ところで、車両用空調装置は、車室内の空気を循環させるための内気導入口を有しており、一般的に、内気導入口は運転席から離れたところに設定されている。従って、例えば特許文献等に開示されている運転席優先吹出モードを実行すると、内気導入口近傍の座席の空調が停止することになるため、内気導入口近傍の空気温度が運転席近傍の空気温度と比較して、冬季は低く、夏季は高くなる。この運転席優先吹出モードが、内気導入口から車室内の空気を吸い込むモードの場合に実行されると、冬季は内気導入口近傍の比較的低温の空気が吸い込まれることになるので、吹出温度の低下を招き、また、夏季は内気導入口近傍の比較的高温の空気が吸い込まれることになるので、吹出温度の上昇を招き、その結果、乗員の快適性が悪化する懸念がある。このため、運転席優先吹出モードが選択されなくなり、ひいては、燃費の実質的な向上に繋がらないことが考えられる。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、運転席を優先して空調するモードを搭載する場合、当該モードの実行時に内気導入口から車室内の空気を導入するときに、運転席乗員の快適性の悪化を抑制して当該モードが選択される機会を増やし、燃費の向上を図ることにある。
上記目的を達成するために、本発明では、運転席を優先して空調するモードで、かつ、内気導入口から車室内の空気を導入するときに、内気導入口近傍の吹出口から空調風が吹き出すようにした。
第1の発明は、車室の運転席に対応して設けられた運転席側吹出口と、車室の運転席以外の座席に対応して設けられた非運転席側吹出口と、車室内の空気を導入する内気導入口とを有し、前記内気導入口から導入した空気を温度調節して空調風とし、前記運転席側吹出口及び前記非運転席側吹出口から前記空調風を吹き出すように構成された空調ユニットと、前記非運転席側吹出口から吹き出す空調風量を調整する風量調整手段と、前記風量調整手段を制御することにより、前記運転席側吹出口及び前記非運転席側吹出口から空調風が吹き出す通常空調モードと、前記通常空調モードに比べて前記非運転席側吹出口から吹き出す空調風量が少なくなる運転席優先空調モードとに切り替える制御部とを備えた車両用空調装置において、車室内の温度を検出する車室内温度検出センサと、乗員による車室内温度の設定を受け付ける車室内温度設定部と、運転席の空調を優先する運転席優先空調モードへの切替を受け付ける空調モード切替部とを備え、前記空調ユニットは、前記車室内温度検出センサで検出された温度が前記車室内温度設定部で受け付けられた設定温度となるように空調風を生成し、前記制御部は、前記内気導入口から車室内の空気を導入し、かつ、前記空調モード切替部により運転席優先空調モードへの切替を受け付けた場合、前記内気導入口近傍にある前記非運転席側吹出口から空調風を吹き出すように構成されていることを特徴とする。
この構成によれば、運転席及び運転席以外の座席に乗員が存在している場合には、通常空調モードとすることで、運転席側吹出口及び非運転席側吹出口から空調風が吹き出すので、全ての座席の乗員の快適性が高まる。一方、運転席のみに乗員が存在している場合には、運転席優先空調モードとすることで、乗員が存在しない座席への空調風の供給量が通常空調モードに比べて少なくなるので、省エネルギ化が図られる。
また、運転席優先空調モード時、内気導入口から車室内の空気を導入するときに、内気導入口近傍の吹出口から空調風が吹き出すので、温度調節された空気が内気導入口から吸い込まれることになる。これにより、冬季であれば暖かい空気が内気導入口から吸い込まれるので吹出温度の低下が抑制され、また、夏季であれば低温の空気が内気導入口から吸い込まれるので吹出温度の上昇が抑制される。よって、乗員の快適性が高まると同時に熱交換器の熱交換量が減少するので省エネルギ化も図られる。
第2の発明は、前記空調ユニットは、車室外の空気を導入する外気導入口を有するとともに、車室外の空気を導入する外気導入モードと、車室内の空気を導入する内気循環モードとに切り替え可能に構成され、前記非運転席側吹出口は、前記空調ユニットの前記内気導入口近傍に位置する足元ヒート吹出口を有し、前記制御部は、前記内気導入口から車室内の空気を導入し、かつ、前記空調モード切替部により運転席優先空調モードへの切替を受け付けた場合、前記足元ヒート吹出口から空調風を吹き出すように構成されていることを特徴とする。
この構成によれば、内気導入口と足元ヒート吹出口とが近い場合に、内気導入口近傍に位置する足元ヒート吹出口が開放されることになるので、その足元ヒート吹出口から吹き出した空調風が内気導入口から導入されることになる。
第3の発明は、前記制御部は、前記空調モード切替部により運転席優先空調モードへの切替を受け付けた場合、前記車室内温度検出センサで検出された温度と、前記車室内温度設定部で受け付けられた設定温度との差が第1閾値以下である車室内温度安定期に、前記運転席優先空調モードとなるように前記風量調整手段を制御する一方、前記車室内温度検出センサで検出された温度と、前記車室内温度設定部で受け付けられた設定温度との差が前記第1閾値を超えるときに前記運転席優先空調モードへの切替を禁止するように構成されている。
この構成によれば、車室内温度検出センサで検出された温度と、車室内温度設定部で受け付けられた設定温度との差が第1閾値以下である場合には、過渡期を過ぎて車室内の温度が安定した車室内温度安定期にあると推定することができる。この場合は、内装材による温冷熱の輻射が弱まっているので、運転席優先空調モードとなるように風量調整手段を制御したとしても、運転席乗員の快適性の悪化が抑制される。
すなわち、車室内温度が乗員による設定温度近傍となるまでの過渡期は、車室内温度と、乗員による設定温度との差が大きい状況であり、乗員が不快に感じていると推定できる。例えば、冷房時の過渡期に運転席優先空調モードに切り替えられて助手席側の吹出口が閉塞されると、運転席以外には温度の高い空気が存在しているので、この温度の高い空気が車室内の気流によって運転席へ向けて吹き戻るような現象を起こすことがある。また、暖房時においても同様に、過渡期に運転席優先空調モードに切り替えられて助手席側の吹出口が閉塞されると、運転席以外には冷たい空気が存在しているので、この冷たい空気が車室内の気流によって運転席へ向けて吹き戻るような現象を起こすことがある。運転席へ向けての温冷風の吹き戻りは、運転席乗員の快適性を悪化させる原因となり得る。
このような現象に対して、上記特許文献3の運転席優先吹出モードでは、助手席側の吹出口を閉塞するとともに、運転席側のヒート吹出口から空調風を供給するようにしているので、運転席への風量を増大させることができ、吹き戻りによる悪影響を低減できると予測される。
しかし、実際には、車室内の内装品からの輻射熱が問題となる。すなわち、夏季であれば車室の全ての内装材がかなりの温熱を蓄えているので、運転席乗員への内装材からの温熱輻射があり、また、冬季であれば内装材が冷熱を蓄えているので、運転席乗員への内装材からの冷熱輻射があり、このため、運転席へ向けての吹き戻りを低減できたとしても内装材からの温冷熱の輻射による影響で運転席乗員の快適性が向上しない場合がある。従って、運転席乗員が運転席優先空調モードを選択し、運転席優先空調モードを実行してみたものの、運転席優先空調モードは不快であると感じ、その後は運転席優先空調モードを選択する機会がなくなる、若しくは著しく低下する可能性がある。こうなると、運転席優先空調モードを選択可能に構成している意義がなくなり、ひいては、燃費の実質的な向上に繋がらないことが考えられる。
本発明では、運転席を優先して空調するモードを過渡期には実行しないようにして、車室内の温度が比較的安定しているときに実行することができるので、上述した問題を解決することができる。
第4の発明は、前記制御部は、前記空調モード切替部により運転席優先空調モードへの切替を受け付けた場合、前記車室内温度検出センサで検出された温度と、前記車室内温度設定部で受け付けられた設定温度との差が前記第1閾値を超え、前記第1閾値よりも大きな第2閾値以下であるときに、前記運転席優先空調モードに比べて前記非運転席側吹出口から吹き出す空調風量が多くなる弱優先空調モードとなるように前記風量調整手段を制御するように構成されていることを特徴とする。
この構成によれば、車室内温度検出センサで検出された温度と、車室内温度設定部で受け付けられた設定温度との差が、前記車室内温度安定期よりも大きな場合には、弱優先空調モードとなり、運転席優先空調モードに比べて非運転席側吹出口から吹き出す空調風量が多くなる。これにより、温冷熱の輻射の影響が弱まるので、運転席乗員の快適性の悪化が抑制される。
