JP2019203100A - 組成物、乾燥剤、有機薄膜及びその作製方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】各種有機電子デバイス等に対する水分透過の封止のための部材として用いることができる組成物、それを含有する乾燥剤、当該乾燥剤を含有する有機薄膜及びその作製方法を提供することである。【解決手段】本発明の組成物は、光酸発生剤及び下記一般式(1)で表される構造を有する化合物を含有することを特徴とする。一般式(1): M(OR1)y(O−R)x−y[式中、Rは、水素原子、炭素数1個以上のアルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アシル基、アルコキシ基、又は複素環基を表す。ただし、Rは置換基としてフッ素原子を含む炭素鎖でもよい。Mは、金属原子を表す。OR1は、フッ化アルコキシ基を表す。xは金属原子の価数、yは1とxの間の任意な整数を表す。]【選択図】なし
Description
本発明は、組成物、乾燥剤、有機薄膜及びその作製方法に関する。より詳しくは、各種有機電子デバイス等に対する水分透過の封止のための部材として用いることができる組成物等に関する。
産業界においては、トランジスタ、ダイオードをはじめとする数多くのエレクトロニクス部材が水や酸素による劣化を引き起こすため、封止や、不動態化処理(パッシベーション)と呼ばれる加工が施されている。特に電子伝導を有機化合物に担わせる、有機薄膜トランジスタや有機薄膜太陽電池、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」という。)などは、とりわけ水分子にセンシティブであり、極めて高度な封止が必要とされる。
その中でも有機EL素子は、発光中において有機物としては最も反応性の高い励起状態となるため、水分濃度というよりも水分子の数を相手に対応しなければならず、高度なガスバリアーに加えて、水分子を捕捉するデシカント剤と呼ばれる乾燥剤が必要となってくる。また、ガスバリアー性を担うフィルムやガラスはデバイス基板に接着させる必要があり、その接着部から接着剤を通して水や酸素が透過することに対しても対策しなければならず、その意味においても乾燥剤の役割は重要となっている。
封止方法は前記のような技術背景から、(1)緻密な無機酸化物や無機窒化物による固体封止膜、(2)ゼオライトや多孔質シリカゲルのような物理吸着型の乾燥剤、(3)アルカリ土類金属酸化物や金属ハイドライドのような水分子と即座に化学反応することで水分子を除去する化学反応型の乾燥剤が知られている。
固体封止膜の作製方法としては、(1)は、蒸着、スパッタ、CVD(Chemical Vapor Deposition)、及びALD(Atomic Layer Deposition)等に代表される真空成膜により作製され、緻密膜を複数層形成することができるために水蒸気バリアー性に優れることが特長であるが、一方で大型の装置が必要であることや、ロール・to・ロールのような連続生産に不向きであることから製造上のコスト負荷が高く、大量かつ安価な生産に対しては問題が大きい。
一方、(2)や(3)の水分子を除去する方式は、そのデバイスの許容水分濃度により使い分けることができるが、一般的に(2)のシリカゲルやゼオライト、モンモリロナイトのような水と吸着剤との化学平衡を吸着メカニズムとするものでは水分子の脱着現象は避けられず、高度な水分子除去を必要とする有機薄膜太陽電池や有機EL素子には適用することができない。
酸化バリウムや酸化ストロンチウム等に代表される(3)の方式は、水分子との反応性が高いため乾燥剤としての能力は優れるものの、大気圧下では即座に水と反応してしまい性能劣化が起こること、それに伴う発熱の危険性などのプロセス上の問題点のほかに、デバイス内では水を化学量論量しか捕捉できないため、効果が一時的で長期保存には不向きであるなど、問題も多い。
化学反応型の乾燥剤の一例として、加水分解による吸水を利用した乾燥剤が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、開示されているアルミナ環状三量体は、電子デバイスの封止膜に応用するには、いまだ水蒸気バリアー性が低いのが実状である。
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、各種有機電子デバイス等に対する水分透過の封止のための部材として用いることができる組成物、それを含有する乾燥剤、当該乾燥剤を含有する有機薄膜及びその作製方法を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく上記問題の原因等について検討する過程において、光酸発生剤、及びフッ素原子を含有する金属アルコキシド又は金属カルボキシレートを含む組成物から作製された化学反応型の有機薄膜状の乾燥剤であって、該乾燥剤は反応の分だけ水分の透過を防止する撥水性又は疎水性物質を放出することを見いだし、かつ、当該乾燥剤を含有することで有機エレクトロルミネッセンス素子などの電子デバイスに対して水分透過の封止膜として機能する有機薄膜が得られることを見いだし、本発明を成すに至った。
すなわち、本発明者らは前記のような数々の問題を克服することを目的に、次のような現象を実現できる技術の創出に取り組んだ。
(I)水分子と反応する乾燥性(デシカント性)を有すること。
(II)水との反応の関数として、水を寄せ付けない性質を持つ物質を放出すること。
(III)大気圧下での塗布成膜が可能なこと。
(I)水分子と反応する乾燥性(デシカント性)を有すること。
(II)水との反応の関数として、水を寄せ付けない性質を持つ物質を放出すること。
(III)大気圧下での塗布成膜が可能なこと。
この三つの要素を併せ持つ材料と技術が構築できれば、電子デバイスの心臓部に水分子の透過を効果的に防ぐことができ、また、透過した水分量に応じて撥水性物質が生成することで、従来の水蒸気バリアー性とは全く異なる新しい技術思想の水蒸気透過を阻止する方法となり、かつ、大気圧下での塗布(コーティング)ができれば、安価でかつ大面積の封止が可能となり、これから到来するIoT時代へ向けて、実際には製造コストのボトルネックとなっていた、隠された課題(すなわち、安価でかつ効果的な封止加工)が一気に解決される可能性を秘めていると考えられる。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.光酸発生剤及び下記一般式(1)で表される構造を有する化合物を含有することを特徴とする組成物。
一般式(1): M(OR1)y(O−R)x−y
[式中、Rは、水素原子、炭素数1個以上のアルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アシル基、アルコキシ基、又は複素環基を表す。ただし、Rは置換基としてフッ素原子を含む炭素鎖でもよい。Mは、金属原子を表す。OR1は、フッ化アルコキシ基を表す。xは金属原子の価数、yは1とxの間の任意な整数を表す。]
一般式(1): M(OR1)y(O−R)x−y
[式中、Rは、水素原子、炭素数1個以上のアルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アシル基、アルコキシ基、又は複素環基を表す。ただし、Rは置換基としてフッ素原子を含む炭素鎖でもよい。Mは、金属原子を表す。OR1は、フッ化アルコキシ基を表す。xは金属原子の価数、yは1とxの間の任意な整数を表す。]
2.光酸発生剤由来のフッ素原子を有する化合物、及び下記一般式(2)で表される構造を有する有機金属酸化物を含有し、水と反応することにより撥水性又は疎水性物質を放出することを特徴とする組成物。
一般式(2): R−[M(OR1)y(O−)x−y]n−R
[式中、Rは、水素原子、炭素数1個以上のアルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アシル基、アルコキシ基、又は複素環基を表す。ただし、Rは置換基としてフッ素原子を含む炭素鎖でもよい。Mは、金属原子を表す。OR1は、フッ化アルコキシ基を表す。xは金属原子の価数、yは1とxの間の任意な整数を表す。nは重縮合度をそれぞれ表す。]
一般式(2): R−[M(OR1)y(O−)x−y]n−R
[式中、Rは、水素原子、炭素数1個以上のアルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アシル基、アルコキシ基、又は複素環基を表す。ただし、Rは置換基としてフッ素原子を含む炭素鎖でもよい。Mは、金属原子を表す。OR1は、フッ化アルコキシ基を表す。xは金属原子の価数、yは1とxの間の任意な整数を表す。nは重縮合度をそれぞれ表す。]
