JP2022037344A - ステアリング制御装置 - Google Patents

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Abstract

Figure 2022037344000001
【課題】微分制御トルク成分の演算を含むサーボ制御器の出力に現れるノイズを抑制するステアリング制御装置を提供する。
【解決手段】サーボ制御器400は、目標操舵トルクTs*と操舵トルクTsとの差分である操舵トルク偏差ΔTsを処理対象入力として、処理対象入力の微分に基づき微分制御トルク成分を演算する微分制御トルク成分演算部50を有する。微分制御トルク成分演算部50は、「操舵トルク偏差ΔTs(処理対象入力)の変化が相対的に大きいとき、カットオフ周波数が相対的に高い操舵トルク偏差微分信号(処理対象微分信号)の寄与度が相対的に高く」なり、「操舵トルク偏差ΔTs(処理対象入力)の変化が相対的に小さいとき、カットオフ周波数が相対的に低い操舵トルク偏差微分信号(処理対象微分信号)の寄与度が相対的に高く」なるように、微分制御トルク成分を演算する。
【選択図】 図3

Description

本発明は、ステアリング制御装置に関する。
従来、操舵トルクを目標操舵トルクに追従させるように、サーボ制御器によりモータの出力指令を演算するステアリング制御装置において、ノイズの影響を抑制する技術が知られている。
例えば特許文献1に開示されたステアリング制御装置は、目標操舵トルク(Ts*)とベースアシスト指令(Tb*)とから求めた路面反力に基づいてサーボ制御器に追従させる目標操舵トルクを生成する。ノイズが重畳しやすい操舵トルク検出値(Ts)が目標操舵トルクの生成に使用されないため、操舵トルクサーボ出力におけるノイズの影響が抑制される。
また、特許文献2に開示されたステアリング制御装置では、サーボ制御器(特許文献2ではアシストコントローラ)がPID制御器で構成されている。PID制御器は、目標操舵トルクと操舵トルクとの差である操舵トルク偏差を入力として、制御トルクの比例項、積分項及び微分項、言い換えれば、比例、積分、微分の各制御トルク成分を演算する。
特許第6314752号公報 特許第6252027号公報
例えば操舵トルク偏差を入力とする一般的なPID制御器では、操舵トルク信号にノイズが重畳すると、微分項、すなわち微分制御トルク成分の演算でノイズが増幅されて操舵トルクサーボ出力に現れ、モータを加振する。或いは、操舵トルクを微分する微分先行型PID制御器を備える構成でも同様である。特に非操舵時や微操舵時にモータが加振された場合、発生する音や機械的な振動にドライバが気づきやすく、快適性を低下させるという問題がある。
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、微分制御トルク成分の演算を含むサーボ制御器の出力に現れるノイズを抑制するステアリング制御装置を提供することにある。
本発明のステアリング制御装置は、操舵トルク(Ts)を目標操舵トルク(Ts*)に追従させるように、サーボ制御器(400)によりモータ(80)の出力指令(Tb*)を演算する。サーボ制御器は、目標操舵トルクと操舵トルクとの差分である操舵トルク偏差(ΔTs)、又は、操舵トルクを「処理対象入力」として、処理対象入力の微分に基づき微分制御トルク成分を演算する微分制御トルク成分演算部(50、505、60、605)を有する。一般的なPID制御器の微分制御トルク成分演算部では、操舵トルク偏差が処理対象入力であり、微分先行型PID制御器の微分制御トルク成分演算部では、操舵トルクが処理対象入力である。
処理対象入力を微分し、所定のカットオフ周波数以上の高周波成分を遮断するフィルタで処理した信号を「処理対象微分信号」とする。処理対象入力が操舵トルク偏差の場合、処理対象微分信号は操舵トルク偏差微分信号であり、処理対象入力が操舵トルクの場合、処理対象微分信号は操舵トルク微分信号である。微分制御トルク成分演算部は、「処理対象入力の変化が相対的に大きいとき、カットオフ周波数が相対的に高い処理対象微分信号の寄与度が相対的に高く」なり、「処理対象入力の変化が相対的に小さいとき、カットオフ周波数が相対的に低い処理対象微分信号の寄与度が相対的に高く」なるように、微分制御トルク成分を演算する。
本発明では、処理対象入力の変化に応じて、カットオフ周波数の異なる処理対象微分信号の寄与度を調整することで、操舵トルク信号に重畳したノイズが一般的なPID制御器や微分先行型のPID制御器の微分項で増幅されることが抑制される。したがって、特に非操舵時や微操舵時に、ノイズにより加振されたモータが発生する音や機械的な振動を低減することができる。また、操舵時には、操舵トルク信号に対するモータ出力指令の応答性を確保することができるため、位相遅れによるハンドルのリップル振動を抑えることができる。
本発明の微分制御トルク成分演算部は大きく2種類の態様を含む。第1の態様の微分制御トルク成分演算部(50、505)は、カットオフ周波数が異なる複数のフィルタで処理された処理対象微分信号を加重加算して、微分制御トルク成分を演算するものである。
この微分制御トルク成分演算部は、「カットオフ周波数が相対的に高い処理対象微分信号の寄与度を、処理対象微分信号の振幅の絶対値が相対的に大きい帯域で相対的に高く」し、「カットオフ周波数が相対的に低い処理対象微分信号の寄与度を、処理対象微分信号の振幅の絶対値が相対的に小さい帯域で相対的に高く」する。
