JP2020128787A - 転がり軸受用保持器および転がり軸受 - Google Patents

転がり軸受用保持器および転がり軸受 Download PDF

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智彦 小畑
Tomohiko Obata
智彦 小畑
藤原 宏樹
Hiroki Fujiwara
宏樹 藤原
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Abstract

【課題】グリースのせん断抵抗を低減し、転がり軸受の回転トルクの低減を図り得る転がり軸受用保持器、および、この保持器を備えた転がり軸受を提供する。【解決手段】保持器1は、環状の保持器本体2上に、軸方向一方側に開口して転動体である玉を保持する複数のポケット4を有する冠形の転がり軸受用保持器であって、保持器本体2上に、軸方向一方側に突出した保持爪3が形成されており、保持爪3が、複数のポケット4のそれぞれの周方向両端の複数箇所のうち、一部の箇所にのみ形成されており、複数のポケット4は、保持爪3が周方向両端に形成されたポケット4Aと、保持爪3が周方向両端のいずれにも形成されていないポケット4Bとから構成され、ポケット4Aとポケット4Bとが周方向で交互に配置される。【選択図】図1

Description

本発明は、転がり軸受用保持器、および該保持器を有し、グリース潤滑される転がり軸受に関する。
転がり軸受は、一般的に内輪、外輪、転動体、および保持器で構成されている。外部からの異物の侵入を防ぐためや、内部に封入した潤滑剤の流出を防ぐために、開口端部にシール部材が設けられる場合がある。軸受内部の潤滑剤には、グリースが用いられることが多い。グリースは、取り扱いが容易であり、密封装置の設計も簡素化できる。また、グリースは再供給する必要がなく、メンテナンス性が優れている。しかし、軸受に密封したグリースによるグリース潤滑の場合、玉や保持器がグリースを攪拌する攪拌抵抗や、玉と保持器の間などでグリースをせん断するせん断抵抗により摩擦トルクの増加やそれに伴う熱が発生することが知られている。摩擦トルクなどを低減する技術として、従来、下記のような技術が提案されている。
非特許文献1には、潤滑剤の変更による潤滑特性向上技術が開示されており、ハブユニット軸受の軸受内部に用いられるグリースにおいて、グリースの基油動粘度を低下させることでグリース攪拌抵抗の低減を図っている。
特許文献1には、保持器の形状変更などにより、軸受の回転トルクの低減を図るものとして、ポケットと連通するグリース収容凹部を設けた冠形保持器が記載されている。これにより、グリースがグリース収容凹部に格納され保持器とともに回転することで、低トルク化を図っている。
特許文献2には、同様に保持器の形状変更により、軸受の回転トルクの低減を図るものとして、ポケットのエッジ部を、玉との線接触により潤滑材を掻き取る構造とした冠形保持器が記載されている。通常の樹脂製の冠形保持器の半径方向のポケット形状は保持する玉に対して半径Rが大きい。そのため玉は保持器の半径方向の厚さ中央部(ポケット面)と接する。その場合、軸受運転時には玉表面に付着したグリースはポケット面と玉表面とを行き来し、常に攪拌される状態となる。これに対して、特許文献2の保持器では、半径方向のポケット形状は保持する玉に対して半径Rを小さくし、玉とポケットのエッジ部を接触させることで低トルク化を図っている。玉表面に付着したグリースを保持器ポケットのエッジ部で掻き取ることでグリースのせん断抵抗を低下させ、軸受の回転トルクの低減を図っている。
特開2011−226635号公報 特開2012−31914号公報
石川寛朗、「ハブユニット軸受の技術動向とトライボロジー」、トライボロジスト、2009年、第54巻、第9号、p.580−585
非特許文献1は封入グリースの改良により、潤滑特性を改善するものであるが、例えば、高温条件では基油動粘度が小さく油切れを起こしやすいため、短寿命となる可能性がある。
特許文献1のようなグリース収容凹部を有する保持器では、例えばグリース封入量が多い場合、グリースを格納することが困難となり、低トルク化が期待できないおそれがある。また、グリース収容凹部とポケットは連通しているため、ポケットにおけるせん断抵抗の影響が懸念される。
