JP2015176856A - 負極およびその製造方法ならびに蓄電装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】負極活物質層を電極保護層で覆ってなり、かつ、表面における負極活物質層の露出が抑制された負極、およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】負極活物質層上に電極保護層を設けるとともに、電極保護層の密度を1.45g/cm3以上4g/cm3未満とし、電極保護層の目付量を0.5mg/cm2以上2.0mg/cm2以下とし、さらに、負極活物質層の表面粗さを0.1μm以上10μm以下とすることで、負極活物質層を電極保護層でむらなく覆う。
【選択図】なし
【解決手段】負極活物質層上に電極保護層を設けるとともに、電極保護層の密度を1.45g/cm3以上4g/cm3未満とし、電極保護層の目付量を0.5mg/cm2以上2.0mg/cm2以下とし、さらに、負極活物質層の表面粗さを0.1μm以上10μm以下とすることで、負極活物質層を電極保護層でむらなく覆う。
【選択図】なし
Description
本発明は、リチウムイオン二次電池等の蓄電装置に用いられる負極、当該負極を製造する方法、および当該負極を含む蓄電装置に関する。
蓄電装置における負極の表面には、短絡防止等の目的で、絶縁性を持つ電極保護層を設ける場合がある。例えば特許文献1には、負極活物質層の表面を電極保護層(コート層)で覆う技術が提案されている。特許文献1に紹介されている電極保護層は、粒子状の絶縁性材料(絶縁性粒子と呼ぶ)およびバインダで構成された多孔質層である。電解液や電荷担体は電極保護層の細孔を通じて負極活物質層の内外に移動し得る。
ところで、電極保護層は絶縁性を有し負極活物質層は導電性を有するため、負極に電極保護層を設ける場合には、負極活物質層の表面を電極保護層でむらなく覆わなければ、負極表面の電気抵抗を均一にし難い。つまり、負極の表面のなかで負極活物質層が露出している部分は、電極保護層が露出している部分に比べて電気抵抗が低いため、負極の表面のなかで負極活物質層が露出している部分には電流が集中する。すると、負極活物質層が露出している部分に電荷担体(例えば蓄電池がリチウムイオン二次電池であればリチウム)が析出し易くなる。析出した電荷担体は充放電に関与し難くなるため、電荷担体の析出により蓄電装置の容量が低下する可能性がある。また、電荷担体の種類によっては、電荷担体が析出することで、短絡が生じた際の発熱量が増大する可能性もある。このため負極の表面における負極活物質層の露出部分を低減し得る技術が望まれている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、負極活物質層を電極保護層で覆ってなり、かつ、表面における負極活物質層の露出が抑制された負極、およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明の発明者等は、鋭意研究の結果、電極保護層の密度および目付量、ならびに負極活物質層の表面粗さを調整することで、負極表面における負極活物質層の露出を抑制できることを見出した。
つまり、上記課題を解決する本発明の負極は、
集電体と、前記集電体上に設けられている負極活物質層と、前記負極活物質層上に設けられている電極保護層と、を含み、
前記電極保護層は、絶縁性粒子とバインダとを含み、
前記電極保護層の密度は1.45g/cm3以上4g/cm3未満であり、
前記電極保護層の目付量は0.5mg/cm2以上2.0mg/cm2以下であり、
前記負極活物質層の表面粗さRaは0.1μm以上10μm以下であるものである。
集電体と、前記集電体上に設けられている負極活物質層と、前記負極活物質層上に設けられている電極保護層と、を含み、
前記電極保護層は、絶縁性粒子とバインダとを含み、
前記電極保護層の密度は1.45g/cm3以上4g/cm3未満であり、
前記電極保護層の目付量は0.5mg/cm2以上2.0mg/cm2以下であり、
前記負極活物質層の表面粗さRaは0.1μm以上10μm以下であるものである。
また、上記課題を解決する本発明の蓄電装置は、上記した本発明の負極を含むものである。
本発明の負極は、以下の(1)を備えるのが好ましい。
(1)前記負極活物質層の表面粗さRaは0.1μm以上2.0μm以下である。
さらに、上記課題を解決する本発明の負極の製造方法は、
負極活物質を含む負極活物質層を集電体上に形成する負極活物質層形成工程と、
絶縁性粒子およびバインダを含む電極保護層を前記負極活物質層上に形成する電極保護層形成工程と、を含み、
前記負極活物質層形成工程において、前記負極活物質層の表面粗さを0.1μm以上10μm以下にし、
前記電極保護層形成工程において、前記電極保護層の密度を1.45g/cm3以上4g/cm3未満にし、前記電極保護層の目付量を0.5mg/cm2以上2.0mg/cm2以下にする方法である。
(1)前記負極活物質層の表面粗さRaは0.1μm以上2.0μm以下である。
さらに、上記課題を解決する本発明の負極の製造方法は、
負極活物質を含む負極活物質層を集電体上に形成する負極活物質層形成工程と、
絶縁性粒子およびバインダを含む電極保護層を前記負極活物質層上に形成する電極保護層形成工程と、を含み、
前記負極活物質層形成工程において、前記負極活物質層の表面粗さを0.1μm以上10μm以下にし、
前記電極保護層形成工程において、前記電極保護層の密度を1.45g/cm3以上4g/cm3未満にし、前記電極保護層の目付量を0.5mg/cm2以上2.0mg/cm2以下にする方法である。
本発明の負極は、負極活物質層を電極保護層で覆ってなり、かつ、表面における負極活物質層の露出が抑制されたものである。
本発明の負極は、負極活物質層上に電極保護層を設けたものである。本発明の負極においては、電極保護層の密度が1.45g/cm3以上4g/cm3未満であるようにし、かつ、電極保護層の目付量を0.5mg/cm2以上2.0mg/cm2以下とした。本発明の負極において、電極保護層は比較的高密度であり、かつ、電極保護層の目付量は比較的多い。電極保護層をこのようにしたことで、負極活物質層を電極保護層でむらなく(或いは略むらなく)覆うことができ、負極表面における負極活物質層の露出を抑制できる。
