以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(単相2線式の電源装置の例)
2.第2の実施の形態(3相3線式(Δ結線)の電源装置の例)
<1.第1の実施の形態>
[構成例]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る電力変換装置(電力変換装置1)の一構成例を表すものである。この電力変換装置1は、単相2線式の電源装置である。
電力変換装置1は、端子T11,T12と、端子T21,T22と、端子T31,T32とを備えている。端子T11,T12には、バッテリBTが接続されている。バッテリBTは、例えば、家庭用のバッテリであってもよいし、車載用のバッテリであってもよい。車載用のバッテリは、例えば、鉛バッテリであってもよいし、電気自動車用のバッテリであってもよい。端子T21,T22は、商用電源GRIDに接続されており、端子T31,T32は、負荷装置LOADに接続されている。電力変換装置1は、系統連系運転モードM1および自立運転モードM2を含む2つの運転モードを有している。系統連系運転モードM1では、電力変換装置1は、単相2線を用いて商用電源GRIDと接続することにより、バッテリBTを充放電する。また、自立運転モードM2では、電力変換装置1は、単相2線を用いて負荷装置LOADと接続することにより、負荷装置LOADに電力を供給するようになっている。
電力変換装置1は、電力変換部10と、電流検出部13と、スイッチSgridu,Sgridwと、電圧検出部14,15と、スイッチSstdu,Sstdwと、制御部20とを備えている。
電力変換部10は、直流電力と交流電力との間で電力変換を行うものである。電力変換部10は、双方向DC/DCコンバータ11と、双方向DC/ACインバータ12とを有している。
双方向DC/DCコンバータ11は、直流電圧を昇圧し、あるいは直流電圧を降圧する、双方向の電力変換を行うものである。双方向DC/DCコンバータ11は、例えば、非絶縁型のDC/DCコンバータであってもよいし、絶縁型のDC/DCコンバータであってもよい。双方向DC/DCコンバータ11は、端子T11,T12を介してバッテリBTに接続されるとともに、高電圧線HLおよび低電圧線LLを介して双方向DC/ACインバータ12に接続される。双方向DC/DCコンバータ11は、例えば、電力変換装置1の運転モードが系統連系運転モードM1である場合には、高電圧線HLおよび低電圧線LLの間の電圧(直流バス電圧Vdc)およびバッテリ電流Ibtに基づいて、バッテリBTを充放電させる充放電制御を行う。また、双方向DC/DCコンバータ11は、電力変換装置1の運転モードが自立運転モードM2である場合には、バッテリBTにおけるバッテリ電圧Vbtに基づいて直流バス電圧Vdcを生成するとともに、この直流バス電圧Vdcが所定の電圧になるように電圧一定制御を行うようになっている。
双方向DC/ACインバータ12は、直流電圧を交流電圧に変換し、あるいは交流電圧を直流電圧に変換する単相2線式のインバータである。双方向DC/ACインバータ12は、高電圧線HLおよび低電圧線LLを介して双方向DC/DCコンバータ11に接続される。また、双方向DC/ACインバータ12は、例えば図示しないLCフィルタ回路を介してU相電圧線ULおよびW相電圧線WLに接続され、これらのU相電圧線ULおよびW相電圧線WLを介してスイッチSgridu,SgridwおよびスイッチSstdu,Sstdwに接続される。双方向DC/ACインバータ12は、電力変換装置1の運転モードが系統連系運転モードM1である場合には、商用電源GRIDから供給された交流電圧に基づいて直流バス電圧Vdcを生成するとともに、直流バス電圧Vdcが所定の電圧になるように電圧一定制御を行う。また、双方向DC/ACインバータ12は、電力変換装置1の運転モードが自立運転モードM2である場合には、直流バス電圧Vdcに基づいて負荷装置LOADに供給する交流出力電圧を生成するとともに、この交流出力電圧の電圧振幅が所定の振幅になるように電圧振幅一定制御を行うようになっている。
電流検出部13は、U相電圧線ULに流れる電流i_uを検出する交流センサである。電流検出部13は、電流i_uを検出するセンサと、検出した電流i_uに応じた検出電圧Vi_uを生成するアナログ回路とを含んでいる。電流検出部13の第1端は双方向DC/ACインバータ12に接続され、第2端はスイッチSgridu,Sstduに接続されている。そして、電流検出部13は、検出した電流i_uに応じた検出電圧Vi_uを制御部20に供給するようになっている。
スイッチSgridu,Sgridwは、系統連系運転モードM1においてオン状態になることにより、U相電圧線ULおよびW相電圧線WLを商用電源GRIDに接続するものである。スイッチSgriduの第1端はU相電圧線ULに接続され、第2端は端子T21に接続されている。スイッチSgridwの第1端はW相電圧線WLに接続され、第2端は端子T22に接続されている。スイッチSgridu,Sgridwは、制御部20から供給されたスイッチ制御信号Sgに基づいてオンオフするようになっている。スイッチSgridu,Sgridwは、例えば、リレーを用いて構成される。
電圧検出部14は、例えば、電力変換装置1の運転モードが系統連系運転モードM1である場合において、商用電源GRIDから供給される交流の電圧e_uwを検出する交流センサである。電圧検出部14は、電圧e_uwを検出するセンサと、検出した電圧e_uwに応じた検出電圧Ve_uwを生成するアナログ回路とを含んでいる。電圧検出部14の第1端は端子T21に接続され、第2端は端子T22に接続されている。電圧検出部14は、端子T22における電圧からみた端子T21における電圧を電圧e_uwとして検出する。そして、電圧検出部14は、検出した電圧e_uwに応じた検出電圧Ve_uwを制御部20に供給するようになっている。
端子T21,T22は、商用電源GRIDに接続されている。商用電源GRIDは、単相2線式のものであり、商用電源GRIDのU相電圧線が電力変換装置1の端子T21に接続され、商用電源GRIDのW相電圧線が電力変換装置1の端子T22に接続されている。
電圧検出部15は、例えば、電力変換装置1の運転モードが自立運転モードM2である場合において、負荷装置LOADに供給する交流の電圧e_stdを検出する交流センサである。電圧検出部15は、電圧e_stdを検出するセンサと、検出した電圧e_stdに応じた検出電圧Ve_stdを生成するアナログ回路とを含んでいる。電圧検出部15の第1端はU相電圧線ULに接続され、第2端はW相電圧線WLに接続されている。電圧検出部15は、W相電圧線WLにおける電圧からみたU相電圧線ULにおける電圧を電圧e_stdとして検出する。そして、電圧検出部15は、検出した電圧e_stdに応じた検出電圧Ve_stdを制御部20に供給するようになっている。
スイッチSstdu,Sstdwは、自立運転モードM2においてオン状態になることにより、U相電圧線ULおよびW相電圧線WLを負荷装置LOADに接続するものである。スイッチSstduの第1端はU相電圧線ULに接続され、第2端は端子T31に接続されている。スイッチSstdwの第1端はW相電圧線WLに接続され、第2端は端子T32に接続されている。スイッチSstdu,Sstdwは、制御部20から供給されたスイッチ制御信号Ssに基づいてオンオフするようになっている。スイッチSstdu,Sstdwは、例えば、リレーを用いて構成される。
端子T31,T32は、負荷装置LOADに接続されている。この負荷装置LOADは、例えば、電力変換装置1が家庭で用いられる場合には、家庭内における1または複数の電子機器に対応し、電力変換装置1が車両で用いられる場合には、車内における1または複数の電子機器に対応する。負荷装置LOADは、第1端が端子T31に接続され第2端が端子T32に接続された、インピーダンスZloadを有する負荷を含む。
制御部20は、電力変換部10、およびスイッチSstdu,Sstdw,Sgridu,Sgridwの動作を制御するものである。具体的には、制御部20は、電流検出部13から供給された検出電圧Vi_u、電圧検出部14から供給された検出電圧Ve_uw、および電圧検出部15から供給された検出電圧Ve_stdに基づいて、電力変換部10の動作を制御する。具体的には、以下に説明するように、制御部20の電力変換制御部21(後述)は、系統連系運転モードM1および自立運転モードM2を含む2つの運転モードを用いて、電力変換部10の動作を制御する。また、制御部20は、電流検出部13および電圧検出部14,15の異常を検出する動作をも行うことができるようになっている。制御部20は、例えば、1または複数のマイクロコントローラを用いて構成される。
図2は、系統連系運転モードM1および自立運転モードM2における電力変換装置1の動作を表すものである。この図2は、各運転モードにおける、双方向DC/DCコンバータ11、双方向DC/ACインバータ12、およびスイッチSstdu,Sstdw,Sgridu,Sgridwの動作を示している。
系統連系運転モードM1では、スイッチSgridu,Sgridwがオン状態になるとともに、スイッチSstdu,Sstdwがオフ状態になる。これにより、商用電源GRIDが電力変換装置1に接続され、負荷装置LOADが電力変換装置1から切り離される。双方向DC/ACインバータ12は、商用電源GRIDから供給された交流電圧に基づいて直流バス電圧Vdcを生成するとともに、この直流バス電圧Vdcが所定の電圧になるように電圧一定制御を行う。そして、双方向DC/DCコンバータ11は、この直流バス電圧Vdcおよびバッテリ電流Ibtに基づいて、バッテリBTに対する充放電電力制御を行うようになっている。
また、自立運転モードM2では、スイッチSstdu,Sstdwがオン状態になるとともに、スイッチSgridu,Sgridwがオフ状態になる。これにより、負荷装置LOADが電力変換装置1に接続され、商用電源GRIDが電力変換装置1から切り離される。双方向DC/DCコンバータ11は、バッテリBTにおけるバッテリ電圧Vbtに基づいて直流バス電圧Vdcを生成するとともに、この直流バス電圧Vdcが所定の電圧になるように電圧一定制御を行う。双方向DC/ACインバータ12は、この直流バス電圧Vdcに基づいて、負荷装置LOADに供給する交流出力電圧を生成するとともに、この交流出力電圧の電圧振幅が所定の振幅になるように電圧振幅一定制御を行うようになっている。
