JP2022055868A - 油脂由来風味付与剤の製造方法 - Google Patents

油脂由来風味付与剤の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】良好なコクなどの風味を飲食品に付与可能な油脂由来風味付与剤を提供する。【解決手段】工程(1)食用油脂に、最終濃度が0.05~10質量%となる量の酸を配合して混合物を調製すること、および工程(2)工程(1)で得た混合物を80~160℃で0.5~7時間加熱すること、を含む、油脂由来風味付与剤の製造方法、および当該製造方法によって製造した油脂由来風味付与剤を飲食品に配合することを含む飲食品の風味付与方法を提供し、当該風味は好ましくはコクである。【選択図】なし

Description

本発明は、油脂由来風味付与剤の製造方法に関し、より詳しくは、良好な風味を有する油脂由来風味付与剤の製造方法に関する。
油脂類を加熱して、当該油脂の構成脂肪酸等の酸化体を生成させて風味付与剤を製造する方法が提案されてきた。このような風味付与剤は、特に油脂分を含む飲食品によくなじむほか、可溶化させて水性食品にも配合でき、各種飲食品に配合した際、コクなどを付与して当該飲食品の嗜好性を上げることが期待されている。
例えば、特許文献1では、酸化防止剤(例えば、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、トコフエロールなど)および酸化剤(酸素、空気など)の存在下、65℃~180℃の加熱温度範囲で脂肪酸または脂肪酸誘導体(動植物油脂類)を酸化して、脂肪族アルデヒドおよびその他の化合物を含有する風味混合物を製造する方法が提案されている。
しかし、これらの油脂は、飲食品に配合すると油っぽさを感じさせる場合があり、飲食品に良好な風味を付与可能な油脂組成物の開発が望まれていた。
特開平4-229151号公報
本発明の課題は、飲食品に配合した際、その飲食品に良好な風味を付与可能な油脂由来風味付与剤の製造方法を提供することである。
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討したところ、全く予想外なことに、一定量の酸を加えてから食用油脂を加熱することで、飲食品に配合した際にその飲食品に良好な風味を付与可能な油脂由来風味付与剤を製造可能なことを見出した。
かくして、本発明は以下のものを提供する。
[1] 工程(1)食用油脂に、最終濃度が0.05~10質量%となる量の酸または酸性を示すその塩を配合して加熱用混合物を調製すること、および
工程(2)工程(1)で得た前記加熱用混合物を80~160℃で0.5~7時間加熱すること、
を含む、油脂由来風味付与剤の製造方法。
[2] 前記酸が無機酸である、[1]に記載の油脂由来風味付与剤の製造方法。
[3] 前記無機酸がリン酸または塩酸である、[2]に記載の油脂由来風味付与剤の製造方法。
[4] 前記油脂が大豆油、コーン油、パーム油、菜種油、またはポークオイルである、[1]~[3]のいずれか1項に記載の油脂由来風味付与剤の製造方法。
[5] 前記風味がコクである、[1]~[4]のいずれか1項に記載の油脂由来風味付与剤の製造方法。
[6] [1]~[5]のいずれか1項に記載の方法に従って製造した油脂由来風味付与剤を飲食品に配合することを含む、飲食品の風味付与方法。
[7] 前記風味がコクである、[6]に記載の飲食品の風味付与方法。
本発明によって、飲食品に配合した際に当該飲食品に良好な風味を付与可能な油脂由来風味付与剤を提供することができる。
以下、本発明について具体的態様を例示しつつ説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(本発明の油脂由来風味付与剤の製造方法)
本発明では、比較的多量の酸または酸性を示すその塩を油脂に配合してから加熱することで、驚くべきことに、それ自体は酸化臭(揚げものをした後の油などの加熱された油脂から感じられる、酸味のある油臭さを含む独特の香気)を呈しながらも飲食品に配合した際には当該飲食品に良好な風味を付与可能な油脂組成物が得られ、風味付与剤として有用であることを見出し、本発明に至った。
油脂に酸を配合して加熱することは、微量の酸を配合した加熱用の油脂の製造において、加熱によって生じる過酸化物価(POV)および酸化臭を抑制する観点からは検討されてきたが(例えば、特開第2015-84719号公報を参照)、積極的に良好な風味を付与可能な油脂組成物を得て風味付与剤として用いるという観点で検討されたことは、これまでなかった。
本発明の油脂由来風味付与剤の製造方法は、
工程(1)食用油脂に、最終濃度が0.05~10質量%となる量の酸または酸性を示すその塩を配合して加熱用混合物を調製すること、および
工程(2)工程(1)で得た加熱用混合物を80~160℃で0.5~7時間加熱すること、を含むことを特徴とする。
例えば、工程(1)として加熱可能な容器に入れた食用油脂に所定量の酸を加えた後、工程(2)として公知の加熱手段で上記範囲の加熱処理を行えばよい。本明細書では、酸または酸性を示すその塩を、総称して単に「酸」と称することもある。
工程(1)の酸または酸性を示すその塩の食用油脂への配合量は、上記の通り0.05~10質量%の範囲内であることを特徴とするが、配合量範囲の下限を0.05質量%、0.07質量%、0.1質量%、0.5質量%、0.7質量%、1質量%、2質量%、3質量%、4質量%、5質量%、6質量%、7質量%、8質量%、9質量%のいずれか、配合量範囲の上限を10質量%、9質量%、8質量%、7質量%、6質量%、5質量%、4質量%、3質量%、2質量%、1質量%、0.7質量%、0.5質量%、0.1質量%、0.07質量%のいずれかとして、これら下限および上限の任意の組み合わせの範囲内であってよい。飲食品に付与される風味の良好さの観点から、当該範囲は好ましくは0.05~9質量%、より好ましくは0.07~7質量%、さらに好ましくは0.1~5質量%であるが、これらに限定されない。
