JP2020119802A - 全固体リチウムイオン二次電池用負極 - Google Patents

全固体リチウムイオン二次電池用負極 Download PDF

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Abstract

【課題】電池のエネルギー密度を向上するための多様な負極活物質を使用可能であり、充放電後の電池性能の低下を抑制することができる全固体リチウムイオン二次電池用負極を提供する。【解決手段】負極活物質層を有する全固体リチウムイオン二次電池用負極であって、初期充電前において、水銀圧入法により測定される前記負極活物質層の細孔径分布におけるピーク径が0.1μm以下であり、前記負極活物質層の空隙率が10%以上25%以下であり、前記負極活物質層が含有する負極活物質は、初期充電前に対する満充電時の体積膨張率が15%以下であることを特徴とする、全固体リチウムイオン二次電池用負極。【選択図】図2

Description

本開示は、全固体リチウムイオン二次電池用負極に関する。
リチウムイオン二次電池に用いる負極活物質として、従来広く使用されている炭素系の負極活物質に比べ、充放電に伴う体積変化が小さく、優れたサイクル特性が得られる負極活物質として、スピネル型チタン酸リチウムLiTi12が知られている。しかし、スピネル型チタン酸リチウムを負極活物質として用いた電池は、エネルギー密度が低下するという問題点がある。
特許文献1には、非水電解質として液状の非水電解質を用いるリチウムイオン二次電池用の負極において、重量当たりの理論容量がスピネル型チタン酸リチウムより大きいニオブチタン複合酸化物を負極活物質として用い、ニオブチタン複合酸化物を含む活物質粒子を含有する負極層において、水銀圧入法により得られる細孔径分布におけるモード径を0.1μm〜0.2μmの範囲内にすることが開示されている。
一方、リチウムイオン二次電池等の電池の分野において、液状の電解液の代わりに固体電解質を使用する全固体電池の開発が行われている。全固体電池は、電池内に可燃性の有機溶媒を用いないので、安全装置の簡素化が図れ、製造コストや生産性に優れると考えられている。
本出願人は、特許文献2に、特定の粒径のSi又はSnを含有する炭素材料を有する複合粒子を負極活物質として用いた全固体電池用の負極において、負極の空隙率を5%〜30%とすることを開示している。
特許第6193285号 特開2017−54720号公報
しかしながら、特許文献1に開示されている液系電池の技術は、負極の空孔内に電解液を含浸させることでイオン伝導を確保しているため、全固体電池に適用すると、負極内の空孔により、固体電解質と負極活物質との接触が得られ難く、イオン伝導パス及び電子伝導パスが不十分になり、抵抗の増加や、容量の低下が問題になる。
特許文献2の全固体電池用負極は、充放電後の電池性能の低下が抑制されたものであるが、負極活物質として特定の複合粒子を用いる技術であるため、多様な負極活物質を使用可能な技術が望まれている。
本開示は、上記実情に鑑み、電池のエネルギー密度を向上するための多様な負極活物質を使用可能であり、充放電後の電池性能の低下を抑制することができる全固体リチウムイオン二次電池用負極を提供することを目的とする。
本開示の全固体リチウムイオン二次電池用負極は、負極活物質層を有する全固体リチウムイオン二次電池用負極であって、
初期充電前において、水銀圧入法により測定される前記負極活物質層の細孔径分布におけるピーク径が0.1μm以下であり、前記負極活物質層の空隙率が10%以上25%以下であり、
前記負極活物質層が含有する負極活物質は、初期充電前に対する満充電時の体積膨張率が15%以下であることを特徴とする。
本開示によれば、初期充電前に対する満充電時の負極活物質の体積膨張率を前記特定値以下とした負極活物質層において、初期充電前の細孔径分布が前記特定値以下であり、初期充電前の空隙率が前記特定の範囲内であることにより、負極活物質の種類に関わらず、充放電後の電池性能の低下を抑制することができる全固体リチウムイオン二次電池用負極を提供することができる。
本開示の全固体リチウムイオン二次電池用負極を備える全固体リチウムイオン二次電池の一例を示す断面模式図である。 実施例1の全固体リチウムイオン二次電池用負極が有する負極活物質層について、水銀圧入法により測定した細孔径分布を示すグラフである。
本開示の全固体リチウムイオン二次電池用負極は、負極活物質層を有する全固体リチウムイオン二次電池用負極であって、
初期充電前において、水銀圧入法により測定される前記負極活物質層の細孔径分布におけるピーク径が0.1μm以下であり、前記負極活物質層の空隙率が10%以上25%以下であり、
前記負極活物質層が含有する負極活物質は、初期充電前に対する満充電時の体積膨張率が15%以下であることを特徴とする。
全固体リチウムイオン二次電池用負極において、電池のエネルギー密度を向上するために、充放電により体積変化を生じ得る負極活物質を用いた場合、充放電に伴う負極活物質の膨張収縮により、負極に割れが発生する場合がある。全固体電池では、物理的な接触により導通をとっているため、電極に割れが生じることで、イオン伝導パス及び電子伝導パスが切断されて、出力及び容量の低下が生じる等の電池性能の低下が問題となる。
