JP2020138456A - 印刷物の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】定着性に優れた印刷物を製造することができる印刷物の製造方法を提供することを目的とする。【解決手段】基材上に、樹脂を含む前処理液A及び凝集剤を含む前処理液Bをそれぞれインクジェット方式で付与する工程と、前記前処理液A及び前記前処理液Bを付与した後に、基材上に、水性インクジェットインクをインクジェット方式で付与する工程とを含み、 前記前処理液A及び前記前処理液Bは、一定の順序で基材に着弾するように吐出され、 前記前処理液A及び前記前処理液Bのうち、先に基材に着弾する前処理液の、主走査方向においてドット間の距離が最短となる2つのドット間の着弾時間差ΔTX、及び主走査方向に交差する方向においてドット間の距離が最短となる2つのドット間の着弾時間差ΔTYの少なくとも一方が10ms以上である、印刷物の製造方法。【選択図】図2

Description

本発明の実施形態は、印刷物の製造方法に関する。
インクジェット記録方法は、流動性の高いインクジェットインクを微細なノズルから液滴として噴射し、ノズルに対向して置かれた基材に画像を記録するものであり、低騒音で高速印字が可能であることから、近年急速に普及している。このようなインクジェット記録方法に用いられるインクとして、水を主溶媒として含有する水性インク、重合性モノマーを主成分として高い含有量で含有する紫外線硬化型インク(UVインク)、ワックスを主成分として高い含有量で含有するホットメルトインク(固体インク)とともに、非水系溶剤を主溶媒として含有する、いわゆる非水系インクが知られている。
水性インクは、主溶媒に水を用いることから、環境に対する負荷が少なく、また、溶媒が揮発しやすいため印刷物の乾燥性に優れる。一方で、水性インクは、基材の種類によって、基材への浸透性が十分に得られずに、画像の定着性が問題となることがある。
特許文献1には、媒体に前処理液を被覆してから、媒体にインクを噴射する液体噴射方法において、媒体の種類に応じて、浸透性の異なる複数の前処理液を重ねる順序を変えることで、前処理液の浸透性と濡れ広がり性を媒体の特質によらずに安定させ、前処理液とインクとの反応性を高めながら、前処理液の濡れ広がり性を向上させることが開示されている。
特許文献1には、第1前処理液と第2前処理液にそれぞれ凝集剤等の反応成分と溶液成分とが含まれ、第1前処理液と第2前処理液との間で反応成分は同じであるが浸透性が異なることが開示されている。
特開2017−94672号公報
特許文献1には、浸透性の高い媒体に対しては、浸透性の高い前処理液を被覆してから、浸透性の低い前処理液を被覆することで、後から着弾される浸透性の低い前処理液が媒体に浸透しないで媒体表面に残存し、インクとの反応性及び濡れ広がり性を向上させることが開示されている。
基材への画像の定着性をより高めるためには、水性インクが基材の内部にまで浸透し、色材が基材の内部まで行き渡るとよい。特許文献1の開示のように、2種類の前処理剤を媒体表面に残存させる方法では、画像の定着性が課題となる場合がある。
本発明の実施形態は、定着性に優れた印刷物を製造することができる印刷物の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の一実施形態によれば、基材上に、樹脂を含む前処理液A及び凝集剤を含む前処理液Bをそれぞれインクジェット方式で付与する工程と、前記前処理液A及び前記前処理液Bを付与した後に、基材上に、水性インクジェットインクをインクジェット方式で付与する工程とを含み、前記前処理液A及び前記前処理液Bは、一定の順序で基材に着弾するように吐出され、前記前処理液A及び前記前処理液Bのうち、先に基材に着弾する前処理液の、主走査方向においてドット間の距離が最短となる2つのドット間の着弾時間差ΔT、及び主走査方向に交差する方向においてドット間の距離が最短となる2つのドット間の着弾時間差ΔTの少なくとも一方が10ms以上である、印刷物の製造方法が提供される。
本発明の実施形態の印刷物の製造方法によれば、定着性に優れた印刷物を製造することができる。
図1は、シリアル式の記録ヘッドユニットの一例を模式的に示す上面図である。 図2は、シリアル式の記録ヘッドユニットの他の例を模式的に示す上面図である。 図3は、シリアル式の記録ヘッドユニットの他の例を模式的に示す上面図である。 図4は、シリアル式の記録ヘッドユニットによる従来例の記録方法を説明するための説明図である。
以下、本発明の実施形態を詳しく説明するが、本発明がこれらの実施形態に限定されることはなく、様々な修正や変更を加えてもよいことはいうまでもない。以下、「水性インクジェットインク」を単に「インク」または「水性インク」という場合がある。
本発明の実施形態の印刷物の製造方法は、基材上に、樹脂を含む前処理液A及び凝集剤を含む前処理液Bをそれぞれインクジェット方式で付与する工程(以下、工程1という場合もある。)と、前処理液A及び前処理液Bを付与した後に、基材上に、水性インクジェットインクをインクジェット方式で付与する工程(以下、工程2という場合もある。)とを含み、前処理液A及び前処理液Bは、一定の順序で基材に着弾するように吐出され、前処理液A及び前処理液Bのうち、先に基材に着弾する前処理液の、主走査方向においてドット間の距離が最短となる2つのドット間の着弾時間差ΔT、及び主走査方向に交差する方向においてドット間の距離が最短となる2つのドット間の着弾時間差ΔTの少なくとも一方が10ms以上である、印刷物の製造方法である。
この印刷物の製造方法により、定着性に優れた印刷物を製造することができる。
樹脂を含む前処理液Aは、インク被膜と部分的または全体的に結合し、インク被膜の基材へのアンカー効果を高めることができる。凝集剤を含む前処理液Bは、インク及び/又は前処理液Aを凝集させることができる。また、前処理液A及び前処理液Bの基材への着弾の順序が一定であると、インクの基材への浸透性のバラツキによるドット濃度のバラツキや、インクの凝集度のバラツキによるドット径のバラツキを低減することができる。また、前処理液A及び前処理液Bのうち、先に基材に着弾する前処理液が、主走査方向においてドット間の距離が最短となる2つのドット間の着弾時間差ΔT、及び主走査方向に交差する方向においてドット間の距離が最短となる2つのドット間の着弾時間差ΔTの少なくとも一方が10ms以上となるように吐出されることで、先に基材に着弾する前処理液を、着弾密度が比較的低い状態で基材に着弾させることができる。これにより、先に基材に着弾する前処理液の浸透速度を高めることができるとともに、後から基材に着弾する前処理液も基材に浸透しやすくなり、インクが基材内部に浸透して基材内部で凝集しやすくなるため、アンカー効果を得やすくすることができる。これらにより、印刷画像の基材への定着性を向上させることができる。
<基材>
実施形態の印刷物の製造方法において、基材としては、特に限定されるものではない。基材としては、普通紙、コート紙、特殊紙等の印刷用紙、布、木材基材、金属基材、ガラス基材、樹脂基材等が挙げられるが、浸透性を有する基材が好ましい。
基材としては、布が好ましい。布は、特に限定されないが、例えば、綿、絹、羊毛、麻等の天然繊維;ポリエステル、アクリル、ポリウレタン、ナイロン、レーヨン、キュプラ、アセテート等の化学繊維;又はこれらの混紡繊維等のいずれを含む布であってもよい。布は、織物、編物、または不織布等であってよい。
<前処理液A>
前処理液Aは樹脂を含むことが好ましい。樹脂は定着剤として機能することができる。
樹脂としては、例えば、水分散性樹脂、水溶性樹脂、又はそれらの組合せを用いることができる。
樹脂としては、定着性の向上の観点から、ノニオン性樹脂が好ましく、画像濃度の均一性の向上の観点から、カチオン性樹脂、ノニオン性樹脂、又はこれらの組み合わせが好ましい。
定着性向上の観点から、樹脂は、水分散性樹脂を含むことが好ましい。前処理液A中に樹脂を分散形態で含むと、定着性を向上させやすい。
水分散性樹脂は、自己乳化型樹脂のように、樹脂が親水性の官能基を有するものでもよいし、樹脂粒子表面が親水性の分散剤を付着させる等の表面処理されたものでもよい。水分散性樹脂は、水に溶解することなく粒子状に分散して水中油(O/W)型エマルションを形成できる。
水分散性樹脂としては、透明の塗膜を形成する樹脂を用いることが好ましい。
水分散性樹脂は、前処理液Aの製造に際しては、例えば、水中油型樹脂エマルションとして配合することができる。
水分散性樹脂としては、アニオン性水分散性樹脂、カチオン性水分散性樹脂、ノニオン性水分散性樹脂のいずれを用いてもよい。
アニオン性水分散性樹脂は、自己乳化型樹脂のように、樹脂がアニオン性の官能基を有するものでもよいし、樹脂粒子表面がアニオン性の分散剤を付着させる等の表面処理されたものでもよい。アニオン性の官能基としては、代表的にはカルボキシ基、スルホ基等が挙げられる。アニオン性の分散剤としては、陰イオン界面活性剤等が挙げられる。
アニオン性水分散性樹脂は、樹脂粒子表面がマイナスに帯電し、負電荷を帯びた樹脂粒子であることが好ましい。樹脂粒子の表面電荷量は、−20〜−500μeq/gが好ましく、−20〜−100μeq/gがより一層好ましい。
樹脂粒子の表面電荷量は、粒子電荷計で評価することができる。試料を中和するのに必要なアニオン量またはカチオン量を測定することで、表面電荷量を算出することができる。粒子電荷計としては、日本ルフト株式会社製コロイド粒子電荷量計「Model CAS」等を用いることができる。
カチオン性水分散性樹脂は、自己乳化型樹脂のように、樹脂がカチオン性の官能基が有するものでもよいし、樹脂粒子表面にカチオン性の分散剤を付着させる等の表面処理がされたものでもよい。カチオン性の官能基としては、代表的には第1級、第2級又は第3級アミノ基、ピリジン基、イミダゾール基、ベンズイミダゾール基、トリアゾール基、ベンゾトリアゾール基、ピラゾール基、又はベンゾピラゾール基等が挙げられる。カチオン性の分散剤としては、1級、2級、3級又は4級アミノ基含有アクリルポリマー、ポリエチレンイミン、カチオン性ポリビニルアルコール樹脂、カチオン性水溶性多分岐ポリエステルアミド樹脂等が挙げられる。
カチオン性水分散性樹脂は、樹脂粒子の表面がプラスに帯電し、正電荷を帯びた樹脂粒子であることが好ましい。樹脂粒子の表面電荷量は、20〜500μeq/gが好ましく、20〜100μeq/gがより一層好ましい。
ノニオン性水分散性樹脂は、自己乳化型樹脂のように、樹脂がノニオン性の官能基を有するものでもよいし、樹脂粒子表面がノニオン性の分散剤を付着させる等の表面処理されたものでもよい。ノニオン性の官能基としては、代表的にはポリオキシアルキレングリコール基、カルボキシ基、ヒドロキシル基等が挙げられる。ノニオン性の分散剤としては、ノニオン性界面活性剤等が挙げられる。
ノニオン性水分散性樹脂は、樹脂粒子表面がほとんど帯電していない樹脂粒子であることが好ましい。樹脂粒子の表面電荷量は、−20〜20μeq/gが好ましく、−10〜10μeq/gがより一層好ましい。
これらの水分散性樹脂のなかでも、定着性向上の観点からは、ノニオン性水分散性樹脂が好ましい。ノニオン性水分散性樹脂は、凝集剤ともインクとも凝集せずに混和するため、前処理及びインク層全体が連続被膜に成り易く、強い定着性を得られ易い。定着性の向上の観点及び画像濃度の均一性の向上の観点からは、カチオン性水分散性樹脂、ノニオン性水分散性樹脂、又はこれらの組み合わせが好ましい。
水分散性樹脂としては、例えば、エチレン−塩化ビニル共重合樹脂、(メタ)アクリル樹脂、スチレン−無水マレイン酸共重合体樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル−(メタ)アクリル共重合体樹脂、酢酸ビニル−エチレン共重合体樹脂、スチレン−(メタ)アクリル共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、オレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、水分散性メラミン樹脂、アミド樹脂、シリコーン樹脂、及びこれらの複合樹脂等において、これらの樹脂に親水性の官能基を導入するか、または、樹脂粒子表面が親水性の分散剤を付着させる等の表面処理されたもの等を用いることができる。ここで、「(メタ)アクリル樹脂」は、アクリル単位を含む樹脂、メタクリル単位を含む樹脂、およびアクリル単位及びメタクリル単位を含む樹脂を示す。