制御部20は、系統連系運転モードM1および自立運転モードM2において、電力変換装置1がこのような動作を行うように、双方向DC/DCコンバータ11、双方向DC/ACインバータ12、およびスイッチSstdu,Sstdw,Sgridu,Sgridwの動作を制御するようになっている。
制御部20は、図1に示したように、電力変換制御部21と、異常検出部30とを有している。電力変換制御部21は、系統連系運転モードM1および自立運転モードM2を含む2つの運転モードを用いて、双方向DC/DCコンバータ11および双方向DC/ACインバータ12の動作を制御するものである。異常検出部30は、電流検出部13および電圧検出部14,15の異常を検出する、異常検出動作を行うものである。制御部20は、例えば、電流検出部13から供給された検出電圧Vi_uに基づいて、例えば20kHzのサンプリングレートでAD変換を行うことにより、検出電圧Vi_uを示すデジタル値を求め、このデジタル値に基づいて制御を行う。検出電圧Ve_uw,Ve_stdについても同様である。以下、AD変換されたデジタル値を表すものとして、検出電圧Vi_u,Ve_uw,Ve_stdを適宜用いる。
異常検出部30は、3つの位相同期部31(位相同期部31A,31B,31C)と、3つの監視部32(監視部32A,32B,32C)と、3つの判定部33(判定部33A,33B,33C)と、検出制御部34とを有している。
位相同期部31は、交流信号に基づいて位相同期動作を行うことにより、角周波数偏差Δωについての情報を生成するものである。具体的には、位相同期部31Aは、電圧検出部14から供給された検出電圧Ve_uwに基づいて、位相同期動作を行うことにより角周波数偏差Δω(角周波数偏差ΔωA)についての情報を生成し、この角周波数偏差ΔωAについての情報を監視部32Aに供給する。また、位相同期部31Aは、この位相同期動作を行うことにより位相θAについての情報を生成し、この位相θAについての情報を電力変換制御部21に供給するようになっている。位相同期部31Bは、電流検出部13から供給された検出電圧Vi_uに基づいて、位相同期動作を行うことにより角周波数偏差Δω(角周波数偏差ΔωB)についての情報を生成し、この角周波数偏差ΔωBについての情報を監視部32Bに供給する。また、位相同期部31Bは、この位相同期動作を行うことにより位相θBについての情報を生成し、この位相θBについての情報を電力変換制御部21に供給するようになっている。位相同期部31Cは、電圧検出部15から供給された検出電圧Ve_stdに基づいて、位相同期動作を行うことにより角周波数偏差Δω(角周波数偏差ΔωC)についての情報を生成し、この角周波数偏差ΔωCについての情報を監視部32Cに供給するようになっている。以下に、位相同期部31Aを例に挙げて、詳細に説明する。
図3は、位相同期部31Aの一構成例を表すものである。なお、この図3では、位相同期部31Aに加え、この位相同期部31Aに係る監視部32Aおよび判定部33Aをも描いている。位相同期部31Aは、バンドパスフィルタ41と、オールパスフィルタ42と、誤差信号生成部43と、ループフィルタ44と、リミッタ45と、加算部46と、積分部47と有している。
バンドパスフィルタ41は、電圧検出部14から供給された検出電圧Ve_uwに含まれる低周波数成分および高周波数成分を除去することにより、信号yαを生成するものである。バンドパスフィルタ41におけるラプラス形式の伝達関数H(s)は、例えば以下のように表すことができる。
ここで、ωcは遮断角周波数である。例えば、電力変換部10におけるスイッチング周波数が20kHzである場合には、この遮断角周波数ωcを2π×20kHz/10程度にすることができる。ωoは基本角周波数(例えば2π×60Hz)である。式EQ1に示したように、バンドパスフィルタ41は、ローパスフィルタを含んでいる。これにより、バンドパスフィルタ41は、スイッチング周波数成分などの高周波数成分を除去することができるようになっている。
オールパスフィルタ42は、バンドパスフィルタ41から供給された信号yαに基づいて、信号yαの位相をπ/2だけ遅らせることにより、信号yβを生成するものである。
誤差信号生成部43は、バンドパスフィルタ41から供給された信号yα、オールパスフィルタ42から供給された信号yβ、および積分部47から供給された位相θについての情報に基づいて、以下の式を用いて、誤差信号errを生成するものである。
ループフィルタ44は、誤差信号生成部43から供給された誤差信号errに基づいて、角周波数偏差Δωについての情報を生成し、この角周波数偏差Δωについての情報をリミッタ45に供給するものである。また、位相同期部31Aのループフィルタ44は、この角周波数偏差Δωについての情報を、角周波数偏差ΔωAについての情報として、監視部32Aに供給するようになっている。
リミッタ45は、ループフィルタ44から供給された角周波数偏差Δωについての情報に基づいて、角周波数偏差Δωが、所定の下限値(−ωlim)以上、所定の上限値(+ωlim)以下になるようにリミットすることにより、角周波数偏差Δω1についての情報を生成するものである。これらの上限値および下限値(角周波数ωlim)についての情報は、検出制御部34から供給される。角周波数ωlimは、系統連系運転モードM1の場合と、自立運転モードM2の場合とで、異なる値に設定することができるようになっている。
角周波数ωlimは、系統連系運転モードM1では、以下の式を用いて表されるものである。
ここで、ωofrは、例えば、商用電源GRIDが生成する交流電圧の角過周波数閾値である。この角過周波数閾値ωofrは、過周波数保護用の閾値から求めた角周波数の閾値である。ωufrは、商用電源GRIDが生成する交流電圧の角低周波数閾値である。この角低周波数閾値ωufrは、低周波数保護用の閾値から求めた角周波数の閾値である。maxは、引数(この例では、(ωofr−ωo)と(ωo−ωufr))のうちの値が大きいものを選ぶ関数である。aは、1以上の値を有するパラメータである。このように、角過周波数閾値ωofrおよび角低周波数閾値ωufrを設定することにより、商用電源GRIDの系統周波数が変動した場合に、異常検出部30が誤検出するおそれを低減することができる。また、電力変換装置1を設置する地域や設置条件などに応じて、角過周波数閾値ωofrおよび角低周波数閾値ωufrを設定することができる
角周波数ωlimは、自立運転モードM2では、以下の式を用いて表されるものである。
ここで、ωmaxは、電力変換装置1における自立系統角周波数ωsdの上限値であり、ωminは、自立系統角周波数ωsdの下限値である。これにより、例えば、自立系統角周波数ωsdが変動した場合に、負荷装置LOADが故障するおそれを低減することができる。すなわち、例えば、負荷装置LOADに対応する電子機器が、周波数変動に対する耐性が低い精密機器である場合には、自立系統角周波数ωsdが大きく変動することにより、電子機器が故障するおそれがある。電力変換装置1では、自立系統角周波数ωsdが大きく変動した場合に、異常検出部30により異常が検出され、その結果、自立系統角周波数ωsdの変動が抑制されるので、負荷装置LOADが故障するおそれを低減することができる。
加算部46は、リミッタ45から供給された角周波数偏差Δω1についての情報と、検出制御部34(図1)から供給された基本角周波数ωoについての情報に基づいて、角周波数偏差Δω1と基本角周波数ωoとを加算することにより、角周波数ω(=ωo+Δω1)についての情報を生成するものである。
積分部47は、加算部46から供給された角周波数ωについての情報に基づいて、角周波数ωを積分することにより、位相θについての情報を生成し、この位相θについての情報を誤差信号生成部43に供給するものである。また、位相同期部31Aの積分部47は、この位相θについての情報を、位相θAについての情報として、電力変換制御部21に供給するようになっている。
この構成により、位相同期部31Aでは、電圧検出部14から供給された検出電圧Ve_uwに基づいて、位相同期動作が行われる。位相同期が確立すると、誤差信号errは、ほぼ一定の値になる。また、例えば、電圧検出部14に、例えば断線異常や短絡異常などの異常が生じ、検出電圧Ve_uwが直流電圧になった場合には、位相同期部31Aでは位相同期は確立せず、誤差信号errの値は振動し、その結果、角周波数偏差ΔωAは大きな振幅で振動する。この位相同期部31Aの後段の回路である監視部32Aおよび判定部33Aは、このような振動する角周波数偏差ΔωAに基づいて、この電圧検出部14の異常を検出するようになっている。
以上、位相同期部31Aを例に説明したが、位相同期部31B,31Cについても同様である。位相同期部31Bのバンドパスフィルタ41は、電流検出部13から供給された検出電圧Vi_uに含まれる低周波数成分および高周波数成分を除去することにより、信号yαを生成する。位相同期部31Bのループフィルタ44は、生成した角周波数偏差Δωについての情報を、角周波数偏差ΔωBについての情報として、監視部32Bに供給する。位相同期部31Bの積分部47は、生成した位相θについての情報を、位相θBについての情報として、電力変換制御部21に供給する。位相同期部31Bでは、電流検出部13の構成(センサおよびアナログ回路)に応じて、例えばバンドパスフィルタ41のフィルタ係数、ループフィルタ44のフィルタ係数、およびリミッタ45における角周波数ωlimを適宜変更してもよい。位相同期部31Cのバンドパスフィルタ41は、電圧検出部15から供給された検出電圧Ve_stdに含まれる低周波数成分および高周波数成分を除去することにより、信号yαを生成する。位相同期部31Cのループフィルタ44は、生成した角周波数偏差Δωについての情報を、角周波数偏差ΔωCについての情報として、監視部32Cに供給する。位相同期部31Cでは、電圧検出部15の構成(センサおよびアナログ回路)に応じて、例えばバンドパスフィルタ41のフィルタ係数、ループフィルタ44のフィルタ係数、およびリミッタ45における角周波数ωlimを適宜変更してもよい。