本開示の全固体リチウムイオン二次電池用負極は、初期充電前に対する満充電時の負極活物質の体積膨張率が15%以下となるように、負極活物質の種類に応じて負極容量を調整して用いられる。本研究者は、初期充電前において、水銀圧入法により測定される負極活物質層の細孔径分布におけるピーク径(以下、細孔ピーク径と称する場合がある)が0.1μm以下であり、且つ、負極活物質層全体の空隙率が10%以上25%以下と特定の範囲内であることにより、イオン伝導パス及び電子伝導パスが良好に行われ、更に、負極活物質の体積膨張率が15%以下であると、充放電後も長期的に電池性能が維持されやすいことを見出した。
本開示の全固体リチウムイオン二次電池用負極は、初期充電前において、細孔ピーク径が0.1μm以下であることから、負極活物質層が有する各空孔のサイズが十分に小さく、イオン伝導パス及び電子伝導パスの切断が生じ難いため、電池性能の低下が抑制されると推定される。また、本開示の全固体リチウムイオン二次電池用負極は、初期充電前において、負極活物質層内全体の空隙率が10%以上25%以下であることにより、初期充電前から満充電時までの負極活物質の体積変化を受け入れるスペースが十分に確保されていると考えられる。そのため、本開示の全固体リチウムイオン二次電池用負極では、充放電により負極活物質が膨張収縮した後も、負極活物質層内の各空孔のサイズ及び空隙率が維持されやすく、充放電後も、負極の割れが抑制され、イオン伝導パス及び電子伝導パスの切断による電池性能の低下が抑制されると推定される。
充放電に伴う負極活物質の膨張収縮による負極の割れは、例えば電池パック内に電池を拘束する機構を設け、電池に十分な拘束圧を付与することによっても抑制することが可能である。しかし、電池パック内に電池以外の設備の割合が増えることで、電池パックのエネルギー密度が低下するという問題点がある。これに対し、本開示の全固体リチウムイオン二次電池用負極を用いることで、簡易的な拘束機構で十分に電池性能の低下を抑制することができるため、電池パック内に設ける拘束機構を簡易化して、電池パック内のエネルギー密度を向上させることができる。
以下、本開示の全固体リチウムイオン二次電池用負極について詳細に説明する。
本開示の全固体リチウムイオン二次電池用負極は、少なくとも負極活物質層を有し、必要に応じ、負極集電体等の他の構成を更に備えるものであってもよい。
なお、本開示において負極は、電池に組み込まれる前のものであってもよいし、電池に組み込まれた後のものであってもよい。
<負極活物質層>
本開示の全固体リチウムイオン二次電池用負極が有する負極活物質層は、少なくとも負極活物質を含有し、必要に応じて、固体電解質、結着剤及び導電助剤等のその他の成分を更に含有していてもよい。
本開示の全固体リチウムイオン二次電池用負極においては、前記負極活物質層が特定の細孔ピーク径及び空隙率を有し、更に、前記負極活物質層が含有する負極活物質が特定の体積膨張率を有することを特徴とする。
(細孔ピーク径)
前記負極活物質層は、初期充電前において、水銀圧入法により測定される細孔径分布におけるピーク径、すなわち細孔ピーク径が0.1μm以下である。前記細孔ピーク径は、電池性能の低下が抑制されやすい点から、0.08μm以下であることが好ましい。
水銀圧入法では、水銀を加圧することによって固体試料の細孔に水銀を浸入させ、水銀に加える圧力及び細孔に圧入された水銀量から、細孔の直径と体積(容積)とを算出する。圧力Pが加えられた水銀が、直径Dの細孔に浸入しうるとき、下記数式1に従って、圧力Pと、水銀の接触角θと、水銀の表面張力σとから、細孔の直径Dが求められる。また、細孔に圧入された水銀量から、細孔体積が算出される。なお、本開示において、細孔径とは細孔の直径である。
(数式1)
−4σcosθ=PD
本開示において、前記水銀圧入法により測定される細孔径分布は、Log微分細孔体積(cm/g))を、各測定箇所の区間の平均細孔径(μm)に対してプロットしたグラフであり、横軸が細孔径(μ)で、縦軸がLog微分細孔体積(cm/g)である。
また、本開示において、細孔径分布におけるピーク径とは、細孔径分布において、最も高いピークの頂点の細孔径である。
前記負極活物質層の前記細孔ピーク径は、前記負極活物質層が含有する負極活物質の種類、大きさ及び配合量、並びに前記負極活物質層を形成する際のプレス時の圧力等によって調整することができる。
前記水銀圧入法による細孔径分布の測定は、初期充電する前の前記負極活物質層について行う。例えば、電池に組み込まれている本開示の全固体リチウムイオン二次電池用負極を、初期充電する前に所定形状に打ち抜いて得られる測定用試料を用いて、当該測定用試料が有する前記負極活物質層について、前記水銀圧入法による細孔径分布の測定を行うことができる。なお、前記測定用試料は、少なくとも前記負極活物質層を表面に有していればよく、負極集電体等のその他の構成を更に有するものであってもよい。
前記細孔ピーク径の測定に用いる前記測定用試料の形状は、特に限定はされないが、例えばコイン型又は円筒型とすることができる。
前記水銀圧入法による細孔径分布の測定は、例えば、マイクロメルティックス社製のオートポアIV9500シリーズ等の装置を用いて行うことができる。測定の際には、不活性雰囲気下にて、前記測定用試料を試料容器に封入して、当該試料容器内に水銀を注入し、水銀に圧力を加える。ここで、水銀に加える圧力は、測定用試料が有し得る細孔径の大きさに応じて適宜調整され、特に限定はされないが、例えば、0.5psi(3.4kPa)から60000psi(413400kPa)まで圧力を変化させて測定することが、細孔径を広範囲に測定できる点から好ましい。
(空隙率)
前記負極活物質層は、初期充電前において、空隙率が10%以上25%以下である。前記空隙率は、電池性能の低下が抑制されやすい点から、10%以上24%以下であることが好ましい。
