JP7102191B2 - ポリイミドフィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、透明フィルム材料又は透明フレキシブル基板材料として有用であり、特に高透明性、低熱膨張係数、高耐熱性、リフトオフ特性を併せ持つ透明樹脂基板材料として有用なポリイミドフィルム及びそれを用いたフレキシブルデバイスに関する。
液晶表示装置、有機EL装置等の表示装置やタッチパネルは、テレビのような大型ディスプレイや、携帯電話、パソコン、スマートフォンなどの小型ディスプレイをはじめ、各種のディスプレイの構成部材として使用される。
例えば、有機EL装置は、一般に支持基板であるガラス基板上に薄膜トランジスタ(TFT)を形成し、更にその上に電極、発光層及び電極を順次形成し、これらをガラス基板や多層薄膜等で気密封止して作られる。また、タッチパネルは、第1の電極が形成された第1のガラス基板と、第2の電極が形成された第2のガラス基板とを絶縁層(誘電層)を介して接合した構成となっている。
つまり、これらの構成部材は、ガラス基板上にTFT、電極、発光層等、各種の機能層を形成した積層体である。このガラス基板を樹脂基板へと置き換えることにより、従来のガラス基板を用いた構成部材を、薄型化・軽量化・フレキシブル化することができる。これを利用して、フレキシブルディスプレー等のフレキシブルデバイスを得ることが期待される。一方、樹脂はガラスと比較して寸法安定性、透明性、耐熱性、耐湿性、フィルムの強さ等が劣るため、種々の検討がなされている。
こうした樹脂基板材料として、ポリイミドは、耐熱性や寸法安定性に優れることから有望な材料の一つである。特に、ポリイミド構造中にフッ素原子を有するポリイミド(含フッ素ポリイミド)や脂環構造を有するポリイミド(脂環ポリイミド)は、透明性に優れており、有機EL装置用基板、タッチパネル基板、カラーフィルター基板等の、透明性を必要とするフレキシブルデバイスへの適用が期待されている。
フレキシブルデバイス向け透明ポリイミド基板は、ガラス基板を支持基材とし、この支持基材上に透明ポリイミドフィルムを形成し、次いで透明ポリイミドフィルム上に電子部品を実装後、支持基材を剥離することで得られる。含フッ素ポリイミドは、ガラス基板との剥離性に優れるため、透明ポリイミド基板への適用が特に期待される。
例えば、特許文献1は、キャリア基板から剥離して製造するフレキシブルデバイス用の含フッ素ポリイミド膜であって、ガラス転移温度が300℃以上、熱分解温度が500℃以上、熱膨張係数が20ppm/K以下であるものを開示する。しかし、透明性についての検討はなされていない。
特許文献2は、含フッ素ポリイミド前駆体溶液を無機基板上に流延し、乾燥およびイミド化して得られるポリイミドフィルムと無機基板とからなる積層体であって、全光線透過率が高く、アウトガスが少ない(0.3%以下)ものを開示する。ここで、アウトガスは300℃における熱重量減少率である。
なお、特許文献2において、アウトガスを低減するためには、加熱温度を上げることが有効であるがポリイミドの結晶性や着色等により、ヘイズの上昇や、全光線透過率の低下の傾向があり、特に最高温度が400℃を超えるとポリイミドの結晶化などにより白化が顕著となる旨を開示している。逆に透明性の低下や着色の抑制のため比較的緩やかな温度で加熱するとアウトガスの低減が出来なくなる、イミド化が十分に進まずポリイミドの機械的強度が不足する傾向がある旨を開示している。つまり、耐熱性と透明性の両立はトレードオフの関係にあるといえる。ここで、透明性を損なうことなくアウトガスを低減する有効な方法として、加熱温度と加熱時間を適切に設定する必要がある旨を開示している。しかし、上記の結晶性や着色等の問題が示唆されていることもあって、500℃以上の極めて高い温度領域における耐熱性については検討されていない。
特許文献3及び特許文献4は、耐熱性と透明性に優れた、特定のテトラカルボン酸二無水物を有する含フッ素ポリイミドを開示している。この含フッ素ポリイミドは、フィルム状態での400nmにおける光透過率が80%以上であり、かつ、熱膨張係数が20ppm/K以下のものも開示している。一方で、5%重量減少温度は500℃に満たない。この場合、フレキシブルOLED用途のTFT基板形成工程、フレキシブルLCD用途のTFT基板及びCF基板形成工程等、極めて高い耐熱性を要求する用途への適用という観点では、耐熱性は十分であるとはいえない。
以上より、フレキシブルOLED用途のTFT基板形成工程、フレキシブルLCD用途のTFT基板及びCF基板形成工程等、極めて高い耐熱性を要求するフレキシブルデバイスを製造するうえで、透明ポリイミド基板は、透明性に優れ、かつ、極めて高い耐熱性を兼ね備える必要があるが、従来の技術では困難であった。
特開2010-202729号公報 特開2012-40836号公報 特開2015-28143号公報 特開2016-74915号公報
したがって、本発明は、従来の技術では困難であった、透明性に優れ、極めて高い耐熱性を有し、支持基材から容易に剥離することができる、透明ポリイミド基板材料として有用な、ポリイミドフィルム及びそれを用いたフレキシブルデバイスを提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意検討した結果、特定の含フッ素ポリイミドを特定の方法でフィルム化することで、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、ポリイミド構造中にフッ素原子を有するポリイミドフィルムであって、厚さ10μmのフィルムの状態において、450nmの光透過率が75%以上であり、黄色度が12以下であり、動的粘弾性測定により算出される損失正接曲線における、ガラス転移点を表すピーク温度が400℃以上であり、1%重量減少温度が500℃以上であることを特徴とする、ポリイミドフィルムである。
