JP2019163411A - 熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 Download PDF

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Abstract

【課題】流動性、耐熱性、耐衝撃性、発色性、耐傷付き性に優れる熱可塑性樹脂組成物を提供する。【解決手段】下記グラフト共重合体(A):25〜46質量%、スチレン共重合体(B):15〜40質量%、メタクリル酸エステル樹脂(C):20〜50質量%を含有する熱可塑性樹脂組成物。グラフト共重合体(A):ポリオルガノシロキサン(a−1)とアルキル(メタ)アクリレート系重合体(a−2)複合ゴム状重合体(b)(ポリオルガノシロキサン(a−1)の割合:1〜23質量%、体積平均粒子径:50〜240nm、粒子径300〜500nmの粒子割合:0〜25体積%)に、芳香族ビニル系単量体およびシアン化ビニル系単量体を重合して得られるグラフト共重合体(A)スチレン共重合体(B):芳香族ビニル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、および不飽和ジカルボン酸無水物単量体を重合してなる、ガラス転移温度140〜160℃のスチレン系共重合体(B)【選択図】図1

Description

本発明は、流動性に優れ、耐熱性、耐衝撃性、発色性、耐傷付き性に優れる成形品を提供することができる熱可塑性樹脂組成物と、この熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品に関する。
成形品の耐衝撃性を向上させることによって、得られる成形品の用途が拡大するだけでなく、得られる成形品の薄肉化や大型化への対応が可能になる等、工業的な有用性が非常に高くなる。そのため、得られる成形品の耐衝撃性の向上については、これまでに様々な手法が提案されている。これら手法のうち、ゴム質重合体と硬質樹脂とを組み合わせた樹脂材料を用いることによって成形品の耐衝撃性を高める手法は、すでに工業化されている。このような樹脂材料としては、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル−スチレン−アクリル酸エステル(ASA)樹脂、アクリロニトリル−エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体−スチレン(AES)樹脂等が挙げられる。
また、得られる成形品に高い意匠性が求められる場合には、これら樹脂材料から得られる成形品に塗装処理を行い、高い外観品質を得ている。しかし、塗装処理には、環境への負荷が大きい、工程が煩雑である、製造コストが高くなる、等の問題がある。そのため、得られる成形品の塗装処理を省略することがある。この場合、得られる成形品には、耐衝撃性等の機械物性以外に、例えば、洗車タオルによる汚れの拭き取り時に傷が付かない、傷が付いても目立たない耐傷付き性が要求される。
さらに、例えば自動車のグリル等の部品では大型化や形状の複雑化が進み、成形性を向上させるために、高い流動性が求められている。
耐衝撃性の良好な成形品を得ることができる樹脂材料としては、メチルメタクリレート、無水マレイン酸、スチレン、アルキルアクリレートからなる共重合体と、シアン化ビニルと芳香族ビニルの共重合体と、ゴム状重合体にシアン化ビニルと芳香族ビニルをグラフト重合したグラフト共重合体を用いたものが知られている(特許文献1)。
また、耐衝撃性、耐傷付き性の良好な成形品を得ることができる樹脂材料としては、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体に、特定の単量体混合物をグラフト重合したグラフト共重合体と、N−置換マレイミドまたは無水マレイン酸と、芳香族ビニルと、メタクリル酸エステルとを含む単量体混合物を重合したメタクリル酸エステル樹脂を用いたものが知られている(特許文献2)。
特開平2−272050号公報 特開2014−80525号公報
しかしながら、特許文献1に記載の熱可塑性樹脂組成物は、グラフトゴム成分にブタジエンゴムを使用しているため摺動性が低く、耐傷付き性に劣っていた。
特許文献2に記載の熱可塑性樹脂組成物は、グラフトゴム成分にエチレン・α−オレフィン共重合体を使用しているため摺動性に優れ、耐傷付き性にも優れていたが、流動性が低く、成形性が悪かった。
本発明は、流動性に優れ、耐熱性、耐衝撃性、発色性、耐傷付き性に優れる成形品を提供することができる熱可塑性樹脂組成物と、この熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するものであり、以下の態様を包含する。
[1] 以下のグラフト共重合体(A)とスチレン系共重合体(B)とメタクリル酸エステル樹脂(C)とを含有し、グラフト共重合体(A)とスチレン共重合体(B)とメタクリル酸エステル樹脂(C)との合計100質量%に対して、グラフト共重合体(A)の含有量が25〜46質量%、スチレン共重合体(B)の含有量が15〜40質量%、メタクリル酸エステル樹脂(C)の含有量が20〜50質量%である熱可塑性樹脂組成物。
グラフト共重合体(A):ポリオルガノシロキサン(a−1)とアルキル(メタ)アクリレート系重合体(a−2)との複合ゴム状重合体(b)であって、ポリオルガノシロキサン(a−1)とアルキル(メタ)アクリレート系重合体(a−2)との合計を100質量%としたときの、ポリオルガノシロキサン(a−1)の割合が1〜23質量%であり、体積平均粒子径が50〜240nmであり、全粒子中に占める粒子径が300〜500nmである粒子の割合が0〜25体積%である複合ゴム状重合体(b)の存在下に、芳香族ビニル系単量体およびシアン化ビニル系単量体を含むビニル系単量体成分(m1)を重合して得られるグラフト共重合体(A)
スチレン共重合体(B):芳香族ビニル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、および不飽和ジカルボン酸無水物単量体を含むビニル系単量体成分(m2)を重合して得られる、ガラス転移温度が140〜160℃のスチレン系共重合体(B)
メタクリル酸エステル樹脂(C):メタクリル酸エステルを含むビニル系単量体成分(m3)を重合して得られるメタクリル酸エステル樹脂(C)
[2] 前記ポリオルガノシロキサン(a−1)は、ビニル重合性官能基含有シロキサン単位0.3〜3モル%と、ジメチルシロキサン単位99.7〜97モル%(ただし、ビニル重合性官能基含有シロキサン単位とジメチルシロキサン単位の合計を100モル%とする。)とからなる平均粒子径20〜400nmのものであり、前記(メタ)アクリレート系重合体(a−2)中、アルキル(メタ)アクリレート単量体単位の含有量が、(メタ)アクリレート系重合体(a−2)を構成する全単量体単位の総質量に対して80〜100質量%であり、前記複合ゴム状重合体(b)におけるポリオルガノシロキサン(a−1)とアルキル(メタ)アクリレート系重合体(a−2)との合計100質量%中のポリオルガノシロキサン(a−1)の割合が1〜23質量%であり、前記ビニル系単量体成分(m1)100質量%中の芳香族ビニル系単量体の含有率が65〜82質量%で、シアン化ビニル系単量体の含有率が18〜35質量%であり、前記グラフト共重合体(A)中の複合ゴム状重合体(b)とビニル系単量体成分(m1)の質量比が複合ゴム状重合体(b)10〜80質量%、ビニル系単量体成分(m1)20〜90質量%である(ただし、複合ゴム状重合体(b)とビニル系単量体成分(m1)の合計を100質量%とする。)ことを特徴とする[1]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[3] 前記ビニル系単量体成分(m2)100質量%中の芳香族ビニル系単量体の含有率が60〜80質量%、(メタ)アクリル酸エステル系単量体の含有率が5〜15質量%、不飽和ジカルボン酸無水物単量体の含有率が15〜35質量%である[1]又は[2]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[4] 前記ビニル系単量体成分(m3)100質量%中のメタクリル酸エステルの含有率が85〜100質量%である[1]ないし[3]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[5] [1]ないし[4]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を成形して得られる成形品。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は流動性に優れ、耐熱性、耐衝撃性、発色性、耐傷付き性に優れた成形品を良好な成形性のもとに提供することができる。
このため、本発明の熱可塑性樹脂組成物およびその成形品は、車両内装・外装部品、事務機器、家電、建材等として有用である。
実施例における耐傷付き性の評価方法の説明図である。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
[用語の定義]
以下の用語の定義は、本明細書および特許請求の範囲にわたって適用される。
「成形品」とは、熱可塑性樹脂組成物を成形してなるものを意味する。
「明度(L)」とは、JIS Z 8729において採用されているL表色系における色彩値のうちの明度の値(L)を意味する。
「SCE方式」とは、JIS Z 8722に準拠した分光測色計を用い、光トラップによって正反射光を除去して色を測る方法を意味する。
「単位」とは、重合前の単量体化合物(モノマー)に由来する構造部分をさし、例えば、「アクリル酸エステル系単量体単位」とは「アクリル酸エステル系単量体に由来する構造部分」をさす。
「(メタ)アクリル」とは「アクリル」と「メタクリル」の一方または双方をさす。「(メタ)アクリレート」についても同様である。