前記負極活物質層の空隙率は、本開示の全固体リチウムイオン二次電池用負極を、初期充電する前に所定形状に打ち抜いて得られる測定用試料を用いて、当該測定用試料が有する前記負極活物質層の重量及び体積に基づき、下記数式2に従って求められる。なお、下記数式2において、負極活物質層を構成する材料の理論比重は、各材料の真比重及び配合比から求められる。
(数式2)
空隙率[%]=100−{(負極活物質層の重量/負極活物質層の体積)/負極活物質層を構成する材料の理論比重}×100
前記負極活物質層の空隙率は、前記負極活物質層が含有する負極活物質の種類、大きさ及び配合量、並びに前記負極活物質層を形成する際のプレス時の圧力等によって調整することができる。
なお、前記空隙率を測定する際に用いる測定用試料としては、前記細孔ピーク径を求める際に用いる測定用試料と同様のものを用いることができる。
(負極活物質)
前記負極活物質層が含有する負極活物質としては、特に限定はされないが、充放電により体積変化が生じる負極活物質を用いることが、本開示による充放電後の電池性能の低下を抑制する効果が得られやすい点から好ましい。充放電により体積変化が生じる負極活物質としては、例えば、ニオブチタン複合酸化物、黒鉛等の炭素系負極活物質、ケイ素及び錫等の合金系負極活物質、SiOx、及びこれらの負極活物質を含有する複合材料等を挙げることができる。リチウムイオン吸蔵時の体積増加量がリチウムイオン放出時の体積の15%以下である負極活物質としては、例えば、ニオブチタン複合酸化物及び黒鉛等の炭素系負極活物質等を挙げることができる。
中でも、電池のエネルギー密度向上の観点及び容量増加の観点から、前記負極活物質層は、負極活物質としてニオブチタン複合酸化物を含有することが好ましく、単斜晶系構造を有するニオブチタン複合酸化物を含有することがより好ましい。なお、本開示において、前記ニオブチタン複合酸化物は、ニオブ(Nb)及びチタン(Ti)の一部が異種元素に置換されていてもよい。当該異種元素としては、例えば、Mg、Sr、Mo、W、Ta及びV等が挙げられる。また、前記ニオブチタン複合酸化物としては、例えば、TiNb、TiNb1029、TiNb2462、TiNb1437、及びTiNb等を挙げることができ、中でも、電池のエネルギー密度向上の観点及び容量増加の観点から、TiNbが好ましい。
本開示の負極において、前記負極活物質層が含有する負極活物質は、初期充電前に対する満充電時の体積膨張率が15%以下である。なお、前記体積膨張率は、前記負極活物質層が含有する全ての負極活物質において満たされる。
前記負極活物質の前記体積膨張率の下限は、特に限定はされないが、3%以上であると、充放電後の電池性能の低下を抑制する効果が得られやすい。
初期充電前に対する満充電時の前記負極活物質の体積膨張率は、下記数式3に従って求められる。
(数式3)
体積膨張率[%]={(満充電時の負極活物質の体積−初期充電前の負極活物質の体積)/初期充電前の負極活物質の体積}×100
ここで、初期充電前とは、本開示の全固体リチウムイオン二次電池用負極を組み込んだ電池を初期充電する前である。満充電時とは、本開示の全固体リチウムイオン二次電池用負極を組み込んだ電池を、最高電圧まで充電した時点である。本開示の全固体リチウムイオン二次電池用負極を組み込んだ電池の充電は、0.1C以上0.5C以下のレートで行うことが、電池を十分に充電する点から好ましい。
なお、前記負極活物質の体積膨張率は、充電前後におけるX線回折より求められる格子定数変化及びSEMでの粒子サイズ観察より確認することができる。
前記負極活物質の前記体積膨張率は、負極活物質の種類及び本開示の全固体リチウムイオン二次電池用負極の負極容量により調整することができる。例えば、リチウムイオン吸蔵時の体積増加量が、リチウムイオン放出時の体積の15%以下である負極活物質を用いることにより、前記負極活物質の前記体積膨張率を15%以下とすることができる。リチウムイオン吸蔵時の体積増加量が、リチウムイオン放出時の体積の15%超過である負極活物質を含有する場合は、例えば、前記負極活物質の前記体積膨張率が15%以下となるように、負極容量を抑えることにより、前記負極活物質の前記体積膨張率を15%以下とすることができる。なお、負極容量は、例えば、正極と負極の容量比により調整することができる。
前記負極活物質の大きさは、特に限定はされないが、スラリー作製の観点からは、メジアン径(D50)が、0.1μm以上であることが好ましく、0.2μm以上であることがより好ましく、一方、前記負極活物質の固体内拡散の観点からは、メジアン径(D50)が、5μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがより好ましい。
なお、前記メジアン径(D50)は、レーザー回折光散乱法に基づく体積基準の粒度分布において、粒径が小さい微粒子側からの累積頻度50体積%に相当する粒径である。
前記負極活物質の含有量は、特に限定されるものではないが、エネルギー密度を高める点から、前記負極活物質層の総量100質量部に対し、前記負極活物質の含有量が、30質量部以上であることが好ましく、40質量部以上であることが好ましく、一方、前記負極活物質層に前記負極活物質以外のその他の成分を十分に含有させる点から、90質量部以下であることが好ましく、80質量部以下であることがより好ましい。
また、前記負極活物質と後述する固体電解質との合計100質量部中における前記負極活物質の含有量は、エネルギー密度を高める点から、40質量部以上であることが好ましく、50質量部以上であることが好ましく、一方、固体電解質を十分に含有させてイオン伝導性を向上する点から、90質量部以下であることが好ましく、80質量部以下であることがより好ましい。
