JP2020174609A - 菌茸類キムチの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】コリコリとした歯触りと歯ごたえの良い菌茸類キムチの製造方法を提供する。【解決手段】菌茸類キムチの製造方法は、菌茸類を所定の大きさに切断し、必要に応じて洗浄する切断工程(ステップS01)と、切断工程(ステップS01)で切断された菌茸類を塩水に浸漬し、所定期間保存する塩蔵工程(ステップS02)と、塩蔵工程(ステップS02)で塩蔵された菌茸類の塩分を除去する脱塩工程(ステップS03)と、脱塩工程(ステップS03)で脱塩された菌茸類を脱水する脱水工程(ステップS04)と、脱水工程(ステップS04)において脱水された菌茸類をキムチ調味料と撹拌する撹拌工程(ステップS05)と、撹拌工程(ステップS05)後、減圧環境下で菌茸類をキムチ調味料に浸漬する漬け込み工程(ステップS06)と、漬け込み工程(ステップS06)後、キムチ調味料が浸透した菌茸類を加熱処理する加熱工程(ステップS08)とを含む。【選択図】図1
Description
本発明は、菌茸類キムチの製造方法に関する。
浅漬けや糠漬け、味噌漬け等の漬物の製造方法は種々提案されている(例えば特許文献1)。特にキムチ漬けにおいては、白菜や大根等の野菜類が多く、エリンギ等の菌茸類については報告例が少ない。
また昨今の漬物は、食材本来の食感を生かした歯切れや歯ごたえの良いものが好まれる傾向が強い。しかしながら、キムチ漬けは、キムチ調味料で漬け込む前処理として食材を塩漬けにするため、食材の食感を損ないやすいという問題があった。さらに、キムチ漬けは発酵食品であるため、発酵が進むにしたがい、食材の食感が一層失われるという問題もあった。
本発明は、従来のこのような問題点に鑑みなされたものであって、その目的の一つは、菌茸類特有の弾力性を残して、コリコリとした歯触りと歯ごたえの良い菌茸類のキムチ製造方法を提供することにある。
本発明の第1の側面に係る菌茸類のキムチ製造方法によれば、 菌茸類を所定の大きさに切断し、必要に応じて洗浄する切断工程と、前記切断工程で切断された菌茸類を塩水に浸漬し、所定期間保存する塩蔵工程と、前記塩蔵工程において塩蔵された菌茸類の塩分を除去する脱塩工程と、前記脱塩工程において脱塩された菌茸類を脱水する脱水工程と、前記脱水工程において脱水された菌茸類を、キムチ調味料と撹拌する撹拌工程と、前記撹拌工程後、減圧環境下で菌茸類を前記キムチ調味料に浸漬する漬け込み工程と、前記漬け込み工程後、前記キムチ調味料の浸透した菌茸類を加熱処理する加熱工程とを含むことができる。これにより、塩蔵や加熱という通常であれば、食材本来の食感が損なわれる工程を経ながらも、菌茸類特有の歯ごたえと歯切れの良い食感を併せ持つ菌茸類キムチを得ることが可能となる。
また、本発明の第2の側面に係る菌茸類のキムチ製造方法によれば、前記塩蔵工程において、前記塩水の塩分濃度を5〜25%とすることができる。これにより、菌茸類を種類や形状等に応じた最適な塩分濃度で塩蔵できるので、塩蔵後の菌茸類に含まれる水分量を最適な状態に調整できる。したがって、塩蔵により殺菌作用を発揮させつつ、菌茸類特有の食感を残した菌茸類キムチを得ることができる。
さらに、本発明の第3の側面に係る菌茸類のキムチ製造方法によれば、前記塩蔵工程において、前記菌茸類を塩水に浸漬して保存する期間を、3〜5日間とすることができる。これにより、菌茸類に塩分を十分に浸透できるので、表面のみならず内部まで均等に塩分を行き渡らせて十分な殺菌作用を発揮させつつ、食感にムラのない菌茸類キムチを得ることができる。また、時間をかけて徐々に菌茸類に塩分を浸透させることで、菌茸類の表面細胞膜が必要以上に壊されず、食感の優れた菌茸類のキムチを得ることが可能となる。
さらにまた、本発明の第4の側面に係る菌茸類のキムチ製造方法によれば、上記何れかの製造方法に加えて、前記漬け込み工程後、キムチ調味料の浸透した菌茸類を、包装容器又は包装袋に収納して脱気する包装工程を含み、前記包装工程で脱気した状態で、前記加熱工程において加熱処理することができる。これにより、キムチ調味料の浸透した菌茸類の種類や、さらには状態に合わせて個別に加熱処理することができるので、美味な菌茸類のキムチを得ることが可能となる。