本明細書において、酸または酸性を示すその塩の配合量を表す質量%は、酸または酸性を示すその塩の溶液の液量ではなく、酸または酸性を示すその塩自体の量に基づいて算出するものとする。例えば、85%のリン酸溶液を油脂100gに配合した結果、酸配合食用油脂中の酸濃度が1質量%であるという場合、85%のリン酸溶液を1.2g配合し、酸配合食用油脂の質量が101.2gであり、酸の質量が1.01gであることを意味する。
工程(2)における加熱温度および加熱時間については、上記範囲内で任意に決定してよい。加熱温度範囲については、80℃~160℃の範囲内において、例えば、好ましくは85℃~140℃、より好ましくは90℃~130℃、さらに好ましくは95℃~120℃の範囲内である。加熱温度が高いほど油脂由来風味付与剤自体の香りは強くなり、飲食品に付与される風味が強くなる可能性があるが、加熱温度が160℃を超えると飲食品に配合した際に油脂が酸化したときの独特の油臭さ、油のべたつき感、くどさなどが感じられるようになる場合がある。加熱時間範囲については、0.5~7時間の範囲内において、例えば、好ましくは1時間~6時間、より好ましくは1時間~5時間、さらに好ましくは1時間~4時間、さらに好ましくは1時間~3時間である。加熱時間が7時間を超えると、飲食品に配合した際に油脂が酸化したときの独特の油臭さ、酸化臭、油のべたつき感、またはくどさなどが感じられる場合がある。
加熱温度と加熱時間との組合せとしては、例えば、好ましくは温度85℃~130℃にて1~5時間、より好ましくは、90℃~120℃にて1~4時間、さらに好ましくは95℃~120℃で1~3時間の組合せである。
酸濃度、加熱温度、および加熱時間の組合せとしては、例えば、酸濃度は、好ましくは0.05~3質量%、より好ましくは0.07~2質量%、さらに好ましくは0.1~1質量%の範囲内から選択され、加熱温度は、好ましくは90℃~130℃、より好ましくは95℃~120℃の範囲内から選択され、加熱時間は、好ましくは1~5時間、さらに好ましくは1~4時間の範囲内から選択される。例えば、酸濃度0.1~1質量%、加熱温度95~120℃、加熱時間1~4時間が好ましい組合せとして挙げられる。
いかなる理論にも拘束されるものではないが、油脂の劣化による過酸化物の生成は、油脂の加熱時、その油脂を構成するトリグリセリドから脂肪酸が遊離し、その遊離脂肪酸が酸化されることが一因であると考えられているが、油脂をその加熱時に所定範囲の量の酸または酸性を示すその塩と共存させることで、所定量の酸または酸性を示すその塩が、その酸性という性質によって脂肪酸由来の過酸化物生成を抑制し、かつ飲食品のコクに寄与する化合物の有効量生成を促進する、バランスの取れた結果が得られるものと考えられた。本明細書においてコクとは、風味のバランスがよい、満足感がある、風味の余韻が続くなどの特徴の少なくとも1つを含む風味であって、好ましくは前記に示した特徴全てを有する風味である。
本発明で特定する範囲内において、高濃度の酸の使用、高温での加熱、および/または長時間の加熱を行う場合、おそらく加熱による油脂の成分変化が進みやすく風味付与に寄与する各種物質が多く生成するために、ごく少量を飲食品に配合するだけでその飲食品にコクなどの良好な風味を付与でき、経済的である。一方で、配合対象の飲食品の風味や付与したい風味によっては、本発明の油脂由来風味付与剤の配合量をかなり微量とする場合があり作業効率が低下する場合がある、または飲食品に配合した際に酸化臭を感じさせる場合もあるため、その場合は、本発明に特定する範囲のうち比較的穏やかな条件(低濃度、低温、および/または短時間)を採用すればよい。このように、所望の風味や配合量に応じて、本発明で特定する範囲内において、適宜条件を検討することができる。
さらに、必要であれば固形物などを除去するため、工程(2)の加熱後に適宜所定温度にまで冷却してから濾過を行って固形物を除去し、さらに必要であれば遠心分離を行ってよい。濾過方法および遠心分離方法は特に限定されず、工程(2)の加熱後の状態に応じて決定してよい。濾過方法の例としては、飲食品製造に使用可能な紙や布による濾過が好ましく、具体的な好ましい例として細かい固形物を除去できるネル濾過が挙げられる。遠心分離については1000~2000Gで5~30分程度行う態様が例示できる。例えば、これらの範囲内などの条件で遠心分離することによって、得られた本発明の油脂由来風味付与剤中の水分含量を、好ましくは0.3質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下にするとよく、水分含量がこの範囲内であると、本発明の油脂由来風味付与剤が清澄に保たれ、香味や見た目の継時変化が小さいという利点がある。ただし、油脂種類や固形物の状態に応じて、遠心分離条件および/または水分含量を上記範囲外としてもよい。固形物をより多く除去する観点から、濾過および遠心分離の両方を実施することが好ましい。
本発明の製造方法で得られた油脂由来風味付与剤(以下、本発明の油脂由来風味付与剤と称することもある)は、各種飲食品に所定量配合することで良好な風味を飲食品に付与することができる。
(本発明に用い得る食用油脂)