3.前記Mで表される金属原子が、Ti、Zr、Sn、Ta、Fe、Zn、Si及びAlから選択されることを特徴とする第1項又は第2項に記載の組成物。
4.前記光酸発生剤が、パーフルオロアルキル基を含むことを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の組成物。
5.第1項から第4項までのいずれか一項に記載の組成物を含有することを特徴とする乾燥剤。
6.第5項に記載の乾燥剤を含有することを特徴とする有機薄膜。
7.第2項から第4項までのいずれか一項に記載の組成物がゾル・ゲル転移されてなる塗布膜であることを特徴とする第6項に記載の有機薄膜。
8.第1項、第3項又は第4項のいずれか一項に記載の組成物を含有する塗布膜を形成する工程を有することを特徴とする有機薄膜の作製方法。
9.前記塗布膜を形成する工程が、インクジェット・プリント法によることを特徴とする第8項に記載の有機薄膜の作製方法。
10.前記塗布膜が、前記組成物をゾル・ゲル転移させて形成する膜であることを特徴とする第8項又は第9項に記載の有機薄膜の作製方法。
11.前記塗布膜に紫外光を照射する工程を有することを特徴とする第8項から第10項までのいずれか一項に記載の有機薄膜の作製方法。
12.前記塗布膜中に水と反応して撥水性又は疎水性物質を放出する乾燥剤を含むことを特徴とする第8項から第11項までのいずれか一項に記載の有機薄膜の作製方法。
本発明の上記手段により、各種有機電子デバイス等に対する水分透過の封止のための部材として用いることができる組成物、それを含有する乾燥剤、当該乾燥剤を含有する有機薄膜及びその作製方法を提供することができる。
本発明の効果の発現機構又は作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
本発明の乾燥剤及び当該乾燥剤を含有する有機薄膜は、化学反応型のゲッター剤として機能し、かつ、水分との反応の分だけ撥水性又は疎水性物質を放出する、という水分透過に対する新たな乾燥剤及び封止膜である。
具体的には、光酸発生剤の共存下で前記一般式(1)で表される化合物から製造された、前記一般式(2)で表される構造を有する有機金属酸化物が加水分解により、クエンチされた水分子と等モルのフッ素化アルコールが生成し、それが撥水又は疎水機能を有するために、それ以上の水の侵入を防止するものである。したがって、従来の化学反応型の乾燥剤よりも、水分の侵入防止効果が極めて高く、すなわち、単一組成膜が乾燥性(デシカント性)に加え、水分との反応により撥水機能等が付加されて相乗効果(シナジー効果)を発揮するという、従来の乾燥剤及び有機薄膜にはない特徴を有する革新的な技術である。
また、本発明の乾燥剤を含有する有機薄膜は、金属アルコキシド溶液を原料とし、一般にゾル・ゲル法と呼ばれる、金属アルコキシドの加水分解とそれに続く重縮合反応により有機無機ハイブリッド化合物を合成して、膜形成する方法を採用する。
封止のみならず、無機酸化物を塗布方式で成膜する常套手段としてゾル・ゲル法が広く知られている。この方法は、一般的には、金属アルコキシド溶液を原料とし、金属アルコキシドの加水分解とそれに続く重縮合反応により無機酸化物が形成される方法で、金属アルコキシドの一部分をアルコキシ基ではなくアルキル基やアリール基にすると、該基はゾル・ゲル反応後も保持されるため、無機酸化物をベースとした有機無機ハイブリッド化合物膜を形成することもできる。
基本的には、アルコキシ化できる全ての金属元素が、このゾル・ゲル法に適用できるが、実際には大気中で溶液にした際にゲル化が起こり、塗布できない場合がほとんどで、実用されているのはケイ素(テトラアルコキシシラン)に限られる。この理由は、金属元素がチタンやジルコニウムの場合、そのアルコキシド化合物自体がルイス酸であるために加水分解反応後の脱水重縮合の反応を触媒的に加速してしまい、すぐにゲル化が起こってしまうためである。
また、アルカリ金属やアルカリ土類金属の場合は、アルコキシドにしても塩基性となるため、最初の加水分解反応が非常に早く、一方で脱水重縮合反応が遅いため、有機金属酸化物を得るのは難しい。その中間的な性質を持つのがケイ素アルコキシドであるため、ゾル・ゲル法による有機金属酸化物合成又は有機金属酸化物薄膜形成にはこれしか適合できないのが現状である。
それに対し、金属アルコキシドを過剰のアルコール(A)に溶解すると化学平衡から金属のアルコキシドはアルコール(A)と置換され、当該アルコール(A)の金属アルコキシドが生成するが、この時、アルコール(A)をフッ素原子で置換されたアルコールとした場合、生成してくる金属フッ素化アルキルオキシ化合物(以降、「金属フッ化アルコキシド」と呼ぶ。)は、前記のゾル・ゲル反応速度を緩和することができる。
これはフッ素原子の電子吸引効果による金属元素上の電子密度を低下させ水分子の求核反応は加速させるものの、それよりもフッ素原子による水の排除効果が大きく、水分子が金属元素に近寄れないことから、いわゆる頻度因子が大きく低下して、結果として加水分解速度が遅くなることと、例えばチタンやジルコニウム、さらには空のd軌道が存在する遷移金属(例えば4価のバナジウムや、4価のタングステン)のアルコキシド化合物がルイス酸であることから酸触媒的な効果を発現し、脱水重縮合や脱アルコール重縮合反応を加速するため高分子量の有機金属酸化物が生成しやすいという特長によるものである。
この効果により、前記の(I)〜(III)の全てを満たすことが可能となり、特に(III)の通常の金属アルコキシドではゲル化進行により取り扱いが実質的にできなかったものでも、フッ素化アルコールの存在下だと、それが可能となり、出来上がった膜に紫外線やプラズマ照射、マイクロ波照射などの高エネルギーを加えることにより、薄膜表面から連続的に高密度の有機金属酸化物膜が形成され、結果その薄膜は(I)の乾燥性(デシカント性)を有し、さらに未反応の金属フッ化アルコキシドが内部に残存しているため、入って来た水分子とそれとが反応して、水をはじくフッ素化アルコールを生成するため(II)の効果を発揮し、結果として(I)と(II)の効果を併せ持つ新たな薄膜を形成することが可能となる。
また、フッ化アルコールで置換された金属アルコキシドは、異種の金属アルコキシド同士の反応や塩形成も、フッ素原子による排除効果から頻度因子が低下するために、効果的に抑制することができ、2種又は複数の金属アルコキシドを金属フッ化アルコキシドとして溶液中に共存させることもでき、その溶液から得られる薄膜は混合無機酸化物薄膜を与えることも、本発明の一つといえる。
例えば、通常ではルイス酸/ルイス塩基対となりゲル化してしまう、チタンテトライソプロポキシドとバリウムジブトキシドにおいても、それぞれを大過剰のテトラフルオロプロパノール(TFPO)に希釈した後で混合してもゲル化することはなく、そのまま塗布してゾル・ゲル法による薄膜形成ができ、その薄膜を紫外線等の高エネルギー付与することで、混合有機金属酸化物皮膜を形成させることも可能となる。
さらに、本発明は、光酸発生剤の共存下でゾル・ゲル法(以下、「ゾル・ゲル反応」とも称する。)により有機金属酸化物を製造することが特徴である。
前記のように、ゾル・ゲル反応速度が緩和された金属アルコキシド溶液を用いることで、溶液の安定性の向上、及び成膜時の取り扱いを容易にすることが可能になる。一方で、出来上がった膜から高密度の有機金属酸化膜を形成するのに高エネルギーが必要になってくるが、紫外線の波長によっては酸素分子や窒素分子によって吸収されるため、ゾル・ゲル反応が膜表面に留まり、内部まで進行しない場合がある等の問題があった。
これに対して、本発明では光酸発生剤の共存下で金属アルコキシドのゾル・ゲル反応を行うことで、膜形成前後の相反する課題を解決したのが本発明の特徴である。また、光酸発生剤から発生した酸が膜の内部まで拡散することで、ゾル・ゲル反応が内部まで進行させることができる。
すなわち、本発明は単に撥水性又は疎水性化合物を生成する乾燥剤を得るための組成物に留まるものではなく、従来共存が困難だった複数の金属アルコキシドを安定に存在させ、その結果として得られる混合有機金属酸化物薄膜自体も範疇に入る。これは従来では実現できそうではあるが、実際には実現できなかった技術であり、それを実現させたことは、さまざまな適用領域においてこれまでにない機能発揮が期待され、本発明が産業界に与える好影響は大きい。
したがって、本発明は、従来の金属アルコキシドを用いたゾル・ゲル法による薄膜形成とは、コンセプトも異なり、形成される薄膜の機能も異なり、さらにはこれまで不可能だった混合有機金属酸化物薄膜をも実現できることから、類似の従来技術とは区別されるべきものである。
