JP2022037850A - 磁性材料及びその製造方法 - Google Patents

磁性材料及びその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2022037850A
JP2022037850A JP2020209589A JP2020209589A JP2022037850A JP 2022037850 A JP2022037850 A JP 2022037850A JP 2020209589 A JP2020209589 A JP 2020209589A JP 2020209589 A JP2020209589 A JP 2020209589A JP 2022037850 A JP2022037850 A JP 2022037850A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
phase
magnetic material
magnetic
less
crystal structure
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2020209589A
Other languages
English (en)
Inventor
久理眞 小林
Kurima Kobayashi
智子 久野
Tomoko Kuno
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Shizuoka Institute of Science and Technology
Original Assignee
Shizuoka Institute of Science and Technology
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Shizuoka Institute of Science and Technology filed Critical Shizuoka Institute of Science and Technology
Publication of JP2022037850A publication Critical patent/JP2022037850A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Manufacture Of Metal Powder And Suspensions Thereof (AREA)
  • Powder Metallurgy (AREA)
  • Hard Magnetic Materials (AREA)
  • Manufacturing Cores, Coils, And Magnets (AREA)

Abstract

【課題】希土類元素としてSmを選択し、ThMn12型の結晶構造を有する相を備える磁性材料で、磁気特性、特に保磁力が向上した磁性材料及びその製造方法を提供する。【解決手段】モル比での式(Sm(1-x-y)RyZrx)a(Fe(1-z)Coz)bTcMd(前記式中、RはSm以外の所定の希土類元素であり、T及びMは所定の元素であり、かつ、0<x≦0.3、0≦y≦0.1、0≦z≦0.3、7.7≦a≦9.8、b=100-a-c-d、3.8<c≦7.7、及び、0≦d≦1.0である)で表される全体組成を有し、かつThMn12型の結晶構造を有する相と略TbCu7型の結晶構造を有する相の混合相を備える、磁性材料及びその製造方法。【選択図】図6

Description

新規性喪失の例外適用申請有り
本開示は、磁性材料及びその製造方法に関する。本開示は、特に、希土類元素を含有し、ThMn12型の結晶構造を有する相を備える磁性材料及びその製造方法に関する。
永久磁石の応用は、エレクトロニクス、情報通信、医療、工作機械分野、産業用・自動車用モータなど広範な分野に及んでいる。また、二酸化炭素排出量の抑制の要求が高まっており、ハイブリッドカーの普及、産業分野での省エネ及び発電効率の向上などにより、近年、さらに高特性を有する永久磁石開発への期待が高まっている。
現在、高性能永久磁石として市場を席巻しているNd-Fe-B系磁性材料は、HV/EHVの駆動モータ用永久磁石として使用されている。そして、昨今、モータのさらなる小型化、高出力化が期待されている。また、HV/EHVの駆動モータ以外の用途でも、永久磁石の高性能化が望まれている。このことから、新しい永久磁石用磁性材料の開発が進められている。
Nd-Fe-B系磁性材料を超える性能を有する磁性材料開発の一つとして、ThMn12型の結晶構造を有する相を備える磁性材料の研究が進められている。例えば、非特許文献1には、希土類元素としてNdを選択し、ThMn12型の結晶構造を有する相を備える磁性材料が開示されている。非特許文献2には、希土類元素としてSmを選択し、ThMn12型の結晶構造を有する相を備える磁性材料が開示されている。非特許文献3には、ThMn12型の結晶構造を有する相の安定化に寄与する元素が開示されている。非特許文献4及び5には、ThMn12型の結晶構造を有する相を備える磁性材料についての研究内容について総合的に開示されている。また、特許文献6には、Sm-(Fe、Co)系の磁性相が開示されている。
J. Appl. Phys. 70(10), 6001 (1991) J. Appl. Phys. 63(8), 3702 (1988) K.H.J. Buschow, Rep. Prog. Phys. 54, 1123 (1991) H.S. Li and J.M.D. Coey: Handbook of Magnetic Materials, vol. 6, ed. by K.H.J. Buschow, North Holland, Amsterdam, 1991, Chap. 1, pp. 183 H. Fujii and H. Sun: Handbook of Magnetic Materials, vol. 9, ed. by K.H.J. Buschow, North Holland, Amsterdam, 1991, Chap. 3, pp. 303404 J. Appl. Phys. 70(6), 3188 (1991)
ThMn12型の結晶構造を有する相を備える磁性材料のうち、希土類元素としてNdを選択した磁性材料は、ThMn12型の結晶構造を有する相の窒化により磁性を発現する。しかし、600℃以上の高温になると窒素が脱離する。そのため、希土類元素としてNdを選択したThMn12型の結晶構造を有する相を備える磁性材料は、焼結等によって成形体をフルデンス化することは困難である。フルデンス化とは、磁性粉末の成形体の密度を、磁性粉末中の磁性相の密度に可能な限り近づけ、その成形体(バルク磁石)の磁気特性を向上させることである。一方、希土類元素としてSmを選択したThMn12型の結晶構造を有する相を備える磁性材料では、ThMn12型の結晶構造を有する相を窒化しなくても磁性を発現する。そのため、希土類元素としてSmを選択したThMn12型の結晶構造を有する相を備える磁性材料は、焼結等によって成形体をフルデンス化することが可能である。しかし、フルデンス化での磁気特性の向上は、飽和磁気分極の向上が主であり、保磁力の向上は困難である。また、希土類元素の種類を問わず、ThMn12型の結晶構造を有する相の保磁力は、その向上が望まれていた。
本開示は、上記課題を解決するためになされたものである。本開示は、希土類元素としてSmを選択し、ThMn12型の結晶構造を有する相を備える磁性材料において、磁気特性、特に保磁力が向上した磁性材料及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく、鋭意検討を重ね、本開示の磁性材料及びその製造方法を完成させた。その要旨は次のとおりである。
〈1〉モル比での式(Sm(1-x-y)Zr(Fe(1-z)Co
(前記式中、RはSm以外の一種以上の希土類元素であり、
TはTi、V、Mo及びWからなる群より選ばれる一種以上の元素であり、
Mは不可避的不純物元素並びにAl、Si、Ni、C、O、N、Cr、Cu、Ga、Ag及びAuからなる群より選ばれる一種以上の元素であり、かつ、
0<x≦0.3、
0≦y≦0.1、
0≦z≦0.3、
7.7≦a≦9.8、
b=100-a-c-d、
3.8<c≦7.7、及び
0≦d≦1.0である)
で表される全体組成を有し、かつ
ThMn12型の結晶構造を有する相と略TbCu型の結晶構造を有する相の混合相を備え、
前記略TbCu型の結晶構造を有する相が、下記からなる群より選ばれる少なくとも一つの相を含む、磁性材料:
TbCu型の結晶構造を有する相、
SmFe型の結晶構造を有する相、
SmFe10型の結晶構造を有する相、及び
SmFe11型の結晶構造を有する相、並びに
SmFe型の結晶構造を有する相、SmFe10型の結晶構造を有する相、及びSmFe11型の結晶構造を有する相の中間相。
〈2〉前記混合相が、単磁区粒子の集合体を備えている、〈1〉項に記載の磁性材料。
〈3〉前記単磁区粒子中の1-12相の結晶子径が、10~40nmである、〈2〉項に記載の磁性材料。
〈4〉前記磁性材料が磁性薄片又は磁性粉末である、〈1〉~〈3〉項のいずれか一項に記載の磁性材料。
〈5〉前記磁性材料が焼結磁石である、〈1〉~〈3〉項のいずれか一項に記載の磁性材料。
〈6〉前記TがTiである、〈1〉~〈5〉項のいずれか一項に記載の磁性材料。
〈7〉式(Sm(1-x-y)Zr(Fe(1-z)Co(前記式中、RはSm以外の一種以上の希土類元素であり、
TはTi、V、Mo及びWからなる群より選ばれる一種以上の元素であり、
Mは不可避的不純物元素並びにAl、Si、Ni、C、O、N、Cr、Cu、Ga、Ag及びAuからなる群より選ばれる一種以上の元素であり、かつ、
0<x≦0.3、
0≦y≦0.1、
0≦z≦0.3、
7.7≦a≦9.8、
b=100-a-c-d、
3.8<c≦7.7、及び
0≦d≦1.0である)
で表される組成を有するアモルファス薄片を準備すること、及び
前記アモルファス薄片を1023~1223Kで1~60分にわたり熱処理すること、