つまり、負極活物質層の表面には多少なりとも凹凸が存在する。したがって、電極保護層の厚さが薄ければ、負極活物質層の凸部分を電極保護層で覆いきることができず、電極保護層の上側に負極活物質層が部分的に突出する場合がある。この場合、負極活物質層を電極保護層でむらなく覆うことはできず、負極表面に負極活物質層が露出する。また、電極保護層の密度が過小であり、電極保護層が粗であれば、電極保護層自体の隙を通じて負極活物質層が負極表面に露出する場合がある。本発明の負極においては、電極保護層の目付量、すなわち、負極活物質層の表面単位面積当りに積層される電極保護層の量を多くしたことで、電極保護層の厚さを充分に厚くし、負極活物質層の表面の凹凸を電極保護層で埋めることができる。また、電極保護層の密度を大きくして電極保護層を密にしたことで、電極保護層自体の隙を小さくし、当該隙を通じて負極活物質層が負極表面に露出できないようにした。このため本発明の負極においては、負極表面における負極活物質層の露出を抑制できる。
さらに、本発明の負極においては、負極活物質層の表面粗さRaは0.1μm以上10μm以下である。凹凸の大きな負極活物質層に上記した電極保護層を組み合わせる場合には、電極保護層による負極活物質層の露出抑制効果が充分に発揮されない可能性があるが、表面粗さがこのような範囲にある負極活物質層に上記した電極保護層を組み合わせれば、電極保護層による負極活物質層の露出抑制効果は充分に発揮される。なお、表面粗さRaがこの範囲にあれば、負極活物質層の表面には比較的凹凸が少なく、負極活物質層の表面は滑らかであると言える。つまり、本発明の負極においては、負極活物質層の凹凸自体を小さくしたことで、負極表面における負極活物質層の露出をより一層抑制できる。
参考までに、電極保護層の密度および目付量が本発明の範囲よりも小さく、負極活物質層の表面粗さが本発明の範囲よりも大きい負極をリチウムイオン二次電池の負極として用い、当該リチウムイオン二次電池を充放電した。すると、図1に示すように負極の表面には負極活物質層が露出した。また、負極の表面に露出した負極活物質層を拡大したところ、図2に示すように、負極活物質層にはリチウムの析出がみられた。
以下に、本発明を実施するための形態を説明する。なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「x〜y」は、下限xおよび上限yをその範囲に含む。そして、これらの上限値および下限値、ならびに実施例中に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで数値範囲を構成し得る。さらに数値範囲内から任意に選択した数値を上限、下限の数値とすることができる。以下、必要に応じて、正極と負極とを総称して電極と呼ぶ。
〔負極〕
本発明の負極は、通常の蓄電装置における負極と同様に、集電体、負極活物質層、および電極保護層を含む。
本発明の負極は、通常の蓄電装置における負極と同様に、集電体、負極活物質層、および電極保護層を含む。
集電体および負極活物質層は特に限定されず、通常の蓄電装置における負極と同様に構成すれば良い。具体的には、集電体は、蓄電装置の放電または充電の間、電極に電流を流し続けるための化学的に不活性な電子高伝導体である。集電体としては、銀、銅、金、アルミニウム、タングステン、コバルト、亜鉛、ニッケル、鉄、白金、錫、インジウム、チタン、ルテニウム、タンタル、クロム、モリブデンから選ばれる少なくとも一種、またはその合金が例示される。例えば、ステンレス鋼などを選択することもできる。
集電体は、箔状、シート状、フィルム状、線状、棒状、メッシュ状などの形態をとることができる。そのため、集電体として、例えば、銅箔、ニッケル箔、アルミニウム箔、ステンレス箔などの金属箔を好適に用いることができる。さらに、集電体の表面に集電体コート層を形成しても良い。集電体コート層の材料は、導電性に優れるものを選択するのが良い。後述する正極に関しても同様である。
負極活物質層は、集電体上に設けられ、負極活物質を含むとともに、バインダや導電助剤等の添加剤を含み得る。集電体、バインダおよび添加剤に関しては、後述する正極に関しても同様である。
負極活物質としては、電荷担体を吸蔵および放出し得る一般的なものを使用可能である。例えば、蓄電装置がリチウムイオン二次電池である場合には、負極活物質として、電荷担体としてのリチウムイオンを吸蔵および放出し得る材料を選択すれば良い。より詳しくは、リチウム等の電荷担体と合金化可能な元素(単体)、当該元素を含む合金、または当該元素を含む化合物であれば良い。具体的には、負極活物質として、Liや、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、錫などの14族元素、アルミニウム、インジウムなどの13族元素、亜鉛、カドミウムなどの12族元素、アンチモン、ビスマスなどの15族元素、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、銀、金などの11族元素をそれぞれ単体で採用すれば良い。ケイ素等を負極活物質に採用すると、ケイ素1原子が複数のリチウムと反応するため、高容量の活物質となる。しかしその一方で、リチウムの吸蔵および放出に伴って負極活物質の体積の膨張および収縮が顕著となる等の問題が生じるおそれがある。したがって、当該恐れの軽減のために、ケイ素などの単体に遷移金属等の他の元素を組み合わせた合金または化合物を負極活物質として採用するのも好適である。合金または化合物の具体例としては、Ag−Sn合金、Cu−Sn合金、Co−Sn合金等の錫系材料、各種黒鉛などの炭素系材料、ケイ素単体と二酸化ケイ素に不均化するSiOx(0.3≦x≦1.6)などのケイ素系材料、ケイ素単体若しくはケイ素系材料と炭素系材料を組み合わせた複合体が挙げられる。また、負極活物質して、Nb2O5、TiO2、Li4Ti5O12、WO2、MoO2、Fe2O3等の酸化物、または、Li3−xMxN(M=Co、Ni、Cu)で表される窒化物を採用しても良い。負極活物質として、これらのものの一種以上を使用することができる。
なお、負極活物質および後述する正極活物質がともに電荷担体を含まない場合、またはこれらに含まれる電荷担体の量が必要とされる量よりも少ない場合には、負極および/または正極に電荷担体を予め添加しておくのが良い。例えば、本発明の蓄電装置がリチウムイオン二次電池である場合、リチウムを含まない負極活物質を用いる場合には、負極および/または正極に、公知の方法によって、予め電荷担体としてのリチウムイオンを添加しておく必要がある。リチウムは、イオンの状態で添加しても良いし、金属等の非イオンの状態で添加しても良い。例えば、リチウム箔を正極および/または負極に貼り付けるなどして一体化しても良い。他の電荷担体を用いる場合に関しても同様である。
バインダは、負極活物質を集電体の表面に繋ぎ止める役割を果たすものである。バインダとしては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂を例示することができる。また、バインダとして、親水基を有するポリマーを採用しても良い。親水基を有するポリマーの親水基としては、カルボキシル基、スルホ基、シラノール基、アミノ基、水酸基、リン酸基などリン酸系の基などが例示される。