本発明の組成物は、光酸発生剤若しくは光酸発生剤由来のフッ素原子を有する化合物及び前記一般式(1)又は前記一般式(2)で表される構造を有する化合物を含有することを特徴とする。この特徴は、下記各実施形態に共通する又は対応する技術的特徴である。
実施形態としては、水分透過の封止性の観点から、前記Mで表される金属原子が、Ti、Zr、Sn、Ta、Fe、Zn、Si及びAlから選択されることが好ましい。また、前記光酸発生剤が、パーフルオロアルキル基を含むことが好ましい。
本発明の組成物は、当該組成物を含有する乾燥剤として好適に用いることができる。
また、当該乾燥剤を含有する有機薄膜として好適に用いることができる。当該有機薄膜は、少なくとも前記組成物がゾル・ゲル転移(ゾル状態からゲル状態に相変化)されてなる塗布膜であることが好ましい。
本発明の組成物は、当該組成物を含有する乾燥剤として好適に用いることができる。
また、当該乾燥剤を含有する有機薄膜として好適に用いることができる。当該有機薄膜は、少なくとも前記組成物がゾル・ゲル転移(ゾル状態からゲル状態に相変化)されてなる塗布膜であることが好ましい。
前記有機薄膜の作製方法としては、緻密で均一な有機薄膜を効率よく生産する観点から、前記組成物を含有する塗布膜を形成する工程を有す態様の作製方法であることが好ましく、前記塗布膜を形成する工程が、インクジェット・プリント法によることが好ましい。さらに、前記塗布膜が、前記組成物をゾル・ゲル転移させて形成する膜であることを特徴とする作製方法であることが好ましい。
また、有機薄膜の作製方法としては、ゾル・ゲル反応促進の観点から、前記塗布膜に紫外光を照射する工程を有することが好ましい。さらに、前記塗布膜中に水と反応して撥水性又は疎水性物質を放出する乾燥剤を含むことを特徴とする作製方法であることが好ましい。
また、有機薄膜の作製方法としては、ゾル・ゲル反応促進の観点から、前記塗布膜に紫外光を照射する工程を有することが好ましい。さらに、前記塗布膜中に水と反応して撥水性又は疎水性物質を放出する乾燥剤を含むことを特徴とする作製方法であることが好ましい。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
〔1〕組成物
本発明の組成物は、光酸発生剤及び下記一般式(1)で表される構造を有する化合物を含有する組成物、又は、光酸発生剤由来のフッ素原子を有する化合物、及び下記一般式(2)で表される構造を有する有機金属酸化物を含有し、水と反応することにより撥水性又は疎水性物質を放出する組成物であることを特徴とする。
また、本発明の組成物は、水と反応することにより、撥水性又は疎水性物質を放出する化合物を含有する乾燥剤を得るための組成物であることを特徴とする。
なお、本発明に係る下記一般式(2)で表される有機金属酸化物の製造方法としては、金属アルコキシド又は金属カルボキシレートとフッ素化アルコール、及び光酸発生剤を混合し、光酸発生剤と下記一般式(1)で表される化合物の組成物とした後、これを用いて製造することが本発明の効果を得る上で好ましい態様である。
本発明の組成物は、光酸発生剤及び下記一般式(1)で表される構造を有する化合物を含有する組成物、又は、光酸発生剤由来のフッ素原子を有する化合物、及び下記一般式(2)で表される構造を有する有機金属酸化物を含有し、水と反応することにより撥水性又は疎水性物質を放出する組成物であることを特徴とする。
また、本発明の組成物は、水と反応することにより、撥水性又は疎水性物質を放出する化合物を含有する乾燥剤を得るための組成物であることを特徴とする。
なお、本発明に係る下記一般式(2)で表される有機金属酸化物の製造方法としては、金属アルコキシド又は金属カルボキシレートとフッ素化アルコール、及び光酸発生剤を混合し、光酸発生剤と下記一般式(1)で表される化合物の組成物とした後、これを用いて製造することが本発明の効果を得る上で好ましい態様である。
〔2〕乾燥剤
本発明の乾燥剤は、前記組成物を含有することを特徴する。したがって、金属アルコキシドを過剰のアルコール存在下で加アルコール分解して、アルコール置換した有機金属酸化物又は有機金属酸化物の重縮合体である。その際に、ヒドロキシ基のβ位にフッ素原子が置換した長鎖アルコールを用いることで、フッ化アルコキシドを含有する有機金属酸化物となり、本発明の乾燥剤となる。
本発明の乾燥剤は、前記組成物を含有することを特徴する。したがって、金属アルコキシドを過剰のアルコール存在下で加アルコール分解して、アルコール置換した有機金属酸化物又は有機金属酸化物の重縮合体である。その際に、ヒドロキシ基のβ位にフッ素原子が置換した長鎖アルコールを用いることで、フッ化アルコキシドを含有する有機金属酸化物となり、本発明の乾燥剤となる。
一方、前記有機金属酸化物は、焼結や紫外線を照射することで、ゾル・ゲル反応を促進し重縮合体を形成することができる。その際、前記ヒドロキシ基のβ位にフッ素原子が置換した長鎖アルコールを用いると、フッ素の撥水効果により金属アルコキシド中の金属周りに存在する水分の頻度因子を減少させることで、加水分解速度が減少し、当該現象を利用することで3次元の重合反応を抑え、所望の有機金属酸化物を含有する均一で稠密な有機薄膜を形成しうるという特徴がある。
本発明の乾燥剤に含有される有機金属酸化物は、以下の反応スキームIに示すものである。なお、焼結後の有機金属酸化物の重縮合体の構造式において、「O−M」部の「M」は、さらに置換基を有しているが、省略してある。
上記有機金属酸化物が、紫外線照射により重縮合して形成された有機薄膜は、以下の反応スキームIIによって、系外からの水分(H2O)によって加水分解し、撥水性又は疎水性物質であるフッ素化アルコール(R′−OH)を放出する。このフッ素化アルコールによって、さらに水分の電子デバイス内部への透過を防止するものである。
すなわち、本発明の乾燥剤は、加水分解によって生成したフッ素化アルコールが撥水性又は疎水性のため、本来の乾燥性(デシカント性)に加え、水分との反応により撥水機能が付加されて、封止性に相乗効果(シナジー効果)を発揮するという、従来の乾燥剤にはない特徴を有する。
なお、下記構造式において、「O−M」部の「M」は、さらに置換基を有しているが、省略してある。
なお、下記構造式において、「O−M」部の「M」は、さらに置換基を有しているが、省略してある。
本発明の乾燥剤は、下記一般式(1)で表される化合物から製造された下記一般式(2)で表される構造を有する有機金属酸化物を主成分として含有することが好ましい。「主成分」とは、前記乾燥剤の全体の質量のうち、70質量%以上が疎水性物質を放出する前記有機金属酸化物であることが好ましく、より好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上であることをいう。
一般式(1): M(OR1)y(O−R)x−y
[式中、Rは、水素原子、炭素数1個以上のアルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アシル基、アルコキシ基、又は複素環基を表す。ただし、Rは置換基としてフッ素原子を含む炭素鎖でもよい。Mは、金属原子を表す。OR1は、フッ化アルコキシ基を表す。xは金属原子の価数、yは1とxの間の任意な整数を表す。]
[式中、Rは、水素原子、炭素数1個以上のアルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アシル基、アルコキシ基、又は複素環基を表す。ただし、Rは置換基としてフッ素原子を含む炭素鎖でもよい。Mは、金属原子を表す。OR1は、フッ化アルコキシ基を表す。xは金属原子の価数、yは1とxの間の任意な整数を表す。]
一般式(2): R−[M(OR1)y(O−)x−y]n−R
[式中、Rは、水素、炭素数1個以上のアルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アシル基、アルコキシ基、又は複素環基を表す。ただし、Rは置換基としてフッ素原子を含む炭素鎖でもよい。Mは、金属原子を表す。OR1は、フッ化アルコキシ基を表す。xは金属原子の価数、yは1とxの間の任意な整数を表す。nは重縮合度をそれぞれ表す。]
[式中、Rは、水素、炭素数1個以上のアルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アシル基、アルコキシ基、又は複素環基を表す。ただし、Rは置換基としてフッ素原子を含む炭素鎖でもよい。Mは、金属原子を表す。OR1は、フッ化アルコキシ基を表す。xは金属原子の価数、yは1とxの間の任意な整数を表す。nは重縮合度をそれぞれ表す。]