〔熱可塑性樹脂組成物〕
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、以下のグラフト共重合体(A)とスチレン系共重合体(B)とメタクリル酸エステル樹脂(C)とを含有し、グラフト共重合体(A)とスチレン共重合体(B)とメタクリル酸エステル樹脂(C)との合計100質量%に対して、グラフト共重合体(A)を25〜46質量%、スチレン共重合体(B)を15〜40質量%、メタクリル酸エステル樹脂(C)を20〜50質量%含有することを特徴とするものであり、この特定のグラフト共重合体(A)とスチレン共重合体(B)とメタクリル酸エステル樹脂(C)とを特定の割合で含むことから、流動性に優れ、耐熱性、耐衝撃性、発色性、耐傷付き性に優れる成形品を得ることができる。
グラフト共重合体(A):ポリオルガノシロキサン(a−1)とアルキル(メタ)アクリレート系重合体(a−2)との複合ゴム状重合体(b)であって、ポリオルガノシロキサン(a−1)とアルキル(メタ)アクリレート系重合体(a−2)との合計を100質量%としたときの、ポリオルガノシロキサン(a−1)の割合が1〜23質量%であり、体積平均粒子径が50〜240nmであり、全粒子中に占める粒子径が300〜500nmである粒子の割合が0〜25体積%である複合ゴム状重合体(b)の存在下に、芳香族ビニル系単量体およびシアン化ビニル系単量体を含むビニル系単量体成分(m1)を重合して得られるグラフト共重合体(A)(以下、「本発明のグラフト共重合体(A)」と称す場合がある。)
スチレン共重合体(B):芳香族ビニル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、および不飽和ジカルボン酸無水物単量体を含むビニル系単量体成分(m2)を重合して得られる、ガラス転移温度が140〜160℃のスチレン系共重合体(B)(以下、「本発明のスチレン共重合体(B)」と称す場合がある。)
メタクリル酸エステル樹脂(C):メタクリル酸エステルを含むビニル系単量体成分(m3)を重合して得られるメタクリル酸エステル樹脂(C)(以下、「本発明のメタクリル酸エステル樹脂(C)」と称す場合がある。)
[グラフト共重合体(A)]
本発明のグラフト共重合体(A)は、ポリオルガノシロキサン(a−1)とアルキル(メタ)アクリレート系重合体(a−2)との複合ゴム状重合体(b)であって、ポリオルガノシロキサン(a−1)とアルキル(メタ)アクリレート系重合体(a−2)との合計を100質量%としたときの、ポリオルガノシロキサン(a−1)の割合が1〜23質量%であり、体積平均粒子径が50〜240nmであり、全粒子中に占める粒子径が300〜500nmである粒子の割合が0〜25体積%である複合ゴム状重合体(b)の存在下に、芳香族ビニル系単量体およびシアン化ビニル系単量体を含むビニル系単量体成分(m1)を重合して得られたグラフト共重合体(A)である。
即ち、本発明のグラフト共重合体(A)は、特定の複合ゴム状重合体(b)の存在下に、ビニル系単量体成分(m1)をグラフト重合して得られたものである。換言すれば、複合ゴム状重合体(b)部分と、ビニル系単量体成分(m1)の共重合体であるビニル系共重合体部分からなる。
なお、グラフト共重合体(A)においては、複合ゴム状重合体(b)の存在下にビニル系単量体成分(m1)がどのように重合しているか、特定することは困難である。例えば、ビニル系単量体成分(m1)が重合したビニル系共重合体としては、複合ゴム状重合体(b)に結合したものと、複合ゴム状重合体(b)に結合していないものとが存在する。また、複合ゴム状重合体(b)に結合したビニル系共重合体の分子量、構成単位の割合等を特定することも困難である。すなわち、グラフト共重合体(A)をその構造または特性により直接特定することが不可能であるか、またおよそ実際的ではないという事情(不可能・非実際的事情)が存在する。したがって、本発明においては、グラフト共重合体(A)は「複合ゴム状重合体(b)の存在下に、ビニル系単量体成分(m1)を重合して得られたもの」と規定することがより適切とされる。
<ポリオルガノシロキサン(a−1)>
複合ゴム状重合体(b)を構成するポリオルガノシロキサン(a−1)としてはオルガノシロキサンの重合体であれば特に制限されないが、ビニル重合性官能基を含有するポリオルガノシロキサン(ビニル重合性官能基含有ポリオルガノシロキサン)が好ましく、ビニル重合性官能基含有シロキサン単位と、ジメチルシロキサン単位とを有するポリオルガノシロキサンがより好ましい。
ビニル重合性官能基としては、例えばメタクリロイル基、アクリロイル基、ビニル基等が挙げられる。
ビニル重合性官能基含有シロキサンとしては、ビニル重合性官能基を含有し、かつ、ジメチルシロキサンとシロキサン結合を介して結合し得るものであれば特に制限されないが、ジメチルシロキサンとの反応性を考慮すると、ビニル重合性官能基を含有する各種アルコキシシラン化合物が好適である。ビニル重合性官能基を含有する各種アルコキシシラン化合物としては、具体的には、β−メタクリロイルオキシエチルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメトキシジメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルエトキシジエチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジエトキシメチルシラン、δ−メタクリロイルオキシブチルジエトキシメチルシラン等のメタクリロイルオキシシロキサン;テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン等のビニルシロキサン;p−ビニルフェニルジメトキシメチルシラン、γ−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシロキサンなどが挙げられる。これらビニル重合性官能基含有シロキサンは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
ジメチルシロキサンとしては、3員環以上のジメチルシロキサン系環状体が好ましく、3〜7員環のジメチルシロキサン系環状体がより好ましい。ジメチルシロキサン系環状体としては、具体的には、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサンなどが挙げられる。これらジメチルシロキサンは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
ビニル重合性官能基含有シロキサン単位の含有量は、ポリオルガノシロキサンを構成する全単位の総モル数(100モル%)に対し、0.3〜3モル%が好ましい。ビニル重合性官能基含有シロキサン単位の割合が上記範囲内であれば、ポリオルガノシロキサン(a−1)とアルキル(メタ)アクリレート系重合体(a−2)とが十分に複合化し、得られる成形品の表面においてポリオルガノシロキサン(a−1)がブリードアウトしにくくなる。よって、得られる成形品の表面外観がより良好となり、耐衝撃性もより向上する。
ポリオルガノシロキサン(a−1)としては、得られる成形品の表面外観がさらに良好となることから、3個以上のシロキサン結合を有するケイ素原子がポリオルガノシロキサン中の全ケイ素原子に対し0〜1モル%であることが好ましい。ポリオルガノシロキサン(a−1)の好ましい態様としては、ビニル重合性官能基含有シロキサン単位0.3〜3モル%と、ジメチルシロキサン単位99.7〜97モル%(ただし、ビニル重合性官能基含有シロキサン単位とジメチルシロキサン単位の合計を100モル%とする。)とからなり、3個以上のシロキサン結合を有するケイ素原子がポリオルガノシロキサン中の全ケイ素原子に対し1モル%以下であるポリオルガノシロキサンが挙げられる。
ポリオルガノシロキサン(a−1)の平均粒子径は特に制限されないが、得られる成形品の表面外観がさらに良好となることから、400nm以下が好ましく、150nm以下がより好ましい。下限値については、20nm以上が好ましい。ここで、ポリオルガノシロキサン(a−1)の平均粒子径は、粒度分布測定器を用いて体積基準の粒子径分布を測定し、得られた粒子径分布より算出される値(体積平均粒子径)である。
ポリオルガノシロキサン(a−1)は、例えばジメチルシロキサンと、ビニル重合性官能基含有シロキサンとを含むシロキサン混合物を重合することで得られる。重合の方法としては特に制限されないが、乳化重合が好ましい。
シロキサン混合物の乳化重合は、通常、乳化剤と水と酸触媒とを用いて行われる。
乳化剤としてはアニオン系乳化剤が好ましい。アニオン系乳化剤としては、具体的には、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウムなどが挙げられる。これらのなかでも、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸系の乳化剤が好ましい。これら乳化剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
乳化剤の使用量は、シロキサン混合物100質量部に対して0.05〜5質量部が好ましい。乳化剤の使用量が0.05質量部以上であれば、分散状態が安定しやすく、微小な粒子径の乳化状態を保持しやすくなる。一方、乳化剤の使用量が5質量部以下であれば、乳化剤に起因する成形品の着色を抑制できる。
酸触媒としては、スルホン酸類(例えば脂肪族スルホン酸、脂肪族置換ベンゼンスルホン酸、脂肪族置換ナフタレンスルホン酸など)等の有機酸触媒;鉱酸類(例えば硫酸、塩酸、硝酸など)等の無機酸触媒などが挙げられる。これら酸触媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらのなかでも、後述するシロキサンラテックス(a−3)の安定化にも優れている点で脂肪族置換ベンゼンスルホン酸が好ましく、n−ドデシルベンゼンスルホン酸が特に好ましい。また、n−ドデシルベンゼンスルホン酸と硫酸等の鉱酸とを併用すると、ポリオルガノシロキサン(a−1)の製造に用いた乳化剤の色が成形品の色に与える影響を小さく抑えることができる。