さらにまた、本発明の第5の側面に係る菌茸類のキムチ製造方法によれば、上記何れかの製造方法に加えて、前記加熱工程後、キムチ調味料の浸透した菌茸類を冷却した後に冷凍する冷凍工程を含むことができる。これにより、キムチ調味料の浸透した菌茸類を長期保存できる。
さらにまた、本発明の第6の側面に係る菌茸類のキムチ製造方法によれば、前記菌茸類をエリンギとすることができる。これにより、エリンギ特有の弾力ある歯ごたえと、歯切れの良いコリコリとした食感の菌茸類キムチを得ることができる。
さらにまた、本発明の第7の側面に係る菌茸類のキムチ製造方法によれば、前記切断工程において、前記エリンギの柄の繊維方向に沿って切断することができる。これにより、エリンギ独特の食感を損なうことなく、歯ごたえのある菌茸類のキムチを得ることができる。
さらにまた、本発明の第8の側面に係る菌茸類のキムチ製造方法によれば、前記切断工程において、前記エリンギを3mm〜1cmの厚さに切断することができる。これにより、エリンギの特有の弾力性を生かしつつ、歯切れの良いエリンギキムチを得ることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は以下のものに特定されない。
本発明の菌茸類のキムチ製造方法は、エリンギ、松茸、椎茸、しめじ、平茸、舞茸、マッシュルーム等、種々の菌茸類をキムチの具材として使用できる。本実施形態では、特にエリンギ等、柄にある程度の太さを有する菌茸類をキムチの具材として用いる例について詳述する。
ここで、エリンギとは、地中海沿岸を原産とするヒラタケ科ヒラタケ属の菌茸類である。エリンギが日本で一般に流通し始めたのは約20年程前からで、歴史は浅い。ただし現在では、エリンギの持つ独特の食感と、くせのない食味とで人気が高まり、広く普及している。しかしながら、エリンギの一般的な調理法としては、炒め物や煮物等が多く、キムチ等の漬物の具材としての認知度は低い。
以下、菌茸類のキムチ製造方法を説明する。図1に菌茸類のキムチ製造方法の工程図を示す。図に示す菌茸類のキムチ製造方法は、切断工程(ステップS01)と、塩蔵工程(ステップS02)と、脱塩工程(ステップS03)と、脱水工程(ステップS04)と、撹拌工程(ステップS05)と、漬け込み工程(ステップS06)と、包装工程(ステップS07)と、加熱工程(ステップS08)と、冷却工程(ステップS09)と、冷凍工程(ステップS10)とを含む。これらの各工程を経ることで、弾力のある、コリコリとした歯触りでありながら、歯切れの良い食感の菌茸類キムチを得ることができる。以下、各工程について詳述する。
(切断工程)
(切断工程)
まず、切断工程(ステップS01)において、エリンギを所定の大きさに切断し、塩素殺菌にて洗浄する。切断工程(ステップS01)は、後述する塩蔵工程(ステップS02)の前処理としてエリンギの精選と切断及び必要に応じて洗浄とを行う。エリンギは、キムチの具材に適する大きさであって、みずみずしく新鮮なものを精選する。精選したエリンギは、切断機等で柄の繊維方向に沿って一定の厚みに切断する。この時、エリンギの厚みを3mm〜1cm、好ましくは、6mmにスライスする。エリンギの厚みを一定にすることで、食感の揃ったエリンギキムチに仕上がる。また、エリンギの厚みを6mmとすることで、エリンギ特有の歯ごたえを残すと共に歯切れの良い食感のエリンギキムチを得ることが可能となる。ただし、柄の細い菌茸類、例えばシメジ等を具材として用いる場合は、切断を省略できる。切断したエリンギは、流水又は換水等で洗浄し、異物等の除去を行う。
(塩蔵工程)
(塩蔵工程)
次に、塩蔵工程(ステップS02)において、切断工程(ステップ01)で切断されたエリンギを塩水に浸漬し、所定の期間保存する。塩蔵工程(ステップS02)は、エリンギの灰汁を除去すると共に、エリンギの変色防止や腐敗防止、さらには、エリンギの食感を維持する目的をも持ち合わせる。これらは、エリンギを浸漬する塩水の塩分濃度と、浸漬期間の適切な管理によって可能となる。所定の厚みに切断したエリンギは、所定の期間、塩蔵用タンク等で塩水に浸漬する。塩水は、水道水等に食塩を添加したものである。塩水の塩分濃度は5〜25%とし、浸漬する菌茸類の種類や形状に応じて調整する。必要に応じて、クエン酸等を添加してpH調整を行う。