JP2020155575A - 成膜用前駆体液、その製造方法、強誘電性複合酸化物薄膜、圧電素子および電子機器 - Google Patents

成膜用前駆体液、その製造方法、強誘電性複合酸化物薄膜、圧電素子および電子機器 Download PDF

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Abstract

【課題】良好な圧電特性を有する強誘電性複合酸化物薄膜をばらつきなく、かつ繰り返し再現性良く得ることのできる、成膜用前駆体液を提供する。【解決手段】強誘電性複合酸化物薄膜を形成するための前駆体化合物と複数の溶媒とを含む、成膜用前駆体液であって、前記溶媒は、主溶媒と、前記主溶媒よりも沸点の高い高沸点溶媒とを含み、前記高沸点溶媒の含有量が、前記前駆体化合物の1モル当量に対し、0.4〜0.6モル当量であることを特徴とする成膜用前駆体液。【選択図】図1

Description

本発明は、成膜用前駆体液、その製造方法、強誘電性複合酸化物薄膜、圧電素子および電子機器に関する。
インクを吐出するノズル開口と連通する圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板を圧電素子で変形させることで圧力発生室内のインクを加圧してノズル開口からインクを吐出させるインクジェット記録ヘッドには、バルク形状の圧電素子を、印加する電界方向に伸長収縮させ、振動板を前後に圧して変形させる方式と、薄膜形状の圧電素子を、印加する電界方向に対して垂直方向に伸長収縮させ、振動板をたわませて変形させる方式の2種類の圧電アクチェーターが既に知られている。
前記した圧電アクチュエータとして用いられる圧電体材料として、ペロブスカイト型の強誘電体であるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)材料がよく知られている。このPZT材料は、他の材料と比較して極めて良好な圧電性並びに強誘電性を有すると共に、利用可能な温度範囲が広い特徴を有することから、圧電アクチュエータのみならず、強誘電性を生かした電子デバイスなどの幅広い分野に応用されている。
前記したPZT材料を使用して、特に薄膜形状の圧電アクチュエータを製作する場合、下部電極を成膜したシリコンウェハ上に、各種成膜方法、例えばPZT結晶膜形成用の前駆体液を用いたゾルゲル法、スパッタ法、CVD法などの多くの手法にて通常1〜3μmの厚さのPZT結晶膜を成膜した後、さらに多数の公知技術が知られているSi-MEMSプロセス加工が、前記PZT結晶膜に加えられることによって、圧電アクチュエータを製作する。そして、さらに他の構成部品と組み合わせることによって、インクジェットヘッド等の各種アプリケーションに利用されている。
特許文献1には、電気機械変換素子、液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置が開示され、好ましいアクチュエータ性能を出現するPZT結晶膜のX線回折強度プロファイルが開示されている。
また特許文献2には、圧電体薄膜素子及びインクジェット記録ヘッド、並びにインクジェット式画像形成装置が開示され、PZT結晶膜を成膜・製作するための下部電極構成・構造が開示されている。
しかし、インクジェットヘッドに、より高度な性能、例えばより高粘度なインクの採用、あるいはより厳しい耐久性・長寿命などが要求されるに従い、インクジェットヘッドに搭載される圧電アクチュエータに求められる性能がより高度になると同時に、アクチュエータとなるPZT結晶膜(圧電性結晶膜)に許容される品質ばらつきの範囲がより狭くなり、従来技術ではPZT結晶膜の品質を管理するのに十分ではなくなったという問題点があった。
また、成膜されるPZT結晶膜の品質が、使用する前駆体液の合成ロットによって、より狭い範囲に規定されるようになった品質仕様を満足したり、満足できなかったりと、繰り返し再現性を保証できなくなるという問題点があった。
したがって本発明の目的は、良好な圧電特性を有する強誘電性複合酸化物薄膜をばらつきなく、かつ繰り返し再現性良く得ることのできる、成膜用前駆体液を提供することにある。
上記課題は、下記構成1)により解決される。
1)強誘電性複合酸化物薄膜を形成するための前駆体化合物と複数の溶媒とを含む、成膜用前駆体液であって、
前記溶媒は、主溶媒と、前記主溶媒よりも沸点の高い高沸点溶媒とを含み、
前記高沸点溶媒の含有量が、前記前駆体化合物の1モル当量に対し、0.4〜0.6モル当量である
ことを特徴とする成膜用前駆体液。
本発明によれば、良好な圧電特性を有する強誘電性複合酸化物薄膜をばらつきなく、かつ繰り返し再現性良く得ることのできる、成膜用前駆体液が提供される。
前駆体液のTG-DTA分析結果のTg曲線を示す図である。 前駆体液を用いたPZT結晶膜成膜プロセス(ゾルゲル法、化学溶液法)のフロー図である。 本発明の実施形態で採用している前駆体液の合成フロー図である。 GC-MS分析の結果得られた前駆体液中の酢酸2-メトキシエチル含有率と、その前駆体液を使用して成膜したPZT結晶膜の結晶性との関係を示す図である。 本発明に係る圧電素子の一例の断面模式図である。 本発明に係る液体吐出ヘッドの一例の断面模式図である。 本発明に係る液体を吐出する装置の一例を示す模式図である。 本発明に係る液体を吐出する装置の他の例を示す模式図である。 本発明に係る液体吐出ユニットの一例を示す模式図である。 本発明に係る液体吐出ユニットの他の例を示す模式図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。