本発明に使用可能な食用油脂は特に限定されず、飲食品に使用可能な油脂であれば任意のものを選択してよい。例えば、植物油脂でも動物油脂でもよく、食用精製加工油脂であってもよい。より具体的には、ヤシ油、パーム油、パーム核油、カカオ脂、ココナッツ油、落花生油、オリーブ油、椿油、綿実油、菜種油、大豆油、米糠油、胡麻油、アマニ油、桐油、麻実油、ベニバナ油、コーン油、米油、ひまわり油、グレープシードオイル、荏胡麻油、グリーンナッツオイル、アボカドオイル、アーモンド油、アルガン油、胡桃油、パンプキンシードオイル、ピーナッツオイル、キャノーラ油、からし油、牛脂、豚脂、羊脂、鶏油、肝油、魚油、鯨油、またはこれらの硬化油、部分硬化油、エステル交換油や、バター、マーガリンなどが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい例として、大豆油、コーン油、パーム油、菜種油、およびポーク油が挙げられるが、これらに限定されない。
(本発明に用い得る酸または酸性を示すその塩)
本発明に使用可能な酸または酸性を示すその塩は特に限定されず、飲食品に使用可能な酸または酸性を示すその塩であれば任意のものを選択してよい。使用する酸は、有機酸でも無機酸でもよい。好ましい酸の例としては、塩酸、硫酸、クエン酸、酢酸、コハク酸、乳酸、またはリン酸のいずれか1種以上であり、より好ましくは塩酸、酢酸、乳酸、またはリン酸であり、さらに好ましくは塩酸またはリン酸であり、最も好ましくはリン酸である。酸性を示すこれらの塩としては、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素カリウム、およびこれらの水和物が例示でき、中では、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素アンモニウム及びこれらの水和物が特に好ましい。
(本発明に用い得るその他の成分)
本発明の油脂由来風味付与剤の製造方法では、工程(1)の前、工程(1)の最中、工程(1)と工程(2)の間、工程(2)の後のいずれか1以上のタイミングで、所望の風味を得るなどの目的で、飲食品に使用可能な各種原料を更に食用油脂自体、加熱用混合物、または本発明の油脂由来風味付与剤に配合してもよい。加熱処理を行う工程(2)の前に配合を行えば、加熱反応によって生成すると考えられる各種生成物によって天然感を感じさせる自然な香味を付与でき、工程(2)の後に配合を行えば、配合した原料そのもののフレッシュな香味を付与できる。
そのような成分の例として、各種類の香料化合物または香料組成物、動植物油脂、油溶性色素類、ビタミン類、機能性物質、魚肉エキス類、畜肉エキス類、植物エキス類、酵母エキス類、動植物タンパク質類、動植物タンパク質分解物類、澱粉、デキストリン、アミノ酸類、糖類、核酸類、溶剤などを例示することができる。例えば、「特許庁公報、周知・慣用技術集(香料)第II部食品用香料、平成12年1月14日発行」、「日本における食品香料化合物の使用実態調査」(平成12年度厚生科学研究報告書、日本香料工業会、平成13年3月発行)、および「合成香料 化学と商品知識」(2016年12月20日増補新版発行、合成香料編集委員会編集、化学工業日報社)に記載されている天然精油、天然香料、合成香料などを挙げることができる。上記成分を更に用いた本発明の油脂由来風味付与剤は、そのままいわゆるシーズニングオイルとして使用してよく、更に後述の各種製剤に加工して用いてもよい。さらには、本発明の油脂由来風味付与剤は、増粘剤、ゲル化剤、酸化防止剤、色素、防腐剤などを本発明の油脂由来風味付与剤の効果を逸脱しない範囲内において含有してもよく、これらの剤の配合タイミングは前述のいずれのタイミングでもよい。
(本発明の油脂由来風味付与剤)
本発明の油脂由来風味付与剤は、各種飲食品に配合して良好な風味を付与できるものである。良好な風味を付与するとは、油脂感、まろやかさ、油脂独特の甘み、コク、満足感、ボリューム感、風味の厚み、風味の広がり、風味の強さ、風味の余韻が長く続くこと、の1以上を付与するものであってよい。本明細書において、風味の付与とは、飲食品が有さない新たな風味を付け加えること、または飲食品がすでに有する風味を増強すること、またはその両方であってよい。本明細書において、油脂感とは、油を単に多く使用したような油っぽさ、油くささではなく、例えば、油脂のまろやかで甘いコクを感じさせる感覚を含んでよい。さらには、本発明の油脂由来風味付与剤は、各種飲食品に配合した際、苦味、酸味、エグ味などの異味異臭を抑制するものであってもよく、さらにその抑制によって飲食品の素材の香味を際立たせるものであってもよい。従って本発明の油脂由来風味付与剤は、飲食品の風味付与ないし改善剤として使用することができる。
本発明の油脂由来風味付与剤は、本発明の製造方法で製造することによって、酸化臭および/または青臭さを有する。POVが低い、すなわち過酸化物量が少ないのに酸化臭を呈することは、全く驚くべき発見であった。本明細書において、酸化臭とは、上述の通り、揚げものをした後の油などの加熱された油脂から感じられる、酸味のある油臭さを含む独特の香気である。本発明の油脂由来風味付与剤はさらに、青臭さが感じられる場合がある。青臭さとは、キュウリ、瓜、オリーブ種子、白いバナナなどの緑色または未熟な野菜や果物から感じられる香りや、植物の葉や茎を切ったときなどに感じられるような香りを意味する。本発明者らは、本発明の油脂由来風味付与剤は酸化臭および/または青臭さを呈するが、飲食品に適量配合することで、飲食品に良好な風味を与え、例えばコクを付与できるという効果を発見した。酸化臭や青臭さは抑制する対象として見なされ得るところ(例えば、特許第6240621号明細書などを参照)、この発見は全く予想外であった。
