JP2020085819A - 脱進機、ムーブメント及び機械式時計 - Google Patents
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Abstract
【課題】てんぷの回転角度を増大させることができる脱進機を提供する。【解決手段】脱進機は、アンクル真25の周りに往復回転運動することによりがんぎ車10の回転を制御するアンクル20と、一定の周期でてん真33の周りに往復回転運動するてんぷ30と、てんぷ30の往復回転運動に応じてアンクル20を変位させることにより、アンクル20を往復回転運動させる振り石36と、振り石36が搭載され、てんぷ30の往復回転運動に連動して、てん真33を中心軸とする円40の円弧41及び円弧41に連続する円40の接線42を含む軌道上に振り石36を移動させる環状の搭載部材35とを備える。【選択図】図3
Description
本発明は、脱進機、ムーブメント及び機械式時計に関する。
特許文献1は、機械式時計の輪列を構成する歯車に噛み合う調整車により、てんぷに伝達される回転トルクを減少させ、てんぷを所定の回転角度範囲で調速振動させる技術を開示する。
しかしながら、特許文献1に記載の脱進機構では、てんぷと振り石とが一体的に回転するため、てんぷの回転角度を増大させることが困難である。
本発明の一態様に係る脱進機は、がんぎ車と、アンクル真の周りに往復回転運動し、前記往復回転運動に応じて前記がんぎ車の歯に掛かる爪により前記がんぎ車の回転を制御するアンクルと、一定の周期でてん真の周りに往復回転運動するてんぷと、前記てんぷの往復回転運動に応じて前記アンクルに接触することにより、前記アンクルを往復回転運動させる振り石と、前記振り石が搭載され、前記てんぷの往復回転運動に連動して、前記てん真を中心軸とする円の円弧及び前記円弧に連続する前記円の接線を含む軌道上に前記振り石を移動させる環状の搭載部材と、を備える。
上述の態様において、前記搭載部材は、長円状の軌道上を移動してもよい。
上述の態様において、前記搭載部材は、ローラーチェーンであってもよい。
上述の態様において、前記搭載部材は、ベルトであってもよい。
本発明の他の態様に係る時計ムーブメントは、上述の脱進機を搭載する。
本発明の他の態様に係る機械式時計は、上述の時計ムーブメントを搭載する。
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る脱進機、ムーブメント及び機械式時計を説明する。本実施形態で説明される構成の全てが、本発明の必須構成要件であるとは限らない。本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものではない。図面においては同一又は類似の要素には同一又は類似の符号をそれぞれ付して、重複する説明を省略する。図面は模式的であり、実際の寸法及び寸法の相対的比率、配置、構造等と異なる場合が含まれ得る。
[第1実施形態]
図1に示すように、第1実施形態に係る時計1は、例えば、外装ケース2と、外装ケース2内に設けられた文字板3と、時針4Aと、分針4Bと、秒針4Cと、日車6と、外装ケース2の側面に設けられたりゅうず7とを備える。時計1は、例えば、ユーザーの手首に装着される機械式の腕時計である。
図1に示すように、第1実施形態に係る時計1は、例えば、外装ケース2と、外装ケース2内に設けられた文字板3と、時針4Aと、分針4Bと、秒針4Cと、日車6と、外装ケース2の側面に設けられたりゅうず7とを備える。時計1は、例えば、ユーザーの手首に装着される機械式の腕時計である。
図2に示すように、時計1は、外装ケース2内に収容されたムーブメント100を備える。ムーブメント100は、それぞれ指針である時針4A、分針4B及び秒針4Cを、それぞれの周期で駆動する時計ムーブメントである。ムーブメント100は、例えば、地板110、一番受け120、てんぷ受け130を備える。ムーブメント100は、地板110と一番受け120との間にそれぞれ配置された香箱車81、図示略の二番車、三番車83、四番車84及びがんぎ車10を備える。香箱車81は、図示略のぜんまいを内部に収容する。また、ムーブメント100は、地板110とてんぷ受け130との間にそれぞれ配置されたアンクル20及びてんぷ30を備える。
