JP2019179628A - 配線材 - Google Patents

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Abstract

【課題】導体としてアルミニウム導体を用いても、柔軟性を確保しつつも皮むき加工性に優れた配線材を提供する。【解決手段】アルミニウム導体の外周に、少なくとも1層の絶縁被覆層を有する配線材であって、絶縁被覆層のうちアルミニウム導体の外周に直接設けられた最内絶縁被覆層が、エチレンゴム及びスチレン系エラストマーの少なくとも一方を含有するベース樹脂の層である配線材。【選択図】なし

Description

本発明は、アルミニウム導体を有する配線材に関する。
電気・電子機器の内部及び外部配線に使用される絶縁電線、ケーブル、コード及び光ファイバー心線、光ファイバーコード等の配線材には、用途等に応じて、絶縁被覆層又はシースの材料が選択される。例えば、耐熱性が求められる場合、配線材の絶縁被覆層又はシースは、通常、耐熱性を示す樹脂や架橋樹脂(例えば、架橋ポリ塩化ビニル、架橋ポリエチレン)で形成される。このような配線材としては、従来、導体としての銅線の外周に架橋ポリ塩化ビニル製等の絶縁被覆層を有するもの、更には架橋ポリエチレン製等のシースを有するものが多用されている。
一般に電力ケーブルや配電ケーブルには、絶縁被覆層に架橋ポリエチレン、シースにPVC樹脂(ポリ塩化ビニル)を施したCVケーブル(cross−linked polyethylene insulated vinyl sheath cable)が使用されている。
一方、配線材の導体として、資源希少性、コストや軽量化の観点から、銅導体の代わりに、アルミニウムで形成された導体(アルミニウム導体)を用いた配線材が電力分野や配電分野に使用されてきている(例えば、特許文献1参照。)。
特開2017−143645号公報
しかし、アルミニウムは銅より電気導電率が低いため、同じ電流を流すためには導体径を太くする必要がある。更に、アルミニウム導体は硬く、また傷が入ると折れやすいなどの問題も多い。このようなアルミニウム導体を用いたCVケーブルは、配線すると、ケーブルが硬くなるため、配線時にケーブルがはねてしまい、配線しにくい(柔軟性に劣る。)。
また、従来のCVケーブルは、絶縁被覆層を導体から剥離しにくく、特に上記問題を有するアルミニウム導体を用いたCVケーブルは、皮むき加工性の改善が求められている。すなわち、皮むき加工する際に、アルミニウム導体に傷が入りやすく、丁寧に加工しないとアルミニウム導体が破断してしまうおそれがある。更に、皮むき加工において絶縁被覆層の切断端面に絶縁被覆層の線状体ないし毛状体(ヒゲということがある。)が残存することがある。このようなヒゲが残存すると、コネクタ加工を行う際にヒゲがコネクタに噛こんでしまい、接触不良を起こす。
また、アルミニウム導体は傷に非常に弱いため、絶縁被覆層を剥がす際にあまり刃を食い込ませることができない。従来の架橋ポリエチレンは刃を十分に入れないと皮むき加工ができず、またその場合でもヒゲが残りやすい。このヒゲは後加工で取り除く必要がある。したがって、あまり刃を入れずに被覆を剥ければ、生産性が大幅に向上する。
本発明は、導体としてアルミニウム導体を用いても、柔軟性を確保しつつも皮むき加工性(絶縁被覆層を剥離する際の加工しやすさ、皮剥性ともいう)に優れた配線材を提供することを課題とする。
本発明者らは、アルミニウム導体に対してその外周に直接設ける絶縁被覆層を、エチレンゴム及びスチレン系エラストマーの少なくとも一方を含有するベース樹脂の層で形成することにより、得られる配線材に柔軟性と優れた皮むき加工性とを付与できることを見出した。本発明者らはこの知見に基づき、更に研究を重ね、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明の課題は以下の手段によって達成された。
<1>アルミニウム導体の外周に、少なくとも1層の絶縁被覆層を有する配線材であって、
前記絶縁被覆層のうち前記アルミニウム導体の外周に直接設けられた最内絶縁被覆層が、エチレンゴム及びスチレン系エラストマーの少なくとも一方を含有するベース樹脂の層である配線材。
<2>前記ベース樹脂が、エチレン−α−オレフィン共重合体、ポリエチレン及びポリプロピレンからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含有する<1>に記載の配線材。
<3>前記少なくとも1種の樹脂が、架橋樹脂である<2>に記載の配線材。
<4>前記ベース樹脂の層が、下記シラン架橋性組成物のシラノール縮合硬化物である<1>〜<3>のいずれか1項に記載の配線材。
<シラン架橋性組成物>
エチレンゴム及びスチレン系エラストマーの少なくとも一方と、シランカップリング剤がグラフト化結合した、エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂、ポリエチレン及びポリプロピレンからなる群より選択される少なくとも1種のシラングラフト樹脂と、シラノール縮合触媒とを含有するシラン架橋性組成物
<5>前記エチレンゴム及びスチレン系エラストマーの、前記ベース樹脂中の合計含有率が、少なくとも5質量%である<1>〜<4>のいずれか1項に記載の配線材。
<6>前記ベース樹脂が、有機鉱物油を含有している<1>〜<5>のいずれか1項に記載の配線材。
<7>前記絶縁被覆層が2層以上であって、その最外絶縁被覆層が、ポリ塩化ビニルの絶縁被覆層である<1>〜<6>のいずれか1項に記載の配線材。
本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本発明の配線材は、導体としてアルミニウム導体を用いても、柔軟性と優れた皮剥性を兼ね備え、更には軽量化も達成できる。
[配線材]
本発明の配線材は、アルミニウム導体の外周に少なくとも1層の絶縁被覆層を有している。少なくとも1層の絶縁被覆層(以下、単に被覆層ということがある。)のうち、アルミニウム導体の外周に直接設けられた最内絶縁被覆層はエチレンゴム及びスチレン系エラストマーの少なくとも一方を含有するベース樹脂の層で形成されている。
ベース樹脂の層は、エチレンゴム及びスチレン系エラストマーの少なくとも一方と、エチレン−α−オレフィン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン及び酸共重合成分(酸エステル共重合成分を含む。)を有するポリオレフィン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂(以下、エチレン系成分含有樹脂という。)を含有するベース樹脂の層が好ましい。この場合、最内絶縁被覆層は、ベース樹脂の非架橋物からなる層であってもよいが、耐熱性の点で、ベース樹脂の架橋物からなる層であることが好ましい。ここで、ベース樹脂の架橋物とは、ベース樹脂に含有される樹脂のうちエチレン系成分含有樹脂が架橋された架橋物(エチレン系成分含有樹脂が架橋樹脂となる)を意味する。架橋されるエチレン系成分含有樹脂は用いるエチレン系成分含有樹脂の全量でも一部でよく、用途等により適宜に決定できる。ベース樹脂の架橋物において、通常、エチレンゴム及びスチレン系エラストマーはそれぞれ他の樹脂とは架橋されていないが、本発明の効果を損なわない範囲で架橋されていてもよい。エチレン系成分含有樹脂の架橋方法は、公知の樹脂架橋法(例えば、電子線架橋、架橋剤、架橋触媒等を用いた化学架橋法等)を特に制限されることなく適用できるが、特殊な設備を要しない等の点で、後述するシラン架橋法が好ましい。
本発明において、アルミニウム導体の外周に直接設けられるとは、アルミニウム導体の外周に、接着層やプライマー層、更には他の絶縁被覆層等の層を介することなく、アルミニウム導体の外周に接した状態で設けられることを意味する。
アルミニウ導体と、ベース樹脂の層で形成された最内絶縁被覆層とを有する配線材が、柔軟性と優れた皮剥性を兼ね備える理由の詳細は、まだ定かではないが、以下のように考えられる。
すなわち、従来の構成である、アルミニウム導体の外側に被覆された架橋ポリエチレンはアルミニウム導体と一体化することにより、アルミニウム導体の硬さを助長させる。しかも、アルミニウム導体は、銅導体と比較して導体抵抗が小さく許容電流が少なくなるために通常サイズアップ(大径化)するから、配線材自体が硬くなる。更に架橋ポリエチレン層は硬くて刃が入りにくく、更に材料が伸びるため、導体近傍まで刃を入れないと皮むきすることができない。
しかし、本発明の配線材は、アルミニウム導体に直接接する部分(最内絶縁被覆層)を、ベース樹脂の層で形成することで、アルミニウム導体の硬さが緩和されるとともに、配線時に作用する応力に対する配線材の反発も低減することが可能となる。また、具体的には、被覆層をカッティングする際に、刃をアルミニウム導体ぎりぎりまで入れなくても、接触抵抗の上昇を来すようなヒゲを残存させることなく、被覆層を剥離(切断、除去)することが可能となる。しかも、アルミニウムは比重が小さく、銅導体を備えた配線材に対して、軽量化を図ることもできる。
更に、本発明の配線材の好ましい態様として、最内絶縁被覆層をベース樹脂の硬化物からなる層、更には後述するシラン架橋性組成物のシラノール縮合硬化物からなる層で形成すると、配線材及び硬化物、特にシラノール縮合硬化物は、短期の(例えば環境雰囲気の瞬間的高温化に対する)耐熱性に優れており溶融しにくく、しかも、長期の(例えば環境雰囲気の連続的若しくは断続的な高温化に対する)耐熱性も向上させることができ、配線材の小径化が可能となる。
本発明の配線材は、優れた皮むき加工性を示すため、皮むき加工される前(未皮むき加工)の配線材である態様と、優れた皮むき加工性により所望のように被覆層が除去された後(皮むき加工済)の配線材である態様とを包含する。
本発明の配線材として採りうる絶縁電線は、アルミニウム導体の外周に少なくとも1層の絶縁被覆層を有する電線であればよく、アルミニウム導体としては単線でも後述するアルミニウム撚り線でも用いることができる。