いかなる理論に拘泥するものではないが、この酸化臭を呈する成分によって、本発明の油脂由来風味付与剤を飲食品に配合した際に飲食品に良好な風味を付与可能であると考えられ、さらに青い香りを呈する場合には、そのような香りを呈する成分によってより良好な風味を飲食品に付与可能であると推察できる。本発明の油脂由来風味付与剤に含まれる酸化臭に寄与する化合物としては、ヘキサナール、trans-2-ノネナールが例示でき、青臭さに寄与する化合物としては2-ペンチルフランが例示できる。
また、本発明の製造方法で製造することによって得られる本発明の油脂由来風味付与剤は、POVも低いという優れた特徴を有する。本発明の油脂由来風味付与剤はPOVが一定範囲内であることが好ましく、当該範囲は、0~10meq/kgであることが好ましく、0~5meq/kgであることが更に好ましく、0~3meq/kgであることが更に好ましい。POVは、基準油脂分析試験法 2.5.2.1-2013に従って測定したものであってよい。
(本発明の油脂由来風味付与剤の適用例)
本発明の油脂由来風味付与剤はそのまま飲食品に配合することができるが、その他成分を水溶性または油溶性の溶媒に溶解した溶液、乳化製剤、粉末製剤、その他固体製剤(固形脂など)の各種製剤としてもよい。
水溶性溶媒としては、例えば、エタノール、メタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、2-プロパノール、メチルエチルケトン、グリセリン、プロピレングリコールなどを例示することができる。これらのうち、飲食品への使用の観点から、エタノールまたはグリセリンが特に好ましい。油溶性溶媒としては、植物性油脂、動物性油脂、精製油脂類(例えば、中鎖脂肪酸トリグリセリドなどの加工油脂や、トリアセチン、トリプロピオニンなどの短鎖脂肪酸トリグリセリドが挙げられる)、各種精油、トリエチルシトレートなどを例示することができる。
また、乳化製剤とするためには、本発明の油脂由来風味付与剤を水溶性溶媒および乳化剤と共に乳化して得ることができる。本発明の油脂由来風味付与剤の乳化方法としては特に制限されるものではなく、従来から飲食品などに用いられている各種類の乳化剤、例えば、脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリド、脂肪酸トリグリセリド、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチン、加工でん粉、ソルビタン脂肪酸エステル、キラヤ抽出物、アラビアガム、トラガントガム、グアーガム、カラヤガム、キサンタンガム、ペクチン、アルギン酸及びおよびその塩類、カラギーナン、ゼラチン、カゼインキラヤサポニン、カゼインナトリウムなどの乳化剤を使用してホモミキサー、コロイドミル、回転円盤型ホモジナイザー、高圧ホモジナイザーなどを用いて乳化処理することにより安定性の優れた乳化液を得ることができる。これら乳化剤の使用量は厳密に制限されるものではなく、使用する乳化剤の種類などに応じて広い範囲にわたり変えることができるが、通常、本発明の油脂由来風味付与剤1質量部に対し、約0.01~約100質量部、好ましくは約0.1~約50質量部の範囲内が適当である。また、乳化を安定させるため、かかる水溶性溶媒液は水の他に、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、マルチトール、ショ糖、グルコース、トレハロース、糖液、還元水飴などの多価アルコール類の1種類または2種類以上の混合物を配合することができる。
また、かくして得られた乳化液は、所望ならば乾燥することにより粉末製剤とすることができる。粉末化に際して、さらに必要に応じて、アラビアガム、トレハロース、デキストリン、砂糖、乳糖、ブドウ糖、水飴、還元水飴などの糖類を適宜配合することもできる。これらの使用量は粉末製剤に望まれる特性などに応じて適宜に選択することができる。
本発明の油脂由来風味付与剤を含有する各種製剤はさらに、必要に応じて、飲食品用添加物において通常使用されている成分を含有していてもよい。例えば、水、エタノールなどの溶剤や、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ヘキシルグリコール、ベンジルベンゾエート、トリエチルシトレート、ジエチルフタレート、ハーコリン、中鎖脂肪酸トリグリセライド、中鎖脂肪酸ジグリセライドなどの香料保留剤を含有することができる。
飲食品の例としては、これらに限定されないが、例として、レモン、オレンジ、グレープフルーツ、ライム、マンダリン、みかん、カボス、スダチ、ハッサク、イヨカン、ユズ、シークワーサー、金柑などの各種柑橘風味;ストロベリー、ブルーベリー、ラズベリー、アップル、チェリー、プラム、アプリコット、ピーチ、パイナップル、バナナ、メロン、マンゴー、パパイヤ、キウイ、ペアー、グレープ、マスカット、巨峰などの各種フルーツ風味;ミルク、ヨーグルト、バターなどの乳風味;バニラ風味;緑茶、紅茶、ウーロン茶、ハーブティーなどの各種茶風味;コーヒー風味;コーラ風味;カカオ風味;ココア風味;スペアミント、ペパーミントなどの各種ミント風味;シナモン、カモミール、カルダモン、キャラウェイ、クミン、クローブ、コショウ、コリアンダー、サンショウ、シソ、ショウガ、スターアニス、タイム、トウガラシ、ナツメグ、バジル、マジョラム、ローズマリー、ローレル、ガーリック、ワサビなどの各種スパイスまたはハーブ風味;アーモンド、カシューナッツ、クルミなどの各種ナッツ風味;ワイン、ブランデー、ウイスキー、ラム、ジン、リキュール、日本酒、焼酎、ビールなどの各種酒類風味;タマネギ、セロリ、ニンジン、トマト、キュウリなどの野菜風味;鶏肉、鴨肉、豚肉、牛肉、羊肉、馬肉などの各種畜肉風味;マグロなどの赤身魚、サバ、タイ、サケ、アジなどの白身魚、アユ、マス、コイなどの淡水魚、サザエ、ハマグリ、アサリ、シジミなどの貝類、エビ、カニなどの各種甲殻類、ワカメ、昆布などの各種海藻類、などの各種魚介または海藻風味;米、大麦、小麦、麦芽などの麦類などの各種穀物風味;牛脂、鶏油、ラードなどの畜肉の油脂や各種魚類の油などの各種油脂風味;などの風味の1以上を有する飲食品が挙げられる。これらのうち、特に油脂のコクによってその風味が良好となる飲食品、例えば乳風味、コーヒー風味、カカオ風味、スパイスまたはハーブ風味、野菜風味、畜肉風味、魚介または海藻風味、穀物風味、油脂風味の少なくとも1種の風味を有する飲食品などに好適に使用できる。