第2の態様の微分制御トルク成分演算部(60、605)は、処理対象入力の変化率が大きいときほどカットオフ周波数が高くなるように設定されたフィルタにより処理対象信号を処理して微分制御トルク成分を演算する。
電動パワーステアリングシステムの概略構成図。 ECU(ステアリング制御装置)の概略構成図。 第1、第2実施形態のサーボ制御器のブロック図。 トルク不感帯処理器のマップ。 第1実施形態の微分制御トルク成分演算部のブロック図。 疑似演算部の等価な構成を示すブロック図。 (a)第1微分不感帯処理、(b)第2微分不感帯処理のマップ。 操舵トルク偏差、及び、差分微分処理後の信号波形図。 第1LPF処理、及び、第1微分不感帯処理後の信号波形図。 第2LPF処理、及び、第2微分不感帯処理後の信号波形図。 第1実施形態による微分制御トルク成分の波形図。 比較例の微分制御トルク成分の波形図。 実機での挙動を示すタイムチャート1。 同上のタイムチャート2。 第2実施形態の微分制御トルク成分演算部のブロック図。 (a)変化率演算部の周波数特性図、(b)フィルタ定数演算部のマップ、(c)操舵トルク偏差疑似微分部の周波数特性図。 第3実施形態のサーボ制御器のブロック図。 第4実施形態の微分制御トルク成分演算部のブロック図。
以下、本発明のステアリング制御装置の複数の実施形態を、図面に基づいて説明する。「ステアリング制御装置」としてのECUは、車両の電動パワーステアリングシステム、又はステアバイワイヤシステムに適用され、モータの出力指令を演算する。以下の実施形態では、主に電動パワーステアリングシステムに適用される例を示す。電動パワーステアリングシステムにおいてステアリング制御装置は、操舵アシストモータにアシストトルク指令を出力する。以下の第1~第4実施形態を包括して「本実施形態」という。
[電動パワーステアリングシステムの構成]
図1に示すように、電動パワーステアリングシステム1は、モータ80の駆動トルクにより、ドライバによるハンドル91の操作をアシストするシステムである。ステアリングシャフト92の一端にはハンドル91が固定されており、ステアリングシャフト92の他端側にはインターミディエイトシャフト93が設けられている。ステアリングシャフト92とインターミディエイトシャフト93とは、トルクセンサ94のトーションバーにより接続されており、これらにより操舵軸95が構成される。トルクセンサ94は、トーションバーの捩れ角に基づいて操舵トルクTsを検出する。
インターミディエイトシャフト93のトルクセンサ94と反対側の端部には、ピニオンギア961及びラック962を含むギアボックス96が設けられている。ドライバがハンドル91を回すと、インターミディエイトシャフト93とともにピニオンギア961が回転し、ピニオンギア961の回転に伴って、ラック962が左右に移動する。ラック962の両端に設けられたタイロッド97は、ナックルアーム98を介してタイヤ99と接続されている。タイロッド97が左右に往復運動し、ナックルアーム98を引っ張ったり押したりすることで、タイヤ99の向きが変わる。
モータ80は、例えば3相交流ブラシレスモータであり、ECU10から出力された駆動電圧Vdに応じて、ハンドル91の操舵力をアシストするアシストトルクを出力する。3相交流モータの場合、駆動電圧Vdは、U相、V相、W相の各相電圧を意味する。モータ80の回転は、ウォームギア86及びウォームホイール87等により構成される減速機構85を経由して、インターミディエイトシャフト93に伝達される。また、ハンドル91の操舵や、路面からの反力によるインターミディエイトシャフト93の回転は、減速機構85を経由してモータ80に伝達される。
なお、図1に示す電動パワーステアリングシステム1は、モータ80の回転が操舵軸95に伝達されるコラムアシスト式であるが、本実施形態のECU10は、ラックアシスト式の電動パワーステアリングシステムにも同様に適用可能である。また、他の実施形態では、操舵アシストモータとして、3相以外の多相交流モータや、ブラシ付DCモータが用いられてもよい。
ここで、ハンドル91からタイヤ99に至る、ハンドル91の操舵力が伝達される機構全体を「操舵系メカ100」という。ECU10は、モータ80が操舵系メカ100に出力する駆動トルクを制御することにより、操舵系メカ100が発生する操舵トルクTsを制御する。また、ECU10は、車両の所定の部位に設けられた車速センサ11が検出した車速Vを取得する。
ECU10は、図示しない車載バッテリからの電力によって動作し、トルクセンサ94により検出された操舵トルクTsや車速センサ11により検出された車速V等に基づき、アシストトルク指令Ta*を演算する。そして、ECU10は、アシストトルク指令Ta*に基づいて演算した駆動電圧Vdをモータ80へ印加することにより、操舵系メカ100に操舵トルクTsを発生させる。
なお、EPS-ECU15における各種演算処理は、ROM等の実体的なメモリ装置に予め記憶されたプログラムをCPUで実行することによるソフトウェア処理であってもよいし、専用の電子回路によるハードウェア処理であってもよい。
[ECUの構成]