第5の発明は、前記制御部は、冷房時に前記運転席優先空調モードとした場合、空調風の温度を前記通常空調モードに比べて低下させるように構成されていることを特徴とする。
この構成によれば、空調風の温度を通常空調モードに比べて低下させることで、冷房時に非運転席側から運転席側へ温風が吹き戻ってきた際に、その温風の影響が少なくなる。
第6の発明は、前記制御部は、暖房時に前記運転席優先空調モードとした場合、空調風の温度を前記通常空調モードに比べて上昇させるように構成されていることを特徴とする。
この構成によれば、空調風の温度を通常空調モードに比べて上昇させることで、暖房時に非運転席側から運転席側へ冷風が吹き戻ってきた際に、その冷風の影響が少なくなる。
第7の発明は、前記制御部は、前記運転席優先空調モード時に、空調風量を前記通常空調モードに比べて多くするように構成されていることを特徴とする。
この構成によれば、運転席優先空調モード時に空調風量が多くなるので、運転席側への吹き戻りによる悪影響を低減できる。
第8の発明は、暖房用温水の温度状態を検出する水温センサを備え、前記制御部は、前記水温センサで検出された暖房用温水の温度が第1の所定温度以上である場合には、前記運転席優先空調モードへの切替を禁止するように構成されていることを特徴とする。
この構成によれば、暖房時の快適性が向上する。
第9の発明は、暖房用温水の温度状態を検出する水温センサを備え、
前記制御部は、前記水温センサで検出された暖房用温水の温度が第2の所定温度以下である場合には、前記運転席優先空調モードへの切替を禁止するように構成されていることを特徴とする。
第10の発明は、車室の運転席以外の座席の空調状態を乗員が調整するための空調調整部を備え、前記制御部は、前記運転席優先空調モード時に前記空調調整部が操作されたか否かを検出し、前記運転席優先空調モード時に前記空調調整部が操作されたことを検出すると、前記通常空調モードに切り替えるように構成されていることを特徴とする。
すなわち、運転席以外の座席の空調状態を乗員が調整したということは、運転席以外の座席で空調が望まれているということであり、この場合に通常空調モードに切り替えることで、運転席以外の座席も空調することができる。これにより、所望の空調状態にすることができる。
第11の発明は、前記制御部は、前記車室内温度設定部で受け付けられた設定温度が最高温度または最低温度とされたことを検出すると、前記運転席優先空調モードへの切替を禁止するように構成されていることを特徴とする。
すなわち、乗員が設定温度を最高温度や最低温度にするということは、現在の空調状態に満足できない場合であり、この場合に、運転席優先空調モードへの切替を禁止することで、車室の全体を空調することができ、早期に所望の空調状態にすることができる。
第12の発明は、前記制御部は、前記車室内温度設定部で受け付けられた設定温度が最高温度または最低温度とされたことを検出した場合で、かつ、前記車室内温度検出センサで検出された温度が所定温度に到達した場合には、前記運転席優先空調モードへの切替を許可するように構成されていることを特徴とする。
すなわち、設定温度が最高温度または最低温度とされていても、時間の経過とともに車室内の温度が設定温度に近づいていき、所定温度に到達することがある。この場合は、運転席優先空調モードへの切替を許可することで、省エネルギ性が高まる。
第13の発明は、外気温度を検出する外気温度検出センサを備え、前記制御部は、前記外気温度検出センサで検出された外気温度に応じて前記所定温度を変化させることを特徴とする。
この構成によれば、外気温度を反映させた空調制御を行うことができる。
第14の発明は、フロントウインドの曇りやすさを検出する窓曇りセンサを備え、前記制御部は、前記窓曇りセンサにより検出された窓の曇りやすさに関する値が第1の所定値を超えたことを検出し、かつ、前記空調ユニットの吹出モードがベントモード、バイレベルモード及びヒートモードのいずれかであることを検出すると、前記運転席優先空調モードへの切替を禁止するように構成されていることを特徴とする。
この構成によれば、非運転席側吹出口からも空調風が吹き出すことになり、窓の曇りを抑制することができる。
第15の発明は、前記制御部は、前記窓曇りセンサにより検出された窓の曇りやすさに関する値が第2の所定値を超えたことを検出し、かつ、前記空調ユニットの吹出モードがデフヒートモード及びデフロスタモードのいずれかであることを検出すると、前記運転席優先空調モードへの切替を禁止するように構成されていることを特徴とする。
第16の発明は、前記制御部は、前記空調ユニットの吹出モードがデフヒートモード及びデフロスタモードのいずれかであることを検出すると、空調風の温度を前記通常空調モードの場合と同じ温度とするように構成されていることを特徴とする。
第1の発明によれば、運転席を優先して空調するモードで、かつ、内気導入口から車室内の空気を導入するときに、内気導入口近傍の吹出口から空調風が吹き出すようにしたので、冷暖房効率を向上させると同時に運転席乗員の快適性の悪化を抑制して当該モードが選択される機会を増やすことができ、燃費の向上を図ることができる。
第2の発明によれば、空調ユニットの内気導入口近傍に位置する足元ヒート吹出口を開放するようにしたので、冷暖房効率を向上させることができる。
第3の発明によれば、車室内温度検出センサで検出された温度と、乗員による設定温度との差が第1閾値以下である車室内温度安定期に運転席優先空調モードに切り替えるようにしたので、運転席優先空調モードの実行時に運転席乗員の快適性の悪化を抑制して当該モードが選択される機会を増やすことができ、燃費の向上を図ることができる。
第4の発明によれば、車室内温度検出センサで検出された温度と、車室内温度設定部で受け付けられた設定温度との差が、前記車室内温度安定期よりも大きな場合には、運転席優先空調モードに比べて非運転席側吹出口から吹き出す空調風量が多くなるので、温冷熱の輻射の影響を弱めることができる。
第5の発明によれば、冷房時に非運転席側からの温風の影響を少なくすることができるので、運転席乗員の快適性が向上する。
第6の発明によれば、暖房時に非運転席側からの冷風の影響を少なくすることができるので、運転席乗員の快適性が向上する。
第7の発明によれば、運転席優先空調モード時に空調風量を多くすることで運転席側への吹き戻りによる悪影響を低減できる。
第8の発明によれば、暖房用温水の温度が高い場合に運転席優先空調モードへの切替を禁止することができるので、暖房時の快適性が向上する。
第9の発明によれば、暖房用温水の温度が低い場合に運転席優先空調モードへの切替を禁止することができるので、暖房時の快適性が向上する。
第10の発明によれば、車室の運転席以外の座席の空調状態を乗員が調整したことを検出することができ、このことを検出した場合に通常空調モードに切り替えることで、所望の空調状態にすることができる。
第11の発明によれば、設定温度が最高温度または最低温度とされた場合に運転席優先空調モードへの切替を禁止するようにしたので、所望の空調状態にすることができる。
第12の発明によれば、設定温度が最高温度または最低温度とされたことを検出した場合で、かつ、車室内の温度が所定温度に到達した場合には、運転席優先空調モードへの切替を許可することができる。これにより、省エネルギ性を高めることができる。
第13の発明によれば、外気温度検出センサで検出された外気に応じて前記所定温度を変化させることができるので、外気温度に応じた空調制御を行うことができる。
第14、15の発明によれば、窓の曇りを抑制することができる。
第16の発明によれば、デフロスタ吹出口からの吹出温風による頭熱感を防止することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
図1は、本発明の実施形態に係る車両用空調装置1が配設された自動車の車室の前側部分を示す斜視図である。車室の前端部には、インストルメントパネルIPが設けられている。インストルメントパネルIPの後側には、右側に運転席、左側に助手席(共に図示せず)がそれぞれ設けられている。運転席及び助手席の後側には、後席が設けられている。この自動車の車室の前側空間は、運転席が配設される運転席配設空間Drと、助手席が配設される助手席配設空間Psとを有しており、運転席配設空間Drが右側空間、助手席配設空間Psが左側空間である。また、この自動車の車室の運転席配設空間Dr及び助手席配設空間Psよりも後の空間は、後席配設空間(図示せず)とされている。尚、後席には、2列以上の座席を配設することもできる。前記自動車は、例えば乗用自動車であり、例えば、セダンタイプであってもよいし、ワンボックスタイプ等であってもよい。