ムーブメント100は、例えば、ぜんまいを巻き上げる巻上げ機構90として、巻真91、つづみ車92、きち車93、丸穴車94、第1中間車95及び第2中間車96を更に備える。巻上げ機構90は、りゅうず7の回転操作による回転を角穴車82に伝達することにより、図示略の香箱真を回転させて香箱車81のぜんまいを巻き上げることができる。巻上げ機構90の詳細は、一般的な機械式ムーブメントにおける巻上げ機構と同じであり得るため、説明を省略する。
図3及び図4に示すように、がんぎ車10、アンクル20及びてんぷ30は、一定周期の振動によりがんぎ車10の回転を制御する脱進機50の一部を構成する。第1実施形態に係る脱進機50は、がんぎ車10、アンクル20及びてんぷ30に加えて、アンクル20との間で運動エネルギーを授受する振り石36と、振り石36が搭載される搭載部材35とを備える。
がんぎ車10は、香箱車81から、二番車、三番車83及び四番車84を介して伝達される運動エネルギーを受けて、矢印aのようにがんぎ軸11の周りに一方向に回転する。がんぎ車10は、がんぎ軸11を中心とする円環状のリム部12と、リム部12の外側面から外側に向けて概略として放射状に突出する複数のがんぎ歯13とを有する。がんぎ歯13のそれぞれは、がんぎ軸11に平行な方向(軸方向)から見て特定の鉤型状を有する、がんぎ車10の歯である。
アンクル20は、アンクル体21と、回転軸であるアンクル真25と、それぞれがんぎ歯13に掛かる爪である入爪22及び出爪23と、アンクル箱部24とを有する。アンクル20は、矢印bのようにアンクル真25の周りに振動する。具体的には、アンクル20は、地板110に設けられた2本のどてピン26により定義される所定範囲でアンクル真25の周りに往復回転運動する。2本のどてピン26は、アンクル箱部24の外側面にそれぞれ接触してアンクル20の運動を規制することにより、アンクル20の往復回転運動の範囲を定義する。
アンクル体21は、軸方向から見て概略としてT字型をなす3本のアームを有する。入爪22及び出爪23は、アンクル20の往復回転運動に応じて、交互にがんぎ歯13に掛かることにより、がんぎ車10の回転を制御する。また入爪22及び出爪23は、がんぎ歯13に対して摺動することにより、一方向に回転するがんぎ車10からアンクル20が振動するための運動エネルギーを受け取る。このため、入爪22及び出爪23は、アンクル体21のうち、がんぎ車10側の2本のアームの先端部に設けられる。アンクル箱部24は、アンクル体21のうち、がんぎ車10の反対側の1本のアームの先端部に設けられる。アンクル箱部24は、軸方向から見て概略としてU字型である。アンクル箱部24の内側面は、アンクル20の往復回転運動に応じて振り石36に接する。これにより、アンクル20は、振り石36と運動エネルギーの授受を行う。
てんぷ30は、てん輪31と、ひげぜんまい32と、回転軸であるてん真33とを備える。てんぷ30は、矢印cのように、一定の周期で、てん真33の周りに振動、即ち往復回転運動する。てん輪31は、てん真33を中心軸とする円環状である。ひげぜんまい32は、てん真33の周りに渦巻き状に巻かれる。ひげぜんまい32は、てん真33に相対的に固定される第1固定端と、てん輪31に相対的に固定される第2固定端とを有する。てんぷ30の往復回転運動の周期は、ひげぜんまい32の弾性係数と、てん輪31の慣性モーメントとにより決まる。