また、本発明は、フッ素原子を有するポリアミド酸に溶剤を加えて、一定粘度になるよう希釈し、基板上に、硬化後のポリイミド厚みが10μm程度になるように塗工後、不活性ガス雰囲気中、一定の昇温速度で最高温度が330~430℃まで昇温させ、その後保持し、基板上に層を形成して得た、厚さ10μmのフィルムの状態において、450nmの光透過率が75%以上であり、かつ、動的粘弾性測定により算出される損失正接曲線における、ガラス転移点を表すピーク温度が400℃以上であるポリイミドフィルムである。
本発明のポリイミドフィルムは、線膨張係数が30ppm/K以下であることが好ましい。
また、本発明のポリイミドフィルムは、下記の式(1)又は(2)で表されるジアミン由来の構造単位が、全ジアミン由来の構造単位の70モル%以上であることが好ましい。
Figure 0007102191000001
(ここで、式(1)又は(2)におけるR~Rは、互いに独立に水素原子、フッ素原子、炭素数1~5までのアルキル基もしくはアルコキシ基、又はフッ素置換炭化水素基であり、式(1)にあってはR1~R4のうち、また、式(2)にあってはR~Rのうち、それぞれ少なくとも一つはフッ素原子又はフッ素置換炭化水素基である。)
また、本発明のポリイミドフィルムは、下記の式(3)-i~式(3)-vで表されるテトラカルボン酸二無水物由来の構造単位から選ばれる構造単位が、全テトラカルボン酸二無水物由来の構造単位の70モル%以上であることが好ましい。
Figure 0007102191000002
また、本発明のポリイミドフィルムは、フッ素原子を有するポリアミド酸が、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られるポリイミドであるポリイミドフィルムであることが好ましい。
また、本発明は、上記ポリイミドフィルムの表面に機能層が積層されてなることを特徴とするフレキシブルデバイスである。
また、本発明は、支持基材上にポリアミド酸溶液を塗布し、最高温度が330~430℃の条件で熱処理を行い、イミド化する工程を有することを特徴とする、上記ポリイミドフィルムの製造方法である。
本発明のポリイミドフィルムは、優れた光透過率と極めて高い耐熱性を兼ね備える。さらに、支持基材からの良好な剥離性を有する。そのため、有機EL装置用基板、タッチパネル基板、カラーフィルター基板等の、透明性を必要とするフレキシブルデバイスに適用できる。例えば、フレキシブルLCD用途のTFT基板及びCF基板形成工程に使用できる。さらには、フレキシブルOLED用途のTFT基板形成工程等、極めて高い耐熱性を要求するフレキシブルデバイスに好適に使用することができる。
以下、本発明を更に説明する。
一例として、本発明のポリイミドフィルムは、原料のジアミンとテトラカルボン酸二無水物(以下、単に「酸二無水物」ともいう。)とを、溶媒の存在下で重合し、ポリアミド酸溶液とした後、これを支持基材上に塗布し、熱処理によりイミド化することによって製造することができる。または、ポリイミドの溶液を支持基材上に塗布し、熱処理により乾燥することによって製造することができる。
ポリイミドフィルムの分子量は、原料のジアミンと酸二無水物のモル比を変化させることで主に制御可能であるが、そのモル比は、0.980~1.025まで調整することができる。重量平均分子量(Mw)の範囲としては、50,000から400,000の範囲に調整することが望ましい。
前記ポリアミド酸溶液は、先ず、ジアミンを有機溶媒に溶解させた後、その溶液に酸二無水物を加え、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸を製造する。例えば、窒素気流下で、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンなどの非プロトン性アミド系溶媒にジアミンを溶解させた後、酸二無水物を加えて、室温で3-20時間程度反応させることにより得られる。モノマー添加の際に、モノマーをより早く溶解させるために、40-50℃で2-4時間加熱しても良い。また、分子末端を、芳香族モノアミン又は芳香族モノカルボン酸無水物で封止してもよい。有機溶媒としては、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド、n-メチルピロリジノン、2-ブタノン、ジグライム、キシレン、ブチロラクトン、トリエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられ、これらを1種若しくは2種以上併用して使用することもできる。
得られたポリアミド酸溶液を支持基材に塗布する際、ポリアミド酸の濃度やMwの調整により、当該溶液の粘度は1,000~50,000cpsの範囲とすることが好ましい。粘度が高い場合は、溶剤を加えて希釈すればよい。
また、ポリアミド酸溶液の塗布面となる支持基材の表面に対して適宜表面処理を施した後に、塗布を行ってもよい。