図2は、本発明の実施形態に係る車両用空調装置1の概略構成図である。この車両用空調装置1は、車室内の空気(内気)と車室外の空気(外気)との一方または両方を導入して温度調節した後、車室の各部に供給するように構成されている。
図1に示すように、車両用空調装置1は、空調ユニット10と、送風ユニット11と、コントロール部としての制御装置(図4に示す)30とを備えている。空調ユニット10及び送風ユニット11はインストルメントパネルIPの内部に収容されている。空調ユニット10は、インストルメントパネルIPの内部において車幅方向中央部に配置され、送風ユニット11は、インストルメントパネルIPの内部において車幅方向中央部よりも左側(助手席側)に配置されている。尚、この実施形態の説明では、車両前側を単に「前」といい、車両後側を単に「後」といい、車両左側を単に「左」といい、車両右側を単に「右」というものとする。
図2に示すように、空調ユニット10と送風ユニット11とは接続されており、送風ユニット11によって送風される空調用空気が空調ユニット10に導入されるようになっている。空調ユニット10と送風ユニット11とは一体化されていてもよいし、別体とされてダクト(図示せず)等で接続されていてもよい。
車両用空調装置1は、空気流れ方向上流側から下流側に向かって順に、送風ユニット11と、温度調節部12と、吹出方向切替部13とを備えている。送風ユニット11には、外気導入口11aと内気導入口11bとが形成されている。外気導入口11aは、例えば図示しないインテークダクトを介して車室外と連通しており、車室外の空気(外気)を導入するようになっている。内気導入口11bは、インストルメントパネルIPの内部において一般的に助手席側で開口しており、車室内の空気(内気)を導入して車室内に循環させるようになっている。内気導入口11bが助手席側で開口しているので、内気導入口11bには、車室内の助手席側の空気が主に流入することになるが、他の座席に内気導入口がある場合は、この限りではない。外気導入口11aから導入する外気の量が外気導入量となる。内気導入口11bから導入する内気の量が内気循環量となる。
送風ユニット11の内部には、外気導入口11a及び内気導入口11bを開閉する内外気切替ダンパ11cが配設されている。内外気切替ダンパ11cは、例えば板状の部材で構成することができ、送風ユニット11の側壁部に対して回動可能に支持されている。内外気切替ダンパ11cは、内外気切替アクチュエータ(内外気切替ダンパ駆動手段)11dによって任意の回動角度となるように駆動される。これによりインテークモードが切り替えられる。内外気切替アクチュエータ11dは、制御装置30によって後述するように制御される。
例えば、図2に実線で示すように外気導入口11aを全閉にし、かつ、内気導入口11bを全開にするまで内外気切替ダンパ11cを回動させると、インテークモードが内気循環モードとなる。このときの内外気切替ダンパ11cの開度は100%とする。一方、図2に仮想線で示すように外気導入口11aを全開にし、かつ、内気導入口11bを全閉にするまで内外気切替ダンパ11cを回動させると、インテークモードが外気導入モードとなる。このときの内外気切替ダンパ11cの開度は0%とする。そして、内外気切替ダンパ11cの開度が1%〜99%の間にあるときには、外気導入口11aと内気導入口11bの両方が開状態となり、内気と外気の両方が温度調節部12に導入される。このインテークモードが内外気混入モードである。内外気混入モード時には、内外気切替ダンパ11cの開度によって内気と外気の導入比率が変更され、これにより、外気導入量及び内気循環量が変化する。尚、内外気混入モードを備えていなくてもよい。
図2に示すように、送風ユニット11には、送風機15が設けられている。送風機15は、シロッコファン等からなる遠心式ファン15aと、ファン15aを駆動するブロアモータ15bとを備えている。ファン15aが回転することによって内気及び外気の少なくとも一方が送風ユニット11の内部に導入された後、送風ユニット11の下流側に設けられている空調ユニット10の温度調節部12に送風される。ブロアモータ15bは、印加される電圧を変更することで単位時間当たりの回転数を調整することができるように構成されている。このブロアモータ15bの回転数によって送風量が変化するようになっている。ブロアモータ15bは、制御装置30によって制御される。送風量の変化は、多段階に行うことができるようになっている。
温度調節部12は、送風ユニット11から導入された空調用空気の温度調節を行うための部分である。温度調節部12の内部には、冷却用熱交換器16と加熱用熱交換器17とエアミックスダンパ18とが配設されている。すなわち、温度調節部12の内部には、空気流れ方向上流側に冷風通路R1が形成されており、この冷風通路R1に冷却用熱交換器16が収容され、冷風通路R1に流入した空調用空気の全量が冷却用熱交換器16を通過するようになっている。また、温度調節部12の内部において冷風通路R1よりも下流側は温風通路R2とバイパス通路R3とに分岐しており、温風通路R2には加熱用熱交換器17が収容されている。温風通路R2に流入した空調用空気の全量が加熱用熱交換器17を通過するようになっている。
冷却用熱交換器16は、例えばヒートポンプ装置の冷媒蒸発器等で構成することができるが、これに限られるものではなく、空気を冷却することができるものではあればよい。また、加熱用熱交換器17は、例えば車両のエンジンルームに搭載されているエンジン(図示せず)の冷却水が供給されるヒータコア等で構成することができるが、これに限られるものではなく、例えば電気式ヒータ等、空気を加熱することができるものではあればよい。また、電気式ヒータを補助熱源として付加することもできる。電気自動車の場合、加熱用熱交換器17に、例えば走行用電動モータやインバータ(図示せず)の冷却水を供給するようにしてもよい。
エアミックスダンパ18は、冷却用熱交換器16と加熱用熱交換器17の間に配設されており、温風通路R2の上流端とバイパス通路R3の上流端とを開閉するものである。エアミックスダンパ18は、例えば板状の部材で構成することができ、温度調節部12の側壁部に対して回動可能に支持されている。エアミックスダンパ18は、エアミックスアクチュエータ18aによって任意の回動角度となるように駆動される。エアミックスアクチュエータ18aは、制御装置30によって制御される。エアミックスダンパ18及びエアミックスアクチュエータ18aは、運転席側と助手席側とにそれぞれ設けられており、運転席配設空間Drに供給される空調風の温度と、助手席配設空間Psに供給される空調風の温度とを個別に調整することができるようになっている。運転席配設空間Drに供給される空調風の温度と、助手席配設空間Psに供給される空調風の温度とを個別に調整する構造は、従来から周知のものであることから、詳細な説明は省略する。尚、運転席配設空間Drに供給される空調風の温度と、助手席配設空間Psに供給される空調風の温度とを個別に調整しない構造であってもよい。
図2に実線で示すように、エアミックスダンパ18が温風通路R2の上流端を全閉にし、かつ、バイパス通路R3の上流端を全開にすると、冷風通路R1で生成された冷風の全量がバイパス通路R3に流入するので、吹出方向切替部13には冷風が流入する。一方、図2に仮想線で示すように、エアミックスダンパ18が温風通路R2の上流端を全開にし、かつ、バイパス通路R3の上流端を全閉にすると、冷風通路R1で生成された冷風の全量が温風通路R2に流入して加熱されるので、吹出方向切替部13には温風が流入する。
図2に実線で示す位置にあるエアミックスダンパ18の開度を0%とし、図2に仮想線で示す位置にあるエアミックスダンパ18の開度を100%とする。エアミックスダンパ18の開度が0%のときがフルコールド状態であり、また、エアミックスダンパ18の開度が100%のときがフルホット状態である。
エアミックスダンパ18が温風通路R2の上流端及びバイパス通路R3の上流端の両方を開く回動位置にあるとき(開度が1%〜99%であるとき)には、冷風及び温風が混合した状態で吹出方向切替部13に流入することになる。エアミックスダンパ18の回動位置によって吹出方向切替部13に流入する冷風量と温風量とが変更されて所望温度の調和空気(空調風)が生成される。エアミックスダンパ18の開度は、0%〜100%まで1%きざみで変更可能となっている。エアミックスダンパ18の開度の決定は制御装置30で行われ、制御装置30は決定された開度となるようにエアミックスアクチュエータ18aに信号を出力する。