を含む、
磁性材料の製造方法。
〈8〉前記アモルファス薄片を1073~1173Kで10~30分にわたり熱処理する、〈7〉項に記載の磁性材料の製造方法。
の製造方法。
〈9〉前記アモルファス薄片を粉砕し、アモルファス粉末を得て、前記アモルファス粉末を熱処理する、〈7〉又は〈8〉項に記載の磁性材料の製造方法。
〈10〉前記熱処理後の前記薄片を粉砕する、〈7〉又は〈8〉項に記載の磁性材料の製造方法。
〈11〉前記熱処理時の酸素分圧が10Pa以下である、〈7〉~〈10〉項のいずれか一項に記載の磁性材料の製造方法。
〈12〉前記TがTiである、〈7〉~〈11〉項のいずれか一項に記載の磁性材料の製造方法。
〈13〉モル比での式(Sm(1-x-y)Zr(Fe(1-z)Co
(前記式中、RはSm以外の一種以上の希土類元素であり、
TはTi、V、Mo及びWからなる群より選ばれる一種以上の元素であり、
Mは不可避的不純物元素並びにAl、Si、Ni、C、O、N、Cr、Cu、Ga、Ag及びAuからなる群より選ばれる一種以上の元素であり、かつ、
0<x≦0.3、
0≦y≦0.1、
0≦z≦0.3、
7.7≦a≦9.8、
b=100-a-c-d、
3.8<c≦7.7、及び
0≦d≦1.0である)
で表される組成を有するアモルファス薄片を準備すること、及び
前記アモルファス薄片を1023~1223Kで1~60分にわたり焼結すること、
を含む、
磁性材料の製造方法。
〈14〉前記アモルファス薄片を1073~1173Kで10~30分にわたり焼結する、〈13〉項に記載の磁性材料の製造方法。
〈15〉前記アモルファス薄片を粉砕し、アモルファス粉末を得て、前記アモルファス粉末を焼結する、〈13〉又は〈14〉項に記載の磁性材料の製造方法。
〈16〉前記焼結が、放電プラズマ焼結である、〈13〉~〈15〉項のいずれか一項に記載の磁性材料の製造方法。
〈17〉前記焼結時の酸素分圧が10Pa以下である、〈13〉~〈16〉項のいずれか一項に記載の磁性材料の製造方法。
〈18〉前記TがTiである、〈13〉~〈17〉項のいずれか一項に記載の磁性材料の製造方法。
本開示によれば、ThMn12型の結晶構造を有する相の単相ではなく、ThMn12型の結晶構造を有する相と略TbCu型の結晶構造の混合相にすることにより、磁気特性、特に保磁力が向上した磁性材料を提供することができる。また、本開示によれば、所定の組成のアモルファス薄片を熱処理又は焼結することによって、上記混合相を備え、磁気特性、特に保磁力が向上した磁性材料の製造方法を提供することができる。
図1は、R’Fe12-v(R’は希土類元素である。)におけるTの安定化領域を示す説明図である。 図2は、ストリップキャスト法に用いる冷却装置を模式的に示す説明図である。 図3は、アモルファス粉末の熱重量・示差熱分析結果を示すグラフである。 図4は、アモルファス粉末を熱処理した試料について、熱処理温度ごとにX線回折パターンを纏めた説明図である。 図5Aは、アモルファス粉末を熱処理した各試料について、熱処理温度と飽和磁気分極(J)の関係を示すグラフである。 図5Bは、アモルファス粉末を熱処理した各試料について、熱処理温度と磁気異方性磁場(H)の関係を示すグラフである。 図6は、アモルファス粉末を熱処理した各試料について、熱処理温度と保磁力(H)の関係を示すグラフである。 図7は、後述する実施例1の試料のヒステリシス曲線を示すグラフである。 図8は、後述する実施例2の試料のヒステリシス曲線を示すグラフである。 図9は、アモルファス粉末を1123Kで1分~4時間にわたり熱処理した試料のX線回折パターンを纏めた説明図である。 図10は、アモルファス粉末を、1023K、1123K、及び1223Kで30分にわたり熱処理した試料のX線回折パターンを纏めた説明図である。 図11Aは、1-12相と1-9相を機械的に混合した試料等のX線回折パターンを纏めた説明図である。 図11Bは、1-12相と1-9相を機械的に混合した試料等のヒステリシス曲線を纏めた説明図である。 図12は、後述する試料Aについてのヒステリシス曲線を示すグラフである。 図13は、後述する試料Bについてのヒステリシス曲線を示すグラフである。 図14は、図6のグラフに、後述する試料A及び試料Bの保磁力を追記したグラフである。 図15は、試料Aの組織を観察した結果を示す、走査型電子顕微鏡像である。 図16は、図15の白線で囲まれた部位を拡大して観察した結果を示す、走査型電子顕微鏡像である。 図17は、図16の扁平板状粒子の組織を電子線後方散乱回折法で観察した結果を示す、説明図である。 図18は、100nm以下の微細結晶粒子の集合体を、走査型電子顕微鏡と磁気力顕微鏡で観察し、走査型電子顕微鏡像(SEM像)と磁気力顕微鏡像(MFM像)を比較した説明図である。 図19は、熱処理時間及び熱処理温度と平均結晶子径Daveの関係を示すグラフである。
以下、本開示の磁性材料及びその製造方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は、本開示の磁性材料及びその製造方法を限定するものではない。
現在、高性能磁性材料として多く使用されているNd-Fe-B系磁性材料は、Bの存在により、NdFe14B型の結晶構造を有する相(以下、「2-14-1相」ということがある。)を形成して、優れた磁気特性を得ている。
Bを含有しなくても、希土類元素は、Fe及びCoを主体とした金属元素と様々な磁性相を形成する。これらの磁性相は、それぞれ、固有の結晶構造を有する。ThMn12型の結晶構造を有する相(以下「1-12相」ということがある。)は、2-14-1相と比べて、Fe及びCoの含有割合が高いため、飽和磁気分極が高く、結晶磁気異方性磁場も比較的高いが、発現する保磁力は低い。そのため、非特許文献1及び2に開示されているような、1-12相を主として備える、従来の磁性材料では、磁気特性、特に保磁力の向上が望まれていた。
一方、略TbCu型の結晶構造を有する相(以下、「略1-7相」ということがある。)は、飽和磁気分極及び磁気異方性磁場のいずれも低い。磁気異方性磁場が低いことに伴い、保磁力も低い。そのため、希土類元素と、Fe及びCoを主体とした金属元素とを含有する磁性材料の開発においては、従来、磁性材料中の略1-7相を可能な限り排除しようとしていた。略TbCu型の結晶構造を有する相(略1-7相)については後述する。
しかし、1-12相と略1-7相が、これらの混合相として磁性材料中に存在すると、驚くべきことに、1-12相の単相と比べて、飽和磁気分極を実用上問題のない範囲での低下に抑えつつ、保磁力を向上させることができることを、本発明者らは知見した。そして、さらに驚くべきことに、従来は、保磁力は磁気異方性磁場に比例すると考えられていたが、1-12相と略1-7相の混合相は、1-12相の単相と比べて、磁気異方性磁場が低下していても、保磁力が向上していることを、本発明者らは知見した。2-14-1相を備える磁性材料(Nd-Fe-B系磁性材料)を使用する場合と比べて、非特許文献1及び2に開示されているような1-12相を主として備える磁性材料を使用する場合は、磁気異方性磁場は充分で、保磁力が不足していることが多かった。そのため、1-12相と略1-7相の混合相を備える本開示の磁性材料は好都合である。
上述の混合相を備える本開示の磁性材料は、結晶化した磁性相を備える磁性材料を熱処理するのではなく、所定の組成を有するアモルファス磁性材料を熱処理することにより、上述の混合相を得ることができることを、本発明者らは知見した。また、結晶化した磁性相を備える磁性薄片又は磁性粉末を焼結するのではなく、所定の組成を有するアモルファス磁性薄片又アモルファスは粉末を直接焼結することにより、上述の混合相を備える焼結磁石を得られることを、本発明者らは知見した。
これまで説明してきた知見等によって完成された、本開示の磁性材料及びその製造方法の構成要件を、次に説明する。
《磁性材料》
先ず、本開示の磁性材料の構成要件について説明する。
〈全体組成〉
本開示の磁性材料は、モル比での式(Sm(1-x-y)Zr(Fe(1-z)Coで表される全体組成を有する。本開示の磁性材料は、1-12相と略1-7相の混合相を備えるが、本開示の磁性材料の磁気特性等を損なわない範囲で、混合相以外の相を少量含有してもよい。本開示の磁性材料の全体組成は、混合相と混合相以外の相を合計した組成である。本開示の磁性材料の全体組成は、本開示の製造工程中での減耗分を除き、原材料の合計組成と実質的に同一であると考えてよい。
上記式中、Smはサマリウム、RはSm以外の一種以上の希土類元素、Zrはジルコニウム、Feは鉄、そして、Coはコバルトである。TはTi、V、Mo及びWからなる群より選ばれる一種以上の元素である。Tiはチタン、Vはバナジウム、Moはモリブデン、そして、Wはタングステンである。Mは不可避的不純物元素並びにAl、Si、Ni、C、O、N、Cr、Cu、Ga、Ag及びAuからなる群より選ばれる一種以上の元素である。Alはアルミニウム、Siはシリコン、Niはニッケル、Cは炭素、Oは酸素、Crはクロム、Cuは銅、Gaはガリウム、Agは銀、そして、Auは金である。
x及びyは、それぞれ、Sm(1-x-y)Zrで表される希土類サイト全体を1としたときの、Zr及びRの含有割合(モル比)である。希土類サイトで、Smは、R及びZrの残部である。
zは、Fe(1-z)Coで表される鉄族サイト全体を1としたときの、Coの含有割合(モル比)である。鉄族サイトで、Feは、Coの残部である。
a、b、c、及びdは、それぞれ、本開示の磁性材料を100モル%(原子%)としたときの、希土類サイト、鉄族サイト、T、及びMのモル%(原子%)である。上記式で、b=100-a-c-dであるため、本開示の磁性材料全体で、鉄族サイトは、希土類サイト、T、及びMの残部である。
次に、上記式の各構成元素について説明する。
〈Sm〉
