JP2020075998A - ポリエステル樹脂 - Google Patents

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高明 川口
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Abstract

【課題】フィルム成形性が良好で、異物が少なく物性が非常に優れているフィルム用ポリエステル樹脂を提供する。【解決手段】周期表第4族のチタン族元素から選ばれる少なくとも1種の元素の化合物、2価の金属化合物、およびリン化合物を含有し、以下の(1)〜(7)を満足するポリエステル樹脂。(1)固有粘度:0.80dl/g以下(2)環状三量体の含有量:5000ppm以下(3)体積固有抵抗値:20×107Ω・cm以下(4)290℃で1.5時間溶融保持後のΔb値:13以下(5)0.4 ≦ P/M ≦ 0.7(6)0.25 ≦ M ≦ 0.49(7)P/T ≦3.1ただし、P、M、Tは以下を表す。P:リン原子の含有量(モル/トン)M:2価の金属原子の含有量(モル/トン)T:周期表第4族のチタン族金属原子の含有量(モル/トン)【選択図】なし

Description

本発明は、フィルムの成形材料として好適なポリエステル樹脂に関する。特に光学用途に用いられるフィルムを品質並びに生産性良く高速成形するのに適したポリエステル樹脂と、このポリエステル樹脂を用いたポリエステルフィルムに関するものである。
ポリエステル樹脂、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂は、機械的強度、化学的安定性、ガスバリア性、保香性、衛生性等に優れ、また、比較的安価であるために、フィルムや繊維、ボトル等として広く用いられている。
フィルム用途においては、近年の高速成形化に伴い、フィルム溶融押出時の平面性の悪化や、フィルムの破断による生産性の低下が問題となっている。このような問題の解決のため、フィルム用としては体積固有抵抗値が低く、冷却ドラムへの密着性のよいポリエステル樹脂が要求されている。
さらに、最近ではディスプレイ等の光学用途にポリエステルフィルムが用いられており、ポリエステルフィルムには、無色透明で異物量の少ないものが求められている。
これまで、アンチモンを重縮合触媒とするポリエステル樹脂においては、上記のような問題解決のために種々の検討がなされているが、アンチモンそのものが異物となりフィルム表面の性状を粗らすという問題があった。また、触媒による異物以外にポリエステルフィルム成形時におけるオリゴマーの副生により、結果的にフィルムの表面に異物として析出するという問題もあった。
特許文献1では、この問題を解消するために、アンチモンの代わりにチタンを重縮合触媒とし、さらに体積固有抵抗値を改善するためにカルシウムとマグネシウムを得られるポリエステル樹脂に対して合計65ppm以上添加する方法が開示されている。
しかし、特許文献1の方法では、重縮合速度が遅い;オリゴマーがフィルムの表面に析出して異物となることを改良することについて考慮されていない;ポリエステル樹脂を溶融重縮合により製造しているが、該溶融重縮合物の末端カルボキシル基量やそれを固相重縮合することについても何ら検討されていない;といった問題がある。
特許文献2には、チタン化合物を重縮合触媒として使用し、得られるポリエステル樹脂に含有されるオリゴマー量および溶融時の副生オリゴマー量を低減させたポリエステル樹脂が開示されている。
しかし、特許文献2の方法では、溶融重縮合性が不十分であり、ポリエステル樹脂の体積固有抵抗値、オリゴマー含有量および溶融粘度の全てを適切な値にすることはできない。また、固相重縮合によって環状三量体やアセトアルデヒドの含有量を低減できるとの一般的開示はあるが、具体的に開示された発明は全て溶融重縮合によるポリエステルプレポリマーであって、固相重縮合後のフィルム異物については何ら示唆されていない。
特許文献3には、色調に優れるとするフィルム用ポリエステル樹脂が開示されているが、ポリエステル樹脂の色座標b値が優れていても、フィルム成形のために樹脂を溶融して押し出した際に色座標b値が大きくなってしまい、フィルムの外観を損ねる課題がある。
特許文献4には、チタン触媒を用いた体積固有抵抗値の低いポリエステル樹脂が開示されているが、静電印加性の付与のために添加するマグネシウム化合物の量が多く、フィルム成形のために樹脂を溶融して押し出した際に着色が大きくなり、フィルムの外観を損ねる課題がある。
特許文献5には、成形時に汚れ発生等が少ないポリエステル系樹脂組成物が開示されているが、このポリエステル系樹脂組成物を製造するには、特定量のリン原子とゲルマニウム原子を含むポリエステル系樹脂を、特定量のチタン化合物とリン化合物を含むポリエステル系樹脂に溶融混練する必要があり、工程数が多く、生産性が著しく劣る上に、溶融混練の結果として得られる組成物の体積固有抵抗値が高くなるという欠点がある。
特開平7−292087号公報 特開2001−114887号公報 特開2007−70462号公報 特開2011−208125号公報 特開2012−77313号公報
本発明は、前述の従来技術に鑑みてなされたものであって、
(1) フィルム成形時の着色が少なく、
(2) 異物となる触媒残渣や環状三量体の含有量が少なく、
(3) 体積固有抵抗値が十分に低く、
(4) フィルム成形に適した固有粘度を有する
フィルム用ポリエステル樹脂を提供することを課題とする。
本発明者等は前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、周期表第4族のチタン族元素から選ばれる元素の化合物を主たる重縮合触媒として製造されたポリエステル樹脂であって、該ポリエステル樹脂の物性が特定の範囲にあるものを用いると、フィルム成形性が良好で、かつ得られるフィルムの異物が少なく物性が非常に優れていることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下を要旨とする。
[1] 周期表第4族のチタン族元素から選ばれる少なくとも1種の元素の化合物、2価の金属化合物、およびリン化合物を含有し、以下の(1)〜(7)を満足するポリエステル樹脂。
(1)固有粘度:0.80dl/g以下
(2)環状三量体の含有量:5000ppm以下
(3)体積固有抵抗値:20×10Ω・cm以下
(4)290℃で1.5時間溶融保持後のΔb値:13以下
(5)0.4 ≦ P/M ≦ 0.7
(6)0.25 ≦ M ≦ 0.49
(7)P/T ≦3.1
ただし、P、M、Tは以下を表す。
P:リン原子の含有量(モル/トン)
M:2価の金属原子の含有量(モル/トン)
T:周期表第4族のチタン族金属原子の含有量(モル/トン)
[2] 前記周期表第4族のチタン族元素から選ばれる少なくとも1種の元素がチタンである[1]に記載のポリエステル樹脂。
[3] 前記2価の金属化合物がマグネシウム化合物である[1]又は[2]に記載のポリエステル樹脂。
[4] ポリエステル樹脂がジカルボン酸成分とジオール成分とからなり、ジカルボン酸成分の95モル%以上がテレフタル酸成分であり、ジオール成分の95モル%以上がエチレングリコールである[1]から[3]のいずれかに記載のポリエステル樹脂。
[5] アンチモンおよびゲルマニウムを含まない[1]から[4]のいずれかに記載のポリエステル樹脂。
[6] フィルム用である[1]から[5]のいずれかに記載のポリエステル樹脂。
[7] [1]から[6]のいずれかに記載のポリエステル樹脂を用いて得られるポリエステルフィルム。