酸触媒の添加量は適宜決めればよいが、通常、シロキサン混合物100質量部に対して0.1〜20質量部程度である。
酸触媒の混合は、シロキサン混合物と乳化剤と水とを混合するタイミングで行ってもよいし、シロキサン混合物に乳化剤と水とを添加して乳化させラテックス(シロキサンラテックス(a−3))とし、これを微粒子化した後でもよい。得られるポリオルガノシロキサン(a−1)の粒子径を制御しやすいことから、シロキサンラテックス(a−3)を微粒子化した後に、シロキサンラテックス(a−3)と酸触媒とを混合することが好ましい。特に、微粒子化したシロキサンラテックス(a−3)を酸触媒水溶液中に一定速度で滴下することが好ましい。なお、酸触媒をシロキサン混合物と乳化剤と水とを混合するタイミングで混合する場合は、これらを混合した後に微粒子化することが好ましい。
シロキサンラテックス(a−3)は、例えば高速回転による剪断力で微粒子化するホモミキサーや、高圧発生機による噴出力で微粒子化するホモジナイザー等を使用することで微粒子化できる。シロキサン混合物と乳化剤と水と酸触媒とを混合する方法や、微粒子化したシロキサンラテックス(a−3)と酸触媒とを混合する方法としては、例えば高速攪拌による混合、ホモジナイザー等の高圧乳化装置による混合などが挙げられる。これらのなかでも、ホモジナイザーを使用した方法は、ポリオルガノシロキサン(a−1)の粒子径の分布を小さくできるので好適である。
重合温度は、50℃以上が好ましく、80℃以上が好ましい。なお、微粒子化したシロキサンラテックス(a−3)を酸触媒水溶液中に滴下する場合、酸触媒水溶液の温度は50℃以上が好ましく、80℃以上が好ましい。
重合時間は、シロキサン混合物と乳化剤と水とを混合するタイミングで酸触媒を混合する場合は、2時間以上が好ましく、5時間以上がさらに好ましい。一方、微粒子化したシロキサンラテックス(a−3)と酸触媒とを混合する場合は、微粒子化したシロキサンラテックス(a−3)を酸触媒水溶液中に滴下した後、1時間程度保持することが好ましい。
重合の停止は、反応液を冷却した後、反応液の25℃におけるpHが6〜8程度になるように水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリ性物質で反応液を中和することによって行うことができる。
ポリオルガノシロキサン(a−1)の平均粒子径は、シロキサン混合物の組成、酸触媒の使用量(酸触媒水溶液中の酸触媒の含有量)、重合温度などを調整することで制御できる。例えば、酸触媒の使用量が少なくなるほど平均粒子径は大きくなる傾向にあり、重合温度が高くなるほど平均粒子径は小さくなる傾向にある。
<アルキル(メタ)アクリレート系重合体(a−2)>
複合ゴム状重合体(b)を構成するアルキル(メタ)アクリレート系重合体(a−2)は、アルキル(メタ)アクリレート単量体を必須とするビニル系単量体を1種以上含む単量体成分を重合して得られるものである。この単量体成分には、アルキル(メタ)アクリレート単量体以外の単量体(他の単量体)が含まれていてもよい。
アルキル(メタ)アクリレート単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−ラウリル等のメタクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。これらアルキル(メタ)アクリレート単量体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらのアルキル(メタ)アクリレート単量体のなかでも、得られる成形品の耐衝撃性がより向上する点で、アクリル酸n−ブチルが好ましい。
(メタ)アクリレート系重合体(a−2)を構成する単量体成分100質量%中のアルキル(メタ)アクリレート単量体の割合は、80〜100質量%が好ましく、90〜100質量%がより好ましい。
(メタ)アクリレート系重合体(a−2)を構成する単量体成分に含まれていてもよい他の単量体としては、アルキル(メタ)アクリレート単量体と共重合可能であれば特に制限されない。他の単量体としては、例えば、芳香族ビニル系単量体(例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等)、シアン化ビニル系単量体(例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等)などが挙げられる。これら他の単量体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
アルキル(メタ)アクリレート系重合体(a−2)の製造方法は特に制限されず、公知の方法に従って行うことができる。
<複合ゴム状重合体(b)>
本発明のグラフト共重合体(A)を構成する複合ゴム状重合体(b)は、ポリオルガノシロキサン(a−1)とアルキル(メタ)アクリレート系重合体(a−2)とが複合した複合ゴムである。
複合ゴム状重合体(b)におけるポリオルガノシロキサン(a−1)とアルキル(メタ)アクリレート系重合体(a−2)の割合は、得られる成形品の耐衝撃性、発色性、耐傷付き性に優れることから、ポリオルガノシロキサン(a−1)とアルキル(メタ)アクリレート系重合体(a−2)との合計を100質量%としたときに、ポリオルガノシロキサン(a−1)の割合が1〜23質量%であり、5〜20質量%であることが好ましい。
また、複合ゴム状重合体(b)の体積平均粒子径は、得られる熱可塑性樹脂組成物の流動性、成形品の耐衝撃性、発色性に優れることから50〜240nmであり、100〜200nmであることが好ましい。
また、複合ゴム状重合体(b)中の全粒子中に占める粒子径が300〜500nmである粒子の割合は、得られる熱可塑性樹脂組成物の流動性、成形品の耐衝撃性、発色性に優れることから、0〜25体積%であり、1〜25体積%であることが好ましい。また、複合ゴム状重合体(b)中の全粒子中に占める粒子径が500nm超である粒子の割合は、1体積%未満が好ましく、0.1体積%未満がより好ましい。
ここで、複合ゴム状重合体(b)の体積平均粒子径は、粒度分布測定器を用いて体積基準の粒子径分布を測定し、得られた粒子径分布より算出される値である。
複合ゴム状重合体(b)の製造方法は特に制限されないが、ポリオルガノシロキサン(a−1)とアルキル(メタ)アクリレート系重合体(a−2)を各々含む複数のラテックスをヘテロ凝集もしくは共肥大化する方法;ポリオルガノシロキサン(a−1)およびアルキル(メタ)アクリレート系重合体(a−2)のいずれか一方を含むラテックス存在下で、他の一方の重合体を形成する単量体成分を重合させて複合化させる方法などが挙げられる。特に複合ゴム状重合体(b)の体積平均粒子径および粒子径分布を上述した範囲内となるように容易に調整できることから、ラテックス状のポリオルガノシロキサン(a−1)の存在下で、アルキル(メタ)アクリレート単量体を含む単量体成分をラジカル重合させて共重合体ラテックスを得ることが好ましい。或いは、ラテックス状のポリオルガノシロキサン(a−1)の存在下で、アルキル(メタ)アクリレート単量体を含む単量体成分をラジカル重合させて重合体ラテックスを得る工程(ラジカル重合工程)と、前記重合体ラテックスと酸基含有共重合体ラテックスとを混合して前記重合体ラテックスを肥大化させる工程(肥大化工程)と、を有する方法が好ましい。この方法は、ラジカル重合工程の後、肥大化工程の前に、前記重合体ラテックスに縮合酸塩を添加する工程(縮合酸塩添加工程)をさらに有することが好ましい。
(ラジカル重合工程)
ラジカル重合工程は、ラテックス状のポリオルガノシロキサン(a−1)の存在下で、アルキル(メタ)アクリレート単量体を含む単量体成分をラジカル重合する工程である。アルキル(メタ)アクリレート単量体を含む単量体成分は、ラテックス状のポリオルガノシロキサン(a−1)に一括して添加してもよいし、連続的に、あるいは断続的に添加してもよい。
アルキル(メタ)アクリレート単量体を含む単量体成分をラジカル重合させる際には、必要に応じてグラフト交叉剤や架橋剤を用いてもよい。
グラフト交叉剤、架橋剤としては、例えば、メタクリル酸アリル、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリル、ジビニルベンゼン、ジメタクリル酸エチレングリコールジエステル、ジメタクリル酸プロピレングリコールジエステル、ジメタクリル酸1,3−ブチレングリコールジエステル、ジメタクリル酸1,4−ブチレングリコールジエステルなどが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
ラジカル重合には、通常、ラジカル重合開始剤および乳化剤を用いる。
ラジカル重合開始剤としては、過酸化物、アゾ系開始剤、酸化剤と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤などが挙げられる。これらの中では、レドックス系開始剤が好ましく、特に硫酸第一鉄とエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩とナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートとハイドロパーオキサイドとを組み合わせたスルホキシレート系開始剤が好ましい。
