JP2022000532A - 超硬合金基体およびこれを用いた表面被覆切削工具 - Google Patents
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Abstract
【課題】鋼の高能率加工においても、長期の使用にわたり、優れた切削性能を発揮するWC基超硬合金基体、および、該超硬合金基体を用いた切削工具を提供する。【解決手段】粒径が0.1〜2.0μmの細粒3の群と粒径が3.0〜10.0μmの粗粒4の群を含む2以上の群に分類されるWC粒子を有し、表面6からその内部に向かって平均厚さが10〜30μmのβ相5を有しない層状の領域7を有し、前記領域におけるWC接着度は0.55以上であり、前記領域におけるビッカース硬度の最低値と前記表面から300μm離れた内部におけるビッカース硬度との差が180〜230Hvであること、を特徴とするWC基超硬合金基体2とこの基体に硬質被覆層1が被覆されていることを特徴とする表面被覆切削工具。【選択図】図1
Description
本発明は、WC基超硬合金基体およびこれを用いた表面被覆切削工具に関する。
金属材料の切削加工には、WC基超硬合金基体に耐摩耗性、耐酸化性、耐溶着性等に優れたセラミックス硬質被覆層を蒸着法により被覆した表面被覆切削工具が用いられている。しかし、セラミックス硬質被覆層をWC基超硬合金基体に被覆しても、この超硬合金基体の強度低下が起こることがあるため、この強度低下を防止して強度と靭性をバランスよく向上させる工夫がWC基超硬合金基体に対してなされている。
例えば、特許文献1には、Coを4〜10質量%含んだ基体の任意の断面において、WC結晶の80%以上が、粒度0.1〜1μmの微粒Aと、粒度3〜10μmの粗粒Bのいずれかに含まれ、微粒A面積/粗粒B面積が0.25〜0.45であるWC基超硬合金基体が記載され、このWC基超硬合金基体に硬質被覆層を被覆した切削工具は、一般鋼および難削材の高速切削において優れた切削性を長期にわたって発揮するとされている。
特許文献1に記載されたWC基超硬合金基体は強度と靭性が向上しているものの、耐塑性変形性が十分ではなく、鋼の高能率加工(高送り加工、高切込み加工)のための表面被覆切削工具の工具基体に用いた場合に、変形により短時間に工具寿命に至ってしまう。
ここで、高送り加工とは、例えば、送り量が1.0〜4.0m/rev程度、高切込み加工とは、例えば、切込み量が1.5〜4.0mm程度をいう。
ここで、高送り加工とは、例えば、送り量が1.0〜4.0m/rev程度、高切込み加工とは、例えば、切込み量が1.5〜4.0mm程度をいう。
そこで、本発明は、WC基超硬合金基体が優れた耐塑性変形性と塑性変形に起因する欠損に対し十分な耐性を有し、切削工具の工具基体として用いた場合、特に、鋼の高能率加工においても、長期の使用にわたり、優れた切削性能を発揮するWC基超硬合金基体、および、該超硬合金基体を用いた表面被覆切削工具を提供することを目的とする。
本発明者は、WC基超硬合金の耐塑性変形性を向上させるために鋭意検討を重ねた。その結果、WC基超硬合金基体につき、WC粒子が細粒の群と粗粒の群を含む2以上の粒度分布の群に分類され、かつ、β相が存在しない領域がWC基超硬合金基体の表面からその内部に向かって所定の厚さで存在し、該領域のWC接着度が所定値以上であって、さらに、該領域と該領域より内部の領域のそれぞれのビッカース硬度の差が所定値を満足するとき、耐塑性変形性が向上し、塑性変形に起因する欠損に対する耐久性も向上するという新規な知見を得た。
本発明は、この知見に基づくものであって、次のとおりのものである。
「(1)WC基超硬合金基体であって、
粒径が0.1〜2.0μmの細粒の群と粒径が3.0〜10.0μmの粗粒の群を含む2以上の群に分類されるWC粒子を有し、
表面からその内部に向かって平均厚さが10〜30μmのβ相を有しない層状の領域を有し、
前記領域におけるWC接着度は0.55以上であり、
前記領域におけるビッカース硬度の最低値と前記表面から300μm離れた内部におけるビッカース硬度との差が180〜230Hvであること、
を特徴とするWC基超硬合金基体。