監視部32(図1)は、角周波数偏差Δωを監視するものである。具体的には、監視部32Aは、位相同期部31Aから供給された角周波数偏差ΔωAについての情報に基づいて、角周波数偏差ΔωAが大きな振幅で振動したときに、この振動に応じてカウント値CNTAを生成し、このカウント値CNTAを判定部33Aに供給する。監視部32Bは、位相同期部31Bから供給された角周波数偏差ΔωBについての情報に基づいて、角周波数偏差ΔωBが大きな振幅で振動したときに、この振動に応じてカウント値CNTBを生成し、このカウント値CNTBを判定部33Bに供給する。監視部32Cは、位相同期部31Cから供給された角周波数偏差ΔωCについての情報に基づいて、角周波数偏差ΔωCが大きな振幅で振動したときに、この振動に応じてカウント値CNTCを生成し、このカウント値CNTCを判定部33Cに供給するようになっている。以下に、監視部32Aを例に挙げて、詳細に説明する。なお、監視部32B,32Cについても同様である。
図3に示したように、監視部32Aは、パルス生成部48と、カウンタ49とを有している。
パルス生成部48は、角周波数偏差ΔωAについての情報に基づいて、パルス信号SPを生成するものである。具体的には、パルス生成部48は、角周波数偏差ΔωAと、2つの所定の閾値(後述する+ωlim2,−ωlim2)とを比較することにより、角周波数偏差ΔωAが大きな振幅で振動しているかどうかを確認し、角周波数偏差ΔωAが大きな振幅で振動しているときに、この振動に応じてパルス信号SPを生成する。これらの閾値(角周波数ωlim2)についての情報は、検出制御部34から供給されるようになっている。
カウンタ49は、パルス信号SPに含まれるパルスの数をカウントすることにより、カウント値CNTAを生成するものである。また、カウンタ49は、検出制御部34から供給されたリセット信号RSTに基づいて、カウント値CNTAを、例えば所定の時間間隔(例えば1分間隔)でリセットするようになっている。
図4は、監視部32Aにおけるパルス生成部48およびカウンタ49の動作を表すものであり、(A)は角周波数偏差ΔωAを示し、(B)はパルス信号SPの波形を示し、(C)はカウンタ49が生成するカウント値CNTAを示す。
電圧検出部14が正常に動作している場合(正常期間TA)には、位相同期部31Aでは、位相同期が確立するので、角周波数偏差ΔωAは“0”(ゼロ)付近になる(図4(A))。例えば、電力変換装置1の運転モードが系統連系運転モードM1である場合において、商用電源GRIDから供給された交流電圧に擾乱が生じ、交流電圧が過渡的に乱れた場合には、部分W1に示したように、角周波数偏差ΔωAは過渡的に乱れる。このような擾乱には、例えば、瞬時電圧低下、位相急変、周波数変動などがありえる。このように、交流電圧に擾乱が生じた場合における角周波数偏差ΔωAの揺れは比較的小さい。よって、電圧検出部14が正常に動作している場合には、この例では、角周波数偏差ΔωAは、上側の閾値(+ωlim2)や、下側の閾値(−ωlim2)に到達しない。その結果、パルス信号SPにはパルスは生じないので(図4(B))、カウント値CNTAは、この例では“0”(ゼロ)を維持する(図4(C))。
一方、電圧検出部14に異常が生じた場合(異常期間TB)には、位相同期が確立せず、角周波数偏差ΔωAが大きな振幅で振動する(図4(A))。すなわち、例えば、電圧検出部14に断線異常が生じた場合には、電圧検出部14から出力された検出電圧Ve_uwが直流電圧になる。これにより、信号yα,yβの値が一定値になるので、式EQ2に示したコサイン関数およびサイン関数により、誤差信号errが振動する。その結果、角周波数偏差ΔωAが大きな振幅で振動する。また、例えば、電圧検出部14に、検出電圧Ve_uwがある電圧に固定される電圧固定異常が生じた場合にも、角周波数偏差ΔωAが大きな振幅で振動する。また、例えば、電圧検出部14にショート異常が生じた場合には、電圧検出部14から供給された検出電圧Ve_uwが0Vになる。この場合には、信号yα,yβの値が“0”(ゼロ)に近づくので、式EQ2の分母が小さくなり、角周波数偏差ΔωAが大きな振幅で振動する。
パルス生成部48は、角周波数偏差ΔωAが、上側の閾値(+ωlim2)を上回ったタイミングで、パルス信号SPを低レベルから高レベルに変化させ、角周波数偏差ΔωAが、下側の閾値(−ωlim2)を下回ったタイミングで、パルス信号SPを高レベルから低レベルに変化させる。これらの閾値(角周波数ωlim2)についての情報は、検出制御部34から供給される。角周波数ωlim2は、以下の式を用いて表されるものである。
ここで、kは、1以上の値を有するパラメータである。すなわち、角周波数ωlim2の値は、角周波数ωlimと同じ値、または角周波数ωlimよりも大きい値に設定される。このように、位相同期部31Aは、検出電圧Ve_uwが直流電圧になったときに、角周波数偏差ΔωAが、上側の閾値(+ωlim2)および下側の閾値(−ωlim2)により規定される所定の振幅VS以上の振幅で振動するように構成されている。そして、カウンタ49は、パルス信号SPの立ち下がりエッジに基づいて、パルス信号SPに含まれるパルスの数をカウントする。これにより、カウント値CNTAは徐々に上昇するようになっている。
このようにして、監視部32Aは、電圧検出部14に異常が生じた場合に、角周波数偏差ΔωAについての情報に基づいて、カウント値CNTAを徐々に上昇させる。同様に、監視部32Bは、電流検出部13に異常が生じた場合に、角周波数偏差ΔωBについての情報に基づいて、カウント値CNTBを徐々に上昇させ、監視部32Cは、電圧検出部15に異常が生じた場合に、角周波数偏差ΔωCについての情報に基づいて、カウント値CNTCを徐々に上昇させるようになっている。
判定部33(図1)は、カウント値CNTに基づいて、異常判定を行うものである。具体的には、判定部33Aは、監視部32Aから供給されたカウント値CNTAに基づいて、カウント値CNTAが所定のカウント値CNT0(例えば、カウント値CNT0=20)に達した場合に、電圧検出部14に異常が生じたと判定する。同様に、判定部33Bは、監視部32Bから供給されたカウント値CNTBに基づいて、カウント値CNTBがカウント値CNT0に達した場合に、電流検出部13に異常が生じたと判定する。また、判定部33Cは、監視部32Cから供給されたカウント値CNTCに基づいて、カウント値CNTCがカウント値CNT0に達した場合に、電圧検出部15に異常が生じたと判定する。そして、判定部33A,33B,33Cは、判定結果を出力するようになっている。
検出制御部34は、異常検出部30における異常検出動作を制御するものである。また、検出制御部34は、例えば、角周波数ωlimおよび基本角周波数ωoについての情報を位相同期部31A,31B,31Cに供給し、角周波数ωlim2についての情報およびリセット信号RSTを監視部32A,32B,32Cに供給するようになっている。
この構成により、異常検出部30は、系統連系運転モードM1では、電流検出部13および電圧検出部14,15の異常を検出することができる。また、異常検出部30は、自立運転モードM2では、電流検出部13および電圧検出部15の異常を検出することができる。例えば、系統連系運転モードM1において、電圧検出部15の異常を検出した場合には、制御部20は、系統連系運転モードM1でのみ動作を行い、自立運転モードM2で動作を行わないように制御することができる。異常検出部30が交流センサの異常を検出した場合には、その検出結果を図示しない監視システムに通知してもよいし、この検出結果に基づいて、図示しない表示部が、交流センサに異常が生じたことを表示してもよい。
ここで、電力変換部10は、本開示における「電力変換部」の一具体例に対応する。電流検出部13および電圧検出部14,15のいずれかは、本開示における「第1の交流センサ」の一具体例に対応する。位相同期部31は、本開示における「位相同期部」の一具体例に対応する。角周波数偏差Δωは、本開示における「周波数情報」の一具体例に対応する。監視部32および判定部33は、本開示における「検出部」の一具体例に対応する。パルス生成部48は、本開示における「パルス生成部」の一具体例に対応する。カウンタ49は、本開示における「カウンタ」の一具体例に対応する。バンドパスフィルタ41は、本開示における「バンドパスフィルタ」の一具体例に対応する。
[動作および作用]
続いて、本実施の形態の電力変換装置1の動作および作用について説明する。
(全体動作概要)
まず、図1,2を参照して、電力変換装置1の全体動作概要を説明する。
系統連系運転モードM1では、制御部20は、図2に示したように、スイッチSgridu,Sgridwをオン状態にするとともに、スイッチSstdu,Sstdwをオフ状態にする。これにより、商用電源GRIDが電力変換装置1に接続され、負荷装置LOADが電力変換装置1から切り離される。双方向DC/ACインバータ12は、商用電源GRIDから供給された交流電圧に基づいて直流バス電圧Vdcを生成するとともに、この直流バス電圧Vdcが所定の電圧になるように電圧一定制御を行う。双方向DC/DCコンバータ11は、この直流バス電圧Vdcおよびバッテリ電流Ibtに基づいて、バッテリBTに対する充放電電力制御を行う。
自立運転モードM2では、制御部20は、図2に示したように、スイッチSstdu,Sstdwをオン状態にするとともに、スイッチSgridu,Sgridwをオフ状態にする。これにより、負荷装置LOADが電力変換装置1に接続され、商用電源GRIDが電力変換装置1から切り離される。双方向DC/DCコンバータ11は、バッテリBTにおけるバッテリ電圧Vbtに基づいて直流バス電圧Vdcを生成するとともに、直流バス電圧Vdcが所定の電圧になるように電圧一定制御を行う。双方向DC/ACインバータ12は、例えば、直流バス電圧Vdcに基づいて、負荷装置LOADに供給する交流出力電圧を生成するとともに、この交流出力電圧の電圧振幅が所定の振幅になるように電圧振幅一定制御を行う。
(異常検出動作について)
制御部20の異常検出部30は、電流検出部13および電圧検出部14,15の異常を検出する。
具体的には、位相同期部31Aは、電圧検出部14から供給された検出電圧Ve_uwに基づいて、位相同期動作を行うことにより角周波数偏差ΔωAについての情報を生成する。監視部32Aは、位相同期部31Aから供給された角周波数偏差ΔωAについての情報に基づいてカウント値CNTAを生成する。判定部33Aは、カウント値CNTAがカウント値CNT0に達した場合に、電圧検出部14に異常が生じたと判定する。
例えば、電圧検出部14が正常に動作している場合には、角周波数偏差ΔωAは“0”(ゼロ)付近になる(図4(A))。この場合、角周波数偏差ΔωAは、上側の閾値(+ωlim2)や、下側の閾値(−ωlim2)に到達しないので、パルス信号SPにはパルスは生じない。その結果、カウント値CNTAは増加しないので、判定部33Aは、電圧検出部14に異常が生じていないと判断する。
