以下、添付図面を参照して、本開示によるブレーキアクチュエータ装置を実施するための形態を説明する。しかし、本開示はこれらの実施形態のみに限定されるものではない。
(ブレーキアクチュエータ装置の構成)
ブレーキアクチュエータ装置1は、鉄道車両の車輪(図示無し)に設けられたブレーキBのブレーキシュー(図示無し)を可動させる。具体的には、ブレーキアクチュエータ装置1は、ピストンロッド15を移動させることで、ブレーキシューを車輪やブレーキディスクに押し付けるためのレバー100を作動させる。図1及び図2に示すように、ブレーキアクチュエータ装置1は、ハウジング2と、常用ブレーキ部3と、ピストンロッド15と、駐車ブレーキ部4と、インジケータ50(図2参照)と、を主に備えている。ブレーキアクチュエータ装置1は、鉄道車両の運行時には、常用ブレーキ部3によりピストンロッド15を移動させることで、レバー100を作動させる。ブレーキアクチュエータ装置1は、車庫等に鉄道車両を駐車するときには、駐車ブレーキ部4によりピストンロッド15を移動させ、レバー100を作動させる。鉄道車両を駐車するときには、ブレーキアクチュエータ装置1は、ブレーキBを作動させた状態をレバー100に維持させる。
(ハウジングの構成)
ハウジング2は、ブレーキアクチュエータ装置1の外殻を形成する。ハウジング2に対し、軸方向Daの第一側Da1には、ブレーキBのレバー100が収容されたレバー収容ハウジング101が固定されている。ここで、軸方向Daとは、軸線Oの延びる方向である。ハウジング2は、第一シリンダ11と、第二シリンダ21と、を備えている。
第一シリンダ11は、軸線Oを中心とする有底筒状に形成されている。第一シリンダ11は、第一筒状壁111と、第一端板112と、を一体に有している。また、第一シリンダ11には、外部から第一シリンダ11内に圧縮空気等の流体を送り込む第一供給口113(図2参照)が形成されている。
第一筒状壁111は、軸方向Daに延びるように円筒状に形成されている。第一筒状壁111の軸方向Daの第一側(一方側)Da1の端部は開口している。第一端板112は、軸方向Daに直交する面を有する。第一端板112は、第一筒状壁111の軸方向Daの第二側(他方側)Da2の端部を閉塞している。本実施形態では、第一端板112に、第一供給口113が形成されている。
第二シリンダ21は、第一シリンダ11に対して軸方向Daの第一側Da1に配置されている。第二シリンダ21は、軸線Oを中心とする有底筒状に形成されている。本実施形態の第二シリンダ21は、第一シリンダ11と一体に形成されている。第二シリンダ21は、第二筒状壁211と、中間フランジ212と、第二端板213と、スリーブ214とを備えている。また、第二シリンダ21には、外部から第二シリンダ21内に圧縮空気等の流体を供給する第二供給口216が形成されている。
第二筒状壁211は、軸方向Daに延びるように円筒状に形成されている。本実施形態では、第二供給口216は、第二筒状壁211における軸方向Daの第一側Da1の端部に形成されている。第二筒状壁211の内周面には、径方向Drの内側Driに突出するようにピストンストッパ218が形成されている。第二筒状壁211における軸方向Daの第一側Da1の端部には、インジケータ保持孔219が形成されている。インジケータ保持孔219は、第二筒状壁211を径方向Drの外側Droから内側Driに貫通するように形成されている。インジケータ保持孔219の途中には、インジケータ保持孔219を形成する面から凹む保持孔凹部219aが形成されている。したがって、保持孔凹部219aでは、インジケータ保持孔219が広がった状態となっている。
中間フランジ212は、第二筒状壁211の軸方向Daの第二側Da2の端部に配置されている。中間フランジ212は、軸方向Daに直交する面を有する。中間フランジ212は、軸線Oを中心とする周方向Dcに連続する円環状に形成されている。中間フランジ212の中央部には、ピストンロッド15が挿通されるロッド挿通孔212hが形成されている。中間フランジ212は、第一シリンダ11と第二シリンダ21との接続部分に配置されている。つまり、中間フランジ212は、ハウジング2において、軸方向Daの中間に配置されている。
第二端板213は、第二筒状壁211の軸方向Daの第一側Da1の端部に配置されている。第二端板213は、軸方向Daに直交する面を有している。第二端板213は、軸線Oを中心とする周方向Dcに連続する円環状に形成されている。
スリーブ214は、第二端板213の中央部に対して、第二筒状壁211の内部に向かうように、軸方向Daの第二側Da2に向かって突出するように配置されている。スリーブ214は、軸線Oを中心とする円筒状に形成されている。スリーブ214は、第二筒状壁211の内周面に対して、軸線Oを基準とする径方向Drの内側に間隔を空けて配置されている。図3に示すように、スリーブ214は、第二筒状壁211に支持されている。図1及び図2に示すように、スリーブ214の内周面には、径方向Drの内側Driに突出するように、スリーブ突起217が形成されている。
(常用ブレーキ部の構成)
常用ブレーキ部3は、鉄道車両の運行時にブレーキBを作動させる際に使用される。本実施形態の常用ブレーキ部3は、第一ピストン12と、第一戻しバネ13と、を備えている。
第一ピストン12は、第一シリンダ11内で軸方向Daに移動可能に配置されている。第一ピストン12は、軸方向Daに直交する面を有するように、軸線Oを中心とする円板状に形成されている。第一ピストン12の外周面は、第一筒状壁111内周面と摺接している。第一ピストン12は、第一筒状壁111及び第一端板112との間に第一室14を形成している。第一室14は、第一ピストン12に対して、第一シリンダ11内における軸方向Daの第二側Da2の空間である。第一ピストン12は、第一供給口113を通して外部から流体が供給されることで、軸方向Daの第一側Da1に移動する。
第一戻しバネ13は、第一ピストン12内に配置されている。第一戻しバネ13は、第一ピストン12を軸方向Daの第二側Da2に向かって付勢している。第一戻しバネ13は、例えば、軸線Oを中心とする円筒状のコイルバネである。第一戻しバネ13は、圧縮状態で、第一ピストン12と中間フランジ212とに繋がれている。したがって、第一戻しバネ13によって、第一ピストン12は、第一供給口113を通して第一室14の流体が外部に排出されることで、軸方向Daの第二側Da2に移動する。
(ピストンロッドの構成)