(固体電解質)
前記負極活物質層は、イオン伝導性を向上し、電池性能を向上する点から、更に固体電解質を含有することが好ましい。
前記負極活物質層が含有していてもよい固体電解質としては、例えば、硫化物固体電解質、酸化物固体電解質、窒化物固体電解質等の無機固体電解質を挙げることができ、中でもイオン伝導性が高い点から、硫化物固体電解質を好ましく用いることができる。
硫化物固体電解質としては、例えば、LiS−P、LiS−P−LiI、LiS−P−LiI−LiBr、LiS−P−LiO、LiS−P−LiO−LiI、LiS−SiS、LiS−SiS−LiI、LiS−SiS−LiBr、LiS−SiS−LiCl、LiS−SiS−B−LiI、LiS−SiS−P−LiI、LiS−B、LiS−P−Z(ただし、m、nは正の数を表し、Zは、Ge、Zn又はGaを表す。)、LiS−GeS、LiS−SiS−LiPO、LiS−SiS−LiMO(ただし、x、yは正の数を表し、Mは、P、Si、Ge、B、Al、Ga又はInを表す。)等を挙げることができる。中でも、イオン伝導性が高い点から、LiS−Pを含むものであることがより好ましく、LiS−P−LiI−LiBrが特に好ましい。なお、前記「LiS−P」の記載は、LiSおよびPを含む原料組成物を用いてなる硫化物固体電解質を意味し、他の記載についても同様である。
前記固体電解質の含有量は、特に限定されるものではないが、前記負極活物質と前記固体電解質との合計100質量部中における前記固体電解質の含有量が、イオン伝導性を向上する点から、10質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがより好ましく、一方、前記負極活物質を十分に含有させてエネルギー密度を高める点から、70質量部以下であることが好ましく、60質量部以下であることがより好ましい。
前記負極活物質層が、固体電解質として硫化物固体電解質以外の固体電解質を含有する場合は、イオン伝導性を向上する点から、前記負極活物質層が含有する固体電解質の総量100質量部中、硫化物固体電解質の割合が、70質量部以上であることが好ましく、80質量部以上であることがより好ましく、90質量部以上であることがより更に好ましい。
(結着剤)
前記負極活物質層は、更に結着剤を含有していてもよい。
前記負極活物質層が含有していてもよい結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ビニリデンフルオライド(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)との共重合体(PVDF−HFP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ブチレンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリビニルブチラール(PVB)、アクリル樹脂等を挙げることができる。
前記結着剤の含有量は、特に限定されないが、結着剤としての機能を十分に発現させる点から、前記負極活物質層の総量100質量部中における前記結着剤の含有量が、0.3質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましく、一方、他の材料を十分に含有させる点から、5質量部以下であることが好ましい。
(導電助剤)
前記負極活物質層は、電子伝導性を向上する点から、導電助剤を更に含有していてもよい。
前記負極活物質層が含有していてもよい導電助剤としては、従来全固体電池に使用されているものを適宜選択して用いることができ、特に制限はされず、例えば、VGCF(気相法炭素繊維)等のカーボンナノチューブ及びカーボンナノファイバー等の炭素材料等が挙げられる。
前記導電助剤の含有量は、特に限定はされないが、負極中の電子伝導パスを多く確保することができる点から、前記負極活物質層の総量100質量部中における前記導電助剤の含有量が、1.0質量部以上であることが好ましく、一方、他の材料を十分に含有させる点から、15質量部以下であることが好ましい。
前記負極活物質層の厚さは、特に限定されないが、例えば、10μm以上100μm以下とすることができ、10μm以上50μm以下であってもよい。
<負極集電体>
本開示の全固体リチウムイオン二次電池用負極は、更に負極集電体を有していても良い。負極集電体は、前記負極活物質層の集電を行う機能を有するものである。
本開示において、前記負極集電体としては、全固体電池に使用可能な公知の負極集電体を適宜選択して用いることができ、特に限定はされない。
前記負極集電体の材料としては、例えば、SUS、Cu、Ni、Fe、Ti、Co、Zn等を挙げることができる。
負極集電体の形状としては、例えば、箔状、板状、メッシュ状等が挙げられる。
本開示の全固体リチウムイオン二次電池用負極は、更に、前記負極集電体に接続された負極リードを備えていてもよい。
<全固体リチウムイオン二次電池用負極の製造方法>
本開示の全固体リチウムイオン二次電池用負極の製造方法は、前述した本開示の全固体リチウムイオン二次電池用負極を製造可能な方法であればよく、特に制限はされない。中でも、前記負極活物質層が前記特定の細孔ピーク径及び空隙率となりやすい点から、前記負極活物質層を形成する方法が、スラリー又はペースト状の負極活物質層用組成物を、支持体に塗布し、乾燥することにより、負極活物質層用塗膜を形成する工程と、当該負極活物質層用塗膜をプレスすることにより、前記負極活物質層を形成する工程とを有する方法であることが好ましい。