塗布を行った後、支持基材ごと加熱処理を行い、ポリアミド酸をイミド化しポリイミドフィルムを形成する。このイミド化の工程における、加熱処理の条件は、得られるポリイミドフィルムが、厚さ10μmのフィルムに換算して、450nmの光透過率が75%以上であり、黄色度が12以下であり、動的粘弾性測定により算出される損失正接曲線(以下、「tanδ曲線」ともいう。)における、ガラス転移点(Tg)を表すピーク温度が400℃以上であり、1%重量減少温度が500℃以上となる範囲において、特に限定しない。好ましくは、熱処理の最高温度が330~430℃である。最高温度の下限は、より好ましくは340℃である。最高温度の上限は、より好ましくは420℃であり、さらに好ましくは410℃である。この範囲の最高温度であれば、特にポリイミドフィルムが含フッ素ポリイミドである場合に、優れた透明性を維持したまま、極めて耐熱性を有するポリイミドフィルムを得ることができる。最高温度が330℃未満の場合、tanδ曲線におけるTgを表すピーク温度や、1%重量減少温度が低くなる傾向にあり、また、脆くなることもある。また、一方、最高温度が430℃を超えると、可視光領域の透過率が低下し、黄色度(YI)が上昇する傾向にある。なお、上記最高温度における保持時間は、加熱方式、支持基材の熱容量、ポリイミドフィルムの厚み等によって異なるが、1分~2時間であることが好ましい。1分未満であると、当該温度における熱処理の効果が小さく、2時間を超えると、特に最高温度が390℃以上とした場合に、過剰な熱がかかり、可視光領域の透過率が低下し、YIが上昇する傾向にある。
また、イミド化の際、空気中、低酸素濃度下、不活性ガス化、減圧下、真空下等、いずれの条件も適用できるが、特にYIを低くするという観点、1%重量減少温度を高くするという観点から、酸素濃度が5%以下でイミド化を行うことが好ましい。より好ましくは3%以下であり、さらに好ましくは2%以下である。
なお、イミド化の工程における、最高温度以外の条件、例えば昇温速度については、ポリアミド酸溶液に含まれる有機溶媒の性質や量、ポリアミド酸の構造によって適宜調整できる。また、イミド化に先立ち、ポリアミド酸溶液に含まれる有機溶媒を揮発させるために、例えば、200℃以下で2~60分程度の乾燥を行ってもよい。例えば、支持基材上に、ポリアミド酸溶液を、アプリケーターを用いて塗布し、130℃以下の温度で3~60分予備乾燥した後、溶剤除去、イミド化のために室温~430℃までの温度で30分~24時間程度熱処理する
塗布の方法は、公知の方法を用いることができるが、好ましくはスピンコート法、スリットコータ法である。
また、熱処理において、ポリアミド酸溶液に脱水剤と触媒を加えて反応させることによる化学イミド化を行うこともできる。また、ポリイミドの溶液を無機基板上に流延し、熱処理によりポリイミドフィルムを形成する場合でも、上記ポリアミド酸をイミド化しポリイミドフィルムを形成する場合と同様に、熱処理の最高温度が350~430℃とすることが好ましい。
支持基材は、公知の基板を制限なく使用できるが、平滑、高耐熱及び寸法変化率が少ないという理由から、ガラス、SUS、アルミが好ましく、より好ましくはガラスである。支持基材の厚みは、例えば0.02~1.0mm程度のものを使用するとよい。
上記熱処理によって得られるポリイミドフィルムは、優れた光透過率と極めて高い耐熱性を兼ね備える。具体的には、厚さ10μmのフィルムに換算して、450nmの光透過率が75%以上であり、YIが12以下である。さらに、動的粘弾性測定により算出される損失正接曲線における、Tgを表すピーク温度が400℃以上であり、1%重量減少温度が500℃以上である。それに加え、支持基材からの良好な剥離性を有する。
本発明のポリイミドフィルムは、厚さ10μmのフィルムに換算して、450nmの光透過率が75%以上であるため、表示素子として有機EL素子を用いた場合、有機ELの発光層から出る光(波長が主に380nmから780nmである。)がポリイミドフィルムを十分透過する。そのため、例えば、ボトムエミッション構造の場合、前記発光層からの発光を十分取出すことができる。さらに、本発明の範囲で好ましい条件とすることで、75%以上、さらに好ましい条件とすることで80%以上とすることもできる。
なお、前記ポリイミドフィルムは、その平均膜厚は制限されないが、その下限は、好ましくは5μmであり、より好ましくは10μmである。その上限は、好ましくは50μmであり、より好ましくは30μmである。
また、本発明のポリイミドフィルムは、厚さ10μmのフィルムに換算したYIが12以下であるため、有機EL装置用TFT基板、タッチパネル基板、カラーフィルター基板等の、透明性や着色が少ないことを要求される基板に好適に使用できる。さらに、本発明の範囲で好ましい条件とすることで、11以下とすることもできる。
また、本発明のポリイミドフィルムは、tanδ曲線におけるピーク温度が400℃以上である。つまり、ガラス転移点400℃以上である。そのため、フレキシブルOLED用途のTFT基板、フレキシブルLCD用途のTFT基板及びCF基板の製造工程で400℃以上の熱処理を行う場合でも、ポリイミドフィルムが軟化又は変形しにくいという長所がある。さらに、本発明の範囲で好ましい条件とすることで、410℃以上、より好ましい条件とすることで415℃以上とすることもできる。
また、本発明のポリイミドフィルムは、1%重量減少温度が500℃以上であるため、フレキシブルOLED用途のTFT基板、フレキシブルLCD用途のTFT基板及びCF基板の製造工程で400℃以上の熱処理を行う場合でも、ポリイミドフィルムが変質しにくいという長所がある。さらに、本発明の範囲で好ましい条件とすることで、505℃以上、より好ましい条件とすることで510℃以上、さらに好ましい条件とすることで515℃以上とすることもできる。
