車両のドアには、ドア本体の上部にドアフレームを設け、ドアフレームの内周縁に形成された溝部にチャンネル状をなすガラスランを嵌入係止し、ガラスランの車内外のガラスシール部によりドアガラスの昇降を案内するとともに、車室内外をシールするようになっている。
上記のガラスランは、底壁と、その車外側に位置する車外側側壁と、車内側に位置する車内側側壁を基本骨格(本体部)に構成されている。そして、両側壁部の先端又はその近傍からそれぞれ本体部の内側に向けて延びる車外側シールリップ及び車内側シールリップを備えている。更に、ガラスランは、本体部がドアフレームの内周に沿って設けられた取付部に取着され、両シールリップによって、昇降するドアガラスの内外面の周縁部が挟まれるようにしてシールされる。また、ガラスランは、ドアガラスの周縁部を支持して、ドアガラスの昇降を案内したり、ドアガラスのがたつきを抑制したりする役割をも担っている。
ところで、ドアガラスを全閉位置よりも少し下方に位置させた状態では、ドアガラスが車内方向に変位し易くなる。この状態で自動車が悪路を走行する等して、ドアガラスが車内外方向に振動した場合には、ドアガラスとシールリップとが瞬間的に離間することがあり、この離間状態から、ドアガラスとシールリップとが再度接触し、離間と接触が繰り返された場合に、接触に起因する異音(打音)が発生してしまうおそれがある。特に、シールリップが経年劣化し、弾性力が低下した場合には、ドアガラスが振動した場合にシールリップがドアガラスから離間し易くなり、異音が発生する問題がより顕著なものになる。
上記問題を解決する技術として、例えば、下記特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1のガラスランの構造について、図1と図11に基づいて説明する。図1は自動車の左側のフロントドア100を車外側からみた正面図を示す。このフロントドア100を構成するドア本体210の上部には、ドアフレーム320が装着されている。このドアフレーム320とドア本体210の上端縁とにより窓開口が形成されている。窓開口の内周縁及びドア本体210の内部にはガラスラン110が装着され、ドアガラス600の昇降動作を案内するようになっている。
図11は、ドアフレーム320の縦枠部の垂直断面(図1のY−Y断面)を示す。ガラスラン110は、底壁200、車外側側壁300及び車内側側壁400を基本骨格としてチャンネル状(断面コ字形状)に形成されている。車外側側壁300にはドアガラス600の表面(車外側)に接触される車外側シールリップ310が形成され、車内側側壁400の先端にはドアガラス600の裏面(車内側)に接触される車内側シールリップ410が一体に形成されている。また、車内側シールリップ410と底壁200との間には、車内側シールリップ410とは反対方向に突出したサブリップ430が車外側に向けて形成されている。
そして、車内側シールリップ410は、その裏面において突部440を備えることにより、当該裏面の一般面よりも突出した位置に突出面450を有する。ドアガラス600が基準位置から車内側に変位する場合に、車内側側壁400から延びるサブリップ430の先端部と、突出面450とが当接して摺動する第1支持状態と、サブリップ430の先端部が突出面450から外れ、サブリップ430のうち前記先端部よりも付根側の部位が突部440と当接する第2支持状態とに状態変化可能に構成されている。
この結果、車内側シールリップ410の裏面側に突部440が設けられ、その部位の車内側シールリップ410が厚肉とされるとともに、車内側側壁400から延出して突部440の突出面450と当接可能なサブリップ430が設けられているので、車内側シールリップ410がドアガラス600に圧接する力が高められ、ドアガラス600が振動した場合であっても、車内側シールリップ410がドアガラス600から瞬間的に離間してしまうといった事態を防止することができ、例えば、車内側シールリップ410と、ドアガラス600が離間した状態から接触した状態とされた場合に、接触に起因する異音(打音)が発生してしまうといった事態を防止することができる。
ところで、上記の特許文献1の技術では、車内側シールリップ410の裏面において突出面450を有する突部440とサブリップ430の当接により、ドアガラス600が振動した場合に車内側シールリップ410がドアガラス600から離間することを防止するが、経年劣化は、車内側シールリップ410のみならずサブリップ430にも生じる。したがって、サブリップ430の劣化による車内側シールリップ410裏面側への反力(押圧力)低下により、車内側シールリップ410がドアガラス600から離間し、異音が再び発生する問題が懸念される。