また、塩水に浸漬する期間は1〜7日程度とし、適宜調整する。具材をエリンギとする場合は、塩水の塩分濃度を10〜20%、好ましくは15%とする。また、浸漬期間は3〜5日が好ましい。このようにして塩蔵されたエリンギは、エリンギに含まれていた余分な水分が除去されてエリンギ特有の弾力性が増すため、コリコリとした歯触りのエリンギキムチを得ることができる。また、適切に水分が除去されたエリンギは、後述する加熱工程(ステップS08)を経ても、食感の維持が可能である。さらに、塩水にエリンギを浸漬する塩蔵方法は、エリンギの外観を傷めることなく見栄えの良いエリンギキムチを得ることができる。
(脱塩工程)
(脱塩工程)
次に、脱塩工程(ステップS03)において、塩蔵されたエリンギの塩分を除去する。脱塩工程(ステップS03)は、脱塩後のエリンギの塩分濃度を0〜1%とする。これにより、エリンギに残存する塩分を考慮することなく、後述する撹拌工程(ステップS05)及び漬け込み工程(ステップS06)において使用するキムチ調味料を調合することができる。脱塩方法は、例えば、水タンク等に塩蔵したエリンギを収容し、流水にさらして脱塩する流水式や、水タンク内の水を適宜換水して脱塩する換水式等、種々の方法を用いることができる。脱塩したエリンギの塩分濃度を0〜1%とすることが出来れば、脱塩手段は問わない。
(脱水工程)
(脱水工程)
脱水工程(ステップS04)では、脱塩されたエリンギを脱水する。脱水工程(ステップS04)は、脱塩工程(ステップS03)において脱塩したエリンギを適度に脱水することで、後述する漬け込み工程(ステップS06)におけるキムチ調味料の浸透を適度なものにする。脱水方法は、菌茸類の種類に応じて適宜選択する。エリンギ等、ある程度の圧力をかけても形状の崩れの恐れのない具材は、圧搾機を用いて脱水する。形状の崩れやすい菌茸類、例えば平茸等を具材とする場合は、遠心分離機等を用いて脱水する。脱水量は、キムチ調味料の浸透を最適なものとするために、脱塩したエリンギの20〜40%、好ましくは30%とする。
(撹拌工程)
(撹拌工程)
撹拌工程(ステップS05)では、脱水工程(ステップS04)において脱水されたエリンギを、キムチ調味料と撹拌する。ここで、キムチ調味料とは、唐辛子、塩、梨やりんご等の果物、さらにニンニクや生姜及び各種調味料を混ぜ合わせて作られた調味料である。キムチ調味料は、あらかじめ調合しておく。撹拌工程(ステップS05)は、所望の水分量を脱水したエリンギを撹拌タンクに移してエリンギとキムチ調味料とを撹拌機等で撹拌し、混合する。
(漬け込み工程)
(漬け込み工程)
撹拌工程(ステップS05)後、漬け込み工程(ステップS06)において、減圧環境下でエリンギをキムチ調味料に浸漬する。漬け込み工程(ステップS06)は、エリンギにキムチ調味料を浸漬して熟成させる工程である。脱水工程(ステップS04)において脱水した水分量に相当するキムチ調味料がエリンギに浸透し、所定時間置くことで熟成し味付けされる。撹拌工程(ステップS05)において十分に混合したエリンギとキムチ調味料とは、漬け込み用タンクに移され、減圧環境下にて冷蔵状態で保存される。保存時間は、約24時間とする。漬け込み用タンクは、エリンギとキムチ調味料との内部の含有気体を除去し、減圧状態にするタンクである。減圧状態で保存することで、エリンギへのキムチ調味料の浸透が均一化され、高品質のエリンギキムチを得ることができる。さらに、キムチ調味料がエリンギに短時間で浸透するので、エリンギの食感も維持可能となる。漬け込み工程(ステップS06)において、所定時間キムチ調味料に浸漬し熟成されたエリンギは、食べ頃のエリンギキムチとなる。なお、本実施例においては、漬け込みタンクに株式会社古川製作所製真空缶を用いて減圧環境下あるいは真空環境下として漬け込みを行った。
(包装工程)
(包装工程)
包装工程(ステップS07)では、包装容器又は包装袋にキムチ調味料が浸透したエリンギ、すなわちエリンギキムチを収納し真空密封する。包装容器又は包装袋は、耐熱性と気密性とを有するもので、例えば、ガラスビンやガスバリア性のプラスチックフィルム製の袋を使用する。これらの容器や袋にエリンギキムチを収納後、脱気して封止し、真空密封する。発酵食品であるキムチは、脱気状態に包装されることで、発酵の進度を遅らせることができ、食べ頃の状態を維持しやすくなる。また、真空密封することで、キムチ特有の臭気が外部に漏れることを防ぐ。なお包装工程(ステップS07)は、後述する加熱工程(ステップS08)や冷却工程(ステップS09)の前に行う必要は必ずしもなく、例えば加熱工程(ステップS08)や冷却工程(ステップS09)の後に行うこともできる。