これらの水分散性樹脂のなかでも、定着性の向上の観点から、水分散性ウレタン樹脂が好ましい。
ウレタン樹脂は、一般に高い柔軟性を有するため、基材として布を用いた場合、布の伸度に耐えやすく、良好な定着性を維持しやすい。また、布基材と水素結合を形成しやすいため、布基材の繊維同士を樹脂で接着し、布の伸度を抑えてインクの伸度に近づけることができる。また、ウレタン樹脂は柔軟性が高いために、これによって接着された繊維同士も分離しにくい。
例えば、樹脂が水分散性ウレタン樹脂を含み、基材として布基材を用いることが好ましい。
水分散性ウレタン樹脂としては、カチオン性又はノニオン性水分散性ウレタン樹脂がより好ましく、ノニオン性水分散性ウレタン樹脂がさらに好ましい。
水分散性樹脂のエマルションの市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社の「スーパーフレックス500M」(商品名)(ノニオン性ウレタン樹脂のエマルション)、「スーパーフレックス740」(アニオン性ウレタン樹脂のエマルション)、株式会社村山化学研究所の「サンプレックスPUE−C200B」(商品名)(カチオン性ウレタン樹脂エマルション)、ジャパンコーティングレジン株式会社の「モビニール7720」(商品名)(ノニオン性水分散性アクリル樹脂エマルション)等が挙げられる。
水分散性樹脂は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて使用できる。
水分散性樹脂は、前処理液A全質量に対して、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましい。一方、前処理液A中の水分散性樹脂の量は、前処理液A全質量に対して、30質量%以下が好ましく、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がさらに好ましい。前処理液A中の水分散性樹脂の量は、前処理液A全質量に対して、例えば、1〜30質量%が好ましく、3〜20質量%がより好ましく、5〜15質量%がさらに好ましい。
水溶性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸中和物、アクリル酸/マレイン酸共重合体、アクリル酸/スルホン酸共重合体、スチレン/マレイン酸共重合体等が挙げられる。
水溶性樹脂は、1種を単独で、又は複数種を組み合わせて使用できる。
前処理液A中の架橋剤の量は、前処理液A全質量に対して、例えば、1〜30質量%が好ましく、3〜20質量%がより好ましく、5〜15質量%がさらに好ましい。
これらの樹脂は、1種を単独で、または複数種を組み合わせて使用することができる。
前処理液A中の樹脂の合計量は、前処理液A全質量に対して、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましい。一方、前処理液A中の樹脂の合計量は、前処理液A全質量に対して、30質量%以下が好ましく、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がさらに好ましい。前処理液A中の樹脂の合計量は、前処理液A全質量に対して、例えば、1〜30質量%が好ましく、3〜20質量%がより好ましく、5〜15質量%がさらに好ましい。
前処理液Aは、水をさらに含むことができる。例えば、前処理液Aは、主溶媒として水を含むことが好ましい。水としては、特に制限されないが、例えば、イオン交換水、蒸留水、超純水、脱イオン水等が挙げられる。
水は、前処理液A中に、前処理液A全量に対して10質量%以上含まれることが好ましく、30質量%以上含まれることがより好ましく、50質量%以上含まれることがさらに好ましい。前処理液A中の水の含有量は、例えば、前処理液A全量に対して95質量%以下であってよく、90質量%以下であってよい。前処理液A中の水の含有量は、例えば、前処理液A全量に対して10〜95質量%が好ましく、30〜90質量%がより好ましく、40〜80質量%がさらに好ましい。
前処理液Aは、水とともに、又は水に代えて、水溶性有機溶剤を含んでもよい。
水溶性有機溶剤としては、粘度調整と保湿効果の観点から、室温で液体であって水に溶解可能な水溶性有機溶剤が好ましい。たとえば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、2−メチル−2−プロパノール等の低級アルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール類;グリセリン;アセチン類(モノアセチン、ジアセチン、トリアセチン);ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコール類の誘導体;トリエタノールアミン、1−メチル−2−ピロリドン、β−チオジグリコール、スルホランを用いることができる。平均分子量200、300、400、600等の平均分子量が190〜630の範囲にあるポリエチレングリコール、平均分子量400等の平均分子量が200〜600の範囲にあるジオール型ポリプロピレングリコール、平均分子量300、700等の平均分子量が250〜800の範囲にあるトリオール型ポリプロピレングリコール等の低分子量ポリアルキレングリコールを用いることもできる。
水溶性有機溶剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
前処理液A中の水溶性有機溶剤の量は、例えば、前処理液A全量に対して、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。前処理液A中の水溶性有機溶剤の量は、例えば、前処理液A全量に対して、40質量%以下が好ましく、20質量%以下が好ましい。前処理液A中の水溶性有機溶剤の量は、前処理液A全量に対して、例えば、1〜50質量%が好ましく、10〜40質量%がより好ましい。
前処理液A中の水及び水溶性有機溶剤の合計量(どちらか一方のみ含まれる場合にはその量、以下同じ)は、前処理液A全量に対して50質量%以上が好ましく、70質量%以上より好ましく、80質量%以上であってもよい。一方、前処理液A中の水及び水溶性有機溶剤の合計量は、前処理液A全量に対して、例えば、99質量%以下又は95質量%以下であってよい。前処理液A中の水及び水溶性有機溶剤の合計量は、前処理液A全量に対して、例えば、50〜99質量%が好ましく、70〜95質量%がより好ましく、80〜90質量%であってもよい。
前処理液Aは、界面活性剤を含むことが好ましい。
界面活性剤としては、例えば、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、またはそれらの組合せを用いることができる。イオン性界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等の何れを用いてもよい。界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤が好ましい。界面活性剤のHLB値は、5〜20が好ましい。
非イオン性界面活性剤としては、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系界面活性剤、ポリオキシプロピレンアルキルフェニルエーテル系界面活性剤、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル系界面活性剤、ポリオキシプロピレン脂肪酸エステル系界面活性剤、ソルビタン脂肪酸エステル系界面活性剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル系界面活性剤、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル系界面活性剤、グリセリン脂肪酸エステル系界面活性剤等を挙げることができる。これらは、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中からアセチレングリコール系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、又はこれらの組み合わせを好ましく用いることができ、なかでもシリコーン系界面活性剤がより好ましい。
シリコーン系界面活性剤のなかでも、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤、アルキル・アラルキル共変性シリコーン系界面活性剤、アクリルシリコーン系界面活性剤等を好ましく用いることができる。シリコーン系界面活性剤の市販品としては、日信化学工業株式会社製のシルフェイスSAGシリーズ(「シルフェイスSAG002」等(商品名))等が挙げられる。
非イオン性界面活性剤としては、エアプロダクツ社製サーフィノールシリーズ(「サーフィノール104E」、「サーフィノール104H」、「サーフィノール420」、「サーフィノール440」、「サーフィノール465」、「サーフィノール485」等(いずれも商品名))及び日信化学工業株式会社製の「オルフィンE1004」、「オルフィンE1010」、「オルフィンE1020」等(いずれも商品名)などのアセチレングリコール系界面活性剤;花王株式会社製エマルゲンシリーズ(「エマルゲン102KG」、「エマルゲン103」、「エマルゲン104P」、「エマルゲン105」、「エマルゲン106」、「エマルゲン108」、「エマルゲン120」、「エマルゲン147」、「エマルゲン150」、「エマルゲン220」、「エマルゲン350」、「エマルゲン404」、「エマルゲン420」、「エマルゲン705」、「エマルゲン707」、「エマルゲン709」、「エマルゲン1108」、「エマルゲン4085」、「エマルゲン2025G」等)などのポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤等が挙げられる。
界面活性剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
界面活性剤は、前処理液A全量に対し、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましい。界面活性剤は、前処理液A全量に対し、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。界面活性剤は、前処理液A全量に対し、例えば、0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜5質量%がより好ましい。
前処理液Aは、樹脂成分を架橋するために、架橋成分をさらに含んでもよい。架橋成分としては、例えば、後述するインクに含まれてよい架橋成分から選択して用いることができる。架橋成分が配合される場合、架橋成分は、前処理液A全量に対し、0.1〜5質量%が好ましく、1〜3質量%がより好ましい。
前処理液Aは、例えば、消泡剤、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤等の任意成分をさらに含んでもよい。
前処理液Aの製造方法は、特に限定されず、公知の方法により適宜製造することができる。例えば、スリーワンモーター等の攪拌機に全成分を一括又は分割して投入して分散させ、所望により、メンブレンフィルター等のろ過機を通すことにより調製できる。
<前処理液B>
前処理液Bは凝集剤を含むことが好ましい。
