以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、本発明の実施形態に係る車両の運転制御装置を、車両に搭載された運転制御システムに適用した場合を例にして説明する。本実施形態の運転制御装置の実施の形態は限定されず、車両コントローラと情報の授受が可能な携帯端末装置に適用することもできる。運転制御装置、運転制御システム及び携帯端末装置は、いずれも演算処理を実行する運転制御用のコンピュータである。
図1は、運転制御システム1000のブロック構成を示す図である。本実施形態の運転制御システム1000は、運転制御装置100と、車両コントローラ200と、緊急回避システム300とを備える。本実施形態の運転制御装置100は通信装置111を有し、車両コントローラ200も図外の通信装置を有し、両装置は有線通信又は無線通信により互いに情報の授受を行う。また運転制御装置100と緊急回避システム300との間でも、有線通信又は無線通信により互いに情報の授受が行われる。さらに車両コントローラ200と緊急回避システム300との間でも、有線通信又は無線通信により互いに情報の授受が行われる。
運転制御システム1000は、センサ1と、ナビゲーション装置2と、読み込み可能な記録媒体に記憶された地図情報3と、自車情報検出装置4と、環境認識装置5と、物体認識装置6と、運転制御装置100と、車両コントローラ200とを備える。各装置は、相互に情報の授受を行うためにCAN(Controller Area Network)その他の車載LANによって接続されている。
センサ1は、自車両の周囲(前方、側方、後方の全周囲)に位置する障害物の存在を含む走行環境に関する情報を検知する。センサ1は、自車両の周囲の状況を検出する。センサ1は、カメラを含む。本実施形態のカメラは、例えばCCD等の撮像素子を備えるカメラである。本実施形態のカメラは自車両に設置され、自車両の周囲を撮像し、自車両の周囲に存在する対象車両を含む画像データを取得する。カメラは、自車両周囲の環境情報を認識するための装置であり、イメージセンサのみならず、超音波カメラ、赤外線カメラなどを含む。センサ1は、測距センサを含む。測距センサは、自車両と対象物との相対距離および相対速度を演算する。測距センサにより検出された対象物の情報は、プロセッサ10に向けて出力される。測距センサとしては、レーザーレーダー、ミリ波レーダーなど(LRF等)、LiDAR(light detection and ranging)ユニット、超音波レーダーなどの出願時に知られた方式のものを用いることができる。センサ1は、一又は複数のカメラ、測距センサを採用することができる。本実施形態のセンサ1は、カメラの検知情報と測距センサの検知情報など複数の異なるセンサ情報を統合し、もしくは合成することにより検知情報において不足している情報を補完し、自車両周囲の環境情報とするセンサフュージョン機能を備える。このセンサフュージョン機能は、環境認識装置5や物体認識装置6やその他のコントローラやロジックに組み込まれるようにしてもよい。
対象物は、車線境界線、センターライン、路面標識、中央分離帯、ガードレール、縁石、高速道路の側壁、道路標識、信号機、横断歩道、工事現場、事故現場、交通制限を含む。対象物は、自車両以外の自動車(他車両)、オートバイ、自転車、歩行者を含む。対象物は、障害物を含む。障害物は、自車両の走行に影響を与える可能性がある対象物である。センサ1は、少なくとも障害物に関する情報を検知する。
ナビゲーション装置2は、地図情報3を参照し、自車情報検出装置4により検出された現在位置から目的地までの走行レーン/走行経路を算出する。走行レーン又は走行経路は、自車両が走行する道路、方向(上り/下り)及び車線が識別された線形である。走行経路は、走行レーンの情報を含む。以下、走行レーンをレーンと省略して記載することもある。
地図情報3は、運転制御装置100、車載装置、又はサーバ装置に設けられた記録媒体に読み込み可能な状態で記憶される。地図情報3は、経路生成及び/又は運転制御に用いられる。地図情報3は、道路情報、施設情報、それらの属性情報を含む。道路情報及び道路の属性情報には、道路幅、曲率半径、路肩構造物、道路交通法規(制限速度、車線変更の可否)、道路の合流地点、分岐地点、車線数の増加・減少位置等の情報が含まれている。本実施形態の地図情報3は、いわゆる高精細地図情報である。高精細地図情報によれば、レーンごとの移動軌跡を把握できる。高精細地図情報は、各地図座標における二次元位置情報及び/又は三次元位置情報、各地図座標における道路・レーンの境界情報、道路属性情報、レーンの上り・下り情報、レーン識別情報、接続先レーン情報を含む。
また地図情報3は、自車両が走行する走路とそれ以外との境界を示す走路境界の情報を含む。自車両が走行する走路とは、自車両が走行するための道であり、走路の形態は特に限定されない。走路境界は、自車両の進行方向に対して左右それぞれに存在する。走路境界の形態は特に限定されず、例えば、路面標示、道路構造物が挙げられる。路面標示の走路境界としては、例えば、車線境界線、センターラインが挙げられる。また道路構造物の走路境界としては、例えば、中央分離帯、ガードレール、縁石、トンネル又は高速道路の側壁が挙げられる。なお、走路境界が明確に特定できない地点(例えば、交差点内)に対して、地図情報3には予め走路境界が設定されている。予め設定された走路境界は、架空の走路境界であって実際に存在する路面標示または道路構造物ではない。
自車情報検出装置4は、自車両の状態に関する検知情報を取得する。自車両の状態とは、自車両の現在位置、速度、加速度、姿勢、車両性能を含む。これらは、自車両の車両コントローラ200から取得してもよいし、自車両の各センサから取得してもよい。自車情報検出装置4は、自車両のGPS(Global Positioning System)ユニット、ジャイロセンサ、オドメトリから取得した情報に基づいて自車両の現在位置を取得する。自車情報検出装置4は、自車両の車速センサから自車両の速度及び加速度を取得する。自車情報検出装置4は、自車両の慣性計測ユニット(IMU:Inertial Measurement Unit)から自車両の姿勢データを取得する。
環境認識装置5は、センサ1が取得した位置情報、自車両周囲の画像情報及び測距情報から得られた物体認識情報、及び地図情報に基づいて構築された環境に関する情報を認識する。環境認識装置5は、複数の情報を統合することにより、自車両の周囲の環境情報を生成する。物体認識装置6も、地図情報3を用いて、センサ1が取得した自車両周囲の画像情報及び測距情報を用いて、自車両周囲の物体の認識や動きを予測する。
車両コントローラ200は、電子コントロールユニット(ECU:Electronic Control Unit)などの車載コンピュータであり、車両の運転を律する駆動機構210を電子的に制御する。車両コントローラ200は、駆動機構210に含まれる駆動装置、制動装置、および操舵装置を制御して、目標車速及び目標走行経路に従って自車両を走行させる。車両コントローラ200には、運転制御装置100から、自車両の運転計画に基づく制御命令が入力される。自車両の目標車速、目標走行経路、及び運転計画については後述する。
駆動機構210には、走行駆動源である電動モータ及び/又は内燃機関、これら走行駆動源からの出力を駆動輪に伝達するドライブシャフトや自動変速機を含む動力伝達装置、動力伝達装置を制御する駆動装置、及び車輪を制動する制動装置などが含まれる。車両コントローラ200には、運転制御装置100から、目標車速に応じた制御信号が入力される。車両コントローラ200は、運転制御装置100から入力される制御信号に基づいてこれら駆動機構の各制御信号を生成し、車両の加減速を含む運転制御を実行する。駆動機構210に制御情報を送出することにより、車両の速度制御を自動的に行うことができる。