また、特許文献2の冠形保持器は、低トルク化としてグリースのせん断抵抗に着目したものであるが、例えば、グリース封入量が多い場合などグリースの掻き取り量以上にグリース供給量が多くなるとトルクの低下が期待できない可能性がある。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、グリースのせん断抵抗を低減し、転がり軸受の回転トルクの低減を図り得る転がり軸受用保持器、および、この保持器を備えた転がり軸受を提供することを目的とする。
本発明の転がり軸受用保持器は、環状の保持器本体上に、軸方向一方側に開口して転動体である玉を保持する複数のポケットを有する冠形の転がり軸受用保持器であって、上記保持器本体上に、上記軸方向一方側に突出した保持爪が形成されており、上記保持爪が、上記複数のポケットのそれぞれの周方向両端の複数箇所のうち、一部の箇所にのみ形成されていることを特徴とする。
上記複数のポケットは、上記保持爪が周方向両端に形成されたポケットAと、上記保持爪が周方向両端のいずれにも形成されていないポケットBとから構成され、上記ポケットAと上記ポケットBとが周方向で交互に配置されることを特徴とする。
周方向で隣接する上記ポケットAと上記ポケットBの間には、上記保持爪の立ち上がり基準面となる平坦部が形成されており、上記ポケットBにおける上記基準面からのポケット深さが、上記玉の半径よりも小さいことを特徴とする。
上記複数のポケットは、上記保持爪が周方向一方の端部にのみ形成されたポケットCから構成されることを特徴とする。
上記保持爪は、周方向一方側に向かって湾曲し上記ポケットの一部を構成しており、上記転がり軸受用保持器において、上記複数のポケットCは、上記保持爪の背面同士が周方向で対向するように配置されることを特徴とする。
上記複数のポケットのうち、少なくともいずれかのポケットの内周面に、撥油層が形成されることを特徴とする。
上記複数のポケットのうち、少なくともいずれかのポケットが、径方向に沿った円筒形状または略四角柱状であることを特徴とする。
上記複数のポケットのうち、少なくともいずれかのポケットは、所定の曲率半径を有する球面状であり、上記所定の曲率半径が、上記玉の半径よりも小さいことを特徴とする。
本発明の転がり軸受は、内輪および外輪と、上記内輪と上記外輪との間に介在する複数の転動体である玉と、この玉を保持する保持器と、軸受内空間に封入されるグリースとを備えてなる転がり軸受であって、上記保持器が、本発明の転がり軸受用保持器であることを特徴とする。
本発明の転がり軸受用保持器は、保持器本体上に、軸方向一方側に突出した保持爪が形成されており、保持爪が、複数のポケットのそれぞれの周方向両端の複数箇所のうち、一部の箇所にのみ形成されている、言い換えると、一般的な冠形保持器における保持爪が一部除去された構成であるので、ポケット面の面積が小さくなり、ポケットと玉との間でせん断されるグリース量が少なくなり、転がり軸受の回転トルクの低減を図ることができる。
複数のポケットは、保持爪が周方向両端に形成されたポケットAと、保持爪が周方向両端のいずれにも形成されていないポケットBとから構成され、ポケットAとポケットBとが周方向で交互に配置されるので、保持爪を一部除去した構成としつつも、転がり軸受から保持器が抜けることを防止できる。また、軸受内で保持器が傾いたりすることも防止できる。
ポケットBにおける基準面からのポケット深さが玉の半径よりも小さいので、ポケットBにおいて玉と接触する面積が更に小さくなり、グリースのせん断抵抗を一層低減できる。
また、複数のポケットは、保持爪が周方向一方の端部にのみ形成されたポケットCから構成され、さらに、これら複数のポケットCは、保持爪の背面同士が周方向で対向するように配置されるので、保持爪を一部除去した構成としつつも、転がり軸受から保持器が抜けることを防止できる。
複数のポケットのうち、少なくともいずれかのポケットの内周面に、撥油層が形成されるので、玉表面とポケットの内周面に介在するグリースをポケット表面でスムーズに滑らせることができ、グリースのせん断抵抗を好適に低減できる。
複数のポケットのうち、少なくともいずれかのポケットが、径方向に沿った円筒形状または略四角柱状であるので、球面状の場合に比べて、玉とポケットとの隙間(ポケット隙間)が大きくなり、グリースのせん断抵抗を好適に低減できる。
複数のポケットのうち、少なくともいずれかのポケットは、所定の曲率半径を有する球面状であり、上記所定の曲率半径が、上記玉の半径よりも小さいので、ポケットの内外径面エッジ部で玉と接触する。このため、エッジ部で玉表面に付着したグリースを掻き取ることができ、ポケット間におけるグリースのせん断抵抗を低減できる。