本発明の配線材として採りうるケーブルは、アルミニウム導体の外周に、通常2層以上の絶縁被覆層を有するものであって、2層以上の絶縁被覆層のうち最も外側に位置する絶縁被覆層(最外絶縁被覆層)がアルミニウム導体とその他の絶縁被覆層を囲繞する形態を有するものをいう。例えば、アルミニウム導体の外周に最内絶縁被覆層を備えた、1本又は複数本の絶縁電線をシースと称される最外絶縁被覆層で一括して囲繞してなるケーブルが挙げられる。このケーブルにおいて、絶縁電線を複数有する場合、複数の絶縁電線は並列に配置されていてもよく、撚り合わされて配置(撚り線)されていてもよい。絶縁電線を撚り合わせる際の、絶縁電線の本数、絶縁電線の配置、撚り方向、撚りピッチ等は、用途等に応じて、適宜に設定できる。
配線材の直径は、用途等に応じて適宜に決定することができ、特に制限されない。例えば、絶縁電線として用いる場合、強度と柔軟性の点で、0.8〜35mmが好ましく、1〜30mmがより好ましい。ケーブルとして用いる場合、強度と柔軟性の点で、0.8〜50mmが好ましく、1〜35mmがより好ましい。
本発明の配線材は、主として配電ケーブルであるCVケーブルの代替電線ないしケーブルとして用いられ、その他、キャブタイヤケーブル、コード、鉄道用ケーブル、太陽光や風力発電ケーブル、また航空機用ケーブル等としても好適に用いられる。
<アルミニウム導体>
本発明に用いるアルミニウム導体は、アルミニウム製の導体であれば特に制限されず、例えば、1本のアルミニウム素線からなる導体、又は、複数本のアルミニウム素線を撚り合わせた撚り線(アルミニウム撚り線ともいう。)からなる導体が挙げられる。
アルミニウム素線としては、従来、配線材に用いられるものを用いることができ、例えば、(純)アルミニウム若しくはアルミニウム合金で形成された素線を用いることができる。アルミニウム合金としては、特に制限されないが、例えば、1000系アルミニウム合金、2000系アルミニウム合金、3000系アルミニウム合金、4000系アルミニウム合金、5000系アルミニウム合金、6000系アルミニウム合金などが挙げられ、代表的には、Feが0.6質量%以下、Siが0.2〜1.0質量%、Mgが0.2〜1.0質量%の成分を含み、残部がアルミニウム及び不可避不純物からなるアルミニウム合金が挙げられる。
アルミニウム及びアルミニウム合金の中でも、アルミニウム純度が99%以上の1000系アルミニウム合金が好ましく、また、高い電気導電性を有するものが好ましい。
アルミニウム素線の断面形状は、用途等に応じて適宜に決定することができ、例えば、丸形(円形)や平角形(矩形)、六角形等が挙げられる。本発明においては、例えば撚り線を形成しやすい点で、断面円形が好ましい。
撚り線を形成するアルミニウム素線の数としては、複数(2本以上)であれば特に制限されない。
アルミニウム素線を撚り合わせる際の、アルミニウム素線の配置、撚り方向、撚りピッチ等は、用途等に応じて、適宜に設定できる。
アルミニウム撚り線は、外径を抑えるため、撚り合わせた後に更にダイス等によって絞りこんだ圧延導体が用いられることが好ましい。
アルミニウム素線の外径は、用途等に応じて適宜に決定することができるが、強度と柔軟性の点で、0.15〜3.5mmが好ましく、0.3〜3mmがより好ましく、0.35〜2.5mmが更に好ましい。
アルミニウム撚り線の外径は、用途等に応じて適宜に決定することができるが、強度と柔軟性の点で、0.8〜45mmが好ましく、1〜35mmがより好ましく、1〜30mmが更に好ましい。アルミニウム撚り線の外径は、撚り線の軸線に垂直な断面において、外側に配置された複数のアルミニウム素線の外周面に外接する仮想外接円の直径とする。アルミニウム撚り線の外径、導体断面積は許容電流によって決定されるが、1本当たりのアルミニウム素線径は細い方が柔軟性に優れるものの、心線(素線)切れが生じやすくなる。その観点から素線径は0.3〜1mm程度が特に好ましい。
<絶縁被覆層>
アルミニウム導体の外周に設けられる絶縁被覆層は、絶縁層として機能するものであり、単層構造又は複層構造を有している。
絶縁被覆層が単層である場合、この絶縁被覆層はアルミニウム導体の外周に直接接設けられた最内絶縁被覆層となる。
一方、絶縁被覆層が複層構造である場合(複層絶縁被覆層という。)、複層絶縁被覆層を構成する構成層の数は、用途等に応じて適宜に決定することができ、例えば、2〜5層が好ましく、2層又は3層がより好ましい。特に、配線材がケーブルである場合、絶縁被覆層は複層絶縁被覆層であることが好ましく、複層絶縁被覆層において最も外側に位置する構成層(最外絶縁被覆層)がシースとして機能する。複層絶縁被覆層においては、各構成層間には、接着層等の他の層を介することなく、直接積層されることが好ましい。
本発明において、便宜上、単層の絶縁被覆層(最内絶縁被覆層)を有する配線材を絶縁電線と称し、複層絶縁被覆層、特に最外絶縁被覆層(シース)を有する配線材をケーブルと称することがあるが、上述のように、絶縁電線であっても複層絶縁被覆層を有する形態を包含する。
本発明において、絶縁被覆層を形成する材料が同じ材料(成分及び含有量)で形成された層を積層した場合は、これらの層を合わせて1層としてカウントする。一方、絶縁被覆層を形成する材料が同じ材料で形成された層であっても隣接して積層していない場合、すなわち他の層を介して積層した場合は、それぞれの層を1層としてカウントする。また、絶縁被覆層を形成する材料が異なる材料で形成された層を積層した場合は、隣接しているか否かに関わらず、それぞれの層を1層としてカウントする。
− 最内絶縁被覆層 −
最内絶縁被覆層(以下、単に最内被覆層ということがある。)は、後述するベース樹脂の層で形成され、好ましくはベース樹脂の硬化物からなる層で形成され、より好ましくは後述するシラン架橋性組成物についてシラノール縮合反応してなる、シラノール縮合硬化物の層(硬化物層ということがある。)で形成される。この硬化物層は、エチレンゴム及びスチレン系エラストマーの少なくとも一方と、シラングラフト樹脂と、シラノール縮合触媒とを含有するシラン架橋性組成物について、シラングラフト樹脂に結合したシランカップリング剤の加水分解性基を加水分解し、次いでシラノール縮合反応させることにより、架橋させたものである。
− 最外絶縁被覆層 −
最外絶縁被覆層(単に最外被覆層、又は表面層ともいう。)は、配線材に用いられる公知の樹脂で形成され、例えば、後述する熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂が挙げられる。
− 中間絶縁被覆層 −
絶縁被覆層が3層以上の複層絶縁被覆層である場合、最内被覆層と最外被覆層との間に設けられる中間絶縁被覆層は、配線材に用いられる公知の樹脂で形成され、例えば、後述する熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂が挙げられる。
− 絶縁被覆層の厚さ −
絶縁被覆層の厚さは、配線材の直径、用途等に応じて適宜に決定することができる。例えば、被覆層の総厚(複層被覆層の場合、各構成層の合計厚さ)としては、耐熱性、絶縁耐圧、強度と柔軟性の点で、0.2〜10mmが好ましく、0.6〜5mmがより好ましい。
各構成層の厚さも、被覆層の総厚、配線材の直径、用途等に応じて適宜に決定することができる。例えば、最内被覆層の厚さは、絶縁電線として用いる場合、例えば、0.2〜5mmが好ましく、0.5〜4mmがより好ましく、ケーブルとして用いる場合、例えば、0.4〜5mmが好ましく、0.5〜3mmがより好ましい。本発明において、最内被覆層の厚さは、アルミニウム導体の外径と最内被覆層の外径との差(最薄厚さ)とする。最外被覆層の厚さは、例えば、0.2〜5mmが好ましく、0.5〜4mmがより好ましい。中間絶縁被覆層の(合計)厚さは、例えば、0〜5mmが好ましい。
[配線材の製造方法]
まず、配線材の製造方法に用いる各成分について説明する。
<アルミニウム導体>
本発明に用いるアルミニウム導体は、市販品のアルミニウム導体を用いてもよい。アルミニウム撚り線は、市販のアルミニウム素線を公知の方法で撚り合わせて作製してもよい。
<ベース樹脂>
本発明に用いるベース樹脂は、エチレンゴム及びスチレン系エラストマーの少なくとも一方を含有する。ベース樹脂がエチレンゴム及びスチレン系エラストマーの少なくとも一方を含有することにより、上記アルミニウム導体の強度とのバランスを良化できる。
ベース樹脂は、エチレンゴム及びスチレン系エラストマーに加えてエチレン系成分含有樹脂を含有することが好ましい。ベース樹脂は、エチレンゴム、スチレン系エラストマー及びエチレン系成分含有樹脂以外の他の樹脂を含有してもよく、更に、必要に応じて、他の樹脂、有機鉱物油、可塑剤等を含有してもよい。
(エチレンゴム)
エチレンゴムとしては、エチレンとα−オレフィンとの共重合体のゴムであれば特に限定されない。例えば、エチレンゴムとしては、好ましくは、エチレンとα−オレフィン(好ましくは炭素数1〜12)との二元共重合体ゴム、エチレンとα−オレフィン(好ましくは炭素数1〜12)とα−オレフィン以外の、不飽和結合を有する第三成分との3元共重合体からなるゴムが挙げられる。第三成分としては、共役若しくは非共役のジエンが挙げられ、具体的には、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、ジシクロペンタジエン(DCPD)、エチリデンノルボルネン(ENB)、1,4−ヘキサジエン等が挙げられる。二元共重合体ゴムとしては、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、三元共重合体ゴムとしては、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)が挙げられる。
エチレンゴムは、1種を単独で用いても2種以上を用いてもよい。
(スチレン系エラストマー)