(2)前記β相を有しない層状の領域において、前記細粒の群に分類されるWC粒子の占める面積をSα、前記粗粒の群に分類されるWC粒子の占める面積をSβとするとき、
Sα/(Sα+Sβ)=0.25〜0.60
であることを特徴とする前記(1)に記載のWC基超硬合金基体。
(3)前記(1)または(2)に記載のWC基超硬合金基体に硬質被覆層が被覆されていることを特徴とする表面被覆切削工具。」
「(1)WC基超硬合金基体であって、
粒径が0.1〜2.0μmの細粒の群と粒径が3.0〜10.0μmの粗粒の群を含む2以上の群に分類されるWC粒子を有し、
表面からその内部に向かって平均厚さが10〜30μmのβ相を有しない層状の領域を有し、
前記領域におけるWC接着度は0.55以上であり、
前記領域におけるビッカース硬度の最低値と前記表面から300μm離れた内部におけるビッカース硬度との差が180〜230Hvであること、
を特徴とするWC基超硬合金基体。
(2)前記β相を有しない層状の領域において、前記細粒の群に分類されるWC粒子の占める面積をSα、前記粗粒の群に分類されるWC粒子の占める面積をSβとするとき、
Sα/(Sα+Sβ)=0.25〜0.60
であることを特徴とする前記(1)に記載のWC基超硬合金基体。
(3)前記(1)または(2)に記載のWC基超硬合金基体に硬質被覆層が被覆されていることを特徴とする表面被覆切削工具。」
本発明のWC基超硬合金基体は、耐塑性変形性に優れ、また、表面被覆切削工具の工具基体として用いた場合、鋼の高能率加工においても、耐塑性変形性に優れ、塑性変形に起因する欠損に対する耐久性が向上して長期の切削寿命を有するという顕著な効果を奏する。
以下、本発明のWC基超硬合金基体および切削工具に関し、特に、WC超硬合金基体がインサート用の工具基体として用いられる場合について、より詳細に説明する。なお、本明細書、特許請求の範囲において、数値範囲を「M〜N」(M、Nは共に数値)を用いて表現する場合、その範囲は上限(N)および下限(M)の数値を含むものとする。
また、各化合物の組成は化学量論的組成に限られず、従来公知のあらゆる原子比を含むものである。
また、各化合物の組成は化学量論的組成に限られず、従来公知のあらゆる原子比を含むものである。
1.WC基超硬合金基体の組成
WC基超硬合金基体は、WC以外に次の成分を有している。
Co:
Coは、硬質相成分であるWC粒子を結合させる結合相(γ相)を形成させる成分である。その含有割合は、4.0〜12.0質量%が好ましい。その理由は、4.0質量%未満であると十分な靭性を得ることができないことがあり、一方、12.0質量%を超えると、切削加工工具として必要とされる硬さを得ることができず、変形や摩耗の進行が顕著になることあるためである。
WC基超硬合金基体は、WC以外に次の成分を有している。
Co:
Coは、硬質相成分であるWC粒子を結合させる結合相(γ相)を形成させる成分である。その含有割合は、4.0〜12.0質量%が好ましい。その理由は、4.0質量%未満であると十分な靭性を得ることができないことがあり、一方、12.0質量%を超えると、切削加工工具として必要とされる硬さを得ることができず、変形や摩耗の進行が顕著になることあるためである。
TiC、TiN、NbC、TaC、(Nb、Ta)C、(Ti、W)C、(Ti、W)CN、Cr3C2の少なくとも1種:
TiC、TiN、NbC、TaC、(Nb、Ta)C、(Ti、W)C、(Ti、W)CN、Cr3C2の少なくとも1種を5.0〜30.0質量%の範囲で含有していることが好ましい。その理由は、これらがこの範囲で含有していると、これらは結合相を構成するCoにわずかに固溶し、高温硬さを向上させ、WC粒子の成長を抑える働きを有するためである。
なお、(Nb、Ta)CはNbとTaの複合炭化物、(Ti、W)CはTiとWの複合炭化物、(Ti、W)CNはTiとWの複合炭窒化物である。
TiC、TiN、NbC、TaC、(Nb、Ta)C、(Ti、W)C、(Ti、W)CN、Cr3C2の少なくとも1種を5.0〜30.0質量%の範囲で含有していることが好ましい。その理由は、これらがこの範囲で含有していると、これらは結合相を構成するCoにわずかに固溶し、高温硬さを向上させ、WC粒子の成長を抑える働きを有するためである。