尚、エアミックスダンパ18は、上記した板状のダンパに限られるものではなく、冷風量と温風量とを変更することができる構成であればその構成はどのような構成であってもよい。例えばロータリダンパやフィルムダンパ、ルーバーダンパ等、またはそれらの組み合わせであってもよい。また、温度調節の構成は上記した構成でなくてもよく、冷風量と温風量とを変更することができる構成であればよい。
吹出方向切替部13は、温度調節部12で温度調節された調和空気を車室の各部に供給するための部分である。吹出方向切替部13には、デフロスタ通路21と、運転席側ベント通路22bと、助手席側ベント通路22cと、運転席側ヒート通路24bと、助手席側ヒート通路24cと、リヤヒート通路25とが設けられており、これらデフロスタ通路21、運転席側ベント通路22b、助手席側ベント通路22c、運転席側ヒート通路24b、助手席側ヒート通路24c及びリヤヒート通路25は、それぞれ、ダクト等の内部に形成することができる。デフロスタ通路21、運転席側ベント通路22b、助手席側ベント通路22c、運転席側ヒート通路24b、助手席側ヒート通路24c及びリヤヒート通路25の上流端は、温度調節部12の内部において加熱用熱交換器17よりも下流側に連通している。よって、デフロスタ通路21、運転席側ベント通路22b、助手席側ベント通路22c、運転席側ヒート通路24b、助手席側ヒート通路24c及びリヤヒート通路25には、温度調節部12で生成された空調風が流入可能になっている。
デフロスタ通路21の下流端は、空調風が吹き出すデフロスタ吹出口(図8におけるデフロスタ)21bとされている。デフロスタ吹出口21bは、図1等に示すように、インストルメントパネルIPの前端部近傍において車幅方向に長く開口している。デフロスタ吹出口21bとフロントウインドガラス(図示せず)とは上下方向に対向する位置関係とされている。従って、デフロスタ吹出口21bから吹き出した空調風は、フロントウインドガラスの内面に向けて流れることになる。
図3に示すように、運転席側ベント通路22bは、空調ユニット10の左右方向中央部(車室の左右方向中央部)よりも右側から車室の右側空間、即ち運転席配設空間Drの右端部近傍まで延びている。図1にも示すように、運転席側ベント通路22bの左側には、運転席側センターベント吹出口(図8におけるセンターベント Dr)22dが開口しており、運転席側ベント通路22bの右端部には、運転席側サイドベント吹出口(図8におけるサイドベント Dr)22eが開口している。運転席側センターベント吹出口22d及び運転席側サイドベント吹出口22eは、それぞれ運転席配設空間Drに設けられていることから、車室の運転席に対応して設けられた運転席側吹出口となる。運転席側センターベント吹出口22d及び運転席側サイドベント吹出口22eから吹き出した空調風は、運転席配設空間Drに向けて流れ、主に運転席乗員の上半身に供給される。
図3に示すように、助手席側ベント通路22cは、空調ユニット10の左右方向中央部(車室の左右方向中央部)よりも左側から車室の左側空間、即ち助手席配設空間Psの左端部近傍まで延びている。図1にも示すように、助手席側ベント通路22cの右側には、助手席側センターベント吹出口(図8におけるセンターベント Ps)22fが開口しており、助手席側ベント通路22cの左端部には、助手席側サイドベント吹出口(図8におけるサイドベント Ps)22gが開口している。助手席側センターベント吹出口22f及び助手席側サイドベント吹出口22gは、それぞれ助手席配設空間Psに設けられていることから、車室の運転席以外の座席に対応して設けられた非運転席側吹出口となる。助手席側センターベント吹出口22f及び助手席側サイドベント吹出口22gから吹き出した空調風は、助手席配設空間Psに向けて流れ、主に助手席乗員の上半身に供給される。
運転席側ヒート通路24bは、運転席乗員の足元近傍まで延びている。運転席側ヒート通路24bの下流端部には、運転席側ヒート吹出口(図8におけるフロントヒート Dr)24dが開口している。運転席側ヒート吹出口24dから吹き出した空調風は、運転席乗員の足元近傍に供給される。運転席側ヒート吹出口24dは、運転席配設空間Drに設けられていることから、車室の運転席に対応して設けられた運転席側吹出口となる。
助手席側ヒート通路24cは、助手席乗員の足元近傍まで延びている。助手席側ヒート通路24cの下流端部には、助手席側ヒート吹出口(図8におけるフロントヒート Ps)24eが開口している。助手席側ヒート吹出口24eから吹き出した空調風は、助手席乗員の足元近傍に供給される。助手席側ヒート吹出口24eは、助手席配設空間Psに設けられていることから、車室の運転席以外の座席に対応して設けられた非運転席側吹出口となる。助手席側ヒート吹出口24eは、一般的に空調ユニット10の内気導入口11b近傍に位置する吹出口である。
リヤヒート通路25は、後席乗員の足元近傍まで延びている。リヤヒート通路25の下流端部には、後席ヒート吹出口(図8におけるリヤヒート)25aが開口している。後席ヒート吹出口25aから吹き出した空調風は、後席乗員の足元近傍に供給される。後席ヒート吹出口25aは、後席配設空間に設けられていることから、車室の運転席以外の座席に対応して設けられた非運転席側吹出口となる。
図2に示すように、吹出方向切替部13には、デフロスタダンパ21aと、ベントダンパ22aと、ヒートダンパ24aとが設けられている。デフロスタダンパ21aは、デフロスタ通路21、即ち、デフロスタ吹出口21bを開閉するためのダンパであり、デフロスタ吹出口21bを全開した状態(実線で示す)から全閉した状態(仮想線で示す)の任意の位置で停止させることができる。ベントダンパ22aは、運転席側ベント通路22b及び助手席側ベント通路22c、即ち、運転席側センターベント吹出口22d、運転席側サイドベント吹出口22e、助手席側センターベント吹出口22f及び助手席側サイドベント吹出口22gを開閉するためのダンパであり、運転席側センターベント吹出口22d、運転席側サイドベント吹出口22e、助手席側センターベント吹出口22f及び助手席側サイドベント吹出口22gを全閉した状態(実線で示す)から全開した状態(仮想線で示す)の任意の位置で停止させることができる。
ヒートダンパ24aは、運転席側ヒート通路24b、助手席側ヒート通路24c及びリヤヒート通路25、即ち、運転席側ヒート吹出口24d、助手席側ヒート吹出口24e及び後席ヒート吹出口25aを開閉するためのダンパであり、運転席側ヒート吹出口24d、助手席側ヒート吹出口24e及び後席ヒート吹出口25aを全閉した状態(実線で示す)から全開した状態(仮想線で示す)の任意の位置で停止させることができる。
デフロスタダンパ21a、ベントダンパ22a及びヒートダンパ24aは、吹出方向切替アクチュエータ27によって駆動されて開閉動作する。吹出方向切替アクチュエータ2は、制御装置30によって制御される。デフロスタダンパ21a、ベントダンパ22a及びヒートダンパ24aは、図示しないがリンクを介して連動するようになっている。例えば、デフロスタダンパ21aが開状態で、ベントダンパ22a及びヒートダンパ24aが閉状態となるデフロスタモード、デフロスタダンパ21a及びヒートダンパ24aが閉状態で、ベントダンパ22aが開状態となるベントモード、デフロスタダンパ21a及びベントダンパ22aが閉状態で、ヒートダンパ24aが開状態となるヒートモード、デフロスタダンパ21a及びヒートダンパ24aが開状態で、ベントダンパ22aが閉状態となるデフヒートモード、ベントダンパ22a及びヒートダンパ24aが開状態で、デフロスタダンパ21aが閉状態となるバイレベルモード等の複数の吹出モードの内、任意の吹出モードに切り替えられる。デフロスタダンパ21a、ベントダンパ22a及びヒートダンパ24aは、リンクを介して連動させることなく、図示しないが、複数の吹出方向切替アクチュエータによって個別に動作させることによって吹出モードを切り替えるようにしてもよい。
吹出方向切替部13には、ベント風量調整部(風量調整手段)50と、ヒート風量調整部(風量調整手段)51とが設けられている。ベント風量調整部50は、非運転席側吹出口である助手席側センターベント吹出口22f及び助手席側サイドベント吹出口22gから吹き出す空調風量を調整するためのものであり、ベント風量調整アクチュエータ50aと、ベント風量調整アクチュエータ50aによって駆動される助手席ベント風量調整ダンパ50bとを備えている。助手席ベント風量調整ダンパ50bは、助手席側ベント通路22c、即ち助手席側センターベント吹出口22f及び助手席側サイドベント吹出口22gを開閉するためのダンパであり、助手席側センターベント吹出口22f及び助手席側サイドベント吹出口22gを全開した状態から全閉した状態の任意の位置で停止させることができる。ベント風量調整アクチュエータ50aは、制御装置30によって制御されて助手席ベント風量調整ダンパ50bを任意の位置で停止させることができる。