例えば、電力変換装置1の運転モードが系統連系運転モードM1である場合において、商用電源GRIDから供給された交流電圧に擾乱が生じ、交流電圧が過渡的に乱れた場合には、図4(A)において部分W1に示したように、角周波数偏差ΔωAは過渡的に乱れる。しかしながら、その揺れは小さいので、角周波数偏差ΔωAは、上側の閾値(+ωlim2)や下側の閾値(−ωlim2)に到達せず、パルス信号SPにはパルスは生じない。その結果、カウント値CNTAは増加しないので、判定部33Aは、電圧検出部14に異常が生じていないと判断する。
また、例えば、交流電圧に擾乱などによって、突発的に角周波数偏差ΔωAが乱れ、カウント値CNTAが増加した場合でも、そのような状態が短い時間で収まった場合には、カウント値CNTAは、カウント値CNT0に到達しない。そして、監視部32Aのカウンタ49は、検出制御部34から供給されたリセット信号RSTに基づいて、カウント値CNTAを、例えば所定の時間間隔(例えば1分間隔)でリセットする。これにより、判定部33Aは、電圧検出部14に異常が生じていないと判断する。
一方、電圧検出部14に異常が生じた場合には、検出電圧Ve_uwは直流電圧になる。これにより、角周波数偏差ΔωAは、上側の閾値(+ωlim2)および下側の閾値(−ωlim2)により規定される範囲を超えて振動する(図4(A))。パルス生成部48は、角周波数偏差ΔωAが、上側の閾値(+ωlim2)を上回ったタイミングで、パルス信号SPを低レベルから高レベルに変化させ、角周波数偏差ΔωAが、下側の閾値(−ωlim2)を下回ったタイミングで、パルス信号SPを高レベルから低レベルに変化させる。カウンタ49は、パルス信号SPの立ち下がりエッジに基づいて、パルス信号SPに含まれるパルスの数をカウントする。これにより、カウント値CNTAは徐々に上昇する。判定部33Aは、監視部32Aから供給されたカウント値CNTAに基づいて、カウント値CNTAがカウント値CNT0に達した場合に、電圧検出部14に異常が生じたと判定する。
同様に、位相同期部31Bは、電流検出部13から供給された検出電圧Vi_uに基づいて、位相同期動作を行うことにより角周波数偏差ΔωBについての情報を生成する。監視部32Bは、位相同期部31Bから供給された角周波数偏差ΔωBについての情報に基づいてカウント値CNTBを生成する。判定部33Bは、カウント値CNTBがカウント値CNT0に達した場合に、電流検出部13に異常が生じたと判定する。
同様に、位相同期部31Cは、電圧検出部15から供給された検出電圧Ve_stdに基づいて、位相同期動作を行うことにより角周波数偏差ΔωCについての情報を生成する。監視部32Cは、位相同期部31Cから供給された角周波数偏差ΔωCについての情報に基づいてカウント値CNTCを生成する。判定部33Cは、カウント値CNTCがカウント値CNT0に達した場合に、電圧検出部15に異常が生じたと判定する。
次に、いくつか例を挙げて、電力変換装置1における異常検出動作について説明する。なお、以下では、説明の便宜上、角周波数偏差Δωの代わりに、周波数偏差Δfを用いて説明する。
(電圧検出部14に断線異常が生じた場合)
図5は、電力変換装置1が系統連系運転モードM1で動作し、電圧検出部14に断線異常が生じた場合の、電力変換装置1のシミュレーション結果を表すものであり、(A)は商用電源GRIDから供給された交流の電圧e_uwの波形を示し、(B)は電圧検出部14から出力された検出電圧Ve_uwの波形を示し、(C)は位相同期部31Aにより得られた周波数偏差ΔfA(ΔωA/2π)を示し、(D)は監視部32Aにおけるパルス信号SPの波形を示し、(E)はカウント値CNTAを示す。
この例では、電力変換装置1には、商用電源GRIDから交流の電圧e_uwが供給される(図5(A))。タイミングt1以前の期間(正常期間TA)では、電圧検出部14は正常に動作し、商用電源GRIDから供給された電圧e_uwに応じた検出電圧Ve_uwを生成する(図5(B))。位相同期部31Aは、この検出電圧Ve_uwに基づいて、位相同期動作を行う。これにより、位相同期部31Aでは、位相同期が確立し、周波数偏差ΔfAは“0”(ゼロ)付近になる(図5(C))。また、この例では、図5(A)の部分W2が示すように、商用電源GRIDから供給された交流電圧に擾乱が生じ、図5(C)の部分W3が示すように、周波数偏差ΔfAに揺れが生じているが、パルス信号SPに複数のパルスが生じていない(図5(D))。その結果、カウント値CNTAは、この例では“0”(ゼロ)を維持する(図5(E))。よって、判定部33Aは、電圧検出部14に異常が生じていないと判断する。なお、このように交流電圧に擾乱が生じた場合には、カウント値CNTAは、例えば“1”などになる場合もあり得る。この場合でも、カウンタ49は、カウント値CNTAを、例えば所定の時間間隔(例えば1分間隔)でリセットするので、判定部33Aは、電圧検出部14に異常が生じていないと判断する。
そして、この例では、タイミングt1において、電圧検出部14に断線異常が生じる。これにより、このタイミングt1以降(異常期間TB)おいて、電圧検出部14内のアナログ回路の時定数に応じて、検出電圧Ve_uwは直流電圧(この例では0V)に向かって収束する(図5(B))。位相同期部31Aは、この検出電圧Ve_uwに基づいて、位相同期動作を行う。この場合、位相同期部31Aでは、位相同期が確立せず、周波数偏差ΔfAが大きな振幅で振動する(図5(C))。監視部32Aのパルス生成部48は、周波数偏差ΔfAが、上側の閾値(+ωlim2/2π)を上回ったタイミングで、パルス信号SPを低レベルから高レベルに変化させ、周波数偏差ΔfAが、下側の閾値(−ωlim2/2π)を下回ったタイミングで、パルス信号SPを高レベルから低レベルに変化させる(図5(D))。そして、監視部32Aのカウンタ49は、パルス信号SPの立ち下がりエッジに基づいて、パルス信号SPに含まれるパルスの数をカウントする。これにより、カウント値CNTAは徐々に上昇する(図5(E))。そして、判定部33Aは、監視部32Aから供給されたカウント値CNTAに基づいて、カウント値CNTAがカウント値CNT0に達した場合に、電圧検出部14に異常が生じたと判定する。
(電圧検出部14にショート異常が生じた場合)
図6は、電力変換装置1が系統連系運転モードM1で動作し、電圧検出部14にショート異常が生じた場合の、電力変換装置1のシミュレーション結果を表すものである。タイミングt2以前の期間(正常期間TA)では、電圧検出部14は正常に動作し、電圧e_uwに応じた検出電圧Ve_uwを生成する(図6(B))。位相同期部31Aは、この検出電圧Ve_uwに基づいて、位相同期動作を行う。これにより、位相同期部31Aでは、位相同期が確立し、周波数偏差ΔfAは“0”(ゼロ)付近になる(図6(C))。その結果、カウント値CNTAは、この例では“0”(ゼロ)を維持する(図6(E))。よって、判定部33Aは、電圧検出部14に異常が生じていないと判断する。
そして、この例では、タイミングt2において、電圧検出部14にショート異常が生じる。これにより、このタイミングt2以降(異常期間TB)おいて、検出電圧Ve_uwは0Vになる(図6(B))。位相同期部31Aは、この検出電圧Ve_uwに基づいて、位相同期動作を行う。この場合、位相同期部31Aでは、位相同期が確立せず、周波数偏差ΔfAが大きな振幅で振動する(図6(C))。監視部32Aのパルス生成部48は、周波数偏差ΔfAが、上側の閾値(+ωlim2/2π)を上回ったタイミングで、パルス信号SPを低レベルから高レベルに変化させ、周波数偏差ΔfAが、下側の閾値(−ωlim2/2π)を下回ったタイミングで、パルス信号SPを高レベルから低レベルに変化させる(図6(D))。そして、監視部32Aのカウンタ49は、パルス信号SPの立ち下がりエッジに基づいて、パルス信号SPに含まれるパルスの数をカウントする。これにより、カウント値CNTAは徐々に上昇する(図6(E))。そして、判定部33Aは、監視部32Aから供給されたカウント値CNTAに基づいて、カウント値CNTAがカウント値CNT0に達した場合に、電圧検出部14に異常が生じたと判定する。
(電圧検出部14に電圧固定異常が生じた場合)
図7は、電力変換装置1が系統連系運転モードM1で動作し、電圧検出部14に電圧固定異常が生じた場合の、電力変換装置1のシミュレーション結果を表すものである。タイミングt3以前の期間(正常期間TA)では、電圧検出部14は正常に動作し、電圧e_uwに応じた検出電圧Ve_uwを生成する(図7(B))。位相同期部31Aは、この検出電圧Ve_uwに基づいて、位相同期動作を行う。これにより、位相同期部31Aでは、位相同期が確立し、周波数偏差ΔfAは“0”(ゼロ)付近になる(図7(C))。その結果、カウント値CNTAは、この例では“0”(ゼロ)を維持する(図7(E))。よって、判定部33Aは、電圧検出部14に異常が生じていないと判断する。
そして、この例では、タイミングt3において、電圧検出部14に電圧固定異常が生じる。これにより、このタイミングt3以降(異常期間TB)おいて、検出電圧Ve_uwは、所定の電圧(この例では−1V)になる(図7(B))。位相同期部31Aは、この検出電圧Ve_uwに基づいて、位相同期動作を行う。この場合、位相同期部31Aでは、位相同期が確立せず、周波数偏差ΔfAが大きな振幅で振動する(図7(C))。監視部32Aのパルス生成部48は、周波数偏差ΔfAが、上側の閾値(+ωlim2/2π)を上回ったタイミングで、パルス信号SPを低レベルから高レベルに変化させ、周波数偏差ΔfAが、下側の閾値(−ωlim2/2π)を下回ったタイミングで、パルス信号SPを高レベルから低レベルに変化させる(図7(D))。そして、監視部32Aのカウンタ49は、パルス信号SPの立ち下がりエッジに基づいて、パルス信号SPに含まれるパルスの数をカウントする。これにより、カウント値CNTAは徐々に上昇する(図7(E))。そして、判定部33Aは、監視部32Aから供給されたカウント値CNTAに基づいて、カウント値CNTAがカウント値CNT0に達した場合に、電圧検出部14に異常が生じたと判定する。
(電流検出部13にショート異常が生じた場合)
