JP2020165174A - 木造建物の床パネル - Google Patents
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Abstract
Description
ところで、枠組壁工法の床パネルは、従来、枠組と根太で床組を形成し、その上に合板を張り付けることで製作していた。その高さ寸法(せい)は、一般的に床用のパネル材は2×10インチの部材を使うので235mm程度であった。
ちなみに、前記床パネルを含む床材は、枠組壁工法、木造軸組構法(在来工法)を問わず、施工性、耐火性、断熱性、又は遮音性(気密性)等を向上させるべく、その構成に工夫を施すことにより、下記するような実に様々な形態の床材が開発されている。
特許文献2には、合板の間に発泡合成樹脂の断熱材を挟み込んだパネルを使うことで、長期にわたり適正な断熱効果を維持でき、かつ耐火性にも優れ、また合板の板厚を大きくすることで柱と梁を不要とし、壁、床、屋根などの構成材として好適な構造用多機能パネルが開示されている。
特許文献3には、下階壁パネル上に床根太を固定して木質床板を下型枠として敷設し、鉄筋を組んだあとにコンクリートを流して鉄筋コンクリートスラブを形成し、その上に上階壁パネルを立設させることで、耐火性、遮音性に優れた建築方法が開示されている。
特許文献4には、デッキプレートの表面に鉄筋を取り付けてコンクリートを打設して形成したプレキャスト合成スラブ本体の長さ方向両端部及び幅方向両端部に接合用切欠部を設けており、接合用切欠部を介して梁上に設置されることで、施工性、耐火性、及び遮音性に優れたプレキャスト合成スラブが開示されている。
前記特許文献2に係る構造用多機能パネルは、前記特許文献1と同様に、面内剛性を確保するためには合板を厚くする必要があり、床や天井が高く(厚く)なり、その分居住スペースが狭くなる等の問題があった。
前記特許文献3に係る建築方法は、耐火性、遮音性は確保できるものの、梁又は根太の上にコンクリートスラブを形成するため、床や天井が高くなり、その分居住スペースが狭くなる等の問題があった。その他、現場でコンクリートの打設作業を行うため、工期が長期化する問題もあった。
前記特許文献4に係るプレキャスト合成スラブも耐火性、遮音性は確保できるものの、梁又は根太の上にコンクリートスラブを形成するため、床や天井が高くなり、その分居住スペースが狭くなる等の問題があった。そもそも構成部材に木質部分を含んでいないため、木造建物に適用するには上下階の木質壁パネルとの取り合いが難しいという問題もあった。
具体的には、例えば枠組壁工法において、床パネルのパネル厚を、強度・剛性をそのままに前記一般的なパネル厚の235mmよりも薄く形成することができれば、居住スペースをより広く形成する等の柔軟で合理的な構造設計を実現でき、非常に有益であることは明らかであるところ、前記特許文献1〜4に係る技術はパネル厚の抑制に寄与できず、改良の余地が残されている。
前記受け部材は、前記木材の上面に載る又は側面に差し込む上フランジ部と、前記木材の側面に沿って垂下するウエブ部と、前記デッキプレートの端部の谷部を支持する下フランジ部とで断面略Z字状に形成されており、前記枠組の四辺のうち少なくとも向かい合う二辺における木材に設けられて前記デッキプレートが支持されてなることを特徴とする。
第1発明〜第7発明の床パネルは、受け部材によってデッキプレートを木枠の上面よりも下方に落とし込んで設置することが可能になるので、従来の梁上に設置するよりも床パネルの厚さを(約6割程度に)薄くすることができる。
第1発明〜第7発明の床パネルは、デッキプレートの単体での剛性が高いため、根太を省略でき、従来の合板よりも薄い合板を張り付けても面内剛性を保持できる。また、十分な剛性を保有するため、構造設計に応じて乾式(デッキプレート単体)、湿式(コンクリート打設)を使い分けることができる。
第1発明〜第7発明の床パネルは、床パネルの外周部を構成する木枠は、従来の枠組壁工法に用いる床パネルの木枠と何ら変わりはないので、上下階の壁パネルとの接合において従来の枠組壁工法と同様に施工できる。
第1発明〜第7発明の床パネルは、デッキプレートを木枠の上面よりも下方に落とし込むことで、組立時にコンクリートを打設する際、木枠が型枠代わりとなるので、型枠や脱型作業を省略できる。
特に、第2発明の床パネルは、前記木材の上面に切欠き凹部を形成されるため、前記木材に受け部材を取り付けても不陸を起こすことがなく、その後に取り付ける床材や壁材の良好な納まりを実現できる。また、受け部材と木材の上端レベルが面一になるので、上階の壁パネルを隙間無く設置することができる。