また、本発明のポリイミドフィルムは、本発明の範囲で好ましい条件とすることで、線膨張係数(CTE)が30ppm/K以下、さらに好ましい条件とすることで15ppm/K以下、さらに好ましい条件とすることで、10ppm/K以下とすることができる。この範囲とすることで、機能層の積層時に発生する熱応力により、フレキシブルデバイスに反りやクラックが生じたり、剥離したりするなどの問題を抑制できる。例えば、ボトムエミッション構造又はトップエミッション構造を有する有機EL装置用TFT基板、タッチパネル基板、カラーフィルター等における機能層積層等のフレキシブルデバイスの製造時に、基板の反りを抑制でき、フレキシブルデバイスの製造歩留まりに優れる。
上記のような性能を満たすポリイミドフィルムは、含フッ素ポリイミドであれば、その構造は限定しないが、該ポリイミドフィルムを構成するポリイミド成分が、耐熱性に優れるため、上記式(1)及び(2)で表される構造単位からなることが好ましい。
上記式(1)又は(2)において、R~Rは、互いに独立に水素原子、フッ素原子、炭素数1~5までのアルキル基もしくはアルコキシ基、又はフッ素置換炭化水素基であり、式(1)にあってはR~Rのうち、また、式(2)にあってはR~Rのうち、それぞれ少なくとも一つはフッ素原子又はフッ素置換炭化水素基である。つまり、ジアミン由来の構造単位の一部にフッ素原子又はフッ素置換炭化水素基を有していることが好ましい。
フッ素原子又はフッ素置換炭化水素基が、ジアミン由来の構造単位にのみ含まれてもよく、Arに含まれてもよく、酸二無水物由来の構造単位にも含まれていても良い。
~Rの好適な具体例としては、-H、-CH、-OCH、-F、-CFが挙げられ、より好適には、R~Rの少なくとも一つが-F、又は-CFのいずれかであるのがよい。
上記式(1)又は(2)で表される、好ましいジアミン由来の構造単位としては、下記式(4)で表される構造単位が挙げられる。
Figure 0007102191000003
上記式(4)のうち、より好ましくは、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル(略号:TFMB)由来の構造単位である。
本発明のポリイミドフィルムは、上記式(1)又は(2)で表される構造単位のうち1種類又は2種類以上を、全ジアミン由来の構造単位中、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上含む。この範囲であれば、イミド化のための熱処理において、最高温度を330~430℃とすることで、高い透明性と優れた支持基材からの剥離性を維持したまま、特に高い耐熱性を発現することができる。
また、ジアミン由来の構造単位は、上記一般式(1)又は(2)で表される構造単位以外の、公知のジアミン由来の構造単位を含んでも良い。
上記公知のジアミン由来の構造単位としては、好ましくは、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,6-ジメチル-m-フェニレンジアミン、2,5-ジメチル-p-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノメシチレン、4,4’-メチレンジ-o-トルイジン、4,4’-メチレンジ-2,6-キシリジン、4,4’-メチレン-2,6-ジエチルアニリン、2,4-トルエンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、3,3’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエタン、3,3’-ジアミノジフェニルエタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3-ジアミノジフェニルエーテル、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノ-p-テルフェニル、3,3’-ジアミノ-p-テルフェニル、ビス(p-β-アミノ-t-ブチルフェニル)エーテル、ビス(p-β-メチル-δ-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(2-メチル-4-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(1,1-ジメチル-5-アミノペンチル)ベンゼン、1,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン、2,4-ビス(β-アミノ-t-ブチル)トルエン、2,4-ジアミノトルエン、m-キシレン-2,5-ジアミン、p-キシレン-2,5-ジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、2,6-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノ-1,3,4-オキサジアゾール、ピペラジンが挙げられる。
より好ましくは、下記式(5)-i~式(5)-xiで表される構造単位である。
Figure 0007102191000004
