルム中に含まれる揮発分の制御も重要である。揮発成分量の指標として、TG-DTAを用いた重量減少差が挙げられる。本発明では、具体的には、窒素雰囲気下で10℃/分の昇温条件で、100℃でのポリイミドフィルムの重量を基準に100℃と300℃の重量差から求められる重量減少割合ΔTG(300―100)を測定した。この条件であれば、主に、フィルムの分解が起こりにくい比較的低温で放出される揮発成分量(主に残存溶剤や低分子量成分の量)を測定できる。上記工程中での基板剥離などの不具体を抑制するという理由から、ΔTG(300―100)が5%未満であることが好ましく、3%未満がより好ましく、1%未満がさらに好ましい。
<厚み方向のリタデーションRth>
また、本発明のポリイミドフィルムは、モノマーの種類、モル比、Mw等を最適化することで、厚み方向のリタデーションRthが200nm以下であるため、ボトムエミッション型の基板に適用しても外光反射などの不具合を抑制できるという長所がある。Rthの好ましい範囲としては200nm以下、より好ましくは100nm以下、さらに好ましくは80nm以下が好ましい。上記の範疇とすることで、ボトムエミッション型基板への適用も可能となる。
また、本発明のポリイミドフィルムは、モノマーの種類、モル比、Mw等を最適化することで、厚み方向のリタデーションRthが200nm以下であるため、ボトムエミッション型の基板に適用しても外光反射などの不具合を抑制できるという長所がある。Rthの好ましい範囲としては200nm以下、より好ましくは100nm以下、さらに好ましくは80nm以下が好ましい。上記の範疇とすることで、ボトムエミッション型基板への適用も可能となる。
<ガラス転移温度Tg>
また、本発明のポリイミドフィルムは、モノマーの種類、モル比、Mw等を最適化することで、ガラス転移温度Tgが350℃以上であるため、フレキシブルOLED用途のTFT基板、フレキシブルLCD用途のTFT基板及びCF基板の製造工程で熱処理を行う場合でも、ポリイミドフィルムが変質しにくく、寸法変化も起こしづらいという長所がある。ガラス転移温度Tgとしては好ましくは370℃以上であり、より好ましくは380℃以上であり、さらに好ましくは400℃以上である。上記の範疇とすることで、製造工程中において加熱された際における変質や寸法変化等に起因する不具合を抑制できる。
また、本発明のポリイミドフィルムは、モノマーの種類、モル比、Mw等を最適化することで、ガラス転移温度Tgが350℃以上であるため、フレキシブルOLED用途のTFT基板、フレキシブルLCD用途のTFT基板及びCF基板の製造工程で熱処理を行う場合でも、ポリイミドフィルムが変質しにくく、寸法変化も起こしづらいという長所がある。ガラス転移温度Tgとしては好ましくは370℃以上であり、より好ましくは380℃以上であり、さらに好ましくは400℃以上である。上記の範疇とすることで、製造工程中において加熱された際における変質や寸法変化等に起因する不具合を抑制できる。
<黄色度(YI)>
また、本発明のポリイミドフィルムは、モノマーの種類、モル比、Mw等を最適化することで、YIが10以下であるため、有機EL装置用TFT基板、タッチパネル基板、カラーフィルター基板等の、透明であることや着色が少ないことを要求される基板に好適に使用できる。YIとしては好ましくは10以下であり、より好ましくは8以下であり、さらに好ましくは7以下である。このような範囲とすることで、前記基板の視認性がより良くなる。当該YIについては、フィルム厚さ10μmに換算した場合のYIとして、上記の範囲を満たすことが好ましい。
また、本発明のポリイミドフィルムは、モノマーの種類、モル比、Mw等を最適化することで、YIが10以下であるため、有機EL装置用TFT基板、タッチパネル基板、カラーフィルター基板等の、透明であることや着色が少ないことを要求される基板に好適に使用できる。YIとしては好ましくは10以下であり、より好ましくは8以下であり、さらに好ましくは7以下である。このような範囲とすることで、前記基板の視認性がより良くなる。当該YIについては、フィルム厚さ10μmに換算した場合のYIとして、上記の範囲を満たすことが好ましい。
<ΔYI>
また、本発明のポリイミドフィルムは、モノマーの種類、モル比、Mw等を最適化することで、420℃で30分加熱後においても黄色度の変化(以下ΔYI420と記載)が5以下である。そのため、フレキシブルOLED用途のTFT基板、フレキシブルLCD用途のTFT基板及びCF基板の製造工程等で400℃以上の熱処理を行う場合でも、ポリイミドフィルムの変色は少ないという長所がある。なお、上記と同様に、この加熱処理後のYIについても、フィルム厚さ10μmに換算した場合のYIとして、ΔYIを求めるようにする。
ΔYI420としては好ましくは0以上5以下であり、より好ましくは0以上3.5以下である。上記の範囲に抑えることができれば製造工程温度にて加熱された場合においても透明性を維持することができる。