特に、第3発明の床パネルは、前記木材の側面にスリットが形成されて、受け部材の上フランジ部が差し込まれるため、前記受け部材に回転する荷重が作用した場合、ビス等の固定具が抜ける虞がなく構造上非常に安定した健全性の高い床パネルを実現できる。
特に、第4発明の床パネルは、前記木材の側面に切欠き凹部を形成されるため、木材とデッキプレートと隙間(受け部材の板厚分)が埋まり(詰めることができ)、コンクリート打設時のコンクリートの漏れや、上階からの音漏れを防ぐことができる。
特に、第5発明の床パネルは、1個あたりのサイズがコンパクトな受け部材を複数点在させてデッキプレートを支持するため、木材の上面に壁パネルを設けることができる。
特に、第6発明の床パネルは、前記受け部材の下フランジ部の上面に、前記木材の軸方向に延びる長尺なベース部材により、デッキプレートを前記受け部材の取り付け位置にかかわらず設置できるので、柔軟な構造設計が可能となる。
特に、第6発明の床パネルは、デッキプレートや打設コンクリートに対する支持耐力を高めることができる。
特に、第7発明の床パネルは、前記デッキプレートの上面に、打設されるコンクリートが前記枠組と一体化されているため、コンクリート漏れを未然に防止することができる。
また、本実施例に係る前記木材3は、図3に示したように、その上面と側面に、前記受け部材1の上フランジ部11とウエブ部12を位置決めするための切欠き凹部3a、3bを連続させた断面略逆L字状の切欠き凹部が形成されている。
前記切欠き凹部3a、3bの形状は、平板状に形成された上フランジ部11、ウエブ部12と同等寸法に切り欠いて形成されている。言い換えると、上フランジ部11、ウエブ部12を受け入れた状態で木材3の外周面(上面及び側面)と面一となるように形成されている。
このデッキプレート2の寸法は、一例として、幅が600mm程度(2山タイプ)、高さ(山高)が50mm程度、山部と谷部のトップ(平面部)の幅寸が115〜125mm程度、板厚が1.0〜1.6mm程度、全長(スパン長)が1.8〜3.6m程度である。図1は、幅方向に4体のデッキプレート2を連結した状態を示している。
なお、前記デッキプレート2の形態(形状、寸法)は勿論この限りではなく、設置面積、支持梁の設置間隔、構造上必要な強度等の構造設計に応じて適宜設計変更される。
例えば、木材(木枠)3の面内寸法に応じて、幅が300mm程度の1山タイプの幅調整用のデッキプレート2を併用することは適宜行われるところである。その他、コンクリートを打設しない(乾式の)場合は前記鍵溝や段部がないタイプの通常のデッキプレートを採用することもできる。
ちなみに前記デッキプレート2は、その端部の谷部22における前記受け部材1の下フランジ13との接合部位に貫通孔22a(図4参照)が穿設されている。
前記上フランジ部11は、前記木材3へ取り付けるために用いるビス6、ボルト、ドリフトピン等の固定具6を挿通させるための貫通孔11aが形成されている。図示例に係る貫通孔11aは、バランスよく6個穿設されているが構造設計に応じて適宜設計変更可能である。また、前記ビス6は、前記上フランジ部11と前記木材3を固定しているが、例えば、前記ウエブ部12に貫通孔を形成して固定するなど、前記受け部材1と前記木材3がずれないように固定されていればよく、固定具はビス6に限らないし、また固定位置に関わらず、どのように固定されてもよい。
前記下フランジ部13は、前記デッキプレート2へ取り付けるために用いるボルト7等の固定具7を挿通させるための貫通孔13aが形成されている。図示例に係る貫通孔13aは、バランスよく左右に2個穿設されているが構造設計に応じて適宜設計変更可能である。もっとも、前記下フランジ部13と前記デッキプレート2とを溶接手段で一体化させる場合、前記貫通孔13aは不要である。
前記受け部材1の寸法は、一例として、断面方向にみて(図3参照)、上フランジ部11の幅寸が57mm程度、ウエブ部12の高さ寸法(全高)が127mm程度、下フランジ部13の幅寸が64mm程度、板厚が6mm程度で、奥行き寸法(横幅)B(図2参照)が110mm程度で実施されている。
例えば、構造設計に応じて、図5に示したように、前記ウエブ部12の高さ寸法を短くした受け部材1を用いてデッキプレート2の上面レベルを前記木材3の上面レベルと略同一に揃えることも可能である。
その他、前記受け部材1は、2本のアングル材を組み合わせて(例えば、背面同士を溶接接合して)断面略Z字状に形成したものでも同様に実施できる。
