JP2020004506A - リチウムイオン二次電池用の正極活物質とその製造方法、およびチウムイオン二次電池 - Google Patents

リチウムイオン二次電池用の正極活物質とその製造方法、およびチウムイオン二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】 高い出力特性と高いエネルギー密度とを高いレベルで両立させた二次電池が得られる正極活物質と、その製造方法を提供する。【解決手段】 リチウム(Li)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、及び、任意に元素Mを含み、六方晶系の層状構造を有するリチウム金属複合酸化物の粉体を含有する正極活物質であって、リチウム金属複合酸化物の粉体の粒度分布において、ばらつきの指数を示す[(D90−D10)/体積平均粒径Mv]が0.80以上であり(なお、D90、及び、D10は、それぞれ、レーザー光回折散乱法により測定される累積90体積%径、及び、累積10体積%を示す。)、リチウム金属複合酸化物の粉体は、粒径の小さい粒子ほど、Ni、Co、Mn、及び、前記元素Mの物質量の合計に対する、Coの物質量の比率が高くなるような組成勾配を有する、リチウムイオン二次電池用の正極活物質。【選択図】図1

Description

本発明は、本発明は、リチウムイオン二次電池用の正極活物質とその製造方法、およびリチウムイオン二次電池に関する。
近年、スマートフォン、タブレット端末、携帯電話、ノート型パソコンなどの携帯電子機器の普及に伴い、高いエネルギー密度や耐久性を有する小型で軽量な二次電池の開発が強く望まれている。また、電動工具やハイブリット自動車をはじめとする車載用電池として高出力の二次電池の開発が強く望まれている。
このような要求を満たす二次電池として、リチウムイオン二次電池がある。リチウムイオン二次電池は、負極および正極と電解液等で構成され、負極および正極の活物質として、リチウムイオンを脱離および挿入することが可能な材料が用いられている。
リチウムイオン二次電池については、現在研究開発が盛んに行われているところであるが、中でも、層状またはスピネル型のリチウム金属複合酸化物を正極材料(正極活物質)に用いたリチウムイオン二次電池は、4V級の高い電圧が得られるため、高いエネルギー密度を有する電池として実用化が進んでいる。
リチウムイオン二次電池の正極活物質としては、現在、合成が比較的容易なリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO)や、コバルトよりも安価なニッケルを用いたリチウムニッケル複合酸化物(LiNiO)、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi1/3Co1/3Mn1/3)、マンガンを用いたリチウムマンガン複合酸化物(LiMn)、リチウムニッケルマンガン複合酸化物(LiNi0.5Mn0.5)などのリチウム金属複合酸化物が提案されている。
これらの正極活物質の中でも、近年、熱安定性に優れ、かつ、高容量であるリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi1/3Co1/3Mn1/3)が注目されている。リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物は、リチウムコバルト複合酸化物やリチウムニッケル複合酸化物などと同じく層状化合物であり、遷移金属サイトにおいてニッケルと、コバルトと、マンガンとを基本的に組成比1:1:1の割合で含んでいる。
一般に、リチウムイオン二次電池の正極反応抵抗は、充電状態を表すSOC(States of Charge)に対して、低SOC側と高SOC側とにおいて急激に増大し、SOCが50%前後においては値が小さくなり、かつSOCに対する変化量も小さくなる。よって、充電初期(低SOC側)と充電末期(高SOC側)の正極反応抵抗を小さくすることで、実際に使用できるSOC領域を広くして、実際に使用できる電気容量を大きくすることができる。例えば、車載用のリチウムイオン二次電池においては、特に、低SOC側での出力特性が重要となる。
例えば、特許文献1では、タップ密度が2.0g/cm以上で且つ平均粒径が0.01〜5μmの正極活物質が開示されている。また、例えば、特許文献2では、複数の一次粒子が互いに結合されて内部に空隙が形成された正極活物質が開示されている。これらの特許文献に記載されるように、小粒径化した正極活物質や、内部に空隙を有する正極活物質は、二次電池の正極において、反応表面積が増加するため、出力特性を向上させることができる。
また、例えば、特許文献3に開示されているように、正極活物質の粒度分布をブロードとすることで、正極における正極活物質の充填率と高め、正極の電極密度を向上させる取り組みも試みられている。正極の電極密度を向上させることにより、二次電池のエネルギー密度を向上させることができる。
特開2011−187419号公報 特開2013−012391号公報 国際公開2018/020845号
しかしながら、上記特許文献1、2の正極活物質では、出力特性が向上する反面、生産効率が低く製造コストが増大してしまうという問題があるだけでなく、粒径が小さいことや、粒子内部に空隙を有することから、正極において電極密度を高くすることが困難であり、エネルギー密度が低くなるという問題があった。
一方、特許文献3の正極活物質のように、粒度分布をブロードにするだけでは、小径化したり、内部に空隙を有する正極活物質を用いたりする場合と比較して、二次電池の出力特性が十分ではなく、さらなる改善が求められていた。
このように、従来の正極活物質を用いた二次電池では、出力特性、又は、エネルギー密度のいずれかの点で改善が求められており、出力特性とエネルギー密度という両方の特性を高次元で両立させる正極活物質の開発が望まれていた。本発明は、これら事情を鑑みてなされたものであり、高い出力特性と高いエネルギー密度とを高いレベルで両立させた二次電池が得られる正極活物質と、その製造方法を提供することを目的とする。
本発明の第1の態様では、リチウム(Li)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、及び、任意に元素Mを含み、六方晶系の層状構造を有するリチウム金属複合酸化物の粉体を含有する正極活物質であって、リチウム金属複合酸化物の粉体は、各元素の物質量比(モル比)が、Li:Ni:Co:Mn:M=(1+u):(1−x−y−z):x:y:z[式中、uは−0.05≦u≦0.50、xは0.15≦x≦0.50、yは0.15≦y≦0.50、zは0≦z≦0.10であり、0.30≦(x+y+z)≦0.85を満たし、Mは、W、Mo、V、Zr、Ti、Cr、Al、Si、B、Nb、及び、Taから選択される少なくとも1種の元素]で表され、リチウム金属複合酸化物の粉体の粒度分布において、ばらつきの指数を示す[(D90−D10)/体積平均粒径Mv]が0.80以上であり(なお、D90、及び、D10は、それぞれ、レーザー光回折散乱法により測定される累積90体積%径、及び、累積10体積%を示す。)、リチウム金属複合酸化物の粉体は、粒径の小さい粒子ほど、Ni、Co、Mn、及び、元素Mの物質量の合計に対する、Coの物質量の比率が高くなるような組成勾配を有する、リチウムイオン二次電池用の正極活物質が提供される。