図5に示すように、搭載部材35は、てんぷ30の往復回転運動に連動して、てん真33を中心とする円40の円弧41と、円弧41に連続する円40の2本の接線42とを含む軌道上に振り石36を移動させる。搭載部材35は、無限軌道構造を有する環状のローラーチェーンである。搭載部材35は、例えば、それぞれスプロケットである第1従動車34A及び第2従動車34Bにより軌道を定義される。振り石36は、例えば略半円型の断面を有する柱状である。振り石36は、高さ方向がてん真33に平行になるように、搭載部材35の一部に固定される。振り石36は、円弧41上において、てん真33の周りに回転するように移動されるのであれば、どのように搭載部材35に固定されてもよい。
第1従動車34Aは、てん真33に取り付けられることにより円40を定義する。第1従動車34Aは、てん輪31と一体的に、てん真33の周りに往復回転運動する。第2従動車34Bは、第1従動車34Aに関して、アンクル20の反対側に配置される。第2従動車34Bは、てん真33に平行な回転軸を有する。第1従動車34A及び第2従動車34Bが互いに同一の径を有する。即ち、第1従動車34A及び第2従動車34Bの歯数は互いに等しい。これにより、搭載部材35は、矢印dに示すように長円状の軌道上を移動する。第1従動車34A及び第2従動車34Bは、例えば同一平面上に配置される。
第1従動車34Aがてん輪31と一体的に往復回転運動することにより、搭載部材35は、てんぷ30に連動して長円状の軌道上を往復運動する。振り石36は、搭載部材35と一体的に長円状の軌道上を往復運動することにより、アンクル箱部24を周期的に変位させる。即ち、振り石36は、てんぷ30の往復回転運動に応じて、アンクル20に接触することにより、アンクル20を往復回転運動させる。これにより、時計1は規則的に駆動する。
振り石36は、円弧41上に位置する間、てん真33の周りに回転運動し、接線42上に位置する間、接線42に沿って並進運動する。円弧41は、てんぷ30の往復回転運動に連動する振り石36がアンクル20から離れる2点を含むように定義される。振り石36は、図5に示す状態からてんぷ30が360°回転したとき、円40から離れた位置Xに移動する。位置Xは、接線42上であってもよく、第2従動車34Bの回転軸を中心軸とする円の円周上であってもよい。てんぷ30の回転角度は、アンクル箱部24から離れた振り石36が軌道の反対側からアンクル20に接触しないように定義されればよい。このように、振り石36がてんぷ30と一体的に回転しないため、てんぷ30の回転角度を増大させることができる。
一般に、てんぷが振動する際の1周期分の運動エネルギーEは、次式(1)で与えられる。
E=(1/2)KA2=2π2f2JA2 …(1)
但し、Kはひげぜんまいの弾性係数、Aはてんぷの回転角度、fは周波数(6振動の時計ならば3Hz)、Jはてんぷの慣性モーメントをそれぞれ意味する。式(1)より、運動エネルギーEは、周波数f、慣性モーメントJ及び回転角度Aに影響されることが分かる。ここで、従来であれば、てんぷが振動する際の運動エネルギーEを増大させるには、周波数f又は慣性モーメントJを増大させるしかなかった。
E=(1/2)KA2=2π2f2JA2 …(1)
但し、Kはひげぜんまいの弾性係数、Aはてんぷの回転角度、fは周波数(6振動の時計ならば3Hz)、Jはてんぷの慣性モーメントをそれぞれ意味する。式(1)より、運動エネルギーEは、周波数f、慣性モーメントJ及び回転角度Aに影響されることが分かる。ここで、従来であれば、てんぷが振動する際の運動エネルギーEを増大させるには、周波数f又は慣性モーメントJを増大させるしかなかった。
図6に示すように、スイスレバー脱進機50Pは、がんぎ車10、アンクル20及びてんぷ30Pと、てんぷ30Pと一体的に回転する振り座37と、振り座37に搭載された振り石36Pとを備える。スイスレバー脱進機50Pは、安全性が高く、再起動性も優れている。しかしながら、スイスレバー脱進機50Pは、振り石36Pがてんぷ30Pと一体的に回転するため、てんぷ30Pの回転角度に上限がある。てんぷ30Pは、例えば、回転角度が約310°を超えると、位置Yにあった振り石36Pが矢印eのように約一周してアンクル20に接触する場合があった。このため、スイスレバー脱進機50Pは、てんぷ30Pの周期が乱れ、結果として精度不良につながるという場合があった。