次に、本実施形態のECU10の具体的な構成について説明する。図2~図4には第1及び第2実施形態に共通する構成例を示す。図2に示す構成例のECU10は、推定負荷演算部20、目標操舵トルク演算部30、偏差算出器39、サーボ制御器400、及び、電流フィードバック(図中「FB」)部70等を備える。
推定負荷演算部20は、加算器21及びLPF(「ローパスフィルタ」、以下同じ)22を含む。例えば加算器21は、ベースアシスト指令Tb*と目標操舵トルクTs*とを加算する。LPF22は、加算されたトルクから所定の周波数、例えば10Hz以下の帯域の成分を抽出する。推定負荷演算部20は、LPF22により抽出された周波数成分を推定負荷Txとして出力する。
図2の構成例の目標操舵トルク演算部30は、推定負荷Tx及び車速Vに基づき、目標操舵トルクTs*を演算する。その他の構成では、目標操舵トルク演算部30は、操舵角に基づいて目標操舵トルクTs*を演算してもよい。偏差算出器39は、目標操舵トルクTs*と操舵トルクTsとの差分である操舵トルク偏差ΔTs(=Ts*-Ts)を算出する。
各実施形態のサーボ制御器400には操舵トルク偏差ΔTsが入力される。また、第3実施形態では破線で示すように、さらに操舵トルクTsが入力される。第1、第2実施形態では、サーボ制御器400は、操舵トルク偏差ΔTsが0になるように、つまり、操舵トルクTsを目標操舵トルクTs*に追従させるように、一般的なPID制御器によりサーボ制御を実行し、モータ80の出力指令であるベースアシスト指令Tb*を演算する。第3実施形態では、操舵トルク偏差ΔTsに基づくPI演算と、操舵トルクTsに基づくD演算とを組み合わせた微分先行型PID制御によりサーボ制御を実行する。
図2の構成例ではベースアシスト指令Tb*に対する補正トルクは演算されないため、ベースアシスト指令Tb*がそのままアシストトルク指令Ta*として出力される。なお、特許文献2(特許第6252027号公報)の図2に示されるように補正トルクが演算される構成では、ベースアシスト指令Tb*と補正トルクとの合計がアシストトルク指令Ta*として出力される。
電流フィードバック部70は、アシストトルク指令Ta*に応じたアシストトルクが、特にトルクセンサ94よりもタイヤ99側の操舵軸95に付与されるように、モータ80へ駆動電圧Vdを印加する。電流フィードバック制御の技術は、モータ制御分野における周知技術であるため、詳細な説明を省略する。
(第1、第2実施形態のサーボ制御器)
図3に、第1、第2実施形態のサーボ制御器400の構成例を示す。この構成例のサーボ制御器400は、一般的なPID制御器410及び累積演算部490を含む。PID制御器410における微分制御トルク成分演算部50以外の構成は、概ね特許文献2の図4の構成と同様であり、PID演算の数式等は特許文献2に参照される。離散値の微分演算における「疑似微分」は、連続系の伝達関数でいうと(s/(τs+1)2)(ただし、s:ラプラス演算子、τ:時定数)の演算に該当する。
PID制御器410は、操舵トルク偏差ΔTsに基づくPID制御により、所定の制御周期毎に比例、積分、微分の各制御トルク成分を演算する。つまりPID制御器410は、比例制御トルク成分を演算する比例制御トルク成分演算部430、積分制御トルク成分を演算する積分制御トルク成分演算部440、及び、微分制御トルク成分を演算する微分制御トルク成分演算部50を有する。なお、図3では微分制御トルク成分演算部の符号として、第1実施形態の微分制御トルク成分演算部の符号「50」を記す。
比例制御トルク成分演算部430は、遅延素子45、減算器463及び比例ゲイン(Kp)乗算器473を含む。積分制御トルク成分演算部440は、遅延素子45、加算器464及び積分ゲイン(Ki)乗算器474を含む。微分制御トルク成分演算部50については、図5、図15等を参照して実施形態毎に後述する。PID成分加算器48は、制御周期毎にPID制御トルク成分を加算し、処理対象トルク成分TMを出力する。
累積処理部490は、PID制御器410の制御周期毎に演算されたPID制御トルク成分の和である処理対象トルク成分TMを累積処理し、ベースアシスト指令の今回値Tb*(n)を演算する。なお、累積処理は積分処理と同義であるが、ここではPIDの積分制御との区別のため「累積」の用語を用いる。なお、サーボ制御器の演算構成によっては累積演算部を設けず、PID制御器において累積演算後のトルクを出力するようにしてもよい。
累積処理部490は、加算器491、遅延素子492、トルク不感帯処理器493及び制限演算器494を含む。加算器491は、処理対象トルク成分TMの今回値に、遅延素子492を介して入力されるベースアシスト指令の前回値Tb*(n-1)を加算する。トルク不感帯処理器493は、図4に示すように、入力(TM+Tb*(n-1))の絶対値が閾値Td以下の範囲を不感帯として、出力Tb*(n)を0とする。制限演算器494は、トルク不感帯処理器493の出力の絶対値がサーボ制限値以下となるように制限する。
ところで操舵トルク信号Tsにノイズが重畳すると、PID制御器の微分項でノイズが増幅されて操舵トルクサーボ出力に現れ、モータを加振するという問題がある。そこで本実施形態では、操舵トルク信号Tsに重畳したノイズが微分制御トルク成分に現れることを抑制するように、微分制御トルク成分演算部の構成を工夫する。以下、微分制御トルク成分演算部50に入力される量を「処理対象入力」とする。第1、第2実施形態では操舵トルク偏差ΔTsが処理対象入力である。微分制御トルク成分演算部50は、処理対象入力である操舵トルク偏差ΔTsの微分に基づき微分制御トルク成分を演算する。