また、リチウム金属複合酸化物の粉体は、体積平均粒径Mvと同じ粒径を有する粒子におけるCoの物質量の比率CoMVと、体積平均粒径Mvの1/5と粒径と同じ粒径を有する粒子におけるCoの物質量の比率Co1/5MVとが、以下の関係式(1)を満たすことが好ましい。
Co1/5MV>1.4CoMV・・・(1)
(なお、上記式(1)中、CoMV、及び、Co1/5MVは、それぞれの粒子における、Ni、Co、Mn、Co、及び、Mの物質量の合計に対するCo物質量の比率を示す。)
また、リチウム金属複合酸化物の粉体は、体積平均粒径Mvが8μm以上20μm以下の範囲であることが好ましい。
本発明の第2の態様では、少なくともニッケルとコバルトとマンガンとを含む混合水溶液を中和して、金属複合水酸化物の粒子を得る、第1の晶析工程と、金属複合水酸化物の粒子を水中に分散させてスラリーを形成し、スラリーに、コバルトを含む水溶液を添加して、中和反応により、金属複合水酸化物の粒子の表面に水酸化コバルトを含む層を形成する、第2の晶析工程と、第2の晶析工程により得られた前駆体の粒子と、リチウム化合物とを混合してリチウム混合物を得る混合工程と、リチウム混合物を、酸化雰囲気中で750℃以上1000℃以下の温度で焼成する焼成工程と、を備える、リチウムイオン二次電池用の正極活物質の製造方法が提供される。
また、混合工程において、リチウム化合物と混合する前に、前駆体を熱処理する工程を備えてもよい。また、第1の晶析工程後に得られる金属複合水酸化物の粒子は、ばらつきの指数を示す[(D90−D10)/体積平均粒径Mv]が0.80以上であることが好ましい。
本発明の第3の態様では、正極と、負極と、電解質とを備え、正極は、上記の正極活物質を含む、リチウムイオン二次電池が提供される。
本発明の正極活物質は、リチウムイオン二次電池の正極に用いた場合、優れた出力特性と、高いエネルギー密度とを高次元で両立することができる。また、本発明の正極活物質の製造方法は、工業的規模の生産においても容易に上記正極活物質を製造することが可能であり、工業的価値はきわめて高いものといえる。
図1は、本実施形態に係る正極活物質の一例を示した図である。 図2は、本実施形態に係る正極活物質の製造方法の一例を示した図である。 図3は、実施例と比較例の正極活物質における、リチウム金属複合酸化物の粒径と、コバルト(Co)のモル量の比率との関係を示す図である。
以下、図面を参照して、本実施形態に係る(1)リチウムイオン二次電池用の正極活物質と、(2)その製造方法、および、(3)リチウムイオン二次電池について説明する。なお、図面においては、各構成をわかりやすくするために、一部を強調して、あるいは一部を簡略化して表しており、実際の構造または形状、縮尺等が異なっている場合がある。
(1)リチウムイオン二次電池用の正極活物質
図1は、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池用の正極活物質(以下、「正極活物質」と称すこともある。)の一例を示した模式図である。本実施形態に係る正極活物質10は、リチウム(Li)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、及び、任意に元素Mを含み、六方晶系の層状構造を有するリチウム金属複合酸化物の粉体1を含有する。
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、粒度分布において、ばらつきの指数を示す[(D90−D10)/体積平均粒径Mv]が0.80以上である、リチウム金属複合酸化物の粉体1において、粒度による組成勾配を有し、小粒径の粒子ほどコバルト(Co)の含有量(モル比)が高い(以下、これを「Coリッチ」ということもある。)組成とすることで、二次電池の出力特性とエネルギー密度との両立が可能であることを見出した。以下、図1を適宜参照して、正極活物質10について、説明する。
(組成)
リチウム金属複合酸化物の粉体1は、各元素の物質量比(モル比)が、Li:Ni:Co:Mn:M=(1+u):(1−x−y−z):x:y:z[式中、uは−0.05≦u≦0.50、xは0.15≦x≦0.50、yは0.15≦y≦0.50、zは0≦z≦0.10であり、0.30≦(x+y+z)≦0.85を満たし、Mは、W、Mo、V、Zr、Ti、Cr、Al、Si、B、Nb、及び、Taから選択される少なくとも1種の元素]で表される。なお、上記組成式は、リチウム金属複合酸化物の粉体(粒子)全体の平均モル比を表している。
また、リチウム金属複合酸化物の粉体1は、組成式:Li1+uNi1−x−y−zCoMn2+α(式中、Mは、W、Mo、V、Zr、Ti、Cr、Al、Si、B、Nb及びTaから選択される少なくとも1種の元素であり、−0.05≦u≦0.50、0.15≦x≦0.50、0.15≦y≦0.50、0≦z≦0.10、0.30≦x+y+z≦0.85、−0.5≦α≦0.5である。)で表されてもよい。なお、組成式中のαは、0であってもよい。
上記モル比、及び、組成式において、Coの含有量を示すxの範囲は、0.15≦x≦0.50、好ましくは0.20≦x≦0.50、より好ましくは0.20≦x≦0.40である。xの値がこの範囲である場合、正極活物質10を用いた得られた二次電池は、良好な電池容量を有し、かつ、反応抵抗(正極抵抗)が低下することにより、より高い出力特性を有する。
上記モル比、及び、組成式において、Mnの含有量を示すyの範囲は、0.15≦y≦0.50、好ましくは0.20≦y≦0.50、より好ましくは0.20≦a≦0.40である。yの値がこの範囲である場合、正極活物質10を用いた得られた二次電池は、電池容量や出力特性が良好であるだけでなく、熱安定性が向上する。
任意に添加する元素Mは、W、Mo、V、Zr、Ti、Cr、Al、Si、B、Nb、及び、Taから選択される少なくとも1種の元素である。また、元素Mは、結晶中のNi、Co、Mnの何れかと一部置換可能な元素であることが好ましい。
上記モル比、及び、組成式において、元素Mの含有量を示すzが0を超える場合、熱安定性や保存特性を向上させることができ、好ましくは0.0<z≦0.10である。元素Mは、正極活物質10の内部に均一固溶していてもよいし、また、一次粒子の表面を覆う、二次粒子の表面を膜状に覆う、二次粒子の表面に微粒子状に存在するなど粒子内で分布が偏析していてもよい。
上記モル比、及び、組成式において、Liの含有量を示す(1+u)の範囲は、0.95≦(1+u)≦1.50であり、つまり−0.05≦u≦0.50である。uの値がこの範囲である場合、正極の反応抵抗が低下して電池の出力が向上する。
(体積平均粒径)
リチウム金属複合酸化物の粉体1は、体積平均粒径Mvが8μm以上20μm以下であることが好ましく、8μm以上15μm以下であることがより好ましい。リチウム金属複合酸化物の粉体1の体積平均粒径Mv(以下、平均粒径(MV)ともいう。)が上記範囲である場合、後述する粒度のばらつきと、粒度による組成勾配と、を組み合わせることにより、正極活物質10を用いた二次電池は、高い出力特性と、正極への高い充填性を有することによる高い電池容量とをより高いレベルで両立させることができる。
一方、リチウム金属複合酸化物の粉体1の平均粒径(MV)が8μm未満である場合、正極への高い充填性が得られないことがある。また、リチウム金属複合酸化物の粉体1の平均粒径が20μmを超える場合、高い出力特性や、高い電池容量が得られないことがある。なお、平均粒径(MV)は、レーザー光回折散乱式粒度分布計により測定される体積積算値から求めることができる。