また、本発明のポリイミドフィルムは、モノマーの種類、モル比、Mw等を最適化することで、420℃で30分加熱後においても黄色度の変化(以下ΔYI420と記載)が5以下である。そのため、フレキシブルOLED用途のTFT基板、フレキシブルLCD用途のTFT基板及びCF基板の製造工程等で400℃以上の熱処理を行う場合でも、ポリイミドフィルムの変色は少ないという長所がある。なお、上記と同様に、この加熱処理後のYIについても、フィルム厚さ10μmに換算した場合のYIとして、ΔYIを求めるようにする。
ΔYI420としては好ましくは0以上5以下であり、より好ましくは0以上3.5以下である。上記の範囲に抑えることができれば製造工程温度にて加熱された場合においても透明性を維持することができる。
<引張伸度>
本発明のポリイミドフィルムは、モノマーの種類、モル比、Mw等を最適化することで、引張伸度が5%以上であるため、製造工程中等において破れることはなく、フレキシブルディスプレイとして使用する場合は、折り曲げ性にも優れている。このような引張伸度を有することから、例えば、ポリイミドフィルム表面に表示素子等の機能層が形成された後、ポリイミドフィルムをガラス(支持基材)から剥離するレーザーリフトオフ工程において、ポリイミドフィルムが破れることがなく、きれいにガラスから剥離できるため好ましい。より好ましくは、当該引張伸度が10%以上であることがよい。
本発明のポリイミドフィルムは、モノマーの種類、モル比、Mw等を最適化することで、引張伸度が5%以上であるため、製造工程中等において破れることはなく、フレキシブルディスプレイとして使用する場合は、折り曲げ性にも優れている。このような引張伸度を有することから、例えば、ポリイミドフィルム表面に表示素子等の機能層が形成された後、ポリイミドフィルムをガラス(支持基材)から剥離するレーザーリフトオフ工程において、ポリイミドフィルムが破れることがなく、きれいにガラスから剥離できるため好ましい。より好ましくは、当該引張伸度が10%以上であることがよい。
<熱膨張係数(CTE)>
本発明のポリイミドフィルムは、モノマーの種類、モル比、Mw等を最適化することで、CTEが100ppm/K未満であり、かつ、十分に高いTgを有していることから、テレビ、サイネージのような比較的大型のディスプレイ等の用途にも好適に使用できる。このような観点からCTEは100ppm/K未満が好ましく、より好ましくは80ppm/K以下であり、さらに好ましくは70ppm/K以下がよい。下限については特に制限は無いが、寸法安定性の観点から0ppm/K以上が好ましい。
本発明のポリイミドフィルムは、モノマーの種類、モル比、Mw等を最適化することで、CTEが100ppm/K未満であり、かつ、十分に高いTgを有していることから、テレビ、サイネージのような比較的大型のディスプレイ等の用途にも好適に使用できる。このような観点からCTEは100ppm/K未満が好ましく、より好ましくは80ppm/K以下であり、さらに好ましくは70ppm/K以下がよい。下限については特に制限は無いが、寸法安定性の観点から0ppm/K以上が好ましい。
<結合解離エネルギー>
本発明においては、上述のとおり、とりわけ構造単位A2は、結合解離エネルギーが80kcal/mol以上の構造(結合)から構成されるために、分子構造全体でも当該結合解離エネルギーを満足するものである。ここで、化学構造中の結合解離エネルギーは分子内の特定の結合を開裂させるのに必要なエネルギーであって、分子をR1-R2で表す時に、以下の式Xで表される解離反応のエンタルピー変化として与えられる。
R1-R2 → R1 + R2・・・(式X)
この際、結合解離エネルギーの具体的な値は公知の文献などから把握することができる。本出願においては、以下の文献を参考としているが、これらに限られない。
参考文献1:化学便覧改訂3版II―324ページ
参考文献2:高分子論文集, vol.42, No.7, pp.443-451(July, 1985)
参考文献3:倉田正也編著、‘‘理想に挑む非金属’’, 第2章 耐熱材料,工業調査会(1981).
本発明においては、上述のとおり、とりわけ構造単位A2は、結合解離エネルギーが80kcal/mol以上の構造(結合)から構成されるために、分子構造全体でも当該結合解離エネルギーを満足するものである。ここで、化学構造中の結合解離エネルギーは分子内の特定の結合を開裂させるのに必要なエネルギーであって、分子をR1-R2で表す時に、以下の式Xで表される解離反応のエンタルピー変化として与えられる。
R1-R2 → R1 + R2・・・(式X)
この際、結合解離エネルギーの具体的な値は公知の文献などから把握することができる。本出願においては、以下の文献を参考としているが、これらに限られない。
参考文献1:化学便覧改訂3版II―324ページ
参考文献2:高分子論文集, vol.42, No.7, pp.443-451(July, 1985)
参考文献3:倉田正也編著、‘‘理想に挑む非金属’’, 第2章 耐熱材料,工業調査会(1981).