また、処理対象入力を微分し、所定のカットオフ周波数以上の高周波成分を遮断するフィルタで処理した信号を「処理対象微分信号」とする。第1、第2実施形態の処理対象微分信号は操舵トルク偏差微分信号D(ΔTs)である。第1、第2実施形態を包括する技術的思想として、第1実施形態の微分制御トルク成分演算部50、及び、第2実施形態の微分制御トルク成分演算部60は、次のように微分制御トルク成分を演算する。
(1)操舵トルク偏差ΔTsの変化が相対的に大きいとき、カットオフ周波数が相対的に高い操舵トルク偏差微分信号D(ΔTs)の寄与度が相対的に高くなる。
(2)操舵トルク偏差ΔTsの変化が相対的に小さいとき、カットオフ周波数が相対的に低い操舵トルク偏差微分信号D(ΔTs)の寄与度が相対的に高くなる。
第1実施形態では、カットオフ周波数が異なる複数のフィルタで処理された操舵トルク偏差微分信号D(ΔTs)を加重加算して、微分制御トルク成分を演算する。加重加算においては、各トルク偏差微分信号D(ΔTs)に対応する微分ゲインによる重みの調整も含まれる。
第2実施形態では、操舵トルク偏差ΔTsの変化率が大きいときほどカットオフ周波数が高くなるように設定されたフィルタにより操舵トルク偏差微分信号D(ΔTs)を処理して微分制御トルク成分を演算する。
続いて、第1実施形態の微分制御トルク成分演算部50、及び、第2実施形態の微分制御トルク成分演算部60の構成例について順に説明する。また、主に第1実施形態による作用効果について説明する。
(第1実施形態の微分制御トルク成分演算部)
図5~図7を参照し、第1実施形態の微分制御トルク成分演算部の構成について説明する。図5に示すように、第1実施形態の微分制御トルク成分演算部50は、並列に設けられた第1、第2の微分演算部と、加重加算器58とを備える。なお、図5に破線で示す変形例の構成は後で補足するものとし、基本例に関しては破線部を無視して説明する。
第1の微分演算部は、第1疑似微分部511、第1微分不感帯処理器541、遅延素子551、減算器561及び第1微分ゲイン(Kd1)乗算器571を含む。同様に第2の微分演算部は、第2疑似微分部512、第2微分不感帯処理器542、遅延素子552、減算器562及び第2微分ゲイン(Kd2)乗算器572を含む。図6には、第1、第2疑似微分部511、512と等価な構成を示す。図7には、第1、第2微分不感帯処理器541、542のマップ例を示す。
第1の微分演算部における第1疑似微分部511は、図6に示すように、差分微分処理部52と第1LPF531とを組み合わせた構成と等価である。差分微分処理部52は、操舵トルク偏差ΔTsの差分微分D(ΔTs)を演算する。第1LPF531は、相対的に高い第1カットオフ周波数fco1(例えば350Hz)以上の高周波成分が遮断された第1操舵トルク偏差微分信号D(ΔTs)1_0を通過させる。末尾の「_0」は、不感帯処理前の信号を表す。
第1微分不感帯処理器541は、入力される操舵トルク偏差微分信号D(ΔTs)1_0の振幅の絶対値が相対的に小さい小振幅域を不感帯とし、振幅の絶対値が相対的に大きい大振幅域では、入力に応じた操舵トルク偏差微分信号D(ΔTs)1_#を出力する。末尾の「_#」は、不感帯処理後の信号を表す。
図7(a)に示す例では、第1微分不感帯処理器541は、入力信号の振幅の絶対値が小閾値α未満である小振幅域で0を出力し、入力信号の振幅の絶対値が大閾値βより大きい大振幅域で入力と同じ値を出力する。また、第1微分不感帯処理器541は、入力信号の振幅の絶対値が小閾値α以上大閾値β以下である遷移域で、入力信号の振幅の絶対値の増加に伴い、出力の絶対値を0から大閾値βまで漸増させる。
減算器561は、第1微分不感帯処理器541が出力した不感帯処理後の操舵トルク偏差微分信号D(ΔTs)1_#の今回値と、遅延素子551を介して入力される前回値との差分を算出する。第1微分ゲイン乗算器571は、減算器561の出力に、寄与度を反映した第1微分ゲインKd1を乗じた値を出力する。なお、遅延素子551及び減算器561は演算構成上の一例であって、本質的なものではない。したがって、第1微分ゲイン乗算器571は、第1微分不感帯処理器541の出力に第1微分ゲインKd1を乗じると解釈してよい。
第2の微分演算部について、第1の微分演算部と重複する説明を省略する。第2疑似微分部512は、差分微分処理部52と第2LPF532とを組み合わせた構成と等価である。第2LPF532は、相対的に低い第2カットオフ周波数fco2(例えば150Hz)以上の高周波成分が遮断された第2操舵トルク偏差微分信号D(ΔTs)2_0を通過させる。つまり、操舵トルク偏差ΔTsの差分微分D(ΔTs)のうち、第1疑似微分部511は、高周波成分をより含む微分信号を出力し、第2疑似微分部512は、高周波成分をより含まない微分信号を出力する。
第2微分不感帯処理器542は、入力される操舵トルク偏差微分信号D(ΔTs)2_0の振幅の絶対値が相対的に大きい大振幅域を不感帯とし、振幅の絶対値が相対的に小さい小振幅域では、入力に応じた操舵トルク偏差微分信号D(ΔTs)2_#を出力する。