負極活物質層中のバインダの配合割合は、質量比で、負極活物質:バインダ=1:0.005〜1:0.3であるのが好ましい。バインダが少なすぎると負極活物質層の成形性が低下し、また、バインダが多すぎると負極のエネルギ密度が低くなるためである。
導電助剤は、負極の導電性を高めるために添加される。そのため、導電助剤は、負極の導電性が不足する場合に任意に加えれば良く、負極の導電性が十分に優れている場合には加えなくても良い。導電助剤は化学的に不活性な電子高伝導体であれば良く、炭素質微粒子であるカーボンブラック、黒鉛、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、気相法炭素繊維(Vapor Grown Carbon Fiber:VGCF)、および各種金属粒子などを例示できる。これらの導電助剤を単独でまたは2種以上組み合わせて負極活物質層に添加することができる。負極活物質層中の導電助剤の配合割合は、質量比で、負極活物質:導電助剤=1:0.01〜1:0.5であるのが好ましい。導電助剤が少なすぎると効率のよい導電パスを形成できず、また、導電助剤が多すぎると負極活物質層の成形性が悪くなるとともに負極のエネルギ密度が低くなるためである。
負極は、負極活物質を含む負極合材を集電体の表面に配置し、乾燥することで形成できる。或いは、乾燥後に電極密度を高めるべく圧縮しても良い。これは後述する正極に関しても同様である。
負極合材は、負極活物質、バインダ、溶剤、その他の添加剤、および、必要に応じて導電助剤を含み、ペースト状をなす。
溶剤は、主として、負極合材の粘度調整のために配合される。一般的には、固形分を予め混合し、次いで溶剤を加えることで、負極合材を集電体に塗布等するのに適した粘度にする。溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、メタノール、メチルイソブチルケトン(MIBK)などが使用可能である。
負極合材を集電体の表面に配置する方法としては、塗布、積層、載置、スプレー等の一般的な方法を用いることができる。例えばロールコート法、ディップコート法、ドクターブレード法、スプレーコート法、カーテンコート法などの従来から公知の方法を選択し得る。
本発明の負極における負極活物質層の表面粗さRaは0.1μm以上10μm以下であり、好ましくは0.1μm以上2.0μm以下であるのが良い。さらに好ましくは0.1μm以上1.0μm以下であるのが良い。上述したように、負極活物質層の表面粗さを小さくすることで、負極表面における負極活物質層の露出を抑制できる。負極活物質層の露出抑制のみを考慮すると、負極活物質層の表面粗さに下限値はない。しかし、負極活物質層には電荷担体や電解液が通過する孔が必要であり、また、負極活物質層の構造上、負極活物質表面にはある程度の凹凸が存在する。上記した負極活物質層の表面粗さRaの下限値は、これらを考慮した値である。
負極は、上述したように、集電体上に負極合材を載置した後、乾燥することで形成される。また場合によっては乾燥後さらに圧縮して形成される。負極活物質層が圧縮されてなるものであれば、負極活物質層の表面粗さは圧縮後の表面粗さを意味する。また、負極活物質層が圧縮工程を経ないのであれば、乾燥後の表面粗さが負極活物質層の表面粗さである。何れの場合にも、負極活物質層の表面粗さは、さらにその表面に後述する電極保護層を設けた後の負極活物質層の表面粗さと略一致する。また、負極活物質層の表面粗さは、負極合材に含まれる各種固形分の粒径やバインダの配合量、圧縮する際の圧力や温度等によって適宜調整できる。
電極保護層は、負極活物質層上に設けられ、絶縁性粒子とバインダとを含む。絶縁性粒子は、粒子状をなし、少なくとも表面が絶縁体で構成されたものである。絶縁性粒子は、電極活物質として機能しないもの、つまり、電荷担体の吸蔵および放出に関与しないものを用いるのが好ましい。絶縁性粒子としては、例えば、アルミナ(Al2O3)、シリカ(SiO2)、チタニア(TiO2)、ジルコニア(ZrO)、マグネシア(MgO)から選ばれる少なくとも一種のセラミック材料からなる粒子を選択することもできるし、その他の絶縁性材料からなる粒子を選択することもできる。例えば、各種の金属元素または非金属元素の酸化物、炭化物、珪化物、窒化物であり、かつ、非導電性(つまり絶縁性)であるものを1種または複数種用いた粒子を選択できる。さらには、各種導電性材料からなる粒子を上記した何れかの絶縁性材料でコートした粒子を選択することもできる。上記の各粒子は単独で用いても良いし複数種併用しても良い。コストや耐久性等を考慮すると、絶縁性粒子として、絶縁性材料からなる粒子を選択するのが好ましく、上述したセラミック材料からなる少なくとも一種の粒子を選択するのがより好ましい。なお、ここで言う粒子とは小形であることを意味し、粒状、球状、板状、棒状、柱状等を含む概念であり、そのアスペクト比等は特に問わない。絶縁性材料が大形であれば、電極保護層を高密度にするのが困難であるため、絶縁性材料には小形であることつまり粒子状であることが要求される。つまり絶縁性粒子の粒径には好ましい範囲が存在する。具体的には、絶縁性粒子の平均粒径は0.1μm〜10μm程度であるのが好ましく、0.3μm〜1μm程度であるのがより好ましい。なお、特に説明のない場合、本明細書でいう平均粒径とは、レーザー光回折法による粒度分布測定における質量平均粒子径を指す。
本発明の負極における電極保護層の密度は1.45g/cm3以上4g/cm3未満であり、電極保護層の目付量は0.5mg/cm2以上2.0mg/cm2以下である。電極保護層の密度および目付量をこのようにすることで、負極表面における負極活物質層の露出を抑制できる。電極保護層の密度は、1.45g/cm3以上4g/cm3未満であるのがより好ましく、1.5g/cm3以上2.0g/cm3未満であるのがさらに好ましい。電極保護層の目付量は0.55mg/cm2以上6mg/cm2以下であるのがより好ましく、0.60mg/cm2以上2mg/cm2以下であるのがさらに好ましい。
なお、電極保護層の目付量とは、負極活物質層上に設けられている電極保護層自体の量を指す。例えば、電極保護層が乾燥工程等を経て形成され、電極保護層の材料(電極保護合材と呼ぶ)の一部、例えば溶剤等が電極保護層中に存在しない場合には、当該存在しない材料の質量は目付量に含まれない。したがって、電極保護層の目付量は、負極活物質層上に塗布した電極保護合材の固形分の質量(mg)を、負極活物質層の塗布面積(cm2)で除した値と言い換えることもできる。
同様に、電極保護層の密度とは、負極活物質層上に設けられている電極保護層自体の密度を指す。電極保護層の密度は、負極活物質層上に塗布した電極保護合材の固形分の質量(g)を、負極活物質層上に設けられている電極保護層の体積(cm3)で除した値と言い換えることもできる。