一方、ドアガラス600を全閉位置よりも少し下方に位置させた状態では、ドアガラス600が車内方向に変位し易くなるので、車外側シールリップ310がドアガラス600を押える力は弱くなる。したがって、ドアガラス600が振動した場合にドアガラス600と車外側シールリップ310とが瞬間的に離間することあり、この離間状態から、ドアガラス600と車外側シールリップ310とが再度接触し、離間と接触が繰り返された場合に、接触に起因する異音(打音)が発生してしまうおそれがあるが、特許文献1では、この問題には対応できない。
又、車両においては、車両の大きさ、ドアガラスの形状、サイズ等様々な形態があるので、ドアガラスが振動した場合に、ドアガラスとガラスランのシールリップとの間で発生する異音への対応は、車外側シールリップと車内側シールリップの両方の面から検討しなければならない。そして、その検討は、ガラスランにおける他の機能に影響を与えず、コスト面も考慮して行われなければならない。
上記課題を解決するために、請求項1の本発明は、底壁と、車外側側壁と、車内側側壁を基本骨格とし、車外側側壁の先端又はその近傍に形成される車外側シールリップと、車内側側壁の先端又はその近傍に形成される車内側シールリップを有し、ドアフレームに形成された溝部に取付けられるガラスランであって、
車外側シールリップの付根部よりも底壁側の車外側側壁の車内側から斜めに突出して形成された車外側サブリップ、
車内側シールリップの付根部よりも底壁側の前記車内側側壁の車外側から車内側シールリップの付根部方向に斜めに突出するとともに車内側シールリップ側の付根部分に肉厚部が形成された車内側サブリップ、
車外側シールリップの付根部分に形成された肉厚部、又は、
車内側シールリップのドアガラスに当接しない側に形成された肉厚部の少なくともいずれか一つを有することを特徴とするガラスランである。
請求項1の本発明では、ガラスランは、車外側シールリップの付根部よりも底壁側の車外側側壁の車内側から斜めに突出して形成された車外側サブリップを有する第1のケース、車内側シールリップの付根部よりも底壁側の前記車内側側壁の車外側から車内側シールリップの付根部方向に斜めに突出するとともに車内側シールリップ側の付根部分に肉厚部が形成された車内側サブリップを有する第2のケース、車外側シールリップの付根部分に形成された肉厚部を有する第3のケース、そして、車内側シールリップのドアガラスに当接しない側に形成された肉厚部を有する第4のケース、及び上記の4つのケースの内の任意に2つのケースを組み合わせた場合、任意に3つのケースを組み合わせた場合、全てのケースを組み合わせた場合の合計15のケースを含んでいる。
車外側シールリップの付根部よりも底壁側の車外側側壁の車内側から斜めに突出する車外側サブリップが形成される第1のケースでは、車外側シールリップがドアガラスを押える力を車外側サブリップが補い、ドアガラスが振動した場合にドアガラスと車外側シールリップとが瞬間的に離間することを防止することができる。なお、車外側サブリップの突出方向は、底壁側であってもよいし、車外側シールリップの付根部側であってもよい。
車内側シールリップの付根部よりも底壁側の車内側側壁の車外側から車内側シールリップの付根部方向に斜めに突出するとともに車内側シールリップ側の付根部分に肉厚部を有する車内側サブリップが形成される第2のケースでは、車内側サブリップの付け根部分に肉厚部を有しているので、車内側サブリップがドアガラスを車内側から押える力が増大し、ドアガラスが振動した場合にドアガラスと車外側シールリップとが瞬間的に離間することを防止することができる。
又、車内側サブリップが劣化しても車内側シールリップの裏面側への反力(押圧力)が低下することを防止し、車内側シールリップがドアガラスから離間し、異音が発生することを防止することができる。
車外側シールリップの付根部分に形成された肉厚部を有する第3のケースでは、車外側シールリップの付根部分に形成された肉厚部によって車外側シールリップがドアガラスを車外側から押える力が増大し、ドアガラスが振動した場合にドアガラスと車外側シールリップとが瞬間的に離間することを防止することができる。
又、車外側シールリップが劣化しても、車外側シールリップの付根部分に形成された肉厚部によって車外側シールリップのドアガラスへの反力(押圧力)が低下することを防止することができ、車外側シールリップがドアガラスから離間して異音が発生することを防止することができる。
車内側シールリップのドアガラスに当接しない側に形成された肉厚部を有する第4のケースでは、左記肉厚部によって車内側シールリップがドアガラスを車内側から押える力が増し、ドアガラスが振動した場合にドアガラスと車外側シールリップとが瞬間的に離間することを防止することができる。