凝集剤は、水性インク中の色材の分散性ないし溶解性を低下させて、色材を凝集させる作用を備えることが好ましい。
凝集剤としては、例えば、カチオン性樹脂、多価金属塩、有機酸、低極性溶剤等が挙げられる。
カチオン性樹脂としては、カチオン性水溶性樹脂及びカチオン性水分散性樹脂のいずれであってもよく、これらを組み合わせて用いてもよい。カチオン性樹脂としては、カチオン性水溶性樹脂が好ましい。
カチオン性水溶性樹脂としては、例えば、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン及びその塩、ポリビニルピリジン、カチオン性のアクリルアミドの共重合体等が挙げられる。より具体的には、例えば、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド等を用いることができる。
カチオン性水溶性樹脂の市販品の例として、例えば、第一工業製薬株式会社製シャロールシリーズ(「シャロールDC−303P」、「シャロールDC−902P」等(いずれも商品名))、センカ株式会社製ユニセンスシリーズ(「ユニセンスFCA1000L」、「ユニセンスFPA100L」等(いずれも商品名))、大阪有機化学工業株式会社HCポリマーシリーズ(「HCポリマー1S」、「HCポリマー1N」、「HCポリマー1NS」、「HCポリマー2」、「HCポリマー2L」等(いずれも商品名))などが挙げられる。
ポリエチレンイミンの市販品としては、例えば、株式会社日本触媒製エポミンシリーズ「エポミンSP−006」、「エポミンSP−012」、「エポミンSP−018」、「エポミンSP−200」等(いずれも商品名);BASFジャパン株式会社製「Lupasol FG」、「Lupasol G20 Waterfree」、「Lupasol PR 8515」(いずれも商品名)等が挙げられる。
ポリアリルアミンの市販品としては、例えば、日東紡績株式会社製の、アリルアミン重合体である「PAA−01」、「PAA−03」、「PAA−05」(いずれも商品名)、アリルアミン塩酸塩重合体である「PAA−HCL−01」、「PAA−HCL−03」、「PAA−HCL−05」(いずれも商品名)、アリルアミンアミド硫酸塩重合体である「PAA−SA」(商品名)等が挙げられる。
カチオン性水分散性樹脂としては、例えば、前処理液Aにおいて使用可能な水分散性樹脂のうちカチオン性のものを1種または2種以上選択して用いることができる。
カチオン性水分散性樹脂としては、透明の塗膜を形成する樹脂を用いることが好ましい。また、処理液の製造に際しては、水中油型の樹脂エマルションとして配合することができる。
カチオン性樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前処理液B中のカチオン性樹脂の量は、前処理液B全質量に対して、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましい。一方、前処理液B中のカチオン性樹脂の量は、前処理液B全質量に対して、30質量%以下が好ましく、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がさらに好ましい。前処理液B中のカチオン性樹脂の量は、前処理液B全質量に対して、例えば、1〜30質量%が好ましく、3〜20質量%がより好ましく、5〜15質量%がさらに好ましい。
多価金属塩としては、例えば、2価以上の金属のハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、脂肪酸塩、乳酸塩、塩素酸塩等を用いることができる。ハロゲン化物としては、塩化物、臭化物、ヨウ化物等が好ましい。2価以上の金属としては、例えば、Ca、Mg、Sr、Ba等の2価のアルカリ土類金属、Ni、Zn、Cu、Fe(II)等の2価の金属、Fe(III)、Al等の3価の金属等が挙げられ、中でもアルカリ土類金属が好ましい。
多価金属塩としては、より具体的には、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、硝酸銅、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム等が挙げられる。
多価金属塩は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前処理液B中の多価金属塩の量は、前処理液B全質量に対して、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましい。一方、前処理液B中の多価金属塩の量は、前処理液B全質量に対して、30質量%以下が好ましく、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がさらに好ましい。前処理液B中の多価金属塩の量は、前処理液B全質量に対して、例えば、1〜30質量%が好ましく、3〜20質量%がより好ましく、5〜15質量%がさらに好ましい。
有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸等が挙げられる。
凝集剤として、23℃で液体状の有機酸を用いることが好ましい。凝集剤が、基材表面に液体として付与されることで、摩擦による影響を受けにくくすることができる。また、前処理液Aをインクジェット方式を用いて付与する場合、凝集剤として液体状の有機酸を用いることで、記録ヘッドの不吐出を長期に渡って防止することができる。
23℃で液体状の有機酸として、酢酸、乳酸を好ましく用いることができ、より好ましくは乳酸である。
有機酸の沸点は120℃以上が好ましい。
工程2において、インクを充填した記録ヘッドは各前処理液を付与した基材の上部を移動しながら印刷を行う。沸点120℃以上の有機酸を用いることで、各前処理液を付与した基材から有機酸が揮発しにくくなって、記録ヘッドのノズル部分の水性インクに、揮発した有機酸が接触しないようにして、ノズル部分で有機酸による水性インクの変質を防止することができる。このため、記録ヘッドからの水性インクの吐出不良を抑制することができる。
有機酸は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前処理液B中の有機酸の量は、前処理液B全質量に対して、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がより好ましい。一方、前処理液B中の有機酸の量は、前処理液B全質量に対して、30質量%以下が好ましく、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がさらに好ましい。前処理液B中の有機酸の量は、前処理液B全質量に対して、例えば、1〜30質量%が好ましく、3〜20質量%がより好ましく、5〜15質量%がさらに好ましい。
低極性溶剤としては、例えば、脂肪族エステル溶剤、グリコールエーテル溶剤、アセテート系溶剤等を好ましく挙げることができる。
低極性溶剤としては、例えば、SP値10(cal/cm3)1/2以下の溶剤が好ましい。
ここで、SP値は、Fedors式で求められるSP値であり、具体的には、Fedorsの提唱した下記式により算出した値である。下記式において、Δeiは、i成分の原子または原子団の蒸発エネルギーであり、Δviは、i成分の原子または原子団のモル体積である(Hansen Solubility Parameters:A User’s Handbook,Second Edition,Charles M.Hansen,CRC Press,2007参照)。
δ=[(sumΔei)/(sumΔvi)]1/2
低極性溶剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前処理液B中の低極性溶剤の量は、前処理液B全質量に対して、例えば、1〜30質量%が好ましく、3〜20質量%がより好ましく、5〜15質量%がさらに好ましい。
これらのなかでも、インク及び前処理液Aに対する凝集性及び画像濃度の観点から、カチオン性樹脂、多価金属塩、有機酸、又はこれらの組み合わせが好ましい。
定着性向上の観点、画像濃度向上の観点から、凝集剤は、カチオン性樹脂、多価金属塩、及び有機酸からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。定着性の向上の観点から、凝集剤は、有機酸を含むことがより好ましい。有機酸を含むと、前処理液A中のカルボキシ基の含有量が高くなる傾向にあるため、インク、前処理液A、及び基材に対するカルボキシ基を用いた水素結合の形成により、定着性をさらに向上させることができる。
画像濃度均一性の向上及び定着性向上の観点から、前処理液Bは、インクを凝集させるが、前処理液Aの樹脂は凝集させない凝集剤を含むことが好ましい。
前処理液Aが前処理液Bにより凝集しない場合、前処理液B中の凝集剤が前処理液Aの凝集によって使用されないため、前処理液Bによるインクの凝集性能が低下しにくく、これによって画像濃度均一性を向上させることができる。
また、前処理液AがBで前処理液Bにより凝集しない場合、連続被膜を得やすくいことから、より優れた定着性を得ることもできる。
具体的には、例えば、前処理液Aが、カチオン性樹脂、ノニオン性樹脂又はこれらの組合せを含み、前処理液Bが、カチオン性樹脂、多価金属塩、有機酸、またはこれらの組合せを含むことが好ましい。
前処理液Bの凝集剤は、前処理液Aの樹脂と異なることが好ましい。
これらの凝集剤は、1種を単独で、または複数種を組み合わせて使用することができる。
前処理液B中の凝集剤の合計量は、前処理液B全質量に対して、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましい。一方、前処理液B中の凝集剤の合計量は、前処理液B全質量に対して、30質量%以下が好ましく、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がさらに好ましい。前処理液B中の凝集剤の合計量は、前処理液B全質量に対して、例えば、1〜30質量%が好ましく、3〜20質量%がより好ましく、5〜15質量%がさらに好ましい。
前処理液Bは、水をさらに含むことができる。例えば、前処理液Bは、主溶媒として水を含むことが好ましい。水としては、特に制限されないが、例えば、イオン交換水、蒸留水、超純水、脱イオン水等が挙げられる。
水は、前処理液B中に、前処理液A全量に対して10質量%以上含まれることが好ましく、30質量%以上含まれることがより好ましく、50質量%以上含まれることがさらに好ましい。前処理液A中の水の含有量は、例えば、前処理液B全量に対して95質量%以下であってよく、90質量%以下であってよい。前処理液B中の水の含有量は、例えば、前処理液B全量に対して10〜95質量%が好ましく、30〜90質量%がより好ましく、50〜90質量%がさらに好ましい。
前処理液Bは、水とともに、又は水に代えて、水溶性有機溶剤を含んでもよい。
水溶性有機溶剤としては、粘度調整と保湿効果の観点から、室温で液体であって水に溶解可能な水溶性有機溶剤が好ましい。水溶性有機溶剤としては、たとえば、前処理液Aに使用可能な水溶性有機溶剤から1種又は2種以上を選択して用いることができる。
水溶性有機溶剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
前処理液B中の水溶性有機溶剤の量は、例えば、前処理液B全量に対して、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。前処理液B中の水溶性有機溶剤の量は、例えば、前処理液B全量に対して、40質量%以下が好ましく、20質量%以下が好ましい。前処理液B中の水溶性有機溶剤の量は、前処理液B全量に対して、例えば、1〜40質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。