負極活物質層の露出抑制の観点からは、電極保護層は密である程良いと考えられるが、電極保護層には電荷担体や電解液の通過を許容する孔が必要である。このため電極保護層の密度には上限値がある。また、エネルギ効率等の電池性能を考慮すると、電極保護層の目付量にも上限値がある。上記した電極保護層の密度および目付量の上限値は、これらを考慮した値である。
なお、ここで言う「電極保護層の密度」は、「電極保護層の空隙率」に換算できる。空隙率の大きい電極保護層は粗であり、空隙率の小さい電極保護層は密である。空隙率は、下式(1)によって算出可能である。なお、電極保護層の材料の真密度は、各材料の真密度と各材料の配合比とを基に算出可能である。
空隙率(%)={1−(電極保護層の密度/電極保護層の材料の真密度)}×100…(1)
電極保護層用のバインダは、蓄電装置の種類等に応じて適宜選択すれば良く、負極用の電極保護層に一般に用いられるバインダを使用すれば良い。例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素系樹脂が挙げられる。或いは、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)、アクリロニトリル−イソプレン共重合体ゴム(NBIR)等のゴム系バインダを用いても良い。または、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等のアクリル系ポリマーを用いても良い。または、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等の酢酸ビニル系樹脂を用いても良い。バインダとしては、これらを単独で用いることもできるし、2種以上を併用することもできる。また、電極保護層は、絶縁性粒子およびバインダ以外の成分、例えば分散剤等の添加剤を含んでも良い。
空隙率(%)={1−(電極保護層の密度/電極保護層の材料の真密度)}×100…(1)
電極保護層用のバインダは、蓄電装置の種類等に応じて適宜選択すれば良く、負極用の電極保護層に一般に用いられるバインダを使用すれば良い。例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素系樹脂が挙げられる。或いは、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)、アクリロニトリル−イソプレン共重合体ゴム(NBIR)等のゴム系バインダを用いても良い。または、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等のアクリル系ポリマーを用いても良い。または、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等の酢酸ビニル系樹脂を用いても良い。バインダとしては、これらを単独で用いることもできるし、2種以上を併用することもできる。また、電極保護層は、絶縁性粒子およびバインダ以外の成分、例えば分散剤等の添加剤を含んでも良い。
電極保護層における絶縁性粒子およびバインダの量は、絶縁性粒子の種類、粒径、電極保護層の密度、電極保護層の目付量等に応じて適宜設定すれば良いが、範囲を設けるとすれば、電極保護層の質量を100質量%としたときに絶縁性粒子は90〜99質量%含まれるのが好ましく、95〜98質量%含まれるのがより好ましい。また、バインダは1質量%〜10質量%含まれるのが好ましく、2質量%〜5質量%含まれるのがより好ましい。
また、電極保護層の厚さは、電極保護層の密度および目付量に応じて必然的に決定される。具体的には、電極保護層の厚さは1μm〜15μmであるのが好ましく、2μm〜8μmであるのがより好ましい。
〔蓄電装置〕
本発明の蓄電装置は、上記した本発明の負極を含むものである。本発明の蓄電装置は、例えば、非水電解質二次電池やリチウムイオンキャパシタ等として具現化できる。
本発明の蓄電装置は、上記した本発明の負極を含むものである。本発明の蓄電装置は、例えば、非水電解質二次電池やリチウムイオンキャパシタ等として具現化できる。
本発明の蓄電装置は、負極、正極および電解質を有し、必要に応じてセパレータを有する。本発明の蓄電装置における負極は電極保護層を持つため、電極保護層自体がセパレータとしての機能を持つ。このため、場合によってはセパレータを省略できる。また、例えば蓄電装置における電解質が固体電解質である場合やポリマー電解質である場合等、本発明の蓄電装置自体がセパレータを必要としない場合もある。
正極は、電荷担体を吸蔵および放出し得る正極活物質を有する。正極は、集電体と、集電体の表面に設けた正極活物質層を有する。正極活物質層は正極活物質、ならびに必要に応じて結着剤および/または導電助剤を含む。正極の集電体は、使用する活物質に適した電圧に耐え得る金属であれば特に制限はなく、上記した負極と同様のものを使用すれば良い。正極のバインダおよび導電助剤に関しても、負極で説明したものと同様である。
正極活物質としては、例えば、層状化合物のLiaNibCocMndDeOf(0.2≦a≦1.2、b+c+d+e=1、0≦e<1、DはLi、Fe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Al、Zr、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、Laから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦2.1)、Li2MnO3を挙げることができる。また、正極活物質として、LiMn2O4、Li2Mn2O4等のスピネル、およびスピネルと層状化合物の混合物で構成される固溶体、LiMPO4、LiMVO4またはLi2MSiO4(式中のMはCo、Ni、Mn、Feのうちの少なくとも一種から選択される)などで表されるポリアニオン系化合物を挙げることもできる。さらに、正極活物質として、LiFePO4FなどのLiMPO4F(Mは遷移金属)で表されるタボライト系化合物、LiFeBO3などのLiMBO3(Mは遷移金属)で表されるボレート系化合物を挙げることもできる。正極活物質として用いられる何れの金属酸化物も上記の組成式を基本組成とすれば良く、基本組成に含まれる金属元素を他の金属元素で置換したものも使用可能である。また、正極活物質として、リチウム等の電荷担体を含まないもの、例えば、硫黄単体(S)、硫黄と炭素を複合化した化合物、TiS2などの金属硫化物、V2O5、MnO2などの酸化物、ポリアニリンおよびアントラキノンならびにこれら芳香族を化学構造に含む化合物、共役二酢酸系有機物などの共役系材料、その他公知の材料を用いることもできる。さらに、ニトロキシド、ニトロニルニトロキシド、ガルビノキシル、フェノキシルなどの安定なラジカルを有する化合物を正極活物質として採用してもよい。上記したように電荷担体を含まない正極活物質を用いる場合には、正極および/または負極に、公知の方法により、予め電荷担体を添加しておくのが良い。なお、負極活物質層の表面に加え、正極活物質層の表面にも上記した電極保護層を設けても良い。この場合、正極活物質層の表面粗さRaを、上記した負極活物質層の表面粗さRaと同様に、0.1μm以上10μm以下にするのが良く、0.1μm以上2.0μm以下にするのがより好ましく、0.1μm以上1.0μm以下にするのがさらに好ましい。