又、車内側シールリップが劣化しても車内側シールリップのドアガラスに当接しない側に形成された肉厚部によって、車内側シールリップの変形が防止され、車内側シールリップのドアガラスへの反力(押圧力)が低下することを防止することができ、車内側シールリップがドアガラスから離間して異音が発生することを防止することができる。
なお、上記第1から第4のケース、又は、上記の4ケースの組み合わせ方法は、車両の大きさ、ドアガラスの形状、サイズ等種々の形態及びドアガラスを全閉位置よりも少し下方に位置させた状態におけるドアガラスの振動状況に応じて選択することができる。
請求項2の本発明は、車外側サブリップの付根部分から車外側シールリップの付根部分に至る車外側側壁部には、肉厚部が形成されているガラスランである。請求項2の本発明では、車外側サブリップの付根部分から車外側シールリップの付根部分に至る車外側側壁部には、肉厚部が形成されているので、車外側シールリップがドアガラスを押える力を補完する車外側サブリップの補完力が増大し、ドアガラスが振動した場合にドアガラスと車外側シールリップとが瞬間的に離間することを防止することができる。
又、車外側サブリップ及び車外側シールリップが劣化しても、肉厚部によって、車外側シールリップがドアガラスを押える力並びに車外側シールリップがドアガラスを押える力を補完する車外側サブリップの補完力の低下を少なくすることができるので、車外側シールリップがドアガラスから離間して異音が発生することを防止することができる。
請求項3の本発明は、車外側サブリップの付根部分から車外側シールリップの付根部分に至る車外側側壁部に肉厚部が形成されている車外側サブリップは、底壁側に突出しているガラスランである。車外側サブリップの付根部分から車外側シールリップの付根部分に至る車外側側壁部に肉厚部が形成されている場合には、車外側サブリップにおける車外側シールリップ側の長さは、底壁側の長さより短くなる。その結果、車外側サブリップは、車外側シールリップ側に撓み難くなり、車外側サブリップが車外側シールリップの付根部側に突出していると、車外側シールリップをドアガラス側に押す力が強くなり、ドアガラスのスムーズな上下動を妨げる場合がある。
請求項3の本発明では、車外側サブリップの付根部分から車外側シールリップの付根部分に至る車外側側壁部に肉厚部が形成されている車外側サブリップは、底壁側に突出しているので、車外側シールリップの付根部側に突出する場合に比較して撓みやすく、ドアガラスのスムーズな上下動を妨げることがない。そして、車外側シールリップがドアガラスを押える力を車外側サブリップが補い、ドアガラスが振動した場合にドアガラスと車外側シールリップとが瞬間的に離間することを防止することができる。
又、車外側サブリップ及び車外側シールリップが劣化しても、肉厚部によって、車外側シールリップがドアガラスを押える力並びに車外側シールリップがドアガラスを押える力を補完する車外側サブリップの補完力の低下を少なくすることができるので、車外側シールリップがドアガラスから離間して異音が発生することを防止することができる。
請求項4の本発明は、車外側サブリップ、車内側サブリップの肉厚部、車外側シールリップの付根部分に形成された肉厚部、車内側シールリップのドアガラスに当接しない側に形成された肉厚部、又は、車外側サブリップの付根部分から車外側シールリップの付根部分方向の車外側側壁部に形成された肉厚部の少なくともいずれか一つは、押出成形部材間を接続する型成形時に、型成形部内に形成される、又は、型成形部及び型成形部に接続される押出成形部材に連続して形成されるガラスランである。
請求項4の本発明では、車外側サブリップ、車内側サブリップの肉厚部、車外側シールリップの付根部分に形成された肉厚部、車内側シールリップのドアガラスに当接しない側に形成された肉厚部、又は、車外側サブリップの付根部分から車外側シールリップの付根部分方向の車外側側壁部に形成された肉厚部の少なくともいずれか一つは、押出成形部材間を接続する型成形時に、型成形部内に形成される、又は、型成形部及び型成形部に接続される押出成形部材に連続して形成されるので、異音発生が懸念される特定の部位に、上記の少なくともいずれか一つを形成することによって対処することができる。
又、押出成形部材間を接続する型成形時に、型成形部内に形成される、又は、型成形部及び型成形部に接続される押出成形部材に連続して形成されるので、押出成形部材には車外側サブリップ、車内側サブリップの肉厚部、車外側シールリップの付根部分に形成された肉厚部、車内側シールリップのドアガラスに当接しない側に形成された肉厚部、又は、車外側サブリップの付根部分から車外側シールリップの付根部分方向の車外側側壁部に形成された肉厚部の少なくともいずれか一つを形成する対応が不要となり、重量増やコストアップを防止することができる。