ヒート風量調整部51は、非運転席側吹出口である助手席側ヒート通路24c及びリヤヒート通路25から吹き出す空調風量を調整するためのものであり、ヒート風量調整アクチュエータ51aと、ヒート風量調整アクチュエータ51aによって駆動される助手席ヒート風量調整ダンパ51b及び後席ヒート風量調整ダンパ51cとを備えている。助手席ヒート風量調整ダンパ51bは、助手席側ヒート通路24c、即ち、助手席側ヒート吹出口24eを開閉するためのダンパであり、助手席側ヒート吹出口24eを全開した状態から全閉した状態の任意の位置で停止させることができる。後席ヒート風量調整ダンパ51cは、リヤヒート通路25、即ち、後席ヒート吹出口25aを開閉するためのダンパであり、後席ヒート吹出口25aを全開した状態から全閉した状態の任意の位置で停止させることができる。ヒート風量調整アクチュエータ51aは、制御装置30によって制御されて助手席ヒート風量調整ダンパ51b及び後席ヒート風量調整ダンパ51cを任意の位置で停止させることができる。
図4に示すように、車両用空調装置1は、外気温度センサ(外気温度検出手段)31、内気温度センサ(車室内温度検出センサ)32、日射量センサ(日射量検出手段)33、冷却水温センサ34、エバポレータセンサ35、フロントウインド近傍温湿度センサ(窓曇りセンサ)37、温度設定スイッチ40、Dr優先スイッチ41、吹出モード切替スイッチ42と、内外気切替スイッチ43及び風量調整スイッチ44を備えている。これらセンサ31〜35、37は制御装置30に接続され、制御装置30へ信号を出力している。また、スイッチ40〜44も制御装置30に接続され、制御装置30は、各スイッチ40〜44の動作状態を検出している。各スイッチ40〜44は、例えばインストルメントパネルIPに配設されている。
外気温度センサ31は、例えば車室外において車両前部や側部等に配設されており、車両の周囲の空気温度(外気温度)を検出するものである。内気温度センサ32は、例えば車室内においてインストルメントパネルIPの近傍等に配設されており、車室内の空気温度(内気温度)を検出するものである。日射量センサ33は、例えば車室内においてインストルメントパネルIPの近傍等に配設されており、車室に照射される日射量を検出するものである。
内気温度センサ32、外気温度センサ31及び日射量センサ33は、乗員が感じる冷熱に関連する情報を検出することができるものである。すなわち、内気温度センサ32から出力される内気温度は、乗員の雰囲気温度と略等しい温度であり、内気温度が高いということは乗員が暑いと感じ、内気温度が低いということは乗員が寒いと感じる。また、外気温度センサ31から出力される外気温度が高いと乗員が暑いと感じ、外気温度が低いと乗員が寒いと感じる。さらに、日射量センサ33から出力される日射量が多いと乗員が暑いと感じ、日射量が少ないと乗員が寒いと感じる。
冷却水温センサ34は、車両に搭載されているエンジンの冷却水の温度(エンジン水温)を検出するエンジン水温検出手段である。この冷却水温センサ34により、加熱用熱交換器17に流入するエンジンの冷却水の温度、即ち、暖房用温水の温度を推定することができる。また、冷却水温センサ34により、エンジンの暖機状態を推定することができるとともに、暖房熱源の温度を得ることができる。エバポレータセンサ35は、冷却用熱交換器16の空気流れ方向下流側に配設されており、冷却用熱交換器16の表面温度を検出するものである。
フロントウインド近傍温湿度センサ37は、フロントウインドガラスの車室内面に密着して取り付けられ、フロントウインドガラス表面温度を検出する温度センサと、フロントウインドガラスの車室内面から離れ、かつ、該内面近傍に配設されており、フロントウインドガラスの車室内面近傍の温度を検出する温度センサ(図示せず)及びフロントウインドガラスの車室内面近傍の湿度を検出する湿度センサ(図示せず)を備えたものである。温度センサ及び湿度センサは基板(図示せず)に実装されている。このフロントウインド近傍温湿度センサ37は、例えば樹脂材等からなるカバー(図示せず)によって覆われている。
フロントウインド近傍温湿度センサ37により、フロントウインドの曇りやすさを検出することができる。すなわち、露点温度は、フロントウインド近傍温湿度センサ37から出力されるフロントウインドガラスの車室内面近傍の温度と、フロントウインド近傍温湿度センサ37から出力されるフロントウインドガラスの車室内面近傍の湿度とに基づいて得られる。露点温度は、イグニッションスイッチがOFF状態からONされた時、及びその後、継続して計算される。計算された値は、制御装置30の記憶領域に一旦記憶させておくことができる。
温度設定スイッチ40は、乗員による車室内温度の設定を受け付ける車室内温度設定部であり、運転席側の温度設定スイッチ40と、助手席側の温度設定スイッチ40とを有している。運転席側の温度設定スイッチ40は、運転席配設空間Drに供給される空調風の温度を設定するためのスイッチであり、主に運転席乗員が操作する。助手席側の温度設定スイッチ40は、助手席配設空間Psに供給される空調風の温度を設定するためのスイッチであり、主に助手席乗員が操作する。運転席側の温度設定スイッチ40は、車室の運転席の空調状態を乗員が調整するための空調調整部であり、助手席側の温度設定スイッチ40は、車室の運転席以外の座席の空調状態を乗員が調整するための空調調整部である。
Dr優先スイッチ41は、運転席のみを空調する運転席優先空調モードへ切り替えるためのスイッチであり、乗員による運転席優先空調モードへの切替を受け付ける空調モード切替部となる。Dr優先スイッチ41を操作することで、通常空調モードから運転席優先空調モードへの切替が可能になる。運転席優先空調モードから通常空調モードに戻す場合には、Dr優先スイッチ41を再度操作するか、別のキャンセルスイッチ(図示せず)を設けておき、このキャンセルスイッチを操作するようにしてもよい。通常空調モード及び運転席優先空調モードについては後述する。
吹出モード切替スイッチ42は、乗員が吹出モードを切り替えるためのスイッチであり、デフロスタモード、ベントモード、ヒートモード、デフヒートモード、バイレベルモードのうち、1つのモードを選択するためのスイッチである。制御装置30は、吹出モード切替スイッチ42により選択された吹出モードとなるように、吹出方向切替アクチュエータ27を制御する。これにより、乗員が望む吹出モードに切り替えられる。
内外気切替スイッチ43は、乗員がインテークモードを切り替えるためのスイッチであり、内気循環モード、外気導入モード及び内外気混入モードのうち、1つのモードを選択するためのスイッチである。制御装置30は、内外気切替スイッチ43により選択されたインテークモードとなるように、内外気切替アクチュエータ11dを制御する。これにより、乗員が望むインテークモードに切り替えられる。尚、インテークモードの切替は、内気循環モードと外気導入モードとのうちの一方に切り替えるようにしてもよい。
風量調整スイッチ44は、乗員が空調風量を設定するためのスイッチであり、空調風量を小風量から大風量まで多段階で設定可能となっている。制御装置30は、風量調整スイッチ44により設定された風量となるように、ブロアモータ15bを制御する。
尚、図示しないが、その他にも、例えば、空調装置1のON/OFFの切替スイッチ、オートエアコン制御とするか否かを選択するオートスイッチ等が設けられている。
制御装置30は、上記センサ31〜35、37から出力される信号(出力値)と、各スイッチ40〜44の操作状態とに基づいて、内外気切替アクチュエータ11d、エアミックスアクチュエータ18a、吹出方向切替アクチュエータ27、ブロアモータ15b、ベント風量調整アクチュエータ50a及びヒート風量調整アクチュエータ51aを制御する。
すなわち、図示しないオートスイッチによってオートエアコン制御が選択された場合には、車室外の温度、車室内の温度、日射量、エンジン冷却水温度、冷却用熱交換器16の表面温度、設定温度等に基づいて、車室内に供給する調和空気の目標吹出温度を決定するとともに、この目標吹出温度となるようにエアミックスダンパ18の開度を演算し、エアミックスダンパ18がこの開度となるようにエアミックスアクチュエータ18aを制御してエアミックスダンパ18を回動させる。これにより、調和空気の温度が目標吹出温度となる。つまり、空調ユニット10は、内気温度センサ32で検出された温度が、温度設定スイッチ40で受け付けられた設定温度となるように空調風を生成する。