また車両コントローラ200は、地図情報3が記憶するレーン情報、環境認識装置5が認識した情報、及び物体認識装置6で取得した情報の内の何れか一つ以上を用いて、自車両が目標走行経路に対して所定の横位置を維持しながら走行するように操舵装置の制御を行う。操舵装置は、駆動機構210に含まれる装置である。操舵装置は、ステアリングアクチュエータを備える。ステアリングアクチュエータは、ステアリングのコラムシャフトに取り付けられるモータ等を含む。車両コントローラ200には、運転制御装置100から、目標走行経路に応じた制御信号が入力される。操舵装置は、車両コントローラ200から入力される制御信号に基づいて車両の操舵制御を実行する。操舵装置に制御情報を送出することにより、車両の操舵制御を自動的に行うことができる。
また、車両コントローラ200には、緊急回避システム300から、自車両の緊急回避させるための制御命令が入力される。具体的には、車両コントローラ200には、緊急回避システム300から、緊急目標車速及び緊急目標走行経路に応じた各制御信号が入力される。これらの制御信号は、運転制御装置100から入力される制御信号と制御の目的が異なっている。運転制御装置100から入力される制御信号は、後述する運転制御装置100が備える機能を実現するための制御信号である。これに対して、緊急回避システム300から入力される制御信号は、運転制御装置100が備える機能の種別にかかわらず、車両を障害物から緊急回避するための制御信号である。車両コントローラ200は、緊急回避システム300から入力される制御信号を、運転制御装置100から入力される制御信号よりも優先的に扱い、自車両を目標車速及び目標走行経路に従って自律的に走行させるよりも、自車両の緊急回避を優先させる。自車両の緊急回避とは、自車両が目標走行経路に沿って走行している間に、自車両と障害物とが干渉するリスクがあると予測され、目標走行経路に沿った自律的な走行では障害物と干渉するリスクを抑制することができないために、当該障害物を緊急的に回避することである。自車両の緊急回避は、後述する自車両の運転計画には予め含まれていない。緊急回避の対象となる障害物は、障害物の状態及び形態は関係なく、緊急回避の対象となる障害物としては、例えば、静止中の落下物、走行中の他車両などが挙げられる。また本実施形態では、自車両と障害物とが干渉した状態とは、自車両と障害物との間の距離が所定の限界閾値以下となった状態を示す。なお、限界閾値は予め設定された距離であって、緊急回避を要すると判定するための距離である。
緊急回避システム300は、センサ1及び/又は物体認識装置6から入力される情報に基づき、自車両が障害物と干渉するリスクがあるか否かを予測し、障害物と干渉するリスクがあると予測した場合、自車両を当該障害物から回避するための制御信号を、車両コントローラ200に出力する。緊急回避システム300は、障害物が自車両の走行予定領域に進入する恐れがあると予測し、かつ、目標走行経路に沿った自律的な走行では障害物を回避できないと判定した場合、自車両が障害物と干渉するリスクがあると予測する。走行予定領域とは、自車両が目標走行経路に沿って走行したときに自車両が通過する予定の領域であって、自車両の車幅に相当する幅を有する領域である。言い換えると、走行予定領域は、自車両の目標走行経路に沿って自車両の進行方向に延びる領域であって、自車両の車幅に相当する幅を有する領域である。なお、走行予定領域の幅は、自車両の車幅以上であればよい。例えば、走行予定領域の幅は、自車両の車幅よりも長く、自車両が走行する車線の車線幅(幅員)未満の範囲であってもよい。
緊急回避システム300は、センサ1及び/又は物体認識装置6からの情報に基づき、自車両に対する障害物の相対的な位置、障害物の移動速度、及び障害物の移動方向を認識するとともに、これらの情報に基づき障害物の移動軌跡を推定する。例えば、緊急回避システム300は、推定した障害物の移動軌跡が自車両の走行予定領域に進入し、かつ、目標走行経路に沿った自律的な走行ではこの障害を回避できないと判定した場合、自車両が障害物と干渉するリスクがあると予測する。また、静止する障害物(例えば、落下物や他車両)であっても、障害物の少なくとも一部が自車両の走行予定領域内に位置し、かつ、目標走行経路に沿った自律的な走行ではこの静止する障害物を回避できないと判定した場合、緊急回避システム300は、自車両が障害物と干渉するリスクがあると予測できる。なお、本実施形態において、緊急回避システム300で用いられる、緊急回避の要否の判定方法、緊急回避するための車両の制御方法やアルゴリズムは、上述の説明に限定されず、緊急回避システム300には、本願出願時に知られた緊急回避のための技術を適用できる。また、本実施形態に係る運転制御システム1000では、障害物を回避するための制御(回避制御)は3つある。一つ目の回避制御は、自車両が現在の目標走行経路で走行する時に通過可能な障害物に対して、自車両を回避させるための回避制御である。この回避制御は、自車両が現在の目標走行経路に沿って走行しても障害物を通過することはできるが、障害物を回避するために行われる制御である。二つ目の回避制御は、自車両が現在の目標走行経路で走行する時に通過不可能な障害物に対して、自車両を回避させるための回避制御である。この回避制御は、自車両が現在の目標走行経路に沿って走行した場合、障害物を通過することができないため、障害物を回避するために行われる制御である。上記2つの回避制御は、いずれも緊急回避の必要性がない場合に、運転制御装置100によって実行される。そして、三つ目の回避制御は、上記2つの回避制御では自車両を回避させることができない場合、すなわち、目標走行経路に沿って自律的に走行させても障害物を回避できない場合、障害物を緊急的に回避するために行われる制御である。この三つ目の回避制御は、緊急回避システム300によって実行される。
以下、本実施形態の運転制御装置100について説明する。運転制御装置100は、自車両の運転を制御することにより、自車両の走行を支援する制御を実行する。
図1に示すように、本実施形態の運転制御装置100は、プロセッサ10を備える。プロセッサ10は、自車両の運転制御を実行させるプログラムが格納されたROM(Read Only Memory)12と、このROM12に格納されたプログラムを実行することで、運転制御装置100として機能する動作回路としてのCPU(Central Processing Unit)11と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)13と、を備えるコンピュータである。本実施形態のプロセッサ10は、上記機能を実現するためのソフトウェアと、上述したハードウェアの協働により各機能を実行する。プロセッサ10は、通信装置111を備える出力装置110を備え、各種の出力又は入力の指令、情報の読み込み許可又は情報提供の指令を車両コントローラ200、緊急回避システム300、及び各構成2−6へ送出する。プロセッサ10は、センサ1、上述した各構成2−6、車両コントローラ200、及び緊急回避システム300と相互に情報の授受を行う。
プロセッサ10は、目的地設定機能120と、経路プランニング機能130と、運転計画機能140と、走行可能領域算出機能150と、経路生成機能160と、運転行動制御機能170とを備える。本実施形態のプロセッサ10は、上記各機能を実現する又は各処理を実行するためのソフトウェアと、上述したハードウェアとの協働により各機能を実行する。
プロセッサ10の各機能の実現による制御手順の内容を図2に基づいて説明する。図2は、本実施形態に係る運転制御システムの処理手順を説明するためのフローチャートである。図2を用いて、運転制御装置100が実行する運転制御処理の概要について説明する。