本発明の転がり軸受は、上記転がり軸受用保持器を備えているので、グリースのせん断抵抗が低減され、転がり軸受の回転トルクの低減を図ることができる。よって、この転がり軸受は、グリース封入量が比較的多い場合でも好適に利用できる。
本発明の転がり軸受用保持器の第1実施形態の斜視図である。 図1における隣接するポケット周辺の展開図である。 図2の他の例の展開図である。 図2の他の例の展開図である。 本発明の転がり軸受用保持器の第2実施形態の斜視図である。 図5における隣接するポケット周辺の展開図である。 図6の他の例の展開図である。 図6の他の例の展開図である。 保持器の径方向の断面図(概略図)である。 本発明の転がり軸受の一例を示す一部断面図である。 従来の保持器における隣接するポケット周辺の展開図である。
本発明の転がり軸受用保持器を図1に基づいて説明する。図1は、本発明の保持器の第1実施形態の斜視図である。保持器1は、冠形保持器であり、転がり軸受における転動体である玉を周方向等間隔に保持するものである。図1に示すように、保持器1は、環状の保持器本体2上に、軸方向一方側に開口して転動体である玉を保持する複数のポケットを有する。また、保持器本体2上に、軸方向一方側に突出した保持爪3a、3bが形成されている。
本発明の保持器は、従来の一般的な保持器からポケット形状を変更することで低トルク化を図っている。ここで、図11に、従来の冠形保持器の隣接するポケット周辺の展開図を示す。従来の保持器51は、保持器本体52上に複数のポケット54を有するとともに、各ポケット54の周方向両端に、それぞれ軸方向に突出した一対の保持爪53a、53bを有している。一対の保持爪53a、53bは円周方向に対向し、互いの間でポケットの一部を構成している。このように従来の形状では、一対の保持爪53a、53bが各ポケット54に設けられており、1つの玉に対して両爪で拘束している。
これに対して、図1の形態の保持器は、1つの玉に対して両爪がないポケット(以下、両爪なしポケットともいう)を設けるとともに、軸受から保持器が抜けないように、従来の冠形保持器のポケット(以下、両爪ありポケットともいう)を混在させている。具体的には、保持器1の複数のポケットは、保持爪が周方向両端に形成されたポケット4Aと、保持爪が周方向両端のいずれにも形成されていないポケット4Bとから構成される。周方向で隣接するポケット間、図1のポケット4Aとポケット4Bの間には、保持爪3a、3bの立ち上がり基準面となる平坦部5が形成されている。
ポケット4Aの周方向両端には、周方向に一定ピッチをおいて対向一対の保持爪3a、3bが形成され、その対向する各保持爪3a、3bは相互に接近する方向にわん曲され、その保持爪3a、3b間にポケット4Aが形成される。このポケット4Aは、従来のポケット54(図11参照)と同等のものである。一方、ポケット4Bの周方向両端には保持爪が設けられておらず、ポケット4Bは、平坦部5から軸方向へ窪んだ凹部として形成される。保持爪を一部除去することで、該爪部分のグリースせん断抵抗の低減を図ることができる。
図1に示すように、保持器1においてポケット4Aとポケット4Bとは周方向で交互に配置されることが好ましい。周方向両端に保持爪3a、3bが形成されたポケット4Aを一つおきに配置することで、軸受内で保持器が傾いたり、位置ずれが起きるのを防止でき、安定した回転が実現できる。また、軸受回転時に保持器が転がり軸受から抜けることを防止できる。また、保持器1において、ポケット4Bの位置を、保持器の中心軸を通り軸方向に沿った面Xに対して対称となるように設けることが好ましい。
本発明の保持器において、複数のポケットのうち、少なくともいずれかのポケットの内周面に撥油層(図2参照)が形成されていることが好ましい。図2には、図1における隣接するポケット周辺の展開図を示す。図2では、ポケット4Aおよびポケット4Bのそれぞれの内周面に撥油層6が設けられている。撥油層6は、撥油性を有していればよく、フッ素樹脂層やコーティング膜などを採用できる。
フッ素樹脂層に用いるフッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)樹脂、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)樹脂、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)樹脂、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)樹脂、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体(ECTFE)樹脂などが挙げられる。撥油層としてフッ素樹脂層を用いる場合、図2に示すように、ポケット4A、4Bのみ2層成形することができる。