また、制御装置30は、冷房時には吹出モードが主にベントモードとなるように吹出方向切替アクチュエータ27を制御し、暖房時には吹出モードが主にデフロスタモードやヒートモードとなるように吹出方向切替アクチュエータ27を制御する。また、冷房時や暖房時であっても弱めの場合には、バイレベルモードとなるように吹出方向切替アクチュエータ27を制御する。
例えば冬季に長時間放置された車両で暖房を行う場合や、夏季で長時間放置された車両で冷房を行う場合には、目標吹出温度と内気温度との差が大きくなる。このような場合には、制御装置30は、風量が多くなるようにブロアモータ15bを制御するが、乗員が風量切替スイッチを操作して好みの風量にすることもできるようになっている。また、オートエアコン制御では、目標吹出温度と内気温度との差が小さくなるにつれて風量が少なくなるようにブロアモータ15bを制御する。ブロアモータ15bの制御は印加電圧の変更によって行われるが、これに限られるものではなく、ブロアモータ15bの回転数を変更できればよい。また、目標吹出温度と内気温度との差が小さくなるにつれてエアミックスダンパ18の開度も変更される。
制御装置30によるブロアモータ15bの制御及び吹出モードの切替制御によって乗員の上半身への送風量を検出することができる。すなわち、吹出モードがベントモードである場合には、主に乗員の上半身へ調和空気が送風されることになり、このベントモード時におけるブロアモータ15bへの印加電圧を検出することで乗員の上半身への送風量を検出することができる。また、ヒートモード時には、ベントモード時に比べて全体的に乗員の上半身への送風量が少なくなり、このことも制御装置30によって検出できる。
(通常空調モード)
通常空調モードは、Dr優先スイッチ41によって運転席優先空調モードへの切替が行われていない場合に選択される空調モードである。この通常空調モードでは、ベント風量調整部50の助手席ベント風量調整ダンパ50bが、助手席側センターベント吹出口22f及び助手席側サイドベント吹出口22gを全開した状態となるように、制御装置30がベント風量調整アクチュエータ50aを制御する。さらに、ヒート風量調整部51の助手席ヒート風量調整ダンパ51bが助手席側ヒート吹出口24eを全開にし、後席ヒート風量調整ダンパ51cが後席ヒート吹出口25aを全開した状態となるように、制御装置30がヒート風量調整アクチュエータ51aを制御する。
(運転席優先空調モード)
運転席優先空調モードは、乗員によるDr優先スイッチ41の操作によって運転席優先空調モードへの切替が行われ、かつ、後述する所定の条件を満たした場合に実行される空調モードである。Dr優先スイッチ41の操作によって運転席優先空調モードへの切替が行われたことは、制御装置30が受け付ける。制御装置30が運転席優先空調モードへの切替を受け付けた場合、内気温度センサ32で検出された温度と、設定温度との差が第1閾値以下である車室内温度安定期に、運転席優先空調モードとなるように、ベント風量調整部50及びヒート風量調整部51を制御する。一方、内気温度センサ32で検出された温度と、設定温度との差が前記第1閾値を超えるときには、制御装置30が運転席優先空調モードへの切替を禁止する。第1閾値とは、例えば5℃とすることができ、3℃〜7℃の範囲内で設定するのが好ましいが、これは車室内の温度が安定しているか否かを判定可能な値にすればよく、特に限定されるものではない。
この運転席優先空調モードでは、通常空調モードに比べて助手席側センターベント吹出口22f及び助手席側サイドベント吹出口22gから吹き出す空調風量が少なくなり、また、助手席側ヒート吹出口24e及び後席ヒート吹出口25aから吹き出す空調風量が少なくなる空調モードである。具体的には、助手席ベント風量調整ダンパ50bが、助手席側センターベント吹出口22f及び助手席側サイドベント吹出口22gを全閉ないし全開状態から閉じた状態となるように、制御装置30がベント風量調整アクチュエータ50aを制御する。さらに、ヒート風量調整部51の助手席ヒート風量調整ダンパ51bが助手席側ヒート吹出口24eを全閉ないし全開状態から閉じた状態となるように、また、後席ヒート風量調整ダンパ51cが後席ヒート吹出口25aを全閉ないし全開状態から閉じた状態となるように、制御装置30がヒート風量調整アクチュエータ51aを制御する。
この実施形態では、制御装置30が、ベント風量調整部50及びヒート風量調整部51を制御することにより、運転席側吹出口及び非運転席側吹出口から空調風が吹き出す通常空調モードと、通常空調モードに比べて非運転席側吹出口から吹き出す空調風量が少なくなる運転席優先空調モードとに切り替えることができる。
また、制御装置30は、運転席優先空調モードへの切替を受け付けた場合、内気温度センサ32で検出された温度と、設定温度との差が第1閾値を超え、第1閾値よりも大きな第2閾値以下であるときに、運転席優先空調モードに比べて非運転席側吹出口から吹き出す空調風量が多くなる弱優先空調モードとなるように、ベント風量調整部50及びヒート風量調整部51を制御する。弱優先空調モードでは、非運転席側吹出口から吹き出す空調風量は、通常空調モード時に非運転席側吹出口から吹き出す空調風量に比べて少なくなるようにする。一方、内気温度センサ32で検出された温度と、設定温度との差が前記第2閾値を超えるときには、制御装置30が弱優先空調モードへの切替を禁止する。第2閾値とは、例えば10℃とすることができ、8℃〜12℃の範囲内で設定するのが好ましい。
また、制御装置30は、車室内の冷房時に運転席優先空調モードとした場合、空調風の温度を通常空調モードに比べて低下させるように構成されている。すなわち、制御装置30は、冷房時、通常空調モードにおける空調風の目標温度を演算し、演算した目標温度となるようにエアミックスアクチュエータ18aを制御するが、このとき、運転席優先空調モードへ切り替えられると、通常空調モードにおける空調風の目標温度を一旦演算し、この温度よりも低い目標温度となるように目標温度を補正し、補正した目標温度となるようにエアミックスアクチュエータ18aを制御する。これにより、空調風の温度が通常空調モードに比べて低下する。
また、制御装置30は、車室内の暖房時に運転席優先空調モードとした場合、空調風の温度を通常空調モードに比べて上昇させるように構成されている。すなわち、制御装置30は、暖房時、通常空調モードにおける空調風の目標温度を演算し、演算した目標温度となるようにエアミックスアクチュエータ18aを制御するが、このとき、運転席優先空調モードへ切り替えられると、通常空調モードにおける空調風の目標温度を一旦演算し、この温度よりも高い目標温度となるように目標温度を補正し、補正した目標温度となるようにエアミックスアクチュエータ18aを制御する。これにより、空調風の温度が通常空調モードに比べて上昇する。
また、制御装置30は、運転席優先空調モード時に、空調風量を通常空調モードに比べて多くするように構成されている。すなわち、制御装置30は、暖房時及び冷房時の両方で、通常空調モードにおける空調風の目標風量を演算し、演算した目標風量となるようにブロアモータ15bを制御するが、このとき、運転席優先空調モードへ切り替えられると、通常空調モードにおける空調風の目標風量を一旦演算し、この風量よりも多い目標風量となるように目標風量を補正し、補正した目標風量となるようにブロアモータ15bを制御する。これにより、空調風量が通常空調モードに比べて多くなる。運転席優先空調モード時の目標風量は、インテークモードや吹出モードに応じて変えることもできる。
また、制御装置30は、空調ユニット10のインテークモードを検出可能に構成されている。すなわち、制御装置30は、空調ユニット10のインテークモードが外気導入モードであるか否かを検出し、運転席優先空調モード時に外気導入モードではないことを検出すると、空調ユニット10の内気導入口11b近傍に位置する吹出口(助手席側ヒート吹出口24e)を開放するように構成されている。
また、制御装置30は、暖房時、冷却水温センサ34で検出されたエンジン冷却水の温度が第1の所定温度以上である場合には、運転席優先空調モードへの切替を禁止するように構成されている。前記第1の所定温度とは、例えばエンジンの暖機が完了した後の温度とすることができ、具体的には、85℃〜95℃の範囲で設定することができる。エンジン冷却水の温度が第1の所定温度以上ということは、ラジエータで放熱している温度であり、暖房エネルギを削減してもラジエータの放熱量が増えるだけで、省エネルギ効果は見込まれないので、運転席優先空調モードへの切替を禁止することで、乗員の快適性を向上できる。