なお、(Nb、Ta)CはNbとTaの複合炭化物、(Ti、W)CはTiとWの複合炭化物、(Ti、W)CNはTiとWの複合炭窒化物である。
β相:
β相とは、Ti、Ta、Nb、Wを含む複合炭化物、または、複合炭窒化物であり、例えば、(Ti、W)C、(Ti、W)CNを例示することができる。
β相とは、Ti、Ta、Nb、Wを含む複合炭化物、または、複合炭窒化物であり、例えば、(Ti、W)C、(Ti、W)CNを例示することができる。
不可避的不純物:
WC基超硬合金基体には製造過程で混入する不可避的不純物の含有が許容され、その量は0.3質量%以下が好ましい。
WC基超硬合金基体には製造過程で混入する不可避的不純物の含有が許容され、その量は0.3質量%以下が好ましい。
2.WC基超硬合金の組織
図1に、WC基超硬合金基体の組織の一例である模式図を示す。この図1から明らかなように、WC基超硬合金基体(2)は、その表面に硬質被覆層(1)を成膜するものであって、細粒の群に分類されるWC粒子(3)と粗粒の群に分類されるWC粒子(4)を含む2以上の群に分類されるWC粒子を有する(細粒の群と粗粒の群以外に分類されるWC粒子の図示は省略している)。さらに、WC基超硬合金基体の表面(6)から所定範囲にβ相(5)を有していない層状の領域(以下、脱β層ということがある)(7)を有している。
図1に、WC基超硬合金基体の組織の一例である模式図を示す。この図1から明らかなように、WC基超硬合金基体(2)は、その表面に硬質被覆層(1)を成膜するものであって、細粒の群に分類されるWC粒子(3)と粗粒の群に分類されるWC粒子(4)を含む2以上の群に分類されるWC粒子を有する(細粒の群と粗粒の群以外に分類されるWC粒子の図示は省略している)。さらに、WC基超硬合金基体の表面(6)から所定範囲にβ相(5)を有していない層状の領域(以下、脱β層ということがある)(7)を有している。
(1)WC粒子の分布
WC粒子は、細粒の群と粗粒の群を含む2以上の群に分類される。細粒の群と粗粒の群の2以上を含む群に分類されるとは、細粒の群と粗粒の群に属さないWC粒子が存在することをいう。WC粒子を細粒の群と粗粒の群の2群のみに分類できるように工業的に製造することが困難であるため、細粒の群と粗粒の群に属さないWC粒子が存在するが、全てのWC粒子数の80%以上、より好ましくは90%以上が、この2つの群に分類されることが好ましい。なお、図2には、WC粒子が2の群にのみ分類される理想的な分布の一例を模式的に示している。
WC粒子は、細粒の群と粗粒の群を含む2以上の群に分類される。細粒の群と粗粒の群の2以上を含む群に分類されるとは、細粒の群と粗粒の群に属さないWC粒子が存在することをいう。WC粒子を細粒の群と粗粒の群の2群のみに分類できるように工業的に製造することが困難であるため、細粒の群と粗粒の群に属さないWC粒子が存在するが、全てのWC粒子数の80%以上、より好ましくは90%以上が、この2つの群に分類されることが好ましい。なお、図2には、WC粒子が2の群にのみ分類される理想的な分布の一例を模式的に示している。
ここで、細粒の群とはWC粒子の粒径が0.1〜2.0μmの群であり、粗粒の群とはWC粒子の粒径が3.0〜10μmの群である。WC粒子の粒径は、各WC粒子の面積を測定し、その面積と等しい円の直径を求めたものをいう。
そして、脱β層において、細粒の群に分類されるWC粒子の面積の総和をSα、粗粒の群に分類されるWC粒子の面積の総和をSβとするとき、
Sα/(Sα+Sβ)が0.25〜0.60であることがより好ましい。この範囲を満足することにより、より確実に、耐塑性変形性が向上し、鋼の高効率加工であっても長期の切削寿命を得ることができる。
そして、脱β層において、細粒の群に分類されるWC粒子の面積の総和をSα、粗粒の群に分類されるWC粒子の面積の総和をSβとするとき、
Sα/(Sα+Sβ)が0.25〜0.60であることがより好ましい。この範囲を満足することにより、より確実に、耐塑性変形性が向上し、鋼の高効率加工であっても長期の切削寿命を得ることができる。