図7(b)に示す例では、第2微分不感帯処理器542は、入力信号の振幅の絶対値が小閾値α未満である小振幅域で入力と同じ値を出力し、入力信号の振幅の絶対値が大閾値βより大きい大振幅域で0を出力する。また、第2微分不感帯処理器542は、入力信号の振幅の絶対値が小閾値α以上大閾値β以下である遷移域で、入力信号の振幅の絶対値の増加に伴い、出力の絶対値を小閾値αから0まで漸減させる。
減算器562は、第2微分不感帯処理器542が出力した不感帯処理後の操舵トルク偏差微分信号D(ΔTs)2_#の今回値と、遅延素子552を介して入力される前回値との差分を算出する。第2微分ゲイン乗算器572は、減算器562の出力に、寄与度を反映した第2微分ゲインKd2を乗じた値を出力する。上記と同様に、第2微分ゲイン乗算器572は、第2微分不感帯処理器542の出力に第2微分ゲインKd2を乗じると解釈してよい。
加重加算器58は、第1微分不感帯処理器541の出力に第1微分ゲインKd1を乗じた値である「第1微分制御トルク成分」と、第2微分不感帯処理器542の出力に第2微分ゲインKd2を乗じた値である「第2微分制御トルク成分」と、を加算して微分制御トルク成分を算出する。
或いは破線で示す変形例のように、第1、第2疑似微分部511、512の前に第1、第2微分ゲイン乗算器571、572を配置し、操舵トルク偏差ΔTsに第1、第2微分ゲインKd1、Kd2を乗じた値に対し、疑似微分及び不感帯処理を施すようにしてもよい。変形例では、加重加算器58は、「第1微分ゲインKd1が乗算された操舵トルク偏差ΔTsに基づく操舵トルク偏差微分信号D(ΔTs)1_0を入力とする第1微分不感帯処理器541の出力」と、「第2微分ゲインKd2が乗算された操舵トルク偏差ΔTsに基づく操舵トルク偏差微分信号D(ΔTs)2_0を入力とする第2微分不感帯処理器542の出力」と、を加算して微分制御トルク成分を算出する。
以上の内容をまとめると、第1実施形態の微分制御トルク成分演算部50は、カットオフ周波数が異なる複数のフィルタで処理された操舵トルク偏差微分信号D(ΔTs)1、D(ΔTs)2を加重加算して、微分制御トルク成分を演算するものである。微分制御トルク成分演算部50は、カットオフ周波数が相対的に高い操舵トルク偏差微分信号D(ΔTs)1の寄与度を、操舵トルク偏差微分信号D(ΔTs)1の振幅の絶対値が相対的に大きい帯域で相対的に高くする。また、微分制御トルク成分演算部50は、カットオフ周波数が相対的に低い操舵トルク偏差微分信号D(ΔTs)2の寄与度を、操舵トルク偏差微分信号D(ΔTs)2の振幅の絶対値が相対的に小さい帯域で相対的に高くする。
ここで図7(a)、(b)に示す例では、第1、第2微分不感帯処理器541、542の小閾値α及び大閾値β、すなわち入出力特性の折れ点は共通の値である。これにより、第1微分不感帯処理器541において不感帯でカットされた帯域の操舵トルク偏差微分信号D(ΔTs)を、第2微分不感帯処理器542の不感帯通過出力で補うことができる。ただし、これに限らず、第1、第2微分不感帯処理器541、542の小閾値又は大閾値を異なる値としてもよい。
次に図8~図12を参照し、微分制御トルク成分演算部50による微分制御トルク成分の演算過程について説明する。つまり、図5に示す離散型演算モデルを通常のPID制御の微分要素として模式的に表し、その過程ごとの信号波形のイメージを図8~図12に示す。図示を省略するが、図8~図12の横軸は時間である。また、図8、図9、図10において縦に並べて配置された(a)、(b)は、一式の関連図として扱われる。各図の縦軸における[Nm]、[Nm/s]は、数値単位としての意味ではなく、物理量の次元を明示するためのものである。
図8の(a)にノイズが重畳した操舵トルク偏差ΔTsを示し、(b)に、操舵トルク偏差の差分微分D(ΔTs)を示す。細い実線は、操舵トルク偏差の差分微分信号D(ΔTs)の包絡線である。差分微分信号D(ΔTs)は、第1LPF処理及び第2LPF処理にそれぞれ送信される。第1LPF処理では、相対的に高い第1カットオフ周波数fco1(例えば350Hz)以上の高周波成分が遮断される。第2LPF処理では、相対的に低い第2カットオフ周波数fco2(例えば150Hz)以上の高周波成分が遮断される。
図9の(a)に示すように、第1LPF処理後の信号D(ΔTs)1_0にはノイズが多く残っている。しかし、(*1)に見られるように、差分微分信号D(ΔTs)の包絡線に対する位相の遅れは小さく、応答性に優れる。一方、図10の(a)に示すように、第2LPF処理後の信号D(ΔTs)2_0にはノイズが少ないが、(*2)に見られるように、差分微分信号D(ΔTs)の包絡線に対する位相の遅れが大きい。
図9の(b)に示す第1微分不感帯処理では、小振幅域の入力信号の振幅を0としてノイズを低減する。その結果、遷移域及び大振幅域の入力信号のみが不感帯を通過した信号D(ΔTs)1_#が出力される。図10の(b)に示す第2微分不感帯処理では、大振幅域の入力信号の振幅を0とする。その結果、小振幅域の入力信号、及び、縮減された遷移域の入力信号のみが不感帯を通過した信号D(ΔTs)2_#が出力される。
図11に示すように、第1微分不感帯処理後の信号D(ΔTs)1_#に第1微分ゲインKd1を乗じた値と、第2微分不感帯処理後の信号D(ΔTs)2_#に第2微分ゲインKd2を乗じた値とが加算され、微分制御トルク成分として出力される。この微分制御トルク成分は、ノイズが低減され、且つ、差分微分信号D(ΔTs)の包絡線に対する位相の遅れが低減されている。