スチレン系エラストマーとしては、分子内に芳香族ビニル化合物を構成成分とするものをいう。このようなスチレン系エラストマーとしては、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とのブロック共重合体及びランダム共重合体、又は、それらの水素添加物等が挙げられる。このようなスチレン系エラストマーとしては、例えば、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、水素化SIS、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、水素化SBS、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEEPS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、水素化スチレン−ブタジエンゴム(HSBR)等が挙げられる。
スチレン系エラストマーは、1種を単独で用いても2種以上を用いてもよい。
(エチレン系成分含有樹脂)
ベース樹脂が好ましく含有するエチレン系成分含有樹脂は、後述する有機過酸化物から発生したラジカルの存在下において、シランカップリング剤のグラフト化反応部位とグラフト化反応可能な部位を主鎖中又はその末端に有しており、シラン架橋法により、縮合(架橋)することができる。このグラフト化反応可能な部位としては、例えば、炭素鎖の不飽和結合部位、水素原子を有する炭素原子等が挙げられる。
エチレン系成分含有樹脂としては、エチレン−α−オレフィン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン及び酸共重合成分を有するポリオレフィン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂であり、エチレン−α−オレフィン共重合体、ポリエチレン及びポリプロピレンからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂であることが好ましい。
エチレン系成分含有樹脂及び後述する各樹脂は、それぞれ1種を単独で用いても2種以上を用いてもよい。
− ポリエチレン樹脂 −
ポリエチレン樹脂は、エチレン構成成分を含む重合体の樹脂であればよく、エチレンの単独重合体、エチレンとα−オレフィン(好ましくは5mol%以下)との共重合体(ポリプロピレンに該当するものを除く。)、並びに、エチレンと官能基に炭素、酸素及び水素原子だけを持つ非オレフィン(好ましくは1mol%以下)との共重合体からなる樹脂が包含される。なお、上述のα−オレフィレン及び非オレフィンはポリエチレンの共重合成分として従来用いられる公知のものを特に制限されることなく用いることができる。
ポリエチレン樹脂としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMW−PE)、直鎖型低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)が挙げられる。中でも、低密度ポリエチレン、直鎖型低密度ポリエチレン又は超低密度ポリエチレンが好ましく、低密度ポリエチレン又は直鎖型低密度ポリエチレンがより好ましい。
− ポリプロピレン樹脂 −
ポリプロピレン樹脂は、主成分としてプロピレン構成成分を含む重合体の樹脂であればよく、プロピレンの単独重合体(ホモポリプロピレン樹脂)、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体等の樹脂を使用することができる。
− エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂 −
エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂としては、好ましくは、エチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合体(上述のポリエチレン及びポリプロピレンに該当するものを除く。)の樹脂が挙げられる。
− 酸共重合成分を有するポリオレフィン共重合体樹脂 −
酸共重合成分を有するポリオレフィン共重合体樹脂における酸共重合成分(酸エステル共重合成分を含む。)としては、特に制限されないが、(メタ)アクリル酸等のカルボン酸化合物、酢酸ビニル、又は、(メタ)アクリル酸アルキル(好ましくは炭素数1〜12)等の酸エステル化合物が挙げられる。酸共重合成分を有するポリオレフィン共重合体樹脂としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキル共重合体等の各樹脂が挙げられる。中でも、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体の各樹脂が好ましく、無機フィラーへの受容性及び耐熱性の点から、エチレン−酢酸ビニル共重合体の樹脂がより好ましい。
上記のポリオレフィン樹脂、特にポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂及び酸共重合成分を有するポリオレフィン共重合体樹脂は、それぞれ、酸変性されていてもよい。これら樹脂の酸変性に用いられる酸としては、樹脂の酸変性に通常用いられる酸であれば特に制限されず、例えば不飽和カルボン酸が挙げられる。
(他の樹脂)
ベースゴムが含有してもよい他の樹脂としては、配線材の絶縁被覆層に用いられる樹脂が挙げられる。例えば、アクリルゴム、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマーなどが挙げられる。
(有機鉱物油)
有機鉱物油は、芳香族系オイル、パラフィン系オイル若しくはナフテン系オイル、又は、これら三者を含む混合油が挙げられる。有機鉱物油としては、樹脂組成物に通常用いられるものを特に制限されることなく用いることができ、パラフィン系オイル又はナフテン系オイルが好ましい。有機鉱物油は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
(ベース樹脂の含有率)
ベース樹脂中の、エチレンゴム及びスチレン系エラストマーの合計含有率は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が更に好ましい。合計含有率の下限値は、100質量%未満であり、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましい。
ベース樹脂中の、エチレンゴム又はスチレン系エラストマーの含有率は、それぞれ、上記合計含有率を満たす範囲内で適宜に設定される。例えば、エチレンゴム及びスチレン系エラストマーの含有率は、それぞれ、5〜40質量%が好ましく、10〜30質量%がより好ましい。スチレン系エラストマーの含有率は、皮剥性(ヒゲ発生の抑制)の観点からは、20質量%以上が好ましい。
ベース樹脂中の、エチレン系成分含有樹脂の合計含有率は、特に制限されないが、30〜95質量%が好ましく、50〜90質量%がより好ましく、55〜85質量%が更に好ましい。このエチレン系成分含有樹脂は、ベース樹脂の主成分(ベース樹脂中の最大含有率成分)として含有することが好ましい。
本発明において、エチレン系成分含有樹脂に包含される上記各樹脂の、ベース樹脂中の含有率は、それぞれ、エチレン系成分含有樹脂の上記含有率を満足する範囲で適宜に設定され、例えば、下記含有率に設定される。例えば、ポリエチレン樹脂の含有率は、0〜95質量%が好ましく、0〜70質量%がより好ましい。ポリプロピレン樹脂の含有率は、0〜40質量%が好ましく、2〜30質量%がより好ましい。エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂の含有率は、0〜95質量%が好ましく、0〜70質量%がより好ましい。酸共重合成分を有するポリオレフィン共重合体樹脂の含有率は、0〜30質量%が好ましく、0〜10質量%がより好ましい。
ベース樹脂中の、他の樹脂の含有率は、本発明の効果を損なわない範囲で、適宜に設定できる。
ベース樹脂中の、有機鉱物油の含有率(ベース樹脂が可塑剤を含有する場合、可塑剤との合計含有率)は、特に制限されないが、0〜40質量%であることが好ましい。
<無機フィラー>
ベース樹脂の層は、無機フィラーを含有することができる。
無機フィラーは、従来の樹脂組成物に通常用いられるものであれば特に制限されない。
本発明の配線材のベース樹脂の層がシラノール縮合硬化物である場合、無機フィラーは、その表面に、後述するシランカップリング剤の加水分解性シリル基と水素結合若しくは共有結合等又は分子間結合により、化学結合しうる部位を有するものが好ましい。加水分解性シリル基と化学結合しうる部位としては、OH基(水酸基、含水若しくは結晶水の水分子、カルボキシ基等のOH基)、アミノ基、SH基等が挙げられる。
無機フィラーとしては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ほう酸アルミニウムウイスカ、水和ケイ酸アルミニウム、水和ケイ酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト、タルク等の水酸基又は結晶水を有する化合物のような金属水和物が挙げられる。また、窒化ほう素、シリカ(結晶質シリカ、非晶質シリカ等)、カーボン、クレー、酸化亜鉛、酸化錫、酸化チタン、酸化モリブデン、三酸化アンチモン、シリコーン化合物、石英、ほう酸亜鉛、ホワイトカーボン、硼酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛、スズ酸亜鉛等も挙げられる。
無機フィラーは、金属水和物、シリカ、炭酸カルシウム及びクレーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、この群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