本発明のポリエステル樹脂は、フィルム成形時の着色が少なく、異物となる触媒残渣や環状三量体の含有量が少なく、色調に優れ、体積固有抵抗値が十分に低く、かつフィルム成形に適した固有粘度を有するので、フィルム成形に用いた場合の成形性、特に高速での成形性にも優れる。よって、本発明のポリエステル樹脂によれば、好ましいフィルム物性を有するポリエステルフィルムを生産性よく製造することができる。
次に本発明を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の代表例であり、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。
〔ポリエステル樹脂〕
本発明のポリエステル樹脂は、周期表第4族のチタン族元素から選ばれる少なくとも1種の元素の化合物、2価の金属化合物、およびリン化合物を含有し、以下の(1)〜(7)を満足することを特徴とする。
(1)固有粘度:0.80dl/g以下
(2)環状三量体の含有量:5000ppm以下
(3)体積固有抵抗値:20×10Ω・cm以下
(4)290℃で1.5時間溶融保持後のΔb値:13以下
(5)0.4 ≦ P/M ≦ 0.7
(6)0.25 ≦ M ≦ 0.49
(7)P/T ≦3.1
ただし、P、M、Tは以下を表す。
P:リン原子の含有量(モル/トン)
M:2価の金属原子の含有量(モル/トン)
T:周期表第4族のチタン族金属原子の含有量(モル/トン)
(1) 固有粘度
本発明のポリエステル樹脂の固有粘度は、0.80dl/g以下である。ポリエステル樹脂の固有粘度が0.80dl/gを超えると、押出機圧力が高くなり、生産スピードが低下し、また、押出機内でのせん断発熱が大きくなり、得られるフィルムが着色するという不具合が生じることがある。本発明のポリエステル樹脂の固有粘度は0.77dl/g以下が好ましく、0.75dl/g以下がさらに好ましく0.73dl/g以下が特に好ましい。
また、本発明のポリエステル樹脂の固有粘度の下限はフィルム成形に耐えうる程度であることが好ましく、0.60dl/g以上が好ましい。この値を下回ると、フィルムの成形体としての機械的強度、および透明性等が不足する傾向となる。
また、本発明のポリエステル樹脂を290℃で1.5時間溶融保持した後の固有粘度の低下率(ΔIV)は、40%以下であることが好ましく、30%以下であることがさらに好ましく、25%以下であることが特に好ましい。この固有粘度の低下率(ΔIV)が上記上限以下であれば、溶融熱安定性に優れ、フィルム用ポリエステル樹脂として好ましい。
なお、ポリエステル樹脂の固有粘度及びその低下率は、具体的には後掲の実施例の項に記載の方法で測定される。
ポリエステル樹脂の固有粘度及びその低下率は、後述のポリエステル樹脂の製造方法において、例えば触媒や助剤の添加量の最適化や、重縮合時の温度、圧力、反応時間を最適な範囲に調節することにより上記好適範囲内に調整することができる。
(2) 環状三量体
本発明のポリエステル樹脂の環状三量体の含有量は5000ppm以下である。環状三量体の含有量が5000ppmを超えると、得られるフィルムの表面に多数の環状三量体が存在することとなり、結果的に光学用途においては光を乱反射するあるいは光が透過しないため欠陥フィルムとなる。環状三量体の含有量は少ないほど好ましく、好ましくは4500ppm以下、更に好ましくは4000ppm以下であり、その下限については特に制限はないが、通常は、ポリエステル樹脂の生産性の観点から1000ppmである。
ポリエステル樹脂の環状三量体の含有量は、具体的には後掲の実施例の項に記載の方法で測定される。
ポリエステル樹脂の環状三量体の含有量は、後述のポリエステル樹脂の製造方法において、例えば、触媒や助剤の添加量や種類の最適化、プレポリマーの末端酸価の最適化、固相重縮合時間や温度の最適化により低減することができる。
(3) 体積固有抵抗値
本発明のポリエステル樹脂の体積固有抵抗値は20×10Ω・cm以下である。ポリエステル樹脂の体積固有抵抗値が20×10Ω・cmを超える場合は、フィルム成形の際に押出機のダイから押し出されるシートの冷却ドラムへの静電密着性が劣るため製膜速度を上げられず、生産性が悪くなる。より生産性を上げるためには、ポリエステル樹脂の体積固有抵抗値は18×10Ω・cm以下であることが好ましく、16×10Ω・cm以下であることがより好ましい。フィルム生産性の観点からポリエステル樹脂の体積固有抵抗値は低い程好ましいが、一方で体積固有抵抗値が低すぎると電圧印加時に火花放電が発生しフィルム欠陥となる可能性があることからその値に好適な下限があり、通常0.1×10Ω・cm以上、好ましくは1×10Ω・cm以上である。
ポリエステル樹脂の体積固有抵抗値は、具体的には後掲の実施例の項に記載の方法で測定される。
ポリエステル樹脂の体積固有抵抗値は、例えば、後述の通り、ポリエステル樹脂の製造において、2価の金属化合物を用いることで上記好適範囲に制御することができる。
(4) 290℃で1.5時間溶融保持後のΔb値
本発明のポリエステル樹脂を290℃で溶融保持した後の色座標b値の変化(Δb値)は、13以下であり、12以下であることが好ましく、11以下であることがさらに好ましい。Δb値が13を超えると、フィルム製膜時の黄色い着色が目立つ結果となり、特に光学用のフィルムに用いる場合にその黄色味がフィルムの性能を落とすこととなる。
ポリエステル樹脂の色座標b値とは、後掲の実施例の項に記載される通り、JIS Z8730の参考1に記載されるLab表色系におけるハンターの色差式の色座標b値であるが、本発明のポリエステル樹脂の色調としては、この色座標b値は4.5以下であることが好ましく、特に4.0以下であることが好ましい。
Δb値および色座標b値は、後述のポリエステル樹脂の製造方法において、周期表第4族のチタン族元素から選ばれる元素の化合物の量、2価の金属化合物、リン化合物の種類、その添加量、脂肪族ジオールの添加などを適宜選択することにより、上記上限以下に制御することができる。
(5)〜(7) P,M,T含有量
本発明のポリエステル樹脂は、周期表第4族のチタン族元素から選ばれる元素の化合物、2価の金属化合物およびリン化合物を、以下の(5)〜(7)を満足するように含有する。
(5)0.4 ≦ P/M ≦ 0.7
(6)0.25 ≦ M ≦ 0.49
(7)P/T ≦3.1
P:リン原子の含有量(モル/トン)
M:2価の金属原子の含有量(モル/トン)
T:周期表第4族のチタン族金属原子の含有量(モル/トン)
P/Mが0.4未満では体積固有抵抗値は十分に下がるものの、溶融保持後のΔb値が大きくなり、また固相重縮合での環状三量体の開環速度を十分に高めることができない。P/Mが0.7を超えると体積固有抵抗値が20×10Ω・cmを超える可能性があり、また固有粘度の上昇速度が大きすぎるため、環状三量体の含有量と固有粘度のバランスが悪くなり、目標とする環状三量体量にあわせると固有粘度が0.80dl/gを超えてしまう。P/Mは好ましくは0.45〜0.67である。
Mの値が0.25モル/トン未満では体積固有抵抗値を20×10Ω・cm以下とすることは困難であり、また0.49モル/トンを超えると、固相重縮合後に得られるポリエステル樹脂の溶融保持後のΔb値が悪くなるためフィルム用のポリエステル樹脂としては好ましくない。Mは好ましくは0.32〜0.45モル/トンである。
P/Tが3.1を超えると、リン化合物が周期表第4族のチタン族元素の化合物の活性を抑えてしまうため、溶融重合性が著しく劣ることになる。ただし、P/Tが過度に小さいと周期表第4族のチタン族元素の活性が過剰となり固有粘度の調節が困難となる上に、色座標b値を好ましい範囲に調節することが困難となる。P/Tは好ましくは2.0〜2.7である。
ポリエステル樹脂中の各金属原子の含有量は、具体的には後掲の実施例の項に記載の方法で測定される。