図8は、電力変換装置1が自立運転モードM2で動作し、電流検出部13にショート異常が生じた場合の、電力変換装置1のシミュレーション結果を表すものであり、(A)は電力変換装置1が出力する交流の電圧e_stdおよび交流の電流i_uの波形を示し、(B)は電流検出部13から出力された検出電圧Vi_uの波形を示し、(C)は位相同期部31Bにおける信号yαの波形を示し、(D)は位相同期部31Bにより得られた周波数偏差ΔfB(ΔωB/2π)を示し、(E)は監視部32Bにおけるパルス信号SPの波形を示し、(F)はカウント値CNTBを示す。
この例では、電力変換装置1は、負荷装置LOADに対して交流の電圧e_stdを供給する(図8(A))。また、この例では、負荷装置LOADの負荷は、半波整流負荷であるので、電流i_uの波形は、半波形状を有している。
タイミングt4以前の期間(正常期間TA)では、電流検出部13は正常に動作し、U相電圧線ULに流れる電流i_uに応じた検出電圧Vi_uを生成する(図8(B))。位相同期部31Bのバンドパスフィルタ41は、この検出電圧Vi_uに含まれる低周波数成分および高周波数成分を除去することにより、信号yαを生成する(図8(C))。位相同期部31Bは、この信号yαに基づいて、位相同期動作を行う。これにより、位相同期部31Bでは、位相同期が確立し、周波数偏差ΔfBは小さな振幅で振動する(図8(D))。すなわち、図8(C)に示したように信号yαが直流成分を含み、信号yβもまた直流成分を含むので、式EQ2に示したコサイン関数およびサイン関数により、誤差信号errが振動し、その結果、周波数偏差ΔfBが小さな振幅で振動する。しかしながら、その揺れは小さいので、周波数偏差ΔfBは、上側の閾値(+ωlim2/2π)や下側の閾値(−ωlim2/2π)に到達せず、パルス信号SPにはパルスは生じない。その結果、カウント値CNTBは、この例では“0”(ゼロ)を維持する(図8(F))。よって、判定部33Bは、電流検出部13に異常が生じていないと判断する。
そして、この例では、タイミングt4において、電流検出部13にショート異常が生じる。これにより、このタイミングt4以降(異常期間TB)おいて、検出電圧Vi_uは0Vになる(図8(B))。位相同期部31Bのバンドパスフィルタ41は、この検出電圧Vi_uに基づいて信号yαを生成する(図8(C))。位相同期部31Bは、この信号yαに基づいて、位相同期動作を行う。この場合、位相同期部31Bでは、位相同期が確立せず、周波数偏差ΔfBが大きな振幅で振動する(図8(D))。監視部32Bのパルス生成部48は、周波数偏差ΔfBが、上側の閾値(+ωlim2/2π)を上回ったタイミングで、パルス信号SPを低レベルから高レベルに変化させ、周波数偏差ΔfAが、下側の閾値(−ωlim2/2π)を下回ったタイミングで、パルス信号SPを高レベルから低レベルに変化させる(図8(E))。そして、監視部32Bのカウンタ49は、パルス信号SPの立ち下がりエッジに基づいて、パルス信号SPに含まれるパルスの数をカウントする。これにより、カウント値CNTBは徐々に上昇する(図8(F))。そして、判定部33Bは、監視部32Bから供給されたカウント値CNTBに基づいて、カウント値CNTBがカウント値CNT0に達した場合に、電流検出部13に異常が生じたと判定する。
以上のように、電力変換装置1では、交流センサ(電流検出部13および電圧検出部14,15)から供給された検出電圧に基づいて位相同期動作を行うことにより角周波数偏差Δωを求める位相同期部31を設け、この角周波数偏差Δωに基づいて交流センサの異常を検出するようにしたので、交流センサの異常を効果的に検出することができる。
すなわち、例えば、ゼロクロス回路を設け、交流センサの出力信号からゼロクロス信号を生成し、このゼロクロス信号に基づいて異常を検出するように構成した場合には、交流センサの異常と、ゼロクロス回路の異常とを区別することができないおそれがある。また、このように構成した電力変換装置を系統連系運転モードM1で動作させた場合において、商用電源GRIDから供給された交流電圧に擾乱が生じた場合には、ゼロクロス信号が乱れるため、交流センサおよびゼロクロス回路が正常に動作しているにもかかわらず、交流センサまたはゼロクロス回路に異常が生じたと誤検出するおそれがある。また、このように構成した電力変換装置を自立運転モードM2で動作させた場合において、負荷装置LOADの負荷が例えば半波整流負荷や非線形負荷などである場合には、負荷電流の波形が正弦波ではないので、ゼロクロス回路がゼロクロス信号を生成することができないおそれがあり、この場合には、交流センサの異常を検出することが難しくなってしまう。
一方、電力変換装置1では、位相同期部31を設け、位相同期動作により得られた角周波数偏差Δωに基づいて、交流センサの異常を検出するようにした。これにより、ゼロクロス回路を用いないのでゼロクロス回路の異常を疑う必要がないため、交流センサの異常を効果的に検出することができる。また、電力変換装置1では、商用電源GRIDから供給された交流電圧に擾乱が生じた場合には、位相同期部31が同期状態を維持しようとし、角周波数偏差Δωの揺れを抑えようとするので、交流センサに異常が生じたと誤検出するおそれを低減することができる。また、電力変換装置1では、負荷電流の波形が正弦波ではない場合でも、交流センサが生成した検出電圧(例えば検出電圧Vi_u)の交流成分に基づいて位相同期動作を行うことができるので、角周波数偏差Δωを得ることができ、その結果、この角周波数偏差Δωに基づいて交流センサの異常を検出することができる。
特に、電力変換装置1では、検出電圧が直流電圧になったときに、角周波数偏差Δωが、上側の閾値(+ωlim2)および下側の閾値(−ωlim2)により規定される所定の振幅VS以上の振幅で振動するように構成したので、角周波数偏差Δωに基づいて交流センサの異常を検出することができる。
また、電力変換装置1では、位相同期部31を設け、バンドパスフィルタ41により検出電圧に含まれる低周波数成分および高周波数成分を除去し、除去された信号に基づいて位相同期動作を行うようにしたので、角周波数偏差Δωを高い精度で求めることができる。特に、電流検出部13の異常を検出する場合において、電流検出部13から供給された検出電圧Vi_uに含まれる低周波数成分および高周波数成分を除去し、除去された信号に基づいて位相同期動作を行うようにした。これにより、電力変換装置1を自立運転モードM2で動作させ、例えば半波整流負荷や非線形負荷など、負荷電流の波形が正弦波ではないような負荷に対して電力を供給する場合でも、交流センサの異常を検出することができる。
また、電力変換装置1では、電圧検出部14から供給された検出電圧Ve_uvに基づいて位相同期部31Aが位相同期動作を行い、電流検出部13から供給された検出電圧Vi_uに基づいて位相同期部31Bが位相同期動作を行い、電圧検出部15から供給された検出電圧Ve_stdに基づいて位相同期部31Cが位相同期動作を行うようにした。これにより、電力変換装置1では、電流検出部13および電圧検出部14,15の異常を個別に検出することができるので、交流センサの異常を効果的に検出することができる。
また、電力変換装置1では、このように電流検出部13および電圧検出部14,15の異常を個別に検出することができるようにしたので、電力変換装置1を系統連系運転モードM1で動作させた場合において、電流検出部13および電圧検出部14,15の異常を同時に検出した場合には、停電状態であると判定することができる。
また、電力変換装置1では、位相同期部31のリミッタ45において、角周波数偏差Δωの下限値(−ωlim)および上限値(+ωlim)により規定される範囲を、式EQ3に示したように、角過周波数閾値ωofrおよび角低周波数閾値ωufrにより規定される範囲よりも広くした。これにより、位相同期部31は、角過周波数閾値ωofrおよび角低周波数閾値ωufrにより規定される範囲よりも広い範囲で位相同期動作を行うことができるので、例えば、電力変換装置を系統連系運転モードM1で動作させた場合において、商用電源GRIDから供給された交流電圧に擾乱が生じた場合に、交流センサに異常が生じたと誤検出するおそれを低減することができる。
また、電力変換装置1では、監視部32のカウンタ49が、検出制御部34から供給されたリセット信号RSTに基づいて、カウント値CNTを、例えば所定の時間間隔(例えば1分間隔)でリセットするようにした。これにより、例えば交流電圧に擾乱が生じることにより、突発的に角周波数偏差Δωが乱れ、カウント値CNTが増加した場合でも、そのような状態が短い時間で収まった場合には、このカウント値CNTがリセットされるので、交流センサに異常が生じたと誤検出するおそれを低減することができる。
また、例えば、電力変換制御部21が、位相同期部31を含んでいる場合には、監視部32、判定部33、および検出制御部34を追加するだけで、交流センサの異常を検出することができる。
[効果]
以上のように本実施の形態では、交流センサから供給された検出電圧に基づいて位相同期動作を行うことにより角周波数偏差を求める位相同期部を設け、この角周波数偏差に基づいて交流センサの異常を検出するようにしたので、交流センサの異常を効果的に検出することができる。
本実施の形態では、位相同期部を設け、バンドパスフィルタにより検出電圧に含まれる低周波数成分および高周波数成分を除去し、除去された信号に基づいて位相同期動作を行うようにしたので、周波数偏差(角周波数偏差)を高い精度で求めることができる。
<2.第2の実施の形態>
次に、第2の実施の形態に係る電力変換装置2について説明する。本実施の形態は、3相3線式(Δ結線)の電源装置において、交流センサの異常を検出できるように構成したものである。なお、上記第1の実施の形態に係る電力変換装置1と実質的に同一の構成部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
図9は、本実施の形態に係る電力変換装置2の一構成例を表すものである。電力変換装置2は、端子T11,T12と、端子T41,T42,T43とを備えている。端子T41,T42,T43は、商用電源GRIDに接続されている。電力変換装置2は、系統連系運転を行うものである。すなわち、上記第1の実施の形態に係る電力変換装置1は、系統連系運転モードM1および自立運転モードM2を含む2つの運転モードで動作を行うようにしたが、本実施の形態に係る電力変換装置は、自立運転を行わずに、系統連系運転を行うようになっている。
電力変換装置2は、電力変換部50と、電流検出部53,54,55と、スイッチSgridu,Sgriduと、Sgridwと、電圧検出部56,57,58と、制御部60とを備えている。