Smは、希土類元素であり、Fe及びCoとともに磁性を発現する1-12相及び略1-7相との混合相を形成するため、本開示の磁性材料に必須の成分である。従来から知られている、1-12相を主として備える磁性材料では、希土類元素としてNdを選択する場合には、1-12相を窒化することによって一軸磁気異方性を発現するため、磁気異方性磁場は高い。しかし、600℃以上の高温で窒素が脱離するため、焼結等によるフルデンス化は困難であった。一方、本開示の磁性材料のように、希土類元素としてSmを選択する場合には、混合相中の1-12相を窒化しなくても、その1-12相は磁性を発現する。混合相中の1-12相は窒化されていないため、焼結によるフルデンス化が可能であり、焼結磁石の密度が向上して、磁気特性の向上に有利である。
〈R〉
Rは、Sm以外の一種以上の希土類元素である。なお、本明細書において、希土類元素は、特に断りがない限り、Y、Sc、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLuである。なお、Yはイットリウム、Scはスカンジウム、Laはランタン、Ceはセリウム、Prはプラセオジム、Ndはネオジム、Pmはプロメチウム、Smはサマリウム、Euはユウロビウム、Gdはガドリニウム、Tbはテルビウム、Dyはジスプロシウム、Hoはホルミウム、Erはエルビウム、Tmはツリウム、Ybはイッテルビウム、そして、Luはルテニウムである。
本開示の磁性材料では、希土類元素としてSmを選択するが、Smの原材料中で、Sm以外の希土類元素Rを皆無にすることは難しい。しかし、Sm(1-x-y)Zrで表される希土類サイトで、yの値が0.1以下であれば、本開示の磁性材料の特性は、Rが皆無であるときと、実質的に同等と考えてよい。
yの値は0であることが理想であるが、Smの原材料の純度を過剰に上昇させることは、製造コストの上昇を招くため、yの値は、0超、0.01以上、0.02以上、0.03以上、又は0.04以上であってよい。一方、yの値は、Smの原材料の純度が過剰に上昇しない限り低い方が好ましいため、yの値は、0.09以下、0.08以下、0.07以下、0.06以下、又は0.05以下であってよい。
〈Zr〉
Sm及び/又はRの一部は、Zrで置換されて、混合相中の1-12相で、ThMn12型の結晶構造の安定化に寄与する。ThMn12型の結晶内のSm及び/又はRをZrで置換することによって、結晶格子の収縮が生じる。これにより、磁性材料を高温(600℃以上)にした場合にも、ThMn12型の結晶構造が維持され易くなる。一方、磁気特性面では、Smの一部がZrで置換されることによって、Smに由来する強い磁気異方性磁場は弱められる。したがって、ThMn12型の結晶構造の安定と磁気特性の両面からZrの含有量を決定する。
ThMn12型の結晶構造の安定化にZrは必須である。Zrは少量でも、ThMn12型の結晶構造の安定化が認められるため、Sm(1-x-y)Zrで表される希土類サイトで、xの値は、0超であればよい。Zrの作用効果を明瞭に享受する観点からは、xの値は、0.02以上、0.04以上、0.06以上、0.08以上、又は0.1以上であってよい。一方、xの値が0.3以下であれば、磁気異方性磁場が著しく低下することはなく、また、FeZr相も生成し難い。FeZr相が生成し難ければ、保磁力の発現は阻害され難い。これらの観点からは、xの値は、0.28以下、0.26以下、0.24以下、0.22以下、又は0.20以下であってよい。
これまで説明してきた、Sm、R、及びZrの合計含有量は、Sm(1-x-y)Zrで表される希土類サイトの含有量aで示される。希土類サイトの含有量aが7.7モル%以上であれば、磁性材料を高温(600℃以上)にしても、ThMn12型の結晶構造が分解され難くなる。ThMn12型の結晶構造が分解されると、α-Fe相の含有量が増加する。したがって、ThMn12型の結晶構造が分解され難くなれば、α-Fe相の含有量が増加し難くなる。この観点からは、希土類サイトの含有量aは、7.7モル%超が好ましく、7.8モル%以上がより好ましく、7.9モル%以上がより一層好ましく、8.0モル%以上がさらに一層好ましい。一方、希土類サイトの含有量aが9.8モル%以下であれば、Fe及びCoの含有割合が増加し、磁性材料の飽和磁気分極が低下し難い。希土類サイトの含有量aが増加すると、Fe及びCoの含有割合が減少し、1-12相と略1-7相の混合相に由来する高い飽和磁気分極が著しく低下する。飽和磁気分極の低下を抑制する観点からは、希土類サイトの含有量aは、9.1モル%以下が好ましく、8.4モル%以下がより好ましく、8.2モル%以下がより一層好ましい。
〈T〉
TはTi、V、Mo及びWからなる群より選ばれる一種以上の元素である。Ti、V、Mo及びWは、それぞれ、同様の作用効果を奏すると考えてよい。図1は、R’Fe12-v(R’は希土類元素である。)におけるTの安定化領域を示す説明図である(出典:非特許文献3)。R’-Feの2元系に、第三の元素としてTi、V、Mo、又はWを添加することにより、ThMn12型の結晶構造が安定になり、優れた磁気特性を示すことが、図1のように知られている。希土類元素としてSmを選択したとき、Tで安定化した1-12相としては、最も典型的には、SmFe11Ti相が挙げられる。このことから、Tとしては、Tiが好ましい。
従来、ThMn12型の結晶構造を安定させるため、過剰なTを含有させていた。そのため、磁性材料を構成するFe成分の含有率が低くなり、かつ、飽和磁気分極に最も影響するFe原子の占有サイトがT原子に置き換わり、飽和磁気分極を低下させていた。また、Tの含有量が多くなると、FeTが生成され易くなる。
Tの含有量cが、7.7モル%以下であれば、飽和磁気分極が低下し難く、FeTiが生成され難い。これらの観点からは、Tの含有量cは、7.7モル%未満が好ましく、7.6モル%以下がより好ましく、6.0モル%以下がより一層好ましく、5.6モル%以下がさらに一層好ましい。
一方、Tの含有量cが、3.8モル%超であれば、ThMn12型の結晶構造が安定し易い。この観点からは、4.2モル%以上が好ましく、4.7モル%以上がより好ましく、5.3モル%以上がより一層好ましい。
〈M〉
Mは、不可避的不純物元素並びにAl、Si、N、C、O、N、Cr、Cu、Ga、Ag及びAuからなる群より選ばれる一種以上の元素である。不可避的不純物元素とは、本開示の磁性材料の原材料に含まれる不純物元素、あるいは、製造工程で混入してしまう不純物等、その含有を回避することが避けられない、あるいは、回避するためには著しい製造コストの上昇を招くような不純物元素のことをいう。不可避的不純物元素としては、Mn等が挙げられる。
M(不可避的不純物元素を除く)は、ThMn12型の結晶の粒成長の抑制、あるいは、1-12相と略1-7相の混合相以外の相(例えば、混合相同士の間に存在する粒界相)の粘性、融点に寄与するが、本開示の磁性材料において必須ではない。
Mの含有量dは、1.0モル%以下である。Mの含有量dが1.0モル%以下であれば、磁性材料を構成するFe及びCo成分の含有率は低くならず、その結果、飽和磁気分極が低下することが起こり難い。この観点からは、Mの含有量dは、0.8モル%以下が好ましく、0.6モル%以下がより好ましく、0.4モル%以下がより一層好ましい。
一方、M(不可避的不純物元素を除く)の作用効果を明瞭に享受する観点からは、Mの含有量は、0.1モル%以上が好ましく、0.2モル%以上がより好ましく、0.3モル%以上がより一層好ましい。また、Al、Si、Ni、C、O、N、Cr、Cu、Ga、Ag及びAuからなる群より選ばれる一種以上の元素を含有しないとき、Mの含有量dは、不可避的不純物の含有量である。不可避的不純物の含有量は、少ないほど好ましく、0であってもよい。しかし、不可避的不純物の含有量を過度に低下させると、製造コストの上昇等を招くため、磁性材料の磁気特性等に、実質的に影響を与えない範囲で、不可避的不純物を少量含有していてもよい。これらの観点からは、Al、Si、Ni、C、O、N、Cr、Cu、Ga、Ag及びAuからなる群より選ばれる一種以上の元素を含有しないとき、Mの含有量dは、0.0001モル%以上、0.0002モル%以上、又は0.0003モル%以上であってよく、1.0モル%以下、0.5モル%以下、0.1モル%以下、0.05モル%以下、0.01モル%以下、0.005モル%以下、0.001モル%以下、0.0005モル%以下であってもよい。
本開示の磁性材料のように、希土類元素としてSmを選択した場合には、Ndを選択した場合と異なり、1-12相を窒化しなくても、1-12相は磁性を発現する。Nは粒界相に侵入して、磁気分断性を低下させ、保磁力を低下させるおそれがある。このことから、Nの含有量は、磁性材料(全体組成)に対して、100ppm以下が好ましく、70ppm以下がより好ましく、40ppm以下がより一層好ましい。一方、Nの含有量を過度に低下させると、製造コストの上昇等を招くため、磁性材料の磁気特性等に、実質的に影響を与えない範囲で、Nを少量含有していてもよい。この観点からは、Nの含有量の下限は、10ppm、20ppm、又は30ppmであってよい。
〈Fe及びCo〉
本開示の磁性材料は、これまで説明してきた元素以外をFeとするが、Feの一部がCoで置換されていてよい。本明細書のFeについての説明において、特に断りのない限り、そのFeの一部はCoで置換されていてもよいものとする。例えば、α-Fe相と表記したとき、特に断りがない場合には、α-Fe相には、α-Fe相のFeの一部がCoで置換されている相を含むものとする。
Feの一部がCoで置換されていると、スレーターポーリング則により、自発磁化の増大を生じ、飽和磁気分極及び磁気異方性磁場の両特性を向上させる効果がある。また、Feの一部がCoで置換されていることによって、磁性材料のキュリー点が上昇するため、高温での飽和磁気分極の低下を抑制する効果がある。
これらの効果を明瞭に享受するためには、Fe(1-z)Coで表される鉄族サイト全体を1としたときのCoの含有割合(モル比)zは、0.05以上が好ましく、0.10以上が好ましく、0.15以上がより一層好ましい。
一方、Coの含有量が過剰になっても、スレーターポーリング則による効果を得難くなる。Coの含有割合(モル比)zが0.30以下であれば、スレーターポーリング則の効果が弱まり難い。この観点からは、Coの含有割合(モル比)zは、0.26以下が好ましく、0.24以下がより好ましく、0.20以下がより一層好ましい。
〈組織〉