図2のステップS1において、プロセッサ10は、目的地設定機能120により、自車情報検出装置4の検出結果に基づいて自車両の現在位置を取得する処理を実行し、ステップS2において、自車両の目的地を設定する処理を実行する。目的地はユーザが入力したものであってもよいし、予測されたものであってもよい。ステップS3において、プロセッサ10は、経路プランニング機能130により、地図情報3を含む各種検出情報を取得する。ステップS4において、プロセッサ10は、経路プランニング機能130により、目的地設定機能120によって設定された目的地に対する走行レーン(又は走行経路)を設定する。プロセッサ10は、経路プランニング機能130により、地図情報3や自己位置情報に加え、環境認識装置5や物体認識装置6から得られた情報を用いて、走行レーンを設定する。プロセッサ10は、経路プランニング機能130により、自車両が走行する道路を設定するが、道路に限らず、道路内において自車両が走行する車線を設定する。ステップS5において、プロセッサ10は、運転計画機能140により、経路上の各地点における自車両の運転行動を計画する処理を実行する。運転計画は、各地点における進行(GO)、停止(No-GO)といった運転行動が規定される。例えば、交差点を右折する場合では、停止線の位置で停止するのか否かの判定や、対向車線の車両に対する進行判定を実行する。ステップS6において、ステップS5で計画された運転行動を実行するために、プロセッサ10は、走行可能領域算出機能150により、地図情報3や自己位置情報に加え、環境認識装置5や物体認識装置6から得られた情報を用いて、自車両の周囲で走行可能な領域(走行可能領域ともいう)を算出する処理を実行する。走行可能領域は、自車両が走行する車線内に限られず、自車両が走行する車線に隣接する車線(隣接車線ともいう)であってもよい。また走行可能領域は、自車両が走行可能な領域であればよく、道路のうち車線として認識されている領域以外であってもよい。
ステップS7において、プロセッサ10は、経路生成機能160により、自車両が走行する目標走行経路を生成する処理を実行する。本実施形態の目標走行経路の生成処理も、本ステップS7において実行される。それに加えて、プロセッサ10は、運転行動制御機能170により、目標走行経路に沿って走行するときの目標車速、及び目標車速のプロファイルを算出する。プロセッサ10は、目標車速に代えて、又はこれとともに、現在の車速に対しての目標減速度及び目標加速度、及びそれらのプロファイルを算出してもよい。なお、算出した目標車速を、目標走行経路の生成処理にフィードバックして、車両の挙動変化及び車両の乗員が違和感を覚える動き(挙動)を抑制するように、目標走行経路を生成するようにしてもよい。生成した目標走行経路を目標車速の算出処理にフィードバックして、車両の挙動変化及び車両の乗員が違和感を覚える動き(挙動)を抑制するように、目標車速を算出するようにしてもよい。本実施形態の目標走行経路の生成処理と目標車速の算出処理も、本ステップS7において実行される。
ステップS8において、プロセッサ10は、生成した目標走行経路を自車両に走行させる運転計画を立案する処理を実行する。またプロセッサ10は、算出した目標車速の速度で自車両を走行させる運転計画を立案する処理を実行する。本実施形態の目標車速の追従制御処理と目標走行経路の追従制御処理も、本ステップS8において実行される。そして、ステップS9において、プロセッサ10の出力装置110は、通信装置111を介して運転計画に基づく制御命令、制御指令値を車両コントローラ200に出力し、各種アクチュエータである駆動機構210を動作させる。
車両コントローラ200は、プロセッサ10からの指令値に基づいて、自車両の走行位置を制御する縦力及び横力を入力する。これらの入力に従い、自車両が目標とする目標走行経路に追従して自律的に走行するように、車体の挙動及び車輪の挙動が制御される。これらの制御に基づいて、車体の駆動機構210の駆動アクチュエータ、制動アクチュエータの少なくとも一方、必要に応じて操舵装置のステアリングアクチュエータが自律的に動作し、目的地に至る自律的な運転制御が実行される。もちろん、手動操作に基づく指令値に従い、駆動機構210を操作することもできる。
ここで、目標走行経路に従って走行する際に発生する制御遅れについて説明する。本実施形態では、制御遅れとは、操舵装置への制御入力(制御信号又は制御命令)に対して、操舵装置が制御入力に応じた操舵出力をするまでの遅延時間である。また目標走行経路を生成してから、目標走行経路に従って走行するための制御信号又は制御命令が操舵装置に入力するまでの時間は、操舵装置で発生する上述の制御遅れに対して微小な時間であるため、目標走行経路を生成してから、目標走行経路に沿って自車両が実際に走行する際の操舵出力までの遅延時間を制御遅れと称してもよい。制御遅れは、自律的に車両を走行させる操舵制御で発生する。このため、障害物を回避するための回避動作が運転制御装置によって実行される場面では、自車両から障害物までの距離と、回避するための目標走行経路によっては、制御遅れに起因する不要な操舵が発生する恐れがある。特に、障害物を回避対象として特定した時の自車両から障害物までの距離が短いほど、制御遅れに起因する不要な操舵が発生する傾向にある。回避対象として特定した時の自車両から障害物までの距離が短くなる原因としては、例えば、車両前方の障害物の挙動が突然変わること、撮像装置により撮像された撮像画像から障害物の種別を特定するまでに時間を要すること等が挙げられる。
次に、図3に示す具体例を用いて、制御遅れに起因して発生する不要な操舵について説明する。図3は、制御遅れに起因して発生する不要な操舵を説明するための図である。図3(A)〜図3(C)の順で時系列順に並んでおり、場面が変化している様子を示す。図3(A)〜図3(C)に示す自車両Vxには、本実施形態の運転制御装置100とは異なる運転制御装置(比較例に係る運転制御装置)が搭載されている。比較例に係る運転制御装置は、後述する運転制御装置100の機能を備えていない以外は、運転制御装置100と同様の機能を備えている。
図3(A)は、自車両Vxが目標走行経路R1に沿って走行している場面である。目標走行経路R1は、車線L2の中心線に沿う経路である。また図3(A)において、車線L1では、他車両V2が中心線付近を走行するとともに、他車両V2の前方には駐車車両V3が駐車している。車線L1は、自車両Vxの進行方向に対して車線L2の左側に隣接する車線である。図3(A)に示す場面では、比較例に係る運転制御装置は、自車両Vxが目標走行経路R1に沿って走行しても、他車両V2を回避する必要はないと判断し、自車両Vxを目標走行経路R1に沿って走行させる。
図3(B)は、図3(A)から所定時間経過した場面を示す。図3(B)に示す場面では、他車両V2は、車線L1と車線L2との車線境界線b12付近で、車線変更のために方向指示器を点灯させながら停止している。他車両V2は、自車両Vxに搭載されたセンサの検出範囲内に位置している。他車両V2の運転者は、駐車車両V3を回避して走行するために、車線変更可能なタイミングをうかがっている。自車両Vxは、他車両V2よりも後方に位置している。この場面において、比較例に係る運転制御装置は、センサによって他車両V2の存在を認識するとともに、目標走行経路R1に沿った走行を継続すると、自車両Vxは他車両V2を通過できるものの、自車両Vxから他車両V2の車幅方向の距離が所定の閾値未満になると予測する。所定の閾値とは、自車両の車速、自車両の走行場面、自車両が走行中の道路の種別等に応じて予め設定される距離である。比較例に係る運転制御装置は、他車両V2を自車両Vxが現在の目標走行経路R1で走行する時に通過可能な障害物であるものの、自車両Vxの走行に影響を与える可能性がある障害物として特定する。比較例に係る運転制御装置は、現在の目標走行経路R1を補正することで、他車両V2を回避するための目標走行経路R1aを生成する。目標走行経路R1aは、他車両V2に近付くにつれて自車両Vxから他車両V2まで車幅方向の距離が長くなり、自車両Vxが他車両V2の側方を通過する際に当該距離が最長となる経路である。比較例に係る運転制御装置は、目標走行経路R1aに沿って自車両Vxを走行させるように駆動機構を制御する。図3(B)に示す破線の楕円印は、目標走行経路R1aにおいて自車両Vxから他車両V2までの車幅方向の距離が最長となる部分を示す。