なお、Sα/(Sα+Sβ)は、脱β層の観察視野でEBSD(Electron Back Scattered Diffraction)を備えたSEM(Scanning Electron Microscope)により得られる結晶方位マッピング像から測定されるWC粒子の細粒と粗粒の和(累積)が200以上になるまで、観察視野を増やして算出する。
(2)β相を有しない層状の領域
脱β層は、WC基超硬合金基体の表面からその内部に向かって、その平均の厚さが10〜30μmであることが好ましい。その理由は、平均の厚さがこの範囲にあると、靭性の高い脱β層の厚さが適切となって、特に、鋼の高能率加工において、刃先の耐チッピング性を高めるためである。
脱β層は、WC基超硬合金基体の表面からその内部に向かって、その平均の厚さが10〜30μmであることが好ましい。その理由は、平均の厚さがこの範囲にあると、靭性の高い脱β層の厚さが適切となって、特に、鋼の高能率加工において、刃先の耐チッピング性を高めるためである。
脱β層の平均の層厚は、次のようにして測定する。すなわち、硬質被覆層を設ける面(逃げ面となる面が好ましいが、逃げ面となる面に限定されない)に対して垂直な断面をCP(cross section polisher)等により鏡面加工して観察面とし、濃度5質量%の水酸化ナトリウム溶液等のアルカリ水溶液を用いてエッチングを行いβ相を腐食させる。そして、複数視野(例えば、5視野)のそれぞれにおいて、前記表面から最も近いβ相への直線距離を測定し、その平均値を算出して脱β層の平均の層さとする。
(3)WC接着度
WC接着度とは、例えば、「International Journal of Refractory Metals & Hard Materials Vol.21,No.5−6(2003)p.241−244」に記載されるように、
WC接着度=2NWC−WC/(2NWC−WC+NWC−Co)
で与えられる。
WC接着度とは、例えば、「International Journal of Refractory Metals & Hard Materials Vol.21,No.5−6(2003)p.241−244」に記載されるように、
WC接着度=2NWC−WC/(2NWC−WC+NWC−Co)
で与えられる。
ここで、NWC−WCは、WC基超硬合金基体の組織の走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)像上に任意の直線を引いたとき、その線上にあるWC粒子とWC粒子の界面数であり、
NWC−Coは、同組織のSEM像上に任意の直線を引いたとき、その線上にあるWC粒子と結合相の界面数である。
脱β層において、このWC接着度が0.55以上であるとき、耐塑性変形性が向上する。
NWC−Coは、同組織のSEM像上に任意の直線を引いたとき、その線上にあるWC粒子と結合相の界面数である。
脱β層において、このWC接着度が0.55以上であるとき、耐塑性変形性が向上する。
WC接着度は、次のようにして測定する。すなわち、硬質被覆層を設けるどの面においても、WC基超硬合金基体の組織は同じといえるため、脱β層の平均の厚さを測定した面と同じ面に限らない硬質被覆層を設ける面(逃げ面となる面が好ましいが、逃げ面となる面に限定されない)に対して垂直な断面に対し、脱β層の平均の厚さの範囲内の領域において、WC基超硬合金基体の表面と平行にWC/WC界面を10個以上横切る線を任意の間隔(例えば、1〜5μm)で5本引いて、各線毎のWC接着度を求め平均値を算出する。
3.ビッカース硬度の差
WC基超硬合金の表面におけるビッカース硬度と該表面から内部へ300μmにおけるビッカース硬度の差とが180〜230Hvであることが好ましい。
その理由は、ビッカース硬度の差がこの範囲にあるとき、脱β層における耐チッピング性と耐塑性変形性が向上するためである。
WC基超硬合金の表面におけるビッカース硬度と該表面から内部へ300μmにおけるビッカース硬度の差とが180〜230Hvであることが好ましい。
その理由は、ビッカース硬度の差がこの範囲にあるとき、脱β層における耐チッピング性と耐塑性変形性が向上するためである。