本開示の磁性材料は、1-12相と略1-7相の混合相を備える。1-12相はThMn12型の結晶構造を有する相であり、略1-7相は略TbCu型の結晶構造を有する相である。非特許文献5に開示されているように、Sm-(Fe、Co)系の磁性相には、ThMn12型の結晶構造を有する相(1-12相)、ThZn17型の結晶構造を有する相(2-17相)、及びTbCu型の結晶構造を有する相(1-7相)等がある。略TbCu型の結晶構造を有する相(1-7相)には、TbCu型の結晶構造を有する相(1-7相)のほかに、SmFe型の結晶構造を有する相(以下、「1-9相」ということがある。)、SmFe10型の結晶構造を有する相(以下、「1-10相」ということがある。)、及びSmFe11型の結晶構造を有する相(以下、「1-11相」ということがある。)、並びに1-9相、1-10相、及び1-11相の中間相が含まれる。1-9相、1-10相、及び1-11相、並びに1-9相、1-10相、及び1-11相の中間相それぞれは、厳密には1-7相と結晶構造が異なるが、X線回折パターンが類似しており、1-9相、1-10相、及び1-11相、並びに1-9相、1-10相、及び1-11相の中間相それぞれの結晶構造は、1-7相の結晶構造とほぼ等価であると考えてよい。そのため、本開示の磁性材料の混合相が、1-12相と1-7相のほかに、1-9相、1-10相、及び1-11相、並びに1-9相、1-10相、及び1-11相の中間相を含むとき、1-9相、1-10相、及び1-11相、並びに1-9相、1-10相、及び1-11相の中間相は、1-7相と同様の働きをすると考えられる。これらのことから、本開示の磁性材料は、ThMn12型の結晶構造を有する相と略TbCu型の結晶構造を有する相の混合相を備え、略TbCu型の結晶構造を有する相は、TbCu型の結晶構造を有する相、SmFe型の結晶構造を有する相、SmFe10型の結晶構造を有する相、及びSmFe11型の結晶構造を有する相、並びにSmFe型の結晶構造を有する相、SmFe10型の結晶構造を有する相、及びSmFe11型の結晶構造を有する相の中間相からなる群より選ばれる少なくとも一つの相を含む。また、SmFe型の結晶構造を有する相、SmFe10型の結晶構造を有する相、及びSmFe11型の結晶構造を有する相の中間相とは、SmとFeのモル比が完全に、1:9、1:10、及び1:11である相ではないが、実質的に、SmFe型の結晶構造を有する相、SmFe10型の結晶構造を有する相、及びSmFe11型の結晶構造を有する相であると実質的にみなしてよい相を意味する。例えば、SmFe9.1及びSmFe10.2等である。
ThMn12型の結晶構造を有する相(1-12相)は、典型的には、SmFe11Ti(ICDD No.03-065-5363)の標準X線回折パターン(Cu-Kα線源)を示すが、これと等価なX線回折パターンを示す相も、本発明の範囲に含まれる。この「等価なX線回折パターンを示す相」としては、例えば、SmFe11+pTi1-p(ただし、0≦p<1)相等が挙げられる。
略TbCu型の結晶構造を有する相(略1-7相)は、典型的には、SmFe(ICDD No.00-043-1311)の標準X線回折パターン(Cu-Kα線源)を示すが、これと等価なX線回折パターンを示す相も本発明の範囲に含まれる。この「等価なX線パターンを示す相」としては、例えば、1-7相、1-10相、及び1-11相、並びに1-9相、1-10相、及び1-11相の中間相等が挙げられる。
混合相中の1-12相は、SmFe11TiのFeの一部が、Co、T、及びMの少なくとも一種で置換されていても、上述したSmFe11Tiの標準X線回折パターンを示せば、1-12相と考えてよい。また、混合相中の1-12相は、SmFe11TiのSmの一部がZr及びRの少なくとも一方で置換されていても、上述したSmFe11Tiの標準X線回折パターンを示せば、1-12相と考えてよい。そして、混合相中の1-12相は、SmFe11TiのFeの一部が、Co、T、及びMの少なくとも一種で置換されており、かつ、SmFe11TiのSmの一部がZr及びRの少なくとも一方で置換されていても、上述したSmFe11Tiの標準X線回折パターンを示せば、1-12相と考えてよい。SmFe11TiのTiの一部が、T(Tiを除く)の少なくとも一種で置換されていても、上述したSmFe11Tiの標準X線回折パターンを示せば、1-12相と考えてよい。
混合相中の1-9相は、SmFeのFeの一部が、Co、T、及びMの少なくとも一種で置換されていても、上述したSmFeの標準X線回折パターンを示せば、1-9相と考えてよい。また、混合相中の1-9相は、SmFeのSmの一部がZr及びRの少なくとも一方で置換されていても、上述したSmFeの標準X線回折パターンを示せば、1-9相と考えてよい。そして、混合相中の1-9相は、SmFeのFeの一部が、Co、T、及びMの少なくとも一種で置換されており、かつ、SmFeのSmの一部がZr及びRの少なくとも一方で置換されていても、上述したSmFeの標準X線回折パターンを示せば、1-9相と考えてよい。1-9相と等価な1-7相、略1-7相、1-10相、及び1-11相についても、同様に考えてよい。
本開示の磁性材料が備える、1-12相と略1-7相の混合相は、結晶化した材料を熱処理するのではなく、アモルファス材料を熱処理して得られる。すなわち、本開示の磁性材料が備える、1-12相と略1-7相の混合相は、アモルファスに由来する。1-12相と略1-7相の混合相が得られる熱処理条件等については後述する。
略1-7相の単相では、飽和磁気分極、磁気異方性磁場、及び保磁力のいずれも低い。しかし、1-12相と略1-7相が混合相となることで、1-12相の単相の高飽和磁気分極及び高磁気異方性磁場の低下を実用的に問題のない範囲に抑制しつつ、1-12相の単相で不足していた保磁力を向上させることができる。
本開示の磁性材料が備える、1-12相と略1-7相の混合相は、1-12相と略1-7相を機械的に混合して得られるものではない。機械的な混合とは、例えば、実質的に1-12相のみを備える磁性材料と、実質的に略1-7相のみを備える磁性材料を準備し、これらを乳鉢等で機械的に粉砕しながら単純に混合することを意味する。上述したように、本開示の磁性材料が備える、1-12相と略1-7相の混合相は、結晶化した材料を熱処理するのではなく、アモルファス材料を熱処理して得られる。このようにして得られた、1-12相と略1-7相の混合相は、微細な1-12相と、微細な1-12相を取り囲む分離不可能な略1-7相との粒子の集合体を備えている。微細な1-12相と、微細な1-12相を取り囲む分離不可能な略1-7相との粒子の大きさは、30nm以上、40nm以上、又は50nm以上であってよく、100nm以下、80nm以下、又は60nm以下であってよい。また、微細な1-12相の結晶子径は、10nm以上、15nm以上、又は20nm以上であってよく、40nm以下、35nm以下、30nm以下、又は25nm以下であってよい。
1-12相と略1-7相の混合相は、先ず略1-7相が生成し、その後、その略1-7相が微細な1-12相に相転換していくことによって生成すると考えられる。この生成機構については、後程、詳述する。この生成機構を利用して、上述の微細な1-12相の結晶子径は、略1-7相から析出し始めた1-12相の領域の大きさ(結晶子径)を、1-12相と略1-7相の混合相を有する材料のX線回折パターンにおいて、1-12相特有の回折線(1-12相の(310)回折線)の半値幅を用いて、「シェラーの式」から求めることができる。
上述したように、1-12相と略1-7相の混合相は、微細な1-12相と、微細な1-12相を取り囲む分離不可能な略1-7相との粒子の集合体を備えている。この粒子の集合体は、磁気力顕微鏡で、粒子の集合体として観察できる。このことから、微細な1-12相と、微細な1-12相を取り囲む分離不可能な1-9相との粒子それぞれは、磁気的に独立した単磁区粒子であるといえる。このことから、1-12相と略1-7相の混合相は、単磁区粒子の集合体を備えているといえる。ここで、「備えている」とは、1-12相と略1-7相の混合相は、その大部分が単磁区粒子の集合体であるが、1-12相と略1-7相の混合相中に、僅かに、不純物のように、単磁区粒子でない組織を含むことを意味する。このような組織としては、例えば、粗大化組織等が挙げられる。
本開示の磁性材料は、磁性薄片又は磁性粉末のいずれでもよい。磁性薄片には磁性薄帯を含む。また、本開示の磁性材料は、焼結磁石であってもよい。1-12相と略1-7相の混合相を備える本開示の磁性材料が焼結磁石であるためには、結晶化された磁性薄片又は磁性粉末を焼結するのではなく、アモルファス薄片又はアモルファス粉末を焼結する。詳細は、「《製造方法》」で説明する。結晶化された磁性薄片又は磁性粉末を熱処理又は焼結するのではなく、アモルファス薄片又はアモルファス粉末を熱処理又は焼結するのであれば、上述した1-12相と略1-7相の混合相は、磁性薄片若しくは磁性粉末又は焼結磁石のいずれの態様でも、存在することができる。
《製造方法》
本開示の磁性材料の製造方法は、得られる磁性材料が磁性薄片又は磁性粉末である《形態1》と、得られる磁性材料が焼結磁石である《形態2》がある。以下、これらの態様それぞれについて説明するが、本開示の磁性材料の製造方法は、これらの態様に限定されない。
《態様1》
態様1の製造方法は、アモルファス薄片準備工程及び熱処理工程を含む。また、任意で粉砕工程を含んでもよい。以下、それぞれの方法について説明する。
〈アモルファス薄片準備工程〉
モル比での式(Sm(1-x-y)Zr(Fe(1-z)Coで表される組成を有するアモルファス薄片を準備する。上式において、Sm、R、Zr、Fe、Co、T、及びM、並びにx、y、z、a、b、c、及びdについては、「《磁性材料》」で説明したとおりである。アモルファス薄片準備工程及び後続する工程等で減耗することがある元素については、その減耗分を見込んでおくことができる。
アモルファス薄片を得ることができれば、その方法は特に限定されないが、典型的には、液体急冷法(メルトスパン法)及びストリップキャスト法等が挙げられる。ここでは、ストリップキャスト法について、図面を用いて説明する。図2は、ストリップキャスト法に用いる冷却装置を模式的に示す説明図である。