本発明に係る有機金属酸化物は、ゾル・ゲル法を用いて作製できるものであれば特に制限はされず、例えば、「ゾル−ゲル法の科学」P13、P20に紹介されている金属、リチウム、ナトリウム、銅、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ケイ素、ゲルマニウム、鉛、リン、アンチモン、バナジウム、タンタル、タングステン、ランタン、ネオジウム、チタン、ジルコニウムから選ばれる1種以上の金属を含有してなる金属酸化物を例として挙げることができる。好ましくは、前記Mで表される金属原子は、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、スズ(Sn)、タンタル(Ta)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、ケイ素(Si)及びアルミニウム(Al)から選択されることが、本発明の効果を得る観点から好ましい。
上記一般式(1)及び一般式(2)において、OR1はフッ化アルコキシ基を表す。
R1は少なくとも一つフッ素原子に置換したアルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アシル基、アルコキシ基、又は複素環基を表す。各置換基の具体例は後述する。
Rは水素、炭素数1個以上のアルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アシル基、アルコキシ基、又は複素環基を表す。又はそれぞれの基の水素の少なくとも一部をハロゲンで置換したものでもよい。また、ポリマーでもよい。
アルキル基は置換又は未置換のものであるが、具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル等であるが、好ましくは炭素数が8以上のものがよい。またこれらのオリゴマー、ポリマーでもよい。
アルケニル基は、置換又は未置換のもので、具体例としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキシセニル基等があり、好ましくは炭素数が8以上のものがよい。またこれらのオリゴマー又はポリマーでもよい。
アリール基は置換又は未置換のもので、具体例としては、フェニル基、トリル基、4−シアノフェニル基、ビフェニル基、o,m,p−テルフェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、9−フェニルアントラニル基、9,10−ジフェニルアントラニル基、ピレニル基等があり、好ましくは炭素数が8以上のものがよい。また、これらのオリゴマー又はポリマーでもよい。
置換又は未置換のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、トリクロロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基等でありが好ましくは炭素数が8以上のものがよい。また、これらのオリゴマー、ポリマーでもよい。
置換又は未置換のシクロアルキル基の具体例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボナン基、アダマンタン基、4−メチルシクロヘキシル基、4−シアノシクロヘキシル基等であり好ましくは炭素数が8以上のものがよい。また、これらのオリゴマー又はポリマーでもよい。
置換又は未置換の複素環基の具体例としては、ピロール基、ピロリン基、ピラゾール基、ピラゾリン基、イミダゾール基、トリアゾール基、ピリジン基、ピリダジン基、ピリミジン基、ピラジン基、トリアジン基、インドール基、ベンズイミダゾール基、プリン基、キノリン基、イソキノリン基、シノリン基、キノキサリン基、ベンゾキノリン基、フルオレノン基、ジシアノフルオレノン基、カルバゾール基、オキサゾール基、オキサジアゾール基、チアゾール基、チアジアゾール基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾチアゾール基、ベンゾトリアゾール基、ビスベンゾオキサゾール基、ビスベンゾチアゾール基、ビスベンゾイミダゾール基等がある。またこれらのオリゴマー又はポリマーでもよい。
置換又は未置換のアシル基の具体例としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、オキサリル基、マロニル基、スクシニル基、グルタリル基、アジポイル基、ピメロイル基、スベロイル基、アゼラオイル基、セバコイル基、アクリロイル基、プロピオロイル基、メタクリロイル基、クロトノイル基、イソクロトノイル基、オレオイル基、エライドイル基、マレオイル基、フマロイル基、シトラコノイル基、メサコノイル基、カンホロイル基、ベンゾイル基、フタロイル基、イソフタロイル基、テレフタロイル基、ナフトイル基、トルオイル基、ヒドロアトロポイル基、アトロポイル基、シンナモイル基、フロイル基、テノイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基、グリコロイル基、ラクトイル基、グリセロイル基、タルトロノイル基、マロイル基、タルタロイル基、トロポイル基、ベンジロイル基、サリチロイル基、アニソイル基、バニロイル基、ベラトロイル基、ピペロニロイル基、プロトカテクオイル基、ガロイル基、グリオキシロイル基、ピルボイル基、アセトアセチル基、メソオキサリル基、メソオキサロ基、オキサルアセチル基、オキサルアセト基、レブリノイル基これらのアシル基にフッ素、塩素、臭素、又はヨウ素などが置換してもよい。好ましくは、アシル基の炭素は8以上良い。また、これらのオリゴマー又はポリマーでもよい。
本発明に係る一般式(1)で表される構造を有する有機金属酸化物を形成するための、金属アルコキシド、金属カルボキシレート及びフッ素化アルコールの具体的な組み合わせについて、以下に例示する。ただし、本発明は、これに限定されるものではない。
前記金属アルコキシド、金属カルボキシレートとフッ化アルコール(R′−OH)は以下の反応スキームIIIによって、本発明に係る有機金属酸化物となる。ここで、(R′−OH)としては、以下のF−1〜F−16の構造が例示される。
本発明に係る金属アルコキシド又は金属カルボキシレートは、以下のM(OR)n又はM(OCOR)nに示す化合物が例示され、本発明に係る有機金属酸化物は、前記(R′−OH:F−1〜F−16)との組み合わせにより、下記例示化合物番号1〜135の構造を有する化合物(下記例示化合物I、II及びIII参照。)となる。本発明に係る有機金属酸化物は、これに限定されるものではない。
本発明に係る有機金属酸化物を製造する有機金属酸化物の製造方法は、金属アルコキシドとフッ化アルコールの混合液を用いて製造することが特徴である。
反応の一例として例示化合物番号1の反応スキームIV及び有機薄膜に適用するときの有機金属酸化物の構造を以下に示す。
反応の一例として例示化合物番号1の反応スキームIV及び有機薄膜に適用するときの有機金属酸化物の構造を以下に示す。
なお、下記構造式において、「O−Ti」部の「Ti」は、さらに置換基を有しているが、省略してある。
本発明に係る有機金属酸化物の製造方法は、金属アルコキシド又は金属カルボキシレートにフッ化アルコールを加え混合液として撹拌混合させた後に、必要に応じて水と触媒を添加して所定温度で反応させる方法を挙げることができる。
ゾル・ゲル反応をさせる際には、本発明の光酸発生剤のほかに、加水分解・重縮合反応を促進させる目的で下記に示すような加水分解・重合反応の触媒となりうるものを加えてもよい。ゾル・ゲル反応の加水分解・重合反応の触媒として使用されるものは、「最新ゾル−ゲル法による機能性薄膜作製技術」(平島碩著、株式会社総合技術センター、P29)や「ゾル−ゲル法の科学」(作花済夫著、アグネ承風社、P154)等に記載されている一般的なゾル・ゲル反応で用いられる触媒である。例えば、酸触媒では塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸、トルエンスルホン酸等の無機及び有機酸類等が挙げられる。
好ましい触媒の使用量は、有機金属酸化物の原料となる金属アルコキシド又は金属カルボキシレート1モルに対して2モル当量以下、さらに好ましくは1モル当量以下ある。
ゾル・ゲル反応をさせる際、好ましい水の添加量は、有機金属酸化物の原料となる金属アルコキシド又は金属カルボキシレート1モルに対して、40モル当量以下であり、より好ましくは、10モル当量以下であり、さらに好ましくは、5モル当量以下である。
ゾル・ゲル反応をさせる際、好ましい水の添加量は、有機金属酸化物の原料となる金属アルコキシド又は金属カルボキシレート1モルに対して、40モル当量以下であり、より好ましくは、10モル当量以下であり、さらに好ましくは、5モル当量以下である。