なお、以下の実施形態では、強誘電性複合酸化物薄膜としてPZT結晶膜を用いた場合について説明する。
本実施形態において、前駆体化合物は、酢酸鉛-2-メトキシエチルとジルコニウム2-メトキシエトキシドとチタニウム2-メトキシエトキシドに相当する。
また主溶媒は、2−メトキシエタノールであり(沸点=125℃)、高沸点溶媒は、酢酸2−メトキシエチル(沸点=145℃)である。
本発明において主溶媒、高沸点溶媒としては、上記以外に主溶媒として2−エトキシエタノール(沸点:135℃)、高沸点溶媒として酢酸2−エトキシエチル(沸点:156℃)が挙げられる。
本発明者らは、前駆体液ではなぜ、合成ロット間でPZT結晶膜の品質・性状がその要求仕様を満足したり、満足できなかったりと、繰り返し再現性を保証できなくなるのか、詳細な分析を行った。
図1は、前駆体液のTG-DTA分析結果のTg曲線を示す図である。図1のグラフから分かるように、PZT結晶膜の要求仕様を満足した合成ロット(OKロット)の前駆体液は、430-550℃の温度領域にて急激な重量減少を示す一方、PZT結晶膜の要求仕様を満足できなかった合成ロット(NGロット)の前駆体液では、前記温度領域における重量減少が緩やかであるという違いが認められた。なお、TG-DTA分析全体を通しての最終的な重量減少率には顕著な差異は認められなかった。またTG-DTA分析の加熱条件は室温〜750℃、昇温速度:10℃/minであり、使用分析装置はリガク社製Thermoplus EVO IIである。
ここで前駆体液を用いたPZT結晶膜成膜プロセス(ゾルゲル法、化学溶液法)のフロー図を図2に示す。
図2のフロー図では、PZT結晶膜成膜プロセスは塗布工程、乾燥工程、仮焼工程および結晶化工程を順次含み、塗布工程では下部電極を成膜したシリコンウェハ上への前駆体液のスピンコートを行う。ここで前駆体液とは、PZT結晶膜を得るのに用いる成膜用前駆体液(以下、前駆体液と呼ぶことがある)である。乾燥工程では約120℃のホットプレートが用いられ、仮焼工程では380〜420℃のホットプレートにより熱分解、脱脂が行われ、結晶化工程ではRTA装置を用いて昇温速度20℃/sec以上で700〜750℃の条件で結晶化が行われる。通例、塗布工程ないし仮焼工程を3回程度実施した後に1回結晶化工程に投入するプロセスを1セットとし、所望の膜厚になるまで前記工程のセットを繰り返す。
前記した430-550℃の温度領域は、図2に示したフロー図における、仮焼工程ないし結晶化工程の温度領域に相当する。この温度領域におけるTG-DTA分析にて急速な重量減少を示すOKロットを使用すると、得られるPZT結晶膜の結晶性状が良好かつそのばらつきが極狭い幅に抑えられている一方、前記温度領域における重量減少が緩やかなNGロットでは、結晶性状のばらつきが大きくなり、PZT結晶膜の要求仕様を満足できないという結果となった。
前記した分析結果、成膜プロセス、得られたPZT結晶膜の評価結果を検討した結果、結晶化工程初期の昇温プロセスの極短い時間内に、仮焼工程後のアモルファス膜中に残留しかつ結晶化に不要な(有機物)成分を除去(焼失)させることができる前駆体液ロットを使用すると、結晶化プロセスが阻害されることが少なく結晶成長を進めることができるため、結晶性状が良好かつそのばらつきが極狭い幅に抑えられたPZT結晶膜が得られることが分かった。一方、結晶化に不要な成分の除去に比較的長い時間を要する前駆体液ロットを使用して得られるPZT結晶膜は、結晶化に不要な成分に阻害されながら結晶成長が進む結果、その結晶性状・品質のばらつきが大きくなり、極狭い範囲に厳密に規定されるようになった結晶膜仕様を満足できなくなることが分かった。
そこで、前記のような合成ロット間における前駆体液の違いについて明らかにするため、前駆体液のEGA-MS分析を行った。
その結果、前記430-550℃の温度領域にて発生するガスから検出された成分はCO2とH2Oのみであり、また該発生ガス中のCO2の量は、H2Oの十数倍に見積れることができた。したがって前記発生ガス中のCO2、言い換えると430-550℃の温度領域で重量減少を生じさせているCO2は、前駆体液に含まれる化合物を構成するアルキル基などの側鎖が分解・燃焼しているのでなく、何らかの分子構造中からの「脱炭酸」が生じていると考察できた。
図3は、本発明の実施形態で採用している前駆体液の合成フロー図である。
本発明では、出発材料として酢酸鉛三水和物、ジルコニウムプロポキシド、チタニウムイソプロポキシド、主溶媒(共通溶媒)として2-メトキシエタノールを使用する手法を採用している(非特許文献1: M.Sayer, G Yi, M Sedlar “Comparative Sol-Gel Processing of PZT Thin Films”, Integrated Ferroelectrics, 7, 1995, pp.247-258)。
図3において、酢酸鉛三水和物を化学両論組成に基づき秤量した後、反応装置に投入し、酢酸鉛三水和物を主溶媒としての2-メトキシエタノールに、例えば80℃の温度条件下、溶解する。
ここで本発明における主溶媒とは、用いられる溶媒中、最も多量に使用される溶媒を意味する(質量基準)。
続いて、例えば溶液温度が125〜135℃の設定された温度になるまで加熱し、所定時間この溶液温度を保持する還流を行い、酢酸鉛三水和物を脱水すると同時に反応中の留出物を回収する。
次に、ジルコニウムプロポキシドおよびチタンイソプロポキシドを化学両論組成に基づき秤量した後、反応装置に投入する。このときの溶液温度は室温ないし80℃程度に調整する。