これに対して、第1実施形態に係る脱進機50によれば、振り石36がてん輪31及びてん真33に相対的に固定されておらず、搭載部材35によって、てん真33を中心軸とする円40の接線42に沿って移動する。よって、従来のてんぷ30Pの回転角度において、振り石36がアンクル箱部24の内側面と離れた後に、アンクル箱部24の外側面に軌道の反対側から衝突することがない。このため、脱進機50は、てんぷ30の回転角度を従来技術より増大させ、てんぷ30の運動エネルギーを増大させることができる。
てんぷ30の運動エネルギーが増大すると、外部からの運動エネルギーに対するてんぷ30の周期の耐性が向上する。即ち、てんぷ30の周期が、外乱により乱れにくくなり等時性が向上する。外乱の内容としては、主に重力が挙げられる。時計の姿勢が変化すると時計を構成する各部品にかかる重力の方向が変化する。
図7は、スイスレバー脱進機50Pを備える機械式時計の各姿勢における、てんぷ30Pの回転角度θを調節した際の歩度Rの変化を示している。歩度Rは、1日、即ち86400秒当たりの時計の指示時刻と基準である時刻とのずれを意味する。各姿勢は、時計の文字板の向きを基準に定義される。姿勢P12は文字板の12時の位置が上となる状態、姿勢P3は文字板の3時の位置が上となる状態、姿勢P6は文字板の6時の位置が上となる状態、姿勢P9は文字板の9時の位置が上となる状態である。また、姿勢QUは、文字板の表示面が上となる状態、姿勢QDは文字板の表示面が下となる状態である。
図7の各プロファイルのうち、回転角度θが130°から250°までの範囲の値は、市販品の機械式時計について測定した実測値を意味し、実線で示される。また、回転角度θが250°を超え340°までの範囲の値は、実測値に基づいて算出した近似式に、回転角度θを代入した予測値を意味し、破線で示される。図7の実線部から、各姿勢間における歩度Rの差が、てんぷ30Pの回転角度θが増大するごとに小さくなっていることが読み取れる。つまり、図7の破線部のように、てんぷ30Pの回転角度θを更に増大させれば、各姿勢間における歩度Rの差を更に小さくできることが見込まれる。
第1実施形態に係る脱進機50によって、てんぷ30の回転角度が増大し、各姿勢における歩度が1つの値に収束する傾向を示すことが見込まれる。即ち、外乱に対する等時性が向上する。ここで、一般的な機械式時計のてんぷには、ひげぜんまいの固定端を移動させる歩度調節機構が搭載されており、図7の縦軸において0地点をシフトするように、歩度修正が可能となっている。即ち、てんぷ30は、歩度の収束値が0秒になるように調整されることにより、時計1の精度を向上させることができる。
脱進機50によれば、てんぷ30の回転角度を増大させることができるため、式(1)より、てんぷの運動エネルギーを維持しつつ、てんぷ30の慣性モーメントを減少させることができる。つまり、時計1の精度を維持しつつ、てんぷ30の小型化を実現することができる。
また、脱進機50によれば、てんぷ30の回転角度を増大させることができるため、式(1)より、てんぷ30の運動エネルギーを維持しつつ、てんぷ30の周波数を低下させることができる。てんぷ30の周波数が低下すると、単位時間当たりに使用される香箱車81のエネルギーが削減される。このため、時計1の精度を維持しつつ、香箱車81の保有エネルギーの余裕を増加させ、時計1の持続時間を延ばすことができる。
更に、脱進機50によれば、ローラーチェーンである搭載部材35が、第1従動車34A及び第2従動車34Bにより定義される長円状の軌道上を移動するため、振り石36が円40の円弧41及び接線42を連続して移動する構成を実現可能である。
[第2実施形態]
第1実施形態では、環状のチェーンである搭載部材35を備える脱進機50を説明したが、搭載部材35はチェーンでなくてもよい。即ち、第2実施形態に係る脱進機50aは、図8及び図9に示すように、がんぎ車10、アンクル20及びてんぷ30に加えて、振り石36aと、振り石36aが搭載される環状の歯付ベルトである搭載部材35aとを備える。以下の実施形態において説明しない構成、作用及び効果は、第1実施形態と同様であるため省略する。
