JP2020198873A - もち麦配合成形炊飯食品およびその製造方法 - Google Patents

もち麦配合成形炊飯食品およびその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2020198873A
JP2020198873A JP2020070513A JP2020070513A JP2020198873A JP 2020198873 A JP2020198873 A JP 2020198873A JP 2020070513 A JP2020070513 A JP 2020070513A JP 2020070513 A JP2020070513 A JP 2020070513A JP 2020198873 A JP2020198873 A JP 2020198873A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
rice
cooked
molded
koji
cake
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2020070513A
Other languages
English (en)
Inventor
英祐 松原
Eisuke Matsubara
英祐 松原
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
HANAMARUKI KK
Original Assignee
HANAMARUKI KK
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by HANAMARUKI KK filed Critical HANAMARUKI KK
Publication of JP2020198873A publication Critical patent/JP2020198873A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Cereal-Derived Products (AREA)

Abstract

【課題】保形性の向上したもち麦含有成形炊飯食品およびその製造方法を提供する。【解決手段】もち麦、米、および麹またはその加工品を含んでなる、成形炊飯食品。【選択図】図3

Description

本発明は、もち麦配合成形炊飯食品およびその製造方法に関する。
麦飯は、大麦のみ、または大麦と米を混ぜて炊飯した飯であり、米飯とは違った固めで粘り気の少ない食感と独特の香りを有する。麦飯は、かつては米飯より食味が劣り、臭いがあるという固定観念があったが、近年になって大麦は白米に比べて食物繊維、タンパク質、ビタミンを多く含むため栄養価の面で見直されるようになり、特に最近の健康志向の高まりや食に対するニーズの多様化を受けて、広く一般に食されるようになってきた。
大麦も米と同様に、デンプンの構造が異なる「粳(うるち)種」と「糯(もち)種」がある。うるち種のデンプンはアミロースとアミロペクチンから構成されているのに対し、もち種のデンプンはほとんどがアミロペクチンで構成されている。もち種の大麦(もち麦)は穀類の中でも食物繊維の含有率が高く、血圧や血中コレステロールを下げる働きがあることから機能性食品として着目されている。
大麦は米に比べて火が通りにくくそのままでは炊飯できないため、炊飯用に加工された「精麦」が麦飯の原料として用いられている。精麦には加工方法の違いによって様々な種類があり、原料大麦を精白し、加熱した後、ローラーで圧ぺんする工程を有するもの(押麦)と、圧ぺん工程を有しないもの(丸麦、米粒麦など)に分類される。
もち麦は、もちもちした物性から押麦への加工が難しいため、入手が容易な圧ぺんしない精麦が用いられているが、もち種の大麦の精麦を用いて炊飯した麦飯は、炊飯後時間の経過とともにパサついて硬くなり、みずみずしい食感が損なわれる。特に、もち麦を配合した米飯によるおにぎりは、炊飯後のもち麦の粘りが少ないため、もち麦の配合比率を高くした場合崩れやすくなり、成型が困難になることに問題があった。
一方で、種々の酵素を米飯の改質剤として使用することが従前報告されている。例えば、特許文献1には、β−アミラーゼを米飯の改質剤に使用することが開示されている。また、特許文献2には、米麹と、塩と、水とを混ぜた仕込み液を低温で発酵熟成させた後、固液分離を行うことにより得られる、液体調味料が報告されている。しかしながら、上記文献には、麹やその由来物と、もち麦配合食品の保形性との関係については何ら報告されていない。
特許第5715346号 特許第6068068号
もち麦は食物繊維を多量に含有する素材であり、食べることで不足しがちな食物繊維を効率よく摂取することが可能な食品である。しかしながら米と共に炊飯すると、米に比して粘りが少なく、高配合ではおにぎりなどに成形し難い性質を持ち、成形できたとしても店舗などでの商品の陳列中に崩れてしまう可能性があることが本発明者らの検討から明らかとなった。一方で、保形性を改善するため増粘多糖類などを添加する方法もあるが、原材料に指定添加物または既存添加物等を使用することは消費者から嫌われる傾向がある。そこで、本発明は、保形性の向上したもち麦含有成形炊飯食品およびその製造方法を提供することを1つの目的としている。
本発明は、以下を包含する。
[1]もち麦、米、および麹またはその加工品を含んでなる、成形炊飯食品。
[2]麹が米麹である、[1]に記載の成形炊飯食品。
[3]麹の加工品が塩を含んでなる、[1]または[2]に記載の成形炊飯食品。
[4]麹の加工品が、麹と、塩と、水とを混ぜた仕込み液を発酵熟成させて得られる塩麹または該塩麹を固液分離することにより得られる液体調味料である、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の成形炊飯食品。
[5]仕込み液中の麹の含量は、仕込み液に対して40〜55重量%である、[1]〜[4]のいずれかに記載の成形炊飯食品。
[6]仕込み液中の塩の含量は、仕込み液に対して0.1〜20重量%である、[1]〜[5]のいずれかに記載の成形炊飯食品。
[7]もち麦と、米との混合重量比率(もち麦/米)が、0.05/1〜99/1である、[1]〜[6]のいずれかに記載の成形炊飯食品。
[8]もち麦と、米との混合重量比率(もち麦/米)が、20/80〜50/50であり、麹またはその加工品の含有量が、米炊飯物ともち麦炊飯物との混合物全量に対して、2重量%以上である、[1]〜[7]のいずれかに記載の成形炊飯食品。
[9]もち麦と、米との混合重量比率(もち麦/米)が、5/95〜20/80または50/50〜99/1であり、麹またはその加工品の含有量が、米炊飯物ともち麦炊飯物との混合物全量に対して、20重量%以上である、[1]〜[7]のいずれかに記載の成形炊飯食品。
[10]成形品が、おにぎりである、[1]〜[8]のいずれかに記載の成形炊飯食品。
[11]以下の試験方法に適用したとき、硬さ[N]1.1以上を示す、[1]〜[10]のいずれかに記載の成形炊飯食品:
試験方法:成形炊飯食品に対して速度50mm/minで圧盤を10mm押し込み、0.5秒保持し、50mm/minで10mm引き上げ、押し込んだ時に受ける最大力として硬さ[N]を測定する。
[12]以下の試験方法に適用したとき、粘着力[N]0.25以上を示す、[1]〜[11]のいずれかに記載の成形炊飯食品:
試験方法:成形炊飯食品に対して速度50mm/minで圧盤を10mm押し込み、0.5秒保持し、50mm/minで10mm引き上げ、引き上げるのに要する最大力として粘着力[N]を測定する。
[13]米炊飯物ともち麦炊飯物との混合物を準備する工程、および
該混合物を成形する工程
を含んでなる、成形炊飯食品を製造する方法であって、
米炊飯物、もち麦炊飯物および混合物からなる群から選択される少なくとも1つの炊飯物が、麹またはその加工品が含んでなるかまたはそれを原料とする、方法。
[14]麹またはその加工品の添加量が、米炊飯物ともち麦炊飯物との混合物全量に対して、0.1〜20重量%である、[13]に記載の方法。
[15]米炊飯物ともち麦炊飯物との混合物が、原料米、原料もち麦、水および麹またはその加工品を含んでなる混合物を炊飯することにより得られる、[13]または[14]に記載の方法。
[16]米炊飯物およびもち麦炊飯物が別々に炊飯することにより得られる、[13]〜[15]のいずれかに記載の方法。
[17]米炊飯物ともち麦炊飯物との混合物を準備する工程、および
該混合物を成形する工程
を含んでなる、成形炊飯食品の保形性の向上方法であって、
米炊飯物、もち麦炊飯物および混合物からなる群から選択される少なくとも1つの炊飯物が、麹またはその加工品が含んでなるかまたはそれを原料とする、方法。
本発明によれば、保形性の向上したもち麦含有成形炊飯食品を提供することができる。本発明によれば、成形炊飯食品においてもち麦配合米を原料として使用しても、結着しやすくなり、保存しても崩れにくく、ふっくらした品質を維持することが可能となる。また、本発明は、食物繊維を多く含むもち麦を効率的に摂取する上で有利に利用することができる。また、本発明は、成形炊飯食品の食味が改善する上で有利に利用することができる。
α−デンプンの分解する過程を示した模式図である。 タンパク質の分解する過程を示した模式図である。 本発明の一実施形態のおにぎりの模式図である。 例1において、成形炊飯食品の硬さ[N]および粘着力[N]を測定した際の写真である。 例2において、成形炊飯食品の硬さ[N]および粘着力[N]を測定した際の写真である。 例5において、もち麦比率35%のおにぎりを成形直後にお猪口の上に置いたときの写真である。 例5において、お猪口の上に2時間静置したもち麦比率35%のおにぎり(液体調味料添加)の写真である。2時間経過してもおにぎりにひび割れは起きず形状は維持されている。 例5において、お猪口の上に30秒静置した直後のもち麦比率35%のおにぎり(液体調味料無添加)の写真である。おにぎりは30秒でひび割れを生じている。 例5において、お猪口の上に30秒静置し、さらに時間を経過したもち麦比率35%のおにぎり(液体調味料無添加)の写真である。おにぎりは3つに割れている。
本発明の一実施態様によれば、もち麦、米、および麹またはその加工品を含んでなる成形炊飯食品が提供される。本発明によれば、もち麦配合成形炊飯食品において、保形性を向上しうることは当業者にとって意外な事実である。
理論に拘束されるものでないが、成形炊飯食品において、もち麦を配合しているにもかかわらず、保形性が向上するのは、図1〜図3にも示される通り、以下の作用機序が一因と考えられる。以下、詳細に説明する。
米やもち麦には成分としてデンプンが多量に含まれる。デンプンはα‐グルコースの糖鎖が枝状に結合した構造を持つ。図1に示される通り、デンプンは炊飯することにより通常α‐デンプン1となり、粘りを有するようになる。一般的にα‐デンプン1は長期間低温で保管すると徐々に枝状構造が閉じ、老化と呼ばれる硬質なβ‐デンプンに変化する。しかしながら、麹の酵素である「アミラーゼ」と共に炊飯することで、デンプンの一部が分解され構造変化したデンプン2となる。また、分解により糖類3が生成する。構造変化したデンプン2は枝の構造が変わるため閉じにくくなり、生成した糖類3は水分を引き付けるため枝が閉じるのを妨げ、これらの効果によりβ‐デンプンに変化し難くなる。その結果、粘りが維持され、もち麦配合成形品(おにぎり等)は保存しても物性の変化が少ない性質を持つものと考えられる。
図2に示される通り、米のデンプンは米の組織の中で粒上のデンプン粒4として存在しており、浸漬や炊飯の間にデンプン粒4は水分を吸って膨潤し、粘りを生み出す。しかしながら、米の成分であるタンパク質5の存在により膨潤が阻害されることが知られている。麹の酵素である「プロテアーゼ」は膨潤を阻害するタンパク質の分解6することにより、デンプン粒の吸水を促進し、より膨潤したデンプン粒7とすることで強い粘りを生み出すことができる。その結果、もち麦配合おにぎりは米やもち麦との結着が強くなり、高配合のもち麦でもおにぎりの成型が可能となると考えられる。
図3に示される通り、上述のように製造された成形品(もち麦配合おにぎり)8は成形品の中にもち麦9と米飯10を含み、食感が良く、粘りを有することにより高配合のもち麦でも成形が可能となる。また、成形品8は、店舗などに陳列している間も物性の変化が小さく、崩れにくく、優れた保形性を奏することができる。
本発明の一実施態様によれば、もち麦を配合した成形炊飯食品に対して、良好な形状を保持するのに適した粘着性および硬さを付与することができる。
本発明の一実施態様によれば、以下の試験方法に適用して、成形炊飯食品の硬さ[N]および粘着力[N]を測定してもよい。
試験方法:成形炊飯食品に対して速度50mm/minで圧盤を10mm押し込み、0.5秒保持し、50mm/minで10mm引き上げ、押し込んだ時に受ける最大力として硬さ[N]、引き上げるのに要する最大力として粘着力[N]を測定する。上記試験方法において、圧盤は直径15mmのものを使用することが好ましい。さらなる詳細は、後述する例1および例2に準じて上記試験方法を実施することができる。
本発明の一実施態様によれば、上記試験方法により測定される成形炊飯食品の硬さ[N]は、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.1〜1.4、より一層好ましくは1.1〜1.23である。
本発明の一実施態様によれば、上記試験方法により測定される成形炊飯食品の粘着力[N]は、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.05〜0.3、より一層好ましくは0.05〜0.27である。
本発明の一実施態様によれば、原料となるもち麦(原料もち麦)は、「もち種」の大麦であり、「うるち種」は含まない。「もち種」の大麦であれば、品種は限定されないが、例えば、ハクバク、キラリボシ、イチバンボシ、マンネンボシ、トヨノカゼ、ユメサキボシ、ダイシモチ等が挙げられる。原料もち麦は、丸麦、米粒麦に精麦したもち種の大麦であって、水に浸漬する前の大麦をいう。もち麦を使用して成形炊飯食品を製造することは、繊維質を効率的に摂取し、整腸を促す上で有利である。
本発明の一実施態様によれば、原料となる米(原料米)とは、脱穀後、籾殻を取り除いた後の米であって、水に浸漬する前の米をいう。原料米としては、成形炊飯食品の原料として用いられるものであれば特に限定されず、目的とする成形炊飯食品の種類応じて、米の種類、精米の有無、搗精の度合い等を適宜選択することができる。米の種類としては、例えば、ジャポニカ種(コシヒカリ、ヒトメボレ等)、インディカ種等の米や、黒米、赤米等の有色米を用いることができ、うるち種またはもち種のいずれも用いることができる。また、精米前のいわゆる玄米、胚芽を残したいわゆる胚芽米および精米後のいわゆる白米のいずれも用いることができる。