(粒度分布のばらつき)
リチウム金属複合酸化物の粉体1は、粒径のばらつき指数を示す[(D90−D10)/MV](以下、「ばらつき指数」と略記することもある。)が、0.80以上である。ここで、ばらつき指数は、レーザー光回折散乱法による粒度分布における、粒度分布曲線における粒子量の体積積算で90%での粒径(D90)と10%での粒径(D10)、及び、平均粒径(MV)とによって算出される値である。
リチウム金属複合酸化物の粉体1のばらつき指数が0.80以上である場合、粒度分布が比較的ブロードであるため、正極活物質10の正極での充填性が高く、高い体積エネルギー密度を有する二次電池を得ることができる。
一般的に、リチウム金属複合酸化物(正極活物質)の粒度分布がブロードである場合、正極活物質に、平均粒径(MV)に対して粒径が小さい微粒子や、平均粒径(MV)に対して粒径の大きい粗大粒子が多く存在する。これらの微粒子や粗大粒子が多く混在する正極活物質では、充填密度が高くなることはよく知られており、このような正極活物質を用いれば体積当たりのエネルギー密度を高めることができる。よって、リチウム金属複合酸化物の粉体1の粒径のばらつき指数が0.80未満である場合、体積エネルギー密度が低下することがある。ばらつき指数の上限については、特に限定されないが、後述する正極活物質の製造方法を用いた場合、上限は1.20以下程度となる。
(コバルトの組成勾配)
リチウム金属複合酸化物の粉体1は、小さい粒径を有する粒子ほど、Coの物質量の比率(Co比率)が高くなるような組成勾配を有する。なお、本明細書において、Coの物質量の比率(Co比率)とは、実質的に同一の粒径を有する複数の粒子における、Ni、Co、Mn、及び、元素Mの物質量(モル)の合計に対する、Coの物質量(モル)の比率の平均をいう。
例えば、リチウム金属複合酸化物の粉体1は、図1に示すように、粒径の異なる複数の粒子(1a〜1c)から構成され、平均粒径(MV)と同様の粒径を有する粒子1bに対してより小さい粒径を有する粒子(微粒子1a)では、Co比率がより高く、平均粒径(MV)と同様の粒径を有する粒子1bに対してより大きい粒径を有する粒子(粗大粒子1c)では、Co比率がより低くなる。すなわち、リチウム金属複合酸化物の粉体1は、粒子の粒径が小さくなるほど、Co比率が高くなる(又は、粒子の粒径が大きくなるほど、Co比率が低くなる)組成勾配を有する。
リチウム金属複合酸化物の粉体1が、粒度(粒径)に対して、Co比率の組成勾配を有する正極活物質10を正極に用いた二次電池では、Co比率の組成勾配を有さない正極活物質(すなわち、粒度に対して、Coの組成が均一な正極活物質)を用いた二次電池と比較して、正極における反応抵抗(正極抵抗)をより低くすることができ、二次電池の出力特性を向上させることができる。
なお、リチウム金属複合酸化物の粉体1の組成勾配は、例えば、走査電子顕微鏡(SEM)観察により、2、5、10、15、20μmの粒径(それぞれ、±1μmの範囲を含む)を有する粒子を5個以上選択し、エネルギー分散型X線分光法(SEM−EDX)測定で各粒径の粒子におけるCoのモル比率[Co/(Ni+Co+Mn+M)]を求めることにより、確認することができる。
なお、上記の組成勾配は、リチウム金属複合酸化物の粉体1の全体で、粒度に対する組成勾配があればよく、具体的には、リチウム金属複合酸化物の粉体1を構成する粒子の粒径が小さくなるほど、Coのモル比率が増加する傾向(負の相関)があればよい。また、リチウム金属複合酸化物の粉体1の平均粒径MV以下の粒径において、Coのモル比率がより増加する傾向があることが好ましい。
なお、上述の組成勾配は、例えば、後述する正極活物質10の製造方法を用いる場合、晶析工程(ステップS10、ステップS20)における、Coの供給(添加)量を適宜、調整することにより、上記の範囲とすることができる(図2参照)。
なお、リチウム金属複合酸化物の粒子1a〜1cは、複数の一次粒子が凝集して形成された二次粒子から構成される(図示せず)。また、リチウム金属複合酸化物の粉体1は、主に二次粒子から構成されるが、単独の一次粒子を少量含んでもよい。なお、二次粒子内における、Coの分布は特に限定されず、二次粒子内部に均一に分布してもよく、表面側に多く存在してもよい。
(粒度分布とCo比率との関係)
正極活物質10に含まれるリチウム金属複合酸化物の粉体1は、上述したように、比較的にブロードな粒度分布を有するだけでなく、粒度によるCo比率の組成勾配を有し、小粒径ほどCoリッチとなる。従来、ブロードな粒度分布を有する正極活物質では、出力特性の向上が求められていたところ、本実施形態に係る正極活物質10を用いた二次電池では、粒度によるCo比率の組成勾配を有することにより、相対的に反応表面積が大きくなる、小粒径の粒子(微粒子)において、Coリッチな組成となることにより、リチウムイオンの挿入や脱離(=電池反応)が一段と促進される。このように、正極活物質10では、Coリッチな組成を有する微粒子が充放電を主体的に担うことで、二次電池における反応抵抗(正極抵抗)を一層低下させることができ、出力特性の向上と高いエネルギー密度とを高いレベルで両立させることが可能となる。
粒度によるCo比率の組成勾配は、粒子全体における減少傾向よりも、平均粒径(MV)以下の粒子でより減少傾向(負の相関)が確認されることが好ましい。また、平均粒径(MV)の粒子のCo比率をCoMVとし、平均粒径(MV)の1/5の粒径である粒子のCo比率をCo1/5MVとした場合に、以下の(式1)を満たすことがより好ましく、平均粒径(MV)の1/2の粒径である粒子のCo比率をCo1/2MVとした場合に、以下の(式2)を満たすことがさらに好ましい。
Co1/5MV>1.4CoMV ・・・(式1)
Co1/2MV>1.1CoMV ・・・(式2)
上記(式1)を満たす場合、反応抵抗(正極抵抗)がさらに低下し、より出力特性が向上するとともに、エネルギー密度が高い二次電池を得ることができる。なお、リチウム金属複合酸化物の粉体1は、上記(式1)及び上記(式2)のいずれか一方を満たしてもよく、上記(式1)及び上記(式2)の両方を満たしてもよい。上記(式1)とあわせて、上記(式2)を満たす場合、反応抵抗(正極抵抗)がさらに低下し、より出力特性が向上するとともに、エネルギー密度が高い二次電池を得ることができる。なお、Co1/5MV、Co1/2MVの値の上限は特に限定されないが、それぞれCo1/5MVはCoMVに対して3倍以下、Co1/2MVはCoMVに対して1.5倍以下程度である。
なお、上記の正極活物質10の製造方法は、上記の特性を備える限り、特に限定されないが、以下に説明する正極活物質10の製造方法により、容易に、生産性高く、正極活物質10を得ることができる。
(2)リチウムイオン二次電池用の正極活物質の製造方法
図2は、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池用の正極活物質の製造方法(以下、「正極活物質の製造方法」ともいう。)の一例を示す図である。正極活物質の製造方法は、上述した正極活物質10を、工業的規模で容易に、生産性高く得ることができる。以下、図2を参照して、正極活物質10の製造方法について説明する。なお、以下の説明は、製造方法の一例であって、以下の記載に製造方法を限定するものではない。