より具体的な飲食品例としては、せんべい、あられ、おこし、餅類、饅頭、ういろう、あん類、羊かん、水羊かん、錦玉、ゼリー、カステラ、飴玉、ビスケット、クラッカー、ポテトチップス、クッキー、パイ、プリン、バタークリーム、カスタードクリーム、シュークリーム、ワッフル、スポンジケーキ、ドーナツ、チョコレート、チューインガム、キャラメル、キャンディー、ピーナッツペーストなどのペースト類、などの菓子類;パン、うどん、ラーメン、中華麺、すし、五目飯、チャーハン、ピラフ、餃子の皮、シューマイの皮、お好み焼き、たこ焼き、などのパン類、麺類、ご飯類;糠漬け、梅干、福神漬け、べったら漬け、千枚漬け、らっきょう、味噌漬け、たくあん漬け、および、それらの漬物の素、などの漬物類;サバ、イワシ、サンマ、サケ、マグロ、カツオ、クジラ、カレイ、イカナゴ、アユなどの魚類、スルメイカ、ヤリイカ、紋甲イカ、ホタルイカなどのイカ類、マダコ、イイダコなどのタコ類、クルマエビ、ボタンエビ、イセエビ、ブラックタイガーなどのエビ類、タラバガニ、ズワイガニ、ワタリガニ、ケガニなどのカニ類、アサリ、ハマグリ、ホタテ、カキ、ムール貝などの貝類、などの魚介類;缶詰、煮魚、佃煮、すり身、水産練り製品(ちくわ、蒲鉾、あげ蒲鉾、カニ足蒲鉾など)、フライ、天ぷら、などの魚介類の加工飲食物類;鶏肉、豚肉、牛肉、羊肉、馬肉などの畜肉類;カレー、シチュー、ビーフシチュー、ハヤシライスソース、ミートソース、マーボ豆腐、ハンバーグ、餃子、釜飯の素、スープ類(コーンスープ、トマトスープ、コンソメスープなど)、肉団子、角煮、畜肉缶詰などの畜肉を用いた加工飲食物類;卓上塩、調味塩、醤油、粉末醤油、味噌、粉末味噌、もろみ、ひしお、ふりかけ、お茶漬けの素、マーガリン、マヨネーズ、ドレッシング、食酢、三杯酢、粉末すし酢、中華の素、天つゆ、めんつゆ(昆布だしまたは鰹だしなど)、ソース(中濃ソース、トマトソースなど)、ケチャップ、焼肉のタレ、カレールー、シチューの素、スープの素、だしの素(昆布だしまたは鰹だしなど)、複合調味料、本みりん、新みりん(煮切りみりん)、唐揚げ粉・たこ焼き粉などのミックス粉、などの調味料類、これらの調味料類が配合された動物性または植物性だし風味飲食品;チーズ、ヨーグルト、バターなどの乳製品;ビール酵母、パン酵母などの各種酵母、乳酸菌など各種微生物発酵品;野菜の煮物、筑前煮、おでん、鍋物などの煮物類;持ち帰り弁当の具や惣菜類;リンゴ、ぶどう、柑橘類(グレープフルーツ、オレンジ、レモンなど)などの果物の果汁飲料や果汁入り清涼飲料、果物の果肉飲料や果粒入り果実飲料;トマト、ピーマン、セロリ、ウリ、ニガウリ、ニンジン、ジャガイモ、アスパラガス、ワラビ、ゼンマイなどの野菜や、これら野菜類を含む野菜系飲料、野菜スープなどの野菜含有飲食品;コーヒー、ココア、緑茶、紅茶、烏龍茶、清涼飲料、コーラ飲料、炭酸飲料(柑橘香味など各種香味のサイダーなど)、乳酸菌飲料などの嗜好飲料品;生薬やハーブを含む飲料;コーラ飲料、果汁飲料、乳飲料、ノンアルコールビールやいわゆる「第三のビール」などを含むビールテイスト飲料、スポーツドリンク、ハチミツ飲料、ビタミン補給飲料、ミネラル補給飲料、栄養ドリンク、滋養ドリンク、乳酸菌飲料などの機能性飲料;各種酒類風味(ビール風味、梅酒風味、チューハイ風味など)のアルコールテースト飲料などのノンアルコール嗜好飲料類;ワイン、焼酎、泡盛、清酒、ビール、チューハイ、カクテルドリンク、発泡酒、果実酒、薬味酒、いわゆる「第三のビール」などのその他醸造酒(発泡性)またはリキュール(発泡性)など、これらを含むアルコール飲料類;などを挙げることができる。
本発明において、飲食品中の本発明の油脂由来風味付与剤の濃度は、飲食品の香味や所望の効果の程度などに応じて任意に決定できる。当該濃度の例として、飲食品の全体質量に対して、本発明の油脂由来風味付与剤の濃度として0.00001%~50質量%の範囲内が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい濃度の例としては、飲食品の全体質量に対して、本発明の油脂由来風味付与剤の濃度として0.0001~30質量%または0.001~20質量%が挙げられるが、飲食品の風味特性や油脂分量に応じて選択することができる。さらに具体的には、ラー油、ねぎ油、各種シーズニングオイルなどの油脂を多く含む飲食品には、その風味にも依存するが、0.1質量%~50質量%、好ましくは1~30質量%、さらに好ましくは5~20質量%の範囲がとくに良好な油脂のコクを付与できる濃度範囲として例示でき、レトルト食品や冷凍食品などの加工調理済食品類には、その風味にも依存するが、0.001~1質量%、好ましくは0.05~0.7質量%、さらに好ましくは0.01~0.5質量%、さらに好ましくは0.03~0.3質量%の範囲が特にコクを付与できる濃度範囲として例示でき、飲料には、その風味にも依存するが、0.00001~5質量%、好ましくは0.0001~1質量%、さらに好ましくは0.001~0.1質量%の範囲が例示でき、特に甘味を呈する飲料においてこの例示範囲において優れたコクを付与できる。特に、液状の水系飲食品(本明細書において、水系飲食品とは水を含むことで親水性成分を溶解可能な飲食品を意味する)では、本発明の油脂由来風味付与剤は水中油型の乳化物の剤形で好適に使用でき、少量の配合で飲食品に油脂感、ボリューム感、満足感、コクなどを付与することができる。