第1実施形態では、環状のチェーンである搭載部材35を備える脱進機50を説明したが、搭載部材35はチェーンでなくてもよい。即ち、第2実施形態に係る脱進機50aは、図8及び図9に示すように、がんぎ車10、アンクル20及びてんぷ30に加えて、振り石36aと、振り石36aが搭載される環状の歯付ベルトである搭載部材35aとを備える。以下の実施形態において説明しない構成、作用及び効果は、第1実施形態と同様であるため省略する。
搭載部材35aは、てんぷ30の往復回転運動に連動して、てん真33を中心とする円40の円弧41と、円弧41に連続する円40の2本の接線42とにより定義される軌道上に振り石36aを移動させる。搭載部材35aは、無限軌道構造を有する。搭載部材35aは、例えば、それぞれ歯付プーリーである第1従動車34Aa及び第2従動車34Baにより軌道を定義される。振り石36aは、円弧41上において、てん真33の周りに回転するように移動されるのであれば、どのように搭載部材35aに固定されてもよい。
第1従動車34Aaは、てん輪31と一体的に、てん真33の周りに往復回転運動する。例えば、第1従動車34Aa及び第2従動車34Baが互いに同一の径を有することにより、搭載部材35aは、矢印dのように、長円状の軌道上を移動する。振り石36aは、搭載部材35aと一体的に長円状の軌道上を往復運動することにより、アンクル20を周期的に変位させる。即ち、振り石36aは、てんぷ30の往復回転運動に応じて、アンクル箱部24を押してアンクル20を往復回転運動させる。振り石36aは、円弧41上に位置する間、てん真33の周りに回転運動し、接線42上に位置する間、接線42に沿って並進運動する。
第2実施形態に係る脱進機50aによれば、振り石36aが搭載部材35aに搭載されるため、てん輪31と一体的に回転しない。振り石36aは、図8に示す状態からてんぷ30が360°回転したとき、円40から離れた位置Xに移動する。つまり、振り石36aがアンクル箱部24の内側面と離れた後にアンクル箱部24の外側面に軌道の反対側から衝突することがない。このように、脱進機50aは、搭載部材35aがベルトであっても、てんぷ30の回転角度を従来技術より増大させ、てんぷ30の運動エネルギーを増大させることができる。
更に、脱進機50aによれば、ベルトである搭載部材35a、第1従動車34Aa及び第2従動車34Baにより定義される長円状の軌道上を移動するため、振り石36aが円40の円弧41及び接線42を連続して移動する構成を実現可能である。
[第3実施形態]
第3実施形態に係る脱進機50bは、2つの従動車の代わりに、3つの従動車により搭載部材35bの軌道を定義する点で第1及び第2実施形態と異なる。即ち、脱進機50bは、図10に示すように、がんぎ車10、アンクル20、てんぷ30、振り石36b及び搭載部材35bに加えて、第1従動車34Ab、第2従動車34Bb及び第3従動車34Cbを備える。
第3実施形態に係る脱進機50bは、2つの従動車の代わりに、3つの従動車により搭載部材35bの軌道を定義する点で第1及び第2実施形態と異なる。即ち、脱進機50bは、図10に示すように、がんぎ車10、アンクル20、てんぷ30、振り石36b及び搭載部材35bに加えて、第1従動車34Ab、第2従動車34Bb及び第3従動車34Cbを備える。
搭載部材35bは、例えば、無限軌道構造を有するローラーチェーンである。搭載部材35bは、それぞれスプロケットである第1従動車34Ab、第2従動車34Bb及び第3従動車34Cbにより軌道を定義される。第1従動車34Abは、てん輪31と一体的にてん真33の周りに回転する。第2従動車34Bb及び第3従動車34Cbは、てん真33に平行な回転軸をそれぞれ有する。搭載部材35bは、てんぷ30の往復回転運動に連動して、矢印fのように、てん真33を中心とする円40の円弧41と、円弧41に連続する円40の2本の接線42とにより定義される軌道上に振り石36bを移動させる。