図2に示すように、正極活物質10の製造方法は、第1の晶析工程(ステップS10)と、第2の晶析工程(ステップS20)と、第2の晶析工程により得られた前駆体の粒子と、リチウム化合物とを混合してリチウム混合物を得る混合工程(ステップS30)と、リチウム混合物を、酸化雰囲気中で750℃以上1000℃以下の温度で焼成する焼成工程(ステップS40)と、を備える。以下、各ステップについて、詳細に説明する。
[晶析工程]
表面に水酸化コバルトを含む層を備えた金属複合水酸化物の粒子(前駆体)は、晶析(中和反応)により、生成することができる。晶析は、公知の方法を用いることができるが、少なくともニッケルとコバルトとマンガンを含有する金属複合水酸化粒子を得る、第1の晶析工程(ステップS10)と、得られた金属複合水酸化粒子の表面に水酸化コバルト層を形成する、第2の晶析工程(ステップS20)と、を備えることが好ましい。以下、各晶析工程の一例について、説明する。
[第1の晶析工程(ステップS10)]
まず、少なくともニッケルとコバルトとマンガンとを含む混合水溶液を中和して、金属複合水酸化物の粒子を得る(ステップS10)。具体的には、例えば、反応槽内において、少なくともニッケルとコバルトとマンガンを含む混合水溶液に、撹拌しながら中和剤水溶液を添加して、中和反応により複合水酸化物の粒子を共沈させる。本工程(ステップS10)により、少なくともニッケルとコバルトとマンガンを含む複合酸化物の粒子(金属複合水酸化物の粒子)を得ることができる。
少なくともニッケルとコバルトとマンガンを含む混合水溶液は、例えば、ニッケル、コバルト及びマンガンの硫酸塩溶液、硝酸塩溶液、塩化物溶液などを用いることができる。また、混合水溶液には、元素Mを含んでもよい。混合水溶液に含まれる金属元素の組成は、得られる金属複合水酸化物の粒子に含まれる金属元素の組成とほぼ一致する。したがって、目的とする金属複合水酸化物の粒子の金属元素の組成と同じになるように混合水溶液の金属元素の組成を調製することができる。
中和剤水溶液は、特に限定されず、例えば、アルカリ水溶液を用いることができ、水酸化アルカリの水溶液を用いるのが好ましい。より具体的には、水酸化アルカリとして、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどを用いることができる。
また、中和剤水溶液と併せて、錯化剤を原料水溶液に添加してもよい。錯化剤は、反応槽内の水溶液(少なくともニッケルとコバルトとマンガンを含む混合水溶液と中和剤水溶液と錯化剤を用いる場合、錯化剤を混合させた水溶液(以下、「反応水溶液」ということもある)中で金属イオンと結合して錯体を形成可能なものであれば特に限定されず、公知のものを用いることができる。錯化剤としては、例えば、アンモニウムイオン供給体を用いることができる。アンモニウムイオン供給体としては、特に限定されないが、例えば、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウム、フッ化アンモニウムなどを用いることができる。錯化剤を添加することにより、反応水溶液中の金属イオンの溶解度を調整することができる。
また、第1の晶析工程(ステップS10)は、最終的に得られるリチウム金属複合酸化物の粉体1(正極活物質10)のばらつき指数が0.80以上となる金属複合酸化物粒子を共沈させることができる方法であれば、特に限定されず、公知の方法を適宜、用いることができる。また、第1の晶析工程(ステップS10)は、例えば、バッチ方式による晶析法を用いてよく、連続晶析法を用いてもよく、大量生産に向いており、製造コストが低減できるという観点から、連続晶析用を用いることが好ましい。
ここで、バッチ方式による晶析法とは、反応槽内の反応水溶液で中和反応が進行し、定常状態になった後に金属複合水酸化物の粒子を回収する方法である。また、連続晶析法は、純水を収容した反応槽内に、所望のpHとなるように中和剤水溶液を添加しながら、少なくともニッケルとコバルトとマンガンとを含む混合水溶液と、必要に応じて錯化剤を適量添加し、得られた反応水溶液中で中和反応により生成した金属複合水酸化物の粒子を含む水溶液をオーバーフローから回収する方法である。
また、第1の晶析工程(ステップS10)により得られる金属複合酸化物の粒子(粉体)の粒度分布は、最終的に得られるリチウム金属複合酸化物の粉体1の粒度分布に反映されるため、粒度分布がブロードな金属複合酸化物の粒子を共沈させることが好ましい。よって、第1の晶析工程後に得られる金属複合水酸化物の粒子は、例えば、ばらつきの指数を示す[(D90−D10)/体積平均粒径Mv]が0.80以上であることが好ましい。
なお、第1の晶析工程(ステップS10)において、反応水溶液の液温、反応水溶液のpH、反応水溶液の撹拌条件などの晶析の各条件は、得られる金属複合水酸化物の粒子の粒度分布がブロードとなるような条件となるように適宜調整すればよく、例えば、これらは公知の方法や条件を用いてもよい。
第1の晶析工程(ステップS10)において、中和反応後に回収した金属複合水酸化物の粒子は、反応水溶液に含まれる不純物成分を除去するために洗浄、水洗した後、ろ過して乾燥してもよい。洗浄は、アルカリ水溶液や純水などを用いる公知の方法を用いてもよい。また、水洗、ろ過及び乾燥も、公知の方法を用いてもよい。
[第2の晶析工程(ステップS20)]
次いで、金属複合水酸化物の粒子を水中に分散させてスラリーを形成し、スラリーに、コバルトを含む水溶液を添加して、中和反応により、前記金属複合水酸化物の粒子の表面に水酸化コバルトを含む層を形成する。具体的には、例えば、得られた金属複合水酸化物の粒子を水中に分散させ、撹拌しながらコバルトを含む水溶液と、中和剤水溶液とを添加して、金属複合水酸化物粒子の表面に水酸化コバルトを析出させる。
第2の晶析工程(ステップS20)では、第1の晶析工程(ステップS10)で得られた粒度分布がブロードな金属複合酸化物の粒子の表面に水酸化コバルト層を形成させる。第2の晶析工程(ステップS20)において、で金属複合酸化物の粒子の表面に析出する水酸化コバルト層の厚さは、粒子の粒径によらずほぼ一定となる。よって、小粒径の粒子ほど粒子全体のCo比率(Co/Ni+Co+Mn+元素M)が高くなる。この結果、粒度によるCo比率の組成勾配を有し、かつ、小粒径ほどCoリッチな組成となる得られるリチウム金属複合酸化物の粉体1を得ることができる。
より具体的な製造方法としては、第1の晶析工程(ステップS10)で得られた金属複合酸化物の粒子を純水に分散させ、スラリーとする。このスラリーを反応槽内に移液し、撹拌しながら所望のpHとなるようにアルカリまたは酸を添加して調整する。所望のpHとしたスラリーに、撹拌しながら中和剤溶液を添加し、同時に、所望の組成となるようにコバルトを含む水溶液を添加して、中和反応により金属複合酸化物の粒子の表面に水酸化コバルトを析出させる。
コバルトを含む水溶液としては、ステップS10と同様に、硫酸コバルト、硝酸コバルト、塩化コバルトなどの水溶液を用いることができる。なお、コバルトを含む水溶液は、Ni、Co、Mn、元素Mを含む、他の金属元素を含んでもよいが、実質的に金属元素としてコバルトのみを含むことが好ましい。実質的に金属元素としてコバルトのみを含むとは、本発明の効果を阻害しない範囲で他の金属元素を含みうることをいい、不純物等として、他の金属元素を少量含んでもよい。
また、中和剤水溶液も、ステップS10と同様に、アルカリ水溶液を用いることができ、水酸化アルカリの水溶液を用いることが好ましい。水酸化アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどを用いることができる。