本発明の油脂由来風味付与剤は、ヒト以外の動物用の飲食品、例えば家畜用飼料やペットフードに使用することもできる。本発明の油脂由来風味付与剤の動物用飲食品への配合量は特に限定されず、各動物に適すると思われる風味や健康状態などに応じて適宜決定してよく、例えば、上述と同様の範囲が例示できるが、これらに限定されない。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]各種酸および油脂を用いた本発明の油脂由来風味付与剤の製造
(1)大豆油
食用油脂として市販の大豆油を用意し、酸または酸性を示すその塩としてリン酸(85%水溶液)、リン酸二水素ナトリウム二水和物、塩酸(35%水溶液)、クエン酸、酢酸(90%水溶液)、コハク酸、乳酸を用意した。なお、濃度の記載のない酸は水溶液でなく結晶粉末を用いたことを意味する。
そして、工程(1)として各酸または酸性を示すその塩を大豆油に配合して、食用油脂と酸または酸性を示すその塩との、加熱用混合物を得た。酸または酸性を示すその塩の濃度は、前記混合物全体に対して、すなわち最終濃度として0.5質量%とした。
工程(2)として、工程(1)で得た加熱用混合物を120℃で3時間加熱した。
その後、約50℃まで冷却し、ネル濾過を行って固形不純物を取り除き、次いで1300×gで10分遠心分離を行って、本発明の油脂由来風味付与剤を得た。この油脂由来風味付与剤の匂いを、経験年数10年以上のよく訓練されたパネリスト5名に評価させたところ、5名全員が、油脂独特の酸化臭および青草のような青臭さを感じるとコメントした。
一方で、比較例として、酸または酸性を示すその塩を配合しなかった市販の大豆油そのままを工程(2)の加熱処理に供し、さらに上記ネル濾過および遠心分離を行って、比較品の油脂由来風味付与剤を得た。
そして、得られた各油脂由来風味付与剤および酸無添加の大豆油について、POVを測定した。測定は、基準油脂分析試験法 2.5.2.1-2013に従い、以下の手順で行った。
1.三角フラスコに、イソオクタン:酢酸=2:3(体積比)の混合溶液を調製し、撹拌子で緩やかに撹拌する。
2.冷蔵保存した飽和ヨウ化カリウム溶液を用意する。
3.0.01mol/Lのチオ硫酸ナトリウム溶液を調製する。
4.過酸化物価測定装置(平沼自動滴定装置COM-1700、平沼産業株式会社製)を用い、モード「TS1」にて測定を行う。
5.滴下ビュレットに調製した0.01mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液を満たすため、パージを行う。具体的には、ビュレットの連結部を逆さにし、ビュレット下部に廃液受けを置く。パージが終了したら、連結部を元の向きに戻す。
6.メニューで測定対象として「POV」を選択する。
7.200ml共栓三角フラスコに試料(上記の通り調製した油脂由来風味付与剤)を5g程度量り取り、当該フラスコに撹拌子を入れ、調製したイソオクタン・酢酸混合溶液を当該フラスコに30ml注ぎ入れ、撹拌子を回転させて試料(前記油脂由来風味付与剤)を均一に溶解させる。
8.前記フラスコ内の空気を窒素で置換し、窒素を通じたまま飽和ヨウ化カリウム溶液を0.2ml加え、直ちに共栓をして撹拌子にて1分間撹拌する。さらに超純水を100ml注ぎ入れてよく振り混ぜる。
9.三角フラスコを装置に載せ、電極類を下ろして浸す。滴下ビュレットは、先端が液面にちょうど浸る程度とする。
10.撹拌子により攪拌を開始し、次いで測定を開始する。
また、得られた各油脂由来風味付与剤を、市販のレモンドレッシングに最終濃度が0.3質量%になるように配合して、そのドレッシングについて経験年数10年以上のよく訓練されたパネリスト15名による官能評価を行った。官能評価では、各ドレッシングを食させ、そのコクの好ましさ、酸味抑制の好ましさ、および全体的な風味の好ましさについて下記基準で点数付けさせるとともに、風味について感じられたことをコメントさせた。POVの測定結果と官能評価の平均点数および代表的なコメントを下記表1に示す。
(評価基準)4点を最高点、1点を最低点とし、0.1点刻みで該当すると思われる点数を付与
4:顕著に上がっていて非常に好ましい
3:明らかに上がっていて好ましい
2:わずかに上がっていてやや好ましい
1:対照品との差が感じられない
Figure 2022055868000001
表1に示すように、本発明の油脂由来風味付与剤は優れたコクを付与しており、比較品では得られない油脂のまろやかさや甘さも付与できるものであり、さらには、レモンのドレッシングの酸味もまろやかになり、嗜好性の高いドレッシングが得られた。POVについては、いずれの酸も酸無添加の比較品と比べてPOVが低かったが、特にリン酸および塩酸で低い値であった。
(2)ポークオイル
市販のポークオイルを用意し、使用した酸または酸性を示すその塩の種類を下記表2の通りとした以外は実施例1と同様にして、本発明の油脂由来風味付与剤を得た。すなわち、工程(1)として下記表2に記載の各酸を0.5質量%の濃度となるようにポークオイルに配合して、食用油脂と酸または酸性を示すその塩との加熱用混合物を得て、次いで工程(2)として、工程(1)で得た加熱用混合物を120℃で3時間加熱し、上記ネル濾過および遠心分離を行うことによって、本発明の油油脂由来風味付与剤を得た。この油脂由来風味付与剤の風味を、経験年数10年以上のよく訓練されたパネリスト7名に評価させたところ、7名全員が、油脂独特の酸化臭および青草のような青臭さを感じるとコメントした。