先ず、図6に示したように、所定の大きさの矩形状に枠組された木材(木枠)3を用意する。この木材3(の向かい合う二辺)には予め、前記受け部材1を掛け止める部位に前記切欠き凹部3a、3bが形成されている。すなわち、本実施例では前記受け部材1を計18個掛け止めるので、前記木材(木枠)3には計18箇所の前記切欠き凹部3a、3bが形成されている。
次に、複数(図示例では18個)の受け部材1をそれぞれ、前記木材3の切欠き凹部3a、3bを目印にして、その上フランジ部11を前記木材3の上面(の切欠き凹部3a)に載置すると共に、ウエブ部12を前記木材3の側面(の切欠き凹部3b)に当接させ、もって前記受け部材1を前記木材3に位置決めする。しかる後、前記上フランジ部11の前記貫通孔11aにビス6を通して前記受け部材1を前記木材3に定着させる。
具体的には、前記木材3で囲われた面内に隙間なく前記デッキプレート2を敷設するべく、前記デッキプレート2の長手方向の両端部の谷部22を前記受け部材1の対応する下フランジ部13の上面に載置し、前記谷部22の前記貫通孔22aと下フランジ部13の前記貫通孔13aとの芯を一致させ、ボルト7を通してナット8で締結する作業を受け部材1の数に応じて繰り返し行い、もって、デッキプレート2を、受け部材1を介して木材3に支持させてなる床パネルを実現する(図1参照)。
そして、例えば図4に示したように、下階の壁パネル30の上面に本発明に係る床パネルの木材(木枠)3を設置し、さらにその上に上階の壁パネル20を設置する等、従来の枠組壁工法と同様の施工を行う。
また、本実施例に係る受け部材1は、1個あたり奥行き寸法(横幅)Bが110mm程度のコンパクトサイズで実施しているがこれに限定されず、前記木材3の全長にわたる程に長い長尺タイプの受け部材で実施することもできる(図示省略)。この場合は、木材3の向かい合う二辺に1本ずつ取り付ければよいので、計2本の受け部材で足りる。
以下に説明する実施例3についても同様の技術的思想とする。
(1)受け部材1によってデッキプレート2を木枠3の上面よりも下方に落とし込んで設置することが可能になるので、従来の梁上に設置するよりも床パネルの厚さを(約6割程度に)薄くすることができる。
(2)デッキプレート2の単体での剛性が高いため、根太を省略でき、従来の合板よりも薄い合板を張り付けても面内剛性を保持できる。また、十分な剛性を保有するため、構造設計に応じて乾式(デッキプレート2単体)、湿式(コンクリート5打設)を使い分けることができる。
(3)床パネルの外周部を構成する木枠3は、従来の枠組壁工法に用いる床パネルの木枠と何ら変わりはないので、上下階の壁パネル20、30との接合において従来の枠組壁工法と同様に施工できる。
(4)デッキプレート2を木枠3の上面よりも下方に落とし込むことで、組立時にコンクリート5を打設する際、木枠3が型枠代わりとなるので、型枠や脱型作業を省略できる。
(5)本実施例では、前記木材3の上面に切欠き凹部3aを形成して実施しているので、前記木材3に受け部材1を取り付けても不陸を起こすことがなく、その後に取り付ける床材や壁材の良好な納まりを実現できる。また、受け部材1と木材3の上端レベルが面一になるので、上階の壁パネル20を隙間無く設置することができる。
(6)本実施例では、前記木材3の側面に切欠き凹部3bを形成して実施しているので、木材3とデッキプレート2と隙間(受け部材3の板厚分)が埋まり(詰めることができ)、コンクリート打設時のコンクリートの漏れや、上階からの音漏れを防ぐことができる。
(7)本実施例では、1個あたりのサイズがコンパクトな受け部材1を複数点在させてデッキプレート2を支持する構造で実施しているので、木材3の上面に壁パネルを設けることができる等、柔軟な構造設計を実現できる。
この実施例2に係る木造建物の床パネルは、上記実施例1と比し、前記デッキプレート2と前記受け部材1の下フランジ部13との間にベース部材4を介在させている点が相違する。その他の構成は上記実施例1と同様なので同一の符号を付してその説明を適宜省略する。
前記受け部材1を前記木材3に取り付ける手法、前記デッキプレート2を前記下フランジ部13へ位置決めする手法は、前記段落[0023]、[0024]を参照されたい。
また、前記床パネルは、図12に示したように、前記上下の壁パネル20、30に組み込む前に、前記デッキプレート2の上面にコンクリート5を打設してプレキャスト合成スラブ化した床パネルとして用いることもできるし、前記上下の壁パネル20、30に組み込んだ後にコンクリート5を打設した床スラブ構造としてもよい。また、デッキプレート2の端部と木材3との間を養生したり、受け部材1の下フランジ部13とベース部材4を隙間なく配置して固定すれば、よりコンクリート5の漏れを防止することができて、望ましい。