又、車外側サブリップ、車内側サブリップの肉厚部、車外側シールリップの付根部分に形成された肉厚部、車内側シールリップのドアガラスに当接しない側に形成された肉厚部、又は、車外側サブリップの付根部分から車外側シールリップの付根部分方向の車外側側壁部に形成された肉厚部を、押出成形時に、押出成形部材内に形成することに伴う押出成形部材の有する他の機能への影響を考慮・検討する必要がなくなるので、開発時間の短縮を図ることができる。
請求項5の本発明は、車外側サブリップ、車内側サブリップの肉厚部、車外側シールリップの付根部分に形成された肉厚部、車内側シールリップの前記ドアガラスに当接しない側に形成された肉厚部、又は、車外側サブリップの付根部分から車外側シールリップの付根部分に至る車外側側壁に形成された肉厚部において、車外側サブリップについては、車両下方側に向かい、突出する長さが短くなるように変化し、車内側サブリップの肉厚部、車外側シールリップの付根部分に形成された肉厚部、車内側シールリップのドアガラスに当接しない側に形成された肉厚部、車外側サブリップの付根部分から車外側シールリップの付根部分に至る車外側側壁に形成された肉厚部については、車両下方側に向かい、肉厚が減少して押出成形部材と肉厚が同じになるように変化するガラスランである。
請求項5の本発明では、車両下方側に向かい、車外側サブリップについては突出する長さが短くなるように変化するので、ガラスの上下の際に、車外側サブリップが突然に現れ、又は、車外側サブリップが突然なくなり、ガラスの動きが不規則、不安定になることを防止することができる。
一方、車内側サブリップの肉厚部、車外側シールリップの付根部分に形成された肉厚部、車内側シールリップの前記ドアガラスに当接しない側に形成された肉厚部、又は車外側サブリップの付根部分から車外側シールリップの付根部分に至る車外側側壁に形成された肉厚部については肉厚部が減少して押出成形部材に形成された押出成形部の車内側サブリップの付根部、車内側シールリップ、又は、車外側側壁と肉厚が同じになるように変化するので、ガラスの上下の際に、車内側サブリップ、車内側シールリップ、又は車外側側壁の肉厚が突然増加し、又は、肉厚が突然減少し、ガラスの動きが不規則、不安定になることを防止することができる。
請求項6の本発明は、車外側サブリップ、車内側サブリップの肉厚部、車外側シールリップの付根部分に形成された肉厚部、車内側シールリップのドアガラスに当接しない側に形成された肉厚部、又は、車外側サブリップの付根部分から車外側シールリップの付根部分に至る車外側側壁に形成された肉厚部の少なくともいずれか一つは、部分的に形成されているガラスランである。
請求項6の本発明では、車外側サブリップ、車内側サブリップの肉厚部、車外側シールリップの付根部分に形成された肉厚部、車内側シールリップのドアガラスに当接しない側に形成された肉厚部、又は、車外側サブリップの付根部分から車外側シールリップの付根部分に至る車外側側壁に形成された肉厚部の少なくともいずれか一つは、部分的に形成されているので、ドアガラスとシールリップ間の打音(異音)発生を防止するとともに軽量化を図ることができる。
車外側側壁の先端又はその近傍に形成される車外側シールリップの付根部よりも底壁側の車外側側壁の車内側から斜めに突出する車外側サブリップが形成される第1のケースでは、車外側シールリップがドアガラスを押える力を車外側サブリップが補い、ドアガラスが振動した場合にドアガラスと車外側シールリップとが瞬間的に離間することを防止することができる。
車内側側壁の先端又はその近傍に形成される車内側シールリップの付根部よりも底壁側の車内側側壁の車外側から車内側シールリップの付根部方向に斜めに突出するとともに車内側シールリップ側の付根部分に肉厚部を有する車内側サブリップが形成される第2のケースでは、車内側サブリップの付け根部分に肉厚部を有しているので、車内側サブリップがドアガラスを車内側から押える力が増大し、ドアガラスが振動した場合にドアガラスと車外側シールリップとが瞬間的に離間することを防止することができる。
又、車内側サブリップが劣化しても車内側シールリップの裏面側への反力(押圧力)が低下することを防止し、車内側シールリップがドアガラスから離間し、異音が発生することを防止することができる。