これらの中でも、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(m-TB)、5-アミノ-2-(4-アミノフェニル)ベンゾイミダゾール(AAPBZI)又は5-アミノ-2-(4-アミノフェニル)ベンゾオキサゾール(AAPBZO)が、透明性と耐熱性のバランスに優れ、好適なものとして例示される。
また、本発明のポリイミドフィルムにおける酸二無水物由来の構造単位は、含フッ素ポリイミドである範囲内において、公知の構造単位を使用できる。
上記公知の酸二無水物由来の構造単位としては、好ましくは、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,2’-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、ナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,6,7-テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、2,6-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,7-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-テトラクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-テトラクロロナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’’,4,4’’-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’’,3,3’’-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’’,4’’-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)-プロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-プロパン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3.4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ペリレン-2,3,8,9-テトラカルボン酸二無水物、ペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸二無水物、ペリレン-4,5,10,11-テトラカルボン酸二無水物、ペリレン-5,6,11,12-テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン-1,2,7,8-テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン-1,2,6,7-テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン-1,2,9,10-テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、チオフェン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、(トリフルオロメチル)ピロメリット酸二無水物、ジ(トリフルオロメチル)ピロメリット酸二無水物、ジ(ヘプタフルオロプロピル)ピロメリット酸二無水物、ペンタフルオロエチルピロメリット酸二無水物、ビス{3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェノキシ}ピロメリット酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、5,5’-ビス(トリフルオロメチル)-3,3’,4,4’-テトラカルボキシビフェニル二無水物、2,2’,5,5’-テトラキス(トリフルオロメチル)-3,3’,4,4’-テトラカルボキシビフェニル二無水物、5,5’-ビス(トリフルオロメチル)-3,3’,4,4’-テトラカルボキシジフェニルエーテル二無水物、5,5’-ビス(トリフルオロメチル)-3,3’,4,4’-テトラカルボキシベンゾフェノン二無水物、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}ベンゼン二無水物、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}、トリフルオロメチルベンゼン二無水物、ビス(ジカルボキシフェノキシ)トリフルオロメチルベンゼン二無水物、ビス(ジカルボキシフェノキシ)ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン二無水物、ビス(ジカルボキシフェノキシ)テトラキス(トリフルオロメチル)ベンゼン二無水物、2,2-ビス{(4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル}ヘキサフルオロプロパン二無水物、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}ビフェニル二無水物、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル二無水物、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}ジフェニルエーテル二無水物、ビス(ジカルボキシフェノキシ)ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル二無水物が挙げられる。これらのテトラカルボン酸二無水物由来の構造単位の一種又は二種以上が、全テトラカルボン酸二無水物由来の構造単位の50モル%以上であることが好ましい。より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上である。