その後、アルコキシド交換反応を行う。溶液温度が125〜135℃の設定された温度になるまで加熱し、所定時間この溶液温度を保持する還流を行い、反応中の留出物を回収する。
このようにして前駆体液が得られるが、合成溶液(前駆体液)の調整・仕上げ工程として、PZT結晶膜を形成する前駆体化合物の目的濃度を考慮して、溶媒や安定剤を必要に応じて追加投入し、フィルタリングを行う。
また前記合成フロー中に生じている化学反応については、下記の化学反応式(1)〜(6)に示す(非特許文献2:Sangeeta D. Ramamurithi and David A.Payne “Structural Investigations of Prehydrolyzed Precursors Used in the Sol-Gel Processing of Lead Titanate”, J.Am.Ceram.Soc., 73(8), 1990, pp.2547-51)。
前記化学反応式より、430-550℃の温度領域で「脱炭酸」を生じさせる前駆体液中成分について考察すると、前駆体液合成反応中の副反応(化学反応式(2)の一部、(5)および(6)。前駆体化合物を生成する反応とは直接的な関係の無い反応)に相当する、出発材料の酢酸鉛三水和物の酢酸基とジルコニウム/チタニウムアルコキシドのアルコール基との間、あるいは主溶媒の2-メトキシエタノールとの間に生じたエステル反応による酢酸エステル類(を構成するカルボキシル基)が「脱炭酸」の発生源たりうると考察できる。つまり、主溶媒(2-メトキシエタノール)およびPZT前駆体化合物以外に、前駆体液中に(不純物として)存在する酢酸エステル化合物が「脱炭酸」の発生源、特に、その中でも酢酸2-メトキシエチルが、合成反応中の溶液温度(125-135℃が通例)のみならず、成膜プロセスのスピンコート後の乾燥温度(120℃が通例)より高い沸点(145℃)を有していることより、「脱炭酸」の発生源であると考察した。
実際、前駆体液のGC-MS分析を行うと、他の酢酸エステル(酢酸n-プロピルおよび酢酸i-プロピル。沸点はそれぞれ102℃および89℃)は極微量のみ検出される、あるいは未検出である一方、酢酸2-メトキシエチルは、前駆体液中の前駆体化合物のモル当量に対して、数十%相当量も前駆体液中に(不純物として)含まれていること、また前駆体液の合成ロット間でその含有率が比較的大きくばらついていることが明らかになった。
さらに、前駆体液に含まれる酢酸2-メトキシエチルの量と、前記TG-DTA分析での430-550℃の温度領域における重量減少の度合い、さらには得られるPZT結晶膜の結晶性状ばらつきとも相関関係があることが認められた。その相関関係について、前駆体液に含まれる酢酸2-メトキシエチルの量が多くなるに従って430-550℃の温度領域における重量減少が増加し、特に酢酸2-メトキシエチルの含有量が前駆体化合物の1モル当量に対し、0.4〜0.6モル当量である場合に、前記温度領域において急激な重量減少を示す。そしてまた、前駆体液に酢酸2-メトキシエチルが前駆体化合物の1モル当量に対し、0.6モル当量を超える場合は、逆に前記温度領域における重量減少が酢酸2-メトキシエチルの含有量増加とともに鈍くなることが明らかになった。
以上の結果から、成膜されるPZT結晶膜の品質が、使用する前駆体液の合成ロットによって、より狭い範囲に規定されるようになった品質仕様を満足したり、満足できなかったりと、繰り返し再現性を保証できなくなるという問題点の原因は、合成ロット間にて、前駆体液中に含まれる酢酸2-メトキシエチルの量がばらついていたためということが明らかになった。
なお、前駆体液中の酢酸2-メトキシエチル量とPZT結晶膜成膜プロセスにおける昇温過程(430-550℃の温度領域)の重量減少挙動について、塗布工程以降の反応工程中に生成される副反応生成物である酢酸2-メトキシエチルは、次に乾燥工程に投入されるが、乾燥温度(120℃)が酢酸2-メトキシエチルの沸点(145℃)より低い設定になっているため、その相当量が乾燥膜(前駆体化合物の乾燥ゲル)中に残存・取り込まれた状態となる。その状態にて、酢酸2-メトキシエチルは、エステル溶媒の働きとして乾燥膜の柔軟性・保湿性の維持、並びに前駆体化合物のゲル化(加水分解・重縮合反応)進行の雰囲気を保持する役割を果たす。続く仮焼工程、さらに結晶化工程において、酢酸2-メトキシエチルは、PZT前駆体化合物分子間に入って分子間の距離を制御すること、また自身が分解・燃焼することによって、前駆体化合物の燃焼(有機物成分の分解→アモルファス化)とその後の結晶化を促進する。
その結果、前駆体液中の酢酸2-メトキシエチル含有率が増加するに従って、PZT前駆体化合物の結晶化が促進され、得られるPZT結晶膜の品質が向上(結晶性状ばらつきが低下)するが、過剰に前駆体液中の酢酸2-メトキシエチル含有率が増加するようになると、逆に酢酸2-メトキシエチルの存在が結晶化の阻害要因となって、得られるPZT結晶膜の品質が低下(結晶性状ばらつきが増加)する。