本発明において、好ましいゾル・ゲル反応の反応濃度、温度、時間は、使用する金属アルコキシド又は金属カルボキシレートの種類や分子量、それぞれの条件が相互に関わるため一概には言えない。すなわち、アルコキシド又は金属カルボキシレートの分子量が高い場合や、反応濃度の高い場合に、反応温度を高く設定したり、反応時間を長くし過ぎたりすると、加水分解、重縮合反応に伴って反応生成物の分子量が上がり、高粘度化やゲル化する可能性がある。したがって、通常の好ましい反応濃度は、おおむね溶液中の固形分の質量%濃度で1〜50%の範囲内であり、5〜30%の範囲内がより好ましい。また、反応温度は反応時間にもよるが通常0〜150℃の範囲内であり、好ましくは1〜100℃、より好ましくは20〜60℃の範囲内であり、反応時間は1〜50時間程度が好ましい。
前記有機金属酸化物の重縮合体が有機薄膜を形成し、以下の反応スキームVにより、水分を吸収して疎水性物質であるフッ素化アルコールを放出する。
なお、下記構造式において、「O−Ti」部の「Ti」は、さらに置換基を有しているが、省略してある。
なお、下記構造式において、「O−Ti」部の「Ti」は、さらに置換基を有しているが、省略してある。
〔3〕光酸発生剤
ゾル・ゲル反応に用いられる反応促進剤は、上述のように一般的には水と触媒(酸、塩基)であるが、これらを溶液に添加すると、溶液中で反応が進行してしまうため、時間の経過とともに、溶液がゲル化してしまうという欠点があった。この問題を解決するために、本発明においては、反応触媒に光酸発生剤を使用した。光酸発生剤は、紫外線照射によって酸を発生する化合物であるため、ゾル・ゲル反応は紫外線を照射することによって始めて開始される。よって溶液中ではゾル・ゲル反応が進行せず、時間の経過によって物性が変化する懸念がない。
光酸発生剤の好ましい例として、スルホニウム塩誘導体(C1)及びヨードニウム塩誘導体(C2)が挙げられる。
ゾル・ゲル反応に用いられる反応促進剤は、上述のように一般的には水と触媒(酸、塩基)であるが、これらを溶液に添加すると、溶液中で反応が進行してしまうため、時間の経過とともに、溶液がゲル化してしまうという欠点があった。この問題を解決するために、本発明においては、反応触媒に光酸発生剤を使用した。光酸発生剤は、紫外線照射によって酸を発生する化合物であるため、ゾル・ゲル反応は紫外線を照射することによって始めて開始される。よって溶液中ではゾル・ゲル反応が進行せず、時間の経過によって物性が変化する懸念がない。
光酸発生剤の好ましい例として、スルホニウム塩誘導体(C1)及びヨードニウム塩誘導体(C2)が挙げられる。
一般式(3)又は一般式(4)において、A1は化学式(5)、化学式(6)、一般式(7)〜(10)、化学式(11)又は化学式(12)のいずれかで表される2価又は3価の基であり、Ar1〜Ar7はそれぞれ独立にベンゼン環骨格を少なくとも1個有し、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアシル基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数1〜20のアルキルシリル基、ニトロ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、シアノ基、フェニル基、ナフチル基、フェノキシ基及びフェニルチオ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の原子又は置換基で置換されていてもよい芳香族炭化水素基又は複素環基であってAr1〜Ar4、Ar6及びAr7は1価の基、Ar5は2価の基であり、(X1)−及び(X2)−はアニオンを表し、aは0〜2の整数、bは1〜3の整数で、かつa+bは2又は3でA1の価数と同じ整数である。
一般式(7)〜(10)におけるR4〜R10は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、又は、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアシル基、炭素数1〜20のアルキル基、アミノ基、シアノ基、フェニル基、ナフチル基、フェノキシ基及びフェニルチオ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の原子又は置換基で置換されていてもよいフェニル基を表す。R4とR5、R7とR8、及びR9とR10は、互いに結合して環構造を形成していてもよい。
Ar1〜Ar7におけるベンゼン環骨格の数は、好ましくは1〜5、さらに好ましくは1〜4である。ベンゼン環骨格を1個有する場合の例としては、例えばベンゼン、又はベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、キノリン、クマリン等の複素環化合物から水素原子を1個又は2個除いた残基が挙げられる。ベンゼン環骨格を2個有する場合の例としては、例えばナフタレン、ビフェニル、フルオレン、又はジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、キサントン、キサンテン、チオキサントン、アクリジン、フェノチアジン及びチアントレン等の複素環化合物から水素原子を1個又は2個除いた残基が挙げられる。ベンゼン環骨格を3個有する場合の例としては、例えば、アントラセン、フェナントレン、ターフェニル、p−(チオキサンチルメルカプト)ベンゼン及びナフトベンゾチオフェン等の複素環化合物から水素原子を1個又は2個除いた残基が挙げられる。
ベンゼン環骨格を4個有する場合の例としては、例えばナフタセン、ピレン、ベンゾアントラセン及びトリフェニレン等から水素原子を1個又は2個除いた残基が挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素が挙げられ、フッ素及び塩素が好ましい。
炭素数1〜20のアシル基としては、例えばホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、イソブチリル基、バレリル基及びシクロヘキシルカルボニル基等が挙げられる。
炭素数1〜20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−又はiso−プロピル基、n−、sec−又はtert−ブチル基、n−、iso−又はneo−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基及びオクチル基等が挙げられる。
炭素数1〜20のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−又はiso−プロポキシ基、n−、sec−又はtert−ブトキシ基、n−、iso−、又はneo−ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基及びオクチルオキシ基等が挙げられる。
炭素数1〜20のアルキルチオ基としては、例えばメチルチオ基、エチルチオ基、n−又はiso−プロピルチオ基、n−、sec−又はtert−ブチルチオ基、n−、iso−又はneo−ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基及びオクチルチオ基等が挙げられる。
炭素数1〜20のアルキルシリル基としては、例えばトリメチルシリル基及びトリイソプロピルシリル基等のトリアルキルシリル基等が挙げられる。ここでアルキルは直鎖構造でも分岐構造でも構わない。
Ar1〜Ar7の置換する原子又は置換基として、酸発生効率の観点から好ましいのは、ハロゲン原子、シアノ基、フェニル基、ナフチル基、フェノキシ基、フェニルチオ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基及び炭素数1〜20のアシル基であり、さらに好ましいのは、シアノ基、フェニル基、炭素数1〜15のアルキル基、炭素数1〜15のアルコキシ基、炭素数1〜15のアルキルチオ基及び炭素数1〜15のアシル基、特に好ましいのは、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルキルチオ基及び炭素数1〜10のアシル基である。なお、上記のアルキル部分は直鎖でも分岐でも環状でもよい。
Ar1〜Ar4、Ar6及びAr7として、酸発生効率の観点から好ましいのは、フェニル基、p−メチルフェニル基、p−メトキシフェニル基、p−tert−ブチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、p−(チオキサンチルメルカプト)フェニル基及びm−クロロフェニル基である。