下記の式(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物由来の構造単位から選ばれる構造単位が、より好ましい。
Figure 0007102191000005
上記式(3)-i~vで表されるテトラカルボン酸二無水物由来の構造単位から選ばれる構造単位のうち、さらに好ましくは、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、4,4’-オキシジフタル酸ニ無水物(ODPA)及び2,2’-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)である。さらに好ましくは、CTEがより低くなり、フレキシブル基板の寸法安定性に優れ、フレキシブルデバイスの反りを抑制できるPMDAである。
本発明のポリイミドフィルムは、複数層のポリイミドからなるようにしてもよい。単層の場合には、上述のとおり、5~50μmの平均厚みを有するようにするのがよい。一方、複数層の場合においては、主たるポリイミド層が上記の厚みを有するポリイミドフィルムであれば良い。ここで主たるポリイミド層とは、複数層のポリイミドの中で、厚みが最も大きな比率を占めるポリイミド層を指し、その平均厚みを5~50μmにするのがよい。
本発明のポリイミドフィルムは、上記好ましい含フッ素ポリイミドを、ポリイミドフィルム中に、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上含む。
本発明のポリイミドフィルムを使用したフレキシブルデバイス向け透明ポリイミド基板は、例えば、ガラス基板を支持基材とし、この支持基材上にポリイミドフィルムを形成し、次いで透明ポリイミドフィルム上に機能層を積層し、支持基材を剥離することで得られる。前記ポリイミドフィルム上に積層する機能層の種類は特に制限しないが、液晶表示装置、有機EL表示装置、電子ペーパーをはじめとする表示装置、及び、カラーフィルター等の表示装置の構成部品も含んでいる。また、有機EL照明装置、タッチパネル装置、ITO等が積層された導電性フィルム、水分や酸素等の浸透を防止するガスバリアフィルム、フレキシブル回路基板の構成部品などを含めた、前記表示装置に付随して使用される各種機能装置も包含される。すなわち、本発明で言う表示素子とは、液晶表示装置、有機EL表示装置、及びカラーフィルター等の構成部品のみならず、有機EL照明装置、タッチパネル装置、有機EL表示装置の電極層もしくは発光層、ガスバリアフィルム、接着フィルム、薄膜トランジスタ(TFT)、液晶表示装置の配線層もしくは透明導電層等の、1種又は2種以上を組み合わせたものも含めている。
支持基材を剥離する方法としては、本発明のポリイミドフィルムであれば、レーザー光を支持基材(ガラス)とポリイミドフィルムとの界面に照射し剥離する、フィルムに切込みを入れて引き剥がす等、公知の手法によって支持基材から簡便に剥離可能である。
また、機能層の形成方法は、目的とするフレキシブルデバイスに応じて、適宜、形成条件が設定されるが、一般的には金属膜、無機膜、有機膜等をポリイミドフィルム上に成膜した後、必要に応じて所定の形状にパターニングしたり、熱処理したりするなど、公知の方法を用いて得ることができる。すなわち、これら表示素子を形成するための手段については、特に制限されず、例えば、スパッタリング、蒸着、CVD、印刷、露光、浸漬など、適宜選択されたものであり、必要な場合には真空チャンバー内などでこれらのプロセス処理を行うようにしてもよい。そして、ポリイミドフィルム上に機能層を形成した後、支持基材を剥離するのは、各種プロセス処理を経て機能層を形成した直後であってもよく、又はある程度の期間を経過させて支持基材と一体にしておき、例えば表示装置として利用する直前に剥離してもよい。
以下、実施例及び比較例に基づき、本発明を具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例等に用いた原材料の略号を以下に示す。
・TFMB:2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル
・PMDA:ピロメリット酸二無水物
・6FDA:2,-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物
・NMP:N-メチル-2-ピロリドン
実施例等における各物性の測定方法及び評価方法を以下に示す。
[光透過率T450及び黄色度YI]
ポリイミドフィルム(50mm×50mm)をSHIMADZU UV-3600分光光度計にて、450nmにおける光透過率(T450)を求めた。
また、下式(I)で表される計算式に基づいてYI(黄色度)を算出した。
YI=100×(1.2879X-1.0592Z)/Y (I)
X, Y, Zは試験片の三刺激値であり、JIS Z 8722に規定されている。