無機フィラーは、各種表面処理剤で表面処理されたものを用いることもできる。例えば、シランカップリング剤で表面処理された水酸化マグネシウムとして、キスマ5L、キスマ5P(いずれも商品名、協和化学工業社製)等が挙げられる。
無機フィラーは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
無機フィラーを粉体として用いる場合、その平均粒径は、0.2〜10μmであることが好ましく、0.3〜8μmであることがより好ましく、0.4〜5μmであることが更に好ましく、0.4〜3μmであることが特に好ましい。無機フィラーの平均粒径が上記範囲にあると、2次凝集を防止してブツのない外観を有する成形体を得ることができ、また、シランカップリング剤との結合を保持して十分な架橋を形成できる。無機フィラーの平均粒径は、無機フィラーをアルコール又は水中に分散させて、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置等の光学式粒径測定器によって求められる。
本発明の配線材のベース樹脂の層がベース樹脂の架橋物である場合、無機フィラー、添加剤等を含有していてもよく、この架橋物の形成に際して、無機フィラー、有機過酸化物等の架橋剤や架橋助剤を用いることができる。また、本発明の配線材のベース樹脂の層がシラノール縮合硬化物である場合、無機フィラー、添加剤等を含有していてもよく、このシラノール縮合硬化物の形成に際して、有機過酸化物、シランカップリング剤、シラノール縮合触媒、キャリア樹脂、更には無機フィラー、添加剤等を用いることが好ましい。
<有機過酸化物>
有機過酸化物は、少なくとも熱分解によりラジカルを発生して、触媒として、シランカップリング剤のエチレン系成分含有樹脂へのラジカル反応によるグラフト化反応(シランカップリング剤のグラフト化反応部位とベース樹脂のグラフト化反応可能な部位との共有結合形成反応であって、(ラジカル)付加反応ともいう。)を生起させる働きをする。
有機過酸化物としては、上記機能を有し、ラジカル重合又は従来のシラン架橋法に用いられるものを特に制限されずに用いることができる。例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド(DCP)、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン又は2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3が好ましい。
有機過酸化物の分解温度は、80〜195℃が好ましく、125〜180℃が特に好ましい。本発明において、有機過酸化物の分解温度とは、単一組成の有機過酸化物を加熱したとき、ある一定の温度又は温度域でそれ自身が2種類以上の化合物に分解反応を起こす温度を意味する。具体的には、DSC法等の熱分析により、窒素ガス雰囲気下で5℃/分の昇温速度で、室温から加熱したとき、吸熱又は発熱を開始する温度をいう。
有機過酸化物は、1種類を用いても、2種類以上を用いてもよい。
<シランカップリング剤>
シランカップリング剤としては、有機過酸化物の分解により生じたラジカルの存在下で、エチレン系成分含有樹脂のグラフト化反応可能な部位にグラフト化反応しうる部位(基又は原子)と、シラノール縮合可能な加水分解性シリル基とを有するものであれば、特に限定されない。このようなシランカップリング剤としては、従来のシラン架橋法に使用されているシランカップリング剤が挙げられる。
このようなシランカップリング剤としては、グラフト化反応しうる部位としてエチレン性不飽和基を有するシランカップリング剤が挙げられ、具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルジメトキシエトキシシラン、ビニルジメトキシブトキシシラン、ビニルジエトキシブトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン等のビニルシラン、(メタ)アクリロキシシラン等が挙げられる。中でも、ビニルトリメトキシシラン又はビニルトリエトキシシランが特に好ましい。
シランカップリング剤は、1種類を用いても、2種類以上を用いてもよい。
シランカップリング剤は、そのままの形態で用いてもよいし、溶剤で希釈した形態で用いてもよい。
<シラノール縮合触媒>
シラノール縮合触媒は、エチレン系成分含有樹脂にグラフト化反応したシランカップリング剤を水の存在下でシラノール縮合反応(促進)させる。このシラノール縮合触媒の働きに基づき、シランカップリング剤を介してエチレン系成分含有樹脂が架橋される。その結果、耐熱性に優れたシラン架橋樹脂成形体を得ることができる。
このようなシラノール縮合触媒としては、特に制限されず、例えば、有機スズ化合物、金属石けん、白金化合物等が挙げられる。有機スズ化合物としては、例えば、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクチエート、ジブチルスズジアセテート等が挙げられる。
シラノール縮合触媒は、1種類を用いても、2種類以上を用いてもよい。
<キャリア樹脂>
シラノール縮合硬化物の形成に際して、シラノール縮合触媒は、そのまま用いてもよいが、樹脂との混合物(縮合触媒マスターバッチ)として用いることができる。シラノール縮合触媒と溶融混練される(担持する)樹脂(キャリア樹脂という。)としては、特に制限されず、上記ベース樹脂で説明した各樹脂を用いることができるが、マスターバッチ数の削減(生産性向上)の点ではエチレンゴム及びスチレン系エラストマーの少なくとも一方が好ましく、無機フィラーと併用する場合はポリエチレン樹脂が好ましい。
キャリア樹脂として、ベース樹脂の一部を用いる(例えば、後述する工程(a)と工程(b−2)若しくは工程(b−3)にベース樹脂を分けて用いる)ことができる。この場合、キャリア樹脂は、ベース樹脂100質量部中、好ましくは1〜60質量部、より好ましくは2〜50質量部、更に好ましくは2〜40質量部を用いることができる。
キャリア樹脂は、1種類を用いても、2種類以上を用いてもよい。
<添加剤>
本発明においては、各種の添加剤を用いることができる。添加剤としては、配線材等において、一般的に使用される各種の添加剤が挙げられる。このような添加剤としては、例えば、酸化防止剤、架橋助剤、滑剤、金属不活性剤、難燃(助)剤が挙げられる。
酸化防止剤としては、特に制限されないが、例えば、ベンゾイミダゾール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、ヒドラジン系酸化防止剤等が挙げられる。
<シラン架橋性組成物>
本発明の配線材の最内被覆層が、シラノール縮合硬化物の層で形成される場合、シラン架橋性組成物を用いる。
このシラン架橋性組成物は、エチレンゴム及びスチレン系エラストマーの少なくとも一方と、シランカップリング剤がグラフト化結合したエチレン系成分含有樹脂の少なくとも1種のシラングラフト樹脂と、シラノール縮合触媒とを含有し、好ましくは無機フィラー等を含有することができる。このシラン架橋性組成物は、エチレンゴム及びスチレン系エラストマーの少なくとも一方とエチレン系成分含有樹脂とを含有するベース樹脂と、エチレン系成分含有樹脂にグラフト化結合したシランカップリング剤と、シラノール縮合触媒と、好ましくは無機フィラー等を含有するということもできる。
この組成物は、上述のベース樹脂で説明した、エチレンゴム及びスチレン系エラストマー以外の各成分を含有していてもよい。
シラングラフト樹脂は、有機過酸化物から発生したラジカルの存在下において、シランカップリング剤のグラフト化反応部位とエチレン系成分含有樹脂のグラフト化反応可能な部位とをグラフト化反応させることにより、エチレン系成分含有樹脂にシランカップリング剤が共有結合等でグラフト鎖状に結合した樹脂である。
シラングラフト樹脂は、市販品を用いてもよく、合成品を用いてもよい。シラングラフト樹脂は、エチレン系成分含有樹脂とシランカップリング剤とを有機過酸化物の存在下でグラフト化反応させて合成することができる。グラフト化反応は、通常の方法及び条件を採用することができる。
シラン架橋性組成物における各成分の含有量は、特に制限されず、用途等に応じて適宜に設定される。各成分の含有量は、ベース樹脂100質量部に対して、設定される。ベース樹脂100質量部とは、エチレンゴム、スチレン系エラストマー、(シランカップリング剤がグラフト化結合する前の)エチレン系成分含有樹脂、他の樹脂及び有機鉱物油の合計量を意味する。
シラン架橋性組成物において、ベース樹脂を構成する各成分の、ベース樹脂中の含有率は上述した通りである。
シラン架橋性組成物中の、シランカップリング剤の含有量は、ベース樹脂100質量部に対して、1〜15質量部が好ましく、3〜12質量部が好ましく、4〜12質量部がより好ましい。シランカップリング剤がエチレン系成分含有樹脂にグラフト化反応している場合、シランカップリング剤の含有量は、グラフト化反応前のシランカップリング剤の含有量に換算した含有量とする。
シラン架橋性組成物中の、シラノール縮合触媒の含有量は、ベース樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01〜0.6質量部、より好ましくは0.001〜0.4質量部である。
シラン架橋性組成物は、好ましくは無機フィラーを含有する。この場合、無機フィラーの含有量は、ベース樹脂100質量部に対して、10〜400質量部が好ましく、30〜280質量部がより好ましい。無機フィラーの配合量は、皮剥性(切断カスの残存抑制)の観点からは、100質量部未満が好ましい。
シラン架橋性組成物の調製に際して、マスターバッチ(以下、MBということがある。)を数種用いる場合、各MBの調製に用いる成分の配合量は、シラン架橋性組成物全体として上記含有量を満たす配合量であれば、特に制限されず、適宜に決定される。例えば、エチレン系成分含有樹脂を後述するシランMB及び縮合触媒MBの両方に配合する場合、両MBに用いるエチレン系成分含有樹脂の配合量は、合計で、シラン架橋性組成物に用いるベース樹脂中の上記含有率を満たすように、各MBの配合量を適宜に設定できる。