Ar5として、酸発生効率の観点から好ましいのは、フェニレン基、2−又は3−メチルフェニレン基、2−又は3−メトキシフェニレン基、2−又は3−ブチルフェニレン基及び2−又は3−クロロフェニレン基である。
一般式(3)又は一般式(4)において(X1)−又は(X2)−で表されるアニオンとしては、ハロゲン化物アニオン、水酸化物アニオン、チオシアナートアニオン、炭素数1〜4のジアルキルジチオカルバメートアニオン、炭酸アニオン、炭酸水素アニオン、ハロゲンで置換されていてもよい脂肪族又は芳香族カルボキシアニオン(安息香酸アニオン、トリフルオロ酢酸アニオン、パーフルオロアルキル酢酸アニオン及びフェニルグリオキシル酸アニオン等)、ハロゲンで置換されていてもよい脂肪族又は芳香族スルホキシアニオン(トリフルオロメタンスルホン酸アニオン等)、6フッ化アンチモネートアニオン(SbF6 −)、リンアニオン[6フッ化リンアニオン(PF6 −)及び3フッ化トリス(パーフルオロエチル)リンアニオン(PF3(C2F5)3 −)等]及びボレートアニオン(テトラフェニルボレート、テトラキス(パーフルオロフェニル)ボレート及びブチルトリフェニルボレートアニオン等)等が挙げられ、酸発生効率の観点から、ホスフィンアニオン、ハロゲンで置換された脂肪族スルホキシアニオン及びボレートアニオンが好ましい。さらに好ましいのは、パーフルオロアルキル基を有するホスフェートアニオン若しくはボレートアニオン又はヘキサフルオロホスフェートアニオンであり、特に好ましいのは、ヘキサフルオロホスフェートアニオン、トリフルオロ[トリス(パーフルオロエチル)]ホスフェートアニオン及びテトラキス(パーフルオロフェニル)ボレートアニオンであり、最も好ましいのは、トリフルオロ[トリス(パーフルオロエチル)]ホスフェートアニオン及びテトラキス(パーフルオロフェニル)ボレートアニオンである。
スルホニウム塩誘導体(C1)として、酸発生効率の観点から好ましいのは、トリフェニルスルホニウムカチオン、トリ−p−トリルスルホニウムカチオン又は[p−(フェニルメルカプト)フェニル]ジフェニルスルホニウムカチオンをカチオン骨格として有する化合物及び一般式(13)〜(16)で表される化合物であり、さらに好ましいのは一般式(13)〜(16)で表される化合物である。
一般式(13)〜(16)における(X3)−〜(X6)−はアニオンを表し、具体的には一般式(3)又は(4)における(X1)−又は(X2)−として例示したものと同様のものが挙げられ、好ましいものも同様である。
本発明におけるヨードニウム塩誘導体(C2)としては、一般式(17)又は一般式(18)で表される化合物等が挙げられる。
本発明におけるヨードニウム塩誘導体(C2)としては、一般式(17)又は一般式(18)で表される化合物等が挙げられる。
式中、A2は前記化学式(5)、化学式(6)、一般式(7)〜(10)、化学式(11)又は化学式(12)のいずれかで表される2価又は3価の基であり、Ar8〜Ar12はそれぞれ独立にベンゼン環骨格を少なくとも1個有し、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアシル基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数1〜20のアルキルシリル基、ニトロ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、シアノ基、フェニル基、ナフチル基、フェノキシ基及びフェニルチオ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の置換基で置換されていてもよい芳香族炭化水素基又は複素環基であって、Ar8〜Ar10及びAr12は1価の基、Ar11は2価の基であり、(X7)−及び(X8)−はアニオンを表し、cは0〜2の整数、dは1〜3の整数で、かつc+dは2又は3でA2の価数と同じ整数である。
ハロゲン原子、炭素数1〜20のアシル基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基及び炭素数1〜20のアルキルシリル基としては、一般式(3)及び一般式(4)の説明で記載したものと同様のものが例示される。
一般式(18)におけるA2として、酸を発生する効率の観点から好ましいのは、一般式(7)、一般式(9)、一般式(10)、化学式(11)及び化学式(12)で表される基であり、一般式(7)、一般式(10)、化学式(11)及び化学式(12)で表される基がさらに好ましい。
一般式(17)又は一般式(18)におけるAr8〜Ar12は、一般式(17)又は一般式(18)で表される化合物が紫外〜可視光領域に吸収をもつようになる基である。Ar8〜Ar12におけるベンゼン環骨格の数は、好ましくは1〜5、さらに好ましくは1〜4であり、Ar8〜Ar12の具体例としては、一般式(3)又は一般式(4)のAr1〜Ar7として例示したものと同様のものが挙げられ、好ましいものも同様である。
(X7)−及び(X8)−としては、一般式(3)又は一般式(4)における(X1)−又は(X2)−として例示したものと同様のものが挙げられ、好ましいものも同様である。
ヨードニウム塩誘導体(C2)として、酸発生効率の観点から好ましいのは、(4−メチルフェニル){4−(2−メチルプロピル)フェニル}ヨードニウムカチオン、[ビス(4−t−ブチルフェニル)]ヨードニウムカチオン、[ビス(4−t−ブチルフェニル)]トリフルオロ[トリス(パーフルオロエチル)]ヨードニウムカチオン及び[ビス(4−メトキシフェニル)]ヨードニウムカチオンをカチオン骨格として有する化合物、並びにこれら以外の一般式(19)〜(22)で表される化合物であり、さらに好ましいのは一般式(19)〜(22)で表される化合物(例示した化合物を含む)である。
一般式(19)〜(22)において、R11〜R16は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアシル基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数1〜20のアルキルシリル基、ニトロ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、シアノ基、フェニル基及びナフチル基からなる群から選ばれる原子又は置換基であり、(X9)−〜(X12)−はアニオンを表す。
ハロゲン原子、炭素数1〜20のアシル基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基及び炭素数1〜20のアルキルシリル基としては、一般式(3)及び一般式(4)の説明で記載したものと同様のものが例示される。
R11〜R16として好ましいのは、ハロゲン原子、シアノ基、フェニル基、ナフチル基、炭素数1〜20のアルキル基及び炭素数1〜20のアルコキシ基であり、さらに好ましいのは、シアノ基、フェニル基、炭素数1〜15のアルキル基、炭素数1〜15のアルコキシ基及び炭素数1〜15のアシル基、特に好ましいのは、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基及び炭素数1〜10のアシル基である。なお、上記のアルキル部分は直鎖でも分岐でも環状でもよい。
一般式(19)〜(22)における(X9)−〜(X12)−としては一般式(3)又は(4)における(X1)−又は(X2)−として例示したものと同様のものが挙げられ、好ましいものも同様である。
本発明に係る光酸発生剤は、フッ素原子を含有することが好ましく、特にパーフルオロアルキル基を含有することが好ましい。フッ素原子を含有することは、実質、疎水性物質を有することと同義であり、前記乾燥剤、及び封止剤としての機能を助長することができる。
光酸発生剤の添加量は、前記一般式(1)で表される化合物100質量%に対して、通常、0.01〜10質量%用いる。光酸発生剤の添加量がこの範囲にあると、ゾル・ゲル反応状況が良好になり、また、反応後に光酸発生剤が溶出するのを防止する観点から好ましい。より好ましくは、0.1〜5質量%、さらに好ましくは、0.1〜1質量%の範囲内である。
紫外線照射後に光酸発生剤から発生した酸の拡散と硬化促進の目的で、加熱を行ってもよい。加熱温度は、好ましくは30〜200℃の範囲内であり、さらに好ましくは35〜150℃、特に好ましくは40〜120℃の範囲内である。
〔4〕有機薄膜
本発明の有機薄膜は、光酸発生剤若しくは光酸発生剤由来のフッ素原子を有する化合物及び前記一般式(1)又は前記一般式(2)で表される構造を有する化合物を含有する組成物を用いて形成された膜であることを特徴とする。
本発明の有機薄膜は、電子デバイス用有機材料であることが好ましい。なお、「有機薄膜」はその機能から「封止膜」という場合がある。ただし、後述するガスバリアーフィルムやガラス等の電子デバイスの「封止部材」とは別の部材である。