車外側シールリップの付根部分に形成された肉厚部を有する第3のケースでは、左記肉厚部によって車外側シールリップがドアガラスを車外側から押える力が増大し、ドアガラスが振動した場合にドアガラスと車外側シールリップとが瞬間的に離間することを防止することができる。又、車外側シールリップが劣化しても、車外側シールリップの付根部分に形成された肉厚部によって車外側シールリップのドアガラスへの反力(押圧力)が低下することを防止することができ、車外側シールリップがドアガラスから離間して異音が発生することを防止することができる。
車内側シールリップのドアガラスに当接しない側に形成された肉厚部を有する第4のケースでは、左記肉厚部によって車内側シールリップがドアガラスを車内側から押える力が増し、ドアガラスが振動した場合にドアガラスと車外側シールリップとが瞬間的に離間することを防止することができる。
又、車内側シールリップが劣化しても車内側シールリップのドアガラスに当接しない側に形成された肉厚部によって、車内側シールリップの変形が防止され、車内側シールリップのドアガラスへの反力(押圧力)が低下することを防止することができ、車内側シールリップがドアガラスから離間して異音が発生することを防止することができる。
上記の4ケースの内の任意に2つのケースを組み合わせた、任意に3つのケースを組み合わせた及び全てのケースを組み合わせたケースにおいても、ドアガラスが振動した場合に上記の対策が施されているので、車外側シールリップ及び車内側シールリップがドアガラスから離間し、異音が発生することを防止することができる。又、車外側シールリップ、車内側シールリップが劣化しても、ドアガラスへの反力(押圧力)が低下することを防止し、車外側シールリップ、車内側シールリップがドアガラスから離間し、異音が発生することを防止することができる。
本発明の第1の実施形態について図1から図3に基づいて説明する。図1は自動車の左側のフロントドア1を車外側からみた正面図を示す。このフロントドア1を構成するドア本体2の上部には、ドアフレーム3が装着されている。このドアフレーム3とドア本体2の上端縁とにより窓開口が形成されている。窓開口の内周縁及びドア本体2の内部にはガラスラン10が取付られ、ドアガラス4の昇降動作を案内するようになっている。なお、本発明は、左側のフロントドア1のみならず、右側のフロントドア、左右のリヤドアにも適用可能である。又、ドアガラスの昇降するスライドドアにも適用可能である。
図2(a)はガラスラン10のみを簡略化して車外側からみた正面図である。このガラスラン10はドアフレーム3の横枠部に対応する第1の押出成形部11と、フロントドア1の前側の縦枠部に対応する第2の押出成形部12と、後側の縦枠部と対応する第3の押出成形部13とにより構成されている。第1の押出成形部11の前端部は第2の押出成形部12の上端部に対し第1の型成形部14により接続されている。第1の押出成形部11の後端部は第3の押出成形部13の上端部に対し第2の型成形部15により接続されている。
ここで、ドアガラス4とガラスラン10との間における、ドアガラス4を全閉位置よりも少し下方に位置させた状態で自動車が悪路を走行する等して、ドアガラス4が車内外方向に振動する場合について説明する。ドアガラス4が最も上まで上昇し、完全に閉じられた場合は、ドアガラス4は、ガラスラン10の第1の押出成形部11と、フロントドア1の前側の縦枠部に対応する第2の押出成形部12と、後側の縦枠部と対応する第3の押出成形部13に当接して3方向から支持されているので、悪路を走行する等してもドアガラス4は車内外方向に振動しない。
ドアガラスが少し下がり、第1の押出成形部11との当接が解除されるとドアガラス4は、主にフロントドア1の前側の縦枠部に対応する第2の押出成形部12と、後側の縦枠部と対応する第3の押出成形部13に当接による2方向の支持になる。この時、自動車が悪路を走行する等したときに、ドアガラス4が車内外方向に振動し、上記の異音の問題が発生する場合がある。
更に、ドアガラス4が下がると、ドアガラス4とガラスラン10との関係では、依然としてフロントドア1の前側の縦枠部に対応する第2の押出成形部12と、後側の縦枠部と対応する第3の押出成形部13に当接による2方向の支持のままであるが、ドアガラス4はフロントドア1のベルトライン6に取付けられている、例えば、ベルトラインウェザストリップに支持されることにより、実質的に3方向で支持されるようになる。したがって、この段階では、悪路を走行する等してもドアガラス4の車内外方向への振動は極めて少なくなる。