前記負極活物質層用組成物は、前記負極活物質層を構成する各成分に更に分散媒を加えて混合し、スラリー状又はペースト状とすることにより得られる。
前記負極活物質層を形成する方法において、前記支持体として前記負極集電体を用いることにより、前記負極集電体の少なくとも一方に、前記負極活物質層を有する本開示の全固体リチウムイオン二次電池用負極を容易に得ることができる。
前記負極活物質層用塗膜をプレスする工程において、プレス処理は、例えば、前記支持体上に前記負極活物質層用塗膜を有する負極構造体に対して行うことができる。また、前記負極活物質層用塗膜をプレスする工程は、前記負極構造体を電池に組み込む前に行ってもよいし、電池に組み込んだ後に行ってもよい。前記負極構造体を電池に組み込む前に、前記プレスする工程を行う場合、本開示の全固体リチウムイオン二次電池用負極は、電池に組み込まれる前のものとして得られる。前記負極構造体を電池に組み込んだ後に、前記プレスする工程を行う場合、本開示の全固体リチウムイオン二次電池用負極は、電池に組み込まれた後のものとして得られる。中でも、前記プレスする工程は、前記負極構造体を電池に組み込んだ後に行うことが、電池内において、負極活物質層と固体電解質層との間のイオン伝導パス及び電子伝導パスが良好になりやすい点から好ましい。前記プレスの圧力は、特に限定はされず、例えば、20MPa以上1000MPa以下とすることができる。
<全固体リチウムイオン二次電池>
本開示の全固体リチウムイオン二次電池用負極が用いられる全固体リチウムイオン二次電池は、負極として、前述した本開示の全固体リチウムイオン二次電池用負極を備える。前述した本開示の負極を備える全固体リチウムイオン二次電池は、充放電後においても負極の性能の低下が抑制されるため、電池性能の低下が抑制される。また、本開示の負極を備える全固体リチウムイオン二次電池は、負極の割れが抑制されたものであり、イオン伝導パス及び電子伝導パスの切断による電池性能の低下が抑制されたものであるため、電池に拘束圧を付与するための拘束機構を簡易化することができる。電池パック内に設ける拘束機構を簡易化することにより、電池パック内のエネルギー密度を向上させることができる。
なお、本開示の負極を備える全固体リチウムイオン二次電池において、負極以外の構成は、公知の全固体リチウムイオン二次電池と同様の構成を採用することができ、特に限定はされない。
本開示の負極を備える全固体リチウムイオン二次電池としては、例えば、前述した本開示の負極と、正極と、前記負極と前記正極との間に配置された固体電解質層とを有する全固体リチウムイオン二次電池を挙げることができる。図1は、本開示の負極を備える全固体リチウムイオン二次電池の一例を示す断面模式図である。図1に示す全固体リチウムイオン二次電池100は、正極活物質層12及び正極集電体14を含む正極16と、負極活物質層13及び負極集電体15を含む負極17と、正極16と負極17の間に配置された固体電解質層11を備え、前記負極17が、前述した本開示の全固体リチウムイオン二次電池用負極である。
本開示の負極を備える全固体リチウムイオン二次電池は、図1に示すような単セルを複数集積して電気的に接続することによりセル集合体としたものであってもよく、この場合、複数ある負極のうち、少なくとも1つが本開示の全固体リチウムイオン二次電池用負極であればよいが、全ての負極が本開示の全固体リチウムイオン二次電池用負極であることが、充放電後の電池性能の低下が抑制されやすい点から好ましい。
以下に、実施例を挙げて、本開示を更に具体的に説明するが、本開示は、この実施例のみに限定されるものではない。
[実施例1]
(1)負極活物質の合成
酸化チタン(アナターゼ型、富士フイルム和光純薬(株)製)と、酸化ニオブ(キシダ化学(株)製)とを、チタン(Ti)とニオブ(Nb)のモル比(Ti:Nb)が1:2になるよう秤量した。これらの原料と、直径5mmのジルコニアビーズと、エタノールとを、遊星型ボールミル(フリッチェ製)に投入し、回転数を200rpmとして、2時間混合した。混合後、乾燥させたものを、大気中で1100℃、12時間の条件で焼成し、TiNbの粉末を得た。得られたTiNbの粉末と、直径0.5mmのジルコニアビーズと、エタノールとを、遊星型ボールミルに投入し、回転数を400rpmとして、3時間湿式粉砕した後、乾燥した。その後、粉砕処理により低下した結晶性を復元するため、700℃、5時間の条件で再焼成を行い、単斜晶系構造を含むメジアン径(D50)が0.3μmのTiNbを得た。
(2)負極構造体の作製
硫化物固体電解質として、LiS:P:LiBr:LiIのモル比が56.25:18.75:15:10となるように、各原料を配合して硫化物固体電解質(10LiI−15LiBr−75(0.75LiS−0.25P)を得た。
負極活物質としての前記TiNb(D50が0.3μm)と、前記硫化物固体電解質(10LiI−15LiBr−75(0.75LiS−0.25P)とを、負極活物質:硫化物固体電解質の質量比が75:25となるように秤量した。更に、負極活物質100質量部に対して、結着剤としてのPVDF−HFPバインダー(Solvay社製、Soref(登録商標)21510)を1.5質量部秤量した。更に、主溶媒としてのメチルイソブチルケトン(脱水グレード、ナカライテスク(株)製)と、モレキュラーシーブにて脱水処理した副溶媒としてのn−デカン(東京化成工業(株)製)とを、主溶媒:副溶媒の体積比が90:10となるように混合した。これらの各原料を混合し、超音波ホモジナイザーを用いて1分間混練することにより、スラリー状の負極活物質層用組成物を作製した。その後、負極集電体としてのNi箔の表面に、ドクターブレードを用いて前記負極活物質層用組成物を塗工し、30分間自然乾燥させた後、100℃で30分間加熱乾燥することにより、負極活物質層用塗膜を形成し、負極構造体を得た。