上記(5)〜(7)を満たすポリエステル樹脂を製造するには、ポリエステル樹脂の製造時に各原子の含有量が上記(5)〜(7)を満たすように、周期表第4族のチタン族元素から選ばれる元素の化合物、2価の金属化合物、およびリン化合物を用いればよい。
なお、各化合物の具体例、好適例については、ポリエステル樹脂の製造方法の説明において後述するが、周期表第4族のチタン族元素としてはチタンが好ましく、2価の金属化合物としてはマグネシウム化合物が好ましい。
本発明のポリエステル樹脂は、その製造工程において、触媒や助剤として周期表第4族のチタン族元素から選ばれる元素の化合物、2価の金属化合物およびリン化合物を用いることを必須とし、好ましくはアンチモン化合物およびゲルマニウム化合物を用いないことで、本発明のポリエステル樹脂はアンチモンおよびゲルマニウムを含まないことが好ましい。
アンチモン化合物は添加後に還元されてアンチモン金属として得られるポリエステル樹
脂中に析出し、結果的に当該ポリエステル樹脂を用いて得られるフィルム中に異物として
欠陥を生じさせる原因となる。又、一方ゲルマニウム化合物を用いる場合は、該化合物が
高価であるのでコストの面で不利になる。よって、本発明のポリエステル樹脂は、アンチ
モン化合物やゲルマニウム化合物を実質的に含まないのが好ましい。
ここで、アンチモンおよびゲルマニウムを含まないとは、ポリエステル樹脂中の各原子の含有量が6ppm以下、特に2ppm以下であり、後掲の実施例の項に記載される金属原子含有量の測定方法において検出限界以下であることをさす。
〔ポリエステル樹脂の製造方法〕
本発明のポリエステル樹脂の製造方法は、基本的には従来公知の製造方法、即ち、原料スラリーの調製、エステル化および溶融重縮合、更に引続く固相重縮合により実施される。その特徴とするところは、溶融重縮合に際して使用する触媒と助剤の組み合わせによるプレポリマーの製造と後続する固相重縮合にある。
ポリエステル樹脂は、通常、ジカルボン酸成分とジオール成分とから構成されるが、本発明のポリエステル樹脂はジカルボン酸成分の95モル%以上がテレフタル酸成分であり、ジオール成分の95モル%以上がエチレングリコールであることが好ましい。即ち、本発明のポリエステル樹脂の製造においては、原料ジカルボン酸成分としてテレフタル酸或いはその誘導体を原料ジカルボン酸成分中に95モル%以上用い、原料ジオール成分としてエチレングリコールを原料ジオール成分中に95モル%以上用いることが好ましい。
<原料ジカルボン酸成分>
一般に、ポリエステル樹脂の製造原料として使用されるジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、ジブロモイソフタル酸、スルホイソフタル酸、1,4−フェニレンジオキシジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルケトンジカルボン酸、4,4’−ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸や、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等の脂環式ジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカジカルボン酸、ドデカジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。これらのジカルボン酸は通常、遊離酸の形態で用いられるが、これらのジカルボン酸のアルキル基の炭素数が1〜4程度のアルキルエステル、ハロゲン化物、アルカリ金属塩等の誘導体としても用いることもできる。
これらのジカルボン酸成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
<原料ジオール成分>
もう一方の原料として使用されるジオール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等の脂肪族ジオールや、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,1−シクロヘキサンジメチロール、1,4−シクロヘキサンジメチロール、2,5−ノルボルナンジメチロール等の脂環式ジオール、キシリレングリコール、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン酸等の芳香族ジオールが挙げられる。このうち、芳香族ジオールは、更にアルキレンオキシドを付加させて使用することもできる。例えば、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパンにエチレンオキシド又はプロピレンオキシドを付加させた、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパンのエチレンオキシド付加物又はプロピレンオキシド付加物等が挙げられる。
これらのジオール成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
<共重合成分>
ポリエステル樹脂の製造には、更に、前記ジオール成分およびジカルボン酸成分以外の共重合成分として、例えば、グリコール酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸やアルコキシカルボン酸、および、ステアリルアルコール、ヘネイコサノール、オクタコサノール、ベンジルアルコール、ステアリン酸、ベヘン酸、安息香酸、t−ブチル安息香酸、ベンゾイル安息香酸等の単官能成分、トリカルバリル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ナフタレンテトラカルボン酸、没食子酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、シュガーエステル等の三官能以上の多官能成分等の1種又は2種以上を少量用いてもよい。ただし、ポリエステル樹脂の結晶性や融点、あるいはフィルム成形後の強度の観点からこれらの共重合成分はポリエステル樹脂中の全単量体成分中1モル%以下、特に0〜0.1モル%であることが好ましい。
<原料組成>
本発明のポリエステル樹脂は、テレフタル酸成分(テレフタル酸および/又はその誘導体)がジカルボン酸成分の95モル%以上、好ましくは98.5モル%以上、更に好ましくは100モル%を占めるのが好ましい。また、エチレングリコールが、ジオール成分の95モル%以上、好ましくは96モル%以上、更に好ましくは97モル%以上を占めるのが好ましい。テレフタル酸成分およびエチレングリコールの占める割合が前記範囲未満では、ポリエステル樹脂としての機械的強度、耐熱性等が劣る傾向となる。
<製法>
本発明において、上記のジカルボン酸成分とジオール成分は、先ずエステル化工程に供される。エステル化工程は基本的には既知の方法により実施される。その代表的な例を以下に記載する。
まず、ジカルボン酸成分とジオール成分をスラリー調製槽に供給し、両者のスラリーを調製する。ジカルボン酸成分とジオール成分の供給量は、通常、ジオール成分を過剰に用い、余剰のジオール成分はエステル化反応の進行と共に系外に留去するのが好ましい。ジカルボン酸成分に対するジオール成分のモル比は、通常、1.0〜2.0であり、1.05以上とするのがさらに好ましく、1.1以上とするのが特に好ましい。また上限は、さらに好ましくは1.7であり、特に好ましくは1.6である。このモル比が上記範囲未満の場合は重縮合反応速度が低下する傾向となり、一方、上記範囲を超える場合は、ジエチレングリコールの生成量が増加し、固相重縮合後に得られるポリエステル樹脂の熱安定性や機械的強度が低下する場合がある。