前処理液B中の水及び水溶性有機溶剤の合計量(どちらか一方のみ含まれる場合にはその量、以下同じ)は、前処理液B全量に対して50質量%以上が好ましく、70質量%以上より好ましく、80質量%以上であってもよい。一方、前処理液B中の水及び水溶性有機溶剤の合計量は、前処理液B全量に対して、例えば、99質量%以下又は95質量%以下であってよい。前処理液B中の水及び水溶性有機溶剤の合計量は、前処理液B全量に対して、例えば、50〜99質量%が好ましく、70〜95質量%がより好ましく、80〜90質量%であってもよい。
前処理液Bは、界面活性剤を含むことが好ましい。
界面活性剤としては、例えば、前処理液Aに配合可能な界面活性剤と同様のものを用いることができる。
界面活性剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
界面活性剤は、前処理液B全量に対し、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましい。界面活性剤は、前処理液B全量に対し、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。界面活性剤は、前処理液B全量に対し、例えば、0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜5質量%がより好ましい。
前処理液Bが樹脂成分を含む場合、前処理液Bは、樹脂成分を架橋するために、架橋成分をさらに含んでもよい。架橋成分としては、例えば、後述するインクに含まれてよい架橋成分から選択して用いることができる。架橋成分が配合される場合、架橋成分は、前処理液A全量に対し、0.1〜5質量%が好ましく、1〜3質量%がより好ましい。
前処理液Bは、例えば、消泡剤、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤等の任意成分をさらに含んでもよい。
前処理液Bの製造方法は、特に限定されず、公知の方法により適宜製造することができる。例えば、スリーワンモーター等の攪拌機に全成分を一括又は分割して投入して分散させ、所望により、メンブレンフィルター等のろ過機を通すことにより調製できる。
<水性インジェットインク>
水性インクジェットインクは、色材を含むことが好ましい。
色材としては、顔料及び染料のいずれであってもよく、顔料又は染料を単独で用いてもよく、両者を併用してもよい。印刷物の耐候性および耐水性の観点から、色材として顔料を好ましく用いることができる。
顔料としては、非白色の顔料、白色顔料、又はこれらの組み合わせを用いることができる。
非白色の顔料としては、たとえば、アゾ系、フタロシアニン系、染料系、縮合多環系、ニトロ系、ニトロソ系等の有機顔料(ブリリアントカーミン6B、レーキレッドC、ウォッチングレッド、ジスアゾイエロー、ハンザイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アルカリブルー、アニリンブラック等);コバルト、鉄、クロム、銅、亜鉛、鉛、チタン、バナジウム、マンガン、ニッケル等の金属類、金属酸化物および硫化物、ならびに黄土、群青、紺青等の無機顔料、ファーネスカーボンブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック類を用いることができる。
基材として、布等の色味や表面形状等を有する基材を用いる場合は、基材の色味等を隠蔽するために白色顔料を用いた白インクを用いて下地層を形成し、その上から画像を形成する方法がある。
白色顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、酸化アンチモン、酸化ジルコニウムなどの無機顔料が挙げられる。無機顔料以外に、中空樹脂微粒子や、高分子微粒子を使用することもできる。中でも、隠蔽力の観点から、酸化チタンを使用することが好ましい。
顔料の体積基準の平均粒子径は、50〜500nmが好ましく、50〜200nmがより好ましい。
顔料表面を親水性官能基で修飾した自己分散顔料を使用してもよい。自己分散顔料の市販品としては、たとえば、キャボット社製CAB−O−JETシリーズ(「CAB−O−JET200」、「CAB−O−JET300」、「CAB−O−JET250C」、「CAB−O−JET260M」、「CAB−O−JET270」等(いずれも商品名))、オリヱント化学株式会社製「BONJET BLACK CW−1S」、「BONJET BLACK CW−2」、「BONJET BLACK CW−3」等(いずれも商品名)などが挙げられる。
顔料を樹脂で被覆したマイクロカプセル化顔料を使用してもよい。
顔料分散剤で顔料があらかじめ分散された顔料分散体を使用してもよい。顔料分散剤で分散された顔料分散体の市販品としては、たとえば、クラリアント社製HOSTAJETシリーズ(商品名)、冨士色素株式会社製FUJI SPシリーズ(商品名)等が挙げられる。後述する顔料分散剤で分散された顔料分散体を使用してもよい。
顔料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
顔料は、その種類によっても異なるが、発色等の観点から、インク全量に対し、固形分量で0.1〜30質量%程度が好ましく、0.1〜15質量%がより好ましい。
水中に顔料を安定して分散させるために、インクは顔料分散剤をさらに含んでもよい。
顔料分散剤としては、たとえば市販品として、EVONIK社製のTEGOディスパースシリーズ(「TEGOディスパース740W」、「TEGOディスパース750W」、「TEGOディスパース755W」、「TEGOディスパース757W」、「TEGOディスパース760W」(いずれも商品名))、日本ルーブリゾール株式会社製のソルスパースシリーズ(「ソルスパース20000」、「ソルスパース27000」、「ソルスパース41000」、「ソルスパース41090」、「ソルスパース43000」、「ソルスパース44000」、「ソルスパース46000」(いずれも商品名))、ジョンソンポリマー社製のジョンクリルシリーズ(「ジョンクリル57」、「ジョンクリル60」、「ジョンクリル62」、「ジョンクリル63」、「ジョンクリル71」、「ジョンクリル501」(いずれも商品名))、BYK製の「DISPERBYK−102」、「DISPERBYK−185」、「DISPERBYK−190」、「DISPERBYK−193」、「DISPERBYK−199」(いずれも商品名)等が挙げられる。
界面活性剤型分散剤としては、たとえば、花王株式会社製デモールシリーズ(「デモールEP」、「デモールN」、「デモールRN」、「デモールNL」、「デモールRNL」、「デモールT−45」(いずれも商品名))などのアニオン性界面活性剤、花王株式会社製エマルゲンシリーズ(「エマルゲンA−60」、「エマルゲンA−90」、「エマルゲンA−500」、「エマルゲンB−40」、「エマルゲンL−40」、「エマルゲン420」(いずれも商品名))などの非イオン性界面活性剤が挙げられる。
顔料分散剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
顔料分散剤のインク中の量は、その種類によって異なり特に限定はされないが、一般に、インク全量に対し、固形分量での質量比で顔料1に対し、0.005〜0.5の範囲で配合することが好ましい。
染料としては、印刷の技術分野で一般に用いられているものを使用でき、特に限定されない。具体的には、塩基性染料、酸性染料、直接染料、可溶性バット染料、酸性媒染染料、媒染染料、反応染料、バット染料、硫化染料等が挙げられ、これらのうち、水溶性のもの及び還元等により水溶性となるものが使用できる。より具体的には、アゾ染料、ローダミン染料、メチン染料、アゾメチン染料、キサンテン染料、キノン染料、トリフェニルメタン染料、ジフェニルメタン染料、メチレンブルー等が挙げられる。これらの染料は単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
染料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
染料は、その種類によっても異なるが、発色等の観点から、水性インク全量に対し、固形分量で0.1〜30質量%が好ましく、0.5〜15質量%がより好ましく、1〜10質量%がさらに好ましい。
インクは、水を含むことが好ましい。インクは、色材及び水を含むことが好ましい。
水は、インクの溶媒として機能するものであれば特に制限されないが、例えば、イオン交換水、蒸留水、超純水、脱イオン水等が挙げられる。
水は、インク全量に対して20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましく、60質量%以上がさらに好ましい。一方、水は、インク全量に対して、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がよりに好ましく、80質量%以下がさらに好ましく、70質量%以下がさらに好ましい。水は、インク全量に対して、例えば、20〜95質量%が好ましく、30〜90質量%がより好ましく、40〜80質量%が好ましい。
インクは、水に加えて、水溶性有機溶剤を含んでもよい。
水溶性有機溶剤としては、室温で液体であり、水に溶解又は混和可能な有機化合物を使用することができ、1気圧20℃において同容量の水と均一に混合する水溶性有機溶剤を用いることが好ましい。
水溶性有機溶剤としては、例えば、前処理液Aにおいて説明した水溶性有機溶剤から1種又は2種以上を選択して用いることができる。
水溶性有機溶剤は、インク全量に対して、1〜80質量%が好ましく、5〜60質量%がより好ましく、10〜50質量%であってよく、20〜40質量%であってよい。
インクは、水分散性樹脂、水溶性樹脂又はこれらの組合せを含むことができる。インクは、水分散性樹脂及び水溶性樹脂の少なくとも一方を含むことにより、基材に色材を十分に定着させることができ、これにより、少量の色材で高い着色性を得ることができる。
水分散性樹脂の場合は、特に限定されず、例えば、前処理液Aの樹脂に使用可能な水分散性樹脂から1種または2種以上を選択して使用することができる。
水分散性樹脂としては、アニオン性水分散性樹脂、カチオン性水分散性樹脂、ノニオン性水分散性樹脂のいずれを用いてもよいが、アニオン性水分散性樹脂が好ましい。
水分散性樹脂としては、水分散性ウレタン樹脂がより好ましく、アニオン性水分散性ウレタン樹脂がさらに好ましい。
水溶性樹脂の場合は、特に限定されず、例えば、前処理液Aの樹脂に使用可能な水溶性樹脂から1種又は2種以上を選択して使用することができる。
水溶性樹脂及び水分散性樹脂の合計量は、固形分量の質量比で、色材1に対して0.1〜15が好ましく、1〜5がより好ましく、2〜4がさらに好ましい。樹脂の含有量をこの範囲にすることで、基材の表面に印刷された画像の定着性と画質を十分に確保することができる。
色材1に対する樹脂の比率が0.5以上であることで、画像の定着性をより高めることができる。色材1に対する樹脂の比率が7以下であることで、水性インクの機上安定性を改善することができる。
水分散性樹脂及び水溶性樹脂の合計量は、インク全量に対して、固形分量で、0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましい。
また、水溶性樹脂及び水分散性樹脂の合計量は、水性インク全量に対し、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。
水分散性樹脂及び水溶性樹脂の合計量は、インク全量に対して、固形分量で、例えば、0.1〜20質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましく、5〜15質量%がよりさらに好ましい。
インクは、界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤を配合することにより、インクジェット方式でインクを安定に吐出させることがより容易となり、かつ、インクの基材への浸透を適切に制御しやすくすることができるために好ましい。