<配線材の製造方法>
本発明の配線材は、ベース樹脂又はベース樹脂を含有する樹脂組成物を混練り(溶融混合)した後に、アルミニウム導体の外周に配置して、製造することができる。ベース樹脂又は樹脂組成物をアルミニウム導体の外周に配置する方法は、通常の方法を特に制限されることなく適用することができる。例えば、ベース樹脂又は樹脂組成物をアルミニウム導体の外周に成形する方法、ベース樹脂又は樹脂組成物のワニスをアルミニウム導体の外周に塗布や焼付する方法等が挙げられる。本発明においては成形する方法が好ましく、以下に、ベース樹脂又は樹脂組成物を押出成形して配線材を製造する方法を説明する。
ベース樹脂又は樹脂組成物の溶融混練方法としては、ゴム、プラスチック等で通常用いられる方法であれば、特に制限されない。混練装置は、例えば無機フィラーを用いる場合は無機フィラーの使用量に応じて適宜に選択される。具体的には、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー又は各種のニーダー等が挙げられる。中でも、バンバリーミキサー、各種のニーダー等の密閉型ミキサーが樹脂の分散性の点で好ましい。混練り条件は、通常、ベース樹脂又は樹脂組成物が溶融する温度以上の温度に設定されればよく、用いる樹脂に応じて適宜に設定され、例えば、好ましくは80〜250℃に設定できる。また、溶融混練前に、必要により、ベース樹脂の非溶融下で混合、例えばドライブレンドすることができる。混合温度としては、好ましくは10〜60℃、より好ましくは室温(25℃)で、数分〜数時間程度の条件に設定できる。
ベース樹脂の混合方法は、特に限定されない。例えば、各成分、例えばエチレンゴム、スチレン系エラストマー、エチレン系成分含有樹脂等の樹脂成分、有機鉱物油等をそれぞれ別々に混合してもよい。また、樹脂組成物の混合方法も、特に制限されず、ベース樹脂を予め調製してから他の成分と混合してもよく、ベース樹脂を構成する各成分をそれぞれ別々に混合してもよい。また、ベース樹脂又は樹脂組成物を構成する成分の一部を用いてマスターバッチを作製し、押出前にドライブレンドし、押出機内で混合してもよい。
次に、得られたベース樹脂又は樹脂組成物をアルミニウム導体の外周に成形(被覆成形)する。
成形する方法は、ベース樹脂又は樹脂組成物を最内被覆層の形状に成形できる方法であれば特に制限されず、押出機を用いた押出成形法、射出成形機を用いた押出成形法、その他の成形機を用いた成形法が挙げられ、アルミニウム導体と同時に押し出す押出成形法が好ましい。成形温度は、ベース樹脂又は樹脂組成物の種類、押出速度(引取り速度)の諸条件に応じて、ベース樹脂又は樹脂組成物が溶融する上記温度に設定される。
上記混練り工程及び成形工程は、押出機等を用いて、同時に又は連続して行うことができる。例えば、各成分を押出機(被覆装置)に導入して溶融混練(ベース樹脂又は樹脂組成物の調製)し、次いでアルミニウム導体の外周に被覆成形する一連の工程を採用できる。
上述のようにして、最内被覆層の形状に成形されたベース樹脂の層をアルミニウム導体の外周面に被覆成形できる。
本発明においては、こうして形成された最内被覆層表面に電子線を照射して架橋することができる。また、最内被覆層を化学架橋する場合は、後述するように、架橋剤、架橋触媒などを含有させたベース樹脂又は樹脂組成物を押出被覆中、又は後に通常の方法及び条件により架橋処理する。
こうして、単層の被覆層(最内被覆層)を備えた本発明の配線材を製造できる。
本発明の配線材が複層被覆層を有する場合、最内被覆層の外周面に順次必要数の構成層(中間絶縁被覆層及び最外被覆層)を形成して配線材を製造できる。
構成層を形成する材料は、配線材に通常用いられるものであれば特に制限されず、有機樹脂が好ましい。有機樹脂としては、各種の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂が挙げられ、例えば、上述したベース樹脂以外には、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK、変性PEEKを含む。)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリイミド(PI)、ポリエステル(PEst)、ポリウレタン、ポリエステルエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリアミドエラストマー、フッ素樹脂、フッ素ゴム、アクリルゴム等が挙げられる。有機樹脂は1種を単独で用いても2種以上を用いてもよい。有機樹脂は、通常用いられる各種添加剤を含有していてもよい。
構成層の中でも最外被覆層は、ポリ塩化ビニルで形成されることが好ましい。最外被覆層を形成するポリ塩化ビニルは、軟質ポリ塩化ビニルがより好ましく、例えば、ポリ塩化ビニル100質量部に対して、通常用いられる可塑剤35〜70質量部と、無機フィラー20〜70質量部とを含有するPVC組成物が挙げられる。
構成層を形成する方法は、ベース樹脂又は樹脂組成物をアルミニウム導体の外周に配置する方法と同様である。
(シラン架橋性組成物のシラノール縮合硬化物からなる最内被覆層を有する配線材を製造する方法)
最内被覆層がシラン架橋性組成物のシラノール縮合硬化物からなる層である場合、好ましい製造方法としては、まず、上記ベース樹脂又は樹脂組成物に代えて上述のシラン架橋性組成物をアルミニウム導体の外周に配置する。その後に、シラン架橋性組成物を水と接触させて架橋する。上記被覆成形方法は、ベース樹脂又は樹脂組成物を用いる場合と同様である。
シラン架橋性組成物は、エチレンゴム及びスチレン系エラストマーの少なくとも一方と、シラングラフト樹脂を含有する架橋性組成物であって、エチレンゴム、スチレン系エラストマー、シラングラフト樹脂、シラノール縮合触媒、好ましくは無機フィラー等を溶融混合して調製することができる。エチレンゴム及びスチレン系エラストマーは、通常、エチレン系成分含有樹脂に対してシラングラフト化反応が選択的(優先的)に進行しやすい。そのため、シラングラフト樹脂の調製後にエチレンゴム及びスチレン系エラストマーを混合することが、エチレンゴム及びスチレン系エラストマーの架橋を避ける手段として、好ましい。
この場合、マスターバッチとしてエチレンゴム及びスチレン系エラストマーの少なくとも一方(製造方法においてエチレンゴム等という。)を含有するゴムマスターバッチと、シラングラフト樹脂を含有するシランMBと、シラノール縮合触媒を含有する縮合触媒MBとを混練り(溶融混合)する方法が好ましい。この方法においては、ゴムMB及び縮合触媒MBとして、エチレンゴム等とシラノール縮合触媒とを含有する複合MBを用いることが、生産性の点で、好ましい。
無機フィラーは、ゴムMB、シランMB、縮合触媒MB及び複合MBのいずれか1つ又は複数に含有していてもよく、得られる硬化物層及び配線材の耐熱性の点で、シランMBに含有していることが好ましい。
シラン架橋性組成物の調製に際して、各成分の溶融混合方法及び条件は、上述のベース樹脂又は樹脂組成物の混練方法を適宜採用できる。
シラン架橋性組成物は、市販の若しくは別途合成したシラングラフト樹脂を用いて調製してもよく、シラン架橋性樹脂の合成を経て調製してもよい。
− シラン架橋性樹脂の合成を経てシラン架橋性組成物を調製する方法 −
シラン架橋性樹脂の合成を経てシラン架橋性組成物を調製する方法としては、例えば、シランMBの調製工程(シラン架橋性樹脂の合成工程)、ゴムMBの調製、必要により縮合触媒MBの調製工程、シランMBとゴムMBとシラノール縮合触媒又は縮合触媒MBの溶融混練工程を有する方法が挙げられる。
(a)シランMBの調製工程
シランMBの調製工程は、例えば、少なくともエチレン系成分含有樹脂を含有するベース樹脂と、有機過酸化物と、必要により無機フィラーと、シランカップリング剤とを、有機過酸化物の分解温度以上の温度で溶融混練して、有機過酸化物から発生したラジカルによってベース樹脂とシランカップリング剤とをグラフト化反応させることにより、シラン架橋性樹脂を含む反応組成物(溶融混練物)としてシランMBを調製する工程が挙げられる。
この工程は、上述のように、エチレンゴム等の非存在下で溶融混練することが好ましい。本発明において、エチレンゴム等の非存在下で溶融混練するとは、エチレンゴム等を実質的に配合せずに溶融混練することを意味し、上述の、エチレンゴム等へのシランカップリング剤のグラフト化反応を、本発明の効果を損なわない範囲に抑えることができれば、存在していてもよい。
上記シランMBを調製する工程で無機フィラーを用いることが、得られる硬化物層、ひいては本発明の配線材が高い耐熱性を示す点で、好ましい。
この方法において、各成分の配合量は、シラン架橋性組成物全体としての上記含有量を満たす配合量に設定される。例えば、無機フィラー、シランカップリング剤及びシラノール縮合触媒の配合量は上述の通りである。有機過酸化物の配合量は、シラン架橋性組成物の調製に用いるベース樹脂100質量部に対して、0.01〜0.6質量部が好ましく、0.05〜0.3質量部がより好ましく、0.07〜0.25質量部が更に好ましい。
シランMBを調製する工程において、各成分の混合順は、特に制限されず、どのような順で混合してもよい。各成分を一度に溶融混錬することもできるが、無機フィラーを用いる場合、上記各成分を、下記工程(a−1)及び(a−2)により、溶融混錬することが好ましい。
工程(a−1):少なくとも無機フィラー及びシランカップリング剤を混合して混合物を調製する工程
工程(a−2):工程(a−1)で得られた混合物と、(シランMBの調製工程に用いる)ベース樹脂とを、有機過酸化物の存在下で有機過酸化物の分解温度以上の温度において溶融混錬する工程