スラリー調製槽には必要に応じて触媒、助剤、溶媒などを添加することができる。アンチモン化合物などをエステル化触媒として使用することもできるが、これらは異物となる場合があり、また、エステル化反応は無触媒でも進行するので、無触媒で行うのが好ましい。
<助剤>
助剤としては、各種の目的に応じてリン化合物、金属化合物、充填剤、不活性粒子などを用いることができる。特にリン化合物と金属化合物は重要である。
<リン化合物>
リン化合物は、得られるポリエステル樹脂の熱安定性向上のため、また環状三量体の含有量、固有粘度、色座標b値、および体積固有抵抗値を好ましい範囲にコントロールするため使用される。リン化合物は、重縮合反応の開始までの任意の時期に添加することができる。このリン化合物はジカルボン酸成分とジオール成分のスラリー調製時に添加してもよく、エステル化反応槽に添加してもよく、重縮合反応槽に添加してもよく、あるいはこれらの移送配管に添加してもかまわないが、反応の最初の段階、即ちスラリー調製時に添加することが、重縮合触媒の活性を低下させず、好ましい。
リン化合物としては、具体的には、正リン酸、ポリリン酸、および、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリ−n−ブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリス(トリエチレングリコール)ホスフェート、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、モノブチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、トリエチレングリコールアシッドホスフェート等のリン酸エステル等の5価のリン化合物、並びに、亜リン酸、次亜リン酸、および、トリメチルホスファイト、ジエチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリスドデシルホスファイト、トリスノニルデシルホスファイト、エチルジエチルホスホノアセテート、トリフェニルホスファイト等の亜リン酸エステル、リチウム、ナトリウム、カリウム等の金属塩等の3価のリン化合物等が挙げられ、中でも、5価のリン化合物のリン酸エステルが好ましく、トリメチルホスフェート、エチルアシッドホスフェートが特に好ましい。
これらのリン化合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
これらリン化合物の添加量は、前記(5),(7)の要件を満たすような添加量であるが、リン原子換算で、得られるポリエステル樹脂に対して、通常0.12〜0.34モル/トンであり、下限は0.14モル/トンが好ましく、0.16モル/トンがさらに好ましい。上限としては0.32モル/トンが好ましく、0.29モル/トンがさらに好ましく、0.26モル/トンが特に好ましい。リン化合物の添加量が上記下限未満では、リン化合物を添加することによる熱安定性の向上効果や、環状三量体の含有量、固有粘度、色座標b値、および体積固有抵抗値を制御する効果を十分に得ることができず、一方多過ぎると得られるポリエステル樹脂の色調が極端に悪化しフィルムの生産に適さないものとなる。
<金属化合物>
金属化合物としては、周期表第4族のチタン族元素から選ばれる元素の化合物、2価の金属化合物などが挙げられる。周期表第4族のチタン族元素から選ばれる元素の化合物は、本発明において重縮合触媒として作用するものであり、本発明の必須成分である。2価の金属化合物も重縮合触媒としての作用を有するが、最終的に得られるポリエステル樹脂の体積固有抵抗値を制御する作用を併せ持っている。
これら金属化合物の添加時期は限定されない。上記のリン化合物と同様にスラリー調製時に添加してもよく、エステル化反応の前半途中(エステル化率0〜50%の時点)で添加してもよく、またエステル化反応の後半(エステル化率50〜100%の時点)に添加してもよい。更には、エステル化反応の終了後、溶融重縮合工程の初期の段階において添加することもできる。
周期表第4族のチタン族元素から選ばれる元素の化合物および2価の金属化合物の好ましい添加時期は、エステル化反応の後半、特にエステル化率60%以上、好ましくは80%以上の段階乃至重縮合反応槽での添加である。スラリー調製槽やエステル化率の低い段階でこれらの金属化合物を添加すると、反応系内の末端カルボキシル基と反応して、触媒や助剤としての機能が損なわれたり、体積固有抵抗を低下させるという効果も発揮し難くなるからである。
また、2価の金属化合物は、重合活性の変動を抑制する観点から、周期表第4族のチタン族元素から選ばれる元素の化合物よりも前に添加するのが好ましい。
<周期表第4族のチタン族元素から選ばれる元素の化合物>
周期表第4族のチタン族元素から選ばれる元素の化合物としては、チタン、ジルコニウム、ハフニウムの化合物が挙げられ、具体的には、これらの元素の酸化物、水酸化物、アルコキシド、酢酸塩、炭酸塩、蓚酸塩、およびハロゲン化物等が挙げられる。
これら周期表4族化合物の中では、チタン化合物が好ましく、具体的には、例えば、テトラ−n−プロピルチタネート、テトラ−i−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネートテトラマー、テトラ−t−ブチルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラベンジルチタネート等のチタンアルコキシド、チタンアルコキシドの加水分解により得られるチタン酸化物、チタンアルコキシドと珪素アルコキシド若しくはジルコニウムアルコキシドとの混合物の加水分解により得られるチタン−珪素若しくはチタン−ジルコニウム複合酸化物、酢酸チタン、蓚酸チタン、蓚酸チタンカリウム、蓚酸チタンナトリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸−水酸化アルミニウム混合物、塩化チタン、塩化チタン−塩化アルミニウム混合物、臭化チタン、フッ化チタン、六フッ化チタン酸カリウム、六フッ化チタン酸コバルト、六フッ化チタン酸マンガン、六フッ化チタン酸アンモニウム、チタンアセチルアセトナート等が挙げられ、中でも、テトラ−n−プロピルチタネート、テトラ−i−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート等のチタンアルコキシド、蓚酸チタン、蓚酸チタンカリウムが好ましく、テトラ−n−ブチルチタネートが特に好ましい。これらは1種又は2種以上混合して使用することができる。
これら周期表第4族のチタン族元素から選ばれる元素の化合物の添加量は、前記(7)の要件を満たすような添加量であるが、周期表第4族のチタン族金属原子換算で、得られるポリエステル樹脂に対して、通常0.04〜0.21モル/トンであり、下限は0.06モル/トンが好ましく、0.08モル/トンがさらに好ましい。上限としては0.15モル/トンが好ましく、0.13モル/トンがさらに好ましく、0.12モル/トンが特に好ましい。周期表第4族のチタン族元素から選ばれる元素の化合物の添加量が、上記下限未満では重合性が著しく悪化し、生産性良く目的のポリエステル樹脂を生産することができない場合があり、一方多過ぎると得られるポリエステル樹脂の色調が極端に悪化しフィルムの生産に適さないものとなる。
<2価の金属化合物>