界面活性剤としては、例えば、前処理液Aに配合可能な界面活性剤と同様のものを用いることができる。
界面活性剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
界面活性剤は、インク全量に対し、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましい。一方、界面活性剤量は、インク全量に対し、10質量%以下程度が好ましく、5質量%以下程度がより好ましく、4質量%以下がさらに好ましく、3質量%以下がさらに好ましい。界面活性剤の量は、例えば、インク全量に対して、0.1〜10質量%が好ましく、0.1〜5質量%がより好ましく、0.1〜4質量%がさらに好ましく、0.5〜3質量%がさらに好ましい。
インクは、樹脂成分を架橋させて塗膜を強化し、定着性をより高めるために、架橋成分を含んでもよい。架橋成分としては、例えば、ブロックイソシアネート、オキサゾリン基含有化合物、(ポリ)カルボジイミド、アジリジン等が挙げられる。
架橋成分は、インク全量に対して、0.1〜5質量%が好ましく、1〜3質量%がより好ましい。
インクには、上記の成分以外に、例えば、消泡剤、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤等の任意成分をさらに添加してもよい。
インクのpHは、インクの保存安定性の観点から、7.0〜10.0が好ましく、7.5〜9.0がより好ましい。
インクの粘度は適宜調節することができるが、たとえば吐出性の観点から、23℃における粘度が1〜30mPa・sであることが好ましい。
インクの製造方法は、特に限定されず、公知の方法により適宜製造することができる。例えば、スリーワンモーター等の攪拌機に全成分を一括又は分割して投入して分散させ、所望により、メンブレンフィルター等のろ過機を通すことにより調製できる。
<印刷物の製造方法>
以下、前処理液A、前処理液B、及び水性インクを用いて印刷物を製造する方法について説明する。
まず、一実施形態による工程1について説明する。工程1では、基材上に、前処理液A及び前処理液Bをそれぞれインクジェット方式で付与する。
インクジェット方式としては、特に限定されず、一般的な記録ヘッドを用いた方式を用いることができる。例えば、シリアル式記録ヘッドを用いたシリアル式、又は、ラインヘッド式記録ヘッドを用いたラインヘッド式を用いることができるが、シリアル式が好ましい。
凝集剤を含む前処理液Bを吐出するノズル部と、水性インクを吐出するノズル部とが近傍に配置されると、水性インクを吐出するノズル部のみが配置される構成では問題にならないが、前処理液Bを吐出するノズル部から凝集剤を含むミストが発生して、水性インクを吐出するノズル部に付着することがある。これによって、水性インクがノズル部で凝集してノズル詰まりが発生し、吐出不良の原因となることがある。ラインヘッド式インクジェット記録装置では、ライン状のノズル列のうち1個のノズルが不吐出になっても画像へ与える影響が大きくなる。そのため、凝集剤を含む前処理液Bを用いる場合は、シリアル式インクジェット記録装置を用いることが好ましい。
シリアル式の場合、先に着弾する前処理液の基材への浸透速度を高めやすく、後から着弾する前処理液も基材に浸透しやすくなり、インクが基材内部で凝集しやすくなるため、アンカー効果をさらに得やすくすることができる。
一実施形態では、前処理液A及び前処理液Bは、一定の順序で基材に着弾するように吐出されることが好ましい。これによれば、定着性の向上及び画像濃度の均一性の向上を図ることができる。
具体的には、基材に対して、先に前処理液Aを吐出し、次いで前処理液Bを吐出して、基材に前処理液A及び前処理液Bがこの順で着弾する方法であってよい。又は、基材に対して、先に前処理液Bを吐出し、次いで前処理液Aを吐出し、基材に前処理液B及び前処理液Aがこの順で着弾する方法であってよい。
前処理液Aと前処理液Bが、基材の水性インクが付与される記録領域全面において、基材に一定の順序で着弾することで、インクの基材への浸透性の変化を抑制することができる。例えば、シリアル式の場合、双方向印刷をすることで生産性が上がる。一方、シリアル式で双方向印刷を行う場合、往路と復路とで2種の前処理液の着弾順序が変わると、インクの基材への浸透も影響を受けやすい。これを、例えば、前処理液Aがインクを凝集させるが、前処理液Bを凝集させない場合について説明する。
基材上に、1番目に前処理液A、2番目に前処理液Bが着弾する場合、インクと前処理液Bとが基材表層上で直接接触することで、基材表面でインクの凝集が起きやすい。このため、インクが基材表面に残りやすく、画像濃度が高くなる傾向にある。一方、基材上に、1番目に前処理液B、2番目に前処理液Aが着弾する場合、前処理液Bは、後から基材に着弾した前処理液Aに押されるように基材内部まで浸透し、インクも、凝集剤と接触することが可能な基材深度まで浸透するため、1番目に前処理液A、2番目に前処理液Bが着弾する場合と比較して画像濃度が低くなる傾向にある。このような2つの場合が混在すると、定着性の低下及び画像濃度の不均一の原因となり得る。
一方、前処理液A及び前処理液Bが一定の順序で基材上に着弾すると、インクの基材への浸透性のバラツキを低減することができる。これにより、定着性を向上させることができ、画像濃度の均一性も向上させることができる。
前処理液A及び前処理液Bは、一定の順序で基材に着弾するように吐出されればよく、その順序は限定されないが、画像濃度均一性を向上させる観点からは、前処理液A、次いで前処理液Bの順に基材上に着弾するように吐出されることが好ましい。
前処理液Aが先に着弾すると、後から着弾する前処理液Bとインクとが基材表面で凝集しやすく、画像濃度が高くなる傾向があり、画像濃度均一性を向上させやすい。
前処理液Aと前処理液Bとを一定の順序で基材に着弾するように吐出する方法は、特に限定されない。例えば、後述する、シリアル式インクジェット方式を用いた例、及びラインヘッド式インクジェット方式を用いた例で説明した方法を用いることができる。
一実施形態では、前処理液A及び前処理液Bのうち、少なくとも先に基材に着弾する前処理液の、主走査方向においてドット間の距離が最短となる2つのドット間の着弾時間差ΔT(以下、「着弾時間差ΔT」又は「ΔT」とも記す。)、及び主走査方向に交差する方向においてドット間の距離が最短となる2つのドット間の着弾時間差ΔT(以下、「着弾時間差ΔT」又は「ΔT」とも記す。)の少なくとも一方(以下、「着弾時間差ΔT」又は「ΔT」とも記す。)が10ms以上であることが好ましい。前処理液A及び前処理液Bのうち、先に基材に着弾する前処理液で形成されるドットの、ΔT及びΔTの少なくとも一方(着弾時間差ΔT)を10ms以上とすることで、2つの前処理液の浸透性を高め、インク被膜のアンカー効果を得やすくし、画像の定着性を向上させることができる。
ここで、「主走査方向(以下、主走査方向Xとも記す。)」は、ドットが連続して吐出される方向であり、シリアル式では記録ヘッドの主走査方向となり、ラインヘッド式では記録ヘッドの長手方向となる。そして、「主走査方向に交差する方向(以下、方向Yとも記す。)」は、ドットが連続して吐出される主走査方向に交差する方向であれば、主走査方向に直角に交差する方向であってもよく、主走査方向に直角以外の角度で交差する方向であってもよい。典型的なインクジェット記録装置では、主走査方向Xに直交する方向に基材が搬送され、主走査方向Xに直交する方向にドット間の距離が最短となる2つのドットが着弾するようになる。
樹脂は浸透性が悪い傾向があり、例えば、水分散性樹脂は粒子状で浸透しにくい傾向があり、水溶性樹脂は水分の揮発により増粘して浸透しにくくなる傾向がある。しかし、着弾時間差ΔTを10ms以上とすることで、樹脂を含む前処理液を用いた場合でも、2つの前処理液の浸透性を高めることができる。
着弾時間差ΔTは、10ms以上が好ましく、20ms以上がより好ましく、100ms以上がさらに好ましい。
一方、着弾時間差ΔTは、30s以内が好ましく、5s以内がより好ましく、3s以内がさらに好ましい。30sを超えると、先に基材に着弾する前処理液の乾燥及び/又は成膜が始まり、浸透性が劣る場合がある。
例えば、着弾時間差ΔTは10ms〜5sが好ましく、20ms〜3sがより一層好ましい。
なお、着弾時間差ΔT及びΔTは、少なくとも一方が10ms以上であればよく、両方が10ms以上であってもよい。着弾時間差ΔT及びΔTのそれぞれの好ましい範囲は、上記したΔTと同様である。
着弾時間差ΔTを10ms以上とする方法はとくに限定されない。例えば、シリアル式で吐出を行うことでもよい。
シリアル式で吐出を行う場合、例えば、主走査方向Xにおいてドット間の距離が最短となる2つのドット間の着弾時間差ΔTを10ms以上としてもよい。この場合では、例えば、シリアル式の記録ヘッドの主走査方向Xの移動速度を制御して、ΔTを10ms以上に調節することができる。あるいは、例えば、シリアル式の記録ヘッドの主走査方向Xの着弾位置を所定の距離以上となるように制御して、着弾時間差ΔTを10ms以上に調節することができる。さらには、これらを組み合わせてもよい。
また、シリアル式で吐出を行う場合、例えば、主走査方向に交差する方向Yにおいてドット間の距離が最短となる2つのドット間の着弾時間差ΔTを10ms以上としてもよい。この場合では、例えば、主走査方向に直交する方向に基材を搬送するシリアル式インクジェット記録装置を用いることで、シリアル式の記録ヘッドを主走査方向Xに走査しながら前処理液を第1のラインに吐出し、基材を搬送方向に1ライン分移動させてから、基材上の次の第2ラインに同様にして前処理液を吐出する際に、基材の搬送速度、記録ヘッドの移動速度等を制御して、着弾時間差ΔTを10ms以上に調節することができる。
上記した着弾時間差ΔTと、着弾時間差ΔTとは、それぞれ単独で、又は組み合わせて制御してもよい。
この主走査方向においてドット間の距離が最短となる2つのドット間の着弾時間差ΔT及び主走査方向に交差する方向においてドット間の距離が最短となる2つのドット間の着弾時間差ΔTの測定方法としては、インクジェット液滴の吐出速度と、搬送速度またはシリアル駆動速度と、吐出順番とから算出することが出来る。
例えば、シリアル式の記録ヘッドを用いる場合において、着弾時間差ΔTは、典型的には、記録ヘッドのノズル部から連続して吐出される、ドット間の距離が最短となる2つの液滴の吐出間隔とほぼ一致する。
また、シリアル式の記録ヘッドを用いる場合において、記録ヘッドが双方向で前処理液を吐出する場合では、記録ヘッドが往路で基材上の先の第1ラインに前処理液を吐出し、基材が搬送方向に1ライン分移動してから、記録ヘッドが復路で基材上の第2ラインに前処理液を吐出するため、典型的には、記録ヘッドの主走査方向Xの端部の折り返し地点近傍で、主走査方向に交差する方向Yにおいて隣りあうドットの着弾時間差が最小となる。そのため、この構成では、着弾時間差ΔTは、基材の1ライン分の搬送時間とほぼ一致する。
また、シリアル式の記録ヘッドを用いる場合において、記録ヘッドが一方向で前処理液を吐出する場合では、記録ヘッドが往路で基材上の先の第1ラインに前処理液を吐出し、基材が搬送方向に1ライン分移動しながら、記録ヘッドが復路で前処理液を吐出しないで往路の始点に戻り、次いで記録ヘッドが往路で基材上の次の第2ラインに前処理液を吐出するため、典型的には、基材が搬送方向に1ライン分移動する時間、及び記録ヘッドが復路で往路の始点まで戻る時間のうちいずれか短い方の時間が、着弾時間差ΔTとほぼ一致する。
また、ラインヘッド式の記録ヘッドは、基材が搬送方向に移動しながら、ライン状の記録ヘッドから液滴を吐出するため、基材の搬送方向において液滴の吐出間隔とΔTがほぼ一致する。また、ラインヘッド式の記録ヘッドでは、通常の吐出方法では、主走査方向Xにおいて液滴が基材にほぼ同じタイミングで着弾するため、着弾時間差ΔTを10ms以上とする方が簡単な制御方法のため好ましい。