ストリップキャスト法は、例えば、図2に示すような急冷装置10を用いて溶湯を急冷する。アモルファス薄片を得る場合には、急冷装置10を用いて、溶湯を超急冷する。超急冷については後述する。急冷装置10において、溶解炉11において原材料が溶解され、上式の組成を有する溶湯12が準備される。溶湯12はタンディッシュ13に一定の供給量で供給される。タンディッシュ13に供給された溶湯12は、タンディッシュ13の端部から自重によって冷却ロール14に供給される。
タンディッシュ13は、セラミックス等で構成され、溶解炉11から所定の流量で連続的に供給される溶湯12を一時的に貯湯し、冷却ロール14への溶湯12の流れを整流することができる。また、タンディッシュ13は、冷却ロール14に達する直前の溶湯12の温度を調整する機能をも有する。
冷却ロール14は、銅やクロムなどの熱伝導性の高い材料から形成されており、冷却ロール14の表面は、高温の溶湯による浸食を防止するため、クロムメッキ等が施される。冷却ロール14は、図示していない駆動装置により、所定の回転速度で矢印方向に回転することができる。この回転速度を適宜決定することにより、溶湯の冷却速度を制御する。溶湯を「超急冷」するとは、溶湯の冷却速度を1×10~1×1010K/秒の速度に制御することを意味する。
溶湯の冷却速度が1×10K/秒以上であれば、アモルファス化された薄片を得やすい。薄片中のアモルファスの体積率を向上させる観点からは、溶湯の冷却速度が5×10K/秒以上が好ましく、1×10K/秒以上がより好ましく、5×10K/秒以上がより一層好ましい。一方、溶湯の冷却速度が前述の冷却速度以上であれば、溶湯の冷却速度が1×1010K/秒以下又は1×10K/秒以下であっても、所望の冷却効果を得られる。
上述したような冷却速度(超急冷)は、冷却ロール14の周速を適宜決定して制御される。上述したような冷却速度を得るための冷却ロールの周速は、例えば、10m/秒以上、20m/秒以上、30m/秒以上、35m/秒以上、又は40m/秒以上であってよく、60m/秒以下、50m/秒以下、又は45m/秒以下であってよい。
冷却ロール14の外周上で冷却され、凝固された溶湯12は、アモルファス薄片15となって冷却ロール14から剥離し、回収装置で回収される。必要に応じて、カッターミル等を用いて、アモルファス薄片15を粉砕し、アモルファス粉末を得てもよい。粉砕工程については後述する。
後続する熱処理工程後の磁性薄片中に、所望の相以外の相が残存しないようにする観点から、アモルファス薄片中のアモルファスの体積率は、可能な限り高い方がよい。アモルファス薄片に対して、アモルファスが、80体積%以上、85体積%以上、又は90体積%以上であれば、所望の相以外の相の残存量(体積%)が実用上問題のない範囲である。一方、アモルファス薄片の全てがアモルファスであることが理想であるが、アモルファス薄片中のアモルファスの体積率が前述の体積%以上であれば、アモルファス薄片中のアモルファスの体積率は、99体積%以下、97体積%以下、又は95体積%以下であってよい。アモルファスの体積率が上述した範囲であると、アモルファス薄片のX線回折パターンには、概ねピークが認められず、平坦である。
〈熱処理工程〉
アモルファス薄片を1023~1223Kで1~60分にわたり熱処理して、1-12相と略1-7相の混合相を得ることができる。また、アモルファス薄片の酸化を抑制するために、不活性ガス雰囲気中で熱処理する。不活性ガス雰囲気としては、例えば、アルゴンガス雰囲気等が挙げられるが、これに限られない。また、不活性ガス雰囲気に、窒素ガス雰囲気を含むものとする。
熱処理温度が1023K以上であれば、略1-7相の単相の形成を抑制して、1-12相と略1-7相の混合相を得やすい。この観点からは、1033K以上、1043K以上、1053K以上、1063K以上、1073K以上、又は1083K以上であってもよい。熱処理温度が1223K以下であれば、1-12相の単相の形成を抑制して、1-12相と略1-7相の混合相を得やすい。この観点からは、1213K以下、1203K以下、1193K以下、1183K以下、1173K以下、又は1163K以下であってもよい。なお、熱処理温度とは、昇温を開始してから冷却を開始するまでの間、所定の温度範囲で保持する温度のことを意味する。
熱処理時間は、熱処理温度及び熱処理量(アモルファス薄片の質量)との関係で、1-12相と略1-7相の混合相が得られるように適宜決定すればよい。熱処理温度が1分以上であれば、1-12相と略1-7相の混合相が形成されずに、実質的に略1-7相のみとなることはない。この観点からは、熱処理時間は、3分以上、5分以上、6分以上、7分以上、8分以上、9分以上、又は10分以上であってもよい。一方、熱処理時間が60分以下であれば、実質的に1-12相のみとなることはない。この観点からは、熱処理時間は、55分以下、50分以下、45分以下、40分以下、35分以下、30分以下、25分以下、又は20分以下であってもよい。
熱処理中にアモルファス薄片及び磁性薄片が酸化することを抑制するため、熱処理雰囲気は不活性ガス雰囲気であることが好ましい。不活性ガス雰囲気には窒素ガス雰囲気も含まれる。
不活性ガス雰囲気中に僅かに含まれる酸素については、酸素分圧が10Pa以下であれば、アモルファス薄片又は磁性薄片の酸化を抑制することができる。この観点からは、酸素分圧は、5×10Pa以下、10Pa以下、5Pa以下、又は1Pa以下であってもよい。一方、酸素分圧が前述のことを満足すれば、酸素分圧が1×10-1Pa以上又は5×10-1Pa以上であっても実用上問題はない。また、高純度アルゴンガス等を用いて、アモルファス薄片又は磁性薄片の酸化を著しく抑制することができる。10-2Pa以下であれば、アモルファス薄片又は磁性薄片の酸化を著しく抑制することができる。この観点からは、酸素分圧は10-2Pa未満、5×10-3Pa以下、又は10-3Pa以下であってもよい。一方、酸素分圧が前述のことを満足すれば、酸素分圧が10-5Pa以上、5×10-5Pa以上、10-4Pa以上、又は5×10-4Pa以上であっても実用上問題はない。
〈粉砕工程〉
任意で、熱処理前のアモルファス薄片又は熱処理後の磁性薄片を粉砕して、アモルファス粉末又は磁性粉末を得てもよい。アモルファス薄片を粉砕してアモルファス粉末を得る場合には、そのアモルファス粉末を熱処理する。アモルファス粉末を熱処理する場合には、その条件等は、アモルファス薄片を熱処理する場合に準ずる。
上述したように、薄片の粉砕については、熱処理前に行ってもよいし、熱処理後に行ってもよいが、典型的には、熱処理前に行う。熱処理前にアモルファス薄片を粉砕することによって、1-12相と略1-7相の混合相が均一に形成され易い。
粉砕の方法等は特に限定されないが、例えば、カッターミル、ボールミル、及びジェットミル等を用いる方法が挙げられる。典型的には、カッターミルで薄片を粗粉砕し、それをジェットミルで粉砕することが挙げられる。
粉砕後の粒径は、熱処理前に粉砕する場合には、1-12相と略1-7相の混合相の均一性等及び磁性粉末としての適応性等を考慮し、熱処理後に粉砕する場合には、磁性粉末としての適応性等を考慮して適宜決定すればよく、特に制限はない。磁性粉末としての適応性の考慮とは、例えば、磁性粉末を樹脂ボンド磁石に使用する場合に、成形性及び樹脂ボンド磁石の磁気特性等を考慮することを意味する。粉砕後の粒径は、例えば、2μm以上、4μm以上、8μm以上、10μm以上、20μm以上、又は30μm以上であってよく、90μm以下、80μm以下、70μm以下、60μm以下、50μm以下、又は40μm以下であってよい。
《態様2》
態様2の製造方法は、アモルファス薄片準備工程及び焼結工程を含む。また、任意で粉砕工程を含んでもよい。以下、それぞれの方法について説明する。
〈アモルファス薄片準備工程〉
アモルファス薄片準備工程は、《態様1》でのアモルファス薄片準備工程に準ずるため、ここでは説明を省略する。
〈焼結工程〉
アモルファス薄片を1023~1223Kで1~60分にわたり焼結して、1-12相と略1-7相の混合相を得ることができる。アモルファス薄片を焼結してもよいが、典型的には、カッターミル等を用いて、アモルファス薄片を粉砕し、アモルファス粉末を得て、アモルファス粉末を焼結する。粉砕工程については後述する。
焼結温度が低温であると略1-7相の単相を形成しやすく、焼結温度が高温であると1-12相の単相を形成し易い。焼結温度が1023K以上であれば、略1-7相の単相の形成を抑制して、1-12相と略1-7相の混合相を得やすい。この観点からは、1033K以上、1043K以上、1053K以上、1063K以上、1073K以上、又は1083K以上であってもよい。焼結温度が1223K以下であれば、1-12相の単相の形成を抑制して、1-12相と略1-7相の混合相を得やすい。この観点からは、1213K以下、1203K以下、1193K以下、1183K以下、1173K以下、又は1163K以下であってもよい。なお、焼結温度とは、昇温を開始してから冷却を開始するまでの間、所定の温度範囲で保持する温度のことを意味する。
焼結時間は、焼結温度及び焼結量(アモルファス薄片の質量)との関係で、1-12相と略1-7相の混合相が得られるように適宜決定すればよい。焼結温度が1分以上であれば、1-12相と略1-7相の混合相が形成されず、実質的に略1-7相のみとなることはない。この観点からは、焼結時間は、5分以上、6分以上、7分以上、8分以上、9分以上、又は10分以上であってもよい。一方、焼結時間が60分以下であれば、実質的に1-12相のみとなることはない。この観点からは、焼結時間は、55分以下、50分以下、45分以下、40分以下、35分以下、30分以下、25分以下、又は20分以下であってもよい。
焼結中に焼結対象物が酸化することを抑制するため、焼結雰囲気は不活性ガス雰囲気であることが好ましい。不活性ガス雰囲気には窒素ガス雰囲気も含まれる。