なお、第2の晶析工程(ステップS20)において、反応水溶液の液温、反応水溶液のpH、反応水溶液の撹拌条件などの晶析の各条件は、最終的に得られるリチウム金属複合酸化物の粉体1が、上述した特性を有すれば特に限定されず、適宜、公知の方法や条件を用いることができる。
第2の晶析工程(ステップS20)により、表面に水酸化コバルトを含む層を備えた金属複合水酸化物の粒子(前駆体の粒子)を得ることができる。前駆体の粒子は、必要に応じて、洗浄、水洗した後、ろ過して乾燥させてもよい。洗浄、水洗、ろ過及び乾燥は公知の方法を用いればよい。
[熱処理(ステップS25)]
また、正極活物質10の製造方法は、第2の晶析工程で得られた表面に水酸化コバルトを含む層を備えた金属複合水酸化物の粒子(前駆体の粒子)を熱処理する熱処理工程(ステップS25、不図示)を備えてもよい。
後述する混合工程(ステップS30)の前に、前駆体の粒子を熱処理し、前駆体の粒子に含まれる水分の少なくとも一部を除去してもよい。前駆体の粒子中に残留する水分の少なくとも一部を除去することにより、後述する焼成工程(ステップS40)で得られるリチウム金属複合酸化物の粉体1(正極活物質10)のLi/Meがばらつくことを防ぐことができる。
熱処理工程(ステップS25)は、Li/Meのばらつきをより低減させるという観点から、表面に水酸化コバルト層を備えた金属複合水酸化物の粒子(以下、「第1の前駆体粒子」ともいう。)を、十分に酸化させ、第1の前駆体粒子中の水酸化物がすべて酸化物まで転化した、金属複合酸化物の粒子(以下、「第2の前駆体粒子」ともいう。)を得ることが好ましい。なお、正極活物質のLi/Meにばらつきが生じない程度に水分が除去できればよいので、必ずしも第1の前駆体粒子のすべてを、第2の前駆体粒子に転換する必要はない。なお、本明細書において、「前駆体の粒子」は、上記の第1の前駆体粒子及び第2の前駆体粒子の両方を含む粒子をいう。なお、熱処理により、表面に存在するコバルトの少なくとも一部は、固相拡散して、前駆体の粒子内部に取り込まれてもよい。
熱処理は、表面に水酸化コバルト層を備えた金属複合水酸化物の粒子(前駆体の粒子)中の残留水分の少なくとも一部が除去される温度まで加熱すればよく、例えば、105℃以上700℃以下の温度で熱処理することが好ましい。また、熱処理を行う雰囲気は、特に限定されず、例えば、容易に操作が行えるという観点から、空気気流中において行うことが好ましい。
[混合工程(ステップS30)]
次いで、上記で得られた前駆体の粒子と、リチウム化合物とを混合してリチウム混合物を得る(ステップS30)。また、混合工程(ステップS30)では、元素Mを含む化合物を混合してもよい。
リチウム化合物は、特に限定されず、リチウムを含む公知の化合物を用いることができ、例えば、炭酸リチウム、水酸化リチウム、硝酸リチリウム、又は、これらの混合物などが用いられる。これらの中でも、残留不純物の影響が少なく、焼成温度で溶解するという観点から、炭酸リチウム、水酸化リチウム、又は、これらの混合物が好ましい。
前駆体の粒子と、リチウム化合物と、任意に元素Mとの混合方法は、特に限定されず、前駆体の粒子等の形骸が破壊されない程度で、前駆体の粒子とリチウム化合物と、任意に元素Mとが十分に混合されればよい。混合方法としては、例えば、一般的な混合機を使用して混合することができ、例えばシェーカーミキサーやレーディゲミキサー、ジュリアミキサー、Vブレンダーなどを用いて混合することができる。なお、リチウム混合物は、後述する焼成工程(ステップS40)の前に、十分混合しておくことが好ましい。混合が十分でない場合、得られるリチウム金属複合酸化物の粉体1(正極活物質10)の個々の粒子間でLiとLi以外の元素の組成がばらつき、十分な電池特性が得られない等の問題が生じることがある。
リチウム化合物は、リチウム混合物中のNiとCoとMnと添加元素Mの合計モル量(Me)に対するリチウム(Li)のモル比(以下、「Li/Me」ということがある。)が、0.95以上1.50以下となるように、混合される。つまり、リチウム混合物におけるLi/Meが、得られるリチウム金属複合酸化物の粉体1(正極活物質10)におけるLi/Meと同じになるように混合される。なお、Li/Meの値は、上述した組成式中の(1+u)の値に相当する。これは、焼成工程(ステップS40)前後で、Li/Me、及び、Li以外の各金属元素のモル比は変化しないので、この混合工程(ステップS30)における、リチウム混合物のLi/Meが、正極活物質のLi/Meとなるからである。
[焼成工程(ステップS40)]
次いで、リチウム混合物を酸化雰囲気中で750℃以上1000℃以下の温度で焼成する(ステップS40)。リチウム混合物を焼成すると、前駆体の粒子(表面に水酸化コバルト層を備えた金属複合水酸化物の粒子、及び/又は、金属複合酸化物の粒子)に、リチウム化合物中のリチウムが拡散するので、多結晶構造の粒子からなるリチウム金属複合酸化物の粒子(粉体1)が形成される。
焼成温度は、750℃以上1000℃以下であり、好ましくは750℃以上950℃以下である。焼成温度が750℃未満である場合、リチウムの拡散が十分に行われなくなり、余剰のリチウムや未反応の粒子が残ったり、結晶構造が十分整わなくなったりして、十分な電池特性が得られないという問題が生じる。また、焼成温度が1000℃を超える場合、形成されたリチウム金属複合酸化物の粒子間で激しく焼結が生じるとともに、異常粒成長を生じる可能性がある。異常粒成長が生じると、焼成後の粒子が粗大となってしまい粒子形態を保持できなくなる可能性があり、正極活物質10を形成したときに、比表面積が低下して、正極抵抗が上昇して電池容量が低下するという問題が生じる。
焼成の雰囲気は、酸化性雰囲気とし、酸素濃度が20容量%以上100容量%以下の雰囲気とすることが好ましい。また、焼成に用いられる炉は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。なお、焼成時間は、特に限定されず、例えば、1時間以上24時間以下であってもよい。
焼成によって得られたリチウム金属複合酸化物の粒子は、粒子間の焼結は抑制されているが、弱い焼結や凝集により粗大な粒子を形成していることがある。このような場合には、さらに、リチウム金属複合酸化物の粒子を解砕する解砕工程(ステップS45、不図示)を備えてもよい。解砕により上記焼結や凝集を解消して粒度分布を調整することができる。
以上、本実施形態に係る正極活物質10の製造方法の一例について説明したが、本実施形態に係る正極活物質10の製造方法は、粒度分布がブロードで、粒度によるCo比率の組成勾配を有し、かつ、小粒径ほどCoリッチなリチウム金属複合酸化物の粒子(粉体1)が得られれば、特に、上記の製造方法に限定されず、他の製造方法を用いてもよい。正極活物質10の他の製造方法としては、例えば、異なる製造方法(条件)で得られた体積平均粒径Mvが異なるリチウム金属複合酸化物の粉体であって、体積平均粒径Mvが小さい程Co比率の高い組成を有する複数のリチウム金属複合酸化物の粉体をそれぞれ用意し、それらを混合する方法などが挙げられる。
なお、本実施形態に係る正極活物質10は、上述したリチウム金属複合酸化物の粉体1を含むものであり、実質的にリチウム金属複合酸化物の粉体1から構成されてもよく、また、本発明の効果を阻害しない範囲で、リチウム金属複合酸化物の粉体1と、他のリチウム金属複合酸化物の粉体とを含んでもよい。
3.リチウムイオン二次電池