したがって、本発明は、ドアガラス4が下がり、ガラスラン10の第1の押出成形部11との当接が解除されたときから、ドアガラス4がフロントドア1のベルトライン6に取付けられている、例えば、ベルトラインウェザストリップにも支持され、ガラスラン10を含めて実質的に3方向で支持されることになるまでの間、すなわち、ドアガラス4の支持が、主にガラスラン10のフロントドア1の前側の縦枠部に対応する第2の押出成形部12と、後側の縦枠部と対応する第3の押出成形部13に当接による2方向による区間に適用された場合に高い効果を生じるものである。
図3は、図2(b)のA−A線と対応する断面図であり、第2の型成形部15における後側の縦枠部と対応する第3の押出成形部13との連結部近傍である。ガラスラン10は、底壁20、車外側側壁30及び車内側側壁40を基本骨格とし、チャンネル状(断面が略コ字形)に形成されている。
底壁20は、略板状に形成され、底壁20の内面(ドアガラス4との当接側)には、複数本の底壁凹部22が長手方向に連続して平行に形成されている。そして、溝部21、21の車外側に形成された凸部23、23がドアチャンネル5に当接している。
車外側側壁30の車内側には、ドアガラス4に接触される車外側シールリップ31が底壁20側に向けて形成され、車外側側壁30の先端部分には、車外側シールリップ31とは反対側に向けて車外側カバーリップ32が形成されている。車外側カバーリップ32は車外側シールリップ31とともにドアガラス4の車外側面を2重にシールすることができるので、雨水や埃、騒音の侵入を防止し、シール性を向上させることができる。
又、車外側側壁30の先端に形成された車外側シールリップ31より底壁20側の車内側から底壁20とは反対側に斜めに突出した車外側サブリップ33が形成されている。車外側サブリップ33は、車外側シールリップ31がドアガラス4と摺接する際に、車外側シールリップ31の裏面(車外側)に当接する。なお、車外側サブリップ33は、底壁20側に斜めに突出して形成されてもよい。
一方、車外側側壁30の車外側には、円弧状の湾曲部を有するドアチャンネル5に係止される車外側保持リブ34、車外側当接リブ35が形成されている。更に、車外側シールリップ31及び車外側カバーリップ32の付け根部分には、車外側に向けて係止部36が形成され、ドアチャンネル5の端部を固定している。
車内側側壁40の先端にはドアガラス4に接触される車内側シールリップ41が底壁20側に向けて形成されている。又、車内側側壁40の車内側には、底壁20との連結部近傍に、円弧状の湾曲部を有するドアチャンネル5の湾曲部に係止される車内側保持リップ44と、車内側当接リップ45が形成されている。車内側保持リップ44と車内側当接リップ45によって、車内側側壁40が湾曲したドアチャンネル5に保持されている。
車内側側壁40の先端の車内側シールリップ41の反対側(車内側)には、車内側カバーリップ42が形成されている。なお、図では、車内側カバーリップ42は、車内側シールリップ41から連続する形状に描かれているが、これには限定されない。車内側カバーリップ42は、ドアチャンネル5の先端に当接し、雨水や埃、騒音の侵入を防止し、シール性を向上させることができる。
この結果、車外側サブリップ33は、車外側シールリップ31の裏面に当接し、ドアガラス4を全閉位置よりも少し下方に位置させた状態で悪路を走行する等して、ドアガラス4が振動した場合に、車外側シールリップ31がドアガラス4を押える力を車外側サブリップ33が補い、車外側シールリップ31のドアガラス4側がドアガラス4から離間することを防止し、異音の発生を防止することができる。
図4は、本発明の第2の実施形態を示すものであり、上記の第1の実施形態である車外側サブリップ33に代えて、車内側側壁40の先端に形成された車内側シールリップ41より底壁20側の車内側側壁40の車外側から車内側シールリップ41の付根部方向に斜めに突出するとともに付け根部分に肉厚部46を有する車内側サブリップ43を形成したものである。それ以外は、第1の実施形態の同じである。又、車内側サブリップ43の付け根部分の肉厚部46は、後側の縦枠部と対応する第3の押出成形部13に形成されている押出成形部車内側サブリップ47(図7)に比較して肉厚に形成されている。本実施形態も第2の型成形部15における後側の縦枠部と対応する第3の押出成形部13との連結部近傍である。
この結果、車内側サブリップ43は、ドアガラス4を全閉位置よりも少し下方に位置させた状態で悪路を走行する等して、ドアガラス4が振動した場合に、車内側シールリップ41の車外側がドアガラス4から離間することを防止し、異音の発生を防止することができる。