不活性ガス雰囲気中に僅かに含まれる酸素については、酸素分圧が10Pa以下であれば、焼結対象物の酸化を抑制することができる。この観点からは、酸素分圧は、5×10Pa以下、10Pa以下、5Pa以下、又は1Pa以下であってもよい。一方、酸素分圧が前述のことを満足すれば、酸素分圧が1×10-1Pa以上又は5×10-1Pa以上であっても実用上問題はない。また、高純度アルゴンガス等を用いて、焼結対象物の酸化を著しく抑制することができる。酸素分圧が10-2Pa以下であれば、焼結対象物の酸化を著しく抑制することができる。この観点からは、酸素分圧は10-2Pa未満、5×10-3Pa以下、又は10-3Pa以下であってもよい。一方、酸素分圧が前述のことを満足すれば、酸素分圧が10-5Pa以上、5×10-5Pa以上、10-4Pa以上、又は5×10-4Pa以上であっても実用上問題はない。
焼結方法は特に制限されない。例えば、無加圧焼結法及び加圧焼結法等が挙げられる。焼結体の密度が向上し、焼結体(磁性材料)の磁気特性、特に飽和磁気分極が向上する観点からは、加圧焼結法が好ましい。加圧焼結法としては、例えば、ホットプレス及び放電プラズマ焼結等が挙げられる。焼結温度に達するまでの昇温速度が大きいことから、放電プラズマ焼結が好ましい。焼結温度に達するまでの昇温速度が大きいと、昇温中に、1-12相と略1-7相の混合相以外の相が形成されることを抑制できる。焼結温度に達するまでの昇温速度は、20K/分以上、30K/分以上、40K/分以上、又は50K/分以上が好ましく、80K/分以下、70K/分以下、又は60K/分以下が好ましい。
加圧焼結時の加圧力としては、20MPa以上、40MPa以上、又は50MPa以上であってよく、1000MPa以下、800MPa以下、600MPa以下、400MPa以下、200MPa以下、100MPa以下、80MP以下、又は60MPa以下であってよい。
焼結体の密度向上のため、焼結前に予めアモルファス粉末を圧粉して圧粉体を得ておき、圧粉体を焼結することが好ましい。圧粉時の成形圧は、例えば、50MPa以上、100MPa以上、200MPa以上、又は300MPa以上であってよく、1000MPa以下、800MP以下、又は600MPa以下であってよい。
磁場中で圧粉を行い、アモルファス粉末を配向させ、焼結体に異方性を付与してもよい。これにより、焼結体の飽和磁気分極が向上する。印加する磁場は、例えば、0.1T以上、0.5T以上、1.0T以上、1.5T以上、又は2.0T以上であってよく、10.0T以下、8.0T以下、6.0T以下、又は4.0T以下であってよい。
1-12相と略1-7相の混合相がナノ結晶化されている場合には、上述した圧粉時の磁場印加ではアモルファス粉末の配向が困難であるため、焼結体を熱間塑性加工して焼結体に異方性を付与してもよい。これにより、焼結体の飽和磁気分極が向上する。1-12相と略1-7相の混合相がナノ結晶化されているとは、1-12相又は略1-7相の平均粒径が、10nm以上、20nm以上、又は50nm以上であり、900nm以下、700nm以下、500nm以下、300nm以下、100nm以下、又は70nm以下であることを意味する。「平均粒径」は、次のように測定される。走査型電子顕微鏡像又は透過型電子顕微鏡像で、磁化容易軸の垂直方向から観察した一定領域を規定し、この一定領域内に存在する1-12相又は略1-7相に対して磁化容易軸と垂直方向に複数の線を引き、1-12相又は略1-7相の粒子内で交わった点と点の距離から1-12相又は略1-7相の径(長さ)を算出する(切断法)。1-12相又は略1-7相の断面が円に近い場合は、投影面積円相当径で換算する。1-12相又は略1-7相の断面が長方形に近い場合は、直方体近似で換算する。このようにして得られた径(長さ)の分布(粒度分布)のD50の値が、平均粒径である。
熱間塑性加工時の温度は、1-12相と略1-7相の混合相が破壊されなければよく、例えば、923K以上、973K以上、又は993K以上であってよく、1123K以下、1073K以下、又は1043K以下であってよい。また、熱間塑性加工時の圧力は、例えば、10MPa以上、30MPa以上、50MPa以上、70MPa以上、又は90MPa以上であってよく、300MPa以下、250MPa以下、200MPa以下、150MPa以下、又は100MPa以下であってよい。圧下率は、10%以上、30%以上、50%以上、60%以上であってよく、75%以下、70%以下、又は65%以下であってよい。熱間塑性加工時の歪速度は、0.01/s以上、0.1/s以上、1.0/s以上、又は3.0/s以上であってよく、15.0/s以下、10.0/s以下、又は5.0/s以下であってよい。熱間塑性加工時の加熱時間は、1-12相と略1-7相の混合相が破壊されないよう、可能な限り短時間であることが好ましい。熱間塑性加工時の加熱時間とは、熱間塑性加工の対象物(焼結体)の温度が熱間塑性加工温度である時間のことを意味する。
〈粉砕工程〉
焼結前のアモルファス薄片を事前に粉砕して、アモルファス粉末にしておくことが好ましい。アモルファス粉末の事前粉砕は任意であるが、アモルファス薄片の事前粉砕は典型的である。アモルファス薄片の事前粉砕によって、焼結体中で1-12相と略1-7相の混合相が均一化し、また、焼結体の密度が向上する。
〈変形〉
これまで説明してきたこと以外でも、本開示の磁性材料及びその製造方法は、特許請求の範囲に記載した内容の範囲内で種々の変形を加えることができる。例えば、本開示の磁性材料の製造方法において、熱処理の前後両方に粉砕工程を設けてもよい。すなわち、アモルファス薄片を粉砕して、アモルファス粉末を得て、アモルファス粉末を熱処理して磁性粉末を得た後、さらに、その磁性粉末を粉砕してもよい。このようにすることで、熱処理中にアモルファス粉末を凝集させることなく、微細な磁性粉末を得ることができる。
以下、本開示の磁性材料及びその製造方法を実施例により、さらに具体的に説明する。なお、本開示の磁性材料及びその製造方法は、以下の実施例で用いた条件に限定されるものではない。
《磁性材料が磁性粉末である場合》
試料として、次の要領で磁性粉末を準備し、それを評価した。
〈試料の準備〉
ストリップキャスト法を用いて得たアモルファス薄片を粉砕し、アモルファス粉末を準備した。冷却ロールの周速は40m/秒であった。アモルファス薄片(粉末)の組成は、モル比での式(Sm0.8Zr0.21.1(Fe0.9Co0.111.3Ti0.7であった。そして、アモルファス粉末を860~1223Kで1~60分にわたり熱処理した。熱処理時の雰囲気はアルゴンガス雰囲気であり、酸素分圧は10-2Pa以下であった。なお、前述のモル比での式は(Sm0.8Zr0.28.4(Fe0.9Co0.186.3Ti5.3で表してもよい。熱処理温度を860Kからに設定した理由は、予め、アモルファス粉末を熱重量・示差熱分析(TG-DTA分析)した結果、図3に示すように、860Kで発熱ピークが認められ、860Kでアモルファスの結晶化の開始が認められたためである。また、別の例として、上記のアモルファス粉末を、1123Kで1分~4時間にわたり熱処理して、試料を準備した。熱処理時の雰囲気はアルゴンガス雰囲気であり、酸素分圧は10-2Pa以下であった。
〈評価〉
熱処理後の各試料をX線回折分析した。X線回折分析には、Rigaku SmartLab装置を用いた。そして、熱処理後の各試料の磁気特性を測定し、飽和漸近則に基づいて、飽和磁気分極(J)、磁気異方性磁場(H)、及び保磁力(H)を求めた。磁気特性の測定には、東英工業(株)5T-VSM及び8T-VSM、東北大学強磁場超伝導材料研究センター15T-VSM、並びに株式会社玉川製作所製B-Hトレーサを使用した。図7及び図8に示す結果について、B-Hトレーサを使用した。
評価結果を図4、図5A、図5B、及び図6に示す。また、別の例として、SPS焼結法で調製した試料の評価結果を図7及び図8に示す。図4は、熱処理時間が30分で、熱処理温度が1023K、1073K、1123K、1173K、及び1223Kの試料の一部について、X線回折パターンを示した説明図である。図4には、アモルファス粉末のX線回折パターンも付記してある。図5Aは、各試料の熱処理温度と飽和磁気分極(J)の関係を示すグラフである。図5Bは、各試料の熱処理温度と磁気異方性磁場(H)の関係を示すグラフである。なお、図5A及び図5Bには、熱処理時間が、1分、10分、20分、30、及び60分のデータが記載されている。図6は、上記試料群についての、熱処理温度と保磁力(H)の関係を示すグラフである。図6において、1-12相と1-9相の混合相を備える試料に関しては、焼結温度が1223K以外である試料の焼結時間は30分の試料を中心に10分~30分であり、焼結温度が1223Kである試料の焼結時間は10分である。
図4から、アモルファス粉末にはX線回折ピークが認められず、熱処理温度の上昇にしたがって、1-9相の単相、1-12相と1-9相の混合相、1-12相の単相が形成されていることが理解できる。具体的には、熱処理時間が30分の場合には、1023Kで熱処理した試料では、1-9相のみのピークが認められ、1-9相の単相が認識できる。1073K及び1123Kで熱処理した試料では、1-12相と1-9相の両方のピークが明瞭に認められ、1-12相と1-9相の混合相の存在が明瞭に認識できる。1173Kで熱処理した試料では、1-9相のピークよりも1-12相のピークが明瞭であるものの、1-9相のピークも認められ、1-12相と1-9相の混合相の存在が認識できる。1223Kの試料では、1-9相のピークよりも1-12相のピークがさらに明瞭であるものの、1-9相のピークも認められ、1-12相と1-9相の混合相の存在が僅かに確認できる。図4中では、1-12相と1-9相の混合相の存在が明瞭に認められた試料について「1-12相+1-9相の混合相」と記載した。図4に示した試料以外では、1173K及び1223で熱処理した試料でも、1-12相と1-9相の混合相の存在が明瞭に認識できた試料を確認している(図5A及び図5B並びに図6、参照)。