成形炊飯食品において、もち麦と、米との炊飯後の混合重量比率(もち麦/米)は、特に限定されないが、例えば、0.05/1〜99/1であり、好ましくは0.05/1〜50/1であり、より好ましくは0.1/1〜10/1であり、より一層好ましくは0.1/1〜3/1であり、さらに一層好ましくは0.1/1〜1/1であり、さらに一層好ましくは0.17/1〜1/1であり、さらに一層好ましくは2/8〜5/5である。
本発明の一実施態様によれば、麹はデンプンを分解する酵素「アミラーゼ」またはタンパク質を分解する酵素「プロテアーゼ」を含有する。かかる酵素を含有することは、もち麦および米に粘性を付与し、保形性を付与する上で好ましい。
本発明の一実施態様によれば、成形炊飯食品に含まれる麹は、好ましくは米麹である。米麹は、通常の米麹の製麹方法に従って調製されうる。具体的には、米を蒸して得られた蒸米に、麹菌(種麹とも呼ばれる)を散布し、麹菌に最適な条件下で増殖させることにより得られる。麹菌の増殖は、自動発酵機(例えば、HK−60、ヤエガキフード&システム株式会社)を用いて、25〜40℃で2〜4日間培養により行ってもよい。米麹は、市販品を用いてもよい。
麹原料の米は、うるち米、もち米、酒米などの米、好ましくは精米(白米)を、必要に応じて洗米し、水に浸漬し、必要に応じて水切りしたものを用いることができる。
麹菌は、通常の製麹に用いられる麹菌であれば特に限定されない。好適な例としては、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)およびアスペルギルス・ソーヤ(Asperugillus sojae)などのコウジカビ属(アスペルギルス、Asperugillus)が挙げられる。麹菌は、種麹として販売される市販品を用いてもよいし、培養したものを用いてもよい。また、麹菌の形状は、粒状であってもよいし、粉状であってもよい。本発明に用いられる麹菌は、好ましくは糖化力やプロテアーゼ生成能の高い麹菌であり、具体的には、味噌用麹菌、米麹用麹菌または醤油用麹菌が挙げられ、より好ましくは米麹用麹菌または味噌用麹菌、さらに好ましくは味噌用麹菌である。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の一実施態様によれば、成形炊飯食品において、麹は加工品の形態で添加してもよい。麹およびその加工品は、固体状、半固体状(ペースト状)、液体状のいずれであってもよい。好ましい態様によれば、麹の加工品としては、麹に塩が添加された混合物等が挙げられる。
また、さらに好ましい実施態様によれば、成形炊飯食品に使用される麹の加工品は、前記麹と、塩と、水とを混ぜた仕込み液を発酵熟成させて得られる塩麹または当該塩麹を固液分離することにより得られる液体調味料である。
液体調味料または塩麹の製造に使用される仕込み液は、麹と、塩と、水とを混ぜることにより得られる。これらは、同時に投入して混合してもよいし、逐次投入して混合してもよい。
麹は、仕込み液に対して、30〜70重量%となるように混合するのが望ましく、好ましくは35〜60重量%、より好ましくは40〜55重量%、さらに好ましくは45〜50重量%で混合する。
塩は、仕込み液に対して、8〜20重量%となるように混合するのが望ましく、好ましくは10〜16重量%、より好ましくは12〜15重量%、さらに好ましくは13〜14重量%で混合する。この塩により、仕込み液中の微生物の増殖を抑えることができ、また低減することができる。
水は、仕込み液に対して、30〜70重量%となるように混合するのが望ましく、好ましくは30〜60重量%、より好ましくは35〜60重量%、さらに好ましくは40〜55重量%で混合する。
本発明において「仕込み液を発酵熟成させる」とは、仕込み液を、仕込み液に含まれる麹菌由来の酵素を不活化(失活)させない温度で、発酵熟成させることを意味する。ここで、麹菌由来の酵素とは、麹菌が産生した酵素を意味し、例えば、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼが包含される。これらの酵素は熱に弱く、特にプロテアーゼは60℃以上で発酵熟成すると不活化しうる。
本発明の好ましい態様によれば、上記発酵熟成の温度温は、4〜40℃であることが望ましく、好ましくは20〜38℃、より好ましくは25〜35℃、さらに好ましくは28〜32℃である。
これらの温度であれば、麹菌由来の酵素は不活化されない。
本発明において「発酵熟成」とは、麹菌による発酵を意味するだけでなく、麹菌由来の酵素によって米に含まれるデンプン、タンパク質および脂質などが分解されることを意味し、主に糖化と呼ばれることもある。なお、発酵熟成させた仕込み液(熟成物)は、「塩麹(塩こうじ、塩糀)」と同義である。
本発明の好ましい態様によれば、発酵熟成は、発酵熟成1日目のBrixの値を基準に、発酵熟成させた仕込み液(熟成物)のBrixが、4%以上増加するまで行うのが望ましく、好ましくは6%以上、より好ましくは9%以上増加するまで行う。ここで、Brixとは、屈折糖度計を用いて測定した値を意味し、その値はショ糖、食塩、各種アミノ酸、ブドウ糖、麦芽糖およびその他成分の増減により変化する。したがって、仕込み液の原材料の構成によってBrixの値は変化する。例えば、米麹50重量%、塩13重量%、および水37重量%となるように混合した仕込み液の場合は、発酵熟成は、発酵熟成させた仕込み液のBrixが37%以上になるまで行うことが望ましく、好ましくは39%以上、より好ましくは41%以上になるまで行う。Brixは、当業者に公知の手法を用いて測定することができ、例えば、市販の手持式屈折計や、デジタル式屈折計を用いて測定することができる。一般的にBrixの測定は、直糖濃度の測定より簡易である。
または、本発明の好ましい態様によれば、発酵熟成は、発酵熟成1日目の直糖濃度の値を基準に、発酵熟成させた仕込み液(熟成物)の直糖濃度が、8%以上増加するまで行うのが望ましく、好ましくは12%以上、より好ましくは18%以上増加するまで行う。ここで、直糖とは直接還元糖を意味し、直糖濃度は、仕込み液の原材料の構成によって変化する。例えば、米麹50重量%、塩13重量%、および水37重量%となるように混合した仕込み液の場合は、発酵熟成は、発酵熟成させた仕込み液の直糖濃度が16%以上になるまで行うことが望ましく、好ましくは20%以上、より好ましくは26%以上になるまで行う。直糖濃度は、当業者に公知の手法を用いて測定することができ、例えば、ソモギー変法(日本農芸化学会誌28(3) 171-174 (1954))や、しょうゆの日本農林規格に示される方法により測定することができる。
本発明のより好ましい態様によれば、発酵熟成は、発酵熟成1日目の値を基準に、発酵熟成させた仕込み液(熟成物)のBrixが4%以上増加し、かつ、直糖濃度が8%以上増加するまで行うものが望ましく、好ましくは、Brixが6%以上増加し、かつ、直糖濃度が12%以上増加するまで行うものであり、より好ましくは、Brixが9%以上増加し、かつ、直糖濃度が18%以上増加するまで行うものである。発酵熟成1日目の値を基準に、発酵熟成させた仕込み液(熟成物)のBrixが4%以上増加し、かつ、直糖濃度が8%以上増加すると、うま味、甘味、塩味のバランスがより優れたものになる。