図3(C)は、図3(B)から所定時間経過した場面を示す。図3(C)は、自車両Vxが図3(B)に示す目標走行経路R1aに沿って走行した後の場面を示す。走行軌跡R1bは、自車両V1が実際に走行した後の軌跡である。比較例に係る運転制御装置は、既述の制御遅れを考慮していないため、図3(C)に示すように、自車両Vxは、他車両V2を通過した後に、他車両V2を回避しようと他車両V2から遠ざかろうとする挙動を示す。図3(C)に示す破線の楕円印は、実際の走行軌跡R1bにおいて自車両Vxから他車両V2までの車幅方向の距離が最長となる部分を示す。他車両V2を通過した後に、他車両V2を回避するための回避動作が行われるため、自車両Vxの乗員は、このような自車両Vxの回避動作を不要な操舵と感じる。本実施形態では、以下に説明する運転制御方法を用いて、自車両が障害物を回避するための回避動作において、制御遅れに起因する不要な操舵が発生するのを抑制する。
本実施形態の運転制御装置100は、目標走行経路を生成する処理を、自車両の走行に影響を与える可能性がある障害物に対して行う。本実施形態において、回避対象となる障害物は、静止している静止障害物又は動いている動的障害物である。また回避対象の障害物は、自車両の走行に影響を与える可能性がある障害物である。運転制御装置100が回避対象とする障害物と緊急回避システム300が回避対象とする障害物は異なっている。自車両の走行に影響を与える場面とは、自車両が現在の目標走行経路で走行した場合に、自車両と障害物は干渉しない、すなわち、自車両が障害物を通過可能であるが、自車両から障害物までの車幅方向の距離が所定の閾値未満となり、自車両の乗員が障害物の回避を望む場面である。つまり、本実施形態の運転制御装置100が回避対象とする障害物は、緊急回避の必要性がなく、自車両が現在の目標走行経路で走行した場合に通過可能であるが、自車両が回避すべき障害物である。なお、変形例の運転制御装置が回避対象とする障害物は、緊急回避の必要性はないものの、自車両が現在の目標走行経路で走行した場合に通過不可能であるため、自車両が回避すべき障害物である。変形例については後述する。
図4は、プロセッサ10の経路生成機能160及び運転行動制御機能170を示すブロック図である。図4を用いて、本実施形態のプロセッサ10が備える経路生成機能160の詳細について説明する。図4に示すように、プロセッサ10の経路生成機能160には、走路境界情報取得部161と、障害物情報取得部162と、回避量算出部163と、目標走行経路生成部164と、目標車速算出部165が含まれる。なお、本実施形態では、経路生成機能160として、5つの機能ブロックとして分けた上で、各機能ブロックの機能を説明するが、経路生成機能160は必ずしも5つのブロックで分ける必要なく、4つ以下の機能ブロック、あるいは、6つ以上の機能ブロックで分けてもよい。
走路境界情報取得部161は、自車両が走行する走路の走路境界に関する情報を取得する。例えば、走路境界情報取得部161は、地図情報3から、走路境界に関する情報を取得する。また例えば、走路境界情報取得部161は、センサ1及び/又は物体認識装置6から、走路境界に関する情報を取得する。走路境界に関する情報には、走路境界の種別又は形態の情報、自車両に対する走路境界の相対的な位置情報などが含まれる。走路境界に関する情報は、回避量算出部163、目標走行経路生成部164、及び目標車速算出部165に出力される。なお、走路境界情報取得部161は、走路境界に関する情報から、目標走行経路の生成に必要な情報を抽出し、抽出された走路境界に関する情報を、回避量算出部163、目標走行経路生成部164、及び目標車速算出部165に出力してもよい。
障害物情報取得部162は、自車両の周囲に存在する障害物に関する情報を取得する。例えば、障害物情報取得部162は、センサ1及び/又は物体認識装置6から、障害物に関する情報を取得する。障害物に関する情報には、障害物の種別又は形態の情報、自車両に対する障害物の相対的な位置情報、障害物の移動速度及び移動方向の情報などが含まれる。
また障害物情報取得部162は、自車両が現在の目標走行経路で走行する時に通過可能な障害物を特定する。障害物情報取得部162は、現在の自車両の目標走行経路、走路境界の位置情報、及び障害物の位置情報に基づき、自車両が現在の目標走行経路に沿って走行して障害物を通過することが可能か否かを判定する。例えば、障害物情報取得部162は、現在の目標走行経路に対する障害物の位置から、障害物が現在の目標走行経路から所定距離だけ外側に位置するか否かを判定する。障害物情報取得部162は、障害物が現在の目標走行経路から所定距離範囲よりも離れて位置する場合、自車両が現在の目標走行経路で走行した時に障害物を通過可能と判定する。一方、障害物情報取得部162は、障害物が現在の目標走行経路から所定距離範囲内に位置し、かつ、緊急回避が必要な場合、緊急回避システム300に障害物の情報を出力する。そして、プロセッサ10は、自車両の緊急回避が必要な状況と判定し、目標走行経路に沿った自車両の運転制御よりも、緊急回避システム300による緊急回避のための制御を優先して実行する。所定距離とは、自車両が障害物を通過可能か否かを判定するための距離であって、予め定められた距離である。なお、現在の目標走行経路において、障害物の情報を考慮しているか否かは特に限定されない。すなわち、現在の目標走行経路とは、障害物の情報を考慮した走行経路であってもよいし、障害物の情報を考慮せず、車線や地図情報に従って走行することを想定した走行経路であってもよい。また、本実施形態では、緊急回避システム300を例に挙げて説明するが、運転制御システム1000に緊急停止システム(図示しない)が含まれる場合、障害物情報取得部162は、障害物が現在の目標走行経路から所定距離範囲内に位置し、かつ、緊急停止が必要な場合、緊急停止システムに障害物の情報を出力する。そして、プロセッサ10は、自車両の緊急停止が必要な状況と判定し、目標走行経路に沿った自車両の運転制御よりも、緊急停止システムによる緊急停止のための制御を優先して実行してもよい。
障害物情報取得部162は、これらの判定をセンサ1により検出された障害物ごとに行うことで、センサ1により検出された一又は複数の障害物のうち、自車両が現在の目標走行経路で走行した時に通過可能な一又は複数の障害物を特定する。障害物に関する情報は、回避量算出部163、目標走行経路生成部164、及び目標車速算出部165に出力される。
回避量算出部163は、自車両から障害物までの自車両の進行方向の距離である第1距離を算出する。回避量算出部163は、算出した第1距離に応じて、自車両が障害物を回避するために必要な回避量を算出する。本実施形態では、障害物情報取得部162によって障害物が特定された時の自車両から障害物までの距離を第1距離とする。言い換えると、第1距離とは、センサ1により障害物を初めて検出した時の自車両から障害物までの距離である。自車両のどの部分から障害物のどの部分までの距離を第1距離として規定するかは特に限定されないが、例えば、回避量算出部163は、自車両の前端(起点)から障害物の後端(終点)までの距離であって、自車両の進行方向に沿う距離を第1距離として算出する。なお、第1距離は、自車両の前端ではなく自車両の他の部分を起点とした距離でもよいし、障害物の後端ではなく他車両の他の部分を終点とした距離でもよい。
図5は、第1距離の一例を示す図である。図5は、図3(B)に示す場面に対応する。図5に示す場面では、図3(B)に示す場面と異なり、自車両V1には、本実施形態の運転制御装置100が搭載されている。それ以外の説明については、図3(B)での説明を援用する。