電力変換部50は、直流電力と交流電力との間で電力変換を行うものである。電力変換部50は、双方向DC/ACインバータ52と、双方向DC/DCコンバータ51とを有している。
双方向DC/ACインバータ52は、3相3線式のインバータである。双方向DC/ACインバータ52は、高電圧線HLおよび低電圧線LLを介して双方向DC/DCコンバータ51に接続される。また、双方向DC/ACインバータ52は、例えば図示しないLCフィルタ回路を介してU相電圧線UL、V相電圧線VL、およびW相電圧線WLに接続され、これらのU相電圧線UL、V相電圧線VL、およびW相電圧線WLを介してスイッチSgridu,Sgridv,Sgridwに接続される。双方向DC/ACインバータ52は、商用電源GRIDから供給された交流電圧に基づいて直流バス電圧Vdcを生成するとともに、直流バス電圧Vdcが所定の電圧になるように電圧一定制御を行うようになっている。
双方向DC/DCコンバータ51は、端子T11,T12を介してバッテリBTに接続されるとともに、高電圧線HLおよび低電圧線LLを介して双方向DC/ACインバータ52に接続される。双方向DC/DCコンバータ51は、直流バス電圧Vdcおよびバッテリ電流Ibtに基づいて、バッテリBTを充放電させる充放電制御を行うようになっている。
電流検出部53は、U相電圧線ULに流れる電流i_uを検出する交流センサである。電流検出部53は、電流i_uを検出するセンサと、検出した電流i_uに応じた検出電圧Vi_uを生成するアナログ回路とを含んでいる。電流検出部53の第1端は双方向DC/ACインバータ52に接続され、第2端はスイッチSgriduに接続されている。そして、電流検出部53は、検出した電流i_uに応じた検出電圧Vi_uを制御部60に供給するようになっている。
電流検出部54は、V相電圧線VLに流れる電流i_vを検出する交流センサである。電流検出部54は、電流i_vを検出するセンサと、検出した電流i_vに応じた検出電圧Vi_vを生成するアナログ回路とを含んでいる。電流検出部54の第1端は双方向DC/ACインバータ52に接続され、第2端はスイッチSgridvに接続されている。そして、電流検出部54は、検出した電流i_vに応じた検出電圧Vi_vを制御部60に供給するようになっている。
電流検出部55は、W相電圧線WLに流れる電流i_wを検出する交流センサである。電流検出部55は、電流i_wを検出するセンサと、検出した電流i_wに応じた検出電圧Vi_wを生成するアナログ回路とを含んでいる。電流検出部55の第1端は双方向DC/ACインバータ52に接続され、第2端はスイッチSgridwに接続されている。そして、電流検出部55は、検出した電流i_wに応じた検出電圧Vi_wを制御部60に供給するようになっている。
スイッチSgridu,Sgridv,Sgridwは、オン状態になることにより、U相電圧線UL、V相電圧線VL、およびW相電圧線WLを商用電源GRIDに接続するものである。スイッチSgriduの第1端はU相電圧線ULに接続され、第2端は端子T41に接続されている。スイッチSgridvの第1端はV相電圧線VLに接続され、第2端は端子T42に接続されている。スイッチSgridwの第1端はW相電圧線WLに接続され、第2端は端子T43に接続されている。スイッチSgridu,Sgridv,Sgridwは、制御部60から供給されたスイッチ制御信号Sgに基づいてオンオフするようになっている。スイッチSgridu,Sgridv,Sgridwは、例えば、リレーを用いて構成される。
電圧検出部56は、商用電源GRIDから供給される、U相の交流電圧とW相の交流電圧の差電圧である電圧e_uwを検出する交流センサである。電圧検出部56は、電圧e_uwを検出するセンサと、検出した電圧e_uwに応じた検出電圧Ve_uwを生成するアナログ回路とを含んでいる。電圧検出部56の第1端は端子T41に接続され、第2端は端子T43に接続されている。電圧検出部56は、端子T43における電圧からみた端子T41における電圧を電圧e_uwとして検出する。そして、電圧検出部56は、検出した電圧e_uwに応じた検出電圧Ve_uwを制御部60に供給するようになっている。
電圧検出部57は、商用電源GRIDから供給される、U相の交流電圧とV相の交流電圧の差電圧である電圧e_uvを検出する交流センサである。電圧検出部57は、電圧e_uvを検出するセンサと、検出した電圧e_uvに応じた検出電圧Ve_uvを生成するアナログ回路とを含んでいる。電圧検出部57の第1端は端子T41に接続され、第2端は端子T42に接続されている。電圧検出部57は、端子T42における電圧からみた端子T41における電圧を電圧e_uvとして検出する。そして、電圧検出部57は、検出した電圧e_uvに応じた検出電圧Ve_uvを制御部60に供給するようになっている。
電圧検出部58は、商用電源GRIDから供給される、V相の交流電圧とW相の交流電圧の差電圧である電圧e_vwを検出する交流センサである。電圧検出部58は、電圧e_vwを検出するセンサと、検出した電圧e_vwに応じた検出電圧Ve_vwを生成するアナログ回路とを含んでいる。電圧検出部58の第1端は端子T42に接続され、第2端は端子T43に接続されている。電圧検出部58は、端子T43における電圧からみた端子T42における電圧を電圧e_vwとして検出する。そして、電圧検出部58は、検出した電圧e_vwに応じた検出電圧Ve_vwを制御部60に供給するようになっている。
端子T41,T42,T43は、商用電源GRIDに接続されている。商用電源GRIDは、3相3線式(Δ結線)のものであり、商用電源GRIDのU相電圧線が電力変換装置2の端子T41に接続され、商用電源GRIDのV相電圧線が電力変換装置2の端子T42に接続され、商用電源GRIDのW相電圧線が電力変換装置2の端子T43に接続されている。
制御部60は、電力変換部50、およびスイッチSgridu,Sgridv,Sgridwの動作を制御するものである。具体的には、制御部60は、電流検出部53から供給された検出電圧Vi_u、電流検出部54から供給された検出電圧Vi_v、電流検出部55から供給された検出電圧Vi_w、電圧検出部56から供給された検出電圧Ve_uw、電圧検出部57から供給された検出電圧Ve_uv、および電圧検出部58から供給された検出電圧Ve_vwに基づいて、電力変換部50の動作を制御する。また、制御部60は、電流検出部53〜55および電圧検出部56〜58の異常を検出する動作をも行うことができるようになっている。
制御部60は、電力変換制御部61と、異常検出部70とを有している。電力変換制御部61は、双方向DC/DCコンバータ51および双方向DC/ACインバータ52の動作を制御するものである。異常検出部70は、電流検出部53〜55および電圧検出部56〜58の異常を検出する、異常検出動作を行うものである。
異常検出部70は、2つの変換部75(変換部75A,75B)と、2つの位相同期部71(位相同期部71A,71B)と、2つの監視部72(監視部72A,72B)と、2つの判定部73(判定部73A,73B)と、検出制御部74とを有している。
変換部75Aは、検出電圧Ve_uv,Ve_vw,Ve_uwに基づいて、例えば以下の式を用いて信号xαA,xβAを生成するものである。
ここで、信号Ve_uv2は、式EQ6に示したように、検出電圧Ve_vwと検出電圧Ve_uwとの差電圧であり、U相電圧線ULおよびV相電圧線VLの線間電圧に対応する。同様に、信号Ve_vw2は、式EQ6に示したように、検出電圧Ve_uvと検出電圧Ve_uwとの差電圧であり、V相電圧線VLおよびW相電圧線WLの線間電圧に対応する。変換部75Aは、これらの線間電圧に基づいて、式EQ7を用いて信号xαA,xβAを生成する。このようにして、変換部75Aは、信号xαA、および信号xαAよりも位相がπ/2だけ遅れた信号xβAを生成する。これらの2つの信号xαA,xβAは、3つの検出電圧Ve_uv,Ve_vw,Ve_uwについての情報を含んでいる。これにより、異常検出部70は、これらの2つの信号xαA,xβAに基づいて、3つの電圧検出部56〜58の異常を検出することができる。
変換部75Bは、検出電圧Vi_u,Vi_v,Vi_wに基づいて、例えば以下の式を用いて信号xαB,xβBを生成するものである。
このようにして、変換部75Bは、信号xαB、および信号xαBよりも位相がπ/2だけ遅れた信号xβBを生成するようになっている。これらの2つの信号xαB,xβBは、3つの検出電圧Vi_u,Vi_v,Vi_wについての情報を含んでいる。これにより、異常検出部70は、これらの2つの信号xαB,xβBに基づいて、3つの電流検出部53〜55の異常を検出することができる。
位相同期部71は、交流信号に基づいて位相同期動作を行うことにより、角周波数偏差Δωについての情報を生成するものである。具体的には、位相同期部71Aは、変換部75Aから供給された信号xαA,xβAに基づいて、位相同期動作を行うことにより角周波数偏差Δω(角周波数偏差ΔωA)についての情報を生成し、この角周波数偏差ΔωAについての情報を監視部72Aに供給する。また、位相同期部71Aは、この位相同期動作を行うことにより位相θAについての情報を生成し、この位相θAについての情報を電力変換制御部61に供給するようになっている。位相同期部71Bは、変換部75Bから供給された信号xαB,xβBに基づいて、位相同期動作を行うことにより角周波数偏差Δω(角周波数偏差ΔωB)についての情報を生成し、この角周波数偏差ΔωBについての情報を監視部72Bに供給する。また、位相同期部71Bは、この位相同期動作を行うことにより位相θBについての情報を生成し、この位相θBについての情報を電力変換制御部61に供給するようになっている。以下に、位相同期部71Aを例に挙げて、詳細に説明する。
図10は、位相同期部71Aの一構成例を表すものである。なお、この図10では、位相同期部71Aに加え、この位相同期部71Aに係る監視部72Aおよび判定部73Aをも描いている。位相同期部71Aは、ローパスフィルタ81,82を有している。
ローパスフィルタ81は、変換部75Aから供給された信号xαAに含まれる高周波数成分を除去することにより、信号yαを生成するものである。ローパスフィルタ81におけるラプラス形式の伝達関数H(s)は、例えば以下のように表すことができる。