ピストンロッド15は、第一ピストン12と一体に形成されている。ピストンロッド15は、軸線Oを中心とする円柱状に形成されている。ピストンロッド15は、第一シリンダ11内から第二シリンダ21及び後述する第二ピストン22を貫通するように軸方向Daに延びている。ピストンロッド15は、第一ピストン12から軸方向Daの第一側Da1に延びている。ピストンロッド15は、ロッド挿通孔212h及びスリーブ214に挿通された状態で、第二端板213よりも軸方向Daの第一側Da1に突出している。ピストンロッド15は、第一ピストン12とともに、軸方向Daに移動する。
ピストンロッド15の軸方向Daの第一側Da1の端部は、レバー収容ハウジング101内で、レバー100の一端を収容した状態で押す構造とされている。レバー100の一端は、レバー第一端部100a及びレバー第二端部100bを有している。レバー第一端部100aは、レバー100の一端において、軸方向Daの第二側Da2を向く面を有している。レバー第一端部100aは、ピストンロッド15が軸方向Daの第一側Da1に移動する際に、ピストンロッド15によって軸方向Daの第一側Da1に押される。レバー第二端部100bは、レバー100の一端において、軸方向Daの第一側Da1を向く面を有している。レバー第二端部100bは、ピストンロッド15が軸方向Daの第二側Da2に移動する際に、ピストンロッド15によって軸方向Daの第二側Da2に押される。なお、レバー100の他端(図示無し)は、ブレーキBを作動させるための作動機構(図示無し)に連結されている。ピストンロッド15の軸方向Daの第一側Da1の端部に対して、わずかに軸方向Daの第二側Da2に寄った位置にはロッド拡径部155が形成されている。ロッド拡径部155は、ピストンロッド15の外周面から径方向Drの外側Droに向かって突出している。
レバー100は、ピストンロッド15によって、レバー第一端部100aやレバー第二端部100bが軸方向Daに押されることで、作動機構を可動させてブレーキBの制輪子(図示無し)を車輪やブレーキディスクに対して接触させたり離させたりする。ピストンロッド15は、レバー100のレバー第一端部100aを軸方向Daの第一側Da1に押すことで、制輪子(図示無し)を車輪やブレーキディスクに押し付けるように移動させて、ブレーキBを作動させた「制動状態」とする。ピストンロッド15は、レバー100のレバー第二端部100bを軸方向Daの第二側Da2に押すことで、制輪子(図示無し)を車輪やブレーキディスクから離間させるように移動させて、ブレーキBを作動させていない「緩解状態」とする。
(駐車ブレーキ部の構成)
駐車ブレーキ部4は、鉄道車両の駐車時にブレーキBを作動させる際に使用される。本実施形態の駐車ブレーキ部4は、第二ピストン22と、第二戻しバネ23と、スライド部材30と、係合部材40と、を備えている。
第二ピストン22は、第二シリンダ21内で軸方向Daに移動可能に配置されている。第二ピストン22は、軸方向Daの第一側Da1へ移動する際に、スライド部材30とともに移動可能とされている。第二ピストン22は、軸方向Daの第二側Da2へ移動する際に、スライド部材30に対して相対的に移動可能とされている。本実施形態の第二ピストン22は、ピストン本体221と、ピストンスリーブ222と、保持部223と、を一体に備えている。
ピストン本体221は、軸方向Daに直交する面を有している。ピストン本体221は、軸方向Daから見た際に、軸線Oを中心とする円環状に形成されている。ピストン本体221における径方向Drの外側Droの端部には、軸方向Daの第二側Da2に向かって突出するピストン外周部221aが形成されている。ピストン外周部221aは、軸線Oを中心とする円筒状に形成されている。ピストン外周部221aは、ピストン本体221における径方向Drの外側Droで、第二筒状壁211の内周面と摺接している。ピストン本体221は、スリーブ214、第二筒状壁211、及び第二端板213との間に第二室24を形成している。第二室24は、ピストン本体221に対して、第二シリンダ21内における軸方向Daの第一側Da1の空間である。第二ピストン22は、第二供給口216を通して外部から流体が供給されることで、軸方向Daの第二側Da2に移動する。なお、第二ピストン22は、ピストンストッパ218に突き当たることで、軸方向Daの第二側Da2への移動範囲が規制されている。
ピストンスリーブ222は、ピストン本体221における径方向Drの内側Driの端部から、軸方向Daの第二側Da2に向かって突出している。ピストンスリーブ222は、軸線Oを中心とする円筒状に形成されている。ピストンスリーブ222は、スリーブ214の外周面と摺接している。
保持部223は、ピストンスリーブ222の軸方向Daの第二側Da2の端部に対して、さらに軸方向Daの第二側Da2に延びるように配置されている。保持部223は、軸線Oを中心とする円筒状に形成されている。保持部223は、軸方向Daの第一側Da1から第二側Da2に向かって内径が漸次縮小するように形成されている。保持部223は、ピストン側テーパ面27を有している。本実施形態のピストン側テーパ面27は、保持部223の内周面である。ピストン側テーパ面27は、径方向Drから見た断面形状が、軸方向Daの第一側Da1から第二側Da2に向かって軸線Oに近づくように傾斜している。ピストン側テーパ面27は、径方向Drから見た断面形状が、直線状に形成されている。
第二戻しバネ23は、第二ピストン22内に配置されている。第二戻しバネ23は、第二シリンダ21内で第二ピストン22を軸方向Daの第一側Da1に向かって付勢している。第二戻しバネ23は、例えば、軸線Oを中心とする円筒状のコイルバネである。第二戻しバネ23は、圧縮状態で、ピストン本体221と中間フランジ212とに繋がれている。したがって、第二戻しバネ23によって、第二ピストン22は、第二供給口216を通して第二室24の流体が外部に排出されることで、軸方向Daの第一側Da1に移動する。
(スライド部材の構成)
スライド部材30は、軸線Oを中心として、軸方向Daに延びる円筒状に形成されている。スライド部材30は、ピストンスリーブ222に挿通された状態で配置されている。スライド部材30の径方向Drの内側には、ピストンロッド15が挿入されている。本実施形態のスライド部材30は、ブッシュ部31と、ねじ軸部32と、を備えている。