工程(a−1)において、無機フィラーとシランカップリング剤を混合する方法としては、特に限定されず、無機フィラーにシランカップリング剤を加熱又は非加熱で混合する乾式混合が好ましい。この工程により、表面(化学結合しうる部位)に(シラノール縮合可能な加水分解性シリル基を介して)強い結合でシランカップリング剤が結合又は吸着した無機フィラーと、表面に弱い結合でシランカップリング剤が結合又は吸着した無機フィラーとを調製できる。弱い結合としては、水素結合による相互作用、イオン、部分電荷若しくは双極子間での相互作用、吸着による作用等が挙げられ、強い結合としては、無機フィラー表面の化学結合しうる部位との化学結合等が挙げられる。これにより、工程(a−2)等においてシランカップリング剤の揮発を低減でき、また高い耐熱性の硬化物及び配線材を調製又は製造できる。工程(a−1)の混合条件は、特に制限されず、例えば上述のドライブレンド条件が挙げられる。
次いで、工程(a−1)で得られた混合物と、ベース樹脂と、工程(a−1)で混合されていない残余の成分とを、有機過酸化物の存在下で有機過酸化物の分解温度以上の温度において、溶融混錬する。これにより、有機過酸化物から発生したラジカルによって、シランカップリング剤のグラフト化反応部位とベース樹脂のグラフト化反応可能な部位とをグラフト化(結合)反応させる。
工程(a)及び工程(a−2)において、上記成分を溶融混錬する温度は、有機過酸化物の分解温度以上、好ましくは有機過酸化物の分解温度+(25〜110)℃であり、例えば150〜230℃の温度である。その他の溶融混錬条件、例えば混合時間は適宜設定することができる。混練方法としては、上述のベース樹脂又は樹脂組成物の混練方法及び条件と同様である。
有機過酸化物は、工程(a−2)を行う際に存在していればよく、工程(a−1)で混合してもよく、工程(a−2)で混合してもよい。有機過酸化物を工程(a−1)で混合する場合、混合温度は、有機過酸化物の分解温度未満の温度を保持する。
工程(a−2)において、シランカップリング剤は、そのグラフト化反応部位で、エチレン系成分含有樹脂のグラフト化反応可能な部位にグラフト化反応する。このとき、無機フィラーと弱い結合で結合又は吸着したシランカップリング剤は無機フィラーから脱離してグラフト化反応する。一方、無機フィラーと強い結合で結合又は吸着したシランカップリング剤は無機フィラーとの結合を保持した状態でグラフト化反応する。
このようにして、ベース樹脂とシランカップリング剤とをグラフト化反応させることにより、シラングラフト樹脂が合成され、反応組成物としてこのシラングラフト樹脂を含むシランMB)が調製される。
(b−1)ゴムMBの調製
シラン架橋性樹脂の合成を経てシラン架橋性組成物を調製する方法においては、ゴムMBを調製する。このゴムMBは、エチレンゴム等を少なくとも含有するものであれば、他の成分を含有していてもよい。ゴムMBの調製は、エチレンゴム等の溶融下で混練する方法であれば特に制限されず、例えば、ベース樹脂又は樹脂組成物の混練方法における溶融混合方法及び条件を適宜採用できる。
(b−2)縮合触媒MBの調製工程
シラン架橋性樹脂の合成を経てシラン架橋性組成物を調製する方法においては、必要により、シラノール縮合触媒とキャリア樹脂とを溶融混合して縮合触媒MBを調製する。キャリア樹脂とシラノール縮合触媒との溶融混練は、キャリア樹脂の溶融下で行う方法であれば特に制限されず、ベース樹脂又は樹脂組成物の混練方法における溶融混合方法及び条件を適宜採用できる。
(b−3)複合MBの調製工程
シラン架橋性樹脂の合成を経てシラン架橋性組成物を調製する方法においては、ゴムMB及び縮合触媒MBに代えて、生産性の点で、縮合触媒MBのキャリア樹脂としてエチレンゴム等を用いた複合MBを調製して用いることがより好ましい。複合MBの調製は、エチレンゴムやキャリア樹脂等の溶融下で混練する方法であれば特に制限されず、例えば、ベース樹脂又は樹脂組成物の混練方法における溶融混合方法及び条件を適宜採用できる。
(b−4)溶融混練工程
シラン架橋性樹脂の合成を経てシラン架橋性組成物を調製する方法においては、次いで、シランMBと、ゴムMBと、シラノール縮合触媒又は縮合触媒MBとを溶融混練する。溶融混練はベース樹脂又は樹脂組成物の混練方法における溶融混合方法及び条件を適宜採用できる。
配線材の製造方法において、上記成分の他に用いることができる他の樹脂や上記添加物は、いずれの工程で混練又は混合されてもよく、また各工程における混合順も特に制限されない。添加剤の配合量は、特に制限されず、目的とする効果を損なわない範囲で適宜に設定できる。酸化防止剤の配合量は、適宜に設定できるが、樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは0.1〜15.0質量部、より好ましくは0.1〜10質量部である。
こうして、シラン架橋性樹脂の合成を経てシラン架橋性組成物を調製することができる。
(c)シラン架橋性組成物の配置工程
シラン架橋性組成物のシラノール縮合硬化物からなる最内被覆層を有する配線材を製造する方法においては、シラン架橋性組成物をアルミニウム導体の外周に配置する。シラン架橋性組成物の配置方法はベース樹脂又は樹脂組成物を用いる場合と同様である。
(d)シラン架橋性組成物の架橋工程
次いで、アルミニウム導体の周りに被覆成形したシラン架橋性組成物と水とを接触させて架橋する。これにより、シランカップリング剤の加水分解性シリル基が水により加水分解されてシラノール(ケイ素原子に結合するOH基)となり、シラン架橋性組成物中に存在するシラノール縮合触媒によりシラノールの水酸基同士が(脱水)縮合して、架橋反応が起こる(シラン架橋性組成物のシラノール縮合硬化が形成される)。架橋する方法は、被覆成形したシラン架橋性組成物を常温で放置する方法でもよいし、加湿又は加温下に被覆成形したシラン架橋性組成物を放置する方法でもよいし、被覆成形したシラン架橋性組成物を温水に浸漬する方法でもよい。
このようにして、アルミニウム導体の外周にシラン架橋性組成物のシラノール縮合硬化物からなる最内被覆層を備えた配線材が製造される。
シラン架橋性組成物のシラノール縮合硬化物は、エチレン系成分含有樹脂に対してシランカップリング剤がグラフト化反応したシラングラフト樹脂と、エチレンゴム及びスチレン系エラストマーの少なくとも一方と、好ましい態様では無機フィラーとを含むシラン架橋性組成物について、シラングラフト樹脂に結合したシランカップリング剤の加水分解性基を加水分解し、次いでシラノール縮合により架橋させたものである。このシラングラフト樹脂は、シラノール結合(シロキサン結合)を介して縮合した架橋樹脂を含んでいる。シラン架橋性組成物が無機フィラーを含有する好ましい態様では、無機フィラーはシラングラフト樹脂のシランカップリング剤に結合していてもよい。シラン架橋性組成物及びシラノール縮合硬化物において、エチレンゴム及びスチレン系エラストマーは他の樹脂とは架橋されていない。
よって、この硬化物層は、シラングラフト樹脂の架橋硬化物と、エチレンゴム及びスチレン系エラストマーの少なくとも一方と、好ましい態様では無機フィラーとを含有している。シラングラフト樹脂の架橋硬化物は、ベース樹脂構成成分(エチレン系成分含有樹脂構成成分、エチレンゴム構成成分、スチレン系エラストマー構成成分)、シランカップリング剤構成成分、好ましい態様では無機フィラー構成成分を有している。硬化物層中の各成分の含有量は、反応条件、反応率等に応じて変動するが、好ましくは上記配合量の範囲内である。より詳細には、この硬化物層は、シラングラフト樹脂にグラフトしたシランカップリング剤の反応部位が加水分解して互いにシラノール縮合反応することにより、シラングラフト樹脂同士がシランカップリング剤を介して架橋したシラン架橋樹脂と、エチレンゴム及びスチレン系エラストマーの少なくとも一方と、好ましくは、シラングラフト樹脂がシランカップリング剤により無機フィラーに結合又は吸着して、無機フィラー及びシランカップリング剤を介して結合(架橋)した架橋樹脂とを含む。
シラノール縮合硬化物からなる最内被覆層を備えた本発明の配線材を製造する方法は、具体的には、下記の、調製工程(A)、調製工程(B)、配置工程(C)及び架橋工程(D)を有する。
調製工程(A):エチレン系成分含有樹脂を少なくとも含有するベース樹脂に対して、有機過酸化物と、好ましくは無機フィラーと、シランカップリング剤とを、有機過酸化物の分解温度以上の温度で、好ましくはエチレン系ゴム等及びシラノール縮合触媒の非存在下、溶融混練して、有機過酸化物から発生したラジカルによってベース樹脂にシランカップリング剤をグラフト化反応させることにより、シラングラフト樹脂を含むシランMBを調製する工程
調製工程(B):シランMBと、エチレンゴム等と、シラノール縮合触媒を溶融混練する工程
配置工程(C):調製工程(B)で得られたシラン架橋性組成物をアルミニウム導体の外周面に配置する工程
架橋工程(D):アルミニウム導体の外周面に配置されたシラン架橋性組成物と水とを接触させる工程
上記方法において、調製工程(B)において、エチレンゴム等とシラノール縮合触媒とを溶融混練する態様は、特に制限されない。例えば、シランMBと、エチレンゴム等を少なくとも含有するゴムMBと、シラノール縮合触媒を含有する縮合触媒MBとを溶融混練する工程であってもよく、シランMBと、エチレンゴム等及びシラノール縮合触媒を含有する複合MBとを溶融混練する工程であってもよい。
上記工程(A)〜(D)を有する好ましい製造方法における各工程は、それぞれ、上述の工程(a)と、工程(b−1)〜(b−4)と、工程(c)と、工程(d)と対応し、これらの各工程で説明した方法及び条件を適宜に適用できる。
また、上記好ましい製造方法における各工程、更にはシラン架橋法における反応及び得られる縮合硬化物の形態については、例えば、特開2017−145370号公報の記載を適宜に適用でき、この公報に記載の内容はそのまま本明細書の記載の一部として取り込まれる。
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