コーティング膜は、撥油剤を希釈した溶液中に浸漬させて乾燥させる方法や、撥油剤を希釈した溶液を所定の位置にスプレー噴射し乾燥させる方法、フッ素系の改質膜をスパッタリングする方法などが挙げられる。撥油剤としては、例えば、シリコーン系のシロキサンやフッ素系のパーフルオロアルキル基を有する界面活性剤、フッ素系シランカップリング剤などが挙げられる。市販品としては、日華化学株式会社製MKガードやネオシードNR、ダイキン工業株式会社製ユニダイン、旭硝子株式会社製AsahiGuard E−SERIESなどが挙げられる。
撥油層の層厚は、好ましくは1μm〜500μmであり、より好ましくは20μm〜100μmである。その層厚は、例えば、焼成後に上記数値範囲としたり、焼成後の膜厚が上記数値範囲より厚くなるように形成し、研磨などの機械加工により上記範囲にしたりすることができる。
上記撥油層を形成した保持器を用いてグリース潤滑される軸受は、低トルクが得られる。グリース潤滑される軸受のトルクの1要因は、ポケットと玉との間に介在するグリースのせん断抵抗である。ポケット面に撥油性を付与すると、ポケット隙間に介在するグリースがポケット表面で滑る。そのため、ポケット隙間でのグリースせん断抵抗が小さくなり、低トルクが得られる。この撥油性の付与は、打ち抜き、もみ抜き、樹脂成形保持器など、保持器種を限定せず適用できる。
本発明の保持器本体は樹脂材または金属材から形成される。樹脂材としては、射出成形が可能であり、保持器材料として十分な耐熱性や機械的強度を有するものであれば、任意のものを使用できる。なお、上記フッ素樹脂以外の樹脂材を用いることが好ましい。例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ナイロン66樹脂、ナイロン46樹脂、ナイロン6T樹脂、ナイロン9T樹脂などのポリアミド樹脂を樹脂母材とし、炭素繊維、ガラス繊維などの強化繊維と、他の添加剤を配合した樹脂組成物を使用できる。
また、金属材としては、保持器として一般的に使用される任意の材料を使用でき、例えば、冷間圧延鋼板、炭素鋼などを使用できる。例えば、金属板をプレス成形することで得られる。
図2において、ポケット4Aおよびポケット4Bの内周面は、所定の曲率半径からなる球面状である。玉Bは、ポケット4Aでは、軸方向、周方向、径方向に拘束される。一方、玉Bは、ポケット4Bでは、周方向、径方向に拘束され、軸方向には拘束されない。
図3には、図2の他の例の展開図を示す。図3の例では、保持器1’において、両爪なしポケット(ポケット4B)を設けるとともに、ポケット深さHを一般的なポケット深さよりも小さくしている。ポケット深さHは、平坦部5の基準面からポケットの底部までの軸方向長さである。図2の保持器1のポケット高さHは、玉Bの半径rよりも大きい(H>r)のに対して、図3の保持器1’のポケット高さHは、玉Bの半径rよりも小さくなっている(H<r)。ポケット深さHを小さくすることで、玉と接触するポケットの面積が小さくなり、グリースせん断抵抗をより低減できる。なお、基準面の高さが低くなる分、保持爪の爪高さは、図2の保持器1よりも図3の保持器1’の方が高くなる。
図4には、図2の他の例の展開図を示す。図4の例では、保持器1’’において、両爪なしポケット(ポケット4B)を設けるとともに、該ポケット4Bのポケット隙間が大きくなる形状としている。図4において、ポケット4Bは、径方向に沿った略四角柱状(角を丸めた四角柱状)であるので、球面状の場合に比べて、ポケット隙間が大きくなり、グリースのせん断抵抗を好適に低減できる。ポケット隙間が大きくなる形状は、図4の構成に限らず、例えば径方向に沿った円筒形状でもよい。これらのポケット形状の場合、玉Bは周方向でのみ拘束される。
上述した第1実施形態の保持器は、図2〜図4の例に限らない。図2〜図4では、ポケット4Aおよびポケット4Bの内周面に撥油層6を設けたが、例えば、ポケット4Aの内周面にのみ撥油層6を設けてもよく、ポケット4Bの内周面にのみ撥油層6を設けてもよい。
図5は、本発明の保持器の第2実施形態の斜視図である。図5に示す形態の保持器では、ポケットとして片爪ポケットを採用している。具体的には、保持器11の複数のポケットは、保持爪が周方向一方の端部にのみ形成されたポケット14Cから構成される。つまりポケット14Cは、従来の冠形保持器の両爪ありポケットから片方の保持爪を除去した構成である。片方の保持爪をなくすことで、該爪部分のグリースせん断抵抗の低減を図ることができる。