乳化剤としては特に制限されない。乳化剤のなかでもラジカル重合時のラテックスの安定性に優れ、重合率を高められることから、サルコシン酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、脂肪酸ナトリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム、ロジン酸石鹸等の各種カルボン酸塩が好ましい。これらの中では、得られるグラフト共重合体(A)およびこれを含む熱可塑性樹脂組成物を高温成形した際にガス発生を抑制できることから、アルケニルコハク酸ジカリウムが好ましい。アルケニルコハク酸ジカリウムの具体的例としては、オクタデセニルコハク酸ジカリウム、ヘプタデセニルコハク酸ジカリウム、ヘキサデセニルコハク酸ジカリウム等が挙げられる。乳化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(肥大化工程)
肥大化工程は、ラジカル重合工程にて得られる共重合体ラテックスと、酸基含有共重合体ラテックスとを混合することにより、共重合体ラテックスを肥大化させる工程である。
肥大化に用いる酸基含有共重合体ラテックスは、水中にて、酸基含有単量体、アルキル(メタ)アクリレート単量体、および必要に応じてこれらと共重合可能な他の単量体を含む単量体成分を重合して得られる酸基含有共重合体のラテックスである。
酸基含有単量体としては、カルボキシ基を有する不飽和化合物が好ましく、カルボキシ基を有する不飽和化合物としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸等が挙げられ、なかでも(メタ)アクリル酸が特に好ましい。酸基含有単量体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
アルキル(メタ)アクリレート単量体としては、アクリル酸およびメタクリル酸の少なくとも一方と、炭素数1〜12の直鎖または分岐のアルキル基を有するアルコールとのエステルが挙げられる。
アルキル(メタ)アクリレート単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシルなどが挙げられる。アルキル(メタ)アクリレート単量体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
アルキル(メタ)アクリレート単量体のなかでも、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
他の単量体は、酸基含有単量体およびアルキル(メタ)アクリレート単量体と共重合可能な単量体であり、かつ酸基含有単量体およびアルキル(メタ)アクリレート単量体以外の単量体である。他の単量体としては、芳香族ビニル系単量体(例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等)、シアン化ビニル系単量体(例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、2つ以上の重合性官能基を有する化合物(例えば、メタクリル酸アリル、ジメタクリル酸ポリエチレングリコールエステル、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリル、トリメリット酸トリアリル等)などが挙げられる。他の単量体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
これら単量体の使用量としては、酸基含有共重合体ラテックスの固形分100質量%中の割合として、酸基含有単量体単位が5〜40質量%となる量、アルキル(メタ)アクリレート単量体単位が60〜95質量%となる量、他の単量体単位が0〜35質量%となる量が好ましく、酸基含有単量体単位が8〜30質量%となる量、アルキル(メタ)アクリレート単量体単位が70〜92質量%となる量、他の単量体単位が0〜22質量%となる量がより好ましい。酸基含有単量体単位の割合が5質量%以上、アルキル(メタ)アクリレート単量体単位の割合が95質量%以下であれば、十分な肥大化能力が得られる。また、酸基含有単量体単位の割合が40質量%以下、アルキル(メタ)アクリレート単量体単位の割合が60質量%以上であれば、酸基含有共重合体ラテックス製造の際に多量の凝塊物が生成するのを抑制できる。また、他の単量体単位が35質量%以下であれば、得られる酸基含有共重合体ラテックスが十分な肥大化能力を有することができる。
肥大化に用いる酸基含有共重合体ラテックスは一般的な乳化重合法により製造することができる。
乳化重合で使用される乳化剤としては、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ロジン酸のアルカリ金属塩、アルケニルコハク酸のアルカリ金属塩等で例示されるカルボン酸系の乳化剤;アルキル硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウム等の中から選ばれたアニオン系乳化剤など、公知の乳化剤が挙げられる。これら乳化剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
乳化剤の使用方法としては、重合初期に全量を一括して添加してもよいし、連続的に、あるいは断続的に添加してもよい。乳化剤量やその使用方法によっては、酸基含有共重合体ラテックスの粒子径を、ひいては粒径肥大化された複合ゴム状重合体(b)ラテックスの粒子径に影響を及ぼす場合があるため、適正な量および使用方法を選択することが好ましい。
乳化重合に用いる重合開始剤としては、熱分解型開始剤やレドックス型開始剤等が使用できる。熱分解型開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。レドックス型開始剤としては、クメンハイドロパーオキシドに代表される有機過酸化物−ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート−鉄塩等の組み合わせが例示される。これら重合開始剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
乳化重合の際には、分子量を調整するためにメルカプタン類(例えばt−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン等)、テルピノレン、α−メチルスチレンダイマー等の連鎖移動剤を使用することができる。
また、乳化重合の際には、pHを調節するためにアルカリや酸を添加することができる。
また、乳化重合の際には、減粘剤として電解質を添加することができる。
肥大化工程における酸基含有共重合体ラテックスの添加量(固形分換算量)は、複合ゴム状重合体(a)の体積平均粒子径および粒子径分布が上述した範囲内となるように調整すればよい。通常は、ラジカル重合工程にて得られる共重合体ラテックスの固形分100質量部に対し、0.1〜5質量部が好ましく、0.2〜2質量部がより好ましい。酸基含有共重合体ラテックスの添加量が0.1質量部以上であれば、肥大化が十分に進行し、また、凝塊物が多量に発生するのを抑制できる。一方、酸基含有共重合体ラテックスの添加量が5質量部以下であれば、肥大化ラテックスのpHが低下するのを抑制でき、ラテックスが不安定になりにくい。
酸基含有共重合体ラテックスは、共重合体ラテックスに一括して添加してもよいし、滴下により連続的または断続的に添加してもよい。
肥大化時の攪拌は適度に制御することが好ましい。攪拌が不十分な場合には、局部的に肥大化が進行することにより未肥大のゴム状重合体が残留することがある。一方、過度に攪拌を行うと、肥大化ラテックスが不安定になり、凝塊物が多量に発生することがある。肥大化を行う際の温度は特に制限されないが、20〜90℃が好ましく、30〜80℃がより好ましい。温度がこの範囲外であると、肥大化が十分に進行しない場合がある。
なお、複合ゴム状重合体(b)は、上記のように酸基含有共重合体ラテックスを用いて肥大化した後、アルキル(メタ)アクリレート単量体を含む単量体成分をさらに添加して重合させることにより製造してもよい。
(縮合酸塩添加工程)
上記の肥大化工程に先立ち、共重合体ラテックスに縮合酸塩を添加することがさらに好ましい。酸基含有共重合体ラテックスを添加する前に共重合体ラテックスに縮合酸塩を添加しておけば、肥大化が進行し易くなる。そのため、酸基含有共重合体ラテックスの添加量を減らすことが可能となり、複合ゴム状重合体(b)の体積平均粒子径および粒子径分布を上述した範囲内に調整することが容易になる。
縮合酸塩としては、例えばリン酸、ケイ酸等の縮合酸と、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属との塩が用いられる。これらのなかでも、リン酸の縮合酸であるピロリン酸とアルカリ金属の塩が好ましく、ピロリン酸ナトリウムまたはピロリン酸カリウムが特に好ましい。
縮合酸塩の添加量は、複合ゴム状重合体(b)の体積平均粒子径および粒子径分布が上述した範囲内となるように調整すればよいが、通常は、ラジカル重合工程にて得られる共重合体ラテックスの固形分100質量部に対し、0.1〜5質量部とすることが好ましく、0.2〜2質量部がより好ましい。縮合酸塩の添加量が0.1質量部以上であれば肥大化が十分に進行し、5質量部以下であれば肥大化が十分に進行する、あるいはゴムラテックスが安定化しやすく、多量の凝塊物が発生するのを抑制できる。
縮合酸塩は、共重合体ラテックスに一括して添加することが好ましい。
共重合体ラテックスと縮合酸塩との混合物の25℃におけるpHは7以上であることが好ましい。pHが7以上であれば肥大化が十分に進行しやすくなる。pHを7以上とするために、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの一般的なアルカリ化合物を使用することができる。
<ビニル系単量体成分(m1)>
ビニル系単量体成分(m1)は、少なくとも芳香族ビニル系単量体およびシアン化ビニル系単量体を含む単量体混合物である。