表1〜表4において、各例の配合量に関する数値は特に断らない限り質量部を表す。また、各成分について空欄は対応する成分の配合量が0質量部であることを意味する。
実施例及び比較例に用いた各成分(化合物)の詳細を以下に示す。
<ベース樹脂>
− エチレンゴム ―
三井EPT0045H:商品名、EPM、三井化学社製
ノーデル3720P:商品名、EPDM(エチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネンゴム)、ダウ・ケミカル社製
− スチレン系エラストマー ―
セプトン4077:商品名、SEEPS、クラレ社製
タフテック(登録商標)N504:水素化SEBS(スチレン/エチレン・ブチレン比=32/68、旭化成社製)
セプトン4033:商品名、SEEPS、クラレ社製
− エチレン系成分含有樹脂 −
エボリューSP1540:商品名、LLDPE、プライムポリマー社製)
エボリューSP0540:商品名、LLDPE、プライムポリマー社製)
NUC7540:商品名、LLDPE、日本ユニカー製
PB222A:商品名、ポリプロピレン(エチレン−プロピレンランダム共重合体)、サンアロマー社製
NUC6520:商品名、エチレン−アクリル酸エチル共重合体樹脂、日本ユニカー社製
EV360:エバフレックスEV360(商品名)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、三井・デュポンポリケミカル社製
アドテックスL6100M:商品名、マレイン酸変性ポリエチレン、日本ポリエチレン社製
− 有機鉱物油 −
ダイアナプロセスPW−90:商品名、パラフィン系オイル、出光興産社製
<シラングラフト樹脂>
リンクロンXF730T:商品名、シラングラフトLLDPE(シランカップリング剤としてビニルメトキシシランがグラフトしたもの)、三菱化学社製
<無機フィラー>
アエロジル200:商品名、親水性フュームドシリカ、日本アエロジル社製
キスマ5L:商品名、シランカップリング剤表面処理水酸化マグネシウム、協和化学工業社製
ソフトン1200:商品名、炭酸カルシウム、備北粉化工業社製
グローマックスLL:商品名、カリオンクレー(焼成カリオン)、竹原化学工業社製
クリスタライト5X:商品名、結晶質シリカ、龍森社製
<シランカップリング剤>
KBM−1003:商品名、ビニルトリメトキシシラン、信越化学工業社製
<有機過酸化物>
パークミルD:商品名、ジクミルパーオキサイド、分解温度151℃、日油社製
<酸化防止剤>
イルガノックス1010:商品名、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、BASF社製
イルガノックス1076:商品名、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、BASF社製
<シラノール縮合触媒>
アデカスタブOT−1:商品名、ジオクチルスズジラウレート、ADEKA社製
<PVC混和物>
SHV9877P :商品名、PVCコンパウンド:硬度80A リケンテクノス製
<マスターバッチの調製>
− 複合MB(樹脂組成物)Aの調製 −
表1〜表4の「複合MB[A]」欄に示す配合量で、ベース樹脂(実施例5〜12ではキャリア樹脂として用いる。)、無機フィラー、酸化防止剤及びシラノール縮合触媒をバンバリーミキサーに投入して190℃で溶融混錬した後、材料排出温度200℃で排出し、フィーダールーダーを通して、複合MB[A]のペレットを得た。
なお、比較例2については、ベース樹脂酸化防止剤を170℃で溶融混錬した後、材料排出温度180℃で排出して得たペレットと、表4に示す配合量の有機過酸化物とを、ロール温度90℃に設定したロール混合気を用いて、混合して、複合MB[A]のペレットを得た。
− シランMB[C]の調製 −
表1及び表2の「シランMB[C]」欄に示す配合量で、有機過酸化物とシランカップリング剤とを25℃で混合し、次いで、ベース樹脂及び酸化防止剤を加えて、ブレンダーで5分間攪拌(30℃)した。得られた混合物をシリンダー温度195℃、ヘッド温度200℃に設定した65mmφの単軸混練機(スクリュー有効長Lと直径Dとの比:L/D=30)に加えてストランドを得た。このストランドを水冷し、水をとばした後に丸ペレタイザーを通すことにより、シランMB[C]のペレットを得た。
上記単軸混練機中での溶融混練により、シラングラフト化反応を惹起させた。このシランMB[C]は、エチレン系成分含有樹脂にシランカップリング剤がグラフト化反応したシラン架橋性樹脂を含有している。
− シランMB[D]の調製 −
表2の「シランMB[D]」欄に示す配合量で、有機過酸化物とシランカップリング剤とを25℃で混合した混合物を、無機フィラーに加えてヘンシェルミキサーで10分間攪拌(30℃)して無機フィラー混合物を得た。次いで、同欄に示す配合量で、ベース樹脂及び酸化防止剤成分と共に得られた無機フィラー混合物をバンバリーミキサーに加え、190℃で10分間混練して200℃で排出した。排出後、フィーダールーダーを介して、ホットカットでシランMB[D]のペレットを得た。
上記バンバリーミキサーでの溶融混練により、シラングラフト化反応を惹起させた。このシランMB[D]は、エチレン系成分含有樹脂にシランカップリング剤がグラフト化反応したシラン架橋性樹脂を含有している。
<ドライブレンド物の調製>
− ドライブレンド物Bの調製−
表1の「複合MB[A]」欄及び「シランMB[B]」欄に示す配合量で、複合MB[A]のペレットとシランMB[B]のペレットとをドライブレンドして、ドライブレンド物Bを調製した。
− ドライブレンド物Cの調製−
表2及び表3の「複合MB[A]」欄及び「シランMB[C]」欄に示す配合量で、複合MB[A]のペレットとシランMB[C]のペレットとをドライブレンドして、ドライブレンド物Bを調製した。
− ドライブレンド物Dの調製−
表3の「複合MB[A]」欄及び「シランMB[D]」欄に示す配合量で、複合MB[A]のペレットとシランMB[D]のペレットとをドライブレンドして、ドライブレンド物Dを調製した。
<アルミニウム導体電線の製造>
− 実施例1、4、13〜18、比較例1、5及び6 −
上記複合MB[A]を単独で、又はドライブレンド物B(実施例4)を用いて、最内被覆層として非架橋のベース樹脂組成物からなる層をアルミニウム導体の外周面に備えたアルミニウム導体電線を製造した。
複合MB[A]のペレット又はドライブレンド物Bを、直径が40mmのスクリューを備えた押出機(L/D=24、圧縮部スクリュー温度190℃、ヘッド温度200℃)に導入した。この押出機内にて複合MB[A]又はドライブレンド物Bを溶融混錬しつつ、導体として1/0.8mmアルミニウム導体の外周面に肉厚1mmで直接押出被覆(配置)して、外径2.8mmの細径被覆導体を得た。
これとは別に、複合MB[A]のペレット又はドライブレンド物Bを、直径が90mmのスクリューを備えた押出機(L/D=28、圧縮部スクリュー温度190℃、ヘッド温度200℃)に導入した。この押出機内にて複合MB[A]又はドライブレンド物Bを溶融混錬しつつ、導体として38SQ(19/1.6)(導体径7.3mm)のアルミニウム撚り線の外周面に肉厚1.2mmで直接押出被覆(配置)して、外径9.7mmの太径被覆導体を得た。
このようにして、単層被覆層(最内被覆層)を有する、2種類のアルミニウム導体電線(細径絶縁電線及び太径絶縁電線)を製造した。
また、PVC混和物を直径が90mmのスクリューを備えた押出機(L/D=28、圧縮部スクリュー温度180℃、ヘッド温度18℃)に導入し、上記外径9.7mmの絶縁電線(太径被覆導体)の外側にPVC樹脂混和物を被覆し、厚さ1.5mmのシース層を形成した。こうして、外径12.7mmの2層被覆層を有するケーブルを製造した。
− 実施例2、3、及び、比較例3、4 −
上記ドライブレンド物Bを用いて、最内被覆層としてシラノール縮合硬化物の層をアルミニウム導体の外周面に備えたアルミニウム導体電線を製造した。
実施例1のアルミニウム導体電線の製造において、複合MB[A]のペレットに代えてドライブレンド物Bを用い、かつ、得られた2種の被覆導体を、それぞれ、温度60℃、相対湿度95%の雰囲気に24時間放置して水と接触させたこと以外は、実施例1のアルミニウム導体電線の製造と同様にして、単層被覆層を有する、2種類のアルミニウム導体電線を製造した。本例では、被覆導体を水と接触させることによりシランカップリング剤のトリメトキシ基を加水分解反応、次いでシラノール縮合反応させてシラン架橋させた。
また、実施例1のケーブルの製造と同様にして、外径12.7mmのケーブルを製造した。
− 実施例5〜9 −
上記ドライブレンド物Cを用いて、最内被覆層としてシラノール縮合硬化物の層をアルミニウム導体の外周面に備えたアルミニウム導体電線を製造した。
実施例1のアルミニウム導体電線の製造において、複合MB[A]のペレットに代えてドライブレンド物Cを用い、かつ、得られた2種の被覆導体を、それぞれ、温度60℃、相対湿度95%の雰囲気に24時間放置して水と接触させたこと以外は、実施例1のアルミニウム導体電線の製造と同様にして、単層被覆層を有する、2種類のアルミニウム導体電線を製造した。本例では、被覆導体(アルミニウム導体の外周面に押出成形した、ドライブレンド物Cの溶融混練物)を水と接触させることによりシランカップリング剤のトリメトキシ基を加水分解反応、次いでシラノール縮合反応させてシラン架橋させた。
また、実施例1のケーブルの製造と同様にして、外径12.7mmのケーブルを製造した。
− 実施例10〜12 −
上記ドライブレンド物Dを用いて、最内被覆層としてシラノール縮合硬化物の層をアルミニウム導体の外周面に備えたアルミニウム導体電線を製造した。
実施例1のアルミニウム導体電線の製造において、複合MB[A]のペレットに代えてドライブレンド物Dを用い、かつ、得られた2種の被覆導体を、それぞれ、温度60℃、相対湿度95%の雰囲気に24時間放置して水と接触させたこと以外は、実施例1のアルミニウム導体電線の製造と同様にして、単層被覆層を有する、2種類のアルミニウム導体電線を製造した。本例では、被覆導体(アルミニウム導体の外周面に押出成形した、ドライブレンド物Dの溶融混練物)を水と接触させることによりシランカップリング剤のトリメトキシ基を加水分解反応、次いでシラノール縮合反応させてシラン架橋させた。