図4は、GC-MS分析の結果得られた前駆体液中の酢酸2-メトキシエチル含有率(前駆体液中のPZT前駆体のモル当量に対する比)と、その前駆体液を使用して成膜したPZT結晶膜の結晶性との関係を示す図である。ここで言う結晶性とは、PZT結晶膜のXRD分析における(200)ピーク位置のばらつきとした。PZT結晶膜の(200)ピーク位置ならびに強度と圧電特性の間には、強い相関関係が存在する。そのため、良好かつばらつきの極小さい圧電特性のアクチュエータを得るためには、(200)ピーク位置のばらつきが極小さいPZT結晶膜を成膜する必要がある。そしてそのためには、酢酸2-メトキシエチルの含有量が、前駆体化合物の1モル当量に対し、0.4〜0.6モル当量である前駆体液を使用して成膜を行うことが好適であると判明した。なお、GC-MS分析は、島津製作所製GC-2014(FIDキャピラリ)を用い、XRD分析には、BRUCKER製X線回折装置D8 DISCOVERを使用した。
本発明では、前駆体液中の酢酸2-メトキシエチル含有率とPZT結晶膜の結晶性との関係を利用し、前駆体液の合成フローで生成される副生成物、特に前駆体液の主溶媒よりも沸点の高い温度で、かつPZT結晶膜成膜プロセス中の乾燥工程の乾燥温度より高い沸点を有する副生成物の酢酸エステル溶媒の前駆体液中含有率を、適切に管理する手法を採用したので、極狭い許容範囲に規定された結晶性状・品質を有するPZT結晶膜を繰り返し再現性良く得るのに必要な前駆体液を得ることができる。
前記化学反応式(1)〜(6)に示された化学反応を制御する(化学反応式の左辺から右辺への反応を進める速度・進捗率を制御する)、また反応中に生成される副生成物(結晶水、エステル、エステル水)と溶媒混合物からなる留出物の回収量を制御するには、PZT結晶膜成膜プロセス中の溶液温度および加熱条件を適切に管理することである。その制御・管理について具体的に述べると、溶液温度を高めにすればするほど、反応プロセス時間(加熱・還流時間)を長くすればするほど、化学反応が進み、また留出物の回収量は増加する。
本発明では、前駆体化合物の生成反応(鉛、ジルコニウム、チタン各出発材料に生じるアルコール交換反応)は、十分に進行させると同時に、副生成物のひとつ、酢酸2-メトキシエチルについては積極的に留出・回収せずに適切な量だけ前駆体液中に残留させることを意図している。そこで、本発明では、酢酸2-メトキシエチルの含有量を前駆体化合物の1モル当量に対し、0.4〜0.6モル当量に設定するには、溶液温度を主溶媒の沸点(2-メトキシエタノール:125℃)以上で加熱・還流させるプロセス時間を長めに設定すると同時に、溶液温度が過度に上昇することを抑えることが挙げられる。なお、プロセス時間管理の基準点として主溶媒の沸点を採用するのは、前記した化学反応式(1)〜(6)に示された化学反応、また低沸点の副生成物(水、酢酸プロピル類)がほぼすべて反応容器の外に留出・回収されたタイミングと判断できるためである。また、本発明では、前記前駆体液の調整・仕上げ工程の前に、前駆体液中の酢酸2-メトキシエチル含有量の分析を行い、その分析結果によっては、反応時間を延長したり、あるいは調整・仕上げ工程にて適当量の酢酸2-メトキシエチルの添加を行うこともできる。
本発明の強誘電性複合酸化物薄膜は、チタン酸ジルコン酸鉛からなるPZT結晶膜であるのが好適であり、該PZT結晶膜は、PbZrXTi(1-X)O3(0.40<x≦0.60)で表されるペロブスカイト型結晶の強誘電性複合酸化物薄膜が好ましく、PbZr0.53Ti0.47O3で示されるMPB組成を有するものが最適である。
次に、本発明の強誘電性複合酸化物薄膜、圧電素子および電子機器について説明する。
本発明の強誘電性複合酸化物薄膜は、前記前駆体液の結晶化物からなる。
本発明の圧電素子は、本発明の強誘電性複合酸化物薄膜の上面と下面に夫々電極を設けてなる。
本発明の電子機器は、本発明の圧電素子の駆動によって稼働する、液体吐出ヘッド、液体吐出ヘッドを備えたプリンター/印刷装置などの液体吐出装置および液体吐出ユニット等が挙げられる。
以下、前記電子機器の一例として液体吐出ヘッド、液体吐出装置、液体吐出ユニットについて説明する。
本発明に係る強誘電性複合酸化物薄膜(以下、PZT結晶膜積層構造体と言う)の一実施形態について、図5を用いて説明する。図5は、本発明に係る圧電素子の一例の断面模式図である。本発明の圧電素子は、本発明の強誘電性複合酸化物薄膜の上面と下面に夫々電極を設けてなり、本発明の強誘電性複合酸化物薄膜は、前記前駆体液の結晶化物からなる。また、本実施形態のPZT結晶膜積層構造体を有する液体吐出ヘッドについて、図6を用いて説明する。図5及び図6は断面を模式的に示している。
図5には基板10、振動板11、下地膜20(密着層21、下部電極22、配向性制御層23)、圧電体膜30(PZT結晶膜)、上部電極40(導電性酸化物層41、上部電極層42)、保護層50が図示されている。
図5において、下地膜20、圧電体膜30および上部電極40によって、本発明の圧電素子60が構成されている。
また、図6には、ノズル孔79、ノズル基板80、加圧液室70が図示されている。各構成を説明する。
<基板>
基板10としては、シリコン単結晶基板を用いることが好ましく、100〜600μmの厚みを持つことが好ましい。面方位としては、(100)、(110)、(111)の3種が挙げられ、半導体産業では一般的に(100)、(111)が広く使用されている。本実施形態においては、主に(100)の面方位を持つ単結晶基板を使用している。
また、図6に示すような加圧液室70を作製する場合、エッチングを利用してシリコン単結晶基板を加工するが、この場合のエッチング方法としては、異方性エッチングを用いることが一般的である。
異方性エッチングとは結晶構造の面方位に対してエッチング速度が異なる性質を利用したものである。例えばKOH等のアルカリ溶液に浸漬させた異方性エッチングでは、(100)面に比べて(111)面は約1/400程度のエッチング速度となる。