ブッシュ部31は、スリーブ214内に挿入された状態で配置されている。ブッシュ部31は、スリーブ突起217に対して軸方向Daの第一側Da1に配置されている。ブッシュ部31の外周面(径方向Drにおいて最も外側Droの面)は、スリーブ214の内周面に対してクリアランスが形成された位置に配置されている。ブッシュ部31は、周方向Dcに間隔を開けて配置された複数の溝35を有している。
各溝35は、ブッシュ部31の外周面から径方向Drの内側Driに窪んで形成されている。各溝35は、ブッシュ部31における軸方向Daの第一側Da1の端部から第二側Da2まで貫通するように、軸方向Daに延びている。本実施形態の溝35は、軸方向Daの第一側Da1の方が軸方向Daの第二側Da2よりも深くなるように形成されている。
本実施形態の溝35は、径方向Drの外側Droを向く底面として、第一底面351と、第二底面352と、中間底面353と、を有している。第一底面351は、ブッシュ部31における軸方向Daの第一側Da1の端部と繋がるように形成されている。第一底面351は、ブッシュ部31の外周面に対する径方向Drの位置が、軸方向Daにおいて、一定となるように形成されている。第二底面352は、ブッシュ部31における軸方向Daの第二側Da2の端部と繋がるように形成されている。つまり、第二底面352は、第一底面351に対して軸方向Daの第二側Da2に形成されている。第二底面352は、第一底面351に対し、径方向Drの外側Droに配置されている。つまり、第二底面352が形成されている位置の方が、第一底面351が形成されている位置よりも溝35が浅く形成されている。第二底面352は、ブッシュ部31の外周面に対する径方向Drの位置が、軸方向Daにおいて、一定となるように形成されている。中間底面353は、第一底面351と第二底面352とを繋いでいる。中間底面353は、軸方向Daの第一側Da1側から第二側Da2に向かって、軸線Oから離れるように、傾斜している。つまり、中間底面353は、径方向Drから見た際に、第一底面351から第二底面352に近づくにしたがって、径方向Drの外側に向かうように形成されている。
ねじ軸部32は、ブッシュ部31から軸方向Daの第二側Da2に突出するように形成されている。ねじ軸部32の外径は、ブッシュ部31の外径よりも小径とされている。ねじ軸部32の外周面には、雄ねじ部33が形成されている。
このようなスライド部材30は、ピストンロッド15に対し、軸方向Da及び周方向Dcに相対移動可能とされている。スリーブ突起217にブッシュ部31が突き当たることで、スライド部材30の軸方向Daの第二側Da2への移動範囲が規制されている。また、ロッド拡径部155にブッシュ部31が突き当たることで、スライド部材30は、軸方向Daの第一側Da1へ移動する際に、ピストンロッド15ともに移動する。
さらに、スライド部材30とピストンロッド15との間には、スラストニードルベアリング等の軸受156が配置されている。軸受156は、ロッド拡径部155における軸方向Daの第二側Da2を向く面に固定されている。軸受156は、ブッシュ部31がロッド拡径部155に突き当たった状態でも、スライド部材30をピストンロッド15に対して周方向Dcに回転可能としている。
(係合部材の構成)
係合部材40は、スライド部材30に対して回転不能とされることで、第二ピストン22ととともにスライド部材30を移動可能とさせる。係合部材40は、スライド部材30に対して回転可能とされることで、第二ピストン22をスライド部材30に対して相対的に移動可能とさせる。具体的には、係合部材40は、保持部223に接触することで、スライド部材30に対して回転不能とされる。係合部材40は、保持部223から離れることで、スライド部材30に対して回転可能とされる。
係合部材40は、ピストンスリーブ222及び保持部223に対しての径方向Drの内側Driに配置されている。係合部材40は、軸線Oを中心とする円筒状に形成されている。係合部材40は、ねじ軸部32に対して径方向Drの外側に配置されている。係合部材40は、第二ピストン22に固定されたスラスト軸受43により、第二ピストン22に対して軸線Oを中心として回転可能に支持されている。スラスト軸受43は、ピストンスリーブ222の内周面に形成された軸受固定部224に固定されている。係合部材40の内周面には、雄ねじ部33に螺合する雌ねじ部41が形成されている。したがって、本実施形態の係合部材40は、例えば、スクリューナットのような構造を有している。
係合部材40は、軸方向Daの第二側Da2に、係合部材側テーパ面42を有している。本実施形態の係合部材側テーパ面42は、係合部材40の外周面である。係合部材側テーパ面42は、径方向Drから見た断面形状が、軸方向Daの第一側Da1から第二側Da2に向かって軸線Oに近づくように傾斜している。係合部材側テーパ面42は、径方向Drから見た断面形状が、ピストン側テーパ面27と平行な直線状に形成されている。係合部材40は、スラスト軸受43とピストン側テーパ面27との間で、僅かなストローク範囲で軸方向Daに移動可能とされている。
このような係合部材40は、第二ピストン22が係合部材40に対して軸方向Daの第一側Da1に相対移動すると、係合部材側テーパ面42とピストン側テーパ面27とが密着する。これにより、係合部材40は、摩擦力によって、第二ピストン22に回転不能な状態で接続される。その結果、係合部材40は、ねじ軸部32に対しても回転不能な状態となる。また、係合部材40は、第二ピストン22が係合部材40に対して軸方向Daの第二側Da2に相対移動すると、係合部材側テーパ面42とピストン側テーパ面27との間に僅かな隙間が形成される。つまり、係合部材40と第二ピストン22とは離れた状態となる。これにより、係合部材40は、スラスト軸受43を介して、第二ピストン22に回転可能な状態で支持される。
(インジケータの構成)
インジケータ50は、ブレーキアクチュエータ装置1の外部から駐車ブレーキ部4の作動状態を確認したり、駐車ブレーキ部4を解除したりすることが可能とされている。インジケータ50は、図2に示すように、第二シリンダ21における軸方向Daの第二側Da2の端部に近い位置に配置されている。図4に示すように、インジケータ50は、第二筒状壁211に形成されたインジケータ保持孔219に挿入された状態で保持されている。本実施形態のインジケータ50は、表示部材51と、操作部材52と、表示部材戻しバネ53と、操作部材戻りバネ55とを備えている。