振り石36bは、円弧41上を移動する間に、アンクル箱部24の内側に位置し、また、アンクル箱部24の内側面から離れる。即ち、円弧41は、往復運動する振り石36bが、アンクル箱部24の内側面から離れる2点を含む。2本の接線42は、振り石36bがアンクル箱部24から離れる点を円弧41が含むように定義される。また、振り石36bの軌道は、アンクル箱部24から離れた振り石36bが軌道の反対側からアンクル20に接触しないように定義される。
第3実施形態に係る脱進機50bによれば、振り石36bが搭載部材35bに搭載されるため、てん輪31と一体的に回転しない。振り石36bは、図10に示す状態からてんぷ30が360°回転したとき、円40から離れた位置Xに移動する。つまり、振り石36bがアンクル箱部24の内側面と離れた後にアンクル箱部24の外側面に軌道の反対側から衝突することがない。このように、脱進機50bは、搭載部材35bの軌道が3つ従動車により定義される場合であっても、てんぷ30の回転角度を従来技術より増大させ、てんぷ30の運動エネルギーを増大させることができる。
[第4実施形態]
第4実施形態に係る脱進機50cは、互いに径の異なる2つの従動車により搭載部材35cの軌道を定義する点で第1乃至第3実施形態と異なる。即ち脱進機50cは、図11に示すように、がんぎ車10、アンクル20、てんぷ30、振り石36c及び搭載部材35cに加えて、互いに径の異なる第1従動車34Ac及び第2従動車34Bcを備える。
第4実施形態に係る脱進機50cは、互いに径の異なる2つの従動車により搭載部材35cの軌道を定義する点で第1乃至第3実施形態と異なる。即ち脱進機50cは、図11に示すように、がんぎ車10、アンクル20、てんぷ30、振り石36c及び搭載部材35cに加えて、互いに径の異なる第1従動車34Ac及び第2従動車34Bcを備える。
搭載部材35cは、例えば、無限軌道構造を有するローラーチェーンである。搭載部材35cは、それぞれスプロケットである第1従動車34Ac及び第2従動車34Bcにより軌道を定義される。第1従動車34Acは、てん輪31と一体的にてん真33の周りに回転する。第2従動車34Bcは、第1従動車34Acより大きな径を有する。即ち、第2従動車34Bcは、第1従動車34Acより歯数が多い。第2従動車34Bcは、てん真33に平行な回転軸を有する。搭載部材35cは、てんぷ30の往復回転運動に連動して、矢印gのように、てん真33を中心とする円40の円弧41と、円弧41に連続する円40の2本の接線42とにより定義される軌道上に振り石36cを移動させる。
振り石36cは、円弧41上を移動する間に、アンクル箱部24の内側に位置し、また、アンクル箱部24の内側面から離れる。即ち、円弧41は、往復運動する振り石36cが、アンクル箱部24の内側面から離れる2点を含む。2本の接線42は、振り石36cがアンクル箱部24から離れる点を円弧41が含むように定義される。また、振り石36cの軌道は、アンクル箱部24から離れた振り石36cが軌道の反対側からアンクル20に接触しないように定義される。
第4実施形態に係る脱進機50cによれば、振り石36cが搭載部材35cに搭載されるため、てん輪31と一体的に回転しない。振り石36cは、図11に示す状態からてんぷ30が360°回転したとき、円40から離れた位置Xに移動する。つまり、振り石36cがアンクル箱部24の内側面と離れた後にアンクル箱部24の外側面に軌道の反対側から衝突することがない。このように、脱進機50cは、搭載部材35cの軌道が互いに径の異なる2つ従動車により定義される場合であっても、てんぷ30の回転角度を従来技術より増大させ、てんぷ30の運動エネルギーを増大させることができる。
[他の実施形態]
以上のように第1乃至第4実施形態を説明したが、本発明はこれらの開示に限定されるものではない。各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成に置換されてよく、また、本発明の技術的範囲内において、各実施形態における任意の構成が省略されたり追加されたりしてもよい。このように、これらの開示から当業者には様々な代替の実施形態が明らかになる。