ビッカース硬度の差は、次のようにして求める。すなわち、WC基超硬合金基体の表面(詳細は後述する)から同基体内部へ5μm入った位置から、さらに前記表面に対して水平方向で同基体内部に向かって5μm毎に脱β層の平均の厚さの範囲に至るまで、前記表面に平行にビッカース硬度測定の圧痕が重ならない間隔(例えば、100μm)にて5点ずつビッカース硬度を測定し、その最低値を求める。一方、前記表面から同基体内部へ300μmの位置において、前記表面に平行にビッカース硬度測定の圧痕が重ならない間隔(例えば、100μm)にて5点のビッカース硬度を測定し、その平均値を求める。そして、前記最低値と前記平均値との差を算出する。なお、試験荷重は5Nである。
ここで、前述のWC基超硬合金基体の表面のビッカース硬度の測定を行う面は、脱β層の平均の厚さやWC接着度を測定した垂直断面では行わず、WC基超硬合金基体の表面(逃げ面となる面が好ましいが、逃げ面となる面に限定されない)を、例えば、図3に示すように、この表面とθ(10〜30度の範囲で測定が容易となる角度(11))の角度をなすように傾斜した研磨面(10)を設け、この研磨面上でビッカース硬度を測定する。
このようにする理由は、WC基超硬合金基体の表面から300μmまでの領域でビッカース硬度を測定すると、特に、表面に近い領域(例えば、5μm)では、測定時にWC基超硬合金基体に欠けが生じ正確な測定を行うことができなくなる虞があるためである。
ここで、θの角度をなす傾斜した研磨面と前記表面との交差する位置は、ビッカース硬度の測定にあたりWC基超硬合金基体に欠けが生じない位置とし、垂直断面における表面位置と同じに扱う。
ただし、脱β層の平均の厚さ、ビッカース硬度を測定するWC基超硬合金基体の位置は、共に、垂直断面における位置であるため、前記傾斜した研磨面でビッカース硬度を測定するにあたり、測定位置の換算が必要であり、例えば、図3に示すように、WC基超硬合金基体における表面から内部への距離(H)(13)と交差面からの距離(L)(12)との間には、
(WC基超硬合金基体における表面から内部への距離(H))/sinθ=交差面からの距離(L)
となるように測定位置を決定する。
例えば、WC基超硬合金基体の表面(詳細は後述する)から同基体内部へ5μm入った位置は、5/sinθμmとなる。
(WC基超硬合金基体における表面から内部への距離(H))/sinθ=交差面からの距離(L)
となるように測定位置を決定する。
例えば、WC基超硬合金基体の表面(詳細は後述する)から同基体内部へ5μm入った位置は、5/sinθμmとなる。
製造方法:
WC基超硬合金は、例えば、以下のようにして製造することができる。
原料のWC粉末として、平均粒径が1.4〜3.3μmの細粒のWC粒子αと、平均粒径が6.0〜6.5μmの粗粒のWC粒子βを準備する。
WC基超硬合金は、例えば、以下のようにして製造することができる。
原料のWC粉末として、平均粒径が1.4〜3.3μmの細粒のWC粒子αと、平均粒径が6.0〜6.5μmの粗粒のWC粒子βを準備する。
次に、このWC粒子αとWC粒子βに対して、Co粉末、および、TiC、TiN、NbC、TaC、(Nb、Ta)C、(Ti、W)C、(Ti、W)CN、Cr3C2の各粉末の少なくとも1種を所定組成となるように配合する。ここで、好ましくは、脱β層において、粒径が0.1〜2.0μmの細粒の群に分類されるWC粒子の占める面積(Sα)と粒径が3.0〜10μmの粗粒の群に分類されるWC粒子の占める面積(Sβ)の関係、Sα/(Sα+Sβ)が所定値となるように、例えば、(WC粒子αの質量%)/(WC粒子αの質量%+WC粒子βの質量%)=0.1〜0.2となるように、粒径の異なるWC粒子をアトライターにより配合し、スラリーを作製する。
続いて、このスラリーをスプレードライヤーにて、造粒・乾燥して造粒粉末を得て、この造粒粉末をプレス成形し、焼結、冷却を行って、WC基超硬合金(焼結体)を作製する。
そして、このWC基超硬合金(焼結体)を切削加工して、所望の大きさ・形状の工具基体を得る。
そして、このWC基超硬合金(焼結体)を切削加工して、所望の大きさ・形状の工具基体を得る。
硬質被覆層:
WC基超硬合金基体を被覆する硬質被覆層は、Tiの炭化物または窒化物、TiとAlの複合炭窒化物等の公知の組成のものを1層または2層以上、公知の方法により形成する。
WC基超硬合金基体を被覆する硬質被覆層は、Tiの炭化物または窒化物、TiとAlの複合炭窒化物等の公知の組成のものを1層または2層以上、公知の方法により形成する。
本発明のWC基超硬合金基体および該超硬合金基体を用いた切削工具について、実施例により説明を行うが、本発明は実施例に限定されるものではない。
焼結用の粉末として、表1に示す平均粒径が1.5〜3.3μmの微粒のWC粒子α(WC−α)と、同6.2μmの粗粒のWC粒子β(WC−β)、Co、および、TiC、TiN、NbC、TaC、(Nb、Ta)C、(Ti、W)C、(Ti、W)CN、Cr3C2の各粉末を準備し、表1、表2に示すように配合し、焼結用の粉末を作製した。その後、アトライターで5時間湿式混合してスラリーを製造した。そして、造粒・乾燥して造粒粉末を得て、この造粒粉末を150MPa圧力でプレス成形し、ISO形状CNMG120408の圧粉成形体を得た。
続いて、脱脂を行い、1350℃の2kPaのN2雰囲気下で40分間保持し、1450℃の10−1Pa以下の真空雰囲気下で60分間保持して、アルゴン雰囲気中で20℃/分の冷却速度で冷却した。
次に、プレス加工、研削加工を行い、ISO形状CNMG120408に整え、表3に示すWC基超硬合金基体1〜4(以下、本発明工具基体1〜4という)を作製した。
次に、プレス加工、研削加工を行い、ISO形状CNMG120408に整え、表3に示すWC基超硬合金基体1〜4(以下、本発明工具基体1〜4という)を作製した。
比較のために、表4に示す比較例のWC基超硬合金基体1〜3(以下、比較例工具基体1〜3という)を製造した。
その製造工程は、表1、表2の原料粉をもとに、本発明工具基体1〜4の製造工程と同様に、ISO形状CNMG120408のWC基超硬合金基体1〜3(以下、比較工具基体1〜3という)を作製した。
その製造工程は、表1、表2の原料粉をもとに、本発明工具基体1〜4の製造工程と同様に、ISO形状CNMG120408のWC基超硬合金基体1〜3(以下、比較工具基体1〜3という)を作製した。
そして、本発明工具基体1〜4および比較工具基体1〜3に対して、前述のとおりに、脱β層の平均の厚さ、WC接着度、ビッカース硬度の差を測定した。ビッカース硬度の測定にあたり、θは10度であった。その結果をそれぞれ表3および4に示す。なお、本発明工具基体1〜4、比較工具基体1〜3のいずれにおいても、細粒または粗粒の群に分類されるWC粒子の数が全WC粒子数の80%以上を占めていた。
前記本発明工具基体1〜4および比較工具基体1〜3の表面に、表5に示す平均層厚の硬質被覆層をCVD法で被覆形成し、本発明表面被覆WC基超硬合金製切削工具(以下、本発明被覆工具という)1〜4、比較例表面被覆WC基超硬合金製切削工具(以下、比較被覆工具という)1〜3を作製した。
前記各被覆工具について、以下に示す、乾式の外周連続切削加工を実施し、切刃の逃げ面塑性変形量を測定するとともに、切刃の損耗状態を観察した。
切削条件:
被削材:SNCM439のφ200丸棒
切削速度:100m/min
切込み:1.5mm
送り:1.0mm/rev
切削時間:0.5分
被削材:SNCM439のφ200丸棒
切削速度:100m/min
切込み:1.5mm
送り:1.0mm/rev
切削時間:0.5分
本切削試験では、切刃の逃げ面塑性変形量として次のものを採用した。すなわち、切削前の変形していない切刃稜線を基準とし、切削によって切刃稜線が押し込まれて変形した量を切刃の逃げ面塑性変形量とした。具体的には、図4に示すように、工具の主切刃側逃げ面(9)について、切刃から十分離れた位置で切刃(14)側逃げ面(9)とすくい面(8)が交差する稜線上に線分を引き、同線分を切刃部方向に延伸し、延伸した線分(16)と切刃部稜線間の距離(延伸した線分の垂直方向)が最も離れている部分を測定し、これを切刃の逃げ面塑性変形量(15)とした。また、切削時間終了後に切刃の損耗状態を観察した。
表6にその結果を示す。
表6にその結果を示す。