表示部材51は、駐車ブレーキ部4が作動していることをブレーキアクチュエータ装置1の外部に示すことが可能とされている。表示部材51は、径方向Drに延びるように棒状に形成されている。表示部材51は、径方向Drに沿って延びる筒状の操作部材52内に挿入されている。表示部材51は、操作部材52に対して、径方向Drに移動可能とされている。本実施形態の表示部材51は、軸状部511と、先端拡径部512と、後端拡径部513と、を有している。軸状部511、先端拡径部512、及び後端拡径部513は一体に形成されている。
軸状部511は、径方向Drに直線状に延びている。先端拡径部512は、軸状部511における径方向Drの内側Driの端部に形成されている。先端拡径部512は、軸状部511よりも大径に形成されている。先端拡径部512は、先端である径方向Drの内側Driに向かうにしたがって次第に縮径するように形成されている。後端拡径部513は、軸状部511における径方向Drの外側Droの端部に形成されている。後端拡径部513は、軸状部511よりも大径に形成されている。後端拡径部513は、円板状に形成されている。
この表示部材51における径方向Drの内側Driの先端515(先端拡径部512の先端)は、溝35の底面に摺接可能とされている。表示部材51における径方向Drの外側Droの後端516(後端拡径部513の径方向Drの外側Droを向く面)は、第二シリンダ21の外周面から径方向Drの外側Droに突出している。なお、表示部材51は、本実施形態のように、鉄道車両の幅方向(水平方向)の外側に延びるように配置されることが、駐車ブレーキ部4の作動状態を外部からの視認性の観点から好ましい。
ここで、表示部材51の先端515が接触する溝35の底面は、スライド部材30の接触面34とされている。接触面34は、スライド部材30において、表示部材51の先端515が接触可能な面である。接触面34は、軸方向Daの第一側Da1と軸方向Daの第二側Da2とで径方向Drにおける位置が異なっている。具体的には、接触面34は、軸方向Daの第一側Da1の端部に対し、軸方向Daの第二側Da2の端部が、径方向Drの外側Droに配置されるように軸方向Daに延びている。したがって、図2に示すように、本実施形態では、第一底面351、中間底面353、及び第二底面352が接触面34となることで、軸方向Daの第一側Da1から第二側Da2に向かって、徐々に、径方向Drの位置が外側Droに向かっている。
表示部材51は、第二シリンダ21内のスライド部材30が軸方向Daに移動すると、先端515が溝35の底面に摺接する位置が変化する。具体的には、表示部材51は、先端515が溝35の第一底面351に摺接している状態(以下、この状態における表示部材51の径方向Drの位置を、第一位置P1と称する)に対し、図5に示すように、先端515が溝35の第二底面352に摺接している状態(以下、この状態における表示部材51の径方向Drの位置を、第二位置P2と称する)では、径方向Drの外側Droへの突出寸法が大きくなる。
操作部材52は、ブレーキアクチュエータ装置1の外部から表示部材51の径方向Drの位置を変更可能とされている。操作部材52は、内側に表示部材51が挿入可能な筒状に形成されている。操作部材52は、インジケータ保持孔219内で、径方向Drに移動可能とされている。本実施形態の操作部材52は、筒状部521と、内側フランジ522と、受け部523と、把持部524とを有している。
筒状部521は、径方向Drに延びるように、筒状に形成されている。筒状部521の内部には、軸状部511が挿入可能とされている。筒状部521は、インジケータ保持孔219に挿入されている。
内側フランジ522は、筒状部521における径方向Drの内側Driの端部に形成されている。内側フランジ522は、筒状部521に対して径方向Drの外側Droに突出するように拡径している。内側フランジ522は、保持孔凹部219a内に配置されている。内側フランジ522は、保持孔凹部219aにおいて、径方向Drの外側Droを向く第一ストッパ部2191や、径方向Drの内側Driを向く第二ストッパ部2192に接触可能とされている。内側フランジ522が第一ストッパ部2191、及び第二ストッパ部2192に突き当たることで、径方向Drにおける操作部材52の移動範囲が規制されている。
受け部523は、筒状部521における径方向Drの外側Droの端部に形成されている。受け部523は、筒状部521よりも大径に形成され、径方向Drの外側Droに開口した有底筒状に形成されている。受け部523の内側には、後端拡径部513が収容可能とされている。図5に示すように、受け部523は、表示部材51の先端515が第二底面352に突き当たる第二位置P2にあるときのみ、後端拡径部513を径方向Drの外側Droに突出させるように形成されている。つまり、受け部523は、図4のように、表示部材51の先端515が第一底面351に突き当たる第一位置P1にあるときは、後端拡径部513を径方向Drの外側Droに突出させないように収容している。
図4及び図5に示すように、把持部524は、受け部523の側面から突出するように、受け部523と一体に形成されている。把持部524は、作業者が把持可能な大きさで形成されている。
図6に示すように、操作部材52は、作業者が把持部524を把持することで、径方向Drの外側Droに引き出すことができるようになっている。操作部材52を、径方向Drの外側Droに引き出すと、操作部材52とともに表示部材51が径方向Drの外側Droに変位し、先端515が、溝35から径方向Drの外側Droに退避可能となる。
このようにして、表示部材51は、先端515が溝35の第一底面351に突き当たった第一位置P1と、先端515が溝35の第二底面352に突き当たった第二位置P2と、先端515が溝35内から径方向Drの外側Droに退避した第三位置P3と、の間で移動可能とされている。
また、第一位置P1や第二位置P2では、先端515は溝35に挿入された状態となっている。先端515が溝35に挿入された状態では、スライド部材30は、ピストンロッド15、第二ピストン22、及びスライド部材30等の他の部材に対して回転不能とされる。スライド部材30は、回転不能とされた状態では、軸方向Daの第一側Da1のみに移動可能とされている。また、第三位置P3では、先端515は溝35から出た状態となっている。先端515が溝35から出た状態では、スライド部材30は、ピストンロッド15、第二ピストン22、及びスライド部材30等の他の部材に対して相対的に回転可能とされる。スライド部材30は、回転可能とされることで、軸方向Daの第二側Da2に移動可能とされている。つまり、スライド部材30は、先端515が溝35の外部に配置されることで、軸方向Daの第二側Da2に移動可能とされている。