2価の金属化合物としては、マンガン、マグネシウムおよびカルシウムの化合物が好ましく、これらの金属の酸化物、水酸化物、アルコキシド、酢酸塩、炭酸塩、蓚酸塩、およびハロゲン化物等が挙げられる。具体的には、例えば、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムアルコキシド、酢酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酢酸カルシウム、炭酸カルシウム、酸化マンガン、水酸化マンガン、酢酸マンガン等が挙げられる。中でも、マグネシウム化合物、マンガン化合物が好ましく、マグネシウム化合物が特に好ましく、とりわけ、酢酸マグネシウムが好ましい。これらは1種又は2種以上混合して使用することができる。
これら2価の金属化合物の添加量は、前記(5),(6)の要件を満たすような添加量であって、金属原子換算で、得られるポリエステル樹脂に対して、通常0.25〜0.49モル/トンであり、下限は好ましくは0.28モル/トン、さらに好ましくは0.33モル/トン、特に好ましくは0.34モル/トンである。上限は好ましくは0.41モル/トン、さらに好ましくは0.40モル/トン、特に好ましくは0.39モル/トンである。2価の金属化合物の添加量が、上記下限未満では体積固有抵抗を所定値まで低下させる効果が充分ではなく、一方上記上限を超える場合は、溶融保持後の着色が悪化する。
<添加方法>
本発明のポリエステル樹脂の製造における、前記の金属化合物やリン化合物の反応系への添加は、エチレングリコール等のアルコールや水等の溶液として行うのが好ましく、例えば、周期表第4族のチタン族元素から選ばれる元素の化合物としてチタン化合物を用いる場合のエチレングリコール溶液としては、チタン原子の濃度を0.01〜0.4質量%とし、且つ水分濃度を0.1〜1質量%とするのが、反応系へのチタン化合物の分散性、およびそれによる溶融重縮合性の改良の面から好ましい。
また、2価の金属化合物としてマグネシウム化合物を用いる場合、マグネシウム化合物のエチレングリコール溶液のマグネシウム原子濃度を0.3〜1.0質量%とするのが、反応系へのマグネシウム化合物の分散性、およびそれによる溶融重縮合性の改良の面から好ましい。
また、リン化合物のエチレングリコール溶液のリン原子濃度は0.2〜1.1質量%とするのが、エステル化反応の変動を抑制する観点から好ましい。
<反応>
エステル化反応は、例えば、テレフタル酸とエチレングリコールを原料とする場合には、通常240〜280℃で大気圧に対する相対圧力0〜4×10Paの常圧乃至加圧下で攪拌しながら実施することができる。ここで得られたポリエステル樹脂のオリゴマーは、続く重縮合工程へ供される。
尚、エステル化反応において、例えば、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ベンジルジメチルアミン等の第三級アミン、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラ−n−ブチルアンモニウム、水酸化トリメチルベンジルアンモニウム等の水酸化第四級アンモニウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウム等の塩基性化合物等を少量添加しておくことにより、エチレングリコールからのジエチレングリコールの副生を抑制することができる。
本発明のポリエステル樹脂を得るためには、溶融重縮合後の生成物(プレポリマー)の末端カルボキシル基量を10〜30eq/トンとすることが好ましいが、前記範囲内とするための方法として、エステル化工程の後段でエチレングリコールなどの脂肪族ジオール成分を添加する手法が挙げられる。この方法は簡便に末端カルボキシル基量を制御でき、かつ重縮合反応に対する影響も少ないので好ましい。エステル化工程で添加される脂肪族ジオールの量は生成するプレポリマーに対して50〜1200モル/トンが好ましい。この上限を超えて多量の脂肪族ジオールを添加すると重縮合反応の留出系への負荷が高くなるので好ましくない。脂肪族ジオールの添加量はより好ましくは100〜1000モル/トンである。この追加添加する脂肪族ジオールとしては、エチレングリコールが最も好ましい。脂肪族ジオールを添加する時期は、エステル化工程の後段であって、エステル化率(オリゴマー反応率)が50%、好ましくは60%、更に好ましくは80%、特に好ましくは90%を超えた時点以降で添加することが好ましい。これは、エステル化率が50%未満のオリゴマーに添加しても末端カルボキシル基量を制御する効果が低いからである。
上記で得られたエステル化反応生成物は、次に溶融重縮合工程に供する。溶融重縮合に当たっては、主たる重縮合触媒として周期表4族のチタン族元素から選ばれる少なくとも1種の元素の化合物を用いる。ここで「主たる重縮合触媒」とは、周期表4族のチタン族元素の化合物のみを使用して、それ以外の重縮合触媒を全く含まないか、含んだとしても僅かであることを言う。周期表4族のチタン族元素の化合物以外の化合物の許容される含有量は、化合物の種類によって相違する。
溶融重縮合工程は、通常250〜300℃の温度、圧力は常圧から漸次減圧され、最終的には通常絶対圧力で1333〜13.3Paで実施される。溶融重縮合で得られるプレポリマーの末端カルボキシル基量は重縮合温度と密接な関係にある。末端カルボキシル基量を調節するためには、前述したように、エステル化反応を制御する方法(反応後段でエチレングリコール等の脂肪族ジオールを添加する)が簡便であるが、重縮合温度を制御する方法もある。重縮合温度を上げると末端カルボキシル基量は増加し、逆に重縮合温度を下げると末端カルボキシル基量は減少する。しかし温度を下げると重縮合反応速度も低下するのでこれらのバランスが重要である。末端カルボキシル基量および固有粘度を勘案しながら溶融重縮合温度は好ましくは260〜290℃の範囲から選択される。
上記のような制御法によって、プレポリマー中の末端カルボキシル基量は、好ましくは10〜30eq/トン、より好ましくは12〜25eq/トン、さらに好ましくは12〜20eq/トンの範囲に調整することができる。
末端カルボキシル基量が上記下限未満では、プレポリマーの固相重縮合速度が遅くなる傾向があり、得られるポリエステル樹脂の固有粘度を目標値まで上げることが困難となることがある。この場合、固相重縮合の時間を延長して固有粘度の上昇を図ろうとすると、ポリエステル樹脂の色調が悪化することがあり、その結果、ポリエステフィルムの物性が劣ることもある。
また、末端カルボキシル基量が上記上限より多い場合は、環状三量体の開環速度が遅くなる傾向にあり、環状三量体含有量を十分に低減させることができないことがあり、その結果としてフィルムの表面に相応の環状三量体が存在することとなる。
溶融重縮合工程で得られるプレポリマーの固有粘度の下限は好ましくは0.40dl/g、より好ましくは0.45dl/g、さらに好ましくは0.48dl/g、特に好ましくは0.50dL/g、上限は好ましくは0.60dl/g、より好ましくは0.59dL/g、さらに好ましくは0.58dL/gである。
前記プレポリマーの固有粘度が0.40dl/g未満では溶融重縮合後に粒状化するチップ化工程が不安定となる傾向があり、その結果チップ化できないことがある。固有粘度が0.60dl/gを超えると固相重縮合後に得られるポリエステル樹脂の固有粘度を目標とする0.80dl/g以下に制御しつつ、同時に環状三量体の含有量を5000ppm以下に制御することが困難となる傾向がある。
プレポリマーは、溶融状態でダイからストランド状に押出し、冷却固化させたのちカッターで切断して粒状体(チップ)として固相重縮合工程に供給される。