図5に示すように、保持爪13a、13bは、周方向一方側に向かって湾曲し内周面がポケットの一部を構成している。保持器11において、複数のポケット14Cは、保持爪13a、13bの背面同士が周方向で対向するように配置されることが好ましい。この場合、保持爪が形成されていない平坦部15と、保持爪が形成された平坦部15が周方向に交互に形成される。図5に示すようにポケット14Cを配置することで、軸受回転時において保持器が転がり軸受から抜けることを好適に防止できる。なお、ポケットの全体の数は特に限定されないが、偶数であることが好ましい。
また、ポケット14Cの配置は、図5に限らず、例えば、全てのポケット14Cの保持爪の背面部が周方向一方側(時計回り方向など)を向くように配置してもよい。
図6には、図5における隣接するポケット周辺の展開図を示す。図6において、隣接するポケット14Cのそれぞれの内周面に上述の撥油層16が設けられている。本形態では、ポケット14Cから玉Bが抜けないように、保持器の径方向中央位置における、平坦部15のポケット端部とポケットを隔てて対向する保持爪の根元との距離(寸法W)を、玉の直径Rよりも小さくする必要がある(W<R)。この大小関係は、後述の図7および図8でも同様である。
図7には、図6の他の例の展開図を示す。図7の例では、ポケットとして片爪ポケット(ポケット14C)を設けるととともに、該ポケット14Cの周方向片側のポケット隙間が大きくなる形状としている。図7では、各ポケット14Cにおいて、保持爪13aが形成された側とは反対側のポケット隙間が大きくなっており、保持爪13bが形成された側とは反対側のポケット隙間が大きくなっている。上述のとおり、ポケット隙間を大きくすることで、グリースのせん断抵抗を低減できる。図7の各ポケット14Cは、凹部形状(保持爪を除くポケット形状)が軸方向に沿った面Yに対して非対称となっている。
図8には、図6の他の例の展開図を示す。図8の例では、ポケットとして片爪ポケット(ポケット14C)を設けるととともに、該ポケット14Cの周方向両側のポケット隙間が大きくなる形状としている。図8では、ポケット14Cは、径方向に沿った略四角柱状であるので、グリースのせん断抵抗を低減できる。
図9には、図1の保持器1におけるポケット4Aの径方向断面図を示す。図9(a)、(b)に示すように、ポケット4Aの内周面は所定の曲率半径(ポケット半径)を有する球面状となっている。図9(b)の構成は、保持器1のポケット半径が玉Bの半径よりも大きくなっている。つまり半径方向のポケット形状は保持する玉に対して半径Rが大きいので、ポケット面で玉Bと接触する。これに対して、図9(a)の構成は、保持器1のポケット半径が玉Bの半径よりも小さくなっている。つまり、半径方向のポケット形状は保持する玉に対して半径Rが小さいので、ポケット4Aのエッジ部7で玉Bと接触する。なお、図9に示すように、このエッジ部7は、保持器1の内外径面に位置するエッジ部である。図9(a)の構成では、玉表面に付着したグリースをエッジ部7で掻き取ることで、玉Bとポケット4Aの隙間でのグリースせん断抵抗を低減できる。
本発明の保持器としては、上述した保持爪を一部削除した構造に加えて、図9(a)のようなグリース掻き取り構造(エッジ部7)を有することがより好ましい。軸受トルクにおいて、保持爪を省略した構造およびグリース掻き取り構造は、いずれもグリースせん断抵抗に着目したものであり、これらを組み合わせることで、せん断抵抗を一層低減できる。
本発明の転がり軸受の一例を図10に基づいて説明する。図10は、本発明の転がり軸受として本発明の冠形保持器を組み込んだ深溝玉軸受の一部断面図である。図10に示すように、転がり軸受21は、外周面に軌道面22aを有する内輪22と、内周面に軌道面23aを有する外輪23とが同心に配置される。内輪の軌道面22aと外輪の軌道面23aとの間に複数個の転動体である玉24が介在して配置される。この複数個の玉24が、冠形の保持器25のポケットに保持される。保持器25の形態は、図1や図5に示すとおり(保持器1、11)である。また、転がり軸受21は、内・外輪の軸方向両端開口部に設けられた環状のシール部材26を備え、内輪22と外輪23と保持器25とシール部材26とで構成される軸受内空間に封入されたグリース27によって潤滑される。