本発明の一つの態様によれば、例えば、米麹50重量%、塩13重量%、および水37重量%となるように配合した仕込み液の場合は、発酵熟成は、好ましくは、発酵熟成させた仕込み液(熟成物)を、Brixが37%以上、かつ、直糖濃度が16%以上になるまで行うものであり、より好ましくはBrixが39%以上、かつ、直糖濃度が20%以上になるまで行うものであり、さらに好ましくはBrixが41%以上、かつ、直糖濃度が26%以上になるまで行うものである。
本発明の好ましい態様によれば、発酵熟成は、低温で、1〜60日間行うことが望ましく、好ましくは2〜30日間、より好ましくは3〜21日間、さらに好ましくは4〜14日間、さらにより好ましくは6〜13日間、特に好ましくは8〜12日間、最も好ましくは10日間行うものである。ここで、発酵熟成期間は、温度が低くなればなるほど、麹菌由来の酵素活性が低下するため長くなる場合がある。したがって、本発明のより好ましい態様によれば、発酵熟成は、20〜38℃で、3〜21日間行うことが望ましく、さらに好ましくは4〜14日間、さらにより好ましくは6〜13日間、より一層好ましくは8〜12日間、特に好ましくは10日間行うものである。
本発明のさらに好ましい態様によれば、発酵熟成は、発酵熟成1日目の値を基準に、発酵熟成させた仕込み液(熟成物)のBrixが4%以上増加し、かつ、直糖濃度が8%以上増加するまで、20〜38℃で3〜21日間行うものである。
したがって、本発明の一つの態様によれば、本発明の液体調味料は、低温で、所望のBrixおよび/または直糖濃度になるまで、および/または所定の期間、発酵熟成させた仕込み液(熟成物)を、固液分離を行うことにより得られる。
本発明において「固液分離」とは、固形分と液体を分離する方法である。固液分離方法は、特に限定されず、通常みりんや醤油で行われている方法であってもよい。例えば、圧搾濾過器を用いた圧搾濾過、ろ布を使用した圧搾、遠心分離機を用いた固液分離が挙げられ、好ましくは圧搾濾過である。
固液分離により得られた濾液は、そのまま本発明の液体調味料として用いることができる。
このようにして得られた液体調味料は、固液分離前の熟成物と同じまたはそれより高い麹菌由来の酵素活性を有するものである。したがって、本発明の一つの態様によれば、本発明の液体調味料は、酵素活性を有する液体調味料であり、好ましくはプロテアーゼ活性を有する液体調味料である。
また、このようにして得られた液体調味料は、固液分離する前の熟成物に比べて、麹臭が低減し、蜂蜜を連想する甘い香りを奏することができる。
さらに、このようにして得られた液体調味料の直糖濃度は、固液分離前の熟成物とほぼ同じである。したがって、本発明の液体調味料の直糖濃度は、好ましくは16%以上、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは26%以上である。
本発明の液体調味料は、固液分離により得られた濾液を、さらに水で希釈してから本発明の液体調味料として用いてもよい。ここで、希釈は、塩分が所望の濃度になるように希釈することが望ましい。
本発明の液体調味料は、固液分離により得られた濾液を、さらに殺菌することにより得られるものであってもよい。殺菌方法としては、通常液体の殺菌に用いられる方法であれば特に限定されず、例えば、加熱殺菌、エタノール(酒精)添加による殺菌、濾過滅菌などが挙げられる。殺菌方法は、好ましくは、得られる液体調味料の酵素を不活化させない点で、エタノール添加による殺菌または濾過滅菌である。
エタノール添加による殺菌において、エタノールの添加量は、液体調味料を殺菌することができれば特に制限されない。エタノールは、液体調味料に対して、好ましくは0.5〜10重量%、より好ましくは1〜6重量%、さらに好ましくは2〜5重量%となるように添加する。エタノールの添加濃度が10重量%以上になると、アルコール臭やアルコールの味が際立つ。
濾過滅菌による殺菌は、例えば、珪藻土による濾過や、微小膜による濾過により行うことができる。この濾過により液体から、微生物を減らしたり、除菌したりすることができる。
本発明の液体調味料は、固液分離により得られた濾液を、さらに、濃縮、または濾過膜や樹脂などを用いて脱色することにより得られるものであってもよい。
また、本発明の液体調味料は、保存料、酸化防止剤、または香料などの他の成分を含んでいても良い。ここで、他の成分は、酵素を不活化させない点で、水溶液とした場合のpHが、好ましくは中性領域にあるものである。
本発明の一実施態様によれば、成形炊飯食品を製造する方法は、米炊飯物ともち麦炊飯物との混合物を準備する工程、および該混合物を成形する工程を含んでなり、米炊飯物、もち麦炊飯物および混合物からなる群から選択される少なくとも1つの炊飯物またはその原料に、麹またはその加工品が添加されてなる。
米炊飯物ともち麦炊飯物との混合物の準備工程において、原料米と原料もち麦を一緒に炊飯して製造してもよく、原料米と原料もち麦を別々に炊飯して混合してもよい。したがって、一実施態様によれば、米炊飯物ともち麦炊飯物との混合物は、原料米、原料もち麦、水および麹またはその加工品を含んでなる混合物を炊飯して得られる。また、別の実施態様によれば、米炊飯物およびもち麦炊飯物は別々に炊飯して得られる。ここで、炊飯処理は、炊くまたは蒸すのいずれの処理により行ってもよい。
原料米および原料もち麦を炊飯する場合、原料米および原料もち麦を水に浸漬させた状態で加熱する。原料米および原料もち麦を浸漬させる水の量(加水率)および浸漬時間は、原料米および原料もち麦の種類等に応じて適宜設定することができる。加水率としては、原料米および原料もち麦の重量に対して、水の重量が、好ましくは1〜1.5倍、より好ましくは1.05〜1.4倍、さらに一層好ましくは1.05〜1.35倍である。また、米およびもち麦を浸漬させる水には、目的とする成形炊飯食品の種類に応じて、適宜調味料等を添加してもよい。水に浸漬させた後の米の水分含有量は、米の種類、浸漬条件等により異なるが、10〜40重量%程度である。もち麦に浸漬させた後のもち麦の水分含有量は、もち麦の種類、浸漬条件等により異なるが、5〜20重量%程度である。
米およびもち麦を炊飯するための装置としては、本発明の効果が奏される限り特に限定されず、工業用、家庭用を問わず公知の炊飯装置を用いることができる。
炊飯後の米およびもち麦の水分含有量は、本発明の効果が奏される限り特に限定されず、原材米の種類、目的とする米飯食品の種類等に応じて適宜設定することができる。具体的には、炊飯後の米の水分含有量は、好ましくは55〜65質量%、より好ましくは56〜63質量%、さらに一層好ましくは58〜61質量%である。また、炊飯後のもち麦の水分含有量は、好ましくは20〜45質量%、より好ましくは25〜40質量%、さらに一層好ましくは25〜30質量%である。なお、米およびもち麦の水分含有量は、公知の方法により測定することができる。
本発明の一実施態様によれば、成形炊飯食品の製造において、米炊飯物、もち麦炊飯物および混合物からなる群から選択される少なくとも1つの炊飯物またはその原料に、麹またはその加工品が添加される。麹またはその加工品の添加量は、米炊飯物ともち麦炊飯物との混合物全量に対して、例えば、0.1〜20重量%であり、好ましくは0.1〜10重量%であり、より好ましくは1〜8重量%であり、より一層好ましくは1〜5重量%である。また、麹またはその加工品の添加量は、米炊飯物全量に対して、例えば、0.05〜5重量%であり、より好ましくは0.5〜4重量%であり、より一層好ましくは0.5〜2.5重量%である。また、麹またはその加工品の添加量は、もち麦炊飯物全量に対して、例えば、0.05〜5重量%であり、より好ましくは0.5〜4重量%であり、より一層好ましくは0.5〜2.5重量%である。