従って、面方位(100)では約54.74°の傾斜を持つ構造体が作製できるのに対して、面方位(110)では深い溝をほることができるため、より剛性を保ちつつ、配列密度を高くすることができる。本実施形態としては(110)の面方位を持った単結晶基板を使用することも可能である。ただし、この場合、マスク材であるSiOもエッチングされてしまうということが挙げられるため、この辺りも留意して利用することが好ましい。
<振動板>
振動板11としては、図6に示すように圧電体膜30によって発生した力を受けて、振動板11が変形変位して、加圧液室70のインク滴を吐出させる。そのため、振動板11としては所定の強度を有するものであることが好ましい。
なお、振動板11は単一の材料で構成してもよいし、複数の材料で複数の膜を積層して構成してもよい。
振動板11の形成方法は、スパッタ法、スパッタ法と熱酸化法の組み合わせ、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法等が挙げられる。本実施形態では、積層する場合は、LPCVD(Low Pressure CVD)法により作製したものを用いている。LPCVD法で成膜された膜で構成された振動板においては、半導体、MEMSデバイスで一般的に従来から適用されている膜であり、加工もしやすいことから、新たなプロセス課題を持ち込まないため好ましい。また、SOI(Silicon on Insulator)等の高価な基板を用いることなく、安定した振動板が得られる。
振動板11の表面粗さとしては、算術平均粗さで4nm以下が好ましい。この範囲を超えると、その後成膜したPZTの絶縁耐圧が非常に悪く、リークしやすくなることがある。
振動板11の材料としては、ポリシリコン、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜やその組み合わせ等が挙げられる。
振動板11における一例を説明する。
まず、(100)の面方位を持つシリコン単結晶基板に振動板構成膜として、例えばLPCVD法(あるいは熱処理製膜法で)でシリコン酸化膜(例えば厚さ200nm)を成膜し、その後ポリシリコン膜(例えば厚さ500nm)を成膜する。ポリシリコン層の厚さが0.1〜3μm、表面粗さが算術平均粗さで5nm以下であることが望ましい。次に振動板構成膜として、LPCVD法でシリコン窒化膜を成膜する。
<下地膜>
次に、振動板11上に形成される下地膜20について説明する。図示されているように、密着層21、下部電極22、配向性制御層23は下地膜20を形成し、配向性制御層23は圧電体膜30の結晶性を左右するものとなるため特に重要である。
密着層21は必ずしも積層される必要があるわけではないが、下部電極22に白金(Pt)等を使用する場合には、振動板11との密着性を考慮し、Ti、TiO、Ta、Ta、Ta等からなる密着層21を積層することが好ましい。密着層21の作製方法としては、スパッタ法や真空蒸着等の真空成膜が一般的である。
下地膜20の膜厚としては、20〜500nmが好ましく、100〜300nmがさらに好ましい。
密着層21の膜厚としては、50〜90nmが好ましい。
下部電極22の膜厚としては、140〜200nmが好ましい。
配向性制御層23の膜厚としては、5〜10nmが好ましい。
また、下部電極22の材料としては、(111)配向性が高いPtが好ましく、X線回折によりPtの結晶性を評価したときに、そのピーク強度の高いPt膜が得られる。
下部電極22上に配向性制御層23を成膜する。配向性制御層としては、酸化チタン又はチタン酸鉛が好ましい。酸化チタン膜は、その上に積層するゾルゲル液のPZTとの反応を生じ、TiリッチなPZT結晶膜を生成することができるため、好ましい。Tiリッチな膜はPZT(100)の結晶源として働き、さらに積層するPZT結晶膜の(100)又は(001)主配向を形成できる。
配向性制御層23としては、酸化チタン膜でなくとも、直接チタン酸鉛であってよい。チタン酸鉛は直接的にPZT(100)の結晶源として働き、さらに積層するPZT結晶膜の(100)又は(001)主配向を形成できるため、好ましい。
<PZT結晶膜>
次に、本実施形態に係る圧電体膜30(PZT結晶膜)について説明する。
圧電体膜30は、本発明の前駆体液から作製することができる。
圧電体膜30は、スパッタ法もしくはゾルゲル法を用いてスピンコーターにより作製することができる。その場合は、パターニングが必要となるので、フォトリソエッチング等により所望のパターンを得る。
本発明においては、特にゾルゲル法であることが好ましく、ゾルゲル法によりPZT結晶膜を形成する場合、PZT結晶膜の前駆体液を配向性制御層23に塗布し、焼成することにより形成する。PZT結晶膜は1層であってもよいが、塗布及び焼成を繰り返して形成することが好ましい。すなわち、前駆体液の塗布及び焼成を複数繰り返す工程を行ってPZT結晶膜を形成する。この場合、前駆体液の塗布及び焼成を複数繰り返す工程を行い、この工程の後、さらに加熱し、PZT結晶膜を形成することが好ましい。
これは、2段階の焼成とも称される。ゾルゲル液のスピンコート後の焼成として、有機成分を放出させるための加熱(1段階目)と膜を結晶化させるためのより高温での加熱(2段階目)の2段階焼成を行うことが好ましい。1段階目の加熱はスピンコート毎に実施し、2層目、3層目と同様の1段階目の加熱をした後に、3層まとめて2段階目のより高温の焼成を行う。
PZTをゾルゲル法により作製する場合、出発材料に酢酸鉛、ジルコニウムアルコキシド、チタンアルコキシド化合物を出発材料にし、共通溶媒としてメトキシエタノールに溶解させ均一溶液を得ることで、PZT前駆体液を作製できる。