図5において、運転制御装置100は、障害物情報取得部162により、車線L1に静止する他車両V2を回避対象である障害物として特定している。図5では、回避量算出部163は、自車両V1の前端から他車両V2の後端までの距離であって、自車両V1の進行方向に沿う距離を第1距離d1として算出する。なお、図5では、車線L1及び車線L2が直進路であるため、自車両V1の前端から他車両V2の後端までの距離は直線形状の長さで示されているが、第1距離は、車線L1及び車線L2の道路形状が反映される。例えば、車線L1及び車線L2が曲線形状の場合、自車両V1の前端から他車両V2の後端までの距離は車線L1及び車線L2の曲線に沿った長さで示される。
回避量算出部163は、算出した第1距離に応じて、障害物の回避に要する回避量を算出する。本実施形態では、回避量の表し方は特に限定されない。例えば、操舵量又は操舵角で回避量を表してもよいし、また自車両から障害物までの自車両の車幅方向の距離で回避量を表してもよい。以降では、説明の便宜上、回避量の大小関係を表す際に、「回避量が大きい」と表現するが、「回避量が大きい」とは、障害物を回避するのに要する操舵量又は操舵角が大きい、もしくは障害物を回避する際の自車両から障害物までの車幅方向の距離が長いことを示す。回避量算出部163により算出された回避量は、目標走行経路生成部164に出力される。
また本実施形態では、回避量算出部163は、回避量の算出にあたり、上限値及び下限値を設定する。例えば、回避量算出部163は、自車両が目標走行経路を走行する際の自車両の横加速度が横加速度制限を超えないように、回避量を算出する。横加速度制限は、車両が走行した際に車幅方向に発生する慣性力に基づき規定される。横加速度制限とは、車幅方向の慣性力が最大値となる際の横加速度であって、横加速度の限界値である。慣性力の最大値は、例えば、車両の乗員が不快に感じない慣性力の範囲のうちの最大の慣性力で規定される。つまり、横加速度制限とは、車両の乗員が不快に感じない横加速度の範囲のうちの最大値で規定される。回避量算出部163は、例えば、横加速度制限に対応する回避量を、回避量の上限値に設定する。また回避量算出部163は、例えば、車両の乗員が不快に感じない横加速度の範囲のうちの最小の横加速度に対応する回避量を、回避量の下限値に設定する。回避量の上限値及び下限値は、ROM等の記憶装置に予め記憶されている。なお、下限値は、ゼロ以上の値であればよい。
さらに、本実施形態では、回避量算出部163は、制御遅れに相当する距離(プレビュー距離ともいう)を、回避量を算出するための閾値として設定する。プレビュー距離は、自車両の車速に制御遅れを示す遅延時間を乗じることで算出される距離である。制御遅れを示す遅延時間とは、障害物を回避する際の制御入力に対して、操舵量又は操舵角の電気信号が出力されるまでの遅延時間である。すなわち、プレビュー距離とは、制御遅れを示す遅延時間を距離に換算したものである。制御遅れを示す遅延時間は、ROM等の記憶装置に予め記憶されている。制御遅れを示す遅延時間は、一定の遅延時間であり、プレビュー距離は、自車両の車速に応じて変わる距離である。
図6を用いて、回避量の算出方法の一例について説明する。図6は、回避量の算出方法の一例を説明するための図である。図6(A)は、プレビュー距離を説明するための図である。図6(B)は、プレビュー距離を用いた回避量の算出方法の一例である。
図6(A)において、回避量算出部163は、制御遅れを示す遅延時間に自車両V1の車速を乗算することで、プレビュー距離dpを算出する。自車両V1の車速は、障害物を特定した時の車速である。回避量算出部163は、現在の目標走行経路R1上において、自車両V1の前端から自車両V1の進行方向に沿ってプレビュー距離dpだけ先の地点をプレビュー地点Pとして特定する。回避量算出部163は、障害物である他車両V2がプレビュー地点Pよりも手前に位置するか否かに応じて、他車両V2を回避するために要する回避量を算出する。
図6(B)を用いて、回避量の算出方法の一例について説明する。図6(B)は、第1距離と回避量の関係性の一例を示す図である。図6(B)に示すグラフにおいて、横軸は障害物までの距離(第1距離)を示し、縦軸は回避量を示す。図6(B)に示すように、回避量算出部163は、第1距離d1とプレビュー距離dpを比較し、第1距離d1がプレビュー距離dpよりも短い場合、第1距離d1がプレビュー距離dpよりも長い場合に比べて回避量を小さく算出する。また図6(B)の例では、回避量算出部163は、第1距離d1がプレビュー距離dpよりも短い場合、第1距離d1の値にかかわらず、回避量を下限値に設定する。一方、回避量算出部163は、第1距離d1がプレビュー距離dpよりも長い場合、第1距離d1がプレビュー距離dpよりも短い場合に比べて回避量を大きく算出する。この際に、回避量算出部163は、上限値を超えない範囲で、第1距離d1が長いほど回避量を大きく算出する。回避量算出部163は、第1距離d1が上限値を超えるほどの値の場合、回避量を上限値に設定する。
このように、本実施形態では、障害物を特定した時に障害物が自車両に対してプレビュー距離よりも近くに位置する場合、回避量は下限値に設定される。また障害物が自車両に対してプレビュー距離よりも遠くに位置する場合、回避量は第1距離の長さと比例する値又は上限値に設定される。なお、図6(B)では、第1距離d1が長くなるにつれて回避量が大きくなる範囲について、第1距離d1と回避量が正比例の関係で示されているが、第1距離d1が長いほど回避量が大きくなる関係を満たせば、正比例であることに限定されない。
ここで、プレビュー距離と障害物との関係について説明する。プレビュー距離は、既述のとおり、制御遅れを距離に換算したものである。障害物が自車両に対してプレビュー距離よりも近くに位置し、この障害物を回避する場面を考える。この場面において、自車両が障害物を迂回する目標走行経路に沿って走行しても、制御遅れによって障害物の位置よりも遅れて自車両の回避動作が行われる(図3(C)参照)。本実施形態では、このような場面では、例えば、図6(B)に示すように、回避量は回避量算出部163によって下限値に設定されるため、制御遅れによって障害物の位置よりも遅れて自車両の回避動作が行われるのを抑制できる。また仮に障害物の位置よりも遅れて自車両の回避動作が行われたとしても、下限値の回避量に応じて車幅方向の移動距離が短くなるため、自車両の乗員が当該回避動作を不要な操舵と感じる可能性を軽減することができる。
再び図4に戻り、プロセッサ10の経路生成機能16の詳細について説明する。目標走行経路生成部164は、回避量算出部163により算出された回避量に応じて、自車両の目標走行経路を生成する。本実施形態では、目標走行経路生成部164は、障害物が特定される前の目標走行経路(現在の目標走行経路)を回避量に応じて補正することで、自車両が障害物を回避するための目標走行経路を生成する。目標走行経路生成部164により生成された目標走行経路は、目標車速算出部165、及び目標走行経路追従制御部172に出力される。
目標走行経路生成部164は、回避量が大きいほど、自車両から障害物までの車幅方向の距離が長くなるように、現在の目標走行経路を補正する。これにより、回避量が大きいほど、自車両が障害物を追い越すときの自車両と障害物との間のマージンを大きく確保することができる。なお、目標走行経路生成部164は、回避量が大きいほど、障害物を回避するための自車両の操舵量又は操舵角が大きくなるように、現在の目標走行経路を補正してもよい。
図7は、回避量に応じた目標走行経路の例を説明するための図である。図7(A)は、目標走行経路生成部により生成された目標走行経路の一例である。図7(B)は、目標走行経路生成部により生成された目標走行経路の他の例である。