ポリイミドに用いられる代表的な酸無水物モノマーについて、文献の類似結合部を参考に、結合解離エネルギーをまとめると以下のようになる。すなわち、下記した結合解離エネルギー値は、それぞれ、破線部分の結合を解離させるエネルギーを示すものであり、「文献参照した結合部」そのものの結合解離エネルギー値を示したものである。すなわち、PMDAについてはイミド結合部の結合解離エネルギーを用い、それ以外は、イミド結合以外であって構造中でもっとも結合解離エネルギー値が低くなるものを用いている。
上記のようにPMDA、BPDA、BTDA及びODPAは、イミド結合部(89kcal/mol)と同等以上の結合解離エネルギーで構成されているため、構造中に導入しても耐熱性の悪化影響は小さいと考えられる。一方で6FDAやH―PMDAについては、分子中に結合解離エネルギーが小さい結合を含むことから耐熱性の悪化が懸念される。
実際に後述する比較例5においてTFT製造プロセスを想定して420℃で加熱を行い、YIの変化を検証すると6FDAを含む構造ではYIの悪化が顕著となっている。よって本発明においては少なくとも6FDA以上の72kcal/mol以上の結合解離エネルギーで化学構造を構成する必要があり、H―PMDAのような耐熱性に劣る脂環構造は含まないことが好ましい。上記の観点から結合中に含まれる結合の結合解離エネルギーは80kcal/mol以上が好ましく、85kcal/mol以上が好ましく、89kcal/mol以上がより好ましい。
実際に後述する比較例5においてTFT製造プロセスを想定して420℃で加熱を行い、YIの変化を検証すると6FDAを含む構造ではYIの悪化が顕著となっている。よって本発明においては少なくとも6FDA以上の72kcal/mol以上の結合解離エネルギーで化学構造を構成する必要があり、H―PMDAのような耐熱性に劣る脂環構造は含まないことが好ましい。上記の観点から結合中に含まれる結合の結合解離エネルギーは80kcal/mol以上が好ましく、85kcal/mol以上が好ましく、89kcal/mol以上がより好ましい。
また、本発明のポリイミドにおいては、耐熱性を向上させるために、組成の中に0.1~5モル単位の架橋成分を添加してもよい。
本発明のポリイミドフィルムは、複数層のポリイミドからなるようにしてもよい。単層の場合には、上述のとおり、5~50μmの平均厚みを有するようにするのがよい。なお、本発明において平均厚みとは、ダイヤルゲージ又はマイクロメーターで面内の縦方向と横方向にそれぞれ5cmずつの間隔で厚みを測定して、平均した値であることを意味する。一方、複数層の場合においては、主たるポリイミド層が上記の厚みを有するポリイミドフィルムであればよい。ここで主たるポリイミド層とは、複数層のポリイミドの中で、厚みが最も大きな比率を占めるポリイミド層を指し、その平均厚みを5~50μmにするのがよい。
<フレキシブルデバイス向け透明ポリイミド基板>
本発明のポリイミドフィルムを使用したフレキシブルデバイス向け透明ポリイミド基板は、例えば、ガラス基板を支持基材とし、この支持基材上にポリイミドフィルムを形成し、次いで透明ポリイミドフィルム上に機能層を積層し、支持基材を剥離することで得られる。前記ポリイミドフィルム上に積層する機能層の種類は特に制限しないが、液晶表示装置、有機EL表示装置、電子ペーパーをはじめとする表示装置、及び、カラーフィルター等の表示装置の構成部品も含んでいる。また、有機EL照明装置、タッチパネル装置、ITO等が積層された導電性フィルム、水分や酸素等の浸透を防止するガスバリアフィルム、フレキシブル回路基板の構成部品などを含めた、前記表示装置に付随して使用される各種機能装置も包含される。すなわち、本発明で言う表示素子とは、液晶表示装置、有機EL表示装置、及びカラーフィルター等の構成部品のみならず、有機EL照明装置、タッチパネル装置、有機EL表示装置の電極層もしくは発光層、ガスバリアフィルム、接着フィルム、TFT、液晶表示装置の配線層もしくは透明導電層等の、1種又は2種以上を組み合わせたものも含めている。
本発明のポリイミドフィルムを使用したフレキシブルデバイス向け透明ポリイミド基板は、例えば、ガラス基板を支持基材とし、この支持基材上にポリイミドフィルムを形成し、次いで透明ポリイミドフィルム上に機能層を積層し、支持基材を剥離することで得られる。前記ポリイミドフィルム上に積層する機能層の種類は特に制限しないが、液晶表示装置、有機EL表示装置、電子ペーパーをはじめとする表示装置、及び、カラーフィルター等の表示装置の構成部品も含んでいる。また、有機EL照明装置、タッチパネル装置、ITO等が積層された導電性フィルム、水分や酸素等の浸透を防止するガスバリアフィルム、フレキシブル回路基板の構成部品などを含めた、前記表示装置に付随して使用される各種機能装置も包含される。すなわち、本発明で言う表示素子とは、液晶表示装置、有機EL表示装置、及びカラーフィルター等の構成部品のみならず、有機EL照明装置、タッチパネル装置、有機EL表示装置の電極層もしくは発光層、ガスバリアフィルム、接着フィルム、TFT、液晶表示装置の配線層もしくは透明導電層等の、1種又は2種以上を組み合わせたものも含めている。