また、本発明の一実施態様によれば、成形炊飯食品において、もち麦と、米との炊飯後の混合重量比率(もち麦/米)は、特に限定されないが、20/80〜50/50である場合、成形炊飯食品の保形性維持の観点から、麹またはその加工品の添加量は、米炊飯物ともち麦炊飯物との混合物全量に対して、好ましくは2重量%以上である。
また、本発明の一実施態様によれば、成形炊飯食品において、もち麦と、米との炊飯後の混合重量比率(もち麦/米)は、特に限定されないが、5/95〜20/80または50/50〜99/1である場合、成形炊飯食品の保形性維持の観点から、麹またはその加工品の添加量は、米炊飯物ともち麦炊飯物との混合物全量に対して、好ましくは20重量%以上である。
なお、麹またはその加工品の添加量の上限は特に限定されず、麹またはその加工品の添加量は、米炊飯物ともち麦炊飯物との混合物全量に対して、100重量%以下とすることができるが、50重量%以下、30重量%以下または20重量%以下としてもよい。
成形炊飯食品の製造において、麹またはその加工品は、炊飯後に米およびもち麦に添加してもよいが、炊飯前に原料米または原料もち麦に添加して炊飯することが好ましい。
炊飯前に原料米または原料もち麦に麹またはその加工品を添加する場合、麹またはその加工品の添加量は、原料米および原料もち麦の総重量に対して、好ましくは1〜20重量%、より好ましくは1〜15重量%、さらに一層好ましくは5〜15重量%である。また、麹またはその加工品の添加量は、原料米の重量に対して、好ましくは1〜20重量%、より好ましくは1〜15重量%、さらに一層好ましくは5〜15重量%である。また、麹またはその加工品の添加量は、原料もち麦の重量に対して、好ましくは0.5〜10重量%、より好ましくは0.5〜7.5重量%、さらに一層好ましくは2.5〜7.5重量%である。
また、炊飯前に原料米または原料もち麦に麹またはその加工品を添加する場合、麹またはその加工品の添加量としては、原料米、原料もち麦および水の総重量に対して、好ましくは0.5〜10重量%、より好ましくは1〜10重量%、さらに一層好ましくは1〜8重量%である。また、麹またはその加工品の添加量は、原料米および水の重量に対して、好ましくは0.5〜10重量%、より好ましくは1〜10重量%、さらに一層好ましくは1〜5重量%である。また、麹またはその加工品の添加量は、原料もち麦および水の重量に対して、好ましくは0.5〜10重量%、より好ましくは1〜10重量%、さらに一層好ましくは1〜5重量%である。
成形炊飯食品の形状は、特に限定されず、三角柱状、円柱状、直方体状、球状、楕円球状、俵状等が挙げられる。成形炊飯食品の成形は、所望の形状を有する型を用いて実施することができる。
成形品の具体例としては、一定の形状に成形されたものであれば、特に限定されないが、好ましくはおにぎりである。
成形炊飯食品には、本発明の効果が損なわれない範囲で米およびもち麦以外の添加成分が混ざっていてもよい。米およびもち麦以外の穀物成分としては、例えば、米、もち麦以外の五穀または雑穀が挙げられ、より具体的には、麦(小麦、大麦、はと麦等)、粟、きび(もちきび等)、豆、稗、ごま(黒ごま、白ごま等)等が挙げられる。したがって、1つの態様によれば、もち麦と、もち麦以外の五穀または雑穀を含んでなる、成形炊飯食品が提供される。また、好ましい態様によれば、上記もち麦以外の五穀または雑穀は、米、麦、粟、きび、豆、稗およびごまからなる群から選択される少なくとも1つのものである。
また、上記の他、添加してもよい成分としては、特に限定されないが、醤油、みりん、ポン酢等の他の調味料;めんつゆ、おでんつゆ、鍋つゆ等のつゆ;焼き肉のタレ等のタレ;肉、魚、野菜の漬込液;ミートソース、ホワイトソース等のソース;スープ;だし;魚、明太子、おかか、高菜等の具材等が挙げられる。かかる他の添加成分は、炊飯前に成形炊飯食品原料として添加してもよいし、炊飯後に米またはもち麦と混合してもよい。
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
例1:もち米の成形性および粘着性の確認試験
もち麦に対して塩こうじを添加して炊いた場合、成型や粘着性が向上するかどうかを以下の手順に従い分析した。
試験区1の調製
以下の(1)〜(4)の手順に従い、試験区1のサンプルを得た。
(1)米麹の調製
米を1.2倍量の水で12時間浸漬し、2時間水切りした後、蒸し器(羽生田鉄工所株式会社製)を用いて45分蒸して、蒸米を得た。蒸米の温度を30℃まで冷却したら、蒸米1kgに対して種麹(味噌用種麹、株式会社樋口松之助商店より入手)0.3g(蒸米:種麹=1000:0.3)となるように、種麹を数回に分けて撒いて、混合した(種切り)。種麹を混ぜ込んだ米を、時々混ぜながら、自動醗酵機(HK−60、ヤエガキフード&システム株式会社製)にて、35℃で42時間培養して、米麹を得た。
(2)液体調味料の調製
得られた米麹50kgと、塩(並塩)13kgと、水37Lとを混合して、仕込み液とした。仕込み液を、30℃で10日間、発酵熟成させ、熟成物を得た。得られた熟成物を、圧搾濾過機(設備名:ラボ用圧濾圧搾機、NSKエンジニアリング株式会社製)を用いて、圧搾濾過し、濾液を液体調味料として得た。
(3)液体調味料の分析
得られた液体調味料は、pH、直糖、塩分および酵素活性を測定し、官能評価を行った。
pHの測定は、pHメーター(F−72、株式会社堀場製作所製)を用いて行った。
直糖は、ソモギー変法(日本農芸化学会誌28(3) 171-174 (1954))を用いて測定した。
塩分は、電位差滴定装置(AT−500N、京都電子工業株式会社製)により測定した。
酵素活性の測定は、pH6.0におけるプロテアーゼ活性を、フォーリン・チオカルト(Folin−Ciocalteu)のフェノール試薬法の蔭山変法(醗酵工學雑誌33(1) 28-32 (1955))を用いて測定した。具体的には、以下の方法により行った。それぞれのサンプル(熟成物、液体調味料)5gを0.5%NaCl溶液で10倍希釈し、濾過し、ろ液(サンプル溶液)1mlを、pH6.0リン酸緩衝液4mlでさらに希釈した。得られた希釈液(検液)1mlに対して、pH6.0リン酸緩衝液を加えた1.5%ミルクカゼイン2mlを基質として加え、37℃で1時間反応させた。0.4mol/lトリクロル酢酸4mlを加えて、反応を停止した。得られた溶液を濾過し、ろ液1mlに対して、0.4mol/l炭酸ナトリウム5mlを加え、さらにフェノール試薬1mlを加えて、37℃で20分間発色させた。発色させた溶液をテストとした。なお、対照(ブランク)として、あらかじめ基質2mlに0.4mol/lトリクロル酢酸を4ml加えた後、検液1mlを加え、37℃で1時間反応させ、ろ過し、ろ液を発色させたものを用いた。テストおよびブランクを、分光光度計(UV−1200、株式会社島津製作所)を用いて、波長660nmの吸光度を測定した。テストの吸光度からブランクの吸光度を減じ、希釈倍率およびフェノール試薬のファクター(係数)を乗じて、サンプル1g当たりのプロテアーゼ活性(単位/g)を求めた(すなわち、プロテアーゼ活性(単位/g)=〈テストの吸光度−ブランクの吸光度〉×350(希釈倍率)×フェノール試薬のファクター)。ここで、フェノール試薬のファクターは、チロシン溶液を用いて算出した。具体的には、50μg/mlチロシン溶液1mlを、上述のサンプル溶液の代わりに用いる以外は同じ方法で、吸光度を測定した。チロシン溶液の標準吸光度である0.350を、得られた値で除したものをフェノール試薬のファクターとした(すなわち、フェノール試薬のファクター=0.350/フェノール試薬調製毎の50μg/mlチロシン溶液の吸光度)。