粒状体(チップ)は固相重縮合に供する前に、固相重縮合を行う温度よりも低い温度で予備結晶化を行ってもよい。例えば、粒状体を乾燥状態で通常120〜200℃、好ましくは130〜190℃で通常1分間〜4時間程度加熱したり、粒状体を水蒸気を含む雰囲気中で120〜200℃に1分間以上加熱してから、固相重縮合に供するようにしてもよい。また、固相重縮合を経た粒状体を、その中に含まれている重縮合触媒を失活させるため、60℃以上の水蒸気を含む雰囲気中に30分間以上保持する水蒸気処理や、40℃以上の水に10分間以上浸漬する温水処理を施してもよい。
固相重縮合は連続式又は回分式で実施することができるが、操作性の面から連続法が好ましく用いられる。例えば、連続式の固相重縮合法として窒素、二酸化炭素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、大気圧に対する相対圧力として、通常100kPa以下、好ましくは20kPaもしくは常圧下で、通常5〜30時間程度、温度の下限は通常190℃、好ましくは195℃、上限は230℃、好ましくは225℃で加熱することにより固相重縮合させる方法がある。
この固相重縮合方法では経済性を考慮して不活性ガスの圧力は低い方が好ましいが、低すぎると得られるポリエステル樹脂中の環状三量体の含有量が5000ppmを超える可能性があるので、例えば15kPa程度の圧力で固相重縮合を実施してもよい。
固相重縮合の反応時間は反応温度にもよるが、通常1〜50時間の範囲から選択される。ただし、得られるポリエステル樹脂の色調を悪化させないために固相重縮合の反応時間は25時間以内が好ましく、さらに20時間以内が好ましい。一方、環状三量体の含有量を減らす観点から固相重縮合時間は10時間以上が好ましい。この手法ではより均質なポリエステル樹脂を安定して得ることができる。
また、別の方法として回分式の固相重縮合法も用いられる。この場合、絶対圧力として、下限が通常0.013kPa、好ましくは0.065kPa、上限が通常6.5kPaとなる減圧下で通常1〜25時間程度、好ましくは1〜20時間程度、温度の下限は通常190℃、好ましくは195℃、上限は230℃、好ましくは225℃で加熱することにより、目的のポリエステル樹脂を得ることができる。
本発明のポリエステル樹脂の製造方法においては、フィルム用ポリエステル樹脂として好適なポリエステル樹脂を得るために、任意の時期に平均粒子径0.05〜5.0μmの不活性粒子を、得られるポリエステル樹脂に対して0.05〜5.0質量%となるように添加することができるが、一般的にフィルムの品質を安定化させるため、不活性粒子は別途既知の手法にてマスターバッチを製造し、フィルムの成形時にポリエステル樹脂と混合して成形することが好ましい。
〔ポリエステルフィルム〕
本発明のポリエステル樹脂は、フィルム、特に、二軸延伸フィルム原料として好適であり、その成形法としては、ポリエステル樹脂をフィルム若しくはシート状に溶融押出しし、冷却ドラムにより急冷して未延伸フィルム若しくはシートとなし、次いで、該未延伸フィルム若しくはシートを予熱後、縦方向に延伸し、引き続いて横方向に延伸する逐次二軸延伸法、或いは、縦横方向に同時に二軸延伸する同時二軸延伸法等、従来公知の方法が採られる。その際の延伸倍率は、縦方向および横方向共、通常2〜6倍の範囲とされ、また、必要に応じて、二軸延伸後、熱固定および/又は熱弛緩される。尚、二軸延伸フィルムとしての厚みは、通常1〜300μm程度とされる。
このフィルム成形に際しては、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、防曇剤、核剤、可塑剤、着色剤等の、ポリエステル樹脂に通常用いられる添加剤を使用してもよい。
特に、二軸延伸フィルム等のフィルムにおいては、表面のブロッキング防止のために無機質又は有機質粒子からなる滑剤を添加するのが好ましく、その無機質粒子としては、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、シリカ、タルク、チタニア、カオリン、マイカ、ゼオライト等、およびそれらのシランカップリング剤又はチタネートカップリング剤等による表面処理物が、また、有機質粒子としては、例えば、アクリル系樹脂粒子、スチレン系樹脂粒子、架橋樹脂粒子等が、それぞれ挙げられる。
これら滑剤の粒子径は、平均粒子径で0.05〜5.0μmの範囲にあるのが好ましい。
これらの滑剤の添加量は、ポリエステル樹脂中の含有量として下限は通常0.001質量%、好ましくは0.05質量%、上限は通常2.0質量%、好ましくは1.0質量%、更に好ましくは0.5質量%である。
本発明のポリエステル樹脂を用いることにより、異物発生が少なく、フィルム平面性、連続製膜性に優れ、且つ、特に光学フィルム用として好ましい良好な色調を有するポリエステルフィルムを得ることができる。
ここで、光学フィルム用途としては、例えば、透明タッチパネル用、液晶表示装置やブラウン管、LCD、PDP等のいわゆるフラットディスプレイ用などとして、プリズムシート用、拡散板用、保護フィルム用の基材フィルムや、偏光板などの保護用、保護離型用といった工程紙フィルムが挙げられる。
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
以下の実施例および比較例において、試料(エステル化反応生成物、ポリエステルプレポリマー又はポリエステル樹脂)は、以下の測定方法によって測定、評価を行った。
<エステル化率>
試料1.0gをビーカーに精秤しジメチルホルムアミド40mlを加えて撹拌し、180℃に加熱して完全に溶解させた。室温まで放冷した後、自動滴定装置(三菱ケミカル社製「GT100」)を用いて、0.1Nのメタノール性水酸化カリウム溶液で滴定を行った。その結果をもとに、以下の式(I)に従って酸末端量を求めた。更に、得られた酸末端量を用いて、以下の式(II)に従ってエステル化率を計算した。
酸末端量(eq/g)=0.1×A×f×1000/W …(I)
A:中和に要した0.1Nのメタノール性水酸化カリウム溶液量(ml)
:0.1Nメタノール性水酸化カリウム溶液の力価
W:試料の重量(g)
エステル化率(%)=(1000−酸末端量)/100 …(II)
<金属原子含有量>
試料2.5gを、硫酸存在下に過酸化水素で常法により灰化、完全分解後、蒸留水にて50mlに定容したものについて、プラズマ発光分光分析装置(JOBIN YVON社製ICP−AES「JY46P型」)を用いて定量し、試料中のモル/トンに換算した。尚、試料中に滑剤が含有されている場合には、予め試料を溶媒に溶解し、未溶解の滑剤を遠心分離した後、上澄み液の溶媒を蒸発、乾固させたものについて定量した。
<体積固有抵抗値>
試料15gを、内径20mm、長さ180mmの枝付き試験管に入れ、管内を十分に窒素置換した後、250℃のオイルバス中に浸漬し、管内を真空ポンプで1Torr以下として20分間真空乾燥し、次いで、オイルバス温度を285℃に昇温して試料を溶融させた後、窒素復圧と減圧を繰り返して混在する気泡を取り除いた。この溶融体の中に、面積1cmのステンレス製電極2枚を5mmの間隔で並行に(相対しない裏面を絶縁体で被覆)挿入し、温度が安定した後に、抵抗計(ヒューレット・パッカード社製「MODEL HP4339B」)で直流電圧100Vを印加し、そのときの抵抗値を計算して体積固有抵抗値(Ω・cm)とした。
<色座標b値>
試料を、内径36mm、深さ15mmの円柱状の粉体測色用セルに充填し、測色色差計(日本電色工業社製「ZE−6000」)を用いて、JIS Z8730の参考1に記載されるLab表色系におけるハンターの色差式の色座標b値を、反射法により測定セルを90度ずつ回転させて4箇所測定した値の単純平均値として求めた。
<末端カルボキシル基>