(3)正極構造体の作製
正極活物質としてのLiNi1/3Co1/3Mn1/3(日亜化学工業(株)製)と、前記硫化物固体電解質(10LiI−15LiBr−75(0.75LiS−0.25P)とを、正極活物質:硫化物固体電解質の質量比が75:25となるように秤量した。更に、正極活物質100質量部に対して、PVDF−HFPバインダー(Solvay社製、Soref(登録商標)21510)1.5質量部、及び導電助剤(気相法炭素繊維、昭和電工(株)製)3.0質量部を秤量した。更に、主溶媒としてのメチルイソブチルケトン(脱水グレード、ナカライテスク(株)製)と、モレキュラーシーブにて脱水処理した副溶媒としてのn−デカン(東京化成工業(株)製)とを、主溶媒:副溶媒の体積比が90:10となるように混合した。これらの各原料を混合し、超音波ホモジナイザーを用いて1分間混練することにより、スラリー状の正極活物質層用組成物を作製した。その後、正極集電体としてのアルミニウム箔(昭和電工(株)製)の表面に、ドクターブレードを用いて前記正極活物質層用組成物を塗工し、30分間自然乾燥させた後、100℃で30分間加熱乾燥することにより、正極活物質層用塗膜を形成し、正極構造体を得た。
(4)全固体リチウムイオン二次電池の作製
Ar雰囲気のグローブボックス内で、前記硫化物固体電解質(10LiI−15LiBr−75(0.75LiS−0.25P)100質量部に対して、PVDF−HFPバインダー(Solvay社製、Soref(登録商標)21510)1質量部を秤量した。更に、主溶媒としてのメチルイソブチルケトン(脱水グレード、ナカライテスク(株)製)を固形分が35質量%となるように加え、超音波ホモジナイザーを用いて混練することにより、固体電解質層用スラリーを得た。アルミニウム箔の表面に、ドクターブレードを用いて前記固体電解質層用スラリーを塗工し、乾燥することにより、固体電解質層を形成した。その後、前記正極構造体と前記負極構造体とを、ロールプレスによりラミネートした。具体的には、前記固体電解質層と、前記正極構造体の前記正極活物質層用塗膜とが対向するように、前記正極構造体を積層し、室温にて、4.3ton/cmでコールドプレスを行った。その後、固体電解質層と接するアルミニウム箔を剥がし、前記負極構造体の前記負極活物質層用塗膜と、前記固体電解質層とが対向するように、前記負極構造体を積層し、135℃にて、4.3ton/cmでホットプレスを行った。その後、ラミネートに封止することで、実施例1の全固体リチウムイオン二次電池を得た。
[実施例2]
実施例1で得られた全固体リチウムイオン二次電池に、更に拘束機構を設け、電池セルに5MPaの拘束圧を付与したものを、実施例2の全固体リチウムイオン二次電池とした。
[実施例3]
実施例1の前記「(1)負極活物質の合成」において、TiNbの粉末を湿式粉砕する際に、直径0.5mmのジルコニアビーズに代えて、直径1mmのジルコニアビーズを用いた以外は、実施例1と同様にして、単斜晶系構造を含むメジアン径(D50)が0.9μmのTiNbを得た。
実施例1において、負極活物質として、単斜晶系構造を含むメジアン径(D50)が0.3μmのTiNbに代えて、単斜晶系構造を含むメジアン径(D50)が0.9μmのTiNbを用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例3の全固体リチウムイオン二次電池を得た。
[実施例4]
実施例3で得られた全固体リチウムイオン二次電池に、更に拘束機構を設け、電池セルに5MPaの拘束圧を付与したものを、実施例4の全固体リチウムイオン二次電池とした。
[実施例5]
実施例1の前記「(1)負極活物質の合成」において、TiNbの粉末を湿式粉砕する際に、直径0.5mmのジルコニアビーズに代えて、直径1.5mmのジルコニアビーズを用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例5の全固体リチウムイオン二次電池を得た。
[実施例6]
実施例5で得られた全固体リチウムイオン二次電池に、更に拘束機構を設け、電池セルに5MPaの拘束圧を付与したものを、実施例6の全固体リチウムイオン二次電池とした。
[比較例1]
実施例1の前記「(4)全固体リチウムイオン二次電池の作製」において、ホットプレス時の圧力を4.3ton/cmから5.0ton/cmに変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例1の全固体リチウムイオン二次電池を得た。
[比較例2]
比較例1で得られた全固体リチウムイオン二次電池に、更に拘束機構を設け、電池セルに5MPaの拘束圧を付与したものを、比較例2の全固体リチウムイオン二次電池とした。
[比較例3]
実施例3において、ホットプレス時の圧力を4.3ton/cmから3.2ton/cmに変更した以外は、実施例3と同様にして、比較例3の全固体リチウムイオン二次電池を得た。
[比較例4]
比較例3で得られた全固体リチウムイオン二次電池に、更に拘束機構を設け、電池セルに5MPaの拘束圧を付与したものを、比較例4の全固体リチウムイオン二次電池とした。
[比較例5]
実施例5において、ホットプレス時の圧力を4.3ton/cmから3.2ton/cmに変更した以外は、実施例5と同様にして、比較例5の全固体リチウムイオン二次電池を得た。