図7(A)に示すように、例えば、目標走行経路生成部164は、自車両V1の進行方向に対して左側の走路境界Aと、自車両V1の進行方向に対して右側の走路境界Bを設定する。走路境界Aは、車線境界線b12と他車両V2とで構成される走路境界であり、走路境界Bは、車線境界線b23のみで構成される走路境界である。目標走行経路生成部164は、走路境界A及び走路境界Bで形成される領域(走路境界Aと走路境界Bの間に位置する領域)を走行可能領域として設定する。目標走行経路生成部164は、設定した走行可能領域において、単位長さ当たりの曲率の変化率が所定の範囲内となるように、走路境界Aと走路境界Bの中心線を、目標走行経路R1cとして生成する。図7(A)の例の場合、走路境界Aは、他車両V2の存在によって、車線境界線b12よりも自車両が走行する車線L2側に局所的に膨らむため、他車両V2を回避するための目標走行経路として、目標走行経路R1cを生成することができる。所定の範囲とは、自車両V1の乗員が違和感を覚えないような曲率変化の範囲であって、予め設定された範囲である。自車両V1が目標走行経路R1cに沿って走行した場合、目標走行経路R1では自車両V1から他車両V2までの車幅方向の距離が最短になる地点であっても、自車両V1は、他車両V2との間のマージンを大きく確保した状態で、他車両V2の側方を通過することができる。その後、自車両V1は、目標走行経路R1cに沿って走行することで、目標走行経路R1上に復帰することができる。なお、走行可能領域は自車両が走行する車線内に限られず、交通法規を遵守したうえで、走路境界は、自車両が走行する車線に隣接する車線内に設定されてもよい。図7(A)の例において、障害物である他車両V2が存在しない側の走路境界Bは、車線L3内に設定されてもよい。また図7(A)に示す矢印の長さは回避量に応じた長さであって、回避量が大きいほど、矢印は長くなる。
また図7(B)に示すように、例えば、目標走行経路生成部164は、目標走行経路R1に対して、回避量に応じた距離だけ障害物が存在しない側にオフセットした経路を、目標走行経路R1dとして生成してもよい。この場合、生成された目標走行経路R1dは、現在の目標走行経路R1と同じ形状になる。目標走行経路R1dに沿って自車両V1が走行した場合、自車両V1は、他車両V2よりも手前の地点で予め他車両V2との間のマージンを大きく確保し、その状態を保持しながら他車両V2の側方を通過することができる。なお図7(B)に示す矢印の長さは回避量に応じた長さであって、回避量が大きいほど、矢印は長くなる。
再び図4に戻り、プロセッサ10の経路生成機能16の詳細について説明する。目標車速算出部165は、第1距離に応じて自車両の目標車速を算出する。目標車速算出部165は、第1距離が短いほど、障害物に接近する際の目標車速又は障害物の側方を通過する際の目標車速を低く算出する。言い換えると、目標車速算出部165は、制御遅れに起因する不要な操舵が発生する可能性が高いほど、自車両の目標車速の減速度を大きくする。これにより、障害物が特定された時の自車両から障害物までの距離が短いほど、目標車速の減速度が大きくなり、自車両が障害物と干渉するリスクを低減させることができる。
また目標車速算出部165は、障害物と目標走行経路上の各地点との位置関係に応じて、目標走行経路上の各地点における目標車速を算出する。例えば、目標車速算出部165は、目標走行経路上の各地点から障害物までの距離(第2距離)をそれぞれ算出する。目標車速算出部165は、算出された複数の第2距離それぞれについて、第2距離が短いほど目標車速を低く算出する。これにより、目標走行経路上の各地点における目標車速が算出される。そして、目標車速算出部165は、目標走行経路上の地点間については、単位時間当たりの目標車速の変化率が所定の範囲内となるように目標車速を補間する。これにより、目標車速の連続値である目標車速のプロファイルが生成される。目標車速算出部165により算出された目標車速のプロファイルは、目標車速追従制御部171に出力される。なお、所定の範囲とは、自車両V1の乗員が違和感を覚えないような目標車速の変化の範囲であって、予め設定された範囲である。
図8は、目標車速算出部165により算出された目標車速のプロファイルの一例である。図8に示すグラフにおいて、横軸は時間を示し、縦軸は目標車速を示す。図8に示す目標車速プロファイルの一例は、障害物を特定した時に目標車速算出部165により算出された目標車速のプロファイルである。図8において、時間t0は、運転制御装置100が回避対象である障害物を特定した時間を示し、時間t1は、自車両から障害物までの車幅方向の距離が最短と予測される時間(自車両が障害物の側方に位置すると予測される時間)を示す。図8の例に示すように、目標車速のプロファイルは、障害物を特定した時点から先の将来の目標車速の連続値を示す。
図8に示す目標車速のプロファイルの特性について説明する。目標車速は、所定の時間だけ制限車速を維持し、その後、自車両が障害物に接近するにつれて低くなる(図8に示す時間t0〜時間t1の期間)。目標車速は、自車両が障害物の側方を通過する地点(図8に示す時間t1)で最小値となる。制限車速から最小値に至るまでの目標車速の減速度(目標車速の傾き)と目標車速の最小値は、目標車速算出部165によって、第1距離に応じて算出される。目標車速算出部165は、第1距離が短いほど、目標車速の減速度を大きくし、目標車速の最小値を小さくする。自車両が障害物の側方を通過した後(図8に示す時間t1以後の期間)、自車両が障害物から遠ざかるほど、目標車速は高くなる。なお、目標車速算出部165は、最小値到達後の目標車速の加速度(目標車速の傾き)については、障害物を特定した時の車速及び第1距離の長さに応じて変更することができる。
次に図4に戻り、本実施形態のプロセッサ10が備える運転行動制御機能170の詳細について説明する。図4に示すように、プロセッサ10の運転行動制御機能170には、目標車速追従制御部171と、目標走行経路追従制御部172が含まれる。なお、本実施形態では、運転行動制御機能170として、2つの機能ブロックとして分けた上で、各機能ブロックの機能を説明するが、運転行動制御機能170は必ずしも2つのブロックで分ける必要なく、1つの機能ブロック、あるいは、3つ以上の機能ブロックで分けてもよい。また、説明の便宜上、プロセッサ10の機能と図4に示すブロック図の関係の一例として、目標車速追従制御部171と目標走行経路追従制御部172が運転行動制御機能170に属するものとして説明するが、プロセッサ10の機能とブロック図の関係は特に限定されず、目標車速追従制御部171と目標走行経路追従制御部172は経路生成機能160に属していてもよい。
目標車速追従制御部171は、目標車速プロファイルに従って、駆動機構210を制御するための制御用の目標車速を設定する。そして、目標車速追従制御部171は、設定した制御用の目標車速に関する制御信号を車両コントローラ200に出力する。これにより、車両コントローラ200は、目標車速に従うように駆動機構210に含まれる駆動装置又は制動装置を制御するため、自車両は目標車速の速度で移動することができる。
図9は、制御用の目標車速を設定する方法について説明するための図である。図9に示す目標車速のプロファイルは、図8に示す目標車速のプロファイルに対応するため、図8における説明を援用する。図9に示すように、目標車速追従制御部171は、目標車速プロファイルにおいて、障害物を特定した時間t0から所定時間先である時間tpでの目標車速を、制御用の目標車速として設定する。時間t0から時間tpまでの時間は、プレビュー時間とも称される。プレビュー時間は、目標車速の追従制御において制御入力に対する車速出力の遅延時間に相当する。プレビュー時間は、ROM等の記憶装置に予め記憶されている。またプレビュー時間は、一定の時間である。目標車速追従制御部171は、プレビュー時間先の目標車速を制御用の目標車速として設定し、以降、時間の経過とともに目標車速のプロファイルに沿って制御用の目標車速を更新する。このように、プレビュー時間先の目標車速を制御用の目標車速として設定することで、目標車速の追従制御における制御遅れを考慮した車速制御が可能となり、自車両の車速が目標車速のプロファイルから外れることを防ぐことができる。言い換えると、制御遅れを加味したうえで、自車両の車速を目標車速のプロファイルに従って追従させることができる。