支持基材を剥離する方法としては、本発明のポリイミドフィルムであれば、レーザー光を支持基材(ガラス)とポリイミドフィルムとの界面に照射し剥離する、フィルムに切込みを入れて引き剥がす等、公知の手法によって支持基材から簡便に剥離可能である。
また、機能層の形成方法は、目的とするフレキシブルデバイスに応じて、適宜、形成条件が設定されるが、一般的には金属膜、無機膜、有機膜等をポリイミドフィルム上に成膜した後、必要に応じて所定の形状にパターニングしたり、熱処理したりするなど、公知の方法を用いて得ることができる。すなわち、これら表示素子を形成するための手段については、特に制限されず、例えば、スパッタリング、蒸着、CVD、印刷、露光、浸漬など、適宜選択されたものであり、必要な場合には真空チャンバー内などでこれらのプロセス処理を行うようにしてもよい。そして、ポリイミドフィルム上に機能層を形成した後、支持基材を剥離するのは、各種プロセス処理を経て機能層を形成した直後であってもよく、又はある程度の期間を経過させて支持基材と一体にしておき、例えば表示装置として利用する直前に剥離してもよい。
本発明のポリイミドフィルム上に、機能層として有機EL表示素子を付けた機能層付ポリイミドフィルムの一例を示す。
先ず、本発明のポリイミドフィルム上に、水分と酸素の透湿を阻止できるようにガスバリア層を設ける。次に、このガスバリア層の上面に、TFTを含む回路構成層を形成する。有機EL表示装置においては、TFTとして動作速度が速いLTPS-TFTが主に選択される。この回路構成層には、その上面にマトリックス状に複数配置された画素領域のそれぞれに対して、例えばITO(Indium Tin Oxide)の透明導電膜からなるアノード電極を形成する。更に、アノード電極の上面には有機EL発光層を形成し、この発光層の上面にはカソード電極を形成する。このカソード電極は各画素領域に共通に形成される。そして、このカソード電極の面を被うようにして、再度ガスバリア層を形成し、更に最表面には、表面保護のため封止基板を設置する。封止基板のカソード電極側の面にも水分や酸素の透湿を阻止するガスバリア層を積層しておくことが信頼性の観点から望ましい。なお、有機EL発光層は、正孔注入層-正孔輸送層-発光層-電子輸送層等の多層膜(アノード電極-発光層-カソード電極)で形成されるが、有機EL発光層は水分や酸素により劣化するため真空蒸着で形成され、電極形成も含めて真空中で連続形成されるのが一般的である。
先ず、本発明のポリイミドフィルム上に、水分と酸素の透湿を阻止できるようにガスバリア層を設ける。次に、このガスバリア層の上面に、TFTを含む回路構成層を形成する。有機EL表示装置においては、TFTとして動作速度が速いLTPS-TFTが主に選択される。この回路構成層には、その上面にマトリックス状に複数配置された画素領域のそれぞれに対して、例えばITO(Indium Tin Oxide)の透明導電膜からなるアノード電極を形成する。更に、アノード電極の上面には有機EL発光層を形成し、この発光層の上面にはカソード電極を形成する。このカソード電極は各画素領域に共通に形成される。そして、このカソード電極の面を被うようにして、再度ガスバリア層を形成し、更に最表面には、表面保護のため封止基板を設置する。封止基板のカソード電極側の面にも水分や酸素の透湿を阻止するガスバリア層を積層しておくことが信頼性の観点から望ましい。なお、有機EL発光層は、正孔注入層-正孔輸送層-発光層-電子輸送層等の多層膜(アノード電極-発光層-カソード電極)で形成されるが、有機EL発光層は水分や酸素により劣化するため真空蒸着で形成され、電極形成も含めて真空中で連続形成されるのが一般的である。
また、本発明のポリイミドフィルム上に、投影型容量結合方式のタッチパネルを付けた機能層付ポリイミドフィルムの一例を示す。
本発明のポリイミドフィルム上に、縦横に2つの電極列(第1と第2の電極)を設け、指が画面に触れた時の電極の静電容量変化を測定することにより、接触位置を精密に検出できる。具体的な構造としては、第1の電極が形成された第1の基板と、第2の電極が形成された第2基板とを、絶縁層(誘電層)を介して接合した構成とする。薄型化、軽量化、フレキシブル化のためには、電極を形成する基板を従来のガラス基板から屈曲性のある樹脂基板に置き換えることで実現できる。また、第1の電極と第2の電極を1つの基板上に形成して、更なる薄型化、軽量化も進められている。
本発明のポリイミドフィルム上に、縦横に2つの電極列(第1と第2の電極)を設け、指が画面に触れた時の電極の静電容量変化を測定することにより、接触位置を精密に検出できる。具体的な構造としては、第1の電極が形成された第1の基板と、第2の電極が形成された第2基板とを、絶縁層(誘電層)を介して接合した構成とする。薄型化、軽量化、フレキシブル化のためには、電極を形成する基板を従来のガラス基板から屈曲性のある樹脂基板に置き換えることで実現できる。また、第1の電極と第2の電極を1つの基板上に形成して、更なる薄型化、軽量化も進められている。