また、制御装置30は、暖房時、冷却水温センサ34で検出されたエンジン冷却水の温度が前記第1の所定温度よりも低い第2の所定温度以下である場合には、運転席優先空調モードへの切替を禁止するように構成されている。第2の所定温度は、例えば、エンジンの暖機が完了する前の温度とすることができ、25〜35℃の範囲で設定することができる。冷却水温センサ34で検出されたエンジン冷却水の温度が第2の所定温度以下ということは、暖機が完了する前であり、この場合には、暖房時の車室内が暖まっておらず、過渡期にあると推定できる。この場合に、運転席優先空調モードへの切替を受け付けたとしても、運転席優先空調モードへの切替を禁止することで、乗員の快適性を向上できる。
また、制御装置30は、運転席優先空調モード時に助手席側の温度設定スイッチ40が操作されたか否かを検出し、運転席優先空調モード時に助手席側の温度設定スイッチ40が操作されたことを検出すると、通常空調モードに切り替えるように構成されている。すなわち、運転席以外の座席の空調状態を乗員が調整したということは、運転席以外の座席で空調が望まれているということであり、この場合に通常空調モードに切り替えることで、運転席以外の座席も空調することができる。あるいは、操作された席だけ通常空調を行うことができる。これにより、所望の空調状態にすることができる。
また、制御装置30は、温度設定スイッチ40で受け付けられた設定温度が最高温度または最低温度とされたことを検出すると、運転席優先空調モードへの切替を禁止するように構成されている。最高温度は、温度設定スイッチ40で調整可能な最も高い温度であり、例えば30℃、32℃とすることができる。最低温度は、温度設定スイッチ40で調整可能な最も低い温度であり、例えば18℃、16℃とすることができる。すなわち、乗員が設定温度を最高温度や最低温度にするということは、現在の空調状態に満足できない場合であり、この場合に、運転席優先空調モードへの切替を受け付けたとしても、運転席優先空調モードへの切替を禁止することで、車室の全体を空調することができ、早期に所望の空調状態にすることができる。
また、制御装置30は、温度設定スイッチ40で受け付けられた設定温度が最高温度または最低温度とされたことを検出した場合で、かつ、内気温度センサ32で検出された温度が所定温度に到達した場合には、運転席優先空調モードへの切替を許可するように構成されている。すなわち、温度設定スイッチ40で受け付けられた設定温度が最高温度または最低温度とされていても、時間の経過とともに車室内の温度が設定温度に近づいていき、所定温度に到達することがある。この場合は、運転席優先空調モードへの切替を許可することで、省エネルギ性が高まる。この所定温度とは、内気温度センサ32で検出された温度と設定温度との差が、例えば3℃〜7℃程度となる温度とすることができる。
また、制御装置30は、外気温度センサ31で検出された外気温度に応じて前記所定温度を変化させるように構成されている。例えば、外気温度が低いほど前記所定温度を高めることや低めることができ、また、外気温度が高いほど前記所定温度を高めることや低めることができる。これは車室の温度状態に応じて変化させることができる。
また、制御装置30は、フロントウインド近傍温湿度センサ37により検出された窓の曇りやすさに関する値が第1の所定値を超えたことを検出し、かつ、空調ユニット10の吹出モードがベントモード、バイレベルモード及びヒートモードのいずれかであることを検出すると、運転席優先空調モードへの切替を禁止するように構成されている。
また、制御装置30は、フロントウインド近傍温湿度センサ37により検出された窓の曇りやすさに関する値が第2の所定値を超えたことを検出し、かつ、前記空調ユニットの吹出モードがデフヒートモード及びデフロスタモードのいずれかであることを検出すると、運転席優先空調モードへの切替を禁止するように構成されている。第2の閾値は、第1の閾値よりも高くすることができる。
また、制御装置30は、空調ユニット10の吹出モードがデフヒートモード及びデフロスタモードのいずれかであることを検出すると、空調風の温度を通常空調モードの場合と同じ温度とするように構成されている。すなわち、制御装置30は、通常空調モードにおける空調風の目標温度を演算し、演算した目標温度となるようにエアミックスアクチュエータ18aを制御するが、デフヒートモード及びデフロスタモードのいずれかである場合には、運転席優先空調モードへ切り替えられたとしても、通常空調モードにおける空調風の目標温度となるようにエアミックスアクチュエータ18aを制御する。尚、前記吹出モードに応じた制御は省略してもよい。
(制御装置1による制御)
次に、図5に示すフローチャートに基づいて制御装置1の具体的な制御内容について説明する。ステップS1では、乗員による運転席優先空調モードへの切替を受け付けたか否かについて判定する。ステップS1でNOと判定された場合には、乗員による運転席優先空調モードへの切替が受け付けられていないので、ステップS2に進み、通常空調モードでの空調が行われる。
乗員による運転席優先空調モードへの切替を受け付けた場合には、ステップS1でYESと判定されてステップS3に進む。ステップS3では、曇り判定を行う。曇り判定は、フロントウインド近傍温湿度センサ37により検出された窓の曇りやすさに関する値に基づいて行われ、この値が第1の所定値(ベント、バイレベル、ヒート)及び第2の所定値(デフヒート、デフロスタ)を超えたことを検出した場合には、フロントウインドが曇り易い状況にあると推定できるので、運転席優先空調モードへの切替を禁止する。従って、ステップS3でYESと判定されてステップS2に進み、通常空調モードでの空調が行われる。これにより、フロントウインドの曇りが抑制される。
曇り判定の具体的な手法を図6及び図7に基づいて説明する。図6に示す縦軸の「禁止」は、運転席優先空調モードへの切替を禁止することであり、「許可」は、運転席優先空調モードへの切替を許可することである。図6に示す横軸の「SL」と「SH」は、ΔTdewである。ΔTdewは、目標露点温度から現在の露点温度を差し引くことによって得られる値である。目標露点温度及び現在の露点温度は周知の計算方法によって取得することができる。
「SL」と「SH」の具体的な値は、それぞれ図7に示している。吹出モードがベントモード、バイレベルモード、ヒートモードであれば、SLを2〜7、SHを8〜12とすることができる。吹出モードがデフヒートモード、デフロスタモードであれば、SLを8〜12、SHを12〜17とすることができる。
ステップS3で運転席優先空調モードへの切替が許可されると、NOと判定されてステップS6に進む。ステップS6では、空調要求度が高いか否かを判定する。例えば、温度設定スイッチ40で受け付けられた設定温度が最高温度または最低温度とされている場合には空調要求度が高いと判定することができ、また、風量調整スイッチ44で受け付けられた設定風量が多い場合も空調要求度が高いと判定することができる。
ステップS6でYESと判定されて空調要求度が高い場合には、ステップS7に進み、内気判定を行う。内気判定は、内気温度センサ32で検出された温度と、設定温度とに基づいて行うことができる。内気温度センサ32で検出された温度が設定温度に近づいていき、前記所定温度に到達した場合には、運転席優先空調モードへの切替を許可し、一方、前記所定温度に到達していない場合には、運転席優先空調モードへの切替を禁止する。ステップS7でYESと判定されて運転席優先空調モードへの切替を禁止する場合には、ステップS2に進み、通常空調モードでの空調が行われる。ステップS7でNOと判定されて運転席優先空調モードへの切替を許可する場合には、ステップS8に進む。また、空調要求度が低い場合も、ステップS6でNOと判定されてステップS8に進む。
ステップS8では、操作判定を行う。操作判定は、助手席側の温度設定スイッチ40の操作の有無の検出に基づいて行うことができる。助手席側の温度設定スイッチ40が操作されたことを検出すると運転席優先空調モードへの切替を禁止し、助手席側の温度設定スイッチ40が操作されていない場合には運転席優先空調モードへの切替を許可する。ステップS8でYESと判定されて運転席優先空調モードへの切替を禁止する場合には、ステップS2に進み、通常空調モードでの空調が行われる。ステップS8でNOと判定されて運転席優先空調モードへの切替を許可する場合には、ステップS9に進む。