また、電極保護層は、上記した負極の電極保護層と同様に、絶縁性粒子とバインダとで構成し、その密度が1.45g/cm3以上4g/cm3未満となるようにし、さらにその目付量が0.5mg/cm2以上2.0mg/cm2以下となるようにするのが良い。
また、電極保護層は、上記した負極の電極保護層と同様に、絶縁性粒子とバインダとで構成し、その密度が1.45g/cm3以上4g/cm3未満となるようにし、さらにその目付量が0.5mg/cm2以上2.0mg/cm2以下となるようにするのが良い。
電解質は、蓄電装置の種類に応じたものを用いれば良く、特に限定されない。例えば、本発明の蓄電装置が非水電解質二次電池であれば、電解質として、有機溶媒に支持塩(支持電解質とも言う)を溶解させたものを用いれば良い。例えば蓄電装置がリチウムイオン二次電池の場合には、有機溶媒として、非プロトン性有機溶媒、例えばプロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等から選ばれる少なくとも一種を好ましく選択できる。また、この場合の支持塩としては、有機溶媒に可溶なリチウム金属塩を用いるのが良く、例えば、LiPF6、LiBF4、LIASF6、LiI、LiClO4、LiCF3SO3からなる群から選ばれる少なくとも一種を用いるのが好適である。支持塩は、有機溶媒に0.5mol/l〜1.7mol/l程度の濃度で溶解させるのが好ましい。
蓄電装置には必要に応じてセパレータが用いられる。セパレータは、負極と正極とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、電解液および電荷担体の通過を許容するものである。セパレータとしては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアラミド(Aromatic polyamide)、ポリエステル、ポリアクリロニトリル等の合成樹脂、セルロース、アミロース等の多糖類、フィブロイン、ケラチン、リグニン、スベリン等の天然高分子、セラミックスなどの電気絶縁性材料を1種または複数種用いた多孔体、不織布、織布などを挙げることができる。また、セパレータは多層構造としても良い。
上述した負極および正極に、必要に応じてセパレータを挟装させ電極体とする。電極体は、負極、セパレータおよび正極を重ねた積層型、または、負極、セパレータおよび正極を捲いた捲回型の何れの型にしても良い。負極の集電体および正極の集電体から外部に通ずる負極端子および正極端子までの間を、集電用リード等を用いて接続した後に、電極体に電解質を加えることで蓄電装置を得ることが可能である。
本発明の蓄電装置の形状は特に限定されるものでなく、円筒型、角型、コイン型、ラミネート型等、種々の形状を採用することができる。
本発明の蓄電装置の用途は特に限定されず、パーソナルコンピュータ、携帯通信機器など、電力で駆動される各種の家電製品、オフィス機器、産業機器、車両等が挙げられる。
以下に、実施例および比較例を基に、本発明を具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例および比較例によって限定されるものではない。以下において、特に断らない限り、「部」とは質量部を意味し、「%」とは質量%を意味する。
(試験1)
試験1の負極およびその製造方法を以下に説明する。
試験1の負極およびその製造方法を以下に説明する。
〔負極活物質層形成工程〕
負極活物質としては平均粒径20μmの黒鉛を用いた。黒鉛と、バインダとしてのスチレン・ブタジエンゴム(SBR)と、バインダとしてのカルボキシメチルセルロース(CMC)とを、黒鉛:SBR:CMC=98:1:1の質量比で混合し、溶媒を加えてスラリー状をなす負極合材を得た。溶媒としてはN‐メチル‐2‐ピロリドン(NMP)を用いた。
負極活物質としては平均粒径20μmの黒鉛を用いた。黒鉛と、バインダとしてのスチレン・ブタジエンゴム(SBR)と、バインダとしてのカルボキシメチルセルロース(CMC)とを、黒鉛:SBR:CMC=98:1:1の質量比で混合し、溶媒を加えてスラリー状をなす負極合材を得た。溶媒としてはN‐メチル‐2‐ピロリドン(NMP)を用いた。
次いで、上記のスラリー状の負極合材を、ドクターブレードを用いて集電体の片面に塗布した。集電体としては厚さ20μmの銅箔を用いた。このときの負極合材の目付量は11mg/cm2であった。集電体および負極合材を120℃で1分間乾燥した後にプレス機によりプレスした。以上の工程により、集電体上に負極活物質層を形成した。負極活物質層の密度は1.4g/cm3であり、負極活物質層の表面粗さは0.8μmであった。
〔電極保護層形成工程〕
絶縁性粒子としては、平均粒径0.5μmのアルミナを用い、バインダとしてはポリフッ化ビニリデン(PVdF)を用いた。アルミナとPVdFとを、アルミナ:PVdF=96:4の質量比で混合し、溶媒を加えてスラリー状をなす電極保護層合材を得た。溶媒としてはNMPを用いた。溶媒の量は、アルミナとPVdFとの混合物35質量部に対して65質量部であった。
絶縁性粒子としては、平均粒径0.5μmのアルミナを用い、バインダとしてはポリフッ化ビニリデン(PVdF)を用いた。アルミナとPVdFとを、アルミナ:PVdF=96:4の質量比で混合し、溶媒を加えてスラリー状をなす電極保護層合材を得た。溶媒としてはNMPを用いた。溶媒の量は、アルミナとPVdFとの混合物35質量部に対して65質量部であった。
次いで、上記のスラリー状の電極保護層合材を、ダイコータを用いて負極活物質層上に塗布した。その後110℃で1分間温風乾燥することで、電極保護層を形成した。この電極保護層の目付量は0.19mg/cm2であった。この電極保護層の厚さは1.25μmであり、密度は1.50g/cm3であった。電極保護層の目付量は蛍光X線分析法で測定した。電極保護層の厚さは、電極保護層形成後の負極活物質層と電極保護層との厚さの和から、電極保護層形成前の負極活物質層の厚さを引いた値である。なお、ここでいう電極保護層の厚さとは、マイクロメータでランダムに5点計測した値の平均値である。電極保護層の密度は、電極保護層の目付量と電極保護層の厚さから換算可能であり、具体的には目付量を厚さで除した値である。