本発明の転がり軸受は、グリースで潤滑される。グリースは軸受内空間に封入され、軌道面などに介在して潤滑がなされる。グリースを構成する基油としては、鉱油や合成油など、通常、転がり軸受に用いられるものであれば特に制限なく用いることができる。また、グリースを構成する増ちょう剤としても、金属石けんやウレア化合物など、通常、転がり軸受に用いられるものであれば特に制限なく用いることができる。
グリースの封入量は、所望の潤滑特性を確保できる範囲であれば特に限定されないが、軸受内空間における静止空間体積の50%〜80%(体積比率)程度とすることが好ましい。ここで、静止空間体積とは、内輪と外輪とシール部材の空間体積における軸受回転時に転動体および保持器が通過しない空間の体積である。さらに、図9(a)の構成も組み合わせることで、保持器ポケットのエッジ部により、玉表面のグリースが掻き取られ、グリースの攪拌抵抗の低減が図れ、グリース封入量を上記範囲として長寿命化を図りつつ、回転トルクの低減が図れる。
本発明の転がり軸受は、冠形保持器を用いる形式の軸受であればよく、図10の形態(深溝玉軸受)に限定されるものではない。また、これらの転がり軸受に対して、シール部材の有無は問わず適用できる。
本発明の転がり軸受用保持器は、グリースのせん断抵抗を低減し、転がり軸受の回転トルクの低減を図り得る、種々の用途における転がり軸受用の樹脂製冠形保持器として広く利用できる。
1、1’、1’’ 保持器(転がり軸受用保持器)
2 保持器本体
3a 保持爪
3b 保持爪
4A ポケット
4B ポケット
5 平坦部
6 撥油層
7 エッジ部
11、11’、11’’ 保持器(転がり軸受用保持器)
12 保持器本体
13a 保持爪
13b 保持爪
14C ポケット
15 平坦部
16 撥油層
21 転がり軸受
22 内輪
23 外輪
24 玉(転動体)
25 保持器
26 シール部材
27 グリース

Claims (9)

  1. 環状の保持器本体上に、軸方向一方側に開口して転動体である玉を保持する複数のポケットを有する冠形の転がり軸受用保持器であって、
    前記保持器本体上に、前記軸方向一方側に突出した保持爪が形成されており、
    前記保持爪が、前記複数のポケットのそれぞれの周方向両端の複数箇所のうち、一部の箇所にのみ形成されていることを特徴とする転がり軸受用保持器。
  2. 前記複数のポケットは、前記保持爪が周方向両端に形成されたポケットAと、前記保持爪が周方向両端のいずれにも形成されていないポケットBとから構成され、前記ポケットAと前記ポケットBとが周方向で交互に配置されることを特徴とする請求項1記載の転がり軸受用保持器。
  3. 周方向で隣接する前記ポケットAと前記ポケットBの間には、前記保持爪の立ち上がり基準面となる平坦部が形成されており、
    前記ポケットBにおける前記基準面からのポケット深さが、前記玉の半径よりも小さいことを特徴とする請求項2記載の転がり軸受用保持器。
  4. 前記複数のポケットは、前記保持爪が周方向一方の端部にのみ形成されたポケットCから構成されることを特徴とする請求項1記載の転がり軸受用保持器。
  5. 前記保持爪は、周方向一方側に向かって湾曲し前記ポケットの一部を構成しており、
    前記転がり軸受用保持器において、前記複数のポケットCは、前記保持爪の背面同士が周方向で対向するように配置されることを特徴とする請求項4記載の転がり軸受用保持器。
  6. 前記複数のポケットのうち、少なくともいずれかのポケットの内周面に、撥油層が形成されることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項記載の転がり軸受用保持器。
  7. 前記複数のポケットのうち、少なくともいずれかのポケットが、径方向に沿った円筒形状または略四角柱状であることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか1項記載の転がり軸受用保持器。
  8. 前記複数のポケットのうち、少なくともいずれかのポケットは、所定の曲率半径を有する球面状であり、前記所定の曲率半径が、前記玉の半径よりも小さいことを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか1項記載の転がり軸受用保持器。
  9. 内輪および外輪と、前記内輪と前記外輪との間に介在する複数の転動体である玉と、この玉を保持する保持器と、軸受内空間に封入されるグリースとを備えてなる転がり軸受であって、
    前記保持器が、請求項1から請求項8までのいずれか1項記載の転がり軸受用保持器であることを特徴とする転がり軸受。
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