[比較例6]
比較例5で得られた全固体リチウムイオン二次電池に、更に拘束機構を設け、電池セルに5MPaの拘束圧を付与したものを、比較例6の全固体リチウムイオン二次電池とした。
[実施例7]
実施例1において、負極活物質として、単斜晶系構造を含むメジアン径(D50)が0.3μmのTiNbに代えて、Si粉末(高純度化学研究所製、製品名:SIE23PB、純度:3N、サイズ:約5μm)を用い、初期充電前に対する満充電時のSiの体積膨張率が15%となるように負極容量を調整した以外は、実施例1と同様にして、実施例7の全固体リチウムイオン二次電池を得た。
[実施例8]
実施例7で得られた全固体リチウムイオン二次電池に、更に拘束機構を設け、電池セルに5MPaの拘束圧を付与したものを、実施例8の全固体リチウムイオン二次電池とした。
[比較例7]
実施例7において、初期充電前に対する満充電時のSiの体積膨張率が25%となるように負極容量を調整した以外は、実施例7と同様にして、比較例7の全固体リチウムイオン二次電池を得た。
[比較例8]
比較例7で得られた全固体リチウムイオン二次電池に、更に拘束機構を設け、電池セルに5MPaの拘束圧を付与したものを、比較例8の全固体リチウムイオン二次電池とした。
[比較例9]
実施例7において、初期充電前に対する満充電時のSiの体積膨張率が20%となるように負極容量を調整した以外は、実施例7と同様にして、比較例9の全固体リチウムイオン二次電池を得た。
[比較例10]
比較例9で得られた全固体リチウムイオン二次電池に、更に拘束機構を設け、電池セルに5MPaの拘束圧を付与したものを、比較例10の全固体リチウムイオン二次電池とした。
[実施例9]
実施例1において、負極活物質として、単斜晶系構造を含むメジアン径(D50)が0.3μmのTiNbに代えて、天然黒鉛(C)(三菱化学(株)製、グラファイト、平均粒径:10μm)を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例9の全固体リチウムイオン二次電池を得た。
[実施例10]
実施例9で得られた全固体リチウムイオン二次電池に、更に拘束機構を設け、電池セルに5MPaの拘束圧を付与したものを、実施例10の全固体リチウムイオン二次電池とした。
[比較例11]
実施例9において、ホットプレス時の圧力を4.3ton/cmから5.0ton/cmに変更した以外は、実施例9と同様にして、比較例11の全固体リチウムイオン二次電池を得た。
[比較例12]
比較例11で得られた全固体リチウムイオン二次電池に、更に拘束機構を設け、電池セルに5MPaの拘束圧を付与したものを、比較例12の全固体リチウムイオン二次電池とした。
[比較例13]
実施例1の前記「(1)負極活物質の合成」において、負極活物質として、単斜晶系構造を含むメジアン径(D50)が0.3μmのTiNbに代えて、スピネル型チタン酸リチウムLiTi12を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例13の全固体リチウムイオン二次電池を得た。
[比較例14]
比較例13で得られた全固体リチウムイオン二次電池に、更に拘束機構を設け、電池セルに5MPaの拘束圧を付与したものを、比較例14の全固体リチウムイオン二次電池とした。
[評価]
(1)細孔ピーク径の測定
初期充電前の全固体リチウムイオン二次電池から、内径15mmの円筒状の型を用いて5箇所から負極を打ち抜き、負極集電体の片面に負極活物質層を有する円筒状の測定用試料を、1つの負極につき合計5個得た。不活性雰囲気下にて、測定用試料を6枚ガラス製の試料容器に封入し、下記測定条件で測定を行い、細孔径分布を得た。一例として、図2に、実施例1の全固体リチウムイオン二次電池が有する負極活物質層の細孔径分布を示す。
(測定条件)
・装置(オートポアIV9510、マイクロメルティックス社製)
・圧力:初期圧0.5psi、終止圧60000psi
・水銀接触角:141.3℃
・水銀表面張力:484dyn/cm
1つの負極につき5個の測定用試料について細孔径ピークを測定し、それらの平均を、当該負極が有する負極活物質層の細孔径ピークとした。
(2)空隙率の測定
初期充電前の全固体リチウムイオン二次電池から、内径15mmの円筒状の型を用いて5箇所から負極を打ち抜き、負極集電体の片面に負極活物質層を有する円筒状の測定用試料を、1つの負極につき合計5個得た。測定用試料が有する負極活物質層の重量及び膜厚を測定し、前記数式2に従って負極活物質層の空隙率を算出した。なお、負極活物質層の重量は、測定用試料の重量から、負極集電体の重量を差し引いて求めた。負極活物質層の体積は、円筒状の測定用試料の底面(直径15mmの円形)の面積と負極活物質層の膜厚から算出した。負極活物質層を構成する材料の理論比重は、負極活物質層用組成物中の溶媒以外の成分について、真比重及び配合比から算出した。
1つの負極につき5個の測定用試料について空隙率を測定し、それらの平均を、当該負極が有する負極活物質層の空隙率とした。
(3)初期出力維持率の測定
25℃の温度条件下、全固体リチウムイオン二次電池に対し、SOC100%まで定電流定電圧(CCCV)充電を行った後、電流密度を0.2C又は2.0Cとして、各々SOC0%まで定電流(CC)放電を行い、電流密度を0.2Cとして放電したときの初期放電容量と、電流密度を2.0Cとして放電したときの初期放電容量を求め、下記式により初期出力維持率を求めた。
初期出力維持率[%]=(2.0Cでの初期放電容量/0.2Cでの初期放電容量)×100