芳香族ビニル系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−,m−またはp−メチルスチレン、ビニルキシレン、p−t−ブチルスチレン、エチルスチレン等が挙げられ、得られる熱可塑性樹脂組成物の流動性、得られる成形品の発色性、耐衝撃性の点から、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。芳香族ビニル系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
芳香族ビニル系単量体の含有率は、ビニル系単量体成分(m1)100質量%中65〜82質量%が好ましく、73〜80質量%がより好ましく、75〜80質量%がさらに好ましい。芳香族ビニル系単量体の含有率が前記範囲内であれば、得られる成形品の耐衝撃性、発色性がさらに優れる。
シアン化ビニル系単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。シアン化ビニル系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。シアン化ビニル系単量体の含有率は、ビニル系単量体成分(m1)100質量%中18〜35質量%が好ましく、20〜27質量%がより好ましく、20〜25質量%がさらに好ましい。シアン化ビニル系単量体の含有率が前記範囲内であれば、得られる成形品の耐衝撃性、発色性がさらに優れる。
ビニル系単量体成分(m1)は、芳香族ビニル系単量体およびシアン化ビニル系単量体の他に、これらと共重合可能な他の単量体を、本発明の効果を損なわない範囲で含んでもよい。他の単量体としては、アクリル酸エステル(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル等)、メタクリル酸エステル(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル等)、マレイミド系単量体(N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等)等が挙げられる。他の単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<グラフト共重合体(A)>
グラフト共重合体(A)は、複合ゴム状重合体(b)の存在下に、ビニル系単量体成分(m1)を重合することにより得られる。重合方法としては特に制限されないが、反応が安定して進行するように制御できることから乳化重合が好ましい。
グラフト共重合体(A)の具体的な製造方法としては、例えば、複合ゴム状重合体(b)にビニル系単量体成分(m1)を一括して仕込んだ後に重合する方法;複合ゴム状重合体(b)にビニル系単量体成分(m1)の一部を先に仕込み、随時重合させながら残りを重合系に滴下する方法;複合ゴム状重合体(a)にビニル系単量体成分(m1)の全量を滴下しながら随時重合する方法などが挙げられ、これらを1段ないしは2段以上に分けて行うことができる。また、各段におけるビニル系単量体成分(m1)の種類や組成比を変えて行うことも可能である。
複合ゴム状重合体(b)とビニル系単量体成分(m1)の質量比は特に制限されない。得られる成形品の耐衝撃性と表面外観とのバランスがより良好になる点では、複合ゴム状重合体(b)を10〜80質量%、ビニル系単量体成分(m1)を20〜90質量%とすることが好ましく、複合ゴム状重合体(b)を30〜70質量%、ビニル系単量体成分(m1)を30〜70質量%とすることがより好ましい(ただし、複合ゴム状重合体(b)とビニル系単量体成分(m1)の合計を100質量%とする。)。前記の質量比でグラフト重合すると、得られる熱可塑性樹脂組成物の流動性、および成形品の耐衝撃性と発色性がより優れたものとなる。
重合の際には、通常、ラジカル重合開始剤および乳化剤を用いる。ラジカル重合開始剤および乳化剤としては、複合ゴム状重合体(b)の製造方法の説明において先に例示したラジカル重合開始剤および乳化剤を使用できる。
また、重合を行う際には、得られるグラフト共重合体(A)の分子量やグラフト率を制御するため、各種公知の連鎖移動剤を添加してもよい。
グラフト共重合体(A)は、通常、ラテックスの状態で得られる。グラフト共重合体(A)のラテックスからグラフト共重合体(A)を回収する方法としては、例えば、グラフト共重合体(A)のラテックスを、凝固剤を溶解させた熱水中に投入することによってスラリー状に凝析する湿式法;加熱雰囲気中にグラフト共重合体(A)のラテックスを噴霧することによって半直接的にグラフト共重合体(A)を回収するスプレードライ法などが挙げられる。
湿式法に用いる凝固剤としては、硫酸、塩酸、リン酸、硝酸等の無機酸;塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硫酸アルミニウム等の金属塩などが挙げられ、重合で用いた乳化剤に応じて選定される。例えば、乳化剤として脂肪酸石鹸やロジン酸石鹸等のカルボン酸石鹸のみが使用されている場合には上述した凝固剤の1種以上を用いることができる。また、乳化剤としてアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の酸性領域でも安定な乳化力を示す乳化剤を使用した場合には、凝固剤としては金属塩が好適である。
湿式法を用いると、スラリー状のグラフト共重合体(A)が得られる。このスラリー状のグラフト共重合体(A)から乾燥状態のグラフト共重合体(A)を得る方法としては、まず残存する乳化剤残渣を水中に溶出させて洗浄し、次いで、このスラリーを遠心またはプレス脱水機等で脱水した後に気流乾燥機等で乾燥する方法;圧搾脱水機や押出機等で脱水と乾燥とを同時に実施する方法などが挙げられる。これらの方法によって、粉体または粒子状の乾燥グラフト共重合体(A)が得られる。
洗浄条件としては特に制限されないが、乾燥後のグラフト共重合体(A)100質量%中に含まれる乳化剤残渣量が0.5〜2質量%の範囲となる条件で洗浄することが好ましい。グラフト共重合体(A)中の乳化剤残渣が0.5質量%以上であれば、得られるグラフト共重合体(A)およびこれを含む熱可塑性樹脂組成物の流動性がより向上する傾向にある。一方、グラフト共重合体(A)中の乳化剤残渣が2質量%以下であれば、熱可塑樹脂組成物を高温成形した際にガス発生を抑制できる。
なお、圧搾脱水機や押出機から排出されたグラフト共重合体(A)を回収せず、直接、樹脂組成物を製造する押出機や成形機に送って成形品とすることも可能である。
[スチレン系共重合体(B)]
スチレン系共重合体(B)は、芳香族ビニル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、および不飽和ジカルボン酸無水物単量体を含むビニル系単量体成分(m2)を重合して得られる共重合体である。
ビニル系単量体成分(m2)における芳香族ビニル系単量体の含有率は、得られる成形品の流動性に優れることから、ビニル系単量体成分(m2)100質量%中60〜80質量%が好ましく、68〜75質量%がより好ましい。
ビニル系単量体成分(m2)における(メタ)アクリル酸エステル系単量体の含有率は、得られる成形品の耐傷付き性に優れることから、ビニル系単量体成分(m2)100質量%中5〜15質量%が好ましく、7〜13質量%がより好ましい。
ビニル系単量体成分(m2)における不飽和ジカルボン酸無水物単量体の含有率は、得られる成形品の流動性、耐熱性のバランスに優れることから、ビニル系単量体成分(m2)100質量%中15〜35質量%が好ましく、16〜25質量%がより好ましい。
芳香族ビニル系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−,m−またはp−メチルスチレン、ビニルキシレン、p−t−ブチルスチレン、エチルスチレン等が挙げられる。芳香族ビニル系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。芳香族ビニル系単量体のなかでも、得られる成形品の耐熱性および耐衝撃性がさらに優れることから、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ペンジル、メタクリル酸フェニル等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。(メタ)アクリル酸エステル系単量体のなかでも、得られる成形品の耐熱性および耐衝撃性がさらに優れることから、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸エチルの少なくとも1種が好ましい。
不飽和ジカルボン酸無水物単量体としては、マレイン酸無水物、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物、アコニット酸無水物等が挙げられる。不飽和ジカルボン酸無水物単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。不飽和ジカルボン酸無水物単量体のなかでも、マレイン酸無水物が好ましい。
ビニル系単量体成分(m2)は、上記芳香族ビニル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、不飽和ジカルボン酸無水物単量体以外に、これらと共重合可能な他のビニル系単量体を含んでいてもよい。他のビニル系単量体としては、例えば、シアン化ビニル系単量体(アクリロニトリル、メタクリロニトリル等)等が挙げられる。他のビニル系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ビニル系単量体成分(m2)が他のビニル系単量体を含む場合、芳香族ビニル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、不飽和ジカルボン酸無水物単量体を含むことによる効果を十分に得る上で、ビニル系単量体成分(m2)100質量%中の他のビニル系単量体の含有量は20質量%以下、特に10質量%以下であることが好ましい。