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池(以下、「二次電池」ともいう。)は、上述した正極活物質を含む正極と、負極と、電解質とを備える。リチウムイオン二次電池は、従来公知のリチウムイオン二次電池と同様の構成要素により構成されることができ、例えば、正極、負極、及び非水系電解液を備える。また、二次電池は、例えば、正極、負極、及び固体電解質を備えた全固体二次電池であってもよい。以下、正極以外の各構成要素について、説明する。
なお、以下で説明する実施形態は例示に過ぎず、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池は、本明細書に記載されている実施形態を基に、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。また、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池は、その用途を特に限定するものではない。
(正極)
上記の正極活物質を用いて、二次電池の正極を作製する。以下に正極の製造方法の一例を説明する。まず、上記の正極活物質(粉体状)、導電材および結着剤(バインダー)を混合し、さらに必要に応じて活性炭や、粘度調整などの目的の溶剤を添加し、これを混練して正極合材ペーストを作製する。
正極合材中のそれぞれの材料の混合比は、リチウム二次電池の性能を決定する要素となるため、用途に応じて、調整することができる。材料の混合比は、公知のリチウム二次電池の正極と同様とすることができ、例えば、溶剤を除いた正極合材の固形分を100質量部とした場合、正極活物質の含有量を60質量部以上95質量部以下、導電材の含有量を1質量部以上20質量部以下とし、結着剤の含有量を1質量部以上20質量部以下としてもよい。
得られた正極合材ペーストを、例えば、アルミニウム箔製の集電体の表面に塗布し、乾燥して溶剤を飛散させ、シート状の正極が作製される。必要に応じ、電極密度を高めるべくロールプレス等により加圧することもある。このようにして得られたシート状の正極は、目的とする電池に応じて適当な大きさに裁断等し、電池の作製に供することができる。ただし、正極の作製方法は、前記例示の方法に限られることなく、他の方法によってもよい。
導電材は、例えば、黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛および膨張黒鉛など)や、アセチレンブラックやケッチェンブラックなどのカーボンブラック系材料などを用いることができる。
結着剤(バインダー)は、活物質粒子をつなぎ止める役割を果たすもので、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエン、セルロース系樹脂およびポリアクリル酸などを用いることができる。
必要に応じ、正極活物質、導電材および活性炭を分散させて、結着剤を溶解する溶剤を正極合材に添加する。溶剤としては、具体的には、N−メチル−2−ピロリドンなどの有機溶剤を用いることができる。また、正極合材には、電気二重層容量を増加させるために、活性炭を添加することができる。
(負極)
負極は、金属リチウム、リチウム合金等を用いることができる。また、負極は、リチウムイオンを吸蔵・脱離できる負極活物質に結着剤を混合し、適当な溶剤を加えてペースト状にした負極合材を、銅等の金属箔集電体の表面に塗布、乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成したものを用いてもよい。
負極活物質としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛およびフェノール樹脂などの有機化合物焼成体、およびコークスなどの炭素物質の粉状体を用いることができる。この場合、負極結着剤としては、正極同様、PVDFなどの含フッ素樹脂を用いることができ、これらの活物質および結着剤を分散させる溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドンなどの有機溶剤を用いることができる。
(セパレータ)
正極と負極との間には、セパレータを挟み込んで配置する。セパレータは、正極と負極とを分離し、電解質を保持するものであり、公知のものを用いることができ、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどの薄い膜で、微少な孔を多数有する膜を用いることができる。
(非水系電解質)
非水系電解質としては、非水電解液を用いることができる。非水系電解液は、例えば、支持塩としてのリチウム塩を有機溶媒に溶解したものを用いてもよい。また、非水系電解液として、イオン液体にリチウム塩が溶解したものを用いてもよい。なお、イオン液体とは、リチウムイオン以外のカチオンおよびアニオンから構成され、常温でも液体状を示す塩をいう。
有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートおよびトリフルオロプロピレンカーボネートなどの環状カーボネート、また、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートおよびジプロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート、さらに、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランおよびジメトキシエタンなどのエーテル化合物、エチルメチルスルホンやブタンスルトンなどの硫黄化合物、リン酸トリエチルやリン酸トリオクチルなどのリン化合物などから選ばれる1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いることができる。
支持塩としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiN(CFSO、およびそれらの複合塩などを用いることができる。さらに、非水系電解液は、ラジカル捕捉剤、界面活性剤および難燃剤などを含んでいてもよい。
また、リチウムイオン二次電池が全固体二次電池の場合、非水系電解質としては、固体電解質を用いてもよい。固体電解質は、高電圧に耐えうる性質を有する。固体電解質としては、無機固体電解質、有機固体電解質が挙げられる。
無機固体電解質として、酸化物系固体電解質、硫化物系固体電解質等が用いられる。
酸化物系固体電解質としては、特に限定されず、酸素(O)を含有し、かつ、リチウムイオン電導性と電子絶縁性とを有するものであれば用いることができる。酸化物系固体電解質としては、例えば、リン酸リチウム(LiPO)、LiPO、LiBO、LiNbO、LiTaO、LiSiO、LiSiO−LiPO、LiSiO−LiVO、LiO−B−P、LiO−SiO、LiO−B−ZnO、Li1+XAlTi2−X(PO(0≦X≦1)、Li1+XAlGe2−X(PO(0≦X≦1)、LiTi(PO、Li3XLa2/3−XTiO(0≦X≦2/3)、LiLaTa12、LiLaZr12、LiBaLaTa12、Li3.6Si0.60.4等が挙げられる。
硫化物系固体電解質としては、特に限定されず、硫黄(S)を含有し、かつ、リチウムイオン電導性と電子絶縁性とを有するものであれば用いることができる。硫化物系固体電解質としては、例えば、LiS−P、LiS−SiS、LiI−LiS−SiS、LiI−LiS−P、LiI−LiS−B、LiPO−LiS−SiS、LiPO−LiS−SiS、LiPO−LiS−SiS、LiI−LiS−P、LiI−LiPO−P等が挙げられる。