また本発明のポリイミドフィルムを基板と用いた表示装置は、基板が透明かつ屈曲可能なため、例えばローラブルテレビの表示装置基板(この場合、機能層は有機EL素子に相当する。)や、モバイル機器の表示部におけるシースルーディスプレイ表示基板等(シースルーディスプレイ下部にカメラを設けるアンダーディスプレイカメラ構造におけるディスプレイの表示基板。この場合、機能層は有機EL素子に相当する。)にも適用できる。特にローラブルテレビの表示装置基板においては、本発明のポリイミドフィルムは低Rthでもあることにより、大型化に有利なボトムエミッション型構造の場合において好適に利用することができる。
以下、実施例及び比較例に基づき、本発明を具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例等に用いた原材料の略号を以下に示す。(ジアミン)
・TFMB:2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル
・BAFL:9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン
・BOFAF:9,9-ジ(3-フルオロ-4-アミノフェニル)フルオレン
(酸二無水物)
・PMDA:ピロメリット酸二無水物
・ODPA:4,4’-オキシジフタル酸二無水物
・6FDA:2,2’-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物
(溶剤)
・NMP:N-メチル-2-ピロリドン
・TFMB:2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル
・BAFL:9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン
・BOFAF:9,9-ジ(3-フルオロ-4-アミノフェニル)フルオレン
(酸二無水物)
・PMDA:ピロメリット酸二無水物
・ODPA:4,4’-オキシジフタル酸二無水物
・6FDA:2,2’-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物
(溶剤)
・NMP:N-メチル-2-ピロリドン
今回の実施例における各種モノマーに由来構造の結合解離エネルギーの中でそれぞれ最も弱い結合部とその結合解離エネルギー値は以下のとおりである。すなわち、前述とおり、下記した結合解離エネルギー値は、それぞれ、破線部分の結合を解離させるエネルギーを示したものであり、「文献参照した結合部」そのものの結合解離エネルギー値を示したものである。
実施例等における各物性の測定方法及び評価方法を以下に示す。
[熱膨張係数(CTE)]
3mm×15mmのサイズのポリイミドフィルムを、熱機械分析(TMA/SS6100)装置にて30mNの荷重を加えながら一定の昇温速度(10℃/min)で30℃から450℃まで昇温し、次いで、一定の昇温速度(10℃/min)で450℃から30℃まで降温し、降温時(350℃から100℃まで)におけるポリイミドフィルムの伸び量(線膨張)から熱膨張係数を測定した。
3mm×15mmのサイズのポリイミドフィルムを、熱機械分析(TMA/SS6100)装置にて30mNの荷重を加えながら一定の昇温速度(10℃/min)で30℃から450℃まで昇温し、次いで、一定の昇温速度(10℃/min)で450℃から30℃まで降温し、降温時(350℃から100℃まで)におけるポリイミドフィルムの伸び量(線膨張)から熱膨張係数を測定した。
[黄色度YI〔YI(10)〕]
ポリイミドフィルム(50mm×50mm)をSHIMADZU UV-3600分光光度計にて、下式(I)で表される計算式に基づいてYI(黄色度)を算出した。なお、YIは、室温(23℃)の測定値である。加熱後のYIについても同様である。
YI=100×(1.2879X-1.0592Z)/Y (I)
X, Y, Zは試験片の三刺激値であり、JIS Z 8722に規定されている。
下式(II)で表される、フィルム厚み10μmに換算した黄色度〔YI(10)〕を、上記の式(I)のYIを用いて算出する。
YI(10)=YI*10/厚み (II)
ポリイミドフィルム(50mm×50mm)をSHIMADZU UV-3600分光光度計にて、下式(I)で表される計算式に基づいてYI(黄色度)を算出した。なお、YIは、室温(23℃)の測定値である。加熱後のYIについても同様である。
YI=100×(1.2879X-1.0592Z)/Y (I)
X, Y, Zは試験片の三刺激値であり、JIS Z 8722に規定されている。