ここで、図12に示す比較例では、第1LPF処理後の信号D(ΔTs)1_0に第1微分ゲインKd1を乗じた値が微分制御トルク成分として出力される。すなわち、比較例では、不感帯処理器及び第2の微分演算部を備えない。この場合、微分制御トルク成分に操舵トルク信号Tsのノイズが顕著に現れ、モータを加振して音や振動を発生させる。特に非操舵時や微操舵時にモータが加振された場合、発生する音や機械的な振動にドライバが気づきやすく、快適性を低下させるという問題がある。
それに対し第1実施形態では、カットオフ周波数が異なる二つのフィルタで処理された操舵トルク偏差微分信号を、不感帯処理、及び、微分ゲインの付与により寄与度を調整する。これにより、操舵トルク信号に重畳したノイズがPID制御器の微分項で増幅されることが抑制される。
したがって、特に非操舵時や微操舵時に、ノイズにより加振されたモータが発生する音や機械的な振動を低減することができる。また、操舵時には、操舵トルク信号に対するモータ出力指令の応答性を確保することができるため、位相遅れによるハンドルのリップル振動を抑えることができる。
次に図13、図14を参照し、実機で停車時にハンドルを中立位置から僅かに操舵したとき、すなわち微操舵時における、操舵トルクTs、微分制御トルク成分、ベースアシスト指令Tb*の挙動について説明する。図13、図14において縦に並べて配置された複数の図は、一式の関連図として扱われる。
図13には上から、操舵トルクTs、比較例の微分制御トルク成分及びベースアシスト指令Tb*を示す。この比較例は、図12と同様に、不感帯処理器及び第2の微分演算部を備えないものである。比較例では、微分制御トルク成分の±2Nm程度のノイズが常時ベースアシスト指令Tb*に重畳する。特にX秒後に振幅の大きなノイズが見られる。このようなノイズがモータを高周波で加振し、音や振動として現れる。
図14には上から、第1実施形態による第1微分制御トルク成分、第2微分制御トルク成分、及び、ベースアシスト指令Tb*を示す。第1、第2の微分演算部には、図13上段に示す操舵トルクTsが入力される。第1微分不感帯処理を通すことにより、微操舵時にはX秒後のノイズを除き、第1微分制御トルク成分(D(ΔTs)1_#×Kd1)はほとんど現れない。
一方、第2LPF処理の第2カットオフ周波数fco2は、第1LPF処理の第1カットオフ周波数fco1に比べて低く設定されているため、第2微分制御トルク成分(D(ΔTs)2_#×Kd2)は、高周波ノイズが低減されたものとなる。そして、小振幅域の入力信号は第2微分不感帯処理を通過するため、ノイズの少ない第2微分制御トルク成分が得られる。その結果、ノイズの少ないベースアシスト指令Tb*が出力されるため、モータを高周波で加振するトルクは弱く、音や振動として現れない。
(第2実施形態の微分制御トルク成分演算部)
次に図15、図16を参照し、第2実施形態の微分制御トルク成分演算部の構成について説明する。第2実施形態の微分制御トルク成分演算部60は、処理対象入力である操舵トルク偏差ΔTsの変化率が大きいときほどカットオフ周波数が高くなるように設定されたフィルタにより操舵トルク偏差微分信号D(ΔTs)を処理して微分制御トルク成分を演算する。この例では、相対的に高いカットオフ周波数を350Hzとし、相対的に低いカットオフ周波数を50Hzとする。
図15に示すように、微分制御トルク成分演算部60は、変化率演算部61、フィルタ定数演算部62、操舵トルク偏差疑似微分部63、及び微分ゲイン処理部64を有する。変化率演算部61は、操舵トルク偏差ΔTsの変化率を演算する。図16(a)に、操舵トルク偏差ΔTsを入力したときの操舵トルク偏差変化率Rc(ΔTs)の出力特性を示す。変化率演算で用いる疑似微分では、差分微分を算出した後に1段のLPFによりフィルタ処理される。
フィルタ定数演算部62は、操舵トルク偏差ΔTsの変化率が大きいほど、操舵トルク偏差微分信号D(ΔTs)の演算に用いるLPFのカットオフ周波数が高くなるようフィルタ定数を演算する。図16(b)に、操舵トルク偏差変化率の絶対値|Rc(ΔTs)|とフィルタ定数との関係を示す。操舵トルク偏差変化率の絶対値|Rc(ΔTs)|が0に近いとき、フィルタ定数はカットオフ周波数50Hzに対応する値に設定される。
操舵トルク偏差変化率の絶対値|Rc(ΔTs)|が臨界値Fhより大きいとき、フィルタ定数はカットオフ周波数350Hzに対応する値で一定に設定される。操舵トルク偏差変化率の絶対値|Rc(ΔTs)|が臨界値Fh以下のとき、フィルタ定数は、カットオフ周波数50Hzに対応する値からカットオフ周波数350Hzに対応する値まで漸増する。
「処理対象疑似微分部」としての操舵トルク偏差疑似微分部63は、フィルタ定数に基づいて操舵トルク偏差微分信号D(ΔTs)を演算する。図16(c)に、操舵トルク偏差ΔTsを入力したときの操舵トルク偏差疑似微分部63の出力特性を示す。操舵トルク偏差ΔTsの疑似微分では、差分微分を算出した後に、2段のLPFによってフィルタ処理される。その結果、操舵トルク偏差変化率の絶対値|Rc(ΔTs)|が臨界値Fhより大きいときはLPF_Hで示す周波数特性となり、操舵トルク偏差変化率の絶対値|Rc(ΔTs)|が小さく0に近づくほどLPF_Lで示す周波数特性に近づき、高周波帯のノイズが抑えられる。