また、図4に示すように、表示部材戻しバネ53は、操作部材52に対して表示部材51を径方向Drに付勢している。表示部材戻しバネ53は、インジケータ保持孔219内に配置されている。表示部材戻しバネ53は、例えば、先端拡径部512と、筒状部521との間で径方向Drに圧縮されたコイルバネである。表示部材戻しバネ53は、筒状部521に対して、先端拡径部512を径方向Drの内側Driに付勢している。
また、操作部材戻りバネ55は、第二筒状壁211に対して操作部材52を径方向Drに付勢している。操作部材戻りバネ55は、保持孔凹部219a内に配置されている。
操作部材戻りバネ55は、例えば、第二ストッパ部2192と、内側フランジ522との間で径方向Drに圧縮されたコイルバネである。操作部材戻りバネ55は、第二ストッパ部2192に対して、内側フランジ522を径方向Drの内側Driに付勢している。
(ブレーキアクチュエータ装置の鉄道車両の運行時における動作の説明)
図7に示すように、鉄道車両の運行時、駐車ブレーキ部4には、常に、第二室24に外部から第二供給口216を通して流体が供給されている。第二室24内の流体の圧力によって、第二ピストン22は、ピストンストッパ218に突き当たる位置まで軸方向Daの第二側Da2に寄せられる。駐車ブレーキ部4は、鉄道車両の運行時には、第二ピストン22は軸方向Daの第二側Da2に寄った状態で維持される。
また、第二ピストン22が軸方向Daの第二側Da2に移動する際には、ピストン側テーパ面27と、係合部材側テーパ面42との間には隙間Sが生じている。これにより、係合部材40が第二ピストン22から切り離され、周方向Dcに回転自在な状態となる。第二ピストン22が軸方向Daの第二側Da2に移動することで、係合部材40は、第二ピストン22に固定されたスラスト軸受43によって軸方向Daの第二側Da2に押される。その結果、係合部材40は、雄ねじ部33に螺合した雌ねじ部41によって、ねじ軸部32に対して周方向Dcに回転しながら軸方向Daの第二側Da2に移動する。つまり、第二ピストン22は、軸方向Daの第二側Da2へ移動する際に、スライド部材30を移動させることなく、スライド部材30に対して独立して移動している。
この状態で、常用ブレーキ部3によってブレーキBを作動させるには、図8に示すように、第一供給口113から第一室14に流体が供給される。第一室14に流体が流入すると、第一室14内の流体の圧力により、第一ピストン12は軸方向Daの第一側Da1に押される。その結果、第一ピストン12とともにピストンロッド15が軸方向Daの第一側Da1に移動する。ピストンロッド15が軸方向Daの第一側Da1に移動することで、レバー100のレバー第一端部100aが軸方向Daの第一側Da1に押される。これにより、常用ブレーキ部3によって、ブレーキBが作動して制動状態となる。また、常用ブレーキ部3による制動状態では、表示部材51の先端515は、溝35の第一底面351に突き当たった第一位置P1に位置している。
また、常用ブレーキ部3によるブレーキBの制動状態を解除(緩解)するには、第一室14の流体を第一供給口113から外部に排出する。第一室14の流体が排出されると、第一ピストン12を軸方向Daの第一側Da1に押す力が弱まり、図7に示すように、第一戻しバネ13によって、第一ピストン12は軸方向Daの第二側Da2に押される。その結果、第一ピストン12とともにピストンロッド15が軸方向Daの第二側Da2に移動する。ピストンロッド15が軸方向Daの第二側Da2に移動することで、レバー100のレバー第二端部100bが軸方向Daの第二側Da2に押される。これにより、常用ブレーキ部3による制動状態が解除されて緩解状態となる。
図8に示した制動状態から図7に示す緩解状態に移行する過程では、ピストンロッド15は、軸方向Daの第一側Da1へ移動する際に、スライド部材30や第二ピストン22を移動させることなく、第一ピストン12のみと移動する。つまり、ピストンロッド15及び第一ピストン12は、スライド部材30や第二ピストン22に対して独立して移動する。その結果、第二ピストン22及びスライド部材30の軸方向Daの位置は変わらない。したがって、表示部材51の先端515は、溝35の第一底面351に突き当たった第一位置P1に維持されている。
(ブレーキアクチュエータ装置の鉄道車両の駐車時における動作の説明)
図9に示すように、鉄道車両の運行を行わないとき、すなわち駐車時には、駐車ブレーキ部4によって、ブレーキBを作動させる。駐車ブレーキ部4が作動される前では、第一室14に流体は供給されておらず、第二室24のみに流体が供給されている。この状態から駐車ブレーキ部4によってブレーキBを作動させるには、第二室24内の流体を第二供給口216から外部に排出する。第二室24の流体が排出されると、第二ピストン22を軸方向Daの第二側Da2に押す力が弱まり、第二戻しバネ23の付勢力によって、第二ピストン22を軸方向Daの第一側Da1に押される。第二ピストン22が軸方向Daの第一側Da1に移動することで、ピストン側テーパ面27が係合部材側テーパ面42に密着する。その結果、係合部材側テーパ面42とピストン側テーパ面27との間に生じる摩擦力によって、係合部材40が回転不能となる。この状態で、雌ねじ部41が雄ねじ部33に噛みっていることで、係合部材40は、ねじ軸部32に対して移動不能となる。係合部材40が第二ピストン22及びスライド部材30に対して回転不能とされた状態で、第二ピストン22を軸方向Daの第一側Da1にさらに移動すると、第二ピストン22とともに、係合部材40及びスライド部材30が軸方向Daの第一側Da1に移動する。スライド部材30が軸方向Daの第一側Da1に移動することで、ブッシュ部31によって、軸受156を介して、ロッド拡径部155が軸方向Daの第一側Da1に押される。その結果、ピストンロッド15が、軸方向Daの第一側Da1に移動する。ピストンロッド15が軸方向Daの第一側Da1に移動することで、レバー100のレバー第一端部100aが軸方向Daの第一側Da1に押される。これにより、駐車ブレーキ部4によって、ブレーキBが作動して制動状態となる。また、駐車ブレーキ部4による制動状態では、表示部材51の先端515は、溝35の第二底面352に突き当たった第二位置P2に位置している。