ローパスフィルタ82は、変換部75Aから供給された信号xβAに含まれる高周波数成分を除去することにより、信号yβを生成するものである。ローパスフィルタ82における伝達関数H(s)は、式EQ9に示したローパスフィルタ81における伝達関数H(s)と同じである。
この構成により、例えば、位相同期部71Aでは、電圧検出部56から供給された検出電圧Ve_uw、電圧検出部57から供給された検出電圧Ve_uv、および電圧検出部58から供給された検出電圧Ve_vwに基づいて、位相同期動作が行われる。位相同期が確立すると、誤差信号errは、ほぼ一定の値になる。また、例えば、電圧検出部56〜58のうちの少なくとも1つに異常が生じた場合には、位相同期部71Aでは位相同期は確立せず、誤差信号errの値は振動し、その結果、角周波数偏差ΔωAは大きな振幅で振動する。これにより、この位相同期部71Aの後段の回路である監視部72Aおよび判定部73Aは、このような振動する角周波数偏差ΔωAに基づいて、この電圧検出部56〜58の異常を検出するようになっている。
以上、位相同期部71Aを例に説明したが、位相同期部71Bについても同様である。位相同期部71Bのローパスフィルタ81は、変換部75Aから供給された信号xαBに含まれる高周波数成分を除去することにより、信号yαを生成する。位相同期部71Bのローパスフィルタ82は、変換部75Aから供給された信号xβBに含まれる高周波数成分を除去することにより、信号yβを生成する。
監視部72(図9)は、上記第1の実施の形態に係る監視部32と同様に、角周波数偏差Δωを監視するものである。具体的には、監視部72Aは、位相同期部71Aから供給された角周波数偏差ΔωAについての情報に基づいて、角周波数偏差ΔωAが大きな振幅で振動したときに、この振動に応じてカウント値CNTAを生成し、このカウント値CNTAを判定部73Aに供給する。監視部72Bは、位相同期部71Bから供給された角周波数偏差ΔωBについての情報に基づいて、角周波数偏差ΔωBが大きな振幅で振動したときに、この振動に応じてカウント値CNTBを生成し、このカウント値CNTBを判定部73Bに供給する。
判定部73(図1)は、上記第1の実施の形態に係る判定部33と同様に、カウント値CNTに基づいて、異常判定を行うものである。具体的には、判定部73Aは、監視部72Aから供給されたカウント値CNTAに基づいて、カウント値CNTAがカウント値CNT0に達した場合に、電圧検出部56〜58のうちの少なくとも1つに異常が生じたと判定する。同様に、判定部73Bは、監視部72Bから供給されたカウント値CNTBに基づいて、カウント値CNTBがカウント値CNT0に達した場合に、電流検出部53〜55のうちの少なくとも1つに異常が生じたと判定する。そして、判定部73A,73Bは、判定結果を出力するようになっている。
検出制御部74は、上記第1の実施の形態に係る検出制御部34と同様に、異常検出部70における異常検出動作を制御するものである。また、検出制御部74は、例えば、角周波数ωlimおよび基本角周波数ωoについての情報を位相同期部71A,71Bに供給し、角周波数ωlim2についての情報およびリセット信号RSTを監視部72A,72Bに供給するようになっている。
ここで、電力変換部50は、本開示における「電力変換部」の一具体例に対応する。電流検出部53〜55および電圧検出部56〜58のいずれかは、本開示における「第1の交流センサ」の一具体例に対応する。位相同期部71は、本開示における「位相同期部」の一具体例に対応する。監視部72および判定部73は、本開示における「検出部」の一具体例に対応する。ローパスフィルタ81,82は、本開示における「ローパスフィルタ」の一具体例に対応する。
以上のように、電力変換装置2では、電圧検出部56から供給された検出電圧Ve_uw、電圧検出部57から供給された検出電圧Ve_uv、および電圧検出部58から供給された検出電圧Ve_vwに基づいて位相同期部71Aが位相同期動作を行うようにしたので、3つの電圧検出部56〜58の異常をまとめて検出することができる。同様に、電流検出部53から供給された検出電圧Vi_u、電流検出部54から供給された検出電圧Vi_v、および電流検出部55から供給された検出電圧Vi_wに基づいて位相同期部71Bが位相同期動作を行うようにしたので、3つの電流検出部53〜55の異常をまとめて検出することができる。その結果、電力変換装置2では、回路規模を抑えつつ、交流センサの異常を効果的に検出することができる。
以上のように本実施の形態では、3つの電圧検出部から供給された検出電圧に基づいて位相同期部71Aが位相同期動作を行い、3つの電流検出部から供給された検出電圧に基づいて位相同期部71Bが位相同期動作を行うようにしたので、回路規模を抑えつつ、交流センサの異常を効果的に検出することができる。
[変形例2−1]
上記実施の形態では、3つの電流検出部53〜55、および3つの電圧検出部56〜58を設けたが、これに限定されるものではなく、これに代えて、例えば図11に示す電力変換装置2Aのように、3つの電圧検出部56〜58のうちの1つを省いてもよいし、3つの電流検出部53〜55のうちの1つを省いてもよい。この電力変換装置2Aは、2つの電流検出部53,55と、2つの電圧検出部57,58と、制御部60Aとを備えている。制御部60Aは、電流検出部53から供給された検出電圧Vi_uおよび電流検出部55から供給された検出電圧Vi_wに基づいて、以下の式を用いて、検出電圧Vi_vを求める。また、制御部60Aは、電圧検出部57から供給された検出電圧Ve_uvおよび電圧検出部58から供給された検出電圧Ve_vwに基づいて、以下の式を用いて、検出電圧Ve_uwを求める。
そして、異常検出部70は、検出電圧Ve_uw,Ve_uv,Ve_vwに基づいて電圧検出部57,58の異常をまとめて検出し、検出電圧Vi_u,Vi_v,Vi_wに基づいて電流検出部53,55の異常をまとめて検出する。制御部60Aがこのような演算を行うことにより、電力変換装置2Aでは、電流検出部54および電圧検出部56を省くことができる。
[変形例2−2]
上記実施の形態では、電力変換装置2は、自立運転を行わずに、系統連系運転を行うように構成したが、これに限定されるものではない。これに代えて、例えば、第1の実施の形態に係る電力変換装置1(図1)と同様に、系統連系運転モードM1および自立運転モードM2を含む2つの運転モードで動作を行うように構成してもよい。
[変形例2−3]
上記実施の形態では、上記実施の形態では、電流検出部53から供給された検出電圧Vi_u、電流検出部54から供給された検出電圧Vi_v、および電流検出部55から供給された検出電圧Vi_wに基づいて位相同期部71Bが位相同期動作を行うようにしたが、これに限定されるものではない。これに代えて、第1の実施の形態に係る電力変換装置1(図1)と同様に、3つの位相同期部(第1の位相同期部、第2の位相同期部、および第3の位相同期部)を設け、電流検出部53から供給された検出電圧Vi_uに基づいて第1の位相同期部が位相同期動作を行い、電流検出部54から供給された検出電圧Vi_vに基づいて第2の位相同期部が位相同期動作を行い、電流検出部55から供給された検出電圧Vi_wに基づいて第3の位相同期部が位相同期動作を行うようにしてもよい。これにより、3つの電流検出部53〜55の異常を個別に検出することができる。
同様に、電圧検出部56から供給された検出電圧Ve_uw、電圧検出部57から供給された検出電圧Ve_uv、および電圧検出部58から供給された検出電圧Ve_vwに基づいて位相同期部71Aが位相同期動作を行うようにしたが、これに限定されるものではない。これに代えて、第1の実施の形態に係る電力変換装置1(図1)と同様に、3つの位相同期部(第4の位相同期部、第5の位相同期部、および第6の位相同期部)を設け、電圧検出部56から供給された検出電圧Ve_uwに基づいて第4の位相同期部が位相同期動作を行い、電圧検出部57から供給された検出電圧Ve_uvに基づいて第5の位相同期部が位相同期動作を行い、電圧検出部58から供給された検出電圧Ve_vwに基づいて第6の位相同期部が位相同期動作を行うようにしてもよい。これにより、3つの電圧検出部56〜58の異常を個別に検出することができる。
[変形例2−4]
上記実施の形態では、本技術を3相3線式(Δ結線)の電源装置に適用したが、これに限定されるものではなく、これに代えて、例えば、3相4線式(Y結線)の電源装置に適用してもよい。以下に、本変形例に係る電力変換装置2Bについて、詳細に説明する。
図12は、電力変換装置2Bの一構成例を表すものである。電力変換装置2Bは、電力変換部90と、スイッチSgridoと、電圧検出部96,97,98と、制御部100とを備えている。
電力変換部90は、直流電力と交流電力との間で電力変換を行うものである。電力変換部90は、双方向DC/ACインバータ92を有している。双方向DC/ACインバータ92は、3相4線式のインバータである。双方向DC/ACインバータ92は、例えば図示しないLCフィルタ回路を介してU相電圧線UL、V相電圧線VL、W相電圧線WL、およびO相電圧線OLに接続され、これらのU相電圧線UL、V相電圧線VL、W相電圧線WL、およびO相電圧線OLを介してスイッチSgridu,Sgridv,Sgridw,Sgridoに接続される。
スイッチSgridoの第1端はO相電圧線OLに接続され、第2端は端子T44に接続されている。スイッチSgridoは、制御部100から供給されたスイッチ制御信号Sgに基づいてオンオフするようになっている。
電圧検出部96は、商用電源GRIDから供給される、U相の交流電圧とO相の電圧の差電圧である電圧e_uoを検出する交流センサである。電圧検出部96は、検出した電圧e_uoに応じた検出電圧Ve_uoを制御部100に供給するようになっている。電圧検出部97は、商用電源GRIDから供給される、V相の交流電圧とO相の電圧の差電圧である電圧e_voを検出する交流センサである。電圧検出部97は、検出した電圧e_voに応じた検出電圧Ve_voを制御部100に供給するようになっている。電圧検出部98は、商用電源GRIDから供給される、W相の交流電圧とO相の電圧の差電圧である電圧e_woを検出する交流センサである。電圧検出部98は、検出した電圧e_woに応じた検出電圧Ve_woを制御部100に供給するようになっている。