試料を粉砕した後、熱風乾燥機にて140℃で15分間乾燥させ、デシケーター内で室温まで冷却した試料から、0.1gを精秤して試験管に採取し、ベンジルアルコール3mlを加えて、乾燥窒素ガスを吹き込みながら195℃、3分間で溶解させ、次いで、クロロホルム5mlを徐々に加えて室温まで冷却した。この溶液にフェノールレッド指示薬を1〜2滴加え、乾燥窒素ガスを吹き込みながら攪拌下に、0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液で滴定し、黄色から赤色に変じた時点で終了とした。また、ブランクとして試料を使用せずに同様の操作を実施し、以下の式(III)によって末端カルボキシル基(酸価)を算出した。
末端カルボキシル基(eq/トン)=(B−D)×0.1×f/W …(III)
B:滴定に要した0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の量(μl)
D:ブランクでの滴定に要した0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の量(μl)
W:試料の量(g)
:0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の力価
尚、0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の力価(f)は、乾燥窒素ガスを吹き込みながら、試験管にメタノール5mlを採取し、フェノールレッドのエタノール溶液を指示薬として1〜2滴加え、0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液0.4mlで変色点まで滴定し、次いで、力価既知の0.1Nの塩酸水溶液を標準液として0.2ml採取して加え、再度、0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液で変色点まで滴定し、以下の式(IV)によって力価(f)を算出した。
力価(f)=0.1Nの塩酸水溶液の力価×0.1Nの塩酸水溶液の採取量(μl)/0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の滴定量(μl) …(IV)
<固有粘度>
凍結粉砕した試料0.25gを、フェノール/テトラクロロエタン(質量比1/1)の混合溶媒に、濃度(c)を1.0g/dlとして、120℃で30分間で溶解させた後、ウベローデ型毛細粘度管を用いて、30℃で、原液との相対粘度(ηrel)を測定し、この「相対粘度(ηrel)−1」から求めた比粘度(ηsp)と濃度(c)との比(ηsp/c)を求め、同じく濃度(c)を0.5g/dl、0.2g/dl、0.1g/dlとしたときについてもそれぞれの比(ηsp/c)を求め、これらの値より、濃度(c)を0に外挿したときの比(ηsp/c)を固有粘度(dl/g)として求めた。
<環状三量体含有量>
凍結粉砕した試料4.0mgを、クロロホルム/ヘキサフルオロイソプロパノール(容量比3/2)の混合溶媒2mlに溶解させた後、更にクロロホルム20mlを加えて希釈し、これにメタノール10mlを加えて析出させ、引き続いて濾過して得た濾液を蒸発乾固後、ジメチルホルムアミド25mlに溶解し、その溶液中の環状三量体(シクロトリエチレンテレフタレート)を、液体クロマトグラフィー(島津製作所製「LC−10A」)で定量した。
<溶融熱安定性>
試料20gを枝管付き試験管に入れ、5Torr以下の減圧下、160℃のオイルバスに浸漬させて5時間乾燥させた後、窒素ガスで復圧させ窒素ガスでシールしたままオイルバスから引き上げた。オイルバスの温度を290℃にセットして、乾燥させた試料を溶融させた。所定の時間、オイルバスに浸漬したのち、試料を取り出し、急冷してアモルファスの状態とし、その試料をニッパーなどで適切な大きさに切りそろえた後、固有粘度および色座標b値の測定を、先に示した方法により実施した。
1.5時間溶融させた後の試料の固有粘度および色座標b値と、元々の試料(溶融前の試料)の固有粘度および色座標b値とから、下記式(V),(VI)により、固有粘度の低下率(ΔIV)と色座標b値の変化(Δb値)を算出した。
固有粘度の低下率%(ΔIV):
(溶融前の試料の固有粘度−溶融後の試料の固有粘度)
/溶融前の試料の固有粘度×100 …(V)
色座標b値の変化(Δb値):
溶融後の試料の色座標b値−溶融前の試料の色座標b値 …(VI)
<実施例1>
スラリー調製槽、およびそれに直列に接続された2段のエステル化反応槽、および2段目のエステル化反応槽に直列に接続された3段の溶融重縮合槽からなる連続式重合装置を用い、スラリー調製槽に、テレフタル酸とエチレングリコールを質量比で865:469の割合で連続的に供給すると共に、エチルアシッドホスフェートのエチレングリコール溶液(P濃度1.0質量%)を、生成ポリエステル樹脂に対してリン原子としての含有量が0.23モル/トンとなる量で連続的に添加して、攪拌、混合することによりスラリーを調製し、このスラリーを、窒素雰囲気下で263℃、相対圧力85kPa、平均滞留時間4.5時間に設定された、反応生成物が存在する第1段目のエステル化反応槽に供給し、次いで、第1段目のエステル化反応生成物を、窒素雰囲気下で260℃、相対圧力5kPa、平均滞留時間1.2時間に設定された第2段目のエステル化反応槽に連続的に移送して、更にエステル化反応させた。また、第2段目のエステル化反応槽に設けた上部配管を通じて、エチレングリコールを生成するプレポリマーに対して764モル/トンになる量供給した(このエチレングリコール供給量を「追加添加EG量」と称す。)。この場合、第2段エステル化反応槽におけるエステル化率は96%であった。
引き続いて、前記で得られたエステル化反応生成物を溶融重縮合槽に移送する際、その移送配管中のエステル化反応生成物に、酢酸マグネシウム4水和物のエチレングリコール溶液(Mg濃度0.7質量%)を、生成ポリエステル樹脂に対してマグネシウム原子としての含有量が0.37モル/トンとなる量で、連続的に添加し、引き続いて、前記で得られたエステル化反応生成物を溶融重縮合槽に移送する際、その移送配管中のエステル化反応生成物に、テトラ−n−ブチルチタネートのエチレングリコール溶液(Ti濃度0.2質量%)を、生成ポリエステル樹脂に対してチタン原子としての含有量が0.094モル/トンとなる量で、連続的に添加しつつ、272℃、絶対圧力2.9kPaに設定された第1段目の溶融重縮合槽、次いで、277℃、絶対圧力0.4kPaに設定された第2段目の溶融重縮合槽、次いで、280℃、絶対圧力0.2kPaに設定された第3段目の溶融重縮合槽に連続的に移送して、各重縮合槽における滞留時間を以下の通りとし、第1段目 70分、第2段目 70分、第3段目 80分、滞留時間が合計で220分となるようにして溶融重縮合させ、第3段目の重縮合槽の底部に設けられた抜き出し口からストランド状に抜き出して水冷後、カッターで切断して1個の重さが平均粒重25mgのプレポリマーチップとした。
このチップの固有粘度は0.56dl/g、色座標b値は1.8、末端カルボキシル基量は15.6eq/トンであった。
このプレポリマーチップを、窒素雰囲気で且つ約160℃に維持されている予備結晶化装置に連続的に供給し、約60分間保持したのち、予熱器を経て、塔型の固相重縮合装置に連続的に供給し、窒素雰囲気下、205℃で17時間、固相重縮合反応させた。
得られた固相重縮合チップを評価したところ、固有粘度は0.69dl/g、色座標b値は3.4、環状三量体の含有量は4100ppm、体積固有抵抗値は14.3×10Ω・cmであった。また、溶融熱安定性を確認したところ、固有粘度の低下率(ΔIV)が21.3%、色座標b値の変化(Δb値)が11.1であった。
製造条件および評価結果を表1にまとめた。
<実施例2>