さらに、上記換算式(1)に基づいて計算した電極保護層の空隙率は、{1−(1.50/4)}×100=62.5(%)であった。なお、材料の真密度として絶縁粒子の真密度(4g/m3)を用いた。試験1の電極保護層におけるバインダの含量は4質量%であり、無視できる程度に少なかった。
以上の工程で集電体上に負極活物質層および電極保護層が設けられてなる積層体を得た。この積層体を所定の形状に切り取って試験1の負極を得た。
(試験2)
試験2の負極は、電極保護層の目付量、膜厚、密度および空隙率以外は試験1の負極と同じものである。試験2の負極における負極活物質層の密度は1.4g/cm3であり、負極活物質層の表面粗さは0.8μmであった。また、電極保護層の目付量は0.38mg/cm2であった。この電極保護層の厚さは2.5μmであり、密度は1.50g/cm3であった。さらに、上記換算式(1)に基づいて計算した電極保護層の空隙率は62.5%であった。
試験2の負極は、電極保護層の目付量、膜厚、密度および空隙率以外は試験1の負極と同じものである。試験2の負極における負極活物質層の密度は1.4g/cm3であり、負極活物質層の表面粗さは0.8μmであった。また、電極保護層の目付量は0.38mg/cm2であった。この電極保護層の厚さは2.5μmであり、密度は1.50g/cm3であった。さらに、上記換算式(1)に基づいて計算した電極保護層の空隙率は62.5%であった。
試験2の負極の製造方法は、ダイコータのギャップ、つまり、スラリー状の電極保護層合材が吐出されるダイコータの隙間が大きかった点で試験1の負極の製造方法と異なる。ダイコータのギャップが大きければ、電極保護層の目付量が多くなる。
(試験3)
試験3の負極は、電極保護層の目付量、膜厚、密度および空隙率以外は試験1の負極と同じものである。試験3の負極における負極活物質層の密度は1.4g/cm3であり、負極活物質層の表面粗さは0.8μmであった。また、電極保護層の目付量は0.60mg/cm2であった。この電極保護層の厚さは4.0μmであり、密度は1.50g/cm3であった。さらに、上記換算式(1)に基づいて計算した電極保護層の空隙率は62.5%であった。
試験3の負極は、電極保護層の目付量、膜厚、密度および空隙率以外は試験1の負極と同じものである。試験3の負極における負極活物質層の密度は1.4g/cm3であり、負極活物質層の表面粗さは0.8μmであった。また、電極保護層の目付量は0.60mg/cm2であった。この電極保護層の厚さは4.0μmであり、密度は1.50g/cm3であった。さらに、上記換算式(1)に基づいて計算した電極保護層の空隙率は62.5%であった。
試験3の負極の製造方法は、試験2の負極の製造方法と同様に、ダイコータのギャップが大きかった点で試験1の負極の製造方法と異なる。
(試験4)
試験4の負極は、電極保護層の目付量、膜厚、密度および空隙率以外は試験1の負極と同じものである。試験4の負極における負極活物質層の密度は1.4g/cm3であり、負極活物質層の表面粗さは0.8μmであった。また、電極保護層の目付量は0.83mg/cm2であった。この電極保護層の厚さは5.5μmであり、密度は1.50g/cm3であった。さらに、上記換算式(1)に基づいて計算した電極保護層の空隙率は62.5%であった。
試験4の負極は、電極保護層の目付量、膜厚、密度および空隙率以外は試験1の負極と同じものである。試験4の負極における負極活物質層の密度は1.4g/cm3であり、負極活物質層の表面粗さは0.8μmであった。また、電極保護層の目付量は0.83mg/cm2であった。この電極保護層の厚さは5.5μmであり、密度は1.50g/cm3であった。さらに、上記換算式(1)に基づいて計算した電極保護層の空隙率は62.5%であった。
試験4の負極の製造方法は、試験2のおよび試験3の負極の製造方法と同様に、ダイコータのギャップが大きかった点で試験1の負極の製造方法と異なる。
(試験5)
試験5の負極は、電極保護層の目付量、膜厚、密度および空隙率以外は試験1の負極と同じものである。試験5の負極における負極活物質層の密度は1.4g/cm3であり、負極活物質層の表面粗さは0.8μmであった。また、電極保護層の目付量は0.76mg/cm2であった。この電極保護層の厚さは4.5μmであり、密度は1.68g/cm3であった。さらに、上記換算式(1)に基づいて計算した電極保護層の空隙率は58.0%であった。
試験5の負極は、電極保護層の目付量、膜厚、密度および空隙率以外は試験1の負極と同じものである。試験5の負極における負極活物質層の密度は1.4g/cm3であり、負極活物質層の表面粗さは0.8μmであった。また、電極保護層の目付量は0.76mg/cm2であった。この電極保護層の厚さは4.5μmであり、密度は1.68g/cm3であった。さらに、上記換算式(1)に基づいて計算した電極保護層の空隙率は58.0%であった。
試験5の負極の製造方法は、電極保護層合材における固形分(つまりアルミナとPVdFの含有量)が多かった点、および、ダイコータのギャップが大きかった点で試験1の負極の製造方法と異なる。試験1における電極保護層合材はアルミナとPVdFとの混合物を35質量部含んでいたのに対し、試験5における電極保護層合材はアルミナとPVdFとの混合物を37質量部含んでいた。
(試験6)
試験6の負極は、電極保護層の目付量、膜厚、密度および空隙率以外は試験1の負極と同じものである。試験6の負極における負極活物質層の密度は1.4g/cm3であり、負極活物質層の表面粗さは0.8μmであった。また、電極保護層の目付量は0.61mg/cm2であった。この電極保護層の厚さは3.65μmであり、密度は1.68g/cm3であった。さらに、上記換算式(1)に基づいて計算した電極保護層の空隙率は58.0%であった。
試験6の負極は、電極保護層の目付量、膜厚、密度および空隙率以外は試験1の負極と同じものである。試験6の負極における負極活物質層の密度は1.4g/cm3であり、負極活物質層の表面粗さは0.8μmであった。また、電極保護層の目付量は0.61mg/cm2であった。この電極保護層の厚さは3.65μmであり、密度は1.68g/cm3であった。さらに、上記換算式(1)に基づいて計算した電極保護層の空隙率は58.0%であった。
試験6の負極の製造方法は、試験5の負極の製造方法と同様に、電極保護層合材における固形分が多かった点、および、ダイコータのギャップが大きかった点で試験1の負極の製造方法と異なる。
(試験7)