端子T41,T42,T43,T44は、商用電源GRIDに接続されている。商用電源GRIDは、3相4線式(Y結線)のものであり、商用電源GRIDのU相電圧線が電力変換装置2Bの端子T41に接続され、商用電源GRIDのV相電圧線が電力変換装置2Bの端子T42に接続され、商用電源GRIDのW相電圧線が電力変換装置2Bの端子T43に接続され、商用電源GRIDのO相電圧線が電力変換装置2Bの端子T44に接続されている。
制御部100は、電力変換部90、およびスイッチSgridu,Sgridv,Sgridw,Sgridoの動作を制御するものである。具体的には、制御部100は、電流検出部53から供給された検出電圧Vi_u、電流検出部54から供給された検出電圧Vi_v、電流検出部55から供給された検出電圧Vi_w、電圧検出部96から供給された検出電圧Ve_uo、電圧検出部97から供給された検出電圧Ve_vo、および電圧検出部98から供給された検出電圧Ve_woに基づいて、電力変換部90の動作を制御する。また、制御部100は、電流検出部53〜55および電圧検出部96〜98の異常を検出する動作をも行うことができるようになっている。
制御部100は、電力変換制御部101と、異常検出部110とを有している。電力変換制御部101は、双方向DC/DCコンバータ51および双方向DC/ACインバータ92の動作を制御するものである。異常検出部110は、電流検出部53〜55および電圧検出部96〜98の異常を検出する、異常検出動作を行うものである。
異常検出部110は、変換部115Aを有している。変換部115Aは、検出電圧Ve_uo,Ve_vo,Ve_woに基づいて、例えば以下の式を用いて信号xαA,xβAを生成するものである。
これらの2つの信号xαA,xβAは、3つの検出電圧Ve_uo,Ve_vo,Ve_woについての情報を含んでいる。これにより、異常検出部110は、これらの2つの信号xαA,xβAに基づいて、3つの電圧検出部96〜98の異常を検出することができる。
[その他の変形例]
また、これらの変形例のうちの2以上を組み合わせてもよい。
以上、実施の形態および変形例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態等には限定されず、種々の変形が可能である。
例えば、上記第1の実施の形態では、式EQ1に示した伝達関数H(s)を有するバンドパスフィルタ41を用いたが、これに限定されるものではなく、これに代えて、例えば、より高次のフィルタを用いてもよい。同様に、上記第2の実施の形態では、式EQ9に示した伝達関数H(s)を有するローパスフィルタ81,82を用いたが、これに限定されるものではなく、これに代えて、例えば、より高次のフィルタを用いてもよい。
例えば、上記第1の実施の形態では、制御部20に、位相同期部31、監視部32、および判定部33をそれぞれ3つずつ設けることにより3系統分の異常検出回路を構成したが、これに限定されるものではない。例えば、マイクロコントローラの処理能力が低い場合には、2系統分の異常検出回路を構成してもよいし、1系統分の異常検出回路を構成してもよい。図13に、2系統分の異常検出回路を構成した電力変換装置1Aの一構成例を示す。電力変換装置1Aは、制御部120を備えている。制御部120は、異常検出部130を有している。異常検出部130は、信号生成部131と、2つの位相同期部31(位相同期部31A,31B)と、2つの監視部32(監視部32A,32B)と、2つの判定部33(判定部33A,33B)とを有している。信号生成部131は、検出電圧Ve_uwおよび検出電圧Ve_stdに基づいて、例えば以下の2つの式のいずれか1つを用いて信号Ve_uw2を生成するものである。
位相同期部31Aは、信号生成部131から供給された信号Ve_uw2に基づいて、位相同期動作を行うことにより角周波数偏差Δω(角周波数偏差ΔωA)についての情報を生成する。例えば、系統連系運転モードM1において、信号生成部131が式EQ12Aを用いて信号Ve_uw2を生成することにより、異常検出部130は、2つの電圧検出部14,15の異常をまとめて検出することができる。そして、2つの電圧検出部14,15のいずれかの異常が検出された場合には、例えば、スイッチSgridu,Sgridwをオフ状態にし、信号生成部131が式EQ12Bを用いて信号Ve_uw2を生成することにより、異常検出部130は、2つの電圧検出部14,15のうちのどちらに異常が生じているかを判別することができる。
例えば、上記実施の形態では、角周波数偏差Δωに基づいて交流センサの異常を検出したが、これに限定されるものではなく、角周波数ωに基づいて交流センサの異常を検出してもよい。以下に、本技術を第1の実施の形態に係る電力変換装置1に適用した場合の例について説明する。図14に、本変形例に係る電力変換装置1Bの一構成例を示す。電力変換装置1Bは、制御部140を備えている。制御部140は異常検出部150を有している。異常検出部150は、3つの位相同期部151(位相同期部151A,15B,151C)と、3つの監視部152(監視部152A,152B,152C)と、検出制御部154とを有している。位相同期部151は、交流信号に基づいて位相同期動作を行うことにより、角周波数ωについての情報を生成するものである。具体的には、位相同期部151Aは、電圧検出部14から供給された検出電圧Ve_uwに基づいて、位相同期動作を行うことにより角周波数ω(角周波数ωA)についての情報を生成し、この角周波数ωAについての情報を監視部152Aに供給する。位相同期部151B,151Cについても同様である。監視部152は、角周波数ωを監視するものである。具体的には、監視部152Aは、位相同期部151Aから供給された角周波数ωAについての情報に基づいて、角周波数ωAが大きな振幅で振動したときに、この振動に応じてカウント値CNTAを生成し、このカウント値CNTAを判定部33Aに供給する。監視部152B,152Cについても同様である。
図15に、位相同期部151Aおよび監視部152Aの一構成例を示す。位相同期部151Aの加算部46は、角周波数ω(=ωo+Δω1)についての情報を、角周波数ωAについての情報として、監視部152Aに供給する。監視部152Aは、パルス生成部158を有している。パルス生成部158は、角周波数ωAについての情報に基づいて、パルス信号SPを生成するものである。具体的には、パルス生成部158は、角周波数ωAと、2つの所定の閾値(ωlim_max,ωlim_min)とを比較することにより、角周波数ωAが大きな振幅で振動しているかどうかを確認し、角周波数ωAが大きな振幅で振動しているときに、この振動に応じてパルス信号SPを生成する。ここで、角周波数ωは、本開示における「周波数情報」の一具体例に対応する。
図16に示したように、例えば、電圧検出部14が正常に動作している場合(正常期間TA)には、位相同期部151Aでは、位相同期が確立するので、角周波数ωAは基本角周波数ωo付近になる(図16(A))。この場合には、角周波数ωAは、上側の閾値ωlim_maxや、下側の閾値ωlim_minに到達しない。一方、電圧検出部14に異常が生じた場合(異常期間TB)には、位相同期が確立せず、角周波数ωAが大きな振幅で振動する(図16(A))。パルス生成部158は、角周波数ωAが、上側の閾値ωlim_maxを上回ったタイミングで、パルス信号SPを低レベルから高レベルに変化させ、角周波数ωAが、下側の閾値ωlim_minを下回ったタイミングで、パルス信号SPを高レベルから低レベルに変化させる。これらの閾値ωlim_max,ωlim_minについての情報は、検出制御部154から供給される。閾値ωlim_max,ωlim_minは、系統連系運転モードM1では、以下の式を用いて表される。
ここで、bは、所定の角周波数であり、0以上の値に設定される。また、閾値ωlim_max,ωlim_minは、自立運転モードM2では、以下の式を用いて表される。
なお、以上の説明では、本技術を第1の実施の形態に係る電力変換装置1に適用したが、本技術を第2の実施の形態に係る電力変換装置2に適用した場合についても同様である。
例えば、上記実施の形態等では、位相同期部31A(図3)および位相同期部71A(図10)などにおいて、フィルタ回路を用いて信号yα,yβを生成したが、これに限定されるものではない。例えば、位相同期部31A(図3)では、交流センサの構成や検出方法に応じて、適宜、バンドパスフィルタ41を省いてもよい。この場合には、例えば、検出電圧Ve_uwを信号yαとして用いることができる。また、オールパスフィルタ42の代わりに微分回路を用い、この微分回路を用いて、信号yαに基づいて信号yβを生成してもよい。また、例えば位相同期部71A(図10)では、交流センサの構成や検出方法に応じて、適宜、ローパスフィルタ81,82を省いてもよい。この場合には、例えば、信号xαAを信号yαとして用いることができ、信号xβAを信号yβとして用いることができる。
例えば、上記実施の形態等では、基本角周波数ωoを“2π×60Hz”にしたが、これに限定されるものではなく、これに代えて、例えば“2π×50Hz”にしてもよい。
例えば、上記実施の形態等では、電力変換装置に交流センサを設けたが、これに限定されるものではなく、例えば、商用電源GRIDに交流センサを設けてもよい。このような交流センサは、例えば、クランプ型の交流電流センサを用いることができる。この場合でも、異常検出部は、この交流センサから供給された検出電圧に基づいて、交流センサの異常を検出することができる。
例えば、上記実施の形態等では、本技術を、直流電力と交流電力との間で電力を変換する電力変換装置に適用したが、これに限定されるものではない。これに代えて、本技術を、第1の交流電力と第2の交流電力との間で、周波数変換を行うことにより電力を変換する電力変換装置に適用してもよい。周波数変換は、50Hzと60Hzとの間で行ってもよいし、商用電源の周波数(50Hzや60Hz)と、航空機や船舶において用いられる電源の周波数(400Hz)との間で行ってもよい。この場合、基本角周波数ωo、角周波数ωlim,ωlim2は、適宜設定することができる。
例えば、本技術を、産業用の3相交流モータ装置に用いられる交流センサの異常検出に用いてもよい。
例えば、上記の実施の形態に係る電力変換装置は、車両に搭載することができる。車両では、しばしば自己診断機能が搭載される。車両の自己診断機能では、例えば、OBD2(On-board diagnostics 2)規格に準拠することが望まれる。上記の実施の形態に係る電力変換装置を車両に搭載することにより、交流センサの異常を検出することができるため、自己診断を行うことができる。