なお、無機固体電解質としては、上記以外のものを用いてよく、例えば、LiN、LiI、LiN−LiI−LiOH等を用いてもよい。
有機固体電解質としては、イオン電導性を示す高分子化合物であれば、特に限定されず、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、これらの共重合体などを用いることができる。また、有機固体電解質は、支持塩(リチウム塩)を含んでいてもよい。なお、固体電解質を用いる場合は、電解質と正極活物質の接触を確保するため、正極材中にも固体電解質を混合させてもよい。
(二次電池の形状、構成)
以上のように説明してきた正極、負極、セパレータ、及び非水系電解液や、正極、負極、及び固体電解質で構成される本実施形態に係るリチウムイオン二次電池は、円筒形や積層形など、種々の形状にすることができる。
非水系電解質として非水系電解液を用いる場合、正極および負極を、セパレータを介して積層させて電極体とし、得られた電極体に、非水系電解液を含浸させ、正極集電体と外部に通ずる正極端子との間、および、負極集電体と外部に通ずる負極端子との間を、集電用リードなどを用いて接続し、電池ケースに密閉して、リチウムイオン二次電池を完成させる。
次に、本発明の一実施形態に係る正極活物質について、実施例により詳しく説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例における分析方法及び評価方法は、以下の通りである。
[ばらつき指数]
粒度分布の指標となる体積平均粒径Mv、D10、D90などは、レーザー回折式粒度分布計(日機装株式会社製、商品名:マイクロトラック)により測定した。測定されたそれぞれの値を用いて、[D90−D10)/Mv]で表されるばらつき指数を算出した。
[粒子形状]
リチウム金属複合酸化物の粉体を構成する粒子の外観については、走査型電子顕微鏡(SEM、株式会社日立ハイテクノロジーズ製、商品名:S−4700)により観察した。
[全体の組成]
リチウム金属複合酸化物の粉体(全体)の組成分析は、ICP発光分析装置(株式会社島津製作所製、ICPS−8100)を用いて行った。
[各粒子径ごとの組成]
それぞれの粒子径ごとのNi、Co、Mn組成の変化は走査型電子顕微鏡(SEM)観察および上記SEM付属のSEM−EDX分析にて評価した。具体的には、リチウム金属複合酸化物の粉体を倍率2000倍で観察して、2、5、10、15、20μmに±1μm以内の粒子を5粒子ずつ抽出し、各粒子に電子線を照射して発生した特性X線をエネルギー分光してNi、Co、Mnのmol比率を算出し、これを平均化することで評価した。
[電池特性]
得られた正極活物質の放電容量および正極抵抗の評価は以下のように行った。正極活物質70質量%にアセチレンブラック20質量%及びPTFE10質量%を混合し、ここから150mgを取り出してペレットを作製し正極とした。負極としてリチウム金属を用い、電解液には1MのLiClOを支持塩とするエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の等量混合溶液(富山薬品工業製)を用いた。露点が−80℃に管理されたAr雰囲気のグローブボックス中で、2032型のコイン電池を作製した。
作製した電池は24時間程度放置し、開路電圧(OCV;Open Circuit Voltage)が安定した後、正極に対する電流密度を0.5mA/cmとしてカットオフ電圧4.3Vまで充電して初期充電容量とし、1時間の休止後カットオフ電圧3.0Vまで放電したときの容量を初期放電容量とした。
正極抵抗は初期放電容量に対して15%となるまで充電した2032型コイン電池を用いて、交流インピーダンス法により抵抗値を測定した。測定には、周波数応答アナライザおよびポテンショガルバノスタット(ソーラトロン製)を使用しナイキストプロットを得た。プロットは、溶液抵抗、負極抵抗と容量、および、正極抵抗と容量を示す特性曲線の和として表れているため、等価回路を用いてフィッティング計算し、正極抵抗(反応抵抗)とし、実施例および比較例を相対比較した。
なお、本実施例では、特に断りがない限り、金属複合水酸化物の粒子、正極活物質および二次電池の製造には、和光純薬工業株式会社製試薬特級の各試料を使用した。
(実施例)
(晶析工程)
[原料調製]
第1の晶析工程(ステップS10)に用いる原料水溶液として、純水に硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硫酸マンガンを、各元素のモル比がNi:Co:Mn=1:1:1(以降の表記も同様)となるように溶解調整したもの(原料水溶液1)を用意した。また、第2の晶析工程(ステップS20)に用いる原料水溶液として、硫酸コバルトのみを溶解したもの(原料水溶液2)を用意した。なお、原料水溶液2のCoの含有量は、最終的に得られる前駆体の組成がNi:Co:Mn=3:4:3となるように調整した。
[第1の晶析工程(ステップS10)]
連続晶析用の反応槽内に純水を入れ、槽内温度を40℃に設定し、そこへ25質量%水酸化ナトリウム水溶液を、槽内pHが液温25℃基準でpH12.0になるように添加しながら、反応槽内に原料水溶液1及び25質量%アンモニア水を一定速度で加えながら反応させ、中和反応で生成した金属複合水酸化物の粒子を含む溶液をオーバーフローから回収した。回収物を水酸化ナトリウム水溶液で洗浄したのち、水洗乾燥して、金属複合水酸化物粒子を得た。
得られた金属複合水酸化物は1μm以下の一次粒子が複数集合して球状となった二次粒子からなり、ICPで分析したところ、Ni:Co:Mn=1:1:1のモル比で表される金属複合水酸化物の粒子であった。
[第2の晶析工程(ステップ20)]
得られた金属複合水酸化物の粒子を、純水中に分散させてスラリーとした。金属複合水酸化物の粒子に対して、所定量(最終的な組成がNi:Co:Mn=3:4:3となるように計算した)の原料水溶液2を準備した。金属複合水酸化物粒子のスラリーを反応槽へ入れ、そこへ25質量%水酸化ナトリウム水溶液を槽内pHが液温25℃基準でpH12.0になるように添加しながら、原料水溶液2を添加し、ステップS1で得た金属複合水酸化物の粒子の表面に水酸化コバルトからなる層を形成した。反応終了後、生成物を水洗乾燥して、表面に水酸化コバルトからなる層を備えた金属複合水酸化物の粒子(前駆体の粒子)を得た。
得られた表面に水酸化コバルト層を備えた金属複合水酸化物の粒子(前駆体の粒子)を、ICPで分析したところ、Ni:Co:Mn=3:4:3であった。また、この複合水酸化物のレーザー回折散乱法測定による体積平均粒径Mvは11μmであった。
(混合工程)
得られた前駆体の粒子を大気雰囲気下で550℃で酸化焙焼(熱処理)して、複合酸化物とした後、リチウムと各元素のモル比でLi:(Ni+Co+Mn)=1.03:1となるように、複合酸化物と炭酸リチウムとを秤量して、混合した。
(焼成工程)
上記の混合物を容器に入れ、電気炉を用いて大気雰囲気下で850℃で10時間保持して焼成してリチウム金属複合酸化物の粒子(粉体)を得た。
(評価)
得られたリチウム金属複合酸化物をICPで分析し、狙い組成(Li:Ni:Co:Mn=1.03:0.3:0.4:0.3)であることを確認した。レーザー回折散乱法測定による体積平均粒径Mvは10μmであった。また粒径のばらつき指数[(D90−D10)/MV]は0.87であった。