本発明のスチレン系共重合体(B)の製造方法は特に限定はなく、溶液重合、塊状重合等公知の方法で製造できるが、溶液重合がより好ましく、具体的には、特開2016−138156号公報に記載の方法で得ることができる。そのようにして得られるスチレン系共重合体(B)としては市販品を用いることもでき、例えばデンカ株式会社製の商品名「レジスファイR−310」等が挙げられる。
本発明のスチレン共重合体(B)のガラス転移温度は流動性、耐熱性、耐衝撃性のバランスに優れることから、140〜160℃であり、好ましくは145〜150℃である。
[メタクリル酸エステル樹脂(C)]
本発明のメタクリル酸エステル樹脂(C)は、メタクリル酸エステルを含むビニル系単量体成分(m3)を重合することにより得られる樹脂であり、常法に従って、ビニル系単量体成分(m3)を重合して製造することができる。
ビニル系単量体成分(m3)は、少なくともメタクリル酸エステルを必須成分として含む。ビニル系単量体成分(m3)は、メタクリル酸エステルと共重合可能な他のビニル系単量体を任意成分として含んでもよい。
ビニル系単量体成分(m3)におけるメタクリル酸エステルの含有率は、得られる成形品の耐傷付き性、発色性に優れることから、ビニル系単量体成分(m3)100質量%中85〜100質量%が好ましい。
メタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ペンジル、メタクリル酸フェニル等が挙げられる。これらのメタクリル酸エステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記メタクリル酸エステルのなかでも、得られる成形品の耐熱性および耐衝撃性がさらに優れることから、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸エチルの少なくとも1種が好ましい。
他のビニル系単量体としては、マレイミド系単量体、芳香族ビニル系単量体、アクリル酸エステル等が挙げられる。他のビニル系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
マレイミド系単量体としては、例えば、N−アルキルマレイミド(N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−n−プロピルマレイミド、N−i−プロピルマレイミド、N−n−ブチルマレイミド、N−i−ブチルマレイミド、N−t−ブチルマレイミド等)、N−シクロアルキルマレイミド(N−シクロヘキシルマレイミド等)、N−アリールマレイミド(N−フェニルマレイミド、N−アルキル置換フェニルマレイミド、N−クロロフェニルマレイミド等)等が挙げられる。マレイミド系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
マレイミド系単量体のなかでも、得られる成形品の耐熱性および耐衝撃性がさらに優れることから、N−アリールマレイミドが好ましく、N−フェニルマレイミドが特に好ましい。
芳香族ビニル系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−,m−またはp−メチルスチレン、ビニルキシレン、p−t−ブチルスチレン、エチルスチレン等が挙げられる。芳香族ビニル系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。芳香族ビニル系単量体のなかでも、得られる成形品の耐熱性および耐衝撃性がさらに優れることから、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
なお、メタクリル酸エステル樹脂(C)としては市販品を用いることもでき、例えば、三菱ケミカル(株)製「アクリペットVH5」が挙げられる。
[グラフト共重合体(A)とスチレン共重合体(B)とメタクリル酸エステル樹脂(C)の含有割合]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明のグラフト共重合体(A)と本発明のスチレン共重合体(B)と本発明のメタクリル酸エステル樹脂(C)とをこれらの合計100質量%に対して、グラフト共重合体(A)を25〜46質量%、スチレン共重合体(B)を15〜40質量%、メタクリル酸エステル樹脂(C)を20〜50質量%含むものである。
本発明の熱可塑性樹脂組成物中のグラフト共重合体(A)の含有量は、特に得られる成形品の耐衝撃性と耐傷付き性のバランスに優れることから、30〜40質量%であることが好ましい。
また、スチレン系共重合体(B)の含有量は、特に得られる成形品の耐熱性と耐衝撃性のバランスに優れることから、16〜30質量%であることが好ましい。
また、メタクリル酸エステル樹脂(C)の含有量は、特に得られる成形品の耐熱性と耐衝撃性のバランスに優れることから、35〜47質量%であることが好ましい。
なお、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明のグラフト共重合体(A)の1種のみを含むものであってもよく、複合ゴム状重合体(b)の組成や物性、グラフト共重合成分等の異なるものの2種以上を含むものであってもよい。同様に本発明のスチレン共重合体(B)についても1種のみを含むものであってもよく、2種以上を含むものであってもよく、本発明のメタクリル酸エステル樹脂(C)についても、1種のみを含むものであってもよく、2種以上を含むものであってもよい。
[他の熱可塑性樹脂]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明のグラフト共重合体(A)、スチレン共重合体(B)およびメタクリル酸エステル樹脂(C)以外の他の熱可塑性樹脂を含有してもよい。
他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアリレート、液晶ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂、ポリアミド等が挙げられる。他の熱可塑性樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物が、他の熱可塑性樹脂を含有する場合、本発明のグラフト共重合体(A)、スチレン共重合体(B)およびメタクリル酸エステル樹脂(C)を含有することによる効果を有効に得る上で、本発明の熱可塑性樹脂組成物中の全樹脂成分(通常は、本発明のグラフト共重合体(A)、スチレン共重合体(B)およびメタクリル酸エステル樹脂(C)と他の熱可塑性樹脂との合計)100質量%中の他の熱可塑性樹脂が20質量%以下、特に10質量%以下となるように含むことが好ましい。
[各種添加剤]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で各種添加剤を含有してもよい。各種添加剤としては、酸化防止剤、滑剤、加工助剤、顔料、染料、充填剤、シリコーンオイル、パラフィンオイル等が挙げられる。これらの添加剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
〔成形品〕
本発明の成形品は、本発明の熱可塑性樹脂組成物を公知の成形方法によって成形加工して得られる。
成形方法としては、例えば、射出成形法、プレス成形法、押出成形法、真空成形法、ブロー成形法等が挙げられる。
成形品の用途としては、車両内装・外装部品、事務機器、家電、建材等が挙げられ、車両内装・外装部品が好適である。
特に本発明の熱可塑性樹脂組成物は流動性に優れ、得られる成形品の耐熱性、耐衝撃性、発色性、耐傷付き性に優れることから、車両内装・外装部品への使用に有効である。
以下、具体的に実施例を示す。ただし、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
以下に記載の「%」は「質量%」、「部」は「質量部」を意味する。
[測定・評価方法]
以下の実施例および比較例における各種測定および評価方法は、以下の通りである。
<体積平均粒子径・全粒子中に占める粒子径が300〜500nmである粒子の割合の測定方法>
マイクロトラック(日機装社製「ナノトラック150」)を用い、測定溶媒として純水を用いて体積平均粒子径(MV)と全粒子中に占める粒子径が300〜500nmである粒子の割合(300〜500nmの粒子割合)を求めた。
<溶融混練>
グラフト共重合体(A)とスチレン共重合体(B)とメタクリル酸エステル樹脂(C)を混合し、グラフト共重合体(A)とスチレン共重合体(B)とメタクリル酸エステル樹脂(C)の合計100部に対して、カーボンブラック0.8部を混合して着色し、28mmφの真空ベント付き2軸押出機(株式会社日本製鋼所製「TEX−28V」)で、シリンダー温度200〜260℃、93.325kPa真空にて溶融混練を行い、熱可塑性樹脂組成物を得た。また、溶融混練後に、ペレタイザー(創研社製「SH型ペレタイザー」)を用いてペレット化を行った。
<物性評価用成形品(Ma1)の成形>
熱可塑性樹脂組成物を、射出成形にて100×100mm(厚さ3mm)の成形品(Ma1)とした。
<物性評価用成形品(Ma2)の成形>
熱可塑性樹脂組成物を、射出成形にて縦80mm、横10mm、厚さ4mmの成形品(Ma2)とした。
<流動性の評価>
熱可塑性樹脂組成物について、ISO 1133規格に従い、230℃の条件でメルトボリュームレート(MVR)を測定した。
<耐熱性の評価>
成形品(Ma1)について、ISO試験法75規格に準拠し、1.83MPa、4mm、フラットワイズ法で荷重たわみ温度(℃)を測定した。
<耐衝撃性の評価>