その他、構造設計に応じて、図11に示したように、前記ウエブ部12の高さ寸法を短くした受け部材1を用いてデッキプレート2の上面レベルを前記木材3の上面レベルと略同一に揃えることも可能である。
以下に説明する実施例3についても同様の技術的思想とする。
加えて、実施例2に係る木造建物の床パネルは、長尺物のベース部材4を、前記下フランジ部13と前記デッキプレート2との間に介在させるので、下記する効果を奏する。
(8)前記デッキプレート2を、前記受け部材1の取り付け位置にかかわらず設置できるので、柔軟な構造設計が可能となる。
(9)前記デッキプレート2や打設コンクリート5に対する支持耐力を高めることができる。また、コンクリート5を打設する場合は、コンクリート漏れを未然に防止することができる。
この実施例3に係る木造建物の床パネルは、上記実施例1、2と比し、前記受け部材1の上フランジ11を木材3の側面に形成したスリット3cに差し込む構成で実施している点が相違する(特には図3と図13、図8と図17を対比して参照)。その他の構成は上記実施例1、2と同様なので同一の符号を付してその説明を適宜省略する。
加えて、実施例3に係る木造建物の床パネルによれば、前記受け部材1の上フランジ部11を木材3の側面に差し込む構成で実施しているが故に、前記受け部材1に回転する荷重が作用した場合、上記実施例1、2と比し、ビス6等の固定具6が抜ける虞がなく構造上非常に安定した健全性の高い床パネルを実現することができる。
例えば、上記実施例1〜3では、本発明に係る木造建物の床パネルを枠組壁工法に適用することを中心に説明しているがこれに限定されず、木造軸組工法(在来工法)にも適用可能である。また、床パネルの形態に関しては、複数の床パネルを接合して1枚の床パネルとしてもよく、形状についても正方形に限らず、長方形等の矩形のパネルであってもよい。さらに、複数の床パネルを並べて、床を形成してもよい。
11 上フランジ部
11a 貫通孔
12 ウエブ部
13 下フランジ部
13a 貫通孔
2 デッキプレート(合成スラブ用デッキプレート)
21 山部
22 谷部
22a 貫通孔
23 傾斜部
3 木材(木枠)
3a 切欠き凹部
3b 切欠き凹部
3c スリット
4 ベース部材
4a 貫通孔
5 コンクリート
6 固定具(ビス)
7 固定具(ボルト)
8 ナット
9 床部材
B 受け部材の横幅
20 上階の壁パネル
30 下階の壁パネル
Claims (7)
- 山部と谷部とが傾斜部を介して交互に連なり略台形の波形断面に屈曲形成されたデッキプレートが、受け部材を介して、矩形状に枠組された木材の面内に配設されてなる木造建物の床パネルであって、
前記受け部材は、前記の上面に載る又は側面に差し込む上フランジ部と、前記木材の側面に沿って垂下するウエブ部と、前記デッキプレートの端部の谷部を支持する下フランジ部とで断面略Z字状に形成されており、前記枠組の四辺のうち少なくとも向かい合う二辺における木材に設けられて前記デッキプレートが支持されてなることを特徴とする、木造建物の床パネル。 - 前記木材は、その上面に前記受け部材の上フランジ部を位置決めするための切欠き凹部が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載した木造建物の床パネル。
- 前記木材は、その側面に前記受け部材の上フランジ部が挿入されるためのスリットが形成されていることを特徴とする、請求項1に記載した木造建物の床パネル。
- 前記木材は、その側面に前記受け部材のウエブ部を位置決めするための切欠き凹部が形成されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載した木造建物の床パネル。
- 前記受け部材は、前記木材の軸方向に間隔をあけて複数設けて前記デッキプレートを支持する構成であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載した木造建物の床パネル。
- 前記受け部材の下フランジ部の上面に、前記木材の軸方向に延びる長尺なベース部材が設けられ、前記ベース部材の上面に前記デッキプレートの端部の谷部が支持されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載した木造建物の床パネル。
- 前記デッキプレートの上面にコンクリートが打設されて前記枠組と一体化されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載した木造建物の床パネル。
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