下式(II)で表される、フィルム厚み10μmに換算した黄色度〔YI(10)〕を、上記の式(I)のYIを用いて算出する。
YI(10)=YI*10/厚み (II)
[引張伸度]
ポリイミドフィルム(10mm×15mm)の試験片を準備し、テンシロン万能試験機(オリエンテック株式会社製、RTA-250)を用い、引張速度10mm/minでIPC-TM-650, 2.4.19に準じて引張試験を行い、弾性率、引張伸度、引張強度を算出した。
ポリイミドフィルム(10mm×15mm)の試験片を準備し、テンシロン万能試験機(オリエンテック株式会社製、RTA-250)を用い、引張速度10mm/minでIPC-TM-650, 2.4.19に準じて引張試験を行い、弾性率、引張伸度、引張強度を算出した。
[ガラス転移温度(Tg)]
3mm×15mmのサイズのポリイミドフィルムを、熱機械分析(TMA/SS6100)装置にて30mNの荷重を加えながら一定の昇温速度(10℃/min)で30℃から450℃まで昇温し、次いで、一定の昇温速度(10℃/min)で450℃から30℃まで降温し、昇温時のTMAと温度の変曲点からガラス転移温度を算出した。
3mm×15mmのサイズのポリイミドフィルムを、熱機械分析(TMA/SS6100)装置にて30mNの荷重を加えながら一定の昇温速度(10℃/min)で30℃から450℃まで昇温し、次いで、一定の昇温速度(10℃/min)で450℃から30℃まで降温し、昇温時のTMAと温度の変曲点からガラス転移温度を算出した。
[厚み方向のリタデーション;Rth(10)]
ポリイミドフィルム(50mm×50mm)を、複屈折・位相差評価装置(株式会社フォトニックラティス社製、WPA-100)を用いて、試料に入射する光の入射角を変更するために試料を回転させる回転装置を付けて、波長543nmにて、ポリイミドフィルムのリタデーションの入射角依存性を測定した。測定値を前記リタデーションの入射角依存性の測定データを数値解析して、厚み方向のリタデーションRthを求めた。
得られたリタデーションRthを下式(III)にてフィルム厚み10μmに換算したリタデーション〔Rth(10)〕を算出した。
Rth(10)=Rth*10/厚み (III)
ポリイミドフィルム(50mm×50mm)を、複屈折・位相差評価装置(株式会社フォトニックラティス社製、WPA-100)を用いて、試料に入射する光の入射角を変更するために試料を回転させる回転装置を付けて、波長543nmにて、ポリイミドフィルムのリタデーションの入射角依存性を測定した。測定値を前記リタデーションの入射角依存性の測定データを数値解析して、厚み方向のリタデーションRthを求めた。
得られたリタデーションRthを下式(III)にてフィルム厚み10μmに換算したリタデーション〔Rth(10)〕を算出した。
Rth(10)=Rth*10/厚み (III)
[1%重量減少温度(TD1)と重量減少割合ΔTG(300-100)]
窒素雰囲気下で10~20mgの重さのポリイミドフィルムを、日立ハイテクサイエンス製の示差熱熱重量測定装置TG/DTA6200にて10℃/minの速度で30℃から550℃まで昇温させたときの重量変化を測定し、200℃での重量をゼロとし、重量減少率が1%の時の温度を熱分解温度(TD1)とした。
さらに100℃での重量を基準に、100℃から300℃までの重量減少分から求められる重量減少割合〔100×(100℃の重量-300℃の重量)/100℃の重量〕をΔTG(300-100)とした。
窒素雰囲気下で10~20mgの重さのポリイミドフィルムを、日立ハイテクサイエンス製の示差熱熱重量測定装置TG/DTA6200にて10℃/minの速度で30℃から550℃まで昇温させたときの重量変化を測定し、200℃での重量をゼロとし、重量減少率が1%の時の温度を熱分解温度(TD1)とした。
さらに100℃での重量を基準に、100℃から300℃までの重量減少分から求められる重量減少割合〔100×(100℃の重量-300℃の重量)/100℃の重量〕をΔTG(300-100)とした。
[粘度cP]
粘度の測定は、E型粘度計(ブルックフィールド社製、商品名;DV-II+Pro)を用いて、25℃における粘度を測定した。トルクが10%~90%になるよう回転数を設定し、測定を開始してから2分経過後、粘度が安定した時の値を読み取った。
粘度の測定は、E型粘度計(ブルックフィールド社製、商品名;DV-II+Pro)を用いて、25℃における粘度を測定した。トルクが10%~90%になるよう回転数を設定し、測定を開始してから2分経過後、粘度が安定した時の値を読み取った。
下記の合成例に従い、ポリイミド前駆体溶液A~Gを調製した。
合成例1
窒素気流下で、200mlのセパラブルフラスコの中に、表1の組成のとおり、ジアミンをNMPに溶解させ、次いで、酸二無水物を加えた。この溶液を25℃で72時間攪拌を続けて重合反応を行い、粘度4200cPのポリイミド(PI)前駆体溶液A(粘稠な溶液)を得た。