本発明の有機薄膜は、光酸発生剤若しくは光酸発生剤由来のフッ素原子を有する化合物及び前記一般式(1)又は前記一般式(2)で表される構造を有する化合物を含有する組成物を用いて形成された膜であることを特徴とする。
本発明の有機薄膜は、電子デバイス用有機材料であることが好ましい。なお、「有機薄膜」はその機能から「封止膜」という場合がある。ただし、後述するガスバリアーフィルムやガラス等の電子デバイスの「封止部材」とは別の部材である。
前記電子デバイスとしては、例えば、有機EL素子、発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)、液晶素子、太陽電池(光電変換素子)、タッチパネル、液晶表示装置などのカラーフィルター等が挙げられる。特に、本発明においては、本発明の効果発現の観点から、電子デバイスが有機EL素子、太陽電池及び発光ダイオードであることが好ましい。
なお、本発明において、電子デバイス用有機材料とは、有機材料の固形成分のことをいい、有機溶媒を含まないものとする。
なお、本発明において、電子デバイス用有機材料とは、有機材料の固形成分のことをいい、有機溶媒を含まないものとする。
〔4.1〕有機薄膜の詳細
本発明の有機薄膜は、水と反応することにより、撥水性又は疎水性物質を放出する前記乾燥剤を主成分として含有する。「主成分」とは、前記有機薄膜の全体の質量のうち、70質量%以上が前記乾燥剤であることが好ましく、より好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上であることをいう。
本発明の有機薄膜は、水と反応することにより、撥水性又は疎水性物質を放出する前記乾燥剤を主成分として含有する。「主成分」とは、前記有機薄膜の全体の質量のうち、70質量%以上が前記乾燥剤であることが好ましく、より好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上であることをいう。
本発明の有機薄膜は、前記本発明の乾燥剤を含む塗布液を調製し、電子デバイス上に塗布して焼結又は紫外線を照射して重縮合させながら皮膜化することで、形成することができる。
塗布液を調製する際に必要であれば用いることのできる有機溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、又は、脂肪族エーテル又は脂環式エーテル等のエーテル類等が適宜使用できる。
塗布液における本発明の乾燥剤(有機金属酸化物)の濃度は、目的とする厚さや塗布液のポットライフによっても異なるが、0.2〜35質量%程度であることが好ましい。本発明においては、塗布液には重合を促進する触媒を添加する。
調製した塗布液は、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法などの塗布による方法、インクジェット・プリント法を含む印刷法などのパターニングによる方法などの湿式形成法が挙げられ、材料に応じて使用できる。これらのうち好ましいのは、インクジェット・プリント法である。インクジェット・プリント法については、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用することができる。
インクジェット・プリント法によるインクジェットヘッドからの塗布液の吐出方式は、オンデマンド方式及びコンティニュアス方式のいずれでもよい。オンデマンド方式のインクジェットヘッドは、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型及びシェアードウォール型等の電気−機械変換方式、又は、サーマルインクジェット型及びバブルジェット(登録商標)型等の電気−熱変換方式等のいずれでもよい。
塗布後の有機薄膜を固定化するには、低温で重合反応が可能なプラズマやオゾンや紫外線を使うことが好ましい。
真空紫外線処理における紫外線の発生手段としては、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、エキシマランプ、UV光レーザー等が挙げられる。
紫外線照射は、バッチ処理にも連続処理にも適合可能であり、使用する基材の形状によって適宜選定することができる。有機薄膜を形成する基材が長尺フィルム状である場合には、これを搬送させながら上記のような紫外線発生源を具備した乾燥ゾーンで連続的に紫外線を照射することにより行うことができる。紫外線照射に要する時間は、使用する基材や乾燥剤含有塗布液の組成、濃度にもよるが、一般に0.1秒〜10分間であり、好ましくは0.5秒〜3分間である。
塗膜面が受けるエネルギーとしては、均一で堅牢な薄膜を形成する観点から、3.0J/cm2以上であることが好ましく、3.5J/cm2以上であることがより好ましく、4.0J/cm2であることがさらに好ましい。また、同様に、過度な紫外線照射を避ける観点から、14.0J/cm2以下であることが好ましく、12.0J/cm2以下であることがより好ましく、10.0J/cm2以下であることがさらに好ましい。
また、真空紫外線(VUV)を照射する際の、酸素濃度は300〜10000体積ppm(1体積%)の範囲内とすることが好ましく、さらに好ましくは、500〜5000体積ppmの範囲内である。このような酸素濃度の範囲に調整することにより、有機薄膜が酸素過多になるのを防止して、水分吸収の劣化を防止することができる。
真空紫外線(VUV)照射時にこれら酸素以外のガスとしては乾燥不活性ガスを用いることが好ましく、特にコストの観点から乾燥窒素ガスにすることが好ましい。
これらの真空紫外線処理の詳細については、例えば、特開2012−086394号公報の段落0055〜0091、特開2012−006154号公報の段落0049〜0085、特開2011−251460号公報の段落0046〜0074等に記載の内容を参照することができる。
本発明の有機薄膜は、60℃・90%RH環境下で1時間放置されたときに、有機薄膜表面に、フッ素原子がどれだけ配向するか推定するために、23℃雰囲気下での純水の接触角を測定することが好ましく、この時の放置後の接触角が放置前の接触角に比べて増加する場合は、より撥水性が向上し、水分透過の封止性が高まる。
〔接触角の測定〕
接触角の測定は、公知文献「接着の基礎と理論」(日刊工業新聞社)p52−53に記載の液滴法を参考にして以下の方法で測定することができる。
接触角の測定は、公知文献「接着の基礎と理論」(日刊工業新聞社)p52−53に記載の液滴法を参考にして以下の方法で測定することができる。
具体的には、有機薄膜表面の純水の接触角の測定は、JIS−R3257に基づいて、60℃、90%RHで1時間放置した前後の有機薄膜試料に対して、23℃、55%RHの雰囲気下で、接触角計(協和界面科学株式会社製、商品名DropMaster DM100)を用いて、純水1μLを滴下し1分後における接触角を測定する。なお、測定は有機薄膜幅手方向に対して等間隔で10点測定して、最大値及び最小値を除いてその平均値を接触角とする。
本発明の有機薄膜の膜厚は、膜厚の範囲はドライ膜で10nm〜100μmの範囲内、より好ましくは、0.1〜1μmの範囲内であることが、封止膜としての効果を発現する上で好ましい。
〔5〕他の有機化合物薄膜、無機化合物薄膜、又は無機−有機混合物薄膜
本発明の有機薄膜は、他の有機化合物薄膜、無機化合物薄膜、又は無機−有機混合物薄膜と積層して用いられてもよい。また、有機薄膜を複数層積層して用いてもよい。
本発明の有機薄膜は、他の有機化合物薄膜、無機化合物薄膜、又は無機−有機混合物薄膜と積層して用いられてもよい。また、有機薄膜を複数層積層して用いてもよい。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
実施例1
(組成物1−1の調製)
水分濃度1ppm以下の乾燥窒素雰囲気下のグローブボックス内で、チタニウムテトライソプロポキシド(Ti(OiPr)4)の3質量%、及び光酸発生剤101の0.03質量%の脱水テトラフルオロプロパノール(例示化合物F−1)溶液を調液し、湿度30%の大気に1分間開放し、すぐにグローブボックス内に戻した溶液をゾル・ゲル液組成物1−1とした。
(組成物1−1の調製)
水分濃度1ppm以下の乾燥窒素雰囲気下のグローブボックス内で、チタニウムテトライソプロポキシド(Ti(OiPr)4)の3質量%、及び光酸発生剤101の0.03質量%の脱水テトラフルオロプロパノール(例示化合物F−1)溶液を調液し、湿度30%の大気に1分間開放し、すぐにグローブボックス内に戻した溶液をゾル・ゲル液組成物1−1とした。
(組成物1−2〜1−13の調製)