以上のように第1乃至第4実施形態を説明したが、本発明はこれらの開示に限定されるものではない。各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成に置換されてよく、また、本発明の技術的範囲内において、各実施形態における任意の構成が省略されたり追加されたりしてもよい。このように、これらの開示から当業者には様々な代替の実施形態が明らかになる。
例えば、第1乃至第4実施形態に係る脱進機は、腕時計のムーブメントでなく、機械式の壁掛け時計や置時計等の時計ムーブメントに搭載されてもよい。また、第3及び第4実施形態において、ローラーチェーンである搭載部材はベルトであってもよく、スプロケットである従動車は、歯付プーリーに置き換えられてもよい。また、第3実施形態において、従動車の数は3より多くてもよい。更に、第4実施形態において、第1従動車34Acの径は、第2従動車34Bcより大きくてもよい。
その他、上述の各構成を相互に応用した構成等、本発明は以上に記載しない様々な実施形態を含むことは勿論である。本発明の技術的範囲は、上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
以下に、上述した実施形態から導き出される内容を記載する。
脱進機は、がんぎ車と、アンクル真の周りに往復回転運動し、前記往復回転運動に応じて前記がんぎ車の歯に掛かる爪により前記がんぎ車の回転を制御するアンクルと、一定の周期でてん真の周りに往復回転運動するてんぷと、前記てんぷの往復回転運動に応じて前記アンクルに接触することにより、前記アンクルを往復回転運動させる振り石と、前記振り石が搭載され、前記てんぷの往復回転運動に連動して、前記てん真を中心軸とする円の円弧及び前記円弧に連続する前記円の接線を含む軌道上に前記振り石を移動させる環状の搭載部材と、を備える。
この構成によれば、振り石が搭載部材によって、てん真を中心軸とする円の接線に沿って移動する。このため、脱進機は、てんぷの回転角度を従来技術より増大させ、てんぷの運動エネルギーを増大させることができる。
上述の脱進機において、前記搭載部材は、長円状の軌道上を移動してもよい。この構成によれば、搭載部材が長円状の軌道上を移動するため、振り石が円の円弧及び接線を連続して移動する構成を実現可能である。
上述の脱進機において、前記搭載部材は、ローラーチェーンであってもよい。この構成によれば、搭載部材がローラーチェーンであるため、振り石が円の円弧及び接線を連続して移動する構成を実現可能である。
上述の脱進機において、前記搭載部材は、ベルトであってもよい。この構成によれば、搭載部材がベルトであるため、振り石が円の円弧及び接線を連続して移動する構成を実現可能である。
時計ムーブメントは、上述の脱進機が搭載される。この構成によれば、脱進機の外乱に対する等時性が向上するため、時計の精度を向上させることができる。また、てんぷの回転角度を増大させることができるため、てんぷの運動エネルギーを維持しつつ、てんぷの慣性モーメントを減少させることができる。つまり、時計の精度を維持しつつ、てんぷの小型化を実現することができる。また、てんぷの回転角度を増大させることができるため、てんぷの運動エネルギーを維持しつつ、てんぷの周波数を低下させることができる。このため、時計の精度を維持しつつ、香箱車の保有エネルギーの余裕を増加させ、時計の持続時間を延ばすことができる。
機械式時計は、上述の時計ムーブメントが搭載される。この構成によれば、脱進機の外乱に対する等時性が向上するため、時計の精度を向上させることができる。また、てんぷの回転角度を増大させることができるため、てんぷの運動エネルギーを維持しつつ、てんぷの慣性モーメントを減少させることができる。つまり、時計の精度を維持しつつ、てんぷの小型化を実現することができる。また、てんぷの回転角度を増大させることができるため、てんぷの運動エネルギーを維持しつつ、てんぷの周波数を低下させることができる。このため、時計の精度を維持しつつ、香箱車の保有エネルギーの余裕を増加させ、時計の持続時間を延ばすことができる。