窒素気流下で、200mlのセパラブルフラスコの中に、表1の組成のとおり、ジアミンをNMPに溶解させ、次いで、酸二無水物を加えた。この溶液を25℃で72時間攪拌を続けて重合反応を行い、粘度4200cPのポリイミド(PI)前駆体溶液A(粘稠な溶液)を得た。
合成例2~7
合成例1と同様に、表1の組成の通りに、合成例2~7を行い、ポリイミド(PI)前駆体溶液B~G(粘稠な溶液)を得た。各種PI前駆体の粘度は表1の通りである。
合成例1と同様に、表1の組成の通りに、合成例2~7を行い、ポリイミド(PI)前駆体溶液B~G(粘稠な溶液)を得た。各種PI前駆体の粘度は表1の通りである。
[実施例1]
合成例1で得られたポリイミド前駆体溶液Aを用いて、ガラス基板(コーニング製イーグルXG、サイズ=150mm×150mm、厚み=0.5mm)上に、スピンコーターを用いて、硬化後のポリイミド厚みが10μm程度になるように塗布した。続いて、100℃で15分間加熱を行った。そして、表2に示すように、窒素雰囲気(酸素濃度:3%以下)中で、一定の昇温速度(4℃/min)で室温から435℃まで昇温させ、それから420℃±10℃の間で30分間保持し、4時間以上かけて室温に戻して、ガラス基板上に150mm×150mmのポリイミド層(ポリイミドフィルムA-1Fに相当)を形成し、ポリイミド積層体A-1を得た。なお、表2に示すイミド化最高温度、及び30分間の保持温度については、フィルム自体の温度を測定した値である。他の実施例及び比較例も同様である。
合成例1で得られたポリイミド前駆体溶液Aを用いて、ガラス基板(コーニング製イーグルXG、サイズ=150mm×150mm、厚み=0.5mm)上に、スピンコーターを用いて、硬化後のポリイミド厚みが10μm程度になるように塗布した。続いて、100℃で15分間加熱を行った。そして、表2に示すように、窒素雰囲気(酸素濃度:3%以下)中で、一定の昇温速度(4℃/min)で室温から435℃まで昇温させ、それから420℃±10℃の間で30分間保持し、4時間以上かけて室温に戻して、ガラス基板上に150mm×150mmのポリイミド層(ポリイミドフィルムA-1Fに相当)を形成し、ポリイミド積層体A-1を得た。なお、表2に示すイミド化最高温度、及び30分間の保持温度については、フィルム自体の温度を測定した値である。他の実施例及び比較例も同様である。
[比較例1~6]
ポリイミド前駆体溶液Aをポリイミド前駆体溶液B~Gのいずれかに代えた他は、実施例1と同様にして操作を行い、表2に示すイミド化最高温度とした上で、当該イミド化最高温度から15℃低い温度領域で30分間保持し、それぞれのポリイミド積層体B-2~G-7を得た。
ポリイミド前駆体溶液Aをポリイミド前駆体溶液B~Gのいずれかに代えた他は、実施例1と同様にして操作を行い、表2に示すイミド化最高温度とした上で、当該イミド化最高温度から15℃低い温度領域で30分間保持し、それぞれのポリイミド積層体B-2~G-7を得た。
上記の実施例と比較例で得られた積層体を、上のポリイミド層だけを、カッターで剥離する部分の外周に沿って切り込みを入れ、水中に30分浸漬し、取り出して、水分をふき取って、ピンセットでガラスから剥離することによって、ポリイミドフィルムA-1F~G-7Fを得た。なお、これらのフィルムの厚みは、表2の厚みの項に示した。なお、ポリイミドフィルムD-4Fについてフィルムが脆く、各種評価に適するフィルムは得られなかった。
得られたポリイミドフィルムA-1F~C-3FおよびE-5F~G-7Fについて、それぞれのCTE,YI、引張強度、引張伸度、弾性率、Tg、Rth、TD1など各種評価を行った。結果を表2に示した。
得られたポリイミドガラス積層体A-1~C-3およびE-5~G-7を用いて、6℃/minの昇温速度で、窒素雰囲気で420℃まで昇温し、それから420℃で30分保持し、その後、室温に降温して、サンプルを取り出した。上記と同様に、ポリイミド層だけを、カッターで剥離する部分の外周に沿って切り込みを入れ、水中に30分浸漬し、取り出して、水分をふき取って、ピンセットでガラスから剥離することによって、ポリイミドフィルムを得た。YIを測定し、合わせて、結果を表2に示した。
表2の実施例1に示した通り、ODPAとBOFAF及びPMDAのような高耐熱性を担保する構造を組み合わせたポリイミドは高い耐熱性と厚み方向の低いRthとを両立し、YIなどの光学特性およびフレキシブルディスプレイに適用可能な機械的強度も担保している。従って、このようなポリイミドを用いたポリイミド-ガラス積層体は、有機ELディスプレイ、有機EL照明、電子ペーパー、タッチパネル等の表示装置のほか、蒸着マスク、ファンアウトウェハーレベルパッケージ(FOWLP)を形成する支持基材として、好適に使用できる。
一方で、比較例1で示すように、カルド構造を持つジアミンとしてフッ素置換基を含まないBAFLだけを用いた場合では、YIが増加し透明性が不十分となるため、フレキシブルディスプレイへの適用には不適となる。比較例4に示すようにBOFAFを含有せずにBAFLを用いる場合、PMDAのような高耐熱性を担保する構造は透明性の観点から10%程度が上限となるため、耐熱性・透明性・低Rthをいずれも担保するためにはフッ素置換基を含むBOFAFが必要となる。