前処理液A及び前処理液Bのいずれも、着弾時間差ΔT及び着弾時間差ΔTの少なくとも一方(着弾時間差ΔT)が10ms以上であることがより好ましい。すなわち、先に基材に着弾する前処理液の着弾時間差ΔTと、次に基材に着弾する前処理液の着弾時間差ΔTがいずれも10ms以上であることが好ましい。なお、先に基材に着弾する前処理液の着弾時間差ΔTが10ms以上であって、次に基材に着弾する前処理液の着弾時間差ΔTが10ms未満であってもよい。
前処理液A及び前処理液Bは、少なくともインクを付与する記録領域に付与されることが好ましい。前処理液A及び前処理液Bは、例えば、水性インクによる記録領域のみに付与されてもよく、水性インクによる記録領域以外に付与されてもよい。前処理液A及び前処理液Bは、基材の一部又は全面に付与されてもよい。
前処理液A及びBそれぞれの基材への付与量は、特に限定されない。例えば、基材として布を用いる場合、前処理液A及びBの付与量は、それぞれ独立に、付与面積当たりの不揮発分量として0.1g/m〜50g/mが好ましく、1g/m〜20g/mがより好ましく、2〜20g/mがより好ましい。
次に、一実施形態による工程2について説明する。工程2では、前処理液A及び前処理液Bを付与した後に、基材上に、水性インクジェットインクをインクジェット方式で付与する。
工程2において水性インクジェットインクを吐出する方式は、インクジェット方式であればとくに限定されない。ラインへッド式及びシリアル式のいずれであってもよいが、シリアル式が好ましい。
また、工程1及び工程2は、同一のインクジェット記録装置で行うことが好ましい。
インクの基材への付与量は特に限定されないが、例えば、基材として布を用いる場合、風合いの観点から、布の単位面積あたりの不揮発分量として、0.1g/m〜50g/mが好ましく、1g/m〜30g/mがより好ましく、2〜20g/mがより好ましい。
工程1及び/又は工程2で用いるインクジェット記録装置としては、ピエゾ方式、静電方式、サーマル方式など、いずれの方式のものであってもよく、例えば、デジタル信号に基づいて記録ヘッドからインク及び/又は前処理液の液滴を吐出させ、吐出された液滴を基材上に付着させるようにすることができるものが好ましい。
工程1及び工程2について、シリアル式インクジェット方式を用いた例、及びラインヘッド式インクジェット方式を用いた例を用いて、より具体的に説明する。
シリアル式インクジェット記録装置は、主走査方向Xに移動可能に取り付けられ、ノズル部を備えるシリアル式記録ヘッドと、この記録ヘッドに対向する位置に基材を搬送する搬送装置とを備える。このシリアル式記録ヘッドを主走査方向Xに移動させながら、ノズル部からインクを吐出する動作と、主走査方向と交差する搬送方向Yに基材を移動させる動作とを繰り返して、基材に画像を記録することができる。
シリアル式インクジェット記録装置の一例は、主走査方向Xに移動可能な記録ヘッドユニットと、基材を搬送方向Yに搬送する搬送装置とを備え、記録ヘッドユニットは、第1の記録ヘッド、第2の記録ヘッド、及び第3の記録ヘッドを少なくとも備える。記録ヘッドユニットは駆動ベルトによって主走査方向Xに往復移動可能となっている。この例では、例えば、前処理液A及び前処理液Bの一方が第1の記録ヘッドに供給され、前処理液A及び前処理液Bの他方が第2の記録ヘッドに供給され、水性インクが第3の記録ヘッドに供給され、それぞれの記録ヘッドから前処理液A、前処理液B、及び水性インクが吐出されることで、基材上にこれらを積層して画像を記録することができる。
基材の搬送装置は、インクジェット記録装置に記録ヘッドユニットを固定しておき、搬送ローラ等を用いて基材を搬送方向Yに移動させて記録ヘッドユニットと対向する位置を通過させるものであってよい。また、基材の搬送装置は、基材を載置部に固定して載置しておき、記録ヘッドユニットを移動させて、相対的に基材を搬送方向Yに搬送させるものであってもよい。好ましくは、記録ヘッドユニットの主走査方向に直交する方向に基材を搬送する。
また、記録装置は、印刷中又は印刷前後の任意の段階で、基材を加熱する加熱装置を備えてもよい。加熱装置によって基材を加熱することで、各前処理液及び水性インクの乾燥を促進させることができる。また、各前処理液及び水性インクが樹脂分を含む場合は、樹脂膜の形成を促進させることができる。
また、記録装置は、印刷しようとする画像データを入力するための入力装置を備えてもよい。入力装置としては、スキャナ又はパソコンから取り込まれる画像データを受信する外部入力部を備えることができる。この画像データに基づいて、各記録ヘッドからの水性インクの吐出を制御し、また、水性インクが吐出される記録領域に前もって各前処理液を吐出することができる。
一実施形態によるシリアル式インクジェット記録装置は、例えば、前処理液A及び前処理液Bの一方が供給される第1の記録ヘッドと、前処理液A及び前処理液Bの他方が供給される第2の記録ヘッドと、水性インクが供給される第3の記録ヘッドとを備えるシリアル式記録ヘッドユニットを有し、第1の記録ヘッドから前処理液A及び前処理液Bの一方を基材の記録領域に付与する工程、第2の記録ヘッドから前処理液A及び前処理液Bの他方を基材の記録領域に付与する工程、及び第3の記録ヘッドから水性インクを基材の記録領域に付与する工程をこの順序で行うことができる。これによれば、基材上に、前処理液A及び前処理液Bの一方、前処理液A及び前処理液Bの他方、及び水性インクがこの順序で積層されて、前処理液A及び前処理液Bが一定の順序で基材に着弾されて、画像が記録された印刷物を得ることができる。
具体的な一方法としては、第1の記録ヘッド、第2の記録ヘッド、及び第3の記録ヘッドを、記録ヘッドユニットの主走査方向にこの順序に配置し、記録ヘッドユニットを主走査方向の一方方向に移動させながら、第1の記録ヘッドから前処理液A及び前処理液Bの一方、第2の記録ヘッドから前処理液A及び前処理液Bの他方、及び第3の記録ヘッドから水性インクをこの順序で基材の記録領域に付与することができる。
図1に、一実施形態によるシリアル式記録ヘッドユニットの一例を模式的に示す上面図を示す。
図1に示す記録ヘッドユニット100では、主走査方向Xに沿って、往路(図中左から右方向、以下同じ)の下流側から第1の記録ヘッド11、第2の記録ヘッド12、及び第3の記録ヘッド13がこの順序で列状に配置されている。第3の記録ヘッド13は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、及びイエロー(Y)の4色の水性インクごとに4個の記録ヘッド13K、13C、13M、及び13Yを備える。符号13K、13C、13M、13Y、及び100について、後述する図2及び4も同様である。
そして、第1の記録ヘッド11に前処理液Aを供給し、第2の記録ヘッド12に前処理液Bを供給し、第3の記録ヘッド13に水性インクを供給して、記録ヘッドユニット100を主走査方向Xの往路方向に移動させながら、第1の記録ヘッド11から前処理液Aを吐出し、第2の記録ヘッド12から前処理液Bを吐出し、第3の記録ヘッド13から水性インクを吐出することで、基材上に前処理液A、前処理液B、及び水性インクをこの順序で付与することができる。つまり、前処理液A及び前処理液Bは、この順で基材に着弾する。
この記録ヘッドユニット100の構成では、この付与順序は主走査方向Xの往路のみであり、復路では付与順序が逆になる。そのため、この付与順序とするためには、往路のみで吐出を行って復路では吐出を行わないで印刷するとよい。
具体的な他の方法としては、第1の記録ヘッド及び第2の記録ヘッドを記録ヘッドユニットの主走査方向に列状に配置し、第3の記録ヘッドを第1の記録ヘッド及び第2の記録ヘッドに対して基材の搬送方向の下流側に配置し、第1の記録ヘッドから前処理液A及び前処理液Bの一方を基材の記録領域に付与する工程、及び第2の記録ヘッドから前処理液A及び前処理液Bの他方を基材の記録領域に付与する工程をこの順序で行い、次いで記録ヘッドユニットに対して基材を搬送方向に移動させ、前処理液A及び前処理液Bによって処理された基材の記録領域に、第3の記録ヘッドから水性インクを付与する工程を行うことができる。
図2に、一実施形態によるシリアル式記録ヘッドユニットの他の例を模式的に示す上面図を示す。
図2では、記録ヘッドユニット100は、前処理液Aが供給される第1の記録ヘッド11と、前処理液Bが供給される第2の記録ヘッド12とが、記録ヘッドユニット100の主走査方向Xに配列される第1のヘッド列と、第1のヘッド列に対して基材の搬送方向Yの下流側に、水性インクが供給される第3の記録ヘッド13を含む第2のヘッド列とを備える。
そして、記録ヘッドユニット100を主走査方向Xに移動させながら、第1の記録ヘッド11から前処理液Aを吐出し、第2の記録ヘッド12から前処理液Bを吐出する動作と、基材を搬送方向Yに移動させ、前処理液A及び前処理液Bが付与された基材上の記録領域に、第3の記録ヘッド13から水性インクを吐出する動作とを繰り返すことで、基材上に前処理液A、前処理液B、及び水性インクをこの順序で付与することができる。
この記録ヘッドユニット100の構成では、この付与順序は主走査方向Xの往路(図中左から右)のみであり、復路では付与順序が逆になる。そのため、この付与順序とするためには、往路のみで付与を行って復路では付与を行わないで印刷するとよい。
図3に、一実施形態によるシリアル式記録ヘッドユニットのさらに他の例を模式的に示す上面図を示す。
図3は、上記した図2において、第1の記録ヘッド11と第2の記録ヘッド12との配置が異なる例を示す。図3において、第1の記録ヘッド11と第2の記録ヘッドとは離間して配置される。より具体的には、第1の記録ヘッド11は主走査方向Xに対して記録ヘッドユニット100の一方側に位置し、第2の記録ヘッド12は主走査方向Xに対して記録ヘッドユニットの他方側に位置している。より好ましくは、第1の記録ヘッド11及び第2の記録ヘッド12は、水性インクが吐出される第3の記録ヘッド13と搬送方向Yに重ならないように配置される。このような配置とすることで、前処理液Bの凝集剤由来のミストが、前処理液Aを吐出するノズル、及び水性インクを吐出するノズルに付着しないようにすることができる。これによって、第1の記録ヘッド11及び第3の記録ヘッド13のノズル詰まりをより防止することができる。
図1〜図3に示す記録ヘッドユニットにおいて、例えば、第1の記録ヘッド11に前処理液Bを供給し、第2の記録ヘッド12に前処理液Aを供給し、第1の記録ヘッド11から前処理液Bを吐出し、第2の記録ヘッド12から前処理液Aを吐出してもよい。
シリアル式記録ヘッドユニットの往路と復路とで吐出を行う場合、従来の記録方法に従うと、記録ヘッドユニットの往路と復路とで2種類の前処理液と水性インクとの吐出順序が入れ替わるため、基材上では、2種類の前処理液の積層順序が基材の搬送方向Yに隣り合うラインごとに入れ替わってしまう。この従来の記録方法を説明する説明図を図4に示す。
図4において、(a)は、記録ヘッドユニット100の配置を上面から示しており、各パスで、第1の記録ヘッド11から前処理液Aが吐出される場合をハッチ丸で表し、第2の記録ヘッド12から前処理液Bが吐出される場合を白丸で表している。また、(b)は、基材表面を上面から示しており、記録ヘッドユニット100の主走査方向に沿う各ラインで、前処理液A及び前処理液Bがこの順序で積層される場合を図中左からハッチ丸及び白丸の順で表し、その逆の順で積層させる場合を図中左から白丸及びハッチ丸の順で表している。
図4では、図中(a)に示す通り、往路の1パス目では、第1の記録ヘッド11が第2の記録ヘッド12に先行して移動するため、基材上に前処理液Aに次いで前処理液Bが吐出される。そして、図中(b)に示す通り、基材上で前処理液A及び前処理液Bがこの順序で積層される。
復路の2パス目では、第2の記録ヘッド12が第1の記録ヘッド11に先行して移動するため、基材上に前処理液Bに次いで前処理液Aが吐出され、基材上で前処理液B及び前処理液Aがこの順序で積層される。