ステップS9では、水温判定を行う。水温判定は、冷却水温センサ34で検出された温度に基づいて行うことができる。冷却水温センサ34で検出された温度が、エンジンの暖機完了前の温度である場合には、運転席優先空調モードへの切替を禁止し、エンジンの暖機完了後の温度である場合には、運転席優先空調モードへの切替を許可する。また、エンジンの暖機完了後で、かつ、ラジエータでの放熱が行われている温度である場合には、運転席優先空調モードへの切替を禁止する。
ステップS9でYESと判定されて運転席優先空調モードへの切替を禁止する場合には、ステップS2に進み、通常空調モードでの空調が行われる。ステップS9でNOと判定されて運転席優先空調モードへの切替を許可する場合には、ステップS10に進む。
ステップS10では、内気判定を行う。内気判定は、内気温度センサ32で検出された温度と、設定温度とに基づいて行うことができる。内気温度センサ32で検出された温度と、設定温度との差が第2閾値を超えている場合には、空調状態が過渡期にあると推定できるので、ステップS2に進み、通常空調モードでの空調が行われる。つまり、運転席優先空調モードへの切替が禁止される。一方、内気温度センサ32で検出された温度と、設定温度との差が第2閾値以下である場合には、ステップS14に進む。
ステップS14では、再び内気判定を行う。ステップS14における内気判定も、内気温度センサ32で検出された温度と、設定温度とに基づいて行うことができる。内気温度センサ32で検出された温度と、設定温度との差が第1閾値を超えている場合には、ステップS21に進み、一方、内気温度センサ32で検出された温度と、設定温度との差が第1閾値以下である場合には、ステップS4に進む。
ステップS21では、空調ユニット10の吹出モードを判定する。空調ユニット10の吹出モードがデフロスタモードか、デフヒートモードである場合には、YESと判定されてステップS2に進む。ステップS21でNOと判定されて、空調ユニット10の吹出モードがデフロスタモード及びデフヒートモード以外である場合には、ステップS15に進む。ステップS15では、空調ユニット10のインテークモードを判定する。インテークモードが外気導入モードである場合には、ステップS15でYESと判定されてステップS16に進み、過渡期用外気導入時運転席優先空調モードでの空調が行われる。ステップS15でNOと判定されて外気導入モード以外のインテークモードである場合には、ステップS17に進み、過渡期用内気循環時運転席優先空調モードでの空調が行われる。
ステップS14でNOと判定された場合には、ステップS4に進む。ステップS4では、空調ユニット10の吹出モードを判定する。空調ユニット10の吹出モードがデフロスタモードか、デフヒートモードである場合には、YESと判定されてステップS11に進む。ステップS4でNOと判定されて、空調ユニット10の吹出モードがデフロスタモード及びデフヒートモード以外である場合には、ステップS18に進む。
ステップS11では、空調ユニット10のインテークモードを判定する。インテークモードが外気導入モードである場合には、ステップS11でYESと判定されてステップS12に進み、デフロスタ用外気導入時運転席優先空調モードでの空調が行われる。ステップS11でNOと判定されて外気導入モード以外のインテークモードである場合には、ステップS13に進み、デフロスタ用内気循環時運転席優先空調モードでの空調が行われる。
ステップS4でNOと判定されて進んだステップS18では、空調ユニット10のインテークモードを判定する。インテークモードが外気導入モードである場合には、ステップS18でYESと判定されてステップS19に進み、安定期用外気導入時運転席優先空調モードでの空調が行われる。ステップS18でNOと判定されて外気導入モード以外のインテークモードである場合には、ステップS20に進み、安定期用内気循環時運転席優先空調モードでの空調が行われる。
この実施形態では、運転席優先モードとして、デフロスタ用外気導入時運転席優先空調モード、デフロスタ用内気循環時運転席優先空調モード、過渡期用外気導入時運転席優先空調モード、過渡期用内気循環時運転席優先空調モード、安定期用外気導入時運転席優先空調モード及び安定期用内気循環時運転席優先空調モードがある。これらのうち、内気循環時の運転席優先空調モードは、外気導入時の運転席優先空調モードに比べて空調風量が多くなるようにブロアモータ15bを制御する。デフロスタ用外気導入時運転席優先空調モード及びデフロスタ用内気循環時運転席優先空調モードは、他の運転席優先空調モードに比べて風量が多くなるようにブロアモータ15bを制御したり、空調風の温度が高くなるようにエアミックスアクチュエータ18aを制御する。
過渡期用外気導入時運転席優先空調モード及び過渡期用内気循環時運転席優先空調モードでは、安定期用外気導入時運転席優先空調モード及び安定期用内気循環時運転席優先空調モードに比べて、風量が多くなるようにブロアモータ15bを制御することができ、また、非運転席側吹出口から吹き出す空調風量が多くなるようにベント風量調整部50及びヒート風量調整部51を制御することができる。
また、図8に一例を示すように、吹出モード、インテークモードに応じて各吹出口の開閉を制御することができる。この図に示す「○」は開、「−」は閉であるが、中間開度とすることもできる。また、図8に示す開閉パターン以外のパターンとすることもできる。図8の「リヤベント」は、図示しないが後席用ベント吹出口のことであり、これは省略してもよい。
図9は、運転席優先空調モードへの移行率の一例を示す図である。ΔTtrgは、以下の式によって求めることができる。
ΔTtrg=√(Ttrg−Tr)2
Ttrgは目標温度(℃)
Trは車室内温度(℃)
目標温度Ttrgに対して車室内温度Trが5〜10℃離れている場合は、運転席優先空調モードへ完全に移行することなく、運転席優先空調モードに少しだけ移行するように制御する。
図10は、吹出モード切替ダンパ(デフロスタダンパ21aと、ベントダンパ22aと、ヒートダンパ24a)の開度の移行率制御を行う場合のグラフである。図10に示すグラフの横軸は図9に示すグラフの横軸と同じである。図11に薄墨で塗りつぶしている枠内の開度を、図10に示すグラフに基づいて移行制御する。
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態に係る車両用空調装置1によれば、運転席及び運転席以外の座席に乗員が存在している場合には、通常空調モードとすることで、運転席側吹出口及び非運転席側吹出口から空調風が吹き出すので、全ての座席の乗員の快適性が高まる。一方、運転席のみに乗員が存在している場合には、運転席優先空調モードとすることで、乗員が存在しない座席への空調風の供給量が通常空調モードに比べて少なくなるので、省エネルギ化が図られる。
また、車室内の温度と、設定温度との差が第1閾値以下である場合には、過渡期を過ぎて車室内の温度が安定した車室内温度安定期にあると推定することができ、この場合は、内装材による温冷熱の輻射が弱まっているので、運転席優先空調モードとなるように制御したとしても、運転席乗員の快適性の悪化を抑制できる。これにより、運転席優先空調モードが選択される機会を増やすことができ、燃費の向上を図ることができる。
また、運転席優先空調モード時、内気導入口11bから車室内の空気を導入するときに、内気導入口11b近傍の吹出口24eから空調風が吹き出すので、温度調節された空気が内気導入口11bから吸い込まれることになる。これにより、冬季であれば暖かい空気が内気導入口11bから吸い込まれるので吹出温度の低下が抑制され、また、夏季であれば低温の空気が内気導入口11bから吸い込まれるので吹出温度の上昇が抑制される。よって、熱交換効率が向上すると同時に乗員の快適性が高まる。
また、車室内の温度と、設定温度との差が、車室内温度安定期よりも大きな場合には、運転席優先空調モードに比べて非運転席側吹出口から吹き出す空調風量が多くなるので、温冷熱の輻射の影響を弱めることができる。
また、送風ユニット11に、外気導入口11a及び内気導入口11bとは別に、内気導入口11bよりも小さな小型内気導入口を設けてもよい。この小型内気導入口は、外気導入モード時にも開口しており、従って、外気導入モード時に内気を一部だけ導入することが可能になる。例えば、車速が低いときには、小型内気導入口を開放し、車速が高いときには、小型内気導入口を閉塞するように、ダンパによって開閉することができる。また、送風量が多いときには小型内気導入口を開放するように制御することもできる。
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。