金属アルコキシド化合物は大気中の水分により容易に加水分解してしまうので、前駆体液に安定剤としてアセチルアセトン、酢酸、ジエタノールアミンなどの安定化剤を適量、添加してもよい。
前記アルコキシドとしては、メトキシエトキシドであることが好ましく、前駆体液は、酢酸鉛と、Tiのメトキシエトキシドと、Zrのメトキシエトキシドとを含むことが好ましい。
下地の全面にPZT結晶膜を得る場合、スピンコートなどの溶液塗布法により塗膜を形成し、溶媒乾燥、熱分解、結晶化の各々の熱処理を施すことでPZT結晶膜が得られる。塗膜から結晶化膜への変態には体積収縮が伴うので、クラックフリーな膜を得るには一度の工程で100nm以下の膜厚が得られるように前駆体液の濃度を調整することが好ましい。
PZT結晶膜の膜厚としては0.5〜5μmが好ましく、さらに好ましくは1μm〜2μmである。上記範囲より小さいと十分な変位を発生することができなくなり、上記範囲より大きいと何層も積層させていく場合、工程数が多くなりプロセス時間が長くなる。
<上部電極>
本実施形態の上部電極40は導電性酸化物層41と上部電極層42から構成されている。上部電極としては特に制限はなく、Al、Cuなどの一般に半導体プロセスで用いられる材料及びその組み合わせが挙げられる。また、導電性酸化物層41、上部電極層42は特に制限されるものではないが、導電性酸化物層41としては、PZTとの密着性がよく、同じペロブスカイト系の構造を持つSRO(SrRuO3)が好ましく、上部電極層42としては、Ptが好ましい。
また、導電性酸化物層41の厚みとしては、35〜50nmが好ましい。
また、上部電極層42の厚みとしては、100〜150nmが好ましい。
<保護層>
保護層50の材料としては、酸化アルミニウム、酸化タンタル等が挙げられる。
保護層50の厚みとしては、40〜70nmが好ましい。
保護層50としては、例えばALD(Atomic Layer Deposition)法により形成することができる。
(液体吐出装置、液体吐出ユニット)
次に、本発明に係る液体吐出装置の一例について図7及び図8を参照して説明する。図7は同装置の要部平面説明図、図8は同装置の要部側面説明図である。
この装置は、シリアル型装置であり、主走査移動機構493によって、キャリッジ403は主走査方向に往復移動する。主走査移動機構493は、ガイド部材401、主走査モータ405、タイミングベルト408等を含む。ガイド部材401は、左右の側板491A、491Bに架け渡されてキャリッジ403を移動可能に保持している。そして、主走査モータ405によって、駆動プーリ406と従動プーリ407間に架け渡したタイミングベルト408を介して、キャリッジ403は主走査方向に往復移動される。
このキャリッジ403には、本発明に係る液体吐出ヘッド404及びヘッドタンク441を一体にした液体吐出ユニット440を搭載している。液体吐出ユニット440の液体吐出ヘッド404は、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の液体を吐出する。また、液体吐出ヘッド404は、複数のノズル11からなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配置し、吐出方向を下方に向けて装着している。
液体吐出ヘッド404の外部に貯留されている液体を液体吐出ヘッド404に供給するための供給機構494により、ヘッドタンク441には、液体カートリッジ450に貯留されている液体が供給される。
供給機構494は、液体カートリッジ450を装着する充填部であるカートリッジホルダ451、チューブ456、送液ポンプを含む送液ユニット452等で構成される。液体カートリッジ450はカートリッジホルダ451に着脱可能に装着される。ヘッドタンク441には、チューブ456を介して送液ユニット452によって、液体カートリッジ450から液体が送液される。
この装置は、用紙410を搬送するための搬送機構495を備えている。搬送機構495は、搬送手段である搬送ベルト412、搬送ベルト412を駆動するための副走査モータ416を含む。
搬送ベルト412は用紙410を吸着して液体吐出ヘッド404に対向する位置で搬送する。この搬送ベルト412は、無端状ベルトであり、搬送ローラ413と、テンションローラ414との間に掛け渡されている。吸着は静電吸着、あるいは、エアー吸引などで行うことができる。
そして、搬送ベルト412は、副走査モータ416によってタイミングベルト417及びタイミングプーリ418を介して搬送ローラ413が回転駆動されることによって、副走査方向に周回移動する。
さらに、キャリッジ403の主走査方向の一方側には搬送ベルト412の側方に液体吐出ヘッド404の維持回復を行う維持回復機構420が配置されている。
維持回復機構420は、例えば液体吐出ヘッド404のノズル面(ノズル11が形成された面)をキャッピングするキャップ部材421、ノズル面を払拭するワイパ部材422などで構成されている。
主走査移動機構493、供給機構494、維持回復機構420、搬送機構495は、側板491A,491B、背板491Cを含む筐体に取り付けられている。
このように構成したこの装置においては、用紙410が搬送ベルト412上に給紙されて吸着され、搬送ベルト412の周回移動によって用紙410が副走査方向に搬送される。
そこで、キャリッジ403を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて液体吐出ヘッド404を駆動することにより、停止している用紙410に液体を吐出して画像を形成する。