また、駐車ブレーキ部4が作動して、制動状態となるようにレバー100のレバー第一端部100aを押している間、スライド部材30の溝35に、表示部材51の先端515は挿入された状態で維持されている。これにより、スライド部材30の周方向Dcへの回転が拘束されている。その結果、軸方向Daの第二側Da2へのスライド部材30及び第二ピストン22の移動が規制され、制動状態が維持される。
図9に示す制動状態すなわち駐車時から、鉄道車両の運行を再開する場合、駐車ブレーキ部4による制動状態を解除(緩解)する。これには、図6及び図10に示すように、作業者が、操作部材52の把持部524を把持し、径方向Drの外側Droに引き出す。その結果、受け部523が後端拡径部513に接触し、操作部材52とともに表示部材51が径方向Drの外側Droに引き出される。そして、先端515が、溝35から径方向Drの外側Droに外れた位置となるまで、把持部524が径方向Drの外側Droに引き出される。先端515が溝35から外れることで、ピストンロッド15に対して、スライド部材30が周方向Dcに回転可能とされる。また、第一戻しバネ13の付勢力によって、第一ピストン12とともにピストンロッド15は、軸方向Daの第二側Da2に押されている。そのため、軸受156を介してロッド拡径部155に接触しているスライド部材30も、軸方向Daの第二側Da2に押されている。ピストンロッド15及びスライド部材30が軸方向Daの第二側Da2に押された状態で、スライド部材30がピストンロッド15に対して回転可能とされると、スライド部材30は、ピストンロッド15及び係合部材40に対して回転しながら、軸方向Daの第二側Da2に移動する。スライド部材30の移動に伴って、ピストンロッド15も軸方向Daの第二側Da2に移動する。ピストンロッド15が軸方向Daの第二側Da2に移動することで、レバー100のレバー第二端部100bが軸方向Daの第二側Da2に押される。これにより、駐車ブレーキ部4による制動状態が解除されて緩解状態となる。
(作用効果)
上記構成のブレーキアクチュエータ装置1では、鉄道車両の運行を行わないとき、すなわち駐車時には、係合部材40及びスライド部材30によって、第二ピストン22の移動とともに、ピストンロッド15が軸方向Daの第一側Da1に移動し、鉄道車両のブレーキBを作動させる。この際、スライド部材30が、ピストンロッド15及び第二ピストン22の動きに連動して、軸方向Daの第一側Da1に移動する。この過程で、表示部材51の先端515が接触面34に接触している位置が、軸方向Daの第一側Da1の第一底面351から第二側Da2の第二底面352に移動する。これにより、表示部材51の先端515の径方向Drの位置が変化する。つまり、表示部材51の径方向Drの位置が変化し、表示部材51の後端516の径方向Drの位置も変化する。そのため、この後端516の位置を視認することで、第二ピストン22によってブレーキBが作動していることを容易に確認することができる。その結果、駐車時にブレーキBが作動していることを容易に確認することができる。
特に、第二戻しバネ23の付勢力によって第二ピストン22が軸方向Daの第一側Da1に移動するときのみ、スライド部材30が、ピストンロッド15及び第二ピストン22とともに軸方向Daの第一側Da1に移動する。そして、第二ピストン22は、駐車時のように、駐車ブレーキ部4によって制動状態とされる場合のみ、軸方向Daの第一側Da1に移動する。そのため、表示部材51の先端515は、駐車ブレーキ部4によって制動状態とされた場合のみ、第二底面352と接触することとなる。したがって、常用ブレーキ部3ではなく、駐車ブレーキ部4が作動しており、第二ピストン22によってブレーキBが作動していることを高い精度で確認することができる。
また、接触面34を形成する溝35が、第一底面351に対し第二底面352が、径方向Drの外側Droに配置されている。駐車ブレーキ部4によって制動状態とされる場合には、スライド部材30は、軸方向Daの第一側Da1に移動している。そのため、表示部材51の先端515は、第二底面352と接触する。つまり、先端515は、第一底面351に接触した状態から第二底面352に接触した状態に切り替わる。これにより、表示部材51が径方向Drの外側Droに移動する。そのため、図5に示すように、表示部材51の後端516が、受け部523から径方向Drの外側Droに突出する。この後端516の受け部523に対して突出していることを視認することで、第二ピストン22によってブレーキBが作動していることを容易に確認することができる。
また、表示部材51の先端515が溝35の外に引き出されて退避させられると、スライド部材30は周方向Dcに回転可能な状態とされる。その結果、第一戻しバネ13の付勢力によって第一ピストン12とともに軸方向Daの第二側Da2に移動しようとするピストンロッド15に押されて、スライド部材30が係合部材40に対して回転しながら、軸方向Daの第二側Da2に移動する。つまり、スライド部材30が第二ピストン22に対して回転しながら、軸方向Daの第二側Da2に移動する。スライド部材30が第二ピストン22に対して、軸方向Daの第二側Da2に移動することで、ピストンロッド15も軸方向Daの第二側Da2に移動する。これにより、ブレーキBが解除され、緩解状態となる。このように表示部材51を径方向Drの外側Droに移動させるだけで、容易に緩解状態とすることができる。
さらに、表示部材51は、第三位置P3とされることで、第二ピストン22の動きとは独立して、スライド部材30やピストンロッド15のみを動かして、緩解状態とすることができる。したがって、駐車ブレーキ部4によって緩解状態とされたわけではなく、作業者が、外部から手動でブレーキBを解除させたことを高い精度で確認することができる。
また、表示部材51の先端515が溝35内に挿入されることで、スライド部材30は周方向Dcに回転不能とされる。その結果、スライド部材30は係合部材40やピストンロッド15に対して回転不能となる。この状態で、第二ピストン22が軸方向Daの第二側Da2に移動した場合には、第二ピストン22に対して回転する係合部材40は、スライド部材30に対して回転する。係合部材40がスライド部材30に対して相対回転すると、雌ねじ部41が雄ねじ部33に螺合していることで、係合部材40がスライド部材30に対して軸方向Daの第二側Da2に移動する。つまり、スライド部材30に対して、第二ピストン22を独立して移動させることができる。これにより、第二ピストン22をピストンロッド15に対して独立して移動させることができる。