(4)サイクル後容量維持率の測定
25℃の温度条件下、全固体リチウムイオン二次電池に対し、SOC100%までCCCV充電を行った後、SOC0%までCC放電(電流密度:0.2C)を行い、当該CC放電時の放電容量を初期容量とした。
次いで、25℃の温度条件下、SOC100%までCCCV充電を行った後、SOC0%までCC放電(電流密度:1C)を行う充放電を1サイクルとし、100サイクル行った。100サイクル目の放電容量をサイクル後容量とし、下記式によりサイクル後容量維持率を求めた。
サイクル後容量維持率[%]=(サイクル後容量/初期容量)×100
(5)サイクル後出力維持率の測定
25℃の温度条件下、全固体リチウムイオン二次電池に対し、SOC100%までCCCV充電を行った後、SOC0%までCC放電(電流密度:1C)を行う充放電を1サイクルとし、100サイクル行った。その後、25℃の温度条件下、SOC100%までCCCV充電を行った後、電流密度を0.2C又は2.0Cとして、各々SOC0%まで定電流(CC)放電を行い、電流密度を0.2Cとして放電したときのサイクル後放電容量と、電流密度を2.0Cとして放電したときのサイクル後放電容量とを求め、下記式によりサイクル後出力維持率を求めた。
サイクル後出力維持率[%]=(2.0Cでのサイクル後放電容量/0.2Cでのサイクル後放電容量)×100
前記初期出力維持率、サイクル後容量維持率及びサイクル後出力維持率について、電池セルに5MPaの拘束圧を付与した電池(5MPa拘束時)の結果に対する、電池セルに拘束圧を付与しなかった電池(無拘束時)の結果の比(表1中、0MPa/5MPaと示す)を算出した。5MPa拘束時の結果に対する無拘束時の結果の比が1に近いほど、負極活物質の体積変化による電池性能の低下が抑制されており、電池パック内の拘束機構の簡易化が可能であることを意味する。
前記初期出力維持率、サイクル後容量維持率及びサイクル後出力維持率の各結果について、5MPa拘束時の結果に対する無拘束時の結果の比(0MPa/5MPa)は、0.95以上であることが望ましい。
表1より、実施例1〜10では、全固体リチウムイオン二次電池が備える負極が、初期充電前において、負極活物質層の水銀圧入法により測定される細孔ピーク径が0.1μm以下であり、負極活物質層の空隙率が10%以上25%以下であり、初期充電前に対する満充電時の負極活物質の体積膨張率が15%以下であったため、負極活物質として、TiNb、Si及び天然黒鉛(C)のいずれを用いた場合も、初期出力維持率、並びにサイクル後の容量維持率及び出力維持率が高く、充放電後の電池性能の低下が抑制されたものであった。また、実施例1〜10において、電池セルに付与した拘束圧以外を同じ条件にした電池について、初期出力維持率、並びにサイクル後の容量維持率及び出力維持率の結果を対比すると、5MPa拘束時の結果に対する無拘束時の結果の比がいずれも0.95以上であり、無拘束状態でも優れた電池性能を発揮することができ、電池パック内の拘束機構の簡易化によって、電池パック内のエネルギー密度を向上させることができる電池であることが明らかにされた。
比較例1〜6は、初期充電前における負極活物質層の空隙率が10%未満又は25%超過であるか、細孔ピーク径が0.1μm超過であったため、同じ種類の負極活物質を用いた実施例1〜6のうち、電池セルに付与した拘束圧が同じものと対比すると、初期出力維持率、並びにサイクル後の容量維持率及び出力維持率のいずれも低下しており、電池性能が低下していた。
比較例7〜10は、初期充電前に対する満充電時の負極活物質の体積膨張率が15%超過であったため、同じ種類の負極活物質を用いた実施例7、8のうち、電池セルに付与した拘束圧が同じものと対比すると、初期出力維持率、並びにサイクル後の容量維持率及び出力維持率のいずれも低下しており、電池性能が低下していた。
比較例11〜12は、初期充電前における負極活物質層の空隙率が10%未満であったため、同じ種類の負極活物質を用いた実施例9、10のうち、電池セルに付与した拘束圧が同じものと対比すると、初期出力維持率、並びにサイクル後の容量維持率及び出力維持率のいずれも低下しており、電池性能が低下していた。
比較例13〜14は、負極活物質としてLiTi12を用いたため、充放電による負極活物質の体積変化が小さかったことから、充放電後も電池性能が維持されていたが、エネルギー密度が不十分な電池であった。
なお、比較例において、電池セルに5MPaの拘束圧を付与したものは、電池セルに拘束圧を付与しなかったものに比べて電池性能が向上していたが、これは、拘束圧を付与したことにより、負極活物質の膨張収縮により発生する負極の割れが抑制されたため、又は、負極活物質と固体電解質等との接触が良好になり、イオン伝導性等が向上したためと推定される。
11 固体電解質層
12 正極活物質層
13 負極活物質層
14 正極集電体
15 負極集電体
16 正極
17 負極
100 全固体リチウムイオン二次電池

Claims (1)

  1. 負極活物質層を有する全固体リチウムイオン二次電池用負極であって、
    初期充電前において、水銀圧入法により測定される前記負極活物質層の細孔径分布におけるピーク径が0.1μm以下であり、前記負極活物質層の空隙率が10%以上25%以下であり、
    前記負極活物質層が含有する負極活物質は、初期充電前に対する満充電時の体積膨張率が15%以下であることを特徴とする、全固体リチウムイオン二次電池用負極。
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