このように、この装置では、本発明に係る液体吐出ヘッドを備えているので、高画質画像を安定して形成することができる。
次に、本発明に係る液体吐出ユニットの他の例について図9を参照して説明する。図9は同ユニットの要部平面説明図である。
この液体吐出ユニットは、前記液体を吐出する装置を構成している部材のうち、側板491A、491B及び背板491Cで構成される筐体部分と、主走査移動機構493と、キャリッジ403と、液体吐出ヘッド404で構成されている。
なお、この液体吐出ユニットの例えば側板491Bに、前述した維持回復機構420、及び供給機構494の少なくともいずれかを更に取り付けた液体吐出ユニットを構成することもできる。
次に、本発明に係る液体吐出ユニットの更に他の例について図10を参照して説明する。図10は同ユニットの正面説明図である。
この液体吐出ユニットは、流路部品444が取付けられた液体吐出ヘッド404と、流路部品444に接続されたチューブ456で構成されている。
なお、流路部品444はカバー442の内部に配置されている。流路部品444に代えてヘッドタンク441を含むこともできる。また、流路部品444の上部には液体吐出ヘッド404と電気的接続を行うコネクタ443が設けられている。
本発明において、「液体吐出装置」は、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
また、「液体」は、インク、処理液、DNA試料、レジスト、パターン材料、結着剤、造形液、又は、アミノ酸、たんぱく質、カルシウムを含む溶液及び分散液なども含まれる。
また、「液体吐出装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
また、「液体吐出装置」としては他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液をノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
「液体吐出ユニット」とは、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体である。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
例えば、液体吐出ユニットとして、図8で示した液体吐出ユニット440のように、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、図9で示したように、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
また、液体吐出ユニットとして、図10で示したように、ヘッドタンク若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。
また、「液体吐出ヘッド」は、使用する圧力発生手段が限定されるものではない。例えば、上記実施形態で説明したような圧電アクチュエーター(積層型圧電素子を使用するものでもよい。)以外にも、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエーター、振動板と対向電極からなる静電アクチュエーターなどを使用するものでもよい。
また、本発明の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
本発明の圧電素子を備えた圧電装置は、本発明の圧電素子を備えることを特徴とし、上記の液体吐出ヘッド、液体吐出ユニットおよび液体吐出装置以外にも、アクチュエータ、センサ、スピーカ、超音波モータ、光学機器、振動装置、撮像装置等が挙げられる。
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されない。なお、以下の実施例は、強誘電性複合酸化物薄膜としてPZT結晶膜を用いた例である。
実施例1
前記化学反応式(1)〜(6)、図2に示したPZT結晶膜成膜プロセスのフロー図および図3に示した前駆体液の合成フロー図に従って前駆体液の合成を行った。
出発材料として関東化学製の酢酸鉛三水和物(24038 特級)、シグマ・アルドリッチ製のジルコニウムプロポキシド溶液(333972)、チタンイソプロポキシド(205273)、主溶媒としてシグマ・アルドリッチ製の2-メトキシエタノール(284467 脱水)を用いた。酢酸鉛三水和物の脱水工程中では、狙いのPZT組成に合わせて秤量・溶解させた酢酸鉛三水和物/2-メトキシエタノール溶液を、主溶媒沸点以上の温度にて18時間の加熱・還流操作と留出物の回収を行った。脱水工程完了時点での溶液温度(脱水工程中の最高溶液温度)は130℃であった。
続いて溶液温度を70℃まで低下させた状態にて、化学量論組成にて秤量したジルコニウム並びにチタン出発材料を投入した後、再度加熱・還流操作と留出物の回収を行った。このアルコキシド交換反応工程にて、主溶媒沸点以上の温度で行った加熱・還流操作時間は12時間、アルコキシド交換反応工程完了時点での溶液温度(アルコキシド交換反応工程中の最高溶液温度)は128℃であった。
前記全工程中にて回収した留出物量並びに溶液温度の履歴が工程管理幅であったことを確認の上、合成溶液を回収し、安定剤として規定量の関東化学製の酢酸(01021-00 特級)を添加するとともに、規定の前駆体化合物濃度に合わせて主溶媒を追加・調整し、さらに規定メッシュサイズにてフィルタリングを行って前駆体液の仕上げ作業を行った。