さらに、前述したSEM観察およびSEM−EDX測定で2、5、10、15、20μmの粒子におけるNi、Co、Mnのモル比率を求めた。また、電池評価を行い、初期充電容量および正極抵抗を求めた。それぞれの結果を表1〜表3に示す。また、各粒径におけるCoのモル比率の変化を図3に示す。
(比較例)
(晶析工程)
原料水溶液として、純水に硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硫酸マンガンをNi:Co:Mn=3:4:3となるように溶解調整した原料水溶液を用意した。
連続晶析用の反応槽内に純水を入れ、槽内温度を40℃に設定し、そこへ25質量%水酸化ナトリウム水溶液を槽内pHが液温25℃基準でpH12.0になるように添加しながら、反応槽内に原料水溶液及び25質量%アンモニア水を一定速度で加えながら反応させ、中和反応で生成した金属複合水酸化物の粒子を含む溶液をオーバーフローから回収した。回収物を水酸化ナトリウム水溶液で洗浄したのち、水洗乾燥して、金属複合水酸化物の粒子を得た。
得られた金属複合水酸化物は1μm以下の一次粒子が複数集合して球状となった二次粒子からなり、ICPで分析したところ、Ni:Co:Mn=3:4:3の金属複合水酸化物の粒子であった。また、この金属複合水酸化物の粒子のレーザー回折散乱法測定による体積平均粒径Mvは11μmであった。
(混合工程及び焼成工程)
得られた金属複合水酸化物の粒子(前駆体の粒子)を実施例と同様の条件で酸化焙焼(熱処理)した後、炭酸リチウムと混合した。その混合物を、実施例と同様の条件で焼成してリチウム金属複合酸化物粒子を得た。
(評価)
得られたリチウム金属複合酸化物粒子をICPで分析し、狙い組成(Li:Ni:Co:Mn=1.03:0.3:0.4:0.3)であること、レーザー回折散乱法測定による体積基準の平均粒径MVは10μmであることを確認した。また粒径のばらつき指数は0.86であった。
さらに、実施例と同様に、正極活物質の組成および電池特性を評価した。それぞれの結果を表1〜表3に示す。また、各粒径におけるCoのモル比率の変化を図3に示す。
Figure 2020004506
Figure 2020004506
Figure 2020004506
(評価結果)
表1に示すように、実施例の正極活物質は、ばらつき指数が0.8以上であり、高い充填密度を有するといえる。実施例の正極活物質においては、ブロードな粒度分布を有するため、二次電池に用いた際に、高いエネルギー密度を有することができる。また、表2、及び、図3に示すように、実施例の正極活物質においては、小粒径の粒子ほどCoの比率が高くなっていることが明らかである。また、表3に示すように、実施例と比較例の電池特性を比べた場合、放電容量は同等だが、実施例においては正極抵抗(反応抵抗)が大幅に低下している。実施例の正極活物質においては、Liイオンの挿入脱離(=電池反応)がより進みやすい小粒径、かつ、Coリッチな粒子が充放電を主体的に担うことで正極反応抵抗を低下させていると考えられる。
なお、本発明の技術範囲は、上述の実施形態などで説明した態様に限定されるものではない。上述の実施形態などで説明した要件の1つ以上は、省略されることがある。また、上述の実施形態などで説明した要件は、適宜組み合わせることができる。また、法令で許容される限りにおいて、上述の実施形態などで引用した全ての文献の開示を援用して本文の記載の一部とする。
10…正極活物質
1…リチウム金属複合酸化物の粉体
1a…リチウム金属複合酸化物の粒子(微細粒子)
1b…リチウム金属複合酸化物の粒子(平均粒径(MV)を有する粒子)
1c…リチウム金属複合酸化物の粒子(粗大粒子)

Claims (7)

  1. リチウム(Li)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、及び、任意に元素Mを含み、六方晶系の層状構造を有するリチウム金属複合酸化物の粉体を含有する正極活物質であって、
    前記リチウム金属複合酸化物の粉体は、各元素の物質量比(モル比)が、Li:Ni:Co:Mn:M=(1+u):(1−x−y−z):x:y:z[式中、uは−0.05≦u≦0.50、xは0.15≦x≦0.50、yは0.15≦y≦0.50、zは0≦z≦0.10であり、0.30≦(x+y+z)≦0.85を満たし、Mは、W、Mo、V、Zr、Ti、Cr、Al、Si、B、Nb、及び、Taから選択される少なくとも1種の元素]で表され、
    前記リチウム金属複合酸化物の粉体の粒度分布において、ばらつきの指数を示す[(D90−D10)/体積平均粒径Mv]が0.80以上であり(なお、D90、及び、D10は、それぞれ、レーザー光回折散乱法により測定される累積90体積%径、及び、累積10体積%を示す。)、
    前記リチウム金属複合酸化物の粉体は、粒径の小さい粒子ほど、Ni、Co、Mn、及び、前記元素Mの物質量の合計に対する、Coの物質量の比率が高くなるような組成勾配を有する、
    リチウムイオン二次電池用の正極活物質。
  2. 前記リチウム金属複合酸化物の粉体は、体積平均粒径Mvと同じ粒径を有する粒子におけるCoの物質量の比率CoMVと、体積平均粒径Mvの1/5と粒径と同じ粒径を有する粒子におけるCoの物質量の比率Co1/5MVとが、以下の関係式(1)を満たす、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用の正極活物質。
    Co1/5MV>1.4CoMV・・・(1)
    (なお、上記式(1)中、CoMV、及び、Co1/5MVは、それぞれの粒子における、Ni、Co、Mn、Co、及び、Mの物質量の合計に対するCo物質量の比率を示す。)
  3. 前記リチウム金属複合酸化物の粉体は、体積平均粒径Mvが8μm以上20μm以下の範囲である、請求項1または請求項2に記載のリチウムイオン二次電池用の正極活物質。
  4. 少なくともニッケルとコバルトとマンガンとを含む混合水溶液を中和して、金属複合水酸化物の粒子を得る、第1の晶析工程と、
    前記金属複合水酸化物の粒子を水中に分散させてスラリーを形成し、前記スラリーに、コバルトを含む水溶液を添加して、中和反応により、前記金属複合水酸化物の粒子の表面に水酸化コバルトを含む層を形成する、第2の晶析工程と、
    前記第2の晶析工程により得られた前駆体の粒子と、リチウム化合物とを混合してリチウム混合物を得る混合工程と、
    前記リチウム混合物を、酸化雰囲気中で750℃以上1000℃以下の温度で焼成する焼成工程と、を備える、
    請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用の正極活物質の製造方法。
  5. 前記混合工程において、前記リチウム化合物と混合する前に、前記前駆体を熱処理する熱処理工程を備える、請求項4に記載のリチウムイオン二次電池用の正極活物質の製造方法。
  6. 前記第1の晶析工程後に得られる前記金属複合水酸化物の粒子は、ばらつきの指数を示す[(D90−D10)/体積平均粒径Mv]が0.80以上である、請求項4又は請求項5に記載のリチウムイオン二次電池用の正極活物質の製造方法。
  7. 正極と、負極と、電解質とを備え、前記正極は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用の正極活物質を含む、リチウムイオン二次電池。
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