(加熱工程)
(加熱工程)
加熱工程(ステップS08)では、キムチ調味料が浸透したエリンギであるエリンギキムチを加熱処理する。加熱工程(ステップS08)は、加熱処理によりエリンギキムチの殺菌を行う。加熱処理手段として、熱水や加熱水蒸気を用いる湿熱処理や、加熱空気による乾熱処理等の方法を用いることができる。加熱処理の温度や時間等の条件は、90℃で30分等とする。これにより、エリンギキムチが殺菌処理される。また、加熱処理することでキムチの発酵が止まり、食感の維持が可能となる。
(冷却工程)
(冷却工程)
冷却工程(ステップS09)において、加熱工程(ステップS08)で加熱処理したエリンギキムチを冷却する。冷却工程(ステップS09)は、後述する冷凍工程(ステップS10)の前処理として行われる。エリンギキムチの冷却は、常温水又は冷却水を用いて行う。常温水や冷水で粗熱をとり、エリンギキムチの温度を水温レベル、例えば10〜15℃程度まで冷却する。
(冷凍工程)
(冷凍工程)
冷却工程(ステップS09)後、冷凍工程(ステップS10)において、粗熱のとれたエリンギキムチを冷凍する。冷凍工程(ステップS10)は、エリンギキムチの長期保存を可能にする。冷凍手段として、空気冷凍や液体冷凍、また窒素冷凍等の方法を用いることができる。冷凍条件は、例えば120分で−18℃以下とすることが好ましい。これにより、短時間で急速に冷凍されることで、高品質のエリンギキムチを長期間保存することが可能となる。
以上の各工程によって製造されたエリンギキムチは、エリンギ特有の歯ごたえを持つと共に、コリコリとした歯触りと歯切れの良い食感のエリンギキムチに仕上がる。
本発明の実施形態に係る菌茸類キムチの製造方法によれば、例えばエリンギキムチや松茸キムチ、しめじキムチ等に好適に利用できる。
Claims (8)
- 菌茸類を所定の大きさに切断し、必要に応じて洗浄する切断工程と、
前記切断工程で切断された菌茸類を塩水に浸漬し、所定期間保存する塩蔵工程と、
前記塩蔵工程において塩蔵された菌茸類の塩分を除去する脱塩工程と、
前記脱塩工程において脱塩された菌茸類を脱水する脱水工程と、
前記脱水工程において脱水された菌茸類を、キムチ調味料と撹拌する撹拌工程と、
前記撹拌工程後、減圧環境下で菌茸類を前記キムチ調味料に浸漬する漬け込み工程と、
前記漬け込み工程後、前記キムチ調味料の浸透した菌茸類を加熱処理する加熱工程と
を含む菌茸類キムチの製造方法。 - 請求項1に記載の菌茸類のキムチ製造方法であって、
前記塩蔵工程において、前記塩水の塩分濃度が5〜25%である菌茸類キムチの製造方法。 - 請求項1又は2に記載の菌茸類のキムチ製造方法であって、
前記塩蔵工程において、前記菌茸類を塩水に浸漬して保存する期間を、3〜5日間とする菌茸類キムチの製造方法。 - 請求項1〜3のいずれか一項に記載の菌茸類のキムチ製造方法であって、さらに、
前記漬け込み工程後、キムチ調味料の浸透した菌茸類を、包装容器又は包装袋に収納して脱気する包装工程を含み、
前記包装工程で脱気した状態で、前記加熱工程において加熱処理する菌茸類キムチの製造方法。 - 請求項1〜4のいずれか一項に記載の菌茸類のキムチ製造方法であって、さらに、
前記加熱工程後、キムチ調味料の浸透した菌茸類を冷却した後に冷凍する冷凍工程を含む菌茸類キムチの製造方法。 - 請求項1〜5のいずれか一項に記載の菌茸類のキムチ製造方法であって、
前記菌茸類が、エリンギである菌茸類キムチの製造方法。 - 請求項6に記載の菌茸類のキムチ製造方法であって、
前記切断工程において、前記エリンギの柄の繊維方向に沿って切断する菌茸類キムチの製造方法。 - 請求項7に記載の菌茸類のキムチ製造方法であって、
前記切断工程において、前記エリンギを3mm〜1cmの厚さに切断する菌茸類のキムチ製造方法。
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