添加する触媒等の成分量と固相重縮合時間を表1の通りに変えた以外は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステル樹脂の物性を表1に示す。
この場合、第2段エステル化反応槽におけるエステル化率は96%であった。
<比較例1>
スラリー調製槽、およびそれに直列に接続された2段のエステル化反応槽、および2段目のエステル化反応槽に直列に接続された3段の溶融重縮合槽からなる連続式重合装置を用い、スラリー調製槽に、生成するポリエステル樹脂に対してリン原子として0.45モル/トンのエチルアシッドホスフェートのエチレングリコール溶液(P濃度0.3質量%)と、テレフタル酸およびエチレングリコールを、テレフタル酸:エチレングリコール=865:485(質量比)となるように供給してスラリーを調製した。このスラリーをエステル化反応槽に連続的に供給した。エステル化の反応条件は、第1段エステル化反応槽は窒素雰囲気下で270℃、相対圧力10kPa、平均滞留時間2.5時間であり、第2段エステル化反応槽は同じく窒素雰囲気下で265℃、相対圧力0kPa、平均滞留時間1.0時間であった。第2段エエスル化反応槽に設けた上部配管を通じて、エチレングリコールを生成するプレポリマーに対して160モル/トン(追加添加EG量)になる量供給した。この場合、第2段エステル化反応槽におけるエステル化率は96%であった。
エステル化反応生成物は、移送配管を経て、第1段重縮合反応槽に連続的に供給した。移送中のエステル化反応生成物に、生成するポリエステル樹脂に対して酢酸マグネシウム4水和物のエチレングリコール溶液(Mg濃度0.6質量%)を、マグネシウム原子として0.66モル/トンを、さらに、生成するポリエステル樹脂に対してチタン原子として0.14モル/トンのテトラブチルチタネートのエチレングリコール溶液(Ti濃度0.2質量%)を、それぞれ連続的に添加した。
溶融重縮合の反応条件は、第1段重縮合反応槽が266℃、絶対圧力3.25kPa、平均滞留時間0.85時間であり、第2段重縮合反応槽は270℃、絶対圧力0.31kPa(2.5Torr)、平均滞留時間0.90時間、第3段重縮合反応槽は272℃、絶対圧力0.26kPa(1.7Torr)、平均滞留時間0.66時間であった。
第3段重縮合反応槽から取り出した溶融重縮合反応生成物は、ダイからストランド状に押出して冷却固化し、カッターで切断して1個の重さが平均粒重24mgのプレポリマーチップとした。このチップの固有粘度は0.53dl/g、色座標b値は0.8、末端カルボキシル基量は21.0eq/トンであった。
このプレポリマーチップを、窒素雰囲気で且つ約160℃に維持されている予備結晶化装置に連続的に供給し、攪拌下に約60分間保持したのち、予熱器を経て、塔型の固相重縮合装置に連続的に供給し、窒素雰囲気下、210℃で14時間、固相重縮合反応させた。
得られた固相重縮合チップを評価したところ、固有粘度は0.66dl/g、色座標b値は1.9、環状三量体の含有量は4100ppm、体積固有抵抗値は14.0×10Ω・cmであった。また、溶融熱安定性を確認したところ、固有粘度の低下率(ΔIV)が28.5%、色座標b値の変化(Δb値)が14.1であった。
この例で得られたポリエステル樹脂は溶融保持後の色座標b値の変化が大きく、フィルム成形には適さないものであった。
<比較例2>
添加する触媒等の成分量を表1に示すように変更し、固相重縮合の条件を表1に示すように変更した以外は比較例1と同様にしてポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステル樹脂の物性を表1に示す。
得られたポリエステル樹脂は体積固有抵抗値が高く、フィルム成形が困難であり、また溶融保持後の色座標b値の変化が大きく、フィルム成形はできても外観に問題が生じるものであった。
<比較例3>
エチルアシッドホスフェートを添加せず、他の成分量を表1に示すように変え、固相重縮合の条件を表1に示すように変更した以外は比較例1と同様にしてポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステル樹脂の物性を表1に示す。
得られたポリエステル樹脂は溶融保持後の色座標b値の変化が大きく、さらに環状三量体の含有量も高いためフィルム成形には全く適さないものであった。
<比較例4>
酢酸マグネシウム4水和物を添加せずに、他の成分量を表1に示すように変え、固相重縮合の条件を表1に示すように変更した以外は比較例1と同様にしてポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステル樹脂の物性を表1に示す。
得られたポリエステル樹脂は体積固有抵抗値が非常に高く、また固有粘度が高く、さらに溶融保持後の色座標b値の変化が大きいため、フィルム成形には適さないものであった。
<比較例5>
添加する触媒等の成分量を表1に示すように変更した以外は比較例1と同様にして溶融重縮合を実施した。
ここで得られたプレポリマーの固有粘度は非常に低く、カッティングするのが困難であった。次いで固相重縮合を比較例1と同様にしてポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステル樹脂の物性を表1に示す。
得られたポリエステル樹脂は環状三量体の含有量が多いためフィルム成形には適さないものであった。
Figure 2020075998
表1に示されるように、本発明のポリエステル樹脂は固有粘度が所定値以下で、環状三量体の含有量が少なく、体積固有抵抗値が低く、また、溶融熱安定性に優れ、高速でのフィルム成形に適するものである。

Claims (7)

  1. 周期表第4族のチタン族元素から選ばれる少なくとも1種の元素の化合物、2価の金属化合物、およびリン化合物を含有し、以下の(1)〜(7)を満足するポリエステル樹脂。
    (1)固有粘度:0.80dl/g以下
    (2)環状三量体の含有量:5000ppm以下
    (3)体積固有抵抗値:20×10Ω・cm以下
    (4)290℃で1.5時間溶融保持後のΔb値:13以下
    (5)0.4 ≦ P/M ≦ 0.7
    (6)0.25 ≦ M ≦ 0.49
    (7)P/T ≦3.1
    ただし、P、M、Tは以下を表す。
    P:リン原子の含有量(モル/トン)
    M:2価の金属原子の含有量(モル/トン)
    T:周期表第4族のチタン族金属原子の含有量(モル/トン)
  2. 前記周期表第4族のチタン族元素から選ばれる少なくとも1種の元素がチタンである請求項1に記載のポリエステル樹脂。
  3. 前記2価の金属化合物がマグネシウム化合物である請求項1又は2に記載のポリエステル樹脂。
  4. ポリエステル樹脂がジカルボン酸成分とジオール成分とからなり、ジカルボン酸成分の95モル%以上がテレフタル酸成分であり、ジオール成分の95モル%以上がエチレングリコールである請求項1から3のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂。
  5. アンチモンおよびゲルマニウムを含まない請求項1から4のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂。
  6. フィルム用である請求項1から5のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂。
  7. 請求項1から6のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂を用いて得られるポリエステルフィルム。
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