官能評価は、訓練を受けた専門パネリスト5人で行い、液体調味料(試験区1)の「香り」および「味」の項目について、それぞれ下記のとおりに評価し、その平均値を示した。また、官能所見も示した。
(官能評価基準)
「香り」について、以下の判断基準で評価した。
5:良好。異臭(麹独特の匂い(すなわち、麹臭)、加熱臭、ムレ臭)がなく、甘い香りを強く感じる。
4:やや良好。異臭がなく、甘い香りを感じる。
3:普通。異臭がない。
2:やや悪い。異臭が少しある。
1:不良。異臭がある。
「味」について、以下の判断基準で評価した。
5:良好。異味(雑味)がなく、うま味、甘味、塩味のバランスが大変良好。
4:やや良好。異味がなく、うま味、甘味、塩味のバランスがやや良好。
3:普通。異味がなく、うま味、甘味、塩味のバランスが良好。
2:やや悪い。異味がややあり、うま味、甘味、塩味の中に苦味をやや感じる。
1:不良。異味があり、うま味、甘味、塩味の中に苦味を感じる。
結果を表1および表2に示す。
(4)炊飯処理
もち麦(はくばく)500gを水1,000gに浸漬させ、液体調味料50gを添加し、2時間後炊飯器で炊飯した。炊飯したもち麦100gを直径70mmのカップに入れ、300gの力で30秒圧縮成型したものを10個作成し、試験区1のサンプルとした。
試験区2の調製
もち麦(はくばく)500gに水1,000gを添加し、2時間後炊飯器で炊飯した。炊飯したもち麦100gを直径70mmのカップに入れ、300gの力で30秒圧縮成型したものを10個作成し、試験区2のサンプルとした。
図4の写真に示される通り、テクスチャーアナライザー(EZ−SX−100N、島津製作所、治具:直径15mm圧盤)を用いて、試験サンプルの硬さ[N](圧縮した時に受ける最大試験力)および粘着力[N](圧縮後に治具を引き離すのに要する最大試験力)の平均値を測定した。試験では、試験速度50mm/minで10mm押し込み、0.5秒ホールド、50mm/minで10mm引き上げ、硬さ[N]および粘着力[N]を測定した。
結果は表3に示される通りであった。
例2:米の成形性および粘着性の確認試験
試験区3の調製
市販の米(ひとめぼれ)300gを水450gに浸漬させ、液体調味料15gを添加し、30分後炊飯器で炊飯した。炊飯後1時間放置した後、炊飯した米14gを55mm×30mm×15mmの型に入れ、300gの力で30秒圧縮成型したものを5個作成し、試験区3のサンプルとした
試験区4の調製
市販の米(ひとめぼれ)300gを水450gに浸漬させ、30分後炊飯器で炊飯した。炊飯後1時間放置した後、炊飯した米14gを55mm×30mm×15mmの型に入れ、300gの力で30秒圧縮成型したものを5個作成し、試験区4のサンプルとした
図5の写真に示される通り、例1に準じてテクスチャーアナライザー(EZ−SX−100N、島津製作所、治具:直径15mm圧盤)を用いて、試験サンプルの硬さ[N](圧縮した時に受ける最大試験力)および粘着力[N](圧縮後に治具を引き離すのに要する最大試験力)の平均値を測定した。
結果は表4に示される通りであった。
例3
試験区5の調製
精白米195g、もち麦105gをそれぞれ、水292.5g、157.5gに浸漬させ、これらを混合後、炊飯した。(精白米/もち麦の重量比:65/35(=1.86/1))また、精白米およびもち麦の総重量に対して2%重量となるようにもち麦の浸漬時に上記液体調味料を加えた。次に、炊き上がった米ともち麦の混合物を炊飯後1時間放置し、米ともち麦の混合物40gを直径47mm×15mmの円柱の型に入れ、圧縮成型したものを10個作成し、試験区5のサンプルとした。
試験区5の試験方法は、圧盤を14mm押し込み、14mmで引き上げる以外は例1と同条件で行った。
結果は表5に示される通りであった。
例4:保形性の確認試験
炊飯後のサンプル(n=10)40gを直径50mm×高さ20mmの円柱に成形する以外、例3と同様の手法により崩れにくさ(硬さ[N]の平均値)を評価した。サンプルの配合および製造条件は、表6に示される通りである。
白米のみの試験では、液体調味料の使用量の増加に伴い、崩れにくさの数値も高くなっていくことから、液体調味料には、結着性を向上させる効果があることが確認された。 もち麦のみの試験でも同様の傾向が確認された。白米のみの試験の数値は、3.67〜4.75であるのに対し、もち麦のみ試験では、1.76〜2.43であり、もち麦自体が白米よりも崩れやすい特徴を持っていることが確認された。
もち麦比率5%の試験区では、液体調味料10%添加までは数値の変化が少なく、20%添加から数値が高くなることから、10%添加までは白米の結着性の影響が強く表れているといえる。もち麦比率20%の試験区でも同様なことが言える。
もち麦比率35%の試験区では、液体調味料使用量の増加に伴い崩れにくさも増していくことが特に確認された。もち麦比率が高くなることで崩れやすくなり、白米の結着性では支えきれないが、液体調味料添加により結着性が増すという結果が示されているといえる。
もち麦比率50%の試験区では、液体調味料20%添加から特に数値が上がることが確認された。
以上の結果から、もち麦や雑穀などを配合した米の成形品を作る場合、もち麦や雑穀の配合比率を20.1%〜49.9%、液体調味料の使用量を2%以上とする配合には、形状の維持が特に効果的に高められることが判った。
また、もち麦及び雑穀の配合比率が5%〜20%、50%〜99%の場合は、液体調味料の使用量を20%以上とすることで形状の維持が特に高められることが確認された。
また、もち麦35:白米65の配合においても、白米に10%の液体調味料を添加した試験でも良好な結果が得られている。添加の対象は、もち麦、白米、両方と、いずれであってもよいが、もち麦のみに添加することで特に良好な結果が得られることが確認された。
上記結果から、上記液体調味を使用する場合にはもち麦量を増加しても形状を効果的に維持することができることが確認された。一般的にはおにぎりの形状を維持する観点から、おにぎり中のもち麦(雑穀含む)比率は15%程度に留まることから、上記液体調味料はもち麦を増量しつつおにぎりの形状を維持する観点からも有用な調味料であると考えられる。
例5:おにぎりの保形性の確認試験
市販のおにぎりケースに100gの炊飯サンプル(例4におけるもち麦比率35%サンプル:液体調味料0%または5%)を入れ成形した。次に、お猪口を逆さに置き、成形したおにぎりを上に乗せた(図6)。
その結果は、図7、図8および図9に示される通りであった。
図7に示される通り、液体調味料を添加した試料でおにぎりを成形したサンプル(例4におけるもち麦比率35%サンプル:液体調味料5%)では、2時間経過してもひび割れは起きず形状を維持した。
一方で、図8に示される通り、液体調味料を添加しないサンプル(例4におけるもち麦比率35%サンプル:液体調味料0%)では、おにぎりは30秒でひび割れを生じ、後に3つに割れた(図9)。
1 α‐デンプン
2 構造変化したデンプン
3 糖類
4 デンプン粒
5 タンパク質
6 タンパク質の分解
7 膨潤したデンプン粒
8 もち麦配合おにぎり
9 もち麦
10 米飯