往路の3パス目では、1パス目と同様に、基材上で前処理液A及び前処理液Bがこの順序で積層される。
得られる印刷物では、基材の搬送方向に隣り合うラインにおいて2種類の前処理液の積層順序が入れ替わっている。このように2種類の前処理液の着弾順序が一定でない場合、インクの基材への浸透性が不均一となり、印刷物における画像の定着性が低下する問題がある。
一実施形態による記録方法では、記録ヘッドユニットの主走査方向Xに沿って往路の下流側に第1の記録ヘッドを設け、上流側に第2の記録ヘッドを設け、記録ヘッドユニットを往路で移動させる際に、先に第1の記録ヘッドから前処理液Aを吐出し、次いで第2の記録ヘッドから前処理液Bを吐出し、記録ヘッドユニットを復路で移動させる際には前処理液A及び前処理液Bをいずれも吐出しないようにするとよい。これによって、基材の記録領域の全面に渡って、基材上に前処理液A及び前処理液Bがこの順序で積層されるようになる。すなわち、図2において、往路の1パス目の吐出のみを繰り返し、復路の2パス目で吐出を行わないようにするとよい。また、図2において、往路の1パス目及び3パス目の吐出を行わずに、復路の2パス目の吐出のみを繰り返すことで、基材上に前処理液B及び前処理液Aがこの順序で積層されるようになる。
図2及び図3に示す記録ヘッドユニット100を用いる場合では、前処理液A及び前処理液Bを基材に積層させるように吐出した後に、第3の記録ヘッド13が各前処理液の付与領域に対向する位置となるように基材を搬送させ、第3の記録ヘッド13から水性インクを吐出することで画像を記録することができる。
また、シリアル式インクジェット記録装置を用いて往路及び復路の双方向で前処理液A及び前処理液Bを付与してもよい。この方法は、前処理液A及び前処理液Bを主走査方向の往路及び復路の一方で吐出して、他方では吐出しない場合に比べて、生産性をより高めることができる。以下の説明において、主走査方向の往路及び復路の移動順序は特に限定されず、往路と復路が逆の順序であってもよい。また、以下の説明において、前処理液A及び前処理液Bの付与順序を逆にしてもよい。
双方向の記録方法の一例としては、主走査方向Xに第1の記録ヘッド及び第2の記録ヘッドが配列される記録ヘッドユニットを用いて、主走査方向の往路において第1の記録ヘッドから第1の前処理液を基材上に付与し、主走査方向の復路において、往路で付与された前処理液Aに重なるようにして第2の記録ヘッドから前処理液Bを基材上に付与する方法がある。
図1に示す例では、さらに記録ヘッドユニットを主走査方向の往路に移動させながら、前処理液Bに重なるようにして第3の記録ヘッドから水性インクを基材上に付与することができる。図2又は図3に示す例では、処理液Bを付与してから、基材を搬送方向Yに移動させて、記録ヘッドユニットを主走査方向に移動させながら、前処理液Bに重なるようにして第3の記録ヘッドから水性インクを基材上に付与することができる。
双方向の記録方法の他の例としては、基材の搬送方向Yに対して上流側に第1の記録ヘッドが配置され、その下流側に第2の記録ヘッドが配置される記録ヘッドユニットを用いて、主走査方向Xの往路において第1の記録ヘッドから前処理液Aを基材上に付与し、基材を搬送方向に移動させて、主走査方向の復路において、前処理液Aに重なるようにして第2の記録ヘッドから前処理液Bを基材上に付与することができる。
2つの前処理液をより効率よく付与するために、主走査方向の復路において、第2の記録ヘッドから前処理液Bを基材上に付与するとともに、第1の記録ヘッドから前処理液Aを基材上に付与してもよい。同様に、主走査方向の往路において、第1の記録ヘッドから前処理液Aを基材上に付与するとともに、第2の記録ヘッドから前処理液Bを基材上に付与してもよい。
搬送方向に第1の記録ヘッド及び第2の記録ヘッドが配列される構成では、搬送方向に対して第2の記録ヘッドのさらに下流側に第3の記録ヘッドが配置される記録ヘッドユニットを用いて、処理液Bを付与してから、基材を搬送方向に移動させて、記録ヘッドユニットを主走査方向に移動させながら、前処理液Bに重なるようにして第3の記録ヘッドから水性インクを基材上に付与することができる。
双方向の記録方法のさらに他の例としては、主走査方向Xに第1の記録ヘッド及び第2の記録ヘッドが配列され、第1の記録ヘッド及び第2の記録ヘッドにそれぞれ基材の搬送方向Yに沿って複数のノズルが列状に形成される記録ヘッドユニットを用いることができる。この記録ヘッドユニットを主走査方向に往復移動させながら、基材を搬送方向に移動させて、第1の記録ヘッドの搬送方向の上流側のノズルから前処理液Aを基材上に付与して複数のラインを形成し、連続的に基材を搬送方向に移動させて、第2の記録ヘッドの搬送方向の下流側のノズルから、先の第1の記録ヘッドの上流側のノズルから付与された前処理液Aと重なるように、第2の前処理液を基材上に付与して、前処理液Aと前処理液Bとがこの順で積層された複数のラインを形成することができる。
図1に示す例では、搬送方向に沿って複数のノズルが列状に形成される第3の記録ヘッドを用いて、第2の記録ヘッドのノズルよりもさらに搬送方向の下流側となる第3の記録ヘッドのノズルから、搬送方向の上流側のノズルから付与された前処理液Bに重なるようにして水性インクを基材上に付与することができる。
図2又は図3に示す例では、前処理液Bを付与してから、基材を搬送方向Yに移動させて、記録ヘッドユニットを主走査方向に移動させながら、前処理液Bに重なるようにして第3の記録ヘッドから水性インクを基材上に付与することができる。
具体的には、図1〜図3に示す記録ヘッドユニットにおいて、第1の記録ヘッド11及び第2の記録ヘッド12に、それぞれ基材の搬送方向Yに沿って複数のノズルが列状に形成される構成を用いて、双方向の付与を行うことができる。それぞれの記録ヘッドにおいて、複数のノズルは搬送方向Yに互いに離間して配置される。
まず、第1の記録ヘッド11の基材の搬送方向Yの上流側の1個のノズルから、第1の前処理液の液滴を1ドットに対応するように吐出しながら、記録ヘッドユニット100を主走査方向Xの往路方向に移動させ、主走査方向Xにドットを連続して着弾させて1ドット幅のライン状に前処理液Aを付与する。次いで、基材を搬送方向Yに移動させて、第1の記録ヘッド11の先の1個のノズルに対して搬送方向Yの下流側に隣り合う1個のノズルから吐出される液滴が、基材上の先のライン状の前処理液Aに対して基材の搬送方向Yの上流側に隣り合うように着弾させるようにして、先のライン状の前処理液Aと同様にライン状の前処理液Bを付与する。この際に、基材上において、基材の搬送方向Yに隣り合う2つのドットは、記録ヘッドユニットが搬送方向Yに移動する時間、記録ヘッドユニットの移動速度、記録ヘッドユニットの折り返し時間等を制御することで、その着弾時間差ΔTを10ms以上とすることができる。
また、第1の記録ヘッドの複数のノズルのうち搬送方向Yに連続して配置される2個以上のノズルを用いて、1回のパスで、搬送方向Yにノズルの間隔に対応して離間している2列以上のライン状の前処理液Aを付与し、次いで、上記と同様にして、それぞれの先のライン状の前処理液Aの基材の搬送方向Yの上流側にライン状の前処理液Aを付与することができる。この方法では、記録ヘッドユニットの1パス当たりの画像記録量を多くすることができ、生産性をより高めることができる。
次いで、基材上に着弾された前処理液Aのドットに重なるように、第2の記録ヘッド12のノズルから前処理液Bを吐出し基材に着弾させてドットを形成することができる。
例えば、1個のライン状の記録領域に対して、前処理液Aは、第1の記録ヘッド11の基材の搬送方向Yの上流側のノズルから吐出されて付与され、次いで、基材を搬送方向Yに移動させながら、前処理液Bは先の第1の記録ヘッド11のノズルの位置に対して基材の搬送方向Yの下流側となる第2の記録ヘッド12のノズルから吐出されて付与されてもよい。
次いで、図1に示す例では、搬送方向に沿って複数のノズルが列状に形成される第3の記録ヘッドを用いて、基材を搬送方向Yに搬送させながら、第2の記録ヘッドのノズルよりもさらに搬送方向の下流側となる第3の記録ヘッドのノズルから、前処理液A及び前処理液Bが重なって形成されたドットに重なるように、水性インクを基材上に吐出し基材に着弾させてドットを形成することができる。
図2又は図3に示す例では、基材を搬送方向Yに搬送させながら、前処理液A及び前処理液Bが重なって形成されたドットに重なるように、第3の記録ヘッド13から水性インクを吐出し基材に着弾させてドットを形成することができる。
上記した操作を繰り返すことで、基材上に前処理液A、前処理液B、及び水性インクをこの順序で付与し、前処理液A及び前処理液Bを一定の順序で基材に着弾することができる。
上記した双方向印刷は、記録ヘッドの解像度に対してN倍の解像度の画像を記録する場合では、基材の搬送方向Yに隣り合うノズルの間隔に対応する領域にN個のラインを形成することで行うことができる。ここで、Nは正の整数である。
具体的には、300dpiの記録ヘッドを用いて1200dpiの画像を記録する場合では、記録ヘッドの搬送方向Yに隣り合うノズルの間隔に対応する領域に4個のドットを形成するとよい。そのため、基材の搬送方向Yに隣り合うノズルの間隔に対応する領域に、4個のラインが形成されるようにするとよい。
ラインヘッド式インクジェット記録方法は、基材の搬送方向に交差、好ましくは直交する基材の幅方向に配置され、基材の幅方向に列状に複数のノズル列を備えるラインヘッド式記録ヘッドを用いて行うことができる。
ラインヘッド式インクジェット記録装置の一例としては、基材を搬送方向Yに搬送する搬送装置と、基材の搬送方向Yと交差する方向Xにライン状に配置される少なくとも3個の記録ヘッドとを備える。この例では、例えば、この少なくとも3個の記録ヘッドは、基材の搬送方向Yに沿って上流側から前処理液Aが供給される第1の記録ヘッドと、前処理液Bが供給される第2の記録ヘッドと、水性インクが共有される第3の記録ヘッドとをこの順序で備える。そして、それぞれのノズル列から、前処理液A、前処理液B、及び水性インクが吐出されることで、基材上にこれらをこの順序で積層して画像を記録することができる。第1の記録ヘッドから前処理液Aを供給し、第2の記録ヘッドから前処理液Bを供給して、前処理液A及び前処理液Bの付与順序を逆にしてもよい。
ラインヘッド式インクジェット記録装置では、記録ヘッドにおいて、2種類の前処理液及び水性インクがそれぞれ供給される記録ヘッドの配列順序を決めておくことで、2種類の前処理液及び水性インクの基材への付与順序を定めることができる。そのようにして、前処理液A及び前処理液Bを一定の順序で基材に着弾するように吐出することができる。
印刷物の製造方法は、工程2の後に、基材を加熱する工程(以下、加熱工程という場合もある。)を含むことが好ましい。これにより、インクを乾燥させるとともに、水分散性樹脂を製膜させて、強固なインク膜を形成しやすい。
工程2の後に行われる基材を加熱する加熱工程における加熱温度は、70℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。一方、この加熱工程における加熱温度は、200℃以下が好ましい。この加熱工程における加熱温度は、70〜200℃がより好ましい。
印刷物の製造方法は、工程1において、2つの前処理液が付与される間、及び/又は、工程1と工程2との間等に、基材を加熱する工程等の前処理液を乾燥する工程を含んでもよい。しかし、本実施形態の印刷物の製造方法では、工程1において、前処理液A及び前処理液Bのうち、後から基材に着弾する前処理液の付与、及び、インクジェットインクの付与は、いずれもウェットオンウェット方式で行うことが好ましい。
後から基材に着弾する前処理液の付与、及びインクの付与をウェットオンウェット方式で行うことで、2つの前処理液が適度に混合し、画像濃度の均一性を向上させやすくすることができる。
先に基材に対して着弾する前処理液が、後から基材に着弾する前処理液に押されるように基材内部まで浸透しやすくなり、アンカー効果が得られやすく、定着性を向上させやすい。