そして、仕上げた前駆体液について、日立ハイテクノロジー製分光光度計U-3900Hにて紫外〜可視光領域における吸光スペクトルを測定し、λ=400nm波長において14%の吸光度であることを確認した。
なお本発明者らの検討によれば、前駆体液の吸光度は、PZT結晶膜の結晶性状および最終的なアクチュエータ性能と相関関係を有することを見い出している。具体的には、前記吸光度は、波長λ=400nmで測定し、測定された吸光度が10%を超える場合に、成膜したPZT結晶膜の結晶性状さらにはPZT結晶膜品質が良好となる。
また、島津製作製GC-MS分析装置 GC-2014(FIDキャピラリ)による分析の結果、この前駆体液中の酢酸2-メトキシエチル含有量が前駆体化合物の1モル当量に対し、0.53モル当量であることを確認した。
そしてこの前駆体液を使用して図2に示すPZT結晶膜成膜プロセスに従って厚さ2μmのPZT結晶膜を成膜し、その結晶性状をBRUCKER製X線回折装置D8 DISCOVERにて測定した。
その結果、「(100)面及び/又は(001)面に優先配向されたペロブスカイト型構造を有する複合酸化物で構成され、X線回折のθ−2θ法による測定で得られた回折強度のピークのうち(200)面に対応する回折強度のピークにおいて回折強度が最大となる位置(2θ)のウェハ内平均値に対するウェハ内ピーク位置ばらつき(3σ)の比」が0.14%と、十分小さく抑えられていることが確認できた。なお、前記比は、アクチュエータ機能のばらつきと強い相関を有することが本発明者らの検討により判明している。
実施例2
実施例1と同様の手順にて前駆体液の合成を行った。しかし、脱水工程およびアルコキシド交換工程中の溶液温度の最高値がそれぞれ132℃および130℃と高くなったとともに、回収した留出物量歴が工程管理幅を超えていた。
そこで、前駆体液の仕上げ作業を中途にて留め、密封保管するとともに、溶液中の酢酸2-メトキシエチル含有量を分析した。その結果、そのまま規定の前駆体液濃度にまで調整を行うと、酢酸2-メトキシエチル含有量が前駆体化合物の1モル当量に対し、0.40モル当量未満となることが判明したため、これに関東化学製 酢酸2−メトキシエチル(14128-00 鹿特級)を仕上げ作業完了時点にて、これが0.50モル当量となるだけの量を添加し、仕上げ作業を完了させた。
そして前記のように仕上げ作業を行った前駆体液の紫外〜可視光領域における吸光スペクトルを測定し、λ=400nm波長における吸光度が18%、また前駆体液中の酢酸2-メトキシエチル含有量が前駆体化合物の1モル当量に対し、0.50モルであることを確認の上、厚さ2μmのPZT結晶膜を成膜し、その結晶性状を測定した結果、前記「200)面に対応する回折強度のピークにおいて回折強度が最大となる位置(2θ)のウェハ内平均値に対するウェハ内ピーク位置ばらつき(3σ)の比」が0.16%と、十分小さく抑えられていることが確認できた。
10 基板
11 振動板
20 下地膜
21 密着層
22 下部電極
23 配向性制御層
30 圧電体膜
40 上部電極
41 導電性酸化物層
42 上部電極層
50 保護層
60 圧電素子
70 加圧液室
79 ノズル孔
80 ノズル基板
201 基板
202 振動板
203 圧力封止板
204 圧力室
205 第1電極
206 アクチュエータ
207 第2電極
401 ガイド部材
403 キャリッジ
404 液体吐出ヘッド
405 主走査モータ
406 駆動プーリ
407 従動プーリ
408 タイミングベルト
410 用紙
412 搬送ベルト
413 搬送ローラ
414 テンションローラ
421 キャップ部材
422 ワイパ部材
440 液体吐出ユニット
441 ヘッドタンク
442 カバー
443 コネクタ
444 流路部品
450 液体カートリッジ
451 カートリッジホルダ
452 送液ユニット
456 チューブ
491A、491B 側板
491C 背板
493 主走査移動機構
494 供給機構
495 搬送機構
特開2017−157773号公報 特許第6156068号公報

Claims (7)

  1. 強誘電性複合酸化物薄膜を形成するための前駆体化合物と複数の溶媒とを含む、成膜用前駆体液であって、
    前記溶媒は、主溶媒と、前記主溶媒よりも沸点の高い高沸点溶媒とを含み、
    前記高沸点溶媒の含有量が、前記前駆体化合物の1モル当量に対し、0.4〜0.6モル当量である
    ことを特徴とする成膜用前駆体液。
  2. 前記高沸点溶媒が、前記前駆体液を合成する反応工程中に生成される副反応生成物であることを特徴とする請求項1に記載の成膜用前駆体液。
  3. 強誘電性複合酸化物薄膜が、チタン酸ジルコン酸鉛からなる薄膜であり、前記高沸点溶媒が、酢酸−2−メトキシエチルであることを特徴とする請求項1または2に記載の成膜用前駆体液。
  4. 基板上に、請求項1〜3のいずれかに記載の成膜用前駆体液を塗布し、成膜する工程を有することを特徴とする強誘電性複合酸化物薄膜の製造方法。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載の成膜用前駆体液の結晶化物からなることを特徴とする強誘電性複合酸化物薄膜。
  6. 請求項5に記載の強誘電性複合酸化物薄膜の上面と下面に夫々電極を設けてなることを特徴とする圧電素子。
  7. 請求項6に記載の圧電素子を備えたことを特徴とする電子機器。

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