表6に示すように、本発明被覆工具は、寿命に影響を及ぼす逃げ面塑性変形量が少なく、偏摩耗や欠損を発生することなく、優れた耐塑性変形性を発揮する。これに対して、比較被覆工具は、所定の切削時間において工具の塑性変形が大きく、所定の被削材寸法を得る加工を行うことが困難である。
以上のとおり、本発明の超硬合金および切削工具は、鋼の高能率加工に用いた場合であっても、優れた耐塑性変形性とともに、優れた耐チッピング性を有するが、他の被削材、切削条件に適用した場合にも、長期の使用にわたって優れた切削性能を発揮し、工具の長寿命化が図られる。
1 硬質被覆層
2 WC基超硬合金基体
3 細粒に分類されるWC粒子
4 粗粒に分類されるWC粒子
5 β相
6 WC基超硬合金基体の表面
7 β相を有しない層状の領域(脱β層)
8 すくい面
9 逃げ面
10 傾斜した研磨面
11 角度(θ)
12 交差面からの距離(L)
13 WC基超硬合金基体の表面(例えば、逃げ面)から内部への距離(H)
14 切刃
15 逃げ面塑性変形量
16 逃げ面とすくい面の交差する稜線を延伸した線分
2 WC基超硬合金基体
3 細粒に分類されるWC粒子
4 粗粒に分類されるWC粒子
5 β相
6 WC基超硬合金基体の表面
7 β相を有しない層状の領域(脱β層)
8 すくい面
9 逃げ面
10 傾斜した研磨面
11 角度(θ)
12 交差面からの距離(L)
13 WC基超硬合金基体の表面(例えば、逃げ面)から内部への距離(H)
14 切刃
15 逃げ面塑性変形量
16 逃げ面とすくい面の交差する稜線を延伸した線分
Claims (3)
- WC基超硬合金基体であって、
粒径が0.1〜2.0μmの細粒の群と粒径が3.0〜10.0μmの粗粒の群を含む2以上の群に分類されるWC粒子を有し、
表面からその内部に向かって平均厚さが10〜30μmのβ相を有しない層状の領域を有し、
前記領域におけるWC接着度は0.55以上であり、
前記領域におけるビッカース硬度の最低値と前記表面から300μm離れた内部におけるビッカース硬度との差が180〜230Hvであること、
を特徴とするWC基超硬合金基体。 - 前記β相を有しない層状の領域において、前記細粒の群に分類されるWC粒子の占める面積をSα、前記粗粒の群に分類されるWC粒子の占める面積をSβとするとき、
Sα/(Sα+Sβ)=0.25〜0.60
であることを特徴とする請求項1に記載のWC基超硬合金基体。 - 請求項1または2に記載のWC基超硬合金基体に硬質被覆層が被覆されていることを特徴とする表面被覆切削工具。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2020105826A JP2022000532A (ja) | 2020-06-19 | 2020-06-19 | 超硬合金基体およびこれを用いた表面被覆切削工具 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2020105826A JP2022000532A (ja) | 2020-06-19 | 2020-06-19 | 超硬合金基体およびこれを用いた表面被覆切削工具 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2022000532A true JP2022000532A (ja) | 2022-01-04 |
Family
ID=79241938
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2020105826A Pending JP2022000532A (ja) | 2020-06-19 | 2020-06-19 | 超硬合金基体およびこれを用いた表面被覆切削工具 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2022000532A (ja) |
-
2020
- 2020-06-19 JP JP2020105826A patent/JP2022000532A/ja active Pending
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