試験7の負極は、電極保護層の目付量、膜厚、密度および空隙率以外は試験1の負極と同じものである。試験7の負極における負極活物質層の密度は1.4g/cm3であり、負極活物質層の表面粗さは0.8μmであった。また、電極保護層の目付量は0.34mg/cm2であった。この電極保護層の厚さは2.0μmであり、密度は1.68g/cm3であった。さらに、上記換算式(1)に基づいて計算した電極保護層の空隙率は58.0%であった。
試験7の負極は、電極保護層の目付量、膜厚、密度および空隙率以外は試験1の負極と同じものである。試験7の負極における負極活物質層の密度は1.4g/cm3であり、負極活物質層の表面粗さは0.8μmであった。また、電極保護層の目付量は0.34mg/cm2であった。この電極保護層の厚さは2.0μmであり、密度は1.68g/cm3であった。さらに、上記換算式(1)に基づいて計算した電極保護層の空隙率は58.0%であった。
試験7の負極の製造方法は、試験5および試験6の負極の製造方法と同様に、電極保護層合材における固形分が多かった点、および、ダイコータのギャップが大きかった点で試験1の負極の製造方法と異なる。
(試験8)
試験8の負極は、電極保護層の目付量、膜厚、密度および空隙率以外は試験1の負極と同じものである。試験8の負極における負極活物質層の密度は1.4g/cm3であり、負極活物質層の表面粗さは0.8μmであった。また、電極保護層の目付量は0.83mg/cm2であった。この電極保護層の厚さは6.0μmであり、密度は1.39g/cm3であった。さらに、上記換算式(1)に基づいて計算した電極保護層の空隙率は65.25%であった。
試験8の負極は、電極保護層の目付量、膜厚、密度および空隙率以外は試験1の負極と同じものである。試験8の負極における負極活物質層の密度は1.4g/cm3であり、負極活物質層の表面粗さは0.8μmであった。また、電極保護層の目付量は0.83mg/cm2であった。この電極保護層の厚さは6.0μmであり、密度は1.39g/cm3であった。さらに、上記換算式(1)に基づいて計算した電極保護層の空隙率は65.25%であった。
試験8の負極の製造方法は、電極保護層合材における固形分が少なかった点、および、ダイコータのギャップが大きかった点で試験1の負極の製造方法と異なる。試験1における電極保護層合材はアルミナとPVdFとの混合物を35質量部含んでいたのに対し、試験8における電極保護層合材はアルミナとPVdFとの混合物を33質量部含んでいた。
(試験9)
試験9の負極は、電極保護層の目付量、膜厚、密度および空隙率以外は試験1の負極と同じものである。試験9の負極における負極活物質層の密度は1.4g/cm3であり、負極活物質層の表面粗さは0.8μmであった。また、電極保護層の目付量は0.60mg/cm2であった。この電極保護層の厚さは4.3μmであり、密度は1.39g/cm3であった。さらに、上記換算式(1)に基づいて計算した電極保護層の空隙率は65.25%であった。
試験9の負極は、電極保護層の目付量、膜厚、密度および空隙率以外は試験1の負極と同じものである。試験9の負極における負極活物質層の密度は1.4g/cm3であり、負極活物質層の表面粗さは0.8μmであった。また、電極保護層の目付量は0.60mg/cm2であった。この電極保護層の厚さは4.3μmであり、密度は1.39g/cm3であった。さらに、上記換算式(1)に基づいて計算した電極保護層の空隙率は65.25%であった。
試験9の負極の製造方法は、試験8の負極の製造方法と同様に、電極保護層合材における固形分が少なかった点、および、ダイコータのギャップが大きかった点で試験1の負極の製造方法と異なる。
(試験10)
試験10の負極は、電極保護層の目付量、膜厚、密度および空隙率以外は試験1の負極と同じものである。試験10の負極における負極活物質層の密度は1.4g/cm3であり、負極活物質層の表面粗さは0.8μmであった。また、電極保護層の目付量は0.42mg/cm2であった。この電極保護層の厚さは3.0μmであり、密度は1.39g/cm3であった。さらに、上記換算式(1)に基づいて計算した電極保護層の空隙率は65.25%であった。
試験10の負極は、電極保護層の目付量、膜厚、密度および空隙率以外は試験1の負極と同じものである。試験10の負極における負極活物質層の密度は1.4g/cm3であり、負極活物質層の表面粗さは0.8μmであった。また、電極保護層の目付量は0.42mg/cm2であった。この電極保護層の厚さは3.0μmであり、密度は1.39g/cm3であった。さらに、上記換算式(1)に基づいて計算した電極保護層の空隙率は65.25%であった。
試験10の負極の製造方法は、試験8および試験9の負極の製造方法と同様に、電極保護層合材における固形分が少なかった点、および、ダイコータのギャップが大きかった点で試験1の負極の製造方法と異なる。
<評価試験>
試験1〜試験10の各負極の表面をSEMで観察することで、負極表面に負極活物質が露出しているか否かを評価した。400倍のSEM像を目視で観察し、縦横ともに数十μmにわたって負極活物質層が露出しているものを、負極活物質層の露出あり(×)と評価した。具体的には、負極活物質層が縦横ともに20μm以上にわたって露出しているものを×と評価した。また、負極活物質の露出がこれ以下のものを負極活物質層の露出なし(○)と評価した。評価試験の結果を表1に示す。また試験1の負極の表面のSEM像を図3に示し、試験4の負極の表面のSEM像を図4に示す。図3および図4のSEM像は何れも拡大率1000倍である。さらに、電極保護層の目付量、膜厚および密度と、評価試験の結果との関係を表すグラフを図5に示す。なお、図5中直線(I)は、電極保護層の密度が4g/cm3である場合(つまり、電極保護層が絶縁性粒子たるアルミナのみで構成されかつ空隙率が0%である場合)を想定した、電極保護層の目付量と膜厚との関係を表す直線である。さらに、図5中直線(II)は、電極保護層が絶縁性粒子たるアルミナおよびバインダたるPVdFで構成され、電極保護層の真密度が3.91g/cm3であり、電極保護層の空隙率が0%である場合を想定した、電極保護層の目付量と膜厚との関係を表す直線である。この場合アルミナとPVdFとの配合比は、質量比でアルミナ:PVdF=96:4であると想定される。