更に、車内側サブリップ43の肉厚部46は、肉厚のため、車内側サブリップ43が劣化しても車内側シールリップ41裏面側への反力(押圧力)の低下が防止され、車内側シールリップ41がドアガラス4から離間し、異音が発生することを防止することができる。なお、図4においては、車内側サブリップ43の肉厚部46が、第3の押出成形部13に形成されている押出成形部車内側サブリップ47(図7)に比較して肉厚になっていることがわかるように、肉厚部分を強調して描かれている。
なお、車内側サブリップ43は、ドアガラス4が本体内で車内側に大きく変位したときに、車内側シールリップ41が車内側側壁40に密着することを防止して、異音の発生防止と、ドアガラス4の側端部を保持する役割も有している。
図5から図7は、本発明の第3の実施形態を示すものであり、上記の第1の実施形態である車外側サブリップ33と、第2の実施形態である肉厚部46が形成された車内側サブリップ43の両方を有するものである。又、本実施形態の形成部は、型成形時に、型成形部及び型成形部に接続される押出成形部材に連続した領域に形成した。
図5は、図3及び図4と同じ位置であり、第3の押出成形部13との連結部近傍である。図6に示すように、少し下方の位置では、車外側サブリップ33及び車内側サブリップ43の肉厚部46は、車両下方側に向かい、車外側サブリップ33については、図5に比較して、車外側サブリップ33の長さが短くなっており、車内側サブリップ43については、図5に比較して、肉厚部46の肉厚が減少している。そして、図7に示すように、更に下方の位置では、車外側サブリップ33が消失しており、車内側サブリップ43については、第3の押出成形部13に形成された押出成形部車内側サブリップ47の肉厚と同じになっている。図7は、第3の押出成形部13の断面図である。
この結果、車外側シールリップ31がドアガラス4を車外側から押える力を車外側サブリップ33が補い、車内側サブリップ43の肉厚部46によってドアガラス4を車内側から押える力が増大しているので、ドアガラス4が振動した場合にドアガラス4と車外側シールリップ31とが瞬間的に離間することを防止することができる。又、車内側サブリップ43の付け根部分に肉厚部46を有しているので、車内側サブリップ43が劣化しても車内側シールリップ41裏面側への反力(押圧力)の低下を防止し、車内側シールリップ41がドアガラス4から離間し、異音が発生することを防止することができる。
又、型成形部及び型成形部に接続される押出成形部材に連続して形成される車外側サブリップ33は長さが短くなるように変化し、車内側サブリップ43は、付け根部分の肉厚部46が減少して押出成形部材に形成された押出成形部車内側サブリップ47と肉厚が同じになるように変化するので、ドアガラス4の上下の際に、車外側サブリップ33が突然出現、消滅し、又、車内側サブリップ43の肉厚が突然増減し、ドアガラス4の動きが不規則、不安定になることを防止することができる。
更に、型成形時に、型成形部及び型成形部に接続される押出成形部材に連続して形成されるので、押出成形部材には車外側サブリップ33、車内側サブリップ43の肉厚部46を形成する対応が不要となり、重量増やコストアップを防止することができる。又、車外側サブリップ33、車内側サブリップ43の肉厚部46を形成することに伴う押出成形部材の有する他の機能への影響を考慮・検討する必要がなくなるので、開発時間の短縮を図ることができる。
なお、本第3の実施形態では、車外側サブリップ33と車内側サブリップ43の肉厚部46を両方有し、ドアガラス4を両側から押える力が増大しているので、第1の実施形態に比べて車外側サブリップ33を細く形成することができ、第2の実施形態に比べて車内側サブリップ43の肉厚部46の肉厚を薄くすることができる。
図8は、本発明の第4の実施形態を示すものであり、上記の第2の実施形態に加えて、車外側シールリップ31の付根部分に形成された肉厚部48を有するものである。又、本実施形態の形成部は、型成形時に、型成形部及び型成形部に接続される押出成形部材に連続した領域に形成した。
この結果、ドアガラス4を全閉位置よりも少し下方に位置させた状態で悪路を走行する等して、ドアガラス4が振動した場合に、車外側シールリップ31のドアガラス4側がドアガラス4から離間することを防止し、又、車内側シールリップ41の車外側がドアガラス4から離間することを防止することにより、異音の発生を防止することができる。
又、車内側サブリップ43及び車外側シールリップ31が劣化してもドアガラス4に対する車内側サブリップ43のドアガラス4の裏面側への反力(押圧力)及び車外側シールリップ31のドアガラス4の表面側への反力(押圧力)が低下することを防止し、車外側シールリップ31及び車内側シールリップ41がドアガラス4から離間し、異音が発生することを防止することができる。