ゾル・ゲル液組成物の原料種類及び成膜条件を表Iに示すように変更した以外は組成物1−1と同様にして組成物1−2〜13を調製した。なお、組成物の番号は、表Iにおける「有機薄膜No.」に対応している。また、実施例1で用いた光酸発生剤を下記に示す。
ゾル・ゲル液組成物の原料種類及び成膜条件を表Iに示すように変更した以外は組成物1−1と同様にして組成物1−2〜13を調製した。なお、組成物の番号は、表Iにおける「有機薄膜No.」に対応している。また、実施例1で用いた光酸発生剤を下記に示す。
実施例2
(組成物2−1〜2−7の調製)
実施例1の組成物1−1と同様の構成を用いて、金属アルコキシド及び金属カルボキレート原料を表Iに示すように変更して、組成物2−1〜2−7を調製した。
(組成物2−1〜2−7の調製)
実施例1の組成物1−1と同様の構成を用いて、金属アルコキシド及び金属カルボキレート原料を表Iに示すように変更して、組成物2−1〜2−7を調製した。
実施例3
シリコンウェハ上に前記実施例1において調製したゾル・ゲル液組成物をスピンコート法で塗布・成膜し、塗布膜に紫外線(低圧水銀灯;37mw/cm2の強度)を10分照射させて、有機薄膜(封止膜)1−1を作製した。
得られた有機薄膜を60℃、90%RHの環境で1時間放置した前後の純水の接触角を下記液滴法で測定した。その結果、放置前は純水との接触角が40°であったのに対して、放置後、接触角が74°に増加していた。以上の結果から、上記ゾル・ゲル液から作製した有機薄膜が水分に触れたことで疎水性(撥水性)物質を放出し、それが膜表面に配向したことで表面の疎水性(撥水性)が高まったことが認められた。
シリコンウェハ上に前記実施例1において調製したゾル・ゲル液組成物をスピンコート法で塗布・成膜し、塗布膜に紫外線(低圧水銀灯;37mw/cm2の強度)を10分照射させて、有機薄膜(封止膜)1−1を作製した。
得られた有機薄膜を60℃、90%RHの環境で1時間放置した前後の純水の接触角を下記液滴法で測定した。その結果、放置前は純水との接触角が40°であったのに対して、放置後、接触角が74°に増加していた。以上の結果から、上記ゾル・ゲル液から作製した有機薄膜が水分に触れたことで疎水性(撥水性)物質を放出し、それが膜表面に配向したことで表面の疎水性(撥水性)が高まったことが認められた。
<接触角の測定>
有機薄膜表面の純水の接触角の測定は、JIS−R3257に基づいて、60℃、90%RHで1時間放置した前後の有機薄膜試料に対して、23℃、55%RHの雰囲気下で、接触角計(協和界面科学株式会社製、商品名DropMaster DM100)を用いて、純水1μLを滴下し1分後における接触角を測定した。なお、測定は有機薄膜幅手方向に対して等間隔で10点測定して、最大値及び最小値を除いてその平均値を接触角とした。
有機薄膜表面の純水の接触角の測定は、JIS−R3257に基づいて、60℃、90%RHで1時間放置した前後の有機薄膜試料に対して、23℃、55%RHの雰囲気下で、接触角計(協和界面科学株式会社製、商品名DropMaster DM100)を用いて、純水1μLを滴下し1分後における接触角を測定した。なお、測定は有機薄膜幅手方向に対して等間隔で10点測定して、最大値及び最小値を除いてその平均値を接触角とした。
実施例4
(有機薄膜1−1〜1−13及び2−1〜2−6の作製)
シリコンウェハ上に前記実施例1及び2で調製したゾル・ゲル液組成物をスピンコート法で塗布・成膜し、塗布膜に紫外線(低圧水銀灯;37mw/cm2の強度)を10分照射させて、有機薄膜(1−1〜1−13及び2−1〜2−6)を作製した。
(有機薄膜2−7の作製)
有機薄膜1−1と同じ組成物をスピンコート法に変えてインクジェット・プリント法で塗布・成膜した点以外は上記方法と同様にして有機薄膜2−7を作製した。
(有機薄膜1−1〜1−13及び2−1〜2−6の作製)
シリコンウェハ上に前記実施例1及び2で調製したゾル・ゲル液組成物をスピンコート法で塗布・成膜し、塗布膜に紫外線(低圧水銀灯;37mw/cm2の強度)を10分照射させて、有機薄膜(1−1〜1−13及び2−1〜2−6)を作製した。
(有機薄膜2−7の作製)
有機薄膜1−1と同じ組成物をスピンコート法に変えてインクジェット・プリント法で塗布・成膜した点以外は上記方法と同様にして有機薄膜2−7を作製した。
次に、得られた各種有機薄膜を、温度60℃で相対湿度が90%の環境で48時間放置した後に目視観察を行うことで、水と反応することによるひび割れ及び不透明領域の有無について評価した。評価結果を下記表Iに示す。
表Iより、本発明の組成物からなる薄膜は、ひび割れ無く、透明な有機薄膜として使用できることが認められた。
Claims (12)
- 光酸発生剤及び下記一般式(1)で表される構造を有する化合物を含有することを特徴とする組成物。
一般式(1): M(OR1)y(O−R)x−y
[式中、Rは、水素原子、炭素数1個以上のアルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アシル基、アルコキシ基、又は複素環基を表す。ただし、Rは置換基としてフッ素原子を含む炭素鎖でもよい。Mは、金属原子を表す。OR1は、フッ化アルコキシ基を表す。xは金属原子の価数、yは1とxの間の任意な整数を表す。] - 光酸発生剤由来のフッ素原子を有する化合物、及び下記一般式(2)で表される構造を有する有機金属酸化物を含有し、水と反応することにより撥水性又は疎水性物質を放出することを特徴とする組成物。
一般式(2): R−[M(OR1)y(O−)x−y]n−R
[式中、Rは、水素原子、炭素数1個以上のアルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アシル基、アルコキシ基、又は複素環基を表す。ただし、Rは置換基としてフッ素原子を含む炭素鎖でもよい。Mは、金属原子を表す。OR1は、フッ化アルコキシ基を表す。xは金属原子の価数、yは1とxの間の任意な整数を表す。nは重縮合度をそれぞれ表す。] - 前記Mで表される金属原子が、Ti、Zr、Sn、Ta、Fe、Zn、Si及びAlから選択されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の組成物。
- 前記光酸発生剤が、パーフルオロアルキル基を含むことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の組成物。
- 請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の組成物を含有することを特徴とする乾燥剤。
- 請求項5に記載の乾燥剤を含有することを特徴とする有機薄膜。
- 請求項2から請求項4までのいずれか一項に記載の組成物がゾル・ゲル転移されてなる塗布膜であることを特徴とする請求項6に記載の有機薄膜。
- 請求項1、請求項3又は請求項4のいずれか一項に記載の組成物を含有する塗布膜を形成する工程を有することを特徴とする有機薄膜の作製方法。
- 前記塗布膜を形成する工程が、インクジェット・プリント法によることを特徴とする請求項8に記載の有機薄膜の作製方法。
- 前記塗布膜が、前記組成物をゾル・ゲル転移させて形成する膜であることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の有機薄膜の作製方法。
- 前記塗布膜に紫外光を照射する工程を有することを特徴とする請求項8から請求項10までのいずれか一項に記載の有機薄膜の作製方法。
- 前記塗布膜中に水と反応して撥水性又は疎水性物質を放出する乾燥剤を含むことを特徴とする請求項8から請求項11までのいずれか一項に記載の有機薄膜の作製方法。
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2018
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Title |
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CAMPBELL, CAROLYN ET AL.: "Preparation of Titanium Fluoroalkoxides by Alcoholysis of Titanium Alkoxides", INORG. CHEM., vol. 33, JPN6022000280, 1994, pages 4950 - 4958, XP000940537, ISSN: 0004679062, DOI: 10.1021/ic00100a019 * |
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