下式(II)で表される、厚み10μmに換算した値YI10を算出した。YI10は、(YI/厚み(μm))に10を乗じた値である。
YI10=YI/厚み×10 (II)
[ガラス転移温度(Tg)]
ポリイミドフィルム(5mm×70mm)を動的熱機械分析装置にて23℃から440℃まで10℃/分で昇温させたときの動的粘弾性を測定し、tanδ曲線における、Tgを表すピーク温度(第2ピークにおける、tanδ曲線の極大値)を求めた。なお、440℃まで昇温させても、ピーク温度が検出されなかったものは、>440℃と表した。
[1%重量減少温度(Td1)]
窒素雰囲気下で10~20mgの重さのポリイミドフィルムを、日立ハイテクサイエンス製の示差熱熱重量測定装置TG/DTA6200にて10℃/minの速度で30℃から550℃まで昇温させたときの重量変化を測定し、200℃での重量をゼロとし、重量減少率が1%の時の温度を熱分解温度(Td1)とした。
[熱膨張係数(CTE)]
3mm×15mmのサイズのポリイミドフィルムを、熱機械分析(TMA/SS6100)装置にて5.0gの荷重を加えながら一定の昇温速度(10℃/min)で30℃から280℃まで昇温し、次いで、250℃から100℃までの降温し、降温時におけるポリイミドフィルムの伸び量(線膨張)から熱膨張係数を測定した。
合成例1
窒素気流下で、100mlのセパラブルフラスコの中に、8.9552gのTFMBを、85gのNMPに溶解させた。10分間撹拌してから、この溶液に、6.0448gのPMDAを加えた。その後、この溶液を室温で24時間攪拌を続けて重合反応を行い、高重合度(Mw約12万、粘度が35,000cP)のポリアミド酸A(粘稠な無色溶液)を得た。
合成例2
窒素気流下で、100mlのセパラブルフラスコの中に、8.4914gのTFMBを、85gのNMPに溶解させた。10分間撹拌してから、この溶液に、1.4680gの6FDAと5.0406gのPMDAを加えた。その後、この溶液を室温で24時間攪拌を続けて重合反応を行い、高重合度(Mw12万、粘度が35,000cP以上)のポリアミド酸B(粘稠な無色溶液)を得た。
合成例3
窒素気流下で、100mlのセパラブルフラスコの中に、7.9373gのTFMBを、85gのNMPに溶解させた。10分間撹拌してから、この溶液に、3.2934gの6FDAと3.7693gのPMDAを加えた。その後、この溶液を室温で24時間攪拌を続けて重合反応を行い、高重合度(Mw15万、粘度が35,000cP)のポリアミド酸C(粘稠な無色溶液)を得た。
合成例4
窒素気流下で、100mlのセパラブルフラスコの中に、6.2797gのTFMBを、85gのNMPに溶解させた。10分間撹拌してから、この溶液に、8.7203gの6FDAを加えた。その後、この溶液を室温で24時間攪拌を続けて重合反応を行い、高重合度(Mw約20万、粘度11,800cP)のポリアミド酸D(粘稠な無色溶液)を得た。
なお、表1において、ジアミン及びテトラカルボン酸二無水物の量の単位はgであり、括弧内の数値は、ジアミン成分又はテトラカルボン酸二無水物成分中のモル%を示す。
Figure 0007102191000006
Figure 0007102191000007
Figure 0007102191000008
Figure 0007102191000009
[実施例1]
合成例1で得られたポリアミド酸Aに、溶剤NMPを加えて、粘度が4000cPになるように希釈した上で、ガラス基板(旭硝子製AN-100、サイズ=150mm×150mm、厚み=0.5mm)上に、スピンコーターを用いて、硬化後のポリイミド厚みが10μm程度になるように塗工した。続いて、100℃で15分間加熱を行った。そして、窒素雰囲気(酸素濃度:3%以下)中で、一定の昇温速度(3℃/min)で室温から350℃まで昇温させ、それから60min保持し、ガラス基板上に150mm×150mmのポリイミド層(ポリイミドフィルムA-1に相当)を形成し、ポリイミド積層体A-1を得た。
[実施例2~10、比較例1~13]
ポリアミド酸Aをポリアミド酸B~Dのいずれかに代えた他は、実施例1と同様にして操作を行い、最高硬化温度と保持時間が表2~表4に示すように、それぞれのポリイミド積層体A-2~D-2を得た。
上記の実施例と比較例で得られた積層体を、上のポリイミド層だけを、カッターで、剥離する部分の外周に沿って切り込みを入れ、ピンセットでガラスから剥離することによって、ポリイミドフィルムA-1~D-2を得た。なお、これらのフィルムの厚みは、表3及び表4の厚みの項に示した。
得られたポリイミドフィルムA-1~D-2について、それぞれのCTE、光透過率、YI10、Td1、Tgなど各種評価を行った。結果を表3と表4に示す。
[実施例11]