なお、本第4の実施形態では、車外側シールリップ31の付根部分に形成された肉厚部48と車内側サブリップ43の肉厚部46を両方有し、ドアガラス4を両側から押える力が増大しているので、第2の実施形態に比べて車内側サブリップ43の肉厚部46の肉厚を薄くすることができる。
図9は、本発明の第5の実施形態を示すものであり、上記の第3の実施形態に加えて、車内側シールリップ41のドアガラス4に当接しない側に形成された肉厚部49を有するものである。又、本実施形態の形成部は、型成形時に、型成形部及び型成形部に接続される押出成形部材に連続した領域に形成した。
この結果、ドアガラス4を全閉位置よりも少し下方に位置させた状態で悪路を走行する等して、ドアガラス4が振動した場合に、車外側シールリップ31がドアガラス4を車外側から押える力を車外側サブリップ33が補い、車内側サブリップ43の肉厚部46と車内側シールリップ41の肉厚部49がドアガラス4を車内側から押える力が増大しているので、ドアガラス4が振動した場合にドアガラス4と車外側シールリップ31とが瞬間的に離間することを防止することができる。
又、車内側サブリップ43の付け根部分と車内側シールリップ41のドアガラス4に当接しない側に肉厚部46、肉厚部49を有しているので、車内側シールリップ41と車内側サブリップ43が劣化しても車内側シールリップ41のドアガラス4の裏面側への反力(押圧力)の低下を防止し、車内側シールリップ41がドアガラス4から離間し、異音が発生することを防止することができる。
なお、本第5の実施形態では、車外側サブリップ33、車内側サブリップ43の肉厚部46と車内側シールリップ41の肉厚部49を有し、ドアガラス4を両側から押える力が増大しているので、第3の実施形態に比べて車外側サブリップ33を更に細く形成することができ、車内側サブリップ43の肉厚部46の肉厚を更に薄くすることができる。
図10は、本発明の第6の実施形態を示すものであり、車外側シールリップ31の付根部よりも底壁20側の車外側側壁30の車内側から底壁20側に斜めに突出して形成された車外側サブリップ33と、車外側サブリップ33の付根部分から車外側シールリップ31の付根部分に至る車外側側壁30には、肉厚部50が形成されている。又、本実施形態の形成部は、型成形時に、型成形部及び型成形部に接続される押出成形部材に連続した領域に形成した。
この結果、車外側シールリップ31がドアガラス4を押える力を車外側サブリップ33と車外側サブリップ33の付根部分から車外側シールリップ31の付根部分に至る車外側側壁30に形成された肉厚部50が補い、車外側サブリップ33は、底壁20側に突出しているので、ドアガラス4のスムーズな上下動を妨げることもなく、ドアガラス4が振動した場合にドアガラス4と車外側シールリップ31とが瞬間的に離間することを防止することができる。
又、車外側シールリップ31及び車外側サブリップ33が劣化しても、肉厚部50によってドアガラス4の表面側への反力(押圧力)が低下することを防止し、車外側シールリップ31がドアガラス4から離間し、異音が発生することを防止することができる。
発明の実施形態において、ガラスラン10を構成する材料としては、ゴム、熱可塑性エラストマー、軟質合成樹脂等で形成することができる。ゴムの場合は、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)が、熱可塑性エラストマーとしては、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)や動的架橋型熱可塑性エラストマー(TPV)が耐候性、リサイクル、コスト等の観点から望ましい。
本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
上記の第3の実施形態では、車外側サブリップ33に関する車外側サブリップ33の消失と、車内側サブリップ43に関する第3の押出成形部13に形成された押出成形部車内側サブリップ47と同じ肉厚になる車両下方の位置は同じであったが、その位置は、ずれていてもよい。これは、第4、第5及び第6の実施形態、更には他のケースの組み合わせの場合においても同様である。
上記の第1及び第3の実施形態では、車外側サブリップ33は、略同一肉厚に描かれているが、第2の実施形態の車内側サブリップ43と同様に、付け根部分を肉厚に形成してもよい。この場合、車外側サブリップ33が劣化しても車外側シールリップ31の裏面側への反力(押圧力)が低下することを防止する観点から、車外側サブリップ33を車外側シールリップ31の付根部側に突出させるときは、車外側シールリップ31の付根部側を肉厚にし、車外側サブリップ33を底壁20側に突出させるときは、底壁20側を肉厚にするとよい。