また、実施例1のケーブルの製造と同様にして、外径12.7mmのケーブルを製造した。
− 比較例2 −
上記複合MB[A]のペレットを単独で用いて、最内被覆層として架橋したベース樹脂組成物からなる層をアルミニウム導体の外周面に備えたアルミニウム導体電線を製造した。
複合MB[A]のペレットを、直径が65mmのスクリューを備えた押出機(L/D=22、圧縮部スクリュー温度120℃、ヘッド温度125℃)に導入した。この押出機により、導体として1/0.8mmアルミニウム導体の外周面に複合MB[A]を肉厚1mmで直接押出(配置)した後、200℃、4.5気圧に設定された水蒸気架橋管を通して、外径2.8mmの細径被覆導体を得た。
これとは別に、複合MB[A]のペレットを、直径が115mmのスクリューを備えた押出機(L/D=24、圧縮部スクリュー温度110℃、ヘッド温度120℃)に導入した。この押出機により、導体として38SQ(19/1.6)(導体径7.3mm)アルミニウム撚り線導体の外周面に複合MB[A]を肉厚1.2mmで直接押出(配置)した後、200℃、3.5気圧に設定された水蒸気架橋管を通して、外径9.7mmの太径被覆導体を得た。
製造した絶縁電線及びケーブルについて下記評価をし、その結果を表1〜表4に示した。
<加工性試験>
(絶縁電線のカッティング性試験)
絶縁電線の皮むき加工性を、下記各試験に基づくカッティング性試験により、評価した。
− 1.ヒゲ発生の有無確認試験 −
各実施例及び比較例で製造した、1/0.8mmアルミニウム導体を用いた細径絶縁電線をワイヤーストリッパーで加工し、ヒゲ発生の有無を確認した。ヒゲとは、絶縁被覆層を厚さ方向に切断できずに切断端面に残存する(切断端面から延在する)、絶縁被覆層の線状体(毛状体)をいう。
ストリッパーの穴径は0.8mmのものを使用し、被覆層の皮むき長は15mmとした。この加工を各細径絶縁電線に対して4回試験を行った。
評価は、4回の試験全てにおいてカット部に発生したヒゲの長さが4mm以下であった場合を「A」、4回の試験全てにおいてカット部に発生したヒゲの長さが4mmを越え8mm以下であった場合を「B」、1回でもカット部に発生したヒゲの長さが8mmを越えた場合を「C」とした。本試験において、評価ランク「A」及び「B」が合格である。
− 2.切断カスの残存確認試験 −
各実施例及び比較例で製造した、38SQアルミニウム撚り線を用いた太径絶縁電線をワイヤーストリッパーで加工し、アルミニウム撚り線の表面及び内部に残る絶縁被覆層の切断カスを確認した。
ストリッパーの穴径は9.0mmのものを使用し、被覆層の皮むき長は15mmとした。この加工を各太径絶縁電線に対して4回試験を行った。
評価は、4回の試験全てにおいてカット部のアルミニウム撚り線に切断カスの残存が確認できなかった場合を「A」、1回でもカット部のアルミニウム撚り線に切断カスの残存が確認された場合を「B」、2回以上の試験においてカット部のアルミニウム撚り線に切断カスの残存が確認された場合を「C」とした。本試験において、評価ランク「A」及び「B」が合格である。
<絶縁電線の柔軟性試験>
各実施例及び比較例で製造した、38SQアルミニウム撚り線を用いた太径絶縁電線をU字状に、4D(Dは太径絶縁電線の半径を示す。)に曲げた際(U字状曲部の内径は太径絶縁電線の半径の4倍)に、曲げるのに必要な力をテンシロンで測定した。
表1〜表4には曲げるのに必要な力の測定値を記載した。本試験においては、曲げるのに必要な力が50N以下である場合を「合格」、50Nを超える場合を不合格とする。
<ケーブルの柔軟性試験>
各実施例及び比較例で製造した、外径12.7mmのケーブルをU字に、4D(Dはケーブルの半径を示す。)に曲げた際(U字状曲部の直径はケーブルの半径の4倍)に、曲げるのに必要な力をテンシロンで測定した。
表1〜表4には曲げるのに必要な力の測定値を記載した。本試験においては、曲げるのに必要な力が65N以下である場合を「合格」、65Nを超える場合を不合格とする。この力が50N以下であると柔軟性は非常に良好である。
<加熱巻き付け試験>
絶縁電線の耐熱性を、下記の加熱巻き付け試験により評価した。
具体的には、各実施例及び比較例で製造した、1/0.8mmアルミニウム導体を用いた細径絶縁電線を自己径(直径)と同一の外径を有するマンドレルに6ターン巻き付けて試験サンプルを作製した。この試験サンプルを120℃の恒温槽に24時間放置した。放置後、試験サンプルを常温に戻し、試験サンプルから細径絶縁電線を解いて、その表面を確認した。
評価は、細径絶縁電線が全体にわたって溶融していなかった場合を「A」、細径絶縁電線が溶融して隣接する細径絶縁電線(ターン部同士)と融着しているが、アルミニウム導体が見えていなかった場合を「B」、細径絶縁電線が溶融してアルミニウム導体が露出していた場合を「C」とした。本試験は参考試験である。評価ランクが「A」及び「B」であると耐熱性が高く、銅導体を用いたこと以外は同様にして製造した細径絶縁電線が示す耐熱性と同等以上の耐熱性を示す。なお、実施例の絶縁電線のうち評価ランクが「C」であるものについては、絶縁電線に要求される通常の耐熱性は満たしていることを確認した。
Figure 2019179628
Figure 2019179628
Figure 2019179628
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表1〜表4の結果から、以下のことが分かる。
アルミニウム導体と、エチレンゴム及びスチレン系エラストマーの少なくとも一方を含有するベース樹脂からなる最内被覆層とを併用しない比較例の配線材は、いずれも、絶縁電線のカッティング性試験及び柔軟性試験に劣っており、皮むき加工性及び柔軟性を兼ね備えるものではない。
すなわち、比較例1は非架橋のベース樹脂組成物(エチレンゴム及びスチレン系エラストマー無含有)からなる最内被覆層を有する配線材であり、皮むき加工性(ヒゲ発生)及び柔軟性が劣る上、十分な耐熱性も示さない。比較例2は、シラン架橋ではなくベース樹脂同士を有機過酸化物で自己架橋させた最内被覆層(エチレンゴム及びスチレン系エラストマー無含有)を有する配線材であり、加工性(ヒゲ発生)も柔軟性も劣るものである。比較例3及び4は、エチレンゴムもスチレン系エラストマーも含有しないベース樹脂と無機フィラーを無含有のシラン架橋性組成物Bを用いて形成した最内被覆層を有する配線材であり、いずれも、十分な耐熱性を示すものの、加工性(ヒゲ発生)及び柔軟性が劣る。比較例5は、エチレンゴムもスチレン系エラストマーも含有しないベース樹脂と無機フィラーを少量含有する非架橋のベース樹脂組成物を用いて形成した最内被覆層を有する配線材であり、皮むき加工性(ヒゲ発生を抑えられず、しかも切断カスの残存が顕著)と柔軟性が劣る上、耐熱性も十分ではない。比較例6は、エチレンゴム及びスチレン系エラストマーのいずれも含有しないベース樹脂組成物を用いて形成した最内被覆層を有する配線材であり、柔軟性が低く、加工性エチレン系成分含有樹脂の(ヒゲ発生)及び柔軟性に劣り、耐熱性も十分ではない。
これに対して、アルミニウム導体と、エチレンゴム及びスチレン系エラストマーの少なくとも一方を含有するベース樹脂からなる最内被覆層とを組み合わせて直接接した状態に配置した実施例1〜18の配線材は、いずれも、絶縁電線のカッティング性試験及び柔軟性試験に合格しており、優れた皮むき加工性及び柔軟性を兼ね備えていることが分かる。更に、シラングラフト化反応させたエチレン系成分含有樹脂をシラン架橋させた最内被覆層を有する実施例2、35〜12は、いずれも、優れた皮むき加工性及び柔軟性を損なうことなく、高い耐熱性を併せ持つことが分かる。特に、実施例10〜12は、シラン架橋に用いるシランカップリング剤を無機フィラーと結合又は吸着させてからエチレン系成分含有樹脂にシラングラフト化反応させているから、より高い耐熱性を示す。

Claims (7)

  1. アルミニウム導体の外周に、少なくとも1層の絶縁被覆層を有する配線材であって、
    前記絶縁被覆層のうち前記アルミニウム導体の外周に直接設けられた最内絶縁被覆層が、エチレンゴム及びスチレン系エラストマーの少なくとも一方を含有するベース樹脂の層である配線材。
  2. 前記ベース樹脂が、エチレン−α−オレフィン共重合体、ポリエチレン及びポリプロピレンからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含有する請求項1に記載の配線材。
  3. 前記少なくとも1種の樹脂が、架橋樹脂である請求項2に記載の配線材。
  4. 前記ベース樹脂の層が、下記シラン架橋性組成物のシラノール縮合硬化物である請求項1〜3のいずれか1項に記載の配線材。
    <シラン架橋性組成物>
    エチレンゴム及びスチレン系エラストマーの少なくとも一方と、シランカップリング剤がグラフト化結合した、エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂、ポリエチレン及びポリプロピレンからなる群より選択される少なくとも1種のシラングラフト樹脂と、シラノール縮合触媒とを含有するシラン架橋性組成物
  5. 前記エチレンゴム及びスチレン系エラストマーの、前記ベース樹脂中の合計含有率が、少なくとも5質量%である請求項1〜4のいずれか1項に記載の配線材。
  6. 前記ベース樹脂が、有機鉱物油を含有している請求項1〜5のいずれか1項に記載の配線材。
  7. 前記絶縁被覆層が2層以上であって、その最外絶縁被覆層が、ポリ塩化ビニルの絶縁被覆層である請求項1〜6のいずれか1項に記載の配線材。
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