さらに、表2の比較例2で示すようにカルド構造を持つジアミンを含まないものでは耐熱性が不十分となり、また、比較例3で示すようにカルド構造の割合が過度に大きいものは機械的強度が不十分となり、フレキシブルディスプレイへの適用には不適となる。
また、表2の比較例5で示す通り、6FDAのような結合解離エネルギーが80kcal/mol未満である化学構造を用いた場合、耐熱性が不十分となり、物性としては420℃加熱時のΔYIが大きくなり、フレキシブルディスプレイの製造工程中において変色等の不具合が生じることが懸念される。比較例5と比較例6では両者ともTgは同等レベルであり、TD1も500℃を越えているが、ΔYIには顕著な差異が見られており、化学構造がΔYIに与える影響は大きいと考えることができる。ΔYIを抑制するためにはODPAのような結合解離エネルギーがいずれも80kcal/mol以上で構成された化学構造を適用する必要がある。
一方で、比較例1で示すように、カルド構造を持つジアミンとしてフッ素置換基を含まないBAFLだけを用いた場合では、YIが増加し透明性が不十分となるため、フレキシブルディスプレイへの適用には不適となる。比較例4に示すようにBOFAFを含有せずにBAFLを用いる場合、PMDAのような高耐熱性を担保する構造は透明性の観点から10%程度が上限となるため、耐熱性・透明性・低Rthをいずれも担保するためにはフッ素置換基を含むBOFAFが必要となる。
さらに、表2の比較例2で示すようにカルド構造を持つジアミンを含まないものでは耐熱性が不十分となり、また、比較例3で示すようにカルド構造の割合が過度に大きいものは機械的強度が不十分となり、フレキシブルディスプレイへの適用には不適となる。
また、表2の比較例5で示す通り、6FDAのような結合解離エネルギーが80kcal/mol未満である化学構造を用いた場合、耐熱性が不十分となり、物性としては420℃加熱時のΔYIが大きくなり、フレキシブルディスプレイの製造工程中において変色等の不具合が生じることが懸念される。比較例5と比較例6では両者ともTgは同等レベルであり、TD1も500℃を越えているが、ΔYIには顕著な差異が見られており、化学構造がΔYIに与える影響は大きいと考えることができる。ΔYIを抑制するためにはODPAのような結合解離エネルギーがいずれも80kcal/mol以上で構成された化学構造を適用する必要がある。
Claims (13)
- テトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位A及びジアミンに由来する構造単位Bを有するポリイミド前駆体であって、
構造単位Aの20~99mol%が、下記式A1で表される構造に由来する構造単位A1であり、
構造単位Aの1~80mol%が、結合解離エネルギーが80kcal/mol以上で構成された構造単位A2であり、
構造単位Bの20~80mol%が下記式B1で表される構造に由来する構造単位B1であることを特徴する、ポリイミド前駆体。
- 構造単位Aの20~80mol%が上記構造単位A1であり、
構造単位Aの20~80mol%が上記構造単位A2である、請求項1に記載のポリイミド前駆体。 - 構造単位Bの30~70mol%が構造単位B1である、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリイミド前駆体。
- 請求項1~5のいずれか一項に記載のポリイミド前駆体を熱処理してなることを特徴とする、ポリイミド。
- 請求項1~5のいずれか一項に記載のポリイミド前駆体を支持体上に塗布して乾燥し、熱処理してなることを特徴とする、ポリイミドフィルム。
- 請求項7に記載のポリイミドフィルム上に機能層が積層されてなることを特徴とする、表示装置。
- 下記(a)~(c)の全てを満たす、請求項9又は10に記載のポリイミドフィルム。
(a)厚み10μmに換算した厚み方向のリタデーション(Rth10)が200nm未満。
(b)1%熱重量減少温度(TD1)が450℃以上。
(c)厚み10μmに換算した黄色度(YI)が10以下。 - 420℃で30分の加熱によるYIの変化量(ΔYI420)が5以下である、請求項9~11のいずれか一項に記載のポリイミドフィルム。
- 請求項9~12のいずれか一項に記載のポリイミドフィルムに機能層が積層されてなることを特徴とする、表示装置。
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Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
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