そして、得られた各油脂由来風味付与剤のPOVを測定した。また、得られた各油脂由来風味付与剤の風味付与効果を確認するため、市販の醤油風味インスタントラーメンの粉末スープを400mlの湯に溶かして醤油風味スープを調製し、そこに得られた各油脂由来風味付与剤を最終濃度が0.2質量%となるように配合して本発明のスープを調製した。さらに、酸を添加していない市販のポークオイルを前記工程(2)に供して加熱したものを前記スープに同量配合して比較品のスープを調製した。得られた各スープについて、15人の経験年数10年以上のパネリストによる官能評価を行った。官能評価では、対照品と比べたコクについて実施例1と同じ下記基準で点数付けを行った。POVの測定結果と官能評価の平均点数を下記表2に示す。
(評価基準)4点を最高点、1点を最低点とし、0.1点刻みで該当すると思われる点数を付与
4:顕著に上がっていて非常に好ましい
3:明らかに上がっていて好ましい
2:わずかに上がっていてやや好ましい
1:対照品との差が感じられない
Figure 2022055868000002
表2に示すように、本発明の油脂由来風味付与剤は、いずれの酸または酸性を示すその塩を用いても、比較品よりも顕著に優れたコクを付与可能なものであり、かつPOVが低いことが確認された。
[実施例2]酸の濃度
市販の大豆油、ポークオイルおよびリン酸(85%水溶液)を用意し、下記表2の通り様々な濃度でリン酸を大豆油またはポークオイルに添加した以外は実施例1と同様にして、本発明および比較品の油脂由来風味付与剤を調製した。本発明品の油脂由来風味付与剤の風味を、経験年数10年以上のよく訓練されたパネリスト5名に評価させたところ、5名全員が、本発明および比較品の油脂由来風味付与剤は油脂独特の酸化臭および青草のような青臭さを感じるとコメントし、比較品5および8については、くどい酸味が感じられるとコメントした。
次いで、実施例1と同様にしてPOV測定を行った。また、官能評価も実施した。官能評価では、市販のチキンスープを用意し、そこに最終濃度0.1質量%となるように本発明もしくは比較品の油脂由来風味付与剤を配合したスープ、および加熱前の市販の大豆油またはポークオイルを前記市販のチキンスープに最終濃度0.1質量%となるように配合した対照品のスープを調製した。そして、加熱前の市販の大豆油またはポークオイルを配合したスープを対照品として、対照品と比較した本発明品または比較品のスープのコクについて、実施例1と同じ下記基準に従って点数付けさせた。なお、同じ食用油脂を用いたスープ同士を比較した。POV測定結果と官能評価の平均結果を下記表3に示す。
(評価基準)4点を最高点、1点を最低点とし、0.1点刻みで該当すると思われる点数を付与
4:顕著に上がっていて非常に好ましい
3:明らかに上がっていて好ましい
2:わずかに上がっていてやや好ましい
1:対照品との差が感じられない
Figure 2022055868000003
表3に示すように、本発明の油脂由来風味付与剤は、酸濃度を本発明の範囲とすることで、その範囲外である比較品よりも顕著に優れたコクを付与可能なものであった。また、POVが低いことが確認された。なお、酸濃度が12%の場合(比較品5および8)は、パネリスト15名中14名が、対照品よりも油っぽさとくどい酸味が目立ちコクが増したとは言い難かったとの評価であった。
[実施例3]加熱の時間および温度
酸濃度を0.1質量%とし、下記表4に記載の温度および時間で加熱処理を行った以外は実施例1と同様にして、本発明品および比較品の油脂由来風味付与剤を得た。すなわち、工程(1)として、リン酸水溶液(85%水溶液)を用い、酸濃度が0.1質量%の濃度となるように大豆油に配合して、食用油脂と酸との加熱用混合物を調製した。次いで工程(2)として、工程(1)で得られた前記加熱用混合物を下記表4に記載の温度および時間で加熱し、上記ネル濾過および遠心分離を行って、本発明品および比較品の油脂由来風味付与剤を得た。得られた各油脂由来風味付与剤の風味を、経験年数10年以上のよく訓練されたパネリスト5名に評価させたところ、本発明の油脂由来風味付与剤については、5名全員が、油脂独特の酸化臭および青草のような青臭さを感じるとコメントした。一方で、比較品9については酸化臭をごくわずかに感じるが青臭さは感じられず、比較品10については酸化臭が非常に目立つとコメントした。
そして、実施例1と同様にして、POVを測定した。また、市販のマヨネーズを用意し、そこに最終濃度が0.3質量%となるように、本発明品または比較品の油脂由来風味付与剤を配合して本発明品または比較品のマヨネーズを調製し、15名の経験年数10年以上のよく訓練されたパネリストに得られた各マヨネーズのコクについて、実施例1の基準で点数付けさせた。すなわち、市販のマヨネーズを対照品として、対照品と比べたコクについて実施例1と同じ下記基準で点数付けを行った。POVの測定結果と官能評価の平均点数を下記表4に示す。
(評価基準)4点を最高点、1点を最低点とし、0.1点刻みで該当すると思われる点数を付与
4:顕著に上がっていて非常に好ましい
3:明らかに上がっていて好ましい
2:わずかに上がっていてやや好ましい
1:対照品との差が感じられない
Figure 2022055868000004