1…時計、2…外装ケース、3…文字板、4A…時針、4B…分針、4C…秒針、6…日車、10…がんぎ車、11…がんぎ軸、12…リム部、13…がんぎ歯、20…アンクル、21…アンクル体、22…入爪、23…出爪、24…アンクル箱部、25…アンクル真、26…どてピン、31…てん輪、33…てん真、34A,34Aa,34Ab,34Ac…第1従動車、34B,34Ba,34Bb,34Bc…第2従動車、34Cb…第3従動車、35,35a,35b,35c…搭載部材、36,36a,36b,36c,36P…振り石、37…振り座、40…円、41…円弧、42…接線、50,50a,50b,50c…脱進機、50P…スイスレバー脱進機、81…香箱車、82…角穴車、83…三番車、84…四番車、90…巻上げ機構、91…巻真、92…つづみ車、93…きち車、94…丸穴車、95…第1中間車、96…第2中間車、100…ムーブメント、110…地板。
Claims (6)
- がんぎ車と、
アンクル真の周りに往復回転運動し、前記往復回転運動に応じて前記がんぎ車の歯に掛かる爪により前記がんぎ車の回転を制御するアンクルと、
一定の周期でてん真の周りに往復回転運動するてんぷと、
前記てんぷの往復回転運動に応じて前記アンクルに接触することにより、前記アンクルを往復回転運動させる振り石と、
前記振り石が搭載され、前記てんぷの往復回転運動に連動して、前記てん真を中心軸とする円の円弧及び前記円弧に連続する前記円の接線を含む軌道上に前記振り石を移動させる環状の搭載部材と、
を備えることを特徴とする脱進機。 - 前記搭載部材は、長円状の軌道上を移動することを特徴とする請求項1に記載の脱進機。
- 前記搭載部材は、ローラーチェーンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の脱進機。
- 前記搭載部材は、ベルトであることを特徴とする請求項1又は2に記載の脱進機。
- 請求項1〜4の何れか1項に記載の脱進機が搭載された時計ムーブメント。
- 請求項5に記載の時計ムーブメントが搭載された機械式時計。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018224617A JP2020085819A (ja) | 2018-11-30 | 2018-11-30 | 脱進機、ムーブメント及び機械式時計 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2018224617A JP2020085819A (ja) | 2018-11-30 | 2018-11-30 | 脱進機、ムーブメント及び機械式時計 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2020085819A true JP2020085819A (ja) | 2020-06-04 |
Family
ID=70907677
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2018224617A Pending JP2020085819A (ja) | 2018-11-30 | 2018-11-30 | 脱進機、ムーブメント及び機械式時計 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2020085819A (ja) |
-
2018
- 2018-11-30 JP JP2018224617A patent/JP2020085819A/ja active Pending
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