試験1〜試験10の各負極の表面をSEMで観察することで、負極表面に負極活物質が露出しているか否かを評価した。400倍のSEM像を目視で観察し、縦横ともに数十μmにわたって負極活物質層が露出しているものを、負極活物質層の露出あり(×)と評価した。具体的には、負極活物質層が縦横ともに20μm以上にわたって露出しているものを×と評価した。また、負極活物質の露出がこれ以下のものを負極活物質層の露出なし(○)と評価した。評価試験の結果を表1に示す。また試験1の負極の表面のSEM像を図3に示し、試験4の負極の表面のSEM像を図4に示す。図3および図4のSEM像は何れも拡大率1000倍である。さらに、電極保護層の目付量、膜厚および密度と、評価試験の結果との関係を表すグラフを図5に示す。なお、図5中直線(I)は、電極保護層の密度が4g/cm3である場合(つまり、電極保護層が絶縁性粒子たるアルミナのみで構成されかつ空隙率が0%である場合)を想定した、電極保護層の目付量と膜厚との関係を表す直線である。さらに、図5中直線(II)は、電極保護層が絶縁性粒子たるアルミナおよびバインダたるPVdFで構成され、電極保護層の真密度が3.91g/cm3であり、電極保護層の空隙率が0%である場合を想定した、電極保護層の目付量と膜厚との関係を表す直線である。この場合アルミナとPVdFとの配合比は、質量比でアルミナ:PVdF=96:4であると想定される。
本発明の負極は、下記の(a)〜(c)の全てを満たす。
(a)電極保護層の密度が1.45g/cm3以上4g/cm3未満、
(b)電極保護層の目付量が0.5mg/cm2以上2.0mg/cm2以下、
(c)負極活物質層の表面粗さRaが0.1μm以上10μm以下。
(a)電極保護層の密度が1.45g/cm3以上4g/cm3未満、
(b)電極保護層の目付量が0.5mg/cm2以上2.0mg/cm2以下、
(c)負極活物質層の表面粗さRaが0.1μm以上10μm以下。
また、図5中斜線で表した領域は、(a)および(b)を満たす領域であり、試験1〜試験10の負極における負極活物質層の表面粗さRaは何れも(c)を満たす。
表1、図3および図5に示すように、(a)または(b)を満たさない試験1、2、7〜10の負極の表面には、負極活物質層の露出がみられた。これに対し、表1、図4および図5に示すように、(a)〜(c)の全てを満たす試験3〜試験6の負極の表面には負極活物質層の露出はみられなかった。このことから、(a)〜(c)の全てを満たすことで、負極の表面における負極活物質層の露出を抑制できるといえる。
また、図5に示すように、電極保護層の目付量は0.5mg/cm3以上であれば良いが、0.55mg/cm3以上であるのが好ましく、0.6mg/cm3以上であるのがより好ましい。同様に、図5を基にすると、電極保護層の密度は1.45g/cm3以上であれば良いが、1.50g/cm3以上であるのが特に好ましい。また、図5中(II)を考慮すると、電極保護層の密度は3.91g/cm3以下であるのが好ましい。
参考までに、上記(a)は下記(a2)と言い換えることができる。
(a2)電極保護層の空隙率が0%を超え63.75%以下。
(a2)電極保護層の空隙率が0%を超え63.75%以下。
また、電極保護層の空隙率は62.5%以下であるのが特に好ましいといえ、さらに、図5中(II)を考慮すると61.6%以上であるのが好ましいといえる。
なお、負極活物質層の表面粗さが0.8μmである試験3〜6の負極において負極活物質層の露出評価が○であったため、負極活物質層の表面粗さRaが0.8μmよりも大きい場合にも負極活物質層の露出を抑制できる蓋然性が高い。例えば試験3の負極における電極保護層の目付量は0.6mg/cm2であり、電極保護層の目付量の最大値2.0mg/cm2に比べると遙かに少ないにも拘わらず負極活物質層の露出抑制を実現している。したがって、電極保護層の目付量を最大値に近づければ、負極活物質層の表面粗さRaがさらに大きい場合、例えば10μmである場合にも、負極活物質層の露出を抑制できる蓋然性が高い。これに加えて、電極保護層の密度を最大値である4g/cm3付近まで高めることで、負極活物質層の露出をさらに抑制できる。本発明の負極における負極活物質層の表面粗さRaの上限値はこれを鑑みて決定した値である。なお、好ましくは、負極活物質層の表面粗さRaは5.0μm以下であるのが良く、さらに好ましくは2.0μm以下であるのが良く、特に好ましくは1.0μm以下であるのが良い。
〔その他〕
各試験の負極を用い、リチウムイオン二次電池を製作した。正極としては、LiNi5/10Co2/10Mn3/10O2で表される層状岩塩構造のリチウム含有金属酸化物を用いた。
各試験の負極を用い、リチウムイオン二次電池を製作した。正極としては、LiNi5/10Co2/10Mn3/10O2で表される層状岩塩構造のリチウム含有金属酸化物を用いた。
電解質用の有機溶媒としては、エチレンカーボネート(EC):メチルエチルカーボネート(MEC):ジメチルカーボネート(DMC)=3:3:4(体積比)の混合溶液を用いた。支持塩としてはLiPF6を用いた。支持塩を有機溶媒に1モル/Lとなるように溶解させて液状の電解質(電解液)を得た。
上記の正極および負極の間に、セパレータとしてポリエチレン(PE)製の矩形状シート(厚さ25μm)を挟装して極板群とした。この極板群を二枚一組のラミネートフィルムで覆い、三辺をシールした後、袋状となったラミネートフィルムに上記電解液を注入した。その後、残りの一辺をシールすることで、四辺が気密にシールされ、極板群および電解液が密閉されたラミネート型リチウムイオン二次電池を得た。なお、正極および負極は外部と電気的に接続可能なタブを備え、このタブの一部はラミネート型リチウムイオン二次電池の外側に延出したものである。このように製作された各リチウムイオン二次電池を充放電すると、負極表面に負極活物質層が露出したものに関しては負極表面にリチウムの析出がみられ、負極表面に負極活物質層が露出していないものに関してはリチウムの析出はみられなかった。
Claims (4)
- 集電体と、前記集電体上に設けられている負極活物質層と、前記負極活物質層上に設けられている電極保護層と、を含み、
前記電極保護層は、絶縁性粒子とバインダとを含み、
前記電極保護層の密度は1.45g/cm3以上4g/cm3未満であり、
前記電極保護層の目付量は0.5mg/cm2以上2.0mg/cm2以下であり、
前記負極活物質層の表面粗さRaは0.1μm以上10μm以下である負極。 - 前記負極活物質層の表面粗さRaは0.1μm以上2.0μm以下である請求項1に記載の負極。
- 請求項1または請求項2に記載の負極を含む蓄電装置。
- 負極活物質を含む負極活物質層を集電体上に形成する負極活物質層形成工程と、
絶縁性粒子およびバインダを含む電極保護層を前記負極活物質層上に形成する電極保護層形成工程と、を含み、
前記負極活物質層形成工程において、前記負極活物質層の表面粗さを0.1μm以上10μm以下にし、
前記電極保護層形成工程において、前記電極保護層の密度を1.45g/cm3以上4g/cm3未満にし、前記電極保護層の目付量を0.5mg/cm2以上2.0mg/cm2以下にする負極の製造方法。
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