Claims (17)

  1. もち麦、米、および麹またはその加工品を含んでなる、成形炊飯食品。
  2. 前記麹が米麹である、請求項1に記載の成形炊飯食品。
  3. 前記麹の加工品が塩を含んでなる、請求項1または2に記載の成形炊飯食品。
  4. 前記麹の加工品が、前記麹と、塩と、水とを混ぜた仕込み液を発酵熟成させて得られる塩麹または該塩麹を固液分離することにより得られる液体調味料である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の成形炊飯食品。
  5. 前記仕込み液中の麹の含量は、前記仕込み液に対して40〜55重量%である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の成形炊飯食品。
  6. 前記仕込み液中の塩の含量は、前記仕込み液に対して0.1〜20重量%である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の成形炊飯食品。
  7. 前記もち麦と、米との混合重量比率(もち麦/米)が、0.05/1〜99/1である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の成形炊飯食品。
  8. 前記もち麦と、米との混合重量比率(もち麦/米)が、20/80〜50/50であり、麹またはその加工品の含有量が、米炊飯物ともち麦炊飯物との混合物全量に対して、2重量%以上である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の成形炊飯食品。
  9. 前記もち麦と、米との混合重量比率(もち麦/米)が、5/95〜20/80または50/50〜99/1であり、麹またはその加工品の含有量が、米炊飯物ともち麦炊飯物との混合物全量に対して、20重量%以上である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の成形炊飯食品。
  10. 前記成形品が、おにぎりである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の成形炊飯食品。
  11. 以下の試験方法に適用したとき、硬さ[N]1.1以上を示す、請求項1〜10のいずれか一項に記載の成形炊飯食品:
    試験方法:成形炊飯食品に対して速度50mm/minで圧盤を10mm押し込み、0.5秒保持し、50mm/minで10mm引き上げ、押し込んだ時に受ける最大力として硬さ[N]を測定する。
  12. 以下の試験方法に適用したとき、粘着力[N]0.25以上を示す、請求項1〜11のいずれか一項に記載の成形炊飯食品:
    試験方法:成形炊飯食品に対して速度50mm/minで圧盤を10mm押し込み、0.5秒保持し、50mm/minで10mm引き上げ、引き上げるのに要する最大力として粘着力[N]を測定する。
  13. 米炊飯物ともち麦炊飯物との混合物を準備する工程、および
    該混合物を成形する工程
    を含んでなる、成形炊飯食品を製造する方法であって、
    前記米炊飯物、もち麦炊飯物および前記混合物からなる群から選択される少なくとも1つの炊飯物またはその原料に、麹またはその加工品が添加されてなる、方法。
  14. 前記麹またはその加工品の添加量が、米炊飯物ともち麦炊飯物との混合物全量に対して、0.1〜20重量%である、請求項13に記載の方法。
  15. 前記米炊飯物ともち麦炊飯物との混合物が、原料米、原料もち麦、水および麹またはその加工品を含んでなる混合物を炊飯することにより得られる、請求項13または14に記載の方法。
  16. 前記原料米および原料もち麦が別々に炊飯することにより得られる、請求項13〜15のいずれか一項に記載の方法。
  17. 米炊飯物ともち麦炊飯物との混合物を準備する工程、および
    該混合物を成形する工程
    を含んでなる、成形炊飯食品の保形性の向上方法であって、
    前記米炊飯物、もち麦炊飯物および前記混合物からなる群から選択される少なくとも1つの炊飯物またはその原料に、麹またはその加工品が添加されてなる、方法。
JP2020070513A 2019-04-10 2020-04-09 もち麦配合成形炊飯食品およびその製造方法 Pending JP2020198873A (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019075073 2019-04-10
JP2019075073 2019-04-10