実施例11は、ポリイミドフィルム上に有機EL表示素子を付けた機能層付ポリイミドフィルムを製造する実施例である。まずは、上記で得られたポリアミド酸A溶液に、実施例1と同様に、NMPを加えて、粘度が4000cPになるように希釈した。厚み0.5mm、150mm×150mmのガラス基板上にスピンコーターを用いて熱処理後の膜厚が約10μm程度になるように塗工した。続いて、100℃で15分間加熱を行った。そして、窒素雰囲気(酸素濃度:3%以下)中で、一定の昇温速度(3℃/min)で室温から350℃まで昇温させ、それから60min保持し、ガラス基板上に150mm×150mmのポリイミド層(ポリイミドフィルムA-1)を形成し、ポリイミド積層体A-1を得た。ポリイミドフィルムA-1の上に水分と酸素の透湿を阻止できるようにガスバリア層を設けた。次に、ガスバリア層の上面に、薄膜トランジスタ(TFT)を含む回路構成層を400℃で形成させた。この場合、有機EL表示装置においては、薄膜トランジスタとして動作速度が速いLTPS-TFTを選択した。この回路構成層には、その上面にマトリックス状に複数配置された画素領域のそれぞれに対して、ITO(Indium Tin Oxide)の透明導電膜からなるアノード電極を形成した。更に、アノード電極の上面には有機EL発光層を形成し、この発光層の上面にはカソード電極を形成した。このカソード電極は各画素領域に共通に形成される。そして、このカソード電極の面を被うようにして、再度ガスバリア層を形成し、更に最表面には、表面保護のため封止基板を設置する。なお、有機EL発光層は、正孔注入層-正孔輸送層-発光層-電子輸送層等の多層膜(アノード電極-発光層-カソード電極)で形成される時に、有機EL発光層は水分や酸素により劣化するため真空蒸着で形成され、電極形成も含めて真空中で連続形成させた。
[実施例12]
実施例12は、ポリイミドフィルム上に投影型容量結合方式のタッチパネルを付けた機能層付ポリイミドフィルムを製造する実施例である。ポリアミド酸Bを使用する以外は実施例11と同様にして、ガラス基板上にポリイミドフィルムB-1を形成し、ポリイミド積層体B-1を得た。ポリイミドフィルムBの上に、縦横に2つの電極列(第1と第2の電極)を設け、指が画面に触れた時の電極の静電容量変化を測定することにより、接触位置を精密に検出できる。具体的構造は、第1の電極が形成された第1の基板と、第2の電極が形成された第2基板とを絶縁層(誘電層)を介して接合した構成となっている。薄型化、軽量化、フレキシブル化のためには、電極を形成する基板を従来のガラス基板から屈曲性のある樹脂基板に置き換えることで実現できる。また、第1の電極と第2の電極を1つの基板上に形成して、更なる薄型化、軽量化も進められている。
表2~表4に示したとおり、本発明の製造条件を満たした実施例1~10に係るポリイミドフィルムは、透明性を保持したままで、ガラス転移温度が400℃以上、Td1が500℃以上、熱膨張係数が30ppm/k以下であり、きれいに支持体基板から剥離できるものであった。従って、このようなポリイミドフィルムは、有機ELディスプレイ、有機EL照明、電子ペーパー、タッチパネル等の表示装置のほか、蒸着マスク、ファンアウトウェハーレベルパッケージ(FOWLP)を形成する支持基材として、好適に使用できる。
一方、表2~表4に示したとおり、本発明の製造条件を満たさない比較例1~比較例13に係るポリイミドフィルムからなるものは、ガラス転移温度が400℃以下であるか、TFT製造工程の中で変形して、位置合わせが難しく、位置ずれが発生した。また、YI10が12以上のものがあったりして、透明性が劣り、ディスプレイは着色となり、光学効果がよくなかった。

Claims (6)

  1. ポリイミド構造中にフッ素原子を有し、
    厚さ10μmのフィルムの状態において、450nmの光透過率が75%以上であり、黄色度が12以下であり、
    動的粘弾性測定により算出される損失正接曲線における、ガラス転移点を表すピーク温度が400℃以上であり、1%重量減少温度が500℃以上である、ポリイミドフィルムの製造方法であって、
    支持基材上にポリアミド酸溶液を塗布し、最高温度370℃以上430℃以下にて1分~2時間保持する条件で加熱処理を行い、イミド化する工程を有することを特徴とする、ポリイミドフィルムの製造方法。
  2. 加熱処理を最高温度370℃以上420℃以下にて2分~1時間保持する条件で行う、請求項1に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
  3. ポリアミド酸が、フッ素原子を有するジアミンと、フッ素原子を有するテトラカルボン酸二無水物及びフッ素原子を有しないテトラカルボン酸二無水物の混合物とを反応させて得られたものである、請求項1又は2に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
  4. ポリイミドフィルムは、線膨張係数が30ppm/K以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
  5. 下記式(1)又は(2)で表されるジアミン由来の構造単位が、全ジアミン由来の構造単位の70モル%以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
    Figure 0007102191000010
    (ここで、式(1)又は式(2)におけるR~Rは、互いに独立に水素原子、フッ素原子、炭素数1~5までのアルキル基もしくはアルコキシ基、又はフッ素置換炭化水素基であり、式(1)にあってはR~Rのうち、また、式(2)にあってはR~Rのうち、それぞれ少なくとも一つはフッ素原子又はフッ素置換炭化水素基である。)
  6. 下記の式(3)-i~式(3)-vで表されるテトラカルボン酸二無水物由来の構造単位から選ばれる構造単位が全テトラカルボン酸二無水物由来の構造単位の70モル%以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
    Figure 0007102191000011
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