再び図4に戻り、本実施形態のプロセッサ10が備える運転行動制御機能170の詳細について説明する。目標走行経路追従制御部172は、目標走行経路に従って、駆動機構210を制御するための制御信号を生成し、生成した制御信号を車両コントローラ200に出力する。これにより、車両コントローラ200は、目標走行経路に従うように駆動機構210に含まれる操舵装置を制御するため、自車両は、目標走行経路に沿って移動することができる。その結果、自車両は、障害物を回避することができる。
図10は、プロセッサ10により実行される運転制御の制御手順を示すフローチャートである。本制御手順は、図2のステップS6に続けて実行される。
ステップS101では、プロセッサ10は、走路境界の情報を取得する。ここで取得する走路境界の情報は、地図情報3として予め記憶されている走路境界の情報と、センサ1によってリアルタイムに検出された走路境界の情報とを含む。またプロセッサ10は、自車両の進行方向に対して左右それぞれに位置する走路境界の情報を取得する。
ステップS102では、プロセッサ10は、障害物に関する情報を取得する。ここで取得する障害物の情報は、自車両の走行に影響を与える可能性がある障害物の情報である。障害物の情報には、例えば、障害物の位置情報、障害物の種別情報、障害物の移動の有無の情報が含まれる。
ステップS103では、プロセッサ10は、ステップS101及びステップS102で取得した情報に基づいて、自車両の走行に影響を与える可能性がある障害物のうち、自車両が現在の目標走行経路で走行した時に通過可能な一又は複数の障害物を特定する。
ステップS104では、プロセッサ10は、自車両とステップS103で特定した障害物の間の距離に基づいて、自車両が障害物を回避するために必要な回避量を算出する。本実施形態では、プロセッサ10は、障害物を特定した時の自車両から障害物の距離であって、自車両の進行方向に沿う距離を第1距離として算出する。そして、プロセッサ10は、第1距離とプレビュー距離とを比較し、例えば、第1距離がプレビュー距離よりも短い場合、予め設定した下限値を回避量として算出する。またプロセッサ10は、例えば、第1距離がプレビュー距離よりも長い場合、予め設定した上限値を超えない範囲で、第1距離が長いほど回避量を大きく算出する。さらに、プロセッサ10は、上限値を超えるほど第1距離が長い場合には、上限値を回避量として算出する。第1距離と回避量との関係性の一例としては、図6(B)に示す関係性が挙げられる。
ステップS105では、プロセッサ10は、ステップS104で算出された回避量に応じて、障害物を特定する前の目標走行経路(現在の目標走行経路)を補正することで、障害物を回避するための目標走行経路を生成する。プロセッサ10は、回避量が大きいほど、自車両から障害物までの車幅方向の距離が長くなるように、現在の目標走行経路を補正する。補正後の目標走行経路の一例としては、例えば、図7(A)に示す目標走行経路R1cや図7(B)に示す目標走行経路R1dが挙げられる。
ステップS106では、プロセッサ10は、ステップS104で算出された第1距離に応じて目標車速を算出する。プロセッサ10は、第1距離が短いほど、障害物に接近するまでの目標車速又は障害物の側方を通過する際の目標車速を低く算出する。例えば、プロセッサ10は、第1距離が短いほど、現在の自車両の車速からの減速度を大きくする。これにより、自車両が障害物の側方を通過する際の目標車速は、第1距離が短いほど低く算出される。
またステップS106では、ステップS105で生成された目標走行経路上の各地点における目標車速を算出するとともに、各地点間の目標車速を補間することで、障害物を特定した時点から先の目標車速のプロファイルを生成する。例えば、プロセッサ10は、補正後の目標走行経路上の各地点から障害物までの第2距離をそれぞれ算出し、第2距離が短いほど、目標車速を低くする。目標車速のプロファイルの一例としては、図8に示す目標車速のプロファイルが挙げられる。
ステップS108では、プロセッサ10は、ステップS105で生成された目標走行経路とステップS106で算出された目標車速に基づき、目標車速の追従制御と目標走行経路の追従制御を実行する。目標車速の追従制御において、プロセッサ10は、目標車速のプロファイルにおいてプレビュー時間先の目標車速を制御用の目標車速に設定し、制御用の目標車速に追従するための制御信号を生成する。制御用の目標車速の設定方法の一例としては、図9に示す制御用の目標車速が挙げられる。またプロセッサ10は、補正後の目標走行経路を追従するための制御信号を生成する。
ステップS108での処理が終了すると、図2に示すステップS9に進み、制御用の目標車速に追従するための制御信号及び補正後の目標走行経路に追従するための制御信号は、通信装置111を介して、車両コントローラ200に出力される。車両コントローラ200は、入力された制御信号に従って駆動機構210を制御することで、自車両は、制御用の目標車速の速度で補正後の目標走行経路に沿って走行し、障害物を回避することができる。
以上のように、本実施形態に係る運転制御装置100で使用される運転制御方法では、自車両の周囲の状況を検出するセンサ1から情報を取得し、センサ1から取得した情報に基づき、自車両が現在の目標走行経路で走行する時に通過可能な障害物を特定し、障害物を特定した時の自車両から障害物までの第1距離を算出し、第1距離に応じて、自車両が障害物を回避するために必要な回避量を算出する。そして、算出された回避量に応じて、自車両の目標走行経路を補正し、補正した目標走行経路に基づいて、自車両の走行を制御する。これにより、例えば、障害物が自車両からプレビュー距離の範囲内に位置していても、回避量を小さく算出することができる。そして、算出された回避量に応じて目標走行経路を補正し、補正された目標走行経路に沿って自車両を走行させることができるため、障害物を回避するための自車両の回避動作において、制御遅れに起因する不要な操舵が発生するのを抑制できる。その結果、不要な操舵によって自車両の乗員に違和感を与える機会を軽減できる。
また、本実施形態では、プロセッサ10は、第1距離が長いほど回避量を大きく算出する。これにより、障害物が自車両から十分に離れており、制御遅れに起因する不要な操舵が発生する可能性が低い場面では、回避量を大きく算出し、自車両が障害物を追い越すときの自車両と障害物との間のマージンを大きく確保することができる。反対に、障害物が自車両からある程度近い範囲に位置するため、制御遅れに起因する不要な操舵が発生する可能性が高い場面では、回避量を小さく算出し、不要な操舵が発生するのを抑制できる。
さらに、本実施形態では、プロセッサ10は、第1距離がプレビュー距離よりも長い場合、第1距離がプレビュー距離よりも短い場合に比べて回避量を大きく算出する。これにより、不要な操舵が発生する可能性が低い場面では、自車両が障害物を追い越すときの自車両から障害物までの車幅方向の距離を大きく確保することができる。
加えて、本実施形態では、プロセッサ10は、第1距離がプレビュー距離よりも短い場合、第1距離がプレビュー距離よりも長い場合に比べて回避量を小さく算出する。これにより、回避動作によって不要な操舵が発生する可能性が高い場面において、回避動作によって不要な操舵が発生する可能性が低い場面よりも、回避量が小さく算出されるため、障害物を回避するための自車両の回避動作が不要な操舵となるのを抑制できる。
また、本実施形態では、プロセッサ10は、第1距離がプレビュー距離よりも短い場合、第1距離の長さにかかわらず回避量を下限値にする。これにより、回避動作によって不要な操舵が発生する可能性が高い場面において、回避量が小さく算出されるため、不要な操舵が発生するのを抑制できる。