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2020198873A true JP2020198873A (ja) 2020-12-17

Family

ID=73744142

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2020070513A Pending JP2020198873A (ja) 2019-04-10 2020-04-09 もち麦配合成形炊飯食品およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2020198873A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4781428B2 (ja) 醤油香の少ない醸造醤油及びその製造法
CN113367283B (zh) 一种豆酱酿造工艺
CN102573522A (zh) 低盐酱油及其制造方法
KR20140067603A (ko) 울금 된장 및 간장의 제조방법
JPH06217719A (ja) 乳酸菌を利用した低タンパク質米の調製法並びにその 加工品
CN1176071A (zh) 用烟熏猪皮制备调味汁的方法
TWI605761B (zh) Liquid seasoning
CN107439971B (zh) 祛脂降压泡卤鸡爪及其制作方法
JP3663365B2 (ja) γ−アミノ酪酸高含有大豆加工食品
JP2020198873A (ja) もち麦配合成形炊飯食品およびその製造方法
JP5964537B1 (ja) 低pH醤油
KR20110008793A (ko) 수박 고추장 제조방법
JP4763534B2 (ja) 海苔発酵食品及びその製造方法
JPH06225721A (ja) 発酵調味料およびその製法並びにそれを用いた漬物調味料
JP2007190001A (ja) ジオトリカム属菌を用いた発酵おから等の製造法
JP4641961B2 (ja) 新規みりん類及びその製造方法
CN109156794A (zh) 一种绍兴料酒及其酿造工艺
JP6940104B1 (ja) 加熱処理グルテン及びこれを用いた醸造産物並びにこれらの製造方法
KR101995132B1 (ko) 기호도가 우수한 개구리 죽 및 그 제조방법
KR920008854B1 (ko) 식품 풍미 개선제의 제조방법
KR102481019B1 (ko) 생강식초 및 그 제조방법
KR102285413B1 (ko) 식감이 개선된 송편의 제조방법
JP4682304B2 (ja) 新規みりん類及びその製造方法
JPH0239866A (ja) 臭いの少ない低塩味噌の製造方法
CN116806995A (zh) 鲜味组合物及其制备方法、调味品

Legal Events

Date Code Title Description
AA64 Notification of invalidation of claim of internal priority (with term)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A241764

Effective date: 20200428

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20200508

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20221107

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20231016

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20231031

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20240423