図15に示す例では、微分ゲイン処理部64は、操舵トルク偏差疑似微分部63が出力した操舵トルク偏差微分信号D(ΔTs)に微分ゲインKdを乗じて微分制御トルク成分を演算する。或いは、微分ゲイン処理部は、操舵トルク偏差疑似微分部63に入力される操舵トルク偏差ΔTsに微分ゲインKdを乗じるように構成されてもよい。
このように第2実施形態の微分制御トルク成分演算部60は、カットオフ周波数が可変に設定されるフィルタを用い、操舵トルク偏差変化率Rc(ΔTs)に応じて操舵トルク偏差微分信号D(ΔTs)の寄与度を調節し、微分制御トルク成分を演算する。これにより、第1実施形態と同様の効果が得られる。第1実施形態に比べ複数のフィルタを必要としないため、構成が簡単になる。
以上のように第1、第2実施形態では、微分制御トルク成分演算部50、60の処理対象入力は操舵トルク偏差ΔTsである。第1、第2実施形態のポイントとなる概念は、次のように表される。「操舵トルク偏差ΔTsの変化が大きいとき、帯域の広い微分制御トルク成分を出力し、操舵トルク偏差ΔTsの変化が小さいとき、大きいときと比べて帯域を狭めた微分制御トルク成分を出力するステアリング制御装置。」そこで、第1、第2実施形態に例示した構成に限らず、この概念に従う他の構成が採用されてもよい。
これに対し次に説明する第3、第4実施形態では、微分制御トルク成分演算部505、605の処理対象入力は操舵トルクTsである。微分制御トルク成分演算部は、処理対象入力である操舵トルクTsの微分に基づき微分制御トルク成分を演算する。また、第3、第4実施形態の処理対象微分信号は操舵トルク微分信号D(Ts)である。第3、第4実施形態の微分制御トルク成分演算部505、605は、次のように微分制御トルク成分を演算する。
(1)操舵トルクTsの変化が相対的に大きいとき、カットオフ周波数が相対的に高い操舵トルク微分信号D(Ts)の寄与度が相対的に高くなる。
(2)操舵トルクTsの変化が相対的に小さいとき、カットオフ周波数が相対的に低い操舵トルク微分信号D(Ts)の寄与度が相対的に高くなる。
そして、第1~第4実施形態を包括する本実施形態のポイントとなる概念は、次のように表される。「微分制御トルク成分演算部の処理対象入力の変化が大きいとき、帯域の広い微分制御トルク成分を出力し、微分制御トルク成分演算部の処理対象入力の変化が小さいとき、大きいときと比べて帯域を狭めた微分制御トルク成分を出力するステアリング制御装置。」
(第3、第4実施形態)
次に図17を参照し、第3実施形態の構成について説明する。第3実施形態のサーボ制御器400は、図3に示す第1実施形態の一般的なPID制御器410に代えて、微分先行型のPID制御器415を備える。微分先行型PID制御は、改良型のPID制御の一種であり、目標値が急変したとき、微分によって出力が極めて大きな値になってしまうことを防ぐために、微分の入力として操舵トルク偏差ΔTsでなく、制御量である操舵トルクTsを接続するものである。
微分先行型のPID制御器415における微分制御トルク成分演算部505の構成自体は、図5に示す微分制御トルク成分演算部50とほぼ同じである。ただし、第1、第2疑似微分部511、512には操舵トルク偏差ΔTsではなく、操舵トルクTsが入力される。また、第1、第2微分ゲイン乗算器591、592は、符号が反転された微分ゲイン-Kd1、-Kd2を乗算する。
第1、第2微分不感帯処理器541、542は、入力された操舵トルク微分信号D(Ts)1_0、D(Ts)2_0を不感帯処理し、操舵トルク微分信号D(Ts)1_#、D(Ts)2_#を出力する。つまり、第3実施形態では、第1実施形態の「微分信号」等の用語から「偏差」の部分が削除され、記号中の(ΔTs)が(Ts)に置き換わる。第1、第2微分不感帯処理器541、542の特性は、図7(a)、(b)と同様の特性をそのまま流用可能である。
なお、微分先行型のPID制御器415における比例制御トルク成分演算部430及び積分制御トルク成分演算部440は、一般的なPID制御器410と同様に、操舵トルク偏差ΔTsに基づくPI演算を行う。また、サーボ制御器の400累積演算部490についても図3と同様である。
第3実施形態の構成においても、操舵トルクTsにノイズが重畳すると微分項でノイズが増幅される。しかし、本実施形態のポイントとなる概念に基づいて、微分制御トルク成分演算部の処理対象入力である操舵トルクTsの変化に応じてカットオフ周波数の異なる操舵トルク微分信号の寄与度が調整されることで、サーボ制御器400の出力に現れるノイズを抑制することができる。
図18に、第2実施形態に対応する第4実施形態の微分制御トルク成分演算部605を示す。微分制御トルク成分演算部605は、図17の微分制御トルク成分演算部505に置き換え可能である。第4実施形態では、微分制御トルク成分演算部605の処理対象入力が操舵トルク偏差ΔTsから操舵トルクTsに変わり、微分ゲイン処理部64にて符号が反転された微分ゲイン(-Kd)を乗算する。なお、「処理対象疑似微分部」としての操舵トルク疑似微分部の符号「63」は、第2実施形態の操舵トルク偏差疑似微分部の符号を共用する。第4実施形態では、このように僅かな構成の違いのみで、同様にサーボ制御器400の出力に現れるノイズを抑制することができる。
(その他の実施形態)