また、スライド部材30が回転不能な状態で、第二ピストン22が軸方向Daの第一側Da1に移動した場合には、第二ピストン22に対して係合部材40も回転不能とされている。そのため、第二ピストン22が軸方向Daの第一側Da1に移動した場合には、係合部材40は回転することなく、軸方向Daの第一側Da1に移動する。係合部材40が軸方向Daの第一側Da1に移動すると、雌ねじ部41が雄ねじ部33に螺合していることで、係合部材40はスライド部材30を軸方向Daの第一側Da1に移動させる。つまり、スライド部材30に対して、第二ピストン22を連動させて移動させることができる。これにより、ピストンロッド15を第二ピストン22の動きに連動させて軸方向Daの第二側Da2に移動させることができる。したがって、第二ピストン22を軸方向Daの第一側Da1に移動させることで、確実にブレーキBを作動させることができる。
さらに、表示部材51の先端515が溝35内から外されることで、スライド部材30は回転可能な状態となる。その結果、ピストンロッド15は、スライド部材30とともに軸方向Daの第二側Da2に移動可能とされる。具体的には、第一戻しバネ13の付勢力によって、第一ピストン12とともに、ピストンロッド15及びスライド部材30も、軸方向Daの第二側Da2に移動する。ピストンロッド15が軸方向Daの第二側Da2に移動することで、駐車ブレーキ部4による制動状態が解除されて緩解状態とすることができる。この際、第二ピストン22は、ピストンロッド15及びスライド部材30の動きに連動して、移動しない。したがって、駐車ブレーキ部4によって緩解状態とされたわけでなく、作業者によって外部から緩解状態とされたことが、表示部材の51の位置で容易に把握することができる。
また、本実施形態のブレーキアクチュエータ装置1では、第二ピストン22が係合部材40に対して軸方向Daの第一側Da1に相対移動するときには、係合部材側テーパ面42とピストン側テーパ面27とが密着する。これにより、係合部材側テーパ面42とピストン側テーパ面27との間に生じる摩擦力によって、係合部材40が第二ピストン22に接続される。その結果、係合部材40が第二ピストン22に対して回転不能な状態で固定される。また、第二ピストン22が係合部材40に対して軸方向Daの第二側Da2に相対移動するときには、係合部材側テーパ面42とピストン側テーパ面27との間に隙間Sが生じる。これにより、係合部材40は第二ピストン22から切り離され、係合部材40がスライド部材30に対して周方向Dcに相対回転可能となる。このように、係合部材側テーパ面42及びピストン側テーパ面27による単純な構造で、第二ピストン22に対する係合部材40の動きを切り替えることができる。
また、操作部材52によって、表示部材51を径方向Drの外側Droに移動させることができる。したがって、操作部材52によって、先端515を溝35から容易に退避させることができる。これにより、操作部材52によって、スライド部材30の周方向Dcへの拘束を解除することができ、ブレーキBが作動した状態を、操作部材52を操作することによって解除することができる。
また、表示部材51は、第一位置P1と、第二位置P2と、第三位置P3と、の間で移動可能とされている。第一位置P1では、表示部材51の先端515が溝35の第一底面351に突き当たっている。つまり、スライド部材30は、軸方向Daの第二側Da2に寄った位置に配置され、駐車ブレーキ部4は作動していない。また、第二位置P2では、表示部材51の先端515が溝35の第二底面352に突き当たっている。つまり、スライド部材30は、軸方向Daの第一側Da1に寄った位置に配置され、駐車ブレーキ部4が作動している。また、第三位置P3では、表示部材51の先端515が溝35内から径方向Drの外側Droに退避している。つまり、スライド部材30は、軸方向Daの第一側Da1から第二側Da2に移動され、ブレーキBの作動が表示部材51によって解除されている。このようにして、表示部材51の径方向Drにおける位置によって、駐車ブレーキ部4が作動しているか否か、及びブレーキBが表示部材51によって解除されているかを容易に認識することができる。
また、表示部材51は、操作部材52の内側に挿入されている。さらに、表示部材51が第二位置P2となった場合のみ、後端516は操作部材52から径方向Drの外側Droに突出する。つまり、表示部材51の後端516は、第一位置P1や第三位置P3では、操作部材52から径方向Drの外側Droに突出していないことになる。そのため、表示部材51の後端516が、操作部材52から径方向Drの外側Droに突出していれば、表示部材51の先端515が第二位置P2にあることになる。これにより、駐車時に、第二ピストン22でピストンロッド15を軸方向Daの第一側Da1に移動させてブレーキBを作動させていることを、表示部材51が操作部材52から径方向Drの外側Droに突出していることによって、容易に確認することができる。また、操作部材52と表示部材51とを同軸状に設けることで、インジケータ50を少ないスペースで形成することができる。
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、常用ブレーキ部3及び駐車ブレーキ部4を作動させるための具体的な構成は上記実施形態に限定されるものではない。常用ブレーキ部3及び駐車ブレーキ部4は、それぞれ所要の機能を果たすのであれば、適宜他の構成を採用することができる。
したがって、第二ピストン22、スライド部材30、及び係合部材40は、本実施形態のように互いに回転するか否かで、軸方向Daの移動が規制される構造であることに限定されるものではない。第二ピストン22、スライド部材30、及び係合部材40は、それぞれ別々に軸方向Daの移動が規制する構造を別途有していてもよい。
また、上記実施形態において、表示部材51と操作部材52とを同軸状に配置されるようにしたが、このような構造に限定されるものではない、したがって、操作部材52は、表示部材51を径方向Drに移動させることが可能な構造であればよい。
<付記>
実施形態に記載のブレーキアクチュエータ装置1は、例えば以下のように把握される。