さらに、本実施形態では、プレビュー距離は、目標走行経路を生成してから、自車両が目標走行経路に沿って実際に走行する際の操舵出力までの制御遅れに相当する距離である。これにより、第1距離に応じた回避量を算出する際に、プロセッサ10は、不要な操舵が発生する可能性が高い範囲を、プレビュー距離によって把握することができる。その結果、障害物が自車両からプレビュー距離の範囲内に位置する場合、例えば、回避量を下限値に設定することで、障害物の位置よりも遅れて回避動作が行われることを抑制できる。また仮に障害物の位置よりも遅れて回避動作が行われたとしても、車幅方向の移動距離を短くすることができ、不要な操舵が発生するのを抑制できる。
加えて、本実施形態では、プロセッサ10は、自車両が目標走行経路を走行する際の自車両の横加速度が横加速度制限を超えないように、回避量を算出する。これにより、横加速度制限を超えずに自車両が走行可能な目標走行経路に補正することができる。言い換えれば、横加速度制限を超えて自車両が走行する目標走行経路が生成されることを抑制できる。その結果、そのような目標走行経路に沿って走行した際に発生する不要な操舵を抑制できる。
また、本実施形態では、プロセッサ10は、第1距離に応じて自車両の目標車速を算出し、自車両が目標車速で走行するように自車両の運転を制御する。これにより、例えば、自車両からある程度近い範囲で障害物を特定し、回避動作において不要な操舵が発生する可能性が高い場面で、目標車速の減速度を大きくすることができ、自車両が障害物と干渉するリスクを低減させることができる。
さらに、本実施形態では、プロセッサ10は、障害物と補正後の目標走行経路上の各地点との位置関係に応じて、補正後の目標走行経路上の各地点における目標車速を算出する。回避量の大きさに応じて補正された目標走行経路から、目標車速を算出するため、目標車速にも回避量の大きさを反映させることができる。その結果、回避量の大きさに応じて自車両の車速を制御することができる。
加えて、本実施形態では、プロセッサ10は、補正後の目標走行経路上の各地点から障害物までの第2距離をそれぞれ算出し、第2距離が短いほど、目標車速を低く算出する。これにより、自車両が障害物に接近するにつれて、目標車速が低くなるため、自車両は障害物に対して速度を下げながら接近することができる。その結果、障害物に対する走行によって自車両の乗員に不安を与える機会を軽減できる。
また、本実施形態では、プロセッサ10は、自車両の緊急回避が必要な状況と判定した場合、目標走行経路に沿った自車両の運転制御よりも、緊急回避システム300による自車両の緊急回避のための制御を優先して実行する。これにより、自車両と障害物が干渉するリスクがあるため、障害物を緊急回避する必要がある場面では、緊急回避システム300による運転制御によって、障害物を回避することができる。一方、自車両が現在の目標走行経路に沿って走行しても、自車両が障害物を通過可能なものの、自車両が障害物を回避すべき場面では、回避動作において、不要な操舵が発生するのを抑制できる。
さらに、本実施形態では、プロセッサ10は、自車両の緊急停止が必要な状況と判定した場合、目標走行経路に沿った自車両の運転制御よりも、緊急停止システムによる自車両の緊急停止のための制御を優先して実行する。これにより、自車両と障害物が干渉するリスクがあるため、緊急停止する必要がある場面では、緊急停止システムによる運転制御によって、障害物を回避することができる。
上述の実施形態では、自車両の回避対象として、自車両が現在の目標走行経路で走行した時に障害物を通過可能な障害物を例に挙げて説明したが、自車両が現在の目標走行経路で走行した時に障害物を通過不可能な障害物であっても、緊急回避及び緊急停止の必要がない場合、この障害物を回避するための回避制御を実行してもよい。
次に、変形例に係る運転制御装置について説明する。変形例に係る運転制御装置は、障害物の特定方法が上述の実施形態に係る運転制御装置100とは異なる以外は、同様の機能を有しているため、以降では異なる点について説明する。運転制御装置100と同じ機能については、既述の説明を援用する。
変形例に係るプロセッサは、自車両が現在の目標走行経路を走行する時に通過不可能な障害物を特定する。例えば、変形例に係るプロセッサは、緊急回避の必要性はないものの、障害物が現在の目標走行経路から所定の範囲内に位置する場合、この障害物を通過不可能な障害物として特定する。そして、変形例に係るプロセッサは、既述の回避量算出処理を実行して、通過不可能な障害物を回避するための回避量を算出する。また変形例に係るプロセッサは、既述の目標走行経路の生成処理を実行し、回避量に応じて、通過不可能な障害物を回避するように、自車両の目標走行経路を補正する。自車両を自律的に走行させる運転制御を実行中に、現在の目標走行経路では通過不可能な障害物を回避しなければならない場面においても、回避制御において、不要な操舵が発生するのを抑制できる。
なお、以上に説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
例えば、上述の実施形態では、プロセッサ10が実行するプログラムについて、ROM12に格納されたプログラムを例に挙げて説明したが、プログラムの格納場所は、運転制御装置100の外部であってもよい。例えば、コンピュータが読み取り可能な記録媒体にプロセッサ10が実行するプログラムが格納されていてもよい。この場合、当該記録媒体と運転制御装置100を何らかの方法・規格を用いて接続することで、プロセッサ10は、記録媒体に記録されたプログラムを実行することができる。
また例えば、上述の実施形態では、運転制御装置100のプロセッサ10が実現する機能として、目的地設定機能120、経路プランニング機能130、運転計画機能140、走行可能領域算出機能150、経路生成機能160、運転行動制御機能170を挙げて説明したが、本実施形態の運転制御装置100は、少なくとも経路生成機能160及び運転行動制御機能170を備えていればよい。例えば、運転制御装置100とは別の運転制御装置が目的地設定機能120、経路プランニング機能130、運転計画機能140、走行可能領域算出機能150を実行し、プロセッサ10は、経路生成機能160及び運転行動制御機能170を実行してもよい。
また例えば、図4では、走路境界情報取得部161のように、各機能を「〜部」と表現する構成を例に挙げて説明したが、走路境界情報取得機能161のように、各機能を「〜機能」と表現してもよい。
また例えば、上述の実施形態では、プロセッサ10は、プレビュー距離を設定し、第1距離とプレビュー距離とを比較することで回避量を算出する構成を例に挙げて説明したが、プレビュー距離を設定せずに回避量を算出してもよい。例えば、プロセッサ10は、上限値及び下限値で規定される範囲で、第1距離が長いほど回避量を大きく算出してもよい。この場合において、第1距離に対する回避量の変化の割合は特に限定されない。例えば、プロセッサ10は、第1距離と回避量の関係を正比例として、回避量を算出してもよい。また、例えば、プロセッサ10は、第1距離と回避量の関係を示す所定の数式を用いて、回避量を算出してもよい。
また例えば、上述の実施形態では、回避量に応じて補正した目標走行経路の例として、図7(A)、(B)に示す2種類を挙げたが、回避量に応じて目標走行経路を補正する方法はこれらに限定されず、他の補正方法により回避量に応じて、目標走行経路を補正してもよい。例えば、プロセッサ10は、自車両が障害物の側方を通過する際の車幅方向の位置(回避動作における横位置)を、回避量に応じて一又は複数箇所設定し、少なくとも設定した横位置を通過する軌跡を補正後の目標走行経路としてもよい。この場合、プロセッサ10は、回避量が大きいほど自車両から障害物までの車幅方向の距離が長くなるように回避動作における横位置を設定する。
また例えば、上述の実施形態では、図10に示す運転制御の制御手順において、ステップS101(走路境界情報を取得)、ステップS102(障害物情報を取得)の順で各情報を取得する構成を例に挙げて説明したが、障害物情報の取得を走路境界情報の取得よりも先に行ってもよい。