図5A及び図5Bから、1-9相の単相は、飽和磁気分極及び磁気異方性磁場のいずれも明らかに低い。1-12相と1-9相の混合相は、1-12相の単相と比べて、飽和磁気分極及び磁気異方性磁場のいずれも低下しているが、その低下の程度は、混合相中に1-9相が存在していることから予測されるよりも小さい。1-12相の単相の飽和磁気分極は、磁性材料の用途によっては十分であることも多い。このことから、図5Aで示される、1-12相と1-9相の混合相の飽和磁気分極の低下は、実用上問題ないものであることが多い。磁気異方性磁場については、従来、磁気異方性磁場と保磁力は比例すると考えられていた。しかし、驚くべきことに、1-12相と1-9相の混合相は、1-12相と比べて、磁気異方性磁場が低下しているにもかかわらず(図5B、参照)、1-12相と1-9相の混合相は、1-12相と比べて、保磁力が向上していること(図6、参照)が確認できる。これらにより、本開示の磁性材料(磁性粉末)においては、飽和磁気分極の低下を実用上問題ない程度に抑制しつつ、保磁力が向上していることを確認できた。
また、別の例として準備した試料の評価結果を図9に示す。図9は、アモルファス粉末を1123Kで1分~4時間にわたり熱処理した試料のX線回折パターンを纏めた説明図である。図9から、熱処理時間の経過にしたがって、1-9相のみのピークが認められるX線回折パターン、1-12相と1-9相の両方のピークが認められるX線回折パターン、1-12相のみのピークが認められるX線回折パラーンに変化していることが理解できる。このことから、熱処理時間の経過にしたがって、1-9相の単相、1-12相と1-9相の混合相、1-12相の単相に変化することが理解できる。
《磁性材料が焼結磁石である場合》
試料として、次の焼結磁石を準備し、それを評価した。
〈試料の準備〉
ストリップキャスト法を用いて得たアモルファス薄片を粉砕し、アモルファス粉末を準備した。冷却ロールの周速は40m/秒であった。アモルファス薄帯(粉末)の組成は、モル比での式(Sm0.8Zr0.21.1(Fe0.9Co0.111.3Ti0.7であった。なお、前述のモル比での式は(Sm0.8Zr0.28.4(Fe0.9Co0.186.3Ti5.3で表してもよい。
準備したアモルファス粉末を焼結した。焼結には、富士電波工機株式会社製放電プラズマ焼結装置ドクターシンターラボ.Jrシリーズ211Lxを用いた。焼結温度までの昇温速度は50K/分であった。焼結時の圧力は50MPaであった。焼結には、グラファイト成形型を用いた(カーボンシート使用)。焼結時の雰囲気はアルゴンガス雰囲気であり、酸素分圧は10-2Pa以下であった。
〈評価〉
焼結後の各試料の磁気特性を測定し、飽和漸近則に基づいて、飽和磁気分極(J)、残留磁気分極(J)、及び保磁力(H)を求めた。磁気特性の測定には、後述する表1については東英工業(株)8T-VSM、表2については東北大学強磁場超伝導材料研究センター15T-VSMを使用した。測定時の最大印加磁場は8T及び15Tであった。また、各試料の密度をアルキメデス法で測定した。
結果を表1及び表2に示す。表1及び表2には焼結温度及び焼結時間を併記した。また、図7及び図8に、実施例1及び2の試料の株式会社玉川製作所製B-Hトレーサで測定したヒステリシス曲線を示す(最大印加磁場3T)。図7は、実施例1の試料のヒステリシス曲線を示すグラフである。図8は、実施例2の試料のヒステリシス曲線を示すグラフである。
Figure 2022037850000002
Figure 2022037850000003
表2から、実施例1及び実施例2の試料の保磁力は、それぞれ、432kA/m及び368kA/mであることを確認できる。1-12相を主として備える従来の磁性材料(焼結磁石)の保磁力は160kA/m程度であることから、本発明の磁性材料(焼結磁石)は、大幅に保磁力が向上していることが理解できる。
《確認実験》
本開示の磁性材料が備える、1-12相と略1-7相の混合相は、1-12相と略1-7相を機械的に混合して得られるものではないことを確認する実験を行った。また、1-12相と略1-7相の混合相の組織についても調査した。なお、ここでは、1-12相と1-9相の混合相についてと、1-12相と1-9相を機械的に混合した場合について検証しているが、1-12相と略1-7相の混合相についてと、1-12相と略1-7相を機械的に混合した場合についての検証に関しても、同様のことがいえると考えられる。これは、1-9相と、1-9相以外の略1-7相とは、結晶構造がほぼ等価と考えられるためである。
上述の実施例1及び2の試料の準備に用いたのと同一のアモルファス薄帯(粉末)を、1023K、1123K、及び1223Kで、30分にわたり熱処理し、それをX線回折分析した。結果を図10に示す。図10から、1023Kでは、ほぼ1-9相であり、1123Kでは、1-12相と1-9相の混合相であり、1223Kでは、ほぼ1-12相であることを理解できる。ここで、「ほぼ」とは、僅かな1-12相及び1-9相が認められることを意味する。図10から、低温で、先ず1-9相が生成し、その後、1-12相に相転換していく相生成機構を理解できる。
これに対し、実質的に1-12相のみを備える磁性材料と、実質的に1-9相のみを備える磁性材料を準備し、これらを乳鉢で機械的に粉砕しながら混合し、機械的混合粉を得た。そして、機械的混合粉をX線回折分析した。また、機械的混合粉の磁気特性を測定した。結果を図11A及び図11Bに示す。なお、図11A及び図11Bには、参考として、上述の実施例1の焼結磁石と同一の製造条件で得られた試料Aの結果を併記した。図11Aについては、さらに、参考として、実質的に1-9相のみを備える磁性材料を乳鉢で機械的に粉砕した試料、そして、実質的に1-9相のみを備える磁性材料を乳鉢で機械的に粉砕した試料のX線回折分析結果を併記した。
図11Aから、機械的混合粉のX線回折パターンは、試料AのX線回折パターンと異なる。また、図11Aの機械的混合粉のX線回折パターンは、図10の、1-12相と1-9相の混合相のX線回折パターン(1123K/30分のX線回折パターン)と異なる。これらのことから、1-12相と1-9相の混合相の結晶構造は、1-12相と1-9相を機械的に混合して得られるものではないことを理解できる。
図11Bから、機械的混合粉は保磁力発現していないのに対して、試料Aは保磁力を発現していることを理解できる。このことから、1-12相と1-9相を機械的に混合しても保磁力は得られず、本開示の磁性材料のような、1-9相中に1-12相が析出した、1-12相と1-9相の混合相によって保磁力が発現すると考えられる。
また、上述の実施例1と同一の条件で得られた試料A、そして、上述の実施例2と同一の条件で得られた試料Bについて、磁気特性を測定した。測定は、15Tで着磁した後に行った。結果を図12及び図13に示す。図12は、試料Aについてのヒステリシス曲線を示すグラフであり、図13は、試料Bについてのヒステリシス曲線を示すグラフである。
試料A及び試料Bは、炭素製ダイスを用いて焼結したため、焼結時の圧力が50MPaであったことから、試料A及び試料Bそれぞれの密度は、理論密度の80~84%であったが、図12及び図13から、良好な磁気特性を得られていることを理解できる。具体的には、試料A及び試料Bのいずれも、400kA/m(5kOe)程度の保磁力、及び4.24~4.39MGOe(33.9~35.1kJ/m)程度のBHmax値を得られていることを理解できる。なお、理論密度は、7.7g/cmである。
また、試料A及び試料Bの保磁力について、図6に示したアモルファス粉末を熱処理した各試料と比較した。図14は、図6のグラフに、試料A及び試料Bの保磁力を追記したグラフである。なお、図14において、試料A及び試料Bの温度は、焼結温度である。図14から、アモルファス粉末を熱処理しても、あるいは、アモルファス粉末を焼結しても、いずれも同様の結果を得られることを理解できる。なお、アモルファス粉末を熱処理して、結晶質を有する磁性粉末を得て、その磁性粉末を焼結しても、試料A及び試料Bのような結果は得られない。
次に、本開示の磁性材料の製造方法で得られた、アモルファス粉末を焼結した磁性材料(本開示の磁性材料のうち、焼結体の態様)の組織について説明する。ここでは、試料Aについて説明するが、本開示の磁性材料の製造方法の要件を満たす成果物(本開示の磁性材料)については同様のことがいえる。
図15は、試料Aの組織を観察した結果を示す、走査型電子顕微鏡像である。図16は、図15の白線で囲まれた部位を拡大して観察した結果を示す、走査型電子顕微鏡像である。図15から、試料Aは、扁平板状粒子の集合体であり、扁平板状粒子の厚さは20μm程度、長さ(長手方向の長さ)は100μm程度であることを理解できる。図16から、扁平板状粒子のほとんどの部分(図16の右側拡大図の右上側、参照)が、100nm以下の微細結晶粒子の集合体で構成されることを理解できる。また、図16から、試料中に、1~10μm程度に粒成長した組織が僅かに存在すること(図16の右側拡大図の左下側、参照)を理解できる。
図17は、図16の扁平板状粒子の組織を電子線後方散乱回折法で観察した結果を示す、説明図である。図17の白色の線で囲まれた部分は扁平板状粒子が存在する部分である。図17において、菊池パターンからは結晶性が認めらないことから、扁平板状粒子の結晶性は、それほど高くないと考えられる。
図18は、100nm以下の微細結晶粒子の集合体を、走査型電子顕微鏡と磁気力顕微鏡で観察し、走査型電子顕微鏡像(SEM像)と磁気力顕微鏡像(MFM像)を比較した説明図である。図18に示した観察部位は、100nm以下の微細結晶粒子の集合体、すなわち、扁平板状粒子のほとんどを占める部位である。図18の磁気力顕微鏡像(MFM像)で、微細結晶粒子が確認できることから、これらの微細結晶粒子のそれぞれは、磁気的に独立していると考えられる。すなわち、これらの微細結晶粒子の集合体は、単磁区粒子の集合体であると考えられる。このことから、扁平板状粒子、すなわち、1-12相と1-9相の混合相は、各粒子が磁気的に独立した単磁区粒子の集合体を備えることを理解できる。なお、「備えている」とは、単磁区粒子の集合体の他に、例えば、図16の右側拡大図の左下側に存在する粗大化組織が、不純物のように、僅かに存在してもよいことを意味する。