本発明のステアリング制御装置は、電動パワーステアリングシステムに限らず、特許文献2の図11に開示されるように、ハンドルと操舵輪とが機械的に分離したステアバイワイヤシステムの反力制御装置に適用されてもよい。その場合、サーボ制御器では、反力検出装置で検出された操舵トルクTsが、タイヤ転舵装置で演算される負荷や転舵角に応じて演算された目標操舵トルクTs*に追従するように制御される。
第3、第4実施形態に示した微分先行型PID制御は、一般的なPID制御以外のサーボ制御の一例である。他のサーボ制御構成であっても、ノイズを含む操舵トルクが微分される処理経路を持つ制御構成であれば、本発明は適用可能である。
本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施することができる。
本開示に記載の制御器及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御器及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御器及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
10 ・・・ステアリング制御装置、
400・・・サーボ制御器、
50、505、60、605・・・微分制御トルク成分演算部、
80 ・・・モータ。

Claims (5)

  1. 操舵トルク(Ts)を目標操舵トルク(Ts*)に追従させるように、サーボ制御器(400)によりモータ(80)の出力指令(Tb*)を演算するステアリング制御装置であって、
    前記サーボ制御器は、目標操舵トルクと操舵トルクとの差分である操舵トルク偏差(ΔTs)、又は、操舵トルクを処理対象入力として、前記処理対象入力の微分に基づき微分制御トルク成分を演算する微分制御トルク成分演算部(50、505、60、605)を有し、
    前記処理対象入力を微分し、所定のカットオフ周波数以上の高周波成分を遮断するフィルタで処理した信号を処理対象微分信号とすると、
    前記微分制御トルク成分演算部は、
    前記処理対象入力の変化が相対的に大きいとき、カットオフ周波数が相対的に高い前記処理対象微分信号の寄与度が相対的に高くなり、
    前記処理対象入力の変化が相対的に小さいとき、カットオフ周波数が相対的に低い前記処理対象微分信号の寄与度が相対的に高くなるように、前記微分制御トルク成分を演算するステアリング制御装置。
  2. 前記微分制御トルク成分演算部(50、505)は、
    カットオフ周波数が異なる複数のフィルタで処理された前記処理対象微分信号を加重加算して、前記微分制御トルク成分を演算するものであって、
    カットオフ周波数が相対的に高い前記処理対象微分信号の寄与度を、前記処理対象微分信号の振幅の絶対値が相対的に大きい帯域で相対的に高くし、
    カットオフ周波数が相対的に低い前記処理対象微分信号の寄与度を、前記処理対象微分信号の振幅の絶対値が相対的に小さい帯域で相対的に高くする請求項1に記載のステアリング制御装置。
  3. 前記微分制御トルク成分演算部は、
    第1カットオフ周波数(fco1)以上の高周波成分が遮断された前記処理対象微分信号が入力され、前記処理対象微分信号の振幅の絶対値が相対的に小さい小振幅域を不感帯とし、振幅の絶対値が相対的に大きい大振幅域では、入力に応じた前記処理対象微分信号を出力する第1微分不感帯処理器(541)と、
    前記第1カットオフ周波数より低い第2カットオフ周波数(fco2)以上の高周波成分が遮断された前記処理対象微分信号が入力され、前記大振幅域を不感帯とし、前記小振幅域では、入力に応じた前記処理対象微分信号を出力する第2微分不感帯処理器(542)と、
    前記第1微分不感帯処理器の出力に第1微分ゲイン(Kd1)を乗じた値、もしくは、第1微分ゲインが乗算された前記処理対象入力に基づく前記処理対象微分信号を入力とする前記第1微分不感帯処理器の出力と、前記第2微分不感帯処理器の出力に第2微分ゲイン(Kd2)を乗じた値、もしくは、第2微分ゲインが乗算された前記処理対象入力に基づく前記処理対象微分信号を入力とする前記第2微分不感帯処理器の出力と、を加算して前記微分制御トルク成分を算出する加重加算器(58)と、
    を有する請求項2に記載のステアリング制御装置。
  4. 前記微分制御トルク成分演算部(60、605)は、
    前記処理対象入力の変化率が大きいときほどカットオフ周波数が高くなるように設定されたフィルタにより前記処理対象微分信号を処理して前記微分制御トルク成分を演算する請求項1に記載のステアリング制御装置。
  5. 前記微分制御トルク成分演算部は、
    前記処理対象入力の変化率を演算する変化率演算部(61)と、
    前記処理対象入力の変化率が大きいほど、前記処理対象微分信号の演算に用いるカットオフ周波数が高くなるようフィルタ定数を演算するフィルタ定数演算部(62)と、
    前記フィルタ定数に基づいて前記処理対象微分信号を演算する処理対象疑似微分部(63)と、
    前記処理対象疑似微分部が出力した処理対象微分信号、又は、前記処理対象疑似微分部に入力される前記処理対象入力に微分ゲイン(Kd)を乗じる微分ゲイン処理部(64)と、
    を有する請求項4に記載のステアリング制御装置。
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