以下、本発明を実施例に基づきより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに
限定されるものではない。特に断らない限り、「%」は「質量%」である。表中の各成分
の配合量も「質量%」で示す。
<前処理液及びインクの調製>
表1〜3に記載の原材料を混合し、ミックスロータを用いて100rpmで30分間撹拌した。撹拌後、5μmのナイロンシリンジフィルターでろ過し、インク1、前処理液A1〜A4及び前処理液B1〜B3を調製した。表中の各原材料の配合量は、質量%で示す。表中の各原材料の配合量は、揮発分が含まれる成分については、揮発分を含めた量である。
表1〜3に記載の原材料は下記の通りである。
スーパーフレックス500M:第一工業製薬株式会社製ノニオン性水分散性ウレタン樹脂のエマルション
モビニール7720:ジャパンコーティングレジン株式会社製ノニオン性水分散性アクリル樹脂のエマルション
サンプレックスPUE−C200B:株式会社村山化学研究所製カチオン性水分散性ウレタン樹脂のエマルション
スーパーフレックス740:第一工業製薬株式会社製アニオン性水分散性ウレタン樹脂エマルション
オルフィンE1010:日信化学工業株式会社製アセチレングリコール系界面活性剤
シルフェイスSAG002:日信化学工業株式会社製シリコーン系界面活性剤
乳酸:富士フイルム和光純薬株式会社製
塩化カルシウム:富士フイルム和光純薬株式会社製
シャロールDC−303P:第一工業製薬株式会社製、カチオン性水溶性樹脂、有効成分量41%(ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド)
ジエチレングリコール:富士フイルム和光純薬株式会社製
ジプロピレングリコール:富士フイルム和光純薬株式会社製
1,2−ブタンジオール:東京化成工業株式会社製
CAB−O−JET300:キャボット社製カーボンブラック顔料分散体
タケネートWB3936:三井化学株式会社製イソシアネート系架橋剤
グリセリン:富士フイルム和光純薬株式会社製
エチレングリコール:富士フイルム和光純薬株式会社製
2種類の前処理液を混合して凝集性を評価した。具体的には、表1に記載の組合せで、前処理液A−1〜A−4のそれぞれ10gに、前処理液B−1〜B−3のそれぞれ10gを混合し、凝集するかどうかを目視で観察した。結果を表1に示す。
Figure 2020138456
Figure 2020138456
Figure 2020138456
<印刷物の製造>
基材として、ポリエステル100% の布を用い、表4〜6に示す前処理液及びインク1を用いて、以下の手順に従って印刷を行って、200mm×200mmの単色ベタ画像を印刷した印刷物を得た。
実施例1〜11及び比較例1〜3では、プリンタには、解像度300dpiの記録ヘッドを使用したシリアル式インクジェットプリンタを用いた。シリアル式記録ヘッドユニットの配置位置を図2のようにした。なお、図2において、第1の記録ヘッド11に1液目の前処理液を供給し、第2の記録ヘッド12に2液目の前処理液を供給し、第3の記録ヘッドのブラック用記録ヘッド13Kにインク1を供給した。
実施例1〜11では、表4〜5に記載の組合せで、1液目の前処理液、及び2液目の前処理液を、この順で基材に着弾するように吐出してし、前処理液の付与後に、インク1を基材に付与して、印刷物を作製した。
詳しくは、300dpiの記録ヘッドを用いて、1液目の前処理液、2液目の前処理液、水性インクをそれぞれ1200dpi×1200dpiの双方向印刷により吐出し、200mm×200mmの単色ベタ画像を印刷した。基材の搬送方向Yへの1ライン分の移動は、搬送方向Yにおけるノズル間距離の4分の1に対応するようにした。また、基材上の浸透液の基材の搬送方向Yに隣り合うライン間の着弾時間差ΔTは10ms以上であった。
また、第1の記録ヘッド11、第2の記録ヘッド12、及び第3の記録ヘッド13にはそれぞれ基材の搬送方向Yに沿って複数のノズルが形成されている。第2の記録ヘッド12は、搬送方向Yの上流側の連続する3個のノズルから浸透液を吐出し、記録ヘッドユニットを主走査方向Xに往復移動させながら基材を搬送させて、基材の搬送方向Yに隣り合うノズル間距離に4列のラインが形成されるように1液目の前処理液を基材上に吐出した。
この際に、搬送方向Yの上流側からノズルa、ノズルb、ノズルcとする場合に、主走査方向Xの往路で3個のノズルからそれぞれ1液目の前処理液の第1ラインを形成した。次いで、基材を搬送して、先のノズルaから吐出された浸透液の第1ラインの搬送方向Yの上流側に隣接するように、主走査方向Xの復路でノズルbから1液目の前処理液を基材上に吐出して第2ラインを形成した。第2ラインの形成では、ノズルa及びノズルcからも同様の間隔で1液目の前処理液を吐出した。この操作を繰り返して、基材の搬送方向Yに隣り合うノズル間距離に4ラインの1液目の前処理液を形成した。
連続的に基材を搬送方向Yに搬送させて、先の1液目の前処理液の4ラインが形成された領域が、搬送方向Yに対して第2の記録ヘッド12の先の3個のノズルよりも下流側となる第1の記録ヘッド11のノズルと対向する位置で、記録ヘッドユニットを主走査方向に往復移動させながら基材を移動させて、先の1液目の前処理液の4ラインにそれぞれ重なるように、第1の記録ヘッド11から2液目の前処理液を基材上に吐出し、1液目の前処理液及び2液目の前処理液がこの順で積層された4ラインを形成した。2液目の前処理液の吐出方法は、上記した1液目の前処理液と同様である。
さらに連続的に基材を搬送方向Yに搬送させて、1液目の前処理液及び2液目の前処理液が積層して形成された4ラインの領域が、搬送方向Yの下流側の第3の記録ヘッド13に対向する位置で、記録ヘッドユニットを主走査方向に移動させながら、第3の記録ヘッド13から水性インクを吐出し、1液目の前処理液、2液目の前処理液、及び水性インクをこの順で積層させ、画像を形成した。
比較例1は、1液目として前処理液B−2を付与し、2液目の前処理液を付与せずに、水性インク1を付与した。
比較例2は、1液目として前処理液A−3を付与し、2液目の前処理液を付与せずに、水性インク1を付与した。
比較例3では、表6に示される2種類の前処理液を図4に示される方法で、往路では前処理液A−2、前処理液B−2、及びインク1をこの順序で着弾するように吐出し、復路では前処理液B−2、前処理液A−2、及びインクをこの順序で着弾するように吐出し、印刷物を作製した。
比較例4の印刷物は、実施例1〜11及び比較例1〜3の印刷物の製造で用いたものと同じ記録ヘッドを千鳥配置し、主走査方向に1200dpiに設置したラインヘッド式のインクジェットプリンターを使用し、基材(ポリエステル100% の布)に対して、表6に記載の前処理液を表6に記載の順序で吐出し、次いでインク1を吐出して、200mm×200mmの単色ベタ画像を印刷した。前処理液及びインクは、吐出周波数15k、搬送速度38m/min、副走査方向1200dpiで吐出した。
実施例1〜11及び比較例1〜4のいずれも、基材にインク1を用いてインクジェット印刷を行った後、180℃1分間ヒートプレスした。
表4に、先に基材上に着弾する前処理液(1液目の前処理液)の、主走査方向においてドット間の距離が最短となる2つのドット間の着弾時間差ΔT、及び主走査方向に交差する方向においてドット間の距離が最短となる2つのドット間の着弾時間差ΔTの少なくとも一方が10ms以上となるかどうか「ΔT」欄に示した。「10ms以上」は、先に基材上に着弾する前処理液のΔT及びΔTの少なくとも一方(ΔT)が10ms以上であることを示し、「10ms未満」は、先に基材上に着弾する前処理液のΔT及びΔTのいずれもが10ms未満であることを示す。
比較例1及び比較例2では前処理液を1種のみ用いているため、用いられた前処理液について示す。比較例3は着弾順序が一定ではないが、2種類の前処理液のいずれもΔTは10ms以上であった。
<定着性の評価>
JIS L0849に規定の方法に従い、II型摩擦試験機を用いて印刷物を擦過し、擦過布の汚染を、汚染用グレースケールを用いて評価した。評価基準を下記に示す。結果を表4〜6に示す。
AA:乾燥摩擦汚染3級以上
A:乾燥摩擦汚染2−3級
B:乾燥摩擦汚染2級
C:乾燥摩擦汚染2級未満
<画像濃度均一性の評価>
画像濃度均一性の評価を下記のようにして行った。上記のようにして得られた実施例及び比較例の印刷物を50cm離れた場所から目視で観察し、下記の評価基準で評価した。結果を表4〜6に示す。
A:画像濃度のムラがあまり確認されない
B:Aと比較して画像濃度のムラがある
C:明らかな画像濃度のムラが確認される
Figure 2020138456
Figure 2020138456
Figure 2020138456
実施例の印刷物は、いずれも定着性に優れていた。これに対して、樹脂を含む前処理液Aまたは凝集剤を含む前処理液Bのいずれか1種のみを用いて製造された比較例1及び2の印刷物、前処理液A及び前処理液Bが一定の順序で基材に着弾するように吐出されたものではない比較例3の印刷物、及び、先に基材上に吐出される前処理液の、主走査方向においてドット間の距離が最短となる2つのドット間の着弾時間差ΔT、及び主走査方向に交差する方向においてドット間の距離が最短となる2つのドット間の着弾時間差ΔTのいずれもが10ms未満であった比較例4の印刷物は、いずれも定着性に劣っていた。
11 第1の記録ヘッド
12 第2の記録ヘッド
13 第3の記録ヘッド
100 記録ヘッドユニット

Claims (9)

  1. 基材上に、樹脂を含む前処理液A及び凝集剤を含む前処理液Bをそれぞれインクジェット方式で付与する工程と、
    前記前処理液A及び前記前処理液Bを付与した後に、基材上に、水性インクジェットインクをインクジェット方式で付与する工程とを含み、
    前記前処理液A及び前記前処理液Bは、一定の順序で基材に着弾するように吐出され、
    前記前処理液A及び前記前処理液Bのうち、先に基材に着弾する前処理液の、主走査方向においてドット間の距離が最短となる2つのドット間の着弾時間差ΔT、及び主走査方向に交差する方向においてドット間の距離が最短となる2つのドット間の着弾時間差ΔTの少なくとも一方が10ms以上である、印刷物の製造方法。
  2. 前記前処理液Aの前記樹脂は、水分散性樹脂を含む、請求項1に記載の印刷物の製造方法。
  3. 前記水分散性樹脂は、カチオン性水分散性樹脂及びノニオン性水分散性樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項2に記載の印刷物の製造方法。
  4. 前記水分散性樹脂は、ノニオン性水分散性樹脂を含む、請求項3に記載の印刷物の製造方法。
  5. 前記水分散性樹脂は、水分散性ウレタン樹脂を含む、請求項2〜4のいずれか1項に記載の印刷物の製造方法。
  6. 前記凝集剤は、有機酸を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の印刷物の製造方法。
  7. 前記前処理液A及び前記前処理液Bが、前記前処理液A、次いで前記前処理液Bの順に基材に着弾するように吐出される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の印刷物の製造方法。
  8. 前記前処理液A及び前記前処理液Bを付与するインクジェット方式が、シリアル式のインクジェット方式である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の印刷物の製造方法。
  9. 前記前処理液A及び前記前処理液Bのうち、後に基材に対して吐出される前処理液の吐出、及び、前記水性インクジェットインクの吐出は、いずれもウェットオンウェット方式で行う、請求項1〜8のいずれか1項に記載の印刷物の製造方法。
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