(1)第1の態様に係るブレーキアクチュエータ装置1は、軸線Oの延びる軸方向Daに延びるように筒状に形成された第一シリンダ11と、前記第一シリンダ11内で前記軸方向Daに移動可能に配置され、前記第一シリンダ11との間に流体が供給されることで前記軸方向Daの第一側Da1に移動する第一ピストン12と、前記第一シリンダ11内に配置され、前記第一ピストン12を前記軸方向Daの第二側Da2に付勢する第一戻しバネ13と、前記第一シリンダ11に対して前記軸方向Daの第一側Da1に配置され、前記軸方向Daに延びるように筒状に形成された第二シリンダ21と、前記第二シリンダ21内で前記軸方向Daに移動可能に配置され、前記第二シリンダ21との間に流体が供給されることで前記軸方向Daの第二側Da2に移動する第二ピストン22と、前記第二シリンダ21内に配置され、前記第二ピストン22を前記軸方向Daの第一側Da1に付勢する第二戻しバネ23と、前記第一ピストン12と一体に形成され、前記第一シリンダ11内から前記第二シリンダ21及び前記第二ピストン22を貫通するように前記軸方向Daの第一側Da1に延び、前記軸方向Daの第一側Da1に移動することでブレーキBを作動させるピストンロッド15と、前記軸方向Daに延びる筒状に形成され、前記軸線Oを基準とする径方向Drの内側Driに前記ピストンロッド15が挿入されているスライド部材30と、前記スライド部材30に対して前記径方向Drに移動可能に配置され、前記スライド部材30に対して前記径方向Drの外側Droで前記径方向Drに延びた表示部材51と、を備え、前記第二ピストン22は、前記軸方向Daの第一側Da1へ移動する際に、前記スライド部材30とともに移動し、前記軸方向Daの第二側Da2へ移動する際に、前記スライド部材30に対して相対的に移動し、前記スライド部材30は、前記軸方向Daの第一側Da1へ移動する際に、前記ピストンロッド15とともに移動し、前記表示部材51は、前記径方向Drの内側Driの先端515が前記スライド部材30に接触可能とされ、前記径方向Drの外側Droの後端516が前記第二シリンダ21から前記径方向Drの外側Droに突出するように配置され、前記スライド部材30は、前記軸方向Daに延びて前記表示部材51の前記先端515が接触可能な接触面34を有し、前記接触面34は、前記軸方向Daの第一側Da1と第二側Da2とで前記径方向Drにおける前記先端515との接触位置が異なっている。
このブレーキアクチュエータ装置1では、係合部材40及びスライド部材30によって、第二ピストン22の移動とともに、ピストンロッド15が軸方向Daの第一側Da1に移動する。この際、スライド部材30が、ピストンロッド15及び第二ピストン22の動きに連動して、軸方向Daの第一側Da1に移動する。この過程で、表示部材51の先端515が接触面34に接触している位置が、軸方向Daの第一側Da1から第二側Da2に移動する。これにより、表示部材51の先端515の径方向Drの位置が変化する。つまり、表示部材51の径方向Drの位置が変化し、表示部材51の後端516の径方向Drの位置も変化する。この後端516の位置を視認することで、第二ピストン22によってブレーキBが作動していることを容易に確認することができる。その結果、ブレーキBが作動していることを容易に確認することができる。
(2)第2の態様に係るブレーキアクチュエータ装置1は、(1)のブレーキアクチュエータ装置1であって、前記接触面34は、前記軸方向Daの第一側Da1の端部に対し、前記軸方向Daの第二側Da2の端部が、前記径方向Drの外側Droに配置されるように前記軸方向Daに延びている。
これにより、ブレーキBが作動している場合には、スライド部材30は、軸方向Daの第一側Da1に移動している。そのため、表示部材51の先端515は、接触面34における軸方向Daの第二側Da2の端部と接触する。つまり、表示部材51が径方向Drの外側Droに移動し、後端516が、径方向Drの外側Droに突出する。この後端516の位置を視認することで、第二ピストン22によってブレーキBが作動していることを容易に確認することができる。その結果、駐車時にブレーキBが作動していることを容易に確認することができる。
(3)第3の態様に係るブレーキアクチュエータ装置1は、(1)または(2)のブレーキアクチュエータ装置1であって、前記接触面34は、前記スライド部材30の外周面から前記径方向Drの内側Driに窪んで前記軸方向Daに延びる溝35の底面として形成され、前記表示部材51は、前記溝35の内部から前記溝35の外部まで前記先端515を移動させるように、前記径方向Drに移動可能とされ、前記スライド部材30は、前記先端515が前記溝35の外部に配置されることで、前記軸方向Daの第二側Da2に移動可能とされている。
表示部材51の先端515が溝35内から外されることで、ピストンロッド15は、スライド部材30とともに軸方向Daの第二側Da2に移動可能とされる。ピストンロッド15が軸方向Daの第二側Da2に移動することで、制動状態が解除されて緩解状態とすることができる。したがって、作業者によって外部から緩解状態とされたことが、表示部材の51の位置で容易に把握することができる。
(4)第4の態様に係るブレーキアクチュエータ装置1は、(3)のブレーキアクチュエータ装置1であって、前記先端515を前記溝35の外部に退避させるように、前記表示部材51を前記径方向Drの外側Droに移動させる操作部材52をさらに備える。
操作部材52によって、先端515を溝35から容易に退避させることができる。これにより、ブレーキBが作動した状態を、操作部材52を操作することによって解除することができる。
(5)第5の態様に係るブレーキアクチュエータ装置1は、(4)のブレーキアクチュエータ装置1であって、前記操作部材52は、前記表示部材51が内側に挿入可能な前記径方向Drに延びる筒状に形成され、前記表示部材51は、前記接触面34における前記軸方向Daの第二側Da2の端部と前記先端515とが接触した状態でのみ、前記後端516が、前記操作部材52から前記径方向Drの外側Droに突出する。
これにより、表示部材51の後端516は、接触面34における軸方向Daの第二側Da2の端部で接触した以外の状態では、操作部材52から径方向Drの外側Droに突出していないことになる。そのため、表示部材51の後端516が、操作部材52から径方向Drの外側Droに突出していれば、表示部材51の先端515が接触面34における軸方向Daの第二側Da2の端部に接触した状態になる。これにより、駐車時に、第二ピストン22でピストンロッド15を軸方向Daの第一側Da1に移動させてブレーキBを作動させていることを、表示部材51が操作部材52から径方向Drの外側Droに突出していることによって、容易に確認することができる。