図10で説明したように、1-12相と1-9相の混合相は、アモルファス粉末を熱処理したとき、低温で、先ず1-9相が生成し、その後、1-12相に相転換していく。そこで、アモルファス粉末を熱処理する際に、熱処理温度及び時間を変化させて、熱処理後の粉末をX線回折分析し、その結果から1-12相の結晶子径を算出した。具体的には、熱処理後の粉末のX線回折パターンで、1-12相特有の回折線(1-12相の(310)回折線)の半値幅を用いて、シェラーの式から、1-12相の結晶子径を算出した。
結果を図19に示す。図19は、熱処理時間及び熱処理温度と平均結晶子径Daveの関係を示すグラフである。なお、平均結晶子径Daveは、各熱処理実験から得られた結晶子径Dの平均値である。図19において、1073~1223Kの間では、1-12相と1-9相の混合相が得られており、温度の上昇に伴って、1-12相の割合が高くなり、1223Kで、ほぼ全体が1-12相になる。
図19から、次のことが理解できる
比較的低温では、少量の1-12相が生成しており、その結晶子径は10nm程度である。保磁力Hcが最大となる試料では、1-12相の結晶子径は17nm程度である。そして、ほぼ全体が1-12相である試料(1223K)では、結晶子径は20nmを超える。このことから、1-9相の基質中に生成した10~20nmの1-12相の周囲を、数十nmの1-9相が取り囲んでいると考えられる。そして、1-12相の周囲を1-9相が取り囲んだ組織は、図18で説明したように、単磁区粒子の集合体を形成している。この単磁区粒子の集合体により、5~6kOe程度の保磁力と、135emu/g(磁気分極で1.3T)程度の平均飽和磁化を発現すると考えられる。なお、ここでは、アモルファス粉末を熱処理した場合について説明したが、アモルファス粉末を焼結した場合にも同様であると考えられる。
これらの結果から、本開示の磁性材料及びその製造方法の効果を確認できた。
10 急冷装置
11 溶解炉
12 溶湯
13 タンディッシュ
14 冷却ロール
15 アモルファス薄片

Claims (18)

  1. モル比での式(Sm(1-x-y)Zr(Fe(1-z)Co
    (前記式中、RはSm以外の一種以上の希土類元素であり、
    TはTi、V、Mo及びWからなる群より選ばれる一種以上の元素であり、
    Mは不可避的不純物元素並びにAl、Si、Ni、C、O、N、Cr、Cu、Ga、Ag及びAuからなる群より選ばれる一種以上の元素であり、かつ、
    0<x≦0.3、
    0≦y≦0.1、
    0≦z≦0.3、
    7.7≦a≦9.8、
    b=100-a-c-d、
    3.8<c≦7.7、及び
    0≦d≦1.0である)
    で表される全体組成を有し、かつ
    ThMn12型の結晶構造を有する相と略TbCu型の結晶構造を有する相の混合相を備え、
    前記略TbCu型の結晶構造を有する相が、下記からなる群より選ばれる少なくとも一つの相を含む、磁性材料:
    TbCu型の結晶構造を有する相、
    SmFe型の結晶構造を有する相、
    SmFe10型の結晶構造を有する相、及び
    SmFe11型の結晶構造を有する相、並びに
    SmFe型の結晶構造を有する相、SmFe10型の結晶構造を有する相、及びSmFe11型の結晶構造を有する相の中間相。
  2. 前記混合相が、単磁区粒子の集合体を備えている、請求項1に記載の磁性材料。
  3. 前記単磁区粒子中の1-12相の結晶子径が、10~40nmである、請求項2に記載の磁性材料。
  4. 前記磁性材料が磁性薄片又は磁性粉末である、請求項1~3のいずれか一項に記載の磁性材料。
  5. 前記磁性材料が焼結磁石である、請求項1~3のいずれか一項に記載の磁性材料。
  6. 前記TがTiである、請求項1~5のいずれか一項に記載の磁性材料。
  7. モル比での式(Sm(1-x-y)Zr(Fe(1-z)Co
    (前記式中、RはSm以外の一種以上の希土類元素であり、
    TはTi、V、Mo及びWからなる群より選ばれる一種以上の元素であり、
    Mは不可避的不純物元素並びにAl、Si、Ni、C、O、N、Cr、Cu、Ga、Ag及びAuからなる群より選ばれる一種以上の元素であり、かつ、
    0<x≦0.3、
    0≦y≦0.1、
    0≦z≦0.3、
    7.7≦a≦9.8、
    b=100-a-c-d、
    3.8<c≦7.7、及び
    0≦d≦1.0である)
    で表される組成を有するアモルファス薄片を準備すること、及び
    前記アモルファス薄片を1023~1223Kで1~60分にわたり熱処理すること、
    を含む、
    磁性材料の製造方法。
  8. 前記アモルファス薄片を1073~1173Kで10~30分にわたり熱処理する、請求項7に記載の磁性材料の製造方法。
    の製造方法。
  9. 前記アモルファス薄片を粉砕し、アモルファス粉末を得て、前記アモルファス粉末を熱処理する、請求項7又は8に記載の磁性材料の製造方法。
  10. 前記熱処理後の前記薄片を粉砕する、請求項7又は8に記載の磁性材料の製造方法。
  11. 前記熱処理時の酸素分圧が10Pa以下である、請求項7~10のいずれか一項に記載の磁性材料の製造方法。
  12. 前記TがTiである、請求項7~11のいずれか一項に記載の磁性材料の製造方法。
  13. モル比での式(Sm(1-x-y)Zr(Fe(1-z)Co
    (前記式中、RはSm以外の一種以上の希土類元素であり、
    TはTi、V、Mo及びWからなる群より選ばれる一種以上の元素であり、
    Mは不可避的不純物元素並びにAl、Si、Ni、C、O、N、Cr、Cu、Ga、Ag及びAuからなる群より選ばれる一種以上の元素であり、かつ、
    0<x≦0.3、
    0≦y≦0.1、
    0≦z≦0.3、
    7.7≦a≦9.8、
    b=100-a-c-d、
    3.8<c≦7.7、及び
    0≦d≦1.0である)
    で表される組成を有するアモルファス薄片を準備すること、及び
    前記アモルファス薄片を1023~1223Kで1~60分にわたり焼結すること、
    を含む、
    磁性材料の製造方法。
  14. 前記アモルファス薄片を1073~1173Kで10~30分にわたり焼結する、請求項13に記載の磁性材料の製造方法。
  15. 前記アモルファス薄片を粉砕し、アモルファス粉末を得て、前記アモルファス粉末を焼結する、請求項13又は14に記載の磁性材料の製造方法。
  16. 前記焼結が、放電プラズマ焼結である、請求項13~15のいずれか一項に記載の磁性材料の製造方法。
  17. 前記焼結時の酸素分圧が10Pa以下である、請求項13~16のいずれか一項に記載の磁性材料の製造方法。
  18. 前記TがTiである、請求項13~17のいずれか一項に記載の磁性材料の製造方法。
JP2020209589A 2020-08-25 2020-12-17 磁性材料及びその製造方法 Pending JP2022037850A (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020141528 2020-08-25
JP2020141528 2020-08-25

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2022037850A true JP2022037850A (ja) 2022-03-09

Family

ID=80494879

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2020209589A Pending JP2022037850A (ja) 2020-08-25 2020-12-17 磁性材料及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2022037850A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6402707B2 (ja) 希土類磁石
JP5754232B2 (ja) 高保磁力NdFeB磁石の製法
WO2011145674A1 (ja) 希土類永久磁石の製造方法および希土類永久磁石
JP6319808B2 (ja) 磁性化合物及びその製造方法
JP6409867B2 (ja) 希土類永久磁石
JP5985738B1 (ja) 永久磁石、モータ、および発電機
CN109427456B (zh) 磁性化合物及其制造方法
JP6569408B2 (ja) 希土類永久磁石
JP2002270416A (ja) バルク状異方性希土類永久磁石及びその製造方法
JP2011049440A (ja) R−t−b系永久磁石の製造方法
JP4076178B2 (ja) R−t−b系希土類永久磁石
JP6919788B2 (ja) 希土類焼結磁石
KR102605565B1 (ko) 이방성 희토류 벌크자석의 제조방법 및 이로부터 제조된 이방성 희토류 벌크자석
JPWO2017046826A1 (ja) 永久磁石および回転電機
JP2022037850A (ja) 磁性材料及びその製造方法
CN109427455B (zh) 磁性化合物及其制造方法以及磁性粉体
JP6325744B2 (ja) 永久磁石、モータ、および発電機
JP2018174317A (ja) R−t−b系永久磁石
JP2019040926A (ja) 磁性化合物及びその製造方法
JP2002285276A (ja) R−t−b−c系焼結磁石及びその製造方法
JPH0845718A (ja) 磁性材料と製造法
JP5501835B2 (ja) 希土類永久磁石
JP2022072860A (ja) 希土類磁石及びその製造方法
JP2023127785A (ja) 希土類鉄炭素硼素系磁性粉末及びその製造方法
JP2023173696A (ja) 希土類磁石及びその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210202

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20231214