表4に示すように、本発明品は比較品に比べて顕著にコクを付与することができ、飲食品により良好な風味を付与できることが確認された。なお、15名の経験年数10年以上のパネリストに各本発明品または各比較品を配合したドレッシングについて、市販のドレッシングと比べた風味についてコメントさせたところ、本発明品については、15名中全員がコクと甘さが増して満足感と呈味の余韻が増強されたと回答し、比較品については、比較品9は15名中全員がコクも甘さも市販のドレッシングと大差なく、やや油っぽさが感じられ風味が落ちたと感じられるようになったと回答し、比較品10は15名中13名が、油っぽさとくどい酸味が感じられるようになりマヨネーズとは異なる違和感がややあると回答した。
[実施例4]各種食用油脂の使用
下記表5に記載の通り様々な市販の食用油脂を用意し、各油脂に、リン酸を食用油脂に最終濃度が1.0質量%の濃度となるように配合した後、100℃で2時間加熱して本発明の油脂由来風味付与剤を製造した。また、リン酸を添加していない市販の各食用油脂を同様に加熱、すなわち100℃で2時間加熱して、比較品を得た。そして、得られた本発明品および比較品について、POVの測定および官能評価を行った。POVの測定は実施例1と同様に行った。官能評価では、本発明品または比較品を実施例1で用いた市販のマヨネーズに最終濃度0.1質量%(対ドレッシング全量)で配合して本発明品および比較品のマヨネーズを調製し、各マヨネーズを経験年数10年以上のよく訓練されたパネリスト15名に食させ、比較品と比べた本発明品のコクの好ましさについて実施例1と同じ下記基準で点数付けさせた。
(評価基準)4点を最高点、1点を最低点とし、0.1点刻みで該当すると思われる点数を付与
4:顕著に上がっていて非常に好ましい
3:明らかに上がっていて好ましい
2:わずかに上がっていてやや好ましい
1:比較品との差が感じられない
POVの測定結果と官能評価の平均的な結果を下記表5に示す。
Figure 2022055868000005
表5に示すように、本発明によって、油脂の種類によらず、飲食品に良好な風味を付与可能な油脂由来風味付与剤が得られることが確認された。また、POVも酸無添加と比較して低いものであった。
[実施例5]酸または酸性を示すその塩および食用油脂以外の成分の配合例
下記表6の成分を混合し、90℃で4時間加熱を行って、本発明品および比較品の油脂由来風味付与剤を製造した。本発明品の酸濃度は、リン酸、酵母エキス、および大豆油の混合物(工程(1)の加熱用混合物に相当)全量に対し3.5質量%であり、比較品の酸濃度は前記混合物全量に対しそれぞれ0.04質量%、0質量%であった。得られた本発明および比較品の油脂由来風味付与剤を市販のラー油に7質量%(最終濃度)の濃度となるように配合して風味付けラー油を調製し、それらについて、実施例4と同様にして、よく訓練された12名のパネリストによる官能評価を行い、コクの好ましさについて点数付けさせるとともに、各風味付けラー油の風味についてコメントさせた。12名のパネリストの点数平均と代表的なコメントを表6に記載する。
Figure 2022055868000006
リン酸を本発明品の範囲の量で配合した本発明品の油脂由来風味付与剤は、範囲外の比較品に比べて、油脂の甘いコクなど比較品では得られない優れた香味を付与できるものであった。また、POVも低いものであった。
[実施例6]本発明の油脂由来風味付与剤の各種飲食品への配合例
(1)トマトスープ
市販の缶入りトマトスープに、実施例5で製造した本発明の油脂由来風味付与剤(本発明品50)を最終濃度0.01質量%となるように配合して、本発明のスープを調製した。一方で、実施例5で食用油脂として使用した市販の大豆油を、前述の本発明の油脂由来風味付与剤と同量市販のトマトスープに配合して、比較品のスープを調製した。よく訓練されたパネリスト7名に、本発明および比較品のスープの風味について官能評価させた。その結果、パネリスト7名全員が、本発明のトマトスープは、比較品のトマトスープよりも、油脂様のコクと甘味が増強されるとともに、旨味が増強されて、酸味のカドが抑えられてよりまろやかな風味になっていたと回答した。
(2)カロリーオフレトルトカレー
市販のカロリーオフのレトルトカレーに、実施例5で製造した本発明の油脂由来風味付与剤(本発明品50)を3質量%の濃度となるように配合して本発明のレトルトカレーを調製した。一方で、実施例5で食用油脂として使用した市販の大豆油を同量市販のレトルトカレーに配合して、比較品のレトルトカレーを調製した。よく訓練されたパネリスト5名に、本発明および比較品のレトルトカレーの風味について官能評価させた。その結果、パネリスト5名全員が、本発明の油脂由来風味付与剤を配合していないレトルトカレーに比べて、油脂様のコクと甘味が増強され、カロリーオフ製品でないようなボリューム感と満足感が増していたと回答した。

Claims (7)

  1. 工程(1)食用油脂に、最終濃度が0.05~10質量%となる量の酸または酸性を示すその塩を配合して加熱用混合物を調製すること、および
    工程(2)工程(1)で得た前記加熱用混合物を80~160℃で0.5~7時間加熱すること、
    を含む、油脂由来風味付与剤の製造方法。
  2. 前記酸が無機酸である、請求項1に記載の油脂由来風味付与剤の製造方法。
  3. 前記酸がリン酸または塩酸である、請求項2に記載の油脂由来風味付与剤の製造方法。
  4. 前記油脂が大豆油、コーン油、パーム油、菜種油、またはポークオイルである、請求項1~3のいずれか1項に記載の油脂由来風味付与剤の製造方法。
  5. 前記風味がコクである、請求項1~4のいずれか1項に記載の油脂由来風味付与剤の製造方法。
  6. 請求項1~5のいずれか1項に記載の方法に従って製造した油脂由来風味付与剤を飲食品に配合することを含む、飲食品の風味付与方法。
  7. 前記風味がコクである、請求項6に記載の飲食品の風味付与方法。
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