成形品(Ma2)について、ISO 179規格に従い、23℃の条件でシャルピー衝撃試験(ノッチ付)を行い、シャルピー衝撃強度を測定した。
<発色性の評価>
成形品(Ma1)について、分光測色計(コニカミノルタオプティプス社製「CM−3500d」)を用いて明度Lを、SCE方式にて測定した。こうして測定されたLを「L(ma)」とする。Lが低いほど黒色となり、発色性が良好である。
<耐傷付き性の評価>
図1に示すように、先端部11が半球形に形成された棒状の治具10を用意し、先端部11に、洗車タオル(株式会社ジョイフル製洗車用タオル3p)12を被せた。成形品(Ma1)13の表面に対して、棒状の治具10が直角になるように、洗車タオル12が被せられた先端部11を接触させ、先端部11を成形品(Ma1)13の表面において水平方向(図中矢印方向)に摺動させ、100回往復させた。その際、加える荷重は1kgとした。100回往復させた後、傷を付けた成形品(Mc)の表面の明度Lを、分光測色計を用いて、SCE方式にて測定した。こうして測定されたLを「L(mc)」とする。
(耐傷付き性の判定)
成形品(Mc)の傷の目立ちやすさの判定指標ΔLを下記式から算出した。ΔL(mc−ma)の絶対値が大きいほど傷が目立ちやすい。
ΔL(mc−ma)=L(mc)−L(ma)
[グラフト共重合体(A)の製造]
<ポリオルガノシロキサン(a−1)の製造>
オクタメチルシクロテトラシロキサン98部、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメ
トキシメチルシラン2部を混合してシロキサン混合物100部を得た。これに、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.67部、イオン交換水300部からなる水溶液を添加し、ホモミキサーにて10000回転/分で2分間撹拌した後、ホモジナイザーに300kg/cm2の圧力で2回通し、安定な予備混合オルガノシロキサンラテックスを得た。
別途、試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた反応器内に、ドデシルベンゼンスルホン酸10部と、イオン交換水90部とを投入し、10%のドデシルベンゼンスルホン酸水溶液(酸触媒水溶液)を調製した。
この酸触媒水溶液を85℃に加熱した状態で、予備混合オルガノシロキサンラテックスを2時間にわたって滴下し、滴下終了後3時間その温度を維持した後、40℃以下に冷却した。次いで、この反応物を10%水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0に中和して、ポリオルガノシロキサン(a−1)のラテックスを得た。
得られたポリオルガノシロキサン(a−1)のラテックスを180℃で30分乾燥して固形分を求めたところ18.2%であった。また、体積平均粒子径は30nmであった。
<酸基含有共重合体ラテックス(c)の製造>
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および撹拌装置を備えた反応器内に、イオン交換水200部、オレイン酸カリウム2部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム4部、硫酸第一鉄七水塩0.003部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.009部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.3部を窒素気流下で仕込み、60℃に昇温した。60℃になった時点から、アクリル酸n−ブチル85部、メタクリル酸15部、クメンヒドロパーオキサイド0.5部からなる混合物を120分かけて連続的に滴下した。滴下終了後、さらに2時間、60℃を維持した状態で熟成を行い、固形分が33%、重合転化率が96%、酸基含有共重合体の体積平均粒子径が120nmである酸基含有共重合体ラテックス(c)を得た。
<グラフト共重合体(A−1)の製造>
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた反応器内に、ポリオルガノシロキサン(a−1)のラテックスを固形分換算で7.0部と、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム0.75部と、イオン交換水203部とを仕込んで混合した。次いで、アルキル(メタ)アクリレート系重合体(a−2)を構成する単量体としてアクリル酸n−ブチル43.0部、アリルメタクリレート0.21部、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート0.11部、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.13部からなる混合物を添加した。
この反応器に窒素気流を通じることによって雰囲気の窒素置換を行い、内温を60℃まで昇温した。内温が60℃に達した時点で、硫酸第一鉄七水塩0.0001部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0003部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.24部、イオン交換水10部からなる水溶液を添加し、ラジカル重合を開始させた。重合発熱が確認された後、ジャケット温度を78℃とし、重合発熱が確認されなくなるまで重合を継続し、さらに1時間この状態を維持し、ポリオルガノシロキサンとポリブチルアクリレートゴムとが複合した複合ゴム状重合体(b−1)を得た(ラジカル重合工程)。得られた複合ゴムの体積平均粒子径は91nmであった。
反応器内部の液温が60℃に低下した後、ロンガリット0.4部をイオン交換水10部に溶解した水溶液を添加した。次いで、アクリロニトリル2.5部、スチレン7.5部及びターシャリーブチルハイドロパーオキサイド0.2部の混合液を約1時間にわたって滴下し重合した。滴下終了後1時間保持した後、硫酸第一鉄0.0002部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0006部及びロンガリット0.25部をイオン交換水10部に溶解させた水溶液を添加した。次いで、アクリロニトリル10.0部、スチレン30.0部及びターシャリーブチルハイドロパーオキサイド0.1部の混合液を約40分間にわたって滴下し重合した。滴下終了後1時間保持した後、冷却して、複合ゴム状重合体(b−1)にアクリロニトリル−スチレン共重合体をグラフトさせたグラフト共重合体(A−1)の水性分散体を得た。次いで、酢酸カルシウムを5%の割合で溶解した水溶液150部を60℃に加熱し撹拌した。その酢酸カルシウム水溶液中にグラフト共重合体(A−1)の水性分散体100部を徐々に滴下して凝固させた。得られた凝固物を分離し、洗浄した後、乾燥させて、グラフト共重合体(A−1)の乾燥粉末を得た。
<グラフト共重合体(A−2)〜(A−5)の製造>
ラジカル重合工程で用いたポリオルガノシロキサン(a−1)および、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、アクリル酸n−ブチルの量を表1に示すように変更した以外は、グラフト共重合体(A−1)の製造と同様にしてグラフト共重合体(A−2)〜(A−5)を得た。
<グラフト共重合体(A−6)>
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた反応器内に、ポリオルガノシロキサン(a−1)のラテックスを固形分換算で5.0部と、アルケニルコハク酸ジカリウム0.48部と、イオン交換水190部とを仕込んで混合した。次いで、アルキル(メタ)アクリレート系重合体を構成する単量体としてアクリル酸n−ブチル45.0部、アリルメタクリレート0.4部、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート0.09部、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.12部からなる混合物を添加した。この反応器に窒素気流を通じることによって雰囲気の窒素置換を行い、内温を60℃まで昇温した。内温が60℃に達した時点で、硫酸第一鉄七水塩0.000075部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.00023部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.2部、イオン交換水10部からなる水溶液を添加し、ラジカル重合を開始させた。重合発熱が確認された後、ジャケット温度を75℃とし、重合発熱が確認されなくなるまで重合を継続し、さらに1時間この状態を維持し、ポリオルガノシロキサンとポリブチルアクリレートゴムとが複合した複合ゴムを得た(ラジカル重合工程)。得られた複合ゴムの体積平均粒子径は90nmであった。
反応器内部の液温が70℃に低下した後、5%ピロリン酸ナトリウム水溶液を固形分として0.20部添加した。内温70℃で制御した後、酸基含有共重合体ラテックス(c)を固形分として0.30部添加し、30分撹拌、肥大化を行い、複合ゴム状重合体(b−6)のラテックスを得た(肥大化工程)。
得られたラテックス状の複合ゴム状重合体(b−6)の体積平均粒子径は165nmであった。また、複合ゴム状重合体(b−6)の全粒子中に占める、粒子径が300〜500nmである粒子の割合は10体積%であった。
この複合ゴム状重合体(b−6)のラテックスに、硫酸第一鉄七水塩0.001部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.003部、ロンガリット0.3部、イオン交換水10部からなる水溶液を添加した。次いで、アクリロニトリル10.0部、スチレン30部、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.18部からなる混合液を80分間にわたって滴下し、重合した。滴下終了後、温度75℃の状態を30分保持した後、アクリロニトリル2.5部、スチレン7.5部、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.05部、n−オクチルメルカプタン0.02部からなる混合物を20分にわたって滴下し、重合した。滴下終了後、温度75℃の状態を30分保持した後、クメンヒドロパーオキシド0.05部を添加し、さらに温度75℃の状態を30分保持した後、冷却し、複合ゴム状重合体(b−6)に、アクリロニトリルとスチレンをグラフト重合させたシリコーン/アクリル複合ゴム系のグラフト共重合体(A−6)のラテックスを得た。
次いで、1%酢酸カルシウム水溶液150部を60℃に加熱し、この中へグラフト共重
合体(A−6)のラテックス100部を徐々に滴下して凝固した。そして、析出物を分離
し、脱水、洗浄した後に乾燥して、グラフト共重合体(A−6)を得た。
<グラフト共重合体(A−7)〜(A−11)の製造>
ラジカル重合工程で用いたポリオルガノシロキサン(a−1)、アルケニルコハク酸ジカリウム、およびアクリル酸n−ブチルの量と、肥大化工程で用いたピロリン酸ナトリウムの量、および酸基含有共重合体ラテックス(c)の量を表1に示すように変更した以外は、グラフト共重合体(A−6)の製造と同様にしてグラフト共重合体(A−7)〜(A−11)を得た。
グラフト共重合体(A−1)〜(A−11)を構成する複合ゴム状重合体(b)の体積平均粒子径、および複合ゴム状重合体(b)の全粒子中に占める粒子径が300〜500nmである粒子の割合を表1に示す。
Figure 2019163411
[スチレン系共重合体(B)]
<スチレン系共重合体(B−1)>
スチレン系共重合体(B−1)としてデンカ株式会社製「レジスファイR−310」(スチレン71質量%、メタクリル酸メチル10質量%、および無水マレイン酸19質量%の重合物)を使用した。スチレン系共重合体(B−1)のガラス転移温度は146℃であった。
<スチレン系共重合体(B−2)>
スチレン系共重合体(B−2)としてデンカ株式会社製「レジスファイR−200」(スチレン58質量%、メタクリル酸メチル26質量%、および無水マレイン酸17質量%の重合物)を使用した。スチレン系共重合体(B−2)のガラス転移温度は130℃であった。
<スチレン系共重合体(B−3)の製造>
耐圧反応容器に蒸留水150部と、ビニル系単量体成分(m2)としてN−フェニルマレイミド40部、スチレン50部、メタクリル酸メチル10部の混合物と、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.2部、n−オクチルメルカプタン0.25部、ポリビニルアルコール0.7部を仕込み、内温を75℃まで昇温し、3時間反応を行った。その後、90℃まで昇温し、60分間保持することで反応を完結させた。内容物を遠心脱水機で洗浄、脱水を繰り返し、乾燥させてスチレン系共重合体(B−3)を得た。スチレン系共重合体(B−3)のガラス転移温度は165℃であった。
<スチレン系共重合体(B−4)の製造>
N−フェニルマレイミド33部、スチレン61部、メタクリル酸メチル6部とした以外は、スチレン系共重合体(B−3)の製造と同様の方法でスチレン系共重合体(B−4)を得た。スチレン系共重合体(B−4)のガラス転移温度は155℃であった。
[メタクリル酸エステル樹脂(C)]
メタクリル酸エステル樹脂(C−1)として、三菱ケミカル(株)製「アクリペットVH5」を使用した。
[実施例1]
グラフト共重合体(A−1)36部、スチレン系共重合体(B−1)26部、メタクリル酸エステル樹脂(C−1)38部、カーボンブラック0.8部を混合し、28mmφの真空ベント付き2軸押出機(株式会社日本製鋼所製「TEX−28V」)で、シリンダー温度200〜260℃、93.325kPa真空にて溶融混練を行い、熱可塑性樹脂組成物を得た。
熱可塑性樹脂組成物をペレット化し、各種成形品を成形し、流動性、耐熱性、耐衝撃性、発色性、耐傷付き性を評価した。結果を表2に示す。
[実施例2〜12]
表2に示す配合処方に変更した以外は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂組成物を調製した。
熱可塑性樹脂組成物をペレット化し、各種成形品を成形し、流動性、耐熱性、耐衝撃性、発色性、耐傷付き性を評価した。結果を表2に示す。
[比較例1〜8]
表3に示す配合処方に変更した以外は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂組成物を調製した。
熱可塑性樹脂組成物をペレット化し、各種成形品を成形し、流動性、耐熱性、耐衝撃性、発色性、耐傷付き性を評価した。結果を表3に示す。
Figure 2019163411
Figure 2019163411
以上の結果より次のことが分かる。
実施例1〜12の熱可塑性樹脂組成物は流動性に優れ、得られた成形品は耐衝撃性、発色性、耐熱性、耐傷付き性に優れていた。
したがって、本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いると流動性、耐衝撃性、発色性、耐熱性、耐傷付き性に優れた成形品が得られ、車両内装・外装部品、事務機器、家電、建材等の用途に適用できることがわかる。
一方、比較例1〜11の結果から、本発明以外のものは流動性、耐衝撃性、発色性、耐傷付き性、耐熱性のいずれかが不充分であった。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いた成形品は、車両内装・外装部品、事務機器、家電、建材等として有用である。
10 治具
11 先端部
12 洗車タオル
13 成形品(Ma1)

Claims (5)

  1. 以下のグラフト共重合体(A)とスチレン系共重合体(B)とメタクリル酸エステル樹脂(C)とを含有し、グラフト共重合体(A)とスチレン共重合体(B)とメタクリル酸エステル樹脂(C)との合計100質量%に対して、グラフト共重合体(A)の含有量が25〜46質量%、スチレン共重合体(B)の含有量が15〜40質量%、メタクリル酸エステル樹脂(C)の含有量が20〜50質量%である熱可塑性樹脂組成物。
    グラフト共重合体(A):ポリオルガノシロキサン(a−1)とアルキル(メタ)アクリレート系重合体(a−2)との複合ゴム状重合体(b)であって、ポリオルガノシロキサン(a−1)とアルキル(メタ)アクリレート系重合体(a−2)との合計を100質量%としたときの、ポリオルガノシロキサン(a−1)の割合が1〜23質量%であり、体積平均粒子径が50〜240nmであり、全粒子中に占める粒子径が300〜500nmである粒子の割合が0〜25体積%である複合ゴム状重合体(b)の存在下に、芳香族ビニル系単量体およびシアン化ビニル系単量体を含むビニル系単量体成分(m1)を重合して得られるグラフト共重合体(A)
    スチレン共重合体(B):芳香族ビニル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、および不飽和ジカルボン酸無水物単量体を含むビニル系単量体成分(m2)を重合して得られる、ガラス転移温度が140〜160℃のスチレン系共重合体(B)
    メタクリル酸エステル樹脂(C):メタクリル酸エステルを含むビニル系単量体成分(m3)を重合して得られるメタクリル酸エステル樹脂(C)
  2. 前記ポリオルガノシロキサン(a−1)は、ビニル重合性官能基含有シロキサン単位0.3〜3モル%と、ジメチルシロキサン単位99.7〜97モル%(ただし、ビニル重合性官能基含有シロキサン単位とジメチルシロキサン単位の合計を100モル%とする。)とからなる平均粒子径20〜400nmのものであり、
    前記(メタ)アクリレート系重合体(a−2)中、アルキル(メタ)アクリレート単量体単位の含有量が、(メタ)アクリレート系重合体(a−2)を構成する全単量体単位の総質量に対して80〜100質量%であり、
    前記複合ゴム状重合体(b)におけるポリオルガノシロキサン(a−1)とアルキル(メタ)アクリレート系重合体(a−2)との合計100質量%中のポリオルガノシロキサン(a−1)の割合が1〜10質量%であり、
    前記ビニル系単量体成分(m1)100質量%中の芳香族ビニル系単量体の含有率が65〜82質量%で、シアン化ビニル系単量体の含有率が18〜35質量%であり、
    前記グラフト共重合体(A)中の複合ゴム状重合体(b)とビニル系単量体成分(m1)の質量比が複合ゴム状重合体(b)10〜80質量%、ビニル系単量体成分(m1)20〜90質量%である(ただし、複合ゴム状重合体(b)とビニル系単量体成分(m1)の合計を100質量%とする。)ことを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. 前記ビニル系単量体成分(m2)100質量%中の芳香族ビニル系単量体の含有率が60〜80質量%、(メタ)アクリル酸エステル系単量体の含有率が5〜15質量%、不飽和ジカルボン酸無水物単量体の含有率が15〜35質量%である請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. 前記ビニル系単量体成分(m3)100質量%中のメタクリル酸エステルの含有率が85〜100質量%である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. 請求項1ないし4のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物を成形して得られる成形品。
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